ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:FS60CB

BlurXTerminator (BXT)を使った、過去画像の再処理の第二弾です。

第一弾は三日月星雲でした。


この時は主に背景の改善が特徴でしたが、今回は特に恒星の改善がすごいです。

BXTの収差補正能力

昨年ゴールデンウィークに、近くの牛岳においてFS-60CBにASI2400MC Proを取り付けて撮影した青い馬星雲。



当時出来上がった画像はASI2400MCの能力が思う存分発揮されたもので、背景の淡い部分が十分に表現され、遠目で見る限り素晴らしいものです。自分的にも十分満足していました。その一方、遠征先で撮影時に接眼側の延長筒の長さが手持ちで合わず、バックフォーカスがずれてしまい、四隅が思いっきり流れてしまいました。
mosaic1

これはさすがに救いようがないとずっと思っていたのですが、BXTはこのレベルでも大幅に改善してくれます。しかも今回使ったのは「Collect only」だけで、恒星を小さくしたりハロを押さえたりする機能は使っていません。
mosaic3

左上だけまだ少し流れていますが、他の8枚は完全に許容範囲です。これだけでもBXTの収差改善は圧倒的にすごいです。

しかもFS-60CBには、昔から指摘されている弱点の一つとして、撮影の際に赤と青とでピント位置がどうしてもずれてしまうという問題があります。現場において赤に合わせるか、青に合わせるか、もしくはその中間に合わせるかいつも大問題です。どうするかは場合によるのですが、今回は青い領域なので青にピントを合わせたために、全ての恒星周りに赤いハロが出てしまっています。ところが、これらの赤ハロも今回のBXTはものの見事に綺麗に除去してくれています。これはFS-60ユーザーにとっては大きな福音となるのではないでしょうか。


背景と仕上げ

この四隅で仕上げた画像です。今回はNXTも使いノイズをある程度除去しています。また、青い馬付近は意外に赤い領域もあり、前回はこの特徴をあまり出せなかったので、今回は少し強調してあります。

masterLight_180_00s_RGB_integration_ABE_SPCC_ABE3_cut

下はこれまでの画像ですが、今回のと比べると、やはり少し緑に寄っている気がしますし、赤が弱いと思います。
masterLight_180s_ABE_PCC_ASx4_SCNR_bg2_cut_s

これまでと、今回の再処理の2枚を比較して検討してみます。まず恒星ですが、明らかに分解能が増しています。特に首元にある青い明るい2つの星の下の方のものは、2つの星がかなり近接しています。前回のものでは明るすぎて分離できていませんでしたが、今回のでは余裕で分離しています。また、微恒星に関しても、拡大して比べるとよくわかりますが、より暗い星までかなりはっきりと写っています。恒星に関してはほとんどの処理がPixInsightで閉じるようになったのでずいぶん楽になったのと、その恩恵でしょうか仕上がりも大分良くなったと思います。BXTのおかげですね。

その一方、分子雲に関しては今回かなり苦労しました。前回のレベルまで全然持っていけないのです。前回の時点ですでにかなりのレベルで淡いところを引き出し切っていて、しかも最後のところをPhotoshopでやっていたので、肝心要の最淡の部分でどうやったか記録が全く残っていません。元々の素材が良かったので、画像処理はかなりシンプルだったはずです。色々試しても、ごくわずかのところでどうしても前回のレベルまで持っていけません。結局今回は第9バージョンまで処理し直して、やっとそこそこ満足しました。ポイントはマスクの使い方だったのですが、前回シンプルにやっていたのを、今回凝りすぎていたというのが原因でした。本当にシンプルに星マスクをうまく適用することで、背景の分子雲モクモクを再現することができました。

あと今回はNXTも使ったので、背景が全体的にノイジーだったのが改善されています。ある程度拡大して比較するとよくわかります。


まとめ

BXTを使い再処理すると、やはり有意に違いがわかるレベルで改善します。今回に関しては主に恒星です。その一方、今回実感できたことは、BXTは恒星や星雲部の分解能は向上させることはあっても、諧調に関してはほぼ何も貢献しないということです。前回の三日月星雲の再処理では背景の階調が改善しているように見えますが、あくまで副次的な効果で、基本的にはこれまで通り丁寧に階調のある部分をうまく拡大させることが必要となるということがよくわかりました。


2022年に撮影した画像のまとめです。まとめておくと後から見て楽なので、昨年から始めてます。ちなみに2021年の画像のまとめはここにあります。


ASI2400MC Proでの撮影

「M65、M66、NGC3628: 三つ子銀河」
Image206_pink_ASx4_bg4
  • 撮影日: 2022年3月27日22時33分-3月28日1時56分、3月29日21時50分-3月30日2時35分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: 無し
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI2400MC Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 150、露光時間10分、34枚で総露光時間5時間40分
  • Dark: Gain 150、露光時間10分、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain 150、露光時間 0.01秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「IC1396: ケフェウス座散光星雲」
masterLight_integration_ABE_PCC_ASx5_HT_starreduction_SCNR3a_tw
  • 撮影日: 2022年5月29日0時57分-3時13分
  • 撮影場所: 岐阜県飛騨市
  • 鏡筒: TAKAHASHI FS-60CB+マルチフラットナー(f370mm)
  • フィルター: なし
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI2400MC Pro (-10℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイド
  • 撮影: SharpCap、Gain 150、露光時間3分x45枚で総露光時間2時間15分
  • Dark: Gain 150、露光時間3分、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain 150、露光時間 0.1秒、64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「IC4592: 青い馬星雲」
masterLight_180s_ABE_PCC_ASx4_SCNR_bg2_cut_s
  • 撮影日: 2022年5月6日0時10分-2時57分
  • 撮影場所: 富山県富山市牛岳
  • 鏡筒: TAKAHASHI FS-60CB+マルチフラットナー(f370mm)
  • フィルター: なし
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI2400MC Pro (-10℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: SharpCap、Gain 150、露光時間3分x55枚で総露光時間2時間45分
  • Dark: Gain 150、露光時間3分、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain 150、露光時間 0.1秒、64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


RGB合成(+Hα)

「IC434: 馬頭星雲」
Image34_PCC_AS_HT5a_cut
  • 撮影日: 2022年3月3日22時46分-23時7分、3月4日22時4分-22時14分、3月8日21時58分-23時06分、3月9日19時13分-22時25分、3月10日19時45分-22時2分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB, Hα:7nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分、R: 22枚、G: 30枚、B: 22枚、Hα: 23枚の計97枚で総露光時間4時間51分
  • Dark: Gain 120、露光時間3分、128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120、露光時間 RGB: 0.08秒、Hα: 1秒、それぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「M100」
Image27_ABE_PCC_crop_DBE_decom_stredu_ABE_PCC6
  • 撮影日: 2022年3月3日23時51分-3月4日4時37分、3月10日2時54分-5時1分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分、R: 22枚、G: 22枚、B: 24枚の計68枚で総露光時間3時間24分
  • Dark: Gain 120、露光時間3分、128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120、露光時間 RGB: 0.08秒、RGBそれぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「M101: 回転花火銀河」
Image88_ABE_PCC_DBE_decom_AS_AS_starreduction_SCNR_CT5
  • 撮影日: 2022年3月8日23時26分-3月9日3時26分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分、R: 23枚、G: 8枚、B: 11枚、Hα: 4枚の計46枚で総露光時間2時間18分
  • Dark: Gain 120、露光時間3分、128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120、露光時間 RGB: 0.08秒、Hα: 1秒、 RGBとHαそれぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「M51:子持ち銀河」
Image199_ABE_pink_crop_DBE_Decon_HT_SR5_rot_tw
  • 撮影日: 2022年4月2日20時32分-4月3日3時50分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB、Hα
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 240、露光時間10分、R: 7枚、G: 7枚、B: 10枚、Hα: 3枚の計27枚で総露光時間4時間30分
  • Dark: Gain 240、露光時間10分、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain 240、露光時間 RGB: 0.03秒、Hα: 0.3秒、 RGBとHαそれぞれ64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「M104: ソンブレロ銀河」
Image10_RGB_crop_ABE_ABE_PCC_DBE_AS_HT_SR2_cut
  • 撮影日: 2022年4月22日20時1分-4月23日1時18分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃), bin1
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 240、露光時間10分、R: 6枚、G: 7枚、B: 6枚の計19枚で総露光時間3時間10分
  • Dark: Gain 240、露光時間10分、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain 240、露光時間 RGB: 0.03秒、RGBそれぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「NGC4038: アンテナ銀河」
Image196_pink_deconv4
  • 撮影日: 2022年5月4日21時14分-5日0時5分、5月5日21時14分-6日0時51分
  • 撮影場所: 富山県富山市牛岳
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間10分、R: 15枚、G: 9枚、B: 9枚の計33枚で総露光時間5時間30分
  • Dark: Gain 120、露光時間10分、29枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 RGB: 0.07秒、RGBそれぞれ64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


