ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:振動

今回は赤道儀をCGX-Lに変えてからの初の撮影になります。


まずは結果から

CGX-Lを三つ子銀河でテストしました。

「M65、M66、NGC3628: 三つ子銀河」
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  • 撮影日: 2022年3月27日22時33分-3月28日1時56分、3月29日21時50分-3月30日2時35分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: 無し
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI2400MC Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 150、露光時間10分、34枚で総露光時間5時間40分
  • Dark: Gain 150、露光時間10分、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain 150、露光時間 0.01秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

銀河の細部と浮遊感、NGC3628のヒゲとM66の周りのモヤ、微恒星の数、恒星の点像と自然な具合など、個人的にはかなり満足しています。いろんなことが実を結んだ結果だと思います。三つ子銀河は3500万光年離れているそうです。この画像を見ていると、光が3500万年も旅して地球に届いたのかと、改めて実感します。

Annotationを見ると、かなり小さいPCG銀河もたくさんあることが分かりますが、恒星と区別できて銀河とわかるものが多いです。これもまた面白いです。

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改善の理由

一番大きなのは、頑丈な赤道儀を手に入れることができたおかげです。昨年末にSCA260がきてから約半年、CGEM IIとともにいろいろ苦労しましたが、新しいCGX-Lでとうとう揺れの少ない撮影を実現することができました。SCA260はカメラなども入れると15kgを超える重量級の鏡筒になってきます。耐荷重18kgのCGEM IIならなんとかなると思っていましたが、最近のM100M101などの系外銀河撮影すると、揺れの影響で細部が再現できないことを実感するようになってきました。

ASI2400MC Proはお借りしたものですが、フルサイズでピクセルサイズ5.94μm、SNR1sが0.11lx(実はこれほとんど情報がありません。やっとここで見つけました。)とかなりの高感度です。

画像処理もこれまでの経験が成果として出ている気がします。特にここ最近で始めたdeconvolutionは今回細部を出すのに効果がありましたし、今回ノイズ処理に関する処理をほとんどしなかったために、ずっと悩んでいたノイズ除去の時に背景に出てくる大きな構造のモヤモヤもありません。これも私的には高ポイントです。


撮影

3月初めに借りたASI2400MC Proですが、天気があまり良くなくて、なかなか試すことができませんでした。その返却期限が4月末なので、なんとか成果を出さなくてはと思いと、CGX-Lを早く試したいというのでちょうどいい機会でした。

撮影日は3月末。以前の報告で撮影時のことは少し書いていて、露光時間はテストをしてみると10分でも4隅まで点像を保ちます。



もちろん揺れて伸びる場合もあるのですが、かなりの率で点像になるので十分実用範囲です。それよりもまだ不思議なのは、天頂に近づくと突然流れ出すのです。赤道儀を反転すると流れるのは無くなります。これはこの時だけでなく、これ以降も同様の状況で繰り返し起きています。何らかのたわみなのかと思いますが、むしろ水平に近い方がたわみの変化率は大きい気がするので、少し腑に落ちません。今のところオフアキの視野が(安価なものなので)狭く星の数が確保できずに実用的でないですが、いずれきちんとしたオフアキに移行することなると思います。

あとは特にトラブルもなく、撮影は2日にわたっていますが、普通に撮影は終わりました。


画像処理

画像処理に使えたのは55枚中、34枚でした。流れたものや明るくなってしまったものなどを除き、最初使えると判断したものが36枚、途中PixInsightで2枚弾かれました。

画像処理をするにあたり、PixInsightでスタックしてまず驚きました。この時点ですでに、ものすごく精細に出ています。

masterLight_BIN-1_EXPOSURE-600.00s_FILTER-NoFilter_RGB
スタック直後の画像をオートストレッチしたもの。

ところが、背景がかなり乱れていることもわかりました。フラットフレームはいつも通り明るい壁を写したのですが、これでは補正しきれなかったようです。周辺減光はまだいいのですが、妙な迷光があります。左上と右下に太い線のようなもの、真ん中に円形の光芒です。今のところまだ原因は不明です。円形の光芒は以前調べた通りフォーカサーの可能性があります。撮影時、結構周りが明るかったからです。このため、周辺部は仕上げ用にはクロップしています。クロップした上でも、これらの除去に少し苦労しましたが、後の画像処理は普段と比べてもはるかに楽なものでした。よく言う「素材がいいと画像処理が楽」というやつでしょうか。

揺れが小さいこと、さらにシーイングもよかったのかと思いますが、とにかくシャープなので、シャープ系の画像処理をほとんど必要としません。四隅を見ても、ほぼ完璧な点像です。

masterLight_600_00s_FILTER_NoFilter_RGB_integration_mosaic

シャープさ改善関して使ったのはdeconvolutionのみで、銀河の細部がかなり出るなど、これもかなりうまく行きました。deconvolutionに関しては、3回目の使用になってやっと色々とパラメータを調整できる余裕が出てきました。重要だったのはWaveletによるノイズリダクションで、うまくそろえてやらないと背景のノイズを逆に増やしてしまいます。マスクである程度回避できますが、銀河の周りと背景の境はマスクではどうにもなりませんでした。

comp1
銀河内部の解像度が上がっているのはわかりますが、
銀河周辺にボツボツができてしまっています。

これを直すためにWaveletのパラメータをいじる必要がありました。
 
comp2
銀河周りのボツボツが、かなり軽減されているのがわかると思います。

しかも今回は、deconvolutionできちんと恒星が小さくシャープになることが確認できました。これは初めてのことでしたが、やはり素材によってうまく処理できるものなのでしょうか?

露光時間も6時間分とそこそこあるので、背景ノイズもほとんど困ることはなく、こちらもノイズ系の画像処理はしていません。

あと、恒星の色がかなりきちんと出て、輝いて見えるのもうまくいきました。私的にはここまでうまく出たのは初めてだと思います。やはりこちらもシャープさが効いているのかと思います。


比較

最終的な結果は改めて上を見ていただくとして、前回の贅沢電視観望の記事で同じ三つ子銀河を見たものから処理したのはとは、流石に雲泥の差があります。

さらに、以前TSA-120で撮影した三つ子銀河と比べてみます。当時はうまく撮れたと思っていて、タカsiさんからもコメントをいただいていました。でもさすがに今回のは全然違います。細部はそこそこ出てたと思いますが、一番の違いは微恒星の数です。

light_BINNING_1_integration_DBE_ST_PCC_SNP_all_PS3

撮影時の数字を比較しても歴然とした差があります。TSA-120とSCA260を比較すると、口径が260mmで2倍強なので明るさで4倍以上、露光時間が5分から10分で2倍なので、1枚あたりで計8−9倍情報があります。焦点距離はTSA120の方が900mmで1300mmのSCA260より明るいので(1300/900)^2 = 2.1倍違い、トータル露光時間は3時間と今回の6時間で2倍有利なので焦点距離の違いとほぼ相殺、ピクセルサイズが294MCの4.63μmと2400MCの5.94μmで1.6倍有利。こう考えると、1ピクセルに入る光子で15倍くらい違いがあります。さすがにこれだけ違うと結果も違ってきて当然で、ここら辺が特に暗い微恒星の数、銀河の細部に効いてくるのかと思います。
 
数字上ではこれだけの違いがありますが、これをきちんと画像として反映させるのには、赤道儀とのバランスというものがとても重要だと、今回思い知らされました。


まとめ

SCA260が来て約半年、やっとここまで出ました。鏡筒と赤道儀の相性はやはり大切です。カメラは今後またASI294MMProに戻ります。モノクロなのでさらに分解能が出せるのか、もう少し探ります。あと、画像処理ではM51とM104が残っています。だんだん初夏の星座になりつつあり、もう銀河まつりも終盤を迎えると思いますが、もう少しこのセットアップで撮りたいと思います。


 

 


前回の記事で、10月30日の土曜日にセカンドライトで光軸調整後、星像を確認するとかなり良かったことを書きました。


今回はそれ以降の進展です。


サードライト: 極軸合わせ

昨日のセカンドライトは北の空が曇っていたので極軸を合わせることができず、雲越しのVegaを短時間撮影しました。短時間露光にした理由は追尾での星像劣化と、鏡筒自身の星像を切り分けたかったからです。20秒ですでに流れているのが見えていたため、10秒以下、実際には6.4秒での製造確認となりました。

10月31日のサードライトの今回は、極軸をいつものSharpCapで合わせます。使ったのはこれもいつものサイトロン製の120mmのガイド鏡と、AS120MM miniです。これとSharpCapの極軸調整機能を使うことで、いつものように極軸を0.5分角以下に設定することができます。

極軸合わせが終わったところで30秒で露光してみました。今回は極軸をきちんと合わせているため、流れていくことはほとんどありませんでした。フィルターはこれから撮影しようと思っていたため7nm幅のHαフィルターが入っています。

Capture_00002_WithDisplayStretch

M27は輝度が高いので、さすが口径26cmの効果か30秒でも十分に写ります。

四隅に周辺減光が見えますが、これはHαの枠せいだと判明しました。ノーフィルターや他のRGBフィルターだとこんなのは出ないのですが、よくよく見るとHαだけ枠が小さいことが分かりました。枠を外して直接取り付けることを考えた方がいいのかと思います。

この日はこれ以降は曇ってしまい、成果はこれだけでした。でも確実に一歩づつ進んでいます。


テスト連続撮影

もう4thライトになります。11月2日の火曜日、次の日が祝日なので遅くまで気兼ねなく試せます。天気も3時くらいまでそこそこでした。今回やっと連続した撮影を試せました。

