ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:TSA120

皆既月食の一連の結果です。前回の広角撮影の記事からの続きです。


今回の記事は天王星食です。

機材

天王星食は2つの機材で臨みました。一つはその2で示した、TSA120 + ASI294MC Pro (常温) + CGEM IIでの自由撮影です。もう一つは、拡大撮影にと思って、他3つの機材の設置が終わってから準備したVISAC (VC200L) + Uranus C + CGX-Lです。

でもVISACの方は結局失敗でした。調整がものすごく難しくて恒星がおにぎり型になりやすく、天王星を見たらツノがピンピン立っていました。このことは天王星を見た直後に気付いた(思い出した)のですが、時すでに遅しで、一応撮影はしましたがあまり公開するに値しません。

TSA-120の方は焦点距離が900mmとそこまで長くないので分解能が心配でしたが、まあさすがのタカハシです、下手な大口径長焦点よりもはるかに結像してくれます。潜入の瞬間と出現の瞬間は動画で撮影し、.ser形式で保存しました。ただし、フルの解像度だとフレームレートが10以下になってしまうので、ROIでクロップしてフレームレートが20以上になる範囲で一番広い画面(3104x2116)になるように設定しました。


潜入時

まずは潜入時です。


できればクリックして画面一杯で見ると迫力があります。いやホント、すごいです。何度見ていても飽きないです。

その中の800x600ピクセルを切り出して拡大したものです。


まるで天王星が月にめり込んでいくみたいです。ピントはかなり気をつけたと思いますが、もしかしたらめり込んで見えるのはピントがずれていたせいなのでしょうか?空気の揺らぎもあるので、多少はこのように見えるのは仕方ないのかもしれません。それとも一般的にはこれがまともな見え方でいいのでしょうか?


出現時

続いて出現時です。全体像は明るい部分が多すぎて少し見にくいのですが、最下部より少し右に天王星が出てくるのがわかるかと思います。

拡大版です。こちらもあまりコントラストがよくないですが、出現時の様子がわかるかと思います。




VISACは没

ちなみにVISACで撮ったものはというと...、動画から1枚だけ抜き出した画像を示しますが、よく見ると天王星に角が立ってしまっています。
_2022_11_08_1136_1_RGB_VNG
Uranus-Cで天王星(Uranus)を撮ったので使いたかったのですが、残念ながらお蔵入りです。


そのうちに追加

まだ未処理画像がたくさんあるのですが、ちょっと時間が足りなくて未消化気味です。時間のある時にもう少し処理を進めて、適時追加していきます。



 
 
 
 
 
 
 
 


前回の記事で皆既月食の作戦立てとリハーサル、当日の撮影の様子まで書きました。今回はその続きです。



皆既月食とその前後

まずは一番オーソドックスで解像度も出る
  • TSA120+ASI294MC Pro(常温)+CGEM II
で撮影したものからいくつか処理します。このセットアップもSharpCapのシーケンサーを使い2種類の明るさで撮影しています。シーケンサは以下のような設定になります。1分間のうちにgain120で1ms、gain240で25msの撮影を4時間分240回繰り返しているだけです。

seqencer_TSA120

赤道儀の追尾レートは月時に合わせていますが、撮影中は月が画面の中でどんどん上に上がっていくので、適時ハンドコントローラーで月の位置を真ん中に移動しながらになります。全部で277ファイルが保存されていました。途中の天王星食などにはシーケンサーを止めて好きな設定で撮影していますので、連続撮影にはなっていませんが、保存された.serファイルからいくつか見栄えがいいものを画像処理をしました。

まずは皆既に入る前です。
ZWO ASI294MC Pro_25ms_240_2022_11_08_19_09_33__lapl5_ap2594_RS2
ターコイズフリンジが出てくるような画像処理としました。

次は皆既月食中で、天王星の食に入る少し前です。
ZWO ASI294MC Pro_50ms__2022_11_08_20_29_59__lapl5_ap689_IP
天王星が月の左側の真ん中ら辺に見えています。繋がって見えるのは動画で撮っていたからで、60秒間さつえいしたので、60秒で天王星が移動している分だけ繋がって見えているというわけです。

もう一つは皆既月食終了直後です。こちらもターコイズフリンジが見えるように処理しました。
ZWO ASI294MC Pro_25ms_340_2022_11_08_20_46_29__lapl2_ap1098_RS3


月時レートでも月が画角内を移動!?

今回使ったCelestronの赤道儀では、追尾レートを「恒星時」「太陽時」「月時」の3つから選べます。

実はリハーサル時に、「月時」に設定してしばらく追尾を試したんです。でも長時間追尾すると画面内で月が動いていくんですよね。極軸はそこそこきちんと合わせたつもりだったのですが、ずれていたのかと思い、再び極軸を合わせます。この時にまず大気収差の補正をするのを忘れていたことに気づきました。新しいPCを使ったので、設定し忘れていたのです。気を取り直して再度極軸合わせ。今度は大丈夫なはずです。でもでもやっぱり月は動いていってしまいます。見ていると、どうやら必ず上に向かうようです。

ここでじっくり考えました。そもそも月は28日かけて全天を一周します。ざっくり30日で360度とすると、1日12度もずれていくわけです。1時間あたり0.5度、月食の間の4時間では約2度もずれていきます。その一方、恒星は1年かけて360度全天を一周するので、ざっくり1日1度、1時間では約0.04度、4時間でも0.16度程度しか進みません。

この角速度の差は、月食観測中も恒星に対して月が移動していくことを示していて、しかもその動きは赤道儀の追尾の動きに対して水平に動くだけでなく、上下に動く成分もあることにやっと気づきました。地球に対する月の公転軌道は、地球の自転軸に対して水平ではないからです。ここにたどり着いてから、たとえ赤道儀の月時で月を追尾しても、画面内で上下に動いていくことにやっと納得できました。

でもそうすると大変です。上下に十分な余裕があれば別ですが、画角一杯に月を入れたい場合にはすぐに上下に逃げて行ってしまいます。それをマニュアルで適時上下に追い続けなければダメです。

これを回避するために、ガイド鏡を用いて、月をターゲットにして動かないようにすることも考えました。太陽撮影の時はこのようなガイドをすることがあります。でも今回は月食で、形が劇的に変わるような過程です。こちらもどうも難しそうで、本番一発で成功させるのは流石に自信がありません。

本当は月が画面内にピタッと動かずにずっと連続で撮影したかったのですが、それが無理だとわかったので、今回は「TSA-120は自由に好きなタイミングで撮影する機材とすると決めた」という経緯があります。

