ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:迷光

ここまでε130Dで3例のテスト撮影(1, 2, 3)をしてきましたが、2つの大きな問題があることがわかってきました。
  1. 光軸が合っていないこと、特に、カメラを回転させると像が変わる
  2. 迷光がありそう
などです。

この二つの問題について、福島の星まつりでHBさんから重要な情報を聞くことができました。ε130Dには特有の問題があり、
  1. 回転装置がアイピース口の光軸に対して垂直な面で回っていない可能性があること。
  2. ε130D固有の特徴的な迷光があること。
ということです。実際のテスト撮影でいずれも経験していることに近いです。今回は特に、迷光について少し検証してみました。


迷光をリアルタイムで見る

迷光が存在していることはテスト撮影からある程度わかっています。問題は何が原因なのか、改善する手段はあるかです。

まず、何も設定を変えずにフラットを撮影して再現性があるか見てみます。SharpCapで明暗が見やすいように、ヒストグラムで適当にストレッチしています。

キャプチャ3_with_hood

中心が明るくて、右にシャープな円弧状の段差があり、左になだらかな円孤状の減光があります。

前回のおとめ座銀河団の時に示したフラット画像は以下のようでした。ABEの4次をかけたストレッチしたものです。
2023_05_17_14_07_54_1x1_L_0_01s_g100_29_60C_0000_ABE

中心が暗くて、今回の画像と少し形が違うように見えて迷ったのですが、形が良く見えるようにSharpCap上でマニュアルでストレッチしているためと判明しました。RAW画像を撮影して、PixInsightで同様にABEを4次でかけオートストレッチしたら以下のようになったので、そこそこ再現性はあると考えていいでしょう。

_08_22_13_Capture_00001_08_22_13_ABE

以前の画像と一致したので、これ以降はリアルタイム性を優先し、SharpCapの画像で検証するようにします。

ちなみに、SharpCap状でもヒストグラムをいじることである程度再現はでき、
キャプチャ2

さらに、これは重要なのですが、何もストレッチしないと以下の様になり、
08_22_13_Capture_00001 08_22_13s
一見少し周辺減光があるだけの、特に何も問題ないようなフラット画像に見えてしまいます。


問題箇所の特定

さてSharpCapで左右非対称な迷光が見えている状態から、鏡筒の回転装置を180度回してみます。その結果が以下になります。

キャプチャ5_without_hood_rotete180deg

像が反転して、今度は左側がシャープに明暗が分かれます。カメラ側を回転させると像も回転するということは、原因は少なくとも回転装置よりカメラ側ではなく、鏡筒側にあることになります。

次に、フードを被せてみます。福島で特価で買ったプラスチック製のものです。きちんと真っ直ぐ取り付けることに気をつけます。

キャプチャ4_with_hood_rotete180deg
少し光量は減るので、フードがないと多少入り込む光はあるようです。でも微々たるもので、フードの有り無しで変な形を作る迷光は変わりないようです。

ここまでの結果から、回転装置より鏡筒側が原因で、フードを取り付けた鏡筒入射光側からの迷光も関係ないとすると、結論としては鏡筒の内部そのものに迷光を発生する原因があると言わざるを得ません。

この結果が正しいとすると、外部から何か改善することは期待できず、鏡筒を分解するなどして内部にアクセスして、反射する部分などを見つけて反射防止塗料などで防ぐことになるのかと思います。

例えば、フォーカサーの筒、副鏡、補正レンズなど、外からは見にくいですが、もしかしたら光を反射する明るい部分があるのかもしれません。補正レンズは取り外しができるので、(撮影では使わざるをえませんが)一度取り外して影響があるかどうか見ることは可能だと思います。もしレンズのARコート面からの反射とかだと致命的ですね。


この迷光はε130D一般のこと?

ところでですが、こんな迷光の話ネットを検索しても全然出てきません。少し気になったので、ε130Dのフラット画像がどこかにないか探してみました。少なくともすぐに2つ見つかって、
  1. 一つは本家のスターベースさんのもの、
  2. もう一つはYosshidaさんの「天体写真の世界」
で共にかなり信頼のおけるサイトです。ところが、掲載されているフラット画像を見ると、上のような円状の迷光はほとんど見られません。私の場合と全然状況が違うので、これは何かがおかしいと思い、もう少し検証してみました。

まず、両サイトともフルサイズの一眼レフカメラ(CanonのEOS 6DとNikonの810A)での撮影です。特徴的なのは上下のケラレです。

まずはこれを確認するために、私も6Dでフラットを撮影してみました。
キャプチャ8_6D_nostretch_mono
ぱっと見は上下のケラレも含めて、そこそこ再現できているようで、上記サイトの画像をかなり似ています。この場合の撮影条件は、見た目のDebayerをオフにしてモノクロにしたことと、「ストレッチをかけていない」ことです。

