ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:赤道儀

まだまだ自分の中では皆既月食マイブーム状態です。今回は地球の影が止まるような位置をどう計算するかの一連の記事の、少し脱線するような記事になります。


「ほんのり光芒」さんとのコラボ? 

前回の記事でコメントをいただいた「ほんのり光芒」のみゃおさんがブログ記事の方で、地球本影の固定に関してかなり細かい検討をされています。


上記ページからリンクを辿れますが、かなり以前から考えられていたようで、私のようなにわか月食撮影とは歴史が全然違います。天リフさんのピックアップにも取り上げられていて、ほしぞloveログとのちょっとしたコラボのような様相を呈しています。




視野ズレの計算プログラム

前回までで、地球の自転による観測者の位置変化で視野に大きなずれができて、地球の影の形がひしゃげることを、多少定量的に見積もってみました。


大まかな見積もりと、実際にどれくらいずれるかは、少なくともオーダーレベルでは一致しているようなので、今回はもう少し精度良く計算できないかを考えてみます。といっても、自分だけで考えるのはそろそろ限界で、Webで少し検索してみました。すると老猫こてつさんという方が各種軌道計算などされて、その中で求めていた月の視野位置のずれそのものをpythonで計算してくれていることがわかりました。


プログラムのソースを公開してくれているので、そのまま計算することができ、とても助かります。ただし、それら計算式をどう求めているのかの記述はないので、そのプログラムの出典を調べるためにブログの過去記事を読んでいくと、どうやら中野主一さんの昔のBASICのコードをpythonに置き換えてくれているようです。


参考書籍

中野主一さんといえば、最近では小説「星になりたかった君と」で「長野秀一」という名前で出てきた重要な役割を担う老人のモデルとなった方。おそらく昔の天文少年にとっては憧れのアマチュア天文家で、多くの天文雑誌で連載をもち、アマチュアながら元国立天文台長の古在由秀先生から計算を依頼されるなど、軌道計算の大家です。私はその当時マイコン少年でしたが、大人になって天文を始めてから、昔使っていたマイコンで実用的な天体計算をしていたことを知って、とても感動したことを覚えています。実は中野主一さん、星を初めて少しした2018年に一度お会いして、お話しさせていただいたことがあります。私はかなり緊張していたのですが、気さくにお話ししていただきました。講演も聞かせてもらったのですが、当時どう計算を進めていたか、プロから依頼された当時の様子などのお話で、ユーモアたっぷりの講演で今でも心に残っています。

そんなわけで早速、サイトに載っていた参考文献を注文しました。長沢先生の「天体の位置計算」は以前から持っていたもので、まだ普通に販売されているようですが、他の3冊は流石に古本でかろうじて見つかるくらいでした。
72AF0666-ACA0-4136-8D0B-6D5DB7F44CF5

その中で一番古い「マイコン宇宙講座」は昭和55年の初出のもので、月の計算そのものの章があり、式の解説もあったので理解しやすかったです。

「マイコンが解く天体の謎」は昭和57年出版で、使われている言語はなんとF-BASICですよ。内容はプラネタリウムのようなものを実現することが中心ですが、実は私、中1の時にFM-NEW7を中古で買って、しゃぶり尽くした口です。その数年前に出た本のようなので、恐らくFM-7が出た時で、実際にはFM-8で組まれた時代のプログラムですね。

一番新しい「天体の軌道計算」は1992年なので、前の2さつからはかなり経っていて、プログラムも複雑になり、さらに精度を求めているような内容になっています。

とりあえずは、月の視野ズレの計算方法が載っている「マイコン宇宙講座」をもとに、老猫こてつさんのpythonコードを使わせていただいて計算を進めようと思います。

ただしこれはまだ、「月」の視野ズレを追いかけるプログラムで、一番求めたい月食中の「地球の本影」を追うものではありません。でもこれらの計算の延長上に、それもそう遠くないところに地球本影を求めることができるのではと期待しています。


赤道儀の制御

あともう一つ、仮に地球本影の視野ズレも含んだ位置を計算できたとして、それをどう赤道儀に伝えるかですが、彗星を追うメカトーフ法というのが応用できるかもしれません。ただし、地球の本影を追うというようなものは見つからなかったので、実際にどういう方法で赤道儀に伝えるのか、どういうデータ形式なのか、地球本影に応用できるかなど、もう少し調べる必要があります。

ガイドソフトのPHD2にもメカトーフに相当するような機能があるらしいのですが、どうも1次の傾きでガイド信号に補正信号を加えていくようなものらしいです。視野ズレのような複雑な動きはできないかもしれませんが、1次補正だけでも近似的にそこそこ地球の影の形はうまく出るのではと思います。もしくは撮影途中で何度か係数を変えるかとかでしょうか。


今後

視野ズレの計算方法や赤道儀の制御など、まだ直接ではないですが答えにつながりそうな幾つかの見通しは出てきました。次回の日本での地球本影が見える月食は2023年10月23日の部分月食だそうです。1年近くあるので、じっくり準備したいと思います。


 
 
 
 
 
 
 
 

前回の記事で皆既月食の作戦立てとリハーサル、当日の撮影の様子まで書きました。今回はその続きです。



皆既月食とその前後

まずは一番オーソドックスで解像度も出る
  • TSA120+ASI294MC Pro(常温)+CGEM II
で撮影したものからいくつか処理します。このセットアップもSharpCapのシーケンサーを使い2種類の明るさで撮影しています。シーケンサは以下のような設定になります。1分間のうちにgain120で1ms、gain240で25msの撮影を4時間分240回繰り返しているだけです。

seqencer_TSA120

赤道儀の追尾レートは月時に合わせていますが、撮影中は月が画面の中でどんどん上に上がっていくので、適時ハンドコントローラーで月の位置を真ん中に移動しながらになります。全部で277ファイルが保存されていました。途中の天王星食などにはシーケンサーを止めて好きな設定で撮影していますので、連続撮影にはなっていませんが、保存された.serファイルからいくつか見栄えがいいものを画像処理をしました。

まずは皆既に入る前です。
ZWO ASI294MC Pro_25ms_240_2022_11_08_19_09_33__lapl5_ap2594_RS2
ターコイズフリンジが出てくるような画像処理としました。

次は皆既月食中で、天王星の食に入る少し前です。
ZWO ASI294MC Pro_50ms__2022_11_08_20_29_59__lapl5_ap689_IP
天王星が月の左側の真ん中ら辺に見えています。繋がって見えるのは動画で撮っていたからで、60秒間さつえいしたので、60秒で天王星が移動している分だけ繋がって見えているというわけです。

もう一つは皆既月食終了直後です。こちらもターコイズフリンジが見えるように処理しました。
ZWO ASI294MC Pro_25ms_340_2022_11_08_20_46_29__lapl2_ap1098_RS3


月時レートでも月が画角内を移動!?

