ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:AVX

今回、振動減衰特性が素晴らしいと評判の、スコープテック社の新型経緯台ZEROを手に入れました。梅雨ですが、晴れ間を狙って色々と評価してみました。


目的

この記事では、スコープテックの新型経緯台「ZERO」の振動減衰特性を評価をすることを目的とします。わかりやすいように、今回は入門機の標準と言ってもいい、Vixen製の天体望遠鏡「ポルタII A80Mf」と比較してみます。


ポルタII

ポルタIIに関しては言わずと知れたVixen社の看板製品の一つで、とりあえず望遠鏡が欲しくなったときに最初におすすめされる、おそらく日本で最も売れている望遠鏡かと思われます。

屈折型のA80Mf鏡筒とセットになっているものが一番有名で、鏡筒、ファインダー、経緯台、三脚、2種のアイピース、正立プリズムなど、基本的に必要なものは最初から付属しています。初心者でもすぐに天体観察を始めることができ、天文専門ショップのみでなく、全国カメラ店などでも購入でき、その販売網はさすがVixenと言えます。

機能的にもフリーストップを実現した経緯台方式で初心者にも扱いやすく、鏡筒はアクロマートながら口径80mmと惑星などを見るにも十分。全て込みでこの値段ならば、十分適正な価格であると思います。

私は2018年の小海の星と自然のフェスタのフリーマーケットで手に入れました。中古ですが付属品はアイピースなども含めて全て付いていて、おまけに別売のフレキシブルハンドルも付いてきました。また鏡筒キャップの中に乾燥剤が貼り付けてあったり、夜に機材が見えやすいように反射板を鏡筒や三脚にマーカーとして貼ってあったりと、前オーナーはかなり丁寧に使ってくれていたことが推測できます。

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ZEROの特徴

一方、ZEROは経緯台のみに特化した単体の製品です。鏡筒や三脚は基本的に付いていないので、別途用意する必要があります。発売開始は2020年3月なので、すでに解説記事などもたくさん書かれています。ZERO自身の機能的な解説はメーカーのZERO本体のページ天リフさんの特集記事が詳しいです。購入もスコープテックのページから直接できます。




スコープテックはもちろんですが、ZEROはサイトロンなどいくつかの販売店からも販売されています。シールをのぞいて同じものとのことです。違ったバージョンのシールにしたい場合はこちらから頼む手もありです。





本記事では、機能に関しては上記ページに任せて簡単な解説にとどめ、振動特性を中心に評価したい思います。

実際のZEROを見てみます。

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ZERO自身は実際に手に取って見ると思ったよりコンパクトです。初めて使う場合は「お使いになる前に必ずお読みください!」と書いてある紙が入っていますが、これだけでなくマニュアルも必ず読んだ方がいいでしょう。一旦組まれたものを外して、経緯台として動くように組み直す必要があります。また、手持ちの三脚に合わせて(注文時に選択した)アダプタープレートを合わせて組み込んで三脚とセットする必要があります。


なぜ片持ちなのか?

基本的に片持ち構造は、強度や振動特性に関しては不利なはずです。それでもフリーストップにするためには片持ちが適しています。なぜなら鏡筒を縦方向に動かしたときにバランスが崩れないため、どこで止めてもつりあいがとれるからです。これがフリーストップを安定に実現させている理由です。

この片持ちという不利な構造にあえて選んで振動減衰特性に挑戦しているのが、ZEROの真骨頂と言えるでしょう。しかも軽量でコンパクトに折りたたむことができま、気軽に持ち運無ことができます。

フリーストップで、しかも揺れなくて、コンパクトとのこと。これは実は初心者に向いた設計と言ってしまってもいいのかと思うくらいです。スコープテッックが初心者向けの機材を相当丁寧に作ってくれていることは、私も実際に望遠鏡セット使って知っているので、おそらく本当に初心者のことを考えて今回のZEROも設計、製作しているのかと思われます。

でもこのZERO、初心者だけに使うのはもったいなさそうです。ベテランのアマチュア天文家が気楽にパッと出して星を見たいというときには、軽くて、且つ揺れないというのはベストのコンセプトです。観望会を開いて、お客さんに見てもらう場合とかでも十分に活躍してくれそうです。また、コンパクトなので遠征に気楽に持っていけそうです。遠征先の撮影の合間に気楽に観望とかでも使い勝手が良さそうです。


