ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:StarNet

昨年9月に自宅に遊びに来てくれたあんとんシュガーさん。その時はまだ機材を揃え始めたばかりで、長時間の撮影はできてませんでした。その後自宅前でアンドロメダ銀河を、FS-60CBをポラリスUに載せ、FUJIFILMのX-T2で約1時間半を切るくらいの時間で撮影したそうです。撮った画像は自分自身で、時にはTwitterでの猛者たちの力も借りて、PixInsightの練習も兼ね画像処理を熱心に進めてきてました。その様子はあんとんしゅガーさんのTwitterでの投稿を見てるとよくわかり、私もいくつかコメントを返し、いつかまた一緒に画像処理やりましょうと約束してました。


直前に訪問が決まる

1月22日の金曜日「そろそろどうですか?」と聞いてみたら「それでは明日の土曜日に」となり、急遽自宅に来てもらうことに。新潟の考太郎さんも以前から参加したいと表明されていたので、声をおかけしたのですが、直前のお誘いのためにやはり仕事で都合がつかないとのこと。とても残念がってくれたので、次回こそはぜひ参加していただきたいです。


到着

久しぶりのお客さんなので、午前中少し部屋を片付けました。午後1時過ぎ、あんとんシュガーさんが到着。早速見せてくれたのが、大阪あすとろぐらふぃ〜迷人会の井戸端さん製作の自由微動雲台の改良版。

IMG_1528

以前テストしたものよりも見た目もシンプルに、より頑丈そうになっていて、動きもスムーズそうでした。ただ、星を見てのテストまではできてないので、できれば実測でテストしてみたいです。ちょうどTwitterで井戸端さんと繋がって聞いてみると、揺れを収めるための制振用の柔らかい金属を挟み込んでいるとのことでした。でもこれは後から聞いた情報で、その場で見ただけではわからなかったです。これを聞いてますます実際の星で見てみたくなりました。Twitter上でも、他に手に入れられたからの意見で「相当頑丈に固定できる」との意見が出ていたので、かなりいいものに仕上がっているのかと思います。数は出ていないと思うので、手に入れられたユーザーは多分相当ラッキーなのかと思います。末長く実用レベルで使えるのか思います。


画像処理へ

さて、会話のままに引き続き画像処理になだれ込んでいったのですが、どうやってやるかが考えものでした。あんとんシュガーさんは見事にPixInsight (PI)門下になってしまって(笑)、WeightedBatchPreprocessing (WBPP)でIntegrationしたくらいの画像までは出せるようにはなっています。ただ、それ以降の炙り出しをPIの中だけでやろうとしているため、なかなか苦戦しているようです。まずはあらかじめPIでIntegrationまでした画像を用意して、今回はストレッチまで進めるところを実際にやってもらって、その後は別のソフト(今回はPhotoshop)に移して(あんとんシュガーさんはPhotoshopは持っていないので)やり方を「見て」もらう、としました。


PixInsightにて

まずIntegrationした直後の画像は、当然ですがPI上では真っ暗です。あんとんシュガーさんは、そもそもきちんと撮影できているかどうか不安で、この画像にどれくらいの情報が入っているのか理解し切れていないようでした。なかなか細部まで出てこなかったことから来ている不安だと思います。少し安心してもらいたくて、以前Twitterに投稿された画像(JPEG)から、私の方でStarNetで分離して、少しだけ炙り出した画像をTwitterで再投稿したことがあります。

Epqa74tVEAQiGyN_ABE_DBE_back

JPEGから出したものなので、情報は既に欠落しているはずです。それでもこれくらいの淡いところまで残っているので、もう素材としては十分なものが撮れているわけです。その眠っている情報を引き出すことはやはり多少の技術がいるので、今回はそこを重点的に説明することになりました。