今回使ったCelestronの赤道儀では、追尾レートを「恒星時」「太陽時」「月時」の3つから選べます。

実はリハーサル時に、「月時」に設定してしばらく追尾を試したんです。でも長時間追尾すると画面内で月が動いていくんですよね。極軸はそこそこきちんと合わせたつもりだったのですが、ずれていたのかと思い、再び極軸を合わせます。この時にまず大気収差の補正をするのを忘れていたことに気づきました。新しいPCを使ったので、設定し忘れていたのです。気を取り直して再度極軸合わせ。今度は大丈夫なはずです。でもでもやっぱり月は動いていってしまいます。見ていると、どうやら必ず上に向かうようです。

ここでじっくり考えました。そもそも月は28日かけて全天を一周します。ざっくり30日で360度とすると、1日12度もずれていくわけです。1時間あたり0.5度、月食の間の4時間では約2度もずれていきます。その一方、恒星は1年かけて360度全天を一周するので、ざっくり1日1度、1時間では約0.04度、4時間でも0.16度程度しか進みません。

この角速度の差は、月食観測中も恒星に対して月が移動していくことを示していて、しかもその動きは赤道儀の追尾の動きに対して水平に動くだけでなく、上下に動く成分もあることにやっと気づきました。地球に対する月の公転軌道は、地球の自転軸に対して水平ではないからです。ここにたどり着いてから、たとえ赤道儀の月時で月を追尾しても、画面内で上下に動いていくことにやっと納得できました。

でもそうすると大変です。上下に十分な余裕があれば別ですが、画角一杯に月を入れたい場合にはすぐに上下に逃げて行ってしまいます。それをマニュアルで適時上下に追い続けなければダメです。

これを回避するために、ガイド鏡を用いて、月をターゲットにして動かないようにすることも考えました。太陽撮影の時はこのようなガイドをすることがあります。でも今回は月食で、形が劇的に変わるような過程です。こちらもどうも難しそうで、本番一発で成功させるのは流石に自信がありません。

本当は月が画面内にピタッと動かずにずっと連続で撮影したかったのですが、それが無理だとわかったので、今回は「TSA-120は自由に好きなタイミングで撮影する機材とすると決めた」という経緯があります。

この考察は、この後の記事で書くつもりのFS60CBで画角を一切変えずに、太陽時で追っていくことにつながっていきます。


さらなる画像
 
TSA-120で撮影したものだけでも、まだまだ未処理の画像が大量にあります。特に、天王星食は別ページでまとめます。

またTSA-120で撮った画像の処理が進んだら、随時ここに追加していくかもしれません。


 
 
 
 
 
 
 
 


 

今回の記事は悪いことをしているので真似しないでください(笑)。

冗談はさておき、撮影の準備をどこまで短縮できるか考えてるのですが、最近大きな進歩があったので書いておきます。


赤道儀のセットアップ

私は普段は自宅での撮影なので、赤道儀が玄関に置いてあります。全部CelestronでAdanced VXとCGEM IIとCGX-Lと、3つあります。

97E8C9BD-8951-454B-9A68-774EBC1A07FA
  • AVXは軽いので、組み上がったまま、ウェイトも鏡筒もつけたまま(クランプは緩めて)運びます。ケーブルまで含めて組み上がっているので楽です。
  • CGEM IIは三脚と赤道儀をまとめて運びます。これで運べるギリギリの重さで、ウェイトや鏡筒が載っているととてもじゃないけど運べません。でもケーブルとかは赤道儀までは接続されているので、まだ楽です。
  • CGX-Lは赤道義単体だけでもすごく重いです。ウェイトバーはまだつけたまま運びますが、毎回三脚から切り離して運びます。三脚も上二つとは段違いにゴツくて、三脚単体で運ぶのだけでも大変です。固定するのはM10のキャップネジ3本なので、載せて固定するのに六角レンチが毎回いるのでちょっと面倒です。ケーブル類も当然毎回接続し直しです。

でも今日の話はこんなことではありません。この後の話です。

三脚、赤道義、ウェイト、鏡筒がそろった段階からは共通で、
  1. 赤道儀についている水準器を使って水平をとる。
  2. SharpCapで極軸を合わせる。
  3. 鏡筒をホームポジションに合わせる。
  4. 赤道儀の電源を入れる。
  5. ワンスターアラインメントで初期導入をする。
  6. ガイドカメラの映像をSharpCap上で大まかにあっていることを確認する。
  7. メイン鏡筒のカメラをSharpCapで見て中心に持っていく。
この中から二つの大きなステップを省きます。この二つはペアなので、片方だけやるとまずいかもしれません。思いついた順で時系列で書きます。


省ける操作1

まず一つは、赤道儀の自動導入は私の場合ワンスターアラインメントなのですが、鏡筒の移動が終わった後に星が視野に入ったことを何も確認しません。その代わりにSharpCapのプレートソルブでズレを確認し、赤道義側にフィードバックすることで自動導入の精度を担保します。プレートソルブで、目的の天体をほぼ視野(例えば焦点距離1300mmでセンサーはフォーサーズサイズくらいの視野でも)の真ん中に入れてくれます。

その際気をつけることは、Celestronのコントローラーの場合、ワンスターアラインメントで導入して、星が入っていない段階で、「Enter」ボタンと「Alignment」ボタンを押して、アラインメントを終了させておくことです。これができてないと、プレートソルブで赤道儀を返そうとするとエラーになります。あと当然ですが、赤道儀に誤差を返すためSharpCap上であらかじめ赤道儀に接続しておく必要があります。

これだけで時間にしてうまくいくと5分程度時間が短縮できます。


省ける操作2

最近思いついたもう一つの省ける点ですが、水準器で赤道儀の水平をとることをしません。私は長らく「赤道儀の水平をとることはものすごく重要で、ここをサボると精度が出ない」と主張してきました。基本的な考えは変わってませんが、そもそもなぜ赤道儀の水平をとる必要があるか、よく考えてみると疑問が出てきました。

通常の場合、水平出しの一番の目的は、初期アラインメントの時にきちんとガイド鏡もしくは主鏡の視野に天体が入っていくることです。でもこの条件は、既に上のようにプレートソルブに任せてしまったので、必須条件になっていません。

あともう少し条件があります。極軸が十分な精度でとれていることです。SharpCapだと極軸を1分角以下の精度で余裕で合わせることができるので、これくらいきちんと合わせてあれば、水平が合っているかどうかに関わらず、十分な追尾ができます。極端なことを言うと、極軸さえあって入れば、自動導入でもマニュアル導入でも、水平がとってあってもなくても、追尾精度は同じでですよね。自動導入があると便利というだけです。

あと水平が出ていないと、初期導入時の誤差が大きくなるので、繰り返しになりますが、プレートソルブは必須(少なくとも合った方が楽でしょう)です。極軸の精度が出ていない場合、プレートソルブがない場合は、真面目に水平をとった方がいいのはこれまでとなんら変わりはありません。

この水平出しを止めることでも、うまくいくと5分程度時間を短縮することができます。


実際の感想

5月末のこの季節、21時近くに天文薄明が終了します。大体20時半近くに、玄関からCGX-Lをえっちらおっちら運び始めて準備を始めます。トラブルがなければ実質30分以内に準備が済んで、21時には撮影を開始できます。準備の30分のうち、5分とか10分とか時間を短縮できるのは無視できないくらいの効果があり、精神的にもかなり楽です。

プレートソルブを使った初期アラインメントの簡略化はかなり前からやっていましたが、水平出しを無視するのは最近始めました。既に3度ほど撮影していますが、今のところ精度が落ちたようなことはありません。といっても、いつも同じような場所に置くので、実際にはものすごく水平からズレるということはあまりないです。水平を確認しないだけで、そこそこの水平度は出ているので、極端に大きくずれているというのは検証していませんが、まあ原理的には大丈夫なはずです。

あ、あと私は(極軸の精度は十分出しているので)ワンスターアラインメントしかしませんが、ツースターとかスリースターアラインメントをすると追尾中に赤緯も動かす可能性があるので、もしかしたら上の話は成り立たないかもしれません。


まとめ

とまあ、今回はやってはいけないことシリーズとなります(笑)。もし試す場合はくれぐれも自己責任でお願いします。これで精度が出なくて写真がうまく撮れなかったとか言われても、私は何の責任も取ることができません。


Twitterでおののきさんももやすがガイド鏡に言及されていて、タカsiさんが0.5秒ガイドに助けられているとコメント、更におののきさんがCGXが暴れることがある時に(速いガイドが)効果があると言っています。



私もCGX-Lでの赤経側で発振のように周期的に揺れが出る傾向があり、ガイド鏡のサンプリングレートを0.2秒にすると軽減したことがあります。



原因はある程度推測していたのですが、いまいち自信がなくそのときはブログ記事を一旦書いて、削除した覚えがあります。でもおののきさんも同じように、ガイドを速くしたら暴れを抑えられると書いているので、同じ現象かはわかりませんが、可能性の一つとして書いておこうと思います。