鏡筒自身は夕方から出してあり、撮影はそれから3時間以上経ってから始めたので、温度順応はある程度されているはずです。なので今回もまだ目玉の最初からついているファンは使わずです。

対象は色々迷ったのですが、まずはM33にしました。つい最近TSA-120で撮影したばかりなのですが、むしろこれが理由で、新鮮味はありませんが色々比較できるかと思ったからです。特に分解能がどれくらい変わるのかを見てみたいというのがあります。

カメラはASI294MM Proでモノクロなので、まずはフィルターなしのL画像から撮影することにしました。一応はきちんとした撮影なので、カメラを-10℃まで冷却します。露光時間とゲインはまだ手探りです。これまでの経験から、3分露光でゲイン120としました。ゲインが120の理由は、ここでアンプが切り替わりリードノイズやダイナミックレンジで得するからです。


実際の撮影はトラブル続き

撮影ソフトはNINA。ただし少しトラブルがありました。撮影した画像が保存されないのです。最初撮影しようとすると「保存フォルダを指定していない」というエラーが出るので、フォルダを指定たところ一応撮影は開始されました。ただ、一枚とったところでもフォルダ内に何も保存されなかったし、「撮像」撮った画像が現れるところに何も出てきません。その後何枚か撮影しましたが、同様でした。仕方ないので一度NINAを再起動したら直りましたが、いちいちカメラを昇温冷却し直さなくてはならないので、少し面倒でした。

撮影した画像を見ましたが、かなりショックで目を疑いました。
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中央部の切り出しです。
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揺れが全く収まりません。何枚か見ていても、揺れが時には大きく、時には小さく、それでも点像になるものは一枚もありませんでした。揺れの方向はほとんど同じなので、一番弱いモードが励起されているものと思われます(後に赤経体の揺れのモードと方向が一致することが判明)。

前回星像が問題なかったときの再現性を見るために30秒で露光した星像を見ますが、これだとほぼ問題なしです。このままだとちょっと状況が分からないので、とりあえず1分露光に変更してしばらく撮影を続けることにしました。そのうちの1枚が以下になります。
2021-11-02_23-11-51_5_-10.00_60.00s_0011

2021-11-02_23-11-51_5_-10.00_60.00s_0011_cut
横へのズレがなくなるものもでてきました。

1分露光だと揺れ幅は小さくなりましたが、それでもほとんどは揺れています。上の画像のように星像がほぼ流れていない画像も得られましたが、5枚に1枚程度で、これだと率が悪すぎで実用レベルからは程遠いです。

あと、撮影途中にどうもピントがずれているのではとの疑いが出てきました。でも確信ではなく、揺れで星像がボケている可能性もあります。以前TSA-120で撮影したM33の星像と比べてみると、今回の方が小さいか同じくらいなので、それで一旦は安心しました。それでも見ているとどうしても恒星のシャープさがない気がします。上の揺れが小さくなった写真を後で見ると、やはり真ん中が黒くなっているのでやはりピントが合っていませんね。

揺れとピントの事で色々不明なので、ここで一旦外に出て機材を見てみます。

外に出て改めて感じるのは、微風で少し空気の流れを感じます。おそらく風はずっと吹いていたのですが、気にしていなかったので気づかなかっただけだと思います。

まず揺れに関しては、赤道儀のコントローラーが宙吊りになっていました。これをホルダーに入れて固定したところ、あからさまに揺れがなくなりはるかにましな星像になりました。

コントローラーだけでなんでこんなに変わるのかと思うかもしれませんが、コントローラーにはもともとついている巻き巻きケーブルに加えて、ASCOM経由で制御するためのUSBケーブルがお尻側に挿さっています。そのケーブルは他のケーブルと束ねられていて、そのうちのいくつかのケーブルは鏡筒に取り付けられたカメラに繋がっています。コントローラーが風に揺らされて、それがケーブルを介して鏡筒に伝わったことで、星像の揺れの原因になったものと思われます。これまでも宙ぶらりんのことはありましたが、このようにあからさまに揺れたことはなかったので、やはりCGEM IIにSCA260くらいの重量を載せるのだと撮影にはかなりギリギリなのがわかります。

次にピントです。やはり結構ずれていました。先の3分露光の際は、デネブを導入したときの光条線を見ながら合わせただけで、星の径を見ながらピントを合わせることをサボってしまったのが原因かと思います。ピントを合わせ直すと、TSA-120の時の恒星のサイズより明らかに小さく鋭くなりました。これは期待できそうです。

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2021-11-03_00-29-56_NA_-10.00_60.00s_0047_cut

中央を拡大したのを比べても、ピント改善と揺れが収まった効果だと思いますが、分解能も格段に上がっています。


その後もいくつかトラブル

とりあえず1分露光でしばらく撮影していると、途中M33の中心が結構ずれていることに気づきました。PHD2でのガイドは問題なく保っていたので、おそらくたわみでずれたのかと思います。でも重いとはいえ同じ鏡筒にのせたガイド鏡との相対的なずれが影響するので、そこまでずれるとは思えないのですが、どうなのでしょうか?カーボンは案外たわむとかなのでしょうか?もう少し再現性を見たい気もしますが、早いうちにオフアキに移行した方がの方がいいのかもしれません。

その後、さらに問題が。星像が突然一直線に流れ出しました。どうも追尾が完全に止まってしまったようです。外に出て見てみると、バッテリー切れです。撮影を初めてわずか2時間弱ほどでのバッテリー切れなので、ちょっと解せないです。実際、バッテリーを外して部屋に戻り充電を始めるとまだ半分くらいは残っていることが判明。これまでは赤道儀とカメラは個別の電源で運用してきましたが、今回バッテリーの数が足りてなかったので、赤道儀とカメラの冷却を一つの電源からとったのがまずかったのかもしれません。おそらく電流不足だったのかと思います。

いずれにせよ、その時点では原因は判別できなかったので、もう一台別でAdvanced VXに使用していたバッテリーをひっぺがしてきました。そのもう一台はちょうど対象(網状星雲)が西の空に沈んだところで、次の天体(勾玉星雲)に移ろうと思っていたのですが、構図的にあまり面白くなさそうなのでこちらはやめにしました。実は2台体制のテストをここ最近やっています。まだまだ足りない機材が結構あることが判明しました。これは別記事で書きます。

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でも結局ここから曇って全てが中止になってしまいます。元々はLを取った後に、RGBもそれぞれ撮影したかったです。あと、3分露光ができるかを試したかったのですが、雲でガイドが安定せずに断念です。天気が回復しないか1時間ほど様子を見てましたが、どんどん雲が厚くなる方向で、この時点で撤収としました。


fitsファイルの確認について

蛇足ですが、この記事を書きながら保存されたfitsファイルを見ています。閲覧にはZWOがフリーで出しているASIStudioの中のASIFitsViewを使っています。PixInsightのBlinkでもいいのですが、Blinkはファイル名順序しかできないみたいで、保存時間順に並べることができません。今回のように時系列に何か起こる場合には、ASIFitsViewの方が使いやすかったりします。

と言ってもASIFitsViewは時系列でしか表示できないのですが。実際にはBlinkの方が早く切り替えられたりして便利なので、保存するときのファイル名を、きちんと時系列になるようにタイムスタンプを前の方に持ってくるのが解決策だと思います。


まとめ

揺れの抑えとともに、露光時間が徐々に伸びていきます。着実に一歩づつ進んでいるのがわかります。

簡易的で枚数もまだ全然ですが、今回連続撮影も試してみました。まだモノクロですが、余裕があったら少し処理してみようと思います。RGBを撮り増ししても良いですし、以前の画像とのLを取り替えてもいいかもしれません。こちらはまとまったらまた記事にします。

それにしても大口径、重量鏡筒は全然世界が違います。今後もまだまだトラブルは出てきそうです。でも成果は出てきているのでかなり楽しいです。早く画像処理までしたものを見てみたいです。

前記事の惑星撮影の傍ら、大阪あすとろぐらふぃ〜迷人会工房様の微動雲台を、微動機能の検証に引き続き、もう少し試しました。今回は揺れについてです。




どれくらい揺れるかを見てみる

前回は本来の極軸微動の機能を中心に評価しましたが、今回はどれくらい揺れるかです。前回も少し書きましたが、ポタ赤(ポータブル赤道義)はそもそも極軸合わせの微動機能が付いていないことがほとんどで、微動で合わせようとすると別途用意する必要があります。その際、なかなか強度的に満足できるものがなく、私はポタ赤での撮影では三脚の足を横に僅かにずらしたり、三脚アジャスター を用いて微動がわりとしていました。でも、もし強度的に十分で、微動がついているなら、それを使わない手はありません。

前回の検証で、迷人会工房の微動雲台は多少の引っ掛かりはあるものの精度的には十分であることがわかりました。でも、微動雲台が元で揺れを導入してしまうようでは元も子もありません。前回の検証ですでにかなり頑丈そうというのは、触っているだけでわかりました。果たしてこれを客観的に評価できるのでしょうか?以前使わなくなった手持ちの微動雲台と比較して検証してみたいと思います。


振動測定のためのセットアップ

まずはセットアップです。迷人会製の極軸用微動雲台にSWAT200を載せて、そこにFS-60Qを取り付けます。鏡筒は出来るだけ頑丈に取り付けるために、モノタロウで購入した大型の1軸クランプにアルカスイスクランプをとりつけて、そこに鏡筒の上下についているアルカスイスプレートで固定しました。

