前前々回の記事でクワガタ星雲のSAO合成をしました。
せっかくなのでいつものようにAOO合成もするのですが、普通にAOO合成をするとHαの淡い構造とかが一切出てきません。これが不満で、色々試してみました。
AOO合成をして、オートストレッチすると大体これくらいです。
きちんとクワガタの形が出ています。でも、Hαだけの画像を見るとまだまだ模様がいっぱい残っているんです。
Hα画像を強オートストレッチしてみます。
すごい模様が出てきます。一番暗いところが背景だとしたら、多少なりとも明るいところはなんらかのHα成分が存在していると考えていいでしょう。普通にAOO合成した画像に、このHαの模様が活かされ切っているとはさすがに言い難いのかと思います。今回はこれをどこまで表現できるかやってみたいと思います。
まずAOO合成させたものを、強オートストレッチして、さらに微調整します。
ここらへんまで出せたらHαを使い切っていると言えそうですが、いくつか問題点があります。
まず1の黒い窪みですが、普通にAOO合成したら対して問題にならないのですが、淡いところを頑張って出そうとすると目立ってしまいます。これはOIII画像に残っていた、ε130Dの迷光の残りのようです。今回は撮影時に鏡筒にフードもつけていますし、もちろんフラット補正もしています。それでも強あぶりで、これくらいのフラットの誤差が出てくるようです。ここまででもHα、OIII共にABEの1次と2次と4次をかけていますが、さらにOIIIにDBEをかけて窪みをとることにしました。その結果が以下になります。
窪みは目立たなくなり、さらにもう少し炙り出すことができるようになりました。
しかしながら窪みが目立たなくなったことで、今度は右上に注目すると、赤が構造なしでのっぺりしている気がします。本当にHα成分があるのか、カブリなのか見極めが難しいところです。仮にカブリだとすると、ここだけをうまく取り除くのは結構難しそうです。
今回は、ABEの2次を再度かけ、右上と、左下の赤も少し緩和するようにしました。もっとはっきり除いてもいいのですが、そもそもここら辺の領域を強度に炙り出しいる参考画像がほとんどなく、何が正解かよくわかりません。これ以上やると恣意的な操作になると判断し、今回はそのままで残しました。
こういったカブリ問題は、将来PixInsightのMARSプロジェクトがうまくいったら解決するのかもしれません。
情報を余すところなく引き出して炙り出す場合、上の操作のように「正しい背景にするというよりは、あぶり出しやすいように、できる限りあらかじめフラット化させておく」方向になるのかと思い思います。そのため、フィルターやセンサー面についているゴミはうまくフラット補正で除けないと、強あぶり出しの際にとんでもなく目立ってしまったり、周辺減光や迷光もフラット処理がうまくいかないと、そこの輝度差で制限されてしまって炙り出しが十分できないなど、致命的になる可能性があります。
先日の記事のように最近はソフトの力でかなりの補正が効くようになってきていますが、BXTは分解能は出せても淡いものを出すことにはほとんど助けになりません。ソフトで補正が効かないこともたくさんあり、今回のように淡い構造を引き出し切ろうとすると、光学機器の段階での丁寧な汚れの除去や迷光処理、確実なフラット補正がとても大切だと言うことも肝に銘じておきたいものです。
次に、SPCCでナローバンドを選び、AOOの正しい波長と、手持ちのフィルターの波長幅を入力します。重要なことは、ニュートラルバックグラウンドをどこにするかです。プレビューで一番暗いところを選択して「Region of interest」に設定しておいた方がいいでしょう。これをしないと、赤が再び出にくくなったり、暗いところが緑がかったりしてしまいます。RGB画像を別撮りなどしていない場合は「Oprimize for stars」にチェックを入れておくと、星の色を優先的に最適化するとなっていますが、試したところ少なくとも今回は大きな違いはわかりませんでした。SPCCがうまくいくと、赤がかなり残った状態で色バランスが取れるようになります。
次に2の星がうるさいことですが、やり方は色々あると思います。今回は簡単にBXTを使ってしまいましょう。恒星も併せて十分にあぶり出しても、恒星自身が小さければ、全体を見た時のうるささは緩和されるはずです。今回はHαの淡いところを画面全体で見せたいので、トリミングやバブル星雲のところのみを拡大することなどは考えていないです。そのためSAO合成の時よりもBXTの効果は緩和させて
