ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:極軸

sanpojinさんのSharpCapでの極軸測定がうまくいかないという記事を見て、どうもたわみが原因な気がしました。三脚の足を伸ばし切って極軸測定しているため、足元が弱くて、赤経体を90度回転させるとたわんで正確な測定ができていないのではと思ったのです。

逆に、もしたわみによって極軸調整の精度がずれするなら、そのSharpCapでのズレの値評価することでたわみ自身が定量的に測定できるのではと思い、今回考えてみました。

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たわみの測定原理

簡単なところから考えます。

まず、赤道儀が完全に天の北極を向いていて、極軸に誤差がない状態を考えます。もしこの状態でSharpCapで極軸調整をしたら、誤差は0と出ます。この誤差がなく、赤経体が最初上を向いている状態を初期状態としてはじめます。
  1. 最初極軸に誤差がない状態から、SharpCapの極軸測定中に90度赤経体を西側に回転させたときにたわみが発生したとします。簡単のために、鉛直方向に鏡筒が傾き、視野が1度角下を向いたとします。
  2. このときSharpCapは極軸が元々1度ずれていたのか、それともたわんだ結果1度角ずれて見えているのか分からないため、とにかく極軸が1度ずれていると表示してしまいます。
  3. そこで人間が赤道儀の仰角を1度(間違えて)上げることでSharpCapは正しく極軸が設定されたと勘違いをします。でも現実にはこの時点ではSharpCapも人間も本当は極軸が間違っていたのか、たわみでずれたのか知る由はありません。
さて、この90度回転している状態で、再度極軸調整を最初からやり直します。
  1. 鏡筒はまだ下に1度角ずれたところを見ていますが、SharpCapはそんなことは知りませんし、お構いなしです。
  2. 再び赤経体を90度戻す方向に回転させると、今度は鏡筒のたわみが解消され元の位置に戻ります。
  3. そのとき、西側に倒していたものを戻したので、鏡筒は東側にたわみが1度角戻る方向に動きます。
  4. SharpCapは最初の鏡筒の位置のズレなどお構いなしなので、最初から見て視野が1度東にずれたことのみを認識します。すなわち極軸が東1度ずれていると表示するわけです。
  5. と、同時に1回目の調整で勘違いして赤道儀を上に1度角ずらしてしまっているので、そのズレも検出されます。そのため、SharpCapは東と上方向に極軸が1度角ずれていると認識します。
2度目の測定で出た結果のズレは元々たわみから来ているので、たわみのずれの量そのものと比例しているというわけです。

最初極軸が理想的にあっている状態から考えましたが、もし1度目の極軸調整の前にもともと極軸がずれていたとしたらどうなるでしょうか?それでも1度目の調整を終えた後は「極軸があった状態+たわみでずれた位置」になるので、2度目の調整時のはじめには同じ状態になりますね。


イメージしにくい場合

上の説明を読んでもなかなかわかりにくいと思います。まずはSharpCapでの極軸調整(ちょっと古い記事ですがリンクを張っておきます。)を一度試してみて下さい。これをやらないと何を言っているのかよく分からないと思います。

その上で、90度赤経体を回転させたときに、たわみの代わりに赤緯体をコントローラーで例えば1度角落とす方向に回転させることを考えてみて下さい。その赤緯体の回転を補正するように、赤道儀全体の向きを変えるというようにイメージするとよくわかるかもしれません。

赤経体を90度戻すときも、先ほど赤緯体を1度角落としたのをコントローラーで戻してやると考えるとわかりやすいと思います。


他の方向のたわみの例

他のたわみの方向も同様に考えてみます。
  • もし最初に赤経体を90度西側に傾けたときに、たわみが西側(外側)に1度でるなら、それを補正するように東に赤道儀を1度間違って調整し、2度目の極軸調整で90度戻すときに上に1度角たわみが戻るのを下向きに補正するので、東の下向き方向に極軸がずれていると表示されるはずです。
  • 赤経体を西に回転させたときに、たわみが東側に起きることもあるでしょう。
  • 視野を考えているので、もしかしたらたわみ(見ている方向が)が上向きに動くことも可能性としてはあるでしょう。

全部の場合を書き出してみる

全部の場合をまとめて書いておきます。

赤経体を西に回転させたとき
  • たわみが下向き -> 東上向きのズレになる
  • たわみが西向き -> 東下向きのズレになる
  • たわみが東向き -> 西上向きのズレになる
  • たわみが上向き -> 西下向きのズレになる

赤経体を東に回転させたとき
  • たわみが下向き -> 西上向きのズレになる
  • たわみが西向き -> 東上向きのズレになる
  • たわみが東向き -> 西下向きのズレになる
  • たわみが上向き -> 東下向きのズレになる
となります。


一般化

簡単な数学で考えてみます。今、東のズレと西のズレをそれぞれ右のズレと左のズレと考えると、赤経体を西に回転させたときは、「たわみからSharpCapでのずれ」の変換が+135度の回転写像、赤経体を東に回転させたときは「たわみからSharpCapでのずれ」の変換が-135度の回転写像と考えることができます。

一般化すると、SharpCapで最初の極軸調整で90度赤経体を進めて、2度目に90度戻してたときの誤差を(x2, y2)とすると、たわみによってずれた角度(x1,y1)は

x1 = x2 cosθ - y2 sinθ
y1 = x2 sinθ + y2 cosθ

となる。θは赤経体を西に回転させたときは+135度、赤経体を東に回転させたときは-135度である。ただし、赤経体を元の位置に戻したらたわみは戻るものと仮定する。

ということが言えます。

ちなみにsin135°=1/√2、cos135°=-1/√2なので、

x1 = -1/√2 (x2 + y2)
y1 = 1/√2 (x2 - y2)

