ほしぞloveログ

天体観測始めました。

今年度初めての観望会です。今回は富山県天文学会恒例の、富山駅前のゲリラ観望会です。

ゲリラ観望会は2019年に始まり、


その後コロナであまりできなくて、2024年に復活しています。復活までの間にもう一回行われているはずですが、確か出張で富山にいなくて参加できませんでした。



2025年も、春と秋の2回開催されていますが、両方とも天気が悪くて独立した記事にしていませんでた。



準備

少し前の週間天気予報だと、4月24日金曜日は雨の予報でした。でも日が近づくにつれ、どんどん晴れの予報になってきます。前日にはもうずっと晴れの予報でした。

機材の準備なのですが、何を持っていくか迷いました。月は上弦なので開始時に南天くらいのはずです。土星は出てないですが、木星は見えます。でも春なので、電視観望が得意な星雲がほとんどありません。オリオン大星雲が沈むくらいなのですが、高いビルに隠れてしまって西の空はほぼ全滅です。春はやはり銀河がメインです。実は2024年のゲリラ観望会の時にいつものFMA135で全然見えなかったという痛い思いをしているので、今回は銀河をターゲットに電視観望機材を選ぶことにしました。

駅前で相当明るいので、S/Nを稼ぐためにはできるだけF値の低い明るい鏡筒がいいです。焦点距離も長い方がいいです。でも口径が大きいと大きく重くなります。今回は少し離れた駐車場から歩いて機材を運ぶので、あまり大袈裟なものだと移動だけで大変になります。あと、撮影ではないので赤道儀は必須ではなく、経緯台でも十分です。

いろいろ迷ったのですが、FC-76にしました。昔、ジャンクで買った白濁FC-76です。使い勝手がとても良く、今でも太陽分光撮影で大活躍しています。レンズを見ると目立つ白濁も、実際に覗いたり撮影したりすると、全く気になりません。大きさ的にも大したことはなく、AZ-GTiで十分駆動できます。街中で電視観望で銀河を見るだけなら分解能もそこまで必要ないので、これで十分でしょう。あとは、子供に望遠鏡を触ってもらうために、いつものSCORPTECHの2つ穴ファインダーの屈折経緯台を持っていきます。

もう一つ、大きな準備がありました。2025年のゲリラ観望会は春も秋も2回とも天気が悪くて、スライドショーをお客さんに見せていました。自分で撮影した画像を見せていただけなのですが、春は24インチのモニターでしたが、秋はプロジェクターと大スクリーンで見せることができて、結構好評だったと思います。お客さんにこれだけ注目されるなら、他の県天会員の画像も見せたらいいのではと思い、直前ですがメーリングリストで画像を送ってもらうようにお願いしました。結果、5人の方から動画を含め、合計33のファイルを受け取りました。全てスライドに入れ、準備万端だったはずなのですが...。


設置と金星

4月24日金曜日、夕方に富山駅前にメンバーが集合します。出発前の直前になって、準備をしておいた荷物を車に詰め込み始めます。18時前くらいに会場に着くと、すでに何人かの県天メンバーが来ていました。早速設置を始めます。

駐車場は駅に隣接した一番近いところなのですが、それでも100mくらいは歩くので、荷物を運ぶのに台車を使いました。自宅にあった安物の台車なのですが、安定性がかなりイマイチで、横断歩道のところで荷物をぶちまけてしまい、大変なことになりました。今後も大きな機材を運ぶこともあると思うので、もっとまともな安定した台車を用意しておこうと思います。

とりあえず荷物を運んで、月だけでも見ようとSCOPETECHを月に向けようとしますが、あまりに天頂付近で、接眼部が低くなり過ぎて導入が難しいです。モタモタしていると、メンバーの一人が「向こうに行って建物を避けると金星が見える」と言うので、そのままSCOPETECHを持って西の空にある金星を見てみました。欠ける様子が見えればと思ったのですが、残念ながらこの日の欠けは片側がちょっと暗くなるくらいで、口径5cmの初心者向け鏡筒では欠けるところまでは見えなかったです。見えていたのは建物に隠れるまでの15分程度でしょうか、何人かのお客さんにも金星を見てもらいました。

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電視観望

定位置に戻って、電視観望の準備です。準備の間にもすでにお客さんが何人かいたので、先ほどのSCOPETECHを、今度は頑張って月を導入し、見てもらい始めました。

今回は上弦の月で、ちょうど月面Xが見頃でした。電視観望でも月を導入し、拡大して24インチの外部モニターにも映し出したのですが、眼視の方が明らかにわかりやすかったです。眼視だとXの文字が光り輝いて見えるんですよね。鏡筒を覗いたお客さんにも、できるだけ月面Xを探してもらいました。子供を含めて、ほとんどの方が見つけることができていました。

木星も見頃だったので、こちらは電視観望でのみ見たのですが、この日はシーイングが悪かったのか、大きく揺れていました。パッとやった限りではSharpCapの月惑星のライブスタックを使っても縞がほとんど見えなかったので、木星は早々と諦めました。他に、大口径の鏡筒を持って来ているメンバーがたくさんいたので、木星に興味がありそうなお客さんには、「月の下に明るい星が見えると思います。あれが木星ですが、この会場であの星の方向に向けている望遠鏡は木星が見えるはずです。興味がある方はどんどん見せてもらってください。」などと言って、木星も見てもらうように誘導します。


銀河

月も見飽きたところで、いよいよ銀河に挑戦です。最初はしし座の三つ子銀河を見てみました。最初はどこにあるか全然わかりませんでした。でも今ではAZ-GTiのプレートソルブが完全に安定しているので、プレートソルブで同期して再導入をかけると、なんとかそれらしいものが見えます。でも流石に駅前が明るすぎるのか、それともまだ薄明終了前で明るすぎるのか、ほんとにうっすらとM65と66が2つ見えるだけで、トリプレットとも言えないし、これを銀河と一般の人に認識してもらうにはちょっと厳しい状況です。

気を取り直してM51、子持ち銀河を導入します。親子の2つ並んでいる様子はわかりますが、これもちょっとみてもらうには厳しそうです。とりあえずライブスタックを開始してしばらく放っておくと、かろうじてですが渦を巻いている様子が少し見えて来ました。ここで気づいたのですが、月を見上げると結構モヤっています。明る過ぎでわからなかったのですが、どうやら薄い雲が一面にかかっているみたいです。そういえば、星という星が、木星以外には一つも見えません。どうやらかなり状況が悪いみたいです。

それでもライブスタックを重ねていくと、かなりゆっくりですが腕の様子が徐々にわかって来ました。そして時間が経つにつれて、薄い雲がなくなっていったようで、途中からは腕の様子がかなりはっきりわかるようになって来ました。

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右のモニターがリアルタイム。
左のPCのモニターが比較用の以前撮影した画像です。

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だんだんこれくらいまで見えるようになりました。
腕もはっきりわかります。

この銀河の電視観望は大成功でした。そもそも一般の方が多いので、銀河なんて見たことがない人ばかりです。まず銀河ということに驚いて、その銀河が見えるということ、しかもこんな明るい駅前で見えるということに驚きます。そしてその銀河が2000万光年も3000万光年も離れているということ、今見ている光は2000万年も3000万年も前の光だということに、みなさん驚きます。

中には、本当に見えているのかと、鏡筒前に手を翳したり、鏡筒を覗き込む人もいます。その度に画面が明るくサチるので、ライブスタックをクリアして最初からやり直しになってしまいます。あと、わかりやすいように隣にMacを置いて、以前撮影したM51の画像を出しておきます。カメラの向きも大体合っていたので形を比較することができ、ライブの方のイメージもわかりやすくなったようです。

一方、反省点もいくつかあります。
  • まず、普段使っていないASI294MCを取り付けたのですが、ホコリがひどくて黒丸が随所にありました。上の画面は銀河周りだけをクロップしているのでわかりませんが、淡い天体を炙り出すとどうしても目立ってしまいます。
  • 炙り出すのにスタック時間がある程度必要になるため、今回はM51のみにしてしまいました。雲が晴れてからはトリプレットも見えたはずなので、挑戦してみても良かったかもしれません。