最後に3のサチり気味(=飽和気味)の赤をどう扱うかです。ストレッチをいかにうまくするかと言う問題です。
既に赤は色が十分出ているので、ArcsinhStretchは色が濃くなりで使えませんでした。意外なのがMaskedStretchが本来マスクで、本来はきちんとサチるのを保護してくれるはずなのに、赤のサチりを強調してしまい使えなかったことです。結局ここでは、HistgramTransformationで恒星が飽和しない範囲で軽くストレッチして、ここでStarNet2で恒星と背景を分離し、その後背景のみ必要なところまで強調しました。その後、私の場合はPhotoshopに引き渡して最終調整します。
最後のPhotoshopは個人の好みによるところも大きいでしょう。今回は赤の淡いところを残します。OIIIの青を少し持ち上げて色調を少しでも豊かに見せるのは、いつもの手段です。赤ももう少しいじって、強弱をつけたりします。それでも色相(RGBをそれぞれどれだけストレッチするかと、各色のブラックポイント)自体はSPCCで決めたので、それ以上は触っていません。
結果です。
元がHαとOIIIの高々2色なので、前回のSAOと比べてもどうしても赤でのっぺりしてしまうのは避けられません。実はAOOにする前に、なんとかSIIを使えないか、いろいろ比率を変えて試しました。複雑な比率にして、そこそこよさそうな候補はいくつかあったのですが、結局AOOのシンプルさを崩すほどいい配色は見つからず、結局今回はSIIは使わずじまいです。いつかHαとOIIIとSIIまで使った擬似RGB配色で自然に見える組み合わせが見つかるといいですが、少なくともAOOを凌駕するものでないとダメだと思うので、そんなに簡単ではないと思います。
今回のHαを余すことなく引き出すAOOですが、懸念事項の一つは画面全体が赤に寄ってしまう印象を受けることです。でも赤にのみ構造がある限り、そこを出そうとすると赤を底上げする以外に今の所いい方法を思いつきません。アメペリも同じように処理をしていて、こちらも背景が赤いですが、それでも暗いところは存在していて、それ以上明るいHαが全面近くに渡り散らばっています。
今回、やっとこのAOO手法を言語化して記事にしたことになります。他に、全体をもう少しニュートラルに寄せて、Hαにふくまれる淡い構造もきちんと強調できる方法を探していきたいと思います。
前回の記事で年末の挨拶をしてしまったのですが、今回の記事が本当の2023年最後の記事になります。 年が明けてからのんびりまとめようと思ったのですが、大晦日に少し時間があったので、まとめてしまいました。
クワガタ星雲をとおしてSAOとAOOの議論を少ししたことになります。でもまだ十分かというとそうでもなく、SAOの色がまだハッブルパレットと違う気もしますし、AOOは全画面真っ赤問題をなんとかしたいです。所詮人工的な色付けになるので、多少色相とかいじってもいい気もするのですが、今のところはまだ躊躇しています。理由は再現性がなさそうなところです。複雑になりすぎないというのも重要かと思います。何かいい方法はないのか?今後も探していくことになるでしょう。またいい方法があったら記事にします。
最近はブログ記事を休日のガストのモーニングで書くことが多いです。以前はコメダのモーニングのみでしたが、最近はガストと半々か、ガストの方が多いくらいです。ガストのドリンクバーが飲み放題でいいのと、最近はマヨコーンピザが安くて美味しいからです。多分田舎のガストなので、朝はガラ空きで、混んでくるランチタイムくらいまでは長居も可能なので、とても居心地がいいです。同じようにPCを広げている常連さんも何人かいます。この記事も最後の仕上げを大晦日にガストで書いています。
これから実家の名古屋に向かいます。元旦は実家で、おせちをつまみながらのんびり過ごす予定です。残念ながら新年2日の北陸スタバ密会は中止になってしまいました。時間が少しできるので、またノイズ計算の方を進めたいと思っています。
せっかくなのでいつものようにAOO合成もするのですが、普通にAOO合成をするとHαの淡い構造とかが一切出てきません。これが不満で、色々試してみました。
Hαの情報量
