ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:WBPP

ASI294MM Proで試したかった高解像度撮影です。対象はM57です。


とうとうモノクロ撮影に

実は今回が初のまともなモノクロセンサーを使った撮影になります。一応ASI290MMは持っていて、太陽とかはもちろん本当のモノクロ撮影なのですが、モノクロセンサーにフィルターというので最後のカラー化まで仕上げたのは今回が初めてです。

ASI294MMProを使いたかった理由の一つが、ピクセルサイズの小ささです。Bin1モードのピクセルサイズ2.3μmは、これまで持っていた最小のASI178MCの2.4μmよりも小さく、しかもモノクロなので単純にはさらに半分のピクセルサイズと同等。ASI294MC Proから見たらBin1モードとモノクロで一辺4分の1、面積にしたら16分の1のピクセルサイズと同等です。手持ちのASI290MMのピクセルサイズ2.9μmと比べてもまだ有利になりそうです。

その一方、今回はM57と小さい惑星上星雲なので、広視野はあまり得をしませんが、それでもASI290MMのセンサーサイズの1/2.8インチと比べると、一辺で約4倍、面積で約16倍(実際は13.9倍)です。これくらいあると比較的大きな天体まで狙えることになります。小さな天体はROIで撮影時にカットしてしまえばいいので、こちらは大は小を兼ねるになっています。

その代わりBin1モードはダイナミックレンジと感度は落ちるので、そこをどううまく回避していくか、適材適所で使う必要があります。


小さなM57を綺麗に出したい

実はM57ですが、随分以前から分解のベンチマークとも言える挑戦を続けています。今までの最高がVISACとASI178MCでの撮影で、もう2年ほど前のことになります。

 

ブログの記事にはしてませんが、その後もちょくちょく、2020年にはTSA120やVISAC、ASI178MCやASI290MM+RGBフィルターなどを色々組み合わせて撮影を続けてました。2021年の今年に入ってからも5月と6月にVISACとNeptune-CIIやASI294MM Pro+RGBフィルターで撮影していたのですが、いずれもシンチレーション が悪かったり、雲が途中から出てRGB全部撮れなかったりで、すべてボツになっていました。たとえ仕上げたとしても2年前のものを全く超えられそうになかったのです。

梅雨が明けてからしばらく、かなりシンチレーションがいい日が続いていて、これは分解能をためすまたとないチャンスです。鏡筒はVISAC。ただしやはりこの鏡筒はじゃじゃ馬の呼び声高く、星像がどうしても落ち着きません。


撮影

撮影の様子は7月17日の記事に書いてあります。重なるところもありますが、改めて書いておきます。

今回は初のモノクロ撮影ということで、RGBフィルターで試してみることにしました。もう何年も前にKYOEI Tokyoで特価で売っていたBarderのRGBフィルターをずっと持っていたのですが、やっと日の目を見ることができました。あと、ZWOの1.25インチフィルターが5枚入る電動ホイールもかなり前にKYOEI Tokyoの店舗で買ったものです。もう東京にしばらく行っていなくて最近はネットでの注文ばかりですが、たまにはやはり店舗で色々話ながら購入したくて、懐かしくなってしまいます。

IMG_2825

写真にはオフアキ用にASI178MCが付いていますが、これはまだ試していなくてとりあえず付けてあるだけです。

今回はL画像は撮影せずにRGBだけにしてみました。Lは全波長入ってくるので、この解像度だと色収差と大気収差が気になる可能性があるからです。



このように収差に関してもモノクロセンサーは有利になるはずです。これもASI294MM Proを試したかった理由の一つです。

今回は分解能狙いなので、露光時間10秒のラッキーイメージライクにしてみます。実際に撮影時の画像を何枚も見ていると、10秒露光でさえもいい時と悪い時が相当変わるので、シンチレーションの影響が効いているのでしょう。この中から比較的星像が小さくキリッとしているものを後で選ぶことになります。

