ほしぞloveログ

天体観測始めました。

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CP+連動企画、「電視観望技術を利用して天体写真を撮影してみよう」ですが、前回は撮影方法についていくつか検討しました。


結論としては、
  • 電視観望利用で画像処理が楽になるとしても、やはり撮影時に解決できることは、撮影時にやってしまおう
ということです。
  • 経緯台でも赤道儀でもディザーはあった方がいい、
  • 露光時間を伸ばしたいならオートガイドも必須
といったところでしょうか。

今回は、実際に長時間撮影撮影した画像について議論します。具体的な処理方法はCP+で説明するとして、その直前くらいのところまでです。


その前に一つ、SharpCapのちょっと便利な、多分あまり知られていない機能の説明をします。


「フォルダーモニターカメラ」で撮影した画像の救いだし

これまで撮影中に突然車のヘッドライトが当たるとか、ものすごい明るい人工衛星が通ってせっかく貯めたライブスタック画像がダメになり、最初からライブスタックをやり直したとかいうことはないでしょうか?

そんなときに、もし下部のライブスタック画面の「Controls」の「Raw Frames」で「SAVE all」を選んであると、保存されたRAWファイルから、ライブスタック画像を復元させることができます。
  1. まず、メニューの「カメラ」から「フォルダーモニターカメラ」を選びます。
  2. 次にフォルダを選択しますが、これは復活させたいRAWファイルが保存された場所を選んでください。以前すでにフォルダを選択しているときは、撮影画像が表示された状態になっているかもしれませんが、右パネルの「カメラコントロール」からフォルダを選択し直すことなどもできます。
  3. フォルダの中にあるファイルをどれか1枚選びます。例えば1枚「.fits」ファイルを選びます。
  4. fits形式を選んだ場合は、次に下部に出てくる「All .fits Files」ボタンを選ぶと、フォルダが選択できます。
  5. フォルダにある最初のファイルが画像としてSharpCap上で表示されます。ストレッチなども後掛けすることができます。
  6. 右パネルの「カメラコントロール」をさわることで、ファイルの連続表示を進めたり、途中でスタックが進んでいくのを止めたいとか、進行をコントロールすることができます。
  7. この状態でライブスタックをオンにして、カメラコントロールの三角マークの再生ボタンを押すと、自動的にフォルダ内のファイルを連続して読み込み、ライブ(?)スタックされていきます。ディザー時に保存された短時間露光のファイルは条件が違うせいか、(ラッキーなことに)うまくスタックできないことが多く、たいていはまともに露光したものだけがスタックされていきます。
  8. ここでこれまでほとんど役に立たなかった「フレームレート」が役に立ちます。適当に1秒とか、2秒とかすると、その時間間隔でファイルを更新してくれます。
  9. この時のライブ(?)スタック結果などは、通常のライブスタックのように、実行した時の日付や時間ごとのフォルダが改めて作成され、設定してある形式でファイルが改めて保存されます。

これを応用することで、
  • これまで溜め込んだファイルを全部あるフォルダにコピーして、超長時間で再スタックするなども可能になります。
  • 途中で車のライトや人工衛星の軌跡など、失敗したファイルを除いて再スタックすることも可能です。
  • SharpCapで撮影した画像に限らず読み込めるので、PI、SI、Siril、DSSなどに代わって、簡易スタックアプリとして使うのもいいかもしれません。
いろんな応用方法を考えることができると思うので、各自いろいろ試してみるといいでしょう。


ライブスタックでの長時間撮影

今回のCP+のセミナーに使うために、何度か長時間撮影を試しました。まとめがてら、少し検討してみます。

撮影時の共通項目としては
  • 赤道儀がSA-GTi
  • 三脚はSA-GTiに付属のもの、但しハーフピラーは外しました
  • 鏡筒はEVOLUX 62EDに専用レデューサーをつけて、焦点距離360mm
  • カメラがUranus-C Pro
  • 撮影はSharpCapでライブスタックを使用。
くらいでしょうか。

いくつか変えた撮影条件ですが、
  1. 1分露光、ゲイン220+CBP
  2. 1分露光、ゲイン220+CBP+UV/IRカットフィルター
  3. 1分露光、ゲイン0+QBP III
となります。順に見ていきます。


撮影1日目

まず最初にテストしたのは、ここまでの記事で示していた
  • 1分露光、ゲイン220+CBP
です。下はスタックなしの1枚のみの画像です。

frame_00001_60s

トータルで1分露光の短時間画像となりますが、この時点で構成周りの青ハロが見えています。CBPは青の波長域をかなり通すのですが、
  • 鏡筒が持つ青ハロをCBPではカットしきれない
ということになります。そこで、少し青側をカットしてやる目的で、UV/IRカットフィルターを入れることにしました。UV/IRフィルターは1.25インチのものを使い、下の写真のようにカメラのT2ねじのところに、薄型のT2->Cマウントのアダプターで固定しました。
IMG_8994

固定といっても、ネジをはめ込みすぎるとセンサー側に落ちてしまうので、教頭に固定するまではカタカタ揺れています。またネジの途中で止めるので、教頭にはめるときのねじ込みが浅くなり、落下の危険性も出るので、あくまで自己責任でお願いします。

注) : 「電視撮影 (その1): 機材の準備」編の時に初出で紹介したフィルター取り付け方法ですが、おそらくこのレデューサーと鏡筒の間に48mmのものを取り付ける方が正式だと思います。ただ、訂正記事で書いたように、ネジが緩んで鏡筒側から外れて、その際にレデューサ側にはまりこんでしまうと、取り外すのにかなりの苦労をします。なので、今回の上の写真のように1.25インチサイズを使用する方法を取りましたが、これはきちんとした固定法ではないはずです。48mmで外せなくなった時の大変さと、1.25インチで落下などの危険性を認識した上で、どちらか取り付け方法を選ぶ必要があると思います。もしくは、私が勘違いをしていて、もっと正しい方法がある可能性もあるので、他にいい方法があればコメントなどで教えていただけるとありがたいです。


さて、1日目の撮影は雲が出てきてしまったので、短時間撮影でおしまいです。


撮影2日目

とうわけで、撮影2日目、長時間露光は
  • 1分露光、ゲイン220+CBP+UV/IRフィルター
という構成で開始しました。この状態で60フレーム、合計1時間ライブスタックで撮影したものが以下になります。強目のストレッチにしています。

Stack_60frames_3600s_19_43_27_WithDisplayStretch

撮影は一通り終えて、その後に画像を仕上げる過程で、5つ問題点が見つかりました。
  1. 青ハロが全然改善していないこと
  2. UV/IRカットフィルターによる、緑色の大きなハロが右の明るい恒星周りに、新たに出てしまっている
  3. 明るすぎることによる極度に飽和した恒星周りに白いハロが出ている
  4. 明るすぎることによる一部の恒星中心部の飽和
  5. 明るすぎることによる星雲中心部の飽和

背景の淡いところはそこそこ出ているのですが、恒星部が明るすぎます。恒星の多少の飽和は許容しても、画像処理である程度はなんとかなるのですが、これは許容範囲を超えていました。

Uranus-CでHCGがオンになるの220としたのですが、これだと感度が高すぎるようです。かといって、中途半端にゲインを下げると、ダイナミックレンジで損をします。露光時間を短くしてもいいのですが、読み出しノイズの観点からは、トータル撮影時間が同じならば、1枚あたりの露光時間を伸ばした方が得をしますし、あまり撮影枚数が多くなっても、ディスク容量を食いますし、再処理の時とかに負担になるかもしれません。

これらのことから、次の撮影は以下のようすることにしました。
  • 露光時間は60秒のまま、アナログゲインを220から0とする
  • CBPでは一部青ハロが残ったので、青領域をもう少し制限したQBP IIIとする
  • 余分なハロを防ぐために、UV/IRフィルターも外す

QBP IIIフィルターは1.25インチのものを、上で示したようにカメラ側に取り付けます。

実はこの撮影2日目は珍しく晴れたと思って結構焦っていて、上記のような検討がまだ十分にできていない状態で長時間撮影に臨みました。この設定で実際2時間以上の撮影をしたのですが、上記問題により結局お蔵入りです。2時間は結構長いので、今後は画像処理においては1時間撮影画像をデフォルトとします。


撮影3日目

撮影3日目は、前回の記事に使った、色々な設定での撮影方法を試しました。ブログに載せたのは6+1で7通りですが、実際には17通りの設定を試して、記事として意味のある7通りを選んでいます。

記述しなかったことの一つはシグマクリッピング機能についてですが、先に説明した「フォルダーモニターカメラ」で再ライブスタックすることができるなら、撮影時にオンにしてもオフにしても後からどうとでもなります。実際には長時間撮影で枚数を重ねるので、1枚のみに載った人工衛星の軌跡などは、シグマクリッピング機能がオフでもほとんど目立たなくなります。それでもオンとオフで少し差は出るので、オンにしておいた方が無難でしょう。

もう一つは「Hot and Cold Pixel Remove」機能のオンオフでどう違うかです。このカメラでは結局「Hot and Cold Pixel Remove」も「Hot Pixel Remove」も「なし」もほとんど違いがわかりませんでした。ただしカメラによっては、特にホットピクセルを多く持つカメラを使う場合にはこの機能が効くと思われます。別途RAWファイルを一からスタックするなど、その際にダーク補正をする場合はこの機能はオフの方がいいのですが、ライブスタックで簡単にスタックする場合はこの機能はオンにしておいた方が楽な場合が多いかと思われます。


撮影4日目

天気が悪くて少し間を置いたのですが、運よく晴れた撮影4日目、前述の通り
  • 1分露光、ゲイン0+QBP III
という設定で、60枚ぶん1時間の撮影をします。撮影後のSharpCapのオートストレッチした画像です。ここでのオートストレッチは具体的には以下のようになります。
  1. ライブスタック画面の「Histgram」タブの右下にある「Stretch Mode」を「6」にして
  2. ライブスタック画面のカラーバー下の雷マークのホワイトバランスアイコンを押し
  3. さらに右側パネルのヒストグラムでオートストレッチをして
  4. ライブスタック画面の左側の「Action」の「Save」ボタンで、4つ目の「Save exactly as seen」で画面で見たままの状態を保存しています。
Stack_60frames_3600s_21_00_44_WithDisplayStretch

2日目の撮影時に比べて、1枚当たりの露光時間は同じですが、ゲインが220から0になっているので、220[0.1dB] = 22 [dB] = 20 +2 [dB] = 10x1.26 = 12.6倍と、明るさが1/12.6 ~ 0.08で約8%程と、2日目の画像に比べて結構暗くなっています。