それでも、月、惑星、恒星以外にも観望会に見えるものを提供するという意味で、形まではっきりわかる銀河というのはかなりインパクトがあるようです。一般の人だけでなく、ちょっと詳しい人や、県天メンバーみたいにもっと詳しい人にとっても、かなりのネタになりました。


たくさんのお客さん

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この日は晴れていたこともあり、本当にたくさんのお客さんが望遠鏡を覗きに立ち寄ってくれました。

駅前で開く観望会の最大のメリットは、とにかくお客さんが多いことです。富山で観望会を開いても、普通はせいぜい数十人くらいが集まる程度ですが、ここはひっきりなしに、数えられないですが数百人は余裕で来てくれます。明るい場所で不利にも関わらず、県天メンバーもこの観望会を気に入っている人が多いみたいで、やっぱりお客さんの反応が嬉しいのかと思います。

今回のゲリラ観望会はほとんど宣伝していないので、そもそもなぜ駅前で望遠鏡が並んでいるかも不思議に思う人も多いです。しかも「無料ですか?」と聞かれることもしばしばです。というのも、金曜の駅前の夕方から夜なので、仕事帰りや学校帰りの方が多く、望遠鏡なんか覗いたことがないという方がほとんどでです。普段観望会というと、大抵星に興味がある人のみ、特に子供が多く、小さな子とその親とかが、わざわざ観望会のために来てくれるます。でも、このゲリラ観望会は天文に特に興味がない人たちばかりです。天文に直接興味はなくても、社会人の中には理系関係の方も多いので、意外に話が通じたりします。ノイズの話とかも結構興味を持ってくれるので、意外に楽しいです。

制服を着ていて高校生とわかる子たちもたくさんいます。やんちゃそうな格好をしている子も、星や宇宙の話になると意外なほどピュアに応じてくれるので、見ていてかわいかったりします。星と全然関係ないのですが、今回はたまたま女子高生の進路相談に乗ったりしてしまいました。自分の好きな道に進むか、反対している親の意を汲んで妥協するか悩んでいるとのことでしたが、私の天文趣味みたいに、好きなことばかりしている身としては、是非とも好きな道に進んでほしいと思います。

子供連れ家族の方も多いです。どこかからこのゲリラ観望の噂を聞きつけてきた方なのでしょうか?それとも何か駅に用事がある方?子供にはSCOPETECH望遠鏡を自分で触ってもらうことを勧めています。こうやって観望会を開くと、大抵一人くらいは調整をずっとやってくれる子が現れます。今回は小学4年生くらいの男の子がちょくちょくやって来ては、望遠鏡をいじっていました。
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今回何枚か時間を置いて機材周りの写真を撮ったのですが、
大抵この子がSCOPETECHを調整している様子が写り込んでいます。

海外の方もたくさんいます。今回はアジア系、もしくは東南アジア系の方が多かったでしょうか。聞いて見ると、観光できている人もいれば、富山に住んでいる人も多くいました。シンガポールから来ていて、シンガポールは明るくて星が見えないとか、また日本に来るのだが天の川はどこで見えるのか?とか聞かれました。一見海外からきた子供だと思って英語で話そうとしたら、普通の日本語答えてくれました。多分富山で暮らしている子だと思います。子供の語学能力はすごいですね。大人と違って、完全に日本語ネイティブに聞こえます。


スライドは?

そうそう、頑張って準備したスライドですが、開始時に風が強くてスクリーンが飛んでいきそうだったので、結局披露せずじまいでした。せっかく画像を提供してもらったのに、申し訳なかったです。次回以降、県天の行事でチャンスがあったらまた皆さんにお見せしたいです。


片付けと帰宅

20時50分頃に責任者の方が「あと10分くらいなんで、そろそろ片付けお願いします」と回って来たのですが、21時を回ってもまだまだお客さんは絶えることがなく、他の望遠鏡を見ていてもあまり片付けが進んでいる様子はありませんでした。21時半近くになってでしょうか、私の方はモニター用のポータブルバッテリーが切れてしまい、やっと片付けとなりました。

実はこの日は珍しく妻も来てくれていて、せっかく駅前まで来たのでブリティッシュパブでフィッシュ&チップスとエールで一杯飲んでいたそうです。
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向こうに望遠鏡が並んでるのが見えます。

観望会も色々見てたらしくて、適当に楽しんでいたみたいです。片付けも少し手伝ってくれて、普段の電視観望より少し荷物が多いので助かりました。駅前で銀河が見えたのが相当面白かったようで、帰りの車の中ではずっと楽しそうに話していました。

自宅についたのですが、疲れていて後片付けは明日以降の後回しに。リビングのソファーに座ってやっと落ち着いたのでXをチェックすると、知り合いの中学生のMちゃんからDMが来てます。明日、科学博物館に行くとのこと。夕方から観望会なので、私も行くかどうか知りたいとのことでした。明日も晴れそうで、しかも上限の月過ぎなので撮影するにしてもイマイチです。どうやら2連チャンの観望会になりそうです。車の中の荷物、片付けなくて良かった...。


私の天文活動の公開先は、基本的にはこの「ほしぞloveログ」がメインで、ブログ更新時の宣伝とその日にやっていることをたまにリアルタイムで「X」に投稿するくらいです。

いくつか他のサービスでアカウントは作っていますが、Facebookは今はほぼ触っていないですし、Instagramも全く更新が止まっています。動画は見ることさえもあまり好きでないので、YouTubeはブログからリンクを貼るだけの撮影記録の保管先に成り下がっていて、全く活用できていません。


SolarChatへの投稿

太陽をやってきたこの1年でよく見るサイトの一つに「SolarChat」というのがあります。ここは太陽専門のサイトで、分光専門のフォーラムがあるのでよく見ています。半年くらい前、分光の成果が出てきた頃に、思い切って投稿してみようと思いアカウントを作ったのですが、結局何も投稿せずにほったらかしになっていました。

CP+で発表した太陽黒点の3分周期振動はかなりインパクトがあったのですが、あくまで日本の中での話です。何人かの方にもっとアピールしたらいいとアドバイスを受けたのですが、せっかくなので海外にも宣伝した方がいいのではと思うようになり、重い腰上げてやっとSolarChatに投稿してみました。

ターゲットはSolarChatの中の「This is SolarChat !!」というフォーラムにしました。ここはトピック数もポスト数も他と比べて一桁多い、メインのフォーラムになります。その中に「Clear propagation of 3-minute oscillations in a sunspot (H-alpha animation)」というタイトルをつけて投稿してみました。反応は「REPLIES」と「VIEWS」の数である程度わかり、他と比べてもそこそこ反応はあり、4月に入ってからの150くらいのトピックの中で上位5番目くらいの反応数になります。

コメントでも「すごい」というような意見を多く頂いたのですが、その中で注目すべきが「同様の振動を2016年にLUNTの50mmで見た」というコメントがあったことです。Astrobinへのリンクが張ってあるので、興味がある方は見てください。今回私が撮ったのほどクリアではないですが、それでもはっきりと振動が見えます。実は、黒点振動に関しては今の所発見できた動画はいまだにこれだけです。研究レベルでは普通に取られているらしいですが、基本的に出回っていないのでいまだに見つけられていません。なので、アマチュアでこの振動が見えるのはやはりすごいという認識は、今でも正しいようです。


SolarChatにもう一つ

SolarChatにはもう一つ、ヘリオスター100Hαのエタロンの透過特性測定の結果を投稿してみました。こちらもまだテスト投稿に近いです。フォーラムとしては、SolarChatを見るきっかけにもなった分光関連の「Spectroheliographs, Spectroscopy and Magnetometry」です。そこに「Transmission Profile Measurement of the Heliostar 100Ha Etalon using SHG700」というタイトルで投稿しました。分光関連の投稿数は、先のThis is SolarChat !!に比べたら全然少ないですが、それでもSolarChatの中では比較的活発なフォーラムです。といっても、平均だと分光フォーラム全体で全トピックに対する返信が1日1通以下なので、大した数ではないです。

