ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2018年05月

遅ればせながら今季初の惑星です。今年もとりあえずは木星から。5月30日のものです。

先週の調整失敗があったので、いつかの夜の撮影に備えて、前日のまだ明るいうちに遠くのBSのパラボラアンテナを見ながら副鏡の調整をしておいたので、ピントはそこそこあっているはずです。前日の晩は曇りでダメでしたが、この日は昼間の雨でが止んだ後、ずっと曇っていたのですが、一旦ベットで横になってふと外を見たらきれいに晴れていたので急遽撮影開始です。

撮影は去年の方法をほぼ踏襲しています。機材はやっと使い始めることができたMEADEのLX200-25CGEM IIに載せて、カメラは自分にとって初のモノクロのASI290MMと去年まで使っていたASI224MCです。焦点距離が1600mmと少し短いので、3倍バローをいれて4800mm換算になっています。まだマイクロフォーカサーは取り付けれていないので、ミラーシフトありでのピント合わせになります。木星の高度が高かったのでADCはつけませんでしたが、スタックした後の画像を見てつけておけばよかったと反省しました。撮影はLとRGBをできるだけ間髪置かずに取ります。ファイル形式は16bitの.serです。

撮影した動画はいつも通りAutoStakkert!3でスタックして、Registaxでwavelet処理です。確認したかったことの一つ、モノクロカメラの性能ですが、RGBとLではやはり細かさに明らかな違いが出るようで、新兵器投入の甲斐はあったのですが、まだいまいち釈然としないところもあります。理屈の上ではASI290MMの方が分解能はいいのは当たり前なのですが、それでも以前ちょっと考察したように、25cm程度の口径ならASI224MCの解像度でも十分足りているはずです。それでも明らかにモノクロの方が分解能が良くなるのはやはりDeBeyer時の処理によるものなのでしょうか?もう少し検証が必要なようです。

さて、実は初めてのカラー合成になるのですが、これは思ったより簡単でした。
  1. まずASI224MCで撮ったRGB画像をPhotoShopで開いてLabモードに変換します。
  2. 同時にASI290MMで撮影した画像を開き、拡大、縮小、回転などでRGB画像と位置を合わせます。
  3. RGBで開いた画像を、チャンネルタブの右上のメニューのようなアイコンから「チャンネル分割」を選んで、出てきたL画像をASI290MMの画像で置き換えます。
  4. その後、3枚の画像が開いた状態で、どれかの画像のチャンネルタブのメニューから「チャンネル結合」を選んでLab合成するだけです。
ここで一つ注意することは、L画像にレイヤーが存在するとチェンネル結合を選ぶことができません。他の画像で無理やり選んでもLab合成できないです。レイヤーが一枚でもとにかくレイヤーだとダメなようで、きちんと「背景」となっていないと結合できないみたいです。さて、そうやって作った画像がこれになります。

jupitar_L
富山県富山市下大久保 2018/5/30
LX200-25 + X-Cel LX 3x barlow lense  + CGEM
RGB  2018/5/30 22:05: ASI224MC, Shutter 5ms, 127fps, gain 390, 9190/15318 frames
L  2018/5/30 22:12 : ASI290MM, Shutter 10ms, 147fps, gain 350, 10653, /17756 frames



去年なんとか撮った大赤斑ですが、今年はしょっぱなから大赤斑を撮ることができました。それでも多少は進歩しているでしょうか。でもまだまだ25cmの口径の分解能を引き出しているとは全然言い難いです。まあ、シンチレーションが良くなかったようなのでまだ今回は練習のようなものです。WinJUPOSも今回は見送りました。


惑星撮影も3年目にして機材はだいぶん揃ってきました。これからの課題は
  • マイクロフォーカサーを取り付ける。
  • 鏡筒カバーを取り付ける。
  • ADCを使う。
  • WinJUPOSで合成。
くらいでしょうか。いずれにせよシンチレーションのいい日を狙うことは言うまでもありません。今年は火星もあります。土星も楽しみです。

月が出てれば惑星、月がなければ星雲星団、昼間は太陽。うーん、忙しいですね。でもまだ彗星には手を出していません。




5月26日の土曜日、やっと休日お時間の取れる昼間に晴れてくれました。星は夜なので平日で仕事があっても何とかなるのですが、太陽は昼間なので休暇でないとじっくり撮影できないのです。この日は午前中は曇っていましたが、午後からはそこそこの晴れ。CMOSカメラの比較に夕方まで太陽にじっくり時間を割くことができました。

