ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:NINA

ゴールデンウィーク中に遠征(30-40分くらいなので近征?)してSCA260とASI294MM Proで撮影したカラス座にあるアンテナ銀河の画像処理についてです。CGX-Lを持ち出したのでかなり大変でしたが、ここで大型赤道儀で外でも撮影できる目処が立ちました。

撮影時の詳しいことはすでに記事にしていて、近場のいつもの場所、


それと、牛岳で2日分です。




画像処理

撮影は計3日間ですが、初日の撮影分は風が強すぎて使い物にならなく、結局牛岳の2日分だけを画像処理に回しました。

露光時間は10分でBaaderフィルターでのRGB撮影です。確かこの撮影の頃にフィルターホイールを1.25インチの8枚のものにしたはずなのですが、まだLは撮ってないです。処理に使った枚数はRGBそれぞれ15枚、9枚、9枚の計5時間30分です。

フラットは撮影から帰った日の5月6日に、夕方の自宅の外で鏡筒に白い袋を被せて撮影したのですが、これは結局うまく合わずに、以前馬頭星雲の時に撮影したフラットを使い回しました。袋を被せたフラット撮影はFS-60CBの頃にやっていて、うまくいってたのですが、大口径ではまだうまくいったことがありません。普段フラットは晴れ、もしくは曇りの日の部屋の中の白い壁で撮影しています。これまで撮影のたびに毎回撮影していましたが、今回の結果を見るとどうも使い回しができそうな雰囲気です。使いまわすためには大きなホコリが入るとおそらくダメになるので、接眼部に着いているカメラなどの機器の取り外しは出来る限り避けたいです。

画像処理はWBPPまでは5月のうちに終わっていて、3ヶ月も放っておいたことになります。その間何度か仕上までトライしたのですがいまいち気に入らなくて、結局前回のM104の決着がつくまで落ち着いて進めることができませんでした。昨日からやっと仕上げにはいりました。

これまでに何度かに分けてPixInsightでストレッチやマスク作りまで終わっていたので、昨日からの作業はほとんどPhotoshopです。何度かやり直してもアンテナ部分がかなり淡く、マスク処理は多少複雑になりました。そのためマスクを作り直すなどの作業は少しありましたが、なんとか炙り出すことはできたかと思います。

「NGC4038: アンテナ銀河」
Image196_pink_deconv4
  • 撮影日: 2022年5月4日21時14分-5日0時5分、5月5日21時14分-6日0時51分
  • 撮影場所: 富山県富山市牛岳
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間10分、R: 15枚、G: 9枚、B: 9枚の計33枚で総露光時間5時間30分
  • Dark: Gain 120、露光時間10分、29枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 RGB: 0.07秒、RGBそれぞれ64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

出来上がった画像を見ると、まだ恒星サイズが大きいのではと思いました。露光時間が長くて揺れが出たのかと。やはり10分露光でなく、5分露光位に抑えておいた方がいいかもしれません。

下のアンテナ部は先っぽの巻き巻きも含めてそこそこ出たと思います。それでも上のアンテナの先端の広がりがあるはずなのですが、そこまでははっきりとは写りませんでした。

あと銀河の細部がもう少し出てくれてもよかったかと思います。銀河の下部にアンテナ部との境があるように見えて、最初画像処理のせいかと思いましたが、どうもリアルにあるようです。

いつものAnnotationです。

Image196_pink_deconv4_Annotated

少し斜めになってしまっています。もうなにも記憶はありませんが、あまり真面目に回転角を合わせていなかったようです。


まとめ

牛岳という、少なくとも普段撮影する自宅よりは十分暗い場所で、結局2日にわたって5時間半のアンテナ銀河の撮影でしたが、それでもアンテナ部分はかなり淡かったです。マスクを駆使してやっと出ましたが、結構大変でした。特に銀河もう少し解像度が出るかと期待していましたが、シンチレーションと露光時間によるのかと思います。またいつか機会を見て撮影してみたいと思います。

さて、さらに溜まっている画像処理を進めることにします。

長く続いてきたSV405CCの評価も佳境になってきました。今回の記事は作例とともに、青ズレの謎に迫ります。さてさて、どこまで解明できるのか?


北アメリカ星雲再び

まずは作例です。今回の一連の記事のその2で出した北アメリカ星雲の再撮影です。

目的は2つ、
  • 前回の撮影は透明度がかなり悪く、階調がほとんど出なかったので、そのリベンジ。
  • 四隅の流れを改善しておきたい。
といったところです。本当はあと一つ、あわよくば青ズレを直す方法が見つかったらと思いましたが、この時点ではそれは叶いませんでした。

まず透明度ですが、今回の撮影では白鳥座の羽の先が見えるくらいよかったです。その影響はかなり大きく、見た目だけなら今回の3分露光の1枚で前回の全スタック分くらいの諧調が出ています。(アップロードの関係でサイズを各辺半分にしています。)

2022-07-02_00-00-47_NGC 7000_180.00s_g120_0.10c_0050_low

依然青ズレは出ていますが、これならインテグレーションしたら階調に関してはかなり期待できそうです。

もう一点、マルチフラットナーを使っているにもかかわらず、前回までバックフォーカス長を適当にとっていたため、SV405CCでもASI294MC PRoでも、いずれの撮影にも関わらず四隅の星像が流れまくりでした。

2022_07_01_01_39_49_M_20_180_00s_g120_0_10c_0034_mosaic
前回までの間違ったバックフォーカスでの四隅の一例。

タカハシの鏡筒はCanonやNikonといった、一眼レフカメラのバックフォーカス長に合わせてアダプターなどの製品を提供しています。今回は手持ちのタカハシ純正のCanon用の一眼レフカメラ用のアダプターを使ってマルチフラットナーのバックフォーカス長に合わせるようにしました。このアダプターに合わせてCMOSカメラを使う場合は、例えばZWOから出ているCMOSカメラとCanon EFマウントに変換するアダプターを使うこと、ほぼ何も考えることなくバックフォーカス長があった状態にしてくれるので楽です。

今回は、かなり前に買ったZWOのCanon EFマウントアダプターを使ってみました。現行モデルはフランジ長が固定ですが、初代のZWOのCanonマウントアダプターはフランジ長を1cm位調整できます。CBPを取り付けたくて、SV405CCに付属の1.1.25インチフィルター用のリングをセンサー部に取り付けたので、ZWOのCanonマウントアダプターは少し手前で固定されるはずです。そのため、マウントアダプターの長さは最短に調整しました。この状態で四隅を見てみると、

2022_07_02_00_00_47_NGC_7000_180_00s_g120_0_10c_0050_mosaic
のように四隅の流れはほぼ無くなりました。

その後、撮影前に少しだけ青ズレを直せないか試したのですが、この日は結局太刀打ちできず、透明度も良くて時間ももったいなかったので、そのまま撮影続行としました。結局天文薄明開始までの午前3時前まで3分露光で72枚撮影しました。前半は雲が通ることも多かったですが、後半はずっと快晴でした。使えたのは雲のない44枚の2時間12分ぶんでした。


画像処理

インテグレーション直後の画像をオートストレッチしたものです。

integration1

一部拡大するとわかりますが、依然青ズレがあります。

integration1_Preview01

もう一つ、今一度上の画像をクリックして拡大して見てもらいたいのですが、微恒星の中心が暗く抜けてしまっています。最初はピントが合っていなかったと思っていたのですが、実際にはかなりピントは気を付けて合わせているにもかかわらず、ほぼ毎回こうなります。また、そーなのかーさんがSV405CCで撮影した画像も同様に中心抜けになっているようなので、どうもこれはピンボケというよりは何か系統的に問題があるような気がしています。

恒星に関しては仕方ないとして、そのまま画像処理を進めます。

途中やはり恒星部分で苦労しました。一番大変だったのは、StarNetのバックグラウンドと恒星部の分離の時に、色ズレのせいかハロの部分がバックグラウンドと認識されてしまい、ここを誤魔化すのが大変で、最後まで不満が残ってしまいました。

Image24_Linear_PCC_ASx2_MS_HT_bg

パッと見はわかりませんが、B画像を抽出してみると同様のハロが他にもたくさん残っていて、あぶり出しとともにたくさんのハロが目立ってきます。

結果


Image24_Linear_PCC_ASx2_MS_HT3_cut_tw
  • 撮影日: 2022年7月2日0時38分-2時53分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI FS-60CB+マルチフラットナー(f370mm)
  • フィルター: SIGHTRON CBP(Comet BandPass filter)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: SVBONY SV405CC (0℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイド
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分x44枚で総露光時間2時間12分
  • Dark: Gain 120、露光時間3分、128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120、露光時間 0.3秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

淡いところの階調もかなり出ています。前回の透明度の悪い時より相当良くなっています。庭撮りでここまで出るならまあ満足でしょう。あとはやはり恒星です。

普通ならここでおしまいなのですが、もう少し続きます。ここから大きな進展です


青ズレ検証その後

上の北アメリカ星雲の撮影のあと、もう少し青ズレに関して何かわからないかと思い、後日いろいろ試してみました。ただし雲が多く出ていたので、その隙間でのテストであまり時間をかけることができませんでした。

とりあえず、SharpCapで3分露光を何ショットか撮影しました。最初のショットがやはりこれまでのように暗くなるのが再現され、やはりドライバーレベルで何かやっているのかと思います。この時、雲の動きが速く、雲間が貴重なためにすぐにNINAに移りました(ここで焦っていたのが後で効いてきます)。

NINAでは少し雲が薄くなってきて余裕も出てきたので、じっくり青ズレを見ながら、ASI294MC Proとも交換しながら、何が問題かじっくりみることができました。