ナローバンド

「NGC2359: トール兜星雲」
Image07_DBE_PCC_DBE_AS_HTx3_reducestar2_3_crop_mod
  • 撮影日: 2022年1月22日22時2分-23日2時5分、1月27日18時57分-21時00分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader Hα:7nm、OIII:7nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド: オフアクシスガイダー + ASI120MM mini、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分、Hα27枚、OIII36枚の計63枚で総露光時間3時間9分
  • Dark: Gain 120、露光時間3分、128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120、露光時間0.2秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「M17: オメガ星雲」
AOO_ABE_PCC_AS_AS_HT_mod

SAO_dim3_mod
  • 撮影日: 2022年5月6日1時24分-2時33分
  • 撮影場所: 富山県富山市牛岳
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 6.5nm、Optlong: SII 6.5nm
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分、Hα: 5枚、OIII: 6枚、SII: 7枚の計18枚で総露光時間54分
  • Dark: Gain 120、露光時間3分、温度-10℃、128枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα、OIII、SII、それぞれ20秒、16枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「NGC6888: 三日月星雲」
Image11_SPCC_BXT_HT_HT_CT_SCNR_NXT_maskB_CT_CT_CT_ok2
  • 撮影日: 2022年5月25日1時8分-2時59分、26日0時33分-2時56分、30日0時37分-3時0分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 6.5nm、Optlong: SII 6.5nm
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間10分、Hα: 12枚、OIII: 13枚、SII: 13枚の計38枚で総露光時間6時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間10分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα、OIII、SII、それぞれ20秒、16枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「VdB142象の鼻星雲」
Image05_SCNR_ASx4_HT_SR_bg4_low
  • 撮影日: 2022年6月1日0時29分-3時2分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 6.5nm、Optlong: SII 6.5nm
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、Hα: 10枚、OIII: 9枚、SII: 9枚の計28枚で総露光時間2時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα、OIII、SII、それぞれ20秒、16枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


LRGB合成

「IC514: まゆ星雲」
Image360_bg2_cut_tw
  • 撮影日: 2022年9月29日22時50分-30日3時42分、9月30日21時14分-10月1日2時37分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、L: 41枚、R: 19枚、G: 16枚、B: 22枚の計76枚で総露光時間6時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 L: 0.001秒、128枚、RGB: 0.01秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「C4, NGC7023, LBN487: アイリス星雲」
Image19_ABE_ABE_crop_PCC_CT_CT_MS7_cut3
  • 撮影日: 2022年10月1日20時50分-2日0時9分、10月20日19時12分-21日0時39分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、L: 38枚、R: 14枚、G: 14枚、B: 17枚の計76枚で総露光時間6時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 L: 0.001秒、128枚、RGB: 0.01秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

 
「sh2-136ゴースト星雲」
Image13_ABE_ABE_ABE_cut
  • 撮影日: 2022年10月25日20時2分-26日0時27分、10月26日19時17分-21日0時0分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (初日分は-10℃、2日目は+9℃から11℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、L: 54枚、R: 18枚、G: 15枚、B: 12枚の計99枚で総露光時間9時間55分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 L: 0.001秒、128枚、RGB: 0.01秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「M81:ボーデの銀河」
Image09_LRGB_crop_ABE1_ABE2_SPCCsa_BXT_MS_SCNR6
  • 撮影日: 2023年1月21日21時19分-22日5時22分
  • 撮影場所: 長野県開田高原
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、L:28枚、R:12枚、G:11枚、B:12枚、Hα:6枚の計69枚で総露光時間5時間45分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 L:0.001秒、128枚、RGB:0.01秒、128枚、Hα:20秒、17枚(dark flatは32枚)
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


拡大撮影

「M45: プレアデス星団中心部」
Image06_PCC3_cut
  • 撮影日: 2022年10月1日3時28分-4時12分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、R: 1枚、G: 4枚、B: 4枚の計9枚で総露光時間45分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα、OIII、SII、それぞれ0.01秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


「C49: ばら星雲中心部」
Image97_RGB_ABE_ABE_PCC_bg_ARGB3 _cut
  • 撮影日: 2022年10月21日1時26分-4時00分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB、Hα
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、RGBHαそれぞれ4枚の計16枚で総露光時間1時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 RGB:0.05秒、Hα:1秒で、それぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
記事


まとめ

2022年ですが、前半ゴールデンウィーク頃まではまだ良かったのですが、特に後半あまり天気が良くありませんでした。そのため、撮り溜めていた画像処理をのんびり進めるという体制になってしまいました。でもこれあまりよくないですね。いつかやればいいやと思うと全然進みません。まだ3枚ほど残っています。一つはM82で、M81と同じようにそのうち撮り直すので、多分昨年春に撮ったのはお蔵入りになりそうです。後の2枚は星景に近いもので、いつか処理しようとは思っていますが、いつになるやら。お蔵入りかもしれません。

振り返ってみると、昨年はほとんどSCA260での撮影でした。最初の頃はSCA260の重さによる揺れに悩まされていましたが、CGX-Lが来てからはやっと揺れから解放されました。さらに8枚のフィルターホイールにしてからはナローバンドも楽しめるようになりました。でもナローバンドが面白かったかというと、正直、三日月星雲を見てもAOだけで十分な気もして、普通のRGBの方が色も鮮やかで楽しい気がしています。それよりも、LRGB合成は、RGBだけのときとは一線を画す分解能を得られるので、今後は本機撮影ではRGBだけにすることはもうないでしょう。さらに、2022年末に出てきたBlurXTerminatorは劇的に分解能を向上するので、今後の画像処理が楽しみです。

あと、拡大撮影は余り時間で撮影したものですが、これはまた別の楽しみです。見慣れている対象でも意外な表情を見せてくれました。こちらももう少し続けたいと思います。

2022年は全部で17対象(一部2023年も入っていますが)ですが、数枚を除いてほとんどが自宅撮影です。元々はそこそこ星雲を撮れたらいいなーくらいに思っていたので、自宅でここまで出るならまあ十分かと思っています。その一方、M81の背景のIFN(Integrated Flux Nebula)でわかったように、自宅ではなかなか出ないものがあるもの事実のようです。あまり無理をしないように、遠征にも少しづつ行けたらと思います。


