日本の電視観望の現状を振り返ってみようと思います。できるなら、これから電視観望を始める人の機材とかの選定に役立ってくれればと思います。
アマチュアレベルで、CCDカメラを使って星雲星団などを撮るという意味では、おそらく最古に近いものは昔の天文ガイドに出ている1980年年代前半くらいなのでしょうか。
上の記事では宇宙科学研究所と書いてあるくらいなので、アマチュアというよりは研究室レベルの話なのかもしれません。その後、CCDカメラが発達してアマチュア天文家に撮影の門戸が開かれていったのかと思いますが、それでもカメラの値段は相当高価で、一部のハイアマチュアの方に限られていたのかと思います。
むしろ電視観望に直結するのは、それよりも以前に行われていたイメージインテンシファイアを使ったリアルタイム表示でしょうか。昔の1981年1月号の天文ガイドにも記事があります。当然私はこの時代のことは知らないのですが、いつの時代にも同じようなことを考える人は必ずいるのかと実感させられます。そのころのイメージインテンシファイアは、当然星雲に色なんかつかないですし、値段からいっても一般の人にとってはとても手が出るものではなかったのかもしれませんが、今ではそれよりはるかに高感度なセンサーが、もう全然手の出る値段で出ています。以前のこの記事
でもないですが、天文に関して言えば今は夢にまで見た未来の世界なんだと思います。
一般のアマチュアでも星雲を高感度のCCDや一眼レフカメラを使って電視観望っぽいことをやっていた方は、結構前からいたようです。動画という意味で一番古そうなのは、Youtubeで見つけた限り7年前。でもこれらは今の電視観望のような、リアルタイムでその場で見るというよりは、「天体を動画で撮影をしてみる」という意味合いが強かったように思えます。
Sonyのα7Sが出た2014年あたりから、さらに電視観望に近いことをやっていた方が増えているのは特筆すべきです。やはり、高感度カメラの一般化とともに発展していくような技術なのかと思います。それでもまだ、モニターに映してみんなで見るというようなスタイルにはなっていなくて、あくまで動画で撮影してみるという類のものだったと思われます。
「電視観望」という言葉は、SWATマニアで有名な愛知のHUQさんの造語です。HUQさんの方法は、α7Sを使うところはそれ以前と同じなのですが、それをHDMIで外部モニターにつないで、赤い星雲をみんなで共有して見ていたところが新しいのかと思います。当然α7Sも天体改造済みで、さらに色がおかしくならないようにUVカットフィルターも入れていたはずです。
HUQさん曰く、もともと「電視」としたかったらしいのですが、これだと中国語でテレビの意味になってしまうので「観望」をつけて電視観望としたとのことです。最近は電”子”観望と言われることもあるようですが、「でんしかんぼう」という造語を端に「電子観望」もできたものなので、大元は「電視観望」なのでしょう。言葉は時代とともに変わっていくので、どちらでも良いのかと思いますが、私は個人的にこの手法を直接見せてくれたHUQさんに敬意をはらい「電視観望」の方を使っています。
おそらく日本では私が最初に、ZWO社のCMOSカメラを使ってその場で見ることを目的に電視観望を始めたのかと思います。当時調べた限りでは、少なくともCMOSカメラを電視観望相当のことに使っている例は見つかりませんでした。
当時私はまだ星を始めたばかりで、α7Sなんていう高級機はとても買えませんでした。上のHUQさんの方法をなんとか使えないかと、苦し紛れに、惑星用に使っていた同じSonyセンサーのASI224MCを流用したわけです。たまたまセンサーの感度がSony製で物凄く良かったこと、センサー面積などの制限から、小口径短焦点化など、逆に色々と発展させることができたのではと、後になって理解することができました。
ちなみに海外で電視観望に相当するのは別の言葉があって、EAA(Electronically-Assisted Astronomy)というのが正式名称のようです。直訳すると「電子補助天文」くらいでしょうか。調べてみるとEAAという言葉ができたのはそう古いことではなく、Cloudy Nightsでは2015年くらいから使われ始めたようです。私が始めたのが2016年なので、その一年くらい前ということになりますが、EAAの概念はもっと前からあったと思われます。2016年にはEAAをより一般化しようとするRevolution Imagerという製品がすでにできていました。
私はその当時、海外の状況を全然(それどころか、日本の天文事情もまだほとんど全く)知らなかったので、今の日本の電視観望の方法はある意味独立に発展してきたと言っていいと思います。というより、私は今だに海外のEAAの状況をあまり把握していないので、これまでの日本での電視観望の技術がどれくらい通用するか、一度海外の方で披露などしてみて、技術をすり合わせてみたいと思っています。少なくとも今の光害地でも余裕で見ることのできる技術は、海外と比べてもそんなに引けを取るものでもないと思っているのですが、どうでしょうか?
