ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2019年11月

さて、飛騨コスモス天文台の鏡筒ですが、撮影レベルで使えるかどうかの検証の続きです。今日は前回と違って時間はたっぷりあったので、色々試しました。


飛騨コスモス天文台の機材

まずは赤道儀と鏡筒ですが、改めて見てもどうもよく分かりません。赤道儀は少なくともタカハシ製で、最初NJPかと思っていたのですが、シリアルナンバーを見るとどうやら1978年製。このころはまだTS式システム160J赤道儀/J型赤道儀というシステムで販売されていたものらしくて、どうやらJPとかNJPとか単体で呼ばれる前のものだったのかもしれません。

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鏡筒についてですが、ちょうど日曜に富山県天文学会の忘年会があったので、そこで昔のことを詳しい方達に聞いてみました。焦点距離3000mmというのと口径250mmという情報から、やはりタカハシのミューロンの初期のものではないかとのことでした。でもやっぱりWebで調べても形が所々違うんですよね。

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色は赤道儀と同じです。昔のタカハシカラーなのか、もしかしたら後から赤道儀と鏡筒を合わせて別の色で塗っている可能性もあります。とりあえず機材に関してはあまり進展なしです。

(2019/12/21追記: スターベース さんで聞いてきました。少なくともタカハシ製ではないとのことです。日高光器製との情報もありますが確定ではありません。確かにネットで調べてみると、日高光器デザイン、ヨシオカ光器制作の反射型のデザインに似ているところもあります。色はどうやら赤道儀と合わせて後から塗ったのは確定のようです。)


極軸調整

まずは簡単なところからはじめす。いつものようにSharpCapでの極望です。ところがここの機材、あまりにまとまりすぎていてCMOSカメラを取り付けるところが全然ありません。いろいろ探した末、モーターのカバーを取り付けているネジを一本外して、そこに無理やりアルカスイスプレートを固定し、そこにいつものアルカスイスクランプ付きのCMOSカメラを固定しました。

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実際に現在の誤差を測定してみると、なんと20分角以上もあります。これでは流石に前回の撮影中に星像がどんどんずれていったはずです。

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とりあえず写真に写っている水平調整と、六角レンチを指している垂直方向の調整で、1分角くらいの精度まで合わせこみました。

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ただしカメラがASI178MCで、そこに焦点距離50mmのCマウントレンズをつけてあるだけなので、精度は不十分で、誤差を考えると1分角は出ていないはずで、せいぜい数分角程度かと思います。それでもずれはこれまでの10分の1程度にはなったはずなので、ノータッチガイドでもある程度の時間撮影を続けることができるはずです。


光軸調整

光軸調整の方は厄介です。とにかく鏡筒が普段触っているものより大きく、高いところにあるので扱いにくいです。まずは鏡筒を水平近くに持っていって、地平線上に見えるくらいの星を入れて、副鏡に手が届くようにしてから光軸をいじってみました。副鏡のネジは4つ。自由度はpitchとyawに分離できるので、基本的に触るのは2つのネジだけです。それぞれの自由度でどちらのネジをいじるかを決めて、もしネジを全部締めこんでしまった場合や緩めすぎになる場合は、反対側のもう一方のネジで調整するようにします。

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もともと恒星が明らかに尾を引いていたので、それを消すように調整します。ただし、中心で合わせても四隅ではコマ収差のためにどうしても尾を引いてしまうようです。カセグレン式のこの鏡筒は眼視がメインと思われるので、致し方ないです。そのうちにコマ補正を試せればと思います。


ASCOMでの動作

光軸調整後、後々のガイドなどのことを考えて自分のPCで赤道儀を操作できるか試してみました。もともとドームにあるラップトップPCにはステラナビゲーターが入っていて、LX200モードで自動導入が可能になっているようです。なので自分のPCにもLX200用のASCOMドライバーを入れて、そのドライバーを介してCartes du Cielから操作してみようと思いました。

まず、接続自身は問題なくできます。Cartes du Cielのカーソルを押すと、その方向に赤道儀が動いているのが分かります。ところが、同期だとか、導入をしようとすると、赤道儀から現在地がどこなのかの反応がないと怒られてしまいます。赤経赤緯の読み取り値を見てみると、数値は両方とも出ていますが、片方は緑色、もう片方は赤色でどうも片方だけうまく読み取れていないようです。時間ももったいなかったので、この時点で諦めて、ドームにもともとあったPCでの接続に戻して再び自動導入をできるようにしました。Cartes du Ciel以外のソフトを使う手もあるので、ドライバーがうまく動いていないのか、プラネタリウムソフトが何か悪いのか、パラメーターが悪いのか、次回の課題です。

