ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:M42

最安クラスの新発売のCMOSカメラ、Ceres-Cでの電視観望を試してみました。果たしてどこまで見えるでしょうか?


最安値の天文用CMOSカメラ

感度の高いIMX224センサーを利用した、(おそらく)最安値の天体用途のCMOSカメラ、Player One社の新発売のCeres-Cを手に入れました。実売で税込1.65万円というのはかなりインパクトがある価格で、特に電視観望をやってみたいと思っている方の中には、この格安カメラに興味のある方も多いのではないでしょうか。




F8AFBBD8-7F87-45E7-A74D-264EE38A2DB1

右に写っているのがカメラ本体になりますが、小さいですね。でもこの小ささが今回の鍵になります。また、Player Oneのカメラに(おそらく)もれなく付いてくるブロアーはコンパクトで強力で、使い勝手が良さそうです。USBケーブルも付属なのですぐに使うことができます。

このカメラ、実はメーカーによるとエントリークラスの「ガイドカメラ」だそうです。でも接続はUSB3.0なので、惑星撮影などにも使えるはず。今回はこのガイドカメラと謳っているものが、電視観望用途に耐え得るものなのか、実際に試してみました。


鏡筒

IMG_3670


まず今回のテストに選んだ鏡筒が、サイトロンから発売されているNEWTONY


この鏡筒を選んだのには明確な理由があります。IMX224センサーはエントリークラスなので、値段が安い代わりにセンサー面積が小さいです。この場合、鏡筒の焦点距離を短くしないと見える視野が狭くなってしまい、天体の導入が難しくなってしまうために、快適な電視観望が実現できなくなってしまいます。NEWTONYの焦点距離は200mm。望遠鏡としてはかなり短い部類になります。

NEWTONYの値段は税込で約6千円。この価格も大きな魅力で、電視観望を始めてみようと思うきっかけになるのかと思います。

もちろんNEWTONY以外にも焦点距離200mm台の鏡筒は存在しますが、ほとんどが高級機と呼ばれるもので、値段は10倍以上とかになってしまいます。唯一多少安価なものにSky Watcher社のEVOGUIDE 50EDというのがありますが、これでも実売で4倍以上の値段です。

中古のカメラレンズを探せば、短焦点でさらに安いものが見つかることもあると思います。でもNEWTONYのように、入手しやすく安価な鏡筒という意味では、サポートなどのことも含めて現行モデルの方が初心者には心強いと思います。

しかもこのNEWTONY、横の蓋を開けると中身が見えて、ニュートン反射望遠鏡の仕組みがよく分かるので、入門者にとっては最適です。

C5C03D21-BEE2-433C-B617-D4EE7D4336F5


私はもともと、観望会とかで子供とかに望遠鏡の仕組みを説明したくてこの鏡筒を購入したので、そこまで実用的に使うことを考えていませんでした。でも焦点距離がここまで短いニュートン反射はこのNEWTONYくらいである意味貴重な存在で、今回電視観望でうまくいけば今後大いに活用することができます。


Ceres-CとNEWTONYの組み合わせ

ところがこのNEWTONY、通常のCMOSカメラと組み合わせると、少しというか重大な問題があります。ピントが出ないのです。アイピース口にカメラを取り付けるとき、ほとんどのカメラの場合あと5mm位中に入り込んでいけばピントが出るのですが、私も以前同じPlayer OneのNeptune C-IIを取り付けた時、あとすこしでピントが出なくて悔しい思いをしました。

Ceres-Cはその形を見てもわかりますが、アイピース差し込み口と同じ径が続いているので、奥まで差し込むことができ、それでピントが出るのです。Ceres-CとNEWTONYの組み合わせがここで効いてくるのです。


AZ-GTi

もう一つ重要なアイテムを紹介しておきます。SkyWatcher社のAZ-GTiです。



いくらNEWTONYが短焦点といっても、空のかなり狭い範囲を見ることになります。地球は回っているので、空を見ていると星は動いていくように見えます。
  1. 見たい天体をスムーズに導入することと、
  2. 星を追いかけるために自動導入、自動追尾の機能
がある「台」が必要になります。今回はこの手の機能を持った機器としては最安に近いAZ-GTiを使うことにします。もし、既に赤道儀などを持っていたら、もちろんそれらを使うこともできます。


組み立て

さて、実際に機材を組み合わせてセットアップしてみましょう。まずはNEWTONYをAZ-GTiに取り付けます。この場合、NEWTONY付属の簡易三脚から鏡筒本体を外して、それまで三脚が付いていた本体下面のネジを利用してアリガタを取り付けます。

アリガタはCeres-Cの販売店のシュミットにもいくつかありますし、

アマゾンなどでも「アリガタ」で検索すればいくつも見つかると思います。

私は簡単に取り外せるよう、アリミゾからアルカスイス互換のクランプへの変換アダプターを作り、NEWTONYにはアルカスイス互換のプレートをつけて、取り付けるようにしています。普通はビクセン規格のアリガタを直接取り付けるので十分でしょう。

次はNEWTONYにCeres-Cをとりつけます。アイピース口のところに差し込み、固定ネジを締めるだけです。
IMG_3718


PCとソフトウェア関連

カメラをPCに接続しますが、その前にあらかじめPlayer Oneのサポートページに行って、ドライバーをダウンロードしインストールしておいてください。
 
リンク先の「Native driver」の中の「Camera driver」を選びます。

今回電視観望用に使うソフトは「SharpCap」。



これもダウンロードしてインストールしておいてください。無料でも使えますが、いくつかの機能は有料版のみで使えます。基本的な電視観望は無料版でもできますが、オートストレッチなど有料版の機能を使うと便利な時があります。年間2000円程度なので、もし電視観望が楽しいと思って続けたいと思うなら、有料版を考えてもいいのかもしれません。

ソフトの準備ができているなら、カメラをUSBケーブルでPCと接続します。SharpCapでカメラを認識させますが、ドライバーなどがうまくインストールされていれば、Ceres-Cがカメラの選択肢として出てくるはずです。
IMG_3674
これらのことは、あらかじめ昼間などの明るい時に試しておくといいかもしれません。うまく接続できたら、露光時間とゲインを適当に合わせてPCの画面にカメラで見ている映像が出ているのを確認してみてください。もともと天体用のカメラなので、昼間に見ると明るすぎる場合があります。その際は露光時間を数ミリ秒とか、ゲインを0近くにするとかして、きちんと画面に反応があるかを確認してみてください。


ピント合わせについて

さて、ここで気づくと思うのですが、NEWTONYが安価なせいもあり、ピント合わせがアイピース全体を回転させる方式になっています。そのため、カメラを固定したままだと視野が回転してしまうことと、ねじ込み式のためにきちんと固定できず、多少ガタついてしまいます。

なので、カメラの固定ネジを緩めて、何か景色や夜なら星にNEWTONYを向けて、PCの画面を見ながらカメラを出し入れしてみます。ある程度ピントがあったところで固定ネジを締めてカメラを固定します。その後、わずかにカメラごと回転させてピントを合わせるようにします。視野は多少回転しますが、ピントの調整範囲はごくわずかなので、回転もごくわずかに抑えられるはずです。

その後は、USBケーブルに無理なテンションなどかけなければ、ガタでピントがずれるようなことはありませんでした。


電視観望に使えるか?

さて、実際に夜に電視観望でCeres-Cを使ってみます。この安価な「ガイド用」と言われているカメラ、どこまで使えるのか非常に楽しみです。

試したのは2021年10月14日の夜、夕方からずっと曇りだったのですが、23時頃から晴れ始めたので早速準備です。この日は月齢8日の半月を越えたくらいの明るい月が西の空に傾いているような空でした。

A073A264-F3E7-4EA8-AE52-9AEAE998086D

セットアップした機材を外に出し、アウトドア用の机を別途用意し、PCをそこに置いて操作します。AZ-GTiで、明るいこと座のベガを初期アラインメントで導入します。

ピント合わせは先に説明したように、カメラをアイピース 口に出し入れしてある程度合わせてから、回転で微調整します。星を見ながらやってみてもきちんとピントが合うことが確認できました。

さて、これで準備完了。目的の天体を自動導入します。


M27: 亜鈴状星雲でファーストライト

まず最初に見たのは、西の隣の家の屋根に沈みそうになっているM27亜鈴状星雲です。
IMG_3678
Gain300、露光時間3.2秒、LiveStack89枚、4分40秒

さすが224系のセンサーです。綺麗に見えますね。どうやら電視観望用途としてもこのCeres-C、十分に使えるようです。この時は露光時間3.2秒、ゲインを300に設定しました。最初ゲインを500とかに設定したのですが、明るすぎて画面が真っ白になってしまいました。ゲインは最大780まで設定できるようですが、300程度で十分なことがわかりました。

上の画像のように明るく見るためには、SharpCapの右パネルのヒストグラムを見ながらの調整が必要になります。ヒストグラムをよくみると3本の黄色い縦の点線があります。そのうち左と真ん中の点線で、山を挟むようにします。すると淡い部分ががあぶり出されてくるはずです。線の位置は画面を見ながら色々微調整してみてください。ちなみに、有料版のSharpCapではこのあぶり出し操作を自動でやってもらうことができます。有料版を持っている場合は、ヒストグラムにある雷マークのようなボタンを押してみて下さい。自動的に淡い部分があぶり出されてくるのが分かると思います。このことを「オートストレッチ」と言います。

うまくあぶり出されて、見たい天体が画面内に入っていることが確認できたら、ライブススタックでノイズを落としてみましょう。メニューの「ツール」から「ライブスタック」を選びます。下に出てくるライブススタックの中のヒストグラムを同様にいじって、左と真ん中の黄色い点線で山を挟んでみて下さい。その際は右パネルのヒストグラムの線で挟むのは一旦元の位置に戻しておいて下さい。雷マークの横のリセットボタンを押すと一発で戻るはずです。リセットしておかないと画面が真っ白に近くなってしまいます。

ライブスタックでは、時間が経つにつれて画面が重なっていき、背景のノイズがどんどん綺麗になっていくのが分かると思います。ライブススタックのヒストグラムで大まかにあぶり出し、右のパネルのヒストグラムで微調整するなどもできます。各自色々試してみて下さい。


M57: 惑星状星雲で迷光が...

M27でCeres-CとNEWTONYでかなり見えることがわかったので、次の天体に移動します。次も今にも沈みそうなM57、こと座のM57惑星状星雲です。小さいですが、輝度の明るい星雲なのでハッキリ見えます。

IMG_3699
Gain300、露光時間3.2秒、LiveStack56枚、3分

実はM57を導入した時に、最初妙な迷光が画面に表れてきました。
IMG_3681
迷光エリアの中の真ん中少し上にM57が写っています。小さいですね。

色々な方向を遮ったりして試した結果、隣の家の窓の明かりが入ってきていることに気づきました。カメラの取り付け位置が鏡筒のかなり先端に近い所にあるので、鏡筒先端から入ってくる光がカメラに入り込んでしまうためです。今回はとりあえず光を遮るようにテーブルを移動して影になるようにして迷光を避けましたが、フードのようなものを自作するのが良いのかもしれません。自分で工作などして鏡筒を育て上げていくのもまた、趣味としては楽しいことなのかと思います。

IMG_3683
手前から来る光を机とPCで遮ってカメラに入らないようにする。


M31: アンドロメダ銀河でレデューサを試す

次は銀河を見てみます。秋と言えばM31アンドロメダ銀河です。

IMG_3703
Gain300、露光時間3.2秒、LiveStack69枚、3分40秒

腕の構造も多少見えているのが分かるかと思います。かなり感度の良いカメラと言えると思います。

焦点距離200mmですが、さすがにアンドロメダ銀河は大きくてCeres-Cでは入りきりません。そこで、レデューサのテストをしてみました。SVBONYの0.5倍のもので、アマゾンなどでも安価に手に入れることができます。Ceres-Cの先端にはねじ山がきってあるので、このようなアメリカンサイズ(31.7mm)のレデューサやフィルターなどを付けることができます。レデューサを直接とりつけてみます。

C040595A-D267-4FB0-831F-29806E8A6357
Ceres-Cの先にレデューサやフィルターなどをつけることができます。
この写真ではレデューサと、次の北アメリカ星雲で使うCBPをすでに取り付けてあります。

まずはレデューサが最低限使えるかどうかですが、カメラ位置を前後することで全く問題なくピントが出てくることがわかりました。その時の画像です。

IMG_3707
Gain300、露光時間3.2秒、LiveStack24枚、1分17秒

多少画角が広がっていることがわかります。ただし、レデューサをセンサーにかなり近づけた状態でとりつけてあるので、倍率はおそらく0.7倍くらいであまり減少されていなくて、見える範囲もそれほど広がっていません。また、この時間帯M31は天頂付近にあるため、経緯台では追うことが苦手で、短時間でも流れてしまっていることがわかります。


