ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:OIII

前前々回の記事でクワガタ星雲のSAO合成をしました。



せっかくなのでいつものようにAOO合成もするのですが、普通にAOO合成をするとHαの淡い構造とかが一切出てきません。これが不満で、色々試してみました。


Hαの情報量

AOO合成をして、オートストレッチすると大体これくらいです。
Image21s

きちんとクワガタの形が出ています。でも、Hαだけの画像を見るとまだまだ模様がいっぱい残っているんです。

Hα画像を強オートストレッチしてみます。
FILTER_A_mono_drizzle_2x_integration_ABE1_ABE2_ABE4s
すごい模様が出てきます。一番暗いところが背景だとしたら、多少なりとも明るいところはなんらかのHα成分が存在していると考えていいでしょう。普通にAOO合成した画像に、このHαの模様が活かされ切っているとはさすがに言い難いのかと思います。今回はこれをどこまで表現できるかやってみたいと思います。


まずはどこまで出そうか、テスト

まずAOO合成させたものを、強オートストレッチして、さらに微調整します。
Image21_strongs
ここらへんまで出せたらHαを使い切っていると言えそうですが、いくつか問題点があります。
  1. 右真ん中に大きな黒い窪みがある。
  2. 赤がサチりかけているところがある。
  3. 星がうるさい。
くらいでしょうか。一つづつ片付けます。


1. フラット化の大切さ

まず1の黒い窪みですが、普通にAOO合成したら対して問題にならないのですが、淡いところを頑張って出そうとすると目立ってしまいます。これはOIII画像に残っていた、ε130Dの迷光の残りのようです。今回は撮影時に鏡筒にフードもつけていますし、もちろんフラット補正もしています。それでも強あぶりで、これくらいのフラットの誤差が出てくるようです。ここまででもHα、OIII共にABEの1次と2次と4次をかけていますが、さらにOIIIにDBEをかけて窪みをとることにしました。その結果が以下になります。
Image24_strongs
窪みは目立たなくなり、さらにもう少し炙り出すことができるようになりました。

しかしながら窪みが目立たなくなったことで、今度は右上に注目すると、赤が構造なしでのっぺりしている気がします。本当にHα成分があるのか、カブリなのか見極めが難しいところです。仮にカブリだとすると、ここだけをうまく取り除くのは結構難しそうです。

今回は、ABEの2次を再度かけ、右上と、左下の赤も少し緩和するようにしました。もっとはっきり除いてもいいのですが、そもそもここら辺の領域を強度に炙り出しいる参考画像がほとんどなく、何が正解かよくわかりません。これ以上やると恣意的な操作になると判断し、今回はそのままで残しました。
Image24_ABE1s
こういったカブリ問題は、将来PixInsightのMARSプロジェクトがうまくいったら解決するのかもしれません。



情報を余すところなく引き出して炙り出す場合、上の操作のように「正しい背景にするというよりは、あぶり出しやすいように、できる限りあらかじめフラット化させておく」方向になるのかと思い思います。そのため、フィルターやセンサー面についているゴミはうまくフラット補正で除けないと、強あぶり出しの際にとんでもなく目立ってしまったり、周辺減光や迷光もフラット処理がうまくいかないと、そこの輝度差で制限されてしまって炙り出しが十分できないなど、致命的になる可能性があります。

先日の記事のように
最近はソフトの力でかなりの補正が効くようになってきていますが、BXTは分解能は出せても淡いものを出すことにはほとんど助けになりません。ソフトで補正が効かないこともたくさんあり、今回のように淡い構造を引き出し切ろうとすると、光学機器の段階での丁寧な汚れの除去や迷光処理、確実なフラット補正がとても大切だと言うことも肝に銘じておきたいものです。

次に、SPCCでナローバンドを選び、AOOの正しい波長と、手持ちのフィルターの波長幅を入力します。重要なことは、ニュートラルバックグラウンドをどこにするかです。プレビューで一番暗いところを選択して「Region of interest」に設定しておいた方がいいでしょう。これをしないと、赤が再び出にくくなったり、暗いところが緑がかったりしてしまいます。RGB画像を別撮りなどしていない場合は「Oprimize for stars」にチェックを入れておくと、星の色を優先的に最適化するとなっていますが、試したところ少なくとも今回は大きな違いはわかりませんでした。SPCCがうまくいくと、赤がかなり残った状態で色バランスが取れるようになります。


2. 恒星にはBXT

次に2の星がうるさいことですが、やり方は色々あると思います。今回は簡単にBXTを使ってしまいましょう。恒星も併せて十分にあぶり出しても、恒星自身が小さければ、全体を見た時のうるささは緩和されるはずです。今回はHαの淡いところを画面全体で見せたいので、トリミングやバブル星雲のところのみを拡大することなどは考えていないです。そのためSAO合成の時よりもBXTの効果は緩和させて
  • Sharpen Stars: 0.25, Adjust Star Halos: -0.30, Automatic PSF: on, Sharpen Nonsteller: 1.00
としました。


3. ストレッチは迷うところ

最後に3のサチり気味(=飽和気味)の赤をどう扱うかです。ストレッチをいかにうまくするかと言う問題です。

既に赤は色が十分出ているので、ArcsinhStretchは色が濃くなりで使えませんでした。意外なのがMaskedStretchが本来マスクで、本来はきちんとサチるのを保護してくれるはずなのに、赤のサチりを強調してしまい使えなかったことです。結局ここでは、HistgramTransformationで恒星が飽和しない範囲で軽くストレッチして、ここでStarNet2で恒星と背景を分離し、その後背景のみ必要なところまで強調しました。その後、私の場合はPhotoshopに引き渡して最終調整します。


仕上げ

最後のPhotoshopは個人の好みによるところも大きいでしょう。今回は赤の淡いところを残します。OIIIの青を少し持ち上げて色調を少しでも豊かに見せるのは、いつもの手段です。赤ももう少しいじって、強弱をつけたりします。それでも色相(RGBをそれぞれどれだけストレッチするかと、各色のブラックポイント)自体はSPCCで決めたので、それ以上は触っていません。

結果です。
Image24_ABE1_SPCC_BXTSS025_HT2_s_cut

元がHαとOIIIの高々2色なので、前回のSAOと比べてもどうしても赤でのっぺりしてしまうのは避けられません。実はAOOにする前に、なんとかSIIを使えないか、いろいろ比率を変えて試しました。複雑な比率にして、そこそこよさそうな候補はいくつかあったのですが、結局AOOのシンプルさを崩すほどいい配色は見つからず、結局今回はSIIは使わずじまいです。いつかHαとOIIIとSIIまで使った擬似RGB配色で自然に見える組み合わせが見つかるといいですが、少なくともAOOを凌駕するものでないとダメだと思うので、そんなに簡単ではないと思います。

今回のHαを余すことなく引き出すAOOですが、懸念事項の一つは画面全体が赤に寄ってしまう印象を受けることです。でも赤にのみ構造がある限り、そこを出そうとすると赤を底上げする以外に今の所いい方法を思いつきません。アメペリも同じように処理をしていて、こちらも背景が赤いですが、それでも暗いところは存在していて、それ以上明るいHαが全面近くに渡り散らばっています。

今回、やっとこのAOO手法を言語化して記事にしたことになります。他に、全体をもう少しニュートラルに寄せて、Hαにふくまれる淡い構造もきちんと強調できる方法を探していきたいと思います。


まとめ

前回の記事で年末の挨拶をしてしまったのですが、今回の記事が本当の2023年最後の記事になります。 年が明けてからのんびりまとめようと思ったのですが、大晦日に少し時間があったので、まとめてしまいました。

クワガタ星雲をとおしてSAOとAOOの議論を少ししたことになります。でもまだ十分かというとそうでもなく、SAOの色がまだハッブルパレットと違う気もしますし、AOOは全画面真っ赤問題をなんとかしたいです。所詮人工的な色付けになるので、多少色相とかいじってもいい気もするのですが、今のところはまだ躊躇しています。理由は再現性がなさそうなところです。複雑になりすぎないというのも重要かと思います。何かいい方法はないのか?今後も探していくことになるでしょう。またいい方法があったら記事にします。


