CP+で話した太陽トークで、示した新しいこと
の2つめ、白いモヤモヤについてCP+前に調べたことを記事にしておきます。
太陽Hα画像で白モヤモヤに気づいたのは、分光撮影を始めた頃です。分光で一番最初に撮影した2025年6月20日時の記事の中の画像でも、すでにそのモヤもモヤが出ています。
下がその時の画像で、白く明るいプラージュとは別に、広い範囲にわたって淡い白でモヤモヤしたものが広がっているのがわかるかと思います。
なぜそんなことに気づいたかというと、分光を始める直前に口径8cmの鏡筒にPSTをつけて太陽全景を撮影していた時の画像をよく覚えていたからです。以下のような画像です。
FWHMが大きいPSTながら、上の画像は太陽を全景でそこそこ撮れているので、すでにあまり不満はありませんでした。いわゆる典型的なHα画像で、太陽表面全体が「賑やかな模様」で覆われていて、その迫力を十分に楽しむことができます。
これに比べると、一つ上の分光画像は太陽表面全体がなんか「のっぺり」しているのです。最初は「あれ?活動期が突如終わったのか?」とか、「うまく撮れていないのか?」とか、「分光ってもしかしてFWHMは小さいけどつまらない画像しか撮れない?」とかいろいろ思っていました。
その一方、のっぺりした表面の中に何か「白いモヤモヤ」したものが写っていて、PST画像では見えない何かが写っているのではと思い、ネットに上がっている画像と比較してみました。確かにFWHMの小さい分光画像には再現性よく「白いモヤモヤ」が写っていて、かつ「のっぺり」。PSTやLUNTなどの比較的FWHMが大きいと思われる同じ日の太陽画像には「賑やかな太陽表面」である一方白いモヤモヤは写っていません。
ブログの記事の中で明確にそのことについて触れたのは、7月1日のCaK線を撮影してHα線画像と比較した時です。この時点ですでにCaK画像とHα画像についての相似性について言及しています。
もっとはっきり議論したのは応用編に入ってからの7月14日の記事です。
ここでは、FWHMの大きさによって見え方がどれくらい違うかを、0.25ÅのSMART(左)と、0.6Å以下のフェニックス(真ん中)、1Å以下のPST(右)で比較しています。
上の段が実画像で、下の段が波長分解能が0.091ÅのSHG700で、Hαを中心に波長域を広げて重ね合わせることで上の段の画像をシミュレートしたものです。FWHMが小さいと見える白いモヤモヤですが、フェニックスでもごく僅かに見えていて、PST画像に至っては全く見えなくなっています。
同日のFWHMが0.091ÅのSHG700の画像が以下になりますが、白いモヤモヤがSMART画像よりもさらにはっきり見えているのがわかります。
このように、Hα中心線にかなり近づいた時のみ出てくる、白いモヤモヤに見える何かが存在することはわかるかと思います。ちなみに、JSol'Exの標準スクリプトで処理される観賞用のHα画像は、中心波長だけだとのっぺりして面白みがないのか、中心波長に周りの波長を少し加えて多少見栄えがするように仕上げたりしています。
この白いモヤモヤですが、名前とかはついているのでしょうか?
