ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:QBP

今週の火曜日、水曜日と新月期で、冬なのに珍しく晴れていました。外に出てもそれほど寒くないので、平日ですがQBPを使って宅撮りです。前回の撮影ではレデューサーを試したので、今回は新タイプのフラットナーのテストです。ターゲットは、これまで何度か撮ろうとしては雲が出てできて失敗しているかもめ星雲です。

機材セットアップ

今回の目的は、先日購入した新フラットナーでの撮影です。以前の旧フラットナーから星像がかなり改善されているそうなので楽しみです。
  • 鏡筒: タカハシ FS-60CB (口径60mm, 焦点距離355mm) + FC/FSマルチフラットナー1.04で焦点距離370mm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • センサー: Canon EOS 6D(HKIR改造)、ISO800、露光時間5分x41枚 、計3時間25分
  • ガイド: ASI178MC + 50mm Cマウントレンズ、PHD2 + BackyardEOSでガイド+ディザー撮影
  • フィルターサイトロン Quad BP フィルター(クアッド バンドパス フィルター、 以下QBP)
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 日時: 2019年2月5日、19時22分から
  • 月齢: 0.6(新月)


撮影

撮影は準備から含めて極めて順調。唯一大変だったのが、前回の撮影で使ったレデューサーからフラットナーへの切り替えだけです。最初は短い方の中間延長アダプターを入れて、回転アダプターを鏡筒バンドから外に出して試したのですが、やはりピントがでませんでした。なので、再び中間延長アダプターを外して、カメラは回転しにくいですが、地面に鏡筒を置いた状態であらかじめカメラの水平を出して、カメラ回転アダプターを固定してから赤道儀に取り付けました。

カメラ回転が面倒な代わりに、新型フラットナーには48mm径のQBPをきちんとねじ込んで取り付けることができました。さすが新デザインで、より汎用性が高まっているようです。

いつものようにSharpCapで極軸をとり、CGEMIIのワンスターアラインメントで初期アラインメントです。実は最近ツースターアラインメントさえ使っていません。極軸がきちんと取れていれば、ワンスターアラインメントで十分です。ただし、流石にワンスターアラインメントだけの自動導入だとズレも出てくるので、Carte du CielとAstroTortillaでplate solvingしながらの構図決め。これは極めて便利で、準備始めから30分くらいで撮影を始めることができました。

何枚か撮れていることを確認して、仮眠をとりました。仮眠のつもりがぐっすり寝てしまい、夜中12時頃目を覚したら外は結構すごい風。しかも天頂越えで最後の何枚かは流れてしまっていたので、すぐに片付け。あとはダーク50枚ほどの撮影を放置しながら、また朝まで寝ていました。


画像処理

次の日フラットとバイアスを50枚づつ撮影して、そのまま全てPixInsightで処理です。枚数も4-50枚と少ないのですぐに終わります。 ストレッチは前回同様、赤とびを抑えるためにArcsinhStretchは使わずにScreenTransferFunctionとHistgram Transformationで済ませました。

今回は彩度までPixInsightで出してみました。今回はColorSaturationツールを使いましたが、Curves TransformationツールでSアイコンを選んで彩度を上げる手もあるようです。でもまだまだ手探りで機能を理解しきっているとは言い難いです。もう少し時間をかけて探ります。あとは、いつも通りPhotoshopに送って仕上げです。


出来上がり画像

出来上がった画像は以下のようになります。

light_PCC_stretched_morfing_satiration_DBE_morph_ps2a

新月期で時期的にはよかったとはいえ、それでも光害地での宅撮りでこのクオリティーなら個人的には十分満足です。3時間以上の露光とはいえ、それでもやはりQBPの威力は大きいでしょう。ただ、少しづつQBPに対する不満も出てきました。列挙しておくと
  • 恒星のオレンジが出ない。
  • 赤が、紅に近い赤で、紫がかった赤や、ピンクっぽい赤は出にくい。(ただし、燃える木のピンクはうまく出るようです。)
  • 恒星が赤飛びしやすい。
  • 青い星雲は出にくい。
といったところでしょうか。やはり透過波長域からもわかるように緑系や濃い青、また黄色やオレンジ領域もどうも苦手なようです。これはある意味当たり前で、そのために露光時間を延ばすことができるというわけなので、贅沢な悩みと言えるかもしれません。画像処理で多少誤魔化さなければならないところも出てくるので、ここら辺は腕の見せ所となのでしょう。


Plate solving


話は変わりますが、実際の導入と構図極めの際にはplate solvingとしてAstro Tortillaを使っています。でもあまり高機能でなく、解析結果もいたってシンプルであまりわかりやすくはないのですが、撮影時にBackYardEOSを使っているのである意味仕方なく使っている面もあります。一方、同じplate solvingのソフトなのですが、もう少し高機能なAll Sky Plate Solverを使うと、画像に星雲の名前などを入れてくれたりします。

seegull


右の方で名前がはみ出してしまったりしているのは愛嬌として、今回はいろんな星雲星団がある領域だったので、少し広角を狙いました。フラットナーがちょうどいい画角だったというわけです。plate solvingを使ってこんな解析も楽しいのではないかと思います。