2日目のところで挙げた5つの問題点がどうなったかを見てみます。
  1. 青ハロはほとんど目立たなくなりました。CBPからQBPへの変更が効いているようです。
  2. 緑色の大きなハロも無くなりました。UV/IRカットフィルターを外したことが効いていると思われます。
  3. 恒星の飽和による白ハロはなくなりました。
  4. 恒星の飽和は一見なくなっているかに見えますが、実は明るい星の極中心はまだ飽和しています。ゲインは0なのでもう下げられないです。露光時間を下げることはできますが、後述するように、読み出しノイズが見えてきてしまっているので、これ以上露光時間を短くするのは危険です。
  5. 見た目をかなり明るくしているのでわかりにくいですが、ストレッチした状態でも星雲中心のトラペジウムも十分生き残っています。
trapegium

と、恒星の中心部のわずかな飽和以外はほとんど改善されていることがわかります。


淡い分子雲部分の検討

心配なのは、ゲインを0にして暗くしたことで背景の分子雲がどこまで読み出しノイズに埋もれるかです。最淡の部分を見るために、別途RAWファイルから別ソフト(PixInsight)でさらに強あぶり出しをした画像です。
more_Stack_16bits_60frames_3600s_21_00_44
3日目撮影のアナログゲイン0の画像。

この画像と、2日目に撮ったアナログゲインが220の場合の画像(下)と比べます。
more_Stack_16bits_60frames_3600s_19_43_27
2日目撮影のアナログゲイン220の画像。

2枚の淡い部分を注意して比べてみると、アナログゲインが0の時は読み出しノイズの横縞っぽい模様が見えているのがわかります。最淡の部分は、明らかにアナログゲイン220の時の方がよく出ていることがわかります。画像処理の最後の最後の淡いところのあぶり出しの時に、この差2枚のは効いてくるかもしれません。

ただし、飽和に関してはゲイン220の時だと(実際に画像処理をしてみた後の感想ですが)画像処理に困るくらいのレベルなので、やはり明るすぎです。こう考えると、アナログゲインを220にして、30秒とか、20秒という露光時間が最適解なのかもしれません。もしくは、今回撮影したアナログゲインが220と0の場合で、HDR合成というのが一つの解なのかもしれません。いずれにせよ、オリオン大星雲は明るい中心部からから暗い分子雲まで、広いダイナミックレンジが必要な対象で、初心者からベテランまで広範囲にわたって楽しめる、天体写真撮影にとって冬の代表的な「大」星雲といえるでしょう。


まとめとセミナー当日に向けて

ブログ記事としての今回のCP+のためのテスト撮影はこんなところです。撮影に際して露光時間とゲインの十分な吟味が必要なことが伝わってくれたのなら、私としてはとても嬉しいです。

実際の画像処理まで進めると、撮影時のパラメータ次第で困難な状況にぶち当たり、次回はこんなパラメータで撮影してみようなどと実感するはずです。最初から最適パラメータを選ぶことができればいいのですが、やってみないとわからないことも多いのでなかなか難しい現実もあり、このような試行錯誤は仕上がり具合にかなり効いてくるはずです。

もう新月期もすぎてしまい、これ以上の撮影も難しくなってきました。今日までにすでになん度も試していますが、あとは画像処理を繰り返し試すのみです。40分という時間内にいかにうまく実演ができるか、まだかなり練習が必要そうです。その結果はセミナー当日の2月24日(土)の13時20分から、実際の画像処理の様子でお見せできればと思います。



後日オンラインでも配信される予定ですので、後から拝見されてもいいのですが、お近くの方はよろしければ当日横浜アリーナまでお越しいただければと思います。その際は、CP+2024の事前登録(無料)をお忘れなく。

会場ではぜひ直接お話などできればと思います。私は金曜午後くらいには会場入りし、土曜は夕方くらいまでいる予定です。サイトロンブース周りでうろうろしていると思います。一応「Sam」と書いたネームプレートを首から下げるようにしますので、もし顔を見たらお気軽にお声かけしていただければと思います。


CP+セミナー事前打ち合わせ

最後にですが、なんでこんなことをしようと思ったのかについて書いておこうと思います。

今回CP+のセミナーを引き受けるにあたって、内容を決める際にサイトロンのスタッフさんとまず話したことは「入門者や初心者で画像処理に困っている人は思った以上に多いのではないか」ということです。

以前小海で開催された「星と自然のフェスタ」サイトロンさんブースでお手伝いしたときの経験が元なのですが、電視観望で撮影して、その場でできるくらいの画像処理をした時のことです。一番最初の本当に簡単な炙り出し(オートストレッチ)の段階で「オォー!」という声があがりました。これは私にとって結構意外なことでした。だって、まだ最初の最初のあぶり出し段階です。もっと後から細かいところが見えてきたりするのが待っているのに、最初からこんなに声が上がったら、あとはどうなるのか??? でもその後は、もっと複雑な画像処理プロセスでも、最初のときほど声が上がることはなかったのです...。

星まつりなので、天体画像の処理なんてことを見たこともない一般の方もいらっしゃったと思います。電視観望に興味がある入門者が多かったこともあるでしょう。ブワッと星雲が出てくる様子は、かなりインパクトがあったのかと思います。それで考えたのが、
  • もしかしたら初心者で画像処理のことを知りたい人はかなり多いのではないか?
  • 電視観望から初めて撮影に手を伸ばしたとしても、撮影した画像処理の敷居もまた高いのではないか?
  • 例としてある程度の画像処理の一連の方向性を示すのは、初心者にとっては指標になるのではないか?
などです。

望遠鏡で星を見始めると、誰もが見たものを記録しておきたいと思うはずです。リストを作るのも、手でスケッチするのもいいでしょうし、本格的に写真撮影でもいいでしょう。せっかく記録するのなら、後から綺麗に見えたほうがいいと思うのも、ごく自然な流れでしょう。これは眼視でも、電視観望でも、本格撮影でも、ごく自然な欲求なのかと思います。それならば、天体写真の敷居を下げるべく、電視観望の技術をうまく使い、天体写真を残す方向を探ってみようと思ったのが、今回のセミナーを引き受ける際に考えたことです。

でもセミナー時間は高々40分です。撮影技術を全部話すことは難しいので、今回は画像処理をメインにしてみようと思います。画像処理は実際のやり取りを動きで見てもらったほうがいいと思ったからです。その代わり、撮影の細かい技術は事前に試して、ブログに書いておこうと。

ブログには今回を含めて5回の記事で、天体写真に興味を持った人が始めるところから、実際に撮影が終わるくらいまでをまとめることができました。あとはセミナー本番、うまくいくといいのですが...。

セミナー終了後、画像処理についてまとめました。










CP+連動企画、「電視観望技術を利用して天体写真を撮影してみよう」ですが、前回までにオリオン大星雲の導入が済んだところまで進みました。今回は、実際に撮影してみます。いくつかコツがあるので、順次説明していきます。


撮影はとりあえずフルオプションで、やれることはやるという方針で進めます。今回はフルオプションで撮影が完了するところまで、次回の記事で簡略化した撮影方法を示しどんな影響があるかを検証したいと思います。

それでは、前回記事の終了時の、SharpCapの画面にオリオン大星雲が入っているところからスタートです。


カメラの回転角

まず、鏡筒に対してカメラをどのような角度で取り付けるかの、カメラの回転角を決めます。これはレデューサと鏡筒の間にある3つのネジがついたアダプターの、ネジを一つか、せいぜい二つ少し緩めるだけで、カメラを回転させられるようになります。カメラの回転角は適当でもいいのですが、一旦カメラを外して設定を変えた時とか、画角が回転方向に大きくずれる可能性があるので、できるなら毎回同じ向きにしておいたほうが無難です。

方法はこのブログの昔の記事に詳しく書いてありますが、

簡単におさらいしていきましょう。
  1. SharpCapで、右上アイコン群の中から、「ズーム」の一つ左にある、赤線のクロスのようなアイコンを何度か押し、同心円のレチクルを画面上に出しておきます。
  2. SynScan Proの方向矢印か、ASCOMで赤道儀とつながっているSharpCapの右パネルの「望遠鏡制御」の矢印で、見ている方向を少し変え、目立つ星を中心に入れる。
  3. 矢印の一方向をしばらく押し続け、星がレチクルの十字線に沿って垂直、もしくは水平方向に真っ直ぐ動くかどうか確認する。
  4. もし水平、垂直にピッタリ動かないなら、レデューサのところのネジを緩めてカメラを回転させ中心にあった星が、垂直線か水平線の上に来るように合わせる。その際、ネジをきちんと締めなおしてから位置を確認する。
  5. 再び矢印ボタンを押し続けて、星がレチクルの十字線に沿って垂直、もしくは水平方向に真っ直ぐ動くかどうか確認する。
  6. きちんと星が垂直、もしくは水平方向に真っ直ぐ動くまで4-5を繰り返す。

こうやって回転角をあわせます。参照記事にも書いていますが、この回転角調整は夜を待たなくても、昼間でもできます。目立つ星の代わりに、遠くの何か目印になる点を使えばいいだけです。例えば遠くにある鉄塔のてっぺんとかでもいいでしょう。もし余裕があるなら、昼間のうちに済ませておくといいでしょう。

この回転角調整で、ピントがズレる可能性があります。レデューサのところの回転固定ネジを締める時にきちんと締めていなかった場合です。ネジを閉めるときは毎回少し手で持ち上げて、下に落ち込まない状態で毎回きちんと最後までネジを締めると、安定してピントずれなどはなくなります。


位置決め

回転角調整で位置がずれてしまったので、再びオリオン大星雲を中心位置に入れます。SynScan ProでM42を再自動導入してもいいですし、SynScan Proか、SharpCapの「望遠鏡制御」の矢印ボタンで、自分がいいと思う位置に入れてもいいでしょう。私は以下のような位置にしました。

05_intro

これだと、右上方向に向かうオリオン大星雲の広がりが十分に入り、左のランニングマンもいい位置に来るはずです。


オートガイド

位置が決まったら、次はオートガイドです。ここではガイド鏡とガイドカメラ、ソフトはPHD2を使います。

繰り返しになりますが、PHD2で PlayerOneのカメラを使うときは、PlayerOneカメラのドライバーだけではだめです。前回のソフトの説明のところで書いたように、ASCOMプラットフォームとASCOMカメラドライバーをインストールしてください。ASCOMプラットフォームはここまででSharpCapと赤道儀がつながっていれば、すでにインストールされきちんと動いているはずです。詳しくは