これまでの結果から、短時間露光では星像が多少は小さくなること、その代わり長時間露光に比べて微光星の写りが悪くなり暗い星が写りにくくなることがわかっています。



なので今回は分解能は出ても、淡いところは長時間露光にかなわないため、M57のさらに周りの淡い部分や、近くにあるIC1296は難しいと思います。

露光時間はR、G、Bそれぞれ30分。その中からいいものを選ぶのでトータルでは1時間半を切ることになり、そこまで長い撮影とはならないです。それでも10秒と短いので各色180枚、トータル480枚となってそこそこの枚数と容量になります。その代わり、ASI294MM Proのフルサイズで撮影するのではなく、ROIで一辺を2分の1にしたので、画像サイズとしては4分の1になります。

撮影にテストで見てみると、Rはキリッと出ても、Gは結構ぼやける、Bはさらにぼてっとするようです。ピント位置のせいかと思い合わせ直したりもしましたが、劇的な改善はしなかったので、今回はRでピントを合わせて、GとBのピント位置はそのままいじらずに撮影しました。そもそもフィルターが同じ厚さなのでピント位置はそのままでいいのか、鏡筒に色収差が多少なりともあるはずなので、やはり合わせ直した方がいいのか、今後もう少し検証する必要があるかと思います。

IMG_2823


後日、 flatやdarkの撮影

撮影後、日を置いてflat、flatdark、darkの各フレームを撮影しました。

flatはフィルターがRGBとそれぞれ違うので、それぞれに128枚撮影しました。ただ、少し失敗してしまい、ゲインを220で撮影時と同じにして、露光時間を明るさによってRが20ms、GとBが50msとしたのですが、GとBの露光時間がflatdarkの露光時間と違ってしまい、PixInsightで最初flatdarkが当たらないというトラブルがありました。一応あらわにflatdarkを指定してやることでことなきを得ていますが、もしかしたらflatdarkも別個に撮った方がいいのかもしれません。

そんなこともありflatdarkはゲイン220、(気づかずに)20msで共通で128枚です。さらにですが、もしかしたらflatdarkの枚数が少なかったかもしれません。flatのトータルが384枚なので、せめて倍の256枚か、512枚の方が良かったかもです。

darkはlightと同じ設定、ゲイン220、露光時間10秒、温度-10度で256枚です。最初少しでも暗いところと思い、箱の中に突っ込んでおいたら熱くなったので、再度もう1セット取り直しました。256枚でも1時間弱なので、楽勝です。


初めてのRGB画像処理

RGBの画像処理も初めてです。実際には去年ASI290MMでM57を撮影した時に少しだけ試したのですが、その時はまだテスト撮影みたいなもので、なぜか色バランスが無茶苦茶になったなど仕上げる価値なしと判断しました。なので、まともなRGBでの画像処理は今回が初めてになります。

各lightフレームはPixInsightのBlinkで読み込んで、見た目でだめそうなものを弾きました。SubFrameSelectorもかけたのですが、ある程度は見た目と結果が一致するのですが、明らかに目で見てだめなのに、数値で見るとよく見えてしまうものなどがあったからです。でもこれからするWeighted Batch Preprocessing(WBPP)ですが、処理中に内部でSubFrameSelectorを呼び出してウェイトをつけて判断しているみたいです。もしかしたらきちんと注意してみてやらないとダメなのかもしれません。

実際のWeighted Batch Preprocessing(WBPP)ですが、RGBをいっぺんに放り込んでも処理してくれるものなのでしょうか?まあわからなかったので最初はR、G、Bをそれぞれ処理することにしました。


スタック時の位置決めがうまくいかない!?