一つ疑っていたことがあって、オフセットが40と小さすぎることが原因ではないかということです。SV405CCの場合、オフセットは最大255まで設定でき、今回はわずか40と、最大の6分の1くらいとしています。ちなみにASI294MC Proの場合は最大80で半分の40としています。前回のPedestalの記事であったように、オフセットが低くて輝度の低いところが問題を起こしているのかと思ったわけです。でもオフセットが40の場合でも、120にした場合でも、青ズレに関してはなんら違いが見られませんでした。なので、オフセットは無関係かと思います。

結局、このとき画面を見ながら出した結論は、ASI294MC Proでは何をどうやっても(ゲインやオフセット、露光時間など)青ズレのようなものは出ない、その一方SV405CCでは何をどうやっても(こちらおゲインやオフセット、露光時間など)青ズレを消すことはできない。ということでした。

その後、改めてSV405CCのRAW画像を、RGBで分離して見たり、4つのセグメントごとに見たりしました。
  • SV405CCのBayer パターンがなぜかGRBGであること。ASI294MC ProはRGGB。
  • でもなぜか星雲の濃さから判断するとCF0:G1, CF1:B, CF2:R, CF3:G1のように見えること。
  • CF2の恒星中心部近くに極端に暗くなっている欠損部が多いこと。輝度は周りの1%程度であるが0でないこと。
  • CF1に星の中心部近くに輝度が完全に0のところがあること。CF2ほど欠損の数は多くないこと。
などがわかりました。そーなのかーさんも同様のレポートをしていたので、再現性もあるようです。

結局、この時点ではどうすることもできなくて諦めて、次はNINAで触れないパラメータをいじってみるのかなと思っていました。というのも、CMOSカメラはどこかに設定が保存されていて、例えばSharpCapで触った設定が、FireCaptureを立ち上げるとそのまま引き継がれるというようなことがあるからです。


なんと、原因判明!

そんなことを考えながら昨晩、上の北アメリカ星雲の画像処理を終えて、次回テストの準備をしようと思い、「そういえばSharpCapでSV405CCで撮影した画像があったなあ」と何の気無しに開いてみたら、どこをどう見ても青ズレが見えません。

Capture_00001_20_47_33_RGB_VNG
SV405CCでSharpCapで撮影。青ズレは皆無です。

2022_07_04_21_28_47_NGC_7000_30_00s_g120_10_00c_0084
上の画像の直後にSV405CCでNINAで撮影。明らかに青ズレが出ています。

わかりやすいように拡大して比較して見ます。
ShapCap_NINA_SV405CC
左がSharpCap+SV405CC、右がNINA+SV405CCです。

明らかに違いがわかると思います。ただし、SharpCapでの露光は180秒、NINAでの露光は30秒です。露光時間が逆だったらまだ疑いの余地もありますが、NINAでわずか30秒で青ズレが出てしまっているので、結論は覆らないでしょう。これは明らかにどうやっても青ズレが消えなかったNINAとは、状況が全く違います。

カメラのドライバーはSharpCapでもNINAでも同じ「SVBCameraSDK.dll」を使っています。一応念のために改めて確認しましたが、SVBONYで配布されている1.7.3のカメラドライバーを普通にインストールしたあと、SharpCapは最新版を改めてインストールすると、SVBCameraSDK.dllに置き換わっていました。その一方NINAでは現在の最新版でも、カメラドライバーは最新のものに自動的に置き換わらず
、その前に使っていた1.7.2のままだったので、マニュアルでSharpCapにインストールされていたSVBCameraSDK.dllをNINAの方にコピペして、改めてNINAを立ち上げて1.7.3になったことを確認しています。

ここまでの検証が正しければ、最新版のNINAでの読み出し方の問題ということになります。


よく考えると、SharpCapで撮影した時は雲が流れてたので、時間がなくあせっていて青ズレをきちんと画面で確認していませんでした。そういえばSharpCapで電視観望した時もSV40CCで青ズレが出なくて、彩度もSV405CCとASI294MCで変わりがなかったことを改めて思い出しました。この時は露光時間が短かったからかと思っていましたが、どうもNINAとSharpCapの違いの方が濃厚そうです。

今のところCMOSカメラを使ってのDSOの撮影はShaprCapではディザーガイドがやりにくいなど、NINAやAPTなどに頼らざるを得ません。SV405CCはAPTは対応していないので、実際はほぼNINA一択になるかと思います。NINAでこの青ズレがある状態は致命的です。

というわけで、SVBONYさんの方に今回の結果を報告し、開発陣に連絡してもらうように頼みました。これでキチンとNINAでも対応してくれるように手配してもらえれば、青ズレ問題はとりあえず解決することになりそうです。

今の段階であとやれることは、次に晴れた時に改めてSV405CCを使ってSharpCapで撮影、画像処理までしてみて、(ディザーはやりにくいのでパスするかもしれませんが)青ズレが出ない仕上げ画像まで作ってみることでしょうか。


まとめ

ここまでの結果が正しいのなら、問題はハードではなくてソフトで解決できるということになります。ここが切り分けられるだけでも、かなりSV405CCの未来は明るくなります。その際、彩度がこれまで通り出なくなるのかちょっと気になりますが、まあ優先度としては次の話でしょう。

SV405CCの初期の評価、長かったですがやっと解決につながる道を見つけることができました。やっとあぷらなーとさんにお渡しすることができそうですが、どうもあぷらなーとさん骨折で入院しいるとかで心配です。焦らせてしまっても申し訳ないので、活動できるようになってから渡るようにしたいと思います。


ASI294MMで撮影後、画像処理をしていたのですが、一つトラブルがあったのでメモがてら記述しておきます。


ASI224MC Proでの天体撮影

NINAでライトフレーム
NINAを使い普通に天体を撮影しました。ASI294MMはセンサーにIMX492を使っていて、bin1だと8288x5644とかなりの高解像度になります。DSOだとそこまでいらないので、本来のASI294MC(IMX294使用)と同じ4144x2822になるようにNINA上でbin2モードでライトフレームを撮影しました。

SharpCapで補正用フレーム
画像処理用にバイアスフレーム、ダークフレーム、フラットフレーム、フラットダークフレームを撮影する必要があるのですが、画面のレスポンスやヒストグラムの見やすさなどから、SharpCapを使って、これらの後処理用のファイルを撮影しました。その時は解像度を 4144x2822にするために「11 megapixel」の方を選んでbin1を選びました。高解像度の場合には「47 megapixel」なのですが、この場合bin2は選べないようなので、4144x2822にするには「11 megapixelでbin1」が唯一の選択肢になります。


WBPPできない⁉︎

撮影自体はいいのですが、これらを使ってPixInsightで画像処理をしようとするとはまります。下の画像のように、ライトフレームに警告マークが入っていて、バイアス、ダーク、フラットどれも補正してくれにというのです。
binning2x2
最初何が悪いのかわからなかったのですが、色々触っているとどうもビニングの設定が、NINAで撮影したライトフレームは2x2、その他SharpCapで撮影したフレームは1x1となっているのが問題だとわかってきました。でもどちらも画素数は4144x2822です。


解決法

一番簡単な方法は、NINAで補正フレームをライトと同条件にして、全て取り直すことです。でもフラットフレームは撮り直すと合わないことがあるので、できればNINAでの撮り直しは避けたいです。

ここまで撮影してきたファイルをなんとか使うことはできないのでしょうか?

まずわかったのは、このビニング情報はFITSファイルのヘッダに書かれているテキスト情報をただ読んでいるだけなので、例えばライトフレームのヘッダの2x2を1x1に書き換えてやれば、PixInsight上で各種補正をしてくれることはわかりました。


本当にこの方法でいいの?

そうすると次は、そもそもNINAで2x2ビニングと、SharpCapの11 megapixelで1x1ビニングは同じ効果なのか?ソフトウェアビニングが入る余地はないのか?などが疑問になってきました。

海外のページをあたっていくと、特にSharpCapで初期にASI294MMに対応したときに結構な時間をかけてZWOともコンタクトを取りながら決めていった過程を辿ることができました。おそらくは多分混乱のないようにわかりやすくするために高解像度でビニングのない47 megapixelモードと、低解像度で14bitにしたハードウェアビンニングの11 megapixelモードと、あからさまに切り分けたのかと思います。おそらくこの切り分け方が、本来のASI294MMの294の名を冠したことから考えると、正しいのかと思います。

もう一つ重要なことは、ASI294MM Prp発売当初、ここら辺のことで混乱した人が何人もいたようなのですが、先人達の色々な検証の結果一つ言えることは「どんなソフトでも2x2のビニングを入れると確実にハードウェアビニングが入る」ということのようです。なので、NINAで単にbin2を選んだとしても、ソフトウェアビニングになっていることはないということが分かります。

実際のところは自分で検証しない限りは確実ではないですが、調べている限りこの情報は正しいようなので、画像処理を進めるためにもとりあえず1x1と2x2で名前は違うけれど、共にハードウェアビンニングが適用され、4144x2822の画像ができていると思うことにします。


実際のヘッダー情報の書き換え

となると、あとはどうやってFITSヘッダーを書き換えるかです。一枚一枚書き換えていってもいいのですが、ここにあるキーワードの値を書き換える、PixInsight上で動くスクリプトが公開されています。



今回はこれを利用しました。実際にはXBINNING、YBINNINGをそれぞれ書き換える必要があるため、2回走らせます。注意はソースの途中の拡張子が「.fit」になっているてため、「.fits」にしてやることと、最初の方のoldKeywordValueなどの値が「2.」とか小数点まで入れてやらないと動かない時があることくらいです。


WBPPで処理再開

これでライトフレームを1x1ビニングと騙してやることで、下のようにうまくPixInsightのWBPPを走らせ、
binning2x2_mod
きちんと各種補正も適用することができました。