この考察は、この後の記事で書くつもりのFS60CBで画角を一切変えずに、太陽時で追っていくことにつながっていきます。


さらなる画像
 
TSA-120で撮影したものだけでも、まだまだ未処理の画像が大量にあります。特に、天王星食は別ページでまとめます。

またTSA-120で撮った画像の処理が進んだら、随時ここに追加していくかもしれません。


 
 
 
 
 
 
 
 


 

前回記事で試したASI2400MC ProとFS-60CB +旧フラットナーで試した電視観望。

お気軽電視観望というところからは程遠いことがわかり、今回は満を辞してのTSA120の登場です。さて、どうなることやら。


TSA-120にASI2400MC Proを取り付ける

前回FS-60CBでの反省を踏まえ、TSA-120でのセットアップです。

IMG_5226

  1. まず、カメラセンサーの近くにホコリがついていた可能性があるので、ブロアーで吹き飛ばしました。
  2. 周辺が歪まないようにフラットナーを鏡筒側に取り付けます。
  3. FS-60CBで苦労した接続も、2インチアイピースが標準のTSA120なら楽勝です。カメラに付属の2つのアダプターは、2インチアイピース口の差し込み口の径に合うような48mmのものになっています。落下防止の意味も含めて、アダプターを2つ連結してカメラに取り付けます。
  4. 月は出ていないですが街中で明るいのでCBPをカメラのアダプターの先に取り付けます。
  5. カメラ本体をアイピース口に差し込みます。
  6. 架台もAZ-GTiでは当然荷が重いので、CGEM IIにします。
IMG_5235


さあ、豪華セットで電視観望開始!

この状態でM42オリオン大星雲で比較します。今回も、西の空低くの沈みかけになります。FS-60CBではなかなか出なかったのですが、TSA-120では細部までかなり出ていることがわかります。ランニングマンも写りかけています。基本的にピクセルサイズが6μmと大きいため感度が高いためか、西のかなりひどい状況の空でも十分に映し出すことができています。
03_M42
ただし、FS-60CBの時よりはましみたいですが、それでも周辺減光があります。実はこれ、周辺減光はひどいわけでは全くなく、普通の撮影時で出てくる周辺減光と同レベルです。電視観望では強度の炙り出しをリアルタイムでしてしまうために、どうしても周辺減光が必要以上に目立ってしまいます。

次に、馬頭星雲と燃える木です。一応見えてますが、あまりはっきりしません。周辺減光で炙り出し切れていないせいもありますが、そもそも隣の家の屋根に沈む寸前。これ一枚ライブスタックした次の画像は、屋根が入ってしまいました。

01_hose

次はこちらも沈む少し前のバラ星雲です。画面をiPhoneで撮影したものです。
IMG_5233

この時にSharpCapでキャプチャした画像が下になります。
Stack_48frames_307s_WithDisplayStretch

この一部を拡大してよく見るとホットピクセルが多少あります。
Stack_48frames_307s_WithDisplayStretch_hot

でも解像度が高いので、引きで全体を見ている限りはそこまで目立たないようですが、スタック時間が長くなるとミミズのように伸びていきます。これはリアルタイムダーク補正でだいぶマシになります。

下はダーク補正をした場合。少し残りますが、細くなっていて実際の電視観望で全体で見ている限りはまず気になりません。
Capture_00001 20_41_36_WithDisplayStretch_hot

これ以降はの画像は全てダーク補正をしてあるものになります。


周辺減光をなんとかしたい

周辺減光を緩和できないか試してみました。次の画像はリアルタイムフラット補正をしたものです。iPad ProでColor Screenというアプリを使い、灰色に近い色を画面に出し、鏡筒の先端に当ててフラットを撮影しました。その際、画面が明るすぎたので露光時間を100msと短くしました。ちなみにLiveStack時は露光時間6.4秒ですが、一般にゲインさえ変えなければフラットフレームの露光時間を変えても問題ないはずです。
Stack_65frames_416s_WithDisplayStretch
でもこれを見ると、どうも赤が過補正になってしまっています。この時はモノクロのフラットフレームを作成しました。

色別で補正具合が違うということのようなので、各色で補正しなくてはダメなのかと思い、次はカラーのフラットフレームを作成してフラット補正した場合です。ダーク補正が何か影響するのかとも考え、この一枚はダーク補正もなしです。
04_rose
今度は白で過補正になっていますね。これまでも何度かSharpCapでフラット補正を試していますが、うまくいったことがありません。この日もこの時点で諦めました。以後はフラット補正はしていなくて、ダーク補正はしてあります。


春の銀河を電視観望

オリオン座が沈む頃の時間帯、春はあまりカラフルな天体はなく、鮮やかさでは寂しくなってしまいます。その代わり銀河はよりどりみどり。フルサイズなので広角ですが、十分に見応えがあります。

例えばしし座の三つ子銀河ですが、やはり周辺減光が大きいですが...、この画角だと拡大して一部だけ見た方がいいと思います。
Stack_169frames_1082s_WithDisplayStretch

実際、高解像度のカメラなので、拡大画像でも全く破綻しないんですよね。むしろこれがASI2400MC Proの真骨頂で、拡大しても得られた画像は素晴らしいの一言です。実際に見ているのに近い、iPhoneで撮影したものです。
IMG_5249
もうツルッツルですよ。これで6.4秒露光で、ライブスタックでトータル20分ちょいです。

参考に、画面をキャプチャしたものも載せておきます。
06_triplet

中心部を拡大すればこんなふうにかなり見えるようになるので、たとえ2インチ対応の鏡筒でも電視観望の炙り出しで周辺減光がある程度残ってしまうことを考えると、フルサイズの広角なのを利用して導入で楽をして、目的の天体を画面中心に持ってきて、画面上で拡大というのが使い方としては現実的なのかもしれません。

ちなみに下は、10分の1の時間、ライブスタック2分の時の画像です。
05_triplet
20分と比べるとザラザラ感は残りますが、これでも電視観望なら十分過ぎるくらい綺麗なものになります。

拡大して比較してみます。左が20分スタック、右が2分スタックです。2分のほうがノイジーですが、逆に20分は画像が流れた縞ノイズが少し出ています。
comp
ただ、拡大してこの程度なので、通常の電視観望ではたとえ2分露光のものでもかなり綺麗に見えたという印象になるかと思います。

20分スタック画像を簡易処理してみました。10分程度でパッとやったくらいです。流石に長時間かけた天体写真と比べるとダメですが、それでも十分鑑賞できるくらいにはなるのかと思います。
Stack_16bits_169frames_1082s_ABE_ABE_DBE2