皆既月食の一連の結果です。前回の天王星食の記事からの続きです。


皆既月食の記事も佳境となってきました。メインの結果は今回で最後です。今回は、FS-60CBで赤道儀の追尾レートを太陽時で撮影した、4時間分の大量の画像です。


地球の形を位置合わせなしで

今回は一連の皆既月食の記事の中でも、目玉に相当るする回です。赤道儀の追尾レートを太陽時にして、月食の光源である太陽の移動速度に合わせることにより、地球による影を固定するように追尾します。影を映すスクリーンは公転運動で動いていく月です。月食の間の約4時間の間、1分に1枚撮影することで、うまくすると撮れた画像の位置合わせを一切することなく、影の形がそのまま地球の形になると期待しての撮影です。

実はこの位置合わせせずに地球の形を出す方法、昨年の限りなく皆既に近い月食の時から考えていて、太陽時に合わせればいいのではとの考えに至りました。でもシミュレーションしてみると、撮影中に月が上の方に移動していきます。上に移動していく理由は先の記事で書いていますが、一言で言うと地球の地軸の傾きのためで、地球の自転軸に垂直な面とと月の公転軌道面に差があるからです。赤道儀は赤経のみが追尾するので、赤緯を動かさない限り上下移動には対応しきれないのです。

Stellariumでのシミュレーションの結果から、画面の横方向にで2度角程度、縦方向でも2度角程度移動するようです。月の視直径が30分角程度なので、月が最低4個分、できれば6個分くらい入るような画角になります。左右だけでなく、上下にも十分な画角で撮影する必要があるため、今回は焦点距離の短い鏡筒FS-60CBを選びました。


機材

今回の機材は皆既月食で4つ出した機材のうちの一つで、これまで紹介してきた3つに続き最後になります。
  • FS-60CB + マルチフラットナー + ASI294MC + Advanced VX
です。SharpCapで撮影します。他の機材同様に、皆既月食時に合わせた長い露光時間と、満月時に合わせた短い露光時間の2種類をSharpCapのシーケンサーを使い30秒ごとに切り替えて撮影します。一つはグキの明るい部分用で、5msでゲイン120、もう一つは月食部分用で500msでゲイン240です。明るさの差は露光時間で100倍、ゲインで120 =12dB=4倍で、合わせて400倍になります。一つ一つは5秒程度の動画で撮影し、.serファイルに保存しました。

実際の撮影ですが、最初の頃は雲が少しあって極軸調整がなかなかとれなかったので、撮影開始が遅くなってしまい、結局部分月食が始まった直後の18時13分からになってしまいました。撮影は一旦始まってしまえば、あとはひたすら触らずに放っておくだけです。それでも最初と最後、あと皆既中のちょうど真ん中あたりで雲が多くなり、暗い画像になってしまったものが何枚かあります。


画像処理

撮影した画像を見ると480個の.serファイルと膨大な数になります。HDDの容量をみると400GB超えでした。

本当はそれぞれ動画で撮影した.serファイルをきちんとスタックしたいのですが、出来上がり画像の大きさがバラバラになったり、雲が多かった場合などはスタックがうまくいかない率が高かったので、1枚画像のみの方がマシだという結論に至りました。ただ、1枚ファイルを取り出す方法に苦労しました。例えばserplayerを使ってマニュアルで1枚づつ書き出すことはできますが、全部で480ファイルあるので、あまりに手間がかかります。いろいろ考えて、結局AutoStakkert!3で「Number of frames to stack」を1にして、スタックなしで書き出すことで、.serファイルから1枚のみを抜き出すことにしました。

もう一つの問題が、暗い画像を.serで保存すると、その暗さによって諧調が16bitと認識されず、15bitやそれ以下、たとえば雲がかかってほとんど真っ暗に近いファイルは10bitなどと認識されるようです。認識というのはSer Playerでもそうですし、AutoStakkert!3でもそう認識されるので、どうも保存時にどこかで判断され、そのような情報として記録されるようです。でも実際のファイルは16bitで保存されているので、(間違った情報をもとに)表示が強制的に10bitとかになってしまうと、全面(ある色で)飛んだように表示されてしまいます。上の過程で1枚だけ取り出そうとしても色が飛んでしまった画像が取り出されるので少し困ったのですが、AutoStakkert!3の解析後のAPを打つ時に「Scaling(Fit/Ser)」のところの「Auto」のチェックを外し、「Range」をあからさまに「16bit」と指示してやることで、この問題を回避できることがわかりました。

出来上がった240枚x2セットのファイルを、前々回の記事で書いたようなPixInsightのImageContainerとHistgramTransformationを使って、適当な明るさにします。その後、Blinkを使って連番のjpegファイルに落とし、ffmpegでタイムラプスに仕上げます。当然ですが、位置合わせなどは一切しません。


タイムラプス 

まずは、満月時に合わせた露光時間が短い暗い映像と、月食時に合わせた露光時間が長いものを繋いだ動画です。切り替わりの前後10コマを、露光時間の違う2枚から不透明度を段階的に変えて合成することで、なめらかな切り替わりにしています。
影の形がほとんど動かないことがわかるかと思います。

影の形は、下の露光時間の長いものの方がわかりやすいかもしれません。
影の形は地球の形を表しています。動く月をスクリーンに、地球の形が再現されるわけです。こうやってみると、太陽と地球と月の関係が一度に見え、月食の仕組みがよくわかります。これが今回やりたかったことです。


静止画

次に、タイムラプス映像の中から何枚かを抜き出して、そのまま比較合成します。皆既時のものだけは上から被せています。

mix4_cut

でもこれを見るとやっぱり今回の作戦は失敗なのです。影の形が円になっていません。もう少しわかりやすい画像です。

output_comp_cut
月が上に昇っていったことにより、影の形が縦長になってしまっています。月が上に上がっていくのは地球の地軸が月の公転面に対して傾いているためで、地球の影を固定するという考えからは、やはりなんとかしてキャンセルしたい動きと言えます。

赤道儀で「月に追尾」とすると月が上に移動していくのを追っていく赤道儀があるらしい(Vixenのスターブックテン系列や、SkyWatcherでも動かなかったという報告がTwitterのほうでありました)のですが、実際にやりたいことは追尾レートを太陽時に合わせて、しかも月の上下の移動をなくしたいので、おそらく既存の赤道儀ではかなり難しいと思われます。

さらに、地球が自転していることによる視点の位置の移動も影響するという指摘がTwitter上の議論でありました。地球の半径が約6400km、北緯36度くらいにで観察しているので、4時間の間に2 x π x 6400km x cos(46/180*π) x 6hour/24hour = 5400km程度、地球の時点により観測点が移動します。月と地球の距離が約38万kmなので、ざっくり1.4%になりますが、そこまで大きな影響ではなさそうです。

もう仕方ないので、本来の目的からは外れてしまいますが、月が上に移動しないように位置合わせした場合を、Photoshopで各画像の上下移動だけさせて、横一直線に並べます。

mix4_cut

あれあれあれ?でもやっぱり今度も影の形がひしゃげてしまいました。ここでちょっとヘルプで国立天文台のページを見てみました。


国立天文台のクレジットが入っていればWebやSNSなどでも画像を使ってもいいそうなので、ここにも貼っておきます。赤道儀を使っていてカメラの向きも赤経移動が水平になるように合わせ込んであるので、撮影画像の上下左右と、この図の北南西東は十分一致しているはずです。とすると、この図を見る限りやはり月は時間とと共に上に移動していくのが正しいようです。

topics02-2-l

ここからはとても悔しいのですが、この図に従って時間と位置を合わせることにより合成したものが次の画像になります。あ、でも単に画像で合わせただけなので、そこまでの精度はありません。
topics02-2-l_all_cut

さらにそこに国立天文台の図と同じ位置に地球の形をいれてみると...
topics02-2-l_all_circle_cut
こんどは実際に撮影した影の形がひしゃげるようなことは全くなく、ものの見事に地球の形を再現していることがわかります。

でもこの図を作るためにどれだけ位置をずらしたかを種明かしすると
topics02-2-l_all_frames
枠の欠け具合を見てもらえればわかりますが、上下だけでなく、左右にもかなりの量をずらす必要がありました。ただ、ずれの具合を見るとなんらかの規則性はあるようで、なぜこのようなずれが起きたのか、定性的に、定量的に考える必要がありそうです。

この図ができた後にいろいろ考えてみて、定性的には視野のずれで説明できることはほぼわかってきました。ただそれが定量的にどこまで合うのか、これだけで丸々一つの記事になりそうなので、後日改めて書きたいと思います。


昨年からの進歩

まだまだ課題は残るものの、昨年の地球の形の再現は月の明るい部分は全部サチっていたので、今回は2段露光で明るい部分の月の模様も出ていて、大きな進歩かと思います。あらためて並べておきます。

all_cut
2021年11月19日の皆既に限りなく近い月食。

topics02-2-l_all_cut
2022年11月8日の皆既月食。部分月食時の月の模様が出た!