ポルタIIとは違い、ZEROは基本的に経緯台のみの単体販売で、三脚も鏡筒も付いてはきません。全部込み込みのポルタの実売価格はZERO単体よりも数千円高い程度ですので、価格的にはポルタIIに比べたら割高と感じるかもしれません。経緯台に特化した分だけの性能に対する価値を、どこまで見い出せるかがポイントになるのかと思います。


測定条件

まずは振動特性を見るための条件です。

共通項目
  • 鏡筒はポルタII付属のA80Mfを使う。
  • 微動ハンドルはVixen製のポルタ用のフレキシブルハンドルを使う。
  • 眼視を想定し、三脚の足を半分程度伸ばした状態で、2台の三脚を同じ高さにする。

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2台のセットアップです。三脚はほぼ同じ高さにしています。
鏡筒とフレキシブルハンドルを載せ替えて比較しています。
写真でZEROについているハンドルは無視してください。

2つの測定の違う点
  1. ポルタIIの経緯台をポルタIIの三脚に載せたものに鏡筒を載せる(以下このセットアップをポルタIIと呼びます)
  2. ZEROをCelestron社のAdvanced VX用の三脚に載せたものに1と同一の鏡筒を載せる(以下このセットアップをZEROと呼びます)

ただし、後から分かったことですが、三脚の強度に無視できないくらいの大きな違いがあることが判明しました。なので今回はZEROにAdvanced VX用三脚でここまで振動を抑えることができるという目安と考えていただければと思います。


観測方法

ポルタIIとZEROの2種で鏡筒部分を揺らし、その揺れがどのように減衰していく様子を、視野を撮影しながら見ていきます。


2種の倍率

それぞれ観測、測定のたびに鏡筒をフレキシブルハンドをポルタ経緯台とZEROに載せ換えます。光学的に2種類の設定をそれぞれの経緯台で試します。
  1. 40倍相当: 天体導入時を想定し、焦点距離800mmの鏡筒と焦点距離20mmのアイピースで40倍程度の視野を仮定し、フォーサーズ相当のCMOSカメラ(ASI294MC Pro)ので撮影
  2. 160倍相当: 天体導入後、拡大して観察する場合を想定し、焦点距離800mmの鏡筒と焦点距離5mmのアイピースで160倍程度の視野を仮定し、同一CMOSカメラの(ASI294MC Pro)一辺4分の1、面積にして16分の1を切り取って撮影
1.、2.ともにフレームレートを上げるために4倍のビニングをして画素をそもそも4分の1に落としています。また、2.ではさらに速い動きを見るために、画面を切り取って小さくしてフレームレートをできるだけ上げています。


昼間の景色で比べてみる

まずは大まかな動きを掴むために、昼間の明るい景色で40倍相当で比較してみました。最初に望遠鏡を買って、昼間に練習するのに相当すると思えば良いでしょうか。具体的には山の上に立っている鉄塔を端から真ん中ら辺に持ってきています。

まずは横方向(yaw, ヨー方向)です。フレキシブルハンドルをまわして動かします。動かした後にどれくらい揺れるかを見ます。

ポルタの場合です。
倍率40倍相当の横の動き: ポルタの場合



ZEROの場合です。
倍率40倍相当の横の動き: ZEROの場合

これを見るだけで相当インパクトのある比較になっています。とにかくZEROの振動減衰が見事です。

続いて縦方向(pithc, ピッチ方向)です。まずはポルタIIの場合

倍率40倍相当の縦の動き: ポルタの場合

次にZEROです。
倍率40倍相当の縦の動き: ZEROの場合

ポルタIIもZEROも、横よりは縦の方が揺れにくいのは同じのようです。これは構造的に縦は縦のみの機構を担っていますが、横は横の機構と縦の機構を合わせて担当しています。当然重くなるので、その分横が揺れやすいのは不思議ではありません。

ポルタIIの方は多少揺れますが、やはりここはZEROの揺れの少なさを褒めるべきでしょう。揺れの振幅も、揺れが小さくなる時間もZEROは素晴らしいです。ただしこの結果はかなり大きく揺らした場合なので、実際に初心者がポルタIIで昼間に最初に練習する時でも、そこまで困ることはないのかと思います。