この投稿したトピックの中で、astrosurfで記事を書いているchristian viladrich氏がいくつかコメントしてくれました。彼もエタロンの透過特性を測定しているのですが、手法としてはシングルピークをたくさん作ってフィッティングするのが好きなようです。でも、Fabry-Perotエタロンは原理的に櫛形の周期関数なので、私はきちんと周期関数でフィットする方が正しいと思っています。シングルピークだとFSRがフィッティングで求まらないこと、共振付近のフィットだけでなく、非共振部分でのフィットも意味があることなどが理由です。私も、最初は一般のフィッティングアプリを使いビルトインの関数でシングルピークをフィットしたりも試しましたが、やはりピークを持つ関数とオフセットとの和で表すことになり、FPのいくつかの重要なパラメーターを使わずにおいてしまうのでもったいないと思ってしまいます。

まあ、考え方の違いなのでそれはいいのですが、議論の途中で一ついいことがありました。測定とフィッティングが、共振の裾のところで多少ずれていたのですが、それは以前書いたように長時間測定しているからだと考えていました。でも、共振以外のところのオフセットが光起因なのか、ノイズ起因なのか考えてはいなくて、これがノイズ起因だとしたら、フィティングが合わない理由にもなり得るのではと、思いつきました。こうやって考え直すきっかけになるのは非常にありがたいです。


AstroBinへのアップロード

同じ時期に、Astorbinにも黒点振動動画をアップロードしてみました。

こちらはアカウントを持っていなかったので、新規に作りました。太陽と言ってもあまり一般には見ることがない黒点振動なので、もしかしたら多少評価してもらえるかもしれないと思い、IOTD/TPの候補として画像を提出しようとしたのですが、最初うまくいきませんでした。

まず、無料版のアカウントでは提出できないとのことで、有料アカウントにすることにしました。3つプランがあって、一番安いプランだと制限も多いこと、真ん中のプランを月額で払うのと、フルプランを年間で払うのは金額的に違いがあまりなかったので、年間のフルプランにしてしまいました。フルプランだと処理途中の画像もアーカイブ的に保存できるみたいなので、うまく使うとバックアップの冗長性が増すのかと思います。

ただ、有料プランにしただけだとまだ提出できず、デフォルトではIOTD/TPノミネーションを受け付ける設定がOFFになってしまっていて、各画像の編集画面の「設定」から、画像のプライバシー設定を一部変更する必要がありました。その上で、自らノミネートを申請することができるようになるようです。しかもアップロードしてから2日以内に提出する必要があるなど、他にも細かいルールがあるみたいです。アップロードした画像を全て自動でノミネートする設定もありますが、今後まだどのように使っていくかわからないので、とりあえず今はオフのままにしてあります。

さて、この申請どうなることか。CP+でもSolarChatでもそこそこ反応がありましたが、AstroBinでどう評価されるのか、はたまた全く相手にされないのか。ちょっと様子見です。


AstroBinの使い方

ついでにその黒点振動の動画の中で一番シーイングが良かった時の静止画もアップロードしてみました。こちらはIOTD/TPの候補には提出していません。

さらに、週末にフェニックスで撮影した画像もアップロードしてみました。モノクロ画像に加えて、リビジョンとして反転画像、カラー画像、カラー反転画像もアップロードしてます。このリビジョン機能は、画像処理などが改善して新しいバージョンとしてみてもらうこともできるし、今回のようにリビジョン的に派生画像的に扱うこともできるみたいなので、結構使い勝手はいいです。これらの画像はテストアップロードのような位置付けですが、過去画像もアップロードすべきか、新規のものだけにするとか、まだ自分の中でも方針はあまり決まっていません。


週末の太陽撮影

一応このブログにもフェニックスで太陽画像をアップロードしておきます。よく考えたらCP+以降は的間記事ばかり書いていて、久しぶりの撮影になります。

というより、実はヘリオスター100Hαロスになってしまっていて、全く撮影する気がおきなかったというのが正直なところです。それくらいインパクトがある鏡筒でした。

そうは言っても、手元のフェニックスも全景なら十分な画像が撮影できるので、また気軽な太陽の記録として、ちょくちょく撮影は続けていこうと思っています。こちらも、モノクロ、反転、カラー、カラー反転と載せておきます。

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  • 撮影日時: 2026年4月12日15時55分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒:  ACUTER OPTICS Phoenix (f400mm、F5)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: Touptek G2M678M
  • 撮影: SharpCap Gain 200(=6dB)、露光時間4ms、450/500 frames
  • 画像処理: AutoStakkert!4、ImPPG、PixInsight SolarTools、Photoshop CC

今回の太陽画像ですが、特に反転画像に何か周期的な大きめの斑点のような模様が出てしまっています。最初何か画像処理時に発生したフェイクかと思ったのですが、スタック前の動画の時からそれらしい模様があります。午後の撮影なので、もしかしたらシーイングが悪かったせいかもしれませんが、どうも他の方の画像を見ても同じような模様が出ている画像が結構あります。

なので、どうやらこれはフェイクなどではない模様で、しかもCaKと同時に撮影した画像だと、CaK画像の特徴的な斑点模様に一致しているように見えます。これまで白いモヤモヤ以外はこんなふうに一致するのは気づいたことがなかったので、もしかしたらまだ面白い物理が背景にあるのかもしれません。


まとめ

海外に少し手を伸ばしましたが、今後どうなるのでしょうか?

AstroBinの課金は年間で1万円ちょっととそこそこの額になるので、ある程度は使い倒そうと思っています。特に高画質の画像を保存できるのが魅力です。静止画は多少のサイズでも大丈夫かと思うけれど、動画はどこまで高画質で保存できるかちょっと興味があります。ただ、みなさんレベルが高いので、いいものだけをアップするのか、本当に何でもアップして使うのか、まだちょっと迷っています。

SolarChatは投稿が続くのかはまだちょっとわかりません。ブログと二重で書くことになりそうですし、元来相手を考えながら返事を書いたりするのが苦手なので、長い議論となるとめんどうでそのうち嫌になってしまうかもしれません。面白い結果が出た時に、たまに投稿するくらいのペースになるかと思います。



いよいよCP+で話したネタ
の記事化も、これで最後になります。

これらのネタを、今回の記事も合わせて4つの記事にしました。どれも、少なくとも日本のアマチュア天文ではあまり話題になったことがないものです。

海外を見るとヘリオスター100Hαのエタロンの測定結果はいくつかアップロードされていて、その中の最新の#5は私が測った結果とほぼ同じFWHMの値が出ています。#3はFSRが全然違うので、何か波長のキャリブレーションを失敗している気がします。

こうやってみると、CP+のセミナーのために色々試したとはいえ、新しいことも多く、今後も参照できるような結果になったのではないかと思います。

というわけで、今回はCP+でも目玉になった、5番目の太陽黒点の3分周期振動についてです。


撮影

撮影データは前回記事のシーイングの時間変化を検証した際の30秒に一回で200フレーム撮影し、60分で120枚撮影したものと同じになります。

120枚の画像を見比べている最中にまず思ったことは、「黒点の形が結構変わる」ということです。これは最初シーイングが時間変化しているからかと思っていました。でもある時、PixInsightのBlinkで短時間で連続的に表示していった時に、どうも何か意味のある動きのように見えました。

改めてよく見てみると、どうも黒点の動きが周期的に変化していることに気づきました。その黒点の動きが周りにシュワシュワと広がっていっているように見えたのです。どうやら黒点自身が振動していて、その動きが周りに伝搬しているようです。ここで「黒点、振動」で検索をかけると、3分周期の振動が存在すると言うことがわかりました。画面上で実際に周期を測定してみると、約6枚ごとに振動しているように見えました。1枚あたり30秒ですので、ほぼ3分周期で間違いないようです。

その後さらに、3分周期の動画がないかいろいろ検索してみました。探した限り、わずかに黒点周りが揺れてるような動画は見つかりましたが、あまりはっきりせず、むしろその動画からFFTでスペクトル計算し、そのピークを見積り周期が1÷3分=0.00556秒程度と求めていて、それで3分周期の振動があると結論づけているものがほとんどで、動画などでクリアに見るというよりは解析の結果の振動と結論づけているような印象でした。ましてや、振動が周りに広がっていくような動画を見つける事は、少なくとも探した範囲ではできませんでした。