北アメリカ星雲

次に、白鳥座付近に移って北アメリカ星雲を見てみます。ところが、もうかなり西の低い空に傾いていて隣の家の明かりの影響が出ているせいか、位置はあっているはずなのにどう調整しても全く何もあぶりだすことができません。おそらく強烈なカブリのために大きな輝度差があって、ストレッチとかが役に立たないからだと思われます。

IMG_3708

こんな時は光害防止フィルターの類を入れると状況は劇的に改善されます。今回はサイトロン社のCBP(Comet Band Pass)フィルターを使いました。このフィルターをカメラと先ほどつけたレデューサとの間に挟むように取り付けます。こうすることでレデューサとセンサー間の距離を稼ぎ、倍率を下げることでより大きい範囲を見ようとしてます。その結果が以下の画像です。

IMG_3709
Gain300、露光時間3.2秒、LiveStack33枚、1分45秒

同じ位置を見ているのに、CBPがあるだけで劇的に星雲のあぶり出しが改善されることが分かるかと思います。また、星の位置を比較することで、より大きなエリアを見ていることも分かるかと思います。これで0.5倍程度になると思うので、焦点距離100mmの鏡筒にCeres-Cを取り付けているのと同じことになります。また、レデューサの星で四隅の星像が流れてしまっているのがわかります。これは安価な汎用的なレデューサのため、性能があまり良くないので仕方ないでしょう。

レデューサをつけたとしても北アメリカ星雲の一部しか見えていないので、大きな天体を見るにはCeres-Cではまだセンサー面積が小さいことがわかります。これ以上のエリアを見ようと思ったら、もっと短い焦点距離が必要で、こうなってくると望遠鏡というよりは、カメラレンズの範疇になってきます。次回、カメラレンズでも試してみようと思っています。


M42: オリオン大星雲

0時半頃、既にオリオン座がそこそこの高さまで昇ってきています。M42オリオン大星雲を導入してみました。オリオン大星雲は明るいので、わずか1分ちょっとの露光でも十分きれいになります。CBPはつけたままです。

IMG_3714
Gain300、露光時間3.2秒、LiveStack23枚、1分14秒

レデューサが入っているので、四隅は流れてしまっています。上の方にランニングマンも見えていますが、レデューサが入ってやっとM42と合わせて画角に収めることができます。


馬頭星雲と燃える木

最後は馬頭星雲と燃える木です。馬頭星雲は結構淡いので、露光時間を6.4秒に伸ばしました。

IMG_3716
Gain300、露光時間6.4秒、LiveStack18枚、1分55秒

それでも2分弱でここまで出ます。感度やノイズの少なさも含めて、Ceres-Cがセンサーの性能をきちんと引き出すようにうまく作られているのを、この画像がよく表していると思います。

次の日も朝が早いのと、ちょうどPCのバッテリーが少なくなったとの警告が出たので、ちょっと名残惜しかったですが、ここで撤収としました。


Ceres-Cの評価

Ceres-Cでの電視観望どうでしたでしょうか?私の評価は「相当いい」です。入門用の電視観望カメラとしては間違いなくベストバイだと思います。

まず値段。初心者にとってこの値段は電視観望をやってみる敷居が相当下がるのではないでしょうか?この値段で、作りに手を抜いているようなところは全くみられなかったです。

次に感度。予想より相当いいです。ガイド用と謳われているので心配してましたが、全くの杞憂で電視観望用途には十分な性能があると思います。IMX224はセンサーとしてはかなり古い(2014年発表)部類で、相当こなれているといえます。Ceres-Cは現在の技術でこなれたセンサーの性能を余すところ無く引き出しているような印象です。

ダークノイズに関しても秀逸です。見ている限り輝点に相当するものは一つしか確認できませんでした。秋になってきて涼しくなってきたとはいえ、これは驚異的です。Ceres-Cの解説を見ると

「Player OneのプラネタリーカメラにはDPS(Dead Pixel Suppression)テクノロジーが搭載されています。DSPにより自動的にデッドピクセル(ホットピクセル、コールドピクセル)が一掃されます。 」

とあります。おそらくこれが効いているのかと思いますが、電視観望には非常に有利に働くのかと思います。仮に輝点がたくさんあったとしても、SharpCapのリアルタイムダーク補正機能である程度緩和することはできますが、露光時間やゲインを変えるたびにダークファイルを入れ替える必要があります。ダーク補正をしないでいいのなら、しないに越したことはありません。特に初心者にとっては、手軽に綺麗な画像を得られるのは相当なメリットかと思います。


まとめ

 結論だけ言うと、電視観望用に購入する初めての入門用カメラとしては確実に「買い」でしょう。まだ1日触っただけですが、相当高性能で素直な印象を受けました。私としてはかなりの高評価です。

期待以上によく見えたので、まだまだ色々試したいです。Ceres-C関連の記事、もう少し続けようと思いますので、ぜひご期待ください。

以前「格安電視観望」という記事を書きました。その応用編です。




再試行の理由

今回改めてこの記事を書いたのは4つの理由があります。

1. 以前は入門用の電視観望用のカメラと言ったらASI224MCか、ASI290MC位しか選択肢がなかったのですが、近頃では多くのメーカーから入門クラスのCMOSカメラが発売されています。先日の「星をもとめて」の講演では現状で手に入るカメラを選び、選択例を示しました。最近の新しいカメラを例に試してみようと思います。




2. 多分これがもっとも大きな理由なのですが、SVBONYからCanonレンズのEFマウントをアイピース口に変更するためのアダプターが出ています。



アマゾンでも購入できます。


ちょっと前までなかったかと思いますが、いつも間にかNikon版も出たようです。



ZWOからも同様のアダプターは出ていて、こちらはT2ネジで取り付けるタイプになります。私はこれのオリジナルのバックフォーカス長が変えられるものを持っています。現在のものはバックフォーカス長が固定なはずです。


Nikon用もあるようです。


でもSVBONYのは半額以下ととにかく安い。初心者にとってこの差は大きいです。これを実際に使ってみたかったことが2つ目の理由です。

3. 以前の記事はQBPなどのフィルターを使いませんでしたが、QBP II、CBPとアメリカンサイズも出揃い1万円程度と安価になりました。効果は絶大なので、これを使わない手はありません。

4. 先日の星をもとめての講演配信を見た地元の富山県天文学会のHさんから、電視観望を始め用と思うが、カメラと鏡筒をどうすればいいか迷っていると直接質問を受けました。最初はASI294MCを勧めたのですが、最初なのでやはり入門用のものから始めたいということです。明日地元の牛岳で会う予定なのでそれまでにできるだけ簡単な方法はないか、探してみようと思ったのが4つ目の、というか突然やってみたくなった理由です。


機材

  1. CMOSカメラNEPTUNE-C IIを選びました。ZWOは最近は高級機路線で、入門機をあまり出していません。Player Oneは新しいメーカーですが、NEPTUNE-C IIを使ってみた限り、既にドライバーとかもこなれていて、実際にノイズがかなり小さい印象です。
  2. レンズは中古で数千円で手に入れた、手持ちのCanonのキットレンズ28-70mm F3.5-4.5。調べたら1988年発売だそうです。こんな古いレンズでも十分です。
  3. レンズをカメラを繋ぐアダプターは上に書いたSVBONYのCanonタイプのもの。ただしこれ、そのままだと無限遠でピントが出ないことがわかりました。対処法は後で記します。
  4. レンズの焦点距離が短いので、自動導入とかは無し。カメラ用三脚と自由雲台で、マニュアルで導入します。
  5. フィルターは、CBPかQBP。今回はQBPとしました。QBPの場合、赤外を通す可能性があるので、UV/IRカットフィルターと2段重ねで併用した方がいいでしょう。でも今買うならCBPの方がいいでしょう。CBPならUV/IRカットフィルターは必要ないです。
  6. 他にノートPC、接続用USB3.0ケーブル椅子などを用意します。

その他、こまかいものです。まず、自由雲台へのマウントですが、自由雲台にはアルカスイス互換のクランプをつけてあります。


カメラの後ろのネジ穴を利用して、Monotatoで買ったL字のアルミブラケットを取り付けています。


下側はアルカスイス互換プレートをつけ、間に上下で固定できるようなアルカスイスプレートをはさんで操作棒がわりにしています。



実際に電視観望開始

では早速組み上げて試してみましょう。

5E5A0BB3-9933-4B42-8B3A-C9FAA63E693E

上の写真のようになるのですが、最初試した時、このSVBONYアダプター

IMG_3452

無限遠どころか全くピントが出ませんでした。アダプターの距離が長すぎるのです。そのため、アダプターのアメリカンサイズに変換するところをネジを緩めてを外し(長いネジなので頑張って外す)、カメラ側の接眼アダプターも外して、T2ネジで直接カメラをアダプターに接続します。

IMG_0055

このさい、フィルターを取り付けられなくなるので、T2ネジとアメリカンサイズネジを変換する薄手のリングを使い(別のカメラについてきたモノですが、別途販売されていて)、


ここにフィルターを取り付けます。カメラのねじ山はまだ余るので、レンズを取り付けることもできます。

IMG_3449

IMG_3455


今回私が使ったレンズはオートフォーカス用で、ピントを合わせるためには強引にレンズ先端を手で回転させて伸縮させなければならず、しかもその範囲が狭いため、さらに必要に応じてレンズとSVBONYアダプターの間で回転させて距離を調整する必要がありました。そのためきちんとレンズを固定することができず、重力でレンズが垂れ下がって、星像が上側に歪んでしまいました。もう少し適したレンズの方がよかったかもしれません。

カメラレンズは単焦点レンズ、ズームレンズ(最初Zoomレンズと書いたが、これだと会議のZoom用のレンズとかと思ってしまった)ともに、短い焦点距離のものが中古まで含めれば安価に選びたい放題なので、いろいろ試すといいと思います。


曇ってるがとりあえず見てみた

この日は曇りがち。撮ったのは2ショットのみです。

昇りかけのM42オリオン大星雲です。28mmの画角でオリオン座が半分とちょっと入るくらいでしょうか。三つ星が縦に、右にリゲルが見えています。オリオン大星雲もそこまで大きくは見えません。
01_28mm_Neptune_M42

ズームレンズなので、70mmにして拡大してみました。これならオリオン大星雲も多少形がわかるくらいでしょうか。ちなみにこの時は空一面に一様な雲がかかっていて、肉眼で星はほぼ0。リゲルがかろうじてうすーく見えたくらいです。むしろよくこんな状況でここまで出たなというのが感想です。

02_28mm_Neptune_M42


まとめ

とりあえずのテストなのですが、以前のASI224MCを使った電視観望よりはるかに綺麗に見える気がします。Neptun-C IIとQBP、あとレンズを焦点距離の短いものにしたのが違いになります。明日の土曜日天気が良ければ牛岳でもう一度試します。

さらにもう一本MILTOLも用意していて、こちらは牛岳でご一緒する予定のHさんがAZ-GTiを既に買ったというので、それに載せてテストしてみようと思います。

追記: 牛岳に行く前に、このセットアップで自宅でもう一度試しました


今回は大人気のMちゃんシリーズです。

3つの箱

今週水曜日、3つ同じものが自宅に届きました。

IMG_2034

シュミットでまとめて投げ売り状態になっているMILTOLです。さっそく1台箱から取り出してみましたが、そこそこの重量で、フードも取り付け用の足もついています。華奢かと思っていた足も、なかなかどうして、十分頑丈なようで揺れも心配なさそうです。

IMG_2035

思ったより相当しっかりと作ってあり、あまりの安価で申し訳ないくらいです。しかも3つもあれば多少加工とか失敗しても取り返しがつきます。これは使い甲斐がありそうです。


Mちゃんを誘ってみた

次の日の木曜、昼は曇りですが、夕方から晴れる予想。この日は私は休暇をとっていて、子供の用事を済ませて午後から時間があったので、Mちゃんのお母さまに連絡。

Mちゃんは富山市科学博物館の観望会で会った現在小学5年生、4月から6年生になる宙ガールで、以前自宅にもきてくれました昨年末の観望会で会った時にお母さんが「赤いカメラを欲しがってる」とか言っていて、本人に話すとどうも電視観望のようなことをやりたがっていたので、今回のMILTOLがぴったりなようです。