となります。


現実的には

でもこのままだとちょっと計算が面倒なので、簡単のためにもっと現実的な場合を考えましょう。基本的にたわみはほぼ垂直方向にのみ起こると考えってしまって差し支えないと思います。なので、x2とy2の絶対値はほぼ同じような値になると期待できます。SharpCapの2度目の極軸調整で出てきた誤差のx2かy2のどちらかの値を√2 = 1.4倍くらいしてやった値が実際のたわみと考えてほぼ差し支えないと思います。

もしx2とy2の絶対値に結構な差があるならば、たわみに横向きの成分があることになります。

まじめに計算してもいいのですが、もし更なる測定を厭わないならば、最初に西向きに赤経体を回転させて2度測定したならば、次は東向きに赤経体を回転させてさらに2度測定します。東向きの誤差の結果をx4、y4とすると、(もし横向きのたわみが西に回転させたら西に、東に回転させたら東に出るならば)
  • x2とx4は逆符号で、絶対値は似たような値
  • y2とy4はどう符号で絶対値は似たような値
になるはずです。なので、x2+x4は0で、
  • (x2-x4)/2が横方向のたわみを表し
  • (y2+y4)/2が縦方向のたわみを表します。
一番厄介なのが、もし横向きのたわみが西に回転させたら西に、東に回転させても西に出る(多分レアな)場合で、これはどうしようもないです。向きだけでなく、たわみの大きさも違う可能性があり、東向きと西向きを測定し、真面目に計算する方が早いです。まあ、そもそも横方向のたわみを相手にすること自身稀だと思うので、こんなのはホントにレアなケースだと思いますが。


任意の回転角のたわみ量

今回の結果は赤経体を90度傾けた時のたわみ量です。90度以下の場合はφにたわみを知りたい赤経体の角度を入れてcosφを上の結果にかけてやればいいいと思います。


赤緯体の場合

でも今回求めたのは、今回は赤経体の角度が変わった時のたわみ量だけなんですよね。赤緯体が回転した時のたわみ量はSharpCapを使う今回の方法では全く太刀打ちできません。赤緯体の方でまたいいアイデアがあったらブログに書きます。


まとめ

とりあえず頭の中でざっくり考えただけなので、もしかしたら何か勘違いしてるかもです。一度実際のSharpCapを使って、夜に赤緯体の回転をたわみとして試してみようと思います。

今回は、Mちゃん自宅に来るシリーズの第3段です。




4月27日の日曜の朝、曇ってはいるものの、予報では夕方くらいから晴れるみたいなので、Mちゃんに声をかけました。実は土曜も誘ったのですが、どこかの天文台でオンラインの講義があるとかで忙しいみたいでした。じゃあ次は連休中でいいかと思ってたのですが、MILTOLを試すのなら月が見える方がいいと思い、まだ満月前なので昨日の今日ですが声をかけてみました。電話口で既にMちゃんの喜んでいる声が聞こえてきましたが、午後からお母様が用事があるとのことで、昼頃に自宅に来て、今回はなんとMちゃん一人で夜まで居ることになりました。さて、どうなることやら。


到着

13時過ぎ、お母さんとやってきたMちゃん。まず最初に手渡されたのが、大きなロールケーキでした。手ぶらできてくださいと伝えてはあるのですが、気を使ってくれたのでしょう。Mちゃんのおうちはケーキ屋さんで、聞いたらなんとお母さんの方がお店をやっているとのこと。そういえばお父さんは建築関係と言っていたことを思い出しました。実は私、甘いものには目がなく、後でみんなで食べたのですが、フルーツたっぷりの、それはそれは美味しいロールケーキでした。

次に出てきたのは、アイピースやMILTOLのケースとともに、赤道儀が入った大きな箱でした。車のトランクに積むようなケースで、三脚も入っているとのこと。荷物だけ運んだら、全然気兼ねない様子でお母さんにバイバーイとしていたので、一人でいても全く大丈夫そうでした。

今日やりたいことは、
  1. 何か質問があるというのでそれを考えること
  2. MILTOLの改造
  3. 赤道儀を使いこなすこと
  4. 時間があれば天リフの中継を見ること
です。


課題の確認

まず最初にやったことは昨日聞いていたというオンラインの講義の課題でした。小学生向けにしてはえらい難しいなと思いましたが、ほとんど出来ています。「考えてみたけど、どうしても迷ったところがある」というので聞いてみたのですが、それも十分きちんと考えていて、特に何も言うことがないくらいでした。まだ途中でやっていないところもあったのですが、まずは自分でやるとのこと。とてもいい心がけだと思います。「また分からないことがあったら、次回聞く」とのことでした。


MILTOL改造

次はMILTOLの改造の続きです。

ファインダー:
聞いてみると、何回か自分で使ってみたようです。多分科学博物館での観望会でしょう、ファインダーは県天のKさん(家の前の人)につけてもらったみたいで、塩ビ管をうまく加工して、台座をつけてくれてました。そこにポルタのファインダーを付ければいいみたいで、十分かと思います。


カメラ接続:
今回はカメラへのアダプターをZWOのものからAmazonで見つけたノーブランドのT2-31.7mmアイピース変換のものにしました。



SVBONYでも同様のものがありましたが、こちらの方が安かったです。これまではT2ネジでASI224MCを固定していましたが、これでカメラの先にアイピース と同じ径のノーズを付けることができます。そうすると、将来アメリカンサイズのQBPとかを取り付けることができるようになります。でもアメリカンサイズのQBPでも小学生にとっては非常に高価なものになります。「サンタさんを信じて待とう」ということになりました。


アリガタ固定:
アリガタとのMILTOLの固定ネジは一本のままだったので、今回2本固定にするように改造します。どうもお父さんがネジで固定しようとしてくれたみたいでしたが、そもそもMILTOLのネジ穴がインチ規格です。インチのキャップネジを渡しておいたのですが、そもそもインチ規格の六角レンチがなかったようで、マイナスドライバーで締めることができるネジに代わっていました。聞いたら、お父さんネジの入手もかなり苦労していたみたいです。建築関係とのことなので、ネジは詳しいとのことですが、インチ規格は結構大変です。なので今回のもう一つの穴はM6ネジにします。