ちなみに、撮影をしたのが2月14日で、画像処理を進めながら黒点が動いていることに気づいたのが2月23日くらい、振動していると気づいて「黒点 振動」で検索してみたのが2月26日で、CP+に出発するわずか前々日のことです。

この段階で、CP +での発表は結構インパクトがあるものになるのでは?と予測できましたが、相変わらず宣伝は下手くそなので、Xでそれとなく呟いただけで、事前にうまく知らせる事はできませんでした。結局、せいぜい発表前日の会場で会った知り合いの方たちに「すごいのが撮れた」と話すのが関の山でした。

実際にセミナー本番で見せたときにはかなりのインパクトで、会場でも「おぉー!」というような雰囲気でした。その後のSNSでの反応もかなりすごいものがありました。もっとうまく事前に宣伝しておけばよかったと、後になって思いました...。


タイムラプス映像

下はCP+で見せたものと同じ、2倍のバローを入れて撮影したもので、その日見えていた一番大きな黒点になります。


黒点が揺れている様子、その揺れが周りに伝わっている様子がかなりはっきりとわかるかと思います。もし振動らしい映像が見えない場合はおそらく解像度がSDになっているので、Youtubeの設定でHDモードを選んでみてください。かなりマシになると思います。

ちなみに、アップロードする際に、なぜこれまで黒点振動の映像があまりなかったかがわかった気がします。モノクロだとYoutubeの画像圧縮が働いてしまい、うまく振動に見えないのです。フォーマットを264にして解像度を1440pにしてやっと振動がはっきり見えてきました。それでも手元のオリジナルファイルでローカルで見るものよりもどうしても劣ってしまっています。このような、モノクロで、画面の一部の淡い揺れに近に注目して欲しいような動画は、かなりうまくアップロードしないとノイズなどと勘違いされてしまうようです。

さらに次の日の別のタイムラプス動画で、こちらはバローなしの1倍で、30秒おきではなく、1分おきに撮影した、太陽の全景の下半分程度の画角のものです。

ただしこれだと、動いている様子などはほとんどわからないので、黒点部分を一部を拡大してみます。

同様に、もう一つの黒点も拡大してみます。

今回は1分ごとの撮影なので、コマ数が少なく振動がわかりにくいですが、それでも振動が広がっていく様子はわかると思います。

プロミネンスも激しく動いているのがわかります。

ダークフィラメントはプロミネンスと同じものですが、上から覗いている形になり、動きがわかりにくいです。それでも下の動画を見る限り、1時間で大きく動いていることがわかります。



静止画像

全体の高解像度画像で最も分解能よく撮れたものも載せておきます。モノクロと、よくある反転、カラー、カラー反転になります。このように加工してもまた印象が違って見えて面白いと思います。

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さらに、そこから切り出した画像です。そこそこ高解像度なので、切り出し画像でも十分見応えがあるかと思います。

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こんなふうに広角から切り出して楽しめるのは、全景に近い画角が撮影範囲内に入り、なおかつ分解能がそこそこあるからで、ヘリオスター100Hαはとても使いがいのある太陽望遠鏡なのかと思います。かなりバランスがとれていて、フラッグシップと呼ぶに相応しい性能と言えるのかと思います。モウスコシヤスケレバ...。


太陽の振動

CP+の時にはまだ黒点振動が見えただけくらいで、そもそもなぜこんなことが起こるのか理由はあまり把握できていませんでした。今回ブログ化するにあたり、時間もあったので少し調べてみました。

そもそも、太陽には5分周期の振動があるそうです。これは検索するとすぐに出てきて、1960年代に発見され、「対流」が起源で励起される「音波」のpモードと呼ばれる「固有振動」で説明できるということが1970年代くらいにわかってきたそうです。

起源である対流は表面では粒状斑となって現れることが有名で、私もちょっと前にやっとうまく撮影することができました。粒状斑の典型サイズは観測から L=1000km のオーダーで、典型速度 v = 1-2 km/s とわかっています。大きさと速度から、ざっくりとした寿命 τ が L/v で計算でき、τ ~ 500s となり、5-10分ほどのオーダーになります。

このように粒状斑のスケールからわかるように、対流が5分オーダーの音波を供給して、太陽内部の「pモード」と呼ばれる固有振動 (共鳴) を励起します。pモードのpはpressure (圧力) の意味だそうです。 pモードは3つの固有モードn, l, mで表され、
  • n: 半径方向の節数
  • l: 球面調和次数
  • m: 方位角次数
という関係があるそうで、pモードの周期は主にnのみで決まるとのことです。この中で周期5分オーダーのモードはn=20の場合で、このモードが先の対流が原因で最も大きく励起されます。

ではなぜ5分の周期が3分の周期になるのでしょうか?これはどうやら、黒点にこのモードが現れる際に、重力加速度と音速で決まるようなローパルフィルターの効果があり、それが5分程度のカットオフ周波数をもち、そこより多少低い周波数成分のみが通り抜け、結果として3分周期が最も大きく観測されるというのが今の解釈のようです。

カットオフ周波数 f は重力加速度 g と音速 Vs を用いて f = g/(2 Vs)/(2π) と表すことができます。太陽表面重力はg = 274 [ms^-2]、音速は光球付近では大体 Vs = 7 [km/s] 程度とのことなので、f = 0.00312 [Hz]となり、周期 P で書くと 1/f = 320 秒 = 5分20秒となります。これが黒点においては、磁場に沿った伝播と温度構造の変化によって有効カットオフが少し下がり、Pが3−4分になるとのことです。5分周りに広がったスペクトルが、黒点においては3分の成分だけが残るという理解だそうです。

さらに波の増幅という効果があって、波の振幅 a は密度 ρ と a ∝ ρ ^(−1/2) という関係があり、上空に行くと密度が急減するので波の振幅は一気に増幅します。すわなち、伝播できる波だけが急激に強くなるという効果があります。このようにして3分成分が大きく観測観測されるということのようです。

ここまでで、自分としては3分周期になる理由はカットオフ周波数によるスペクトル選択だと納得しました。でも、なぜ黒点のみ3分になるのでしょうか?カットオフが理由なら、光球面の周期も5分ではなく3分になっていい気がします。もう少し調べてみました。

黒点だけが3分になる主な原因は「磁場による波の導波(wave guiding)」だそうです。波が彩層まで届くかどうかが、黒点と、光球面などの静穏領域で違うとのことです。静穏領域では5分の波はほぼ水平に伝播するため彩層まで行かずに反射と干渉を繰り返します。一方、黒点では強い垂直磁場があり、音波は磁力線に沿って伝播します。波が垂直に導かれる(wave guide)ため、ローパスフィルターの影響が顕著になり、3分周期が支配的になるとうことのようです。

ここら辺まで来て、やっと納得できました。

さらに調べていくと面白い記述を見つけました。「3分振動は黒点の中心から同心円状に外へ波として広がることがあります。これは sunspot oscillation wavefront と呼ばれ、黒点が 巨大な波動導波管(magnetic waveguide) のように振る舞っている証拠と考えられています。」とのことです。今回撮影できたの映像のように、振動が広がっていく様子がはっきり見えたのも、この導波(wave guiding)の効果と考えられるようです。

とりあえずの調べ物はこれくらいにしておきます。


まとめ

黒点振動を含めて、ここまでの画像が撮れるとは思っていなかったので、自分自身もうびっくりでした。これもヘリオスター100Hαの高性能エタロンと高分解能のおかげだと思います。CP+セミナーのための評価というだけでなく、エタロンの透過特性の測定も合わせて、十分すぎるほと楽しまさせていただきました。サイトロンさんには改めて感謝いたします。

やっとCP+の顛末をまとめることができたので、次は何をしようかちょっと迷っています。やりたいことがまだありすぎで、時間は限られているので、天気とかのタイミングと、その時の興味と、いろんな準備状況など合わせて、少しづつ、焦らずに進めていこうと思います。



シーイングを客観的に評価するのは結構大変です。今回は太陽望遠鏡としてヘリオスター100Hαにモノクロのピクセルサイズ2μmのG3M678Mを用いて撮影した多数の画像を使い、シーイングを計測してみようと思います。