まず困ったのが、しょっぱなのRの処理の時から位置合わせがうまくいきません。3枚くらいしか位置合わせできないとエラーを吐かれました。

原因はおそらく星の数が少ないことと、星像が丸ではないことです。過去のVISACの撮影の時も同様なことがありました。今後もこのままだと使い物にならないので、別途StarAlingmentを走らせて、回避する方法を探りました。

この問題2つに分かれます。

1. まずは星を星として認識にない場合。
IMG_3066
のようなエラーが出ます。この場合はStarAlingmentの中の「Log(sensitivity)」を-2.00とかまで下げます。もしくは「Peak response」を0.9とか1.0まで上げると効果的です。

2. 次にうまく位置が認識されない場合は
IMG_3069
のようなエラーが出ます。ここは「Star Matching」の「RANSAC tolerance」の歪許容量を上げることが効果的です。

でも難しいのはここからで、位置が認識されないエラーがでる場合でも、どうも星自身が認識されていないことが原因の場合がある時です。こんな時は「Star Detection」の「Noise reduction」が劇的に効くことがあります。ここを1または2くらいまであげてください。また、「Detection scale」が効くこともあります。こうやって考えると、位置決めの時も星がきちんと星として認識されているかどうかが重要であるのがわかります。むしろ、位置決めがうまくいかないと最初から出た場合、RANSAC toleranceをいじるよりもNoise reductionを増やした方が解決になることも多いです。まずはこちらを試すのがいいのではと思います。

その他のパラメータは色々試しましたが、ほとんど効かないか、効いてもごく僅かでした。

これらのStarAlignmentでの経験をWBPPに反映させます。いじるのは「Lights」タブの「Image Registration」です。StarAlignmentとよく似たパラメータがありますが、StarAlingmentほど細かくありません。とりあえずは一番効果のあるNoise reductionを増やします。これで一応Rは全て位置合わせができてスタックまで完了しました。

ところがです、G(緑)がまだダメなんですよね。Gでは結局WBPPのNoise reductionを2、Detection scaleを6、Log(sensitivity)を-2.00、Peak responseを0.9までして、やっと全枚数スタックされました。

さらにところがです、B(青)はWBPPでは全然ダメなんです。どうパラメータをいじっても数枚しかスタックされませんでした。ところが、StarAlignmentではRANSAC toleranceをあげることができ、そうするとうまく位置決めができます。今回は結局WBPPでは諦めました。WBPPでどうしてもダメでもStarAlignmentの方がもう少し足掻くことができるということは覚えておいてもいいのかもしれません。


縞ノイズ(縮緬ノイズ)が出てる!? 

出来上がったR画像を見てやると、縦方向に縞ノイズが入っています。縮緬ノイズとも言われているやつです。

integration

よくよく調べると、WBPPの振る舞いが少し変わったようで、そのままだとbiasが使われない設定になっていました。理由はdark frameにflat frameにもbiasが含まれてるので撮影したbias frameは使わなくてもいいということのようです。

私はこれが気に入らなくて、master flatを作る際にbiasを使うようにしました。これはイコールflatdarkを使わないということになります。これが問題だったようです。以前flat補正をする際に縞ノイズが乗っかるのはフラットが何かしらで汚くなる(その時は撮影時間が短くてノイズが載るという理由だった)というのを示したことがありますが、flat frameのダーク補正をしないと、残ったダークノイズが縞ノイズを作るということが今回改めて示されました。こたろうさんが以前この件について言及されていたと思います。

というわけで、biasの代わりにflatdarkを使うと次の写真のように縞ノイズは無くなりました。


RGBの合成前の画像

RGB合成前の画像を示しておきます。

まずはR。かなり鋭い星像となっています。縮緬ノイズも消えているのがわかります。
masterLight_BIN-1_EXPOSURE-10.00s_FILTER-Red_Mono

Greenは以下のようになりますが、Rに比べると明らかに暗い星が少なく、星像も甘いです。
masterLight_BIN-1_EXPOSURE-10.00s_FILTER-Green_Mono

Bはさらにその傾向が強く、星像もかなり大きくなっていて、明らかに星の数も少ないです。
integration

このような傾向は普通のことなのでしょうか?それともピントがずれているのでしょうか?でもテストで画面を見ていた限り、ピントをどう合わせてもRがいつも鋭くてBは散々でした。

また、これらのズレは画像処理に影響がないのでしょうか?