を参照してください。

PHD2の使い方はマニュアルなどを読んでいただければいいのですが、接続方法などごく簡単に書いておきます。
  1. Windows PC上で、ソフトの準備の時にインストールしておいたPHD2を立ち上げます。
  2. 初めてPHD2を立ち上げる場合は、ウィザードが出てきて、カメラなどの設定が始まるはずです。ほとんどは指示通り進めればいいのですが、カメラの選択は迷う可能性があります。特に同じメーカーのカメラが複数台接続されていると、Player One Camera (ASCOM)の1から3のどちらを繋いでいるかわかりにくい場合があります。もしどうしても分かりにくい場合は、メインカメラを一度ケーブルを抜いて切断してからPHD2のセットアップを開始して、Player One Camera 1(ASCOM)を選ぶのが確実です。もしここでPlayer One Camera 1(ASCOM)が出てこない場合は、Player One Camera用のASCOMドライバーがインストールされていない可能性があるので、上の説明を見て今一度確認してみてください。
  3. カメラを選択する際、ガイド鏡の焦点距離は手持ちのものをきちんと入れるようにしてください。ピクセルサイズはカメラがきちんと繋がれていれば、選択時に自動的に入力されるはずです。
  4. 赤道儀の接続はすでにすんでいるので、そのまま進んでしまえば自動的に適したパラメータが選択されるはずです。
  5. カメラや赤道儀の設定ごとにプロファイル名をつけることができます。後から認識できる適当な名前をつけておきましょう。
  6. ウィザードが終了すると、ダーク撮影に入ります。ガイド鏡にキャップを被せるなどして、光が入らないようにして、ダーク撮影を開始します。結構時間がかかるので、しばらく待ちます。慣れてくれば、必要な時間のみ選択すればいいでしょう。私は0.5秒から2秒くらいまでだけ撮影しています。
これで準備は完了です。2度目以降の立ち上げからはウィザードは自動で起動しません。カメラを変えた場合など、必要な場合はメイン画面の左下にあるUSB端子の絵が描いてあるアイコンをクリックすると、接続設定になるので、そこで再びウィザードを開始することができます。ウィーザードが終わった直後は下の2から始まるはずです。
  1. メイン画面の左下にあるUSB端子の絵が描いてあるアイコン「接続ボタン」をクリックします。
  2. カメラとマウント(赤道儀)を選択します。この際、カメラが複数台接続されていて、どのカメラが接続されるかわかない場合は矢印が二つに分かれるマークが書いてあるボタンを押すと、どちらのカメラか確認できます。カメラと赤道儀それぞれ「接続」ボタンを押します。赤道儀は接続されるまでに10秒くらいかかる可能性がありますので、少し待ちます。全て接続されたら下の「クローズ」ボタンを押します。
  3. メイン画面左下の左から二つ目の矢印が回転しているようなアイコン「露光開始ボタン」をクリックします。ここで画面にカメラからの映像がメイン画面上に表示されます。ガイド鏡のピントが合っていなかったら、ここで合わせてください。
  4. メイン画面左下の左から三つ目の星形のマークのアイコン「ガイド星選択ボタン」が黄色の星になっていることを確認してクリックします。黄色の星にならずに灰色のままの場合は、上記までのカメラの露光が開始されていないということです。いまいちどカメラの接続などを確認して、左から二つ目の矢印が回転しているようなアイコンをクリックしてください。うまくいくと、ガイドに必要な星が緑色の四角で選択されているのが、撮影画像で確認できます。
  5. メイン画面左下の左から四つ目の十字マークのアイコン「ガイド開始ボタン」が緑色になっていることを確認して、クリックします。緑色になっていない場合は、上のガイド星の選択が完了していないので、今一度確認してみてください。うまくいくとガイドに必要な星が緑色の四角で選択されます。
  6. 初回はここでキャリブレーションが始まります。キャリブレーションとはPHD2が動かそうと思った方向と、実際の画像でどちらの方向に動くかを確認し、方向合わせをするような機能です。
  7. キャリブレーションは数分から10分程度かかることもあります。気長に待ちましょう。その際、緑色の四角が、きちんと動いているか画面を見ているといいでしょう。うまく動かないとエラーが出てキャリブレーションが中断されます。赤道儀とのケーブルが断線しているなど、何らかの理由で赤道儀に送っている信号に対して反応がない場合などです。改めてケーブルの接続など、何かおかしいことがないかチェックしてみましょう。ガイド鏡のカメラに接続されずに、メインの撮影カメラに接続されてしまった場合なども、動かなさすぎたり、動きすぎたりして、エラーになる場合があります。
  8. キャリブレーションに成功すると、そのままガイドが始まります。下のグラフで、赤と青の線が時間と共にだんだんと伸びていくのがわかります。キャリブレーション情報を残すかどうかと言う質問が出ることがあると思いますが、「はい」としておくと、次回以降に赤道儀の向きを変えても初回にとってキャリブレーション情報を使い回してくれるので便利です。キャリブレーションが以前実行された場合は、すぐにガイドが始まりますが、あえてキャリブレーションをしたい場合には、「シフトキーを押しながら」ガイド開始ボタンを押してください。ガイドがうまくいかない場合、キャリブレーション情報が古くなっている可能性があります。そんな場合は今一度キャリブレーションを実行してください。
もしここで、ある程度の数の星が見えているのに、画面所の緑色の四角が一つしか見えなくて、選択されている星が一つの場合は、画面下の脳みそマークのアイコンを押して、「ガイド」タブから「Use multiple stars」を選ぶといいでしょう。複数の星をガイド星としてみなすので、精度が格段に上がります。


SharpCapの設定

あとは撮影に際してのSharpCapの設定を残すのみです。

まず最初にメインカメラの冷却機能をオンにします。
  1. SharpCap右側の「温度制御」パネルを開き、「設定温度」を「-10」程度にします。冬場だともっと冷えますが、ダークノイズの影響を考えるとこの程度で十分でしょう。
  2. さらに「冷却」を「オン」にします。
  3. 「温度」のところが徐々に下がっていって、設定温度に向かっていきます。

細かい設定です
  • 「フォーマット」パネルの「出力形式」は「FITSファイル(*.fits)」を選択。
  • 「フォーマット」パネルの「モード」はRAW16
  • 「カメラコントロール」パネルの「露出時間」はとりあえずテストなのですぐに画面が更新されるように1000msとしましょうか。あとで実際の撮影時には「長秒モード」オプションをオンにして「60s」とかにして長時間露光に変更します。
  • 「カメラコントロール」パネルの「アナログゲイン」はとりあえずUranus-C ProのHCG(High Conversioin Gain)モードがオンになる220とかにしておきましょう。これで、ゲインが高い状態で、「読み出しノイズが小さく」「ダイナミックレンジが大きく取れる」ようになります。明るすぎる場合はアナログゲインは0にします。実際の撮影ではアナログゲインは220か0のほぼ2択のみに限られ、それ以外ではダイナミックレンジの観点から不利になってしまいます。
  • 「カメラコントロール」パネルの「オフセット」は小さな値を入れておきます。0だと暗い部分がうまく表現されずに階調がガタガタになる可能性があります。今回はとりあえず「40」とします
  • 「前処理」パネルの「ダーク補正」のところで「Hot and Cold Pixel Remove」を選んでおきます。これはあくまで簡易処理ですが、今回のように電視観望技術を利用した簡単な撮影では、別途ダーク補正をする手間を省いているので、これを選んでおくと仕上がりに有利になると思われます。ただし、有効かどうかはカメラに依ます。実際試したところ今回のUranus-C Proではそもそもカメラに搭載されているDPS (Dead Pixes Suppression)機能が優秀なせいか、このオプション有無でほとんど差は見られませんでした。
  • 「前処理」パネルの「背景減算」は電視観望の時にはよく使うのですが、撮影に際しては1枚1枚で効果が違ってしまっておかしくなるようなので、オフにしました。今回はカブリが少ない状態で撮影したのですが、カブリが多い場合は試してみてもいいかもしれません。

一旦ここで、どのような画像になるか確認します。「ヒストグラムストレッチ」パネルの右側アイコン群の左列上から2番目の雷マークの「オートストレッチ」ボタンを押します。すると、ヒストグラムの左の山のピークを、3本ある黄色の点線の左と真ん中の2本の線で挟むような形になり、画面にオリオン大星雲がバッと明るく出てくると思います。ただし、このオートストレッチ機能は有料版のみ使うことができます。無料版の場合は、マニュアルで黄色の2本の点線を動かして、山のピークを挟むようにしてください。

もしこの時点でオリオン大星雲の位置がおかしい場合は、ガイドを一旦中断して位置調整をしましょう。
  1. PHD2のメイン画面の左下の「STOP」アイコンを押してください。
  2. その後に、SynScan ProやSharpCapの望遠鏡制御の矢印ボタンで位置合わせをします。
  3. PHD2の「露出開始ボタン」「ガイド星選択ボタン」「ガイド開始ボタン」を順に押して、ガイドを再開します。
このように、ガイドを一旦中止してから位置合わせをしないと、ガイドが元の位置に戻そうとしてしまうので、位置を変えることができないことに注意です。

ガイドとディザーの設定をします。
  1. SharpCapメニューの「ファイル」から設定を選び、「ガイディング」タブを開きます。
  2. 「ガイディングアプリケーション」をPHD2に選びます。ホスト名やポートは特に変更したりしてなければデフォルトのままでいいでしょう。
  3. 最大ステップは大きくしすぎると、画面が大きくずれてしまうので、ここでは最小の2としてありますが、もし縞ノイズが目立つようなら増やしてください。また、ライブスタックするたびに星がずれて伸びて見える場合は、個々の値が大きすぎて揺れが収束しきれない場合です。その場合はこの値を小さくしてください。この揺れは次の最小整定時間とも関係があります。
  4. 「最小整定時間」はSA-GTiが多少暴れることがあるので、少し長めに取っておくといいでしょう。ここでは30秒としました。
  5. 最後に下の「OK」を押します。
12_guide_setting


ライブスタックで撮影開始

いよいよ撮影のための最終設定です。電視観望の技術を利用すると言うことで、今回の撮影はSharpCapのライブスタックを使います。

1. 「カメラコントロール」パネルの「露出時間」の「長秒モード」オプションをオンにして、露出時間を「60s(秒)」くらいにします。
2. アナログゲインは最初220で試しましたが、明るすぎたので、のちに0としました。CP+で見せる最終画像に至るまでにフィルターの種類や、いくつかの設定パラメータについては何種類か試していて、これまでの説明から変わったところもあります。パラメータの変更については、次回以降の記事で詳しく解説します。
3. LiveStackを開始します。SharpCapのメニューの下のアイコン群の「ライブスタック」と書いてあるボタンを押します。
4. 下のライブスタック画面の「Guiding」タブを選び、「Setting」の中のオプションを全部オンにします。「Dither every」のところは、枚数区切りでディザーをかけたいので「Frames」します。枚数は数分から10分おきくらいで十分なので、今回は「6」としました。「Only stack...」をオンにしておくと、雲などが出てPHD2が星を見失った時はライブスタックで画像を重ねることをしなくなるので、不慮の天候悪化時の出来上がり画像の劣化を防ぐことができます。
01_SharpCap_ok_06_guiding_cut