この日はガイドは諦めるとして、ここでM57を撮影してみました。30秒露光なのでガイドなどは必要ありません。こと座の高度はだいぶん下がってきていて、山のすぐ上くらいにあります。なので枚数は全然稼げませんでしたが、前回は10秒露光、今回は30秒露光でほぼ同じような星像の大きさになったので、少しは光軸調整の効果が出ているようです。下の写真はdebayerだけしてオートストレッチをかけたものをJPEGにしたものです。星像は変な形はしていませんが、分解能はまだまだでVISACのように点像とは言い難いです。カセグレン式は中心像は結構いいと思っていたのですが、それほどでもないのかもしれません。

Capture_20_00_42_00009_20_05_07_RGB_VNG


M1かに星雲の撮影

さて、問題はここからです。M57も沈んでしまったので、今日のメインのM1、かに星雲の撮影を試みることにしました。M57での星像を見るに、分解能はそれほど期待できないかもしれません。M1はこの時間かなり高い高度にきているので、鏡筒を真上近くに向けます。ところがM1を導入してみてびっくり。全ての星が全然丸くありません。どちらかというと三角形です。

Capture_22_47_14_00008_22_54_58_RGB_VNG
拡大して見てみると星が三角になってしまっています。

うん?鏡筒を反対側に持ってきたので光軸がずれたか?と、気を取りなおしてまた鏡筒を水平近くに持ってきて光軸調整をしようとしますが、まだ何も触っていないのに星像がまともな丸になっています。なんで?とりあえず何も触らずにまた上の方のM1に戻すとやはり三角っぽい形です。この時点で、これは光軸のずれのせいではないと思い直し、落ち着いて考えてみました。

星像をよくみていると、どうも形が時系列で変わっています。時には丸のこともあれば、時には三角、さらには細長い時もあります。あー、と思いおもむろにいろいろなところを揺らしてみました。するとわかったのは、
  • ピラーがかなり、目で見てわかるくらいに簡単に揺れること。
  • 鏡筒とウェイトでダンベルのようになっていて、それが赤道儀の赤経周りの回転モードで励起されていること。
これらの2つのモードが励起されると、ちょうど星像が三角形のように撮影されるということです。しかもかなりQ値が高いようで、なかなか減衰しません。半減期は5秒とかのオーダーでしょうか。周波数も真面目に測っていませんが、数10Hzはありそうです。下の写真はピラーと鏡筒を叩いた時の同じM1の周りを0.25秒の露光時間で撮影したものです。2つのモードが励起されて星像が円を描いているのがわかります。

Capture_00_50_09_00001_00_50_09_RGB_VNG

コンと叩いただけでここまで揺れるのは流石にいただけないです。地面や風の揺れだけで星像がおかしくなるのも納得です。何らかのダンパーが必要になるのかと思います。

さて今回の記事はここまでで、次回は撮影したM57とM1を処理したものです。でもやはり像が甘いのであまり期待できません。

 

飛騨コスモスで撮った画像、やっと処理をする時間が取れました。2本のレンズ、PENTAX 6x7マウントの105mm f/2.4で撮影したものと、PENTAX 6x7マウントの200mm f/4で撮影した画像を処理してみます。


機材と撮影条件1

最初は105mmです。アトムレンズの性能を見い出せるかがポイントです。
  • カメラ: Canon EOS 6D HIKIR改造
  • レンズ: ASAHI PENTAX Super TAKUMAR/6x7 105mm f/2.4 (アトムレンズ)
  • 撮影条件: ISO1600、露光時間90秒 x 36枚、総露光時間54分
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • 撮影場所: 岐阜県飛騨市数河高原
  • 撮影日時: 2019年11月23日21時19分 - 22時14分
撮影範囲は北アメリカ星雲からサドル付近を含んだ範囲、かなり賑やかなところです。夏の星座なので、高度もある程度下がってきていて、山に沈むまでの時間で制限されました。


