ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:縞ノイズ

過去の縞ノイズでも試してみる

もしかしたら、flat補正の効果が今回の撮影だけの特別な場合だった可能性もあります。なので、過去の画像で縞ノイズが出たファイルを再処理してみます。使ったのは、2年以上前のPixInsightを最初に使い始めた頃に撮影したM33。

シンプルにするためにフラットの有無だけで比較します。撮影条件は
  • 鏡筒: タカハシFS-60Q、焦点距離600mm
  • 赤道儀: Celestron Advaned VX
  • カメラ:  ZWO ASI294MC
  • ガイド: ASI178MCと50mmのCマウントレンズをPHD2にて
  • 撮影条件: SharpCapでゲイン270、温度-15℃、露光時間300秒x25枚 = 2時間5分
  • ディザー: なし 
  • ファイル保存形式: RAW16bit、fits形式
です。本質的なところではカメラは常温ですが同じ、長時間、ディザーなしというのでよく似た条件です。Flat frameの内容はというと、記録から
  • flat frame: light frame撮影後すぐに、鏡筒に状態でスーパーの白い袋を2重に被せて撮影。ゲイン270、露光時間300秒、常温で、3枚撮影。
となっているので、これも撮影後すぐにとったとか、枚数が少ないとかの条件も同じです。この似た条件というのが鍵になる可能性がありますが、まずは時期的にも違うという点で検証して一般性を見ます。

まずはflat補正あり。やはり以前と同じように縞ノイズは盛大に出るので再現性もあります。

light-BINNING_1

次にflat補正なし。ゴミの跡とかは目をつぶってください。当然周辺減光も出ますし、アンプグローも残ります。その代わりに、バラ星雲の時と同じで縞ノイズは消えます。厳密に言うとバラ星雲の時も今回のM33の時も同じで少しの縞ノイズは残っています。でもflat補正のあるなしで、いずれも劇的な違いがあることはわかります。

light-BINNING_1

この時点で、PIに限られますが違う画像でも起きているので、一般的にも十分あり得る話だということがわかります。


PixInsight以外では?ステライメージで確かめてみる

もしかしたらこれ、PIのflat補正のアルゴリズムに問題があって、PIだけの問題という可能性があります。他のソフトの代表で、ステライメージ8で確かめてみました。

そう言えば最近Windowsを入れ直してステライメージまだ入れてませんでした。久しぶりに再インストールして、M33を使ってflat補正をしてみました。自動処理モードは使わずに、詳細編集モード(マニュアルモード)で試しました。自動処理モードはこれまでもほとんど使ったことがないのと、一応は試したのですがうまく色が出なかったからです。

最初の結果がこれです。

light

「お、縞ノイズないじゃん!なんで?PIだけの問題か?」と思ったのですが、よくみるとゴミの跡も残っていてフラット補正全くされていないみたいです。自動処理モードでやっても結果は変わらず、flatファイルが悪いのかとか色々疑ったのですが、原因はステライメージのバグ。バージョン8をディスクからインストールしたてで、アップデートしていなかったことが原因でした。現行のバージョン8.0hにして試してみると、

light

ちゃんとflat補正もされて、縞ノイズも盛大に出るようになりました。なので、PIだけの問題でないということが分かります。

ちょっと蛇足です。久しぶりにステライメージ触ったのですが、随分といろんなことを忘れていました。今回サボりましたがflat darkとかも本当は撮らないとダメ(flat darkあるなしで縞ノイズに影響がないことは確かめています)なんですよね。その代わりにbiasファイルを撮らなくていいとか、今思うとPIとはだいぶん違います。

初心者向けの自動処理モードも「ほとんど何も設定出来ない」との批判も多いですが、私はこれでいいと思います。多分ステライメージは、初心者にとっては天体画像処理ソフトとしては唯一の選択肢です。日本語で操作できて、マニュアルも(十分ではないかもしれませんが)日本語で読むことができてという意味で、敷居がずいぶん低いはずです。初めて天体写真に挑む人は、一番最初は本当に何も分からず手探りでやるので、自動モードもこれくらい簡潔にしておくのはある意味正しいと思います。自動モードで理解できてきたら、詳細モードに行って、詳細モードでいろんな操作をして理解して、その上で不満が出たらより高機能なPixInsightという手もあるかと思います。

ステライメージで一つ不満があるとしたら、「ベイヤー・RGB変換」のところでしょうか。バッチ処理が無いので、一枚一枚手で変換しなくてはダメなんですよね。ALTキーでI、ALTキーでYで、Enterで処理、マウスで最小化ボタンを押して次の画像というのを繰り返し、出来るだけ楽に進めてます。今回20枚程度でしたが、100枚とかはやりたくないです。最近はPIで1000枚とかの処理もする時があるので、これだとステライメージでは現実無理です。せめてコンポジットやホット/クールピクセル除去機能みたいにバッチ処理ができるようになるといいのですが。


ついでにDSSでも

あと日本で流行っているスタックソフトの残りは、惑星用除いたらあとは、DSS(DeepSkyStacker)とRAP2くらいでしょうかRAP2は有料で持っていないので試せませんが、DSSはフリーなので試すことはできます。DSSは星を始めた4年前にまだ有料ソフトに手を出す前に、フリーだからと少し試しただけくらいの経験しかありません。もう久しく触っていませんが、いい機会なので試してみます。

昔はものすごく複雑だった印象があるのですが、機能自身は今思うとまあ一直線で素直ですね。少なくともPIに比べるとはるかにシンプルです。特に困ったところは2箇所だけで、一つはRegisteringのところで進まなくなってしまったところ。これは検出する星の数が多すぎたことが原因で、「Register Setting」の「Advanced」タブの「Star Detection Threshold」を増やして、検出する星の数を減らすことで解決しました。もう一つは一度最後まで処理をしたのですが、モノクロのままだったので、メニューの「RAW/FITS Settings」の「FITS Filters」できちんとdebayerしてやることでした。

さて結果です。フラットもうまく補正されたようです。

light

あー、ダメですね。やはり縞ノイズ出ますね。

と言うわけでflat補正問題、PixInsightだけの問題でもなく少なくともステライメージとDSSも含めて、同様に縞ノイズを発生させることがわかりました。日本で使われている3大スタックソフト(惑星用除く)で同じ状況というので、flat補正が縞ノイズに与える影響はかなり一般的と言っていいかと思います。