ポタ赤なので、鏡筒としてはせいぜい600mmくらいの焦点距離が最長クラスだろうということから、FS-60Qでの評価に決めました。

振動を見るための動画撮影用にASI294MC Proを取り付けていますが、ここを例えば6Dクラスの一眼レフカメラをつけたときには慣性モーメントが結構変わってくるので少し注意が必要です。

三脚はゴム脚ではなく、石突きでアスファルトに接しているため、地面にはある程度きちんと固定されているはずです。

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この状態で写真にあるようにガイド鏡を用いてSharpCapのPolar Align機能で極軸を1分角以下の精度に合わせ込みます。その後、振動測定の際にはこのガイド鏡は外しています。


ターゲット天体

この状態で、南東方向、高度50度くらいにある火星を導入し、SharpCapでカメラの映像を見ます。速い動きを見たいため、露出時間を相当短くする必要があり、かなり明るい星を見ることになります。そのため、ターゲットは最接近に近い-2等級よりも明るくなっている火星としました。

露光時間は5msとし、さらに転送レートを上げるために4倍のビニングをして、ROIで画面を1024x768にしました。ビニングがあるので実際撮影した画像の解像度は256x192となります。フレームレートは65fpsとなったため、ナイキスト周波数の30Hzちょいまでは測定できるはずです。


振動モード

実際に揺らしてみると分かるのですが、本当は真南方向にある星を入れると、鏡筒との向きと雲台部の揺れのモードの向きが一致すると思ったのですが、この方向には明るい星がなく無理で、モードの励起に少し苦労しました。とにかく、頑丈すぎて鏡筒を揺らしても全然揺れが励起しないのです。

いろいろ触って分かったことが、揺れの中で一番低いモード(一番弱いところ = 一番共振周波数が低いところ )は
  1. pitch(仰角、縦方向)の自由度
  2. それに垂直に上に乗っている機材(具体的にはSWAT本体)を真横に押して倒すようなモード
のようです。今回はこの2つのモードが一番揺れるようで、ここを測定することにしました。

これ以外のモードはこれより大きく揺れることはないと思われます。例えば、水平回転モードなどはもっと周波数が高く(もっと頑丈と言う意味)、指で押すくらいでは単独に綺麗に励起できませんでした。

それ以外では、今回使ったものではSWATに載っている機材を含む赤経体の回転軸方向、三脚のねじれやたわみモード、上下のバウンスモードなども、周波数が十分高く頑丈なため、撮影時の揺れとしてはほぼ無視できると思われます。

逆に言うと、雲台以外に弱い部分があると、そこが一番大きく揺れてしまいます。例えばSWATでなく構造的に弱いポタ赤を使う場合や、特に三脚が弱い場合です。こういった場合、今回テストしている迷人会製の自由雲台を使ったとしても、せっかく使っている意味が薄れてしまい、性能を引き出し切ることができないので注意してください。

見たいモードを揺らすのは、SWAT部分を直接指で叩くことにしました。
  1. SWATの背中の上部を叩くのが1のモード
  2. SWATを横から上の方を叩くのが2のモード
となります。これらは以下全て共通の揺らし方です。


迷人会微動雲台の実際の揺れ

実際の揺れがどのようになるかを、動画で撮影しました


1.
まずは1のSWATの背中を押したモードです。カメラの角度が鏡筒に合わせてあるので、斜めに動いているように見えますが、実際には雲台のpitch方向と同じ向きの揺れが励起されたモードになります。

22_26_32_F150-550

gifアニメで表示してあり、ほぼリアルタイムですが、実際の時間はオリジナルのserファイルから読み取ります。
  • UTCの13時26分35.546秒から36.322秒で10周期揺れているので、1周期0.0776秒、共振周波数は1/0.0776=12.9Hzとなります。
  • また、半減期は振幅が半分になった時刻で、35.926秒程度で0.32秒くらい。ただし、そもそも励起できている振幅があまり大きくないので、誤差も多いことに注意です。このQ値は4.53x12.9x0.32=19程度
とZEROの時と比べても、励起される振幅が小さく(これは揺れてる点から見ている点までの距離にも依存する)、減衰するのが多少速いということがわかります。


2.
続いてSWATを横から押し、pitch軸が横に倒れるような方向のモードです。

22_31_01_F001-400

  • UTCの13時31分03.865秒から04.503秒で10周期揺れているので、1周期0.0638秒、共振周波数は1/0.0638=15.7Hzとなり、少し共振周波数が高くなるので、後ろから押したモードよりも揺れにくいと言うことがわかります。
  • また、半減期は振幅が半分になった時刻が04.169秒程度なので、0.30秒くらい。Q値は4.53x15.7x0.30=21程度となります。


比較のための手持ちの微動雲台の揺れを見てみる

比較のために、以前SWATで撮影用に使おうとしたのですが、揺れが大きくて使わなくなってしまった微動雲台と比較をしてみます。高さを合わせるのと、鏡筒が三脚に当たらないように、こちらはハーフピラーを取り付けていますが、一番弱いところは微動雲台部なので、結果に影響はないはずです。

IMG_0883

構造を見てもわかりますが、片持ちで強度的には不利そうなことがわかります。

gifアニメのファイルの大きさ制限に引っかかってしまいアップロードすることができなかったので、少しトリミングしていますが、動いている部分はおなじようにみえるはずなので問題ないと思います。


1.
SWATの背中を押したときに励起されるモードです。こちらもpitch方向に調整できる方向と同じ向きのモードです。パッと見ただけでも、迷人会製の物よりもゆっくり揺れていて、揺れが持続するのが分かると思います。
22_57_18_F080-510
  • UTCの13時57分20.133秒から21.273秒で10周期揺れているので、1周期0.114秒、共振周波数は1/0.114=8.8Hzとなります。
  • 半減期が1.0秒程度なので、Q = 4.53x8.8x1.0=38程度。


2.
続いて、SWATの横を押すときのモードです。片持ち部分が揺れる方向になります。
22_56_20_F050-430
  • UTCの13時56分22.255秒から23.287秒で10周期揺れているので、1周期0.103秒、共振周波数は1/0.103=9.7Hzとなります。
  • 半減期が0.86秒程度なので、Q = 4.53x9.7x0.86=38と後ろを叩いた時と同程度。

最後、参考にですが、適当に風が吹いたようなことを仮定して、ランダムに揺らしてみます。他の弱いモードも励起され、しかもかなり持続します。撮影レベルではちょっと厳しいのがわかるかと思います。

22_58_50_F010-430


風などがない場合の揺れを制限するもの

テストで出てきた数値を表にまとめます。

迷人会微動雲台

共振周波数Q値
SWATの背中を叩いたとき12.9Hz19
SWATの横を叩いたとき15.7Hz21


手持ちの微動雲台

共振周波数Q値
SWATの背中を叩いたとき8.8Hz38
SWATの横を叩いたとき9.7Hz38


まず、揺れの原因が地面のみで、風などの外力がないと仮定した場合、地面振動と共振周波数とQ値から、どれくらいの揺れになるのか評価してみます。詳しいことはZEROの評価時の説明を見て下さい。

迷人会微動雲台: 
  • SWATの背中を叩いたとき
\[Q \times \frac{10^{-7}}{f^2}  = 19 \times \frac{10^{-7}}{12.9^2} = 1.1 \times 10^{-8} \rm{[m/\sqrt{Hz}]}\]
  • SWATの横を叩いたとき
\[Q \times \frac{10^{-7}}{f^2}  = 21 \times \frac{10^{-7}}{15.7^2} = 8.5 \times 10^{-9} \rm{[m/\sqrt{Hz}]}\]


手持ちの微動雲台: 
  • SWATの背中を叩いたとき
\[Q \times \frac{10^{-7}}{f^2}  =  38 \times \frac{10^{-7}}{8.8^2} = 4.9 \times 10^{-8} \rm{[m/\sqrt{Hz}]}\]
  • SWATの横を叩いたとき
\[Q \times \frac{10^{-7}}{f^2}  =  38 \times \frac{10^{-7}}{9.7^2} = 4.0 \times 10^{-9} \rm{[m/\sqrt{Hz}]}\]
となります。

風などがないと、ここのモードの揺れがこの値くらいの揺れに落ち着くという意味です。以前評価したように、ものすごくざっくりで1マイクロメートルが星のずれ1秒角程度に相当すると考えると、風さえなければどの場合も問題になるような揺れの大きさではありません。実際には、これら励起された揺れよりも、低い周波数の地面振動自身そのものの揺れがそのまま伝わる振幅の方が大きい(低い周波数の地面振動のほうが振幅が大きいため)はずなので、(風などがない場合の)今回のモードの揺れは撮影時などの揺れを制限しているものではないと思われます。

結果としては各動画の揺れる前、もしくは励起れが収まったあとの揺れ程度の大きさになると考えられます。手持ちの微動雲台の励起がQが大きいため長く続いていますが、この励起が収まった際の動画(励起される前を見るとわかりやすいかも)を見る限り、この評価がそれほど外れているようには思えません。


風などの外力で揺らされた場合

次に風などの外力が機材を揺らす場合を評価します。ただし、地面振動から評価した時のように絶対値で評価することはかなり難しいです。風の大きさ、どのように機材に力がかかるか、鏡筒の大きさや強度などによるからです。なので、評価は相対的なもののみになります。