この日にやったことは、MILTOLの台座の既存の穴にM6のタップを切ること、そこのネジ穴に合わせるように、前回取り付けたアリガタに穴を開けることです。

まず、MILTOL台座の穴の位置に合わせて、アリガタの真ん中らへんの穴を開けたい位置に、マーキングと、センターポンチで位置決めをします。当然、Mちゃんに全部やってもらいます。マーキングは最初定規でやってもらいましたが、いい機会なのでノギスを使ってもらいました。ネジの径とかも測るので、ノギスで精度よく測る方法を学んでもらいました。ドリル穴の実際の位置決めのセンターポンチはバネ式のバチンとかやって打つやつで、しかも小学生の女の子の力だと結構大変そうで、頭を近づけたところで大きな音とともに跳ね返ってきたので、かなりびっくりしてました。ドリルでの穴あけは前回もやってもらったのでいいのですが、最初細いドリルで、段階を追ってM6まで開けてもらいました。太いドリルになるとちょっと怖そうにしてましたが、回転数を落とし、持ち方をしっかりしてもらうことで、基本全部自分で空けてもらいました。

MILTOLの台座の方は、タップ切りです。こちらもM5の下穴を開けて(これはバイスに固定できなかったので、私が手持ちで空けました)、そこにM6のタップでねじ山を切ります。最初大変そうなので私がやろうと思ってたら「やりたい」と言い出すので、どうぞどうぞと渡しました。垂直に立ててやるのはほぼ問題なし。タップを回すのが固いので少し躊躇してましたが「たまに戻しながらやるんだよ」というので、徐々に進んでいき、無事に下まで貫通しスルスル回るようになりました。戻すときに引っ掛けないように気をつけながらタップを外し、ネジがきちんと嵌ることを確認します。

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あまり写真を撮ってなかったのですが、
これはその中の数少ない一枚で、タップ切りの最中のものです。
塩ビ菅と、ファインダーの台座も少し見えますね。 

これで準備完了。アリガタをMILTOLの台座に、一つは1/4インチネジ、もう一つはM6ネジで固定します。最初の寸法採りが良かったのでしょう。特に修正することもなく、うまく取り付けることができました!


休憩

ここで一旦休憩。お腹が空いたみたいで、持ってきたお弁当を広げてます。宙のまにまにを持ってきたら、お弁当を食べながら夢中になって読んでました。宙のまにまには、天文ファンならご存知の方も多いと思います。高校の天文部の話で、基本ラブコメなのですが、星ネタが満載で、その中で使われた望遠鏡のモデルと言われているPENTAX75SDHFは一時期本気で欲しいと思っていました。

Mちゃんは、一度入り込むとほとんど周りの声が聞こえないみたいで、私もその間に自分のことをやってました。お弁当もそこそこに、1巻を読み終えたので「返してくれるなら持って帰っていいよ」と言っておいたのですが、コミックは鬼滅の刃全巻以降買わないとの約束があるらしいです。迷ってたみたいですが、判断は任せました。

私もお腹が空いてきて、カップ焼きそばを平らげてしまいました。


赤道儀

この時点でもう16時過ぎくらいでしょうか。次にやったことが赤道儀の動作確認です。赤道儀をプラスチックケースの中から出して、玄関で組み立ててみます。

まずは先ほどのMILTOLを赤道儀に取り付けてみます。ところがここで問題発生。赤道儀自身はVixenのSPなのですが、そこにアリガタを取り付けられるように、Vixenで売っているアリミゾを取り付けてあります。でも今回のアリガタが少し幅が狭かったようで、そのアリミゾについているネジが短すぎて届かず、固定できません。仕方ないのでM8の長めのキャップネジに付け替え、ついでに落下防止のねじ穴にM6のキャップネジをさしておきました。アリガタに切り欠きが入ってないので落下防止にはならないですが、普通のキャップネジを手で締めることになるので、もう一本ネジがあれば多少補助にはなるでしょう。

次に困ったのが、ウェイトでした。落下防止ネジがついてないのです。とりあえず手持ちの大きめのワッシャーとM8ネジで、簡易的な落下防止リングを作ることにしました。というのは、ワッシャーの穴がM6用でM8ネジが通らなかったので、穴を広げる加工が必要だったからです。はめてみると、手持ちのM8ネジだったので少し長くて取り付けが面倒とかありましたが、少なくともウェイトのネジが緩んでていても最後で止まって、落ちるようなことは無くなりました。

電池ボックスと、コントローラーをケーブルでモーターに繋げて動作確認をします。コントローラーのボタンを押すと、モーターシャフトは回っているので大丈夫そうです。が、そもそもモーターがー回っていても赤道儀が動いているかどうか分からなかったみたいです。そう、赤道儀はギヤ比がものすごく大きいので、本当に動いているかどうか分からないんですよね。まず、モーターをx32の高速回転をさせて、メモリ環のところをじっとみててもらい、やっと動いていることを確認してもらいました。次に等倍にして、カチカチ音が鳴っていることで、きちんと動いていることを実感してももらいました。


極軸の精度について

さて、この時点で18時前くらい。ここで空を見てみますが、まだまだ雲が厚く月は見えそうにもありません。ちょっと時間があるので、今回もう一つ理解して欲しかった、極軸についてです。

まず、赤緯については赤道儀に目盛りがついているので、富山なら36度から37度に合わせます。次に北向きですが、これをどう合わせればいいかあまりわかっていないみたいでした。方位磁針の磁北が、天の真北とずれるということは知っていました。調べてみると7度ほど「も」ずれていることが分かりました。7度が大きなズレということは実感しているみたいです。

ちなみに、iPhoneのコンパスは、表示を「磁北」か、補正した「真北」かを選べるので楽ですね。

基本的には北極星の位置に合わせればいいのですが、これも40分角くらいのズレがあるそうです。じゃあ、この40分のずれって、どれくらいのものなのでしょうか?これを理解してもらいたいのです。