発振のメカニズム

今回の周期的に揺れが大きくなる現象が、推測する「発振」だとして話を進めると、制御の言葉で言う「位相遅れ」というのを理解しなくてはいけません。制御に詳しい方や、回路などに詳しい方はこの時点ですでにピンときているかもしれません。

まず何か揺れているもの、例えば振り子を考えてみましょう。紐にぶら下げた質量、何でもいいですがここではすぐ横にあるMacのバッテリーで代用しましょう(本来は振り子ではありません(笑)。もし同じように試す場合は目的外使用ですので自己責任でお願いします。)

ケーブルにつられたバッテリーは、持っている根本の揺れに依存して、常に揺れています。特に振り子の長さだけによって決まる共振周波数あたりでは、揺れは増幅され大きく揺れます。

A2E3BC2F-66C0-4808-9AC5-199C9549EEC6

その揺れを抑えるために、あるセンサー(ここでは「目」)を用いてその揺れを観測し、揺れを抑えるようにアクチュエーター(ここでは空いている方の手の「指」)を用いてバッテリー本体に力を加えます。バッテリーが大きく揺れている時、目でその揺れを見て、その揺れが収まるように指で突いて力を加えてやり、それを何度かすることで徐々に揺れの振幅を小さくすることが可能です。

7964D119-25B6-46D1-ACC2-82B50B0FEB25

力を加えるタイミングに注目してみましょう。揺れを抑えるためには、「振り子が指に迫ってくる」時に力を加えているはずです。もしこのタイミングが遅れて「振り子が指から離れていく」時に力を加えると、揺れは収まるどころかどんどん大きくなっていくはずです。これが「発振」です。


位相余裕と発振

もう少し考えます。この振り子の大きな共振周波数あたりでの揺れは、ある振幅と位相をもって揺れています。位相というのは1周期で360度となるような時間的なタイミングを表します。振り子が指から最も離れて、方向が反転する瞬間の位相を0度とします。振り子が指に迫ってきて、最も近づいて方向がさらに反転する瞬間が位相180度です。振り子の揺れを止めるためには、位相が180度になる手前で力を加える必要があります。位相が180度を超えて力を加えると「発振」するということです。この時の「180度になるどれくらい前」に力を加えているかというのを「位相余裕」と呼びます。通常位相余裕は数10度は欲しくて、0度に近づくほど発振に近くなります。

ここまでは共振周波数付近のみでの説明でしたが、実際は大きな揺れではないですが、振り子は共振周波数以上でも以下でも揺れています。常に速い細かい揺れがあるとかを想像してください。目でこの揺れを見るのは難しいかもしれませんが、それこそ望遠鏡などで拡大して見てやれば小さな揺れも見えますね。これらの速い揺れもやはり抑えてやりたいわけです。でも速い揺れに対しては反応も早くなくてはダメで、その反応が遅れると「位相余裕」がなくなっていきます。速い揺れに対して遅い力で抑えようとしても、反応が遅いために「位相余裕」がなくなり揺れが増幅される、これが「発振」です。


赤道儀のガイド制御ループでの遅延

さて、これらのことを今回の赤道儀の周期的な揺れに置き換えてみましょう。まず、センサーはガイド鏡のCMOSカメラで、対象はガイド鏡で見たガイド星の位置になります。アクチュエーターは赤道儀についているモーターです。位相を遅らせる原因はさまざまなものがあります。
  1. まず、カメラで星を見てPCに取り込むまでに時間がかかります。時間の遅延になるので位相余裕を食います。
  2. カメラの画像から星の位置を計算をするのに時間がかかります。ここでも位相余裕を食います。
  3. その位置をもとに、どうフィードバックフィルターを設計して赤道儀に返すか(PHD2のパラメータ調整に相当)ですが、フィルターの設定度合いによって遅延が起きます。
  4. モーターは信号が来て初めて動くので、そこでも当然遅延が発生します。
  5. モーターが動いても、実際の赤道儀が反応するまでには有限の時間が必要なので、ここでも遅延が発生します。
これら遅延の全てが位相を食っていき、位相余裕が0度より多く残っていれば発進を防ぐことができ、揺れを抑えるという制御は成立します。


では何が原因か?

こうやってみると遅延だらけですが、この中で今回重要なのは、センサーから星の位置を特定するまでの遅延と、赤道儀のメカ的な遅延です。

まず、PHD2でのガイドのタイミングを0.5秒とか、0.2秒とか速くしたということは、カメラからの読み取りのサンプリングレート速くし、情報を速く取り入れるということに相当します。遅延が少なくなるので、位相余裕が食われにくくなります。

ではなぜCGXやCGX-L特有で揺れが問題になるのか?一つは大きくて重い赤道儀だからというのがあると思います。赤緯体よりは赤経体の方が(赤緯体自身も含むので)重いはずです。揺れなので慣性モーメントで議論すべきですが、当然赤経体の慣性モーメントも大きいです。慣性モーメントが大きいということは、外力に対して反応が遅いということを意味しているため、ガイド信号に対する応答も遅く、遅延の原因になり、位相余裕を食います。その他にCGXやCGX-L特有でメカ的に何かロスなどがあり、遅延を発生しているという可能性もあるかもしれません。

いずれにせよ、大きく重い赤道儀を駆動する場合、発振は起きやすいということは定性的にはそれほど間違ってはいないでしょう。


解決策の例

では解決策はというと、
  1. 応答を速くすることができる場所でできるだけ速くする。今回はカメラの取り込みのレートを、1秒とかから0.5秒や0.2秒と、2倍から5倍くらい速くしたこと。
  2. もう一つは、制御全体のゲインを下げることです。これはPHD2の「Agressiveness」を下げるとかでしょうか?結局トータルのゲインは赤道儀自身の応答(周波数で測った伝達関数)を含むので、PHD2の一つのパラメータだけで調整できるものでもありません。いずれにせよ、制御が効いている周波数帯域で位相余裕が残っていればいいわけですから、制御帯域を狭め位相余裕が残っている遅い周波数帯だけで制御するというセンスです
こう考えると、CGXやCGX-Lは高周波の応答が悪い何らかの理由があるのではという推測も出てきます。

とまあ、対処療法的にはいくつか解決策も考えることができるので、他にもアイデアがあれば試していきたいと思います。ただし、あくまでこの揺れが「発振」によるものだとしてですが。


少し冷静に、発振でない可能性も

あと、ここまで書いたことは古典制御の範囲で「線形性」を仮定しています。モーターを使った制御の場合は線形性は保証されません。モーター制御の話は詳しくないので、もしかしたら全然勘違いしたことを書いている可能性もあります。その場合はゴメンなさい。

今回議論した、「制御の位相余裕がないことによる発振」ではない可能性としては、何か周期的な機械的な歪みがあることが考えられますが、調べてみるとCGX-Lによくある現象の様です。系統的に何かCGX、CGX-Lにメカ的に問題がある可能性はありますが、状況によって大きく変わるというのはメカものというよりは、制御系と考えた方がスッキリします。


まとめ

制御についてこのブログで扱ったことは今回が初めてかと思います。

ガイド制御ループの位相遅れが原因の、位相余裕の無さによる発振と考えるとかなりすっきりすると思いますが、まだ他のCGX系特有の別の理由の可能性もあり得ます。私のところでもすでに何度か再現していて、そこそこ再現性はありそうなので、もう少しじっくり見ていきたいと思います。

今回の話は古典制御のさわりみたいなものですが、理解しておくと望遠鏡にも色々役立つことは多いと思います。もし興味がある人がたくさんいるなろ、Zoomとかで勉強会を開くとかもいいのかもしれません。結構マニアックな話になると思いますが、そんな人いますかね?