次はソンブレロ銀河です。20分露光です。周辺減光が目立たないように中心部を拡大しています。これだけ見えれば十分でしょうか。
08_sonblero

最後はM51子持ち銀河です。これも20分露光で、中心部を拡大。少しノイジーですが、かなり細部まで出ています。これは結構すごい!
23_M51

少しノイジーだったので、あっと思い、この段階でこれまで冷却していないことに気づきました。そのため、では冷却したらどうなるかを試しました。
24_M51
ただし、その際、SharpCapを最新版にアップデートしたのですが、少し状況がわかったようです。ほぼ同じ条件で冷却をオンにしただけですが、明らかにノイジーになってしまっています。必ずしも最新版がいいわけではないようです。インターフェースは白の明るい部分がなくなり、改良されているようです。

そもそも電視観望は長時間露光ではないので、冷却がどこまで効くかは疑問で、今回は冷却に関しての効果の判断は保留としたいと思います。

とここら辺まで試して月が出てきたので終了。ASI2400MCとTSA-120での贅沢電視観望いかがでしたでしょうか?このレベルを観望会で、しかも大型画面やプロジェクターで見せることができたら、結構すごいと思います。


まとめ

ASI2400MC Proでの電視観望である程度わかったことをまとめておきます。
  • 鏡筒をかなり選んでも、フルサイズの電視観望では周辺減光はどうしても目立ってしまう。
  • リアルタイムダーク補正は結構効く。
  • リアルタイムフラット補正は結構難しい。
  • 感度、フルサイズの解像度、ダイナミックレンジは素晴らしく、電視観望でも撮影に近いレベルで画像を得ることができる。
などです。苦労もありますが、それに見合う結果は出るのかと思います。

ただし、このカメラの値段を調べてもらうとわかりますが、ちょっとというか、かなりのものです。電視観望のためだけに購入するのはなかなか勇気が必要で、今回は借り物だから実現できたのかと思います。撮影のためにこのカメラを購入し、そのついでに電視観望をするとかならまだ現実的でしょう。予算がある公共の天文台とか、個人でも余裕がある方は電視観望用途でも検討する価値はあるかと思います。ただ、今回私も口径や焦点距離、周辺減光などで結構苦労したので、ある程度のスキルも必要になってきます。こう考えると個人で電視観望のみの用途だとは少しもったいないレベルの機材の気がしますが、ただし、得られる画像はかなりのものであることは間違い無いので、興味がある人は検討する価値があるのかもしれません。

今回はこれまでとは方向性の違った豪華機材での電視観望でしたが、かなり楽しかったです。結論としては「ASI2400MC Proは価格はすごいが、得られる画像もやはりすごい!です。
 

2022年2月14日、晴れているのですが月齢13日と満月期に近いので、TSA120を出してシリウスBにチャレンジです。

IMG_4582

ブログの記事になっているシリウスBの挑戦は、TSA120を購入した約2年前のことです。


今シーズンは同じTSA120で3-4回挑戦していますが、いずれもシーイングが悪く諦めました。今日のシーイングは瞬き具合を見ても、そこまで悪くはなさそうです。


20時頃、まずは眼視でリゲルを導入。Pentax XW3.5mmで余裕でリゲルBは分離します。

次にシリウスです。同じくPentax XW3.5mmで見ますが、かなり瞬いていて惨敗。21時過ぎまで粘って、多少高度も上がって明らかに瞬きは減りましたが、それでもどうしても見えません。

いったん諦めて、カメラに切り替えてみます。手近にあったCeres-CをTSA120に取り付け、SharpCapで御t見ます。とりあえずの画面では露光時間やゲイン、ヒストグラムを色々いじってもやはり見えません。

ここで6.25ミリ秒、ゲイン0で1000コマ、serフォーマットの動画で撮影します。動画を再生してみてもやはりシリウスBらしきものは確認できません。

この画像をAutoStakkert!3で上位20%をスタックし、PixInsightのSTFで炙り出すと、主に緑と青を攻めてみるとやっとシリウスBが出てきました。赤をいじってもシリウスBの出現にはほとんど影響がなく、波長が短い方が影響があるようです。

その後、Regitaxでエッジを出すと、かなりはっきりしてきました。

21_17_40_lapl6_ap1_ST_RScut
  • 撮影日: 2022年2月14日21時17分
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 鏡筒: TAKAHASHI TSA120(f900mm)
  • フィルター: 無し
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: Player One Ceres-C
  • 撮影: SharpCap、Gain 0、露光時間6.25ms、上位200/1000をAutoStakkert!3でスタック
  • 画像処理: PixInsight、Registax6、Photoshop CC

上が北で方角的にはシリウスBは北東で左上方向に出るはずです。1ピクセル0.856秒程度なので、11.3秒角離れているシリウスBはシリウス中心から13.2ピクセルくらい離れているはずです。撮影した画像からピクセルを数えてみるとほぼ13ピクセル。なので間違いないでしょう。

シンチレーションで眼視では見えなくても、多数枚スタックで多少のシンチレーションの悪さは回避できそうです。ただし、PixInsightで炙り出したとき、見える範囲は意外に小さく、落ち着いてやらないと見えないと判断してしまうかもしれません。


過去M33は2回撮影しています。いずれも自宅での撮影です。どうしても満足できていなかったので今回再びM33の撮影です。

3回目のM33

最初の撮影は2018年の1月、PixInsightを始めた頃で、3時間の長時間露光と頑張ったのですが、その長時間露光が原因で縞ノイズ(縮緬ノイズ)に悩まされました。


これは後の解析で、フラットファイルを暗いところで撮っていたためフラット情報を持つべき信号が足りずに、結果としてS/Nが悪いフラットファイルになっていたことが明らかになりました。


2回目は2020年の11月なので約1年前です。TSA-120とASI294MCでの撮影でした。

この時は露光時間が1時間半ほどで、どうしてもノイジーになってしまうのに悩んだ覚えがあります。


土、日の2日間の撮影

撮影は2日に分かれました。10月9日(土)と、10月10日(日)です。前回の画角が少し狭かった気もするので、今回はTSA-120とEOS 6Dで撮影してみました。これでうまくいかないなら、次はASI294MMのモノクロでRGB撮影にするかもしれません。銀河なのでフィルターは赤外でのハロ防止のためのUV/IRカットフィルターのみです。

土曜は昼間快晴だったのですが、夕方からずっと曇り。0時頃に一旦快晴になり機材を出し、0時半頃に準備を終えたら再び曇りで、一旦自宅に退散します。1時過ぎにまた快晴で、結局撮影開始が午前1時40分頃でした。この日は明け方まで撮影しましたが、露光時間が1枚あたり5分で、薄明までに34枚撮影できてそのうち29枚を使うことができました。これだけだと2時間半くらいなので、もう少し枚数が欲しくて次の日も撮影。