太陽撮影のこれまでのことをまとめると、2月に太陽用にPSTをジャンクで購入。CMOSカメラでピントが合うように改造。その後、40㎜のPSTの口径を80㎜100㎜と増やす。当初はASI178MCで撮影していたが、ASI294MCでかなりの解像度で撮影できることを確認。今月初のモノクロのASI290MMを購入。どのカメラが一番きれいに撮れるのか確かめてみたいというのが現在です。

ASI178MCASI294MCでは、センサーの長辺が1/1.8inchと3/4inchで画素数が3096と4144ドットなので、一つの素子サイズはASI178MCのほうが小さく分解能が高いと言えます。一方感度はSNR1sを見てもASI294のほうが高いです。ただ、分解のそのものはASI294MCでもドーズ限界とコンパラなので足りていないわけではありません。そうすると感度だけでこれほど仕上がりが変わるのか?というのがこれまでの疑問点です。

新兵器のASI290MMは感度はASI294MCとほとんど同じ、モノクロなので分解能はさらにいいはずです。なので単純に考えたらASI294MCを超える画像が得られるのではと淡い期待を抱いているわけです。

前置きはこれくらいにして、まずはASI290MMを太陽撮影に投入した時の率直な感想を書いておきます。モノクロは圧倒的にエタロンの調整がしやすいです。カラーだとものかなり見にくかったノートPC画面でのHαの模様の確認が圧倒的に改善されました。これはカラーカメラでソフト上でモノクロ表示した場合でも全く太刀打ちできないくらい、モノクロカメラのPC画面での表示は改善されます。黒点やモジャモジャもよく見えるので、これでピントを合わせることも全然可能になります。これはもうわざわざし恵下まで見るまでもなく圧倒的にASI290MMの勝ちではと思うくらいでした。


測定1

これを利用してASI290MMでエタロンの回転角を少しづつ変えて撮影し、どのような状態が一番いい仕上がりになるかを試してみました。左上に黒点が見えたので、黒点を画面中心にしています。

撮影方法はこれまでと同じ、P.S.T.に口径10cm、F10のアクロマート鏡筒を取り付け、ASI290MMで撮影しています。露光時間は5ms、500フレーム撮影してうち400フレームをスタックしています。エタロンの角度以外はほぼ同じ条件にしていますが、エタロンの角度によって画面の明るさが変わるときはカメラのゲインを調整しサチらないようにしています。ゲインは270-280程度です。

撮影ソフトはSharpCapで、RAW16ビットでserファイルに書き出し、Autostakkert3!でスタック、ImPPGでデコンボリューションとアンシャープマスクをしています。比較しやすいように疑似カラー化はせずに、モノクロのままにしてあります。

結果です。エタロンを回転させていった順に載せていきます。トータルのエタロンの回転角は10度くらいでしょうか。微々たるものです。

2018-05-26-0708_0_lapl6_ap6277_IP
可視光撮影に近い状態といえます。黒点の周りに白いシミ
(名前はあるのでしょうか?)が見えていて、
Hαによる模様はまだほとんど見えていません。

2018-05-26-0708_7_lapl6_ap6307_IP
白いシミが小さくなってHαが目立ってきます。

2018-05-26-0709_0_lapl6_ap6297_IP
白いシミはさらに小さく、Hαが細かく出てきています。

2018-05-26-0709_3_lapl6_ap6311_IP
ここら辺がHαの分解能Maxでしょうか。白いシミはほとんど見えません。

2018-05-26-0709_6_lapl6_ap12697_IP
ピークは越えた感があります。


2018-05-26-0709_9_lapl6_ap6305_IP
Hαが薄くなってきています。

2018-05-26-0710_4_lapl6_ap6497_IP
再び可視光撮影に近くなります。

驚くべきことは、仕上がり具合がエタロンのちょっとした角度で全然違うということです。カメラの違いなんかよりも、まずはエタロンの回転角できちんと最高分解能を出せるようにすることが先決ということです。これまで太陽の下でのカラーカメラだとPC画面が見にくくて、どこら辺がいいのか全然判断できていなかったので、まったく精度も再現性もなかった(例えばこのページで奇跡の一枚とか言っていました)わけです。例えば、黒点の周りの白い大きなシミが見えているということは可視光撮影をしているのと同様に過ぎないということなどもやっと今回理解することができました。