日記

最近はブログ記事を休日のガストのモーニングで書くことが多いです。以前はコメダのモーニングのみでしたが、最近はガストと半々か、ガストの方が多いくらいです。ガストのドリンクバーが飲み放題でいいのと、最近はマヨコーンピザが安くて美味しいからです。多分田舎のガストなので、朝はガラ空きで、混んでくるランチタイムくらいまでは長居も可能なので、とても居心地がいいです。同じようにPCを広げている常連さんも何人かいます。この記事も最後の仕上げを大晦日にガストで書いています。

これから実家の名古屋に向かいます。元旦は実家で、おせちをつまみながらのんびり過ごす予定です。残念ながら新年2日の北陸スタバ密会は中止になってしまいました。時間が少しできるので、またノイズ計算の方を進めたいと思っています。


2年近く前に自宅から撮影したSh2-240、かなり淡く、当時はFS-60CB+CBP+EOS 6Dで12時間越えとかなり頑張ってみたのですが、画像処理で相当無理して出していたのがわかります。

 

結果を見ても明らかですが、これは敗退だったと言えるでしょう。

今年の春にε130Dを購入した最大の理由が、このリベンジです。無理ナントだった、超新星レムナントを自宅でどこまで出すことができるのか?特に前回は全く出なかったOIIIの青が、自宅でも本当に出るのかがポイントです。


Sh2-240の下調べ

今回のターゲット、皆さんなんて呼びますか?Sh2-240という呼び名が多分一番メジャーでしょうか?一方、Sim147(シメイズ147, Simeis 147)という名前も持っています。通称はスパゲティ星雲 (Spaghetti Nebula) と呼ばれていて、これは最初日本語で誰かがつけたと思っていたら、英語のWikidiaとかにも普通に載っているので、どうも世界的に一般にこの通称で呼ばれているようです。

星雲としてはかなり大きくて、見かけの直径は約3度もあります。月が0.5度くらいなので、一辺で6個分、面積だと36倍の大きさです。おうし座からぎょしゃ座にかけて広がるレムナント(超新星残骸)です。約3000光年先にあるとのことで、10万年ほど前に現れてこの大きさにまで広がったようです。一つの超新星爆発がこんな複雑な形を作るのは、まさに宇宙の神秘かと思います。

ちょっと脱線ですが、Sh2はシャープレスカタログ(Sharpless catalog)と呼ばれていて、淡い天体を撮影しようとするとすぐに候補として出てきます。




アメリカの天文学者スチュワート・シャープレスが、パロマー天文台のスカイサーベイからの画像を使用して銀河系のHII領域を調査し、1953年にSh1として142天体をカタログに登録、その後1959年に第2版とのSh2として313の天体を登録しているとのことです。

シャープレスカタログはまだいいのですが、シメイズカタログは調べてもあまりよくわかりませんでした。日本語だとHIROPONさんのページくらいしか引っ掛からなくて、

「クリミアにあるシメイズ天文台で、ソ連の天文学者ヴェラ・ガゼ(Vera Fedorovna Gaze, 1899~1954)とグリゴーリ・シャイン(Grigory Abramovich Shajn, 1892~1956)によって1955年に編集された散光星雲のカタログです。カタログはクリミア天体物理天文台の会報に掲載されており、主に北半球にある306個の散光星雲を一覧にしています。有名な天体としては、おうし座~ぎょしゃ座にかけて存在する超新星残骸Simeis 147(=Sh2-240)があります。」

とあります。「シメイズ」と検索しても、ほぼシメイズ147しか結果が出てこなくて、色々調べてやっとSimbadの中のカタログまで辿り着きました。232個が登録されているようです。


久しぶりのε130D

ε130Dですが、5月にアメペリ星雲網状星雲おとめ座銀河団を撮って以来になります。これまではテスト撮影のようなもので、
  • bin2と分解能とBXTの関係
  • 淡いOIIIがどこまで出るか
  • bin1で系外銀河の描写がどこまで可能か
など、かなり実験的です。いずれも、ε130Dの分解能と口径の大きさを遺憾なく発揮した結果となりました。

その一方で
などが問題点として浮かんできました。今回の撮影の前に、上記二つの問題に対してもある程度解決の目処をつけようとしています。


星像の改善

まず最初の問題、星像についてですが、コリメートアイピースを利用しての光軸調整自身は何度かしてみました。でも、何度調整しても結果として毎回同じようなズレになるので、通常の光軸調整とは別のシステマティックなずれがあるような気がします。

具体的な問題としては、
  • 鏡筒に付いている回転装置を回すと、像が変わる。
  • 四隅の星像が流れる。特に、縦方向に像の上下でピントの内外が違うのがはっきりわかる。
などがあります。これらのことから、光軸というよりはスケアリングがずれているのではないかと考え、K-ASTECのスケアリング調整が可能なテーパーリング接続キットを購入しました。



IMG_8512

オフアキは使わないので、上の写真の右のように12.5mmの延長リングも合わせて購入したのですが、これはカメラ付属の5mm幅のセンサーチルトアダプターを「付けたまま」接続します。最初勘違いしていて、このセンサーチルトアダプターを外して組んでしまい、星像が改善しないと悩んでいました。一度スターベースに遊びに行った時に星像が合わないと相談して、スタッフの方の指摘で気づきました。どうもありがとうございました。

その後、スケアリング調整です。接眼部の鏡筒側の回転装置を回転させて、縦にしても横にしても、きちんと遠方の景色のカメラ中心がずれないように、合わせました。このこともスターベースで話したのですが、カメラ中心基準だとテーパー部のネジの締め具合で中心位置がずれてしまうので、回転させた時に中心が基準にならないかもという指摘をうけました。そのため、ネジの締め具合が毎回均等になるようにして中心の再現性がある程度あることを確認してから、回転させても遠方景色の中心がずれないようにスケアリングを調整しています。

IMG_8659
こんな風に回転装置でフィルターホイールごと回転させて、
遠方を見ながら、カメラ中心がずれないようにスケアリングを調整しました。

今回の撮影での四隅の様子です。
2023_11_21_03_22_49_ASI6200MM_2x2_A_300s_g100_9_80C_mosaic
まだ左下と左真ん中が縦に伸びていて、右上が右斜め方向に伸びています。

それでも調整前の北アメリカ星雲の時などは下のようで、真ん中以外全方向が伸びていたので、かなり改善されています。
_2023_05_04_00_51_54_A_9_90_300_00s_0001_mosaic

下の画像は、RGBを5分9枚づつインテグレートしたものですが、方向が多少散らされるのか、さらに目立たなくなります。
Image04_ABE_DBE1_mosaic01
それでも強拡大すると、完全に伸びがなくなっていないのがわかりますが、私的には許容範囲です。それよりも青が少しずれているのが気になるくらいなので、ここまで調整できればよしとします。

ちなみに、上のものにBXTをかけるとさらに星像は引き締まり、青のずれもなくなり、真円に近づきます。それでもまだ左下は少し縦に伸びています。
Image04_ABE_DBE1_mosaic

これくらなら歪みと言っても微々たるものなので、私的には結構満足です。今後ε130Dでもどんどん撮影していこうと思います。

ところで今回の星像の改善に一番効いたと思われるのは、実はスケアリングではなく、バックフォーカスでした。もともとε130Dにタカハシ純正のCanon用の変換アダプターを付けて、カメラ側にZWOのCanonマウントアダプターを使っていたのですが、これだと指定のバックフォーカス長の56.2mmぴったりで、フィルターの厚みなどを光量すると、微妙に長さが足りないのです。K-ASTECのテーバー接続リングは、あらかじめ1mmほど長く設定して出荷され57.2mm -0.2,+0.8の範囲で調整できます。実際にはもう少し伸ばしましたが、以前より1.5mmほど伸ばしたことが星像の改善に一番貢献したものと思われます。


フードの影響

今回簡易的に鏡筒先端にフードを付けてみました。

IMG_8784

ε130Dでこれまでフラット補正がうまくいかなかった原因の一つが「フードを取り付けていなくて周辺の光が入り込み、その光の入り込み具合が赤道儀の回転とともに変わっていって、単一のマスターフラットファイルでは補正しきれないのでは」と考えたからです。フード自身はまだ仮のもので、福島の星まつりで特価で手に入れたものを使いました。

今回はRGBAOと5種類撮影しましたが、その中でB画像の迷光が一番ひどく見えました。スタック後のBにABEの4次をかけて、オートストレッチの強い方をかけたものです。
masterLight_BIN_2_EXPOSURE_300_00s_FILTER_B_ABE