日曜は朝からずっと快晴なので、赤道儀も前の晩から置きっぱなしです。昼間は太陽撮影とかしていたので、そのまま移動していないため夜の撮影でも極軸を取る必要もなし。連日晴れの撮影だと準備は楽なものです。この日は45枚撮影して37枚を画像処理に回すことができました。

2日間トータルで66枚なので、5時間30分の露光になります。

でも本当はもう2時間程度長くなる予定でした。初日の撮影で、一番最初はISO1600で始めたのですが、ヒストグラムのピークが半分近くまできてしまっていたので、すぐにISO800に切り替えました。問題は2日目で、同じISO800で始めたのですが、天頂越えで赤道儀を反転させた際に、間違えてISO1600にしてしまいました。最初違うISOを混ぜて処理しようと思ったのですが、画像処理の時に見比べたら、ISO1600の方が明らかに星像が肥大していたので、泣く泣く25枚分諦めることに。

そういえばもう一つトラブルが。いつも使っているStickPCにリモートデスクトップで全くつなげなくなってしまったのです。とりあえずその場は代理のノートPCで撮影を始めましたが、後でStickPCを調べたら結構面倒でした。接続できなくなったのはWindowsのアップデートが始まってしまったのが原因のようですが、アップデートのせいなのかWi-Fiアダプタをうまく認識できなくなってしまったようです。

Wi-FiアダプターはIntelの9462で「コード10」エラーでうまく開始できないというようなメッセージが出ています。ドライバーをアンインストールして、Intelのページからあらわに最新ドライバーをダウンロードしてきたりして色々試すのですが、
  • 一瞬起動してネットワークにつながるがすぐにだめになる。
  • 起動してネットワーに繋がるが、切断と接続をずっと繰り返す。
  • 起動してネットワークにつながり安定だが、再起動するとアダプターを認識しなくなる。
などのトラブルがずっと続きました。10回くらい色々とドライバーを入れ替えたり再起動したりを繰り返していると、ある時突然安定になって、再起動とかしても普通に動くようになりました。原因はわかりませんが、とりあえず動いたのでこのままそっと使おうと思います。安定運用の観点からは、Windowsのアップデートはできるなら避けるように設定しておいた方がいいのかもしれません。

もう一つのしょぼいトラブルですが、撮影が長時間にわたるので6Dの駆動は電池切れを防ぐために外部バッテリーにしてあるのですが、その外部バッテリーが切れてしまって、2日目の天頂越えの後1時間以上にわたって撮影が中断していたことです。目が覚めた時に外にチェックしに行って発覚しました。でも結局後半は先に書いたようにISO1600で撮影してしまって、星像肥大で使わない画像となったのでまあいいかと。ISO800のままでバッテリートラブルがなかったら、9時間越えになっていたかもしれません...。

撮影時の状況はこんなところでしょうか。後日フラットとフラットダーク、足りなかったダークファイルを、ISO800の分とISO1600の分をぞれぞれ追加撮影し、やっと画像処理です。


画像処理

PixInsightのWBPPで何パターンか試しました。
  1. ISO800
  2. ISO1600
  3. ISO800とISO1600を混ぜたもの
を比べて、ISO1600が星像肥大と判断し、2と3を棄却。

でもなぜISO1600で肥大していたのかは謎です。ピントはずらしていないし、ISO800と1600で天頂に対象に撮影したようなものなので、空の高低では影響は同じくらいになってもおかしくないはずです。明け方に向かって温度が下がっていくはずなので、その温度変化でピントがずれていったのかもしれません。

あと、6Dのダーク特性がちょっと気になったのでホット/クールピクセルはPixInsightのCosmeticCorrectionで取り除くようにしてあるので、
  1. ISO800でダーク補正あり
  2. ISO800でダーク補正なし
で比較。結果、ダーク補正なしの方が少しだけ縞ノイズが残るので、ダーク補正ありを採用としました。

何でこんなことをしたかというと、もしかしたら6Dのダークノイズって素性が良くてあまり気にしなくてもいいのではと思ったからです。ダークフレームを撮影するのは時間がかかりますし、少ない枚数での補正だと逆にノイズを加算することもあります。まあ結果はほんの少しですが違いがわかったので、これからもダーク補正はしようかと思います。冬でもっと温度が低くなればダーク無しでも良くなるのかもしれません。

ABE、DBEで残りの背景補正をして、PCCで恒星の色合わせ、ASと最後は恒星を尖らせるためにHTでストレッチ。StarNetで星マスクだけ作り、MTのDilationで少しだけ製造を大きくしてPhotoshopに渡します。あとはほとんどPhotoshopで調整です。


結果

私は青紫っぽいのが好きなので、以下のようにしました。

「M33:さんかく座銀河」
Image17_DBE_DBE_ASx2_HTx2_4_cut_b
  • 撮影日: 2021年10月10日1時41分-4時37分、2021年10月10日20時34分-10月11日0時47分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi TSA-120 + 35フラットナー
  • フィルター: SVBONY 2インチUV/IRカットフィルター
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: Canon EOS 6D (HKIR改造)
  • ガイド: f120mmガイド鏡 + ASI120MM mini、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: BackYard EOS、露光時間300秒x66枚 = 5時間30分
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC、DeNoise AI

ちょっと中心がサチってしまっていること、赤ポチがわざとらしいところが反省点でしょうか。淡いところはそこそこ出たと思います。解像度はまあまあ。以前ASI294MCで撮ったのよりは、ピクセルサイズが4.6μmから6.3μmと大きくなっているにもかかわらず解像しています。シンチレーションが効いているのでしょうか?でも潜在的にはもう少しでてもいいのかもしれません。これは次回以降にチャレンジとします。

画像処理でいろいろいじっていたのですが、もしかしたら色味は真ん中をもっと黄色に持っていって、青紫よりも青に寄せるほうがいいような気もしてきました。近いうちに再処理するかもしれません。

あとは、いつものAnnotationです。

Image17_DBE_DBE_ASx2_HTx2_4_cut_b_ok_annotation


まとめ

いつもの自宅撮影でしたが、露光時間も5時間越えで、そこそこ出てきたと思います。解像度はもう少し出ても良さそうなので、次やるとしたら少し画角が小さくなりますが、ASI294MMでLRGBでしょうか?他の銀河でのLRGBも、今後挑戦していきたいと思います。


おまけ

以前撮影したものの再掲載です。

2018年1月のもの。縞ノイズがひどいです。
integration_Maximum_No_normalization3c

2020年11月のもの。
masterLight_180_integration_DBE_AS_hakiOK_all4

上の2020年と同じ画角で、今回のものです。
Image17_DBE_DBE_ASx2_HTx2_4_cut_b_ok_cut

うん、こうやって比べると3年では劇的に、1年でも進化していますね。微恒星まで出て、分解能もよくなっています。でもやっぱり中央の処理は前の方がいいかも。これは再画像処理案件か?


