ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:北アメリカ星雲

ε130Dでのセカンドライトとなります。とうとうテスト撮影です。今回色々トラブルはありましたが、結果を見る限りかなりの性能のようです。


カメラとフィルターホイール、フィルターの準備

電視観望でのε130Dのファーストライト以来、ちょっと時間はかかりましたが、ε130Dで最低限撮影するだけの機材は揃ってきました。用意したのは以下のものです。

  • 2インチのフィルターホイール。
  • 2インチフィルターはZWOのLRGBフィルターセットと、ナローバンドではとりあえずBaaderのHαとOIII。
  • カメラはASI6200MM Pro。
  • 接続アダプターとして、ZWO製のCanon EFマウント用のアダプターと、ε130側にタカハシのDX-WRカメラマウント。
鏡筒以外にも、撮影しようとするとこれくらいは必要なので、本格撮影は大変ですよね。あとはEAFを用意するくらいでしょうか。全部揃えると値段が値段なので、なかなか一度にパッとはいきませんが、着々と準備は進んできています。 


撮影用機材の取り付け

実際の撮影用機材の取り付けです。連休前の土日に時間をとってじっくり取り組みました。

まずは販売店のページなどで見つかる解説に従って、フィルターホイールのネジを外して分解し、CMOSカメラを取り付けます。センサー面にホコリがつくと、フラットフレームの使い回しができなくなるので、ホコリなどがつかないように細心の注意をはらいます。

カメラの固定が終わったら、とりあえずすぐにフィルターを一枚とりつけて、センサー面がこれ以上暴露しないようにします。この際、センサーの真上でフィルターを取り付けると、ねじ山の切り屑がセンサー面に落ちる可能性があるので、必ずねじ締めはフィルターホイールを回転させ、センサーの上から外れた位置で行います。

その後、各フィルターを順次取り付けていきます。フィルターホイールの付属品でフィルター押さえがついていますが、とりあえずフィルターに最初からついているリングをつけたまま取り付けてみました。装着の際はどうしてももホコリはある程度のっかってしまうので、できるだけ立てて垂直にして取り付けるとか、ブロワーでホコリを何度も吹き飛ばしながら、目で見て何もついていないことを確認しながら進めます。最終的にOKと確認して、さらに蓋の裏側のホコリもブロワーで十分に飛ばして、垂直に立てたまま蓋を閉めてネジを止めます。手で回してみてもぶつかったりはしていないようだったので、OKとしました(後でダメだったと分かった...)。


フィルターホイールと鏡筒の接続

フィルターホイールと鏡筒との接続は、Canon EFアダプターを使うことにしました。理由は、カメラを取り外して再度取り付けた際の回転位置の再現性が欲しいからです。ε130側にはTSA-120で使っていたタカハシのDX-WRカメラマウントを取り付けて、カメラ側は以前ASI2400MC Proを試したときに用意したZWOのEOS EFマウントを取り付けます。

今回使ってみてかなり便利そうだったので、ASI294MM ProもそのうちEFマウントにしてしまおうと思いました。こうするとモノクロCMOSカメラとカラーCMOSカメラの取り替えや、一眼レフカメラを使いたい時も、電視観望にしたいときも、センサー部を暴露してホコリまみれにすることなく、再現性よく交換することができるはずです。唯一の欠点がオフアキガイドをする手がなくなるということですが、今のところSCA260の1300mmまでは普通のガイド鏡で大丈夫そうなので、交換の手軽さを優先することにします。あ、フィルター面につくホコリは少しきになるかもしれませんが、キャップもCanonのものを使えるので、入手性もよくきっちり閉じることができそうなので、そこまで問題にならないかもしれません。


いよいよテスト撮影

5月2日の夜、いよいよ明日から連休です。天気がいいので、いよいよテスト撮影開始です。あいにくの月齢12.5日でかなり明るい夜ですが、ナローバンド撮影ならなんとかなるでしょう。ターゲットは北アメリカ星雲とペリカン星雲。せっかくの広角なのである程度面積のあるものがいいかと思いました。以前似たような焦点距離のFS-60CBとほぼ同じ大きさのカラーセンサーのEOS 6Dで、CBPフィルターを使って撮影したことがあるので、結果を直接比較することができます。