AOO合成をして、オートストレッチすると大体これくらいです。
きちんとクワガタの形が出ています。でも、Hαだけの画像を見るとまだまだ模様がいっぱい残っているんです。
Hα画像を強オートストレッチしてみます。
すごい模様が出てきます。一番暗いところが背景だとしたら、多少なりとも明るいところはなんらかのHα成分が存在していると考えていいでしょう。普通にAOO合成した画像に、このHαの模様が活かされ切っているとはさすがに言い難いのかと思います。今回はこれをどこまで表現できるかやってみたいと思います。
まずはどこまで出そうか、テスト
まずAOO合成させたものを、強オートストレッチして、さらに微調整します。
ここらへんまで出せたらHαを使い切っていると言えそうですが、いくつか問題点があります。
- 右真ん中に大きな黒い窪みがある。
- 赤がサチりかけているところがある。
- 星がうるさい。
1. フラット化の大切さ
まず1の黒い窪みですが、普通にAOO合成したら対して問題にならないのですが、淡いところを頑張って出そうとすると目立ってしまいます。これはOIII画像に残っていた、ε130Dの迷光の残りのようです。今回は撮影時に鏡筒にフードもつけていますし、もちろんフラット補正もしています。それでも強あぶりで、これくらいのフラットの誤差が出てくるようです。ここまででもHα、OIII共にABEの1次と2次と4次をかけていますが、さらにOIIIにDBEをかけて窪みをとることにしました。その結果が以下になります。
窪みは目立たなくなり、さらにもう少し炙り出すことができるようになりました。
しかしながら窪みが目立たなくなったことで、今度は右上に注目すると、赤が構造なしでのっぺりしている気がします。本当にHα成分があるのか、カブリなのか見極めが難しいところです。仮にカブリだとすると、ここだけをうまく取り除くのは結構難しそうです。
今回は、ABEの2次を再度かけ、右上と、左下の赤も少し緩和するようにしました。もっとはっきり除いてもいいのですが、そもそもここら辺の領域を強度に炙り出しいる参考画像がほとんどなく、何が正解かよくわかりません。これ以上やると恣意的な操作になると判断し、今回はそのままで残しました。
こういったカブリ問題は、将来PixInsightのMARSプロジェクトがうまくいったら解決するのかもしれません。
情報を余すところなく引き出して炙り出す場合、上の操作のように「正しい背景にするというよりは、あぶり出しやすいように、できる限りあらかじめフラット化させておく」方向になるのかと思い思います。そのため、フィルターやセンサー面についているゴミはうまくフラット補正で除けないと、強あぶり出しの際にとんでもなく目立ってしまったり、周辺減光や迷光もフラット処理がうまくいかないと、そこの輝度差で制限されてしまって炙り出しが十分できないなど、致命的になる可能性があります。
先日の記事のように最近はソフトの力でかなりの補正が効くようになってきていますが、BXTは分解能は出せても淡いものを出すことにはほとんど助けになりません。ソフトで補正が効かないこともたくさんあり、今回のように淡い構造を引き出し切ろうとすると、光学機器の段階での丁寧な汚れの除去や迷光処理、確実なフラット補正がとても大切だと言うことも肝に銘じておきたいものです。
次に、SPCCでナローバンドを選び、AOOの正しい波長と、手持ちのフィルターの波長幅を入力します。重要なことは、ニュートラルバックグラウンドをどこにするかです。プレビューで一番暗いところを選択して「Region of interest」に設定しておいた方がいいでしょう。これをしないと、赤が再び出にくくなったり、暗いところが緑がかったりしてしまいます。RGB画像を別撮りなどしていない場合は「Oprimize for stars」にチェックを入れておくと、星の色を優先的に最適化するとなっていますが、試したところ少なくとも今回は大きな違いはわかりませんでした。SPCCがうまくいくと、赤がかなり残った状態で色バランスが取れるようになります。
2. 恒星にはBXT
次に2の星がうるさいことですが、やり方は色々あると思います。今回は簡単にBXTを使ってしまいましょう。恒星も併せて十分にあぶり出しても、恒星自身が小さければ、全体を見た時のうるささは緩和されるはずです。今回はHαの淡いところを画面全体で見せたいので、トリミングやバブル星雲のところのみを拡大することなどは考えていないです。そのためSAO合成の時よりもBXTの効果は緩和させて