さて、やっとこれでM27の画像処理を続けられます。

VISAC復帰第2段です。前回のNGC4216に続き、今回はM104ソンブレロ銀河。




今回のターゲット

M104にした理由ですが、あまりこだわりはなくフォーサーズのASI294MCの画角に合うところを探したらM104だったといっても良いかもしれません。M104は意外に大きくて、VISACの1800mmとフォーサーズでもそこそこの大きさになります。自宅から見てくらい東や南の空でこの画角にちょうど良い大きさの銀河が意外に少ないのです。

でもM104って、南のかなり高度がかなり低い位置にいるんですよね。撮影期間が意外に限られているので、ちょうどよかったかもしれません。


撮影

セットアップは前回のNGC4216と同じなので、ピント合わせくらいでほとんどいじるところはありません。露光時間などもNGC4216の時と同じゲイン120で5分露光で撮影しています。

22時頃から撮影を始めたのですが、平日なので撮影が始まったら放っておいて寝てしまいました。あとからチェックしたら、使えるのは50枚だったので、5分 x 50枚 = 250分で、合計4時間10分となります。


NINAで自動で天頂越え


そういえば前回から撮影ソフトにNINAを使っています。最近はCMOSカメラでの撮影は課金までしたAPTから完全にフリーのNINAに移りつつあります。構図決めや導入時のプレートソルブもうまくいくので非常に快適です。LiveViewでのオートストレッチも便利で、短時間の露光でターゲット天体が見えるので、一決めも正確です。

最近の撮影時間は結構長いので、どうしても天頂越えをしてしまいます。前回の撮影からNINAの赤道儀の自動反転機能を使い始めています。ケーブルの絡みが心配だったので、最初だけはその場にいて見ていましたが、全く問題なさそうです。最近はケーブルの固定位置を赤道儀の赤緯体の可動部付近だけ一箇所にしていて、他は余裕があるようにかなり緩めています。こうすることで、最終稼働部である赤緯体のモーター位置から、鏡筒やカメラまでのケーブルの長さが固定されるのでトラブルが少ないです。赤緯体からバッテリーやStick PCまでのケーブルはあえて固定せず、余裕があるケーブル長さでプラプラしています。赤経体が回転する時にケーブルが引っかからないか心配なのですが、赤経体がホームポジションにある時に北側から見て左右対象になるようにStick PC、バッテリーなどを配置し、(赤道儀の電源口が片側に寄っているので全部は無理なのですが)ケーブルもできるだけ左右均等になるように配置します。そうすると、たとえ赤経体が反転しても、反転前後どちらの場合もケーブルもバランスよく配置されるので、スムーズに反転します。



画像処理と結果

バイアス、ダーク、フラット、フラットダークも前回のNGC4612の時の使い回しです。セットアップが同じで冷却カメラで、カメラの回転角とかを触っていないと、これらのファイルがそのまま使えるので、画像処理が楽になります。

銀河はまだ画像処理に慣れていないのか、少し迷走しています。あまりシンチレーションが良くなかったこともあると思いますが、焦点距離が長いこともあり、星像がどうしてもボタっとしてしまいます。最初はArcsinhStretchでストレッチしたのですが、色は出てもすごく眠い恒星となったので、結局STFとHistgramTransformationのみでストレッチしました。なので恒星の色があまり出ていません。それでもまだ鈍い星像には不満で、ピントが合っていなかったのか、5分露光で長すぎたのか、赤外の収差で大きくなっているのか、まだまだ改善の余地がありそうです。


結果

結果です。

「M104: ソンブレロ銀河」
masterLight_ABE_DBE_PCC_HT
  • 撮影日: 2021年4月7日22時4分-4月8日3時28分
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 鏡筒: Vixen VC200L
  • フィルター: なし
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO ASI294MC Pro、-10℃
  • ガイド: f120mmガイド鏡 + ASI120MM mini、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、gain120、露光時間300秒x50枚 = 4時間10分、ダーク128枚(gain120、露光300秒、最適化なし)、フラット256枚(gain120、露光40ミリ秒)、フラットダーク256枚(gain120、露光40ミリ秒)
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC、Sharpen AI

恒例のAnnotationです。

masterLight_ABE_DBE_PCC_HT_Annotated

今回も水平がバッチリ決まっていて気持ちいいです。


まとめ

まだまだ反省点だらけです。星像をキリッとさせるためにまだできることがたくさんありそうです。ピントはEAFを導入した方がいいかもしれません。VISACの星像がまだ安定しないので、ピントが合ってないのか光軸がまだずれているのか迷う時がよくあります。撮影に関しても、露光時間が長すぎるのでラッキーイメージが効果的かと思います。ノーフィルターの方向性は間違っていないと多いますが、どうもIRで星像が肥大化している可能性があるので、UV/IRフィルターは入れた方がいいのかもしれません。それとは別に、最近赤外が流行っているので分解能目的でIRだけを撮るのはありかもしれません。

次回は鏡筒自身の強度を上げるために、VISACを改造します。でもこれも大きな落とし穴があったのでした。


平日ですが、晴れていたので自宅で朝まで放置撮影です。ターゲットは迷いましたが三角座銀河M33。TSA-120とASI294MC Proで狙います。本当はTSA-120と6Dで試したかったのですが、少し面積が大きすぎます。でもこの間のM31がFC-76と6Dでうまくいったので、銀河をもう少し試したくて、より焦点距離が長く、よりセンサー面積が小さい方向に行きます。


撮影

夕方過ぎの暗くなったくらいではまだM33の高度はそこまで高くないので、準備はのんびり。機材を設置して、Stick PCでSharpCapでとるとどうも通信が不安定になります。Stick PCはネットワークに繋がってないとリモートデスクトップが成り立たないので、画面を見ることができず、何が怒っているかも分からなくなります。結局全くつながらなくなってしまったので、何が起きているのか見るのに、少し前に用意したモニターアダプターを使ってみます。どうやら再起動されたみたいで、アダプターを準備している間にネットワークも復帰していました。画面を見ながら、同時にpingで安定性を見ます。

IMG_1134

どうもCPUの負荷によって、通信が遅くなったり、止まったりするようです。その上で過度の負荷がかかると完全に止まってPCが再起動されるようです。

ここからは推測ですが、電源容量が足りてないのではないかと。CPU負荷が大きいと電力が足りなくて、Wi-Fiまで電力が回りにくくなり通信速度が落ち、さらにひどいとPC自身が電力不足で止まってしまいPCが再起動されるのかと思います。現在はLess is moreのバッテリーを使っていて安定だと思っていたのですが、電力的にはよくても電圧的には決して高いわけではないので、電圧不足になった可能性があるかと思っています。むしろ普通のUSBバッテリーに昇圧アダプターを使った方が安定なのかもしれません。

SharpCapの極軸合わせはかなり計算負荷が高く、これが終わってしまえば今回はこれ以上負荷の大きいことはしなかったので、バッテリーはそのままとしました。今回の撮影はNINAとPHD2を使ったのですが、これくらいの負担なら全く問題なかったです。昇圧の試験は次回以降に試してみます。

あとSharpCapですが、Stick PCのWindowsが64bitでももしうまく動かなければ32bitにしろと警告が出ます。実際、極軸合わせは警告ではなく動かなかったので、これ以降は32bit版で試すことにしています。


撮影状況

今回の課題は恒星のサチリと風での揺れでした。最初の300秒の露光時間のものはゲイン120で2時間くらい撮影したのですが、どうも明るすぎて恒星中心がサチっているようなのと、途中から風が出てきたので長時間露光だと星像が大きくなるようなのです。

途中でカメラがきちんとNINAで認識されていないみたいで、撮影は進んでいるのにファイルが生成されないというトラブルがありました。この時点で、ゲインはそのままの120で、露光時間を180秒にしました。
露光時間を短くするのは星像肥大にも有利かと思ったからです。同時に温度順応でピントがズレたことも疑い合わせ直したのですが、ピントは問題なかったという判断でした。でもこのピント確認自体がどうも悪さをしたようです。

朝になって見たらそれでも180秒露光のものも中心部がまだ少しサチっていました。それよりも途中から雲が出てきたみたいで、撮影した180秒のものの半分以上は無駄になってしまっていました。結局露光時間が不足しそうなので、300秒露光の2時間分と180秒露光の2時間分の計4時間分を使うことにしました。

PixInsightでは露光時間が違ったりすると別処理でスタックするので、ダークフレームも2種類用意します。フラットフレームはゲインを120と一致させたので一種類で済みました。


TSA-120でのフラットフレーム撮影

少しフラットについて書いておきます。TSA-120ではこれまでフラット補正がうまくいったことがありませんでした。撮影したフラットフレームが全然まともでないのです。FS-60とFC-76で障子越しの自然光でうまくいっているのですが、我が家の障子は枠が狭くてTSA-120の口径をカバーする面積の障子面がありません。一方、スーパーの袋で薄明後の空でフラットフレームを撮影してうまくいっている方もいるとのことなので、今回はスーパーの袋を二重にして輪ゴムでTSA-120に取り付け、太陽光が入っている部屋の日陰部分の白い壁を映すことにしました。

masterFlat-BINNING_1-FILTER_NoFilter

できたフラット画像は見た目はそれほど悪くありませんが、左の方に少し段差のようなものがあります。ビニール袋の取り付け方か、壁の光の当たり具合かと思って色々試しましたが、特に変化がないのでこれがTSA-120の特性かと思うことにしました。かなり炙り出しているので、それで目立っただけなのかもしれません。それよりも変化が大きかったのが、太陽に少しでも雲がかかった時で、光の光量が大きく変わることです。炙り出して見ているとすごい変化に見えるので、雲が完全に無い時を狙いました。でもこれはスタックするので、実際に光量が多少変化してもほとんど影響がないと思います。