本記事はCP+で話した太陽トークでまだ記事にしてないことの一つで、
の3と4になります。


撮影条件

撮影日は2026年2月14日、ヘリオスター100Hαで太陽を約30秒に1回、約1時間で合計120枚撮影しました。一回あたりの撮影では、露光時間5ms、gain200 (ZWOのカメラでgain60=6dB=2倍に相当) で、200フレームを撮影しています。フレームレートは40fps程度で、一回の撮影で5秒くらいかかります。

ちなみに、1ファイル3GB程度の大きさになるので、120回撮影すると400GBものサイズになります。今回は通常の1倍撮影と、2倍のバローレンズをつけた撮影の、120x2=240回になります。画像処理も入れるSSDを1TB近くを消費したことになります。今回はテストなので全ファイルを残していますが、シーイングの悪い時間帯のserファイルは消すとかしないと、流石にストレージが持ちません。

1回の撮影でできたserファイルの200フレームのうち、AutoStakkert!4で上位80%をスタックします。これを120回分まとめて全て連続処理しますが、できた1枚1枚の画像ファイルのサイズはバラバラになってしまうので、ImPPGで画像サイズを合わせます。必須ではないですが、同じくImPPGで位置合わせまでしてしまうと、後からのタイムラプス映像を作る時の処理が楽になるでしょう。

これ以降シーイング評価の話になりますが、実際にやったのは目で画像を見て分解能別に分別することです。目で画像の分解能を見分けるためにはスタック直後の画像ではボケボケで見分けがつかないのでダメで、それをImPPGのバッチ処理を使い、細部出しをしたもので判別しています。その後、アルゴリズムで画像から分解能を評価するテストに進みましたが、その際はImPPGで細部出しをしたものではシーイングが現実的な値にならずにうまく評価できませんでした。そのため、以下の話はスタック直後の画像で評価しています。


シーイングの評価

画像からシーイングを評価する方法としては何種類かありますが、ここでは5つの方法を試しました。
  1. Tenengrad: 画像のシャープネス(鮮明度)や焦点の合い具合を評価するためによく用いられる勾配ベースの指標
  2. ラプラシアン分散(Laplacian Variance): 画像内のエッジ(輪郭)の強さを表す「ラプラシアン」を計算し、その分散(ばらつき)を算出する。
  3. FFT高周波比(高周波/低周波パワー比): 信号の全パワーに対する特定の高周波帯域(バンド)のパワーの割合を計算する。
  4. エッジ遷移幅: エッジ画像からエッジスプレッド関数 (ESF、画像上の輝度変化)を求め、それを微分してラインスプレッド関数 (LSF)を求める。エッジ法線方向に輝度プロファイルを取り、誤差関数(erf)やロジスティックでフィットして遷移幅を得る。
  5. フレーム間jitter(位相相関で微小シフト): シーイングは「ぼけ」だけでなく「像の揺れ」も大きいので、サブピクセルの微小移動は残る。連続フレームの相互相関からピーク位置のシフト求め、jitter のRMSを計算。
1-5までの評価を120枚に渡り、横軸時系列で、縦軸を粗さ細かさの変化でプロットします。

それぞれの計算結果が正しいかどうかの判断はなかなか難しいです。ここでは120枚の画像を目で見て1枚1枚粗さ別に仕分けして、それを時系列でプロットしてみた場合と比較してみました。

その結果、少なくとも3と5は、見た目で分けた傾向とは全く違いました。3はブレが大きい場合の違いを見分けることが得意でないようです。5は大きく間違えている場合がいくつかあったので却下しました。

1、2、4に関しては、目で見た傾向とは似たものが得られました。相対的な変化は甲乙つけ難いですが、問題はこの粗さ細かさの相対的な時系列変化を、シーイングという秒角の単位の絶対的な評価にしてやる必要があります。この場合、arcsec/pixelの値がわかっていれば、秒角にまで落とし込むことができるはずです。ところが、これがなかなかうまくいくことができずに、結局1のTenengradのみがそれらしい値になりました。2と4はいずれも1秒角以下と現実的な値から乖離していたので、今回はこのTenengradを採用することにしました。


シーイング変化の結果

その際の結果が以下になります。
graph_x1_ok



グラフを見る限り、1時間の間にシーイングがどんどん良くなっているのがわかります。9時頃は4秒書く以上と、典型的か少し悪い程度。それが改善されていって、10時頃からは1秒角程度になっているので、相当良かったことがわかります。この評価ですが、見た目で仕分けたものと比較してみます。見た目の画像は先に書いたように、ImPPGで細部出しをしたもので分別しています。

graph_x1_eye_ok

右軸の目の評価はランク付けしただけの値なので、秒角とは無関係ですが、少なくともTenengradで評価した傾向は目で見て分けた傾向とそこそこ合っているように見えます。その目で仕分けた画像を、分解能別の頻度分布を画像枚数で表してみます。
hist_x1_ok
頻度は正規分布にそこそこ従っているように見えます。全枚数をある程度の順位付けした後、一番いいものと一番悪いもの、ちょうど真ん中のもの、真ん中とベスト、ワーストの中間の5枚を引き出して並べてみたものが下の比較図です。左がワースト、右がベストになります。

five

同じ機材、同じ手法、同じ日でも、1時間内で見た目でわかるほど大きく分解能が変化することがわかります。このばらつきが上記のような分布に従うとすると、何も考えずに適当に撮影すると真ん中ら辺の画像になる確率が一番高くなります。きちんと選ぶと、1時間で120枚撮影したうちのわずか数枚は、ものすごくいいシーイングになりますが、その確率は数%と小さいので、偶然に頼るのはあまり得策でないことがわかります。


2倍バローでどうなるか?

上記の撮影に加えて、連続して2倍のバローレンズをつけて焦点距離を伸ばし、再び同条件で1時間、120枚の撮影をしました。焦点距離を増やしたということは、カメラのピクセルサイズの制限が緩和されるので、うまくいくとより分解能がよくなるはずです。

これも同様に時系列で解析します。

graph_x2_ok

横軸の時間を見てもらうとわかりますが、1倍の撮影の直後の時間帯から始めていて、グラフの値も1倍の最後のところをほぼ踏襲しているように見えるので、評価としては同様のことができていると思われます。

続いて、目で仕分けしたものとの同一プロットです。

graph_x2_eye_ok


まあそこそこ傾向は一致しているように見えます。というより、目で見ていてももう良すぎて差がわからないと言った状況でした。

同様に分布図です。

hist_x2_ok

1倍の時は正規分布に近い形をしていましたが、2倍の場合はどちらかというとピークが左側に寄ってしまっていて分解能が頭打ちのような状況になっているのかと思います。一つの解釈は、もう口径や光学系の制限に近づいてしまい、これ以上シーイングが良くなっても、像は良くならないと考えることができそうです。もしまだシーイングのばらつきが効いているなら、分布はもっと左側に広がってもいいはずだということです。

実際、1倍の時の一番いい画像と、2倍の時の1番いい画像を比べてみます。
x1_x2

確かに微妙に2倍の方がいいように見えますが、そこまで大きな差は無いと言えそうです。いいシーイングを実現してはじめて、やっとヘリオスター100Hαの性能限界に近づくことができるということなのかと思います。逆に言うと、口径100mmの性能を引き出すのは、そう簡単ではないということです。

もし、ヘリオスターの76mmでも100mmでもいいのですが、撮影したらフェニックスとそう結果が変わらなかったと悩んでいる場合は、ぜひともシーイングを選ぶということをやってみてください。方法はいろいろあるかと思いますが、これまでの経験から30秒くらいの単位で大きく変わることもあるので、やはり今回のように長時間、30秒くらいのスパンで間欠的に撮影して選ぶのが確実なのかと思います。


シーイングがこんなにいいのは本当か?

ここで少し疑問が湧きます。上のシーイングの時系列グラフを見てみると、1秒角を切っているところがあります。日本でのシーイングは典型的には2-4秒角、いい時でも1秒角と言われています。今回のように1秒角を平気で切るようなことはあり得るのでしょうか?