Linear Pattern Subtraction

さて、上の画像をみると、横縞が結構多く残っているので、WBPPの新機能のLinear Pattern Subtractionを試しました。結果だけ言うと、あまりうまくいきませんでした。いくつかの横縞は目だたなくなるのですが、下のようによりハッキリした横縞となぜか縦縞が余分に加えられてしまうようです。

masterLight_BIN-1_EXPOSURE-10.00s_FILTER-Red_Mono_c3

今回はまだあまり試していないですが、一旦ここではLinear Pattern Subtractionを使わないで、次に進みます。


RGB合成とBanding noise除去

これでやっとR,G,Bのスタックしたものが出来上がりました。ただ、これらをそのままChannelCombinationなのでRGB合成しても星の位置がずれてしまいます。そのため、StarAlignmentで改めてこの3枚を位置合わせしました。これでやっとカラー画像が出来上がりました。

Image04_clipped

でもR画像で見たときのように、やはり横の線が気になります。なので今回はRGB合成後、ScriptのUtilitiesからCanonBabdingReductionを使いました。これはかなりよかったです。いくつかパラメータを試しましたが、Active Previewはほとんど役に立ちませんでした。値を変えて何度か試した方が良さそうです。デフォルトの1でもほとんど大丈夫でした。0.2だとノイズが消しきれません。また、2だとノイズが加えられるような感じです。0.5と比べると1の場合は少し黒い部分が残っている感じがしました。結局最後0.7としました。要するに大きすぎても小さすぎてもダメなので、いくつか試すといいということです。結果は以下のようになります。

Image04_clipped_banding

かなり良くなりました。


ここからはカラーでの画像処理

ここまで来れば、あとはこれまでのカラーの画像処理と同じです。

まずカラーバランスが滅茶苦茶なので、念のためDBEで少しカブリをとってからPCCでカラーバランスを整えます。PCCで恒星の色はそこそこまともになりました。ただ、鋭さがR>G>Bの順でかなり差があるので、鋭いRとボケたBの差で、赤が強いところは赤ハロが、青が広がってしまっているところは青ハロがあるようにも見えます。逆に言えば恒星の色がよく出ているようにも見えます。

その一方、PCCをかけてもどうしても背景が青く見えます。これはヒストグラムを見て理由がわかりました。背景のノイズが青が一番多いのです。おそらくRGBの感度に差があり、Rが一番感度がいいためノイズが少なく、次がG、Bは感度が低いためノイズが大きくなるのかなと推測していますが、実際のところはよくわかりません。もう少し検証が必要かと思います。

いずれにせよ今回はPhotoshopに持っていった際に、背景のRGBのヒストグラムを合わせる事でカラーバランスを整えることにします。


星像に苦労

あとは、ArcsineStretchなどでストレッチしてPhotoshopに渡すのですが、よく見ると星像がガタガタです。

特に短時間露光の場合に多いのですが、VISACの星像にはいつも苦労します。今回はなぜか4方向に尖って見えます。しかもスパイダーの方向ではなくて、なぜか45度傾いた方向です。MophologicalTransformationで少し整えますが、星マスクが必要です。