まず、揺れの振幅は共振周波数の2乗分の1で効いてきます。ZEROの時の評価と違って今回はQ値にも有意な違いがあります。振幅はQに1次で効くので、今回の2つの雲台の風などの外力に対する振幅の比は、手持ち微動雲台の大きい揺れに対して、迷人会微動雲台の揺れがどれくらいかで見ると
  1. SWATの背中を押したときの揺れ: (8.8Hz / 12.9Hz)^2 x (19/38) = 0.23倍
  2. SWATの横を押したときの揺れ: (9.7H / 15.7Hz)^2 x (21/38) = 0.21倍
となります。迷人会微動雲台の方が同じ外力に対し揺れの振幅が4分の1から5分の1程度となるということです。さらに、Q値は持続時間にも効いてくるので、体感としては
  1. SWATの背中を押したときの揺れ: 0.23 x (19/38) = 0.12倍
  2. SWATの横を押したときの揺れ: 0.21 x (21/38) = 0.12倍
とざっくり10分の1くらいに感じることでしょう。

さすがに振幅で5倍、持続時間も考えると10倍程度の違いというのは大きいです。以前星像の揺れで困って今回テストした手持ちの微動雲台を使わなくなったと言うのは間違った判断ではなかったと、改めて思いました。


ここでちょっと疑問が

雲台を変えることによって振る舞いが全然変わり、少なくとも後者の手持ち雲台の測定はより揺れているので、実際に手持ち微動雲台のところで揺れているものだと思われます。ここでふと疑問が沸きました。果たして迷人会製微動雲台を使った測定は、本当に微動雲台そのものが揺れていたのかどうか?ということです。構造を見てみると2つの可能性が考えられて、この揺れが
  1. 微動雲台のところで起きている
  2. それとも他のところ、例えばSWAT本体とSWATの足との接合部で揺れている
のどちらかではないかと考えられます。迷人会製微動雲台が頑丈すぎる際に2.のようなことが起きます。


自由雲台を使わない測定

切り分けのために、微動雲台なしで、ハーフピラーのみにして、同一の追試測定をすることにしました。

この際
  1. 迷人会雲台を使ったときと同様のモードが励起されるなら、迷人会雲台は十分頑丈で、このモードはSWAT本体とSWATの足との接合部での揺れが励起されていたと考えるのが妥当です。
  2. もし同一のモードが見られない、もしくはあからさまに周波数など振る舞いが変わる場合は、迷人会雲台自身が揺れていたと考えるのが妥当になってきます。
これはハーフピラーの方が迷人会雲台よりも頑丈だと言う仮定に基づいていますが、一般的に考えてハーフピラーの方がよりシンプルな構造なために複雑なモードは出にくいと考えられるので、妥当な仮定かと思われます。


ハーフピラーでの結果

さて、結果です。まず、前回同様にSWATの同じ部分を叩いて励起しようとしましたが、背中を叩いても、横側をたたいても、いずれも特定のモードは励起できませんでした。どちらを叩いても、非常に固く、揺れもすぐに減衰していきます。実際の揺れの様子を動画で見てみます。


1.
SWATの背中を叩いた場合: 前回のテストと同じくらいの力で、3回叩いています。迷人会微動雲台の時の揺れに比べても振幅が半分以下程度と、揺れにくいがわかると思います。しかも特定のモードだけが揺れているのではなく、いろんな揺れが混ざっているのが分かります。これは特定の弱い部分がないということを示していると考えられます。
21_05_07_F200-500

きちんとモードが立っていないので、かなりざっくりな計測ですが、5周期分くらいの揺れから15Hz程度と読み取りました。


2.
SWATの横を叩いた場合: 最初に励起されるモードが違うだけで、やはり特定のモードのみを励起できないのは1の後ろを叩いたのと同じ状況です。こちらはラフに14.5Hz程度。よく見ると、2つのモードが冷気されていて、それらは順序こそ逆ですが、1.で揺らしたときと同じ2つのモードに見えます。
21_06_29_F050-500


迷人会微動雲台とハーフピラーの2つのテストから言えることは、迷人会微動雲台部分をハーフピラーに変えた場合は明らかに振る舞いが違い、後者の方がより揺れにくいということです。さすがに迷人会製といえども、可動部を持つ雲台が固定構造のハーフピラーより揺れにくいということはありませんでした。というわけで、一番最初の迷人会微動雲台の時のテストがSWATの足の部分を揺らしているかもしれないというのは杞憂で、きちんと微動雲台の揺れのモードを励起できていたと思われます。

もう少しだけ評価すると、共振周波数だけ見ると迷人会雲台の共振周波数とそれほど変わりません。迷人会の場合は12.9Hzと15.8Hzと差があり、低い周波数のモードが一番揺れに効くと考えられるので、差があるとすればそこでしょうか。

ただし、そこそこ同じような力で叩いているにもかかわらず、明らかにハーフピラーの方が揺れが少ないです。これは、揺れている所から、見ている所(鏡筒及びカメラ)までの距離が短いものと考えられます。一つの可能性が、ハーフピラーをつけた状態では今度こそSWATの足のところで揺れているという推測です。2つのモードが順次励起されていることからも、この可能性が高いと思われますが、これ以上の検証は今のセットアップでは難しいです。FFTアナライザーとかあればもう少し分離できると思います。


まとめ

ウダウダやっていて、解析も色々紆余曲折したので、ものすごく長い記事になってしまいました。また、評価に長い時間がかかってしまい、待っていた迷人会様には申し訳ありませんでした。

それでも、一応最初のテストで迷人会の微動雲台の揺れをきちんと励起できていたようなので、ある程度の評価はできたと思います。ただし、先にも書いた通り、今回のテストはあくまで相対的な評価に留まり、これが実際にどれだけ揺れるにかというのを絶対値で評価するのはとても難しいです。風の強さ、鏡筒の種類にかなり依存してしまいます。同じ力で励起できる加振器などあれば、励起された揺れまで定量的に評価できるのですが、今回はそこまで至っていません。

風がない場合は、上で評価したように地面の揺れ起因のある程度のどれだけ星像が揺れるかの見積もりは可能ですが、これも一旦並進を回転に変換しているので、オーダーレベルではそこまで間違っていないと思いますが、ファクターレベルではまだ誤差も大きいかと思います。 

結論としては、結局最後は経験論になってしまいますが、迷人会工房の微動雲台は、ポタ赤レベルの頑丈さではもったいないくらいで、一般の赤道儀レベルの頑丈さが余裕であります。荷重制限も厳しいポタ赤では、大型鏡筒は無理で焦点距離がそこまで伸ばせないはずなので、よほど強い風が吹かなければ揺れが原因で星像が流れることはないと思います。これでもし星像がずれるならば、それは雲台のせいではなく、三脚など他の弱い部分を疑うべきでしょう。私としては揺れに関してはそれくらいの高い評価です。

ちょっと脱線してしまいますが、むしろ製作側のコストと手間の方を心配してしまいます。このレベルで作り続けるのは相当な努力が必要なはずで、限定品で数が限られてしまうのは容易に想像できます。迷人会工房さんの製作体制がどれくらいのものなのかほとんど把握していないので、勝手な想像でしかないのですが、無理のない範囲で続けていただければと思います。アマチュアグループの機材が売れるのはすごいことなので、そこはどうしても期待してしまいます。


ZEROの振動特性でもう一つやってみたかったことです。TSA-120を載せて使い勝手を試してみました。


ZEROのこれまでの経緯

手持ちのポルタIIの経緯台と付属の三脚で惑星などを見ると、結構揺れてしまうのが不満でした。初心者向けというのでコストの限界もあるため仕方ない面もあるのですが、見ている最中にフレキシブルハンドルの揺れで視野が揺れてしまったり。なのでこれまで観望会などでもあまり出番がありませんでした。

フリーストップの操作性の良さを保ちつつ揺れの改善ができるならと、ZEROにAdvanced VX付属の三脚をつけて試してみたところ、揺れを大幅に改善することができ、体感的にはざっくり10分の1程度になったというのが前回までの結果です。これで観望会などでも不満なく使ってもらえるようになりそうです。


TSA120をもっと気軽に使いたい

この一連の検証の過程にはもう一つの大きな目的がありました。口径120mmのTSA-120をZEROに載せてもっと気楽に使えないかということです。

TSA-120にはロスマンディー規格のアリガタを付けていて、通常CGEM IIに載せて使っています。CGEM II自身は頑丈で操作性もよく不満はないのですがやはり重くて、気軽に出すというよりはいつも気合をいれて出しています。これが観望会でも気楽にパッと出すことができるなら、TSA120の稼働率がかなり上がるはずです。

前回までの検証ではポルタII付属の口径80mmの鏡筒を使いましたが、ZERO+AVX三脚で十分な揺れの少なさを実現できました。どれくらいの共振周波数だったら実用的にどれくらいの揺れになるか、感覚的にもある程度結びついたので、他の組み合わせを測定して比較する準備もある程度できてきたと言えると思います。そこで今回
  • メーカーでは推奨TSA-120をZEROに載せるのは推奨していない
  • 某ショップ店員さんが試したところ、やはりTSA-120+ZEROは揺れてしまうという報告があった
ということを気にしつつ、本当のところはどうなのかというのを自分で確認して使えるかどうかを判断したいと思います。


実際に載せてみる

まず、ZEROに取り付けるためにロスマンディー規格のアリガタをVixen企画のアリガタに取り替えました。その状態で実際にZEROに取り付けてみたのですが、さすがにあれだけの重さと、値段(笑)のものをネジ一本で固定するのは不安になってきて、結局Takahashi純正の鏡筒バンドをZERO側に取り付けることにしました。M6ネジ2本で固定されているZERO付属のアリミゾを外すと、90度ずれた方向にM8ネジ用のねじ穴も空けてあるため、M8ネジ2本で固定する純正鏡筒バンドもそのまま取り付けることができます。ここら辺の柔軟性はさすがです。