まだかなり残っていますが、HαやOIIIはこれより大分マシだったので、これがMaxだと思ってください。

下は以前おとめ座銀河団を撮影した際に、フードなしで撮ったスタック後のL画像にABEの4次をかけて、オートストレッチの強い方をかけたものです。

masterLight_BIN_1_EXPOSURE_300_00s_FILTER_L_ABE

L画像とB画像なので直接比較は不公平かもしれませんが、フードで少しマシになったようにも見えます。それでもフードが解というには厳しくて、やはりε130Dと付き合っていくには非対称的な迷光を許容していく必要がありそうです。

というより、この非対称性って接眼部が横についていることからきている可能性が高いと思っていて、ε130Dだけの問題ではなく、そのような形の反射型全般の構造的な問題かと思っています。

「そんなの出てないよ」という方も、フラット画像にABEの4次をかけて、オートストレッチの強い方をかけてみてください。できれば中心だけを見るのではなく、CMOSカメラのAPSCとかフルサイズクラスで見ると外の方に見えるのかと思います。「CMOSカメラ」とあえて書いたのは、一眼レフカメラだとカメラ本体のミラー部のケラレが上下に出てしまう可能性があるからです。そのケラレでの光の落ち方の大きさが、今議論している迷光の模様よりも大きい場合があって、ストレッチで炙り出してもケラレの方で制限されてしまい、迷光の微妙な違いがわからないことがあります。画像処理によっては問題にならないレベルかもしれませんが、今回のように淡いところを強度にあぶり出していく場合は、どうしても問題になってきます。

あ、ブログを書いていて最後に見直した時に思ったのですが、よく考えたら今回のフラット、以前のものを使い回しています。フードのない時に撮ったフラットということです。フードをつけて取り直したらもう少しマシになるかもしれません。休日で、天気のいい昼間に撮り直してみます。
 

撮影時

撮影は11月20日から22日の3日間に渡りました。上弦の月を過ぎた頃で、前半は月も明るくSh2-240自体の高度も低いので、どの日も後半がメインとなります。初日の前半は準備と星像確認に費やし、0時頃から撮影開始でした。

フィルターですが、前回はCBPでした。今回はカメラもモノクロなので、HαもOIIIも個別のです。どちらもBaaderのものになり、バンド幅もかなり小さくなるのでコントラスも向上するはずでが、OIIIが眼視用で青ハロが出ることがわかっているので、少し気になるところです。

2日目と3日目は、前半まだSh2-240の高度が低いので、その間クワガタ星雲を撮影しました。半月越えの月が出ていますが、ナローバンド撮影なのでなんとかなるかどうかのテストも兼ねています。この話はまた別の記事で書こうと思います。

2日目の後半は順調に枚数を稼いだのですが、途中でPCに繋げてあるバッテリーが落ちたようで、残されたファイルを見ると午前3時過ぎのものが最後でした。

3日目前半のクワガタ星雲の撮影後に、急遽Sh2-240のRGBを個別に撮ることにしました。以前の北アメリカ星雲のAOO撮影で赤の淡いところを出すのに無理をして、恒星の色がおかしくなり、恒星の周りに赤ハロのようなものが目立ってしまったからです。短時間ながらもRGBで別撮りしておけば、恒星の色もある程度残るのではとの期待です。各色5分で9枚、45分づつ撮影しました。3日目の後半は途中から風がすごいことになってきたので、午前3次頃に中断して片付けました。

そうそう、Xではつぶやいたのですが、最近自宅の近辺でクマの被害がかなり出ています。歩いて行ける距離の所で一人亡くなっていて、さすがにそのクマは駆除されたのですが、その後も車で5分くらいのところでも二人襲われています。さらに、これも自宅から5分くらいのところですが、いつも仕事に行く時に使う道を横切るクマの映像がニュースで流れていました。

実際の撮影は冗談抜きでクマに怯えながらでした。できる限り外に出ている時間を短縮して、セットしたらあとはプレートソルブやEAFを駆使してリモート撮影に徹底します。それでも反転の時だけは心配で、その場に行ってケーブルとかが引っかからないか見ながら、マニュアルで反転してました。


ビニングについて

元々今回の記事の中でビニングについて書こうとしていましたが、結構な分量になってしまったので、独立した記事としました。詳しくは前回の記事を見てください。

少しだけ書いておくと、富山の自宅でスカイノイズが大きいことを緩和するために、bin2でソフトウェアビニングをかけて撮影し、輝度を上げショットノイズのS/Nを上げようとしました。

 

bin1に比べて4倍の露光時間をかけたことに相当しますが、それでも露光時間がまだ足りないか、もっと暗いところに行くべきなのかと思います。ちなみに、今回の撮影時間がトータル12時間なので、bin1で撮影していたらショットノイズに関しては、48時間撮影したのと同等のS/Nとなります。


画像処理

まず、OIIIの一枚画像を見てみます。ABEの4次をかけ、強い方のオートストレッチをかけます。何か模様は出ているようです。これならスタックさえすればなんとかなりそうです。

2023_11_21_00_34_08_2x2_O_300_00s_g100_10_00C_0005_ABE

次にPixInsightのWBPPが終わった段階のマスターOIII画像を改めて見てみます。ABEの4次をかけ、強い方のオートストレッチをかけます。淡いながらも(この時点では)十分に出ていると思いました。

masterLight_BIN_2_300_00s_FILTER_O_integration_ABE

Hαも同様に見てみますが、OIIIがでているので、Hαは余裕と思っていました。

masterLight_BIN_2_300_00s_FILTER_A_mono_drizzle_1x_ABE

でも、その後の画像処理は困難を極めました。やはり淡い青がつらいのです。青が出てると言っても、そもそも青単独のところは一部で、多くは赤と重なっていて仕上がりで明るい紫になります。単独の青は、もっと淡いところにまだ隠れいているようです。今回の条件ではそこまで届きませんでした。

青は他にも問題があって、そもそも今回使っているOIIIフィルターが眼視用で、どうもUV/IR領域がカットされていないようなのです。そのため、青ハロができてしまったりして強度の炙り出しが難しくなります。無理に出そうとすると、その青ハロが霞を増加しているように見えてしまい、処理を難しくしています。青ハロだけでなく、淡い天体部分と背景の輝度がかなり近い(背景ノイズが大きい)ので、淡いところを出そうとすると無理が出ます。


drizzle x1の効果

Niwaさんが、SPCCをする際は1倍でもいいのでdrizzleをするといいとの記事を書いてくれています。ノイズが少し軽減され、背景が緑化されるのを防ぐこともできるそうです。私は緑化で困ったことはないのですが、1倍なら特にファイルサイズが増えることもないので、ノイズが軽減されるならと試してみました。

drizzleされたマスターライトとものと、されていないマスターライトができあがるので、PixInsightのスクリプトからSNRを比較してみました。結果はdrizzleしたものがSNR = 7.475e+04 、してないものがSNR = 4.222e+04とのことで、2倍近くの向上がみられました。

comp1

上の画像は、左がdrizzleなしの通常の処理、右が1倍のdrizzleです。drizzleをかけると、背景のクールピクセルっぽい黒い穴が少なくなっていることがわかります。SN比の向上と一致していますね。その代わりに、少し星像が肥大しているでしょうか?シャープさがなくなったようにも見えます。

多少の不利さもありそうですが、2倍近くのS/Nの向上はかなり魅力的なので、今後も使っていくことになりそうです。


結果

やっと画像処理の結果です。
Image22_DBE_SPCC_back_BXT_HT1_HT2_NXT_SCNRG6_cut
  • 撮影日: 2023年11月21日0時8分-5時23分、11月21日22時48分-22日2時25分、11月22日22時14分-23日3時14分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 48枚、OIII: 70枚、R: 9枚、G: 9枚、B: 9枚、の計145枚で総露光時間12時間5分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 0.2秒、OIII: 0.2秒、R: 0.01秒、G: 0.01秒、B: 0.01秒で全て64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

結果を見るに、かなり出たのではないでしょうか!いろいろ苦労はありましたが、今回のレムナント、明らかにリベンジは果たせたと思います。

まず2年前に全く出なかった青は明らかに出ています。赤も無理して出していたものは、かなり複雑な模様まで詳細に出るようになりました。鏡筒だけでなく、ナローバンドフィルター、モノクロ冷却カメラと、機材も総取っ替えで挑んだ甲斐がありました。自宅からでも無理ナントではなかったと言っていいでしょう。