少し調べてみると、一般的な天文観測サイトでは
  • 良い観測地(世界標準)-> 中央値 0.6–0.8″
  • 普通の観測地 -> 中央値 0.8–1.5″程度
  • 都市・低地 -> 中央値 2″以上も普通
とのことです。でもこれは世界でのことで、日本ではいろいろ不利な面があり、典型的には
  • 山岳観測所(木曽・岡山など) -> 中央値 1–2″程度が中心
  • 良い夜(山) -> 中央値 0.8–1.0″
  • 非常に良い夜 -> 中央値 0.6–0.8″
  • 平地・都市 -> 中央値 2–4″以上も普通
とのことです。これらの値は全て中央値であることに注意です。今回の撮影は自宅なのですが、時間によって1秒角から5秒角くらいまではブレても良さそうです。今回の測定結果を見ると、6秒角くらいから1秒角を切った時間帯もあります。もう少しきちんと考えてみます。

そもそも、シーイングとは普通はどう測定されるのかというと、一般的にはDIMM(Differential Image Motion Monitor)とも呼ばれ、ミリ秒単位の短い露光で「波面の傾きの揺らぎ」を測定し、その「ばらつき(分散)」を評価します。注意すべきことは、DIMMでは短時間露光が必須ということです。仮に露光時間を長くして平均化すると画面はぼやけるのですが、その一方でばらつきは小さくなってしまうため、もしシーイングとして評価しようとすると、良すぎる値が出てしまいます。要するに、平均化で見た目はボケてもシーイングがいいと判断してしまい、逆センスとなるわけです。これはシーイングという指標が、高次の細かい波形を見ているわけではないことを示しています。

その一方、今回の撮影は惑星のように、ごく短時間露光で撮影して多数枚をスタックしています。具体的には5ms撮影で160枚スタックしたものを1枚の静止画としています。AutoStakkertは特徴点を抽出して画像を歪めて位置合わせするようなアルゴリズムのはずなので、短時間で露光したものは一瞬一瞬のブレの少ない状態を撮影して、その特徴的な位置を認識し、次の画像も特徴的な位置を合わせるように画面を歪ませて画像を重ね合わせています。なので同じトータル時間 (ここでは5秒くらい) で単純に平均化した画像と比較すると、位置合わせして多數枚スタックした画像はシャープさが格段に良くなります。こう考えると、短時間露光で評価したシーイングと、位置合わせ多数枚スタックは同等の露光時間で評価したと言っていいのかと思います。

もう少し詳しく書いておきます。今回スタックした画像というものは、厳密にはシーイングそのものは違っていて、実効的にはPSF(Point Spread Function)を評価しています。PSFは点光源がどのように広がるかを表す関数で、これを「秒角/pixel」という画角とカメラセンサーから出てくる値から、PSFのFWHM を秒角単位にしたものです。短時間露光のスタックなので、短時間露光で測定したシーイング相当になるというのは上記で説明したとおりでいいでしょう。ただし、短時間露光スタックの方が一般的にいいFWHM値が出てしまうようです。理由は難しくはなく、位置合わせによって本来シーイングが見るべき傾き成分が取り除かれてしまい低周波成分が減るため、PSFのFWHMが小さくなるとのことです。例えばオフアキでのAO撮影のように、単純に各フレームを平行移動でそろえるだけでも一般的にFWHMは改善しますし、画像を歪ませての位置合わせとなると改善はさらに大きくなります。

さらにですが、今回は200枚中の上位160枚で8割を選んで使っていますが、この割合をもっと減らして1つのserファイル内でラッキーイメージング的なことをもっと進めると、さらに改善幅は大きくなる可能性があります。

というわけで、普通に評価するシーイングよりもスタックした方がある程度良い値になるというのは少なくとも定性的にはおかしくなさそうで、上記のグラフで出した良すぎる値は十分あり得るのかと思います。

このように厳密にいうとスタック撮影から評価した分解能はシーイングとは違うということになりますが、ここではイメージしやすいということで、グラフ内ではシーイングという言葉をあえて残すことにします。


まとめ

撮影した多数の太陽のHα画像から、シーイング相当の時間変化を定量的に評価してみました。1時間でシーイングは大きく変化し、その際の最も分解能の出ている画像と、最もボケた画像では、大きく違うことがわかりました。同じ機材を使って、ここまで大きな差があることは驚き以外のなにものでもありません。いいシーイングを選ぶということは非常に重要で、口径の大きいヘリオスター100Hαはシーイングを選ぶだけの価値がある太陽望遠鏡だということです。その一方で、口径限界まで達するとそれ以上いいシーイングがあったとしても、分解能は頭打ちになってしまいもうそれ以上改善しません。

口径100mmはハイエンドクラスの太陽望遠鏡なのですが、口径200mmや300mmでの太陽画像の分解能はさらに別世界となります。例えばここは、口径300mmの太陽望遠鏡を市販しているメーカーになります。最後は口径が効いてくるのは、惑星の場合と同じなのかと思います。


日記

2月の途中から3月はとにかく忙しかったです。CP+もありましたが、その前後も合わせて出張が多くて、ほとんど自宅にいない日が続きました。たまに自宅にいても1日とか2日で、次の日朝早く出発することを考えるとなかなか夜の撮影もままならない日が続きました。

そんな中で、先日実家の名古屋に行く用事があり、ついでにSCORPIOに寄ってきました。いつもの如く何か買うわけではないので申し訳なかったのですが、店長さんにCP+の黒点振動の動画を見せたりして盛り上がりました。ちょうど来ていたお客さんに、小学4年生の男の子と、さらにその後中学2年生の女の子がいたので、黒点振動や撮影した星雲や銀河の写真をみてもらいました。二人とも天文に興味がある子達で、一人は望遠鏡の受け取りに、もう一人は赤道儀の検討に家族と一緒に来店していました。その間に、ヘリオスター76Hαを覗かせてもらったりして、結局2時間近く滞在してしまいました。店を出た後に、たまたま宙うたさんが来店されたらしくて、つい先日購入されたヘリオスター100Hαを持ち込んで76Hαと並んで太陽を見ていたとのこと。せっかくなので宙うたさんとお会いしたかったです。もう少し長くいればよかったのかもしれません。

更に今週末は天文仲間のお客さんが自宅に来る予定です。少し準備をしたいので、できれば平日のうちに晴れてくれればいいのですが。


CP+で話した太陽トークで示した新しいこと:
の2つ目、白いモヤモヤについてCP+前に調べたことを記事にしておきます。


分光で気づいた白いモヤモヤ

太陽Hα画像で白モヤモヤに気づいたのは、分光撮影を始めた頃です。分光で一番最初に撮影した2025年6月20日時の記事の中の画像でも、すでにそのモヤもモヤが出ています。


下がその時の画像で、白く明るいプラージュとは別に、広い範囲にわたって淡い白でモヤモヤしたものが広がっているのがわかるかと思います。
10_09_34_x4_20250617_autostretch_0_00

なぜそんなことに気づいたかというと、分光を始める直前に口径8cmの鏡筒にPSTをつけて太陽全景を撮影していた時の画像をよく覚えていたからです。以下のような画像です。
10_57_04_lapl2_ap10495_IP

FWHMが大きいPSTながら、上の画像は太陽を全景でそこそこ撮れているので、すでにあまり不満はありませんでした。いわゆる典型的なHα画像で、太陽表面全体が「賑やかな模様」で覆われていて、その迫力を十分に楽しむことができます。

これに比べると、一つ上の分光画像は太陽表面全体がなんか「のっぺり」しているのです。最初は「あれ?活動期が突如終わったのか?」とか、「うまく撮れていないのか?」とか、「分光ってもしかしてFWHMは小さいけどつまらない画像しか撮れない?」とかいろいろ思っていました。

その一方、のっぺりした表面の中に何か「白いモヤモヤ」したものが写っていて、PST画像では見えない何かが写っているのではと思い、ネットに上がっている画像と比較してみました。確かにFWHMの小さい分光画像には再現性よく「白いモヤモヤ」が写っていて、かつ「のっぺり」。PSTやLUNTなどの比較的FWHMが大きいと思われる同じ日の太陽画像には「賑やかな太陽表面」である一方白いモヤモヤは写っていません。

ブログの記事の中で明確にそのことについて触れたのは、7月1日のCaK線を撮影してHα線画像と比較した時です。この時点ですでにCaK画像とHα画像についての相似性について言及しています。


もっとはっきり議論したのは応用編に入ってからの7月14日の記事です。


ここでは、FWHMの大きさによって見え方がどれくらい違うかを、0.25ÅのSMART(左)と、0.6Å以下のフェニックス(真ん中)、1Å以下のPST(右)で比較しています。
all

上の段が実画像で、下の段が波長分解能が0.091ÅのSHG700で、Hαを中心に波長域を広げて重ね合わせることで上の段の画像をシミュレートしたものです。FWHMが小さいと見える白いモヤモヤですが、フェニックスでもごく僅かに見えていて、PST画像に至っては全く見えなくなっています。

同日のFWHMが0.091ÅのSHG700の画像が以下になりますが、白いモヤモヤがSMART画像よりもさらにはっきり見えているのがわかります。
07_13_53-trimmed_0000_07_13_53-trimmed_averaged0

このように、Hα中心線にかなり近づいた時のみ出てくる、白いモヤモヤに見える何かが存在することはわかるかと思います。ちなみに、JSol'Exの標準スクリプトで処理される観賞用のHα画像は、中心波長だけだとのっぺりして面白みがないのか、中心波長に周りの波長を少し加えて多少見栄えがするように仕上げたりしています。


白いモヤモヤの名前

この白いモヤモヤですが、名前とかはついているのでしょうか?