今回は初のナローバンドです。まずは簡単なAOOから、ターゲットはM27: 亜鈴状星雲です。


M27をAOO撮影

M27は、昔コスモス天文台で25cmのMEADEのシュミカセを使って撮影したことがあります。


低F値の明るいシュミカセなのでコマ収差が避けられていないことと、この時は全く気づけなかったのですが、どうやら淡ーい赤や青の領域が周りにあるようなのです。

AOO撮影はナローの中でもシンプルな方で、HαとOIIIの2波長でR、G、BにHα、OIII、OIIIと当てはめると自然な色で(カラーで撮影したような色)出てくるようです。大きさ的にTSA-120の900mmとVISACの1800mmと迷ったのですが、VISACの三角星像が出ると嫌なので、TSA-120にしました。もしかしたらBKP800にコマコレクターでも良かったかもしれません。

カメラはASI294MM Proです。このカメラではM57のRGBフィルターで撮影で10秒露光のラッキーイメージのようなものを試みたのですが、中心星を含めそこそこの解像度になりました。


今回の目的は
  • ナローバンド撮影の感触を掴むこと
  • M27の周りの淡いところを出してみたいこと
です。

フィルターはこれまで星まつりなどでちょくちょく特価品を買い揃えていたもの。大抵は国際光器さんで購入したバーダーの中古やB級品で、サイズは1.25インチです。フォーサーズのASI294MMなので1.25インチで事足りるのですが、これ以上大きなセンサーサイズだとフィルターからまた考えなくてはならなくなります。ここしばらくはフォーサーズとアメリカンサイズフィルターでまずは色々試そうと思っています。また、手持ちの5枚用のZWOのフィルターホイールはRGBで埋まっているので、今回はフィルターを個別にCMOSカメラの先端にとりつけ、1枚ごとに交換します。


撮影

撮影はいつもの通り自宅庭撮り。今の時期、M27は天頂近くの方向にあります。

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撮影はCMOSカメラなのでNINAを使います。撮影中にディザーを使いたいことが理由です。SharpCapも最近はディザーに対応してきてますが、まだこなれきっていない感じです。最近はAPTよりもすっかりNINAという感じです。6Dの場合はBackYardEOSですが、それ以外はNINAといったところでしょうか。

撮影は合計3日に渡りました。いえ、長時間撮影したとかではなく、曇りで撮影時間がほとんど取れなかったというのが実情です。

出にくいと言われている青に目処をつけたかったので、まずは月が出ていないうちに、OIIIの撮影からです。撮影日は9月6日。もう一月近くも前になります。露光時間は5分とし、ゲインは一番得をする120。もしこれで何も出ないようなら、次回はゲインを300にするか、露光時間を10分とかにするかもです。こちらは25枚撮影して18枚使えました。最後は曇って中断です。

対してHαは青より出やすいだろうとタカをくくって、半月期の月がかなり明るい時に撮影しました。というより、最近全然晴れることがなくて、それでもかろじて天気が良かった9月23、24日に渡って撮影しているのですが、両日と月が出ている時です。しかも2日とも曇りに近くて雲越しの像になってしまい、ハロっぽくなったり淡いところが見込みがなさそうでした。結局使えたのは24日の分だけで、枚数で言うと65枚中22枚が使えただけでした。両日もやはり曇って中断です。


各種補正フレームの撮影

上述の通りライトフレームはNINAで撮影しましたが、後日バイアス、ダーク、フラット、フラットダークの各フレームの撮影をSharpCapで撮影して、ビニングの名前の定義の違いで画像処理にトラブったという話を前回の記事で書きました。



でもそれは画像処理になって初めて発覚したことで、撮影自体はなんの問題もなかったです。撮影条件は
  • バイアス: 0.0032ms露光、ゲイン120、500枚
  • ダーク: 300s露光、ゲイン120、31枚
  • フラット: 1s or 16s露光(部屋の明るさに依る)、ゲイン120、50枚
  • フラットダーク: 1s or 16s露光(部屋の明るさに依る)、ゲイン120、50枚
となります。

あえて言うなら、OIIIとHαでフラットフレームを個別に撮っているところくらいでしょうか。もしかしたら一緒にできるかもしれませんが、まだよくわかっていません。フィルターによってムラの出来方が違うと言う話もあるので、念のため各フィルターでフラットフレームを撮っています。そのため、ライトフレームの撮影が数日に渡ってしまったのはラッキーでした。一日での撮影だと、フィルターを交換するたびに途中でフラットを撮らなくてはならなくなります。

これを考えると早めにフィルターホイールに入れてしまった方が良さそうです。今のRGBフィルターを入れ換えるか、8枚入るのを買ってRGBもHα、OIII、SIIも全部入れてしまうか、5枚のをもう一台買ってナローバンドフィルター用に別で作るか、迷ってます。


画像処理

画像処理の最初はいつものようにPixInsightです。ビニングの問題でWeighted Batch PreProcessing (WBPP)ができなかった以外は、極めてストレートフォワードでした。

Hα画像とOIII画像の合成はChannelCombinationを使います。R、G、BにHα、OIII、OIIIをそれぞれ当てはめます。

あとはStarNetで恒星と星雲部のマスクをHα、OIIIと別々に作っておきました。でも結局使ったのはHαのマスクだけでした。最近StarNetのマスク作りはトラブルが少なくなりました。コツはSTFのオートストレッチとHTで恒星がサチり気味なストレッチをかけて、そこにStarNetをかけることです。こうするとかなり綺麗に分離できるようです。

一つトラブルを思い出しました。PCCがどうしても上手くいかないのです。位置特定のPlate solveの方は問題ないのですが、色を決めるところでどうやっても最後エラーで終了してしまいます。かなりパラメータいじったのですが、最後諦めてしまいました。もしかしたらAOOで2色が同じなので、そもそも原理的に出来ないのかもしれません。今後の検証項目です。

ストレッチはArcsinhStretchとMaskedStretchを併用しました。それでもASが強すぎて恒星の色が強く出過ぎたのと、MaskedStretchで恒星がサチらないようにしたので、少し眠い恒星になってしまった気がしています。恒星は多少サチるくらいが鋭く見えて好みかもしれません。

ここまできたら、16bitのTIFFにして、あとはPhotoshopに受け渡します。

炙り出している過程で気づいたのですが、青はまだ出ているものの、赤の出がいまいちはっきりしません。淡いところがどうしてもノイジーになるので、一部DeNoise AIを使いました。


なぜ赤色が弱いのか?