電話越しでお母さんの横にいたMちゃんですが、「キャーキャー」言ってるのが聞こえるので、既に興奮気味のようです。まあ電話ではなかなか伝わりにくいので、とりあえず午後3時を目処に自宅に来てもらうことにしました。

年末に貸していた「ナイトウォッチ」をもう持ってきていたので、「え、もっと持ってていいですよ」と言ったら、既に手に入れたとか。確か中古本がすごい値上がりしてたと思いますが、たまたまアマゾンで新品で定価であったみたいです。(今調べてみたら、確かに新品で出てます。増刷したんでしょうか?)結構読み込んでいるみたいで、太陽のこととか聞かれました。たまたま玄関にPST付きのC8が転がっていたので、少しだけ話しました。小学生にとっては分厚い本だと思いますが、楽しんで読んでいるようです。


なぜMILTOL

今回は、MILTOLの箱開けから、カメラとの接続、組み上げ、設置、観察まで、基本的には全部Mちゃんに手を動かしてやってもらうつもりです。でもその前に、なぜMILTOLが必要なのか、Mちゃんが既に持っているポルタの80mmの望遠鏡だとダメなのかを理解してもらわなくてはいけません。いや、せっかくの機会なのできちんと理解して、納得しながら進めてもらいたいのです。

さてさて、小学生に焦点距離と口径とF値のことをきちんと理解してもらうのはなかなか大変です。実際聞いてみると、焦点距離と口径については意味は分かっていたようですが、F値はやっぱり理解できていなくて、焦点距離と口径の関係も理解できていませんでした。なのでまずは焦点距離から入ります。焦点距離というよりは、倍率ですね。鏡筒の焦点距離をアイピース の焦点距離で割ったものが倍率になるということは、きちんと理解していました。

まず倍率1倍というと、目で見ているのと同じです。何も拡大していなくて、全体が見えます。簡単のため目で見えるとして180度の視野があると仮定します。そうすると倍率が2倍になると視野が半分になるはずなので、90度の視野になるはずです。その分その狭い視野を拡大して見るということになります。3倍だと60度、10倍だと18度と計算していってもらいます。と同時に、直感的に両腕を狭めていってどれくらいの範囲を見ているのかを理解してもらいます。結果として、焦点距離が長い鏡筒ほど見える範囲が狭くなることを理解してもらいます。ここらへんは全然問題なく、最初から分かってるような感じでした。

次に口径です。Mちゃんの持っているポルタの口径80mmを基準に考えます。口径が倍の160mmになったら明るさは何倍になるかという問題です。これは円の面積を考えれば簡単ですね。と思って話を進めたら、いまいちピンときていないみたいです。どうやら円周のことはわかっていても円の面積がわかっていないみたいでした。調べて見ると円の面積は6年生で習うみたいですが、でもMちゃんはまだ5年生。「勉強しておけばよかった」と悔やんでましたが、まあその場で理解してもらいます。円をいくつもの扇型に分けるような円の面積の求め方の原理を少し説明して、あとは正方形で考えてもらったらかなり実感したようです。正方形でも一辺の長さを倍にしたら面積は4倍と同じですね。これで、口径を倍にしたら4倍の明るさ、3倍にしたら9倍の明るさということがわかったようです。

もう一つ重要なことは、同じ口径で焦点距離を2倍伸ばしたら明るさは4分の1になり、焦点距離を半分にしたら明るさは4倍になることです。これは見える面積を考えてもらったらすぐにピンときたようです。焦点距離が長くなると、狭い範囲を引き伸ばしてみるので、その分暗くなるということです。

ここまでくるとF値は簡単です。焦点距離と口径の比ですが、F値の大きな細長い鏡筒と、F値の小さなずんぐりムックリの鏡筒のイメージを持ってもらうのと、焦点距離とか口径を知らなくてもF値そのものが鏡筒の性能を表す指標になるというイメージを持ってもらいました。例えばFが小さいと明るい、Fが大きいと暗いとかです。

ポルタが口径80mmで、簡単のため焦点距離800mmと考えます。今回のMILTOLが口径5cmで焦点距離200mmです。F値が10と4なので、本質的にMILTOLの方が明るいことと、ポルタで4/3インチサイズのASI294MCを使って見るのと、MILTOLで1/3インチサイズのASI224MCを使って見るのは同じ範囲を見ることになります。これは実際にセンサー面積をASI224MCとASI294MCと見て実感してもらいました。初心者がいきなりセンサー面積の大きいASI294MCに行くことはなかなか厳しいので、まずは小さいサイズのセンサーで始めてもらう。そのために短い焦点距離のMILTOLが必要だったと、やっとMちゃん本人とお母さんにも理解してもらいました。

おもしろかったのが、Mちゃんが「時間と速度と距離の関係と似ている」と言っていたことです。確かに口径とF値をかけると焦点距離になるのは、時間と速度をかけると距離になるのに似てますね。


MILTOLの組み立て

さて、一応頭では色々理解できてきたので、次は実際の組み立てです。まずはMちゃんに新品のMILTOLの箱を開けて、中身を取り出してもらいました。最初恐る恐るでしたが、もう全然壊してもらってもかまいせん。むしろ、使い込みすぎて故障したくらいの方が嬉しいくらいです。

MILTOLは一見カメラレンズのようなので、じゃあカメラにつけてみたらと言って、下の子が使っているEOS Kiss X5に取り付けてもらいました。そもそも一眼レフカメラに触るのも初めてなので、これも恐る恐るです。(私の中ではデフォルトの)マニュアルモードで、露光時間とISOを調整して外の景色を何枚かとってもらい、その際ピント合わせが必要ということを理解してもらいました。

次にCMOSカメラとして今回はASI224MCを使ってもらうことにしました。いくつか候補はあったのですが、安価なSV305-SVは借り物ですし、ASI178MCは感度では負けます。ASI224MCは惑星でも使いますが、最近ASI462MCを手に入れたので、しばらくは必要ありません。ASI224MCなら最初の頃私も電視観望で使っていたので、十分使えることもわかっています。

まずはPCにドライバーをインストールしカメラを認識させることをやってもらいました。あ、PCだけは自分の家から持ってきてもらいました。聞いたらお父さんと一緒に使っているものだそうです。カメラが認識されたことを確認するために、ASIStudioも一緒にインストールしてもらいました。ドライバーとかソフトはZWOのページなのですが、小学生なので当然英語は読めません。でもEdgeに翻訳機能があるんですね、十分理解できるような日本語になっていました。

IMG_2040

カメラ単体で、ASILiveで明るさが変わってカメラに反応しているのが見えたので、カメラ部分はOK。次にMILTOLとの接続です。今回購入したMILTOLはCanon EFマウント用ですが、そのEFマウント部分は回すと取り外せるようになっていて、外すとT2ネジ(M42、075mmピッチ)のオスネジが出てきます。ASI224MCにはT2ネジのメスが切ってあるので、ここに直接取り付けることができます。とりあえずMILTOLとASI224MCはくっつきましたが、これはまた後でピントが出ないというトラブルになります。

鏡筒をどう固定するかは初心者にとって難しい問題なのかと思います。市販の既製品ならいいですが、自分で色々組み合わせる場合は大変です。多くの初心者が最初に持つ経緯台は、ほとんどはVixenのアリミゾになるのかと思います。最初からVixenアリガタが鏡筒に付いていればいいのですが、特に短焦点を探り出すとカメラレンズの方向になり、普通は足も何もついていません。MILTOLの場合はラッキーなことに、リングと、アリガタではないですが足がついていました。なのでここに必要な規格のプレートを取り付ければOKです。

IMG_2043

手持ちで余りのアリガタプレートがいくつかあったのですが、穴が合いません。そもそもMILTOLのねじ穴がインチ規格なので、ネジも手持ちでは長さが限られてしまいます。1/4''のネジがハマるのを確認しましたが、これだとプレートの穴がM6で微妙に小さくて通りません。

なのでMちゃんにドリルで穴を広げてもらうことにしました。M6.5のドリルを使い穴を広げてみます。ドリルはお父さんが日曜大工も好きで、一緒に使ったこともあるみたいなので、ほとんど問題なく進みました。無事に穴も空きましたが、二つの穴でネジを止めようとすると、もう一つ最初から穴を開けなければならないので、とりあえず一つだけで固めにネジを固定して、まずは使ってみようということになりました。


さあ、見えるかな?

アリガタをつけることができたので、Mちゃんのポルタの三脚と経緯台を車から出してもらって、取り付けてみます。この時点で17時くらいでしょうか、まだまだ明るいのでどこか遠くの景色を見てみます。

と、ここである程度予測はできていたのですが、やはりバックフォーカスが足りなくてピントが出ません。T2で接続しているのでT2の延長筒とかあればいいのですが、なかなか都合がいいのは手持ちではなく、その代わりに一度Canon EFのアダプターをつけて、さらに手持ちのZWOのCanonマウントからT2へのアダプターを間に挟むことにしました。これでやっとピントが出ました。

IMG_2046

まだ明るいですが、空もかなり雲が無くなってきて、白い月が顔を出しています。じゃあさっそく月を見ようということになりました。でもやはり、経緯台での導入はかなり大変です。原因の一つがセンサー面積が小さいことで、それを解決するために短焦点のMILTOLを選んだのですが、それでもなかなか月さえも入りません。ここは少しだけ手伝いました。私がある程度のところまでアタリを持っていって、あとは微動ハンドルで振ってやると、月を捉えることができました。

ピントを合わせて、経緯台なので当然自分で追っかけて行かなければならなくて、でもよっぽど嬉しかったのか、地面に膝を立てて夢中で操作をしています。この時も最初はASILiveを使ったのですが、やはり英語で苦労しているようです。調べてみたら、ASICapは日本語化されいるようです。惑星が主な用途ですが、月なので明るくてもちろんぴったりです。早速ASICapに変えてみて、日本語になったらずいぶん楽になったようでした。見てるとありとあらゆる機能を試していて、みるみるうちに操作はマスターしたようです。

IMG_2047

この間に3回くらい「椅子に座った方がやりやすいよ」と声をかけたのですが、私の声は全く届かず、ひたすら自分の世界に入っていました。お母様も苦笑い。どうやらいつものことのようです。

しばらく月を操作して、画像も保存できて、やっと満足したみたいです。お腹が空いたとのことなのでいったん食事をとってきてもらい、まだ続けたいというので再び夜に戻ってきてもらうことにしました。いました。その間に私も食事です。


暗くなってからが本番

戻ってくると辺りは既に真っ暗。と言っても月齢12日の月が出ているので、かなり明るいです。早速再開し、M42オリオン大星雲に挑戦です。今度は最初から全部自分で導入です。最初リゲルを探していましたがちょっと方向が違いそう。そのうち明るいのが見えて、多分三つ星の一つだとわかりました。位置的にはアルニタクなのでそのまま下にいけば見えるはずです。そうこうしてると明るい領域が一瞬通り過ぎて「あーっ」と言って戻すと、ヤッター!見事オリオン大星雲です。

IMG_2049

ASICapのパラメータをいじって、ある程度見栄えが良くなることを確認して、ノイズを落としたくなったので、次はASILiveに戻ります。ASICapで慣れたのか、今度は操作もそこまで迷いません。ライブスタック関係だけが新しい機能でした。それでも見てると全部の機能を試しているようです。どうしてもわからないとたまに聞いてくるので、その場で答えるとすぐに吸収してしまいます。画像保存、ライブスタック、Brightness contrast saturationをいじってのあぶり出し、ヒストグラムをいじってのあぶり出し、とまあ、本当にあっという間に一通り学んでしまったようです。子供はとんでもないくらいに吸収が早い早い。びっくりするようなスピードです。私はほとんど何もいうことがないので、もう楽で楽で、途中お母さんと雑談してるのですが、Mちゃんの耳にはやはり全く入っていないみたいです。

トラブルといえば、露光時間も調整しましたが、1秒か、せいぜい2秒が限界です。なぜかというと、経緯台で追尾も何もしていなので2秒でも流れ始めてしまうからです。

次に、燃える木と馬頭星雲に挑戦。上のほうに行って、アルニタクを目印に燃える木はすぐに見えましたが、露光時間が伸ばせなくて馬頭星雲がどうもわかりません。月が明るいのでこの日はここらへんまででしょうか。

再びM42に戻って、少し余裕が出たのか「きれーい...」とため息混じりにうっとりしていました。今までずっとポルタだけで、見えるものは多分見尽くして、星雲が見えないことに悔しくて悩んで、やっと自分で組んだシステムで見えたわけです。多分私が想像するより、ずっと楽しいんでしょう。このころしか味わえない楽しさだと思います。私はそれを見てるだけで幸せです。