まとめ

前回の記事をアップし終えた後、電気スタンドがメインのPCのモニター落下して割れてしまい使用不能に。データを吸い出してたり、さらに体調を崩したりと、色々トラブルがあり記事の更新が遅れてしまいました。やっとデータ復旧も終わり、なんとか記事を書ける状態になりました。

そろそろ自分でも気づいてきたのですが、今回の皆既月食は撮影の時から張り切りすぎで、データ量が溢れていて全然処理が追いついていません。もう少し機材を控えてもよかったですし、もう少しデータ処理の手を抜いてもいいのかもしれません。でも今回の位置合わせみたいに、謎を解いていくのが楽しくて楽しくて仕方ありません。できるだけ資料を「見ずに」、できるだけ人に「聞かずに」、自分の頭の中で考えて、自分で計算します。実測と計算が合ったときの快感は何ものにも変え難かったりします。

膨大なファイルの処理は大変ですが、皆既最中の赤銅色など、これまで天気などの影響でなかなか完璧に撮影できなかった貴重な画像を、今回は余裕を持って撮ることができました。雲が少しあったのでそれが惜しいくらいで、もう皆既月食に関してはかなり満足して撮影できました。残る課題もありますが、ここまでの経緯から位置合わせをせずに地球の影を完全い映し出すのは、おそらく相当敷居が高いです。何か制御方法を根本的に変える必要がありそうで、今後の大きな目標でしょうか。

月食関連の記事ですが、もう少し、多分あと2回くらいは続きます。


 
 
 
 
 
 
 
 

今年初の飛騨コスモス天文台の観望会が、昨年の11月以来、5月28日に約半年ぶりに再開しました。ここは豪雪地帯で、雪が残る4月半ばまで車で入ることさえできないのです。

IMG_4837
3月18日の飛騨コスモス天文台へと行く道の様子。
まだ全然雪が残っています。この時は50cmはあったでしょうか。


朝から太陽撮影

この日は快晴で、朝から太陽撮影。Hαには見向きもせずに、粒状斑狙いです。前日の土曜日の撮影で何か少し出たと思った、Yellowに加え、640nm以上を通す赤外透過フィルターでも撮影してみました。でも結局ほとんど進歩はなく、以前一番最初に撮影できたかけてきたと思った画像を見返してみたのですが、季節的にはシーイングは同程度のはずなのに、 昔撮ったほうがどうみても粒状班らしい画像が撮れています。その時はPSTのエタロンをHαから外れた画像を処理していました。

流石に何かおかしいと思い始め、Orionの太陽フィルターを買うときに迷ったBaaderのフィルムフィルターを国際光器で撮影用のOD3.8の29x22cmのものを発注しました。本当はもっと大きなサイズのものがほしかったのですが、大きなのは撮影眼視併用のOD5の物しかなく、しかも在庫切れです。C8なら口径20cmなので、小さなサイズでもいいかと思い、OD3.8のものにしました。

その直後でしょうか、コメントにhasyamaさんから投稿があり、やはり似たようなガラスの厚みのあるAstrozap製では全然細かいところが見えなかったとのことでした。どうやらここが解のようです。フィルムフィルターの到着が楽しみです。


観望会の準備

むしろこのコメントで、これ以上今の装備で粒状斑を求めても無駄そうなので、やっと観望会の準備です。発注時のメールやコメント欄から時間を見返してみると、フィルムフィルター発注が13時35分ちょっと前、hasyamaさんからのコメントが13時50分、コメントに返したのが14時10分でした。なので、この時点で14時過ぎくらいだったことになります。そこから観望会で何を見せるかと、観望会が終わった後の撮影プランと、機材の選定と荷物の積み込み、シャワーを浴びるのと、少し睡眠をとるとすると、すでに時間はたりません。結局、すべて準備が終わったのが17時半。19時頃に現地到着を考えていたので、もう時間ギリギリです。17時32分に出発して、途中すき家で早めの夕食を取り、ファミマに寄って夜食とおやつを買い込み、飛騨コスモス天文台に向けて車を走らせます。途中ほとんど雲も見えずに快晴です。到着は19時10分くらいで、まだ十分明るい時間帯でした。


現地到着

現場には飛騨コスモスの会のいつものメンバーが3人、あと富山県天文学会関連でいつものかんたろうさんと、今回初参加で遠く黒部市から来てくれたKTさんがきてくれていました。

到着後すぐにドームに入ると、鏡筒が載せ替えられていました。これまでは群馬のKさん自作の口径25cm、焦点距離3000mmの鏡筒でしたが、温度順応に時間がかかり、さらにはドーム内気流のせいもあるのか、惑星などなかなかくっきり見えなかったという問題がありました。焦点距離も長いので、惑星以外になかなか見せられるものがないということもあり、先日スタッフのSDさんが友人から譲ってもらったというFC120に載せ替えたとのことです。

その後、外に出て改めてみてみると、かんたろうさんが3台も鏡筒を出していました。

IMG_5562


設置開始

私も準備をし始めます。今日は観望会後に撮影を考えているので、とりあえずまだ人が来ないうちに撮影用にCGEM IIを出します。鏡筒はFS-60CBにASI2400MC Proで、牛岳で青い馬星雲を撮った時と同じです。少し違うのは、M54の長さ調整のリングを導入したことです。

 

前回の撮影では、本来必要なフィルターホイールの厚み分の、プラスで11mm必要なバックフォーカス長を、FC76用のマルチフラットナーリングで代用したため、四隅が流れてしまっていました。今回のセットがあれば長さが4mmから39mmまで、一部抜けはありますがほぼ1mm単位で調整ができます。この日は4mmと7mmで合計11mmにして使用し、撮影鏡筒として使います。

ポイントは、撮影までの観望会の時間に電視観望で同じ鏡筒とカメラを使うことです。同じ鏡筒を使うことで、入れ替えの手間を省きます。架台は気楽にAZ-GTiを経緯台モードで使います。さすがフルサイズのASI2400MC Proです。あとで取得画像を載せますが、かなりの実力です。

問題は準備がやはり少し手間なこと。まず、冷却しなくてもDC12V電源を必要とすること。実は最初このDCを供給するのを忘れていて、何枚かは撮像できたのですが、途中で更新されなくなりDC12Vを繋ぎました。でもこの撮像できなくなった理由が、DC電源がなかったせいなのか、前回同様接続がうまくいかなかったからなのか、まだ確定していません。