この画像だけ見ると特に問題はないように思えてしまいます。でも実際にはここからが問題です。上の状態から、先の検証でも試したようにSharpCap上で適当にストレッチをかけます。
キャプチャ9_6D_stretch_mono
ストレッチで炙り出すことで、見事にリング状の迷光が現れました。しかも上下のケラレの境の明暗さの方が大きいので、リング状の迷光はケラレに隠されてしまっていたということが言えると思います。

確かによく見るとスターベースの画像も、天体写真の世界の画像も、うっすらですがリング状の明暗さがあることに気が付きます。その証拠に、例えばスターベースのフラット画像をPixInsightでABEの4次をかけ適当にストレッチすると、同様のリング状の形がはっきりと出てきます。ここでは画像は掲載しませんが、興味がある方は各自試してみてください。


ちょっと迷光について検討

おそらくですが、実際にはスターベースのブログに書いてあるとおり、これまでフラット補正についてはあまり問題になっていなかったのかもしれません。そもそも、フルサイズクラスで問題になってくるリングの大きさですし、例えフルサイズでも一眼レフカメラで撮影している限りはケラレの方が大きいので、問題はそこまで露呈しないと思います。フルサイズのCMOSカメラになって初めて顕著になる問題かと思います。

もう一つは、近年画像処理の技術が発達してきて、相当淡いところまで炙り出すことができるようになってきたことも関係するかと思います。私はギリギリまで情報を引き出す傾向があるので、特に問題と感じてしまったのかもしれません。

その一方、前節で検証したようにフードを被せると入射光量は確かに変わるようなので、フラット補正後の残差はフードを使うことで軽減できる可能性はあります。まずは内部をいじるとかよりは、ちゃんとしたフードを作ることですね。これで上手く補正でき問題にならなければ、単なる程度問題なのかと思います。


まとめ

ここまでの検証で、やはりε130Dには残念ながら一般的にリング状の迷光が存在すると結論づけて良さそうです。でもフードでフラット補正の度合いが改善する可能性はありますし、画像処理をもう少し工夫するなどの手もあるかと思います。次回撮影で検証したいと思います。

言うまでもありませんが、ε130Dの明るさと分解能は特筆すべきものがあるので、いい点を上手く利用して今後も撮影していきたいと思います。撮影したいものもまだまだたくさんあり、今後どう改善していくのか、楽しみでなりません。


SCA260の撮影時、右下に変な模様が出るので、接眼部を一旦バラして見てみました。これをきっかけに色々発見がありました。

変な模様の原因

天気が悪いなりにも、折を見て適時撮影を試しているのですが、何か変な右下に模様があることに気づきました。。
ASI290MMPro_dust

流石にこれだと画像処理にも困りそうなので、原因を探ります。
  1. まず、鏡筒先端にカバーをつけてダーク状態で模様が見えることを確認します。
  2. フォーカサー部分を丸ごと回転させてみます。SharpCap画面上で模様の位置が動かなかったので、原因はフォーカサーより後ろ(カメラ側)ということになります。
  3. 次に、カメラのみホイールとの接合ネジを緩めながら回転させてみます。それでも模様の位置が動かないのでカメラが原因ということになります。
  4. 一旦カメラを外して、キャップをつけセンサーに入る光を遮り模様が見えるか試します。ところがここで模様が消えてしまいました。
  5. この時点で少し迷いますが、キャップをつけて真っ暗になったら見えなくなったので、何か光に対する影で、センサー面に何かついているのではないかと考えました。少し光を入れるとやはり模様が出てきました。
  6. センサー面を見ると、かなり大きな繊維のようなものが付いていました。
  7. ブロアーで吹き飛ばして、再度画面から模様が消えたことを確認して完了です。

とまあ、ここまでは特に何のことはないホコリ取りだけです。


光漏れの最大原因

でもふと我に返って思いました。

「あれ?なんで鏡筒カバーしてるのに
光が入ってるんだろう?」

そもそもホコリは光が入っていないと見えません。一番最初に書いた「鏡筒先端にカバーをかけてダーク状態を作り出した」というのは全く嘘だったようです。

そもそもこの作業は昼間の明るい部屋の窓際で行いました。最初のダークだと思っていた状態で窓のカーテンを開け閉めすると、SharpCapでの画面の明るさが思いっきり変わります。明らかに鏡筒のどこかで光が漏れています。具体的には画面の真ん中に丸い明るい領域がドカンと居座ります。

次に試したことが、再びカメラを外してキャップをします。鏡筒につけている時より遥かに暗くなり、バイアスノイズらしきものが見えてきます。でもこれでも真っ暗ではないようで、太陽光をカメラに当てた時と、カーテンの影に置いた時でSharpCapでの画面の明るさが変わります。ただし、変わるといっても微々たるもので、カメラを鏡筒につけていた時から見たら誤差の範囲です。

再びカメラを鏡筒に取り付けます。カメラ単体よりもやはり遥かに明るいです。色々試しながらどこから光が漏れているか確認していきました。途中最も怪しいと思ったところがオフアキの継ぎ目でした。下の写真で見てもわかるように、アダプターに3箇所切れ目が入っていていかにも光が漏れそうです。パーマセルテープなどをつけたりして確認しましたが、どうもここが原因なような、原因でないような?