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実際にとりつけた写真です。

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さらに実際に鏡筒も取り付けた場合です。三脚が丈夫なせいか、不安定になるようなことはなく、転倒などの心配は皆無でした。

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揺れの見積もり

一応この時点で鏡筒の端を少したたいてみます。すると、思ったより揺れるではないですか。ポルタII鏡筒の時より揺れも持続しているみたいです。ちょっと心配なので、簡単に揺れを見積もってみました。

前回の結果から、揺れの実感は基本モードの共振周波数の違いの3乗で効きそうだということが分かっています。共振周波数は慣性モーメントで効くはずなので、まずは慣性モーメントを概算してみます。効いてくる違いは2点、
  • ポルタII鏡筒A80MfとTSA-120の重さが3.3kgと6.7kgで約2倍の違い。
  • 鏡筒の長さが焦点距離に比例するとして910mm(初出の焦点距離に間違いがありました。910mmが正しいです。)と900mmでほぼ同じ。
中空円筒のピッチ方向とヨー方向の慣性モーメントの式は

m/4{(外径^2+内径^2)/4+(鏡筒長^2)/3)}

と書けますが、外径と内径が鏡筒長に比べて十分短いので前項を無視して

m/12 x 鏡筒長^2

とすると計算が簡単になり、上の数値を当てはめると慣性モーメントはそれぞれ、0.23 と0.45 [kg m^2]となります。鏡筒長は2乗で効きますが、両方とも900mm程度でほぼ同じなので、実質重量の違いだけの違いになっています。

共振周波数は慣性モーメントのルートで効いてくるので、sqrt(0.45/0.23)=1.4となり、ZEROにA80Mfを載せたの時の14.1Hzと比べて1.4分の1、すなわち10.0Hz程度まで下がることになりそうです。

Q値が変わらないと仮定すると、共振周波数の3乗で揺れることになるので、1.4の3乗で2.7倍程度揺れを感じることになるはずです。ポルタIIとZERO+AVX三脚の揺れの違いが10倍程度だったので、その中間くらいという予測になります。


TSA-120をZEROに載せたときの実際の揺れ

さて、実測はどうでしょうか?前回同様にASI294MC Proをつけて、木星を見てみました。カメラ部分を指で弾いてやり、その揺れの様子を撮影します。焦点距離5mmのアイピース程度を想定し、画素を4分の1程度にトリミングしています。前回と違うのはビニングをするのを忘れてしまったので、フレームレートが60fps程度となってしまいました。揺れを10回計測するので、測定結果には影響はないはずです。

まずは横揺れです。

Yaw(横向き)に揺らした場合

ZEROにA80Mfを載せた時より明らかにゆっくり揺れています。

動画から、10回揺れるのに36.392秒から37.428秒まで1.036秒かかっています。ということは1周期が0.1036秒となるので、共振周波数はその周期分の1で1/0.1036=9.7Hzとなります。予測の10.0Hzとほぼ一致ですね。重さもカタログ値、長さも焦点距離から換算しただけなのですが、こんな適当な見積もりでもそこそこ実測と合ってしまうことのほうが驚きでしょうか。

実際の揺れは共振周波数の3乗で効くとすると(14.1/9.7)^3=3.1と体感では約3倍になることがわかります。


ちなみに縦方向の揺れです。 

Pitch(縦向き)に揺らした場合



実際に使用しての感想

さらに、実際に眼視で使ってみての感想です。確かに揺れの感覚ではちょうどA80MfをポルタIIとZERO+AVX三脚の時の中間くらいと言っていいかと思います。

ではこれが許容範囲かというと、アイピースの焦点距離が20mmの900÷20=45倍程度ではそこまで不満ではないです。

問題はさらに拡大した場合、今回5mmのアイピースを使い900÷5=180倍にしたときははっきりと不満を感じました。何も触っていない時はそれでもまだ大丈夫です。微動ハンドルをいじっただけでも、そこまで揺れなくて、揺れても比較的すぐに揺れは収まるので、これもそこまで問題ではないです。1番の問題はピントを合わせるときです。鏡筒を直接触るので、かなり揺れます。揺れているとピントがあっているかどうかわからないので揺れが収まるまで待ちます。ダメならまた調整で揺れます。これでは微調整が難しくて実用とは言えません。観望会で「ピントが合ってなかったら自分で合わせてみてね」ということが言えないので、観望会での使用も厳しいでしょう。

では、元々のポルタの揺れは許容範囲ではないのかというと、低倍率ではまだいいと思います。ですが、強拡大するとやはり不満です。そもそも経緯台で180倍、ポルタでも6.3mmのアイピースが付属するので144倍計算になりますが、そこまで倍率を上げて見ることに意義があるか?ということです。これだけの倍率だと視野も狭くなり、経緯台だとすると追いかけるのが大変です。ポルタIIの場合は揺れもあるので、144倍でもう過剰倍率に近いのではと思います。

ところが、TSA120で高倍率で見てしまうと、話は変わってきてしまいます。ZEROにTSA120を載せて高倍率で木星と土星を見たのですが、それはそれは見事なものでした。


TSA-120で初めて見た惑星

今回はじめてTSA-120で惑星を見ました。TSA-120の眼視がすごいという理由が分かった気がします。このときの感動を、忘れないうちに書いておきます。
 
TSA-120で惑星を見ると違った世界が見えるとか、口径だけで説明できない何かがあるというようなことを聞いていたのですが、確かに納得です。より大口径のシュミカセでは、明るさはもちろん有利なのですが、像の甘さのようなものがあったことがよくわかりました。
  • 180倍だと木星の縞の濃淡がよーくわかります。
  • 土星のカッシーニの間隙が余裕で見えます。
  • また、大気収差が目立ちます。眼視でもADCを入れた方がいいかもしれません。
  • この日は大気揺らぎは小さい方だったと思います。 それでも細かい模様はユラユラ揺れてしまうので、もっと穏やかな日に見たら、さらによく見えることでしょう。
きちんと作った素性の良い鏡筒だとここまで見えるという、お手本のような見え方だと思います。できることなら、観望会でもこの素晴らしい惑星を来てくれた方達に見せてあげたいです。

しかしながら、TSA-120の性能を活かす高い倍率ではZEROでは特にピント合わせ時の揺れが気になってしまい、時間の限られている観望会での運用はやはり厳しいかと思います。また、ZEROに載せるために鏡筒バンドについているアリガタプレートを毎回外すのも楽とは言えず、手軽さという観点からは遠ざかっていきます。結論としては、今後はTSA-120を使う場合は観望会などでも重い赤道儀に載せて見ることになるかと思います。


まとめ

今回のA80MfとTSA-120の比較の結果は、鏡筒長がほぼ同じだったということもあり、重量の違いだけで揺れの具合を簡単に説明でき、それが実測ともかなり一致することがわかりました。高々共振周波数の1.4倍の違いが、揺れにすると3倍に相当することも、かなり体感と一致すると言っていいと思います。

でもこの3倍の揺れ、正直言うと使い方によっては十分許容範囲です。問題はTSA-120だと倍率を上げたくなる、ここに尽きると思います。高倍率にすると揺れが顕著に問題になるので、その意味ではTSA-120を高倍率で見ることまで考えると、ZEROでは少し力不足といったところでしょうか。でも、ピントさえ一旦合わせてしまって、一人で見続ける分には高倍率でもそこそこ使えると思います。

当初のZEROで気軽に「観望会とかの大人数で」TSA-120を使うという目論見は、残念ながら難しそうです。ZEROはメーカーの言うとおり、やはりせいぜい口径100mm位までの鏡筒に抑えておいて、気軽に見ることに重点をおいた方が向いていると思いました。

元々TSA-120まで見越して選んだAVX三脚はそこそこ重いので、手軽さと言う観点からは少し大袈裟な気がします。かと言ってポルタクラスの三脚だとさすがにZEROの性能を活かすのには勿体ないので、軽い頑丈な三脚を用意するのがいいのかもしれません。

あまり大きくないカーボン製を手に入れるか、もしかしたら今手持ちのGizzoのバサルトのトラベル三脚でもいいのかもしれません。これは足を伸ばしても相当安定しています。

 



前回のZEROの振動減衰特性の続きになります。さらにマニアックなものになっているかもしれません。でもこの揺れに隠れいている物理をきちんと考えてみると、今後役に立つこともあるのかと思います。数式もあるので少し読みにくい記事になっているかもしれませんが、興味のある方は是非最後まで読んでいただけるとありがたいです。

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今回の記事の目的

とりあえず前回の記事では定量的な評価は控え、定性的にこんな傾向だというところを示しました。揺れの影響を比べるとポルタIIとZEROでは思ったより違うという印象を持たれた方も多いかと思います。

感覚的にでいいので、映像を見比べてポルタIIとZEROで揺れがどれくらい違うと思いましたか?2〜3倍くらい?10倍くらい?30倍くらい?100倍?数値的には答えが最後に出ますので、

みなさん動画を見比べたときの自分の印象を、
是非ここで一度考えてみてください

今回の記事のタイトルにはあえて解析とつけてしまいましたが、もう少し突っ込んで数値で比較できれば思っています。実際には、前回の使った動画から色々数値的なパラメータを引き出して定量的に評価します。これらをできるだけ一般化して、他の機器と比較した場合にも応用ができるようになればと思っています。具体的には共振周波数と半減期とQ値の関係を示し、それが実際の揺れ具合に感覚的にあっているかまで議論できれば上出来と言えますでしょうか。