この星マスクも苦労しました。ストレッチ後、StarNetで恒星と背景を分離しようとしても、星の3割ほどしか分離できません。分離できない理由は、星像が汚い、中心のピークが出ていない、明るすぎる、暗すぎるなどです。きちんと丸になっていて、中心がサチり気味の方がうまく分離できるようです。そのため、今回は
  1. ストレッチ前のカラー画像をL画像にしてから
  2. いったんSTFでオートストレッチして
  3. HistgramTansformationで適用、
  4. その後ExpornentialTransformationでPIPのOrderを1.5にして適用、
  5. STFで真ん中の三角をを右に移動して暗くする
とい過程を取りました。4、5は2回繰り返しました。これにStarNetをかけることでM57の中にある以外の恒星は全て救い上げることができました。M57の内部にあるいくつかの恒星は分離できませんでしたが、こちらは別途RangeSelectionでうまく分離します。

こうしてできた星マスクを適用して、MophologicalTransformationで十字型にDilationで伸ばし、X字型にErosionで縮めることで円に近づけていきます。これでやっとPhotoshopに引き渡しです。


Photoshopでの仕上げと結果

今回はPhotoshopではほとんどたいしたことはしていません。ノイズ処理もなしです。ノイズ処理をすると背景がボテボテになり、星像の鋭さと合わなくなってしまうからです。

Image04_clipped_banding_DBE_PCC_AS_HT2_MT_PCC_ok
  • 撮影日: 2021年日7月17日1時16分-2時51分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Vixen VC200L
  • フィルター: Bardar RGBP
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO AIR294MM Pro -10℃
  • ガイド: なし
  • Light: SharpCap、Gain220、 露光時間: 10秒 x 461枚(R:163、G129、B169 x 19枚) = 1時間16分50秒
  • Dark: Gain220、10秒 x 256枚
  • Flat: Gain220、R:20ms x 128枚、G:50ms x 128枚、B:50ms x 128枚
  • Flat Dark: 20ms x 128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

2年前のVISACとASI178MCで撮ったものと比べます。左が以前のもの、右が今回のものです。

comp

今回は自己ベストかと思ったのですが、分解能だけ見たらもしかしたら以前の方がいいかもしれません。いやこれは画像処理のやりかたのせいで、見栄えをよくしようとした前の方が一見よく見えているだけかも。

もし以前の方がいいというなら、機材は今回の方が圧倒的に有利なので、これは完全にシンチレーション勝負になると思います。2年前の時はよほどシンチレーションがよかったのを覚えています。その他星の色、星雲の自然さ、背景の素直さなどは今回の方が格段に上でしょうか。

そういえば、この撮影の後になってVISACの光軸調整をしたのでした。その結果は反映されてないので、今一度シンチレーション のいい日を狙うとかでしょうか。


まとめ

初のRGBフィルターでの撮影と画像処理。いろんな新しいことがあってブログ記事が長くなってしまいまた。次回はもう少し早く処理できそうです。

分解能に関しては、やっぱり最後はシンチレーション なのでしょうか。リアルタイムで露光時間を1秒以下にして見てても、明らかに揺らいでいて、10秒ではこれくらいになってしまいます。次は揺れない日を狙うことになるのかと思います。

どうやらM57はAOOでもそこそこ色が出るみたいなので、次はナローのもしかしたら逆に長時間露光で、淡いところに挑戦するかもしれません。


おまけ

もう一つ、PixInsightの細かいテクです。projectファイルを保存して、ファイルのフォルダ名を変えたり、ファイルの場所を変えたりした時に、WBPPのインスタンスを右クリックして「Excecute in the global context」から再度開こうとすると、以下のようなエラーが出ることがあります。

IMG_2922

この場合、WBPのインスタンスををダブルクリックして出てきたMD5 checksumを消してやって、再びインスタンスをPI内で保存。それを右クリックのExcecute in the global contextで開くと普通に開けるようになります。

3月3日の雛まつりの日の夜、月の出が22時18分なので、夕方から準備すればしばらくの間撮影できそうです。狙いは迷ってましたが、早い時間なので季節遅れのカリフォルニア星雲にすることに。結構大きいので、FC-60CBと6Dで視野角的にもちょうど良さそうです。今回も狙いは自宅でフィルターなしでどこまで写るのか? (2021/3/19 追記: 勘違いで、CBPが入ったままでした。)ISO800で、露光時間3分にして、6Dのヒストグラムで見て一番明るい青が1/3くらいでした。

