久しぶりの新鏡筒です。

そろそろ次の鏡筒が...

前回鏡筒を購入したのはもう2年近く前の2020年1月、TSA120でした。



色々迷っていた時期に、調整などの余地が入り込まないような参照的な鏡筒が欲しくて決めました。非常に満足していて、シリウスBを見たり、トラペジウムのEF星、GHI星まで認識できたり、大気分散などいろいろなことを学ぶことができました。元々眼視に向いている鏡筒と言われていますが、撮影にも大活躍でここ2年間でかなりの成果を上げることができ、値段の分の価値のあるとても楽しい鏡筒でした。

その一方、どうしても口径が物足りないことを感じる時があることも事実でした。もちろん屈折では大口径の範疇に入ります。しかし系外銀河などは最後は口径勝負になることもあり、反射系の大口径に比べると分解能に物足りなさを感じてしまいます。惑星などは中心像がメインなので、C8やMEADEの25cmで楽しむことができます。VISACは口径20cmと大きく、星像が四隅まで鋭いはずなのでいいのですが、この子は本当にじゃじゃ馬で時には綺麗な点像の恒星を描くのですが、大抵がおにぎり型になってしまうのにはいまでも散々悩まされています。光軸調整も頑張っていますが、どうも自分が思っているよりも遥かに精度が必要そうです。おにぎりで悩むよりは、撮影に集中して貴重な富山の晴れの機会を逃したくないというのが正直なところです。

大口径が欲しい理由が分解能なのが第一なのは間違い無いのですが、もう一つの理由がラッキーイメージです。ラッキーイメージはそこそこ明るい天体向きですが、それでも露光時間をどこまで短くできるかは口径に拠ります。

口径だけでいいのなら、ニュートン反射鏡筒やドブソニアンという手もあります。これだと30cm以上が狙えます。ただし、ニュートンで30cmだと赤道儀から考え直さなくてはいけません。手持ちの赤道儀はCGEM IIで、耐荷重は18kg。さすがに30cmだと厳しいです。25cmニュートンにパラコア2などのコマ補正を入れることも考えましたが、そもそも25cmニュートンの大きさと調整で稼働率が上がらないのも心配でした。ドブは一つの解なのですが、視野回転と、大きさと、稼働率が心配で、やはり撮影だと心配です。gotodebuさんがされているような、大口径短時間露光は魅力ですが、やはりドブを買う時は眼視を本気でやりたいと思った時かと今は考えています。この間飛騨コスモス天文台でかんたろうさんに眼視で見せてもらってかなり面白かったので、そう遠くない日かもしれません。

ちなみにここまでで議論した20cmを超える鏡筒は
  • GINJIの25cmか30cm。
  • SkyWatcherのBKPの25cmか30cm。
  • ドブの30cm以上。SkyWatcherなら16インチ(40cm)まであります。
  • タカハシでCCA250。
  • 同じくタカハシでμ-250CRS。
などです。ニュートンとドブは先の理由で結局は却下、もしくは延期。CCA250は値段的に流石に手が出ません。μ-250CRSは値段もそうですが、手に入れるのが大変そうです。反射系で撮影まで考えると、なかなか解がないのです。


SCA260 !?

そんな中でのSCA260でした。最初のニュースは1年くらい前です。その頃はちょっといいな、でも高いんだろうなといった感想でした。その後何度か話題になり、そのうち海外では発売間近とか、日本でもサイトロンが扱うとか、徐々に試用も含めて情報が出てきました。

重さが15kg。おそらくこれはCGEM IIでは載せることができる最大級の重量です。SCA260は一部ではプアマンズCCA250とも言われていますが、もし本当にCCA250に迫ることができるなら半分から3分の1の価格。モーターフォーカサーこそ付いていませんが、ファンや温度計、鏡筒バンド、アリガタプレート、デュアルスピードフォーカサーなど、最初からそこそこ充実しているので余分な出費も抑えられそうです。付いてないのは専用ケースくらいでしょうか。でも専用ケースに入れたら大きく重くなりすぎるので、当面は自宅庭での撮影か、遠征の際も車の座席においてシートベルトで固定することでなんとかなりそうです。

Cloudy Nightsでは9月くらいから試用レポートも出てきました。


見ている限り評価は悪くなさそうです。

ここら辺の時点で、いつくらいに扱い始めるかシュミットさんに相談してみました。すると「そもそも受注生産だが、最初のロットが入荷するので納期は早い」とのこと。金額が金額なので家族とも相談する必要があります。

こんな金額の天文機器を買うのは初めてで、間違いなくこれまでで最高額です。最初は妻もとりつく島もない状態でしたが、何度か説得するうちに渋々ながらOKとの返事が。そこで晴れて正式に発注し、ちょうど先週末、名古屋の実家に行っている最中に自宅に到着しました。


到着と開封の儀

日曜日、予定より少し早めに自宅に帰ってきたら、玄関のところに特大の段ボール箱が!