さてこんな状況なのですが、日本では2016年夏の当初、電視観望なんて言葉は全く浸透していませんでした。その後、星まつりで披露して注目を浴びたり、
2017年にCAMPで披露してハイアマチュアの方の目にも入ったりしたのですが、
実際に電視観望という言葉がかなり一般的になってきたのは、2018年に入ってからくらいかと思います。日本で最大規模の販売店のKYOEIさんが力を入れてくれたり、天リフさんで積極的に取り上げてくれたのも影響が大きいと思います。
そんなこんなで、今では少なくとも天文マニアの間では電視観望という言葉はほぼ一般用語となり、会話の中でも普通に使われていますし、実際にかなりの人数の方が電視観望を試してくれていて、各地の観望会で成果を挙げているようです。
独断と偏見でですが、現在の電視観望を分類してみたいと思います。大きく分けて4通りくらいあるかと思います。
さて、毎度長くて申し訳ないのですが、ここまでが前置きです。今回の記事の目的は、こんな背景を元にこれから電視観望を始める人がどんな方法があるのか、機材はどんなものを揃えたらいいのかというのを理解してもらうことにあります。
というわけで、まずは1から4の方法をもう少し詳しく見ていきましょう。
この方法が電視観望のオリジナルの方法と言ってしまっていいと思います。なぜなら電視観望という言葉を作ったHUQ氏本人が提唱している方法だからです。
初期の頃は、50mm程度でF1.2というそこそこ広角のかなり明るいカメラレンズを使い、天の川なども含めてモニターに映す方法を取っていましたが、のちに焦点距離を伸ばす方向にも発展していきました。
カメラ単体は高感度なのですが、ISOを上げることのみで、外部ソフトを使うなどは基本できないので、どうしても鏡筒の明るさが欲しくなります。行き着く先はRASAなどの大口径で超低F値のものとなり、2017年の福島では11インチRASAで電視?と一部世間を騒がせました。
流石に11インチRASAは、それを乗せる赤道儀まで考えるとちょっと敷居が高くなりますが、ある意味究極の方法なのかもしれません。
ちなみに、α7S動画の場合の露光時間が秒最長でも0.25秒なので、その制限もあり明るさに限界があるのですが、必ず0.25秒刻みより速く見えるので、逆にリアルタイム性ではこれが一番面白いです。
おそらく現在では、電視観望と言えばこの方法が主流なのかと思います。特徴はSony製の超高感度CMOSセンサーを使ったカメラを使い、比較的安価で小口径な鏡筒でもそこそこ見えるため、最初に始めるのには敷居が低く、とっかかりやすいことだ思います。
PCが必要なのは、余分な機材が必要ということから欠点の一つもと言えます。逆に、PCの自由度の高さから任意のソフトが使え、特にSharpCapでカメラと鏡筒の能力の限界まで引き出せるのは利点ともいえるでしょう。値段も鏡筒を選ばないなど、いろいろ安価にする工夫がとれそうです。
また、広角のカメラレンズを使って、星座電視観望とか天の川電視観望なんかも楽しむことができます。
手持ちの望遠鏡などがあり、新たに簡単に試してみたいときはこれが一番でしょう。セットを買うだけで、必要な機材が全て入っています。PCもいらないのでとにかくお手軽です。
もともとアメリカのロサンゼルス近郊のOrange County TelescopeのMikeが機材を組み合わせて販売したのが始まりです。たまたま出張でこのショップに遊びに行った際、店長のMikeから日本に紹介してほしいと頼まれたものです。現在ではKYOEIから販売されています。
その代わり、自由度は少ないのでPC+SharpCapには機能的にかないません。ただし、付属のカメラは素子サイズがASI294MCよりも大きいので、感度は相当いいです。実はこれをビデオ入力ができるUSBキャプチャーアダプターなどを通してPCに入れて、SharpCapでLiveStackなどするという方法をあっかさんという方が試しました。これは素子サイズの大きさから侮れないくらいよく見えるようです。
2018年終わりころからでしょうか、当時から電視観望に力を入れていたKYOEIのMさんが、ZWO社のASIAIRを使った電視観望を提唱し始めました。当初はRED Cat51などの小口径の鏡筒を使っていましたが、最近は8インチのRASAと組み合わせて使っているようです。理由の一つが、ASIAIRの画像処理が、レベル補正の上と下しかいじれないことで、ガンマ補正に相当するものがなく、やはりある程度明るい鏡筒を必要とするからだと思われます。