PC画面と仕上がり具合の関係をだいたい把握できたので、ASI290MMならばこれ以降PC画面でエタロンの角度がどのくらいがいいのかその場で判断できるのかと思います。物凄く簡単にいうと
  • PCの画面で細かく模様が見えていると仕上がりの分解能も上がる。
  • ただしPCの画面の見かけの解像度は露光時間とゲインでいとも簡単に変わるので注意。
  • 模様が見えていないようでも、ゲインを落とすなどして暗くして細かい模様が見えてくるならばOK。
といったとことでしょうか。

同様の撮影を左上のもう一つの黒点周りでも行いました。順番に載せていきます。

2018-05-26-0742_2_lapl6_ap6443_IP
Hαの模様も見えていますが、まだ可視光撮影に近いです。

2018-05-26-0742_7_lapl6_ap6304_IP

2018-05-26-0743_4_lapl6_ap6604_IP

2018-05-26-0743_8_lapl6_ap6491_IP
ここら辺がMaxです。

2018-05-26-0744_1_lapl6_ap6444_IP

2018-05-26-0744_3_lapl6_ap5047_IP
PCの画面で見ていても下の方が明るくなり過ぎて
模様も何も見えなくなってしまいました。

こちらも結論は同じです。エタロンの一番いいところを探すことが、ひたすらHαの分解能をあげることにつながります。



測定2

さて、ASI290MMでエタロンの位置がある程度確定することが分かったので、次にエタロンをそこそこいい位置に調整して、その後エタロンに触らずにカメラだけ交換して撮影し、画像処理まで仕上げてみました。カメラ交換の際に毎回ピントだけは合わせ直しています。また、比較しやすいように同じ領域になるように画像をトリミングしています。


2018-05-26-0728_1_lapl6_a_red_IP_ASI178MC
ASI178MC


16_19_38_lapl6_ap2625_red_IP_ASI294MC
ASI294MC


2018-05-26-0709_3_lapl6_ap6311_IP
ASI290MM


エタロンは触っていないのですが、ピント合わせの関係上アイピース差込口に奥まで入っていないため、カメラ交換の際に光軸中心位置が変わってしまい、その後黒点がカメラ中心になるように赤道儀を振って合わせているので、明るいところの位置が変わってしまっているようです。そのことが分解能に影響している可能性があるのに注意です。

また、ASI294MCは間違えて動画でなく静止画で保存してしまったので、5ms露光ですが、2fpsくらいでゆっくり保存していたのでトータルの撮影時間は長く、500フレームで5分くらいかかっています。ちなみに、AutoStakkert!3で静止画を初めてスタックしてみたのですが、500フレームでも全く問題なくスタックできました。

そのような条件のミスはありながらも、結果を比べると分解能の差は明らかで、

ASI178MC<ASI294MC<ASI290MM

といったところでしょうか。モノクロのASI290MMが一番細かく見えていて、ASI178MCが冴えないです。ただしこれには二つの要素が絡んでいると推測しています。


1. まずはセンサーの一素子のサイズ。これだけ考えたらより小さいASI178MCが一番トクなはずで、仕上がり画面の分解能はASI294MC<ASI290MM<ASI178MCと上とは逆の順序になるはずです。ASI290MMはモノクロなので、分解能でも2倍トクするとしてもASI294MC<ASI178MC<ASI290MMという順序のはずです。ですが上のほうでも書いたように、一番粗いASI294MCでさえもドーズ限界と同等なので、物理的な素子サイズはあまり結果に効いてこないのかと思われます。あえていうなら、やはりASI294MCの素子サイズの粗さが少目立って、細かいところの描写がしきれていないように見えます。


2. もう一つ気づくことが、コントラストです。ASI178MCとASI294MCでは、ASI294MCの方が細かい描写は少し負けていますが、コントラストと言えばいいのか、模様の強弱はよりはっきりしていると思われます。実はこれは画像処理にも関係するのですが、ASI178MCの方が画像処理に苦労するのです。ASI294MCの方がはるかに簡単にこのレベルの画像が出ます。KYOEIのMさんがいっていたのですが、Full well(飽和電荷容量)の違いではないかと。ASI178MCもASI294MCも同じ14bitカメラですが、飽和電荷容量が全然違います。詳しくはここを見てください。もっと簡単に言い換えると、ASI294MCの方がよりノイズが小さいとも言えますし、ASI294MCの方がより実質的なダイナミックレンジが大きいとも言えます。


ではASI294MCとASI290MMの比較ではどうでしょうか?分解能はASI290MMの方が圧勝ですが、コントラストというか、立体感のようなものはASI294MCの方がまさっているような気もします。撮影したときのゲインが両方とも260と280でほぼ一緒くらいです。そのときのダイナミックレンジは11bitと9bitなので4倍くらいASI294MCの方がいいです。これが効いている可能性もありますが、単に影響の大きい画像処理のせいかもしれません。今一度できる限り同条件にして再比較してみたい気もします。