といってもやったことは当たり前のことで、
  • AutomaticBackgoundExtractor(ABE)、DynamicBackgroungExtraction(DBE)で周辺減光など、できるだけフラット化しておくこと。
  • PhotometricColorCalibration(PCC)で恒星の色を正しいと思われるものに合わせること。
  • 主にArcsinhStretch(AS)を使って、彩度を落とすことなくストレッチすること。
がメインです。

まずABEですが、2次と4次で個別に処理してみましたが、どちらも結果にあまり変わりはなく、銀河の周りに大きなリングが残ってしまいました。ここでABEは諦めてDBEに。今回は銀河なので、暗黒帯や広い範囲にわたる星雲もなく、DBEでのアンカーは銀河以外のところに数多く、明るさの差があるところは細かく打っていきます。その結果、ABEの時よりはかなりマシになりましたが、それでもリングはうっすらと残ってしまっています。ちょうど良いタイミングでniwaさんがDBEの面白い使い方を示してくれていました。



この情報はあんとんシュガーさんが帰ってから読んだので、今回は試せませんでしたが、これでうまくリングが消えるかもしれません。それでもDBEで相当フラットになったので、M31のかなり淡いところまで出てくるようになります。ここがまず一つ理解してもらいたかった点です。

PCCはデフォルトの12等星まででなく15等星くらいまでにすること、Apartureをデフォルトの8でなく12くらいまで増やすことで、おかしな色バランスになることを防ぎます。詳しくはniwaさんたち委員会の結果を見るといいです。ちなみに私は(どこで知ったか、もう覚えていないのですが)おまじないのように15等星までやっていたので、これまで色バランスがおかしいと思ったことはないです。




次ですが、あんとんシュガーさんは色を出すのに苦労しているようなので、ASで彩度を落とさないようにストレッチしてみます。ASにはハイライトを防ぐオプションがあるのですが、これは通常オンにしておきます。ところが今回はこれをオンにしたことで少し苦労しました。ASを何段階かに分けてかけ、最後のみScreenTransferFunctionとHistogramTransformationで微調整して以下のようになりました。

_60_30__ABE_DBE1_Sam_toPS

最大にストレッチしきる手前で止めてあります。ASのハイライト防止のオプションのために恒星がサチることはいです。この状態でStarNetをかけると、一部の恒星が銀河や星雲などととして認識され、うまく分離できないという問題が出ました。恒星としての鋭さがないことが原因です。そのため、別途ストレッチを戻してから再びSFTとHTをかけて、あえて恒星をサチらせるようにすると、きちんと恒星と背景を分離できました。ここで作った恒星部をMorphologicalTransformation(MT)でDilationをかけて少し恒星を拡大してマスクとしました。

そうそう、このときあんとんシュガーさんから「サチる」がわからないと質問されました。Twitterとかでも使われてるのをみるけど意味が分からないというのです。多分これ理系用語なんですよね。「飽和」を意味するSaturationからきていますが、実験とかして電圧が測定範囲外で上に張り付いたりするときに「あ、サチってる」とか普通に使っています。

恒星をサチらせていない上の画像と、別で恒星をサチらせて作ったマスクを、16bitのTIFFフォーマットで保存して、Photoshopで開きます。でもここからはあんとんシュガーさんがPhotoshopを持っていないので、あらかたの作業工程を見せるだけになります。


Photoshopにて

Photshop上ではアルファチャンネルを利用して星マスクをかけて、銀河部分をあぶりだし、且つ銀河以外の背景のノイズを軽減します。特に銀河部の色出しは彩度、明度をともに調整しつつ自分の好みになるように調整します。中でもCamera Rawフィルターは便利なので初心者にも使いやすいと思います。

今回は星マスクを使いPhotoshopで処理しましたが、StarNetで分離した恒星画像とその他銀河を含んだ背景画像に分けた状態で処理し、レイヤーで重ねる方法もあります。ただ、PI上でArcsinhStretchを使ったために恒星が一部分離できなかったので、今回はこの方法を取ることができませんでした。後のレイヤーでの合成をうまくできるなら、初心者にはこちらの方がやりやすいと思います。