 

 



CGEM IIの限界

SCA260を耐荷重ギリギリのCGEM IIに載せた時の振動問題。いろいろ対策はしてきましたが、この間ちょっと小さめのM100を撮影してみると、どうしても揺れが目立ってしまい、やはり限界を感じてきました。M100の画像処理はまた別記事にするとして、これまで作例として出してきたM33馬頭星雲など、ある程度画面いっぱいに広がるものは多少のごまかしが効きます。でもNGC253とか、もっと小さな銀河を目指そうとすると1分露光くらいが限界で、それ以上ではどうしても揺れが目立ってきてしまいます。


サイトロン本社にて

今後の長期的なことも考えて、もっと頑丈な赤道儀、例えばEQ8を念頭に色々考えていました。そんな折、CP+の収録でサイトロン本社に立ち寄る機会があって、昨年購入させて頂いたSCA260の結果共々、振動のこととを話していると「EQ8でいいのがありますよ」という話になったわけです。実際に展示してあったEQ8Rを触らせてもらいましたが、ちょうどSCA260が搭載されていて、触ってみても揺れそうな気配が全然なく、もう羨ましい限りでした。でも内情はというとサイトロン訪問の数日前に雪道で車で事故を起こしてしまい、車を買い替えなくてはならなくなり、妻からは「しばらく天文機材禁止」とのお達しが出てしまっていたのです。なのでEQ8などしばらくは夢のまた夢です。

そんな恥ずかしい話をしていると「CGX-Lはどうですか?」という話になりました。皆さんご存知の通り、サイトロンは長い間セレストロンの代理店でした。その当時の展示品の一つか何かで、以前から故障していて使えるかどうかもわからないものだそうです。ジャンクとして自分で直して使うのなら格安で譲ってくれるというのです。

少しだけ動かしてもらうと、何やらエラーは出ていますが、モーターは一応回転します。エラーをスキップして初期アラインメントを試しても何か動きはします。聞くと「エンコーダーを交換したり色々やってみたが、それでも直らないのでもう使う予定はない」とのこと。「物としては大きく場所もとっているので、もし自分で直してみる気があるなら...」ということなので、速攻で「やってみます」と返事をしました。そもそも、自作で大型のイギリス型の赤道儀でも作るしかないかと思っていたくらいです。動けばラッキー、ダメでも基本構造はそのまま使えるでしょうという目論見です。


どデカい箱が到着!

その後何度かやりとりをし、保証も修理もサポートもできないけれどという約束で、本当に格安で送ってもらうことになり、待つこと数週間。3月26日の土曜日の朝、とうとう自宅に届きました。配送のお兄ちゃんは力もありそうでしたが、それでも流石に大変そうなくらい大きな段ボール箱なので、一緒に手伝いながら家の中へ運びます。大きな箱が2つと、小さくて重い箱がひとつ。赤道儀、三脚、ウェイトでしょうか。

94F0B160-97DA-404C-BE7E-B54BD68D951A

靴と一緒に撮りましたが、そのとんでもない大きさがわかるかと思います。

一番大きな箱から開けてみます。
A28A9022-A5DA-4ABC-B4F3-CED52C5C1FF0
どうやら三脚のようです。それにしてもでかい。これまでのAVXやCGEM IIのものと違い、内側に開き具合を制限するフレームが付いているのと、3本の脚をまとめるベルトのようなものが付いています。

広げて玄関に置いてみます。
58CE54E7-C0C1-4F3C-BB05-1193D187B72C
脚の太さは5cmから7cmに変わっただけとのことですが、とてつもなくゴツく見えます。

もう一つの大きな箱の赤道儀も出してみます。
10540A8C-947C-445C-BF05-07A266A6D1A2
テーブルの上に置いてみましたが、隣のMacBook Proと比べてもその大きさがわかるかと思います。ただ、持ち運びに関しては取っ手が上下についていてバランスよくしっかりつかむことができるので、実際の重さと比べても幾分楽になります。また、このようにテーブルの上にまっすぐ置くことができるのもありがたくて、メンテナンスが楽になります。普通は赤道儀の下は平ではなく、メンテナンスで稼働させようとすると結局三脚の上に乗せる必要があったりします。

6581C0FF-F44F-4BC8-A415-ACC49C02DA85

細かく工夫されているのは、水平調整のネジの先端が丸くなっていることでしょうか。
F8E16538-C97C-4BFD-8D29-D1777695797B
CGEMIIの水平調整ネジも先端はある程度加工していますが平な部分がわかります。一方、CGX-Lのほうは完全に球面になっています。

三脚と赤道儀を取り出した空箱ですが、うまく入れ込むと赤道儀の大きな箱と中身、ウェイトの小さい箱がちょうど丸々三脚の箱の中に入ります。赤道儀の二重箱の外側の箱は入らないので畳んで上に置くなどする必要がありますが、かなりコンパクトになります。

3C0119B8-99F1-497B-9CED-37DEF802B467
と言っても、一つでもまだ大きいことには違いありません。

さて、赤道儀を実際に三脚に載せてみます。赤道儀の固定は横三方向から付属のM8ネジで止めることになります。その際、手で回すだけではガタついてしまうので、毎回六角レンチで締める必要があり、ちょっと手間です。
97E8C9BD-8951-454B-9A68-774EBC1A07FA
こうやって3台並べると、今回のCGX-Lがあからさまに大きいことがよく分かります。3台同じメーカーで並べると壮観で、さながら展示場みたいでしょうか(笑)。その後、まだ繋がっていないハンドコントローラーと、電源ケーブルを電源と繋ぎ、動作確認となります。


動作チェック

ここからは賭けになります。動けば以前のPSTジャンクみたいに超ラッキー、動かなければ大きな置き物にもなり兼ねません。

まず電源を入れると、早速エラーメッセージが。写真はDecですが、何度か試すと、RAの時もあります。
951A9801-C64B-42D3-B978-353AD354AC8E

これをそのまま進めると、DECの回転が始まり、矢印ボタンで止めたりしない限り、ずーっと動き続けます。RAの時も同様で、何かしない限りは止まりません。どうもこの機能、電源を入れたら自動的にホームポジションに移動するという、CGX以上で搭載されている目玉の機能のようです。この機能があるために、赤経も赤緯も初期位置を示す三角マークとかが見当たりません。自動でホームポジション状態になるので、そのようなマークは必要ないということみたいです。

とりあえずBackボタンでスキップできるようなので、何度かBackボタンとEnterを押して次に進みます。するとCGEM IIの初期画面と同じになります。ここからさらに進め、(昼間の確認なのでまだ確実ではないですが)ベテルギウスで初期アラインメントを取ってみると、どうやらそれらしい方向を向くようです。その後、耳を澄ますとジーッという音がしているので、追尾も一応動いているようです。

この時点でエラーが出るのはエンコーダに問題があるのではと推測しました。そこで、Stellariumで赤道儀と接続して信号がどう出ているのかチェックしてみることに。初期アラインメントで赤道儀はすでにベテルギウスらしい方向を向いています。この状態でStellariumを赤道儀に接続すると、なんとStellarium上では既にベテルギウスにいると指し示しているではないですか!これは明らかにエンコーダーは生きていることを示しています。ここから考えるに、どうもエンコーダの故障とかではなく、CGX以上では初期位置確認のセンサーが独立にあって、今回はこれがなんらかの理由で働いていないようです。

言い換えると、エンコーダも動いているので、最初のホームポジションへ行くのさえ手動でやってしまえば、あとはガイドやプレートソルブさえも動くかもしれません!