基本は以前記事にも書いた

の話なのですが、これを小学生にもわかるように噛み砕きます。

  • まずは基本、もし赤道儀の赤経体の回転軸の向きが、極軸から1度上にずれていたら?
東の空を見たときに、星が進む方向に比べて、望遠鏡の視野は時間が経つと南側にずれていきます。これを天球を想像しながら手で指し示して理解してもらいます。なので、実際に望遠鏡をのぞいていると、星は左(北方向)にずれていきますね。

  • 次に、もし赤道儀の赤経体の回転軸の向きが、極軸から1度右(東方向)にずれていたら?
南の空を見たときに、星が進む方向に比べて、望遠鏡の視野は時間が経つと下(地上方向)側にずれていきます。これも天球を想像しながら手で指し示して理解してもらいます。実際に望遠鏡をのぞいていると、星は上にずれていきますね。

ここまではよく理解できたようでした。次はMちゃんへのクイズです。

  • もし赤道儀の赤経体の回転軸の向きが、極軸から1度東にずれていたら、東の空を見たときに、星が進む方向に比べて、望遠鏡の視野は時間が経つとどの方向にずれていくか?

これはひっかけ問題みたいで、なかなか難しいです。Mちゃん、しばらくの間ものすごく考えているみたいでした。でも結局超えたにはたどりつかづ「星と視野の動きは平行になるので動かない」と説明すると、なるほどと納得したようでした。やはりきちんと考えようと色々頭を使うと、答えを聞いたときもきちんと納得できるようです。


ずれを定量的に見積もって実感してみよう

少なくとも、極軸がある方向にずれると、視野から星がある方向にずれていくということは定性的には理解できたみたいです。じゃあ、実際どれくらいの極軸のずれで、どれくらい星が逃げていくのかという定量的な理解をして欲しいのです。

とりあえず、赤経体の軸が極軸から北に1度ずれているとしましょう。そうすると、実際の星と視野が1度の角度を持ってずれていくということはすぐに理解できました。1時間に星は15度進むということも当然知っていました。なので、半径15度で内角1度の扇型の弧の長さを求めればいいということはすぐに思いついたようです。とても勘のいい子です。

円周の長さを求めるのは学校で習ったはず。円をたどると1回転で360度ということも知っている。なのですぐに計算を始め出しました。でも半径なのに15「度」というのがややこしかったようです。「じゃあ、度じゃなくてm(メートル)」にしてしまったら?」というと、またすぐに計算が進み出し、答えが0.26メートルと出ました。今、メートルには意味はなく、度にすればいいので、答えは0.26度です。

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でもこの0.26度という大きさ自体の価値がよくわかりません。なので、今度はポルタで見ている視野角を求めてもらいました。ポルタの焦点距離は910mmです。面倒なので1000mmとしてしましましょう。ここに焦点距離10mmのアイピースをつけます。倍率は100倍です。この視野角はMちゃんも普段よくポルタを見ているので感覚的にわかります。

倍率が100倍というのを視野角に置き換えます。人間の目が顔の前面、すなわち180度を見ていると仮定します。倍率2倍はそれの半分、90度を見ることができます。倍率10倍は18度を見ることができます。ということは100倍というのは1.8度を見ることができると考えます。

面倒なので先の0.26度を0.25度、1.8度を1.75度として計算してみましょう。極軸1度のズレで、1.75度の視野に見える星が、1時間経つと0.25度ずれるので、0.25/1.75 = 1/7と、視野の7分の1ずれることになります。例えば極軸から5度ずれていたらそれの5倍なので、1時間で視野の7分の5がずれていき、最初に見ていた星のほとんどは逃げてしまいます。

ではここでさらに、赤道儀でなく経緯台で考えてみます。視野は1.75度と同じとして、経緯台でみた時は追いかけることも何もしないので、星のずれは天球の動きと同じ1時間で15度です。この時どれくらいの速さで星が視野から逃げていくかという問題です。1.75度は面倒なのでもう1.5度としてしまいましょう。すると、1.5/15=0.1時間、すなわち6分間で視野の端にあった星が反対側の視野にきてしまいます。経緯台をずっと使ってきたMちゃんにとってもこの「6分で視野から逃げていく」という計算結果は実感としてかなり納得だったみたいです。

途中、みんなでケーキを食べました。「自宅がケーキ屋さんだと食べ放題でいいね」とか、好き勝手なことを言ってましたが、太るので普段はほとんど食べないそうです。6年生だともうお年頃ですね。うちの家族は「おいしいおいしい」と言って、パクパク食べてました。楽しいひと時です。

さて結論としては、赤道儀の極軸合わせの精度は5度くらいずれても経緯台よりははるかに逃げていかないことがわかったので「赤道儀は北極星のある方向に適当にどんとおいてやればいいでしょう」ということになります。撮影をしない限り、眼視や電視観望ではこれで十分だと思います。

と、ここらへんの計算をかなり実感してもらって、今回わかったことを自分でノートにまとめてもらいました。私はその間に、天リフ中継を見る準備です。


天リフ中継

20時ちょうど、まだMちゃんはノートをまとめていたみたいですが、時間なので「始まるよー」と呼んで、しばらく出演者の写真を見ることに。Youtubeの映像を50インチのテレビに映し出して大画面で見ます。かずーさんの山の頂上へ登っていく光の列を見てMちゃんが「きれーい!」と感嘆の声をあげていました。

どうも写真も撮ってみたいようで、カメラのことを少し話しました。カメラは1台X5が余っているので、またそのうち貸してあげようと思います。しばらく中継を見ていたのですが、20時半過ぎくらいでしょうか、外を見ると雲が少なくなってきて少し月が出始めています。