この時点ですでにフェニックスやヘリオスターの76Hαは製品として市販されていましたし、エタロンのダブルスタックでFWHMを実効的に狭くして撮影したという画像がある程度出回っていて、そこにもそれらしき白いモヤは写っているものはあります。でもFHWMが分光撮影に比べたらまだ広く、そこまではっきりしていないせいなのか、ほとんど話題になるようなことはありませんでした。

この時点で2025年の夏くらいで、ちょうど胎内の星まつりで太陽に詳しいSさんの講演があったので、その講演に参加しリモート越しでしたが直接尋ねてみました。講演内で紹介されていたダブルスタックエタロンで移したという画像に、実際に白いモヤモヤが写っていたからです。しかしながら、名前もそうですが、白いモヤモヤ自身に気づいていらっしゃらないようでした。その後何人かの太陽に詳しい方に聞いてみたのですが、当時は分光でもSHG700ほどの分解能で太陽を見ている人はまだ日本では皆無で、ダブルスタックで見ている人も画像に写ってはいるものの気づいている人も皆無でした。

そんな中、2026年2月に新潟に行く機会があり、たまたまその時期に開催れていた新潟天文研究会の写真展に立ち寄った時のことです。そこで太陽に大変詳しいWさんとお会いすることができ、自分が撮った白いモヤモヤを画像を見せながら聞いてみると、「名前そのものは覚えていないが、少なくとも名前がついていたはずだ」との心強い意見が得られました。そこで、ちょうどCP+のこともあるので、本気で調べてみることにしました。


白いモヤモヤの正体

大きなヒントはHα画像と、同日に撮影したCaK画像の比較でした。


09_01_29-trimmed_0000_09_01_29-trimmed_autostretch_0_00

08_40_23-trimmed_0000_08_40_23-trimmed_colorized_0_00

上の2枚を比べると、プラージュクラスの白い明るい部分以外でも、より淡い白い部分で一致する模様がたくさんあるのがわかります。

まず、CaKの画像のプラージュ以外の淡い部分はChromospheric Network(彩層ネットワーク)、あるいはNetwork Bright Points / Network Elementsなどと呼ばれていることは比較的簡単にわかりました。

今回の事象の大元は、プラズマの流れにより太陽表面の磁力線が掃き寄せられて磁場が集中し「磁気ネットワーク」が形成され、磁場集中により周囲のセル内部に比べて彩層(光球の上の層)では輝度が高く、明るい網目状の構造(ネットワーク)として観測されるとのことです。プラージュが強磁場での活動領域とすると、ネットワークは静穏領域での磁場活動とかんがえるといいのでしょう。

今回見えたCaK画像の場合「磁気ネットワークが彩層に投影されたもの」という理解になります。ただし、今回撮影したCaK画像の透過波長幅は0.1Å程度とかなりの分解能になるのですが、一般的なCaKフィルターの透過幅は数Åと分光での撮影に比べて数十倍広いので、上の画像のような白く淡いモヤモヤに相当する部分はあまりはっきりとは出ないようです。このことについては私は一般的なCaKフィルターを持っていないので、確かめることはできていません。

「磁気ネットワーク」という物理的な現象はわかったのですが、それがHα画像になるとなぜ白いモヤモヤになるのか?ここがまだ謎でした。調べていくと
  • Photospheric magnetic network (光球面の磁場ネットワーク) → Chromospheric network (彩層面ネットワーク) → Hα fibril canopy
という三層対応となっていることがわかりました。fabril canopyに対する日本語はまだあまりないみたいです。

もっと具体的には
  • CaKでの形成高度が~1000–1500 kmで主に垂直方向の磁場集中を強調され、「磁場の足元」が明るい
  • Hαでは形成高度が~1500–2000 kmで磁場に沿った水平フィブリルが支配的、ネットワーク境界から横方向へ拡張されている
ということです。もう少しわかりやすく書くと、Hαではフィブリルが横方向に広がるため、ネットワーク境界から“傘状”に拡張され、「淡いベール」になる。すなわち、CaKで見える網目の“源”がHαではフィブリルとして広がり、モヤになるということのようです。フィブリルもしくはファイブリルは日本語では原線維とか微小繊維と訳されるようで、ファイバーと同じ語源を持ち、光ファイバーの断面もフィブリル構造とのことなので、それを想像すると少しイメージが湧くかもしれません。

日本語の解説はここがわかりやすいです。


ネットワークからネットワークに向けて出ている細長い構造をファイブリル (fibril) と呼び、解像度が低い画像ではまだら模様に写るため「モットル (mottle, 斑紋) 」と呼んでいるとのことです。ただ、ここの説明が本当に白いモヤモヤのことを言っているのかはまだ少し納得がいっていなくて、むしろここ

白紋のことなのかもしれません。

いずれにせよ、今回の画像から少なくとも言えることは、このモットルやフィブリルなどと呼ばれる白いモヤモヤを見ることができる太陽望遠鏡は、エタロン、分光という手法に限らず、非常に優れた狭い波長透過幅を持っているということでしょう。

CP+では、ヘリオスター100Hαは十分に見ることができ、エタロンの透過曲線を実測してもFWHMが0.32Åと非常に優れていて、フェニックスもそれには少し劣るが、FWHMが0.37Åと優れていて白いモヤモヤが僅かに見えるということを示しました。


他波長との比較

別の日のHa、CaK、Hβ、Hγの画像を見比べても、同様の模様の相似性がわかります。


以下それぞれの画像と、(波長)、透過波長幅です。

Hα (6562.81Å), 0.091Å
09_39_22-trimmed_0000_09_39_22-trimmed_colorized_0_00


CaK (3933.66Å), 0.113Å
IP_resize_lapl2_ap5118_IP

Hβ (4861.34Å), 0.108Å: 白いモヤモヤに相当する分が、周りより少し暗く出ているように見えます。
03_Hbeta_0001_08_44_26_colorized_0_00

Hγ (4340.47Å), 0.111Å
04_Hgamma_0000_08_56_44-trimmed_colorized_0_00

HβやHγではネットワーク構造は吸収(暗いコントラスト)として出ていると考えるのが妥当なようです。


まとめ

分光撮影を始めて、Hα線周りをかなり波長幅の狭いFWHMで撮影できるようになって以来、ずっと謎だった白いモヤモヤの正体が、CP+で発表することをきっかけに調べて、やっと正体が判明しました。

まとめると、
  • 磁場ネットワークが大元。
  • CaK: ネットワーク構造が 明るい網目として彩層に強く出ている。
  • Hα: 同じ磁場構造がフィブリル構造として広がり白いモヤモヤになる。
  • Hγ, Hβ: 同じ場所が 吸収寄り(暗)になり、低コントラストで現れ得る。
というようなことがわかりました。

アマチュア天文の機材でこれだけのことが検証できるというのはすごいです。しかも今回、自分で撮影したものの正体を調べていくとだんだんわかってくるという、もう謎解きプロセスと言っていいようなものをそのまま味わうことができました。これだから天文趣味はやめられません。

分光で検証できますが、優れたエタロンを持つヘリオスター100Hαでも見ることができ、頑張ればフェニックスでも見ることができるので、皆さんも挑戦してみてはいかがでしょうか?