5. 下のライブスタック画面の「Controls」の「Stacking」で「Sigma Clipping」を選んでおくと、人工衛星の軌跡などが目立たなくなります。
6. 同じ「Controls」の「Raw Frames」で「SAVE all」を選んでおくと、LiveStackが途中で失敗した時に、後から救い出せるかもしれません。ただし、ディスク容量をかなり消費することと、さらにディザーの際の短い露出時間のファイルも全て残されるので、もしこれらのRAWファイルを使う際は、ディーザーの際の余分なファイルは後から手で削除する必要があります。
7. 撮影終了時間が決まっているなら、「Save and Reset every...」をオンにしておくといいでしょう。例えば「60」minutes total exposureとしておくと、60分経ったときに、素のままのRAWファイルと画面で見えているままの画像をファイルとして自動的に保存してくれます。ただし、その時点でライブスタックがクリアされてしまうので、できるだけ長い時間撮りたい場合はオフにしておいた方がいいでしょう。

あと撮影ファイルの出力場所を設定しておきましょう。
  1. SharpCapメニューの「ファイル」から設定画面を開きます。
  2. 「ファイル名」タブを開いて、「フォルダー」のところに保存したい場所を指定します。 
  3. 下の「OK」を押します。

これで全部の準備が完了でしょうか。長かったですが、ここまでうまくできていますでしょうか?さあ、撮影開始です。
  1. 下のライブスタック設定画面の、左側の「Actions」の「Clear」ボタンを押してください。画面が一旦クリアされ、これまで溜まっていた画像が一新され、新しくライブスタックが始まり、撮影が開始されます。
  2. 露出時間で設定した「60秒」待つと、画面に撮影した画像が出てきます。
  3. ここで、ライブスタック画面の「Histogram」タブを開き、右の上の雷マークアイコンを押し、オートストレッチします。その際はSharpCapの右パネルの「ヒストグラムストレッチ」はぐるっと回転する矢印の「リセット」アイコンを押して、ストレッチがない状態にすると見えやすくなるでしょう。もしくは、新たに右パネル「ヒストグラムストレッチ」の方の雷マークを押すと、さらに炙り出した画像が出てきます。二つのストレッチの関係ですが、ライブスタックのヒストグラム画像であぶり出した際の状態が、右側パネルのヒストグラムに受け渡されます。右のヒストグラムでは、さらに重ねてあるり出しをすることができます。撮影画面には両方のヒストグラムのあぶり出しが重ね掛けされた結果が表示されます。
  4. 撮影中に、上で指定した保存フォルダーの中身をエクスプローラーで確認してみましょう。フォルダの中の「RAWFILES」フォルダを確認して、60秒ごとにfitsファイルができていくか確認してみてください。
  5. (RAWファイル以外の) ライブスタックの結果画像の保存は、ライブスタック終了時に自動的にされますが、任意の時間にあらわに保存したい場合は、ライブスタック画面の左の「Action」から「SAVE」を押します。いくつか選べるのですが、「Save as 16 Bit Stack」と「Save with Adjustments」と「Save exactlly as seen」の3つをそれぞれ保存しておくのがいいでしょう。「Save as 16 Bit Stack」はRAWフォーマットでfitsファイル形式で保村されます。これが最も情報を持っていますが、ストレッチされていないので最初は扱いにくいと思います。「Save with Adjustments」はライブスタックのヒストグラムでストレッチされた分までがpngフォーマット(8bit)で、「Save exactlly as seen」はさらに右パネルのヒストグラムでストレッチされた分までの画像がpngフォーマット(8bit)保存されます。
保存されたRAWファイルや、スタックされたfitsファイルを見るには、ASIStudioの中にあるASIFitsViewが便利です。ASIStudioはWindowsだけではなく、Mac版やLinux版もあるので、ある意味貴重なアプリです。ここからダウンロードできます。


保存されたfitsファイルはストレッチされていないので、通常開いただけでは真っ暗にしか見えません。ASIFitsViewは自動でオートストレッチもしてくれるので、オリオン大星雲があぶり出された状態で見えるはずです。下にあるアイコン群の中の、「ヒストグラム」マークをクリックして、「リセット」ボタンを押すと、ストレッチされる前の真っ暗な画像を確認することもできます。また、ストレッチ後のファイルを保存することもできます。

撮影がうまくいくと、SharpCapではこんな画面になっているはずです。
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今回はここまでとして、ここからの画像処理についてはCP+当日に実演として公開することにしましょう。

CP+まではまだ少し時間がありますので、撮影方法に関してもう1回か2回ブログ更新する予定です。今回までは主に初心者を対象に、かなり基礎から説明しましたが、次回からは少し突っ込んだ記事になります。









少し前に到着したε130、色々準備をしていたり、あまり天気が良くなかったりで延び延びになっていましたが、やっとファーストライトと相成りました。といっても、撮影するにはまだ準備不足なので、まずは試しに電視観望です。


赤道儀への取り付け準備

まずは箱から出して組み立てです。タカハシの純正鏡筒バンドとプレートは一緒に購入したので、適当な位置に鏡筒を固定します。問題はどうやって赤道儀に取り付けるかです。

そもそもタカハシの鏡筒バンドはプレート固定のための二つのネジの幅がかなり広くて、一般的なロスマンディー規格のアリガタの幅よりも広いので、鏡筒バンドとアリガタを直接固定することができません。そのため、まずは同じくタカハシ純正のプレートに鏡筒バンドを固定して、このプレートに空いている穴を介して別のアリガタなどに固定する必要があります。

サイトロンで一緒に購入したAskarのドブテイルバー(ロスマンディー規格のアリガタ)はネジ位置が合わなくて取り付けることができないのはわかっていたので、手持ちのものを探しました。以前スターベースで特価で購入したロスマンディー規格のアリガタに、なんとか取り付けることができそうです。でもアリガタの先端の方のネジを2箇所で止めることができるくらいなので、もしかするとパタパタするかもしれなくちょっと不安定です。タカハシ純正プレートにはあまり加工したくないので、アリガタに穴を新たに空けるか、もしくは後でTSA120などで使ったMOREBLUEの軽量鏡筒バンドに替えるかもしれません。でもまだ予算を他に割り当てる必要があるので、優先度は低いです。

最低限赤道儀に取り付けることができるようになったので、一度実際に取り付けてみて、特にネジの頭とかの干渉などないかチェックします。赤道儀はCGEM IIを使うことを標準としました。Advanced VXでもよかったのですが、ε130の本体自体は5kgと重くはなくても、今後フィルターホイールやカメラ、ガイド鏡などをつけていくとそこそこの重さになるのと、やはり撮影がメインなので少しでも耐荷重が大きくて頑丈な赤道儀の方がいいと思ったからです。


ガイド鏡取り付け位置

ガイド鏡を取り付ける位置は少し迷いました。最初鏡筒上部に手持ちバーを兼ねたアルカスイスプレートを付けようとしたのですが、やはり鏡筒バンドの上部にあるネジ穴の幅が広すぎて直接取り付けることができないことがわかりました。色々考えた末、結局SCA260でやっているように小判鮫状態にしました。アリガタは40cmの長さでじゅうぶんながいので、前方に飛び出ている部分の下面にアルカスイルプレートを取り付けるわけです。

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ロスマンディーのアリガタの下に、
アルカスイスプレートが取り付けてあるのがわかりますでしょうか?

この方法の利点は二つあります。
  1. 一つは鏡筒を赤道儀に乗せるときにそのアルカスイスプレートがストッパーになって、鏡筒から片手を離してもずり落ちるようなことがないことです。
  2. さらにこのアルカスイスプレートは前後に長いネジ穴があいているので、前後位置をスライドさせることができます。そのため、一度前後の重量バランスを合わせてしまってアルカスイスプレートをその位置で固定してしまえば、それ以降は鏡筒の前後バランスを取る必要はなく毎回同じ位置に取り付けることができることです。
これらの利点はSCA260で同手法を運用しているうちに気づきました。


光軸チェック

このε130は展示されていたものなので、光軸がずれてしまっている可能性があります。そのため、コリメーションアイピースを使い、光軸をチェックします。あらかじめ副鏡も主鏡にもセンターマークが付いていたので、チェックは簡単でした。とりあえず見ている限り全てのセンターマークが、コリメーションアイピースで見てセンターに来ています。主鏡が作る大きな縁も同心円上になっているようです。気づいたのは、接眼部のアラインメント調整機構がないので、コリメーションアイピースで見た時に副鏡のセンターを指していない時は、副鏡自身を平行移動などしなくてはダメなところでしょうか。でもこれも原理的に自由度が足りないとかではないので、まあ問題ないでしょう。今回は特に問題なさそうなので、とりあえず何もいじらずによしとしました。あとは、実際の撮像を見て評価したいと思います。


電視観望準備

本当は休日前とかのほうがのんびり試せるのでよかったのですが、天気の関係で平日の夜になってしまいました。でもこの日が良かったかというと、黄砂か春霞なのかうっすら雲がかかっているようで、透明度がかなり悪く北極星さえ肉眼で全く見えません。でもこの日を逃すと次はいつになるかわからないので、とりあえず庭に機材を出すことにしました。

カメラはASI294MCで、そのままアイピイース口に取り付けます。でもこのままだとピントが出ませんでした。色々アダプターを付け替えたりして試しましたが、思ったよりフォーカサーの調整範囲が狭くて、結局補正レンズを外してやっとピントが合いました。そのせいなのか四隅の星像が崩れるのは仕方ないにしても、中心部の焦点が合い切らずに星像の鋭さが全く出ません。これは後日補正板をつけて、バックフォーカスもきちんと合わせてから評価し直すことにして、とりあえずこの日はこのまま進めることにしました。


M42: オリオン大星雲

春も半ば過ぎに来ているので、もうオリオン座は早いうちに西の空に沈みます。しかも最近は日も長いので、ますますオリオン座を見る時間が少なくなってきています。とにかくM42オリオン大星雲だけは派手で見やすく、冬季節の電視観望の基準の星雲と言うべきもので、これが沈まないうちに画面に映し出します。

下の画像はgain420で露光時間1.6秒、ライブススタックで22枚、総露光約35秒のもの、フィルターはCBPです。隣の家に沈む寸前(実は一旦屋根に沈んだのですが、今一度赤道儀の位置を変えて家と家の間に見えているところを電視観望したもの)で、しかも透明度が悪い日の西の低空なので、全く見栄えは良くないのですが、まず思ったことが「速い」でした。