せっかくのフルサイズCMOSカメラなので、16bitと高解像度を活かしてbin1でgain120、露光時間5分撮影してみました。狙いはAOO撮影なので、HαとOIIIフィルターです。でも撮影されたHα画像を見るととても暗いです。ヒストグラムのピーク位置が1000/65536にも全然達していません。Hαでこれなので、O3だとさらに暗くなりそうです。10毎撮影したところで方針転換して、bin2でgain240、露光時間5分としました。bin1だとファイルサイズが100MB越えで大きすぎるということもあります。これだと明るさはbin1->bin2で4倍、gainが120->240で12dB分なので6dB+6dB=2x2=4倍と考えて、約8倍になります。bin2といってもソフトビニングなので、読み出しノイズも4回読み出しているので、S/Nは4/sqrt(4) =4/2=2倍しか得しません。gainを4倍にしているので、読み出しノイズに制限されているならS/Nはダイレクトに4倍得するので合わせて8倍のS/Nになるはずです。かなり暗い画像なのでこの効果は結構効いていて、実際にRAW画像をASIFitsViewerで撮影中に簡易的にみても明らかにノイズが小さくなっていました。もちろん、gainを上げたことでダイナミックレンジは13.5bit程度から11bit程度に落ちてしまいますが、それでもまだ余裕があるでしょう。

結局この日はbin2のHαをさらに10枚とって時間切れで終了となりました。


いくつかのトラブル

テスト撮影でいくつか問題があることが発覚しました。
  1. フィルターホイールとカメラが重かったので、鏡筒前方に荷重がかかりすぎでバランスが崩れた。ドブテイルプレート下面にとりつけたアルカスイスプレートが邪魔をしてパランスが合わせきれなかった。
  2. フィルターホイールが途中で引っかかるることがあり、ホイールを回転させるとうまくいくこともあるが、多くの場合エラーが出て止まってしまう。たとえうまく動いても位置が確定しないようで、撮影画面を見ると片側が暗くなることがある。これは許容範囲外。
  3. フィルターホイールと鏡筒を繋ぐカメラアダプターが、回転方向にがたつく。
1つ目ですが、これはアルカスイスプレートの位置を前に少しずらして全体を後ろに後ろに移動しましたが、ずらせる範囲に限界もあり少し前荷重が残っています。

2つ目ですが、フィルターホイール内を見直してみました。すると、ZWOフィルターよりもBaaderフィルターの枠の方が分厚くて、特にOIIIフィルターの枠は特別厚いことがわかりました。

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正面奥右に見えるOIIIフィルターの枠が一番背が高く、左隣のHαが次に高いです。

これがギリギリフィルターホイールの蓋の裏側の出っ張りに引っかかっていたようです。フィルターを新たに買ってもいいのですが、予算的にも時間的に直ぐにはためせなくなってしまうので、このOIIIの枠を背の低いSVBONYのUV/IRフィルターの枠と取り換えることにしました。

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忘れないようにテプラでシールを作り貼っておきました。

3番目は結局解決せずです。下の写真の向かい合った下のZWO製のアダプターの「爪」と、上のタカハシ製のアダプターの「切り欠き」でカチッとハマって固定されるのですが、この爪の径と切り欠きの幅が合っていないのです。外すときは爪がへこんで下がるので、この爪を接着剤とかで太くすることは出来ません。切り欠きの隙間を接着剤で少し埋めて細くすることも考えましたが、安くない部品なのでまだ躊躇しています。結局、あえて力を加えないと重力程度では回転しないこともわかったので、そのまましばらく使うことにしました。

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EAFも到着

これらの手直しをしている連休2日目、ちょうど発注していたZWO製のEAFが到着しました。スターベースで頼んだタカハシ仕様のものです。カプラーの径が標準のものと変更されていて、タカハシ鏡筒のフォーカサーの太い軸に合わせたものが入っています。特にトラブルもなく取り付けることが出来ました。