トラブルシューティングの一例

ここで一旦動作確認を終えて、電源を入れ直しエラーについてもう少し把握することにします。まず、ハンディーコントローラーに問題がないか試します。

同じメーカーの機器を使い続けることの利点の一つが、共通の部品を使えることです。今回は、コントローラーが計3つあるので、CGEM IIのものとAdvanced VXのものに順に交換してみました。コントローラーによってはなぜか赤緯モーターが回らないことがありましたが、エラーメッセージはどのコントローラーでも出るので、コントローラーが原因とは考えにくく、CGX-L本体からエラーが発生している可能性が高いという結論を出すことができます。

何度か電源を入れると、たまにCGX-Lと認識されずに、機種がわからないか、オリジナルのGTとして認識されることがありました。この時はCGX-Lのバージョンなども不明と出てしまうようです。これは電源を入れ直すことでCGX-Lと認識されたのと、頻発するようではないので、まあ放っておくことにしました。

さて、こういった時のトラブルの際の解決方法の例ですが、まずは表示を日本語から英語にします。出てきたエラーメッセージをGoogleなどで検索すると、日本語のページでは引っかかりませんでしたが、海外には同じような状況になっている人が何人かいるようです。その中で、Cloudy Nightsにドライバーのアップデートで解決したというのがまず見つかりました。そのため、CelestronのFirmware Managerを使いハンドコントローラーとCGX-Lのドライバーを最新のものにアップデートします。

3B3DD55F-BA9B-47EA-A13C-AB8D88996229
この時少し失敗して、もともとどのバージョンが入っていたか確認するのを忘れてしまいましたが、とにかく繋がっている機器(今回の場合はハンドコントローラーとCGX-L)のファームを最新のものに置き換えてくれるようです。アップデートが終わると、更新された様子が表示されます。
5D66B512-D414-494C-AE9B-9C1D52888454
ただしこれ、ハンドコントローラーで確認すると違う数字が出るのですが、まあ気にしないでおきましょう。
D38FBA48-AFE6-4D90-9451-4CC75168F955

少なくともFirmware Managerで出てきたバージョンはCloudy Nightsで示されたものより新しいので、大丈夫でしょう。

さてこれで再度電源を入れ直します。結果はというと、やはりまだ同じエラーメッセージが出ます。念のため工場設定に初期化することなどもやってみましたが、それでもダメです。

どうもファームのせいではなさそうと判断し、もう少し探ります。すると、ケーブルが抜けているのが原因だったという投稿がCloudy Nightsに見つかりました。構造的にケーブルがねじれて抜けるか切れるかする可能性があるとのことです。さらにそのリンク先を辿っていくと、CGXの全バラ写真が大量に投稿されているページに行き着きます。CGXとCGX-Lは三脚の違いが主なので、このページはかなり助かります。

どうやら一部分解してケーブルのチェックをすることで何とかなりそうな目処がついてきました。実際の分解は次回時間がある時にやるとして、この時点で天気が良さそうなので外に出して実際に設置してみて、できれば撮影まで試してみることにしました。


外に出してみる

まず移動ですが、少なくともCGEM IIのように赤道儀と三脚を一度に運ぶことは到底できません。重さもそうですが、大きすぎて赤道儀があると三脚を掴むところまで手が届きません。運ぶときは3つのネジを六角レンチで緩めて一旦外し、別々に運んでまた組み上げてネジを締める必要があります。両手で持てる2つの取っ手がついていることと、赤道儀の下面が平らなので、そこら辺に置くことができるので、運搬に関しては思ったより苦にはなりません。

その上にSCA260を載せてみました。これまでのCGEM IIよりもかなり位置が高くなるのですが、鏡筒にも取っ手をつけているのと、同時に下側のアルミプレートの先端を持つと斜めに傾けながら持ち上げることができるので、そこまで無理することなく赤道儀に取り付けることができます。標準で10kgのウェイトが付属しているのですが、かなり端の方に固定するとこのウェイト一つでバランスを取ることができました。また、鏡筒を載せた状態で脚の一本を持ち上げ、水平を撮るために脚を伸ばしたりすることもできました。とりあえず、思ったより持ち運びと設置は大変ではなく、遠征に持って行くのも無理ではないなとの感想です。

263774C7-C69F-4C5E-A8F6-7ED6A85F6AA4

SCA260を乗せた後に、実際に突っついて揺らしてみました。明らかに揺れが小さいです。全く揺れないわけではないのですが、共振周波数が高くて揺れがすぐに収束します。もしうまく動いてくれるならですが、これは期待できそうです


極軸調整

暗くなってきたので、次はガイド鏡を取り付けてのSharpCapでの極軸調整です。ほとんどの過程は問題なかったのですが、最後に固定ネジを締めると角度がずれてしまうことがわかりました。垂直は2つのネジを手で締めて固定、水平は4つのネジを六角レンチで締めて固定します。この時、最後の最後のキュっと締めるときにどうしてもずれてしまいます。そのため、そこそこ極軸が合ってきたらある程度ネジを締めてしまい、最後はあまりきつく締めすぎないようにそこそこ固定することで、ズレを抑えて極軸を合った状態に保ちました。


実際に天体を入れてみる

その後、あらかじめ赤経赤緯ともにホームポジション付近に固定してから、赤道儀の電源を入れます。昼間に試したようにポジションエラーをスキップして、あとはこれまでのCGEM IIと同様にワンスターアラインメントでベテルギウスを導入、自動追尾といきます。少なくともみている限り特に問題はないようです!

ハンドコントローラーのUSB端子とPCを接続して、SharpCapでプレートソルブも試しましたが、全く問題なく赤道儀に信号を返して位置補正までしてくれました!

また、PHD2を使ってオートガイドも試してみました。ここで一つ問題発覚です。どうも赤経方向に周期的に揺れが出ます。
93190212-31D4-47AB-8763-22C2BCBA1114
上の写真のグラフの横軸は全部で400秒ですが、左から真ん中にかけてに10秒くらいの周期で大きな揺れが出ているのがわかると思います。(追記: その後調べましたが、CGXでちょくちょくこの現象出てくるようです。赤経のみで赤緯での報告は見つかりませんでした。なにか根本的に理由があるのかもしれません。)その結果として、右の同心円グラフでみても横方向に大きな幅が出ているのがわかります。その時の撮影画像が下になりますが、やはり一方向に伸びているのがわかります。この方向は赤経方向に一致します。

_2022_03_27_20_56_00_NGC_2237_LIGHT__10_00C_600_00s_G150

ここで露光時間を1秒から0.2秒することで周期的な揺れを抑えることができました。上のPHD2の画面の途中で変えたので、グラフの半分くらいから右側で周期的な揺れが減った様子がわかるかと思います。

その後、いくつか設定を変えて続けてみたのが下の写真になります。露光時間以外もいじっているのがわかるかと思います。
E311AB18-0B34-43E1-AE89-B4BF8A78A20A
結果として、同心円でみても縦横のバランスが取れた状態になったことがわかります。


フルサイズでの四隅の状態

その後カメラにフルサイズセンサーの借り物のASI2400MCを使い、バラ星雲を導入し撮影まで試してみました。揺れの影響を見るために、3分、5分、10分と撮影しました。

3分露光。
_2022_03_27_21_23_35_NGC_2237_LIGHT__9_90C_180_00s_G150

5分露光。
_2022_03_27_21_31_48_NGC_2237_LIGHT__9_90C_300_00s_G150

10分露光。
_2022_03_27_21_47_18_NGC_2237_LIGHT__10_10C_600_00s_G150

なんと、驚くことに10分でも4隅までほぼ真円を保っています。思わずヤッターと叫んでしまいました。これはもう十分すぎるほど満足な結果です。これまでの苦労が何だったのかというくらいです。でもだんだん改善されていく様子はものすごく楽しかったですし、またこれまでの苦労があったからこそ、このありがたみが実感できるのかと思います。

もう少し見てみます。3分と10分を比べると、3分の方が星像が鋭いこともわかります。これはシンチレーションなども合わせた揺れが積分されたため、長い時間の露光の方が大きくなってしまったのかと思われます。