共振周波数と半減期

今回の解析は前回撮影した映像をさらに突っ込んで解析します。特に新しいデータを取ったというわけではありません。まず、引き出したいパラメータは「共振周波数」と「半減期」です。

160倍相当に拡大し、できるだけフレームレートを上げて撮影した4本(ポルタIIとZEROのそれぞれ縦と横)の動画を解析します。鏡筒をピンと弾いて揺らしたので、インパルス的(「瞬間的な」という意味)な力を与えて、それが主としてそのモード(縦とか横とかいう意味)における最低次(一番低い周波数という意味)の振動を励起し、その振動が減衰していく様子が動画に記録されています。

できるだけ力が同じになるようにピンと弾いたのですが、衝撃の力積(力と、力をかけた時間の積)は必ずしも一定ではありません。それでもその衝撃で励起された「共振周波数」と、その振幅がある時から半分になる時間「半減期」は、最初に与えた衝撃によらずに、そのモードに固有で一定値となります。なのでそれらを測定してやれば、励起された振幅の大きさにかかわらずなんらかの特性が評価できるはずです。



実際の基本モードの測定



ポルタII 横の動き

一番揺れていてわかりやすい、ポルタIIの鏡筒を横向きに弾いた時の動画を例に「共振周波数」と「半減期」を測定してみましょう。ポルタIIの鏡筒を弾いたときの動きはこんな感じでした。

倍率160倍相当の横の動き: ポルタの場合

Youtubeに上げた動画では、細かい時間情報が消えてしまっているので、実際の解析にはSharpCapで録画した生の.serファイルを使いました。ser形式の場合、各フレームが測定された時間もそれぞれ記録されています。


実際に動画を見ながら測定すると、
  • 弾いてから2周期ほど揺れて最大振幅になったところの時間が、(UTCの14時29分)51.70秒
  • 10周期揺れた時の最大振幅の時間が、53.20秒
ということがわかったので、
  • 10回揺れるのに1.50秒かかっています。
ということは
  • 周期 P = 0.150秒
  • 最低次の共振周波数 \( f_0 = 1/P = \) 6.7Hz
ということがわかります。

また、先の弾いてから2周期ほど揺れてから最大振幅になった時(51.70秒)と比べて、
  • 振幅が半分になった時の時間は 52.75秒なので、
  • 半減期 \(t_{1/2} = \) 1.05秒
となります。


ZERO 横の動き

次はZEROの場合の揺れを確認します。

同様に横の基本モードの共振周波数と半減期を測定すると、
  • 弾いてからある最大振幅になったところの時間が、43.24秒
  • 10周期揺れた時の最大振幅の時間が、43.95秒
なので、
  • 10回揺れるのに0.71秒
かかっていることから、
  • 周期 P = 0.071秒
  • 最低次の共振周波数 \( f_0 = 1/P = \) 14.1Hz
また、先の弾いてから2周期ほど揺れてから最大振幅になった時(43.24秒)と比べて、
  • 振幅が半分になった時の時間は 43.66秒なので、
  • 半減期  \(t_{1/2} = \) 0.42秒
となります。

さて、これらのことから何が言えるでしょうか?まず、共振周波数から見ていきましょう。

ところで、ポルタIIとZEROでどれくらい違うか、印象を今一度確認してみてください。何倍くらい違うと思ったでしょうか?ここまでで共振周波数の違いは7Hzくらいと14Hzくらいなので、2倍くらいと既にわかりましたね。

でも揺れの印象だけ見るともっと違いが大きいような気がします。
皆さんはどう思いますでしょうか?


共振周波数について

ある系(この場合鏡筒と経緯台と三脚を含んだ望遠鏡全体)のある揺れやすいところ(方向)に衝撃を与えてやると、一番揺れやすい(軟らかい)ところで大きく揺れます。この揺れを基本モードと呼び、その揺れをその基本モードの共振、その共振の1秒あたりの揺れの回数を共振周波数と呼ぶことにします。

経緯台の骨格を太くしたりしてものを頑丈に固く作るほど、載せている鏡筒を軽くコンパクトに作るほど、基本モードの共振周波数は上がります。逆に、骨格が細く柔らかい系であるほど、また長く(レンズ部など)重さが端部に寄ったダンベル型に近い鏡筒なほど、基本モードの共振周波数が低くなります。

共振周波数が高いということは固いバネに相当し、共振周波数が低いということは軟らかいバネに相当します。中学の理科とか高校の物理の最初の方で習うフックの法則\(F=-kx\)という式を覚えていますでしょうか?ある力Fを加えると、固い(kが大きい)バネほど、伸びxが小さく、軟らかい(kが小さい)バネほど、伸びxが大きいという関係式です。

バネ定数は共振周波数と次のような関係で表されて、\[f_0=\frac{1}{2\pi}\sqrt{\frac{k}{M}}\]などと書くことができます。ここでMは質量に相当します。これをFの式に入れてやると\[F= -4\pi^2 f_0^2 M x\]と書くことができます。同じ質量で同じ力だとすると、共振周波数の2乗で揺れにくくなることがわかります。実際今回扱っているのは回転なので、質量Mは慣性モーメントで考える必要がありますし、係数も変わってきますが、物理的にはバネのイメージで本質的には間違っていないはずです。すなわち、同じ力で鏡筒を揺らすと揺れの振幅が共振周波数の2乗に反比例して小さくなる、言い換えると固い構造(バネ)ほど急激に揺れにくくなるということです。このことは実際の観測時にも同様で、鏡筒に手が当たったとかの場合、弱い(軟らかい)とよく揺れ、強い(固い)と揺れないというのは感覚的にも理解できるかと思います。


半減期について

では次に半減期です。これは一旦起きた振動がどれだけ早く収まっていくかを表すパラメータの一つと考えることができます。どれだけ「発生したエネルギー」をいかに「失わせるか」という損失の大きさに依存します。素材にもよりますし、構造の組み方などにもよります。

例えば金属でできている部分をゴムにすれば、その損失は大きくなり減衰は速くなります。ですが素材をゴムにすると当然やらかくもなるので、共振周波数も下がるので損をします。面白いのは、同じような素材、同じような構造で組むとこのロスというのは大体同じような値になるということです。

ここで、共振周波数と半減期の積を考えて見ましょう。
  • ポルタIIの場合6.7Hz x 1.05秒 = 7.04
  • ZEROの場合14.1Hz x 0.424 = 5.98
と、両者あまり違いがありません。若干ZEROの方が小さいくらいですが高々2割程度です。


Q値について考えてみる

ここで、以前検討したQ値というものを導入してみましょう。Q値は今回測定した共振周波数と半減期を使って、\[Q=4.53 f_0 t_{1/2}\]という式で表されます。共振周波数と半減期の積にある数値をかけたものになります。なぜ4.53なのかは以前の解説記事を参照してください。

ポルタIIの場合は\[Q=4.53 \times 6.7 \times 1.05 = 31.9\] ZEROの場合は\[Q=4.53 \times 14.1 \times 0.421 = 26.9\]という値になります。

ではこのQ値が何を意味するかです。Q値は元々あった揺れが共振によって何倍に拡大されるかということを知ることができるとても便利な値です。では何倍になるかというと、ずばりQ倍になります。その証明はこのページの伝達関数の式のf=f0の場合になります。

例えば地面が揺れていてそれが鏡筒を揺らすとすると、その揺れはQ倍に拡大されるというわけです。地面の揺れは\(10^{-7}/f^2 \rm{[m/\sqrt{Hz}]}\)という振幅になります。fはその揺れの周波数、単位が\( \rm{m/\sqrt{Hz}} \)となっていて少しややこしですが、\(\rm{ / \sqrt{Hz}}\)のところはちょっと無視してください(詳しいことが知りたい場合はこのページの最後を読んでみてください。)。ここでは簡単にm(メートル)で考えてしまいましょう。

ポルタIIの場合、共振周波数が6.7Hz、Qが31.9なので、地面振動からくる揺れは
  • \(Q \times 10^{-7}/f^2  = 31.9 \times 10^{-7} / 6.7^2 = 7.1 \times 10^{-7} \rm{[m/\sqrt{Hz}]}\)
ZEROの場合、共振周波数が14.1Hz、Qが26.9なので、地面振動からくる揺れは
  • \(Q \times 10^{-7}/f^2  = 26.9 \times 10^{-7} / 14.1^2 = 1.3 \times 10^{-7} \rm{[m/\sqrt{Hz}]}\)
程度となります。これは風などの外部の衝撃がない、揺れが落ち着いている時の揺れ幅に相当し、両方とも1マイクロメートル以下なので、実際に視野をのぞいていてもそれほど揺れているとは感じない程度でしょう。鏡筒を叩いて揺らした場合の揺れが減衰していくと、最終的に上記揺れ程度になるということです。それでもZEROのほうが揺れが5分の1程度に落ち着くというのは意識しておいたほうがいいでしょう。たいした大きさの揺れではないので、とりあえず地面の常微振動からくる揺れはあまり考えなくてよく、それよりも視野を移動した時の揺れを議論したようが有益だということが言えるのかと思います。

この実測値からも推定できるように、ポルタIIとZEROでは素材は金属(アルミ合金?)で、使える金属の種類もある程度限られるので、ロス(Q値)に関してはそこまで大きく変えることはできないと言えるのかと思います。逆にQ値が同じなら、Qの定義式から同じ力を加えたときは共振周波数が高いほうが減衰するまでの時間は小さくなるということが言えるわけです。


まとめ

上記検討のまとめをしてみましょう。

構造体に同じような金属を使うのでロス(Q値)が同程度だとして、共振周波数が高いとどれくらい得をするか考えてみましょう。同じ力で鏡筒を揺らした場合、
  • まず振幅が共振周波数の2乗分の1で小さくなります
  • 次にQの定義から、減衰するまでの時間は共振周波数分の1になるので
ざっくり考えて、振幅で2乗、減衰で1乗と、あわせて共振周波数の3乗くらいで揺れの影響が小さくなると言ってしまっていいのかと思います。ポルタIIとZEROでは共振周波数が2倍ちょっと違うので、3乗するとざっくり10倍くらい違うわけです。

皆さんの印象はどれくらいだったでしょうか?