とりあえず、今回の記事のまとめ

他のデータでも、他のソフトでも同様の傾向で、flat補正の影響はあると言えそうです。

ただしやはり気になるところは、flatの撮り方が2例とも撮影後すぐに同露光時間、同ゲインで、スーパーの袋をかぶせて空で撮っていることです。露光時間が長いので、明るさ的に足りないことはないと思います。ただし、カラーバランスはかなり黄色っぽくなってしまっています。また、枚数が足りない可能性もあります。

次回以降はここら辺のflat frame自身についてもう少し検討できたらと思っています。実は今回の謎の答えもう出ています。今検証を進めているところです。乞うご期待です。



多分このシリーズ、長くなります。普段の記事を全然長いと思っていない私が長くなると思っているので、多分本当に長くなります。試したいことがありすぎるので、書けるとこまで書きます。途中で力尽きたらごめんなさい。

今回縞ノイズの一つを、多分特定しました。最初に断っておきますが、限られた条件でのことかもしれません。この記事を読んで試してみても、全然効果がなかったと言う方もいるかもしれません。ですが幾らかの悩んでいる方の解決にはなると思います。私自身、他の方の環境でどうなるか興味があるというのもあります。

comp

この比較写真のように違います。左がこれまでの縞ノイズ、右が無くなった(実際には軽減された)場合です。以下、詳しく説明します。


バラ星雲で出た縞ノイズ

この間のEVOSTAR 72EDでのバラ星雲の撮影で、ディザーをしなかったために縞ノイズが出たという報告をしました。

integration_DBE_PCC_AS_cut


その後、上記の縞ノイズを可視化した記事を書きました。この動画は結構反響が大きかったので、ご覧になった方も多いかと思います。






なぜか突然縞ノイズが消えた!?

この後、もう少し縞ノイズの検証をしてみようとファイルをいじってみました。とりあえずシンプルなところからと思って、rawのlight frameをDebayerしてStarAlignmentだけして縞ノイズを再現しようとしたのです。ところがところが、縞ノイズが綺麗さっぱりなくなっています。

integration

拡大です。
integration_cut

え?
なんで?
全然縞ノイズ出てないじゃん!
せっかく縞ノイズの解析しようと思ってたのに!

さあ、ここからが戦いの始まりです。


PixInsight用語

今回、PixInsight (PI)用語がたくさん出てきます。PIに慣れていない方のために、簡単に解説しておきます。
  • PixInsight: 世界的に有名な天体画像処理ソフト。英語でものすごくとっつきにくいが、高機能。
  • BatchPrepocessing: 撮影したファイル(light, bias, dark, flatなどの各frame)を掘り込んでおけば、スタックまでボタン一発でやってくれる便利な機能。
  • master: bias, dark, flatなど、他数枚の補正ファイルを一度処理すると、スタックされた一枚のmasterというファイルをそれぞれ作ってくれる。以降はそれを使うと処理時間を削減できる。
  • ImageCalibration: BatchPrepocessingのような自動で処理する以外に、マニュアルでもっと細かくオプションを指定しながら処理する方法がある。これはbias, dark, flatなどの補正をマニュアルでする機能のこと。
  • Debayer: 同様にマニュアル処理の一つ。モノクロのBayer配列のRawファイルをカラー化すること。
  • StarAlignment: マニュアル処理の一つ。多数枚数の画像の星位置を合わせること。PIでは平行移動、回転にのみならず、画面を歪ませて星の位置をそれぞれ合わせることができる。
  • ImageInteglation: マニュアル処理の一つ。他数枚の画像をスタックすること。
  • ScreenTransferFunction: 簡易的にストレッチ(明るくすること)をする機能。見かけの表示のみをいじるので、ファイルには何の手も加えない。見かけを適用したい場合はHistgramTransfomationを使う。
  • Auto Stretch: ScreenTransferFunctionの一機能。あぶり出しのすんでいないまだ暗い画像などを、そこそこ見やすいように自動でストレッチする機能のこと。超便利。
  • DynamicBackgroundExtraction (DBE): 背景の被りや周辺減光などをソフト的に除去する機能。任意の補正点を指定できるので、星雲部分の補正を避けるなど細かい補正が可能。超便利。
  • AutomaticBackgroundExtraction (ABE): 背景の被りや周辺減光などをソフト的に除去する機能。細かい補正はできないが、大局的に補正してくれるので簡単で便利。
  • TVGDenoise: PI場で最強と言われているノイズ除去機能。

比較条件

今回検証するRAWファイルは全て同じです。他に共通撮影条件は
  • 鏡筒: SkyWatcher EVOSTAR 72ED + x0.72レデューザー、焦点距離300mm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO ASI294MC Pro
  • ガイド: ASI178MCと50mmのCマウントレンズをPHD2にて
  • 撮影条件: SharpCapでゲイン220、温度-15℃、露光時間300秒x20枚 = 1時間40分
  • ディザー: なし 
  • ファイル保存形式: RAW16bit、fits形式
  • フィルター: サイトロン QBP(アメリカンサイズ)
となります。

今回の検討を始める前までに、縞ノイズが出た時の処理と、出なかった時の処理の違いを書いておきます。処理は全てPI上でやっています。
  • 縞ノイズあり: BatchPreprocessingでbias補正、dark補正、flat補正を適用し、走らせた。
  • 縞ノイズなし: マニュアルでDebayer、StarAlignment、ImageInteglation。
この中に決定的な違いがあるはずです。以下、各補正ファイルの条件です。全てSharpCap上で撮影していて、最初の処理でmaster fileができるので、以降はそれを利用。
  • bias frame: ゲイン220、露光時間が最小の0.032ミリ秒で、100枚撮影。
  • dark frame: frat frame撮影後、片付けの後すぐに、家の中で撮影。ゲイン220、露光時間300秒、-15℃で、28枚撮影。
  • flat frame: light frame撮影後すぐに、鏡筒に状態でスーパーの白い袋を2重に被せて撮影。ゲイン220、露光時間300秒、-15℃で、7枚撮影。