実際の観測を想定して木星で比べてみる:  導入時相当

初心者が望遠鏡を買って見てみる醍醐味の一つが木星や土星などの惑星です。そのため、今度は実際の観察を想定して、夜に木星を見て揺れの具合を比較してみましょう。

まずは木星で40倍相当で判定します。これは低い倍率で天体を導入するときの動作に相当します。木星を端から真ん中ら辺に持ってくるときの揺れで比較します。

横方向の揺れです。まずはポルタIIから。

23_16_31_F001-193s
倍率40倍相当の横の動き: ポルタの場合

次は同じく横方向で、ZEROの場合です。
23_40_29_F001-193s
倍率40倍相当の横の動き: ZEROの場合


次に縦方向で、まずはポルタの場合。

23_18_10_F001-192s
倍率40倍相当の縦の動き: ポルタの場合

縦に振っているのですが、横の揺れの方が出やすいので多少横揺れがカップルしてしまっています。

次にZEROの場合です。
23_40_54_F001-192s
倍率40倍相当の縦の動き: ZEROの場合


惑星の動きで見てもZEROの振動の減衰具合は特筆すべきで、特に縦方向の操作はもう十分すぎるほど減衰してしまって、インパルス的に動きを与えることが困難になっているくらいです。

実際操作していて思ったのですが、どのようにハンドルを回してどういったインパルス応答を与えるかで揺れの具合は違ってきます。ポルタIIの場合でも熟練してくると、最終的な揺れを少なくするように、最初は大きく動かして、見たい所の近くでゆっくり動かすなどのテクニックを、自然に習得できるのかと思います。なので、倍率が低い天体導入の際には、慣れてくれば上記動画の差ほどは気にならなくなるかと思います。



実際の観測を想定して木星で比べてみる:  拡大時相当

次に、木星で160倍相当で見てみます。これは定倍率で導入された惑星を、倍率を上げて拡大して見るときに相当します。視野が狭いので、先ほどのようにフレキシブルハンドルを回すとうまく揺れてくれないので、鏡筒をピンと弾くことでインパルス応答に相当する揺れを与えました。

まずは揺れやすい横方向です。最初はポルタIIから。 
倍率160倍相当の横の動き: ポルタの場合

ZEROです。
倍率160倍相当の横の動き: ZEROの場合


次は縦。まずはポルタII。
倍率160倍相当の縦の動き: ポルタの場合


最後にZEROの縦方向です。

倍率160倍相当の縦の動き: ZEROの場合



この試験は、フレキシブルハンドルを回したわけではないので、例えば観望会などでお客さんが鏡筒に触れてしまったことなどに相当するのかと思われます。これくらいの倍率で惑星を拡大して見る場合、特に望遠鏡の扱いに慣れていない初心者には、揺れの違いは実際の快適さの差として出てくると思います。ZEROの揺れくらいで収まってくれると、木星の細かい模様をじっくり見るときにも見やすいでしょう。


実際の使い心地

使って見て思ったことです。確実にZEROの方が揺れが少ないのは上記映像を見てもわかるのですが、その一方ポルタ経緯台に比べてZEROの方がハンドルが固いです。これはフリーストップの調整ネジとかの問題ではなくて、ある程度強度を保つためにこれくらいの固さが必要だったのではという印象です。また、微動調整つまみをフレキシブルハンドルで回すとき、遊びが少し多いなと思いました。これらは好みかもしれませんが、ポルタとZEROを比べると硬さと遊びに関しては個人的にはポルタに一日の長があると思いました。

おそらく微動の固さに関連すると思うのですが、揺れに対しての感想は反対になります。ポルタだけを使っていた時は、揺れは多少は気になっていましたが比較したわけでないのでそこまでは気づかず、今回ZEROと比べて、初めてはっきりと不満と感じました。

繰り返しになりますが、私が持っているポルタ2は中古で手に入れたものなので、新品の時の性能が出ている保証がありません。ですが、初心者がこの揺れだけを見てメーカーに修理を出す判断をする、もしくは実際に修理を出す気になるとも到底思えず、仮に使っていてヘタったのだとしたら、耐久性という意味で少し考えた方がいいのかもしれません。いずれにせよ、私が持っているポルタ2は一例に過ぎず、当然全てのポルタ2を代表しているわけではありません。その上でのことですが、少なくとも手持ちのものは(ZEROと比べると改めて気づきますが)揺れは結構大きくで、フレキシブルハンドルから手を離して揺れてしまうと、フレキシブルハンドル自身の揺れで視野が揺れてしまうくらいです。