10倍くらいだと思った方はいましたでしょうか?

ポルタIIに比べると、ZEROの共振周波数の違いが高々2倍くらいしか違わないのに、揺れの印象が感覚的にも10分の1くらいだかと思うのは、それほど間違っていないのではないかと思います。経緯台のような微動ハンドルを回して天体を追尾していく場合には、構造を固くして共振周波数を上げることがいかに重要かということが分かる結果です。


今後の展開

ZEROは非常に優秀で、口径100mm程度までなら載せても揺れが気にならないと聞いています。ただし、口径120mmのTSA-120をZEROに載せると、さすがに積載限界を超えているのか揺れてしまうとう報告がZEROの販売ページにあります。また非公式ですが、某天文ショップの店員さんから、同様のことを試して揺れが出てしまうという報告をTwitter経由で聞いています。

なので次はTSA-120をZEROに載せて、実際にどれくらい揺れるのかを、共振周波数を測定することで、比較してみたいと思います。これは自分自身でもかなり興味があって、うまくTSA-120をZEROで快適に使用する方法があるのかどうかを探ってみたいのです。鏡筒だけでなく、全体の系で共振周波数が決まるので三脚の影響も大きいかと思います。

気の向いた時にパッとTSA-120を出してZEROに載せて、振動なく見えるというのはかなり魅力的です。


今回、振動減衰特性が素晴らしいと評判の、スコープテック社の新型経緯台ZEROを手に入れました。梅雨ですが、晴れ間を狙って色々と評価してみました。


目的

この記事では、スコープテックの新型経緯台「ZERO」の振動減衰特性を評価をすることを目的とします。わかりやすいように、今回は入門機の標準と言ってもいい、Vixen製の天体望遠鏡「ポルタII A80Mf」と比較してみます。


ポルタII

ポルタIIに関しては言わずと知れたVixen社の看板製品の一つで、とりあえず望遠鏡が欲しくなったときに最初におすすめされる、おそらく日本で最も売れている望遠鏡かと思われます。

屈折型のA80Mf鏡筒とセットになっているものが一番有名で、鏡筒、ファインダー、経緯台、三脚、2種のアイピース、正立プリズムなど、基本的に必要なものは最初から付属しています。初心者でもすぐに天体観察を始めることができ、天文専門ショップのみでなく、全国カメラ店などでも購入でき、その販売網はさすがVixenと言えます。

機能的にもフリーストップを実現した経緯台方式で初心者にも扱いやすく、鏡筒はアクロマートながら口径80mmと惑星などを見るにも十分。全て込みでこの値段ならば、十分適正な価格であると思います。

私は2018年の小海の星と自然のフェスタのフリーマーケットで手に入れました。中古ですが付属品はアイピースなども含めて全て付いていて、おまけに別売のフレキシブルハンドルも付いてきました。また鏡筒キャップの中に乾燥剤が貼り付けてあったり、夜に機材が見えやすいように反射板を鏡筒や三脚にマーカーとして貼ってあったりと、前オーナーはかなり丁寧に使ってくれていたことが推測できます。

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ZEROの特徴

一方、ZEROは経緯台のみに特化した単体の製品です。鏡筒や三脚は基本的に付いていないので、別途用意する必要があります。発売開始は2020年3月なので、すでに解説記事などもたくさん書かれています。ZERO自身の機能的な解説はメーカーのZERO本体のページ天リフさんの特集記事が詳しいです。購入もスコープテックのページから直接できます。




スコープテックはもちろんですが、ZEROはサイトロンなどいくつかの販売店からも販売されています。シールをのぞいて同じものとのことです。違ったバージョンのシールにしたい場合はこちらから頼む手もありです。





本記事では、機能に関しては上記ページに任せて簡単な解説にとどめ、振動特性を中心に評価したい思います。

実際のZEROを見てみます。

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ZERO自身は実際に手に取って見ると思ったよりコンパクトです。初めて使う場合は「お使いになる前に必ずお読みください!」と書いてある紙が入っていますが、これだけでなくマニュアルも必ず読んだ方がいいでしょう。一旦組まれたものを外して、経緯台として動くように組み直す必要があります。また、手持ちの三脚に合わせて(注文時に選択した)アダプタープレートを合わせて組み込んで三脚とセットする必要があります。


なぜ片持ちなのか?

基本的に片持ち構造は、強度や振動特性に関しては不利なはずです。それでもフリーストップにするためには片持ちが適しています。なぜなら鏡筒を縦方向に動かしたときにバランスが崩れないため、どこで止めてもつりあいがとれるからです。これがフリーストップを安定に実現させている理由です。

この片持ちという不利な構造にあえて選んで振動減衰特性に挑戦しているのが、ZEROの真骨頂と言えるでしょう。しかも軽量でコンパクトに折りたたむことができま、気軽に持ち運無ことができます。

フリーストップで、しかも揺れなくて、コンパクトとのこと。これは実は初心者に向いた設計と言ってしまってもいいのかと思うくらいです。スコープテッックが初心者向けの機材を相当丁寧に作ってくれていることは、私も実際に望遠鏡セット使って知っているので、おそらく本当に初心者のことを考えて今回のZEROも設計、製作しているのかと思われます。

でもこのZERO、初心者だけに使うのはもったいなさそうです。ベテランのアマチュア天文家が気楽にパッと出して星を見たいというときには、軽くて、且つ揺れないというのはベストのコンセプトです。観望会を開いて、お客さんに見てもらう場合とかでも十分に活躍してくれそうです。また、コンパクトなので遠征に気楽に持っていけそうです。遠征先の撮影の合間に気楽に観望とかでも使い勝手が良さそうです。


ポルタIIとは違い、ZEROは基本的に経緯台のみの単体販売で、三脚も鏡筒も付いてはきません。全部込み込みのポルタの実売価格はZERO単体よりも数千円高い程度ですので、価格的にはポルタIIに比べたら割高と感じるかもしれません。経緯台に特化した分だけの性能に対する価値を、どこまで見い出せるかがポイントになるのかと思います。


測定条件

まずは振動特性を見るための条件です。

共通項目
  • 鏡筒はポルタII付属のA80Mfを使う。
  • 微動ハンドルはVixen製のポルタ用のフレキシブルハンドルを使う。
  • 眼視を想定し、三脚の足を半分程度伸ばした状態で、2台の三脚を同じ高さにする。

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2台のセットアップです。三脚はほぼ同じ高さにしています。
鏡筒とフレキシブルハンドルを載せ替えて比較しています。
写真でZEROについているハンドルは無視してください。

2つの測定の違う点
  1. ポルタIIの経緯台をポルタIIの三脚に載せたものに鏡筒を載せる(以下このセットアップをポルタIIと呼びます)
  2. ZEROをCelestron社のAdvanced VX用の三脚に載せたものに1と同一の鏡筒を載せる(以下このセットアップをZEROと呼びます)

ただし、後から分かったことですが、三脚の強度に無視できないくらいの大きな違いがあることが判明しました。なので今回はZEROにAdvanced VX用三脚でここまで振動を抑えることができるという目安と考えていただければと思います。


観測方法

ポルタIIとZEROの2種で鏡筒部分を揺らし、その揺れがどのように減衰していく様子を、視野を撮影しながら見ていきます。


2種の倍率

それぞれ観測、測定のたびに鏡筒をフレキシブルハンドをポルタ経緯台とZEROに載せ換えます。光学的に2種類の設定をそれぞれの経緯台で試します。
  1. 40倍相当: 天体導入時を想定し、焦点距離800mmの鏡筒と焦点距離20mmのアイピースで40倍程度の視野を仮定し、フォーサーズ相当のCMOSカメラ(ASI294MC Pro)ので撮影
  2. 160倍相当: 天体導入後、拡大して観察する場合を想定し、焦点距離800mmの鏡筒と焦点距離5mmのアイピースで160倍程度の視野を仮定し、同一CMOSカメラの(ASI294MC Pro)一辺4分の1、面積にして16分の1を切り取って撮影
1.、2.ともにフレームレートを上げるために4倍のビニングをして画素をそもそも4分の1に落としています。また、2.ではさらに速い動きを見るために、画面を切り取って小さくしてフレームレートをできるだけ上げています。


昼間の景色で比べてみる

まずは大まかな動きを掴むために、昼間の明るい景色で40倍相当で比較してみました。最初に望遠鏡を買って、昼間に練習するのに相当すると思えば良いでしょうか。具体的には山の上に立っている鉄塔を端から真ん中ら辺に持ってきています。