画像処理と結果

今回は結構綺麗に出ました。使ったソフトはPixInsiteとStarnet++、Photoshop CCです。前回Starnet++を使ってみてかなり楽だったので、今回も味をしめて星雲と恒星を分離してから、星雲をあぶり出しています。

masterLight_integration_DBE_DBE_DBE_CC_STR_SNP2_cut

色もわりと簡単に出ます。画像処理の過程で、黄変は全く気になりませんでした。周辺に少しコマは残りますが、拡大してみない限りはそこまで気にならないレベルです。そもそもf/2.4の開放での撮影なので、少し絞ればもっとマシになるのかもしれません。次回チャンスがあるときに試してみたいと思います。

結局アトムレンズのことは画像処理の間は全く気になりませんでした。特に悪いところも、特筆すべきところも意識できませんでした。周辺減光が少ないのは中判だからかと思います。センサーに放射線がノイズとして現れるというのがあぷらなーとさんから報告されていましたが、PIでホットピクセル処理をするのと、Integrationのときにminimumになるように重ねることで、ほとんど気になりませんでした。




機材と撮影条件2

さて後半ですが、ここからはもうただのおまけです。200mmは全然ダメでした。

撮影の時に目立った赤ハロがどうなるかがポイントです。
  • カメラ: Canon EOS 6D HIKIR改造
  • レンズ1: ASAHI PENTAX SMC TAKUMAR/6x7 200mm f/4
  • 撮影条件: ISO3200、露光時間90秒 x 47枚、総露光1時間10分30秒
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • 撮影場所: 岐阜県飛騨市数河高原
  • 撮影日時: 2019年11月23日23時50分 - 11月24日2時13分
こちらはエンゼルフィッシュ星雲です。少し焦点距離が長かったかもしれません。エンゼルフィッシュが大きくなりすぎて、全然エンゼルフィッシュになりませんでした。

そうそう、そういえばエンゼルフィッシュにするときに、カメラを90度回転させたくなりました。今回はカメラを赤道儀に固定していたのでここで苦労しました。赤道儀にはアリガタからアルカスイスクランプに変換する自分で組み合わせたアダプターを取り付けて、そこにカメラを取り付けています。カメラの底面につけたアルカスイルプレートで固定するので、普通に水平におく場合には何の問題もないのですが、90度傾けようとするとプレートが側面についていないのでどうしようかと迷いました。今回は自由雲台を取り付けてカメラを倒すように取り付けて90度回転させましたが、200mmレンズが重すぎて自由雲台のボールが耐えられずズルズルとずれていきます。これは冴えないので何か解決策が必要です。(2019/12/21追記: L字アルカスイスクランプで解決しました。)


画像処理

いやあ、このレンズは星撮りにはダメでした。赤ハロの処理がこんなに大変だとは。

まずはごく普通の処理でやりましたが、全く歯が立ちません。背景はざらざら、色は出ない。

こうなったら持っている技術を注ぎ込みます。例えばPixInsightt上でRGB分解してRのみ星像を小さくしてみます。それでも残る赤いシミをいかに誤魔化すかにすごい手間がかかりました。75mmでの自宅撮影ではあんなに簡単に色が出たのに、はるかに光害の少ない場所での撮影で全然色が出ません。

時間ばかりかかる割に、全然仕上がりまで辿り着きません。四隅のコマ収差も酷いですがもうそれどころではないです。もう諦めてここら辺にします。撮影する時間も、処理する時間も結構かけたのですが、こんな仕上がりなら載せない方がいいかもしれません。

このレンズはお蔵入りです。

masterLight_integration_DBE_DBE_DBE_CC_RGB_STR_SNP_PS_cut
疲れました...。限界です。


まとめ

PENTAXのレンズ3種を画像処理まで試したことになります。

まずはさすが中判、3本とも周辺減光がほとんど気になりません。今回フラットは撮っていないですが、PixInsightのDBEを軽く適用するくらいでした。周辺の補正はほとんど無いレベルでした。

一方、コマ収差に関しては75mmが圧倒的にいいです。たとえるならFS-60CB+レデューサーで出てくる歪みくらいでしょうか。FS-60CBに新フラットナーを合わせたときには負けますが、個人的には全然不満にならないレベルです。105mmのアトムレンズのコマ収差は無視できないレベルですが、もう少し絞ったらマシになるかもれません。それでもまだ許容範囲の口です。200mmのコマは許容範囲外です。それよりも赤ハロのひどさには閉口しました。撮影の時にはこんなもんかと思っていたのですが、画像処理をして大変さを実感しました。