フラット補正をした結果を見る限りは、特に問題なさそうなのでしばらくはこれでいくと思います。


画像処理

処理はいつも通りPIのWeightedBatchProcessing (WBP)で。出来上がりのライトフレームは、露光時間の違いにより300秒と180秒の2種類できるのですが、よく見ると300秒の方が細部が出ていてノイジー、180秒の方が細部がなまっているけど滑らかと、ちょっと予測と逆の結果となりました。後半のほうが風の影響が大きかったか、もしくはピント確認した時に合わせ直しが甘かったのが原因かと思います。

最初300秒のと180秒のをPIのImageIntegrationで合わせたもの(3枚以下だと処理してくれないので、それぞれコピーして計4枚をスタック)を処理したのですが、改めて4時間分合わせたものと300秒単体の2時間分を比べてみると、合わせたものの細部がどうしても鈍ってしまっています。泣く泣く2時間分を切り捨て、前半の300秒露光の2時間分だけで処理することにしました。
  • なかなか納得がいかず、何度もやり直して十日くらい過ぎてしまいました。いろいろ問題点はあります。露光時間が光害地にもかかわらず2時間と短いので、根本的にノイジー。
  • 明るい恒星の中心部がサチっているのに後から気付き、残ってしまっています。短時間露光を取り直してHDR合成しようかとも思いましたが、露光時間不足が決定的でそこまでやる価値はないと思い、今回は諦めました。
  • もう少し細部が出そうな気もしますが、ノイズを考えるとここら辺が限界かもしれません。

結果です。

masterLight_180_integration_DBE_AS_hakiOK_all4
  • 撮影日: 2020年11月12日21時1分-13日22時55分
  • 撮影場所: 富山市自宅
  • 鏡筒: タカハシ TSA-120 (口径120mm, 焦点距離900mm) + 35マルチフラットナー(x0.98)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • センサー: ZWO ASI294MC Pro (-15℃) 
  • ガイド: PHD2 + f=120mmガイド鏡 + ASI290MMによるディザリング
  • 撮影: N.I.N.A、Gain 120、露光時間: 300秒 x 21枚 = 1時間45分
  • 画像処理: bias 100枚、dark 100枚、flat(12.5ms) 100枚、flatdark 100枚を使いPixInsightでスタック、Photoshop CC, DeNoiseで仕上げ

まとめ

風の影響が大きく、星像が肥大したことがそもそもの問題でした。

口径が大きくなるとより明るく撮影できます。その一方、明るくて恒星がサチってしまう恐れがあります。中心をサチらせても淡いところを出すのか、サチるのは絶対に避けるべきなのか、HDRを前提に短時間露光も別撮りするのか、ここら辺はこれから検討すべき課題です。

星像肥大でピンぼけを疑って、その後のピントが合わせきれなくて、2時間分の画像を無駄にしてしまいました。そのため露光時間不足から、画像処理も少し諦めた感があります。M31アンドロメダ銀河は自宅撮影でも処理に余裕がありました。露光時間が4時間半と長かったこともありますが、やはり根本的に明るい銀河だったからだと思います。M31で気を良くして撮影したM33ですが、M31に比べたらやはりM33は淡いです。と言っても銀河の中では大型な部類なのは言うまでもありません。自宅撮影ではやはりここら辺が限界なのでしょうか?露光時間をもっと長くしてリベンジしたい気もまだあります。

あ、それでも前回、3年近く前のM33が縮緬ノイズで救いようがなかったので、自己ベストは更新です。

あと2つ画像処理が残ってます。太陽とかすぐに記事に書けるものと、どんどん先送りになっているネタの差が激しいです。残ってる画像処理の一つは夏の天の川。もうとっくに季節が過ぎ去ってしまいました。あせらずに頑張って、そのうちやります。


CBPの作例の最後になります。みずがめ座のらせん星雲です。撮影日が8月21日でのんびり画像処理していたので、もうかなりのことを忘れてしまっています。下の文書の撮影時の様子は、撮影当日か次の日に書き留めておいたことです。やっと記事として日の目を見ます。

一晩で2対象の撮影

秋の星座なので、そこそこ高度が上がってくるのが夜少し遅くなってからです。なので前半は前回示した三日月星雲を撮影してました。



らせん星雲がのぼる頃には三日月星雲の撮影をやめて、らせん星雲へと移りました。

撮影時のStick PCのトラブル

三日月星雲のときは調子良かったStick PCでの撮影ですが、らせん星雲に移ろうと準備をしているときにStick PC自身が何度か落ちました。特に、ShaprCapを使う時が多かったような気がします。このStick PCの弱点の一つなのですが、ファン側を床などにくっつけてしまってしばらく運用すると、温度が上がって確実に落ちるようです。また、極度に暑い夏はSharpCapとかでの計算量が増えると反応が無くなってしまうことがあるようです。ただしファンは回りっぱなしなので、外見を見ただけではわかりません。

今回は外での撮影だったので、直につなぐモニターを用意していなくて、リモートデスクトップで見ていて反応が無くなったということしか分からかったので、最後どうやって落ちたのかよくわかっていません。ネットワークトラブルでただ単にリモートデスクトップが繋がらなくなって落ちたと勘違いした可能性ももしかしたらあり得ます。特に、Stick PCをモニターしているクライアントの方のWi-Fiを弱い方につなげていたことが後でわかったので、そのせいの可能性があります。

今回一番の失敗が、夜中に赤道儀を反転してから撮影を初めて放って寝てしまって、朝確認したら午前2時で撮影ファイルの生成止まっていたことです。1時間半ぶんくらいの撮影時間を無駄にしてしまいました。確認したら撮影用に走らせておいたソフトも全部立ち上がっていなかったので、どうもPCが再起動されたような形跡があります。これがトラブルで止まったのか、アップデートとかで再起動されたのかは分かりません。そもそのアップデートはその日のうちに事前にしておいたので、そんなに連続であることはないと思うのですが。

-> その後記録を見たら、撮影をしたその日(夜中)に幾つかの「品質更新プログラム」というのが3つインストールされていました。これが再起動を要請したかどうかまで分かりませんでしたが、どうやらこれが怪しいです。アクティブ時間を撮影時の夜から明け方にしておく方がいいですね。


画像処理と結果

最初、ダークを昔撮ったもので使いまわして処理しました。露光時間は3分で同じですが、温度が0度のライトフレームに-10℃のダークフレーム、ゲインが220のライトフレームに180のダークフレームを使ってしまってます。これだとものの見事にアンプグローが出てしまいました。気を取り直して露光時間、ゲイン、温度全部合わせて取り直して改めて処理。きちんとアンプグローも消えてくれました。やっぱり横着はダメですね。バイアスはあり、フラットは無しです。バイアスはダーク内に含まれているはずなのでなしでもいいのかもしれません。フラットは代わりにABEを使い、StarNetで恒星と分離してから、星雲側の背景にのみ、細かいところを補正するために再度DBEを使いました。そこそこ炙り出していることになって、ノイズが目立ち始めてるので、これ以上を求める場合は露光時間を増やすしか改善していかないと思います。

「らせん星雲」
masterLight_ABE_ABE_DBE_ALL3

  • 撮影日: 2020年8月21日午前0時2分-1時29分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi TSA-120 + 35フラットナー + CBPフィルター
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO ASI294MC Pro、温度0℃
  • ガイド: PHD2 + f=120mmガイド鏡 + ASI290MMによるディザリング
  • 撮影: NINA、ゲイン220、露光時間180秒x32枚 = 1時間36分  
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

期待していた、瞳の虹彩のような線はあまり出なかったです。背景が少し荒くなっています。これらは露光時間が1時間半と短かったせいでしょう。

今回は赤と青とかだけでなく、惑星状星雲らしいカラフルな天体です。CBPで撮影しているので、色がどこまで正しいかがよくわかりません。そもそも色情報は欠けてしまっている可能性が高いので、それらしい色に仕上げているだけです。そこに根拠はありませんが、大きくいじるような必要は全然なかったので、CBPの色バランスはそれほど悪いわけではないかと思います。


CBPフィルター検証のまとめ

これまで、CBPで三裂星雲の一部網状星雲北アメリカとペリカン星雲三日月星雲、らせん星雲と

あとやり残したのは、M42すばると、アンタレス付近とかでしょうか。多分これらはCBPでも難しいと思います。暗い空に勝るものはなくて、これらを自宅から満足いくくらい出すのがもっと大きな目標ですが、焦らずにゆっくりやっていこうと思います。

今回でCBPの初期評価はおしまいです。今回の検証を通して把握できたのは以下のようなことです。
  • QBPほどではないにしろ、十分な光害防止効果がある(QBPの1.3倍くらいしか背景が明るくならない)
  • 青色もかなり出る(紫外の方まで透過して、かつCMOSカメラも感度がある)
  • 赤外起因のハロも防げる
  • 色バランスがあまり崩れない
これまで評価の高かったQBPにも勝るほどメリットが多いです。はっきり言って、十分すぎるほど使えることがよくわかったので、今後も完全に実戦投入決定です。


 

みなさんこんにちは、ほしぞloveログのSamです。最近「ほしぞloveさん」とか呼ばれたりしますが、ハンドルネームは「Sam」です。「ほしぞloveログ」と書いて星空ブログ(ほしぞらぶろぐ)と読みます。

前回
前々々回の記事で、先週金曜日にペルセウス座流星群と天の川の撮影をしてたと書きましたが、本当は今回書く記事が一番試したいことでした。少し時間がかかってしまいましたが、やっと画像処理も終わったのでまとめておきます。