その一方、これで終わりかというと、画像を見てもまだ無理をしている感があるのも事実です。
  • まず、青に関してですが、やはりOIIIフィルターが眼視用のせいか、どうも恒星周りに青ハロっぽいのが出てしまっています。この青ハロの明るさが、淡いところの明るさと同程度になるために、淡いところをこれ以上炙り出すのが難しくなっています。星もとで48mmのOIIIフィルターを特価で見つけた時に、パッと買っておけばと、今でも悔やまれます。
  • 一方、Hαの赤も、よく見るといくつかの大きなリングの中に、ノイズに埋もれそうな淡い構造が明らかに見え始めています。これだけ見てもまだHαの方も露光時間を増やした方がいいいのかと思います。
  • 焦点距離が430mmとまだ微妙に長くて、全景が入っていません。モザイク撮影で周りも少し入れてみたいです。
こうやってみるとまだ不満な点もあるので、できるならもう一度リベンジしたいです。

今回の成果の一つは、ε130Dの星像がしっかりしてきたことです。今後は躊躇せずに、この鏡筒で撮影をどんどんしていきたいと思います。その一方、フードはフラット補正に少しは貢献しましたが、まだ完全な解決までは遠いです。でも他にアイデアもないので、これはもうあるものとして付き合っていくしかないと思います。


ナローバンド撮影と光害の関係

ナローバンドで、明るい月夜や明るい場所と、暗い場所でどれくらいスカイノイズに差が出るのか、今後きちんと実測と計算をしてみたいと思います。もしかしたらナローバンドフィルターの影響が強くて、意外なほど周りの明るさがあっても撮影結果に差が無いのではとも少し思っています。ナローで淡いところを出す場合、光害はあまり関係なく、いかに天体を明るく撮るかにかかっていて、口径、F値、露光時間、ピクセルサイズなどで決まってしまうのではないかという推測です。

もしこれが数値的に示されたとすると、自宅で撮るのは環境的には決して難しいことではなく、あとは機材と露光時間の根性という話になります。あ、ビニングなどの工夫もありますか。

暗いところにいって、ナローバンド撮影をしてみればすぐに判明するので、いつかまた遠征した時にナローで撮影して差を見てみたいと思います。


ビニング x drizzle x BXT

もう一つのアイデアです。

今回bin2で撮影しましたが、いわゆるソフトウェアビニングなので、bin1で撮影してから、画像処理の段階でPC上でbin2にしても同じことになります。しかも、16bitカメラなので後からビニングして32bitファイルに書き込めば、4倍の明るさになるのでダイナミックレンジは2bit得するはずです。

今回は後からのビニングができるのかわからなかったので撮影時にビニングしていますが、元のbin1の解像度が高すぎるので、bin2でもまだ十分な解像度があります。いっそのことここから更にビニングしてbin4相当にして更に4倍の明るさにして、でも流石にそれだと解像度がしょぼくなりすぎるので、drizzleで2倍にするというのもありだと思います。

もちろんそれだけだとS/Nは得しても、解像度に関してはあまり得しないので、この状態でBXTをかけるというアイデアです。drizzleとBXTは相乗効果が非常に高い可能性があることはすでに検証しているので、
 
解像度がほぼ今のままで、更に淡いところを出せるかもしれません。bin4だとすると今回のbin2に比べたら4倍、元のbin1に比べると16倍の露光時間になります。今回トタールで12時間半の撮影時間なので、16倍ならちょうど200時間の撮影時間と同等ということになります。自宅撮影の可能性をさらに広げてくれるかもしれません。分解能がどこまで犠牲になるかも注意しながら、余裕があったら試してみたいと思います。


まとめ

長い記事になってしまいましたが、半年くらいの細々とやっていたε130Dの調整も入っているので、実際にはまだまだ書き足りないくらいです。念願だった自宅レムナントがやっと出てくれたので、かなり満足している一方、まだ十分でないこともわかったので、いつかまたリベンジしたいと思います。

これでε130Dも多少安定して撮影できそうです。今後、どんどん活用していきたいと思います。

次はイカ釣りかな?


日記

コロナの後遺症か、熱がひいてからも数週間体力がなくて、今回やっと望遠鏡を出す気になりました。それでもこのブログを書いている現在もまだ咳が続いていたりします。

この間にも、どんどん試したいことが増えています。SharpCapの惑星ライブスタックとか、SharpCapでガイドなしのdhitherとかです。でももう既に冬型の気圧配置になってしまったのでしょうか、天気が全然ダメです。天気が悪くても、まだノイズ解析は進めたいですし、小海でお借りしたInteractiveの読み込みとかもしたいです。これらもまた、いずれ記事にしたいと思います。時間が全然足りません。


2023/10/12、久しぶりに新月期で晴れです。平日なのであまり無理をしたくないのですが、せっかくなので撮影を敢行しました。


久しぶりの撮影

実は前日の10月11日も晴れていたのですが、ε130Dの光軸調整で時間を潰してしまい、何の成果もありませんでした。実際光軸調整も大したことはできず、せっかくの晴れでもったいないです。なんとか撮影の成果だけは残そうと思い、SCA260+ASI294MM Proで簡単な撮影をしました。この日の撮影は、前半がM27、後半がM45です。でも結局撮影が忙しくて、せっかくε130Dを出してセットアップまでしたのに、光軸調整はやっぱりできないんですよね。平日に二つのことは厳しいです。

今回M27にした理由ですが、5月にHα画像を写していました。その後続けてOIIIも撮ったはずなんです。でも撮影後に確認したら、実際に撮影していたのはB...。AOO撮影のはずなのに、Aの次はBと思い込んでしまったようです。今回はそのリベンジで、OIIIの撮影です。でもここでも痛恨のミス。縦横を合わせ損なって90度ずれてしまい、使えるのは重なる正方形の部分だけとなってしまいました。

前回M27を撮影したのは2年前のTSA120を使ってです。2021年9月になります。この時が、そこそこセンサー面積があるモノクロカメラを使った初のナローバンド撮影で、まだフィルターホイールも持っていなかったので、手でフィルターを付け替えてのAOO撮影でした。本体周りの羽の部分を出したくてOを重点的に出そうとしました。羽はそこそこ写ったのですが、意外にAが出なくて、Aのリベンジが課題だったことを覚えています。



それでもこの時のM27には結構満足していて、もうしばらく撮ることはないなと思っていましたが、2年経つとアラも見えてきますし、SCA260でさらに光量が稼げるとか、BXTが台頭してきたとかで、状況も大分変わってきています。高度も高く、夏を中心に一年のうちのかなりの期間撮影が可能なので、ベンチマークがわりに再びM27を撮影しようとここしばらく思っていて、やっと実現できたというわけです。


撮影

SCA260での撮影は久しぶりです。少しづつ思い出しながらのセットアップになりますが、それでもほとんどトラブルもなく、比較的順調に撮影開始となりました。一つだけミスがあって、StickPCを使っているのですが、SCA260+ASI294MM Proで使っているStickPCと、ε130D+ASI6200MM Proで使っているStickPCが入れ替わっていて、気づかずにカメラの設定やフィルターごとのEAFのピント位置とかの設定でファイルを上書きしてしまいました。気づいたのはプレートソルブがどうしてもできなくて、ε130Dの焦点距離の400mmが入っていた時でした。でも面倒なのでそのままStickPC交換せずに使い続けたのですが、色々不具合が出てきて、すぐに交換すればいいと後から後悔しました。
M27
撮影中のNINAの画面。ガイドも順調です。

撮影は順調に続き、OIII画像が溜まっていきます。23時位になるとM27が隣の家の屋根にかかってしまい、次に考えたのが、ずっとやってみたかったモザイク撮影です。以前拡大撮影したM45: プレアデス星団が次のターゲットですが、これは別の記事で書きたいと思います。


追加撮影

OIIIの撮影直後は5月に撮影したHαと合わせて仕上げてしまおうと思っていましたが、縦横の間違いが悔しかったので、結局10月17日にHαを、OIIIと同じ方向にして撮影し直してしまいました。こうなってくるとOIIIもHαももう少し追加したくなり、18日にも追加撮影して、5分露光でHαが44枚、OIIIも44枚で、合計88枚、総露光時間440分で7時間20分となりました。17日から18日にかけては庭に望遠鏡を出しっぱなしにしていたので、すぐに撮影に入ることができ、18時台から撮影を開始できています。