あと、ASI294MCの素子分解能はおそらく足りていないので、バローで拡大すると改善するかどうかも試してみたいです。それでも下の画像のようにASI294MCのセンサーの大きさを生かして、全体が一度にかなりの高解像度で撮影できるのは相当の魅力です。

2018-05-26-0811_0_lapl6_a_red_IP_RGB


5月24日、平日ですがとても晴れているのでASI294MCをMEADEの25cmシュミカセLX200-25に取り付けての電視観望です。焦点距離が1600mmのf6.3と、焦点距離があまり長くなく明るいので電視観望に向いてそうです。

実はこの日は惑星撮影のためにMEADEの25cmのシュミカセを使っていたのですが、実際の撮影をするにあたり、やはりまだ色々準備不足なところがあることが判明しました。まず、C8での惑星撮影の時に使っていたマイクロフォーカスを使うことができません。 もともとこの鏡筒は頂き物で、接眼部がオリジナルのものかどうかはわからないのですが、少なくとも付属のアダプターで手持ちのマイクロフォーカスを直接取り付けることはできませんでした。そのためミラーシフトを避けることができず、ピント調整がとても厳しいです。また、フードを用意していないため、しばらくすると補正板が曇ってきてしまいます。自宅で電源が取れたので無理やりドライヤーで温めたりしたのですが、ヒーターなども用意する必要があるかもしれません。あと副鏡の調整もまだ全然甘そうだということも判明しました。一度明るいところで合わせたのですが、内外像は全然ダメで、逆に内外像から合わせていくとピントを合わせた時に全然ダメです。そんなこんなでこの日は一旦惑星は諦めて、お気楽な電視観望へと路線変更したというのが実情です。

さてそんな適当な動機の電視観望でしたが、夏の星雲星団は久しぶりで、しかも新カメラと明るい鏡筒なので思いのほか楽しむことができました。まずは定番のM57です。

Stack_40frames_160s


SharpCap上で適当にスタックしたのを一旦PNG形式で保存して、ブログにアップするためにjpgに変換しただけの、後からの加工などは何もしていない、実際に画面でリアルタイムで見えている画像そのものです。4秒露光で、記録を見ると40回スタックしているので、計2分40秒の露光になります。拡大すると中心星もきちんと2つ写っています。解像度が高いカメラなので、リアルタイムで拡大しても画面が破綻しないです。ピントが甘く、流れてしまっているのは惑星撮影の際の鏡筒の副鏡調整の失敗であきらめたときの名残ですのでご容赦ください。

Stack_40frames_160s_cut


右端の方に、近くの渦巻銀河IC1296も入ってはいますが腕はさすがに全く見えていません。IC1296の腕とともにM57をいつか綺麗に撮るのが目標の一つです。

ちなみに今回の電視は一回の露光時間を4秒、ゲインを470に固定して、dark画像を撮ってリアルタイムで補正をしています。dark補正をしないと

Stack_40frames_160s_hot

のようにホットピクセルによる偽色が出てしまいます。dark補正をすると普通に見るぶんには問題にならないレベルくらいにはなります。また、赤道儀の極軸の精度が悪くて画面が流れていくと、星をうまく重ねていくアラインメントの効果で画面をずらしながらスタックしていくので、ホットピクセルが目立たなくなります。露光時間やゲインを固定しての電視は厳しいことも多いので、わざと極軸をずらすというテクニックはTipsとして知っておいてもいいかもしれません。

ちなみにこの偽色はASI294MCだけの問題ではなく、ASI224MCでも同様に出て来ます。というより、以前はじめてまともに極軸をきちんと合わせてから電視観望をやって、そのときにやっとホットピクセルに気づいたという経緯があります。


次も定番のM27です。ライブスタックで見たままのものです。4秒露光で46回、計3分4秒です。

Stack_46frames_184s

ちなみにその時の画面をiPhoneで撮ったものがこちらです。ちょっと明るく写っていますが、基本的にはノイズも色もその場で見るのと同じような見え味です。

IMG_4584


さすがに撮って出しだと少しノイジーなので、 Photoshopで3分加工です。お気楽3分露光に3分加工でこれならまあ許容範囲でしょうか。

Stack_46frames_184s

次はM13の撮って出しです。

M13_Stack_46frames_184s


やはり周辺減光が激しいので、今度はフラット補正をリアルタイムでするといいかもしれません。ちなみにこれもPhotoShopでガンマだけいじる30秒加工で見栄えだけはもう少し良くなります。