今回も接続はかなり苦労しました。電視観望なのでSharpCapなのですが、1024x768ピクセルの撮像は確実に得られます。でもそれ以上の解像度の撮影がうまくいくかどうかは全く運次第でした。ケーブルを2種試しましたが、やはり全く状況は同じです。何度か解像度を変えたり、USBの転送速度を変えたり、RAW8やRAW16などの撮影モードを変えたりしましたが、うまくいくと最後には最高解像度でRAW16で動きます。一旦動くと安定ですが、安定になるまで毎度5-6回は解像度を変えるなどしました。ほとんどの項目は安定性に影響がなく運のみですが、USBのハイスピードのオンオフだけはオンの方がいいようです。ここら辺の問題さえ乗り越えれば、あとは超快適な電視観望体制になります。


最初は星座ビノ

さて、電視観望の準備をしている間ですが、まだ一番星が見える頃から徐々にお客さんが到着し始めます。ほとんどが子供づれの家族で、最初のグループは保育園年長さんと小学3年生の男の子の兄弟とご両親の4人家族でした。星座ビノを4台(Nikon, Cokin, WideBino28の現行と旧機種)出して、まだ目では見にく星を探してもらいます。

徐々に暗くなってきて、明るい星がはっきり見えるようになってくると、早速いつものようにSCOPETECHの入門機を解放して見てもらいます。といっても、季節的には惑星もないし、新月きなので月もないです。あまり見るものがないのですが、スピカが導入しやすそうだったので、最初だけ私が入れてから、小3のお兄ちゃんの方に視野からずれていったら微動ハンドルで真ん中に戻してもらう任務を任せました。慣れてきたっぽいので、次はSCOPETECHの特徴の2つ穴を利用したベガ導入に挑戦してもらいました。でもやっぱり小学3年生だと少し難しいようで、何分かやってギブアップ。今度はお父さんに挑戦してもらったら、さすがなんなく導入してくれます。お父さん得意そうで、子供たちに自慢げに見せていました。すごく微笑ましいです。その後、3年生のお兄ちゃんは真ん中に合わせるのを担当してくれていました。こうやってできるだけ望遠鏡に触る機会を作ってあげたいと思います。

途中、小5の女の子が二人、その子逹のお母さんと思うのですが二人、星座ビノがかなり気に入ったみたいです。見える星が圧倒的に増えるのが分かり、キャーキャー言いながら見てるので、毛布を出し地面に寝っ転がって見てもらいました。「交換すると見え味が違って面白いですよ」とか伝えて、星座ビノの違いも楽しんでもらいました。


観望会恒例のクイズ

電視観望はカメラのトラブルで少し時間がかかっていたのですが、その間にも続々子供たちが集まってきます。「こっちは何が見えるの?」と聞かれるので「もうちょっと待ってね」とかいっていると、「こんばんわー」と大きなこえで何人かの女の子がやってきました。暗くて顔はあまり見えませんでしたが、昨年来てくれた子達のようです。聞いてみると、5年生の女の子が二人、6年生の男の子が一人、中1の女の子が一人くらいだったと思います。その頃にはいつものMちゃんも富山から来ていていて「同じ中1だ!」とか言っていました。電視観望の準備がまだかかるので、星の解説を始めました。最初しし座の説明とかしてたのですが、さらに子供たちが集まってきたのでもっと基本の北極星から始めました。定番の北斗七星から北極星を見つける方法を話していると、方角の話になりました。みんな好き勝手に「北の反対は南」とか「あっちが東?西?」とか、色々言い始めます。

みんな東西南北の方角は確認できたみたいなので、恒例の私からのクイズです。「太陽はどっちから昇って、どちらに沈むでしょう?という質問には「東から出て、西に降りる」とかどこかしこから声が上がります。「正解です。でも太陽は本当は動いていないんですよ。」というと、6年生の男の子が「地球が動いてるから?」と的確な答えを。「星も動いているように見えるけど、実際には星が動いているわけでなくて、地球が回っていて、その地球に乗っかってる自分たちが動いているから、星が動いているように見えるんだよね。」と言って、みんな納得です。

次に第2問です。「では、月はどちらから昇って、どちらに沈むでしょう」と聞くと、これが面白いことに全員わからないのです。出てきた言葉が「習ってなーい」です。太陽は東から昇って西に沈むということを「知識として」だけで覚えてしまっているのです。先に説明までしているので、みんな地球が回っていることも知っているし理解もしているはずです。でも太陽以外になると答えることができなくなるのです。これはいけませんね。知識は必要ですがそれだけではだめで、やっぱり自分で想像して考えることがすごく大切になります。

太陽は動いていないこと。月も動いていないこと。さらに星も動いていないこと。動いているのは地球であること、だから月も太陽と同じように東から出て西に沈むこと。あそこに見えているスピカも東から昇って西に沈むこと。ここまで説明すると、「例えば、見えていないベテルギウスも東から昇って西に沈むこともわかりますね」と言っても全員納得です。このやりとりを流石にMちゃんはニコニコしながら見ていました。

そこで第3問です。「夏の太陽と冬の太陽と、どちらが高いですか?」と聞いて、「わからなかったら夏と冬どちらが暑いか考えてみてください」と言うと、これまた面白い答えが。一人の子が「夏の方が低い」と言うのです。色々聞いてみると、低い方が「近く」て、高いと「遠い」から、近くて低い方が暑くなると考えているようです。子供ながらの面白い発想です。でも結局、朝日とか夕日とかの地平線ギリギリの時と、夏の昼間にほぼ真上にある太陽の時は、どちらが暑いですか?と聞き直すと、皆さん「なるほどー」と言った様子で納得してました。

私の観望会はいつもこんな感じです。この日も、話したことに難しいことは何もないです。ここにきている子は星に興味がある子達です。いろいろ普段の体験から、自分でよく考えて「学ぶことの楽しさ」を学んでほしいと思います。


電視観望

IMG_5567

さてさて電視観望ですが、今回はASI2400MC ProのフルサイズCMOSカメラと、機材の素晴らしさもあり、かなり綺麗な天体を見てもらうことができました。しかも、かんたろうさんが眼視でいろいろ見せてくれています。できるだけ同じ天体を入れるようにして、眼視と電視で見比べてもらいました。

電視観望で見た順に並べておきます。
01_trip_mod
しし座の三つ子銀河。この画面では一つ途切れてしまっています。

02_M57
M57: 惑星状星雲。

03_M13
M13:ヘルクレス座の球状星団。

あ、もう一つエピソードを。昨年天体写真のカードを子供達に配ったのですが、電視観望でM13を見ていた時、「これ、自宅に飾ってある写真と同じ?」と言う子がいました。どうもM13カードを受け取ったみたいで、M13の形を覚えてしまっているようです。M13ですが、電視観望でもよく見ると星の色がわかります。「星は基本赤と青だよ。緑の星はなくて、白くなってしまうよ。家に帰ったら写真をよく見ると、多分色がわかるよ。」と伝えると、目をキラキラ輝かせて「うん、見てみる」と答えてくれました。自宅に帰った時の興奮している顔が目に浮かぶようです。でも帰る時眠そうだったから、写真を見るのは次の日かな?