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こんなひどい状況では綺麗に見えるまでにライブスタックを続けてかなり待つ必要があるのですが、さすがFS-60CBの約4倍の明るさです。「速く」星雲が浮かび上がってくるのは、ある程度わかっていたこととはいえインパクトが大きかったです。


バラ星雲

この印象は次のバラ星雲でも全く同じでした。

この日のフィルターはアメリカンサイズのCBPで、カメラにつけたノーズアダプターの先に取り付けています。ただ、この位置に取り付けると周辺減光が顕著になってきます。まずはCBPなしの場合。ゲイン420で3.2秒露光で一回露光だと、バラ星雲とはほぼわかりません。
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次がCBPありの場合です。30秒露光なので、上の画像と直接比べることはできませんが、朧げながらバラの形がわかります。見て欲しいのは周辺減光で、ストレッチ具合はそう変わらないのに、CBPをカメラ先端につけると明らかに周辺減光が増えています。ε130は明るい鏡筒でセンサーに対する光の入射角が急になるので、フィルターをつけるとしてももっとセンサーに近いところにつけた方がいいことがわかります。
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上の画像をライブスタックしていくと、わずか2分半で下の画像位になります。空は相当に悪い状況ですが、それでもこの速さはやはりε130の威力といったところでしょうか。
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三つ子銀河

しし座の三つ子銀河です。天頂に近いので透明度は低いところよりはマシですが、それでもこの日の透明度はかなりイマイチです。

まずは30秒露光です。これだけでも十分に存在はわかります。
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2分露光です。かなりきれいに見えてきました。
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10分露光です。周辺減光が目立つので、中心だけ少し拡大しています。画像を拡大してみるとわかりますが、そこそこ分解能も出ていて、銀河一つ一つの構造もよくわかります。
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M81とM82

M81とM82です。北の空で富山の街明かりで明るいのですが、高度はそこそこあるので先の西の低い空よりははるかにましです。繰り返しますが、肉眼で北極星は見えない状況に変わりはないので、それでここまで見えるなら上等でしょう。

2分露光です。
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10分露光です。10分露光すると、細部もそこそこ見えてくることがわかります。
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M51: 子持ち銀河

最後は同じく北の空でM51です。2分露光と
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10分露光になります。
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例えば観望会をやったとして、10分でここまで見えるなら、まあ十分ではないでしょうか。


まとめ

かなり状況の悪い日でしたが、やはりε130での電視観望は「速い」です。必要な露光時間は近い焦点距離のFS-60CBの4分の1くらいで、実感としてもこれくらいです。例えば40分待たなければならないのが10分ではっきり出てくるようになったと考えると、やはりかなりの威力でしょう。

ε130にフォーサーズのASI294MCと合わせるとすると、焦点距離としてはM31アンドロメダ銀河が画角一杯、北アメリカ星雲単体はなんとか入りますが、ペリカン星雲と一緒には入らないので、もう少し短焦点でもいいかもしれません。その一方、三つ子銀河がそこそこの解像度で見えるので、電視観望で銀河専門と考えなければ、これ以上長焦点にする必要もないでしょう。短時間の電視観望で次々と天体を入れてくのだと、(焦点距離はもう少し短くてもいいので)分解能的には少しオーバースペックな気がしますが、長時間ライブスタックして天体写真にも仕上げたいという場合には適度な焦点距離かと思います。

いっそのことASI2400MC Proのようなフルサイズのカメラと合わせるなら、ε130は最大限威力を発揮するのかもしれません。さらにこれ以上を求めるなら、あとはRASA8とかになるのでしょうか。


今後

やはりε130君は撮影鏡筒だと思うので、次はきちんと撮影で使ってあげたいと思います。準備状況ですが、
  • 今2インチのフィルターホイールはちょっと前に買ってあります。
  • 2インチフィルターですが、RGBフィルターはZWOのものを買い、
  • ナローバンドフィルターはBaaderのものをHαとOIIIを星まつりで安く買い漁ってあります。SIIはSAO合成よりLRGBやAOOの方がかなり楽しいので、少し優先順位を落としています。
  • カメラはASI6200MM Proでこちらはお借りしているものです。
  • 接続は以前ASI2400MC Proを試したときに、ZWO製のフルサイズクラスのCanon EFマウント用のアダプターを用意したので、ε130側には手持ちのタカハシのDX-WRカメラマウントを取り付けて、EOS EFマウントで接続しようと思っています。理由は、カメラを取り外して再度取り付けた際の回転位置の再現性が欲しいからです。

あとはEAFを用意したいくらいでしょうか。全部揃えると値段が値段なので、なかなか一度にパッとはいきませんが、着々と準備は進んでいます。


2022年12月29日、かねてからかんたろうさんに誘われていた周参見(すさみ)に遠征に行ってきました。周参見は和歌山県のほぼ南端。富山からはかなり遠かったです。


富山を主発

前日の28日は休みを取ったので、午後から準備をします。きはらっちさんからSCA260見たいとリクエストがあり、頑張って積み込みました。というのも、予定していた荷物をたくさん積めるノアが急遽故障、仕方ないのでラクティスにします。SCA260にはCGX-Lもセットなので、後ろの座席も助手席もイッパイイッパイです。夜のうちに準備した荷物を朝車に積み込み、何とか出発できる状態に。

富山を朝9時に出て、実家の名古屋で少し用事を済まし、14時に名古屋を出発。どの経路で行くか迷いましたが、津市のアイベルに寄りたかったので、紀伊半島を東から回ることに。実家は名古屋の北区で、津までいくなら名二環から入るといいと教えてもらいました。途中工事で蟹江インター付近が少し渋滞していましたが、それ以外は順調でした。怖かったのは、カーナビが古くて新しい道ができているので、何箇所かJCTでどちらに行けばいいか迷い、しかも最近関西方面の地名に疎いので、ギリギリで判断するということがありました。あらかじめ調べておかないとダメですね。


久しぶりのアイベル

アイベルに着いたのは16時過ぎくらいだったでしょうか、11月に自宅に来てくれたEさんが、三重に引っ越すというのでアイベルに顔を出し、わざわざ私のためにVixenのカレンダーを頂いてきてくれました。そのお礼と、アイベルにはコロナ以前に数回行っただけなので、久しぶりに覗いてみたかったのです。




そういえば前回アイベルに行ったのも今回の初回集まりで、今見たら2017年ですね。もう5年ぶりになります。

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アイベルでは残念ながら何も買うものがなかったんのですが、店員さんと少しだけお話しさせていただきました。ε130が展示されていたので一応「売り物じゃないですよね?」と聞いてみたのですが、やはり展示用に借りているものだそうです。いま発注しても1年半待ちとのことなので、現物があれば欲しいと思っていたのですが、シリアル番号を見たら確かに「DEMO」と刻印が打たれていました。そういえば最近は細かいものも揃ってしまっているので、星まつりでもそうなのですがあまり買い物していません。店舗にいってもその場で欲しいと思うものに出会うことも減ってきてしまいました。ちょっと寂しいです。

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「これから周参見に行くんです」と話すと、「3時間はたっぷりかかる」とのこと。「何も購入できなくてすみません」と挨拶して、アイベルを17時前くらいに出発しました。


いざ周参見へ

そこからの道は迷うことはありませんでしたが、高速道路が尾鷲を通り越して熊野で終わりでした。これも全然調べてなかったのが悪いのですが、下道でまだ100km以上もあります。ここでかんたろうさんに電話をかけて「まだ2時間くらいかかりそうです」と話して、のんびり海岸沿いの道を進みます。熊野ってあの熊野古道の入口なんですね。途中熊野古道の看板があり実感したのですが、よく考えたら和歌山ってあまり来たことがなく、多分子供の頃に家族で行った紀伊長島が私にとって最南かと思います。今回は先っぽまで行くのですが、真っ暗な中での行き帰りなので一度時間をとって明るい時にじっくりこの辺りを回りたいと思いました。

熊野からは下道だけかと思ったのですが、途中新宮から10kmくらい、周参見の直前も10kmくらい、無料の高速道路?があって少し距離を稼げました。でもあとは普通の下道で、しかも海岸沿いの道なのでカーブも多くスピードも出せないので、安全運転で進みます。

結局周参見についたのは21時くらいだったでしょうか。途中コンビニで弁当を買って食べてたりもしましたが、アイベルから4時間はかかったことになります。

到着して皆さんと挨拶を交わす間もなく、すぐに天リフさんの生中継のインタビューを受けます。



動画開始から38分頃から出てきます。ライブビューでもそうですが現場でも、富山から遠く周参見まで来たことに驚かれたようです。現地ではヒロノさんの66cmを筆頭にドブが何本も並び、眼視が相当に盛り上がっていました。フラッシュなどたけなかったので写真はありませんが、天リフさんの動画でその雰囲気はわかるかと思います。

到着した頃はまだ月が出ていたのですが、月の反対側はすでにかなり星が見ていて、基本的に暗いのと透明度がいいのが実感できました。月が沈んでからは全方向かなり暗くなり、かなりいい環境で、皆さんが集まる場所だというのが理解できました。実際、今回声をかけたメンバーだけでなく、関西の常連さんが数多くいらしていました。聞くところによると、冬場は関西からだと比較的暖かい周参見がほぼ一択とのことです。スタッドレスタイヤをつけている車が少ないので、路面が凍結しないということが重要だということでした。実際、空は全方向かなり低空まで開けているし、カノープスが普通に見えたのにはちょっと驚きました。

私はとりあえずSCA260を出したのですが、結局風が強いのと、ミニワイヤレスルータの電源のUSB-Bケーブルが破損しかけていてうまくLANでStick PCに繋げなかったので、撮影は諦めてしまいました。一応、リクエストしてくれてきはらっちさんには見せることができたので、まあよしとしましょう。他の方も撮影した画像はかなりの率が風でブレてしまっていたそうです。


ACUTER自動導入経緯台のテスト

その一方で今回はもう一つ、新兵器のお披露目がありますです。小海でサイトロンさんからお借りした、まだ日本では未発売のACUTER社の自動導入、自動追尾の経緯台です。AZ-GTiと同じようにSynScanやSynScan Proで操作できるものですが、AZ-GTiよりもかなり小さくて軽いです。しかも単3電池3本で稼働するので、電源も気軽です。

元々のセットアップは三脚付きです。
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接続は3/8インチネジなので、普通のカメラ三脚なら大丈夫でしょう。なのでFMA135と合わせてこうしました。
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ちょっと暗くて見にくいですが、三脚もミニ三脚にして地面に直置きです。長年追い求めていた超コンパクト電視観望セットです。小さすぎてそこにあるのに気づかずに蹴飛ばされるのが心配なくらいです。実際、自分で一度蹴飛ばしてずらしてしまいました。見にきてくれた人もこの小ささと、実際に出てくる電視観望の画面のギャップにかなり驚いていたようです。