フラットでトラブル

久しぶりの撮影なので、フラットを撮り直しています。フラット撮影は、昼間に明るい部屋で白い壁を映しています。ところが、今回条件を一緒にしようとして「冷却して」撮影したのは失敗でした。結露が起こってしまったことに後から気づき、結局常温で全て撮影し直しです。DARKFLATも温度を合わせるため、こちらも全部取り直しです。
2023-10-14_14-00-20_M 27_2x2_FLAT_R_-10.00C_0.01s_G120_0000
フラット撮影中にオートストレッチして、こんな風に真ん中にシミのような大きな模様ができていたら、結露しています。拡大すると、おかしな黒い点々が見えたりします。

普段はフラットは昼間に部屋が明るい時に撮っていましたが、雲があると明るさがバラバラになるのでダメですね。今回は早く画像処理を始めたかったため、暗くなってから部屋のライトをつけて撮影しました。でもこれ、もしかしたらダメなのかもしれません。特にHαですが、微妙にフラット補正が合わずにムラになってしまいました。

以前記事に書いたことがあるのですが、ナローバンド系はフラットファイルそのものがどうしてもムラムラになってしまいます。



当時、センサー自身のムラではないかと予測したのですが、その後ZWO自身がこのムラはセンサーの特徴だと言及しているページを見つけました。



当時このページの存在は知らなかったのですが、後からやはり推測は正しかったと分かりました。でもいずれにせよ、このムラはフラット補正で解決できましたし、ZWOの説明でも同様のことが書いてあります。

でも今回は、フラット補正をしてもどうしても、ムラの形が残ってしまいました。まず、今回撮影したフラット画像のうちの1枚です。ナローバンド特有の大きなムラ構造が出ています。
masterFlat_BIN-2_4144x2822_FILTER-A_mono

次に、AOO合成した直後の画像です。上のフラット画像と比べてみると、ムラの形がよく似ていて、暗いところが赤くなってしまっているのがわかると思います。
Image11_ABE

まだ未検証ですが、部屋の明かりを使ったのが悪かった気がしています。明かりとしては、蛍光灯と電球を合わせたのですが、それぞれ波長が違っていて、違った種類の光源が複数方向から来ているので、複雑な形の輝度勾配ができてしまっていた可能性があります。もし時間が取れるなら、再度晴れた日の明るい部屋の中で自然光を光源に、再度撮影してみたいと思います。あ、多分ですが、晴れた日にの薄明時に鏡筒を空に向けるのが一番いいのかとは思いますが、時間が限られるので、壁での方法を確立しておきたいということです。

今回問題だったフラットのムラはHα、OIIIともにDBEを細かくかけることで、なんとか見える程度にすることができました。


ダークの撮影

あと、今回ついでにダークも久しぶりに撮影しました。ダーク系を撮るのも昼間は注意が必要です。カーテンを閉めてできるだけ部屋を暗くするのはもちろんですが、鏡筒や特にフォーカサー部などにきちんと暗幕(タオルとか、服とか)をかけて撮影しないと、完全にダークになりません。今回は二度に分けてダークを撮りましたが、最初の暗幕が甘くて、十分暗くなりませんでした。
IMG_8668
こんな風に望遠鏡をくるんで、さらに部屋を暗くしてダークを撮影してます。


最新版PixInsightと、Mac M1でのStarNet

私は画像処理にMacのM1を使っているのですが、最近PixInsightを1.8.9-2にアップデートしたら、StarNet V2が使えなくなりました。その後StarNet V2もアップデートされ、最新バージョンのPIでも使えるようになったということでしたが、再インストールの方法を忘れてしまい少し手間取りました。Niwaさんのページやその参照元のCloudy Nithtsに解説があるのですが、自分の環境とは微妙に違っていて、そのままではうまく動きません。うまく動いた方法を書いておきます。

まず、ダウンロードページに行って、



をダウンロードします。その後、ファイルを解凍します。
  1. StarNet2_weights.pbとStarNet2-pxm.dylibは/Applications/PixInsight/bin/にコピーします。
  2. libtensorflow.2.dylibとlibtensorflow_framework.2.dylibはApplications/PixInsight/PixInsight.app/Contents/Frameworks/にコピーします。PixInsight.appの中身は、PixInsight.appを右クリックして「パッケージの中身を表示」を選ぶとアクセスすることができます。
  3. 以下のコマンドを、一つ一つコピペしてターミナルから実行します。
  • sudo chown root:admin           /Applications/PixInsight/bin/StarNet2_weights.pb
  • sudo chmod 644                  /Applications/PixInsight/bin/StarNet2_weights.pb

  • sudo chown root:admin      /Applications/PixInsight/bin/StarNet2-pxm.dylib
  • sudo chmod 755             /Applications/PixInsight/bin/StarNet2-pxm.dylib

  • sudo rm -f             /Applications/PixInsight/bin/libtensorflow*
  • sudo chown root:admin  /Applications/PixInsight/PixInsight.app/Contents/Frameworks/libtensorflow*
  • sudo chmod 755         /Applications/PixInsight/PixInsight.app/Contents/Frameworks/libtensorflow*

あとはREADME.txtに書いてある通りに、
  • PI上でPROCESSES=>Modules=>Install Modulesで'Search'を押すと、StarNetが出てきます。
  • その後他のボタンは何も押さずに'Install'を押します。
  • うまくいくとStarNet2がPROCESSES-><Etc>もしくはPRECESSES-><All Processes>に出てくるはずです。
怖かったのは、マニュアルに「ちゃんと手順を踏んでやってもサーチでStarNetが出てこない場合は、AVXに対応してないから仕方ないとか、心を折るような記述があることです。でもM1のMacでPIの最新版で、確実にStarNet V2をインストールできたので、諦めずに正しい手順でやってみてください。


結果

画像処理に関しては、あとはほとんど問題はありませんでした。ナローなので、色決めに一意の解はなく、SPCCも恒星の色を合わせるように設定したので、星雲の色は自由度があります。他の画像を見ていてもM27の色は様々で迷いますが、前回TSA120で出した色が比較的好みなので、今回も近い色としました。

画像処理の結果が下のようになります。
masterLight_BIN_2_300_AOO_SPCC_BXT_DBE_MS_MS_BG2_cut_X3
  • 撮影日: 2023年10月12日20時59分-22時52分、10月17日20時34分-23時29分、10月18日18時18分-22時35分、
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260 (f1300mm)
  • フィルター: Baader Hα, OIII
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、Hα:44枚、OIII:44枚の計88枚で総露光時間7時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、42枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα, OIII:10秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

ちなみに、2年前に撮ったTSA120の画像が以下になります。
Image09_DBE2_stretched7_cut_crop_b


比較と評価

2年前と今回を比較してみます。
  • 最初のスタック画像を見ていると、微恒星に関してはどうも前回のTSA120の方がより出ている気がしました。これまで同じ対象でTSA120とSCA260を比べて、SCA260が負けたことはないので、意外な結果でした。原因はシンチレーションくらいしか考えらないです。もう夏の気候は終わってしまったので、揺れは大きくなっているのかもしれません。それでもBXTをかけて改善する余地があったので、結果としては今回の方が微恒星は数も鋭さも出ています。
  • 狙いの本体外側の蝶の羽の部分は、今回の方が明るい鏡筒で露光時間も倍以上と長いため、明らかに綺麗に出ています。羽の部分はOIIIの青よりも、Hαの赤の方がやはり淡いようで、前回よりも出てはいますが、フラットムラのこともあり、まだ露光時間を伸ばすか、このレベルの淡さになってくると自宅よりはさらに暗いところに行ったほうが効率がいいのかと思います。ここ最近の記事で、明るいところと暗い所のスカイノイズの影響が数値で定量的に出るようになってきたので、いずれこの淡さならこの場所に行くべきというようなことが言えるようになるのかと思います。
  • 中心部の微細構造は、口径とBXTの効果で圧倒的に今回の方がいいです。ただし、淡い羽部分の分解能との差がありすぎるので、多少なりともバランスを取るために、あえて少し分解能を落としてあります。
今回のM27、羽の部分、中心部分の分解能、微恒星の鋭さ、背景のノイズなど、ほぼ全てを2年前の結果を上回っていて、自己記録更新です。あえていうなら、透明度みたいなのだけは以前の方が良かったように思いますが、これは画像処理に依っていて、まだ私も確信を持って(少なくとも見かけの透明度さえも)透明度をコントロールできていないので、偶然によってしまっています。それ以外はトータルとしてはかなり満足しています。


まとめ

久しぶりのSCA260での本気撮影でしたが、かなり満足な結果でした。自宅庭撮りで、M27の羽がここまで出るのなら、十分なのかと思います。その一方、これ以上出すのは撮影時間がかかりすぎることなどから難しく、暗いところに行く必要があると思います。次のシーズンに飛騨コスモスでしょうか?