05_antiares
アンタレス付近。色を出すのは難しいです。
アンタレスの黄色が綺麗で、右にM4、上に赤いエリアが出始めています。


06_M51_mod
M51:子持ち銀河。

07_M51
M51は小さくて、今回のセットアップで実際に見えるのはこれくらい広角です。
かなり拡大すると上のようになります。

08_M27
M27:亜鈴状星雲。

10_M81
M81とM82です。こちらもかなり拡大していてい、元の画像は下のようです。

Stack_222frames_1421s_WithDisplayStretch

経緯台のAZ-GTiで長い時間(20分以上)露光しているので、回転してしまっていますが、画角が相当広いので、多少回転しても全然問題ないのがわかります。

眼視

かんたろうさんに眼視で見せてもらったのはもっとたくさんあります。これはお客さんが帰って、電視観望も片付けてからの分も入っています。
  • M57:惑星状星雲は輝度が高くてよく見えます。
  • M51:子持ち銀河は淡いですが、どちらが親でどちらが子供かはわかりました。腕はあまり見えませんでした。
  • M101:回転花火銀河ですが、相当淡いです。M51のほうがはるかに見やすかったです。
  • M81とM82は二つ並んでいるのがわかりました。
  • M13:ヘルクレス座球状星団はつぶつぶ感がすごいです。
  • M16:オメガ星雲は白鳥みたいに見えました。
  • M17: ワシ星雲はかなり淡くて薄くしか見えません。
  • M20:三裂星雲は分かれているのがなんとかわかりました。
  • M8: 思ったより淡かったです。もっと明るいと思ってました。
  • M31:アンドロメダ銀河は大きな銀河のはずでが、以外に双眼鏡で見たのとあまり差がなかったです。
他にも、特に球状星団や散開星団もたくさん見せてくれているはずでが、そもそも番号をあまり覚えていなくて、明確に番号で覚えているのはこれくらいです。


徐々に人が少なく

夏至も近くなってきているので昼が長く、天文薄明が終わるのが21時頃。22時頃には子供は眠くなってしまうので、だんだんお客さんも少なくなってきます。Mちゃんも中学生になって部活が忙しく、この日も部活が終わってからきたということで、23時頃にはもう眠そうでいつもより早めに帰っていきました。あ、差し入れでシュークリームを持ってきてくれて、皆さんでいただきました。さすがケーキ屋さんのシュークリーム、クリームも全くまがい物の味がせず、ものすごく美味しかったです。23時過ぎにはスタッフの3人も帰宅され、残ったのは私とかんたろうさんと、愛知から来ているIさんだけでした。

今回初参加のIさんは、最初は自分の機材で電視観望をしていて、少しお話ししました。機材はFSQ85とASI294MC ProをASIAirで操作と、かなり贅沢な機材です。20年ほど前かなり凝ってやっていて、しばらくお休みして、また最近復活したそうです。

Iさんはかなりのマニアのようで、途中から撮影に移り、サドル付近を撮っていました。天の川のタイムラプスと、もしかしたらもう一台出していたかもしれません。聞くと、前日は紀伊半島の方、この日は太平洋側が天気が悪かったので、この飛騨コスモス天文台まできたそうで、かなりアクティブな方です。

私もそろそろと、電視観望の鏡筒とカメラをそのまま使い、赤道儀をCGEM IIに替え、Elephant Trunk星雲を撮影を始めました。この日はあらかじめ、機材の交換を最小限にして、北の空が暗いことなどを考慮し、撮影対象を決めていました。撮影が軌道に乗って余裕が出たので、6Dで天の川を何ショットか、そのご午前2くらいからタイムラプスを始めました。撮影結果はまた別の記事で書きます。

2時過ぎに眠くなってきて、しばらく車で寝てしまい、起きたのは4時くらいだったと思います。すっかり明るくなっていました。片付けながら、かんたろうさんとIさんと話していました。かんたろうさんは昨年後半からここでの観望会はずっときてくれているので、また来月には会えます。Iさんはかなりいろんなところにいっているようなので、またどこかで会える気がします。

片付けが終わって現場をあとにしたのは、ちょうど5時くらい。6時くらいに自宅に到着し、少しだけ荷物を車から出して、少し朝食を食べてお腹を満たしたら、力尽きて寝てしまいました。忙しい休日でしたが、とても充実していました。その後、午前11時過ぎに起きたのですが、まだ寝不足で昼間じゅうずっと眠かったです。

それでもこの日も天気が良かったので、夜は自宅でSCA260で最近撮り続けているM82をLで、NGC6888三日月星雲をAOSで撮っていました。ここら辺もまた画像処理が終わったら記事にしますが、相当未処理画像が溜まっているので、いつになることやら。


まとめ

眼視と電視を比較しているときに、お客さんとスタッフを交えてこんな話をしました。
「最近の観望会って、街中の明るいところでやることが多くて、こんな天の川が普通に見えるようなところで、定期的に続けてやってる観望会って珍しいですよ。しかもかんたろうさんが参加してくれて眼視、私が電視で、星雲を比較できるくらいに充実してきて、多分全国的に見てもかなり面白い観望会だと思いますよ。」
とか言ってたのですが、皆さんあまりピンときていないようでした。そもそもここに来る地元の人にとっては、天の川は全然珍しくないんですよね。そういえばこの日も子供達に「天の川が見たことある人?」と聞いたら、ほぼ全員が手をあげていました。

この子達が大人になって、大きな街に出て行って、天の川が見えなくなるような場所で暮らすようになったとしても、この素晴らしい空と、楽しかった観望会のことは覚えてくれていると嬉しいです。

年明けの久しぶりの飛騨コスモス天文台の観望会でしたが、とても楽しかったです。改めてこの飛騨コスモスの回を立ち上げてくた故山口女史に感謝です。これからも無理することなく、地元の方逹のために続けていけたらと思います。 
 

ゴールデンウィークに3連続撮影の3日目、地元牛岳において青い馬星雲を撮影しました。撮影時の顛末などは当日の記事をご覧ください。



今回はその後の、画像処理などについてです。


分子雲がここまで出た!

まずは結果を見てください。

「IC4592: 青い馬星雲」
masterLight_180s_ABE_PCC_ASx4_SCNR_bg2_cut_s
  • 撮影日: 2022年5月6日0時10分-2時57分
  • 撮影場所: 富山県富山市牛岳
  • 鏡筒: TAKAHASHI FS-60CB+マルチフラットナー(f370mm)
  • フィルター: なし
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI2400MC Pro (-10℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: SharpCap、Gain 150、露光時間3分x55枚で総露光時間2時間45分
  • Dark: Gain 150、露光時間3分、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain 150、露光時間 0.1秒、64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

一見してわかるように、分子雲がものすごい階調ででました。正直ここまで出るとは思っていませんでした。自分でもびっくりしています。

鏡筒はFS-60CBで、撮影時間は2時間45分。そこまで明るい鏡筒でもなく、そこまで露光時間が長いわけではありません。今回の大きなポイントは間違いなくASI2400MC Proでしょう。このカメラ、三つ子銀河の時もものすごく画像処理が楽でした。



今回も実は画像処理はかなりシンプルです。ASI2400MC Proで撮影した2回の撮影で、2回とも同じような状況なので、あながち気のせいというわけでもないと思います。

一方、この画像の反省点です。まず、撮影時の記事で述べたように、11mmの EWFの代わりに適当なFC76用のマルチフラットナーリングをいれたので、バックフォーカスが少しずれていて四隅が流れています。また、赤い部分があるのでもう少し強調しても良かったかもしれません。

とまあ、欠点もありますが、青い馬星雲としてはそこそこ表現できているので、個人的にはかなり満足です。


シンプルな画像処理

元々私は凝った画像処理は嫌いではなく、マスクなども多用しますし、ノイズ処理も必要なら強力なものを使います。でも今回はそれらのものがほとんど必要ありませんでした。

やったことはひたすら諧調を残すように、見えている分子雲を壊さないように、目で見える範囲の輝度に落とし込んでいくだけです。その際、星雲にかけるようなレンジマスクの類は一切使っていません。唯一使ったマスクが、PixInsight上で使ったStarNetで作った星マスクだけです。ノイズ処理もPhotoshopにある標準的なものを軽く使ったのみです。ちなみに今Photoshopの作業工程を数えてみたら「開く」から数えてわずか16工程でした。