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撮影2日目

前日はHαだけしか撮影できなかったので、この日はOIIIを優先します。5分を12枚の1時間を1ターンとして、OIII、Hα、OIII、Hαと4ターンを目指します。あいにく月は最後まで出ていて、暗いOIII撮影には例えナローバンドといえ影響があるといいます。まあ今回はテスト撮影なのでよしとします。

撮影開始前に、早速NINAでEAFを使ってオートフォーカスを試してみました。ちょっと前の記事でオートフォーカスについて書きましたが、NINAのオーバーシュートを使う場合は「バックラッシュ補正をイン側かアウト側の片側だけ書き込む」とありました。今回それを試したところ、初めて右側の最初のステップのずれをなくすことができ、ほぼ完璧に曲線と一致させることができました。

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ここまでピッタリ合うとかなり気分がいいです。数カウント位の精度までいっているっぽいので、今後かなり正確にピントが合わせられるかと思います。

さて、この状態での四隅を見てみます。bin2の解像度で256ピクセル四方を9枚切り取っています。

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思ったより星像が伸びています。下の方が縦長になっていて、上の方が横長です。スケアリングだけだと説明できないかもしれません。光軸をもう一度見直す必要がありそうです。

今回はBXTの恒星の補正で直せることに期待したいと思います。


画像処理

夜の撮影後の次の日の昼間に、新しい鏡筒とカメラなので、bias(実際には処理には使わない)、flat、flatdark、darkなどをNINAで撮影して、画像処理に備えます。flatはついでなので全フィルター分撮影してしまいます。ホコリなどが顕著でなければ使い回しができるでしょう。

今回Hα画像を仮処理したところでなぜかすごい分解能が出たのですが、理由は前回の記事の通りで、bin2で撮影したと思ったらPixInsighのインテグレーションの際にbin1相当の高解像度になってしまい、そこにBXTをかけたことが原因でした。drizzleで2倍の解像度にしても同様の効果があることがわかりました。

 


その後、OIII画像と合わせて画像処理を進めます。Hαに比べて、さらに暗いOIII画像は見た目にもかなりノイジーだったので、OIIIのインテグレートの後のかなり初期の段階でNoiseXTerminator(NXT)を軽くかけました。普通はBXTの前にNXTをかけるのはご法度なのですが、ノイズの差がありすぎてBXTがそれを拡大しているような処理をしてしまったので仕方なくの判断でした。

といっても、画像処理にはこういった臨機応変な対応が実はとても重要だと思っていて、他人のいい処理フローチャートがあったりしても、たとえ自分で作った処理フローチャートでさえも、闇雲に信じたりせず、本当にきちんと処理できているか確かめながら進めるのが重要なのかと思います。そのためにはやはり、実際にどんな処理しているか、できる範囲でもいいのでその理屈を理解することは大切なのかと思います。


結果

結果を示します。

「北アメリカ星雲とペリカン星雲」
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  • 撮影日: 2023年5月3日1時22分-2時9分、5月3日23時44分-5月4日3時48分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 240、露光時間5分、Hα: 30枚、OIII: 22枚の計28枚で総露光時間4時間50分
  • Dark: Gain 240、露光時間5分、温度-10℃、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain240、露光時間 Hα: 0.2秒、64枚、OIII: 0.1秒、64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

ε130Dの分解能は期待以上でした。特に解像度に関してですが、撮影はbin2でしましたが、画像処理は一番最初に処理した参照時にbin1相当に高解像度化されたものを使いました。BXTもこの状態でかけたので、相当高分解能で仕上がっているはずです。でも結局のところ、この解像度だとJPEGにしても画像サイズが大きすぎてこのブログにアップロードすることさえできません。結局全ての画像処理が終わってから、元のbin2相当の解像度に落としてアップしています。こうなるともう高分解能はただの自己満足です。おとめ座銀河団の時のように一部切り出して拡大するとかくらいしか使い道がありません。