赤が出ない理由ですが、私は単純に月夜の晩に撮影したからかと思っていたのですが、Twitterで先に画像だけ投稿したところ、おののきももやすさんから同じように月夜でもないのに赤が出ないという報告がありました。

さに、gotodebuさんから、そもそも水素のバルマー系列じゃなくて窒素の禁制線が出てるのでHαフィルターだと通りにくいのではと言う指摘もありました。Hαは656.3nm、窒素の禁制線は654.8nm,658.4nmとのことで、ともに2nm程度しか離れていません。今回使ったHαフィルターは7nmです。半値全幅が7nmだとしても、十分中に入っていて7−8割は透過してもおかしくないと思います。gotodebuさんによると、もう少し幅の広いQBPだと赤がはっきり出るとのことなので、一度QBPで撮影してみるのも面白いかもしれません。


結果

さて、画像処理の結果です。M27が見やすいようにトリミングしてあります。

Image09_DBE2_stretched7_cut_crop_b

  • 撮影日: 2021年9月6日21時14分-23時23分(OIII)、9月24日22時13分-9月24日0時12分(Hα)
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi TSA-120 + 35フラットナー
  • フィルター: Barder 7nm Hα, 7nm OIII
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド: f120mmガイド鏡 + ASI120MM mini、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、露光時間300秒x18枚 = 1時間30分(OIII)、300秒x22枚 = 1時間50分(Hα)
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC、DeNoise AI
目的の一つだった回りの淡いところはそこそこ出ているようです。ただ、やっぱり赤が出ていない気がします。もう少し出てもいいと思うのですが、やはりリベンジ案件でしょうか。

それでも前回のM27の撮影よりははるかに進化しています。2018年11月なので3年くらい前です。
integration_DBE_DBE_PCC_st4_cut

3年前と今回の違いですが、口径は25cmと12cmで半分以下、焦点距離は1600mmと900mm、カメラはカラー常温とモノクロ低温、フィルターなしとナローバンドフィルターなどがです。画像処理の進歩も大きいです。3年前はそこそこ写ったと思っていましたが、比べてみると違いは明らかで、ずいぶん進化したことがわかります。

あと、トリミング前の画像はこちらになります。どのくらいトリミングしたかがわかるかと思います。

Image09_DBE2_stretched7_cut_b

いつものアノテーションです。
Image09_DBE2_stretched7_cut_b_Annotated


まとめ

初めてのナローで、今回は比較的簡単なAOOに挑戦してみました。自宅でもナローなら淡いところも出ることがわかったのは大きな収穫です。ただし月がある場合とない場合ではまだ写りは変わるのかもしれません。

あとトータルの撮影時間も実は大したことありません。いや、時間はかけたのですが使える枚数が少なかったです。倍くらいの露光時間があればもしかしたら劇的に変わるのかもしれません。

天気のせいで日数はかかってしまいましたが、今まで見えなかったものが見えてくると思うとナローバンド撮影もかなり面白いです。AOOにとどまらず、SAOとかにも挑戦してみたいと思います。

CBPの作例の最後になります。みずがめ座のらせん星雲です。撮影日が8月21日でのんびり画像処理していたので、もうかなりのことを忘れてしまっています。下の文書の撮影時の様子は、撮影当日か次の日に書き留めておいたことです。やっと記事として日の目を見ます。

一晩で2対象の撮影

秋の星座なので、そこそこ高度が上がってくるのが夜少し遅くなってからです。なので前半は前回示した三日月星雲を撮影してました。



らせん星雲がのぼる頃には三日月星雲の撮影をやめて、らせん星雲へと移りました。

撮影時のStick PCのトラブル

三日月星雲のときは調子良かったStick PCでの撮影ですが、らせん星雲に移ろうと準備をしているときにStick PC自身が何度か落ちました。特に、ShaprCapを使う時が多かったような気がします。このStick PCの弱点の一つなのですが、ファン側を床などにくっつけてしまってしばらく運用すると、温度が上がって確実に落ちるようです。また、極度に暑い夏はSharpCapとかでの計算量が増えると反応が無くなってしまうことがあるようです。ただしファンは回りっぱなしなので、外見を見ただけではわかりません。

今回は外での撮影だったので、直につなぐモニターを用意していなくて、リモートデスクトップで見ていて反応が無くなったということしか分からかったので、最後どうやって落ちたのかよくわかっていません。ネットワークトラブルでただ単にリモートデスクトップが繋がらなくなって落ちたと勘違いした可能性ももしかしたらあり得ます。特に、Stick PCをモニターしているクライアントの方のWi-Fiを弱い方につなげていたことが後でわかったので、そのせいの可能性があります。

今回一番の失敗が、夜中に赤道儀を反転してから撮影を初めて放って寝てしまって、朝確認したら午前2時で撮影ファイルの生成止まっていたことです。1時間半ぶんくらいの撮影時間を無駄にしてしまいました。確認したら撮影用に走らせておいたソフトも全部立ち上がっていなかったので、どうもPCが再起動されたような形跡があります。これがトラブルで止まったのか、アップデートとかで再起動されたのかは分かりません。そもそのアップデートはその日のうちに事前にしておいたので、そんなに連続であることはないと思うのですが。

-> その後記録を見たら、撮影をしたその日(夜中)に幾つかの「品質更新プログラム」というのが3つインストールされていました。これが再起動を要請したかどうかまで分かりませんでしたが、どうやらこれが怪しいです。アクティブ時間を撮影時の夜から明け方にしておく方がいいですね。


画像処理と結果

最初、ダークを昔撮ったもので使いまわして処理しました。露光時間は3分で同じですが、温度が0度のライトフレームに-10℃のダークフレーム、ゲインが220のライトフレームに180のダークフレームを使ってしまってます。これだとものの見事にアンプグローが出てしまいました。気を取り直して露光時間、ゲイン、温度全部合わせて取り直して改めて処理。きちんとアンプグローも消えてくれました。やっぱり横着はダメですね。バイアスはあり、フラットは無しです。バイアスはダーク内に含まれているはずなのでなしでもいいのかもしれません。フラットは代わりにABEを使い、StarNetで恒星と分離してから、星雲側の背景にのみ、細かいところを補正するために再度DBEを使いました。そこそこ炙り出していることになって、ノイズが目立ち始めてるので、これ以上を求める場合は露光時間を増やすしか改善していかないと思います。