よくある話ですが、素材がいい場合は色々凝った画像処理をすると、素材の良さを潰してしまうというのがあります。事実、この画像は2回目の画像処理で、最初はいつも通り凝った処理をしていました。 ちょっと恥ずかしいのですが、最初の処理を載せておきます。

masterLight_180s_ABE_PCC_ASx4_SCNR3_small

一見するとそこまで悪くないようにも見えますし、そのまま出しても特に変とも思われることもないでしょう。私も最初はこれでそこそこ満足していました。でも一旦PixInsightを閉じようと戻って、StarNetをかけた直後の背景画像を見た時に、ちょっとまずいと思ったわけです。

masterLight_180s_ABE_PCC_ASx4_SCNR_bg

この背景画像と比べると、最初に処理した画像では青い馬本体や分子雲などの淡いところの階調がほとんど潰れてしまい、のペーっとしてしまっていることがわかります。

ここで一旦戻って、2度目の画像処理となりました。分岐点はPixInsightでストレッチをした後の、Photoshopに手渡すところです。PixInsightの最終段階ではきちんと階調が残っていたということで、Photoshopでそれを生かせたかどうかだけが違いとなります。


ASI2400MC Proについて

シンプルな画像処理で仕上がることは、その撮影画像の素性の良さ、ひいてはこのカメラASI2400MC Proのポテンシャルの高さを示しているのかと思います。ASI2400MC Proのスペックだけ見ても、もちろんスペックも申し分ないのですが、メーカスペックに出てこない安定性というか、素直さが出ていると思います。例えばASI294MC Proはダイナミックレンジは同じ14bitで同じですが、三つ子銀河と合わせてASI2400MC Proで味わえたようなシンプル処理にも関わらず、ハッとするようなインパクトと、分子雲の透明感のような表現はこれまで経験したことがありません。

今日たまたま届いた「CCD/CMOSイメージセンサの性能と測定評価」という本を読んでいたのですが、例えば今ZWOが出しているカメラのスペックでは、この本で論じられているような細かいノイズなどは全然違いを表現できていません。また、ノイズについてはこれまで私もそれなりに気にしてきましたが、画像を作るはずの信号の方についてはあまり検討してこなかったことを実感させられました。この本についてはまた別記事で書評を書こうと思っていますが、我々ユーザーが知り得ない、表には出てこない性能差というのはあって然るべきなのかと思います。カメラセンサー自身の性能になってしまうので、ユーザー自身がどうこうできるものでありませんが、撮影した画像としてその違いが認識できるのかと思います。

一方、画像処理の途中で起こったハード的な不安定性のことも書いておかなければいけません。今回ASI2400MC Proを使うにあたり、テスト撮影時にNINAでは一度きちんと画像が撮れましたが、それ以降うまく画像がPCにダウンロードできません。SharpCapの方がまだ安定ですが、いい時はいいのですが、ダメな時は画像を落とす段階になりdroppedになりその数が増えていきます。

ダメな時の解決策は、一旦ROIでかなり小さい画面にして、うまくいったら元の画像に戻すことですが、これも完璧ではなく失敗する時もあります。一旦うまくいくと、それ以降は問題なくダウンロードできるのですが、そこまで持っていくのが何度かトライしなければなりません。どうも転送関係でうまくいかないのが原因かと思います。ケーブルを変えたりしましたが、同様でした。もしかしたら同様の現象の方もいるかと思います。少しでも情報共有ができればと思います。


Annotation

いつものAnnotationです。

masterLight_180s_ABE_PCC_ASx4_SCNR_bg2_small_Annotated



過去画像との比較

ちなみにこれまで青い馬星雲は過去に自宅で撮ったのみ。今回と同じFS-60CBですが、カメラはEOS 6D。青がでただけマシで、自宅だとこれくらいが限界です。今回牛岳に行ってせっかくの暗い場所だったので、自宅で撮りにくい青い馬星雲にしたのは正解だったようです。

masterLight_DBE_PCC_ASx5_ET_HT3a


まとめ

あくまで個人的な感想なのですが、このASI2400MC Proは間違いなく素晴らしいカメラでしょう。

普段フルサイズの撮影はEOS 6Dですが、ASI2400MC Proの冷却機能はダークフレームの管理ができるとかはすぐに見えるメリットです。6Dもノイズが少なく、かなり素直でとても信頼できるカメラです。それでもこのASI2400MC Proならば6Dを置き換えたくなります。

問題はその価格。欲しいと言ってなかなかすぐに手が出るものではありません。でも欲しい。カラーはこれがあれば満足な気がします。

今回はお借りしただけですが、いつか手に入れられるのか...。



フルサイズカラーCMOSカメラASI2400MC Pro

普段は格安電視観望を記事にしたりしているのですが、今回は正反対の贅沢電視観望です。機器はお借りしているASI2400MC Pro、何とフルサイズのカラー冷却CMOSカメラです。センサーはSonyのIMX410。ピクセルサイズが5.94μmと大きいため、電視観望向きです。SNR1sの情報が中々見つからなかったのですが、どうやら0.11lxらしいです。やはりかなり小さいようで、期待できます。

36D39322-0215-4BC5-BB2E-E4245DA792F5


FS-60CBとの接続で苦労

せっかくのフルサイズなので広角で見てみようと、単焦点の鏡筒を考えたのですが、FMA135だとさすがに口径のほうが30mmで小さくなるのでもったいないです。とりあえずFS-60CBにしてみました。ASI2400MC Proの取り付けですが、一番簡単に鏡筒につけるのは付属のM48のアダプターをつけて、2インチアイピース口に差し込むことなのです。しかしながら、 FS-60CBは標準では2インチアイピースに対応していません。SKY90用のが使えるらしいのですが、残念ながら手持ちでは無いです。今回はT2マウントを利用することにしました。カメラに付属のT2リングを使うと、手持ちのZWOの旧型のCanonマウントへの変換アダプターにとりつけることができました。FS-60CBは普段から6Dを取り付けられるようみにCanonマウントになっています。

ところがこれ、FS-60CB用のレデューサをつけるとどうしてもピントが出ないのです。マウントからセンサー面までの距離が離れているためで、回転装置などを外してフォーカサーを最短にしてもまだ長過ぎます。本来はフルサイズクラス用のZWOのCanonマウントへの変換アダプターを使って正しいバックフォーカスにすべきなのですが、とりあえず手持ちのアダプターを使って試したいので、泣く泣くレデューサはあきらめました。代わりに旧型のフラットナーを取り付けると、今度は逆に距離が足りません。回転装置を再び取り付けてやっとピントが出ました。
10E9B14D-C5F3-46C1-B734-029E93EA04E4

架台はお気軽にAZ-GTiです。
A2102F5F-535E-469B-BE6A-74A99C8E89F0


実際の電視観望画面

さて実際の電視観望画面を見てみましょう。もう西に沈みかけているM42オリオン大星雲です。
03_M42

まず、これだけ見てもいくつか問題があることがわかります。
  1. まず、周辺減光が大きくてオートストレッチで攻め込んで炙り出すことができません。
  2. ホコリが結構付いているので掃除が必要。せっかくの高性能カメラなのにもったいないです。
  3. 旧型フラットナーにフルサイズだとやはり周辺の流れが目立つ。
などです。

時間も経ってしまい、これ以上は春なので主に銀河になってしまいます。銀河に広角は流石に厳しいのと、少し曇ってきたで、この日はこれであきらめました。せっかくのフルサイズカメラなので広角を狙っていましたが、どうやらFS-60CBでは役不足なのかもしれません。


