今回のターゲットはぎょしゃ座とおうし座の間にある、とーっても淡いSh2-240、通称スパゲッティ星雲です。しかも自宅からの挑戦。初の12時間越えの撮影になりました。
TSA-120を購入してから1年くらい、一部を除いてほとんどTSA-120ばかりで撮影していましたが、焦点距離900mmで撮れるのもだいぶ尽きてきたので、久しぶりに別鏡筒です。ターゲットは迷ったのですが、自宅からの撮影で淡いのがどこまで出るのかを知りたくて、Sh2-240にしました。前回のM78もそこそこ淡いのですが、今回のは無理ナントと言われるくらい淡いレムナント(超新星残骸)です。
淡くても大きい星雲なので、機材は焦点距離が370mmと短いFS-60CBに、マルチフラットナー + フルサイズのEOS 6Dです。新月期ですが、自宅周りで光害の影響は避けられないので今回はCBPを取り付けます。
淡くてもうまく全景が分かるくらい写るのか、あわよくば青いOIIIまで写るのか?どれくらいの時間をかけるべきなの?いろいろ楽しみです。
実際の撮影の状況です。撮影は3日に渡るので状況は色々変わります。
3日目の撮影開始時に、カメラのワイドアダプターのネジが緩んでいてガタガタになっているのに気づきました。カメラを一度外したので、カメラの回転角は合わせ直したのですが、ピントは一見大丈夫そうだったので合わせずじまい。おそらく3日目の分はごくわずかピントがずれています。でも仕上がりを見たらまあ気になるほどではなかったです。でもやはり少なくとも何かずれていたら、きちんと見直すべきかと反省しました。
長時間撮影なので、カメラをモバイルバッテリーで駆動させましたが、このバッテリーにAC出力がついていたので、機材簡略化のためにStickPCを試しに同じバッテリーから電源を取って動かしてみました。結果、ASCOMで赤道儀のCOMポートを認識しない(ごくたまに認識するが、すぐにまた認識しなくなってしまう)というトラブルが起き、その後StickPC自体が落ちてしまいました。
COMポートの認識が不安定だったり、まるまる認識できなくなるという事態は初めてでした。最初電源のせいだとは疑わなかったです。でもいつもはできていて、今日は調子が悪い。何か変わったところがあるはずだと考えると、やはり電源が最初に浮かびました。結局StickPC用にいつも使っている別の独立したモバイルバッテリーを用意したところ、ASCOMも安定し、落ちるようなことは無くなりました。
ということはやはり今後も
今回新しく試したのは、PHD2の開発者バージョンで実装されたマルチスターガイドです。下の写真は初日の様子です。
縦軸のスケールは+/-8秒角ですが、ほぼ真ん中に維持されていてrmsで1秒角程度で、非常に調子がいいです。おそらくこれまでで一番きれいにガイドできています。一番右の大きなピークはディザリングです。
一方、下の写真は3日目にかなりの強風時の様子です。
風のせいで揺れ幅が大きくなっているのが分かると思います。RMSで2秒近くなので、倍くらいの揺れです。右から2つ目の大きなピークはディザーですが、一番右のピークは部屋にいてビューという大きな風の音がした直後の揺れです。これで撮影中止を決めました。
PHD2の新機能のマルチスターですが、相当いい感触です。焦点距離が短いガイド鏡でピクセル以下の位置精度を求めようとしているので、そもそも感度限界に近いところを攻めているわけです。多数の恒星を測定することでそこのエラーが恒星の数のルート分の1で減るはずなので、かなり効くことが期待できます。今回試した限りでも、実際の場合で相当の効果があることが分かります。
今回はlightフレームの数が多いので、手持ちのダークフレームの数が足りなくて、冷蔵庫を使って追加でダークを取り直しました。
結果今回は
light frame: 147枚 (ISO800、露光300秒)
dark frame: 100枚 (ISO800、露光300秒)
flat frame: 128枚 (ISO800、露光1/400秒)
flat dark frame: 128枚 (ISO800、露光1/400秒)
になります。flatは最近TSA-120でM87を撮ったときに試した、曇りの日の部屋の中で外光が当たっている壁を写しました。flat dark frameはflat frame直後に鏡筒に蓋をして撮影しました。
上記ファイルを全てPixInsightのWBPPで処理します。WBPP終了後の画像をオートストレッチしたもですが、これを見てちょっと引いてしまいました。
12時間撮影してこの淡さです。しかもゴミが多すぎ。一度センサーを徹底的に掃除する必要がありそうです。