本当はAll Sky Plate Solverが、そのままダイレクトにBackYardEOSに対応してくれたらと思うのですが、とても惜しいです。あ、一応BackYardEOSで撮影して、そのファイルを読み込ませるだけならできます。でもその足で赤道儀にフィードバックして位置を合わせ直すので、何度もそれをやるのは面倒だというだけです。Astro TorttilaとBackYardEOSなら、全自動で赤道儀の位置の合わせ直しまで繰り返しでやってくれるのでものすごく楽なのです。


新フラットナーの実力

この画像処理と並行して、昨日の記事で四隅を切り出すプログラムを作ったのですが、その結果を示しておきます。昨日の記事では画像処理後のものを出したのですが、よく考えたら撮って出しJPEGから切り取ったものの方が周辺減光の様子などもわかるのでいいのかと思います。

これが撮って出しのJPG画像で

SEEGULL_LIGHT_6D_300s_800_+9cc_20190205-21h20m00s179ms

ここから上下左右と真ん中250x250ドットを切り抜いています。

SEEGULL_LIGHT_6D_300s_800_+9cc_20190205-21h20m00s179ms_4cut


旧フラットナーの四隅の星像がどうしても気になって、使う機会があまりなかったのですが、今回の新型のフラットナーははるかに良くなっています。スターベースで店員さんから聞いた時には、それでも色によって極わずか収差で歪むとのことでしたが、これを見る限り私的には全く気にならないレベルです。

 

 

週末土曜日、満月の日。一晩中明るい月が出ていますが、北陸の貴重な晴れの日と、週末が重なったので、こんな日は絶好の機材のテスト日和です。

せっかくなので、先日シュミットで購入した月明かりでも撮影が可能だというQuad BP フィルターを試してみたいと思います。そこそこ写るなら遠征に行けない「平日」でも、「月」が出ていても、「自宅で気楽に」撮影を楽しむことができます。


セットアップ

  • 鏡筒: タカハシ FS-60Q (口径60mm, 焦点距離600mm)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • センサー: Canon EOS 6D(HKIR改造)
  • 日時: 2018年12月22日、22時頃から
  • 月齢: 15.2、満月
  • テスト対象: サイトロン Quad BP フィルター(クアッド バンドパス フィルター、 以下QBP)
少し困ったのが、QBPをFS-60Qにどうやって取り付けるかです。フィルター径は48mm。ところが、FS-60シリーズは回転装置の出口部分内側に52mmのフィルターネジが切ってあるため、48mm径のフィルターはそのままでは取り付けられません。いろいろ試してみると、回転装置と延長鏡筒の間に挟み込むと、ねじ込みや固定はできないのですが、うまい具合にピッタリはまって取り付けられそうです。

IMG_5912


コツは、フィルターのネジが切ってある側を鏡筒の対物レンズ側に入れ込むことです。こうしないと延長鏡筒を1-2回転くらいしかねじ込めなくて、不安定になります。まあとりあえず大丈夫そうなので、今回はこの状態で撮影してみます。


対象天体

M42 オリオン大星雲:
  • これまでなんども撮っているので比較しやすい。
  • 満月との距離が25度角程度とあまり遠くなく、この日は非常に明るい領域。
  • 肉眼で見ている限り、リゲルとベテルギウスはなんとか月の光に負けずに見える。3つ星はほとんど見えないくらい。

画像比較1: 同じ露光時間でQBPありなしでの比較


まずは、露光時間を同じにしてQBP有り、無しで比較してみます。JPEG撮って出し画像での比較です。

  • QBPなしの通常の撮影: ISO1600, 10秒露光
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+8cc_20181222-22h07m33s760ms

10秒以上の露光だと明るすぎなので、これくらいまでしか露光できません。

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 10秒露光
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+14cc_20181222-22h21m29s692ms


同じ時間でもQBPフィルターがあると、当然の結果ですが随分暗くなることがわかります。


なお、上の2枚とも色温度設定が3200Kと低いので青が強く出てしまっています。


画像比較2: 露光時間を変えて背景明るさを合わせる

これもJPEG撮って出しです。
  • QBPなしの通常の撮影: ISO1600, 10秒露光(画像比較1と同じもの)
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+8cc_20181222-22h07m33s760ms

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 30秒露光
M42_LIGHT_6D_30s_1600_+10cc_20181222-22h28m12s224ms

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 60秒露光
M42_LIGHT_6D_60s_1600_+8cc_20181222-22h37m16s270ms



実際の背景の明るさを比べると、最初のQBPなしの1枚と、後のQBPありの2枚を比べるとわかりますが、露光時間が3倍だとまだ少し暗く、6倍だとかなり明るいくらいなので、4倍程度の違いでしょうか。


QBPによる背景明るさの変化の簡単な推定


月の明かりが太陽の反射なので白色光に近いとして、太陽光のスペクトル

SunLightSpectrum-280-2500nm-J
(Wikipediaより引用)

にセンサーの感度曲線をかけたものと、さらに今回のQBPの透過率

qbpf_g
(シュミットの販売ページより引用)