処理結果に大きな違いが出ていて、検証材料も全て揃っているので、何が違いに影響しているのか順に検証していきます。


検証過程

ここからはほぼ実際にやった手順です。
  1. まず、再度BatchPreprocessingとマニュアル処理で再現性を確認。->きちんとBatchPreprocessingのときには縞ノイズ出て、マニュアル処理では出ないです。再現性はきちんとあります。
  2. 次に、一番怪しくないと思ったflat frameのみ適用させBatchPreprocessingで処理 -> 縞ノイズ出ます。「うーん、あんまり関係ないよな。」
  3. 次、一番怪しそうなbias framaのみを適用させBatchPreprocessingで処理 -> 縞ノイズ消えた!「そりゃbias必要でしょ。」
  4. 次、flatとbias frameを適用させBatchPreprocessingで処理 -> 縞ノイズ出ます。「あれ?flatあまり関係ないはずなのに。」-> ところが、ここでやっと思い違いに気づきます。今回、何も補正していない方が縞ノイズが出なくて、補正した方が縞ノイズが出たのでした。と言うことは、bias関係なしで、flatで縞ノイズ有無が決まっていることになります。え、本当?
  5. 確認で、darkとbias frameを適用させBatchPreprocessingで処理 -> 縞ノイズ出ません。「えー、ホントにdarkもbiasも関係ないよ!?」
  6. 念のため、darkのみ適用させBatchPreprocessingで処理 -> 縞ノイズ出ません。「確かにdark関係なし。」
  7. さらに念のため、master flatを使うのではなく、改めて個々のflat frameを使ってBatchPreprocessing処理 -> 縞ノイズ出る。「やっぱりflatが原因だ!」
  8. さらに、BatchPreprocessingが何か悪さをしている可能性も考えて、マニュアルのImageCalibrationを使ってflat処理だけしてみます->縞ノイズあり。「少なくともPIで処理する限りflatが悪さをしているのは確定でよさそう」


Flat補正をしない場合、本当に改善されているのか

確かに上の画像で見た通り、flat補正をしないと縞ノイズは無くなって見えているのですが、本当でしょうか?それぞれSTFでオートストレッチをしているのですが、本当に正確な比較をしているのか疑問になってきました。オートストレッチは星雲を含む背景の最大の輝度と最小の輝度から適用範囲が決まります。例えば、flat補正をしていない周辺減光のある画像ではあぶり出しも中途半端で、周辺減光のない平坦に近い画像では極限まで炙り出すことをするので、細かい差(この場合縞ノイズも含めて)をより浮き出させてくれます。

ここでは公平に比較するために、それぞれの画像にAutomaticBackgroundExtraction (ABE)を適用し、周辺減光の影響をできるだけ少なくして比較してみます。flat補正をしたものでもまだ明暗のばらつきは無視できないほど存在していて、ABEを適用することで多少の変化があります。それぞれABEをしてから、STFでオートストレッチをしています。

まず、flat補正ありの画像。

light_BINNING_1_integration_ABE

light_BINNING_1_integration_ABE_cut
これまで通り、縞ノイズは盛大に見えています。

次にflat補正しない場合。
integration_ABE

integration_ABE_cut

結局、周辺減光がABEで補正できる範囲を超えてしまっているので全然補正できていません。そのためオートストレッチ後、少し補正して目で見て、拡大部分の明るさをそこそこ合わせています。多少公平性は欠けてしまいましたが、それでも不公平になる程の違いは無いくらいにはなっているでしょう。結果はというと、flat補正なしであからさまに縞ノイズは改善されていますが、よく見るとやはり完全に無くなりきってはいないです。「相当軽減する」くらいは言っていいでしょうか。

この比較から、flat補正は縞ノイズの影響を悪化させていることは確からしいですが、完全には撮りきれないことから、それだけが原因というわけでもなさそうです。

実際の画像処理では背景はもう少し暗くなるので、flat補正なしにして、この程度の縞ノイズになるのなら個人的には許容範囲でしょうか。


Flat frameについて

でもここでふと我に返ります。でも今回使ったflatってそんなに変なの?

確認してみる限りごくごく普通のflatだと思います。master flatをAuto Stretchしたものです。(blogに載せるためのファイルサイズ制限で、bayer配列を無理にjpegにしているので、偽色が出てしまってノイジーに見えてしまっています。)
flat-BINNING_1

拡大です。pngなので、偽色とかは出ていないはずです。(画像サイズが小さいのでpngでもファイルサイズが大きくなり過ぎず、blogでもアップロードできます。)
flat-BINNING_1_cut

見ている限り、極々ノーマルで、ノイズが特別多いようにも思えません。

でも、master flatをdebayerしてAuto Stretchしてみると少し正体が見えてきます。
flat_BINNING_1_integration_RGB_VNG

拡大です。
flat_BINNING_1_integration_RGB_VNG_cut

カラー化すると結構ノイジーなのがわかります。なんだかカラーノイズと言われているものに似ています。これが固定ノイズとなって、星像を止めたときには逆に、この固定ノイズが流れるのでしょう。

でも本当にこれくらいのことであんなに盛大に縞ノイズが出てくるまで画像を悪化させるのでしょうか?だって直接処理しているのはlight frameの1枚1枚で、それに対してflat frameは枚数少ないとは言え7枚です。それが流れて見えるので、スタックした20枚:7枚でなく、1枚:7枚の比で比較してもいいような気がします。ここは少し疑問が残ります。


flat frameのノイズを改善してみたら?