この時点ですでにフェニックスやヘリオスターの76Hαは製品として市販されていましたし、エタロンのダブルスタックでFWHMを実行的に狭くして撮影したという画像がある程度出回っていて、そこにもそれらしき白いモヤは写っているものはあります。でもFHWMが分光撮影に比べたらまだ広く、そこまではっきりしていないせいなのか、ほとんど話題になるようなことはありませんでした。
この時点で2025年の夏くらいで、ちょうど胎内の星まつりで太陽に詳しいSさんの講演があったので、その講演に参加しリモート越しでしたが直接尋ねてみました。講演内で紹介されていたダブルスタックエタロンで移したという画像に、実際に白いモヤモヤが写っていたからです。しかしながら、残念ながら名前もそうですが、白いモヤモヤ自身に気づいていらっしゃらないようでした。その後何人かの太陽に詳しい方に聞いてみたのですが、当時は分光でもSHG700ほどの分解能で太陽を見ている人はまだ日本では皆無で、ダブルスタックで見ている人も画像に写ってはいるものの気づいている人も皆無でした。
そんな中、2026年2月に新潟に行く機会があり、たまたまその時期に開催れていた新潟天文研究会の写真展に立ち寄った時のことです。そこで太陽に大変詳しいWさんとお会いすることができ、自分が撮った白いモヤモヤを画像を見せながら聞いてみると、「名前そのものは覚えていないが、少なくとも名前がついていたはずだ」との心強い意見が得られました。そこで、ちょうどCP+のこともあるので、本気で調べてみることにしました。
大きなヒントはHα画像と、同日に撮影したCaK画像の比較でした。
上の2枚を比べると、プラージュクラスの白い明るい部分以外でも、より淡い白い部分で一致する模様がたくさんあるのがわかります。
CaKの画像のプラージュ以外の淡い部分はChromospheric Network(彩層ネットワーク)、あるいはNetwork Bright Points / Network Elementsなどと呼ばれていることがわかりました。
今回の事象の大元は、プラズマの流れにより太陽表面の磁力線が掃き寄せられて磁場が集中し「磁気ネットワーク」が形成され、磁場集中により周囲のセル内部に比べて彩層(光球の上の層)では輝度が高く、明るい網目状の構造(ネットワーク)として観測されるとのことです。プラージュが強磁場での活動領域とすると、ネットワークは静穏領域での磁場活動とかんがえるといいのでしょう。
「磁気ネットワーク」という物理的な現象はわかったのですが、それがHα画像になるとなぜ白いモヤモヤになるのか?ここがまだ謎でした。調べていくと
白紋のことなのかもしれません。
いずれにせよ、今回の画像から少なくとも言えることは、このモットルやフィブリルなどと呼ばれる白いモヤモヤを見ることができる太陽望遠鏡は、エタロン、分光という手法に限らず、非常に優れた狭い波長透過幅を持っているということでしょう。
CP+では、ヘリオスター100Hαは十分に見ることができ、エタロンの透過曲線を実測してもFWHMが0.32Åと非常に優れていて、フェニックスもそれには少し劣るが、FWHMが0.37Åと優れていて白いモヤモヤが僅かに見えるということを示しました。
別の日のHa、CaK、Hβ、Hγの画像を見比べても、同様の模様の相似性がわかります。
以下それぞれの画像と、(波長)、透過波長幅です。
Hα (6562.81Å), 0.091Å
CaK (3933.66Å), 0.113Å
Hβ (4861.34Å), 0.108Å: 白いモヤモヤに相当する分が、周りより少し暗く出ているように見えます。
Hγ (4340.47Å), 0.111Å
HβやHγではネットワーク構造は吸収(暗いコントラスト)として出ていると考えるのが妥当なようです。
分光撮影を始めて、Hα線周りをかなり波長幅の狭いFWHMで撮影できるようになって以来、ずっと謎だった白いモヤモヤの正体が、CP+で発表することをきっかけに調べて、やっと正体が判明しました。
まとめると、
分光で検証できますが、優れたエタロンを持つヘリオスター100Hαでも見ることができ、頑張ればフェニックスでも見ることができるので、皆さんも挑戦してみてはいかがでしょうか?
- ヘリオスター100Hαのエタロンの応答を、実測した。
- 白いモヤモヤが何か判明した。
- 大口径太陽望遠鏡で、シーイングの時間変化を評価してみた。
- シーイングを分類し、画像で見比べてみた。
- 黒点の3分間振動が見えた。振動が広がっていく様子もはっきり見えた。
分光で気づいた白いモヤモヤ
下がその時の画像で、白く明るいプラージュとは別に、広い範囲にわたって淡い白でモヤモヤしたものが広がっているのがわかるかと思います。
なぜそんなことに気づいたかというと、分光を始める直前に口径8cmの鏡筒にPSTをつけて太陽全景を撮影していた時の画像をよく覚えていたからです。以下のような画像です。