をかけたものとの面積比を比較すると、この明るさの比になります。太陽のスペクトルは調べるとすぐにでくるのですが、EOS 6Dセンサーの感度曲線が調べても出てきません。しかも天体改造してあるので、さらに良くわかりません。

それでもものすごくざっくりとした見積もりをしてみます。太陽のスペクトルが350nmくらいから900nmくらいまではそこそこ一定とし、一般的なCOMSセンサーの感度も350nmくらいから700nmくらいまでは一定と考えます。そうすると、QBPの透過率がある部分が465-510nmと640-685nmくらいまでと読み取ります。それぞれ透過幅はともに45nmとなり、合計90nmです。透過率は95%と程度としますが、ざっくり1としてしまってもいいでしょう。すなわち、350nmのうち90nmくらい通すと考えてしまうと、90/350 x 0.95 = 0.24となり、QBPと通すと月の光で制限されるような背景の場合の光量は24%程度になるということです。言い換えると、1/0.24 ~ 4なので、露光時間が4倍くらいで同じ明るさになるということで、実際の撮影結果にもかなり合っています。

これとは別に、月明かりがない場合の人工光による光害が支配的な場合、露光時間をどれくらい伸ばせるかはまた興味深いところです。これは場所や光源の種類に大きく依存するはずですが、LED灯でも上記くらいの改善比、水銀燈やナトリウム灯ならかなり高い改善比が期待できるはずです。


画像処理をした場合のQBPの効果


さて、一番興味のあるフィルターの効果の確認ですが、画像処理をかけた場合を想定して比較したいと思います。できるだけシンプルでわかりやすくするために、PixInsightで1枚どりの上記RAW画像に
  1. ScreenTransferFunctionでLink RGB Channelsをオフにして各色のロックを外してからオートストレッチをかけて
  2. HistgramTransformationで実際に画像に適用し
  3. JPGで保存
というような工程をとりました。

上記工程で、上の3枚の画像処理したものを比較してみます。

  • QBPなしの通常の撮影: ISO1600, 10秒露光
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+8cc_20181222-22h07m33s760ms

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 30秒露光
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+14cc_20181222-22h21m29s692ms

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 60秒露光
M42_LIGHT_6D_30s_1600_+10cc_20181222-22h28m12s224ms


検討してみます。
  • まず、10秒という同じ露光時間のものでも、QBPありの方が構造がはっきり出ていることがわかります。
  • 次に、QBPありの場合はさらに露光時間を延ばすことができ、より構造が鮮明になります。
  • QBPなしとQBPありで思ったより色の変化がないです。これは意外でした。
最近シュミットから出たM42のデモ画像は、思ったより赤が出ていたので、青が相当出にくいのかと思っていましたが、そうでもないようです。他の方の例を見ても青は思ったより普通に出ていたので、青の出方に関してもそれほど心配ないというのが今回自分で試した上での感想になります。


簡易画像処理

QBPを通して撮った画像をスタックして、画像処理をしてみました。と言っても、結局雲間での撮影で、きちんと撮影できたのは60秒の露光でわずか18枚の、総露光時間18分の画像です。

画像処理はPixInsightでプリプロセッシング、(フラット撮影はサボってしまったので)DynamicBackgroundExtraction (DBE)で背景ムラを整えて、PhotometricColorCalibration (PCC)で恒星の色を合わせました。恒星の色がうまく出るか心配だったのですが、確かに少し近似直線上から分布がずれるきらいはありましたが、それほどおかしくないレベルで色は出ているのかと思います。

結果だけ示します。

light_BINNING_1_integration_DBE_CP_Stretched_cut

本当はもっとあぶり出したかったのですが、かなり大きなレンジ(空間周波数が低いという意味)での色むらが残ってしまっていて、背景を出すと目立ってくるので、ここら辺までに押さえておきました。この色むらはフィルターのせいなのか、総露光時間が足りないからなのか、はたまた雲が常時流れていてその合間を縫っての撮影なのでその影響が出てしまったのかなどの判断はまだできていません。

本当はM42の後、もう少し淡いカモメ星雲を撮りたかったのですが、雲が多くなってきて撮影できるレベルではなくなってしまったので、ここで撤収しました。


Quad Band Pass フィルターを使ってみて 

うーん、今回のQBPかなり良いのではないでしょうか。満月下でこれだけ遊べれば十分満足です。色が思ったより変わらなかったのも、私的には気軽に楽しめるので、いい点です。今回は雲のために実際の撮影時間が短かったのでちょっとしたテストくらいでしたが、長い時間かけてじっくり撮影してみたいです。

元々の目的が、平日で遠征などできないときに、自宅の庭で月明かりや光害下でも気軽に撮影が楽しめたらというものです。このくらいの目的ならば十分に達成できそうです。あとは、月がない環境で自宅の光害下でどれくらい効果があるかを試してみたいです。以前の結果からも、透明度がいいときはそこそこ撮影も楽しめるくらいの環境です。ただし、暗い天体は今の所、フィルター無しでは自宅庭からでは全滅です。このQBPでもう少し暗い天体も狙えるようになれば、購入しただけの価値は十二分にあります。また試してみます。


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