これ以上撮影時間を増やすのも価値がないと思い、気を取り直して画像処理を始めます。普段の炙り出しが簡単に思えるほど、画像処理には相当苦労しました。PixInsightでストレッチまでした後、さらにPixInsight上で細部出しなどの処理を続けようと思いましたが、これだけ淡いのを出すのはPixInsightでは私はまだ経験不足。今回はStarNetで背景と恒星を分離してから、早々とPhotoshopに移り、背景と恒星を別々の状態で処理を進めました。ただし、恒星との境に不自然沙が生じないよう、背景のみの画像に恒星から作ったL画像をマスクとしてかけながら処理しました。
この淡い天体に対して、Photoshop上でDeNoiseも含め、持ってる技術を注ぎ込んで炙り出しました。そのため多少不自然なところも残ってしまっているのは否めません。かなり炙り出しているのでノイジーなのも否めません。それでも自宅から12時間でここまで出たのは喜ぶことなのかもしれません。
そもそもHαの赤を出すだけでも相当苦労しましたが、OIIIの青は全くと言っていいほど出ませんでした。CBPはある程度青も通すはずですが、それでも全然無理なのか、それとも露光時間が絶対的に足りないのか?そのうちOIIIフィルターを使って単体で撮り増しするかもしれません。
今回の撮影も自宅庭撮り祭りの一環で、私にとってはある意味挑戦の一つです。その結果、こんな淡い天体ですが、自宅から出す手段があることはわかりました。あとは青いところをどう出すかが次の課題です。
今回は大きな星雲を久しぶりに短焦点鏡筒で撮影しました。逆方向、長焦点での小さな銀河を分解能取る方向もまた再開したいと思っています。
自宅から淡い天体を目指す
TSA-120を購入してから1年くらい、一部を除いてほとんどTSA-120ばかりで撮影していましたが、焦点距離900mmで撮れるのもだいぶ尽きてきたので、久しぶりに別鏡筒です。ターゲットは迷ったのですが、自宅からの撮影で淡いのがどこまで出るのかを知りたくて、Sh2-240にしました。前回のM78もそこそこ淡いのですが、今回のは無理ナントと言われるくらい淡いレムナント(超新星残骸)です。
淡くても大きい星雲なので、機材は焦点距離が370mmと短いFS-60CBに、マルチフラットナー + フルサイズのEOS 6Dです。新月期ですが、自宅周りで光害の影響は避けられないので今回はCBPを取り付けます。
淡くてもうまく全景が分かるくらい写るのか、あわよくば青いOIIIまで写るのか?どれくらいの時間をかけるべきなの?いろいろ楽しみです。
撮影
実際の撮影の状況です。撮影は3日に渡るので状況は色々変わります。
- 1日目、2月6日(日): そこそこ晴れているので21時過ぎから撮影開始、雲が途中少し出たが、続行。西に傾くにつれ明るくなり、午前1時半頃で屋根に遮られおしまい。次の日仕事なのでここでキザを片付け中断。
- 2日目、2月11日(木): 休日: 機材はそのままの継続撮影なので、すぐに準備もでき、天体薄明終了後すぐの19時過ぎから撮影開始。天気があまり良くなく、時折雲に邪魔されます。西に傾き明るくなってきた午前1時頃に、これまた次の日仕事なのでここで撤収。
- 2月12日(金) 夜中くらいまで天気が悪そうだったので、この日の自宅での撮影は諦め真脇遺跡へ遠征(このことはまたブログにまとめます)。
- 3日目、2月13日(土): この日も19時くらいに撮影開始。風が強くなってきた午後1時前に撮影中止。天気はまだ良かったのですが、あまりの風の強さに撮影は無理と思い撤収。
3日目の撮影開始時に、カメラのワイドアダプターのネジが緩んでいてガタガタになっているのに気づきました。カメラを一度外したので、カメラの回転角は合わせ直したのですが、ピントは一見大丈夫そうだったので合わせずじまい。おそらく3日目の分はごくわずかピントがずれています。でも仕上がりを見たらまあ気になるほどではなかったです。でもやはり少なくとも何かずれていたら、きちんと見直すべきかと反省しました。
電源トラブル
長時間撮影なので、カメラをモバイルバッテリーで駆動させましたが、このバッテリーにAC出力がついていたので、機材簡略化のためにStickPCを試しに同じバッテリーから電源を取って動かしてみました。結果、ASCOMで赤道儀のCOMポートを認識しない(ごくたまに認識するが、すぐにまた認識しなくなってしまう)というトラブルが起き、その後StickPC自体が落ちてしまいました。
COMポートの認識が不安定だったり、まるまる認識できなくなるという事態は初めてでした。最初電源のせいだとは疑わなかったです。でもいつもはできていて、今日は調子が悪い。何か変わったところがあるはずだと考えると、やはり電源が最初に浮かびました。結局StickPC用にいつも使っている別の独立したモバイルバッテリーを用意したところ、ASCOMも安定し、落ちるようなことは無くなりました。
ということはやはり今後も
- 赤道儀用にCelestronのPower Tank(のバッテリーを入れ替えたもの)
- Stick PC用のAC出力付きのバッテリー
- カメラ用にUSBが2系統取れるバッテリー