あ、今思ったのですが、ε130DとASI6200MM Proでおとめ座銀河団高分解能バージョンを試してもいいかもしれません。これはまた楽しみが増えました。

問題があった四隅の星像に関しては、BXTの補正効果が圧倒的です。下の画像はbin1相当の解像度で256ピクセル四方を9枚切り出しています。なので、先に出した四隅画像より狭い範囲を見ていることになります。真ん中右の二つの並んだ明るい星が比べやすいかと思います。
Image14_SXT_for_O_AOO_SPCC_ABE1_BXT_NXT_ABE4_mosaic

先のbin2の画像より狭い範囲を見ていても、完全に許容範囲レベルになっています。ここまで直ってしまうと、光軸調整をもう一度やるかどうか迷ってしまいます。光軸とは別ですが、そーなのかーさんが進めてくれたHocus Focusが凄そうで、スケアリングが測定できるみたいです。こちらは次回試してみようと思います。


課題:
明るい輝星の周りにハロが出てしまっています。こちらは主にOIIIフィルターの影響です。撮影用ではなく、眼視用のものを使っているからかもしれません。それでもOIIIフィルターほどではありませんがHα用のも少しだけハロが出ています。これ以上を求めると、フィルター代だけで凄いことになりそうなので、今のところは我慢して画像処理で誤魔化すことにします。

今回はAOO合成なので、そもそもどう頑張っても色のバリエーションがあまり出ません。特に、Hαの明るいところはのっぺりした赤になってしまいました。Rはそれでもまだ暗くて階調を使い切れていないので、もっと最明部の輝度を上げても良かったかもしれません。でもあまりにやると飛んでるように見えてしまうので、バランスが難しいところです。また、OIIIはそもそも暗い上に撮影時間もあまり長くなかったために、少しノイジーでした。そのこともあって、OIIIの暗い所、特に背景部に関しては赤みがかってしまいました。

おまけの恒例Annotationです。

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まとめ

さてε130Dでのテスト撮影を試みましたが、できた画像を見る限りものすごいポテンシャルの高さを感じます。光軸の問題はまだあるものの、分解能に関してはかなりものです。BXTとの相性も良さそうなので、今後もうまく使っていこうと思います。

自宅で淡い天体を広角で出すというのが目標ですが、今後の本格的な撮影が楽しみになってきました。


連休中にε130Dのテスト撮影をしているのですが、その画像処理の過程で面白いことがわかりました。このネタだけで長くなりそうなので、先に記事にしておきます。


最初に出てきたε130Dの分解能にビックリ!

今回ε130Dで初の撮影を進めています。満月直前で明るいので、ナローバンド撮影です。初めての機材なので色々トラブルもありますが、それらのことはまた次の記事以降で書くつもりです。とりあえず2日かけてなんとか約2時間半分のHα画像を撮影しました。細かく言うと、ASI6200MM Proのbin1で1時間ぶん、かなり暗かったのでその後bin2で2時間半分撮影しました。

その後、まだ仮処理段階のbin2のHα画像を見てびっくりしました。bin2撮影の2時間半ぶんをインテグレートして、BlurXTerminator(BXT)をかけて、オートストレッチしただけですが、なぜかわからないレベルのすごい分解能が出ています。下の画像はペリカン星雲の頭の部分を拡大して切り出しています。

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昔FS-60CBとEOS 6Dで撮ったものとは雲泥の差です。
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分解能の理由の一つ

ちょっとビックリしたのでTwitterに速報で流してみたのですが、かなりの反響でした。分解能がいいと言われているε130DにモノクロCMOSカメラなので、ある程度分解能は出ると予想していましたが、予想以上のちょっとした魔法クラスです。

その後、画像処理がてらいろいろ検証を進めていたのですが、魔法の原因の一つは少なくとも判明しました。ちょっと面白いので検証過程を紹介しつつ、謎を解いていきます。


意図せずして高解像度に...