これまでの最小セットアップとして、FMA135と自由雲台を使ったセットは試したことがありますが、やはりお客さんがいる観望会だと導入に戸惑ってしまうので、できれば自動導入があったほうがいいです。

これくらいコンパクトだと、カバンの中に潜めておいて、特に観望会とか計画するでもなく機会があったときにパッと取り出し、その場で星雲とかを見せるができます!少し心配なのは、こういったマニアの所業が一般の人に果たして理解されるのか?白い目で見られないように気をつけながら、一度くらいはやってみたいと思っています。


ACUTERでの電視観望操作の実際

さて、実際の動作の具合です。スマホやタブレットのWiFiで繋ぐ必要がありますが、今回はiPhoneXで試しました。SSIDに「ACUTER」と表示されるので、すぐにわかるでしょう。設置はAZ-GTiと同じで、鏡筒を水平北向きに置きます。最初左中を間違えて、初期導入で鏡筒が下の方を向き始めてしまいました。どうやら北を向いた時に後ろから見て、鏡筒が左にACUTERを右に設置するのが正しいようです。ACUTER本体に水準器がついているのですが、今回の三脚は各脚の高さの微調整が難しく、水平方向がうまく出ないので、そこそこ合わせるくらいで試しました。鏡筒の水平方向も重要です。これまではFMA135にアルカスイス互換のぷれーとをつけて、Vixenアリガタとアルカスイス互換クランプへの変換アダプターを自分で組み合わせたものを使っていましたが、これさえも大きく感じてVixenアリガタの小さいものをFMA135に取り付けました。アルカスイス互換クランプには水準器が付いていたので鏡筒の水平も取れていたのですが、今回は水準器がないので鏡筒の水平も見た目でだいたいです。

とりあえずM42オリオン大星雲を見ようと思い、初期アラインメントはワンスターアラインメントにして、リゲルを導入しました。FMA135の焦点距離が短いのと、Uranus-Cのセンサー面積も1/1.2とそこそこ大きいので、ある程度の水平出しでもすぐに初期アラインメントのターゲットが入ってきます。その後、M42を入れてみますが、AZ-GTiのようにごくごく普通に導入が成功します。

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この時点で再び天リフさんがきてくれました。どうやら有線中継のようで、その場に中継機材を持って来れないようで、写真に写してからそれを中継してくれました。上にリンクを貼ってある天リフさんの動画の2時間15分くらいの頃から出てきます。

ACUTERについては、途中でモーターの特に水平方向の動きが止まらなくなるということが数回ありました。方向ボタンも効かなくなってしまいます。それでも接続は継続していて、一旦切ろうとしてSynScanを落としても動きは止まらず、その状態でSynScanで再接続はできるのに動きは止まりません、一旦こうなると、本体の電源を一旦切っても再び電源をつけるとまた動き出してしまいます。電源を切って電池を抜いてしばらく待って、電池を再び入れて電源を入れるとやっと止まりました。電源を切るだけでしばらく待つというのは、その場では思い付かずに試せませんでした。少なくともそれらしい動きが2回は確認できたので、何らかの不具合が存在するようですが、どこをどうしたら発動するかはまだ良くわかっていません。もしかしたら寒かったのと充電タイプの電池で試したので、電圧降下が不具合の原因はあります。これは今後もう少し使い込んで検証したいと思います。

トラブルがない時は普通に操作でき、その後何人かの方に電視観望を見てもらいました。他に電視観望をやられている方はいないようだったのですが、そもそもこういった有名遠征場所に行ったことがほとんどないので、どう振る舞えばいいのかあまりよくわかっていなくて、眼視が主なのであまり邪魔にならないように少し離れた場所に設置して、画面もあまり明るくならないように注意します。普段の撮影はほとんど一人が多く、観望会でも仲間内の場合が多いので、他の方に迷惑をかけていなければよかったのですが。

他には馬頭星雲と燃える木、あとプレアデス星団(スバル)を見てみました。さすがの周参見です。かなり環境が良く、馬頭星雲はものすごいコントラストです。

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スバルに至っては青い分子雲が余裕で見えています。

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電視観望でここまでM45の分子雲が出たのは初めてです。


眼視でM42に色が!

電視観望はせいぜいこれくらいで、滞在時間の多くはドブの方を見せてもらっていました。かんたろうさんには45cmでスバルとかトール兜とか見せてもらいました。特にトール兜は2本のつのまではっきり見えたのでビックリでした。OIIIをフィルターを入れてあるそうですが、フィルターなしの場合も見せてもらいました。フィルターなしでもかろうじて見えるのは面白かったです。周参見の空の暗さと45cmの威力でしょうか。

ヒロノさんの66cmでM42を見せてもらいましたが、今回初めてオリオン大星雲ではっきり色がついていることがわかりました。特にトラペジウムの辺りは私には青紫に見えました。これは気のせいでも、神の目も何でもなく、はっきり意識できた色でした。その一方、ウィングの部分は少しピンクに、M43のあたりは黄色がかって見えているようでしたが、これらはトラペジウム周りほどははっきり色がわかったわけではなく、気のせいの可能性もあります。少なくともトラペジウム周りと、M43あたりの色が確実に違うということはよくわかりました。さらに25cm、8cmでも同じM42を見せてもらいましたが、少し青い色は認識できましたが、改めて66cmを見せてもらうとやはり口径の効果でしょう、明らかに色づきは66cmが圧倒的でした。

その後かんたろうさんに再びスバルを見せてもらい、メローぺ周りに分子雲が見え、少し青紫の色が付いている気がしました。トラペジウム周りの色と似ていると思いましたが、やはりトラペジウムほど濃い色ではなく、やはりこちらも気のせいの可能性もあります。

いずれも他人様のドブソニアンでのけいけんになりますが、飛騨コスモスでのM57に次いで、今回とうとうM42も色がついて見えました。輝度の高い星雲はやはり色がつくようです。色が付くといっても暗い中での色なので、濃いかもしれませんが、鮮やかに見えるようなことはありません。それでも星雲の色が目で見て見えるというがわかるのは素晴らしい経験です。今回のM42のヒロノさん、夏のM57のかんたろうさん、どうもありがとうございました。

観望の途中、少し天リフ編集長と話しました。話題は天リフが採算ベースに乗るかとか、最近の仕事がどうかとか、アマチュア天文業界の発展とかです。中国の天文メーカーの台頭も大きですし、日本の天文メーカーが元気がなさそうな心配もあります。でも天文人口が増えて欲しいというのでは一致した意見でした。他にも動画編集の大変さや、ブログを続けることの悩みなど、情報を発信することの苦労とかも話せました。こういったことが話せるのはオンラインよりは、やはり面と向かってですね。

さて、集まったみんなで記念写真をとったり、いろんなところに顔を出したりで、午前1時頃になりました。その時点で風も強くて撮影はあきらめたので、撮影機材の方は片付け始めました。


眠かった

結局午前2時頃にはその場を出ました。参加メンバーの津村師には彗星は明け方間近がいいとアドバイスを受けましたが、残念ながらその時点で退散することにしました。その日に高校の同窓会があり、昼前にはちょっと体裁を整えて名古屋駅に行かなくてはならなかったからです。周参見から名古屋まで仮眠をとりながらだと思ったよりかかりそうです。

結局名古屋の実家に着いたのは午前9時過ぎ、シャワーを浴びて準備をしたらもう出発する時間でした。普通は星見から帰って朝から寝るのですが、この日はわずかな仮眠でほとんど寝ることもできず、同窓会の2次会が終わった頃にはもうヘロヘロでした。実家についてすぐ寝てしまい、結局14時間寝てやっと元気になりました。もういい歳なので、あまり無理はせずに星を続けるべきかと改めて思いました。

遠かったけど、とても楽しい観望会でした。誘ってくれたかんたろうさん、どうもありがとうございました。現地でお会い出たみなさんも、いろいろお世話になりました。どうもありがとうございました。年末で名古屋の実家に行くので参加できた周参見かと思います。来年も時間が許したらまた参加したいとおもいます。

 

今年も長野県の小海町で開催された「星と自然のフェスタ」に参加してきました。昨年はこんな感じでした。



今年は11月11日(金)から13日(日)までの3日間ですが、金曜は昼間は会場設営で、夕方から「古スコ懇親会」と呼ばれる古い望遠鏡を持ち込んでの参加者と関係者の懇親会があります。なのでメインは土日、特に土曜の夜が星を見ながらのフェスとなります。


今回の星フェスの目的

前回はコロナ明けでの久しぶりの星まつりということで、人に会うことが大きな目的でした。今回の目的は、少し前の記事でお知らせした通り、やはり電視観望の講演が大きいのかと思います。

 

今回の講演は昨年の星フェスの時から頼まれていて、夏くらいに正式に依頼されました。何の話をするか色々考えていたのですが、やはり電視観望が広まりつつあり、まだまだやり方を聞きたい人もたくさんいるだろうということで、電視観望をターゲットにしました。

当日の講演の準備のこともあるので、今回はリエックスホテルの部屋をとってもらいました。ホテル泊で、しかも大好きなシャトレーゼ系列のホテルとなると妻も興味が湧いたようで、ツインルームとのことなので、今回は妻も一緒に参加することになりました。


出発

金曜日は休暇を取り、昼前に出発することにしました。

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土曜からでもよかったのですが、土曜午後に電視観望の講演があり、土曜午前の移動だと何かあったら時間的に厳しいそうなので、準備などに無理がないように金曜から泊まることにしました。星歴があまり長くない私としては、古スコ懇親会はせっかくなので参加させてもらおうというくらいの動機です。

富山インターから上越JCTで上信越道に入ります。途中小布施SAで昼食。小海会場には16時前くらいに到着し、すぐにホテルにチェックインしました。

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外のメイン会場では準備が着々と進んでいました。

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古スコ懇親会

古スコ懇親会開始予定の17時前くらいに、ホテル内の会場にいきます。久しぶりに会う星仲間との会話がはずみますが、懇親会が全然始まりません。聞くところによると、東京方面からの高速の佐久IC手前くらいで事故があり、通行止めで一部到着していない人がいて、18時開始に変更されたとのことです。

18時になり懇親会の開始ですが、やはりまだ到着していない方もいるようです。それでも何人かの方からの挨拶があり、立食形式で懇親会が始まりました。途中、Vixenの方達がかなり遅れて到着していました。後で少し話したのですが、遅く到着てもきちんと食べることが出来たのとことです。懇親会では軽食のみと聞いていたのですが、食事がとても美味しくて余るほど量がありました。どうもホテルのブッフェのメニューと重ねているようで、そのため様子を見ながら量が調節できていたようです。