ASIAIRの画像処理が、やはりSharpCapに比べると機能的に劣るのは否めないのですが、もしこのまま開発が進んでSharpCapに匹敵する画像処理機能やLiveStackを持ったら、多分最強になります。
電視観望ではないですが、Night Visionにも少し触れたいと思います。
といっても私は全然詳しいわけではなく、今年の原村で一度覗かせてもらったくらいです。色とかはつかないのですが、完全リアルタイムで淡い星雲を見ることができます。ドブソニアンとかの組み合わせで、さらに感度が出るので、DSO観測にかなり向いていると思われます。
ただし、値段がものすごく高いのと、明るいところで使わないなど、扱いが相当大変なようです。ナイトビジョン自身はものとしては昔からあるものですが、数が出るものでもないので値段がこなれるのがあまり期待できないのが難しいところでしょうか。観望会でお客さんにより気軽にみてもらうという観点からは、電視観望と相通づるものがあるのかと思います。
最近、電視観望を始めたいが、どんな機材から始めたらいいかわからないという話をちょくちょく聞きます。上で説明したように、いろんな方法があるのですが、
今の電視観望の技術だけでも、自分で見て楽しんだり、観望会で実際にお客さんの反応を見たりすると、かなりのインパクトがあるのかと思います。
それでも電視観望はまだ非常に歴史が浅く、今現在もどんどん技術が進んでいます。例えば最近でもQBPを入れると格段に見やすくなるなど、まだまだ工夫の余地がありそうです。センサーの進化にも大きく依存するはずなので、今後も飛躍的に電視観望が発達して観望の中の重要な位置を占めてくるかもしれません。
もしちょっと面白そうだなと思った方がいましたら、是非とも始めてみてください。わからないところがあれば、このブログのコメント欄にでも書いてもらえれば、できる限り答えたいと思います。
それでも機材を持っていないゼロからの状態だと、それなりの初期投資が必要となります。どこまで安く実用的に電視観望ができるのか、できたら今度挑戦してみようと思います。
あ、以前電視観望のトラブル解決集を作ったの思い出しました。よかったらどうぞ。(そろそろ一回更新しないと...。)
「電視観望」に至るまでの歴史
アマチュアレベルで、CCDカメラを使って星雲星団などを撮るという意味では、おそらく最古に近いものは昔の天文ガイドに出ている1980年年代前半くらいなのでしょうか。
むしろ電視観望に直結するのは、それよりも以前に行われていたイメージインテンシファイアを使ったリアルタイム表示でしょうか。昔の1981年1月号の天文ガイドにも記事があります。当然私はこの時代のことは知らないのですが、いつの時代にも同じようなことを考える人は必ずいるのかと実感させられます。そのころのイメージインテンシファイアは、当然星雲に色なんかつかないですし、値段からいっても一般の人にとってはとても手が出るものではなかったのかもしれませんが、今ではそれよりはるかに高感度なセンサーが、もう全然手の出る値段で出ています。以前のこの記事
でもないですが、天文に関して言えば今は夢にまで見た未来の世界なんだと思います。
一般のアマチュアでも星雲を高感度のCCDや一眼レフカメラを使って電視観望っぽいことをやっていた方は、結構前からいたようです。動画という意味で一番古そうなのは、Youtubeで見つけた限り7年前。でもこれらは今の電視観望のような、リアルタイムでその場で見るというよりは、「天体を動画で撮影をしてみる」という意味合いが強かったように思えます。
Sonyのα7Sが出た2014年あたりから、さらに電視観望に近いことをやっていた方が増えているのは特筆すべきです。やはり、高感度カメラの一般化とともに発展していくような技術なのかと思います。それでもまだ、モニターに映してみんなで見るというようなスタイルにはなっていなくて、あくまで動画で撮影してみるという類のものだったと思われます。
「電視観望」の始まり
「電視観望」という言葉は、SWATマニアで有名な愛知のHUQさんの造語です。HUQさんの方法は、α7Sを使うところはそれ以前と同じなのですが、それをHDMIで外部モニターにつないで、赤い星雲をみんなで共有して見ていたところが新しいのかと思います。当然α7Sも天体改造済みで、さらに色がおかしくならないようにUVカットフィルターも入れていたはずです。