FWHMが大きいPSTながら、上の画像は太陽を全景でそこそこ撮れているので、すでにあまり不満はありませんでした。いわゆる典型的なHα画像で、太陽表面全体が「賑やかな模様」で覆われていて、その迫力を十分に楽しむことができます。
これに比べると、一つ上の分光画像は太陽表面全体がなんか「のっぺり」しているのです。最初は「あれ?活動期が突如終わったのか?」とか、「うまく撮れていないのか?」とか、「分光ってもしかしてFWHMは小さいけどつまらない画像しか撮れない?」とかいろいろ思っていました。
その一方、のっぺりした表面の中に何か「白いモヤモヤ」したものが写っていて、PST画像では見えない何かが写っているのではと思い、ネットに上がっている画像と比較してみました。確かにFWHMの小さい分光画像には再現性よく「白いモヤモヤ」が写っていて、かつ「のっぺり」。PSTやLUNTなどの比較的FWHMが大きいと思われる同じ日の太陽画像には「賑やかな太陽表面」である一方白いモヤモヤは写っていません。
ブログの記事の中で明確にそのことについて触れたのは、7月1日のCaK線を撮影してHα線画像と比較した時です。この時点ですでにCaK画像とHα画像についての相似性について言及しています。
もっとはっきり議論したのは応用編に入ってからの7月14日の記事です。
ここでは、FWHMの大きさによって見え方がどれくらい違うかを、0.25ÅのSMART(左)と、0.6Å以下のフェニックス(真ん中)、1Å以下のPST(右)で比較しています。
上の段が実画像で、下の段が波長分解能が0.091ÅのSHG700で、Hαを中心に波長域を広げて重ね合わせることで上の段の画像をシミュレートしたものです。FWHMが小さいと見える白いモヤモヤですが、フェニックスでもごく僅かに見えていて、PST画像に至っては全く見えなくなっています。
同日のFWHMが0.091ÅのSHG700の画像が以下になりますが、白いモヤモヤがSMART画像よりもさらにはっきり見えているのがわかります。
このように、Hα中心線にかなり近づいた時のみ出てくる、白いモヤモヤに見える何かが存在することはわかるかと思います。ちなみに、JSol'Exの標準スクリプトで処理される観賞用のHα画像は、中心波長だけだとのっぺりして面白みがないのか、中心波長に周りの波長を少し加えて多少見栄えがするように仕上げたりしています。
白いモヤモヤの名前
この白いモヤモヤですが、名前とかはついているのでしょうか?
この時点ですでにフェニックスやヘリオスターの76Hαは製品として市販されていましたし、エタロンのダブルスタックでFWHMを実行的に狭くして撮影したという画像がある程度出回っていて、そこにもそれらしき白いモヤは写っているものはあります。でもFHWMが分光撮影に比べたらまだ広く、そこまではっきりしていないせいなのか、ほとんど話題になるようなことはありませんでした。
この時点で2025年の夏くらいで、ちょうど胎内の星まつりで太陽に詳しいSさんの講演があったので、その講演に参加しリモート越しでしたが直接尋ねてみました。講演内で紹介されていたダブルスタックエタロンで移したという画像に、実際に白いモヤモヤが写っていたからです。しかしながら、残念ながら名前もそうですが、白いモヤモヤ自身に気づいていらっしゃらないようでした。その後何人かの太陽に詳しい方に聞いてみたのですが、当時は分光でもSHG700ほどの分解能で太陽を見ている人はまだ日本では皆無で、ダブルスタックで見ている人も画像に写ってはいるものの気づいている人も皆無でした。
そんな中、2026年2月に新潟に行く機会があり、たまたまその時期に開催れていた新潟天文研究会の写真展に立ち寄った時のことです。そこで太陽に大変詳しいWさんとお会いすることができ、自分が撮った白いモヤモヤを画像を見せながら聞いてみると、「名前そのものは覚えていないが、少なくとも名前がついていたはずだ」との心強い意見が得られました。そこで、ちょうどCP+のこともあるので、本気で調べてみることにしました。
白いモヤモヤの正体
大きなヒントはHα画像と、同日に撮影したCaK画像の比較でした。
上の2枚を比べると、プラージュクラスの白い明るい部分以外でも、より淡い白い部分で一致する模様がたくさんあるのがわかります。
CaKの画像のプラージュ以外の淡い部分はChromospheric Network(彩層ネットワーク)、あるいはNetwork Bright Points / Network Elementsなどと呼ばれていることがわかりました。
今回の事象の大元は、プラズマの流れにより太陽表面の磁力線が掃き寄せられて磁場が集中し「磁気ネットワーク」が形成され、磁場集中により周囲のセル内部に比べて彩層(光球の上の層)では輝度が高く、明るい網目状の構造(ネットワーク)として観測されるとのことです。プラージュが強磁場での活動領域とすると、ネットワークは静穏領域での磁場活動とかんがえるといいのでしょう。