本当にflatが効いているのか確認するためにもう少し試します。master flatにPI上でTVGDenoiseでノイズを減らしたflat frameを適用して処理してみました。その結果がこれです。
integration

拡大です。
integration_cut

わかりますでしょうか?多分拡大していない方がわかりやすいと思いますが、細かい縞ノイズが消えて、大きな構造の縞ノイズが出てきています。

この結果から考えられることは、flat frame自身でのノイズ除去があまりうまくいっていなくて、細かいカラーノイズが大きな構造のノイズになってしまったからです。

少なくとも、これらの結果からflat frameが縞ノイズに影響を与えているのは間違いないでしょう。ただし、あくまでこれも限られた環境、限られた条件下での話の可能性もあります。ここら辺は次回以降に検討してきます。


とりあえずのまとめ

どうも聞いていると、縞ノイズに困っている人と困っていない人がいるみたいです。なので、一概に今回の結果が正しいとは言えないと思いますが、flat補正の影響は私と同じような状況の人には朗報となるかもしれません。でもflatが原因の全てだなんていうことを言う気は全くありません。あくまで原因の一つであるのではないかということです。

いろいろ検索してみましたが、flat補正が縞ノイズの原因だとバッチリ書いてあるところは見つかりませんでした。むしろこれまで思っていた通り、flat補正をきちんとすると縞ノイズが解決できるはずだと書いてある記述はたくさん見つかりました。普通だとこちらのセンスの方が正しといと思ってしまうのは、ある意味ごくごく普通でしょう。そもそもなんでflat補正が縞ノイズに対してダメなのか、まだよくわかっていません。これからいろいろ検証していきたいところです。

今回、縞ノイズに対する根本的な解決策を示したわけではありませんが、状況によってはflat補正を外して画像処理することで、縞ノイズを軽減できる可能性があることがわかります。その上で、PIのABEやDBE、FlatAidProなどを使ってカブリや周辺減光を減らすことで対応する必要もあるでしょうか。この場合、ゴミやアンプグローなどは除去できません。

もう一つ重要なことはは、きちんとディザーをして散らすことでしょうか。多分縞ノイズって複合原因なんです。1方向に流さないようにすること。これが重要なのは変わりません。ディザーはおそらく根本解決の方法の一つです。


この記事まだまだ続きそうです。今回はバラ星雲での撮影のみ取り上げましたが、次回は過去に出た縞ノイズの場合なども検討してみたいと思います。

 


縞ノイズを時間的に見てみる

もしかしたら興味がある人もいるかと思い、縞ノイズを時間的に可視化してみました。先のバラ星雲の1日目のディザーなしで撮影した失敗画像約2時間ぶんの24枚を使っています。中心あたりの一部を拡大して見ています。といってもやったことは簡単で、ディザーなしで撮影した画像を、PixInsightで動画にしただけです。

Blink

これはガイドをしていても、たわみなどでガイド鏡と撮影鏡筒の相対的な視野が一方向にずれてしまうために起きます。それでももしノイズが完全にランダムなら、このように流れるようには見えないはずです。ノイズが流れて見えるということは、ノイズに時間的なコヒーレンスがあるということです。うーん、結構ありますね。あれだけの縞ノイズになるのもわかる気がします。

integration_DBE_PCC_AS_cut



縞ノイズ動画の作り方

さて、この動画の作り方です。今回縞ノイズを時間的にみる目的でしたが、このやり方覚えておくと色々応用が効きそうです。基本的に、PixInsightを使います。
  1. 普通にBatchPreprocessing 処理などで進めます。
  2. master以下のregsteredフォルダに入っている、位置合わせまで終わって、Integrationする寸前のファイルを使います。ここまでは普通にDebayerしてStarAlignmentでも構いません。
  3. Blinkでそれらのファイルを開きます。
  4. とりあえずは、デフォルト機能の再生ボタン(右三角)を押すと確認できますが、順に動画のようになるように見せるだけです。オートストレッチもできるのでみやすくなります。カラーバランスが悪い場合は、RGBのリンクをオン/オフする「鎖マーク」のアイコンを押してください。
  5. Previewで一部を切り取るとその部分だけ拡大して見えます。
  6. それをBlink画面の右下の一番右端の撮影開始マークアイコンで動画にします。
  7. ffmpegがない場合は別途インストールしてください。
  8. ffmpegがインストールされていても、実行ファイルをフルパスで入れないとダメでした。/usr/local/bin/ffmpegとかいうことです。
  9. オプションは秒20コマのgifファイルにしたかったので、 -y -r 20 -i Blink%05d.png Blink.gifとしました。
このように結構簡単に動画を作ることができます。


M42の場合

もう一つ例です。TSA-120でM42を撮影した時のものです。約30分くらいの撮影時間で、枚数は14枚です。これはディザーもそうですが、ガイドさえもしてないので赤道儀の極軸の精度が悪くてずれていってしまっているものです。上のバラ星雲のように画像の一部ではなくて、ほぼ全体像を示しています。解像度はこのブログにアップできるように(一画像当たり5MBが制限)落としてあります。

Blink

縞ノイズの原因となるクールノイズなどに混ざって、おそらくバイアスノイズに相当する縦線のように見えるノイズも流れていることがわかります。基本的にランダムでないノイズは、全て縞ノイズになり得るだろうことがわかります。

これを普通にスタックすると下のように縞ノイズが盛大に出てくるわけです。

integration



バラ星雲のもそうですが、時間的にこれだけ明らかに変化しているのがわかるのなら、なんとか分離してペラっと一枚皮を剥ぐようにこのノイズだけ取れないですかね?

今回はAPT(Astro Photography Toos)とPHD2を使って、CMOSカメラでディザーをしながらガイド撮影をします。以前にもAPTを何度か試したのですが、いずれも長続きせず結局使わずじまいでした。


縞ノイズとディザー撮影

長時間露光撮影をしようとすると、ディザーが必要になります。たとえガイドをしていても、ガイド鏡や鏡筒のたわみなどでどうしても相対的にズレが生じてしまい、視野が1時間とかのオーダーだとかなりズレていってしまいます。その結果何が起きるかというと、画像処理の段階で盛大な縞ノイズ(縮緬ノイズ)に悩まされるわけです。前回の記事で紹介した4日間撮影したバラ星雲も、初日のガイドなしでは以下のような縞ノイズが画面全体に出てしまいました。



integration_DBE_PCC_AS_cut

この縞ノイズは多少の画像処理ではどうしようもありません。ある程度の軽減はできますが、少なくとも私は最終画像に持っていくまで影響のないくらいにすることができていません。