三脚に関して

今回ZEROと比較することにより、これまであまり気にしなかったポルタIIの弱点が見えてきました。なぜポルタがZEROに比べて揺れが出るのか明るいうちに見てみました。2つの原因があるのかと思います。
  • 経緯台の可動部が柔らかく、ハンドルを回すのも軽くて操作しやすい反面、ここでぐらついてしまっている可能性が高い。
  • 根本的に三脚が弱い。
特に三脚に関しては目で見て揺れやすいのがわかるくらいです。動画でその様子を撮影してみました。


わかりますでしょうか?鏡筒を揺らすと、三脚(真ん中手前がわかりやすいです)もつられて揺れてしまっています。わかりにくい場合は、全画面表示などにして見てみてください。一見小さな揺れに思えるかもしれませんが、本来三脚は載っているものを揺らさないような役割をするものです。鏡筒を揺らすだけでこれだけ三脚が揺れてしまうのは、無視できる範囲とは言い難いでしょう。触らなければ揺れないかと思いがちですが、風が吹いた時は致命的ですし、導入時はどうしても触れてしまうので揺れてしまう可能性が高いです。

ちなみに、ZEROをAVX三脚に乗せたときに、同様に鏡筒を揺らしたときの映像も載せておきます。


こちらは拡大しても揺れている様子が全く見えません。揺らしていないように思われるかもしれませんが、音を大きくして聞いてみると途中から鏡筒を叩いているのがわかるかと思います。人間の力なので必ずも同じ状況にはならないですが、基本的に同程度の力で叩いたつもりです。音が小さいと思われるかもしれませんが、やはり揺れていないので記録された音も小さくなっているのかと思われます。

本来三脚は積載物を安定に支えるのが役割なので、揺れないものの方がいいのは当然です。それでもやはりこれも程度問題で、頑丈すぎるものは逆に重くなったりして取り回しに苦労することもあります。ただ、Advanced VX用の三脚程度の重量とZEROの組み合わせでここまで振動が減るのなら、特に惑星などを拡大して見たときには十分に検討する価値があるのではないかと思います。ZEROの販売ページを見ると強化版の三脚を選べるようです。これだと今回使ったAdvanced VX三脚と同等クラスかと思いますので、より揺れを少なくしたい場合はこちらを選ぶのもいいかと思います。

これらのことから、まずポルタIIは少なくとも三脚を改善もしくは丈夫なものに交換するだけでも揺れは相当改善すると思われます。別の言い方をするなら、経緯台として考えるとZERO自身の揺れは相当小さいため、もしZEROの性能を引き出したい場合は、ある程度強度のある三脚を使わないともったいないとも言えます。でもこのことは三脚の重量増加にもつながるので、手軽さという利点を損なう可能性もあるので、ケースバイケースで強度と重量のバランスを考えて選択すればいいのかと思います。

今回はZERO用には相当強度の高い三脚を選択してしまいました。結局のところ、今回の比較は「入門機の標準と言ってもいいポルタIIとの振動に比べて、振動減衰特性を特徴として開発したZEROを使うと、どのくらいまで揺れを改善できるか」という例を示したことになるのかと思います。ポルタIIを改善していって、揺れないものにアップグレードしていくような楽しみ方を見出すこともできるのかと思います。


まとめ

星まつりで何度かプロトタイプには触れたことはあり、ある程度すごいことは知っていましたが、実際に使って見ると、ZEROの振動減衰に関しては驚くほどの結果でした。ポルタIIだけを使っていた時は揺れはここまで意識できていなかったので、例えば初心者がポルタIIを最初に買って普通に使う分には、特に気になるようなことはないでしょう。ただ、もし今使っている経緯台に不満がある場合は、ZEROを検討してみる価値は十分にあるのかと思います。

経緯台単体にそこまでかける価値があるのかというのは、人それぞれかと思います。個人的にはZEROは素晴らしい製品に仕上がっていて、スコープテックさんの努力や熱意を十分に伺うことができるのかと思います。満足です。


2017/3/11、休日の前日で晴れ。今晩は満月直前なので、星雲の撮影などはできそうもありませんが、せっかくの星空が勿体無いので何をしようか考えていました。やりたいこと、やらなければならないことはたくさんあるのですが、あくまで趣味なのでやりたいことをやろうと思い、気になっている星像の流れの原因を突き止めることにしました。