というわけで、同じPENTAXの6x7マウントといっても手に入れた範囲だけでも色々です。75mmはこれからも使い続けます。かなりお買い得でした。105mmは絞ってからもう一度判断したいです。でもアトムレンズの性能が味わえたかというと、ちょっと微妙です。値段的にも(中古なので十分安いですが)75mmと比べると少し割高だと思いました。200mmはもう使いません。あの赤ハロでは時間の無駄になってしまいます。あ、昼間のレンズとしてなら使うかもしれません。

それでも結構面白い経験でした。もしかしたら当たりを求めてもう少し6x7レンズ買い足すかもしれません。また沼ですかね。
 

前々前回の記事でPENTAXの6x7の75mmでとったオリオン座とエンゼルフィッシュ、



前々回の記事でコスモス天文台での話、



前回の記事でPENTAXレンズを含んだアトムレンズの記事(結局PENTAXはアトムレンズではなかったのですが)



を書いたのですが、今回はそれらを統合したような話です。


PENTAX 6x7をレンズもう一本

先週東京に出張した際に、秋葉原のキタムラにて懲りずにPENTAXの6x7マウントのSUPER TAKMAR 105mm f/2.4レンズを手に入れました。前回手に入れたマルチコートではないようです。

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程度は悪くないのですが、レンズをのぞいてみると激しく黄変しています。

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Webで調べてみるとどうやらこれは紛れもないアトムレンズのようです。前回同様実測してみました。

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前面は1.27μSv/hとNIKKOR35mmより低いくらいでしたが、背面(カメラボディー側)はなんと9.99μSv/hと表示されて測定範囲外に。少なくともNIKKOR35mmの数倍はあることになります。これは少し驚きました。それでも100時間くらいのオーダーで数cmくらいの近距離において使った場合にやっと自然被曝程度なので、普段使用では安全性に問題があるとは思えないのですが、念のため保管の時はきちんと鉛板で覆ったケースに入れておいたほうがよさそうです。

測定の結果、今回のPENTAXレンズは本当にアトムレンズということもわかったので、同じPENTAX 6x7マウントでどれくらい性能が違うのか興味があります。はたしてアトムレンズはすごく性能がいいのか、はたまたそんなのは迷信なのか。


久しぶりの快晴で透明度も良!飛騨コスモス天文台で撮影敢行

そんな折の土曜日、昼間から珍しいくらいに快晴で しかも月も深夜遅くまで顔を出さないとあって、この日は撮影日和です。しかも遠くの立山もかなりはっきり見えるので透明度もいいはず。飛騨コスモス天文台に行って、ドームの望遠鏡の調整がてらPENTAXレンズで撮影を敢行することにしました。

飛騨コスモス天文台に到着したのはまだ日が沈む前。夕焼けが綺麗でした。

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撮って出しJPEG画像

ドームの話は次回に譲るとして、今回はPENTAXレンズの比較だけにします。試したのは以前75mmと一緒に手に入れたのにまだ試していなかった200mmでエンゼルフィッシュ星雲。今回手に入れたアトムレンズの105mmで北アメリカ星雲とサドルの近辺です。まだ画像処理が全然進んでいないので、とりあえずJPEG撮って出し画像だけ出します。

まずは200mmです。これも前回の75mmと同じで、ピントリングで最小像を超えることができないためにリングを無限大のところまで持って行っています。

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次に105mm。こちらはなぜかピントリングで最小像を超えることができます。最小像まではいいのですが、それを超えるととたんに赤ハロが目立ちます。どうやらK&FのPENTAX 6x7からCanon EFに変換するアダプターですが、レンズによってピント出し位置が多少異なるようです。無限遠が出ない可能性もあるので注意です。

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周辺星像

4隅の画像です。まずは200mmですが、赤ハロがひどいのがわかります。コマ収差もかなり目立ちます。

IMG_4663


次に期待のアトムレンズ105mmです。中心像は悪くないですが、周辺はコマでしょうか?収差が多少あります。それでも200mmよりは遥かにマシです。ハロはそれほど目立ちません。

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あれ?でも前回の75mmってもっとマシじゃなかったっけ?ちょっと前回のものも再掲載します。

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うーん、もう明らかに75mmの方がマシですね。アトムレンズにはこれ以上を期待していたのですが、どうやら75mmだけの奇跡だったのかもしれません。


PENTAX 6x7マウントレンズのまとめ

今回で3つのPENTAXの6x7レンズを試したことになります。結構目立つ赤ハロとコマ収差が出る200mmと比べると、アトムレンズである105mmの星像はかなりマシです。でも75mmの素晴らしい星像と比べると雲泥の差で、どうやらアトムレンズといえども決定的に有利というわけではないようです。今回の105mmはかなり期待していたのに、少し残念です。