食事をしながら、参加者のうちの30人くらいに機材自慢を順にしてもらっていました。例えばutoさんは2.5cmの手作りの反射望遠鏡で、モデルのパロマー天文台のヘール望遠鏡のスケールに合わせて人間の模型が置いてあったりします。
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ピンクのVixenの望遠鏡が可愛いくて、オーナー様によると知り合いの小学生の女の子に大人気だそうです。すごくきれいに塗れているなと思ったら、ラッピングだそうです。この方法はいいかもしれません。
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銀河鉄道の夜に出てきた(と思われる)望遠鏡が紹介されたり、
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ダウエル社の復活?記念グッズと、なんと当時の看板が披露されました。
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私はというと、スーパーチビテレと当時の物議を醸した天文ガイド1980年6月号と8月号を展示し、一部の人の強烈な興味を惹いていたようです。
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夜のメイン会場

懇親会の最後に記念写真を撮り、そのまま流れ解散で一部の人は外のメイン会場へ星見に。私も一旦部屋に戻り妻に「遅くなる」と断って、その後メイン会場に行ってみると、中央にいくつもの望遠鏡が並んでいて、多くの人が集まっていました。この日は昨年よりも全然寒くなく、かなり快適でした。ドブソニアンをいくつか覗かせてもらいましたが、木製の縞がかなりの本数見えるなど、シンチレーションが非常に良かったのが印象的でした。Nickさんのナイトスコープは相変わらず強烈です。月夜で三日月星雲がごくごく普通に見えていました。

そんな中、八王子からいらしている方が、電視観望をしていました。1分露光でライブスタックして、天体写真に仕上げるとのことです。月がかなり明るく出ていましたが、アンドロメダ銀河がきれいに出ていました。同じ場所でもう一人話している方で、長野の上田市から来ていると言っていましたが、電視観望に興味があるとのことなので、私も電視観望セットを出すことにしました。ただ、時間的に温泉に入れなくなりそうなので、「一旦温泉に行ってから始めるので、少し時間がかかるかもしれません」と伝えておきました。

部屋に戻ってそのままお風呂セットも用意して、すぐに温泉に向かいます。私は熱いお風呂が苦手なので、温泉に行ってもいつも短時間ででしまいます。この日も15分くらいのカラスの行水で、(楽しみの一つの)恒例のアイスを2本食べてます。その後部屋に戻り、すぐに機材を持って再びメイン会場に行きます。

先ほど話した方もまだ残っていて再会できたので、早速説明しながらの電視観望セットアップです。機材は最近定番のFMA135とUranus-CをAZ-GTiに載せたもの。フィルターはCBPを使いました。この日見たのは4つです。最初はM31アンドロメダ銀河。
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次はもう十分登ってきているM42: オリオン大星雲です。
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ここら辺まではまだ明るい天体なのですが、次の馬頭星雲は、口径3cmの鏡筒でこの月明かりでここまで出るのはかなり驚いていたようです。しかも月がかなり明るく、オリオン座のかなり近くにあります。
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話してみると、「ほしぞloveログ」をよく読んでいてくれているようなのですが、電視観望といってもいいところだけを見せていると思っていたようでした。「いえいえ、いつもよく見えますよ」と話して、ここまで見えるのなら「今後カメラをどうするか」とか色々話し込みました。星歴は私なんかより遥かに長く、持っている鏡筒がPentaxの75SDFHで、アイピース口をアメリカンサイズにするのが大変なようです。カメラもPentaxらしく、それが使えないかとも話していました。

最後、どこまで見えるかということでM33に挑戦してみました。流石に淡く、ライブスタックでかなり露光してやっと腕の構造がわかるくらいです。月明かりだと口径3cmの限界がここら辺なのかもしれません。あ、でもCBPはつけっぱなしだったので、外すともう少しマシになるかもしれません。
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0時近くなって、明日の講演のこともあるのでそろそろ退散することにしました。でも電視観望について色々納得できたみたいで、満足してもらえたようです。この日しかチャンスがないということでしたが、結局次の土曜の夜も来てくれて、また色々話すことになるのでした。

この日はこれでホテルの部屋で就寝です。続きは次の記事で。



 

最安クラスの新発売のCMOSカメラ、Ceres-Cでの電視観望を試してみました。果たしてどこまで見えるでしょうか?


最安値の天文用CMOSカメラ

感度の高いIMX224センサーを利用した、(おそらく)最安値の天体用途のCMOSカメラ、Player One社の新発売のCeres-Cを手に入れました。実売で税込1.65万円というのはかなりインパクトがある価格で、特に電視観望をやってみたいと思っている方の中には、この格安カメラに興味のある方も多いのではないでしょうか。




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右に写っているのがカメラ本体になりますが、小さいですね。でもこの小ささが今回の鍵になります。また、Player Oneのカメラに(おそらく)もれなく付いてくるブロアーはコンパクトで強力で、使い勝手が良さそうです。USBケーブルも付属なのですぐに使うことができます。

このカメラ、実はメーカーによるとエントリークラスの「ガイドカメラ」だそうです。でも接続はUSB3.0なので、惑星撮影などにも使えるはず。今回はこのガイドカメラと謳っているものが、電視観望用途に耐え得るものなのか、実際に試してみました。


鏡筒

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まず今回のテストに選んだ鏡筒が、サイトロンから発売されているNEWTONY


この鏡筒を選んだのには明確な理由があります。IMX224センサーはエントリークラスなので、値段が安い代わりにセンサー面積が小さいです。この場合、鏡筒の焦点距離を短くしないと見える視野が狭くなってしまい、天体の導入が難しくなってしまうために、快適な電視観望が実現できなくなってしまいます。NEWTONYの焦点距離は200mm。望遠鏡としてはかなり短い部類になります。

NEWTONYの値段は税込で約6千円。この価格も大きな魅力で、電視観望を始めてみようと思うきっかけになるのかと思います。

もちろんNEWTONY以外にも焦点距離200mm台の鏡筒は存在しますが、ほとんどが高級機と呼ばれるもので、値段は10倍以上とかになってしまいます。唯一多少安価なものにSky Watcher社のEVOGUIDE 50EDというのがありますが、これでも実売で4倍以上の値段です。

中古のカメラレンズを探せば、短焦点でさらに安いものが見つかることもあると思います。でもNEWTONYのように、入手しやすく安価な鏡筒という意味では、サポートなどのことも含めて現行モデルの方が初心者には心強いと思います。

しかもこのNEWTONY、横の蓋を開けると中身が見えて、ニュートン反射望遠鏡の仕組みがよく分かるので、入門者にとっては最適です。

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私はもともと、観望会とかで子供とかに望遠鏡の仕組みを説明したくてこの鏡筒を購入したので、そこまで実用的に使うことを考えていませんでした。でも焦点距離がここまで短いニュートン反射はこのNEWTONYくらいである意味貴重な存在で、今回電視観望でうまくいけば今後大いに活用することができます。


Ceres-CとNEWTONYの組み合わせ

ところがこのNEWTONY、通常のCMOSカメラと組み合わせると、少しというか重大な問題があります。ピントが出ないのです。アイピース口にカメラを取り付けるとき、ほとんどのカメラの場合あと5mm位中に入り込んでいけばピントが出るのですが、私も以前同じPlayer OneのNeptune C-IIを取り付けた時、あとすこしでピントが出なくて悔しい思いをしました。

Ceres-Cはその形を見てもわかりますが、アイピース差し込み口と同じ径が続いているので、奥まで差し込むことができ、それでピントが出るのです。Ceres-CとNEWTONYの組み合わせがここで効いてくるのです。


AZ-GTi

もう一つ重要なアイテムを紹介しておきます。SkyWatcher社のAZ-GTiです。



いくらNEWTONYが短焦点といっても、空のかなり狭い範囲を見ることになります。地球は回っているので、空を見ていると星は動いていくように見えます。
  1. 見たい天体をスムーズに導入することと、
  2. 星を追いかけるために自動導入、自動追尾の機能
がある「台」が必要になります。今回はこの手の機能を持った機器としては最安に近いAZ-GTiを使うことにします。もし、既に赤道儀などを持っていたら、もちろんそれらを使うこともできます。


組み立て

さて、実際に機材を組み合わせてセットアップしてみましょう。まずはNEWTONYをAZ-GTiに取り付けます。この場合、NEWTONY付属の簡易三脚から鏡筒本体を外して、それまで三脚が付いていた本体下面のネジを利用してアリガタを取り付けます。

アリガタはCeres-Cの販売店のシュミットにもいくつかありますし、

アマゾンなどでも「アリガタ」で検索すればいくつも見つかると思います。

私は簡単に取り外せるよう、アリミゾからアルカスイス互換のクランプへの変換アダプターを作り、NEWTONYにはアルカスイス互換のプレートをつけて、取り付けるようにしています。普通はビクセン規格のアリガタを直接取り付けるので十分でしょう。

次はNEWTONYにCeres-Cをとりつけます。アイピース口のところに差し込み、固定ネジを締めるだけです。
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PCとソフトウェア関連

カメラをPCに接続しますが、その前にあらかじめPlayer Oneのサポートページに行って、ドライバーをダウンロードしインストールしておいてください。
 
リンク先の「Native driver」の中の「Camera driver」を選びます。

今回電視観望用に使うソフトは「SharpCap」。



これもダウンロードしてインストールしておいてください。無料でも使えますが、いくつかの機能は有料版のみで使えます。基本的な電視観望は無料版でもできますが、オートストレッチなど有料版の機能を使うと便利な時があります。年間2000円程度なので、もし電視観望が楽しいと思って続けたいと思うなら、有料版を考えてもいいのかもしれません。

ソフトの準備ができているなら、カメラをUSBケーブルでPCと接続します。SharpCapでカメラを認識させますが、ドライバーなどがうまくインストールされていれば、Ceres-Cがカメラの選択肢として出てくるはずです。
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これらのことは、あらかじめ昼間などの明るい時に試しておくといいかもしれません。うまく接続できたら、露光時間とゲインを適当に合わせてPCの画面にカメラで見ている映像が出ているのを確認してみてください。もともと天体用のカメラなので、昼間に見ると明るすぎる場合があります。その際は露光時間を数ミリ秒とか、ゲインを0近くにするとかして、きちんと画面に反応があるかを確認してみてください。


ピント合わせについて

さて、ここで気づくと思うのですが、NEWTONYが安価なせいもあり、ピント合わせがアイピース全体を回転させる方式になっています。そのため、カメラを固定したままだと視野が回転してしまうことと、ねじ込み式のためにきちんと固定できず、多少ガタついてしまいます。

なので、カメラの固定ネジを緩めて、何か景色や夜なら星にNEWTONYを向けて、PCの画面を見ながらカメラを出し入れしてみます。ある程度ピントがあったところで固定ネジを締めてカメラを固定します。その後、わずかにカメラごと回転させてピントを合わせるようにします。視野は多少回転しますが、ピントの調整範囲はごくわずかなので、回転もごくわずかに抑えられるはずです。

その後は、USBケーブルに無理なテンションなどかけなければ、ガタでピントがずれるようなことはありませんでした。


電視観望に使えるか?