QBPのこれまでのまとめ

これまで好んで使っていた、サイトロンのQBP(Quad Band Pass)はHα、SII、Hβ、OIIIの4つ(Quad)の基線を通すためこの名前がついています。このフィルターかなり便利で、自宅のような光害地でも、多少の月明かりがあっても、星雲を相当炙り出すことができます。

QBPの作例については以下をご覧ください。

















さらになんと、私がTwitterで電視観望でも使いたいと呟いたリクエストで、QBPのアメリカンサイズまで作ってくれ、もうサイトロンさんには感謝しても仕切れないくらいです。



私にとって、QBPは撮影にも電視観望にも、すでに無くてはならないフィルターになっています。


QBPの不満

このQBP、ものすごく便利なのですが、実は2つ不満があります。
  1. 一つは、最初の方の作例を見てもらうとわかるのですが、普通に赤を出そうとするとどうしても朱色がかった赤になってしまうのです。他の方の作例を見ても同様の傾向が多いので、これはQBPの特徴の一つなのかと思います。でもこれは何度か画像処理をしていて、青を少し強調してやると赤の色バランスがよくなることに気づきました。QBPの特性として、どうも相対的に青色が弱く写ってしまうようです。最後の方のバラ星雲なんかは適度に補正してあるので、初期の頃とだいぶ色合いが違うのがわかるかと思います。
  2. もう一つは記事の中で時々書いているのですが、恒星の色、特にオレンジとか緑とかが出ないのです。これは結局解決に至らず、適当に色が抜けたような状態でごまかしています。なので、どうしても色を出したい場合はQBPをあえて使わない時もありました。
そもそもQBPは青が強いM45プレアデス星団や、恒星の色に近い銀河はあまりきちんとした色が出ないようで、今のところ主にHαを出したい時にQBPをよく使っています。

そうは言っても、QBPはこの手のフィルターにしては比較的波長帯の制限をゆるくしてあるために、色バランスが崩れにくいというのが大方の評判で、私もその意見に賛成です。ただ、上記のような不満もあるのも事実なので、これをなんとか改善できないかとずっと思っていました。


CBPの検証開始

今回やったことはサイトロンから少し前に発売されたCBP(Comet Band Pass)フィルターの検証です。

 

一方、今回使ってみたCBPは彗星用に開発されたフィルターということもあり、青や緑の波長帯を通すとのことで、QBPの弱点であった、赤以外の色が意外にバランスよくでるのではという期待があります。ただ、星雲用に開発されたわけではないので、これは自分で試してみないとよくわからないでしょう。

というわけで、毎度のこと前置きが長かったですが、やっと検証の開始です。

今回のターゲット天体は青色を適度に含むM20、三裂星雲です。機材はTSA-120に35フラットナーをつけ、ASI294MC Proで撮影をします。もう8月後半なので、M20は宵のうちから高い位置にあり、しかもこの日はちょうど下弦の月のころなので、M20が沈むくらいまでは月は出てきません。さらに前回の記事でも書いたとおり、この場所は天の川が結構はっきり見える(2つに分かれているのは十分に分かります)場所なので、光害の影響があまりないところです。条件としてはいいのですが、光害のカットという意味での検証にはならないということは注意が必要です。

今回はM20を
  1. フィルター無し
  2. 48mmのCBPを取り付ける
  3. 48mmのQBPを取り付ける
という3つのケースで撮影して比較したいと思います。時間的にはこの順番で、それぞれ上から17枚、9枚、6枚撮影しました。枚数が違うのは、だんだん時間が無くなってきて焦ってきたからです。同じ日で撮った方が公平になると思ったので時間が限られてしまいました。ここら辺はご容赦ください。

高度から考えると、時間と共に位置が下がってくるので、1のフィルター無しが一番有利で、順にCBP、QBPとなるはずで、QBPの7枚目以降はまだそこそこ高度はあったのですが、背の高い木が少し入ってしまったので、そういったうまく撮れていないのは省いた枚数になります。


結果の比較

今回非常に面白い結果が得られたので、早速撮影された画像を見て見てみましょう。画像はどの場合も、1枚のRAWファイル(fits形式)をPixInsightでDebayerして、STFでオートストレッチをかけただけです。画角が同じなので、オートストレッチが公平に働いて、画像の質によって星雲などのコントラストがそのまま表されてきます。

1. フィルター無し

まずはフィルター無しのノーマルです。
masterLight-BINNING_1-FILTER_NoFilter-EXPTIME_180
フィルターなしの場合。

特に色をあぶり出したりしているわけではないので、のっぺりした色合いになっています。それでも暗いところなのでM20の赤と青はそこそこ出ています。


2. QBP

先にQBPを見せます。
masterLight-BINNING_1-FILTER_NoFilter-EXPTIME_180
QBPフィルターを適用。

QBPの実力通り、フィルター無しに比べて赤が相当強調されています。実際に画像をスタックして画像処理までして比較してもみたのですが、一枚でこれだけ差が出ていると、スタックしても結果に大きな違いが出ます。フィルターなしの方が枚数が多いので当然ノイズは少ないですが、淡いところの赤を出そうと思っても最初から色が出ていないものは後から処理してもなかなか出てきません。枚数が少ないQBPの方が遥かに簡単に色が出ます。


3. CBP

ではお待ちかね、最後はCBPです。

masterLight-BINNING_1-FILTER_NoFilter-EXPTIME_180
CBPフィルターを適用。

明らかに青がノーマルの時よりはもちろん、QBPの時よりも強調されています。赤はフィルターなしの場合より濃くなっていますが、QBPよりは若干薄いでしょうか。


分かりやすいように並べてみます。

com1

左から、フィルターなし、QBP、CBPの順です。CBPで青が明らかによく出ているのがわかるかと思います。赤い三裂(4裂?)の周り、特に上部や下部の青なんかは違いが顕著です。

赤はやはりQBPが一番出ていますが、ノーマルと比べるとすでに朱色がかっているのがわかるかと思います。CBPは赤に関してはある意味ノーマルとQBPの中間で、まだそこまで朱色がかっていないです。

これは期待通りというか、期待以上の結果です。


光害に対する効果

QBPよりもCBPの方が波長の透過域が増えるので、光害に対しての効果は減ると推測されます。今回は光害の影響があまりない場所での撮影だったので効果が分かりにくいため、あくまで暫定的ですが少しだけ評価してみます。

PixInsightのSTFのオートストレッチは、画像の持っている明るさによってストレッチ(あぶり出し)のパラメータを決めます。撮影したRAWファイルを何倍くらい明るくするかは、(同じ画角で撮った場合)光害に依るという意味です。光外の少ない暗い画像ほど大きな倍率をとって明るくするはずですし、光害が多く明るく写った画像ほど倍率は小さくなるはずです。出来上がった画像の(背景の)明るさはあまり変わらなくなります。

そのため、撮影した画像の背景の明るさと天体(淡い星雲)の明るさに差があるほど、背景を同じ明るさにした場合には天体がよりコントラスト良く浮き上がってくるはずです。この時のオートストレッチの倍率を比較することで、光害がどれだけ軽減されるか、言い換えると光害防止フィルターがどれくらい働いているか推測することができるはずです。

オートストレッチの値から、フィルターなしを1としたときにQBP、CBPでそれぞれ何倍明るくしたかを表にしました。色によって倍率が違うのでRed、Green、Blueで別々に計算しています。具体的にはSTFのスパナマークを押すと表が出ます。最初なかなか意味がわからなかったのですが、いろいろ試して、結局真ん中の列の逆数が元の画像から何倍ストレッチしたかに相当することがわかりました。結果は以下のようになります。

 RGB
No filer111
QBP3.983566944.486127173.40584795
CBP3.537339063.440159572.7432878

さて、結果をじっくりみていきましょう。


QBP:


この結果を見ると、まずQBPはフィルターなしに比べて4倍くらい明るくできるので、言い換えると余分な光を4分の1くらいにしているということがわかります。以前、波長帯の広がりからざっくり4倍くらい得すると推測していましたが、実測もかなりこの推測に従っているようです。




CBP:

次にCBPです。まず第一に、結果の数値だけを見るとそこまでQBPとは大きく違わないというのが印象です。CBPの方がかなり(下手したら何倍も)明るく出るのではと思っていたのですが、平均だと1.2倍程度です。

R関しては除去比は少しQBP劣りますが、ほとんど違いがありません。GとBに関してはCBPの方が光害を除去しないことになります。と言っても高々1.3倍とか1.2倍です。これはCBPが彗星の核や尾のCN, C2, C3らの基線を透過させるように、主に紫外から青を新たに通すように設計してあるため、この波長での光害に対する除去効果は軽減されるので納得です。ただ、青よりも緑の方が違いが大きいというのが少し疑問ですが、Gセンサーも青の帯域に感度はあるので、これはあり得るのかもしれません。

ここでパッと疑問に思ったのは、青に対する明るさの倍率が低いCBPがなぜQBPよりもより青色を出すか?です。これは当然、これまでカットしてしまっていた青い光をより通すようになったからと考えることができます。倍率が低くても、捨てていた青い光を拾った方が得だったということです。


結論

というわけで、ここでの結論は「CBPはQBPよりも光害に対する効果は多少低いが、違いは全然大きくはなく、むしろ青を通すことでより強調する効果がある。これは青い成分を持つ星雲に有効である。」と言っていいのかと思います。もちろんこの値は光源に依ります。繰り返しになりますが、今回は光外の影響があまりないところで試したので、街明かりの場合や月明かりの場合は結果が違ってくる可能性もあるかと思います。

.
.
.
.
.
.