でも同じPENTAXの同マウントで、なんで75mmだけこんなに性能がいいのでしょうか?他にもこのレベルの他の焦点距離のレンズも存在するのでしょうか?流石に昔のレンズで情報もあまりないので、こればかりは買って実際に試してみないとわからないですね。

次回は画像処理をして、実際の仕上がり具合で比較してみることにします。
 

一つ気にになっていることがありました。この間購入したPENTRAXのTAKUMAR LENS、言わずとしれたオールドレンズです。このようなオールドレンズにはアトムレンズとかトリウムレンズなどとも呼ばれ、性能の向上を図ったレンズの可能性があります。前回の撮影で思ったよりも収差も少なかったので、もしかしたらアトムレンズなのではと思い調べてみました。

 


アトムレンズとは

アトムレンズとはレンズ基材に微量ながらも放射性物質である酸化トリウムを混ぜ、高屈折かつ低分散を実現させ、現在のフローライトレンズと同じような効果を狙ったものです。屈折率が高いとその分同じ厚さでもより光を曲げることができるため、レンズを薄くすることができその分湾曲を防ぐことなどができるというわけです。

ただ一つ、欠点があって、古いアトムレンズは覗いてみると黄変とか言って、劣化で黄色く見えるなどの特徴があるそうです。この黄変は製作後数年で出てくるそうで、アトムレンズが生きのこらなかった理由の一つが、黄変が短期間で出てきたことがあると言われているようです。黄変は屈折率などには関係ないので、ホワイトバランスが崩れることや、透過率が下がるなどの弊害はありますが、星撮りでは後の画像処理が入るために、それほど大きな問題にはならないと考えられます。


測定対象としたレンズ

今回手に入れたPENTAXの75mm f/4.5と200mm f/4とは別に、NIKONのオールドレンズを50mm/f1.4と35mm/f1.4の2本持っていて、こちらもアトムレンズの可能性があります。実際のところ、どれがアトムレンズに相当するのかよくわからなかったので、今回この4本を市販の簡易放射線カウンターで測定してみることにしました。

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今回手に入れたPENTAXの75mm f/4.5と200mm f/4

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昔手に入れたNIKKOR50mm/f1.4と35mm/f1.4

 
黄変の具合

測定の前に、黄変の具合を見てみます。左上からNIKKOR 35mm f.1.4、右上がNIKKOR50mm/f1.4、左下がPENTAX 75mm f/4.5、右下がPENTAX 200mm f/4になります。
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上のNIKKOR2本は目で見ると明らかに黄色くなっています。特に35mmの方はかなりはっきりわかる黄変です。50mmのほうは、写真で見るとわかりにくくなってしまっていますが、目で見ると誤差の範囲でなく黄色いです。今回手に入れたPENTAXの75mm f/4.5と200mm f/4の2本は目で見る限り黄変のような兆候は見られませんでした。




実際の放射線量の測定

実際の測定結果は以下のようになります。上がレンズのフロント側、下がレンズのカメラ側になります。左上からNIKKOR 35mm f.1.4、右上がNIKKOR50mm/f1.4、左下がPENTAX 75mm f/4.5、右下がPENTAX 200mm f/4です。出来るだけセンサー位置をレンズ中心になるようにおきました。木の棒が置いてあるのはレンズ面にセンサーが触れるのを防ぐためです。

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レンズのフロント側。

back
レンズのバック側(カメラ側)

まずは今回購入したPENTAXの2本ですが、レンズの上に乗せて測ってみても表示は0.1μSv/h程度と、あまり普通の場所での値と変わりません。NIKKORの50mmも同様です。ところが、NIKKORの35mmに近づけた途端に0.3とかに跳ね上がりました。レンズの前で測ると最終的に2μSv/h程度、レンズの裏に至っては4μSv/h以上にまでなりました。

日本の年間平均自然被曝量が2mSv程度とのことなので、500時間身につけていて自然被曝量程度になります。通常使用では全く問題のないレベルです。


アトムレンズの写り具合

昔、この35mmのアトムレンズを使って、ASI294MCを取り付けて固定撮影でオリオン座付近を撮ったことがあります。



フォーサーズサイズのセンサーでも星像は4方向に伸びていっているのがわかります。今回手に入れたPENTAXの75mmの方が、フルサイズでも星像がかなりマシなので、アトムレンズが必ずしも絶対的に性能がいいというわけではなく、あくまで相対的には性能のいいレンズが作れたということでしょうか。しゃんすがあれば今一度晴れた時に試して見たいと思います。