21時頃になりました。とにかくこれで最低限、自分で楽しめるはずです。そのまま一揃い持って帰ってもらいます。ASI224MCはあまり使ってないのでいつか返してもらえればいいです。MILTOLはこのために買ったようなものなのでずっと使ってもらえればと思います。ZWOのキャノンアダプターは必要なので、T2の延長など代替品を探します。

アップグレートもいろいろ考えられます。
  • マニュアル導入ならファインダーがあるといいのですが、でもどうやって取り付けるか。何処かに穴を開けてタップを切るかでしょうか。
  • 穴と言えばアリガタ固定の穴をもう一つ追加した方がいいでしょう。
  • Mちゃんの自宅は私のところより街中なので、かなりの光害地です。QBPがあるとさらに見えるのかと思います。
  • 銀河とかまで見るのなら、自動導入もあった方が楽でしょう。AZ-GTiなら小学生でもお年玉とかで買える範疇に入ると思います。
こうやって性能を追求していくのもまた楽しいと思います。

そうそう、お母様から「MILTOLのお金を払う」と言われたのですが、今回は私の趣味も入っているので断りました。それよりも「もし余裕があるならAZ-GTiの予算に回してあげてください」と伝えました。この日、Mちゃんが喜んでいるのと、導入で苦労しているのを見ていて、早いうちにあった方がいいと理解してくれたみたいで、納得してくれました。でもそこで、SkyWatcher製品が軒並み入荷遅れになっていることを思い出しました。

そもそも、Mちゃんは熱中しすぎるのでしばらく天文中断命令が出ていたらしいです。やっと春休みになって、長時間集中できる時間が取れるので今回のお誘いはちょうど良かったとのことです。なのでAZ-GTiもこの春休みにと最初思ったらしいのですが、いまの遅延だと数ヶ月のオーダーでかかりそうです。まあ必要なら私のを持っていけばいいのですが、まずは今のセットを使いこなしてからですかね。

そうそう、CP+の中継、Mちゃんも1時間遅れくらいで見てくれたそうです。中継時には習っている剣道の最中だったみたいです。面白かったと言ってくれました。あまり小学生が見ることは考えてませんでしたが、理解してくれたみたいで嬉しかったです。

ここしばらくシリーズ化しているメジャー天体撮り直しシリーズ、M31アンドロメダ銀河M45プレアデス星団に続き今回はM42オリオン座大星雲です。







これまでのオリオン大星雲

M42は初期の頃からのFS-60Qでの撮影も含めて、


QBPのテスト
の時や、


AZ-GTiの赤道儀化のとき


ラッキーイメージングなど細部出しに特化したもの、


また明るい天体のため、電視観望でもよく見ることができ、見ている画面を保存して簡易的に画像処理してもそこそこ見栄えのするものができてしいます。


電視観望の応用でAZ-GTiの経緯台モードでの撮影も試したりしました。


TSA-120を手に入れてからも、フラットナーがない状態でも解像度ベンチマークなどでトラペジウムの撮影を中心に何度も撮影してきました。分解能に関して言えば、この時が最高でしょう。


その後、昨シーズン終わりにやっとTSA-120用に35フラットナーを手に入れてから一度テストしていますが、四隅の星像の流れはもちろん改善していますが、中心像に関してはフラットナーなしの方が良かったというのが以前の結論でした。



でもテスト撮影も多く、なかなか満足のいく露光時間はかけていませんし、仕上がりに関してもまだまだ細部を出すことができるはずです。今回はそれを踏まえての、初めてのまともな長時間かけての撮影になります。


撮影開始

撮影日は平日でしたが冬シーズンにしてはたまたま晴れていた(次の日からはまたずっと天気が悪い予報)のと、月が出るの午前1時過ぎと、多少の撮影時間が確保できそうでした。平日なので自宅での庭撮りになります。夕食後準備を始めました。このシーズンオリオン座は夜の始めはまだ低い高度にいるので、焦らずに準備できます。

鏡筒はTSA-120。これに35フラットナーをつけて、前回M45の撮影の時に準備したCA-35とカメラワイドアダプターをつけます。カメラはEOS 6D。フィルターはここのところ光害地では定番のCBPです。青を少し出したいことと、赤外での星像肥大を避けることが目的です。赤道儀はいつものCGEM IIです。撮影環境はStick PCにBackYardEOSを入れて、PHD2で二軸ガイド。

一つ気をつけたことが、Stick PCの電源を最初から大容量バッテリーのAC電源出力からとったことです。これは、これまでSharpCapでの極軸合わせなど計算量が多くなった時に何度か落ちたことからの反省です。前回のM45の撮影時の画像連続チェックで落ちてからAC電源に交換して、それ以降落ちなかったので、その経験から今回は最初からAC電源です。効果はテキメンで、SharpCapでの極軸合わせの時も全く問題ありませんでした。ダメな時はネットワークが不安定になるところから始まるのですが、そんな兆候も全然なく、やはりネットワークがダメだったのも計算負荷にで電力がネットワークアダプターのほうに回っていなかった可能性が限りなく高かったと言う結論になりそうです。


オリオン大星雲の撮影目標

せっかくの明るい星雲なので、
  • 階調と分解能をできるだけ出すこと。
  • 長時間露光でノイズを抑えること。
  • 星雲周りの分子雲を出すこと。
  • トラペジウム周りで飛ばないこと。
などを目標とします。

露光時間は淡いところを出したいので300秒とします。自宅庭撮りでこれだけ長くできるのはCBPなどの光害カットフィルターがあるからです。長時間露光の代わりに、ダイナミックレンジを稼ぎたいのでISOは少し低めの800としました。これでヒストグラムのピークが1/5くらいのところになりました。それでもトラペジウム周りは完全にサチってしまうので、別途同じISOで1秒露光のものを20枚、最初に撮影しておきました。同じISOにしたのはバイアスとフラットが使いまわせると目論んだからです。でも、後で書きますが、この目論見は失敗に終わります。


露光時間とISO

ISO800にした理由ですが、このページを見るとISO100の時のダイナミックレンジが12bit=4096、ISO800で11.5bit=2896とそこまで落ちないからです。さらに300分の1の露光時間の1秒露光で20枚ほど撮影してあるので、うまくつなぐとさらに300倍のダイナミックレンジ(2896x300= ~869000)を稼ぐことができることになります。

でもまあ、画像に写っている中で一番明るいオリオン座のι(イオタ)星のHatysa(ハチサ)が2.75等級なので、それより例えば15等級下の17.75等級を見ようとすると100万のダイナミックレンジが必要になり、既に不足となります。300秒露光の画像は既に背景のヒストグラムで最大値の1/5位のところにあるので、ということは背景の5倍の明るさで既にサチることになってしまいます。こうやって考えると恒星に割り当てることのできるダイナミックレンジはものすごい小さいことになってしまいますが、これでいいのでしょうか?何十枚もスタックして背景のランダムなノイズを下げ、オフセットは引くことができるので、もちろん1枚の時よりダイナミックレンジは増えます。画像処理のストレッチ過程で暗い恒星を炙り出すので、RAW画像の見た目の5倍というよりは実際にはもっと広いダイナミックレンジを扱うことができます。それでもサチっているところはサチったままです。

逆に言うと、背景に近い暗黒帯などは(低い方の)ダイナミックレンジが十分にあるところで情報としてRAW画像の中に残しておかないと、きちんとした諧調で表現することができなくなります。例えばPhotoshopでRAW画像を見たときに背景ピーク位置が256段階の3くらいのところにあったとします。ピークの幅が3くらいで、この中に暗い部分の背景の情報が入っているとします(実際には欲しい部分は背景のピークより少し値が大きいところにありますが、幅は同程度と仮定しています)。16bit=65536で処理するとすると1段回で65536/256=16階調あることになるので、3段階だとわずか48階調で背景の暗黒帯や対象天体の淡い部分などを表現することになります。ところが、背景ピークが10倍の30あたりにあり、その幅が30程度あるとすると、16階調をかけて480階調で表現できるようになります。ADCの量子化ノイズなどと言われたりしますが、一番見たいところをADCのどこの位置に持ってくるかを露光時間はゲインで調整するというわけです。でも実際にはたとえ階調不足でも、今のソフトはよくできていて、飛び飛びになっている階調を自動で補完してくれるので、見かけ上は階段状に見えるようなことがあまりなかったりします。

とりあえず今回は明るすぎる恒星は主に画像処理で回復し、トラペジウム周りの白飛びのみを1秒露光の画像で補完することにします。

セットアップ後は自宅からぬくぬくリモートモニターです。月が出る午前1時過ぎまで仮眠でも取ろうと思いましたが、結局そのまま起きていて、片付けが終わって寝たのが2時過ぎだったので少し寝不足になってしまいました。


6Dのセンサー面の清掃とフラット画像

後日、画像処理のためにフラットなどを撮影します。まずはカメラを外せないフラットからです。本当は太陽が出ている明るい時に撮影したかったのですが、北陸はしばらく冬型の気圧配置で、今後天気は期待できそうにないので、曇りの日に撮影することに。そういえば今回はM42の撮影前にカメラのセンサー面の掃除をしたので、フラットフレーム最近いつもあるゴミの後はほぼ一掃されていました。清掃といってお、カメラの清掃モードを利用してセンサー面を露出し、エアーで吹き飛ばしただけです。これだけでかなりの効果がありました。

フラットダークとバイアスに関しては同じISOの以前使ったマスターファイルがあるので、それを再利用できます。

ダークは冷蔵庫と冷凍庫にカメラを入れて冷却状態で撮影します。温度がばらつくので、多少多めに撮影しておきます。それでも枚数が稼げないこともあるので、その場合はダーク補正なしでCosmetic Correctionのみにする時もありますが、今回はそこそこの枚数を稼げたので撮影時の温度に合わせて選択して使うことにしました。


画像処理

撮影したファイルをPIのWBPPで処理します。できたファイルをPCCにかけます。背景に分子雲が大量にあるのでカブリとの見分けがつかず、ABEやDBEは使わないことにしました。ノイズ処理とDecombolutionもPIで試しましたが、やはりまだDeNoiseの方が有利な気がして、今回も使いませんでした。いずれ移行したいですが、もう少し検討してからにしてみたいです。

恒星中心の回復はRepaired HSV Separation Scriptを使い、Masked Stretchで恒星を保ちながら炙り出しました。

問題はStarNetの適用のタイミングです。今回はPhotoshopでも炙り出す余地を残したために背景と恒星の分離を少し早い段階で済ませました。そのため、PSでの処理時に恒星をさ散らすことになってしまったので、あまりMasked Stretchの意味がなかったかもしれません。でもその一方、恒星を全くサチらせずに処理すると、恒星が野暮ったい感じになりインパクトに欠けることにもなります。今回はサチらせる方向を取りましたが、ここはもう少し検討したいところです。もしかしたら再処理するかもしれません。

1秒露光の画像の処理も同様にPIでやったのですが、WBPPが全くうまくいきませんでした。仕方ないので、マニュアルでCosmeticCorrectionから順番に確認していくと、ImageCaibrationのバイアスやフラット補正が全くうまくいきません。バイアスファイルやフラット補正ファイルは、ISOを合わせた300秒露光の補正で使ったものの使い回しなので問題ないはずです。ファイルが問題と言うよりは、補正すること自体がダメなようです。簡単に言うと暗かったライトフレームが補正で明るくなってしまうような状態です。どうやってもうまくいかなかったので、補正は諦め、撮影した21枚、21秒分を位置合わせしてスタックしただけにして、トラベジウム周りだけを使うことにしました。