ノイズに関してはNik CollectionのDfine2やDeNoise AIが強力です。それでもこれらツールには限界はあるのと、ときには強力すぎることもあるので注意が必要です。

_60_30__ABE_DBE1_Sam_low

Photoshopに持ってくる前の画像と比べると、銀河の色は出ていますが、どこまで淡いのが出てるかに関しては、Photoshopで処理してもそこまで変わらないのかと思います。背景は銀河の炙り出しとともに荒れてきたのでDeNoiseをかけています。本当は銀河部だけのマスクを作って、銀河だけ炙り出すようなことをやるともう少しましになるのかと思いますが、今回はそこまで時間をかけることができませんでした。


課題

それらのことを含めて、まだできそうな改善の余地をあげておくと
  • DBEでもう少し銀河回りのリングをうまく除去する
  • Pink starの除去
  • 銀河部だけのマスクを使った処理、そのための銀河以外の背景のノイズ処理
  • 最後の微調整に時間をかけること
などかと思います。

結局午後6時くらいまででしょうか、5時間くらいずっとほぼ休憩なく画像処理でした。私自身いつものように紆余曲折しながら長い時間かけましたが、こういったごちゃごちゃした過程を、丁寧に一つ一つ潰しながら、時に後ろに戻って時間をかけてやっていくということを見せたかったのです。

あんとんシュガーさんはすごく熱心なので、多分今回やったこと、見てもらったことを、また自分で繰り返してくれるのかと思います。その場でも話していたのですが、前回9月にきたときにはまだ処理する画像ファイルも無いような状態だったので、すでに今回までに相当大きく進歩しています。春になれば北陸も晴れる日が増えてくるはずなので、撮影もどんどん重ねていくのかと思います。

重要なのはせっかく撮影した画像からいかに情報を引き出してやるか。環境の良いところで長時間撮影したものは処理も楽なのですが、自宅前で撮影したようなものは、画像処理もある程度手間をかけてやらなければなかなか見栄えのするものにならないです。これからも楽しんで画像処理をすすめて頂けたらと思います。



すごい雪

もう天気があまりに悪くて、全くネタがありません。たまに昼間晴れるときや、たまに雲間から星が見える時もありますが、長くは続かず、撮影も電視観望も厳しいような状況です。それにまして雪が酷すぎます。今日あたりやっと少し溶けてきましたが、庭に望遠鏡を出すのを躊躇してしまうような雪の量でした。先週末はずっと降り続いていました。自宅周りでの積雪は1mを優に超えました。

IMG_1430


日曜、久しぶりに青空を見ました。太陽望遠鏡を出そうとも思いましたが、庭も犬走りも雪で埋まって断念。それよりも車の雪かきの方が優先です。

IMG_1441

IMG_1449


際画像処理

何もネタがないので、昔の画像の再処理をしてみました。約2年前に撮影したIC443くらげ星雲です。自宅庭撮りの一環で、QBPを手に入れて結構すぐのものです。FS-60QとEOS 6Dで、ISO3200で300秒露光、約2時間半の露光時間になります。

これがBeforeで
light_DBE1_PCC_stretched_sat_ps_denose_ps2a

これがAfter

masterLight_cut_ABE_PCC_AS_MS_STF_star_Saturation2_cut


QBPを手に入れて初期の頃の上の画像と、いろいろクセなど分かった上での画像処理を施した下の画像を比較すると、随分変わっていることがわかります。細部が出ているのはもちろん、恒星の色の再現がかなりマシになりました。恒星の肥大も防げています。Hαも赤一辺倒から、青成分、緑成分も入り階調豊かになっています。