HUQさん曰く、もともと「電視」としたかったらしいのですが、これだと中国語でテレビの意味になってしまうので「観望」をつけて電視観望としたとのことです。最近は電”子”観望と言われることもあるようですが、「でんしかんぼう」という造語を端に「電子観望」もできたものなので、大元は「電視観望」なのでしょう。言葉は時代とともに変わっていくので、どちらでも良いのかと思いますが、私は個人的にこの手法を直接見せてくれたHUQさんに敬意をはらい「電視観望」の方を使っています。
CMOSカメラを使っての電視観望のはじまり
おそらく日本では私が最初に、ZWO社のCMOSカメラを使ってその場で見ることを目的に電視観望を始めたのかと思います。当時調べた限りでは、少なくともCMOSカメラを電視観望相当のことに使っている例は見つかりませんでした。
当時私はまだ星を始めたばかりで、α7Sなんていう高級機はとても買えませんでした。上のHUQさんの方法をなんとか使えないかと、苦し紛れに、惑星用に使っていた同じSonyセンサーのASI224MCを流用したわけです。たまたまセンサーの感度がSony製で物凄く良かったこと、センサー面積などの制限から、小口径短焦点化など、逆に色々と発展させることができたのではと、後になって理解することができました。
海外の状況
ちなみに海外で電視観望に相当するのは別の言葉があって、EAA(Electronically-Assisted Astronomy)というのが正式名称のようです。直訳すると「電子補助天文」くらいでしょうか。調べてみるとEAAという言葉ができたのはそう古いことではなく、Cloudy Nightsでは2015年くらいから使われ始めたようです。私が始めたのが2016年なので、その一年くらい前ということになりますが、EAAの概念はもっと前からあったと思われます。2016年にはEAAをより一般化しようとするRevolution Imagerという製品がすでにできていました。
私はその当時、海外の状況を全然(それどころか、日本の天文事情もまだほとんど全く)知らなかったので、今の日本の電視観望の方法はある意味独立に発展してきたと言っていいと思います。というより、私は今だに海外のEAAの状況をあまり把握していないので、これまでの日本での電視観望の技術がどれくらい通用するか、一度海外の方で披露などしてみて、技術をすり合わせてみたいと思っています。少なくとも今の光害地でも余裕で見ることのできる技術は、海外と比べてもそんなに引けを取るものでもないと思っているのですが、どうでしょうか?
電視観望の広がり
さてこんな状況なのですが、日本では2016年夏の当初、電視観望なんて言葉は全く浸透していませんでした。その後、星まつりで披露して注目を浴びたり、
2017年にCAMPで披露してハイアマチュアの方の目にも入ったりしたのですが、
実際に電視観望という言葉がかなり一般的になってきたのは、2018年に入ってからくらいかと思います。日本で最大規模の販売店のKYOEIさんが力を入れてくれたり、天リフさんで積極的に取り上げてくれたのも影響が大きいと思います。
そんなこんなで、今では少なくとも天文マニアの間では電視観望という言葉はほぼ一般用語となり、会話の中でも普通に使われていますし、実際にかなりの人数の方が電視観望を試してくれていて、各地の観望会で成果を挙げているようです。
電視観望の分類
独断と偏見でですが、現在の電視観望を分類してみたいと思います。大きく分けて4通りくらいあるかと思います。
- まずはHUQさんが用いたオリジナルのα7Sを使う方法。これは後に明るさに走り、RASAを用いるような形に発展していきます。
- 2つ目は私が始めたCMOSカメラを比較的小口径の鏡筒で使う方法。これはひとえにSharpCapというソフトがあって発展した方法だと思います。今の日本で電視観望というと、これが主流なのかと思います。
- もう一つはRevolution Imagerを使った、PCを使わない簡単な方法。日本ではKYOEIさんで販売が開始されたのがきっかけです。
- さらに最近はASIAIRを使った方法なども出てきています。
さて、毎度長くて申し訳ないのですが、ここまでが前置きです。今回の記事の目的は、こんな背景を元にこれから電視観望を始める人がどんな方法があるのか、機材はどんなものを揃えたらいいのかというのを理解してもらうことにあります。
というわけで、まずは1から4の方法をもう少し詳しく見ていきましょう。
1. α7Sを使った方法