まず、今回大きなミスをやらかしたことです。テスト撮影ではbin1とbin2の2種類を撮ったのですが、それらの画像をPixInsightで同時に処理していました。2種類のマスターライト画像が出来上がるわけですが、ここで問題が起きていたことに後に気づきました。

reference画像をオートで選択していたのですが、そこにbin1のものが自動で選択されてしまっていた
のです。その結果、bin2の低解像度のものもregistration時に強制的にbin1のものに合わせられてしまい、高解像度になってしまっていました。その状態に気づかずにBXTをかけてしまい、予期せずして恐ろしい分解能の画像になっていたというわけです。

その後、気を取り直し再度普通のbin2画像を処理して比較してみると、いろいろ面白いことに気づきました。メモがわりに書いておきます。


1. BXTのPFSの値と解像度の関係

まず、BXTのパラメータですが、恒星の縮小とハロの処理は共に0としてしないようにしました。背景の青雲部の詳細を出すために、PSFを7.0にしてSharpen Nonstellerを9.0にします。

これをbin1画像に適用してみます。この中の一部をカットしたのが以下です。最初の画像と同じものです。少し出しすぎなくらいのパラメーターですが、まあ許容範囲かと思います。

BIN_2_4784x3194_EXPOSURE_300_00s_FILTER_A_ABE_Preview01

これをそのまま同じBXTのパラメーターでbin2画像に適用してみます。明らかに処理しすぎでおかしなことになっています。許容範囲外です。
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次に、bin2画像は解像度が半分になっていることを考慮し、PSFを7.0から3.5にします。するとbin1でPSF7.0で処理した程度になります。これをbin2画像に適用します。

bin2_good_BXT_BIN_2_4784x3194_300_00s_FILTER_A_Preview011

bin1にPSF7.0で適用したのと同じくらいの効果になりました。これでbin1とbin2に対するBXTの効果が直接比較ができるようになったと考えることができます。

このことはまあ、当たり前と言えば当たり前なのですが、BXTのPSFは解像度に応じて適時調整すべきという教訓です。もちろんオートでPSFを決めてしまってもいいのですが、オートPSFはいまいち効きが悪いのも事実で、背景の出具合を調整したい場合はマニュアルで数値を入れた方が効果がよく出たりします。


2. referenceで解像度が倍になったのと、drizzleで2倍したものの比較

referenceで解像度が倍になったのと、drizzleで2倍したものの比較をしてみました。これはほとんど違いが分かりませんでした。下の画像の左がreferenceで解像度が倍になったもの、右がdrizzleで2倍にしたものです。かなり拡大してますが、顕著な差はないように見えます。
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これにBXTをかけた場合も、ほとんど違いが分かりませんでした。同じく、左がreferenceで解像度が倍になったもの、右がdrizzleで2倍にしたものです。
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この結果から、わざわざbin1を撮影してフィットとかしなくても、bin2でdrizzleしてしまえば同様の分解能が得られることがわかります。


drizzleで2倍にしてBXTをかけた場合

次に、bin2で撮影したものと、bin2で撮影したものをdrizzleで2倍にした場合を比べてみます。左がbin2で撮影したもので、右がbin2をdrizzleで解像度を2倍にしたものになります。左のbin2の拡大はPhotoshopで細部を残しすようにして2倍にしましたが、やはり一部再現できてないところもあるので、もと画像を左上に残しておきました。
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それでもちょっとわかりにくいので、PCの画面に出したものをスマホで撮影しました。こちらの方がわかりやすいと思います。左がbin2で撮影したもので、右がbin2をdrizzleで2倍にしたものです。(わかりにくい場合はクリックして拡大してみてください。はっきりわかるはずです。)
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ぱっと見でわかる効果が微恒星が滑らかになることです。ですが、背景に関してはそこまで目に見えた改善はなさそうに見えます。

ところが、これにBXTをかけた場合、結果は一変します。明らかに2倍drizzleの方が背景も含めて分解能が上がっているように見えます。(と書きたかったのですが、どうも画像を2倍に大きくするときにやはり補正が入ってよく見えすぎてしまい、右とあまり変わらなく見えます。ここら辺がブログでお伝えできる限界でしょうか。実際には左上の小さな画像と、右の画像を比べるのが一番よくわかります。)
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同じくわかりにくいので、これもPCの画面に出したものをスマホで撮影しました。左がbin2で撮影したもので、右がbin2をdrizzleで2倍にしたものに、それぞれBXTかけています。
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この右のものは、最初に示したbin1画像を参照してしまって予期せずして解像度が倍になった場合の結果とほぼ等しいです。