CP+で話した太陽トークの内容で、まだ一部記事にしてないことがいくつかあります。
順に記事にしていこうと思います。今回は1のヘリオスターのエタロンについてです。


これまでの結果

これまでに、PST、フェニックスと、手持ちの太陽望遠鏡のエタロンの特性を測定してきました。





PSTに比べて、フェニックスが圧倒的に性能が良くなっているという結果でした。

具体的には、鏡間の距離が0.3mmから0.2mm程度に短くなってFSRが1.5倍広がったために、両隣のピークの影響がすくなくなったこと、FSRが広がってピークの太さは太くなるはずなのに、鏡の反射率を70%程度から90%程度に上げて、FWHMを捕捉してよりHα線をコントラストよく補足するようになっていることがわかりました。

今回はそれに加えて、CP+セミナーのためにお借りしていたヘリをスター100Hαについても同様の測定をしてみます。公称値ではフェニックスが0.6Å以下、ヘリオスターが0.5Å以下となっていて、差がついています。特にこの差が有意なのかどうか、フェニックスのエタロンに比べて違いがあるのかどうかに注目です。


ヘリオスター100Hαの測定

測定方法はフェニックスの時とほぼ同じです。測定日は2月8日、LEDライトを使って測定しています。確度依存性をなくすために鏡筒を使い、対物レンズ側からLEDライトを入射します。

IMG_2532

分光器はSHG700を使い、カメラはG3M678M。画像としては
  1. 分光器のみで鏡筒をつけないフランホーファー線
  2. 鏡筒からBF(ブロッキングフィルター)を外した状態(エタロンの測定)
  3. 鏡筒のノーマルの状態(エタロンあり、BF無し)で太陽望遠鏡としての測定
  4. BFのみ分光器に取り付けた場合
の4つを撮影しています。この中で今回は1、2、4を使っています。

1枚の分光画像の撮影は、10秒露光で10スタックの計100秒間撮影しています。ゲインは3200(=ZWOだと300に相当)で、オフセットをSharpCapの値で2000加えています。


測定結果

波長のキャリブレーションはこれまで同様に、フラウンホーファー線を撮影し、参照データ(PEPSI)にフィッティングしています。
Figure_1
エタロンの透過特性の測定値とフィッティングです。
fit_result
  • 鏡の強度反射率、強度透過率: R = r^2 = 0.909, T = t^2 = 0.091
  • キャビティーの鋭さを表すFinesse = π r/(1-R) = 33.1
  • エタロンを構成する鏡と鏡の間の距離 = 0.208 [mm]
  • 周期の幅を表すFSR (Free Spectrul Range) = 10.34 [Å]
  • エタロンの性能を表すFWHM = FSR/Finesse=0.31 [Å]
  • 光の折り返し回数: Finesse x 2/π = 21.1 [回 (片道)]
という結果になりました。

フェニックスのFWHMが0.37Åでヘリオスター100Hαが0.31Åと、約2割違うことがわかります。公称値も0.6Å以下と0.5Å以下で2割の差があるで、ちょうどその違いを説明できています。今回測定したFWHMの絶対値がまだどこまで信頼できるかはわかりませんが、少なくとも同様の方法で測定しているので相対的な違いはある程度正確に評価できていると考えると、公称値の違いも含めてこの差は有意であると考えて良さそうです。これは推測ですが、今回FSRの値はほぼ一緒の0.2mmなので、おそらくエタロンと作っている会社は同じではないかと思います。その上で、公称値に差をつけているということは、鏡の反射率を実際に変えてFWHMに差をつけていると考えると素直な気がします。

続いて、BFも考慮した場合の透過曲線です。エタロンの測定値とBFの測定値を掛け合わせています。BFは両隣のピークからの漏れをカットする役目がありますが、グラフを見る限り十分カットしていることがわかります。
all

さらに、太陽光を掛け合わせたものです。太陽光を掛け合わせると、両隣のピークの影響が少し出てくることがわかりますが、積分した総光量に対する量としてはごく僅かで、大した影響はなさそうなことがわかります。
all_sun_multi

ここまで見ても、相当性能の良いエタロンだということがわかります。


エタロン透過曲線のフィッティングについて

少し考察します。エタロンのフィッティング曲線をPST、フェニックス、ヘリオスターを並べてみます。

fit_result

fit_result_ok

fit_result
よく見ると、どのグラフもピークの裾の部分が、実測とフィッティングがずれしまっているように見えます。いずれも実測よりもフィッティングの方が大きく出てしまっています。

もし、裾野部分のフィッティングが実測に合うように重みづけをして改めてフィットしたりすると、おそらくフィッティングしたピークはもっと細くなって、FWHMはさらに小さくいい値になってしまうでしょう。今でもPST、フェニックス、ヘリオスターの公称値

1.0Å以下、0.6Å以下、0.5Å以下

に対して、私が実測した値は
0.71Å、0.37Å、0.32Å
と公称値よりかなりいい値になっています。これに、裾の影響を補正するとさらにいい値になってしまうのは、方向性として果たして正しいのでしょうか?

そもそも、なぜ実測とフィティングでズレが起きるのか考えてみます。光キャビティーは一般的にはh状に素直な応答を示し、かなり理論的に説明できるものです。今回のずれは光キャビティーそのものというよりは、その測定方法に問題があると考える方が素直です。

では何が問題なのでしょうか?一つ考えられることは、測定時間が10秒x10スタック=100秒と長過ぎたことかと思われます。今回の応答はフィネスを見てもわかるように、そこそこ鋭いものになっています。実際、ヘリオスターはその鋭いピークゆえに実測点はわずか5-7点ほどです。ピーク周りに至っては3点ほどでピークを跨いで測定してしまっています。1つの測定はカメラの1ピクセルに相当します。ピクセルサイズを考えるとわずか2μmです。測定時間の間、カメラに入る光が全くずれなければいいのですが、地面や望遠鏡を載せている机が揺れるため、100秒の長い間には、例えばLEDライトと望遠鏡が相対的に僅かにズレることはあり得るでしょう。

もしピークのところがずれたとすると、どちら方向にずれても値は小さく読み取られます。値が小さくなる傾向はピークに近いところほど顕著で、裾に行くに従って緩和されます。すなわち、ピークが低い値で測定され、ピークに近いところではその分太るので、本来のピークよりも頭でっかちなものとして測定されていると考えられます。その頭でっかちなところを合わせるようにフィットすると、裾の部分でズレが大きくなり、本来のFWHMよりも大きな、性能の悪いものと結果が出てしまいます。

この推測が正しい、もしくは他の理由で裾がズレるとしても、いずれにせよ裾の方が測定点が多く、本来の値からのズレは少ないと考え、ピーク部分のずれが本来の値から大きくズレると考えると、実際のFWHMはもっと小さいと考えて良さそうです。

ただし、今回は撮影画像の上に凸の曲線の真ん中の部分だけを使っているので、エタロンの中心部のみを測定していることになります。もしかしたら端の方はもっと透過幅が大きくて、その平均を取るとメーカー値に近づくのかもしれません。ここら辺は今後の課題としたいと思います。

どこをどう測定するかで値は変わってきそうですし、一番いい最小値か、平均値か、最低限の保証をするために最大値を採用するかなどは、メーカーによっても方針が違うかもしれません。やはりきちんと比較するためには、同じ方法で、同じ基準で比較すべきで、そういった意味では手元に持って実測して相対値を比較するのが一番確実だと思われます。少なくとも、今回まででPSTとフェニックスとヘリオスター100Hαの違いは、相対的にはっきり見ることができたというのが結論になると思います。


まとめ

これで手持ちと借りたもののエタロンとBFの測定が終わりました。太陽望遠鏡は高価なのでなかなか自分で買うことはできません。もし今後借りたり、もしくは新しい鏡筒を手に入れたりできた場合にはまた測定を続けようと思います。

あと、もう少し精度を上げたいとも考えています。短時間測定や中心部以外を測定するのも、今後余裕があったら試すことができればと思います。





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