あぷらなーとさんが以前面白いアイデアで縞ノイズの除去に成功しています。その結果がFlatAidProに反映されているとのことなので、FlatAidProに通すことも一つの解です。無料版でも画像サイズ制限なしで使うことができます。今回実はFlaAidProで試して、細かい縞ノイズは結構きれいに消えたのですが、下の画像のように元画像で恒星中心などのサチりぎみの箇所が、流れたラインに沿って大きなスクラッチのようになってしまったので、今回は諦めました。

light_BINNING_1_integration_Preview01

なんだかんだ言って、縞ノイズを確実に解決するのは、ソフト側で苦労するよりは、今のところディザーが一番手軽なのかと思います。

さてディザー撮影ですが、一眼レフカメラの場合は、私は6DなのでBackyard EOSを使うことで、PHD2と連携してディザー撮影が簡単にできます。しかしながらCMOSカメラはこれまでほとんどSharpCapですませてきて、せいぜいlivestackで短時間撮影を重ねたくらいで、大した長時間撮影はまともにはしてきませんでした。今回COMSカメラでどうやってディザーを実現しようか色々と考えてみました。


SharpCapでのディザー撮影

最近のSharpCapはディザー撮影もサポートしていますが、なぜかこの機能livestackの中でのみ動きます。少し試したのですが、どうもまだこなれきっていないようで、ディザーをするタイミングを「何秒ごと」としか決められないようです。

ディザーのスタート自身は、そのフレームの撮影が終わるまで待っててくれるらしいのですが、ディザーをしている最中もカメラは動いていて撮影はし続けているようです。その間に撮影した画像はぶれてしまうために捨てざるを得ません。ディザーが止まって、そのフレームの撮影が終わってから改めて撮影を始めたフレームがやっと使える画像になります。マニュアルによると、ディザーの際中の画像はlivestackでスタックされることは無いと書いてあります。逆にいうとやはりディザー中も撮像は続けられていてその撮像時間を一枚だけ変えるとかはできないので、無駄になるとわかりつつもディザー後その画像の撮影終了時間が来るまで待つしかないということのようです。

具体的には、livestackの中の機能で、個々のフレームを全て保存するというオプションがあり、これをオンにするとlivestackモードでも通常の撮影のように使うことができます。問題は、短時間露光撮影ならまだそこまで無駄にはならないのですが、例えば5分とかの長時間露光をすると、数十秒のディーザーのために丸々5分の画像を取り終わるまで待って、次の画像を使うことになります。なのでディザーしている時間以上の露光時間で撮影する時には、撮影効率は必ず50%以下になってしまうというわけです。

基本的にはSharpCapのディザーはlivestackの中の一機能だけの役割で、せっかくスタックした画像をディザーで乱さないための機能ということになります。

うーん、さすがにこれはもったいないです。もっとうまいやり方があるのかもしれませんが、少なくとも私にはうまい回避方法が見つかりませんでした。何かいい方法があったら知りたいです。

とりあえず今回はCMOSカメラでの長時間露光をする必要があったので、この時点でSharpCapでのディザー撮影を諦め、兼ねてから使ってみたかったAPTに、少なくともCMOSカメラのディザー撮影に関しては、プラットフォームを移行することにしました。


APTのインストール

以前にもAPTのインストールについては書いていますし、日本語でも随所に解説されているので詳しくは書きませんが、ポイントや気づいたことをメモがてら書いておきます。

まず今回の目的で、ガイド撮影のためにPHD2は必須なので、これはインストールしておきます。

PHD2もそうですし、APTもそうなのですが、ソフト間と各機器を相互接続するためASCOM関連のソフトが必要になります。まずはASCOMプラットフォームをインストールしておきます。この際、.NET framework 3.5が必要になります。後でAPTをインストールするときに.NET framework 2.0が必要になるのですが、.NET framework 3.5は2.0も含んでいるのでAPTより先にASCOMをインストールしておいた方がいいです。.NET framework 3.5インストール後は一度Windowsの再起動が必須です。OS再起動後、再度ASCOMプラットフォームをインストールしてみてください。

ASCOMプラットフォームインストールさらに、もう一つ。のちにAPTのplate solvingで赤道儀をいじりたくなるはずなので、各メーカーに合った赤道儀用のASCOMドライバーも入れておきます。

あ、CMOSカメラを初めて使う場合は、カメラのドライバーも必要になります。これは各メーカーのページからダウンロードしてインストールすればいいと思います。例えばZWOならここです。同ページのASCOM用のドライバーですが、APTにおいてはもう必要無いようです。APTの履歴を見てみると2019年12月以前のバージョンのAPTでは、ZWO社のASIカメラはASCOMカメラとして認識されていたのですが、それ以降のバージョン3.82からはASIカメラをネイティブドライバーで動かすようになっているとのことです。

ここでやっとAPTダウンロードして、インストールします。とりあえずは評価用のデモ版でいいでしょう。デモ版でもほとんど全ての機能が使えます。ダウンロードと同じページに日本語化するファイルや、日本語のマニュアルもあるので便利です。これは星見屋のM店長がご尽力されたおかでです。

インストール完了後、さっそくカメラを繋いで立ち上げてみましょう。最初はわかりにくいので、昼間にやってみることをお勧めします。できるならこの時点で赤道儀もPCとケーブルで繋げておくといいでしょう。


APT動作のポイント

最低限ディザー撮影を始めるまでに必要なことを書いておきます。たくさんの機能があるのですが、必要なことはそれほど多くはありません。

まず立ち上げると自分が今いる位置の座標を聞かれます。デフォルトはグリニッジ天文台になっているので、実際に撮影する場所の緯度経度入れます。最初にめんどくさくてキャンセルしてしまった場合は、「Tools」タブの「APT Settings」から「Location」タブに切り替えて設定できます。

この「APT Settings」ですが、最初はほとんどいじる必要はないです。唯一いじったところが「Main」タブの「Images Path」くらいです。これもデフォルトでよければ触らなくてもいいです。少なくとも撮影まで持っていけます。

他にも「Tools」タブにはたくさんのボタンがありますが、ほとんどは使わなくても撮影までは辿りつけます。実際にはピント合わせの時に「Magnifier」を使ったくらいでしょうか。「LIve View」と合わせて星を拡大してピント合わせをしました。「Focus Aid」とかもあるのですが、拡大できなかったり、下手にスタックしてしまったりでピントを触った時のブレの影響が出てしまい、あまり使い勝手は良くなかったです。

CMOSカメラを繋いで、「Camera」タブから「Connect」を押すとカメラが動き出します。ガイド用にもカメラを繋いでいる場合、撮影用のカメラと合わせてCMOSカメラが2台になります。たまにガイドカメラが選択されてしまうことがあります。でもこれ結構気付きにくて、例えばピントを合わせようとしても全然星が見えなかったり、見えていても変化しないとかで、やっと気づいたりします。その場合は「Camera」タブの一番下の「Setting」ボタンから選択できます。