この方法が電視観望のオリジナルの方法と言ってしまっていいと思います。なぜなら電視観望という言葉を作ったHUQ氏本人が提唱している方法だからです。
- 発案者: HUQ氏
- カメラ: Sony α7S(天体改造済み)
- 鏡筒など: F値の低い明るいカメラレンズ、のちにRASAに発展。
- その他: HDMIケーブルで外部モニターにつなげると、みんなで共有して見ることができます。
- 金額: α7Sが中古で10万からα7SIIが25万円くらい+天体改造3万円くらい、レンズはピンキリ(1万程度から、明るいレンズだと10万円以上の場合も)。HDMIモニターが1万円位。RASAだと8インチで25万円、11インチで45万円。11インチRASAを駆動するなら中~大型赤道儀でそれだけでも数十万円コースか。
初期の頃は、50mm程度でF1.2というそこそこ広角のかなり明るいカメラレンズを使い、天の川なども含めてモニターに映す方法を取っていましたが、のちに焦点距離を伸ばす方向にも発展していきました。
カメラ単体は高感度なのですが、ISOを上げることのみで、外部ソフトを使うなどは基本できないので、どうしても鏡筒の明るさが欲しくなります。行き着く先はRASAなどの大口径で超低F値のものとなり、2017年の福島では11インチRASAで電視?と一部世間を騒がせました。
流石に11インチRASAは、それを乗せる赤道儀まで考えるとちょっと敷居が高くなりますが、ある意味究極の方法なのかもしれません。
ちなみに、α7S動画の場合の露光時間が秒最長でも0.25秒なので、その制限もあり明るさに限界があるのですが、必ず0.25秒刻みより速く見えるので、逆にリアルタイム性ではこれが一番面白いです。
2. 高感度CMOSカメラを使った方法
おそらく現在では、電視観望と言えばこの方法が主流なのかと思います。特徴はSony製の超高感度CMOSセンサーを使ったカメラを使い、比較的安価で小口径な鏡筒でもそこそこ見えるため、最初に始めるのには敷居が低く、とっかかりやすいことだ思います。
- 発案者: Sam
- カメラ: CMOSカメラ、ASI224MCやASI385MC、ASI294MCなど。
- 鏡筒など: 短焦点で安価なものからOK。自動導入があるといいのでAZ-GTiがおすすめ。
- コントローラー: SharpCap
- その他: 画面を写すためにPCが必要。
- 金額: カメラがセンサーサイズに応じて3万から10万円、鏡筒が安価な1万円くらいのものから。AZ-GTiなどの自動導入ができるもの3.5万円。計算機が5万円くらいから。
PCが必要なのは、余分な機材が必要ということから欠点の一つもと言えます。逆に、PCの自由度の高さから任意のソフトが使え、特にSharpCapでカメラと鏡筒の能力の限界まで引き出せるのは利点ともいえるでしょう。値段も鏡筒を選ばないなど、いろいろ安価にする工夫がとれそうです。
また、広角のカメラレンズを使って、星座電視観望とか天の川電視観望なんかも楽しむことができます。
3. Revolution Imagerを使った方法
手持ちの望遠鏡などがあり、新たに簡単に試してみたいときはこれが一番でしょう。セットを買うだけで、必要な機材が全て入っています。PCもいらないのでとにかくお手軽です。
もともとアメリカのロサンゼルス近郊のOrange County TelescopeのMikeが機材を組み合わせて販売したのが始まりです。たまたま出張でこのショップに遊びに行った際、店長のMikeから日本に紹介してほしいと頼まれたものです。現在ではKYOEIから販売されています。
- 発案者: Mike (Orange County Telescope)、日本への紹介者: Sam
- カメラ: Sony製アナログカメラ(PAL出力)
- 鏡筒など: とりあえず手持ちのものでOK。焦点距離を縮めるために0.5倍のレデューサが付属。
- その他: モニターも付属。
- 金額: Revolution Imagerが4万円程度。あとは手持ちの機材で。
その代わり、自由度は少ないのでPC+SharpCapには機能的にかないません。ただし、付属のカメラは素子サイズがASI294MCよりも大きいので、感度は相当いいです。実はこれをビデオ入力ができるUSBキャプチャーアダプターなどを通してPCに入れて、SharpCapでLiveStackなどするという方法をあっかさんという方が試しました。これは素子サイズの大きさから侮れないくらいよく見えるようです。
4. ASIAIRを使った方法