どうやら「BXTは画像の解像度を上げてから適用すると、背景の分解能を目に見えてあげることができる」ということがわかります。解像度を上げたことで情報をストックする余裕が増えるため、BXTで処理した結果をいかんなく適用保存できると言ったところでしょうか。言い換えると、BXTが普通に出す結果はまだ表現しきれない情報が残っているのかもしれません。これが本当なら、ちょっと面白いです。


分解能が増したように見える画像を、解像度2分の1にしたらどうなるか

では、解像度増しでBXTで分解能が増したように見える画像を、再度解像度を半分にして元のように戻した場合どうなるのでしょうか?比較してみます。左が1で得た「bin2にBXTをPSF3.5で適用した画像」、右が「一旦解像度を増してBXTをかけ再度解像度を落とした画像」です。

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結果を見ると、そこまで変化ないように見えます。ということは、解像度自身でBXTが出せる分解能は制限されてしまっているということです。

ここまでのことが本当なら、BXTの能力を引き出すには、drizzleで画像自身の解像度を上げてからかけたほうがより効果的ということが言えそうです。


まとめ

以上の結果をまとめると、
  • drizzleは適用した方が少なくとも微恒星に関しては得をする。
  • BXTと合わせると背景でも明らかに得をする。
  • drizzleして分解能を上げるとBXTの効果をより引き出すことができる。

ただしこのdrizzle-BXT、拡大しないとわからないような効果なことも確かで、そもそもこんな広角の画像で無駄な分解能を出して意味があるのかというツッコミも多々あるかと思います。それでも系外銀河など小さな天体にはdrizzle-BXTは恩恵がある気がします。まあ取らぬ狸の皮算用なので、小さな天体で実際に検証してから評価するべきかと思います。

今回の効果はおそらく意図したものではないと思いますが、BXT ある意味すごいポテンシャルかと思います。ここまで明らかに効果があると思うと、過去画像もdrizzleしてもう少しいじりたくなります。

長く続いてきたSV405CCの評価も佳境になってきました。今回の記事は作例とともに、青ズレの謎に迫ります。さてさて、どこまで解明できるのか?


北アメリカ星雲再び

まずは作例です。今回の一連の記事のその2で出した北アメリカ星雲の再撮影です。

目的は2つ、
  • 前回の撮影は透明度がかなり悪く、階調がほとんど出なかったので、そのリベンジ。
  • 四隅の流れを改善しておきたい。
といったところです。本当はあと一つ、あわよくば青ズレを直す方法が見つかったらと思いましたが、この時点ではそれは叶いませんでした。

まず透明度ですが、今回の撮影では白鳥座の羽の先が見えるくらいよかったです。その影響はかなり大きく、見た目だけなら今回の3分露光の1枚で前回の全スタック分くらいの諧調が出ています。(アップロードの関係でサイズを各辺半分にしています。)

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依然青ズレは出ていますが、これならインテグレーションしたら階調に関してはかなり期待できそうです。

もう一点、マルチフラットナーを使っているにもかかわらず、前回までバックフォーカス長を適当にとっていたため、SV405CCでもASI294MC PRoでも、いずれの撮影にも関わらず四隅の星像が流れまくりでした。

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前回までの間違ったバックフォーカスでの四隅の一例。

タカハシの鏡筒はCanonやNikonといった、一眼レフカメラのバックフォーカス長に合わせてアダプターなどの製品を提供しています。今回は手持ちのタカハシ純正のCanon用の一眼レフカメラ用のアダプターを使ってマルチフラットナーのバックフォーカス長に合わせるようにしました。このアダプターに合わせてCMOSカメラを使う場合は、例えばZWOから出ているCMOSカメラとCanon EFマウントに変換するアダプターを使うこと、ほぼ何も考えることなくバックフォーカス長があった状態にしてくれるので楽です。