さて、実際に夜に電視観望でCeres-Cを使ってみます。この安価な「ガイド用」と言われているカメラ、どこまで使えるのか非常に楽しみです。

試したのは2021年10月14日の夜、夕方からずっと曇りだったのですが、23時頃から晴れ始めたので早速準備です。この日は月齢8日の半月を越えたくらいの明るい月が西の空に傾いているような空でした。

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セットアップした機材を外に出し、アウトドア用の机を別途用意し、PCをそこに置いて操作します。AZ-GTiで、明るいこと座のベガを初期アラインメントで導入します。

ピント合わせは先に説明したように、カメラをアイピース 口に出し入れしてある程度合わせてから、回転で微調整します。星を見ながらやってみてもきちんとピントが合うことが確認できました。

さて、これで準備完了。目的の天体を自動導入します。


M27: 亜鈴状星雲でファーストライト

まず最初に見たのは、西の隣の家の屋根に沈みそうになっているM27亜鈴状星雲です。
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Gain300、露光時間3.2秒、LiveStack89枚、4分40秒

さすが224系のセンサーです。綺麗に見えますね。どうやら電視観望用途としてもこのCeres-C、十分に使えるようです。この時は露光時間3.2秒、ゲインを300に設定しました。最初ゲインを500とかに設定したのですが、明るすぎて画面が真っ白になってしまいました。ゲインは最大780まで設定できるようですが、300程度で十分なことがわかりました。

上の画像のように明るく見るためには、SharpCapの右パネルのヒストグラムを見ながらの調整が必要になります。ヒストグラムをよくみると3本の黄色い縦の点線があります。そのうち左と真ん中の点線で、山を挟むようにします。すると淡い部分ががあぶり出されてくるはずです。線の位置は画面を見ながら色々微調整してみてください。ちなみに、有料版のSharpCapではこのあぶり出し操作を自動でやってもらうことができます。有料版を持っている場合は、ヒストグラムにある雷マークのようなボタンを押してみて下さい。自動的に淡い部分があぶり出されてくるのが分かると思います。このことを「オートストレッチ」と言います。

うまくあぶり出されて、見たい天体が画面内に入っていることが確認できたら、ライブススタックでノイズを落としてみましょう。メニューの「ツール」から「ライブスタック」を選びます。下に出てくるライブススタックの中のヒストグラムを同様にいじって、左と真ん中の黄色い点線で山を挟んでみて下さい。その際は右パネルのヒストグラムの線で挟むのは一旦元の位置に戻しておいて下さい。雷マークの横のリセットボタンを押すと一発で戻るはずです。リセットしておかないと画面が真っ白に近くなってしまいます。

ライブスタックでは、時間が経つにつれて画面が重なっていき、背景のノイズがどんどん綺麗になっていくのが分かると思います。ライブススタックのヒストグラムで大まかにあぶり出し、右のパネルのヒストグラムで微調整するなどもできます。各自色々試してみて下さい。


M57: 惑星状星雲で迷光が...

M27でCeres-CとNEWTONYでかなり見えることがわかったので、次の天体に移動します。次も今にも沈みそうなM57、こと座のM57惑星状星雲です。小さいですが、輝度の明るい星雲なのでハッキリ見えます。

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Gain300、露光時間3.2秒、LiveStack56枚、3分

実はM57を導入した時に、最初妙な迷光が画面に表れてきました。
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迷光エリアの中の真ん中少し上にM57が写っています。小さいですね。

色々な方向を遮ったりして試した結果、隣の家の窓の明かりが入ってきていることに気づきました。カメラの取り付け位置が鏡筒のかなり先端に近い所にあるので、鏡筒先端から入ってくる光がカメラに入り込んでしまうためです。今回はとりあえず光を遮るようにテーブルを移動して影になるようにして迷光を避けましたが、フードのようなものを自作するのが良いのかもしれません。自分で工作などして鏡筒を育て上げていくのもまた、趣味としては楽しいことなのかと思います。

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手前から来る光を机とPCで遮ってカメラに入らないようにする。


M31: アンドロメダ銀河でレデューサを試す

次は銀河を見てみます。秋と言えばM31アンドロメダ銀河です。

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Gain300、露光時間3.2秒、LiveStack69枚、3分40秒

腕の構造も多少見えているのが分かるかと思います。かなり感度の良いカメラと言えると思います。

焦点距離200mmですが、さすがにアンドロメダ銀河は大きくてCeres-Cでは入りきりません。そこで、レデューサのテストをしてみました。SVBONYの0.5倍のもので、アマゾンなどでも安価に手に入れることができます。Ceres-Cの先端にはねじ山がきってあるので、このようなアメリカンサイズ(31.7mm)のレデューサやフィルターなどを付けることができます。レデューサを直接とりつけてみます。

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Ceres-Cの先にレデューサやフィルターなどをつけることができます。
この写真ではレデューサと、次の北アメリカ星雲で使うCBPをすでに取り付けてあります。

まずはレデューサが最低限使えるかどうかですが、カメラ位置を前後することで全く問題なくピントが出てくることがわかりました。その時の画像です。

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Gain300、露光時間3.2秒、LiveStack24枚、1分17秒

多少画角が広がっていることがわかります。ただし、レデューサをセンサーにかなり近づけた状態でとりつけてあるので、倍率はおそらく0.7倍くらいであまり減少されていなくて、見える範囲もそれほど広がっていません。また、この時間帯M31は天頂付近にあるため、経緯台では追うことが苦手で、短時間でも流れてしまっていることがわかります。


北アメリカ星雲

次に、白鳥座付近に移って北アメリカ星雲を見てみます。ところが、もうかなり西の低い空に傾いていて隣の家の明かりの影響が出ているせいか、位置はあっているはずなのにどう調整しても全く何もあぶりだすことができません。おそらく強烈なカブリのために大きな輝度差があって、ストレッチとかが役に立たないからだと思われます。

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こんな時は光害防止フィルターの類を入れると状況は劇的に改善されます。今回はサイトロン社のCBP(Comet Band Pass)フィルターを使いました。このフィルターをカメラと先ほどつけたレデューサとの間に挟むように取り付けます。こうすることでレデューサとセンサー間の距離を稼ぎ、倍率を下げることでより大きい範囲を見ようとしてます。その結果が以下の画像です。

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Gain300、露光時間3.2秒、LiveStack33枚、1分45秒

同じ位置を見ているのに、CBPがあるだけで劇的に星雲のあぶり出しが改善されることが分かるかと思います。また、星の位置を比較することで、より大きなエリアを見ていることも分かるかと思います。これで0.5倍程度になると思うので、焦点距離100mmの鏡筒にCeres-Cを取り付けているのと同じことになります。また、レデューサの星で四隅の星像が流れてしまっているのがわかります。これは安価な汎用的なレデューサのため、性能があまり良くないので仕方ないでしょう。

レデューサをつけたとしても北アメリカ星雲の一部しか見えていないので、大きな天体を見るにはCeres-Cではまだセンサー面積が小さいことがわかります。これ以上のエリアを見ようと思ったら、もっと短い焦点距離が必要で、こうなってくると望遠鏡というよりは、カメラレンズの範疇になってきます。次回、カメラレンズでも試してみようと思っています。


M42: オリオン大星雲

0時半頃、既にオリオン座がそこそこの高さまで昇ってきています。M42オリオン大星雲を導入してみました。オリオン大星雲は明るいので、わずか1分ちょっとの露光でも十分きれいになります。CBPはつけたままです。

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Gain300、露光時間3.2秒、LiveStack23枚、1分14秒

レデューサが入っているので、四隅は流れてしまっています。上の方にランニングマンも見えていますが、レデューサが入ってやっとM42と合わせて画角に収めることができます。


馬頭星雲と燃える木

最後は馬頭星雲と燃える木です。馬頭星雲は結構淡いので、露光時間を6.4秒に伸ばしました。

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Gain300、露光時間6.4秒、LiveStack18枚、1分55秒

それでも2分弱でここまで出ます。感度やノイズの少なさも含めて、Ceres-Cがセンサーの性能をきちんと引き出すようにうまく作られているのを、この画像がよく表していると思います。

次の日も朝が早いのと、ちょうどPCのバッテリーが少なくなったとの警告が出たので、ちょっと名残惜しかったですが、ここで撤収としました。


Ceres-Cの評価

Ceres-Cでの電視観望どうでしたでしょうか?私の評価は「相当いい」です。入門用の電視観望カメラとしては間違いなくベストバイだと思います。

まず値段。初心者にとってこの値段は電視観望をやってみる敷居が相当下がるのではないでしょうか?この値段で、作りに手を抜いているようなところは全くみられなかったです。

次に感度。予想より相当いいです。ガイド用と謳われているので心配してましたが、全くの杞憂で電視観望用途には十分な性能があると思います。IMX224はセンサーとしてはかなり古い(2014年発表)部類で、相当こなれているといえます。Ceres-Cは現在の技術でこなれたセンサーの性能を余すところ無く引き出しているような印象です。

ダークノイズに関しても秀逸です。見ている限り輝点に相当するものは一つしか確認できませんでした。秋になってきて涼しくなってきたとはいえ、これは驚異的です。Ceres-Cの解説を見ると

「Player OneのプラネタリーカメラにはDPS(Dead Pixel Suppression)テクノロジーが搭載されています。DSPにより自動的にデッドピクセル(ホットピクセル、コールドピクセル)が一掃されます。 」

とあります。おそらくこれが効いているのかと思いますが、電視観望には非常に有利に働くのかと思います。仮に輝点がたくさんあったとしても、SharpCapのリアルタイムダーク補正機能である程度緩和することはできますが、露光時間やゲインを変えるたびにダークファイルを入れ替える必要があります。ダーク補正をしないでいいのなら、しないに越したことはありません。特に初心者にとっては、手軽に綺麗な画像を得られるのは相当なメリットかと思います。


まとめ

 結論だけ言うと、電視観望用に購入する初めての入門用カメラとしては確実に「買い」でしょう。まだ1日触っただけですが、相当高性能で素直な印象を受けました。私としてはかなりの高評価です。

期待以上によく見えたので、まだまだ色々試したいです。Ceres-C関連の記事、もう少し続けようと思いますので、ぜひご期待ください。

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