月を見てみる

次の日は月曜で学校なので、あまり遅くなるのもよくありません。天リフの中継は後でも見えるからと、ぱっとここで切り替えて、せっかくなのでセットアップした赤道儀を試すことにしました。外に出た直後はまだ月に雲がかかって淡くしか見えてませんでした。時間もないのでCMOSカメラではなく、MILTOLにアイピースをつけての月の観望です。

まずは今回学んだように赤道儀を北向きにどんと置きます。次にクランプを緩めてある程度MILTOLを月の方向に向けます。今回はファインダーもついているので導入は比較的簡単です。モーターがきちんと回転することも確かめて、微調整をコントローラーで行います。途中「片方動かない!」とか叫んでましたが、ケーブルの差込みが不十分なだけでした。ここらへんもきちんと自分でチェックできるみたいです。

月が視野に入って、アイピースで見たときの一言目が「明るーい!」でした。10mmのアイピース なので、MILTOLだと20倍、小さいですが満月前なのでかなり明るく見えるはずです。あ、ピントを合わせるのに少し苦労しました。天頂プリズムは長すぎるし、アイピース だけだと短すぎます。なので、少しアイピースを抜き出すようにして固定してピントを出しました。

程なくしてお母さんの迎えの車が入ってきました。Mちゃん、早速お母さんに「見て見て!」と自慢げに覗いてもらっていました。21時過ぎ、赤道儀を全部最初にあったケースの中に入れ、MILTOLも箱にしまい、計算のメモなんかも全部後片付けをして、お土産の本(本?コミック?)を何冊か持っていって今日は終了です。とても楽しかったみたいで、何度もお礼を言ってくれました。「今度は月のない暗い時に銀河を見てみよう」と次回の約束をして、帰っていきました。

この日は午後から夜までずっとMちゃんに付き合ってたことになりますが、私自身とても楽しい時間でした。また遊びに来てくれるといいなぁ。


今回の記事は大阪あすとろぐらふぃ〜迷人会工房様の微動雲台のテストです。さてさてどんな結果が出るのか、私自身楽しみです。


あんとんシュガーさんがわざわざ持ってきてくれました

先週の連休にあんとんシュガーさんから大阪あすとろぐらふぃ〜迷人会工房製作の微動雲台を受け取りました。あんとんシュガーさんがしばらく使っていたのですが、自宅に遊びに来がてらわざわざ届けてくれました。受け取った時のパッと見の印象は、頑丈そうというもの。大きさも径もポタ赤にはちょうどいいくらいかと思います。アルミを削って組み上げてますが、銀色がかっこいいです。

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微動雲台本体です。三脚はアントンシュガーさんのもの。


ポタ赤のための極軸合わせ微動雲台

まず最初に断っておきますと、私はポタ赤には微動雲台は必要ないと思っています。いや、より正確にいうと、弱い微動雲台を加えて揺れるくらいなら無い方がいいという意見です。もし揺れを増加させないような微動雲台があるなら、当然便利になるので使った方がいいと思います。

これまでもポタ赤の極軸を合わせる目的で微動雲台と呼ばれるものは、各種販売されてきています。 ですが、ほとんどのものが強度的に問題がありそうです。私が試したのは以前の記事に書いてありますが、片持ち構造なのが根本的な原因で、撮影では不利になると判断して外してしまいました。同ページの写真を見ても、一見相当頑丈に見えるのですが、やはり鏡筒部がある程度の重さになってくるとどうしても一番弱い微動雲台部分で揺れてしまいます。風などない日は問題ないでしょうが、少し風が出てくるとやはり星像が揺れしまいました。

そのページのコメントにHUQさんがユニテックのものが一番マシと書いてありますが、それでもコストと重量を考えるとあまり大型化もできないことと、本質的に可動部分を持つためにどうしてもこの部分が一番ネックになりやすいのは、ある意味仕方ないのかと思います。


迷人会製微動雲台

この観点からいくと、迷人会工房の物はポタ赤用微動雲台にしては大型の部類に入り、押し押しネジ構造は安定な微動方法、さらに縦、横共にクランプで締め付けることでガタつきをなくすことができそうです。「これまでポタ赤用の微動雲台はあまり使いたくなかったが、これだったら試してみたい」というようなことをTwitterで呟いたら、こたろうさんから「じゃあテストだ!私の決定は絶対じゃあ!(意訳あり)」との命が下り私のところにお鉢が回ってきたというわけです(笑)。

実物の構造を見てみますと、写真でもみたようにpitch(縦)、yaw(横)共に押し押しネジで、クランプで両軸とも固定できるようになっています。クランプを緩めると少しガタついたので、ここがどう効くかがテストのポイントになりそうです。あと、あんとんシュガーさんが「微動ネジを回しているとカクンと動くことがあった」と言っていました。でも雲台単体で動かしてみてもスムーズに動き、そんな変なことはありません。ここもきちんとテストするポイントになりそうです。

この時点で最近ユーザーの多いAZ-GTiの赤道儀モードで試すか、SWATで試すか迷っていたのですが、Twitter上で製作者の井戸端秀樹さんとコンタクトを取り「是非ともSWATで試して欲しい」との要請がありました。AZ-GTiは次回専用ものを作るそうです。

ところが、実際にSWATを取り付けようとしたら雲台のトップが水平でなく、35度くらいの角度がついていることに気づきました。ご存知の方も多いと思いますが、SWATは日本での使用が前提で、水平の台に取り付けても回転軸が極軸方向を向くようにあらかじめ35度くらい傾けた足が付いているのです。

このままだと明後日の方向を向いてしまうので、最初にやったことは雲台の分解でした。といってもトップを外しただけです。外したところを見ると、下部に耳が後付けで斜めのところに付いていて、これを外して最下部付近に取り付けることにより、トップ部をまっすぐ、上部が水平になるように取り付けることができるようです。これは対応するポタ赤を増やす優れたアイデアです。日本で使う限り、基本的にこの2箇所の取り付けで十分かと思います。