先日のマルカリアン銀河鎖の撮影の際、Advanced VXとPHD2でガイドをしているにもかかわらず星像が一定方向に流れるという問題があったのですが、やっと原因が判明しました。犯人はガイドの焦点距離を伸ばそうとして、ついこの間導入したCanonのZOOM LENS EF 55-200mmです。ガイドとして使っているCCD、ASI224MCにアダプタを介してレンズを取り付けているため、電動系は全く無意味で、当然ピントなどはマニュアル、というか手でレンズの先の筒をひねって伸ばしたりして合わせるのですが、その際すごく軽くて弱そうだなと思っていました。レンズの筒の部分にちょっと触るとCCDでの映像があからさまに揺れるのです。まあガイド中は触らないからいいかと思っていたのですが、これが間違いでした。

よくよくレンズを見てみると、ズームタイプでULTRASONICとか書いています。Webで調べたら、超音波モーターを使っているとのことです。静音でいいらしいのですが、パワーがなさそうなのは容易に想像できます。駆動力がないということは、動かす対象は軽くて、構造的に弱いものにならざるを得ないということでしょうか。四千円程度と安くてよかったのですが、天体用には向かないということがよくわかりました。


検証

今回の検証のためにやったことを書いておきます。まずは前回の再現。できる限り同じ機材、同じ環境で星像が流れるかを確認します。バラ星雲あたりとスピカあたりで試しましたが、見事に流れます。

使っている機材は撮影条件によらず共通のものが
  • 鏡筒: FS-60Q (f=600mm)
  • 赤道儀: Advanced VX
  • カメラ: EOS 60D
  • ガイド用CCD: ASI224MC
  • ガイドソフト: PHD2

変えている撮影条件は
となります。

1. 最初はバラ星雲あたりを、CanonのZOOM LENS EF 55-200mmを使いPHD2でAVXの2軸に返しました。5分露光で5枚、22時39分29秒から23時05分8秒まで25分39秒かけて撮った画像を比較明合成します。比較明合成はstarstax (紹介記事本家) というソフトを使いました。5分 x 5枚の25分より長くなっている理由は毎撮影時にBackyardEOSでPC側にダウンロードしているために、その間は撮影できないからです。

rosse_canon_2axis

左右が赤経方向、上下が赤緯方向に相当するので、どうも赤径方向に大きく流れているようです。

流れた距離をPhotoshopの定規ツール(スポイトツールに隠れています)で測定すると19.06pixelありました。

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EOS 60Dはセンサーサイズが22.7mm x 15.1mmなので、600mmの焦点距離だと画角は2.167 x 1.441度になります。これが5184 x 3456pixelの画像になるので、1pixelあたり0.0004181度になります。秒角に直すと1.505秒/pixelとなります。なので星像が流れた距離を角度で表すと

19.06pixel x 1.505秒/pixel = 28.69秒

となります。これを25分39秒、すなわち1539秒かけて撮影しているので、移動速度は

28.69秒角 / 1539秒 = 0.01864秒角/秒 = 1.119秒角/分 = 67.11秒角/時

となります。1分で1秒以上もずれたら、数分で流れが見えるようになるのも当たり前です。


2. 同じくバラ星雲あたりを、CanonのZOOM LENS EF 55-200mmを使いPHD2で今度は赤緯のフィードバックをなくし、赤経の1軸のみに返しました。

rosse_canon_1axis

同じく5分露光が5枚で、23時6分14秒から23時31分56秒の25分41秒です。先ほどの赤経方向の動きに、さらに赤緯の方向にずれが加わっているように見えます。これは極軸の精度が悪かったために加わったと考えられます。

移動距離は22.94pixelなので、速度は1.347秒角/分となり、少し速度が増しています。これは赤緯方向のずれが加わったからでしょうか。


3. もう少し時間が経って、バラ星雲がかなり西の低い高度に移動した時の速的です。2軸に返しているだけで上と条件は同じです。5分露光3枚で、0時6分13秒から0時21分36秒の15分23秒です。

rosse_canon_2axis_West

同様に測定すると、58.82pixelとなり、約15分でこの距離なので速度は相当速くなり、5.75秒角/分となりました。やはり方向は赤経方向が主です。CCDに付いているレンズがほぼ水平になり、赤経方向に重力がかかり非常にたわみやすい状況でした。


4.  ここでバラ星雲が沈んでいったので、次はスピカ近辺で試して見ました。レンズは同等で、2軸制御です。1時38分29秒から1時59分45秒の21分16秒です。

spica_canon_2axis

測定すると、距離は27.93pixelとなり、1.976秒角/分となりました。ちょっと速いですが、場所を移動しても再現性はありそうです。


いずれにせよ2軸制御をしているときは基本的にほぼ赤経の方向のみの流れです。ガイドのCCDの像とカメラで撮影している像が、なんらかの理由で赤経方向に相対的にずれることにより、星像が赤経方向に流れているということです。