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早速箱を空けてみると、中には想像より大きく見える鏡筒が。

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ちなみに、左上に置いたのは同じメーカーのFMA135です。SCA260と比べると、もう生まれたての赤ちゃんみたいです。FMA135は口径こそ3cmですが、コンパクトで非常にシャープな像。作りも良く、持っていて嬉しくなる鏡筒です。SCA260が候補になったのも、このFMA135の作りの良さが一つの理由でした。私は主にミニマム電視観望セットとして愛用しています。3cmと26cmで口径比は8.7倍ですが、体積比は約660倍。すごい差です。

箱から出してみました。カーボン鏡筒のせいでしょうか、意外にそこまで重くないです。付属品も並べて見ました。全て鏡筒に最初からついているか組み込まれているので、別なのは電池を入れる必要がある温度計くらいでしょうか。あとはマニュアル類とレンチだけです。鏡筒先端には柔らかいカバーが付いています。

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上の写真は下側のドブテイルバーが付いている方から見ていますが、もう一つ上の写真は上側から見ていて、ガイド橋とかを取り付けることができる汎用のプレートが最初から付いています。上下のプレートだけでも後付けだと数万はしてしまうので、ここら辺はありがたいです。

そういえばカーボン鏡筒を持つのも初めてのことです。25cmで最初からフルオプションに近いものがついた状態で15kgという軽さを実現してくれているので、今の赤道儀でも使えるわけです。それでも我が家では最重量。CGEM IIがどこまで耐えられるのかは実際に運用して見ないとわかりません。ひょっとしたらこれがきっかけで赤道儀を追加とか、鶏か卵か、訳のわからないことになるかもしれません。このタイミングで赤道儀も新調したいとは流石に言うこともできないので、いずれにせよしばらくはCGEM IIでの運用です。

付属のマニュアルには簡単にですが副鏡、主鏡に別れて光軸調整のことも書かれています。必要ならばこれを見ながら調整することになりそうです。

外に赤道儀を設置し、載せようとしましたが、思ったより大きいせいか意外に持ち運びは大変そうです。はやる気持ちを抑え、以前FC-76の時に買ったK-ASTECの取っ手を取り付けました。

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この取っ手と、下側のドブテイルバーを持つことで、かなり安定に持ち運ぶことができました。

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そのまま赤道儀への設置も全然余裕でした。

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かなり頑丈だと思っていたCGEM IIが、なんか頭でっかちで、頼りなく見えます。

次に当然何か天体を見ようと思うのですが、この日は雲越しにですがなんとか月が見えそうです。でも基本的に撮影鏡筒なのでアイピースの付け方もよくわかりません。この鏡筒、イメージサークルはなんと80mmなので、3つの薄型のアダプターリングで径を落としていくようになっています。

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手持ちのアダプターではアイピース口まで持っていくのがなかなか大変で、結局オフアキとフィルターホイールを取り付けて、フィルターが入っていない状態にしてホイールに直接20mmのアイピースを取り付けました。とりあえずなので、光軸もまだ調整していませんし、バックフォーカスも適当です。

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ファーストライト

ファーストライトは眼視での月です。

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月はごく普通に、とても綺麗に見えました。そういえば副鏡が想像以上に大きいせいでしょうか、アイピースから離れると副鏡の影が見えます。やはり撮影がメインで、あまり眼視向きではないのかもしれません。

あと、指で鏡筒を押して揺らしてみたら、思ったより結構揺れ、その揺れがそこそこ持続します。特に赤経体方向の揺れが顕著です。SCORPIOの店長さんが言っていたように、やはりCGEM IIには15kgの鏡筒は荷が重いのかもしれません。まあこれはあくまでわざと揺らした時なので、風など吹いてなければそこまで問題にならないと思いますが、実際に撮影までしてみないとわからないです。

その後、屋根に沈みそうな木星を見ましたが、低空であまりはっきりしないのと、1300mmの焦点距離に20mmアイピースなので高々65倍であまり大きくは見えません。最後に、そこそこ上に昇ってきたリゲルで内外像を確認してみました。内像はまだいいのですが、外像が結構ずれていました。それでも変な歪みとかではなく、片側に寄っているだけなので、VISACの内外で全く歪み方の違う像から比べたら、はるかに素直な感じです。

次の日は月曜で平日なので、ここら辺で撤収です。


まとめ

久しぶりの超本格的な鏡筒です。色々考えて決めたので、すごく期待しています。うまく撮影まで漕ぎ着けるのか、それともじゃじゃ馬なのか。

いずれにせよ光軸調整や、オフアキガイドなど撮影までまだまだ色々やることがありますが、どんな像を見せてくれるのか、今からとても楽しみです。



(追記)次の新鏡筒は約1年半後の2023年3月31日にシュミットで購入したε130です。