PHD2のマルチスターガイドのテスト
今回新しく試したのは、PHD2の開発者バージョンで実装されたマルチスターガイドです。下の写真は初日の様子です。
縦軸のスケールは+/-8秒角ですが、ほぼ真ん中に維持されていてrmsで1秒角程度で、非常に調子がいいです。おそらくこれまでで一番きれいにガイドできています。一番右の大きなピークはディザリングです。
一方、下の写真は3日目にかなりの強風時の様子です。
風のせいで揺れ幅が大きくなっているのが分かると思います。RMSで2秒近くなので、倍くらいの揺れです。右から2つ目の大きなピークはディザーですが、一番右のピークは部屋にいてビューという大きな風の音がした直後の揺れです。これで撮影中止を決めました。
PHD2の新機能のマルチスターですが、相当いい感触です。焦点距離が短いガイド鏡でピクセル以下の位置精度を求めようとしているので、そもそも感度限界に近いところを攻めているわけです。多数の恒星を測定することでそこのエラーが恒星の数のルート分の1で減るはずなので、かなり効くことが期待できます。今回試した限りでも、実際の場合で相当の効果があることが分かります。
画像処理
今回はlightフレームの数が多いので、手持ちのダークフレームの数が足りなくて、冷蔵庫を使って追加でダークを取り直しました。
結果今回は
light frame: 147枚 (ISO800、露光300秒)
dark frame: 100枚 (ISO800、露光300秒)
flat frame: 128枚 (ISO800、露光1/400秒)
flat dark frame: 128枚 (ISO800、露光1/400秒)
になります。flatは最近TSA-120でM87を撮ったときに試した、曇りの日の部屋の中で外光が当たっている壁を写しました。flat dark frameはflat frame直後に鏡筒に蓋をして撮影しました。
上記ファイルを全てPixInsightのWBPPで処理します。WBPP終了後の画像をオートストレッチしたもですが、これを見てちょっと引いてしまいました。
12時間撮影してこの淡さです。しかもゴミが多すぎ。一度センサーを徹底的に掃除する必要がありそうです。
これ以上撮影時間を増やすのも価値がないと思い、気を取り直して画像処理を始めます。普段の炙り出しが簡単に思えるほど、画像処理には相当苦労しました。PixInsightでストレッチまでした後、さらにPixInsight上で細部出しなどの処理を続けようと思いましたが、これだけ淡いのを出すのはPixInsightでは私はまだ経験不足。今回はStarNetで背景と恒星を分離してから、早々とPhotoshopに移り、背景と恒星を別々の状態で処理を進めました。ただし、恒星との境に不自然沙が生じないよう、背景のみの画像に恒星から作ったL画像をマスクとしてかけながら処理しました。
この淡い天体に対して、Photoshop上でDeNoiseも含め、持ってる技術を注ぎ込んで炙り出しました。そのため多少不自然なところも残ってしまっているのは否めません。かなり炙り出しているのでノイジーなのも否めません。それでも自宅から12時間でここまで出たのは喜ぶことなのかもしれません。
- 撮影日: 2021年2月6日21時22分-2月7日1時30分、2月11日19時19分-2月12日0時25分、2月13日19時10分-2月14日0時47分
- 撮影場所: 富山県富山市自宅
- 鏡筒: 鏡筒: Takahashi FS-60CB + マルチフラットナー
- フィルター: SIGHTRON Comet Band Pass (CBP) filter
- 赤道儀: Celestron CGEM II
- カメラ: Canon EOS 6D(HKIR改造, ISO800, RAW)
- ガイド: f120mmガイド鏡 + ASI120MM mini、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
- 撮影: BackYard EOS、露光時間300秒x147枚 = 12時間15分
- 画像処理: PixInsight、StarNet++、Photoshop CC、DeNoise AI
そもそもHαの赤を出すだけでも相当苦労しましたが、OIIIの青は全くと言っていいほど出ませんでした。CBPはある程度青も通すはずですが、それでも全然無理なのか、それとも露光時間が絶対的に足りないのか?そのうちOIIIフィルターを使って単体で撮り増しするかもしれません。
まとめ
今回の撮影も自宅庭撮り祭りの一環で、私にとってはある意味挑戦の一つです。その結果、こんな淡い天体ですが、自宅から出す手段があることはわかりました。あとは青いところをどう出すかが次の課題です。
今回は大きな星雲を久しぶりに短焦点鏡筒で撮影しました。逆方向、長焦点での小さな銀河を分解能取る方向もまた再開したいと思っています。