5. ここでレンズが怪しいと睨み、以前使っていたCマウントの50mm、f=1.4の軽くて短いレンズに交換しました。実はレンズを交換する前に赤系も止めてフィードバックなしで撮影してしまおうとしたのですが、Advanced VXはピリオディックモーションが+/-15秒程度あることが実測で分かっているので、ちょうど今のずれとコンパラなオーダーなので混乱してしまうと思い、先にレンズを代えることにしました。この読みは正解で、星像の流れがぴったりと止まりました

2軸制御で、2時6分50秒から2時32分35秒の25分45秒です。

spica_50mm_2axis


流れる距離が短すぎるので誤差も大きいですが、とりあえず2.14pixelと計測しました。速度はなんと0.125秒角/分となり、星像が流れる量は10分の1位になったということです。

しかも、明るいレンズのせいなのかと思いますが、PHD2のカメラのゲイン設定をデフォルトの95%から60%くらいまで下げと、カメラからのノイズが減って背景がすごく安定し、位置を読み取る時のピークの山の形がほとんど変形せずきれいになるので、位置精度が上がるためでしょう、ピクセルあたりの精度が余裕でRMSで0.2ピクセルを切っています。200mmの時の精度が適当なときは0.35-0.4ピクセル、すごく頑張って0.25ピクセル程度なので平均だとピクセルあたりで倍近くいいです。角度で表すと、2.5秒くらいまでいく(200mmの場合は1秒ちょっとくらい)ので、レンズの焦点距離の4倍の違い程の差は出ずに、実質2倍くらいの差しかありません。星像の流れは比べるまでもなく50mmのほうがいいので、しばらくは50mmでもう少しパラメータを詰めていくことにします。


さて、ここで一つ疑問が湧きました。なぜ星像の流れは赤経方向ばっかり出たのかということです。

1. まずレンズ自身が弱くてたわんだと仮定します。レンズは円筒形なので、円柱の軸に対しては円対称で、たわみは円柱軸の回転方向に依らないはずなので、星像の流れの方向は鏡筒の向きが変われば変わるはずです。なので赤緯方向に出てもおかしくありません。

2. 一方、これまではレンズが大きくて重いから、レンズやCCDを支えている根元の機械的な構造の強度が十分でなくたわんだと仮定します。構造的に赤経方向の固定方法が何かしら弱いとすれば、赤経方向のみに流れが出たというのは納得できます。

実際には赤経方向のみに流れが出ているので、一見2が正しいように思えます。ですがもし2が正しいとすると、50mmのレンズに変えた場合にずれの量は2つのレンズのモーメント比くらいでしか改善されないはずです。200mmのレンズは図体は大きいけれど密度が低いので、重さは50mmのレンズと大して変わりません。長さは200mmの方が倍くらいあるので、モーメント比はたかだか2倍です。ということは50mmのレンズに変えたとしてもずれの量は半分くらいにしかならないはずですが、実測では10分の1と圧倒的にずれは小さくなっています。

しばらく悩んだのですが、色々考えてやっと分かったのは、実は赤道儀に載せて南の空に鏡筒を向けると、いつも鏡筒が長手軸方向を中心に90度傾いた状態になるということです。これは実際にやってみるとすぐにわかるのですが、鏡筒が極軸方向を向いているホームポジションでは、長手軸方向の回転で考えた時に水平になりますが、南方向では地面の下を見ない限り、水平にはなりません。ベテランの方には当たり前のことなのかもしれませんが、少なくとも私は今回初めて気づきました。そのために重力は常に赤経方向に働き、レンズはいつも赤経方向にたわむというわけで、1のレンズ自身がたわんだと考えて矛盾しないのです。


もう一つ気になったのはPHD2のカメラのゲインがどうも自動で変わっているようなのです。これはスピカを画角に入れた時に気付いたのですが、明らかに背景が真っ暗になります。どこにもオートゲインの切り替えの設定場所はないので、というかゲインは任意に変えることができるので固定のはずなのですが、これはバグなのでしょうか?


いろいろ進んだり後退したりして回り道をしていますが、PHD2の理解がだいぶん進んできたのはもうけものです。なんとなくですがSWATでの撮影も見込みが出そうな気がしてきました。

 

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