300秒画像のトラペジウム周りはサチっているので、境目が滑らかになるように輝度を落とし、そこに1秒露光の画像をPhotoshop側で合成しました。

結果は以下のようになります。
masterLight_PCC_pink_MS_all5


2020/12/14追記: 次の日少し見直して1から処理し直しました。StarNetを使わずにマスク処理で恒星部を調整し不自然さと幸理をできるだけ無くしています。あと、まだ赤寄りだったのでもう少し青寄りにして色調豊かにしました。まだ不満はいくつか残っていいます。
  • 分子雲の中の微恒星周りが不自然です。これはマスクの領域を拡大しすぎたからかと思います。明るい領域の微恒星と暗い領域の微恒星では多分マスクの扱いが違うのかと思います。最後に気づいたので力尽きて諦めました。またそのうちに解決策を手段を考えます。
  • 分子雲と背景のノイズ処理が甘くてボコボコしているようなところがあります。DeNoiseの効果なのですが、他のノイズ除去フィルターでも同じようになってしまいます。Dfine2で大まかなノイズを除いてからDeNoiseで解決できる可能性もありますが、根本的には露光不足なのでさらに長い時間撮影するのが一番です。
  • かなり炙り出しているので、人工衛星の軌跡が目立ち始めています。軌跡が残っている画像は全て捨てるのが解決策なのですが、今回もかなりの枚数に軌跡が映り込んでいます。これだけ衛星が多いとオリオン座はもう難しいのかもしれません。
それ以外のところは、「今のところ」不満はありません。でも気づいてないことがまだたくさんあると思うので、あくまで今のところです。

masterLight_integration2_ABE1_PCC_SCNR_HSV_MS_all3_cut
  • 撮影日: 2020年12月9日20時57分-12月10日1時10分
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 鏡筒: タカハシ TSA-120 (口径120mm, 焦点距離900mm) + 35フラットナー + CBPフィルター
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • センサー: Canon EOS 6D HKIR改造
  • ガイド: PHD2 + 120mmガイド鏡 + ASI178MCによるディザリング
  • 撮影: BackYard EOS, ISO1600,  露光時間: 300秒 x 50枚 = 4時間10分 + 1秒 x 21枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC, DeNoise
分子雲については十分に出ていて、星雲本体の階調も分解能も満足できます。トラペジウム周りもそこそこ自然に出ています。

その一方、恒星部にはまだ少し不満もあります。露光時間が300秒と長いために星像がガイド揺れやシンチレーションでボテっとなるのは仕方ないです。でも1秒露光の方でトラペジウム部分を見てもあまり分離できていません。ピントがずれている可能性もありますが、おそらくこの日はシンチレーションが酷かった可能性が高そうです。

トラペジウムもピシッと見えていて、背景もきちんと出ているようなものを多露出露光合成なしで撮れるような、タイミングと機器とパラメーターが揃った時に、いつかまた気合を入れて撮影してみたいものです。でもまだ今の機材でももう少し攻めることができる(ラッキーイメージングでしょうか?)はずなので、今後も継続して挑戦していきたいと思います。オリオン大星雲は深いです。


まとめ

メジャー天体際撮影シリーズはこれで終わりかと思います。4年半前に星を始めて、最初の頃に挑戦したものでしたが、機器も技術も4年半の間に随分進歩したことがわかります。ソフト的な進歩も大きいです。

特にPixInsightでのDBEやストレッチの技術と種類の多さ、StarNetでの分離、Nik CollectionやDeNoiseなどの細部だしやノイズ除去など、自分の腕の不足を明らかに助けてくれます。今後はこういった便利なソフトから少し離れて、自分の腕で画像処理を極めたいと思っていますが、実際この楽な状況から本当に脱却できるのか?まあ、当分はそのままかもしれません。


おまけ

Annotationです。

masterLight_PCC_pink_MS_all5_Annotated


恒例の以前FS-60Qで撮影したものです。約4年前と

cut

1年半前です。

light_M42_PCC_maskstretched_ok_HDR_dark

今回の撮影もまだ不満はありますが、自己ベストは明らかに更新です。何年か経つととりあえず進歩の跡が見られるのはいいものです。オリオン大星雲は楽しいので、また条件を変えて挑戦します。




SharpCapの一眼レフの対応にあたって、これまでEOS 6Dで試してきましたが、今回残りの手持ちの機種でもテストしてみました。

 



手持ちの一眼レフカメラの接続テスト

前回電視観望まで試したEOS 6D以外にはEOS kiss X5とEOS kiss X7とEOS 60Dがあります。



X7はノーマルですが、娘のものなのでとりあえず手を出さないようにしておいて、X5と60Dを試すことにします。この2機種は天体改造済みのもの。なので接続テスト後は赤外の星雲とか見てみるのも面白いはずです。

先週末の金曜の夜、時間が少しあったのでその2機種のテストをしました。60Dはそのまま問題なく繋がり、X5の方も最初つながらないと思ったのですが、単なるミスで、手順さえ間違えなければそのまま順調に動きました。ちなみにミスというのは、
  • 最初動画モードでやっていてエラーが出た(でもそのあとさらに動画モードで試したら動いたので、この時点でバッテリーがギリギリだったのかも)。
  • バッテリーが空だった。
  • バッテリーを変えて、1枚だけ撮れたが、また動かなくなった。と思ったら変えたバッテリーも空だった。
  • 接続ケーブルのコネクタがゆるゆるで、いつのまにか抜けていた。
と、簡単なことばかりです。でも古い機種とかいう先入観があるとダメですね。「あー、やっぱり動かないんだな」と思ってしまいます。皆さんはくれぐれも私のような間抜けなミスは避けてください。


安価な電視観望入門セットアップの可能性

60DとX5の両方ともが動いたのと、夜になって天気も良くなってきたので、外でどう映るかのテストをしてみます。どちらにしようか迷いましたが、より安価で使える方をと思い、X5で試すことにしました。

レンズはキタムラかどこかで中古で数千円で手に入れた、キットレンズクラスのEF 28-80mm  F3.5-5.6で、昔一度三脚ごと倒れて壊れたやつです。CANON CAMERA MUSEUMに1991年発売で、定価42000円とあるので、付属レンズではなかったのかもしれません。これを80mm側で使います。なのでF5.6でそこそこ暗いです。

ちなみに、当時のX5のレンズキットにはEF-S18-55 IS IIがついてきたそうです。ダブルズームキットだとEF-S55-250mm F4-5.6 IS IIなので、電視観望には後者の方が焦点距離的にはいいかもしれません。中古だと、本体だけだと1万円台前半から後半、レンズキットで2万円代前半でした。もしこのテストがうまくいくなら、これくらいの値段からなら始めたいという人がいるかもしれません。

全くの初心者、
もしくは一眼レフカメラだけを持っている人が
電視観望に挑戦した場合、どんなことができるのか?

という可能性を示せればと思っています。いかに電視観望に対する敷居を下げるのかというのも目標としたいところなので、できるだけ安価にすむというのは大きなファクターの一つです。

以前も格安電視観望について記事を書いたことがありますが、電視観望をする際、一番高価になるなのがCMOSカメラなのです。安価なCMOSカメラはセンサー面積が小さく導入が難しくなり、その一方、十分な面積のセンサーを持つCMOSカメラはかなり高価で、そのことが初心者に対する敷居を上げてしまっています。

中古市場ではもうかなり安価なX5でもAPS-Cサイズで、電視観望で主流のマイクロフォーサーズサイズのASI294MCより既に大きいのです。でも値段だけで考えたら5分の1から10分の1とかでしょうか。これはうまくいったら相当インパクトがありそうです。


EOS X5による電視観望テスト

とりえずテストの結果を見てみましょう。まずはファーストライト。雲がある時のオリオン座付近です。全景が見えるようにZoomが25%です。20秒露光で4枚スタックなので、80秒ぶんです。

IMG_0710

ノイズも多少ありますが、意外に悪くなさそう。

雲がなくなった時に少しだけ拡大(33%)。同じく20秒露光で4枚スタック、80秒ぶんです。

IMG_0713

馬頭星雲とかも一応出てますね。

さらにM42部分を拡大。20秒が5枚です。

IMG_0715

うーん、ノイズはまだ多いですが、写りはそんなに悪くないですね。高々80mmのレンズで、M42部分をかなり拡大していることになるのですが、恒星がそこまで肥大していないです。レンズ枚数が少ないのか?F5.6で暗いから収差も小さいのか?これなら観望会で見せることも許容範囲かと思います。

X5のセンサーはAPS-Cの22.3×14.9mmで5184×3456ドット。ここから計算すると1ピクセル4.3μmで、ASI294MCのピクセルサイズとほぼ同じサイズです。感度はほぼほぼ1ピクセルのサイズに比例するので、ASI294MCクラスが格安で買えると考えると、かなりお得かもしれません。

一方、馬頭星雲と燃える木をみると、もう少し赤の感度が欲しいかなというところです。

IMG_0717
これで20秒x6枚です。一応天体改造済みでこれなので、センサーの感度そのものはASI294MCに比べるとやはりもう少しといったところなのでしょうか。今回使ったのがF5.6と結構暗いレンズなので、レンズを明るいものに変えることでまだまだ改善はするはずです。さらにQPBとかの光害フィルターもつけていないので、その分も改善するかもしれません。

もう一つ、M31アンドロメダ銀河です。これで20秒x5枚、計100秒です。

IMG_0724

ちょっとノイジーですが、何とか構造も見えかています。ここらへんまで見えるなら、十分楽しめるのではないかと思います。

視野が回転し始めてるがわかるくらいまで、5分くらいまでスタックしたのが下の画像です。ノイズがまだノイズが大きいですね。スタックでのノイズ軽減があまり効果的に見えません。でも今回はダーク補正もしていないので、次の課題はここらへんのノイズの緩和とかでしょう。

IMG_0729


最後はM42すばるの20x13=4分20秒スタック。これも回転が見え始めています。青い分子雲がわずかに見えかています。CBPとか試すと面白いかもしれません。

IMG_0736


この日の環境

ちなみにですが、この日は月齢23日で、下弦からもう少し欠けた位の、まだまだ明るい月夜です。場所も自宅の庭からで、光害フィルターも無しです。普通に考えたら星雲や銀河を見るような状況ではないにもかかわらず、ここまで見えているのは随分と頑張っているのではないでしょうか。環境がいい状態で試すとまだまだ改善しそうです。

今回使ったものは一眼レフカメラの中でも入門クラスで、レンズもキットレンズクラス。それも結構昔のもので中古市場では値段もかなりこなれています。少なくとも、CMOSカメラしか選択肢がなかった状況から、中古の一眼レフカメラまで範疇に入ってくるとなると、はるかに可能性が開けると思います。


電視観望と撮影の境界

実はこのテストをしている時に、結構いろいろ考えさせられました。果たして電視観望と撮影の境界はどこだろうというものです。一眼レフカメラを使って、15秒とか20秒とかの露光で連続してシャッターを切るのは、もう撮影ではないのか?という疑問を持つ方も多いと思います。リアルタイム性として考えると、少なくとも動画のようになるわけではありません。

私自身は、それでもまだはっきりとした境界が存在すると考えています。特に今回のテストを通してよりはっきり自覚できるようになりました。

大枠での定義は、目的の天体がモニターなどを通して「観望しているその場で」十分に見えているなら、それは電視観望と言っていいのでは。もし、その場で十分に見えなくて、「後の画像処理」をして初めて十分に見えるようになるのなら、それは電視観望というよりは撮影という範疇に入るのではということです。

例えば、
  • 今回使ったX5とレンズだけで、赤道儀に載せて10秒の露光をして、カメラ付属のモニターに出してみるだけだと、おそらく「後の画像処理」がなければ十分天体が見えることにならないと思うので、これは電視観望ではないと思います。
  • 一方、HUQさんが最初にやったように、α7Sで1/4秒露光で動画モードでHDMI出力してその場で十分見えるようにしている場合は、十分電視観望と言えるでしょう。
  • 例えば、暗い空でX5で1分くらいと十分露光して、目的とする天体が十分出ていて、それをその場で楽しむというのなら、これはリアルタイム性は薄いけれども電視観望と言ってしまってもいいのかと思います。
どれくらいの露光時間かではなかなか定義はできないので、その場で楽しめるかどうかというところがポイントになるのかと考えるようになってきました。 


電視観望を可能にする重要な技術

電視観望の技術の中で、いくつか非常に重要なものがあります。例えばSharpCapのヒストグラムでのオートストレッチボタンや、ストレッチ関数と呼ばれる中間値と黒レベルを利用した、リアルタイムでの簡易画像処理です。これは「その場で天体を楽しむ」ということに大きく貢献しています。

また、LiveStackも電視観望の重要な技術だと思います。もっと具体的に言うと、単に画像をその場で重ね合わせるだけでなく、また画面の平行移動や回転だけで星を合わせるだけでもなく、LiveStack時に星の位置をきちんと認識して画面を歪ませて星を合わせていく技術です。PixInsightやSequatorなどでは後の処理で同様の画面を歪ませての位置合わせはできます。でもその場で毎回やるわけにはいかないので、電視観望のツールにはなり得ません。こういった高度な処理をリアルタイムで行うことで、星像を肥大させずにスタックし、ノイズを減らしていくことができます。さらに言うと、この技術を用いると赤道儀も必要とせず、たとえ経緯台で視野が回転してもきちんと星の位置が合うということです。もっと言うと、ある程度広角にして、見ている間に天体が画面から逃げていかなければ、経緯台さえも必要とせず、固定の三脚だけで星像の肥大を避けスタックしていくことができます。