いよいよオフアキを本格稼働か

その後、もう一つ気づいたことがありました。上で喜んだ後、三つ子銀河を導入し、実際に長時間撮影を試み何枚か撮影していると、途中から複数枚にまたがって斜めに大きく流れはじめたことに気づきました。

_2022_03_27_23_25_02_M_66_LIGHT_10_00C_600_00s_G150
_2022_03_27_23_25_02_M_66_LIGHT__10_00C_600_00s_G150_mosaic

このフレームの少し前に子午線を越えてしまっていて、それが原因なのかわかりませんが、PHD2で見ても流れていないので、何らかのたわみが発生し始めたのかと思います。赤道儀を反転したらこの流れは無くなりました。今のところはっきりとした原因は不明ですが、もしたわみだとしたらいよいよオフアキの出番となります。


今後

とりあえず今回はここまで。初期ホームポジションの移動以外はすでに実用的にも問題なく、十分振動が抑えられてかなり満足なのですが、やはりきっちり直したいので、次は分解してエラーメッセージが出なくなるか試してみます。








今回は、Mちゃん自宅に来るシリーズの第3段です。




4月27日の日曜の朝、曇ってはいるものの、予報では夕方くらいから晴れるみたいなので、Mちゃんに声をかけました。実は土曜も誘ったのですが、どこかの天文台でオンラインの講義があるとかで忙しいみたいでした。じゃあ次は連休中でいいかと思ってたのですが、MILTOLを試すのなら月が見える方がいいと思い、まだ満月前なので昨日の今日ですが声をかけてみました。電話口で既にMちゃんの喜んでいる声が聞こえてきましたが、午後からお母様が用事があるとのことで、昼頃に自宅に来て、今回はなんとMちゃん一人で夜まで居ることになりました。さて、どうなることやら。


到着

13時過ぎ、お母さんとやってきたMちゃん。まず最初に手渡されたのが、大きなロールケーキでした。手ぶらできてくださいと伝えてはあるのですが、気を使ってくれたのでしょう。Mちゃんのおうちはケーキ屋さんで、聞いたらなんとお母さんの方がお店をやっているとのこと。そういえばお父さんは建築関係と言っていたことを思い出しました。実は私、甘いものには目がなく、後でみんなで食べたのですが、フルーツたっぷりの、それはそれは美味しいロールケーキでした。

次に出てきたのは、アイピースやMILTOLのケースとともに、赤道儀が入った大きな箱でした。車のトランクに積むようなケースで、三脚も入っているとのこと。荷物だけ運んだら、全然気兼ねない様子でお母さんにバイバーイとしていたので、一人でいても全く大丈夫そうでした。

今日やりたいことは、
  1. 何か質問があるというのでそれを考えること
  2. MILTOLの改造
  3. 赤道儀を使いこなすこと
  4. 時間があれば天リフの中継を見ること
です。


課題の確認

まず最初にやったことは昨日聞いていたというオンラインの講義の課題でした。小学生向けにしてはえらい難しいなと思いましたが、ほとんど出来ています。「考えてみたけど、どうしても迷ったところがある」というので聞いてみたのですが、それも十分きちんと考えていて、特に何も言うことがないくらいでした。まだ途中でやっていないところもあったのですが、まずは自分でやるとのこと。とてもいい心がけだと思います。「また分からないことがあったら、次回聞く」とのことでした。


MILTOL改造

次はMILTOLの改造の続きです。

ファインダー:
聞いてみると、何回か自分で使ってみたようです。多分科学博物館での観望会でしょう、ファインダーは県天のKさん(家の前の人)につけてもらったみたいで、塩ビ管をうまく加工して、台座をつけてくれてました。そこにポルタのファインダーを付ければいいみたいで、十分かと思います。


カメラ接続:
今回はカメラへのアダプターをZWOのものからAmazonで見つけたノーブランドのT2-31.7mmアイピース変換のものにしました。



SVBONYでも同様のものがありましたが、こちらの方が安かったです。これまではT2ネジでASI224MCを固定していましたが、これでカメラの先にアイピース と同じ径のノーズを付けることができます。そうすると、将来アメリカンサイズのQBPとかを取り付けることができるようになります。でもアメリカンサイズのQBPでも小学生にとっては非常に高価なものになります。「サンタさんを信じて待とう」ということになりました。


アリガタ固定:
アリガタとのMILTOLの固定ネジは一本のままだったので、今回2本固定にするように改造します。どうもお父さんがネジで固定しようとしてくれたみたいでしたが、そもそもMILTOLのネジ穴がインチ規格です。インチのキャップネジを渡しておいたのですが、そもそもインチ規格の六角レンチがなかったようで、マイナスドライバーで締めることができるネジに代わっていました。聞いたら、お父さんネジの入手もかなり苦労していたみたいです。建築関係とのことなので、ネジは詳しいとのことですが、インチ規格は結構大変です。なので今回のもう一つの穴はM6ネジにします。

この日にやったことは、MILTOLの台座の既存の穴にM6のタップを切ること、そこのネジ穴に合わせるように、前回取り付けたアリガタに穴を開けることです。

まず、MILTOL台座の穴の位置に合わせて、アリガタの真ん中らへんの穴を開けたい位置に、マーキングと、センターポンチで位置決めをします。当然、Mちゃんに全部やってもらいます。マーキングは最初定規でやってもらいましたが、いい機会なのでノギスを使ってもらいました。ネジの径とかも測るので、ノギスで精度よく測る方法を学んでもらいました。ドリル穴の実際の位置決めのセンターポンチはバネ式のバチンとかやって打つやつで、しかも小学生の女の子の力だと結構大変そうで、頭を近づけたところで大きな音とともに跳ね返ってきたので、かなりびっくりしてました。ドリルでの穴あけは前回もやってもらったのでいいのですが、最初細いドリルで、段階を追ってM6まで開けてもらいました。太いドリルになるとちょっと怖そうにしてましたが、回転数を落とし、持ち方をしっかりしてもらうことで、基本全部自分で空けてもらいました。

MILTOLの台座の方は、タップ切りです。こちらもM5の下穴を開けて(これはバイスに固定できなかったので、私が手持ちで空けました)、そこにM6のタップでねじ山を切ります。最初大変そうなので私がやろうと思ってたら「やりたい」と言い出すので、どうぞどうぞと渡しました。垂直に立ててやるのはほぼ問題なし。タップを回すのが固いので少し躊躇してましたが「たまに戻しながらやるんだよ」というので、徐々に進んでいき、無事に下まで貫通しスルスル回るようになりました。戻すときに引っ掛けないように気をつけながらタップを外し、ネジがきちんと嵌ることを確認します。

IMG_2337
あまり写真を撮ってなかったのですが、
これはその中の数少ない一枚で、タップ切りの最中のものです。
塩ビ菅と、ファインダーの台座も少し見えますね。 

これで準備完了。アリガタをMILTOLの台座に、一つは1/4インチネジ、もう一つはM6ネジで固定します。最初の寸法採りが良かったのでしょう。特に修正することもなく、うまく取り付けることができました!