今回見えたCaK画像の場合「磁気ネットワークが彩層に投影されたもの」という理解になります。ただし、今回撮影したCaK画像の透過波長幅は0.1Å程度とかなりの分解能になるのですが、一般的なCaKフィルターの透過幅は数Åと分光での撮影に比べて数十倍広いので、上の画像のような白く淡いモヤモヤに相当する部分はあまりはっきりとは出ないようです。このことについては私は一般的なCaKフィルターを持っていないので、確かめることはできていません。
「磁気ネットワーク」という物理的な現象はわかったのですが、それがHα画像になるとなぜ白いモヤモヤになるのか?ここがまだ謎でした。調べていくと
- Photospheric magnetic network (光球面の磁場ネットワーク) → Chromospheric network (彩層面ネットワーク) → Hα fibril canopy
もっと具体的には
- CaKでの形成高度が~1000–1500 kmで主に垂直方向の磁場集中を強調され、「磁場の足元」が明るい
- Hαでは形成高度が~1500–2000 kmで磁場に沿った水平フィブリルが支配的、ネットワーク境界から横方向へ拡張されている
ということです。もう少しわかりやすく書くと、Hαではフィブリルが横方向に広がるため、ネットワーク境界から“傘状”に拡張され、「淡いベール」になる。すなわち、CaKで見える網目の“源”がHαではフィブリルとして広がり、モヤになるということのようです。フィブリルもしくはファイブリルは日本語では原線維とか微小繊維と訳されるようで、ファイバーと同じ語源を持ち、光ファイバーの断面もフィブリル構造とのことなので、それを想像すると少しイメージが湧くかもしれません。
日本語の解説はここがわかりやすいです。
ネットワークからネットワークに向けて出ている細長い構造をファイブリル (fibril) と呼び、解像度が低い画像ではまだら模様に写るため「モットル (mottle, 斑紋) 」と呼んでいるとのことです。ただ、ここの説明が本当に白いモヤモヤのことを言っているのかはまだ少し納得がいっていなくて、むしろここの
日本語の解説はここがわかりやすいです。
ネットワークからネットワークに向けて出ている細長い構造をファイブリル (fibril) と呼び、解像度が低い画像ではまだら模様に写るため「モットル (mottle, 斑紋) 」と呼んでいるとのことです。ただ、ここの説明が本当に白いモヤモヤのことを言っているのかはまだ少し納得がいっていなくて、むしろここの
白紋のことなのかもしれません。
いずれにせよ、今回の画像から少なくとも言えることは、このモットルやフィブリルなどと呼ばれる白いモヤモヤを見ることができる太陽望遠鏡は、エタロン、分光という手法に限らず、非常に優れた狭い波長透過幅を持っているということでしょう。
CP+では、ヘリオスター100Hαは十分に見ることができ、エタロンの透過曲線を実測してもFWHMが0.32Åと非常に優れていて、フェニックスもそれには少し劣るが、FWHMが0.37Åと優れていて白いモヤモヤが僅かに見えるということを示しました。
他波長との比較
以下それぞれの画像と、(波長)、透過波長幅です。
Hα (6562.81Å), 0.091Å
CaK (3933.66Å), 0.113Å
Hβ (4861.34Å), 0.108Å: 白いモヤモヤに相当する分が、周りより少し暗く出ているように見えます。
Hγ (4340.47Å), 0.111Å
HβやHγではネットワーク構造は吸収(暗いコントラスト)として出ていると考えるのが妥当なようです。
まとめ
分光撮影を始めて、Hα線周りをかなり波長幅の狭いFWHMで撮影できるようになって以来、ずっと謎だった白いモヤモヤの正体が、CP+で発表することをきっかけに調べて、やっと正体が判明しました。
まとめると、
- 磁場ネットワークが大元。
- CaK: ネットワーク構造が 明るい網目として彩層に強く出ている。
- Hα: 同じ磁場構造がフィブリル構造として広がり白いモヤモヤになる。
- Hγ, Hβ: 同じ場所が 吸収寄り(暗)になり、低コントラストで現れ得る。
というようなことがわかりました。
アマチュア天文の機材でこれだけのことが検証できるというのはすごいです。しかも今回、自分で撮影したものの正体を調べていくとだんだんわかってくるという、もう謎解きプロセスと言っていいようなものをそのまま味わうことができました。これだから天文趣味はやめられません。
アマチュア天文の機材でこれだけのことが検証できるというのはすごいです。しかも今回、自分で撮影したものの正体を調べていくとだんだんわかってくるという、もう謎解きプロセスと言っていいようなものをそのまま味わうことができました。これだから天文趣味はやめられません。
分光で検証できますが、優れたエタロンを持つヘリオスター100Hαでも見ることができ、頑張ればフェニックスでも見ることができるので、皆さんも挑戦してみてはいかがでしょうか?



































