冷却する場合は下のほうにある「Cooling Aid」を「Warming Aid」が有用です。ゆっくりと冷やしたり温めたりするので、カメラへのショックが少ないでしょう。

とりあえずは赤道儀の自動導入で撮影したい天体を導入します。導入後の位置が多少目的のものとずれていても構いません。次の「goto++」で自動で位置調整できます。

「Gear」タブで赤道儀との接続をします。上で書いた赤道儀用のASCOMドライバーをインストールしてある必要があります。「Connect Scope」ボタンで赤道儀が接続できたら、早速同じエリアにある「Point Craft」を押してAPT最大の特徴のgoto++を試してみましょう。

ここで必要なことは、一番下の「Settings」ボタンを押して「PlateSolve 2」と「All Sky Plate Solver(ASPS)」をインストールしてきちんとパスを設定しておくこと。ダウンロードをどのページからすればいいかも、リンクが張ってあるのですぐにわかるかと思います。PlateSolve 2は本体と「UCAC3」のみでいいです。「APM」はなくても動きます。UCAC3はPlateSolve 2をインストールしたフォルダの中に入れてください。そうでない場合は一度PlateSolve 2を立ち上げて、FileメニューからUCAC3をインストールしたフォルダを指定する必要があります。これら2つのインストールはあらかじめ昼間に済ませておいた方がいいでしょう。

ここまででgoto++を試す準備ができたら、「Point Craft」スクリーンに戻って、「Objects」か「Scope Pos」を押してざっくりとした座標を入力します。大画面右上の「Shoot」ボタンで一枚撮影して「Solve」か「Blind」ボタンを押します。うまく解析が終わると、画面真ん中に丸が出てきます。「Sync」ボタンを押しておくと、今の位置が赤道儀に送られ同期し、その方向を向いていると認識します。

次に「Aim」ボタンを押すと別の丸が出てきて、マウスを移動したいところに持っていってクリックすると、2つ目の丸が移動します。その後「goto++」を押すと、その位置が中心になるように赤道儀を移動してくれます。勝手にもう一度撮影するので、本当にその位置に移動できたかどうかわかります。


ディザーガイド撮影

希望通りの構図になったらPHD2でガイドをはじめてください。そういえばPHD2の解説ってあまり詳しいのはしたことがないですね。ずっと昔まだ撮影を始めたばかりの時の記事がありますが、古くてあまり役にたたなさそうです。PHD2はHIROPONさんのページで解説されていますし、同ページから同じくHIROPONさんが書かれた日本語のマニュアルもあるので、特に問題はないと思います。

必要なのはPHD2で「ツール」(Tools)メニュー下の「Enable Server」をクリックしておくこと。これでAPTから自動的にディザー時にガイドを止めてくれるはずです。

APTでのディザーの設定は、「Gear」の赤道儀設定のとことにある「Guide」ボタンから。一番上の「Guiding Program」は「PHD」になっているので、今回は「PHD2」に変更。上から二番目の「Auto Dithering」はオンに。振幅がデフォルト値だと小さすぎて縞ノイズが回避できない可能性があるので、「Guiding Setting」スクリーンで、上から三番目の「Dithering Distance」をデフォルトの1から4くらいに大きくしておきます。これで準備完了です。

実際の撮影はメイン画面の「Camera」タブから「LIGHT PLANS」の「Test」とか選んで、横の「Edit」を押して、「Plan to edit」のところを「Add New Light Frame Plan」で新規プランを作って、露光時間とか枚数とか入れていきます。

PHD2がきちんとガイドをしているなら、あとはAPTの「Camera」タブの「Connect」ボタンのすぐ横の「Start」ボタンを押します。もし「Start」ボタンが押せない場合は、カメラが接続されていないとか
Live Viewがスタートしているとかです。「Camera」タブの「Connect」ボタンがきちんと「Disconnect(これが繋がっている状態を表してます)」になっているか、「Live View」ボタンの色が濃くなっていないか(ボタン背景が黒の場合がLiveViewがオフです。)確かめてみてください。正しい場合は「Start」ボタンの背景が濃くなっているはずです。

実際にディザーされているかどうかは、「Gear」タブの「Guide」のところに「(D)」が出ていれば大丈夫です。念のため何枚か撮ったら、「Img」タブで撮影できた画像をダブルクリックして、星がきちんと動いているか確認してみてください。


APTを使ってみての感想、SharpCapとの違いなど

実際にAPTを使ってみると、随分とSharpCapとのコンセプトの違いを感じます。撮影に特化した感じです。
  • 例えば、撮影した画像をできるだけ無駄にしない努力が随所にされているのは好感が持てます。保存形式は、プレビュー に当たる「Shoot」を除いて、基本Fits形式のみです。撮影中は必要のないボタンは押すことができないようになっています。ディザーもPHD2が動いていれば基本的にはデフォルトでオンになるので、オンにし忘れたとかで撮影画像を無駄にしなくて助かります。
  • SharpCapに比べるとAPTはディザーのオプションもしっかりしていますが、ディザーパターンは選べないようです。ランダムだけのようです。一方、PHD2にはランダムかスパイラルかを選べる項目があります。どちらが優先されるのでしょうか?まだよくわかっていません。
  • SharpCapとの違いを感じたのは、露光時間とゲインの調整がしにくいことでした。実際に移す画面は「Live View」ボタンを押せば見えるのですが、実際の露光時間とゲインは数字で打ち込むか、Ringy Thingyと呼ばれる小さな丸いジョグダイアルのようなもので合わせる必要があります。SharpCapのスライダーが秀逸だったことがわかります。
  • Live ViewはさすがにSharpCapの方がはるかに高機能です。パッと触っただけでも、APT側はカラーバランスが取れない、livestackは当然ないなどです。APTにもオートストレッチは一応あります。「Tool」タブの「Histogram」でヒストグラムを出し、「Auto-Str L」を推します。ただ、調整幅が少なく操作性がいまいち、かつこのヒストグラムも輝度しか見えなくて、カラー情報はわかりません。逆に言えば、写っている画面はあまり気にさせずに、撮影にすぐに入って欲しいという意図が感じられます。ShapCapの経験から行くと、カラーバランスによってはADCの範囲に入ったり入らなかったりするので、少し気になりますが、まあ大丈夫なのでしょう。(2020/4/16 追記: APT Settingsの CCD/CMOS settingsタブのRed Channel Color BalanceとBlue Channel Color Balanceで色のバランスを取ることができるのがわかりました。保存されるRAWファイルには適用されず、見た目だけのバランスのようです。また、Auto Stretch Factorをいじると、デフォルトのオートストレッッチの強さを変えることができるので、これで合わせると程よい明るさで見ることができそうです。)
  • とにかくAPTは撮影に特化していると思っていいです。これと比べるとSharpCapの撮影へのこだわりはまだ中途半端に見えてしまいます。短時間撮影や、Live Stackを使ってのラッキーイメージ撮影など、ガイドを使わない撮影ならSharpCapの方がいいかもしれませんが、長時間撮影はAPTの方が遥かに向いています。逆に、APTで電視観望は無理だと思いました。カラーバランスが取れないとか炙り出しが全然甘いとかです。