前回Sh2-240を同じセットアップで撮っていて、まだ機材はそのままの状態でほとんど残っています。なので、準備も時間で済み、仕事から帰って、夕食後から用意しても20時過ぎくらいには撮影を開始できました。撮影時間はちょうど月が昇る22時半ころまで。実際には西に傾き屋根に隠されて終了となりました。その後すぐに空が霞んできて曇りのようになったのでここで撤収です。

後でチェックしてみると39枚撮影して使えるのは36枚。3枚は屋根が入っていました。星像が流れているようなものはありません。後半になるに従って西の空に傾くので明るくなってきてしまうのですが、今回はそれらも全部使うことにしました。


WBPP 2.0

次の日フラットとフラットダークを同ISO800、1/400秒で128枚撮影し、ダークは以前撮った同じ範囲の温度をものを使用してWBPP(WeightedBatchPreprocessing)で処理。最近WBPPがメジャーアップデートされて2.0になり、かなり変更がありました。以前のバージョンから使っている人はまあ普通に使えるかもしれませんが、1箇所だけ注意。全てのファイルを登録後、新しくできたControl PanelタブのFLATのところでファイルを選択すると右側にオプションが現れます。これまではライトフレームはカラーかどうか選択するためにCFAオプションがあったのですが、今回からFLATもCFAが選べるので、もしフラットフレームもカラーで撮影したなら必ずCFAオプションにチェックを入れます。

今回のバージョンから処理過程を図にしてくれるのですが、FLATのCFAがオフのままだと下の写真のようになって、フラットが適用されていないのが分かります。

IMG_1943

きちんとFLATのCFAをオンにすると
IMG_1942
のように、きちんとフラットが適用されていることがわかります。

さて、その下のSeparate CFA scalling factorはまだよく理解していないのですが、とりあえず今まで通りオフでやってみました。ただ、オンにするとRGBで別々の係数を使い、オフだとまとめて一つの係数を使うということです。今回のフラットフレームはカラーバランスが取れていないので、もしかしたらオンにした方がいいのかもしれません。


あとは画像処理

出来上がったライトフレームをいつも通りDBE、PCC、ArcsinehStrech、HT、StarNetなどで処理をして、Photoshopに渡してさらに炙り出し。とりあえずできたのがこれです。

Image53_2

恒星がいまいち鋭くないとかいくつか不満はありますが、これはこれで完成です。さあ、ブログと書こうと今に至っているわけですが...

あれ?ダークがおかしい

...と(既に画像処理も終えて、このブログを書くために改めてダークファイルの数を)チェックしていて変なことに気づきました。WBPPのControl PanelにmasterDarkが多数枚登録されているのです。

IMG_1947

そしてDarksタブを見てみると露光時間ごとに一枚づつ、多数のmasterDarkが登録されているのが分かります。

IMG_1946

ところが、試しに今回撮影したフラットフレームとかライトフレームを登録してもこんな変な状況にはなりません。ダークフレームのみこのような状況になります。

ファイル名からdarkというのを取り除いたり、ヘッダ情報を見たりいろいろしたのですが、原因はもっと単純なことでした。ダークファイルが存在する上流のフォルダ名に一つでも「master」という文字が含まれているとこのような状況になってしまうようです。例えば今回は以前撮ったダークフレームを使い回したために「master」というフォルダの下に、さらに露光時間やISO別に幾つかのフォルダに分散してためてあったものを使ったために起きた問題でした。例えば「master」を「mas」とか抵当に名前を変更してダークフレームを登録するだけで、masterDarkでない普通のダークフレームとして登録されます。