休憩

ここで一旦休憩。お腹が空いたみたいで、持ってきたお弁当を広げてます。宙のまにまにを持ってきたら、お弁当を食べながら夢中になって読んでました。宙のまにまには、天文ファンならご存知の方も多いと思います。高校の天文部の話で、基本ラブコメなのですが、星ネタが満載で、その中で使われた望遠鏡のモデルと言われているPENTAX75SDHFは一時期本気で欲しいと思っていました。

Mちゃんは、一度入り込むとほとんど周りの声が聞こえないみたいで、私もその間に自分のことをやってました。お弁当もそこそこに、1巻を読み終えたので「返してくれるなら持って帰っていいよ」と言っておいたのですが、コミックは鬼滅の刃全巻以降買わないとの約束があるらしいです。迷ってたみたいですが、判断は任せました。

私もお腹が空いてきて、カップ焼きそばを平らげてしまいました。


赤道儀

この時点でもう16時過ぎくらいでしょうか。次にやったことが赤道儀の動作確認です。赤道儀をプラスチックケースの中から出して、玄関で組み立ててみます。

まずは先ほどのMILTOLを赤道儀に取り付けてみます。ところがここで問題発生。赤道儀自身はVixenのSPなのですが、そこにアリガタを取り付けられるように、Vixenで売っているアリミゾを取り付けてあります。でも今回のアリガタが少し幅が狭かったようで、そのアリミゾについているネジが短すぎて届かず、固定できません。仕方ないのでM8の長めのキャップネジに付け替え、ついでに落下防止のねじ穴にM6のキャップネジをさしておきました。アリガタに切り欠きが入ってないので落下防止にはならないですが、普通のキャップネジを手で締めることになるので、もう一本ネジがあれば多少補助にはなるでしょう。

次に困ったのが、ウェイトでした。落下防止ネジがついてないのです。とりあえず手持ちの大きめのワッシャーとM8ネジで、簡易的な落下防止リングを作ることにしました。というのは、ワッシャーの穴がM6用でM8ネジが通らなかったので、穴を広げる加工が必要だったからです。はめてみると、手持ちのM8ネジだったので少し長くて取り付けが面倒とかありましたが、少なくともウェイトのネジが緩んでていても最後で止まって、落ちるようなことは無くなりました。

電池ボックスと、コントローラーをケーブルでモーターに繋げて動作確認をします。コントローラーのボタンを押すと、モーターシャフトは回っているので大丈夫そうです。が、そもそもモーターがー回っていても赤道儀が動いているかどうか分からなかったみたいです。そう、赤道儀はギヤ比がものすごく大きいので、本当に動いているかどうか分からないんですよね。まず、モーターをx32の高速回転をさせて、メモリ環のところをじっとみててもらい、やっと動いていることを確認してもらいました。次に等倍にして、カチカチ音が鳴っていることで、きちんと動いていることを実感してももらいました。


極軸の精度について

さて、この時点で18時前くらい。ここで空を見てみますが、まだまだ雲が厚く月は見えそうにもありません。ちょっと時間があるので、今回もう一つ理解して欲しかった、極軸についてです。

まず、赤緯については赤道儀に目盛りがついているので、富山なら36度から37度に合わせます。次に北向きですが、これをどう合わせればいいかあまりわかっていないみたいでした。方位磁針の磁北が、天の真北とずれるということは知っていました。調べてみると7度ほど「も」ずれていることが分かりました。7度が大きなズレということは実感しているみたいです。

ちなみに、iPhoneのコンパスは、表示を「磁北」か、補正した「真北」かを選べるので楽ですね。

基本的には北極星の位置に合わせればいいのですが、これも40分角くらいのズレがあるそうです。じゃあ、この40分のずれって、どれくらいのものなのでしょうか?これを理解してもらいたいのです。

基本は以前記事にも書いた

の話なのですが、これを小学生にもわかるように噛み砕きます。

  • まずは基本、もし赤道儀の赤経体の回転軸の向きが、極軸から1度上にずれていたら?
東の空を見たときに、星が進む方向に比べて、望遠鏡の視野は時間が経つと南側にずれていきます。これを天球を想像しながら手で指し示して理解してもらいます。なので、実際に望遠鏡をのぞいていると、星は左(北方向)にずれていきますね。

  • 次に、もし赤道儀の赤経体の回転軸の向きが、極軸から1度右(東方向)にずれていたら?
南の空を見たときに、星が進む方向に比べて、望遠鏡の視野は時間が経つと下(地上方向)側にずれていきます。これも天球を想像しながら手で指し示して理解してもらいます。実際に望遠鏡をのぞいていると、星は上にずれていきますね。

ここまではよく理解できたようでした。次はMちゃんへのクイズです。

  • もし赤道儀の赤経体の回転軸の向きが、極軸から1度東にずれていたら、東の空を見たときに、星が進む方向に比べて、望遠鏡の視野は時間が経つとどの方向にずれていくか?

これはひっかけ問題みたいで、なかなか難しいです。Mちゃん、しばらくの間ものすごく考えているみたいでした。でも結局超えたにはたどりつかづ「星と視野の動きは平行になるので動かない」と説明すると、なるほどと納得したようでした。やはりきちんと考えようと色々頭を使うと、答えを聞いたときもきちんと納得できるようです。


ずれを定量的に見積もって実感してみよう

少なくとも、極軸がある方向にずれると、視野から星がある方向にずれていくということは定性的には理解できたみたいです。じゃあ、実際どれくらいの極軸のずれで、どれくらい星が逃げていくのかという定量的な理解をして欲しいのです。

とりあえず、赤経体の軸が極軸から北に1度ずれているとしましょう。そうすると、実際の星と視野が1度の角度を持ってずれていくということはすぐに理解できました。1時間に星は15度進むということも当然知っていました。なので、半径15度で内角1度の扇型の弧の長さを求めればいいということはすぐに思いついたようです。とても勘のいい子です。

円周の長さを求めるのは学校で習ったはず。円をたどると1回転で360度ということも知っている。なのですぐに計算を始め出しました。でも半径なのに15「度」というのがややこしかったようです。「じゃあ、度じゃなくてm(メートル)」にしてしまったら?」というと、またすぐに計算が進み出し、答えが0.26メートルと出ました。今、メートルには意味はなく、度にすればいいので、答えは0.26度です。

IMG_2340


でもこの0.26度という大きさ自体の価値がよくわかりません。なので、今度はポルタで見ている視野角を求めてもらいました。ポルタの焦点距離は910mmです。面倒なので1000mmとしてしましましょう。ここに焦点距離10mmのアイピースをつけます。倍率は100倍です。この視野角はMちゃんも普段よくポルタを見ているので感覚的にわかります。

倍率が100倍というのを視野角に置き換えます。人間の目が顔の前面、すなわち180度を見ていると仮定します。倍率2倍はそれの半分、90度を見ることができます。倍率10倍は18度を見ることができます。ということは100倍というのは1.8度を見ることができると考えます。

面倒なので先の0.26度を0.25度、1.8度を1.75度として計算してみましょう。極軸1度のズレで、1.75度の視野に見える星が、1時間経つと0.25度ずれるので、0.25/1.75 = 1/7と、視野の7分の1ずれることになります。例えば極軸から5度ずれていたらそれの5倍なので、1時間で視野の7分の5がずれていき、最初に見ていた星のほとんどは逃げてしまいます。

ではここでさらに、赤道儀でなく経緯台で考えてみます。視野は1.75度と同じとして、経緯台でみた時は追いかけることも何もしないので、星のずれは天球の動きと同じ1時間で15度です。この時どれくらいの速さで星が視野から逃げていくかという問題です。1.75度は面倒なのでもう1.5度としてしまいましょう。すると、1.5/15=0.1時間、すなわち6分間で視野の端にあった星が反対側の視野にきてしまいます。経緯台をずっと使ってきたMちゃんにとってもこの「6分で視野から逃げていく」という計算結果は実感としてかなり納得だったみたいです。

途中、みんなでケーキを食べました。「自宅がケーキ屋さんだと食べ放題でいいね」とか、好き勝手なことを言ってましたが、太るので普段はほとんど食べないそうです。6年生だともうお年頃ですね。うちの家族は「おいしいおいしい」と言って、パクパク食べてました。楽しいひと時です。

さて結論としては、赤道儀の極軸合わせの精度は5度くらいずれても経緯台よりははるかに逃げていかないことがわかったので「赤道儀は北極星のある方向に適当にどんとおいてやればいいでしょう」ということになります。撮影をしない限り、眼視や電視観望ではこれで十分だと思います。