今回は、かなり前に買ったZWOのCanon EFマウントアダプターを使ってみました。現行モデルはフランジ長が固定ですが、初代のZWOのCanonマウントアダプターはフランジ長を1cm位調整できます。CBPを取り付けたくて、SV405CCに付属の1.1.25インチフィルター用のリングをセンサー部に取り付けたので、ZWOのCanonマウントアダプターは少し手前で固定されるはずです。そのため、マウントアダプターの長さは最短に調整しました。この状態で四隅を見てみると、

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のように四隅の流れはほぼ無くなりました。

その後、撮影前に少しだけ青ズレを直せないか試したのですが、この日は結局太刀打ちできず、透明度も良くて時間ももったいなかったので、そのまま撮影続行としました。結局天文薄明開始までの午前3時前まで3分露光で72枚撮影しました。前半は雲が通ることも多かったですが、後半はずっと快晴でした。使えたのは雲のない44枚の2時間12分ぶんでした。


画像処理

インテグレーション直後の画像をオートストレッチしたものです。

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一部拡大するとわかりますが、依然青ズレがあります。

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もう一つ、今一度上の画像をクリックして拡大して見てもらいたいのですが、微恒星の中心が暗く抜けてしまっています。最初はピントが合っていなかったと思っていたのですが、実際にはかなりピントは気を付けて合わせているにもかかわらず、ほぼ毎回こうなります。また、そーなのかーさんがSV405CCで撮影した画像も同様に中心抜けになっているようなので、どうもこれはピンボケというよりは何か系統的に問題があるような気がしています。

恒星に関しては仕方ないとして、そのまま画像処理を進めます。

途中やはり恒星部分で苦労しました。一番大変だったのは、StarNetのバックグラウンドと恒星部の分離の時に、色ズレのせいかハロの部分がバックグラウンドと認識されてしまい、ここを誤魔化すのが大変で、最後まで不満が残ってしまいました。

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パッと見はわかりませんが、B画像を抽出してみると同様のハロが他にもたくさん残っていて、あぶり出しとともにたくさんのハロが目立ってきます。

結果


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  • 撮影日: 2022年7月2日0時38分-2時53分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI FS-60CB+マルチフラットナー(f370mm)
  • フィルター: SIGHTRON CBP(Comet BandPass filter)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: SVBONY SV405CC (0℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイド
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分x44枚で総露光時間2時間12分
  • Dark: Gain 120、露光時間3分、128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120、露光時間 0.3秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

淡いところの階調もかなり出ています。前回の透明度の悪い時より相当良くなっています。庭撮りでここまで出るならまあ満足でしょう。あとはやはり恒星です。

普通ならここでおしまいなのですが、もう少し続きます。ここから大きな進展です


青ズレ検証その後

上の北アメリカ星雲の撮影のあと、もう少し青ズレに関して何かわからないかと思い、後日いろいろ試してみました。ただし雲が多く出ていたので、その隙間でのテストであまり時間をかけることができませんでした。

とりあえず、SharpCapで3分露光を何ショットか撮影しました。最初のショットがやはりこれまでのように暗くなるのが再現され、やはりドライバーレベルで何かやっているのかと思います。この時、雲の動きが速く、雲間が貴重なためにすぐにNINAに移りました(ここで焦っていたのが後で効いてきます)。

NINAでは少し雲が薄くなってきて余裕も出てきたので、じっくり青ズレを見ながら、ASI294MC Proとも交換しながら、何が問題かじっくりみることができました。

一つ疑っていたことがあって、オフセットが40と小さすぎることが原因ではないかということです。SV405CCの場合、オフセットは最大255まで設定でき、今回はわずか40と、最大の6分の1くらいとしています。ちなみにASI294MC Proの場合は最大80で半分の40としています。前回のPedestalの記事であったように、オフセットが低くて輝度の低いところが問題を起こしているのかと思ったわけです。でもオフセットが40の場合でも、120にした場合でも、青ズレに関してはなんら違いが見られませんでした。なので、オフセットは無関係かと思います。