まとめ

アトムレンズの実測をしているページは探すとすぐにいくつも見つかります。それでも、NIKKORレンズにはアトムレンズは存在しないのではというページもあったり、今回の35mm f1.4がアトムレンズだという記事はありましたが、実測している記事は私が探した範囲では見つけることができませんでした。

アトムレンズは黄変だけで判断するのも難しそうです。NIKKORの35mmと50mmを比較すると明らかな差はわかりますが、単体で50mmだけを見ても黄色く見えるので、迷うかと思います。

PENAXのTAKUMARも、収差が少ないのでもしかしたらアトムレンズかもと思っていたのですが、完全に気のせいでした。やはりきちんと測定などして確かめることが大事です。今回自分で測定し色々調べてみて、実際にいつの年代のどこのメーカーのレンズがアトムレンズの可能性が高いのか、どれくらいの放射線量なのか、どのくらいの時間使っていると危険なのかの目安など、実感として納得しながらわかることが多かったです。こうやってみるとアトムレンズはかなり限られていて、古いレンズで黄変していても、アトムレンズは意外に少ないのかもしれません。

あ、それでもやはりあぷらなーとさんは持っていて、しかもきちんと実測してました。



最初の方でアトムレンズは星撮りに問題にならないと書きましたが、あぷらなーとさんによると、放射線にセンサーが反応してノイズになるとのことです。さすがあぷらなーとさんの解析です。私はまだまだこの域には程遠いです。


先週末、透明度が良さそうだったので、月が出るまでの時間だけでもと思い急遽コスモス天文台に向かい、ドームの望遠鏡を活用することができないかと、少し試してきました。時間が限られていたので、ASI294MC Pro(ただし、冷却はせず)をそのまま取り付けてM57をテスト撮影してみました。


ドームの機材

さてドームの中の機材ですが、実はこれまであまりきちんと確認したことがなくて、聞いているところでは口径250mm、焦点距離3000mmのf12鏡筒ということはわかっています。 カセグレン式だと思うのですが、メーカーはおそらくタカハシ。タカハシでこの条件に当たるのはミューロン250だけです。でも旧式だからでしょうか、結構形が結構違うのでもしかしたら他のメーカーかもしれません。赤道儀はたぶんNJPかと。そこにLX200互換モードで駆動するモーターが後付けで付いているようです。

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カメラを取り付けて星を見てみた

ドームの鏡筒はいつもは眼視でしか使っていませんが、カメラで見たときにどれくらいの撮像になるのか興味があります。とりあえずテストで画面に映し出して、様子を見てみました。
  • まず、光軸がおそらくきちんとあっていません。内外像もかなり差がありました。
  • 鏡筒に触ると、星像がある一定時間一方向に伸びます。どうもある振動モードだけが励起されやすいようです。
  • 長時間たつと像がずれていくので、極軸がきちんとあっていないようです。
今回は時間があまりなかったので、調整は諦めました。極軸はSharpCapのPolar Align機能ですぐに合わせられると思います。光軸はまだちょっとよくわかりません。


M57を撮影

光軸がおそらくあっていないのですが、とりあえず一番まともそうなピントで撮影してみました。露光時間は10秒で301枚、合計50分10秒です。テストなのであまり気合を入れて画像処理はしていません。なので、フラットもダークも無しです。結果は以下のようになりました。

integration_DBE_STR_cut

やはり星像がぼーっとしています。今まで撮った中で一番まともなVISACの画像と比較してみます。左が今回のコスモス天文台、右がVISAC。解像度はまだまだ雲泥の差です。

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ただ、口径が250mmで焦点距離が3000mmあるので、ポテンシャルは高いはずです。光軸を一度きちんと合わせて再度挑戦してみたいと思っています。

あと一つ気づいたことですが、今回は10秒露光なのである意味ラッキーイメージングに相当するかと思います。そのせいか、相当透明度は良かったはずなのに、そばに見えるはずのIC1296がほとんど出ていません。やはり露光時間が短いせいなのかと思います。ラッキーイメージの星像の鋭さと、淡い星雲をあぶり出すことを両立するのは、やはりHDRのような多段階露光が必要になるのかなと思います。