APTとSharpCap2本のソフトを使いわけることで、撮影と電視観望の切り分けがきちんとできるようになるでしょう。


Demo版と有料版の違い

さてAPTですが、最初はデモ版を使っていました。無料のデモ版でもほとんどの機能は使えるようです。無料版でさえもこれだけの機能が使えるのは素晴らしいことです。

有料のフル版とのちがいはこのページの一番下の緑の字になっているところに載っています。少なくとも撮影を始めたばかりの人ならデモ版でも困るようなことはほとんどないでしょう。フル版で気になる機能はObject選択のところで星や星雲星団が見やすくなるかとか、PiontCraftの結果を残せれるかとかくらいでしょうか。無料版とあまりさをつけていないところはユーザーの間口を広げる意味でも好感が持てます。もっと使い込んでいく場合には撮影用のスクリプトとかも有料版のみサポートされているらしいので、違いが重要になってくるのかもしれません。

でもこれだけの機能にして18.7ユーロ。日本円にして2千円ちょっとなので、私は感謝の意味も込めてフル版にしました。ヒストリーを見てみると4ヶ月ほど前にZWOのカメラがネイティブでサポートされたとのことなので、いいタイミングだったかもしれません。そう言えば以前はASCOM経由でのカメラの接続確認画面がAPT画面の裏に隠れていて苦労したのですが、今回はカメラの接続は普通に行われていて特に困った覚えがないです。


まとめ

なかなか使うことができなかったAPTですが、今回CMOSカメラのディザー撮影という必要に迫られてやっと使うことができました。使ってみると素直なソフトで、操作性も悪くありません。何より、撮影画像をミスとかで無駄にしないという方針みたいなのが随所に見えたのは素晴らしいです。

これ以降、CMOSカメラでの長時間ディザーガイド撮影もどんどん進めていきたいと思っています。とりあえずはTSA-120とフラットナーにASI294MC Proをつけての撮影ですかね。


最近仕事の方が忙しく、全然時間が取れなくてブログ更新がかなり停滞してしまっています。年末になってやっと少し時間が取れたので、溜まっていた画像処理を進めます。

今回の記事はもう記憶の彼方で、一ヶ月前のことです。珍しく晴れていたこの週は機材調整とかいろいろやっていたのですが、撮影もしていました。でも画像処理が途中で壁にあたってから全く進まなくなり、今に至ります。撮影条件も既に忘れかけています。やっぱりすぐに書いておかないとダメですね。

この時の撮影の目的はちょっと前の自宅でのバーナードループ撮影で、思ったより魔女の横顔も出ていたので、単体で写したくなったからです。さて、どこまで出てくることやら。


機材

撮影条件はこんなところでした。
  • 富山県富山市自宅, 2019年12月1日0時27分-4時13分
  • FS-60CB + FC/FSマルチフラットナー (口径6cm、合成焦点距離370mm)+ CGEM II赤道儀
  • EOS 6D(HKIR改造, ISO3200, RAW), 露出90秒x58枚 総露出1時間27分
  • f50mm+ASI178MC +PHD2による自動ガイド
  • PixInsight、StarNet++、Photoshop CC + Nik collectionで画像処理

一応ガイドもしましたが、赤道儀がCGEM IIと大きめなのと、FS-60CBで350mmかつ90秒と短い焦点距離と短い露光時間だったので、もしかしたらガイドは必要なかったかもしれません。途中、南天を超えてしまい、反転するのに手間取って1時40分くらいから2時半くらいまで撮影できませんでした。


淡い、かなり淡い

とりあえずJPG撮って出しの一枚画像です。
LIGHT_6D_90s_3200_+7cc_20191201-00h55m27s497ms

はい、魔女さん全く出ていません。いくら自宅撮影といえ、こんなんでうまく出るのでしょうか?

あと、左にたくさん線が見えていますが、多分これSpaceX社のStarlinkです。他の画像も見てみると次々来ています。


画像処理開始

画像処理の時間があまり取れなさそうなのと、一枚画像からあまり見込みがないと思って、最初はバイアスだけ以前撮ったまともなやつで、ダークフファイルは温度も露光時間も違うものを使い回し、フラット補正は無しで処理しました。でも処理してみたら意外に魔女さん出てくるので、もう少しまともに処理してみようと思い、ダークを取り直し、フラットもその時の状況を再現し(回転装置を回していなかったのでなんとかなりました)新たに撮影してきちんと補正することにしました。

画像処理はいつも通りPixInsightです。フラット補正でも処理しきれないところもあったので今回もDBEに頼ります。

今回、少しだけいつもと違う処理を試してみました。nabeさんのブログで紹介されていたように、ArcsinhStretchを再び使ってみることにしました。以前は赤ハロがどうしても出てしまって使うのを諦めたのですが、nabeさんによるとサチっている恒星でハロが出るのは仕様らしいので、今回はサチっていないことを期待してやってみたら、ここは大きな違いが出ました。下はストレッチまでした段階での比較です。ArcsinhStretchを使っていない場合(上)とArcsinhStretchを使った場合(下)になります。

light_BINNING_1_integration_DBE3_cc
ArcsinhStretchを使わず、ScreenTransferFunctionと
HistogramTransformation だけで仕上げた場合。 

integration_DBE_DBE1_PCC_AS
ArcsinhStretchでストレッチした場合。

出だしの彩度に雲泥の差があります。当然下のほうがその後の処理もはるかに楽になります。このことは下にもある、StarNet++を使った時の恒星の不自然な繋ぎの解決にもつながりました。