ε130Dの光軸調整がなかなかはかどっていないので、しばらくはSCA260での撮影も継続していこうと思います。


前々回前回のトール兜星雲画像処理の時に、ライトフレームやフラットフレームを見ていて、いろいろ問題があることがわかりました。

 
 

問題点は以下の通りで
  1. Hα、OIIIのナローバンドのみ周辺減光が大きい、RGBはそれほどでもなく許容範囲。
  2. センサーの埃がひどすぎる。
  3. OIIIのフラットがムラだらけ。
とかいうものです。一つづつ見ていきます。


なぜナローとRGBで周辺減光に差があるのか?

同じバーダーのフィルターを使っているのに、撮影画像を見るとナローとRGBに明らかに差があります。

例えばR画像です。
Capture_00001 15_27_36_WithDisplayStretch
四隅も欠けて見えますが、かなり炙り出して見ているので、実際の撮影でフラット補正してしまえばほとんど気にならないレベルになります。GもBもRと同様です。

次にHα画像です。
Capture_00001 15_31_36_WithDisplayStretch
明らかにHαの方が欠けている部分が明らかに大きいのが分かると思います。ホコリのリングがあまりはっきり見えていないことから分かるように、たいして炙り出しもできていません。R画像と比べるても見た目以上に周辺減光が大きいことが推測できます。さすがにこのレベルだとフラット補正でも補正しきれなくて、画像処理の時に無視できないレベルで四隅は結構な範囲でクロップするしかなく、少しもったいないです。

何故こんな違いが出るのか、ナローバンドフィルターとRGBフィルターをよく見比べてみると、リングが結構違います。下の写真のホイールの裏から見た場合ですが、左側がHαフィルターで、右がBフィルターです。
IMG_4405

左のナローの方の内側のフィルターの受け皿の内径が明らかに小さいです。どうやらここが周辺減光の原因になっているようです。

とりあえず、ナローフィルターのフィルターだけをホイールに直接載せればいいかと思いました。

まずはHαフィルターをリングから外します。外したフィルターをフィルターホイールの穴に直接載せてホイールに付属のフィルム型のリングでとめようと考えました。ところがところが、フィルターをホイールの穴に置こうとしたらなんとそのまま通り抜けてしまい、センサーのところまで落ちていってしまいました。どうやらフィルター径の方が穴の径よりも小さいようです。

気を取り直してフィルターのリングはとりあえず使うことにしますが、さてどうしましょうか?

手持ちの機材をいろいろ漁ってみると、昔星まつりでジャンク価格で買った古いORIONのオレンジとかバイオレットとかの、さすがに使いそうにないフィルターがあり、そのリングが今回使えそうなことがわかりました。内径は少なくとも今のナローバンドのリングよりも小さそうです。
IMG_4408
IMG_4410
左がORIIONのOrangeフィルター、右がバーダーのHα

フィルターのリングを取り替えて、ホイールに再び取り付けます。さて再度カメラで見てみると...
Capture_00001 16_15_11_WithDisplayStretch

おお!周辺減光が明らかに改善しています。

OIIIも同様に変更しておきます。


センサーのゴミ

前回の記事で見せたマスターフラットです。

masterFlat_BIN_2_FILTER_HA_Mono_integration_ABE

ABEを4次で欠けてさらにフラット化しているので相当強調されていますが、流石にあまりにひどい汚れです。どこが原因か探ってみます。

まず鏡筒に対して接眼部全体を回転させてもホコリの位置がかわらないので、接眼部が原因です。さらにホイールに対してカメラのみ回転させてもホコリの位置が変わらないので、カメラで確定です。ホコリのリングの大きさかが全て同じなのと、その大きさから言って、センサー面ではなく少し離れた保護ガラス面に乗っかったホコリでしょう。

でも目で保護ガラス面を見ても全く汚れているようには見えません。おそらく相当細かいホコリか何かです。

とりあえずよくわかりませんが、保護カバー面を以前買ったセンサー掃除用のスワブを使いました。



持っているのは6Dのためのフルサイズ用でしたが、スワブの短辺が、フォーサーズセンサーの長辺と同じくらいなので、そのまま使うことができました。

一度拭っただけで効果は的面で、9割方のホコリをとることができました。
Capture_00001 16_53_05_WithDisplayStretch

欲を出して同じスワブでもう2−3度拭き取りましたが、逆にたくさんのホコリが乗っかってしまいました。えっ!と思いましたが、冷静になってブロアーで吹き飛ばすと、今度は完璧で、見る限りホコリは全て取れたと思います。
Capture_00001 17_02_03_WithDisplayStretch


ムラ

次にOIIIフラット画像のムラについてです。まずはOIIIのフラット画像を見てみます。少しホコリが乗っかってしまっていますが、これはブロアで吹き飛ばせるものです。
Capture_00001 17_01_02_WithDisplayStretch

でもこれ、左右で明るさの差はありますが、ムラには見えません。どうやら前回の画像処理の時にすでに勘違いしていたみたいで、改めて今回見るとOIIIはほぼムラはなく、逆にHαに同じような形のムラがあります。

おそらくですがこれはNINAの問題で、一旦シーケンスを走らせて、途中で止めてフィルターを別のものに入れ替えてから、シーケンスを再開するとフィルターが変わったことを認識せずに、そのままその時のフィルターで初めてしまうことがあるようです。フォルダ名やファイル名にフィルター名を書いておいても、実際に使っているフィルターでなく、最初にシーケンスで指定したフィルター名のままになってしまいます。

OIIIで撮ったと思っていたのが実際にはHαで撮影していてためにムラが出たしまったのかと思いますが、少し腑に落ちないところもあります。まあ、今回はとりあえずムラが見えているHαフィルターについて考えます。

Hαフィルターでのフラット画像をリアルタイムで見ながら、いろいろやってみました。例えば明るさやゲインを変えてみたりしましたが、暗いと見えにくくことはあっても消えるようなことはありません。形はカタカナの「コ」の字のようです。RGB、OIIIのいずれにもこんな模様は見えませんが、Hαには再現性を含めて存在しそうです。フィルターを回転させても模様は変わりません。

ここで、バーダーのHαフィルター自体に問題があるのではと思い、もう一枚持っていたサイトロン製の同じ7nmのHαフィルターに交換してみました。同じ7nmと言っても、見た目でフィルターの色が違うので、少なくとも特性が全く同じとは思えません。その結果が以下です。

Capture_00001 17_23_51_WithDisplayStretch

ホコリは無視するとして、ムラの形が相変わらずカタカナの「コ」でほとんど変わっていないのです。

これは何を意味するのでしょうか?

ふと立ち止まってしばらく落ち着いて考えていましたが、結局結論としてはセンサー面の個々のピクセルがこの波長に対して感度差があるのではということくらいしか思いつきません。可視光に対してはメーカーも感度ムラをきちんと検証していても、赤外に近いHαについては検証し切れていないのかもしれません。もしこれが正しいなら、ある程度仕方ないので、フラット補正を木tんとするということくらいしか対策はありません。次回、本当にきちんと補正ができるかなど、気を付けて見てみたいと思います。

あと、最後の画像でついたホコリについてです。できるだけセンサーを逆さにしながらフィルターを取り替えたりしましたが、結構なホコリが付くことがわかります。原因は、ネジを締める時の金属粉、指を使って閉める時に爪が少し削れた粉、空気中にあるホコリがフィルターを外した時についてしまうなどです。フラット補正で多少のホコリは問題ないことは分かっていますが、やはりあまり気分の良いものではないので、フィルター交換時などはできるだけ気をつけたいと思います。


まとめ

周辺減光もホコリ取りも十分な効果がありました。また、ムラはおそらく赤外に近い波長に対するセンサーそのものの感度ムラの可能性が高そうなことがわかりました。

今わかっている問題に対しては、手持ちの機材でできることはだいたいこれで対応し尽くした気がします。これ以上は赤道儀を大型化するとか、フィルターを大きくするとかしかないのかと思います。まずはこの状態で次の天体を撮影し、効果の程をみたいと思います。


次期フィルターホイール

RGB撮影と、AOO撮影は試したので、次はSAOとかに挑戦したいと思っています。その場合、今の5枚装着できるフィルターホイールでは不足です。かと言って、フラットがずれることや、今回わかったホコリが入ることなどから、フィルターをその場で入れ替えての撮影は避けたいと思います。

今フィルターは31.7mmですが、次期フィルターホイールをそのまま31.7mmで枚数だけ増やすか、36mmか、さらに2インチにいくべきか迷っています。将来的なことを考えたら2インチにしておくべきなのかもしれませんが、とにかくフィルターが高い!ナローバンド3枚で波長幅にもよりますが10万円から20万円コースです。36mmならZWOでグッと安いのがあり、とりあえずこちらにすべきか?