さらなるCBPの効果

でもでも、実は面白いのはここからだったのです。この検証の過程で3つの画面を見比べていて、一つ気付いたことがあります。もしかしたら勘のいい人はもう気付いているかもしれません。

上で出した3つの比較画像のそれぞれの左上の明るい星に注目してください。その左横に2つの星があると思います。これを3つで見比べてみてください。わかりやすいように拡大して並べて比較します。左からフィルターなし、QBP、CBPです。

com2


わかりますでしょうか?

なんと、CBPの星像が一番小さくて、しかも色がきちんと出ているのです。ピントの違いの可能性もありますが、他の星の大きさが大きくは変わっていないので、おそらくピントは関係なく、フィルターの違いから来ていると思われます。これは最初の方で書いた2つ目の不満「恒星の色が出ない」を解決する可能性があります。特にオレンジに近い色が出なかったので、期待できます。


なぜこんなことが起きるかというと、ここからはまだ推測なのではっきりとは言えませんが、QBPは実は赤外を通すのではという推測があります。シベットさんがここらへんの話に詳しくて



に記述があります。また、あぷらなーとさんの最近の実験でもその推測を推す結果となったようです。

QBPは赤外を素通しで、赤外の方では収差を補正しきれていない鏡筒ではハロとなって出るが、それに比べて、CBPはきちんと赤外の波長が透過しないように処理もしてあるのではという推測です。このハロを除去したい場合、QBPでは別途フィルターを入れる必要があるが、CBPでは1枚で済んで、恒星の色の再現性も高いということが考えられます。

これまでQBPで恒星の色が出なかったという方は試してみてもいいかもしれません。


まとめ

というわけで長かったですが、CBPの検証はこれで終わりです。赤はもちろん青も出て、色バランスも良く、恒星の色もきちんと出て、光害にも効果がありそうというので、私的にはある意味理想的なフィルターになりそうです。CBPはQBPであった不満をほとんど解決してくれそうです。かなり期待できそうなので、今後CBPの作例を増やしてもう少し検証していきたいと思います。


次の記事で今回撮影した三裂星雲を画像処理して仕上げています。



 

ちょっと間が空きましたが、N.I.N.A.の試用記の続編です。



前回の記事を書いてからなかなか晴れなくて、やっと日曜の夜に少しだけ星が見えたのでテストしました。本当は撮影までしたかったのですが、結局曇ってしまいNINAのテストだけで終わってしまいました。

第一回の撮影までに加えて、今回は少し応用編。導入など、撮影の準備に相当する部分になります。撮影までのことなので、本当はこちらを先に説明しても良かったのですが、一度赤道儀で導入して撮影まで進めてしまえば見通しが良くなると思ったからです。


スカイアトラス 

最初に左アイコン群の「スカイアトラス」でターゲットを調べるといいでしょう。左上に対象とする天体を入力します。例えばM57と入力すると、その情報が出てきます。

IMG_0155

その際、「オプション」「一般」タブの「スカイアトラス画像ディレクトリ」を設定しておくといいでしょう。ここはスカイアトラスで画像を表示するために使います。サイトのダウンロードページの一番下にある「Misc」のところの「Sky Atlas Image Repository 」をダウンロード、展開して、「スカイアトラス画像ディレクトリ」で設定したディレクトリに置くと、「スカイアトラス」の「詳細」のところにカタログ画像が表示されるようになります(TKさんに教えてもらいました。ありがとうございました。)。

このスカイアトラスのところで「導入」ボタンを押してしまっても導入はできるのですが、次のフレーミングで導入した方がいいでしょう。


フレーミング

撮影時にPCがインターネットに接続されているなら、フレーミング機能が便利です。デフォルトで縦横3度の視野角を見るようになっていますが、画像を落とすのに結構時間がかかります。今どれくらいダウンロードしたか表示があるとよかったかもしれません。

一旦ダウンロードした画像はキャッシュに保管され、キャッシュを表示することを選べばインターネットがない環境でも確認することができます。撮影時にインターネット環境がないなら、事前に対象天体の検索して画像をダウンロードしておくといいでしょう。

ダウンロードした画像があると、撮影時の画角や位置を確認できます。

IMG_0156

M57を囲んで大きな四角い枠が見えます。これが接続されているカメラと、この画面の「画像の読み込み」の「カメラパラーメーター」の「焦点距離」から計算された、撮影した場合の画角になります。

黄色の丸は、現在赤道儀(望遠鏡)が向いている位置になります。上の写真の場合、M57の中心からは少しずれた位置にいることになります。でもこれは実際に向いている位置とは限らなくて、N.I.N.A.が「赤道儀が向いていると思っている」位置です。この数値は接続した赤道儀から得ています。なので、この状態で撮影しても、黄色の場所が中心なるとは限らず、後のプレートソルブを使い誤差を無くします。

さて、画角を示すこの四角は移動することができます。四角の中心が導入したい目的の位置になります。今はM57の中心が四角の中心になっているので、ここで「導入」ボタンを押してみます。すると実際の赤道儀の向きに合わせて、一旦黄色い丸が画面からはみ出し、しばらく待つと

IMG_0160

のように、黄色い丸が画角の中心にきます。

この際、もしガイドをしっぱなしなら、PHD2のオートガイドを外すのを忘れないようにしてください。また、導入が終わったら、撮影前に再びPHD2のオートガイドをオンにするのを忘れないでください。

でもまだ注意です。ここですでに画面中央に目的の天体が導入されたかに見えますが、本当にその向きに向いているかどうかの保証はありません。赤道儀の持っている情報と実際の向きが合っているかは保証がないからです。ここで次のプレートソルブの出番です。


プレートソルブ

プレートソルブは思ったよりはるかに簡単にできました。もともとAPTで「PlateSolve 2」と「All Sky Plate Solver(ASPS)」をインストールしていたからというのもあります。この場合は「オプション」「プレートソルブ」のところでパスを通すだけで使えてしまいました。

IMG_0101

具体的には、撮像ページで右上「ツール」アイコン群の左から3つ目「プレートソルブ」を押してプレートソルブパネルを出します。

IMG_0165

パネルの位置がわかりにくいかも知れません。「画像」パネルの下のところに「プレートソルブ」タブが出ていると思いますので、それを選択します。ここで「同期」が「オン」になっていると、プレートソルブが成功した際の位置情報が赤道儀にフィードバックされ、赤道儀上の一情報が書き換わります。その際「ターゲットの再導入」を「オン」にしておくと「エラー」の値よりも誤差が大きい場合に再度自動で導入し直してくれますが、導入は後で自分でもできるので、とりあえずはオフでいいでしょう。「露出時間」と「ゲイン」なども適当に入れます。準備ができたら、真ん中の三角の再生マークのところの「画像素取得してプレーとソルブ処理します。」を押します。

勝手に撮像が一枚始まって、プレートソルブが始まり、うまく位置が特定できると「成功」のところにチェクマークが出ます。

IMG_0164

フレーミングでM57を中央にしたにもかかわらず、やはり実際に撮影するとずれしまっていて、その誤差を赤道儀側にすでにフィードバックしているので、今一度フレーミングを見てみると、

IMG_0166

のように、黄色い丸がずれているのがわかると思います。横にずれたのはカメラが90度回転しているからです。この状態で再度「導入」を押すと黄色い丸がM57のところに行き、実際に撮影してみると

IMG_0168

のように、今度は本当に赤道儀がM57の方向をきちんと向いていることがわかります。


その他

ASI290MMでLRGB撮影をやってみようと思っていて、かなり前に勝手ずっと使っていなかったZWOのフィルターホイールを繋いでみました。ポイントはEFW用のASCMOドライバーをZWOのページから落としてきてインストールしておくことと、NINAを一度再起動することです。これでNINAの「機材」の「フィルターホイール」からZWOのフィルターホイールとして認識され、選択することができるようになります。

IMG_0162


フォーカスに関して
  • オートフォーカス機能はあるようですが、マニュアルでのフォーカスをサポートするような機能は見当たらない。と思っていたら、撮像の右上のツールのところにありました。今度使ってみます。

まとめ

だいたい試したのはこれくらいでしょうか。2度に渡って使用して、その使い勝手をレポートしましたが、2回目は撮影まではしていないので、まだ説明が不十分なところもあるかもしれません。例えば、フォーカサーとかフラットパネルと接続した撮影の機能もあるみたいで、ここら辺は機材を持っていないので試すことができません。

とりあえず十分すぎるくらいの機能があることもわかって、撮影するには何も不便なところはなく、ベータ版でもすごく安定しています。

前回と今回の記事を読めば導入して撮影するまでできるのではないかと思います。わかりにくいところがあったらコメントしてください。私も全部理解しているわけではないですが、質問に答えがてら理解していきたいと思います。


最近話題のNINAを試してみました。すごくいいです。試したのはVISACでM13を撮影したときです。


N.I.N.A.を使ってみた

そもそもAPTをまともに使い始めたばかりなのに、なんでNINAを使ってみたかというと、APTで少し不満があったからです。
  • Live viewの映像がうまくストレッチできない。
  • ピント合わせで拡大できない。
  • 撮影ごとのログが残らない。fitsに特化しているので、各ファイルの中に情報は含まれてますが、いちいちヘッダを見なくてはならないのが少し不満です。
  • 撮影中の設定が結構制限される。例えばカメラのカラーバランスやストレッチの設定など、撮影中も触りたいのにできない。(でも、撮影中に弄れたことも一度だけあるのですが、再現性無しです。不思議です。)
と言っても、上のように細かいことだけで、普通に撮影するだけならAPTは十分な機能を持っています。「今回の撮影は前と同じM13で、余裕があるので失敗してもいいからNINA試してみようか」くらいの気分でした。しかもNINAで上記不満が解決されたかというと、実はそうでもなく、せいぜいLive Viewがマシになったくらいでしょうか。