このような高度な技術はいまのところ私が知る限り、PC上ではSharpCapとASIStudioのみ。私はまだ使っていないですがASIAIRも同様の機能を持っているはずです。最近ではeVscopeも同等の機能を持っているのかもしれません?他には、電視観望用のハードウェアのRevolution Imagerがありますが、こちらはスタック機能は持っていますが、スタック回数を何回かに制限しているだけで、星像を合わせてスタックするような機能は持っていません。

リアルタイムで画像処理に近いような事をして、その場で天体をあぶり出す事でより楽しめるようになり、そう言った意味ではSharpCapは電視観望という分野を切り開いた秀逸なソフトと言うことができるでしょう。

こういった高度な機能はあればもちろんいいのでしょうが、たとえそんな機能がなくても、その場でモニターとかに写して天体がみんなと共有で楽しめたりするならば、もう電視観望の一種と言ってしまっていいのかと思います。これから先、さらに技術が発達して、その場で楽しむことはより簡単になり、手法もどんどん広がっていくことでしょう。電視観望の概念も柔軟に変化していけばいいのかと思います。


まとめ

今回のEOS X5は、元々中古で安価で手に入れたたものです。SharpCapが一眼レフカメラを扱えるようになったことで、使う機会が少なくなってきた中古のカメラに、また一つ大きな可能性が開かれようとしています。

本来SharpCapと一眼レフカメラを繋ぐというのは、撮影時の取り扱いを便利にするというが元々の目的だと思います。それだけではなく、LiveViewモードを明示的に分けて実装してくれるなど、EAA(電視観望)用途として考えると、今回のアップデートは相当なエポックメーキングなのかと思います。

現在はテスト段階なので、本当に初心者が触るとなるとまだ敷居が高くて不安定なところもあります。でもこれは今度どんどん改良されていくことでしょう。このブログも、興味を持った人たちができるだけスムーズに楽しめるように、説明やサポートなどで貢献できていければと思っています。

手持ちのカメラや、安価な中古の一眼レフカメラを利用するなどで、電視観望の敷居が下がり、天文人口の裾野が広がってくれればと思っています。


縞ノイズを時間的に見てみる

もしかしたら興味がある人もいるかと思い、縞ノイズを時間的に可視化してみました。先のバラ星雲の1日目のディザーなしで撮影した失敗画像約2時間ぶんの24枚を使っています。中心あたりの一部を拡大して見ています。といってもやったことは簡単で、ディザーなしで撮影した画像を、PixInsightで動画にしただけです。

Blink

これはガイドをしていても、たわみなどでガイド鏡と撮影鏡筒の相対的な視野が一方向にずれてしまうために起きます。それでももしノイズが完全にランダムなら、このように流れるようには見えないはずです。ノイズが流れて見えるということは、ノイズに時間的なコヒーレンスがあるということです。うーん、結構ありますね。あれだけの縞ノイズになるのもわかる気がします。

integration_DBE_PCC_AS_cut



縞ノイズ動画の作り方

さて、この動画の作り方です。今回縞ノイズを時間的にみる目的でしたが、このやり方覚えておくと色々応用が効きそうです。基本的に、PixInsightを使います。
  1. 普通にBatchPreprocessing 処理などで進めます。
  2. master以下のregsteredフォルダに入っている、位置合わせまで終わって、Integrationする寸前のファイルを使います。ここまでは普通にDebayerしてStarAlignmentでも構いません。
  3. Blinkでそれらのファイルを開きます。
  4. とりあえずは、デフォルト機能の再生ボタン(右三角)を押すと確認できますが、順に動画のようになるように見せるだけです。オートストレッチもできるのでみやすくなります。カラーバランスが悪い場合は、RGBのリンクをオン/オフする「鎖マーク」のアイコンを押してください。
  5. Previewで一部を切り取るとその部分だけ拡大して見えます。
  6. それをBlink画面の右下の一番右端の撮影開始マークアイコンで動画にします。
  7. ffmpegがない場合は別途インストールしてください。
  8. ffmpegがインストールされていても、実行ファイルをフルパスで入れないとダメでした。/usr/local/bin/ffmpegとかいうことです。
  9. オプションは秒20コマのgifファイルにしたかったので、 -y -r 20 -i Blink%05d.png Blink.gifとしました。
このように結構簡単に動画を作ることができます。


M42の場合

もう一つ例です。TSA-120でM42を撮影した時のものです。約30分くらいの撮影時間で、枚数は14枚です。これはディザーもそうですが、ガイドさえもしてないので赤道儀の極軸の精度が悪くてずれていってしまっているものです。上のバラ星雲のように画像の一部ではなくて、ほぼ全体像を示しています。解像度はこのブログにアップできるように(一画像当たり5MBが制限)落としてあります。

Blink

縞ノイズの原因となるクールノイズなどに混ざって、おそらくバイアスノイズに相当する縦線のように見えるノイズも流れていることがわかります。基本的にランダムでないノイズは、全て縞ノイズになり得るだろうことがわかります。

これを普通にスタックすると下のように縞ノイズが盛大に出てくるわけです。

integration



バラ星雲のもそうですが、時間的にこれだけ明らかに変化しているのがわかるのなら、なんとか分離してペラっと一枚皮を剥ぐようにこのノイズだけ取れないですかね?



先日テストした、シュミットさんからお借りしているEVOSTAR 72EDですが、簡易星雲撮影ということで、カメラに1/1.8インチというセンサー面積の小さいASI178MCを使い、星像が綺麗な中心像を主に使った例を示しました。




コメントの中で、APS-Cやフルサイズ面積の星像もみたいというリクエストがありました。天気もあまりチャンスがなく、トラブルなどもありなかなか進展していませんでしたが、やっとまともに検証できたので結果を示したいと思います。


一眼レフカメラの取り付け

72EDには2インチアイピース口が標準となります。基本的には他のアダプターなどは付属していないので、一眼レフカメラを取り付けために、いくつかのアダプターをあらかじめ準備しておく必要があります。

まずは、EVOSTAR 72EDの販売ページに行ってみます。



そこに色々なオプションパーツへのリンクが張ってあります。この中で必要なものを挙げていきます。

とりあえずはカメラ接続だけなら2インチの延長等を兼ねたM42への変換アダプター



が必要になります。これがあればあとはカメラメーカーごとに対応したT2マウントアダプターがあれば、手持ちの一眼レフカメラに直接接続できます。




撮影だけの場合は上記のものでいいのですが、普通は31.7mmサイズのアイピースも使うと思いますので、上記の代わりに別のM42ネジになっていないタイプの2インチ延長筒と、2インチから1.25インチの変換アダプターにしておいた方がいいかもしれません。





この場合、カメラを取り付けるにはさらに2インチスリーブとM42ネジへの変換アダプターが必要になります。



実はカメラを鏡筒に取り付けるだけなら、2インチスリーブとM42ネジへの変換アダプターだけでもいいのですが、フォーカサーの伸びに限界があるためピントが出ません。そのため実際には延長筒は必須になります。

私は今回は後者のタイプでカメラを接続しています。後者の場合もT2マウントアダプターが必要なのは、前者と同様です。

実際に接続した場合、下の写真のようになります。

IMG_9649

惜しむらくは、鏡筒バンドを取り付けることのできる位置が限られているので、一眼レフカメラを取り付けるとどうしても後ろが重くなりがちになってしまうことです。赤道儀などに取り付ける際はバランスに注意が必要です。


72ED用、専用レデューサー

前回の評価記事のコメントの一つに「レデューサーの性能も見たい」と言うようなコメントがありました。でも今回お借りしたのは鏡筒だけで、レデューサーは無いんですよね。

と・こ・ろ・が、前回の記事を見てシュミットさんが、な、なんと、レデューサーも評価用のサンプルがたまたまあるとのことで、貸してくれることになりました。これで俄然撮影の方もやる気になってきます。

ジャンジャカジャーン!とうとう専用レデューサー到着でーす。

IMG_9499




「焦点距離を0.85倍に縮小し(焦点距離357mm 口径比4.9)、視野周辺の星像を改善する」とのことなので期待大です。定価は40,975円(税込)ですが、今ホームページを見ると20%オフになっていて税込 32,780円になっていました。鏡筒の値段が税込 47,300円なので、決して安いものではありませんが、価値があるかどうかは後の実際の画像を見て判断してみてください。


専用レデューサーの実際の取り付け

レデューサーの取り付けは、中にマニュアルが入っているので迷うことはないかと思います。ただ、日本語になっていないので少しわかりにくいかもしれません。簡単にですがここで解説しておきます。

まず、付属の2インチスリーブを回して取り外し、代わりにレデューサーに付属のアダプターリングを取り付けます。レデューサー本体の前後のキャップを回して外し、そのアダプターリングに直接取り付けるだけです。

IMG_9505


(お詫び: 初出記事にレデューサーのネジ径に間違いがありました。レデューサーのカメラ側の接続ネジはM48径が正しいです。ご迷惑をおかけしました。)

次にカメラ用アダプターの接続ですが、ここで問題が発生しました。レデューサーのカメラ側のネジがM48ではないようで、普通のT2アダプターだとM42が標準のようでねじ込むことができません。

ホームページ
にはきちんとM48と書いてあります。しかもよく見ると「同社」専用アダプターを使って下さいと書いています。

EOS用、NIKON用があるようです。





さらに専用の回転装置もあるようです。



回転装置は鏡筒とレデューサーの間に挟むものなので、レデューサーとカメラ間の距離はカメラアダプターのみで決まるようです。

さて、レデューサーについているカメラ側のネジを実測するとM53のやはりM48のようです。私の場合はたまたま持っていたタカハシのカメラマウントDX-S EOS:KA01250がM53の一段下がった内側についているネジがM48だったので、接続だけはできました。

下の写真の左がレデューサー、右側のアダプターが一般的なT2アダプターでM42(自宅にあるのは3つともM42でした)、真ん中がタカハシのM53ので外側がM53、内側にM48が切ってあります。径の違いが写真でもわかるかと思います。カメラ接続アダプターを購入するときはT2(M42)でなく、間違えずにM48のものを選んでください。バックフォーカスも考えると、上記の専用品を買うのが良いのかもしれません(すみません、今回は検証できていません)。


IMG_9738


今回このタカハシのM53のアダプターの内側のM48を使って固定することで撮影しましたが、専用品と違ってカメラセンサーまでの距離が変わりますし、ねじ込みも数回転しかねじ山が引っかからずに少し不安だったので、あり合わせのものを使わずに、専用品を購入した方がいいでしょう。

さて、とりあえず撮影の準備ができました!実際に撮影して星像を見てみましょう。


撮影環境

今回はセットアップしたEVOSTAR 72EDを手持ちの赤道儀CGEM IIに鏡筒を載せて撮影しています。
  • 露光時間30秒でM42付近を撮影しています。
  • テスト撮影で星像を見るだけなので、1ショットの30秒短時間撮影の撮って出しとしています。
  • スタックなどの画像処理は一切していません。
  • QBPなどのフィルター類も入れていません。
  • カメラはEOS 6D。天体用に赤外線フィルターを外したものです。

赤道儀への取り付けですが、先に書いた通り、前後バランスはやはりカメラがついているせいもあり、後ろ側が重いです。赤道儀に取り付ける際、できるだけ前の方に取り付けるようにします。


フルサイズ星像

撮影結果です。まずは鏡筒単体です。露光時間30秒は全部共通、ここでのISOは3200です。JPEGの撮って出し画像になります。

IMG_5427

やはり、アポクロマート鏡筒と言っても2枚玉の限界、さすがに四隅の星像は大きく歪んでしまっています。さらに気になるのが周辺減光です。撮って出しなのでなんの加工もしていません。思った周りが暗くなるようです。

四隅を拡大して見てみます。300ピクセル四方を切り出しています。最周辺の8マスがフルサイズ換算、中の周囲8マスがAPS-C相当になります。

IMG_5427_cut

中心像はいいのですが、やはり素のままの鏡筒ではフルサイズでもAPS-Cでも星像の流れは大きいです。


専用レデューサーでの星像

次に、専用レデューサーでの星像です。0.72倍で明るくなるので、ISOを1600に落としてあります。あとは露光時間30秒も含めて全て同じ条件です。あ、回転角は取り付け時にサボって合わせなかったために(合わせるためにはイモネジを緩めて調整する必要があります)適当です。こんなことを回避するためにも専用回転装置はあったほうがいいのかと思います。

IMG_5429

レデューサーのおかげで鏡筒単体に比べて、圧倒的に星像が改善されています。あと、特筆すべきが周辺減光の改善です。普通は周辺減光厳しくなるのかと思いましたが、JPEG撮って出しで特に何もしていないので、実際に改善されているものと思われます。

四隅も拡大して見てみます。

IMG_5429_cut

相当いいです。フルサイズだと、よく見るとまだ少し歪んでいるところもありますが、APS-Cだとほぼ点像になっています。しかも今回使ったカメラ接続アダプターが専用のものではないので、レデューサーとカメラセンサー間の距離がメーカー推奨値と違うため、最適化されたものとはまだ違う可能性があることも考慮に入れておく必要があります。それでも十分な星像です。

手持ちのものに例えるなら、フルサイズだとFS-60CBにレデューサーをつけたものとそう変わりはないくらいでしょうか。この値段でこれだけの星像を得られるのは、ある意味驚きです。撮影にも余裕で耐えることのできる十分な性能だと思います。


まとめ

今回の記事で、フルサイズまでの星像を見てみました。素のままでは2枚玉の限界もあり、四隅の星像は乱されてしまいますが、レデューサーをつけることで相当改善することがわかりました。APS-Cサイズならほぼ点像、フルサイズでも十分許容範囲の星像です。

初めてのアポクロマートとしては相当魅力的な値段がつけられているEVOSTAR 72ED。前回の記事で電視観望用として最適ではと書きましたが、レデューサーを取り付ければ撮影用鏡筒としても十分な性能を発揮しそうです。


EVOSTAR 72ED関連の記事、まだ続きます。あと2つくらいネタがあります。乞うご期待。

2020/3/15 追記: 次の記事でレデューサーに引き続き、フラットナー?を試しています。




今回の目的は、AZ-GTiの経緯台モードを使って、できるだけ簡単に星雲を撮影しようというものです。


もっと簡単に星雲とか撮影できないか? 