予算だけ考えるとまずは31.7mmの8枚ホイールだけを買うことになりそうですが...。

完璧ではないですが、やっと3分露光で満足のいく星像になってきました。でも深刻な問題が発覚です。

少し晴れたので撮り増し

この日は明るいうちからSCA260の光軸調整 。どうも光軸がずれている疑いがあったからです。

赤道儀に載せて遠くの南東方向にある山の上の鉄塔を導入し、常時取り付けてあるASI294MM Proの画像を見るのですが、像が結構ブレるのでやはり光軸があっていない様子。画面を見ながら副鏡を合わせようとしますが、結局どのネジをどの方向に回せばいいのか目処が立たず諦めました。

カメラをホイールとオフアキごと外して、アイピース口に付け替えコリメーターを挿します。こちらの光軸合わせはとても簡単で、マニュアル通りに副鏡と主鏡を合わせますが、5分とかかりません。コリメータで見る限り実際に結構ずれていて、副鏡とさらには主鏡も合わせ直してから再びカメラで同じ鉄塔を見てみると、かなり満足するくらいの像になっています。この像と比べると、やはり最初に触る前に見た像は常時ブレていてお世辞にもいいとは言えず、副鏡を触る前にすでに光軸がずれていたということかと思います。

ここまでの結果から、コリメータで合わせることで(少なくとも撮像を見て闇雲に調整するよりも)十分な光軸調整ができると結論づけていいかと思います。

この状態で夜を待ち、導入がてら調整時と同じ南東方向のリゲルを見ると、ディフラクションリングらしきものが見えます。光軸があったからなのか、シーイングがいいからなのか、いずれにせよ色々試せるチャンスです。リゲルBもきちんと写りました。ちなみにその後シリウスを見ましたが、シリウスBまでは見ることができませんでした。まだ低空だったこともあり、目で見ても少し瞬いて見えたので、劇的にシーイングがいいというわけではないと思いますが、そこまで悪くはないようです。

この状態で前回同様トール兜星雲をHαとOIIIで撮影します。撮影途中の画像を見ても、おそらく前回のよりもシャープに見えます。

スタック直後のHα画像です。
masterLight_BIN-2_EXPOSURE-180.00s_FILTER-HA_Mono
明らかに微恒星までシャープになっています。

前回と今回で比べてみましょう。切り出しはPixInsightのAberrationInspectorを使いました。

前回のHα: 恒星がボケボケといったところでしょうか
masterLight_FILTER_HA_Mono_integration_mosaic

今回のHα: 恒星が明らかに小さくシャープですが、その一方暗い星は透明度が悪かったせいか写っていません
masterLight_FILTER_HA_Mono_integration1_mosaic

この差が光軸のせいなのか、シーイングのせいなのかは切り分けは難しいですが、少なくともこの鏡筒は今回のレベルで星像を出せるポテンシャルがあるということがわかります。実際、今回のレベルで撮れればそこそこ満足です。

採択率もHα: 10枚/13枚 = 77%、OIII : 14枚/17枚 =  82%なので、 3分間露光での撮影はまあ合格と言っていいでしょう。

と、ここまでだけ見ると十分な結果なのですが、その後の撮影で深刻な問題があることが判明しました。


赤道儀を反転させると...

南天時を超えて赤道儀を反転させた後です。そのまま撮影したのですが、画像を確認して愕然としました。星像が目に見えて崩れているのです。念のためピントを合わせ直しました。中央でピントを合わせても四隅がかなりずれてしまいます。

masterLight_FILTER_HA_Mono_integration_mosaic

一見揺れでブレたように見えますが、これが同じような星像で何枚も続くので、おそらくブレではなく光軸ずれかと思います。

その後、再度赤道儀を反転させ元の状態に戻して撮影してみると、完全ではないですがそこそこ星像は戻ります。なので少なくとも反転で光軸がズレているのはほぼ確定でしょう。


どこがずれたのか?

まだどこの部分がズレたのかは不明です。3つの可能性があるかと思います。
  1. 可能性が高いのが副鏡。以前コメントでタカsiさんが指摘してくれていたように、鏡筒上部のアルミのバーを外して強度的に不足している可能性があります。
  2. 主鏡自体の重量で支えきれていなくて傾いた可能性がもう一つ。
  3. 接眼部には対物側からEAF、オフアキ、フィルターホイール、冷却CMOSカメラとそこそこの重量が搭載されているので、ここで撓んでしまった可能性も否定できません。
最初に書いたように、コリメータを使うことで光軸のズレは明らかに判明します。明るいうちに赤道儀を交互に反転させて、コリメータで見ながらどこがズレているのかある程度わかるかと思います。
  1. もし上部プレートを外したことによる強度不足が問題になった場合にはいろいろと難しくなってきます。プレートを戻さずに赤道儀を反転するたびに光軸調整をするのか、
  2. プレートを戻してまた揺れと戦うことになるのか、
  3. プレートを戻してもっと強度のある赤道儀を真剣に考えるか
主鏡が問題の場合でも念のため上部プレートは戻して確認することになる思います。あまり無いとは思いますが、万が一接眼部だった場合はプレートは関係ないはずなので今のままで、接眼部の補強とかになるのかと思います。

明日の日曜の明るいうちに試そうと思います。実は最初テーブルの上で鏡筒を上下逆さにすることで試そうとも思ったのですが、赤道儀に載せて南天を見た場合左側、もしくは右側の片側が固定されて吊るされたような状況になるので、再現のためには赤道儀に乗せることは必須かと思います。今日土曜は小雨で赤道儀を外に出すことができませんでしたが、明日は曇りなのでなんとか外に出して検証してみるつもりです。

自宅撮影でなんとか淡い青を出したくて、サイトロン社の「Dual BP Filter(デュアル バンドパス フィルター)」を使ってみました。


Dual BP Filter

「Dual BP Filter」はまだ9月に発売されたばかりの比較的新しいフィルターです。



48mmタイプとアメリカンサイズがあります。今回は一眼レフカメラでの撮影なので、48mmの方を使いました。

同様のフィルターにOptolong社の「L-eXtreme」がありますが、DBPの方が半値とはいかないまでも4割ほど安く、比較的手を出しやすくなっています。またDBPの特徴として、OIIIの波長495.6nmと500.7nmを両方とも透過するので、OIIIの写りがよくなるとのこと。ここら辺は後発が有利なところでしょうか。

今回はこのフィルターを使って青い星雲がどこまで出るかを試したいと思います。


自宅での青の挑戦

これまでアンタレス付近や、青い馬星雲などいくつか自宅からの青を挑戦してきました。




でもやはりなかなか難しく、例えばスパゲティー星雲などは完全に敗北でした。


そもそもHαの赤自身が淡く、さらに淡いOIIIの青は全くといっていいほど出ませんでした。

何れにせよ青い星雲を光害地でうまく出すのは相当難しく、フィルターの力を借りるなど工夫が必要となります。


網状星雲に狙いを定める

今回のターゲットは網状星雲です。赤と青の対比が綺麗で、Dual系のフィルターを手にれると一度は撮ってみたくなるという格好のターゲットです。

これは以前もCBPを使って自宅から挑戦したことがあるのですが、真ん中の淡い青が広がっているところを出すことがどうしてもできませんでした。



今回はCBPの代わりに、HαとOIIIのみを通し、さらにその透過バンド幅が狭いDBPを使っての撮影となります。DBPは48mm径のもので、FS-60CBのマルチフラットナーのところに取り付けています。