M13_Stack_46frames_184s_gamma



最後は三日月星雲。画面を撮ったのしか残ってませんでした。

IMG_4586

自宅からなのでこれくらいが限界です。あ、ちなみにこの日は上弦の月を過ぎたくらいで、この時間にはまだ月が明るく照らしていました。なので条件はそもそも良くないです。月がなければもう少し全体的にましになるかと思います。

久しぶりの一人電視観望でしたが、夏の星雲、星団を見ることができて結構満足でした。平日で次の日も仕事なのであまり遅くなることもできず午前0時前には退散でした。



 

惑星シーズンも始まり、とうとう今年は初のモノクロCMOSカメラZWOのASI290MMを先日KYOEIで購入してしまいました。早速この間CGEM IIとともに試したMEADEの口径250mm、f1680mmシュミカセにとりつけてお庭でファーストライトです。

まず5月21日木星に挑戦したのですが、あまりのシーイングの悪さに画像処理をする気にもならないくらいでこの日は諦めました。ASI224MCとASI290MMの比較をしたかったのですが、そんな差は全く出ないくらいボケボケでした。この日はシュミカセの副鏡の調整が不十分な可能性もあったので、次の日明るいうちにきちんと調整して(実際ほとんどずれていませんでした)から挑戦してみました。でも状況は昨日と同じか、更に少し薄雲がかかっていて霞んでいるような状態。とりあえずこの日はもう惑星は諦めましたが、そういえば今日は月面Xの日かと思い、気楽に月の観望に変更しました。

月面Xは去年の10月に見て以来です。月面Xと月面Vは前回と同じですが、面白かったのは下の画像です。

2018-05-22-1126_6_lapl6_ap1127_Resample20_RS_cut
月面Y?

私には真ん中少し上あたりがどうてもYの字に見えます。しかもかなりはっきり。でも「月面Y」で検索した限り、違う場所をYと言っているページはありましたが、ここをYと言っている例はないみたいです。何かアルファベットになるのには条件が必要なのでしょうか?

あとは普通にXとVです。時間が少し遅かったのかあまり綺麗なXとVにはなりませんでした。

2018-05-22-1104_5_lapl6_ap5148_Resample20_RS_cut
 月面X、でも時間が遅かったせいか少し崩れてしまっています。

2018-05-22-1105_3_lapl6_ap1306_Resample20_RS_cut
月面V。こちらはまだ綺麗でしょうか。
 
撮影はASI290MMで行ったので、上の画像は言うまでもなく全てモノクロです。それぞれ400枚をスタックしています。フルサイズの1936x1096ピクセルで、2.5msの露光時間で、80fps程度でした。

ところが、上の画像の処理で少し問題があったのでメモしておきます。動画からのスタックはAutostakkert!3を使っていますが、これをRegistaxに移しWavelet変換をしようとすると、今回どうしても空間周波数がいいところに合わないのです。普段はDyadicでGausiaanでやることがほとんどなのですが、空間周波数が合わないとLinearにすることもあります。Defaultにすることはまずありません。理由はGausiaanの方にあるDenoiseができないからです。強調していくと細かいノイズが乗ることがあるので、Denoiseが無いと強調しきれないことがあるからです。

この時に何を見るかというと、まず各周波数のPreviewを見て、どれくらいの分解能(細かさ)が強調されるかを理解します。どれくらいの分解能になるかは読み込んだ画像のピクセル数に依るので、新しいカメラなどの場合はサイズが変わり毎回きちんと見る必要があります。ダメな時の例として、例えばLinearだと6段階のどれも細かすぎる場合があります。そんな時はInitial layerを一つ増やしたり、Step Incrementを一つ増やしたりしますが、こうすると今度は各段ごとの差がつきすぎて、6段階のうち細かすぎるのと荒すぎるのがほとんどで1つか2つの段しか使えないことが多いです。Dyadicは適度な段差になるので、これがDyadicをよく使う理由なのですが、今回はそれでもどうしても段差が合いませんでした。そこで少し発想を変えて、Autostakkert!3のスタック時の選択のResampleで2.0Xを選びました。こうすることで適度なピクセル数になり、ちょうど空間周波数がうまい範囲に収まりました。うまくいった場合はたいてい下の画面のようにスライドバーの位置が山形になることが多いです。。