相違点

画像処理において前回と違うところがいくつかあります。
  • 同温度のダークフレームのストックがあったので枚数を増やしたこと。
  • バイアスを枚数の多いものに変えたこと。
  • PixInsightでの処理もBPPからWBPPになったこと。
などありますが、ここら辺はあまり影響ないです。大きく違うところの一つは、ストレッチ方法が柔軟になったこと。以前はおそらくArcsinhStretchで恒星が真っ赤になって、STFだけで済ませてたのが、今回は
  • ArcsinhStretchとMaskedStretchを併用したこと、その結果恒星の色がかなり豊かになっています。
多分一番影響が大きかったのがStarNetの存在です。
  • StarNetで背景と恒星部分に分けることで、背景を思う存分いじることができます。
背景の炙り出しに集中できる状態にして、どこまで炙り出せるか限界を知ることができます。いちばんの問題は、どうやって恒星を合わせるか。Photoshopで背景と恒星を合成できますが、やはりどうしても不自然さが残ってしまいます。なので最近は恒星部分をマスクとして保存し、StarNetで分ける前の画像にPhotoshop上で適用しています。それでも星マスクをうまく適用しないと、不自然さが出てしまうので大変さは残ります。Before画像の2年前はマスクを使ったりしていなかったので、背景を炙り出し切ることができていませんでしたし、逆に恒星は肥大化してしまっています。


QBPの色について

恒星に関してですが、QBPの欠点でオレンジの恒星はやはり出にくいのは補正し切れなくて、赤い星のようになってしまっています。これはUV/IRカットフィルターを併用すると解決するかもしれません。もしくはCBPだと星のオレンジ色は出ているので、再度撮影からするときはQBPよりもCBPの方がより自然になるかもしれません。

あと、星雲の色に関しての処理も初期のQBPの時の扱いから大きく変わっています。QBPはその名の通り4つの輝線スペクトルを取り出すようなフィルターのため、カラーバランスがどうしても崩れてしまいます。PCCで恒星の色は合わせますが、そのことが星雲部の色を合わせている保証は何もないはずです。しかも、そもそも恒星の色も限られた波長から、既存のデータベースとできるだけ一致するように合わせたというだけなので、一見合っているように見えても元のスペクトルが全然違い、正しいとは限りません。とりあえずは見た目で合っている恒星の色のバランスは崩さないように、星雲の方の色バランスは結構ずらしています。具体的には
  • トーンカーブで星雲の青と緑の成分を増やすことで、階調よく見えるようにしている。正しい色はわからないので、これは自分の好みに。
と言ったところでしょうか。この方法が正しいかどうかは全くわかりませんが、少なくとも赤一辺倒の、のっぺりした色よりは(見た目だけでも)良くなるのではと思っています。


ノイズ

あと、ノイズに関しはそもそも露光時間がそこまで長いわけではないので、素材としてまだノイジーなのは否めません。
  • 今回DeNoiseを使っているので、ノイズに関してはかなり軽減できています。
それでも拡大すると分かる通り背景のノイズが取り切れてなくて、多少星雲部も不自然なところが残っています。DeNoiseは細かいノイズは得意なのですが、大きなノイズがどうも苦手みたいです。もやもやのカラーノイズのようなものがどうして残ってしまいます。Nik CollectionのDfine2を掛けてからDeNoiseを施すと比較的カラーノイズが出にくくなることもあるのですが、今回は細部が出にくくなってしまったのでDfine2は使ってません。


今後の課題

この背景のモコモコカラーノイズは課題の一つです。露光時間を伸ばすのが一番の解だと思うのですが、露光時間が稼げない時もあり、画像処理でもっとうまくなんとかならないかといつも思っています。

いまだにPixInsightでのノイズ除去や、細部出しの処理を実戦投入できていません。かと言って、使ったことがないわけではなく、毎回いろんな方法を試しています。でも今のところPhotoshopとDeNoiseなどのツールとの組み合わせに結果として勝つことができていないような気がして、結局元に戻ってやり直してしまっています。DeNoiseを使うのは少し悔しい気もするのですが、今のところまだ他の手法を確立し切れていません。


 

このページのトップヘ