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結論を言うと、オフアキ部は白で光漏れは確認できませんでした。

本当の原因はフォーカサー。下の写真のようにフォーカサーを一番短くすると光の漏れはかなり小さくなります。
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SCA260_forcuser_shortest.02JPG

逆にフォーカサーを一番伸ばすと、相当量の漏れになります。
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SCA260_forcuser_longest
真ん中に明るい丸い部分が出てくるのがわかります。漏れ光の量はフォーカサーの引き出し量に比例します。

フォーカサーを最大限引き出しても、隙間にパーマセルテープを貼り付けるとかなりマシになり、最も縮めた場合と同程度となります。
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SCA260_forcuser_longest3

これはフォーカサー固有の問題なので、おそらくSCA260だけのことではなく、同様の形のフォーカサーにかなり一般に言えるのかと思います。なので、

もし撮影画像の真ん中が
明るくなるようなことがあったら
フォーカサー部からの光漏れを
疑った方がいいかも

ということが言えそうです。今回はこのことが言いたくて記事を書いています。特に、カメラを代えたら突然真ん中に明るい丸が出たとか言う場合は、カメラが原因ではなくて焦点位置が変わったためフォカサーを引き出して光が漏れるようになったことが原因とかかもしれません。


その他の光漏れ

では漏れに関してはフォーカサーさえきちんと対処すれば完璧かというと、まだそうではありません。よくよく調べると、ファンのところからも光が漏れていることがわかりました。SCA260には鏡筒内の温度を外気温と早く同等にするために、接岸側に3つのファンがついています。

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ここは穴のようなもので、光がどうも鏡筒内に漏れ入るようで、ここを塞ぐと明らかにSharpCapの画面の明るさが変わります。それでもフォーカサーでの漏れ光と比べると誤差の範囲になってきます。さらに先にも書きましたが、カメラ単体にも漏れ光があります。比較すると

フォーカサー >> ファン > カメラ

といったところでしょうか。

これは明るいところで比べたので漏れ光としてSharpCapで確認できましたが、DSOなどの撮影時は鏡筒周りは十分暗くなるはずなので漏れ光は理想的には問題にならないはずです。ですが実際には光害があったり、赤道儀やバッテリーのLED、様子を見るためのヘッドライトなどの光、遠征地ではたまに来る車のライトなど、必ずしも真っ暗ではないことも多いです。このような環境下では漏れ光は十分に問題になることもあるでしょう。大原則は一番漏れるところを抑えること。今回の結果ではフォーカサー部です。最短状態に縮めて使えればいいのですが、そんなことは稀なので、光を通さないパーマセルテープや適当なカバーなどでフォーカサーの可動部の継ぎ目を塞ぐといいのかと思います。

現実的には、実際の撮影時に真ん中に明らかに明るい部分がある場合、もしくはフォーカサーを縮めた状態から撮影する位置まで伸ばした時に、SharpCapで見て明るくなるかどうかで判断すればいいのかと思います。

あと鏡筒先端につけるSCA260付属のカバーですが、柔らかいものでいささか心許ないと思っていたのですが、遮光性はバッチリでカーテンの開け閉めでも漏れ光は確認できませんでした。


他の鏡筒との比較 

かなり以前、MEADE 25cmで撮影した際に真ん中に明るい部分が出たことがあります。その時は原因がわからなかったのですが、実はこの時も同タイプのフォーカサーを使っていたことを思い出しました。今となっては確かめられませんが、フォーカサーが原因だったのかもしれません。

SCA260が設計時に参考にしたと言われているタカハシのCCA250ですが、このようなタイプのフォーカサーは使っていません(持ってないので実際には見てないですが)。代わりに、モーターで副鏡を移動させることで焦点を変える方式を採用しています。何でそんな面倒なことをするのかと思っていたのですが、もしかしたら設計時にフォーカサーの欠点を把握していたとかかもしれません。


まとめ

ちょっとしたホコリ対策から光漏れを調べる事になってしまいましたが、これまでそんなことは全然気にしていませんでした。何事も当たり前と思わずに、常に何が正しいか、疑いを持つくらいで進めた方がいいのかと思います。特に私は自宅撮影が多いので明るい場合も多く、これまでも光漏れとかもあったのかもしれません。


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