さてさて、間違った多数の1枚偽masterDarkファイルで処理したものときちんとダークを登録して処理した画像と、で画像の差はあったか興味がある方もいるかと思います。拡大すると正しいダークを登録した方が明らかに黒い小さな点がなくなる、もしくは緩和されていました。差がわかる部分を拡大して比較ものが下の画像です。左が間違ったもの、右が正しいものです。このような小さな点が画像全面に散らばっています。

comp

ただ、最終仕上げに影響があるかというと、ドット単位くらいの話ですし、間違ったダークと言っても多少の補正はできているので、拡大してじっくり見ない限りはわからないレベルでしょう。

ちなみにこの「master」というフォルダ名、ダークだけでなく、バイアスやフラットを登録する際にも全く同じことが起きて、いずれもマスターファイルとして認識されてしまいます。これだとあまりにも制限が多いので、そのうちもう少し良い方法で解決されると思いますが、PixInsightを使う際にはmasterというのは特別な意味を持つので、むやみやたらに、少なくとも読み込む画像ファイルに関するところには使わないほうがいいでしょう。


仕上げ

このあとまた一通りの炙り出し過程をすませ、不満だった恒星部をもう少し出します。ついでに赤いところももう少しだけ。

master_cut_rot_DBE_DBE_PCC_SCNR_ASx4_HTx2_CT2
  • 撮影日: 2021年3月3日20時26分-22時29分
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 鏡筒:Takahashi FS-60CB + マルチフラットナー
  • フィルター: 無し SIGHTRON CBP
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  Canon EOS 6D(HKIR改造, ISO800, RAW)
  • ガイド: f120mmガイド鏡 + ASI120MM mini、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: BackYard EOS、露光時間180秒x36枚 = 1時間48分、ダーク50枚(ISO800、露光180秒)、フラット128枚(ISO800、露光1/400秒)、フラットダーク128枚(ISO800、露光1/400秒)  
  • 画像処理: PixInsight、StarNet++、Photoshop CC、DeNoise AI
Dark補正の違いはほぼ何も影響がないですが、2回炙り出しをやったのでいい訓練となりました。自宅でフィルターなし、2時間弱でこれくらい出るのなら、気楽でいいのかもしれません。

それでもやはり背景はノイジーなのは否めません。分子雲がもう少しあるはずなのですが、もっとはっきり出す技術をまだ確立できていません。今回2時間弱と短かったので、まだまだ撮影時間を伸ばしてみるのもいいのかもしれません。もしくはISOをもう少し上げて恒星がサチるのには目をつぶり、背景を重点的に出すことを考えてやってみるのもいいのかもしれません。

あ、そうだ真ん中らへんの一番明るい星の左のなぜか明るく見える星。ここだけボワッとにじみが出ています。そもそもこんなに明るい星でもないですし、もっと明るい星でもこんな滲みは出てません。ここのファイルはそれほど目立つにじみでもなく、いまだになぜか理由がわかりません。とりぜず理由がわかていないのでそのままにしています。

いつものAnotationです。

master_cut_rot_DBE_DBE_PCC_SCNR_ASx4_HTx2_CT2_Annotated


過去画像との比較

2年ちょっと前の2018年11月に撮影したカリフォルニア星雲です。

NGC1499_CUT

これは直接比較していいものなのでしょうか?記録を見ると撮影時間30分となっています。露光時間も約4倍、画像処理も今と全く違うので、淡いところも全然見えるようになっています。さすがに今回の方が圧倒的に進歩していますね。


まとめ

PixInsightのWBPPですが、まだメジャーアップデート直後でこなれ切れていない気がします。自分の慣れのこともありますし、また不具合などもあると思ってしばらく付き合っていくべきでしょう。

実際にはこれまであやふやだったフラットのCFA処理とかもはっきりしたり、コントロールパネルも見やすくていいです。これからもWBPPの進化に注目していきたいです。



カリフォルニア星雲(2): 撮り増し」に続く
 

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