まずは横方向(yaw, ヨー方向)です。フレキシブルハンドルをまわして動かします。動かした後にどれくらい揺れるかを見ます。

ポルタの場合です。
倍率40倍相当の横の動き: ポルタの場合



ZEROの場合です。
倍率40倍相当の横の動き: ZEROの場合

これを見るだけで相当インパクトのある比較になっています。とにかくZEROの振動減衰が見事です。

続いて縦方向(pithc, ピッチ方向)です。まずはポルタIIの場合

倍率40倍相当の縦の動き: ポルタの場合

次にZEROです。
倍率40倍相当の縦の動き: ZEROの場合

ポルタIIもZEROも、横よりは縦の方が揺れにくいのは同じのようです。これは構造的に縦は縦のみの機構を担っていますが、横は横の機構と縦の機構を合わせて担当しています。当然重くなるので、その分横が揺れやすいのは不思議ではありません。

ポルタIIの方は多少揺れますが、やはりここはZEROの揺れの少なさを褒めるべきでしょう。揺れの振幅も、揺れが小さくなる時間もZEROは素晴らしいです。ただしこの結果はかなり大きく揺らした場合なので、実際に初心者がポルタIIで昼間に最初に練習する時でも、そこまで困ることはないのかと思います。


実際の観測を想定して木星で比べてみる:  導入時相当

初心者が望遠鏡を買って見てみる醍醐味の一つが木星や土星などの惑星です。そのため、今度は実際の観察を想定して、夜に木星を見て揺れの具合を比較してみましょう。

まずは木星で40倍相当で判定します。これは低い倍率で天体を導入するときの動作に相当します。木星を端から真ん中ら辺に持ってくるときの揺れで比較します。

横方向の揺れです。まずはポルタIIから。

23_16_31_F001-193s
倍率40倍相当の横の動き: ポルタの場合

次は同じく横方向で、ZEROの場合です。
23_40_29_F001-193s
倍率40倍相当の横の動き: ZEROの場合


次に縦方向で、まずはポルタの場合。

23_18_10_F001-192s
倍率40倍相当の縦の動き: ポルタの場合

縦に振っているのですが、横の揺れの方が出やすいので多少横揺れがカップルしてしまっています。

次にZEROの場合です。
23_40_54_F001-192s
倍率40倍相当の縦の動き: ZEROの場合


惑星の動きで見てもZEROの振動の減衰具合は特筆すべきで、特に縦方向の操作はもう十分すぎるほど減衰してしまって、インパルス的に動きを与えることが困難になっているくらいです。

実際操作していて思ったのですが、どのようにハンドルを回してどういったインパルス応答を与えるかで揺れの具合は違ってきます。ポルタIIの場合でも熟練してくると、最終的な揺れを少なくするように、最初は大きく動かして、見たい所の近くでゆっくり動かすなどのテクニックを、自然に習得できるのかと思います。なので、倍率が低い天体導入の際には、慣れてくれば上記動画の差ほどは気にならなくなるかと思います。



実際の観測を想定して木星で比べてみる:  拡大時相当

次に、木星で160倍相当で見てみます。これは定倍率で導入された惑星を、倍率を上げて拡大して見るときに相当します。視野が狭いので、先ほどのようにフレキシブルハンドルを回すとうまく揺れてくれないので、鏡筒をピンと弾くことでインパルス応答に相当する揺れを与えました。

まずは揺れやすい横方向です。最初はポルタIIから。 
倍率160倍相当の横の動き: ポルタの場合

ZEROです。
倍率160倍相当の横の動き: ZEROの場合


次は縦。まずはポルタII。
倍率160倍相当の縦の動き: ポルタの場合


最後にZEROの縦方向です。

倍率160倍相当の縦の動き: ZEROの場合



この試験は、フレキシブルハンドルを回したわけではないので、例えば観望会などでお客さんが鏡筒に触れてしまったことなどに相当するのかと思われます。これくらいの倍率で惑星を拡大して見る場合、特に望遠鏡の扱いに慣れていない初心者には、揺れの違いは実際の快適さの差として出てくると思います。ZEROの揺れくらいで収まってくれると、木星の細かい模様をじっくり見るときにも見やすいでしょう。


実際の使い心地

使って見て思ったことです。確実にZEROの方が揺れが少ないのは上記映像を見てもわかるのですが、その一方ポルタ経緯台に比べてZEROの方がハンドルが固いです。これはフリーストップの調整ネジとかの問題ではなくて、ある程度強度を保つためにこれくらいの固さが必要だったのではという印象です。また、微動調整つまみをフレキシブルハンドルで回すとき、遊びが少し多いなと思いました。これらは好みかもしれませんが、ポルタとZEROを比べると硬さと遊びに関しては個人的にはポルタに一日の長があると思いました。

おそらく微動の固さに関連すると思うのですが、揺れに対しての感想は反対になります。ポルタだけを使っていた時は、揺れは多少は気になっていましたが比較したわけでないのでそこまでは気づかず、今回ZEROと比べて、初めてはっきりと不満と感じました。

繰り返しになりますが、私が持っているポルタ2は中古で手に入れたものなので、新品の時の性能が出ている保証がありません。ですが、初心者がこの揺れだけを見てメーカーに修理を出す判断をする、もしくは実際に修理を出す気になるとも到底思えず、仮に使っていてヘタったのだとしたら、耐久性という意味で少し考えた方がいいのかもしれません。いずれにせよ、私が持っているポルタ2は一例に過ぎず、当然全てのポルタ2を代表しているわけではありません。その上でのことですが、少なくとも手持ちのものは(ZEROと比べると改めて気づきますが)揺れは結構大きくで、フレキシブルハンドルから手を離して揺れてしまうと、フレキシブルハンドル自身の揺れで視野が揺れてしまうくらいです。


三脚に関して

今回ZEROと比較することにより、これまであまり気にしなかったポルタIIの弱点が見えてきました。なぜポルタがZEROに比べて揺れが出るのか明るいうちに見てみました。2つの原因があるのかと思います。
  • 経緯台の可動部が柔らかく、ハンドルを回すのも軽くて操作しやすい反面、ここでぐらついてしまっている可能性が高い。
  • 根本的に三脚が弱い。
特に三脚に関しては目で見て揺れやすいのがわかるくらいです。動画でその様子を撮影してみました。


わかりますでしょうか?鏡筒を揺らすと、三脚(真ん中手前がわかりやすいです)もつられて揺れてしまっています。わかりにくい場合は、全画面表示などにして見てみてください。一見小さな揺れに思えるかもしれませんが、本来三脚は載っているものを揺らさないような役割をするものです。鏡筒を揺らすだけでこれだけ三脚が揺れてしまうのは、無視できる範囲とは言い難いでしょう。触らなければ揺れないかと思いがちですが、風が吹いた時は致命的ですし、導入時はどうしても触れてしまうので揺れてしまう可能性が高いです。

ちなみに、ZEROをAVX三脚に乗せたときに、同様に鏡筒を揺らしたときの映像も載せておきます。


こちらは拡大しても揺れている様子が全く見えません。揺らしていないように思われるかもしれませんが、音を大きくして聞いてみると途中から鏡筒を叩いているのがわかるかと思います。人間の力なので必ずも同じ状況にはならないですが、基本的に同程度の力で叩いたつもりです。音が小さいと思われるかもしれませんが、やはり揺れていないので記録された音も小さくなっているのかと思われます。

本来三脚は積載物を安定に支えるのが役割なので、揺れないものの方がいいのは当然です。それでもやはりこれも程度問題で、頑丈すぎるものは逆に重くなったりして取り回しに苦労することもあります。ただ、Advanced VX用の三脚程度の重量とZEROの組み合わせでここまで振動が減るのなら、特に惑星などを拡大して見たときには十分に検討する価値があるのではないかと思います。ZEROの販売ページを見ると強化版の三脚を選べるようです。これだと今回使ったAdvanced VX三脚と同等クラスかと思いますので、より揺れを少なくしたい場合はこちらを選ぶのもいいかと思います。

これらのことから、まずポルタIIは少なくとも三脚を改善もしくは丈夫なものに交換するだけでも揺れは相当改善すると思われます。別の言い方をするなら、経緯台として考えるとZERO自身の揺れは相当小さいため、もしZEROの性能を引き出したい場合は、ある程度強度のある三脚を使わないともったいないとも言えます。でもこのことは三脚の重量増加にもつながるので、手軽さという利点を損なう可能性もあるので、ケースバイケースで強度と重量のバランスを考えて選択すればいいのかと思います。

今回はZERO用には相当強度の高い三脚を選択してしまいました。結局のところ、今回の比較は「入門機の標準と言ってもいいポルタIIとの振動に比べて、振動減衰特性を特徴として開発したZEROを使うと、どのくらいまで揺れを改善できるか」という例を示したことになるのかと思います。ポルタIIを改善していって、揺れないものにアップグレードしていくような楽しみ方を見出すこともできるのかと思います。


まとめ

星まつりで何度かプロトタイプには触れたことはあり、ある程度すごいことは知っていましたが、実際に使って見ると、ZEROの振動減衰に関しては驚くほどの結果でした。ポルタIIだけを使っていた時は揺れはここまで意識できていなかったので、例えば初心者がポルタIIを最初に買って普通に使う分には、特に気になるようなことはないでしょう。ただ、もし今使っている経緯台に不満がある場合は、ZEROを検討してみる価値は十分にあるのかと思います。

経緯台単体にそこまでかける価値があるのかというのは、人それぞれかと思います。個人的にはZEROは素晴らしい製品に仕上がっていて、スコープテックさんの努力や熱意を十分に伺うことができるのかと思います。満足です。


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