ここしばらく、できるだけ簡単に星を楽しむことができないかを考えています。明るい広角レンズとただの三脚を使った電視観望もその過程のひとつです。これはQBPという武器があって初めて実現することでした。

同様に、撮影に関しても高すぎる敷居をもっと下げることができないか、ずっと考えていました。もちろん、究極的な画像を求めよういう場合は別ですが、もっと手軽に、画質は自分で満足できればいいくらいの撮影というのも、あっていいと思うのです。ここではAZ-GTiを武器として試しています。

眼視から少し手を伸ばしてみたい、電視観望よりもう少し綺麗な天体を自分で撮ってみたいとかいう人たちがきっといるはずです。天体写真の敷居を下げることで、天文人口を増やすことにつながればと思います。


経緯台撮影の問題点

赤道儀は極軸合わせなど、若干敷居が高いので、より簡単な経緯台を想定します。今回は自動導入と自動追尾がついているAZ-GTiを使うことにします。

しかしながら経緯台は撮影にはあまり向いているとはいえません。問題点は二つあります。
  • 経緯台なので撮影していると写野が回転していくのですが、それをどうするか?
  • ガイドも当然なしなので、星像がふらついたり流れたりして長時間露光ができない点。

でもこれらは、もしかしたら電視観望で培った技術が解決するのではと考えるようになってきました。カメラは一眼レフカメラは使わずに、その代わりに電視観望のようにCMOSカメラを使います。


撮影手順

簡単星雲撮影のセットアップは基本的に電視観望とよく似ています。今回はテスト記事なので全くの初心者が必要な細かい手順の説明は省きます。電視観望をやったことがある人くらいが対象です。本当の初心者向けの記事は、もっと細かい位置からの手順を踏まえて後日まとめるつもりです。

IMG_9267

経緯台にはAZ-GTi、鏡筒には評価用に手元にあったSkyWatcerのEVOSTAR 72EDを使います。比較的安価なアポクロマート鏡筒なので、初心者にも手頃かと思います。CMOSカメラはASI178MCを使います。ASI224MCでも良かったのですが、安価で少しでもセンサーの大きさを稼ぎたかったのでこれにしました。
  1. 今回のターゲットは初心者向けに、かなり明るいオリオン大星雲M42とします。
  2. AZ-GTiは経緯台モードで自動追尾します。精度はそこまでないのと、原理的に写野が回転していくので露光時間は長すぎると星が流れていきます。長くても30秒くらい、できれば10秒くらいまでが無難。今回は短めの3秒としました。
  3. ソフトは定番のSharpCapを使います。
  4. ゲインは高すぎるとノイズが多くなってしまいます。逆に低すぎると何も映りません。露光時間は短めなので、少し高めでもよくて、最大のゲインから1段か数段下げるといいかと思います。今回は310としました。
  5. 目的の天体がそこそこ見えていたらSharpCap上でライブスタックをしてみます。
  6. ライブスタックパネル左下の何分かおきに画像を保存するにチェックを入れます。今回は3分にしておきました。
  7. AZ-GTiの精度だと、長時間撮影していると画面がずれていくかもしれません。例えば10分くらい経ってから画面を見てみて、もし天体がずれているような時は再びSysScanのコントローラーを使って天体を真ん中に入れます。その際、ライブスタックのリセットボタンを押すのを忘れないようにしてください。
ポイントは、星像が流れないようにするために、短時間露光に抑えることです。その一方露光時間が短いと読み出しノイズが支配的になりがちですが、そこは枚数を稼ぐことで緩和します。ゲインが高いのでダイナミックレンジが不足しがちですが、淡い部分を映し出す方を優先します。また、ライブスタックを活用することで、撮影枚数を減らします。

と、ここまで読んで分かる通り、やっていることは電視観望とほとんど大差ありません。それでも、赤道儀やガイドなどの、通常の撮影に比べて遥かに手軽なことがわかると思います。

今回はライブスタック3秒x60スタックで、一枚あたり3分露光した画像を、合計1時間程度撮影し、その中の画面からずれていない10枚、30分ぶんの画像を取得しました。画像のズレはAZ-GTiのものもありますが、1時間も撮影するとそもそも15度程度写野が回転してしまいます。

写野の回転は原理的にどうしようもありません。多少の回転はトリミングで見えないようにします。なので超長時間露光は難しいですが、それとて時間が経ったらカメラ自身をマニュアルで回転させてしまえば対応できないこともありません。


撮影画像のスタック

初心者にとって厄介なのは、撮影よりもむしろ画像処理です。

写野の回転と同時に、周辺の歪みによるスタック時のずれが問題になってくる可能性があります。今回はPixInsightで星を認識して星像を合わせるような重ね方をしています。でも初心者にPIを求めるのは酷と言うものです。

ステライメージは回転は補正してくれますが、画面を歪めて星を重ねるような機能はないので、こういった場合は難しいです。あとはDSSでしょうか。DSSは一番最初に星を始めた頃に触っただけなので、ほとんど理解していないのですが、調べた限りでは画面を歪ませて合わせるような機能はないみたいです。

そういった意味でも、小さめのセンサーを使って星像がブレにくい中心像だけ使うと言うのは理にかなっているとおもいます。DSSは無料で使えることもあり、最初からあまりお金をかけることができない初心者にとってはほとんど唯一の選択肢になるので、検討する余地は十分にあると思います。


追尾時のズレの様子

撮影した10枚をスタックして画像処理をしてみました。まず、どれくらいずれている10枚でやったのか、スタック直後でストレッチだけかけた画像です。

integration

初期アラインメントがワンスターアラインメントしかやっていないので、AZ-GTiの設置時の水平度不足による並行ずれと、長時間の撮影による回転のズレが生じているのがわかると思います。

水平精度をさぼったので、並行ズレは結構酷くて、10分に一回くらい構図を合わせ直していました。ちなみに、20枚撮影して落とした10枚は、様子を見ていなくて平行移動し過ぎてはみ出していたもので、10枚全部がそれです。さすがにこれはひどいので、水平をきちんと取ることにより、もう少し抑えることができるはずです。逆に言うと、星像のズレとかで落としたものは一枚もないです。SharpCapのアラインメントは相当優秀です。

回転ずれは時間とともに出てきます。もっと短時間で終わらせてしまうのも一つの手です。


撮影した画像の仕上げ

画像処理をして、そこからトリミングしてまともなところを切り出します。画像処理にそれほど時間をかけていないのでイマイチなところも多々ありますが、経緯台で簡易で撮ったにしては、そこそこ写るのかと思います。

integration2_cut
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 撮影時間: 2020年2月1日22時25分
  • 鏡筒: SkyWatcher EVOSTAR 72ED
  • 経緯台: SkyWatcher AZ-GTi
  • カメラ: ZWO ASI178MC
  • 露光: ゲイン310、3秒x60枚のライブスタック x10枚 = 総露光時間30分
  • フィルターなし、SharpCapでのリアルタイムダーク補正 (3秒x16枚)あり、フラット補正なし
  • PixInsigjt、Photoshopで画像処理
トラベジウムとか少し多段でマスクをかけましたが、そもそも短時間のラッキーイメージングの手法に近くて露光不足気味で、元々ほとんど飛んでいないところが効いてきています。


いっそ、一枚撮りで


もう一つの方法が、ライブスタックの画像保存までの時間を10分とか20分とか長くしてしまって、SharpCapのライブスタック結果の一枚画像のみにして、後からスタックをしないことです。

SharpCapでは、ライブスタックの最中は恒星を多数認識して、その星がずれないようにスタックするたびに画像を歪ませて重ね合わせるので、この機能を使う利点は相当大きいです。その代わりに、長時間撮影のために天体全体が徐々にずれていくのが問題になります。これは撮影の間に画面を見ていると回転していってずれていく様子が積算されていくのがわかるので、適当なところで止めてしまえばいいのかと思います。

さらに画像の保存方式も初心者にはいくつか選択肢があって、RAWのfits形式で保存することももちろんできるのですが、もっと一般なtiff形式、もしくはPNG形式でもいいのかもしれません。特に、PCで見えている画像そのものをファイルに保存してしまう機能もあるので、これを使うと後の画像処理でストレッチをする必要もなくなります。

これと似たようなことは実はかなり昔に試していて、どの形式で保存するのが綺麗かと言う比較をしたことがあります。意外なことに、SharpCapのライブスタックに任せてしまったPNGでも十分に見るに耐える画像になっています。

少し前ですが、名古屋での大晦日年越し電視観望中に1時間ほどほったらかしておいてた3秒露光の画像を、そのままライブスタックし続けた画像が残っていました。

Stack_198frames_634s_WithDisplayStretch
1時間くらい放っておいたライブスタック画像。撮って出し。

カメラはASI294MC Pro、鏡筒はFS-60CBに旧フラットナーですが、AZ-GTiでの自動追尾なので、そういった意味では今回の撮影方法そのものの、一枚撮りバージョンになります。ダーク補正とフラット補正をリアルタイムでしてあります。

撮って出しと言っていいのかよくわかりませんが、画面に見えているのをそのままPNGで落として、それをアップロード用にJPGにしたものです。撮影時間は1時間ほどと書きましたが、時間はあまりよく覚えていません。15度くらいいという画面の回転角から、それ位の長さだったんだろうと推測しているだけです。重要なのは、AZ-GTiでのほったらかしでも、水平の設置さえ良ければこれくらいの時間は位置を合わせ直すことなく撮影できることです。

上の画像をある程度仕上げてみます。回転で切れてしまっている部分をトリミング。ASI294MCはセンサー面積が広いので、中心部だけでも十分な面積が生き残っています。

まずはWindowsの「フォト」の「編集と作成」から「調整」のみを使った場合。

Stack_198frames_634s_WithDisplayStretch_win_photo
Windwos「フォト」での加工例。

簡単な調整だけでも多少は出てきます。

次はMacの「プレビュー」の「ツール」「カラーを調整」のみを使ったものです。

Stack_198frames_634s_WithDisplayStretch_mac
Mac「プレビュー」での加工例。

うーん、どうでしょうか、Windowsの方が、ディテール、ノイズともにまさっている気がします。ここら辺は腕にも大きく依存するので、容易に逆転するかもしれません。

いずれのケースでも、さすがにトラペジウム周りのサチってしまっているところは救い出すことはできませんでした。でも、一枚PNGからここら辺まで出れば、撮影を試してみるというのならある程度十分で、これに不満が出るならスタックや赤道儀を用いるなど、次のステップに進むことになるのかと思います。

重要なのは、このようなOS付属の簡易的なツールでも、多少は画像処理ができてしまうと言うことです。これは初心者にとっては大きなメリットでしょう。逆に、改めてみてわかったのは、さすがに1時間スタックは星像が多少肥大するとするということ。これは課題の一つかもしれません。

最後は、このPNG1枚画像をツールの制限なしに画像処理した場合です。と言ってもPhotoshopです。あと、最後の仕上げに今話題のTopazのDenoiseを試してみました。これは結構強力です。しかも簡単なので初心者向けです。有料なのが初心者にとって唯一のネックかもしれません。でもそれだけの金額を出す価値のあるソフトかと思います。Denoiseに関してはまた別記事で書こうと思います。