IMG_4580
 

さて、その後木星を再度見ても曇り、ベガが上がっていたのでASI294MCでM57を電視しても更にどんどん曇ってきます。23時くらいで諦めて退散しました。

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先週大阪に行く用事がありました。夕方梅田に到着したのですが、少し時間があったのでKYOEIを覗いてその帰り道、曇りの予報のはずの空が意外にそこそこ晴れているので、ふと思い立って2月に行ったばかりの星カフェSPICAにカウンター席が空いていないか電話してみました。前回は雨のために観望会が開催されなかったので、ぜひ一度観望会を体験してみたいと思っていました。さすがに平日ということもあり、一人のカンター席は空いているとのこと、 ただし19時半からプラネタリウムと観望会があるので、それまでに来て下さいとのことでした。梅田駅の御堂筋線のところで19時ちょうどくらいでしたが、松屋町までだったら30分あればじゅうぶん来れると教えてもらえたので、早速お店に向かうことに。

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到着したのは19時20分過ぎで、とりあえずドリンクを注文し早速プラネタリウムです。今回はオーナーさんは不在でしたが、代わりに「よるうどん」さんという方が解説をしてくれました。お客さんは二人組が4組と、あとは私一人。カップルが二組と、女性同士が二組で、やはり男同士でというのはいません。私以外はいずれも初めての来店とのことでした。話はさすが大阪、前回同様ユーモアたっぷりに星座ネタが続きます。半分お笑いですが、それでも星のことが心に残る構成になっているのはさすがです。春の大曲線から、アークトゥルス、店の名にちなんだスピカに持っていくなど、きちんとその後の観望会で見る星のことをさりげなく説明してくれています。ちなみにスピカの名前を聞いたことがない人が結構いたのには大笑いでした。「帰る時にでも店名を見てください」とのことでした。

IMG_4553
数量限定の「太陽スカッシュ」。
後からスライスしたオレンジをお皿に入れてもらって
デザートがわりに食べることができます。

さてプラネタリウムは15分もなかったでしょうか、天気が何とかなりそうとのことで早々と屋上に上がっての観望会です。入り口のドアをくぐって、さらにもう一つあるドアを外に出て、階段を上がるとビルの屋上に出ます。そこに望遠鏡と観望用の椅子が並んでいます。まだ金星がビルの上に見えていて、最後の薄明が残っているような時間帯でした。鏡筒はVixenの80mm程度の恐らく600mm程度の短焦点、レンズはEDとのことです。PORTA経緯台に載っています。

IMG_4558


 まずはアークトゥルスを覗いて、星の色を確認させてくれます。何人かは黄色っぽい色がついているのがわかったと言っていました。北斗七星は、周りが明るいのと霞で、ほとんどどこにあるのかわかりませんでした。それどころか、一等星のスピカでさえも全然目立たなくて、大阪ってこんなに見えないんだと、ちょっと都会の明るさをなめていたかもしれません。

新月期なので月は出ていないのですが、この季節はこの時間にすでに木星がソコソコ登っているので、みんなで木星を見ました。これも低空のかすみのせいでしょうか倍率100倍で縞が、慣れている人ならかろうじて何とか見えるような状況でしたが、これが逆にまた面白くて、縞が見えた人見えない人、衛星に注目して縞を見るのを忘れていた人色々で、すごく盛り上がっていました。その頃には金星がビルに沈んで、星が動いて行くのを実感させてくれます。縞が見えなかった人も再度アイピースを覗いて、全員が木星の縞を確認できたところで観望会は終了です。シンプルですが、解説がとてもうまくて、星に全く詳しくなくても十分に面白いと思える内容でした。

実際来ている人たちはこれまで望遠鏡を覗いたことがある人が2-3人と、ごくごく普通に雰囲気を楽しみたい人が来ているので、必要十分な説明だと思いました。でも話の端々によるうどんさんから「星好きの人感」があふれ出ていたので、観望会が終わってからカウンターでいろいろ聞いてみました。大学では天文同好会に所属していて、卒業後関西のかなり大きなプラネタリウムでボランティア解説員をやっていたとのことで、やはり相当星好きの方のようです。SPICAは7ヶ月くらい前から。大阪の天文部とかの学生とも繋がりがあるようで、以前富山大の天文部にいて私もよく知っているM君のことも知っていました。

「子供でもなく、年配の大人でもなく、若い人に星に興味を持ってもらうのにSPICAはとても面白い場所だ」とのことで、私も全くその通りだと思いました。オーナーの方も同じようなことを言ってたと思いますが、「大阪でも星が出ていることを実感して欲しい」という思いはSPICAにきて星を見上げた人たちにはきっと伝わっていると思います。