「らせん星雲」
masterLight_ABE_ABE_DBE_ALL3

  • 撮影日: 2020年8月21日午前0時2分-1時29分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi TSA-120 + 35フラットナー + CBPフィルター
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO ASI294MC Pro、温度0℃
  • ガイド: PHD2 + f=120mmガイド鏡 + ASI290MMによるディザリング
  • 撮影: NINA、ゲイン220、露光時間180秒x32枚 = 1時間36分  
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

期待していた、瞳の虹彩のような線はあまり出なかったです。背景が少し荒くなっています。これらは露光時間が1時間半と短かったせいでしょう。

今回は赤と青とかだけでなく、惑星状星雲らしいカラフルな天体です。CBPで撮影しているので、色がどこまで正しいかがよくわかりません。そもそも色情報は欠けてしまっている可能性が高いので、それらしい色に仕上げているだけです。そこに根拠はありませんが、大きくいじるような必要は全然なかったので、CBPの色バランスはそれほど悪いわけではないかと思います。


CBPフィルター検証のまとめ

これまで、CBPで三裂星雲の一部網状星雲北アメリカとペリカン星雲三日月星雲、らせん星雲と

あとやり残したのは、M42すばると、アンタレス付近とかでしょうか。多分これらはCBPでも難しいと思います。暗い空に勝るものはなくて、これらを自宅から満足いくくらい出すのがもっと大きな目標ですが、焦らずにゆっくりやっていこうと思います。

今回でCBPの初期評価はおしまいです。今回の検証を通して把握できたのは以下のようなことです。
  • QBPほどではないにしろ、十分な光害防止効果がある(QBPの1.3倍くらいしか背景が明るくならない)
  • 青色もかなり出る(紫外の方まで透過して、かつCMOSカメラも感度がある)
  • 赤外起因のハロも防げる
  • 色バランスがあまり崩れない
これまで評価の高かったQBPにも勝るほどメリットが多いです。はっきり言って、十分すぎるほど使えることがよくわかったので、今後も完全に実戦投入決定です。


 

ZEROの振動特性でもう一つやってみたかったことです。TSA-120を載せて使い勝手を試してみました。


ZEROのこれまでの経緯

手持ちのポルタIIの経緯台と付属の三脚で惑星などを見ると、結構揺れてしまうのが不満でした。初心者向けというのでコストの限界もあるため仕方ない面もあるのですが、見ている最中にフレキシブルハンドルの揺れで視野が揺れてしまったり。なのでこれまで観望会などでもあまり出番がありませんでした。

フリーストップの操作性の良さを保ちつつ揺れの改善ができるならと、ZEROにAdvanced VX付属の三脚をつけて試してみたところ、揺れを大幅に改善することができ、体感的にはざっくり10分の1程度になったというのが前回までの結果です。これで観望会などでも不満なく使ってもらえるようになりそうです。


TSA120をもっと気軽に使いたい

この一連の検証の過程にはもう一つの大きな目的がありました。口径120mmのTSA-120をZEROに載せてもっと気楽に使えないかということです。

TSA-120にはロスマンディー規格のアリガタを付けていて、通常CGEM IIに載せて使っています。CGEM II自身は頑丈で操作性もよく不満はないのですがやはり重くて、気軽に出すというよりはいつも気合をいれて出しています。これが観望会でも気楽にパッと出すことができるなら、TSA120の稼働率がかなり上がるはずです。

前回までの検証ではポルタII付属の口径80mmの鏡筒を使いましたが、ZERO+AVX三脚で十分な揺れの少なさを実現できました。どれくらいの共振周波数だったら実用的にどれくらいの揺れになるか、感覚的にもある程度結びついたので、他の組み合わせを測定して比較する準備もある程度できてきたと言えると思います。そこで今回
  • メーカーでは推奨TSA-120をZEROに載せるのは推奨していない
  • 某ショップ店員さんが試したところ、やはりTSA-120+ZEROは揺れてしまうという報告があった
ということを気にしつつ、本当のところはどうなのかというのを自分で確認して使えるかどうかを判断したいと思います。


実際に載せてみる

まず、ZEROに取り付けるためにロスマンディー規格のアリガタをVixen企画のアリガタに取り替えました。その状態で実際にZEROに取り付けてみたのですが、さすがにあれだけの重さと、値段(笑)のものをネジ一本で固定するのは不安になってきて、結局Takahashi純正の鏡筒バンドをZERO側に取り付けることにしました。M6ネジ2本で固定されているZERO付属のアリミゾを外すと、90度ずれた方向にM8ネジ用のねじ穴も空けてあるため、M8ネジ2本で固定する純正鏡筒バンドもそのまま取り付けることができます。ここら辺の柔軟性はさすがです。

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実際にとりつけた写真です。

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さらに実際に鏡筒も取り付けた場合です。三脚が丈夫なせいか、不安定になるようなことはなく、転倒などの心配は皆無でした。

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揺れの見積もり

一応この時点で鏡筒の端を少したたいてみます。すると、思ったより揺れるではないですか。ポルタII鏡筒の時より揺れも持続しているみたいです。ちょっと心配なので、簡単に揺れを見積もってみました。

前回の結果から、揺れの実感は基本モードの共振周波数の違いの3乗で効きそうだということが分かっています。共振周波数は慣性モーメントで効くはずなので、まずは慣性モーメントを概算してみます。効いてくる違いは2点、
  • ポルタII鏡筒A80MfとTSA-120の重さが3.3kgと6.7kgで約2倍の違い。
  • 鏡筒の長さが焦点距離に比例するとして910mm(初出の焦点距離に間違いがありました。910mmが正しいです。)と900mmでほぼ同じ。
中空円筒のピッチ方向とヨー方向の慣性モーメントの式は

m/4{(外径^2+内径^2)/4+(鏡筒長^2)/3)}

と書けますが、外径と内径が鏡筒長に比べて十分短いので前項を無視して

m/12 x 鏡筒長^2

とすると計算が簡単になり、上の数値を当てはめると慣性モーメントはそれぞれ、0.23 と0.45 [kg m^2]となります。鏡筒長は2乗で効きますが、両方とも900mm程度でほぼ同じなので、実質重量の違いだけの違いになっています。