壁にぶち当たる

その後は、最近味をしめてしまったStarNet++で背景と恒星を分離し、最後はPhotoshop CCで仕上げています。ここで2つの壁に当たりました。一つは斜めに走る縞ノイズです。撮影した画像を連続で見てみると、これはすぐに原因がわかりました。SpaceX社のStarlinkです。処理の時に弾いた画像を見せます。

light-BINNING_1_rejected

すごい人口衛星の数です。オリオン座付近なので人工衛星が入るのは仕方ないのですが、この数は流石に閉口してしまいます。今回撮影した全ての枚数に衛星の軌跡が入っていました。一本、二本ならいいのですが、3ー4本同時に固まって次々とくると流石に辛いものがあり、処理でもどうこうなるレベルを超えてきます。

もう一つは、画像全面を覆う縦に走る縞ノイズです。これは最初どこで入ったかわからなかったのですが、いろいろ見ていくとバイアスフレームに全く同じような模様が入っていました。もちろんバイアス補正はしていますし、そもそもバイアスに入っていると言っても、加算したマスターバイアスをものすごく炙り出した状態でやっと見えてくるようなノイズです。うまく補正されていないのかと思い、バイアス補正をなくして処理してみましたがかえって悪化するので、なんらかの補正処理はとりあえずされているようです。ということは、補正した後にも残ってしまった縞があぶり出しの過程で出てきてしまったのかと思われます。あ、もちろん、バイアス補正がダークフレームやフラットフレームも含めてまだうまくできていない可能性も捨て切れません。ここらへんはもう少し検証の余地がありそうです。

この縞ノイズ、これまでほとんど気にしたことがなかったのですが、そもそもなんでこんなことになったかというと、一つの原因がStarNet++で恒星と、その他星雲などをうまく切り分けられて、相当強引な炙り出しが可能になったからです。恒星以外の画像がこちらです。

integration_DBE_DBE1_PCC_AS_SNP_org

その他の部分には系外銀河がチラッと写っているのさえもうまくとりだしていることがわかります。これをわかりやすいようにあえて無理やり限界近くまで炙り出してみます。

integration_DBE_DBE1_PCC_AS_SNP_shima

この画像を見ていると、全体に縦の線がかなり気になります。ゴミ起因の黒丸は無視してください。撮影中ゴミが移動していたみたいで、全然補正し切れていません。左の方の太い少し斜めに走る線がStarLinkの影響です。全体に覆う縦線が、バイアスにも入っているノイズです。バイアスをあえて強調してみましょう。

20190316_bias_6D_ISO3200_s4000x100

Lightフレームにも同様の縦縞が入ってしまっているがわかると思います。これらの縞ノイズが、画像処理の過程で星雲とか背景の淡い部分を炙り出していくと目立ってきてしまいます。

この縞ノイズは結局センサー自身が持っているもので、昔のデジカメではこれが相当大きかったそうです。今使っているEOS 6Dなどの天体撮影に適したカメラではかなり目立たなくなったとのことなので、普通にあぶり出すレベルでは、あまり問題にならないのでしょう。私もこれまでほとんど気にしたことはありませんでした。

今回は自宅での庭撮りで、フィルターも何も無しのわずか90秒露光というかなり厳しい条件なので、最初の撮って出し画像でも分かる通りものすごく淡い像しか写っていません。StarNet++を使って強度の炙り出しをする様になると、結構この縞ノイズが気になるようになってきました。

何か解決策はないかと思っていたら、PixInsightからのメールでちょうど似た様なテーマを扱っていました。今回はこの手法は用いていませんが、結構大変そうなので余裕のあるときにきちんと検証してみたいと思います。

あと最近ずっと不満だったのが、StarNet++の弊害なのでしょうが、とにかく明るい恒星がうまく背景とつながらなかったことです。どうしても恒星がサチってしまうか、不自然につながってしまいます。でも今回怪我の功名でしょうか、StarNet++が出した恒星以外をもとに、さらにそこからマスク画像を作り、恒星の周りの光芒を強調しすぎないように、マスクを何段階かに分けて処理する手段をある程度確立することができました。

同時に、これまであまり理解できていなかったPhoshopのアルファチャンネルを利用して、複数のマスクを入れ替えながら処理する方法もやっとわかりました。

マスク処理に関してはまだ未熟な点はありますが、以前よりはだいぶんマシになったかと思います。


処理結果、ここまで長かった

さて、そんなこんなで紆余曲折して長い時間かかってしまった結果ですが、以下のようになりました。

integration_DBE_DBE1_PCC_AS_SNP_mask_all2a_cut


センサー面のゴミが目立っていたのは手で補正しています。また縦縞ノイズを目立たせない様に、背景を少し暗くしてあります。恒星の一部中心はまだ飛んでいますが、一番懸案だった繋ぎの部分はあまりに不自然なことはなくなりました。


今回のまとめ

いろいろ問題があってえらい時間がかかってしまいましたが、自宅での撮影で1時間半露光でこれだけ魔女さんがでるのなら、まあ満足といっていいかと思います。

実は合計5回画像処理をフルでやって、やっとここまでたどり着きました。結果は画像処理にものすごく依存することがわかりました。最初のなんて今見るとノイジーで、階調不足で、かつ光芒部分が全部サチっていてひどいもんです。

その過程で
  • ArcsinhStretchが改めて有用であることがわかった。
  • StarNet++での恒星の自然なつなぎ方の手法が確立できた。
  • Photoshopのマスクの使い方に慣れた。
  • バイアスノイズが縞ノイズとして入る可能性がある。
など、いくつかのことを学ぶことができました。少し画像処理の上達を実感することができた1ヶ月でした。

あとまだ一つこの日に撮った画像が残っています。でもすでに記事が長くなりすぎたので、次の記事で今度はあっさりと書こうと思います。

 

このページのトップヘ