また来年か

ドームを使って撮影するのは初めての経験です。今回はあまり時間もなかったのでまだまだ調整不足ですが、次回機会があったら時間をかけて光軸調整までして撮影に臨みたいと思います。

でも間も無く雪のシーズンが始まります。豪雪地帯のコスモス天文台は冬の間は近づくことさえできません。今年無理なら、来年暖かくなってからの課題としたいと思います。



初の中判レンズ

先日秋葉原のキタムラに寄った際に、ちょっと面白いオールドレンズを手に入れました。PENTAXの6x7マウントのSMC TAKUMARレンズの75mm/f4.5と200mm/f4を2本まとめ買いです。値段は2本合わせても1諭吉さんちょっと。格安です。

今回の購入の狙いは単純で、中判レンズのような大きな面積で使われていたならば、現在のフルサイズカメラで使えばレンズの中心像だけを使うことになり、周辺減光なども少ないのではないかというものです。

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帰りの新幹線の中で早速物色

購入時、店頭でレンズを覗かせてもらったら、特に黄変などもなく、外観もきれい。少しゴミが見えたのですが、ブロアーを貸してもらって吹いたらほとんどなくなったので全く問題なし。即買いです。でも実は75mmの方が200mmに比べて3倍近い値段だったんです。なのでむしろ200mmはおまけです。

実はオールドカメラレンズについてはあまり詳しくないのですが、6x7は55mm × 70mmに相当し中判カメラに分類されるとのこと。現在のデジカメの主流のフルサイズの24mm x 35mmと比べても、辺で倍以上、面積だと4倍以上大きな像を写すことができるレンズだったようです。調べてみると、アサヒペンタックス6×7(1969年7月発売)シリーズ用のレンズで、今回購入したモデルは1975年には少なくとも存在していたみたいです。実際いつ作られたものかはわかりませんが、モデルとしては45年ほど前で、私がまだ鼻たれ小僧だった頃です。

さてこれらのレンズ、実際には写りはどうなのでしょうか?半世紀近くたった星の撮影で使い物になるのでしょうか?


機材と撮影条件

手持ちのEOS 6DにPENTAX 6x7レンズを取り付けるために、K&Fというメーカーの変換アダプターを購入しました。アマゾンですぐに手にはいります。このアダプター取り付ける時は多少硬いですが、無理してはめ込むほどではありません。取り付け後のガタですが、レンズが回転する方向に少しあります。回転方向なので、撮影には影響はないと思っていいでしょう。それ以外の方向は上下左右に触っても全く揺れることはありません。

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実は一時期、同じ中判のMAMIYAレンズで同様のことを試そうとしたのですが、変換アダプターが高すぎて断念したことがあります。なのである意味、PENTAXでのリベンジということになります。

今回はまず75mmの方を試してみました。

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取り付けて実感したのですが、とりあえずまあ、でかいレンズです。


さて、撮影機材です。
  • カメラ: Canon EOS 6D HIKIR改造
  • レンズ: ASAHI PENTAX Super-Muti-Coated TAKUMAR/6x7 75mm f4.5
  • 撮影条件: ISO1600、露光時間90秒 x 99枚、総露光時間2時間28分30秒
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • 撮影場所: 富山市自宅
  • 撮影日時: 2019年11月9日午前2時43 - 5時14分
  • 撮影枚数: 99枚
今回は庭撮りですが、魔女の横顔を出したかったので、多分青系をカットしてしまうQBPなどの光害防止フィルターは使っていません。


四隅の星像

まずは試しに一枚、JPG撮って出しです。

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次に、四隅を見てみます。。

IMG_4305

  • 拡大して見てみると、中心像はほぼ丸。やはり4隅が僅かに歪みますが、私的には十分許容範囲です。いや、むしろ購入した値段が値段なのでこれなら文句はないでしょう。
  • 周辺減光もさすが中判、ほとんどフラットに近いです。右側が暗く見えますが、これは撮影時右の方が天頂に近く、実際の空がより暗いからです。
  • 気になっていたハロですが、この時点ではほとんど確認できません。これは期待以上でした。画像処理が進むともっと明らかになっていくと思います。
  • 気になったのが、無限遠が出ているかです。焦点リングを無限の方向に回すと、星像は小さくなっていきます。かなり小さくなったのですが、最小を超えて大きくなるところまでは確認することができませんでした。
  • また、絞りは横にマニュアルかオートを選べるスイッチがあるのですが、マニュアルの時のみ絞りを調整できます。問題は手を離すと勝手にオートになってしまうので実質絞りは使えず、いつもf4.5のままです。この仕組みはよくわからなかったです。何かテープとかで固定するしかないのでしょうか?