Stack_198frames_634s_WithDisplayStretch_DN_cut
Photoshop CC+Topaz Denoiseでの画像処理。


まとめ

AZ-GTiを使った経緯台での撮影は一言で言うと「やはり楽」です。似たようなことを既にやっている方も、もしかしたら初心者でも同様のことをごく自然な流れとしてやってしまっている方もいるのではないかと思います。

ポンと北に向けて適当に置くだけ、極軸を取る必要なし、ワンスターアラインメント、ガイドもなし、大きくずれたら直す、というので大幅に大変さを軽減できます。30分露光でここら辺まで出れば、最初に挑戦する撮影としてはかなり満足できるのではないかと思います。

その一方、画像処理の敷居は依然高いかもしれません。後でスタックするのが敷居が高いのも事実なので、一枚どりで画面の見たままで保存してしまうのでもいいのかと思います。あとはGIMPなどの無料の画像処理ソフトや、今回試したWindowsの「フォト」やMacのプレビューでの簡易画像処理だけでも最初はいいのかもしれません。 


後日、今回使ったEVOSTAR 72Dについて、試用記を書いています。よかったら合わせてご覧ください。



週末土曜日、満月の日。一晩中明るい月が出ていますが、北陸の貴重な晴れの日と、週末が重なったので、こんな日は絶好の機材のテスト日和です。

せっかくなので、先日シュミットで購入した月明かりでも撮影が可能だというQuad BP フィルターを試してみたいと思います。そこそこ写るなら遠征に行けない「平日」でも、「月」が出ていても、「自宅で気楽に」撮影を楽しむことができます。


セットアップ

  • 鏡筒: タカハシ FS-60Q (口径60mm, 焦点距離600mm)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • センサー: Canon EOS 6D(HKIR改造)
  • 日時: 2018年12月22日、22時頃から
  • 月齢: 15.2、満月
  • テスト対象: サイトロン Quad BP フィルター(クアッド バンドパス フィルター、 以下QBP)
少し困ったのが、QBPをFS-60Qにどうやって取り付けるかです。フィルター径は48mm。ところが、FS-60シリーズは回転装置の出口部分内側に52mmのフィルターネジが切ってあるため、48mm径のフィルターはそのままでは取り付けられません。いろいろ試してみると、回転装置と延長鏡筒の間に挟み込むと、ねじ込みや固定はできないのですが、うまい具合にピッタリはまって取り付けられそうです。

IMG_5912


コツは、フィルターのネジが切ってある側を鏡筒の対物レンズ側に入れ込むことです。こうしないと延長鏡筒を1-2回転くらいしかねじ込めなくて、不安定になります。まあとりあえず大丈夫そうなので、今回はこの状態で撮影してみます。


対象天体

M42 オリオン大星雲:
  • これまでなんども撮っているので比較しやすい。
  • 満月との距離が25度角程度とあまり遠くなく、この日は非常に明るい領域。
  • 肉眼で見ている限り、リゲルとベテルギウスはなんとか月の光に負けずに見える。3つ星はほとんど見えないくらい。

画像比較1: 同じ露光時間でQBPありなしでの比較


まずは、露光時間を同じにしてQBP有り、無しで比較してみます。JPEG撮って出し画像での比較です。

  • QBPなしの通常の撮影: ISO1600, 10秒露光
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+8cc_20181222-22h07m33s760ms

10秒以上の露光だと明るすぎなので、これくらいまでしか露光できません。

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 10秒露光
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+14cc_20181222-22h21m29s692ms


同じ時間でもQBPフィルターがあると、当然の結果ですが随分暗くなることがわかります。


なお、上の2枚とも色温度設定が3200Kと低いので青が強く出てしまっています。


画像比較2: 露光時間を変えて背景明るさを合わせる

これもJPEG撮って出しです。
  • QBPなしの通常の撮影: ISO1600, 10秒露光(画像比較1と同じもの)
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+8cc_20181222-22h07m33s760ms

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 30秒露光
M42_LIGHT_6D_30s_1600_+10cc_20181222-22h28m12s224ms

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 60秒露光
M42_LIGHT_6D_60s_1600_+8cc_20181222-22h37m16s270ms



実際の背景の明るさを比べると、最初のQBPなしの1枚と、後のQBPありの2枚を比べるとわかりますが、露光時間が3倍だとまだ少し暗く、6倍だとかなり明るいくらいなので、4倍程度の違いでしょうか。


QBPによる背景明るさの変化の簡単な推定


月の明かりが太陽の反射なので白色光に近いとして、太陽光のスペクトル

SunLightSpectrum-280-2500nm-J
(Wikipediaより引用)

にセンサーの感度曲線をかけたものと、さらに今回のQBPの透過率

qbpf_g
(シュミットの販売ページより引用)

をかけたものとの面積比を比較すると、この明るさの比になります。太陽のスペクトルは調べるとすぐにでくるのですが、EOS 6Dセンサーの感度曲線が調べても出てきません。しかも天体改造してあるので、さらに良くわかりません。

それでもものすごくざっくりとした見積もりをしてみます。太陽のスペクトルが350nmくらいから900nmくらいまではそこそこ一定とし、一般的なCOMSセンサーの感度も350nmくらいから700nmくらいまでは一定と考えます。そうすると、QBPの透過率がある部分が465-510nmと640-685nmくらいまでと読み取ります。それぞれ透過幅はともに45nmとなり、合計90nmです。透過率は95%と程度としますが、ざっくり1としてしまってもいいでしょう。すなわち、350nmのうち90nmくらい通すと考えてしまうと、90/350 x 0.95 = 0.24となり、QBPと通すと月の光で制限されるような背景の場合の光量は24%程度になるということです。言い換えると、1/0.24 ~ 4なので、露光時間が4倍くらいで同じ明るさになるということで、実際の撮影結果にもかなり合っています。

これとは別に、月明かりがない場合の人工光による光害が支配的な場合、露光時間をどれくらい伸ばせるかはまた興味深いところです。これは場所や光源の種類に大きく依存するはずですが、LED灯でも上記くらいの改善比、水銀燈やナトリウム灯ならかなり高い改善比が期待できるはずです。


画像処理をした場合のQBPの効果


さて、一番興味のあるフィルターの効果の確認ですが、画像処理をかけた場合を想定して比較したいと思います。できるだけシンプルでわかりやすくするために、PixInsightで1枚どりの上記RAW画像に
  1. ScreenTransferFunctionでLink RGB Channelsをオフにして各色のロックを外してからオートストレッチをかけて
  2. HistgramTransformationで実際に画像に適用し
  3. JPGで保存
というような工程をとりました。

上記工程で、上の3枚の画像処理したものを比較してみます。

  • QBPなしの通常の撮影: ISO1600, 10秒露光
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+8cc_20181222-22h07m33s760ms

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 30秒露光
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+14cc_20181222-22h21m29s692ms

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 60秒露光
M42_LIGHT_6D_30s_1600_+10cc_20181222-22h28m12s224ms


検討してみます。
  • まず、10秒という同じ露光時間のものでも、QBPありの方が構造がはっきり出ていることがわかります。
  • 次に、QBPありの場合はさらに露光時間を延ばすことができ、より構造が鮮明になります。
  • QBPなしとQBPありで思ったより色の変化がないです。これは意外でした。
最近シュミットから出たM42のデモ画像は、思ったより赤が出ていたので、青が相当出にくいのかと思っていましたが、そうでもないようです。他の方の例を見ても青は思ったより普通に出ていたので、青の出方に関してもそれほど心配ないというのが今回自分で試した上での感想になります。


簡易画像処理

QBPを通して撮った画像をスタックして、画像処理をしてみました。と言っても、結局雲間での撮影で、きちんと撮影できたのは60秒の露光でわずか18枚の、総露光時間18分の画像です。

画像処理はPixInsightでプリプロセッシング、(フラット撮影はサボってしまったので)DynamicBackgroundExtraction (DBE)で背景ムラを整えて、PhotometricColorCalibration (PCC)で恒星の色を合わせました。恒星の色がうまく出るか心配だったのですが、確かに少し近似直線上から分布がずれるきらいはありましたが、それほどおかしくないレベルで色は出ているのかと思います。

結果だけ示します。

light_BINNING_1_integration_DBE_CP_Stretched_cut

本当はもっとあぶり出したかったのですが、かなり大きなレンジ(空間周波数が低いという意味)での色むらが残ってしまっていて、背景を出すと目立ってくるので、ここら辺までに押さえておきました。この色むらはフィルターのせいなのか、総露光時間が足りないからなのか、はたまた雲が常時流れていてその合間を縫っての撮影なのでその影響が出てしまったのかなどの判断はまだできていません。

本当はM42の後、もう少し淡いカモメ星雲を撮りたかったのですが、雲が多くなってきて撮影できるレベルではなくなってしまったので、ここで撤収しました。


Quad Band Pass フィルターを使ってみて 

うーん、今回のQBPかなり良いのではないでしょうか。満月下でこれだけ遊べれば十分満足です。色が思ったより変わらなかったのも、私的には気軽に楽しめるので、いい点です。今回は雲のために実際の撮影時間が短かったのでちょっとしたテストくらいでしたが、長い時間かけてじっくり撮影してみたいです。

元々の目的が、平日で遠征などできないときに、自宅の庭で月明かりや光害下でも気軽に撮影が楽しめたらというものです。このくらいの目的ならば十分に達成できそうです。あとは、月がない環境で自宅の光害下でどれくらい効果があるかを試してみたいです。以前の結果からも、透明度がいいときはそこそこ撮影も楽しめるくらいの環境です。ただし、暗い天体は今の所、フィルター無しでは自宅庭からでは全滅です。このQBPでもう少し暗い天体も狙えるようになれば、購入しただけの価値は十二分にあります。また試してみます。


昨晩は晴れていたのですが、よく見ると薄雲がかかっていたので再度の遠征は諦めて、夜中は前日楡原で撮ったM42とC49(バラ星雲)の画像処理をすることにしました。

画像処理をしていて気づいたことがいくつかありました。
  • まずM42、C49ともにピントがやはり甘かったです。今の回転つまみの精度だと安定してピントを合わせることが難しそうなので、これは早急に改善する必要があります。減速機がうまくとりつけられるといいのですが。
  • 1時間ほどの間のスタックをしたところ、どうも星像が左右(実際の空では上下)でずれてしまいます。一枚一枚よく見ると、時間とともに 右の星はより右に、左の星はより左に動いていっています。これは撮影準備に手間取ったため、かなり西の空の低い位置で撮影したのですが、 大気の厚みの違いによる屈折率変化のために起こったものかと思われます。特に、山に沈む直前の移動量が相対的に大きいので、10枚撮ったうちの最後の方は使うことを諦めました。ステライメージ7のスタックは平行移動と回転には対応しているのですが、拡大縮小は対応していません。PixInsightは各点の星が合うようにスタックしてくれるらしいので、そろそろ購入を本気で考える時期に来ているのかもしれません。
  • 今回は静止衛星の線がほとんど入りませんでした。西の空だから?謎です。
  • M42は以前が 2分x9枚で18分、今回は5分x7枚で35分なので、分子間雲を多少出すことはできました。ただしまだまだザラザラなので、もっと時間をかけて、今度は下弦の月以降に南天で撮ることにします。
  • C49は電視観望では何度も見ていましたが、改めて写真で撮って炙り出して見ると、思ったより薄いというのが感想です。露光時間ももちろんですが、今回は西の低い空は少し明るいので、もっと暗いところで南天で撮ろうと思います。

cut

M42 オリオン大星雲
撮影地: 富山県富山市楡原, 2017年1月7日2時31分
タカハシFS-60Q(D60mm f600mm F10 屈折), Celestron Advanced VX赤道儀
キヤノンEOS 60D(新改造, ISO3200, RAW), 露出5分x7枚+3秒x10枚 総露出35分30秒
f50mm Cマウントレンズ+ASI224MC +PHD2による自動ガイド
ステライメージ、Photoshop CC+Nik collectionで画像処理


 
C49_LIGHT_300s_3200iso_lowquality
 
C49 バラ星雲
撮影地: 富山県富山市楡原, 2017年1月7日3時43分
タカハシFS-60Q(D60mm f600mm F10 屈折), Celestron Advanced VX赤道儀
キヤノンEOS 60D(新改造, ISO3200, RAW), 露出5分x8枚 総露出40分
f50mm Cマウントレンズ+ASI224MC +PHD2による自動ガイド
ステライメージ、Photoshop CC+Nik collectionで画像処理
 

このページのトップヘ