- Sharpen Stars: 0.25, Adjust Star Halos: -0.30, Automatic PSF: on, Sharpen Nonsteller: 1.00
3. ストレッチは迷うところ
最後に3のサチり気味(=飽和気味)の赤をどう扱うかです。ストレッチをいかにうまくするかと言う問題です。
既に赤は色が十分出ているので、ArcsinhStretchは色が濃くなりで使えませんでした。意外なのがMaskedStretchが本来マスクで、本来はきちんとサチるのを保護してくれるはずなのに、赤のサチりを強調してしまい使えなかったことです。結局ここでは、HistgramTransformationで恒星が飽和しない範囲で軽くストレッチして、ここでStarNet2で恒星と背景を分離し、その後背景のみ必要なところまで強調しました。その後、私の場合はPhotoshopに引き渡して最終調整します。
仕上げ
最後のPhotoshopは個人の好みによるところも大きいでしょう。今回は赤の淡いところを残します。OIIIの青を少し持ち上げて色調を少しでも豊かに見せるのは、いつもの手段です。赤ももう少しいじって、強弱をつけたりします。それでも色相(RGBをそれぞれどれだけストレッチするかと、各色のブラックポイント)自体はSPCCで決めたので、それ以上は触っていません。
結果です。
元がHαとOIIIの高々2色なので、前回のSAOと比べてもどうしても赤でのっぺりしてしまうのは避けられません。実はAOOにする前に、なんとかSIIを使えないか、いろいろ比率を変えて試しました。複雑な比率にして、そこそこよさそうな候補はいくつかあったのですが、結局AOOのシンプルさを崩すほどいい配色は見つからず、結局今回はSIIは使わずじまいです。いつかHαとOIIIとSIIまで使った擬似RGB配色で自然に見える組み合わせが見つかるといいですが、少なくともAOOを凌駕するものでないとダメだと思うので、そんなに簡単ではないと思います。
今回のHαを余すことなく引き出すAOOですが、懸念事項の一つは画面全体が赤に寄ってしまう印象を受けることです。でも赤にのみ構造がある限り、そこを出そうとすると赤を底上げする以外に今の所いい方法を思いつきません。アメペリも同じように処理をしていて、こちらも背景が赤いですが、それでも暗いところは存在していて、それ以上明るいHαが全面近くに渡り散らばっています。
今回、やっとこのAOO手法を言語化して記事にしたことになります。他に、全体をもう少しニュートラルに寄せて、Hαにふくまれる淡い構造もきちんと強調できる方法を探していきたいと思います。
まとめ
前回の記事で年末の挨拶をしてしまったのですが、今回の記事が本当の2023年最後の記事になります。 年が明けてからのんびりまとめようと思ったのですが、大晦日に少し時間があったので、まとめてしまいました。
クワガタ星雲をとおしてSAOとAOOの議論を少ししたことになります。でもまだ十分かというとそうでもなく、SAOの色がまだハッブルパレットと違う気もしますし、AOOは全画面真っ赤問題をなんとかしたいです。所詮人工的な色付けになるので、多少色相とかいじってもいい気もするのですが、今のところはまだ躊躇しています。理由は再現性がなさそうなところです。複雑になりすぎないというのも重要かと思います。何かいい方法はないのか?今後も探していくことになるでしょう。またいい方法があったら記事にします。
日記
最近はブログ記事を休日のガストのモーニングで書くことが多いです。以前はコメダのモーニングのみでしたが、最近はガストと半々か、ガストの方が多いくらいです。ガストのドリンクバーが飲み放題でいいのと、最近はマヨコーンピザが安くて美味しいからです。多分田舎のガストなので、朝はガラ空きで、混んでくるランチタイムくらいまでは長居も可能なので、とても居心地がいいです。同じようにPCを広げている常連さんも何人かいます。この記事も最後の仕上げを大晦日にガストで書いています。
これから実家の名古屋に向かいます。元旦は実家で、おせちをつまみながらのんびり過ごす予定です。残念ながら新年2日の北陸スタバ密会は中止になってしまいました。時間が少しできるので、またノイズ計算の方を進めたいと思っています。