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この状態で、微動ネジを回してみるとあんとんシュガーさんが言っていた「カックンとなることがある」というのがわかりました。どうやらSWATを上につけて、それが斜めになっていることで、重力でネジに荷重がかかり、荷重がかかった状態で当たりが悪いとネジの回りが悪くなるのです。これはテストのしがいがありそうです。


極軸調整テスト

雲台を受け取ったのは先々週でしたが、9月は全然晴れなかったのでなかなかテストできませんでしたが、最終週になってようやく晴れたので、平日でしたが、まずは本来の目的である極軸合わせのテストをしました。

まずは実際のSWATを、普段AZ-GTiで使っている三脚とハーフピラーの上に付けてみました。もともとハーフピラーをつけた理由は、鏡筒が三脚に当たることを防ぐためです。今回その役割をサイズ的に微動雲台が担ってくれたので、結局はハーフピラーを外し、三脚に直付けすることにしました。

また問題を切り分けやすくするために、撮影用鏡筒はつけずに、ガイド鏡のみを直接SWATに取り付けました。ガイド鏡は以前胎内星祭で購入した120mm F4のもの。カメラはASI290MMです。取り付け方法はこれまで一番揺れが少なかった、モノタローで買ったクランプを利用しました。そこにアルカスイスクランプを取り付け、上下に2つ溝が切ってあるアルカスイスプレートを挟み、ガイド鏡下部のアルカスイスクランプで取り付けます。

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三脚はいつも使っているシステマティック化したGitzoのバサルト製のものです。写真では足の一本にタカハシの三脚アジャスターをかませてますが、最初の微動雲台でのテストでは外しています。


SharpCapでの極軸追い込み

では実際にSharpCapのPole Align機能を使い、迷人会の微動雲台を使って極軸を調整してみましょう。まずは、とりあえず一番最初に使ってみた時のファーストインプレッションです。最終的に1分角以下になれば十分な精度が出ていると考えていいでしょう。
  1. 最初は当然大きくずれているので、微動ネジのレンジだけでは足りずに三脚の足を伸び縮みさせたり、横にずらしたりして大まかに合わせこみます。
  2. ある程度位置が合ってからは微動の出番です。と言ってもまだそこそこずれているので大きくネジを回す必要があります。その際、ピッチでやはりひっかるようなところがありました。
  3. また、これもピッチですが、一方向に回しても星像が一旦逆方向に動いてまた正しい方向に戻るということがありました。どうもネジの当たり具合で線形に動かない部分があるようです。
  4. でもある程度位置が合ってきて、微動になってくるとそういったことは問題にならず、うまく滑らかに動かすことができます。動かす精度は十分なものがあり、1分角以下で余裕で合わせることができます。
  5. 一旦かなり合わせてからクランプを締めてロックすると、やはり位置がずれてしまいます。なので、ロックした後に微調整で合わせる必要があります。ロックしても微調の範囲では星の位置を動かすことはできます。
  6. ロックさえさせてしまえばガタつきはほぼ皆無。少なくとも私は全く気になることはありませんでした。
  7. この状態で下の写真のように、ロックしてかつ極軸も余裕で1分角以下の精度で合いました。
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この後、何度か同じようなことを繰り返しましたが、最初の印象と違いはそれほどありませんでした。というわけで、上に書いたものが偶然とか、たまたまとかではなく、ほぼ実際の動作状況だと思います。


クランプの影響

あと、みささんも気になると思われるクランプロックの影響を書いておきます。動画で実際の動きを確認してみてください。
  1. まず、クランプロックされた状態で1分角以下、平均30秒角以下程度に合わせます。
  2. 次にyaw方向のクランプを緩める(動画7秒辺り)と、1.5分角程度にズレます。その後、再びクランプを締める(動画17秒辺り)と30秒角程度に戻ります。
  3. さらにpitchのクランプを緩める(動画38秒辺り)と、今度も1.5分程度ズレます。問題はこの後で、閉めて(動画47秒辺り)も戻らずに、時として3分以上にズレが大きくなることがあります。ずれる量は押し押しネジが互いにどれくらい耳に強く当たっているかに依存するようです。


というわけで、やはりクランプ開け閉めの影響は存在するようです。この結果だけ見ると、クランプの影響が大きく思えてしまうかもしれませんので、実際にどれくらいの精度が必要かはきちんと定量的な評価が必要かと思います。

必要な極軸の精度

では、極軸のズレで1分角というのは実際にどれくらい大きなズレなのでしょうか?細かい計算はこのページを見てもらうとして、ざっくり1分角の極軸のズレで、4分間露光して、星像にして最大で1秒角のズレ。

結論だけ言うと、普通の目で合わせる極軸望遠鏡ではほとんど分からないレベルのズレかと思います。ポタ赤で撮影する場合、せいぜい600mm程度が最長の焦点距離になるかと思われます。この焦点距離程度なら、1分角で合わせたら例えば5分間露光しても極軸のズレからくる星像のズレは1秒角程度となります。これをたとえばEOS 6Dで撮影すると、1ピクセル2.3秒程度なので、ズレは1ピクセルの半分以下。ほとんど影響はありません。むしろピリオディックモーションが一般的にポタ赤レベルだと数十秒角、今回使うSWAT200でも10秒程度と遥かに大きくなり、こちらは4ピクセル程度のズレとなるため、支配的になります。

極軸精度で1分角程度、星像のズレに換算してして4分で最大1秒程度というのは、SharpCapなど極軸を正確に合わせることができるツールがあって初めて検証できる精度の話になっています。ちなみに、北緯35度の日本では極軸は大気差で1分30秒角程度ずれるので、大気差補正をしないと意味がないレベルでもあります。SharpCapにはこの大気差を観測場所の緯度に応じて補正する機能があります。1分各程度で合わせ混むことができると、この機能が意味を成してきます。