でもそれ以外にいい所がかなりあり、極めて順調に撮影までできたので、この記事を書いています。


N.I.N.A.のインストール

ダウンロードはここからです。

2020年5月13日現在、最新の安定バージョンは1.9ですが、事前情報から日本語を使うためにはベータバージョンを使う必要があり、Version 1.10 BETA002(5月16日の今日、アクセスしてみたらすでにBETA004になっています)をダウンロードしました。

Windows版のみ存在し、MacやLinux版はないようです。32ビット版と64ビット版がありますので、各自の環境に合わせて選択します。自分のWindowsが32ビットか64ビットか分からない場合はここなどを参考にして確認して下さい。

今回は64ビット版を使ってみましたが、注意事項が書いてあって、もしNINAの64ビット版を使う場合はASCOMも64ビット版を使う必要があるそうです。いくつかのASCOMドライバーは未だ32ビットのままなので、その場合は32ビット版を使うか、64ビット版のドライバーの開発を促してくれとか書いてあります。とりあえず今回の使用(一通りセットアップして、plate solvingして導入、長時間撮影とかするくらいまで)では64ビット版で困ることはありませんでしたが、たくさんの機器を繋いで本格的に稼働させるとかの人は32ビット版の方がいいのかも知れません。

インストールは普通にやれば特に困ることはないでしょう。


最初の設定

インストール後、起動して一番最初にやるべきことは左端アイコン群の一番下「オプション」の「一般」の設定でしょう。そもそも日本語になってないと「Options」の「Genaral」になっています。まずは、そこの「Language」を「Japanese(Japan)」に変えます。変えた瞬間に日本語に切り替わるのが素晴らしいです。でも後から再起動して気づいたのですが、細かいところ、例えば先ほどの「Japanese(Japan)」は再起動して初めて「日本語(日本)」に切り替わるので、全ての項目が瞬時に切り替わるわけではないようです。一応言語を切り替えたら、一旦終了して立ち上げ直した方がいいでしょう。

同じページで「天文測定学」(ちょっと訳が微妙ですが)で緯度、経度を写真のように「137.12」などという形式で「度と分だけを小数点で区切った形」で入れておくといいでしょう。後の「スカイアトラス」のところで正しく表示されるようになり、撮影時間などの目安を立てやすくなります。


IMG_0090

「オプション」「撮像」「画像ファイルパス」で、撮影した画像を保存する場所を指定できます。好みの適当なところにしておくといいでしょう。


機材の接続

最低限の設定がとりあえず終わったら、次は「機材」ページです。この時点で、必要な機器はケーブルなどで実際に接続しておいた方がいいでしょう。今回設定したものはカメラ、望遠鏡(赤道儀のこと)、ガイダーです。これら3つは接続すると縦に並ぶアイコン群の右下に小さな電源マークが出るので、何が接続されているのか一目で分かります。

IMG_0087

それぞれのページの一番上で接続したい機器を選択し、その右の電源マークのアイコンを押して「接続」します。例えばカメラなら、すでにカメラが接続されていれば上の写真のように「ZWO ASI294MC Pro」という選択肢が出てきます。カメラが繋がれていないとASCOMとかN.I.N.A.のシミュレーターカメラとかしか出てこないので注意です。もしきちんとカメラにケーブルをつないでいても、つないだカメラ名が出てこない場合は、接続アイコンの左の矢印が回っている「デバイスの再スキャン」を押すと再認識されて、選択肢として出てくることがあります。

うまくカメラが接続できると温度制御やゲインの設定などができるようになります。冷却は設定温度を決めて、右横の雪の結晶マークのアイコンを押すだけです。撮影終了時の昇温は下の炎マークのアイコンを押します。オフセットはダークファイルのオフセットより大きな値が入っていればいいのかと思います。通常数十とかでしょうか。ゲインは後の「撮像」のところで改めて設定するので、適当でいいです。


適当な天体の導入と、PHD2でオートガイド

とりあえず、赤道儀での自動導入でも、マニュアル導入でもいいので、撮影したい適当な天体を導入します。最初はテスト撮影だと思って下さい。NINA自身の導入機能「フレーミング」については次回の記事で説明します。

一旦撮影したい天体が導入できたら、PHD2を起動してオートガイドを始めます。その際ですが、PHD2で赤道儀に接続した時に出てくる4方向ボタンのの小さな画面が後で導入すうる時に便利になるので、できればボタンを押してきちんと赤道儀が反応するか確かめておくといいでしょう、

きちんとオートガイドされていることが確認できたら、「オプション」「ガイダー」で、PHD2に接続して下さい。もしかしたら自動的に認識されて、すでに接続された状態になっているかも知れません。もし選択肢にPHD2が出てこなかったら、「オプション」「機材」の右下の「ガイダー設定」できちんと「PHD2パス」が設定されているか確認してみて下さい。私は先にPHD2を動かしていて、うまく動いている状態でNINAを立ち上げたので、特に何も設定する必要はなかったですが、うまくいかない場合はここが設定画面になるはずです。

IMG_0096

うまくPH2Dが接続されると、ガイドされているグラフが「機材」「ガイダー」のところに表示されます。PHD2の制御情報がそのままNINAで表示されるのがすごいです。左の方の選択で、y軸、x軸の表示設定とともに、誤差の単位を変えることができます。下の写真ではピクセル単位にしています。概ね0.5ピクセル以内に収まっているでしょうか。

IMG_0089

ついでにここで、NINA上でも赤道儀との接続も済ませておきましょう。PHD2がうまく動いているなら、すでに赤道儀はPCと接続されているはずです。NINAの「オプション」「望遠鏡」で自分の赤道儀のドライバーを選択し、右の「接続ボタン」で接続します。

IMG_0088



撮像

次はNINA画面の左端アイコンの下から二番目「撮像」ページです。ここは盛り沢山で混乱しますが、最初は最低限の機能から試します。

IMG_0094

まずは右上の「撮像」パネルのところのシャッターマークの「露光開始」ボタンを押して一枚テスト撮影して見て下さい。その際、「露出時間」は適当に10秒くらい、「ビニング」は1x1、「ゲイン」は200から400くらいいいでしょう。これらの設定はテスト撮影の時のみ有効で、本撮影では別の設定項目があり、そことは独立に設定ができます。撮影中は左下に「撮像:露出中」とか出て、時間バーが動いていきます。一枚撮影すると画像が出てくるはずです。望遠鏡の蓋がきちんと外れていて、ピントも合っていて、何かターゲットが入っているはずなのに真っ暗な画面しか出てこない場合は、撮影画面の上の右側にあるアイコン群の真ん中の棒のようなマークの「画像の自動オートストレッチをトグルスイッチでオン/オフする(表示のみ)」を押して、ボタンが明るくなるのを確認して下さい。同時にオートストレッチが効いて撮影画面も明るくなり、星などが見えてくると思います。

右上の「撮像」パネルのカメラマークの「ライブビュー」も同様です。「露出時間」を1秒とかにして「オートストレッチ」をうまく使って、リアルタイムで連続してみることができます。ただ、この「ライブビュー」うまくいかないことが何度かありました。「ライブビュー」ボタンを押して「露光開始」を押してうまくいったときもあれば、画面の拡大率を変えてうまく行った時もあります。同様のことをしてエラーが出たこともあります。ライブビューはまだ少し不安定な気がします。

ちなみに、この撮像画面のパネル、入れ替えとかしてぐちゃぐちゃになってしまったら、「オプション」の「撮像」タブにいき、右下の「画面配置のリセット」でデフォルトの設定に戻すことができます。


シーケンス設定

次にNINA画面左のアイコン群の「シーケンス」を押します。撮影計画をここで設定します。最低限
  • トータル#
  • 時間
  • ゲイン
  • オフセット
  • デザリング
だけ設定すればいいでしょう。デザリングはデフォルトでオンになっているようですが(下の写真はオフになっています。この場合ボタンを押して「オン」と表示されるようにしてください。)、PHD2が動いていてサーバーモードになっていれば、これだけでデザリングもできてしまいます。

IMG_0097

ちなみに、ディザー量などは「オプション」「機材」の右下の「ガイダー設定」で設定します。

シーケンス画面の左上の「対象」のところの「ターゲット名称」のところに希望の天体名を打ち込むと候補が出てきます。例えば「M13」と入れると「Herucles Globular Cluster」と出てくるので、それをクリックします。すると何時頃が撮影どきかとかも知らせてくれます。これと関連して、NINA画面左のアイコン群の「スカイアトラス」でも同じようなことができます。

IMG_0098

これらの画面にある「ガイド開始」「対象の導入」「ターゲットをセンタリング」「シーケンスの対象として設定」「導入」などのボタンはまだ試していません。ここら辺を駆使すれば、時間がくれば自動的に導入して撮影を始めるとかができるのかと思います。ドームでの撮影などでは便利なのかも知れません。


いよいよ撮影開始

さて、最低限の撮影準備が整ったと思います。いよいよ本撮影です。

IMG_0094


左端アイコンの下から二番目「撮像」ページに戻り、右側真ん中の「シーケンス」パネルの三角の再生マーク「シーケンスを開始します」を押して下さい。撮影が開始され、順次右下の「画像履歴」パネルに撮影された画像が溜まっていくと思います。Windowsのエクスプローラで実際に保存先フォルダを見て、ファイルがきちんと保存されているか確かめて見ましょう。私は一番最初だけエラーメッセージが出て、ファイルが保存できないと言われました。これは撮影中に保存先を変更してしまったことなどが原因かと思われます。最初の一度きりで、それ以降はこのようなエラーはなく安定して撮影できました。