と、ここらへんの計算をかなり実感してもらって、今回わかったことを自分でノートにまとめてもらいました。私はその間に、天リフ中継を見る準備です。


天リフ中継

20時ちょうど、まだMちゃんはノートをまとめていたみたいですが、時間なので「始まるよー」と呼んで、しばらく出演者の写真を見ることに。Youtubeの映像を50インチのテレビに映し出して大画面で見ます。かずーさんの山の頂上へ登っていく光の列を見てMちゃんが「きれーい!」と感嘆の声をあげていました。

どうも写真も撮ってみたいようで、カメラのことを少し話しました。カメラは1台X5が余っているので、またそのうち貸してあげようと思います。しばらく中継を見ていたのですが、20時半過ぎくらいでしょうか、外を見ると雲が少なくなってきて少し月が出始めています。


月を見てみる

次の日は月曜で学校なので、あまり遅くなるのもよくありません。天リフの中継は後でも見えるからと、ぱっとここで切り替えて、せっかくなのでセットアップした赤道儀を試すことにしました。外に出た直後はまだ月に雲がかかって淡くしか見えてませんでした。時間もないのでCMOSカメラではなく、MILTOLにアイピースをつけての月の観望です。

まずは今回学んだように赤道儀を北向きにどんと置きます。次にクランプを緩めてある程度MILTOLを月の方向に向けます。今回はファインダーもついているので導入は比較的簡単です。モーターがきちんと回転することも確かめて、微調整をコントローラーで行います。途中「片方動かない!」とか叫んでましたが、ケーブルの差込みが不十分なだけでした。ここらへんもきちんと自分でチェックできるみたいです。

月が視野に入って、アイピースで見たときの一言目が「明るーい!」でした。10mmのアイピース なので、MILTOLだと20倍、小さいですが満月前なのでかなり明るく見えるはずです。あ、ピントを合わせるのに少し苦労しました。天頂プリズムは長すぎるし、アイピース だけだと短すぎます。なので、少しアイピースを抜き出すようにして固定してピントを出しました。

程なくしてお母さんの迎えの車が入ってきました。Mちゃん、早速お母さんに「見て見て!」と自慢げに覗いてもらっていました。21時過ぎ、赤道儀を全部最初にあったケースの中に入れ、MILTOLも箱にしまい、計算のメモなんかも全部後片付けをして、お土産の本(本?コミック?)を何冊か持っていって今日は終了です。とても楽しかったみたいで、何度もお礼を言ってくれました。「今度は月のない暗い時に銀河を見てみよう」と次回の約束をして、帰っていきました。

この日は午後から夜までずっとMちゃんに付き合ってたことになりますが、私自身とても楽しい時間でした。また遊びに来てくれるといいなぁ。


前回の記事で、Advanced VXの赤経体のところで、円周方向にガタがあって、それを取り除く記事を書きました。その後一度撮影を試したのですが(それはまた別の記事に)、像がブレるようなことはなかったです。



ところが、赤経体のガタがとれると、今度は赤緯体のガタが気になってきました。かなり大きかった赤経体のガタはほぼ完全と言っていいほどピクリとも動かなくなりました。するとそれほど大きくなかった赤緯体のガタが相対的に目立ってきたというわけです。

というわけで、今度は赤緯体部分を取り外し、モータなどが隠れているプラスチックカバーを取ります。プラスチックカバーは上下に分かれていて、下の方まで開けないとウォームホイールの調整機構にアクセスできません。しかも下のカバーの最後の一本のネジが、アリミゾクランプが邪魔になってドライバーがネジまでアクセスできません。しかたないのでアリミゾクランプのところのネジを4本緩めて、クランプ分も外してしまいます。するとプラスチックカバーも容易に外すことができます。

さて、今回も同じようにモーターの下にキャップネジ2本と、その間にイモネジがあって、押し引きネジ構造になっています。前回と同じかと甘くみていたのですが、今回の方が赤経体の時よりも難易度が高いです。というのも、モーター下のスペースが短くて、六角レンチが入らないのです。イモネジの方は小さなレンチでよかったので、まだ短手の方がギリギリ入りました。左右のキャップネジは径が大きく、レンチの短手の方も、長手のボールになっている方で斜めにしても入りません。

IMG_1993


IMG_1994

ここでの解決策の一つは、ギヤを外して、さらにモーターも外してしまってネジにアクセスすることです。迷ったのですが、ギヤを外してしまうとバックラッシュ調整などさらに手間がかかる可能性があるので、今回はイモネジを緩めるだけにとどめました。イモネジも相当きつく締められていて、引きネジ分の効果が多少そうされているような状態だったので、若干イモネジを緩めるだけでガタはほぼなくなりました。

その後全て元に組み直して再度確認しましたが、わかる範囲でのガタはなくなり、赤経、赤緯ともに完全にガタは無くなったと言っていいと思います。

次回再度撮影してみて、他に不備はないか洗い出したいと思います。もし問題が出るようなら、ギヤを外しての調整になるかと思います。

最近2本立ての撮影を考えているので、現行のCGEM IIに加えて、久しぶりにAdvanced VXを引っ張り出してきました。

ところが、赤経体のところでガタがあります。ウィエイトバーをつけて触ると一番端で動きが目で見えるくらいなので、度とは言わないですが分くらいは平気でありそうなガタです。

実は以前同じところにガタがあったことがあります。



この時は上の記事にあるように、本体裏側から2本のネジを緩めて、ウォームホイールを押し付けるような形で、ネジを締め直して解決しました。

今回も同じだろうと鷹を括っていて、同様にネジを調整したのですが、ガタがどうしても収まりません。ギヤがついているモーターを手前上に持ち上げる方向に手でtからを加えると、ガタが収まるので動かす場所は間違っていないはずです。でも手を離すとすぐにまたガタが戻ってきます。どうもギヤボックスごと少し上側に回転させるような力が必要な感じですが、前回の裏からのネジだけではその自由度は動かせそうにないことがわかってきました。

仕方ないのでプラスチックカバーを外します。上側のカバーはすぐに外れるのですが、下側のカバーは外すのにかなり苦労します。厳密にいうと今回の場合下側のカバーを外し必要はありません。ですが、外さずに隙間から見ているだけだとネジが見にくくて位置が理解できないかもしれません。いずれにせよ、下側カバーを外す際は、無理に引っ張ってカバーを破壊しないように気をつけてください。

カバーが外してから中をよく見てみました。すると、モーターの下に2本のネジが見えます。ですが、これだと固定しているだけのようで、あまり意味がなさそうです。

ところが、最初気づかなかったのですが、よーく見てるとその2本のネジの間にイモネジらしきものがあることに気づきました。どうやら2本のネジと、1本の芋ネジで、押し引きネジになっているようです。しかも位置的にモーターの直下ではなく、少し中心からずれたところにネジがあるので、どうもここでギヤボックスごと回転できそうな雰囲気です。

IMG_1992


ここまでわかれば、あとは簡単です。ただしこのネジかなり固く締められてるのと、レンチが真っ直ぐには入らないので、長手がボール型になっているレンチを斜めに挿し、ペンチでレンチの頭をひねることでうまく緩めることができました。

最初、イモネジの方で押す方向で、モータを上側に回転するようにやってみたのですが、ガタがひどくなります。どうもウォームホイールの密着度が足りないような感じで、結局引ネジを少し締める方向でやってみたらバッチリ。ガタは全くと言っていいほどなくなりました。最後にギヤを手で回して赤経体がきちんと動くかなど、ネジの締め過ぎてないかのチェックをして、問題なさそうなのでカバーなどを元に戻し、作業完了です。

このAvanced VX、以前真っ二つになったこともあるせいか、プラスチックのところが割れたりして結構ボロボロです。でも機構的には全く問題なし。まだまだ十分使えます。

今回ガタも完全に取れて満足です。もしAVXの赤経体のところでガタがあって困っている方がいましたら、前回の記事と合わせて試してみてください。

 

このページのトップヘ