結局よるうどんさんと話し込んで長居してしまい、何と22時からの2回目の観望会まで参加してしまいました。時間制限がないのは平日カウンター席の特権だとか。2回目の観望ではだいぶん高度の上がった木星の縞がよりはっきりと見えていました。お客さんは今回もみんな大満足だったようで、若い世代に星を見せる機会をあたえてくれる星カフェSPICAはデートにも、星のことを話すにもすごく居心地のいいところです。



 

light_BINNING_1_integration_DBE_min_color_stretch_ps_cut
富山県富山市伏木, 2018年5月15日22時28分-5月16日1時52分
FS-60CB + flattner + CGEM II赤道儀
EOS 6D(HKIR改造, ISO3200, RAW), 露出3分x60枚 総露出180分
PixInsight、Photoshop CCで画像処理


先週末に撮影したアンタレス付近ですが、強風と赤道儀のガタにより星像がぶれてしまって使い物になる枚数が限られてしまったため、今回は長時間露光でのリベンジです。今回は新月期最後の晴れということもあり、平日にもかかわらず珍しく夜中の出撃です。場所は前回と同じ、自宅から20分くらいの富山と岐阜の県境のあたりです。


前回問題だったAdvanced VX (AVX)ですが、やはり赤経方向にガタがありました。簡易分解しただけでは原因はわからなくて、どうやらウォームホールあたりでカタカタします。上下方向や前後方向にガタは全くなく、回転方向のみのようで、クランプを十分締め付けても存在するようなガタです。バックラッシュなどのギヤのところではないようで、これ以上の調査は全分解に近いものが必要になりそうで、一旦は保留としました。おそらく風が強くなければ十分実用かとは思いますが、やはり心配なので、今回は新導入したCGEM IIでの出撃です。

AVXは車で運べるように、いつもきっちりプラスチックケースに入れてトランクに効率よく入るようにしてあるのですが、CGEM IIは大きいこともありまだ運搬の用意ができていなくて、玄関に組み上げて置いてあったものを三脚と赤道儀部だけ外して、後部座席にそのままポンと置いて積むだけでした。でもこの手抜きの運搬方法が意外に便利だということがわかりました。AVXはきちんとケースに入れるために、ウェイトバー、水平移動押しネジ、コントローラー台、コントローラーと、かなりの部品を毎回取り付け、取り外さなくてはいけません。何だかんだで、取り付けも取り外しも10分くらいはかかっているので、合計20分くらい損しています。さらに今回は三脚も押上げプレートを緩めるだけで外さずに後部座席の床にポイと置いただけなので、それも合わせたら、きちんと計っていたわけではないですが30分くらい実質得している気がします。実際の手を動かす手間も圧倒的に少ないのでずいぶん楽です。今度から遠征も二人までならできるだけ手間を省いて後部座席を活用しようと思います。

さて、CGEM IIの初の撮影への実戦投入になったのですが、まず驚いたことが安定度がこれまでのAVXと別物のように違うことです。AVXも普通に使うぶんには十分に安定です。それでもまずAVXのときはピリオディックモーションが避けられないので3分以上の露光ではガイドが必須でしたが、今回はノータッチガイドで焦点距離370mmで3分間、全く余裕でもちます。星像も完全にまん丸です。なので今回はガイドなしで行くことにしました。実は今回も風が相当強く、前回と同じか少し弱いくらいだったのですが、こんな風で大丈夫なのかというくらい星像が乱れませんでした。最初の頃はまだ風が弱く、最後撤収時には相当な風になっていました。それでも星像の肥大や偏心など画像を拡大しても目で見る限り差は感じられませんでした。

結局この日は強風にもかかわらず、安定して3分60枚を撮影したところで終了しました。平日の出撃でしたが意外なことに、車の中で3時間くらい眠ることができたので、次の日の仕事にはほとんど支障がありませんでした。自宅から20分という便利さも効いていたのかと思います。

さて、ここから画像をチェックしていきますが、2つの問題があることがわかりました。まず一つは、透明度が5月11日の方が圧倒的に良かったこと。撮って出し画像を比べればすぐにわかります。

GOOD_ANT_LIGHT_6D_180s_3200_+15cc_20180321-23h55m31s178ms
5月11日、透明度が良かった時



ANT_LIGHT_6D_180s_3200_+25cc_20180515-23h59m58s810ms
5月15日、透明度はイマイチでした。

赤道儀が違うだけのほぼ同じ条件ですが、前回の5月11日の方は最初から色が出ている一方、今回の5月15日のは撮って出しレベルでは全然色が出ていないことがわかります。前回が特別良かったのか、今回がたまたま悪かったのかまだよくわかりませんが、確かに星の数も天の川の濃さも前回の方がすごかったので、今回は晴れてはいたけれども少し霞みがかったような状況だったのかと思います。ちなみに、昼間見る立山の見え具合も比例して5月11日がよく、5月15日はイマイチだったので、昼間である程度の夜の透明度の予測はできそうです。