共振周波数は慣性モーメントのルートで効いてくるので、sqrt(0.45/0.23)=1.4となり、ZEROにA80Mfを載せたの時の14.1Hzと比べて1.4分の1、すなわち10.0Hz程度まで下がることになりそうです。

Q値が変わらないと仮定すると、共振周波数の3乗で揺れることになるので、1.4の3乗で2.7倍程度揺れを感じることになるはずです。ポルタIIとZERO+AVX三脚の揺れの違いが10倍程度だったので、その中間くらいという予測になります。


TSA-120をZEROに載せたときの実際の揺れ

さて、実測はどうでしょうか?前回同様にASI294MC Proをつけて、木星を見てみました。カメラ部分を指で弾いてやり、その揺れの様子を撮影します。焦点距離5mmのアイピース程度を想定し、画素を4分の1程度にトリミングしています。前回と違うのはビニングをするのを忘れてしまったので、フレームレートが60fps程度となってしまいました。揺れを10回計測するので、測定結果には影響はないはずです。

まずは横揺れです。

Yaw(横向き)に揺らした場合

ZEROにA80Mfを載せた時より明らかにゆっくり揺れています。

動画から、10回揺れるのに36.392秒から37.428秒まで1.036秒かかっています。ということは1周期が0.1036秒となるので、共振周波数はその周期分の1で1/0.1036=9.7Hzとなります。予測の10.0Hzとほぼ一致ですね。重さもカタログ値、長さも焦点距離から換算しただけなのですが、こんな適当な見積もりでもそこそこ実測と合ってしまうことのほうが驚きでしょうか。

実際の揺れは共振周波数の3乗で効くとすると(14.1/9.7)^3=3.1と体感では約3倍になることがわかります。


ちなみに縦方向の揺れです。 

Pitch(縦向き)に揺らした場合



実際に使用しての感想

さらに、実際に眼視で使ってみての感想です。確かに揺れの感覚ではちょうどA80MfをポルタIIとZERO+AVX三脚の時の中間くらいと言っていいかと思います。

ではこれが許容範囲かというと、アイピースの焦点距離が20mmの900÷20=45倍程度ではそこまで不満ではないです。

問題はさらに拡大した場合、今回5mmのアイピースを使い900÷5=180倍にしたときははっきりと不満を感じました。何も触っていない時はそれでもまだ大丈夫です。微動ハンドルをいじっただけでも、そこまで揺れなくて、揺れても比較的すぐに揺れは収まるので、これもそこまで問題ではないです。1番の問題はピントを合わせるときです。鏡筒を直接触るので、かなり揺れます。揺れているとピントがあっているかどうかわからないので揺れが収まるまで待ちます。ダメならまた調整で揺れます。これでは微調整が難しくて実用とは言えません。観望会で「ピントが合ってなかったら自分で合わせてみてね」ということが言えないので、観望会での使用も厳しいでしょう。

では、元々のポルタの揺れは許容範囲ではないのかというと、低倍率ではまだいいと思います。ですが、強拡大するとやはり不満です。そもそも経緯台で180倍、ポルタでも6.3mmのアイピースが付属するので144倍計算になりますが、そこまで倍率を上げて見ることに意義があるか?ということです。これだけの倍率だと視野も狭くなり、経緯台だとすると追いかけるのが大変です。ポルタIIの場合は揺れもあるので、144倍でもう過剰倍率に近いのではと思います。

ところが、TSA120で高倍率で見てしまうと、話は変わってきてしまいます。ZEROにTSA120を載せて高倍率で木星と土星を見たのですが、それはそれは見事なものでした。


TSA-120で初めて見た惑星

今回はじめてTSA-120で惑星を見ました。TSA-120の眼視がすごいという理由が分かった気がします。このときの感動を、忘れないうちに書いておきます。
 
TSA-120で惑星を見ると違った世界が見えるとか、口径だけで説明できない何かがあるというようなことを聞いていたのですが、確かに納得です。より大口径のシュミカセでは、明るさはもちろん有利なのですが、像の甘さのようなものがあったことがよくわかりました。
  • 180倍だと木星の縞の濃淡がよーくわかります。
  • 土星のカッシーニの間隙が余裕で見えます。
  • また、大気収差が目立ちます。眼視でもADCを入れた方がいいかもしれません。
  • この日は大気揺らぎは小さい方だったと思います。 それでも細かい模様はユラユラ揺れてしまうので、もっと穏やかな日に見たら、さらによく見えることでしょう。
きちんと作った素性の良い鏡筒だとここまで見えるという、お手本のような見え方だと思います。できることなら、観望会でもこの素晴らしい惑星を来てくれた方達に見せてあげたいです。

しかしながら、TSA-120の性能を活かす高い倍率ではZEROでは特にピント合わせ時の揺れが気になってしまい、時間の限られている観望会での運用はやはり厳しいかと思います。また、ZEROに載せるために鏡筒バンドについているアリガタプレートを毎回外すのも楽とは言えず、手軽さという観点からは遠ざかっていきます。結論としては、今後はTSA-120を使う場合は観望会などでも重い赤道儀に載せて見ることになるかと思います。


まとめ

今回のA80MfとTSA-120の比較の結果は、鏡筒長がほぼ同じだったということもあり、重量の違いだけで揺れの具合を簡単に説明でき、それが実測ともかなり一致することがわかりました。高々共振周波数の1.4倍の違いが、揺れにすると3倍に相当することも、かなり体感と一致すると言っていいと思います。

でもこの3倍の揺れ、正直言うと使い方によっては十分許容範囲です。問題はTSA-120だと倍率を上げたくなる、ここに尽きると思います。高倍率にすると揺れが顕著に問題になるので、その意味ではTSA-120を高倍率で見ることまで考えると、ZEROでは少し力不足といったところでしょうか。でも、ピントさえ一旦合わせてしまって、一人で見続ける分には高倍率でもそこそこ使えると思います。

当初のZEROで気軽に「観望会とかの大人数で」TSA-120を使うという目論見は、残念ながら難しそうです。ZEROはメーカーの言うとおり、やはりせいぜい口径100mm位までの鏡筒に抑えておいて、気軽に見ることに重点をおいた方が向いていると思いました。

元々TSA-120まで見越して選んだAVX三脚はそこそこ重いので、手軽さと言う観点からは少し大袈裟な気がします。かと言ってポルタクラスの三脚だとさすがにZEROの性能を活かすのには勿体ないので、軽い頑丈な三脚を用意するのがいいのかもしれません。

あまり大きくないカーボン製を手に入れるか、もしかしたら今手持ちのGizzoのバサルトのトラベル三脚でもいいのかもしれません。これは足を伸ばしても相当安定しています。

 

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