撮影時の注意事項ですがが、あえてシーケンスの「リセット」ボタンを押さないと、途中枚数からの撮影が続行されてしまいます。テスト撮影で止めてしまった時など、必要枚数に達しなくなる時があるので、本撮影を始める時は必ず「リセット」を忘れないようにします。左端アイコン「シーケンス」に行って、左下のアイコン群の左から三番目の矢印が回っているマークのアイコンを押すとまた0枚に戻ります。

とりあえずここまでで、最低限のディザーの撮影までできるかと思います。


使っての感想など

うーん、NINAかなりいいです。もちろんどのソフトがいいかは機能だけでなく、インターフェースとかの好みはあるでしょうし、安定性なども大きなファクターです。NINAはまだまだ開発がどんどん進んでいる段階で、しかも今回はベータ版にもかかわらず、一度も落ちることはありませんでした。実は立ち上げてから一度も終了することなく撮影までできてしまうくらい分かりやすいインターフェースでした。オープンソースでこれだけのものができるのは、開発者の方々にただただ感謝です。

ベータ版ですが、すでに日本語が選択できるところもありがたいです。日本語訳もおかしなところはほとんどありません。どなたか日本人の貢献者がいらっしゃるのかと思います。感謝いたします。


感想など、細かいところをいくつか。
  • オンオフボタンがわかりにくいです。オンとオフどちらを押してもスイッチが切り替わってしまいます。どうやらボタンのところに「オン」と出ていたら「現在はオンの状態」、「オフ」と出ていたら「現在はオフの状態」という意味のようです。
  • ライブスタックはSharpCapと比べると流石にまだまだですが、APTよりははるかにマシです。多少不安定なところもありましたが、最低限操作の通りには動いてくれます。
  • 結局撮影ごとのログは残せませんでした。全体のログは残せるがトラブル時以外はあまり有用ではなさそうです。
  • 撮影中もほとんどの設定を変更できるところがいい。
  • 非力なStickPCで試さなかったので、重いかどうかがわかりません。でもホームページには2GBで動くと書いてあるので、意外に軽いのかも知れません。

とりあえず今回はここまで。次回はもう少し応用編として、「プレーとソルブ」と「フレーミング」などについて解説します。実はもう試してはいて、プレートソルブは簡単だったのですが、フレーミングに少し手間取りました。お楽しみに。

前回のTSA-120に引き続き、VISAC (VC200L) でM13を撮影してみました。




撮影時の様子と結果

と言っても撮影したのは前回の画像処理をする前。なので、反省点は生きていません。撮影条件なども基本的には同じです。

大きく変わったのは、鏡筒はもちろんですが、撮影時間を3時間以上と大幅に増やしたこと。まあこれも増やしたと言うよりは、放って置いたら3時間経ってたと言うのが正しいので、3時間に「増えてしまった」と言った方がいいのかもしれません。あと、撮影にN.I.N.A.を使ってみました。結構よかったので、これは次の記事でレポートします

撮影時に気づいたことといえば、TSA-120は鏡筒自身が長いので時間が経つとCMOSカメラ側が三脚に当たって、それで撮影が終わることが多いのですが、VISACは焦点距離が長いのに物理的な長さは短いので全然大丈夫なことです。実際、M13が天頂を超えてしまって、あーもう当たってるかもと思って急いで見に行ったらまだ全然余裕で、その後30分くらい撮影を延長しました。

撮影結果です。


「M13: ヘラクレス 座球状星団
light_BINNING_1_integration_ABE_ABE_PCC_STR_PS_decom3
  • 撮影日: 2020年5月14日21時9分-5月15日0時48分
  • 撮影場所: 富山県富山市下大久保
  • 鏡筒: Vixen VC200L
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO ASI294MC Pro + サイトロン QBP (37.5mm)
  • ガイド: PHD2 + f=120mmガイド鏡 + ASI290MMによるディザリング
  • 撮影: N.I.N.A.、ゲイン220、温度-15℃、露光時間300秒x38枚 = 3時間10分 
  • PixInsight、Photoshop CCで画像処理

中心部です。

light_BINNING_1_integration_ABE_ABE_PCC_STR_PS_decom3_cut



画像処理について

画像処理をした後の、いくつかの反省点と検討事項です。
  • StarNet++を試しましたが、相当明るい構成のみを一部分離できただけで、使い物になりませんでした。球状星団には向いていないです。
  • 背景ノイズを消す目的で試したのですが、相変わらずDfine2もDeNoise AIも微光星が崩れしまって、悪影響の方が大きいです。今回も使いませんでした。
  • 露光時間が長いので背景ノイズが滑らかになり、微光星とはかなりはっきり分離できています。逆に一番の問題は、露光時間が長いのでやはり星像にシャープさが無いこと。シャープさを出すために、Sharpen AIとNik collectionのSharpner Proとか色々試しましたがほぼ全滅で、唯一まともだったのがPixInsightのDecombolutionでした。ちなみに、月とかでRegistax代わりに使うMultiscaleLinearTransformも背景ノイズが増えたように見えるのでダメでした。
  • Decombolutionはまだあまりパラメータとか理解できていないので、ほぼデフォルト。Wavelet layerはデフォルトの2つだと不十分なようで、4つに増やしました。他にかなり効いたところがDeringingです。これもデフォルト設定ですが、オンにすると背景のノイズの崩れ具合がかなり改善されました。このおかげでシャープさが少し回復したのかと思います。
  • まだ口径200mmの分解能には迫っているとは思えません。特に明るい星が肥大化してしまうのはコントラストなども関わってくるので、難しいです。
  • 具体的に言うと、星が密になる境のあたりに3つ赤い星が固まっていて、一番外側の星の横に青い小さな星があるのですが、この3つの星がどうしてもくっつきがちです。シャープな画像を見ているともっと分離しています。次に短時間露光を試すときに、ここの分解能を出せるのかどうかがポイントかと思っています。
  • 以前問題になった、星像おにぎり化現象、一旦は出なくなったのですがはたして今回はと言うと、とりあえず星像を見る限り丸で、どうやら大丈夫なようです。でもこれまだ、調整不足で星像が肥大化して見えなくなっただけの可能性もあるので、結論は先送りです。

背景について

背景をわかりやすくするためにガンマを上げたものを載せておきます。

light_BINNING_1_integration_ABE_ABE_PCC_STR_PS_decom_gamma2

微光星とノイズがはっきりと見分けがついているところが今回進歩したところでしょうか。

その一方、よくみると背景に黒いシミのようなものがたくさんあるのがわかります。これがどこから来ているのか不明です。周辺減光を見てもわかりますが、今回フラット補正をしていないので、フラット補正をしたらうまく取れるかもしれません。まだフラット補正に絶対の自信がなく、出来る限り躊躇してしまっています。きちんと検証するいい機会なのかもしれません。


TSA-120の画像とVISACの画像の比較

面白いのはここからです。M13の画像をTSA120とVISACの場合で比較してみました。日にちも条件も違うので、完全な直接比較にはならないのですが、いくつか面白いことがわかりました。わかりやすいように、中心部の画像の右上4分の1を切り取って並べます。左がTSA-120、右がVISACになります。

detail_comp_TSA120_VISAC

まず、分解能についてですが、VISACの方が圧勝です。そもそも焦点距離が倍以上長いので、同じCMOSカメラで撮影した場合焦点距離の長いVISACの方が有利です。また、VISACの方が撮影時間3時間以上と3倍近い時間をかけているので、背景ノイズが小さくなっていて、微光星がよりはっきりと分離されています。
一方、明るい恒星に関しては隣同士の距離がTSA-120でもVISACでもあまり違いがありません。ここら辺はトラペジウムのE、F星がTSA-120では余裕で見えてVISACでは見えたことがないというところに通じるのかもしれません。もちろん、両撮影とも5分と露光時間が長いので、共に明るい星が肥大化してしまった可能性もあります。

星の色についてですが、基本的に白、オレンジっぽい赤、緑よりの青の3つに分かれるのは前回と同じです。赤と青がバラバラに散らばっているので、収差とかではなさそうです。また、どの星がどの色になるのかの再現性はあるようです。QBPのせいかなとも思ったのですが、他の方の画像を見ても同じように3種に分かれているのが多いです。やはりフィルターが入っているのかとも思ったのですが、Wikipediaの写真や、NASAの写真も同じような傾向です。これは一般的にこれで正しいのか?これも課題の一つです。

VISACの星像が横に伸びてしまっています。光学系のせいなのか、撮影時の流れなのか不明ですが、解決しなくてはダメそうです。TSA-120は流石に真円に近いです。

次に、左上のICIC4617周りを比較してみます。左がTSA-120、右がVISACです。

comp_IC4167

調べてみるとIC4617が15.14等級だそうです。Stellariumが18等級までデータを持っていて、改めて画像を見ると17等級後半とかは余裕で見えています。例えば、IC4617の右上にある3つ並んだ星の一番遠い矢印で指しているのが17.8等級です。VISACだと余裕ですが、TSA-120だとギリギリ見えてるかどうかというところでしょうか。

VISACはさらに暗い星が見えているようですが、もうデータがないので何等級かわかりません。きちんとデータと比べて限界等級を知っておきたい気もします。


まとめと、今後の課題

さて、VISACによる3時間撮影で、微光星の分解能は格段に上がりました。でも明るい恒星の肥大問題はまだ存在しているようです。こうやって考えると
  • VISACで10秒クラスの短時間露光撮影
  • TSA-120でシンチレーションのいい日に3時間クラスの長時間撮影
のような方向で攻めるのが次の目標でしょうか。でも、シリウスBとかトラペジウムとか考えたら、
TSA-120で10秒クラスの短時間露光撮で他数枚というのが手持ちの機器では解なのかもしれません。


 

このページのトップヘ