なので、今回この微動雲台で合わせている精度自体、ポタ赤ではすでに十分すぎるものと考えることができます。


とりあえず触ってみての結論

さて、この状態である程度の結論を言うと、
  • まだ少し引っ掛かりや進行方向の反転はあるけれどもこれは十分改善可能と思われる。
  • 微調整に関しての精度は十分満足。
  • ロック時のズレは気になるが、精度的には十分で、さらに運用で影響を少なくすることはできる。
  • 特筆すべきは、クランプをロックした後の揺れの少なさで、まるで大型の赤道儀の揺れの少なさを彷彿とさせます。振動試験は後で別途やろうと思っていますが、このレベルならば撮影でも全く問題ないと思います。
というわけで、私としてはこの時点でも実践投入可能という意味で十分な合格点を出したいと思います。

動画で見てみる: 微動

上で説明したことを実際に動画で見てみましょう。

1. まずは極軸近辺でpitch方向に微動した時、どれくらいきれいに動くかです。

pitch、微動

動きのスムーズさを見るために、1. 一旦通り越して、2. 反転して戻ってまた一度通り越して、3. さらに反転して微調整して合わせこんでいます。これくらいの操作は余裕ということです。


2. 次にYawの微動です。

yaw、微動

同様に、一旦通り越して、反転して戻ってまた一度通り越して、さらに反転して微調整して合わせこんでます。


動画で見るとわかると思いますが、pitch、yawともかなり精度よく合わせこむことができるのが分かるかと思います。


動画で見てみる: 大きくズレた位置から合わせ混むまで

1. まず最初に試したのが、迷人会製微動雲台を使って実際に大きくずれた状態の一から合わせ込んだときの動画です。一応何度か試したので、操作には慣れてある程度スムーズに行くときの場合です。約2分半かかってます。


1分5秒くらいのところでしょうか、pitchの移動方向が反転しているところがあります。でもこれネジは一方向に回しています。このようにおそらくネジの頭が斜めになっているためにいったん反対方向に進んでしまうようなところがあります。1分35秒辺りでYawに、1分59秒辺りでpitchに大きく飛んでいるのはクランプを締めたからです。クランプを閉める前に微調整してしまっても結局ずれてしまうので、ある程度あってきたらまずはクランプを締めています。その後の微調整はスムーズにいきます。


2. 次に試したのが、微動を使わずに三脚の足の伸び縮みでpitchを調整し、足を横にずらしてyawを調整するというものです。3分以上格闘しましたが、pitchの調整が難しすぎて最後まで1分角以下では合わせられなくて諦めました。Gitzo三脚の伸び縮みも、固定してしまえばかなり頑丈ですが、ロックするときのズレは微動雲台より遥かに大きいです。嫌になったので動画は無しです。


3. 最後は、三脚足の調整では難しかったpitchを、タカハシの三脚アジャスターに変えた場合です。Yawは三脚の足ずらしで合わせ混んでいます。


多少慣れたせいもあるかもしれませんが、なんとこれが1分半ほどで合わすことができてしまい最短でした。なんか迷人会様に合わせる顔がありません <(_ _)> 。原因はタカハシの三脚アジャスターの動きがスムーズなところです。

なのでpitchに関してはまだ三脚アジャスターに分があり、こちらの方が合わせる時間が短いです。ここはやはり迷人会さんの微動雲台も改良してスムーズさを出して欲しいとことです。

Yawに関しては以前計算したことがありますが、適当な仮定を置いて考えると微動雲台で調整するのに比べて、三脚の足をずらす方法では5倍くらい精度が悪くなります。でもコンコンコンとか、叩いて少しづつずらすようにしていくと、なんとか合わせ込めるみたいです。

ちなみに、三脚アジャスターとはこんなやつです。

IMG_0861

三脚の下に置いて、ネジをくるくる回すことで高さを調整できます。3つの足全てに置く人もいるようですが、私は(結構高いので)一つしか持ってません。でも改めてネジの先を見ているのですが、あまりキレイとも言い難いです。やはりボルト端部が面に垂直に接するのが肝なのかもしれません。

IMG_0862



改良案

現段階での改良案を提示しておきます。この提案は振動試験をやったら変わる可能性もあります。
  • まず、押しネジは一点でプレートに接するのが理想。
  • 特にpitchは接地面がボルトに対して斜めになるので不利なのではないでしょうか。耳のつける位置を変えて二通りの曲軸設定に対応するというアイデアは秀逸です。真っ直ぐにトップを立てる場合でも少し斜めの位置に取り付けることになっているので、一つは耳を真下につけたほうがいいと思います。日本仕様で35度付近に付けるようにして、ボルトと耳の設置面が垂直に当たるようにしてはどうでしょうか?
  • ボルトの端部の曲面になるように少し加工すればずいぶんマシになると思います。今は斜めに平面のようになってしまっているので、へんな戻りが出てしまうのかと思います。今の端部だと耳の設置面に傷ついてしまっています。

まとめ

今回、大阪あすとろぐらふぃ〜迷人会工房様から微動雲台をお借りしました。

これまで微動雲台の決定版がなかなかなかったことから、強度的にはこれが決定打になる気がします。ネジのあたりの部分を改良してよりスムーズな動きになれば、精度の面でも決定打になると思います。

次回、振動の方もテストしてみたいと思いますが、見ている限り既に頑丈そうで、違いが示せるかどうか心配しているくらいです。もうしばらくだけお借りします。


 


昨日のTG-SPの自動追尾テストに引き続き、追尾の精度を出すためにSharpCapで極軸の調整をしてみました。使った機材は手持ちのCMOSカメラASI224MC16mmのCSマウントのレンズです。

はっきりいってむちゃくちゃ便利です。しかもとても簡単です。あえて難しいところを言うなら、日本語に対応していないところだけでしょうか。

1. まず、CMOSカメラをどこかにマウントします。今回は高橋の鏡筒バンドの上に固定しました。

IMG_0274


2. CMOSカメラを赤経用の回転軸とだいたい同じ方向に向けます。SharpCapの途中の説明の中には1度から5度までの精度と書いてありました。

3. 次に、赤経回転軸がだいたい北に向くように三脚ごとでいいので、方向を合わせます。これも5度くらいの精度でいいでしょう。実際にはカメラ画像に北極星周りが入ればよく、その範囲はカメラの画角で決まるので、今回のASI224MCで16mmのレンズを使うの場合、横17度、縦12度くらいの範囲が見えます。なので画面の真ん中あたりを中心に使うとすると、5度までというのは的を得た値だと思います。