条件の比較

前回の撮影との相違点です。
  1. 鏡筒は全く同じでTakahashi FS-60CB + マルチフラットナー。
  2. 赤道儀は以前がCGEM IIだったものを簡単にしてAdvanced VX。
  3. ガイドカメラも以前が120mm+ASI290MMだったものを、50mm+ASI290MMと焦点距離を短く。
  4. 撮影カメラはEOS 6Dで同じ。露光時間も感度も同じ300秒でISO1600。
  5. PHD2のガイドは同じで、撮影ソフトもBackYardEOSで同じ。
  6. 撮影時間は前回が5時間ぴったり、今回が5分で49枚なので245分=4時間5分。少し不利ですね。
  7. 前回は8月の撮影だったのでちょうど天頂を挟んだ撮影だったので条件は良かったですが、今回は1月末から11月初めと、西の空に沈んでいくような撮影時間だったので、周りが明るく不利になります。
季節的には不利で、撮影時間は1時間減ったのでさらに不利といったところでしょうか。あとはCBPとDBPの差になります。この条件でDBPがどこまで戦えるのかが見どころとなります。


実際の撮影

実はこの撮影、一連のSCA260のテストの最中にしています。最初に買った赤道儀AVXにFS-60CBをセットしてほっぽらかしてあるだけです。網状星雲のある白鳥座は夏の星座なので、撮影時間はせいぜい0時まで。その後は次のターゲット(胎児星雲とハート星雲)に移ります。こちらのほうも撮影は終わっているので、また画像処理したらブログ記事にします。

DBPを使って撮影している最中に思ったのですが、とにかく暗いです。白色に近い恒星だとかなりの波長が削り取られるので、6Dで露光300秒、ISO1600で撮影しても、ヒストグラムは左6分の1くらいのところでしょうか。露光時間を10分にしても良かったかもしれませんが、網状星雲は画角の中に明るい輝星が一つあるのでできるだけ抑えたいところで、今回は5分としました。

星が暗いことは画像処理にも影響します。恒星と星雲の輝度差が小さいので星が飽和するまでにまだ余裕があります。そのため、いつも使っているStarNetで恒星を分離してやってマスクを作っても、その効果が大きくないかもしれません。なのでマスクなどあまり気にせず処理してみるというのも、楽でいいのかもしれません。

あと、重要なことですが、DBPを入れたことによるゴーストなどは撮影中は全く気になりませんでした。後の画像処理でも見ている限り確認できませんでした。そのため安心して使うことができるかと思います。


画像処理

画像処理の途中でStarNetを用いて恒星を消してやると、既に真ん中の青い部分はしっかりと情報として存在していることが分かります。あとはこれをどう引き出してやるかだけです。

masterLight_ABE_ABE_clone

実際には上の画像は直接は使っていません。L化して星雲部のマスクとして使っています。恒星のみ抜き出した画像もマスクとしてPhotoshop上で使っています。


実際に画像処理まで済ませたのが下の画像になります。

NGC6960, 6979, 6992, 6995: 網状星雲」
masterLight_ABE_ABE_Rhalo_PCC_ASx2_HT3_cut
  • 撮影日: 2021年10月30日18時26分-19時10分、10月31日20時6分-21時20分、11月2日19時48分-23時37分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi FS-60CB(f355mm) + マルチフラットナー(f370mm)
  • フィルター: サイトロン Dual BP Filter
  • 赤道儀: Celestron Advanced VX
  • カメラ: Canon EOS 6D (HKIR改造)
  • ガイド: f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: BackYard EOS、ISO1600、露光時間300秒x49枚 = 4時間5分、bias: ISO1600, 1/4000秒x100枚、dark: ISO1600, 300秒x76枚、flat: ISO1600, 1/100秒x128枚、flatdark: ISO1600, 1/100秒x128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

鏡筒: Takahashi FS-60CB(f355mm) + マルチフラットナー(f370mm)
フィルター: サイトロン Dual BP Filter
赤道儀: Celestron Advanced VX
カメラ: Canon EOS 6D (HKIR改造)
ガイド: f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
撮影: BackYard EOS、ISO1600、露光時間300秒x83枚 = 6時間55分、bias: ISO1600, 1/4000秒x100枚、dark: ISO1600, 300秒x76枚、flat: ISO1600, 1/100秒x128枚、flatdark: ISO1600, 1/100秒x128枚
画像処理: PixInsight、Photoshop CC

真ん中の淡い青もある程度出ています。昨年CBPでここは全く出なかったので、大きな進歩かと思います。他の青い部分も今回の方が遥かにはっきり出ています。

また、周りの淡い赤も少し出ていますし、右半分の分子雲も少しですが顔を出し始めています。ここもCBでは太刀打ちできなかったところです。うーん、やはりDBPすごいです。

恒星に関しては良く言うならうるさくなく、悪く言えば元気がないです。ここはDBPの特徴でしょう。

諧調深い色に関してはやはりCBPの方が出しやすかった気がします。DBPでは2色なので赤と青のバランスをうまくとる必要があります。


いつものアノテーションです。解説が入ったみたいでかっこいいですね。

masterLight_ABE_ABE_Rhalo_PCC_ASx2_HT3_cut_Annotated1

でも少し傾いてしまっています。3日にわたる撮影で、最初に合わせ忘れてしまってそれには後から気づいたのですが、それ以降の撮影ではいじりたくなかったというのが真相です。画像処理で回転冴えても良かったのですが、今回はそこまでこだわっていないので、まあよしとします。


比較

昨年CBPで撮ったものも載せておきます。

masterLight_ABE_PCC_STR_all3_DBE4_cut
以前はそこそこ出たと思っていましたが、今回のと比べるとまだまだ全然ですね。
  • OIIIに関してはやはりDBPが圧勝です。西の空に傾くのと、トータル露光時間が短いにもかかわらず、淡いところが格段に出ています。
  • Hαに関しても相当淡いところが見え始めています。10時間くらい露光したらどうなるか楽しみです。
  • 恒星に関してはやはりCBPの方が有利でしょうか。

Dual系フィルターが便利なわけ

(2021/11/7 追記)

なぜDual系のフィルターが良いのか、この記事を書き終えた後改めて考えてみました。そもそもQBPなども含めて「ワンショットナローバンド」と呼ぶらしいです。



「ワンショット」の名の通り、一枚一枚ナローバンドフィルターを揃えなくて良いところが楽なところです。

特に広角で撮影したい場合に例えばフルサイズで撮影しようとすると、2インチクラスのナローバンドフィルター一枚一枚の値段は馬鹿になりません。一番の問題はフルサイズのモノクロカメラでしょうか。CMOSカメラでフルサイズのモノクロになってくると4-50万円コースです。

その一方、ワンショットの場合は、今回のDual BP Filterが2万円、一眼レフカメラが改造済みの6Dなら10万円程度です。この値段の差はかなりのものです。

一方、ワンショットが不利な点は、まずはカラーセンサーなので解像度が出ない点です。それでも広角で撮る場合はそこまで問題にならないでしょう。分解能が効くくらいのところで勝負する場合は、長焦点になってくると思うので、小さなセンサーサイズの方がむしろ適している場合も多く、無理に2インチクラスのフィルターを使う必要性も薄れてきます。

もう一つは、淡いところをどこまで出せるかです。これはより波長幅の狭いフィルターが選べる単独のナローの方が有利でしょう。光害地や月が明るい時にはこの差が大きくなってくるかと思います。ここのところに価値を見出すかが決め所でしょうか。それでもDual BP Filterは相当の場合において、強力にかなりの結果を出すことができて、かつ「安価で簡単」と言うところがポイントなのかと思います。

今の私だと、そこまで無理をして広角単体ナローの道に行くことは、よほどことがない限り無いのかと思います。今回この画角で、淡い青いところを出せたのは大きな成果で、かなり満足してます。

もっと狭い範囲で、例えば手持ちのASI294MM Proを使って、Dual BP Filterと単独のAOを比較するのは興味があります。純粋にDual BP Filterがどこまで迫れるかというのを見てみたいという意味です。いつか機会があればやってみたいと思います。


まとめ

DBPは色が限られてしまうので多少のっぺりするとはいえ、HαとOIIIが支配的な天体はDBPは圧倒的に強いです。一眼レフカメラで一発で撮れてしまうのも楽なところです。天体を選びますが、HαとOIIIが支配的な星雲ならかなり淡いところまで出せそうです。

できるならこれでSh2-240を狙ってみたい気がします。青いところが出るか?やるとしたらまた10時間コースですね。



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