オリオン座周辺の撮影

遡ること、この撮影の2日前の11月6日、本当に久しぶりに夜に晴れたので、同画角での撮影を敢行しました。月の沈む(明けて7日の)0時半頃から薄明まで、約5時間。平日なのでセットアップして撮影開始したらあとは寝ていましたが、朝起きて片付けがてら画像を見てみると、撮影開始ほぼ直後から雲が出始め、全枚数の8-9割方、どこかに雲がかかっていました。画像処理までしたのですがさすがに無理があったので、再度11月8日の金曜(実際には明けて土曜)の夜中からリベンジ撮影です。

この日は月が沈むのが3時近くと遅いのですが、空は快晴。次の日は休みなので、本当は暗いところまで遠征に行っても良かったのですが、最近近所でクマに襲われた事件を連日聞いているので、妻から一人遠征のストップが出て結局自宅での撮影になりました。まあ、まだ初機材のテスト撮影なので自宅で十分でしょう。星は瞬いていますが、昼間も立山がよく見えていたので、透明度は良いようです。

午前2時すぎ、機材を準備し始めますが、前々日と全く同じセットアップなので楽なもんです。SharpCapで極軸もきちんと取っても、2時40分頃には撮影開始となりました。撮影開始後はもう眠いので、そのまま就寝です。


画像処理と結果

朝起きて機材を片付け、画像を無事に回収してチェック。全ての枚数で綺麗に撮れていることがわかりました。そのままフラット、バイアス、ダークを新たに撮影し、画像処理に入ります。フラットはiPadのColor Screenというソフトで白色を出し、iso100, 100msで50枚撮影、バイアスは1/4000秒でiso1600で100枚撮影、ダークは同じiso1600、90秒露光で50枚撮影です。

基本的に処理ソフトはPixInsight。Batch Processingでほぼ自動処理。その後、DBEで残ったカブリ除去とPCCで色合わせ。適当にストレッチしてからPhotoshop CCに引き渡します。

今回は途中、最近はやりの星を除去できるStarnet++を使いました。ここからコマンドライン版のMac版をダウンロードして展開。あとは処理したい画像を同じフォルダにコピーしてきて、

./rgb_starnet++ ファイル名.tiff

とやるだけです。処理時間はきっちりと計っていませんでしたが、15分程度だったでしょうか?出来上がった画像が以下です。かなり綺麗に星雲のみ分離できます。

light_BINNING_1_integration_DBE_DBE2_PCC_stretch_s

そこから元画像との差分で星だけ取り出したものがこちら。

light_BINNING_1_integration_DBE_DBE2_PCC_stretch_star

M42の一部のみ残っていますが、まあ優秀なものです。

その後、Photoshop CCで処理しましたが、背景と恒星が分かれているので処理が随分楽です。懸案だったハロはほとんど出てきませんでした。結果が以下のようになります。

light_BINNING_1_integration_DBE_DBE3_PCC_stretch_s5_brighter_cut

目的だったIC2188魔女の横顔星雲も、Sh2-264エンゼルフィッシュ星雲も綺麗に出ています。バーナードループ は電視観望とかでうっすら見たことがありますが、今回初めて写すことができました。実は魔女の横顔もエンゼルフィッシュも初めて撮影しました。さすがにこの領域は盛り沢山ですね。

あ、初と言いましたが、実はむかーし三脚固定撮影でバーナードループ を試したことがありますが、あれは5秒 x 100枚で完全に遊びです。今回は、やっとまともな撮影となりました。


中判レンズを使ってみて

うーん、PENTAXの中判レンズでのテスト撮影のつもりが自分では結構というか、かなり満足のいく仕上がりになってしまいました。狙い通り周辺減光が少ないことと、ハロがほとんどなかったことが幸いでした。

200mmも早めに使ってみたいです。手持ちのFS-60CBにレデューサをつけると255mmです。それより少し画角が広いくらいです。

実はもう一本、ちょっと前にNIKKORの135mmのオールドレンズもジャンクで購入したのですが、こちらもまだ未テストです。

あと、Starnet++がなかなかいい仕事をしてくれるので、あぶり出しがしやすいです。自宅のニワトリで光害フィルターもなしでこれだけ出せるのなら十分な満足です。

今年は晴れている日が少ないので久しぶりの撮影でしたが、十分に楽しむことができました。


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