4. SharpCapを立ち上げ、ToolメニューからPolar Alignを選びます。最初に説明が書いてあるので読んだほうがいいですが、書いてあることは、
  • 赤道儀が必要。
  • 1度から5度までの画角が必要。200mmの焦点距離のガイダーが理想。(と書いてますが、今回の16mmでも十分使えています。)
  • 10個から15個の星が見える必要がある。
  • 初期のアラインメントは5度くらいの精度が必要。
  • 赤道儀は望遠鏡が上方を向くホームポジションから始めるといい。
逆に必要のないものは
  • 正確なファインダーのアラインメントやコーンエラーを正すこと
  • 自動導入
  • 他のソフトやインターネット接続
など、何が必要で何が必要ないかという一般的なことで、大したことではありません。

5. Nextを押して、いよいよ北極星周りの認識です。15個くらいの星を認識しないとダメみたいです。
この時点で北極星周りがきちんと見えていると、Plate solvingでデータとして持っている星図と比較して、各星の位置が認識され、極軸周りに同心円が多数見えます。

IMG_0271

6. 星の認識がうまくいくと、右下のCould not soleveがSolevedに変わります。CMOSカメラの露出時間とゲイン、およびPolar Align設定の中のNoise Reductionが結構効きます。私は0にしました。うまくいくと写真のようになります。

7. Solvedの状態がある程度続くようになったら、Nextを押します。

8. CMOSカメラを含めて、赤道儀を赤経方向に90度位回転させます。

9. 再び星の位置が認識され、写真のようにターゲットの星を矢印のところまで持って行けという指示が出ます。

IMG_0276

10. 三脚をずらすなどして赤道儀全体を動かして、微調整します。このとき注意なのですが、当然赤道儀のモーターを利用して合わせてはいけません。あくまで、架台の方の移動(大きな赤道儀には微調ネジがついていますが、ポタ赤などにはそんな豪華なものは付いていないので、本当に三脚をずらします。)で位置を調整します。合わせている途中で、移動量に応じてターゲットの位置もリアルタイムでずれていきます。ほぼ合わせ終わったのが下の写真です。

IMG_0277


11. ある程度合わせてからNextを押すと、誤差がどれくら残っているか表示されます。

IMG_0280


初めてやったにもかかわらず、実作業は15分くらいでした。この記事を書いている時間の方がはるかに長いです。慣れれば、ものの数分で終わると思います。恐ろしく簡単です。

途中画面上で星の位置を移動して合わせるのに、三脚の足の長さを変えて微調整したのですが、星の村のスターライトフェスティバルでHUQさんに見せていただいた、

IMG_0199


のようなものがあると便利そうです。これどこのメーカーのものなのでしょうか?(2016/10/20 追記: タカハシ製でした。Vixenでもよく似たものを出しているみたいです。「三脚アジャスター」で検索すると出てきます。)

赤道儀の水平出しはしなくていいのでしょうか?とか、考えていたのですが、赤道儀自身がポタ赤で自動導入はしないので赤径の回転軸さえあっていればよく、そもそも水平などもなす必要がないために、このような簡易調整で十分なのですね。

それと似た話で、実は最初極軸を合わせる前、CMOSカメラの中心は赤径の回転軸と合ってなくていいのだろうか?とか、センサー平面は赤経回転軸に垂直になってなくていいのだろうか?など、いろいろ考えました。でも無限遠のものに合わせて回転させて見ているので、場所も角度も極軸が画面内に入るくらい大雑把でいいという事が、やっと理解できました。いやあ、簡単です。(追記: 2016/11/3 牛岳でAdvanced VXにBKP200を乗せ、その上にFS-60を乗せて、さらにその上にASI224を乗せて試した時は全くうまくいきませんでした。合わせ終わって回転させると、回転軸が全く極軸からずれたところで回っています。その後2016/11/7に自宅で試した時はうって変わってうまくいきました。BKP200を無くしたからかもしれません。)



さらにHUQさんが以前コメントで教えてくれたのですが、CMOSカメラが完全にファインダーの代わりになります。しかもより広範囲を明るく見ることができるのと、無理な体勢で覗かなくていいので、はるかに便利です。これでFS-60Qについているファインダーを外して、さらに軽量化する目処がつきました。取り外したファインダーは青色でかっこいいので、同じ青色でまだファインダーのついていないMEADのLX200-25に取り付けようかと思います。

さて、極軸調整の結果ですが、今回は誤差にして10分の1度くらいのオーダー、写真で撮ると20秒くらいは追尾できるようになりました。

LIGHT_Tv20s_3200iso_+23c_60D_20161016-00h21m47s283ms

それよりも他の問題が発生して、どうも追尾できるときと全く追尾しない場合で別れる現象が見られました。どうもギヤの駆動に合わせてどこかでスリップしているみたいです。撤収してから明るいところで調べたら、2箇所ネジが緩んでいました。これは自分のミスです。また、赤道儀自身も中のネジが調整されていないと精度が出ないという記事もどこかにありました。これはメーカーの方で調整する部分だそうです。まだ犯人は確定していませんが、とりあえず自分で閉め忘れていた箇所は締め直し、今晩以降、再度検証です。(追記: 2016/10/17に解決しました。)

あと、追尾がうまくいっているときに問題になるのが、風です。結構揺らされて星像が流れます。さらに機材を軽くしたいのですが、風の揺れのほうで問題になるのかもしれません。三脚がまだたわんで揺れるので、もう少しいい三脚が欲しいです。



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