2018年終わりころからでしょうか、当時から電視観望に力を入れていたKYOEIのMさんが、ZWO社のASIAIRを使った電視観望を提唱し始めました。当初はRED Cat51などの小口径の鏡筒を使っていましたが、最近は8インチのRASAと組み合わせて使っているようです。理由の一つが、ASIAIRの画像処理が、レベル補正の上と下しかいじれないことで、ガンマ補正に相当するものがなく、やはりある程度明るい鏡筒を必要とするからだと思われます。
- 発案者: KYOEIのMさん
- カメラ: ASI294MCなど
- 鏡筒など: 明るいものがいいが、とりあえず小口径でも可能。
- コントローラー: ASIAIR
- 金額: ASIAIRが2.5万円、手持ちのスマホやタブレットがモニタになります。あとはカメラ、鏡筒、赤道儀など。小口径の場合は安価ですが、明るい方がいいのでRASAとかにすると、金額はそこそこ高くなります。
ASIAIRの画像処理が、やはりSharpCapに比べると機能的に劣るのは否めないのですが、もしこのまま開発が進んでSharpCapに匹敵する画像処理機能やLiveStackを持ったら、多分最強になります。
参考: Night Vision
電視観望ではないですが、Night Visionにも少し触れたいと思います。
といっても私は全然詳しいわけではなく、今年の原村で一度覗かせてもらったくらいです。色とかはつかないのですが、完全リアルタイムで淡い星雲を見ることができます。ドブソニアンとかの組み合わせで、さらに感度が出るので、DSO観測にかなり向いていると思われます。
ただし、値段がものすごく高いのと、明るいところで使わないなど、扱いが相当大変なようです。ナイトビジョン自身はものとしては昔からあるものですが、数が出るものでもないので値段がこなれるのがあまり期待できないのが難しいところでしょうか。観望会でお客さんにより気軽にみてもらうという観点からは、電視観望と相通づるものがあるのかと思います。
どんな機材で始める?
最近、電視観望を始めたいが、どんな機材から始めたらいいかわからないという話をちょくちょく聞きます。上で説明したように、いろんな方法があるのですが、
- 手持ちの機材があるなら、CMOSカメラかRevolution Imagerを買えば比較的簡単に電視観望セットを構築することができると思います。
- 手持ちの機材がないなら、最初は小口径の短焦点の安価な鏡筒でいいかと思います。
- その時のカメラはASI224MCかASI385MCでしょうか。カメラ選びは以下のページを参考にしてください。
- ASI294MCはセンサー面積が大きいのでやはりいいです。予算が許すならこれでしょう。何が違うかというと、広い範囲が一度に見えるので導入が圧倒的に楽です。
- 自動導入はあった方がいいので、最初はAZ-GTiが安価で現状ではほぼ一択でしょう。もちろん普通の自動導入ができる赤道儀でも全然構いません。
- あとは適当に余っているPCなどを流用して一度試すことだと思います。
- ASIAIRは手軽さ、精度など兼ね備えています。画像処理がもう少し良くなればこれが決定打なるかもです。
- 突き詰めていくと、究極的にはやはりRASAだと思います。RASAの明るさを生かすことで、ごまかしなしの本当にリアルタイムで星雲に色がつきます。α7Sとの組み合わせはある意味最強です。でも敷居もものすごく高いので、相当なマニア向けです。
今後の発展
今の電視観望の技術だけでも、自分で見て楽しんだり、観望会で実際にお客さんの反応を見たりすると、かなりのインパクトがあるのかと思います。
それでも電視観望はまだ非常に歴史が浅く、今現在もどんどん技術が進んでいます。例えば最近でもQBPを入れると格段に見やすくなるなど、まだまだ工夫の余地がありそうです。センサーの進化にも大きく依存するはずなので、今後も飛躍的に電視観望が発達して観望の中の重要な位置を占めてくるかもしれません。
まとめ
もしちょっと面白そうだなと思った方がいましたら、是非とも始めてみてください。わからないところがあれば、このブログのコメント欄にでも書いてもらえれば、できる限り答えたいと思います。
それでも機材を持っていないゼロからの状態だと、それなりの初期投資が必要となります。どこまで安く実用的に電視観望ができるのか、できたら今度挑戦してみようと思います。
あ、以前電視観望のトラブル解決集を作ったの思い出しました。よかったらどうぞ。(そろそろ一回更新しないと...。)