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天体観測始めました。

タグ:小説

久しぶりに天文関連の小説を読みました。伊与原 新 作「オオルリ流星群」です。タイトルのオオルリは青く綺麗な鳥らしいです。私は鳥には詳しくありませんが、この小説には随所にオオルリが出てきます。


きっかけ

何週間か前、名古屋人の心の友「コメダ珈琲」で週刊誌を読んでいたら、面白そうな本の紹介が出ていました。今の世の中便利で、その場でスマホでアマゾンに注文して取り寄せてみました。読み終えたのは少し前になるのですが、ちょっと感想を書いてみます。

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プロの天文研究とアマチュア天文 

読み始めるとテンポよく進んでいきます。天文ファンなら十分に楽しめる内容でしょう。ただ、アマチュア天文の話かというと必ずしもそうでもなく、それよりも天文の研究者としてやっていくのがいかに大変かということが、よくわかる話なのかと思います。作者も研究者だったこともあり、そこら辺の経験が元になっているのかもしれません。

そもそも面白いのが、作者と私の年齢が同じところです。ということは小説に出てくる人物達もほぼ自分と同じような年齢。もう若くもなく、一方まだまだこれからやれることもあり、年齢に応じた考え方になってくるので、共感できるところも多々あります。また作者は一時期は富山大にいたとのことです。私も今富山に住んでいるのでちょっと親近感が湧きます。

ネタバレになるので多くは書きませんが、この小説の主人公の彗子は国立天文台の元研究員で、研究者としてはやっていけなくて諦めてしまったという設定です。最後の方はどんどん話が進み、謎が解けていくので、読むのを止められず夜更かししてしまいました。彗子の経歴にどんでん返しがあるのですが、その時の思いが作者の経験によるものなのか、創作なのかはわかりません。それでも道をあきらめるときの想いや厳しさが伝わってきます。これは研究者に限らず、ましてや大人や子供にも限らず、夢をあきらめるということが、本人にしかわからない人生に関わる深刻なことなのだと思い知らされます。

元々この小説は、京大の有松氏らが民生用の鏡筒Celestron社のRASA11を複数台使い、掩蔽(えんぺい)観測でカイパーベルト天体を見つけたという話に感銘を受けて書かれたとのことです。アマチュア用の機器を使うというところに、研究者を辞めても研究を続けたいという主人公の境遇をうまく当てはめています。

有松氏らの研究は、今のアマチュア天文家でも工夫すれば、普段の機器を使って研究に近いことができることを強烈に示しています。

でも実際にはアマチュア天文とプロの研究が関わることはごくごくまれです。少なくとも私が星を初めて2016年以降、アマチュアはほとんどアマチュアのみで集まっていて、プロの研究者が入ってくることは数えるほどしか例がありませんでした。例えば福島のスターライトフェスティバルには毎回国立天文台のW教授が来てくれるのですが、これはある意味例外中の例外で、アマチュアときちんと絡んでくれるのはとてもありがたいことです。昔は国立天文台のK台長がアマチュアのN氏に計算依頼をするなど、もっと交流があったのではと想像しますが、今日でもそれに類するようなやりとりはあるのでしょうか?

一方、アマチュア天文家にとってはプロの研究者は恐れ多いのかもしれませんが、講演会とか機会はあるのでもっと突っ込んでいっていいのかと思います。日本のアマチュア天文家の熱心さは特筆すべきで、この情熱を趣味だけにとどめておくのはもったいない気がします。趣味を止めるとかいうのではありません。もう少し建設的なプロとアマチュアの交流があってもいいのかと思うのです。

私もそうですが、撮影は楽しいですし、画像としてすぐに成果が見えます。一方研究はというと、例えばこの小説の元になったRASAの掩蔽観測を見ても、科学的な目的を持って計画立てて進めるなど、時間もかかるしとても大変でしょう。でも機器だけ見ても明らかにアマチュア側に寄ってきてくれてるんですよね。アマチュアグループのなかにも例えば流星観測とか、研究に寄っている活動もあります。

この小説は、ある意味プロとアマにある大きなギャップを小さくしてくれるようなヒントに溢れているように思えます。熱心なアマチュア天文家であると自認する方は、是非とも一読してみるといろんな目が開かされるのかもしれません。


今回は最近読んだ本の話です。ちょっと面白いことがありました。

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少し前に探偵ナイトスクープでオジロマコト作の「君は放課後インソムニア」というビッグコミックスピリッツで連載中のコミックが紹介されました。なんでも石川県の七尾の高校の天文部の話で、見た目も主人公そっくりの依頼者がモデルは自分ではないか確かめて欲しいという依頼でした。

天文を扱うコミックはあまりないので、早速当時出ていた4巻まで購入。インソムニア(不眠症のこと)の主人公が観望会を開こうとしたり、写真コンテストに出そうと星景写真にはまって行ったりで、天文好きな人なら楽しめる内容です。能登の真脇遺跡というのが星景写真として出てきました。私は真脇遺跡のことは知らなくて、俄然春か夏に天の川と一緒に写しに行きたくなりました。12月に発売された5巻には、キャンプで何度か行った見附島を撮影する場面やボラ待ちやぐらも出てきました。結構自分の中で盛り上がってきたので、来年は新月期に広角レンズをもって能登半島に何度も行くことになりそうです。 

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もう一冊は小説で遊歩新夢作の「星になりたかった君と」です。純愛小説ですが、表紙からフォーク式のリーチークレチアンだったり、SCWやら電子観望の話が出てきたりしてマニアが読んでも十分楽しめる内容です。

中でも面白かったのは、小説の中で重要な役割をする老人二人です。一人は天体軌道計算が専門の「長野秀一」氏。これはすぐに誰がモデルかわかってツボにはまりました。ところがもう一人の重要人物「秋田久雄」氏が誰のことか想像もつきません。

と、こんなことをTwitterで呟いたら、なんと作者様ご本人からコメントがあり、なんでも作者が知っている方で、当時その地域ではかなり知られた方がモデルだったとか。でも今でもその方が天文活動をしているかどうかは知らないとのことでした。尊敬の念でモデルにさせてもらったとのことです。

こんなやりとりをしていたら、次の日の朝、さっそくけにやさんから情報が。関西のあるグループの代表の方ではとのことで、調べてみると今でも活発に活躍されている方のようです。名前を見るとなるほどと思えました。作者様に確認をとると正解とのことで、しかも活動されているグループもわかったので、連絡をとり、本を送ってみるとのことです。連絡を取るのは小笠原の日食で会って以来のことだというので、10年以上ぶりのことなのでしょうか。知らない間に自分がモデルの人が小説に出てきたと知ったら、おそらく本人もびっくりするのではないかと思います。なんか、ちょっと嬉しい話です。

「星になりたかった君と」は正月1月4日と5日に日本テレビでドラマ化ということです。両日とも24時59分からとのことです。数少ない天文系のドラマなので、必ず見ようと思ってます。でも作者様のところでは地方で放送されないとのことなので、富山の日テレ系列のKNBで放送されるか今のところわかりません。それでもHuluでも放送されるとのことなので、もし地上波で見えなければこちらでみようと思っています。


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