もう一つの問題点は、3時間という長時間露光なのでまたもや縞ノイズが出てしまったことです。前回のASI294MCの結論としては、ホットピクセルが多いので縞ノイズが出たということでしたが、6Dもやはり3時間クラスになると縞ノイズは盛大に出るようです。前回のAVXの時はガイドもやっていたのでついでにDitherもしていたのですが、今回赤道儀の安定性に頼ってしまいガイドをしなかったことが裏目に出たようです。ガイドなしで、BackYardEOS(BYE)単体でDitherができるのならASCOM経由でBYEとCGEM IIをつないでしまえばいいのですが、ここら辺はまだよくわかっていないのでまた調べてみようと思います。

light_BINNING_1_integration_DBE_shima
縞ノイズが盛大に出ています。 

いずれにせよ縞ノイズが出た場合はPixInsightの魔法のオプションで多少軽減できますが、やはりそれでも結構残ってしまうようでが、最初よりはかなりマシです。その際、Cool pixelの跡が残ってしまう問題がありましたが、

integration_DBE_cooltrajectory
縞ノイズは軽減されましたが、Cool pixelの跡がいくつも残ってしまっています。

integration_DBE_cooltrajectory_up
上の拡大図です。黒い筋がいくつも見えます。


このような時には、ImageIntegration時のオプションで消すことができることがわかりました。

Pixel Rejection(1)
  • Min/Maxをチェック
  • No normalizationを選択

Pixel Rejection(2)
  • Min/Max lowを5に

IMG_4550

のようなオプションにしたら、下の画像のようにCool pixel跡も無くすことができました。ただしこれはバッチ処理ではできないので、別個最後にやり直す必要があります。

light_BINNING_1_integration_DBE_min_color_shima2
縞も軽減され、Cool pixesの傷跡も無くなっています。


この状態で最後まで仕上げたものが一番上の画像になります。PixInsight(PI)の操作もすっかり慣れてきてストレッチまではPIで簡単に済ますことができるようになりました。前回も今回も撮影時に余分な時間があまりなかったので、フラットを取ることができませんでした。仕方ないので自宅でPCの液晶画面に、撮影時のカラーバランスがそこそこ再現できるように適当に色を出して、ISO100、1/20秒で多数枚撮影してPixInsightに放り込みました。前回作ったbiasもそうですが今回のflatも一度作ると同じ機材で撮っている限りISO、露光時間に限らず使い回しができるので便利です。というのも、PixInsightのDBE (DynamicBackgroundExtraction)機能がものすごく秀逸で、多少のカブリは物ともせずに除去してくれます。ただし、フラット補正を何もせずにDBEだけでは4隅に少し暗いところが残ってしまうなど、不十分なところが残りますが、これとて少しトリミングしたら十分見られるくらいにはなってしまいます。

PIが終わったら、あとはPhotoShopの出番です。いつも通り星雲を少しづつ炙り出していきます。この際いつも悩むのが、背景のボツボツです。緑が目立ちますが、青や赤の成分もあります。カラーノイズ除去などをしても、ある程度は軽減されますが色の波のようなものが残ってしまいます。滑らかなホワイトバランスが取れた背景を目指しますが、星雲とかの色を炙り出そうとするとどうしてもこのぼつぼつが目立ってきます。撮影時にコントラストよく星雲など撮れてればいいのですが、よほど空が暗くないところ以外どうしても付いてまわる問題なのでしょう。やはり撮影時にフィルターを使うのが解決策の一つなんでしょうか。何かいい方法はないものなのか、いつも悩むところです。

さて、今回処理したものと、前回の5月11日の画像を比較評価してみます。機材などの条件はほぼ同じ、透明度は前回のほうがいい、撮影時間は今回の方が3倍強です。結果はそれほど変わらないか、かろうじて今回の方がいいくらいでしょうか。でも縞ノイズでの悪化を差っ引いたらまあ等価くらいかと。3倍強の時間をかけても同じくらいということは、透明度が思ったよりかなり効いているということです。次回は透明度の高い新月期で、CGEM IIでDitherまでやってのリベンジを目指すことになりそうですが、果たしていつのことになるのか、今年中にチャンスは訪れるのか。

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