お気軽でない電視観望へ

そもそもASI2400MC  Proは冷却をしなくても12Vの電源入力が必須です。一応販売ページにはASI294MC Proも12V電源がないとダメと書いてあるのですが、冷却なしなら12Vなしでとりあえず動くことは試しています。でもASI2400MC Proは12V電源を繋がないと、SharpCapなどで起動さえできません。なのでこのカメラでお気軽電視観望というのはそもそも向いてないのだと思います。

やはりASI2400MC Pro恐るべしです。タカハシでもFS60クラスの小口径では相手にならないようです。ここは満を辞してTSA120の登場です。TSA-120+ASI2400MC Pro、超贅沢な電視観望です。

どんなふうに見えるのか?結果は次回記事で。お楽しみにしていて下さい。



一連のCBPのテストの一環で、作例として前網状星雲を示しました。




連日のFS-60CBでの撮影

今回、同様のセットアップで北アメリカ星雲とペリカン星雲を撮影しました。これも平日の自宅庭撮りになります。鏡筒がFS-60CBにマルチフラットナー で焦点距離370mm、カメラがEOS 6Dで露光時間3分が40枚、5分が35枚なので、合計295分、ほぼ5時間の露光です。

IMG_0478

前日と同じセットアップのせいもあり、撮影準備開始が19時半頃、撮影開始がまだ少し明るいうちの20時と、とても順調でした。後から見ると最初の方に撮ったのは明るすぎたので、実際に画像処理に使ったのは十分に暗くなった20時半過ぎからのものです。一番最初、前回の網状星雲と同じ設定の300秒で撮影したのですが、(その時は気づかなくて)まだ明るかったこともあり、すぐに180秒露光に変更しました。途中、0時頃に赤道儀の天頂切り替えの時にやはり暗すぎと思い、そこから300秒に戻し午前3時半頃まで撮影しました。


画像処理

他に溜まっている画像もあり、画像処理は焦らずに結構のんびりやっています。

ISO1600、露光時間1/200秒で障子の透過光を利用して撮影したフラットフレーム102枚と、同設定で暗くして撮影したフラットダークフレームは100枚は、前回の網状で使ったものの使い回しです。

今回露光時間が180秒と300秒で2種類あるので、ダークはオプティマイズオプションをオンにして、前回撮影した300秒のダークフレームを使いました。オプティマイズが効いていると、ライトの露光時間に応じてダークノイズを適当に調整してダーク補正をしてくれるはずです。ASI294MCはアンプグローが大きいのでこの手法は使えませんが、6Dの場合は変な特徴的なノイズはないので、オプティマイズ機能が使えるはずで、今回の結果を見る限り特に問題なだそうです。


出来上がり画像

結果は以下のようになりました。結構派手に仕上げています。


「北アメリカとペリカン星雲」
integration_ABE_STR_all8_cut
  • 撮影日: 2020年8月19日20時26分-8月20日3時32分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi FS-60CB + マルチフラットナー
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  Canon EOS 6D(HKIR改造, ISO1600, RAW)
  • ガイド: f120mmガイド鏡 + ASI290MCM、PHD2によるディザリング
  • 撮影: BackYard EOS、露光時間180秒 x 40枚 + 300秒 x 35枚 = 4時間55分  
  • 画像処理: PixInsight、StarNet++、Photoshop CC
まず第一の感想として、そこまで苦労せずコントラストも色も十分出ています。前回の網状星雲同様、自宅庭撮りでここま基本的に満足な結果です。5時間という長い露光時間も効いているのかと思います。


どこまで見栄え良くするか

多分一過性のものだと思いますが、最近派手目に仕上げています。インスタグラムの影響でしょうか?

冷静に理由を考えると、天リフやTwitterとかでなのですが、小さなサムネイルになった時に印象に残ることを考えているのかと思います。画面を小さくするとある程度はっきりさせておかないと、ぱっと見よくわからないと思うのです。例えば網状星雲なんかは細い線になってしまうので、大きな画面の状態である程度出しておかないとかなり印象が薄くなってしまいます。

といってもやってみるとわかるのですが、実は最初なかなかうまくいかなくて、炙り出そうとしてもノイズばかりが目立ってしまうことが多いです。ノイズの少ないコントラストの高い素材を最近やっと撮影できるようになってきて、ようやく派手目にすることができるようになってきました。

派手目というのを別の言葉に置き換えて良く言うなら、狭いところに押し込められた諧調をできるだけ余すところなく、可視の諧調に置き換えて使えるようになってきたと言ったところでしょうか。どこまでやるかは人それぞれかと思いますが、海外の方が派手目なのが多い気がします。

この傾向、今のところ悪い評価よりもいい評価の方が多いみたいです。特にこれまでなかった海外からの反応もあるので、やはりパッとみたときの最初の印象は大事なのかと思いました。

でも果たして濃い天文マニアの人たちから見たらどうなのでしょうか?この色合いは好き嫌いが分かれるかと思います。少なくとも素材をそのまま生かしただけのシンプルな画像処理とは違うので、お絵かきになる可能性も十分にあり、ここら辺は自分自身肝に銘じておくべきかと思います。


その他評価など

その他細かい評価です。
  • 最初赤だけを強調していたのですが、そうするとかなりのっぺりしてしまいます。赤に比例して青と緑もきちんと炙り出してやると階調豊かになるようです。
  • 北アメリカ星雲とペリカン星雲では、同じ赤でも結構違うのが分かります。ペリカンの方が赤のみが多いのに対して、北アメリカは青や緑成分がかなり混ざるようです。他の方の作例でもこの傾向は同じなので、あまり間違ってはいないと思います。
  • 明るい恒星3つが、右から青、オレンジ、緑と綺麗に出ました。これはCBPの利点の一つで、QBPではなかなか出てこないと思います。
  • いまいち暗部の諧調が乏しいです。特に中央の黒い部分です。 三裂星雲でも、網状星雲でも暗部の諧調が出にくいような傾向が見られました。これまで分子雲とかをきちんと出したことがあまりないので、経験的にまだまだなのかもしれません。今回の5時間の撮影時間も私の中では最長の部類ですが、暗部をもっと出すためには根本的に露光時間が足りないのかもしれません。もしかしたらCBPの特徴という可能性もありますが、今の私にはまだよくわかりません。ここら辺は今後検討していく必要があるかと思います。
繰り返しになりますが、庭撮りででここまで出たのは個人的には十分満足です。CBPがうまく働いたと考えていいかと思います。QBPでも赤は十分出たと思いますが、青と緑も含めた階調や、特に恒星の色はなかなか出なかったと思います。


3年の進歩

ちなみに下は3年前にフィルターなしで同じFS-60CBで自宅の庭で撮ったものです。カメラがその当時EOS 60Dだったので、今回EOS 6Dになった違いはありますが、それ以外はフィルターの有無の違いだけです。当時もかなり頑張って画像処理して、それなりに満足していました。そこから見たら画像処理の腕も上がっているとは思いますが、CBPが入ることで素材の時点で優れたものが撮れていて、仕上がりも無理をしなくても素直に出てくるのかと思います。

NORTH_60s_3200iso_+27c_20170913-20h36m_x55_digital_ps_HDR3

こうやってみると、わずか3年のことですが、機器も画像処理ソフトも自分の処理技術も確実にレベルが上がっていることが実感できます。進歩が目で見てわかるということは、趣味でも仕事でもモチベーションを保つ上ですごく重要で、それが実感できる天体撮影はなかなかやめられません。


まとめと今後

庭撮りCBPの2作目ですが、思ったより思い通りに出ました。CBPやはり結構いいです。

まだ未処理画像が2つあります。画像処理はブログを書くよりもはるかに時間がかかります。こちらも焦らずに進めていこうと思います。次は三日月星雲の予定です。


このページのトップヘ