結局、このとき画面を見ながら出した結論は、ASI294MC Proでは何をどうやっても(ゲインやオフセット、露光時間など)青ズレのようなものは出ない、その一方SV405CCでは何をどうやっても(こちらおゲインやオフセット、露光時間など)青ズレを消すことはできない。ということでした。

その後、改めてSV405CCのRAW画像を、RGBで分離して見たり、4つのセグメントごとに見たりしました。
  • SV405CCのBayer パターンがなぜかGRBGであること。ASI294MC ProはRGGB。
  • でもなぜか星雲の濃さから判断するとCF0:G1, CF1:B, CF2:R, CF3:G1のように見えること。
  • CF2の恒星中心部近くに極端に暗くなっている欠損部が多いこと。輝度は周りの1%程度であるが0でないこと。
  • CF1に星の中心部近くに輝度が完全に0のところがあること。CF2ほど欠損の数は多くないこと。
などがわかりました。そーなのかーさんも同様のレポートをしていたので、再現性もあるようです。

結局、この時点ではどうすることもできなくて諦めて、次はNINAで触れないパラメータをいじってみるのかなと思っていました。というのも、CMOSカメラはどこかに設定が保存されていて、例えばSharpCapで触った設定が、FireCaptureを立ち上げるとそのまま引き継がれるというようなことがあるからです。


なんと、原因判明!

そんなことを考えながら昨晩、上の北アメリカ星雲の画像処理を終えて、次回テストの準備をしようと思い、「そういえばSharpCapでSV405CCで撮影した画像があったなあ」と何の気無しに開いてみたら、どこをどう見ても青ズレが見えません。

Capture_00001_20_47_33_RGB_VNG
SV405CCでSharpCapで撮影。青ズレは皆無です。

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上の画像の直後にSV405CCでNINAで撮影。明らかに青ズレが出ています。

わかりやすいように拡大して比較して見ます。
ShapCap_NINA_SV405CC
左がSharpCap+SV405CC、右がNINA+SV405CCです。

明らかに違いがわかると思います。ただし、SharpCapでの露光は180秒、NINAでの露光は30秒です。露光時間が逆だったらまだ疑いの余地もありますが、NINAでわずか30秒で青ズレが出てしまっているので、結論は覆らないでしょう。これは明らかにどうやっても青ズレが消えなかったNINAとは、状況が全く違います。

カメラのドライバーはSharpCapでもNINAでも同じ「SVBCameraSDK.dll」を使っています。一応念のために改めて確認しましたが、SVBONYで配布されている1.7.3のカメラドライバーを普通にインストールしたあと、SharpCapは最新版を改めてインストールすると、SVBCameraSDK.dllに置き換わっていました。その一方NINAでは現在の最新版でも、カメラドライバーは最新のものに自動的に置き換わらず
、その前に使っていた1.7.2のままだったので、マニュアルでSharpCapにインストールされていたSVBCameraSDK.dllをNINAの方にコピペして、改めてNINAを立ち上げて1.7.3になったことを確認しています。

ここまでの検証が正しければ、最新版のNINAでの読み出し方の問題ということになります。


よく考えると、SharpCapで撮影した時は雲が流れてたので、時間がなくあせっていて青ズレをきちんと画面で確認していませんでした。そういえばSharpCapで電視観望した時もSV40CCで青ズレが出なくて、彩度もSV405CCとASI294MCで変わりがなかったことを改めて思い出しました。この時は露光時間が短かったからかと思っていましたが、どうもNINAとSharpCapの違いの方が濃厚そうです。

今のところCMOSカメラを使ってのDSOの撮影はShaprCapではディザーガイドがやりにくいなど、NINAやAPTなどに頼らざるを得ません。SV405CCはAPTは対応していないので、実際はほぼNINA一択になるかと思います。NINAでこの青ズレがある状態は致命的です。

というわけで、SVBONYさんの方に今回の結果を報告し、開発陣に連絡してもらうように頼みました。これでキチンとNINAでも対応してくれるように手配してもらえれば、青ズレ問題はとりあえず解決することになりそうです。

今の段階であとやれることは、次に晴れた時に改めてSV405CCを使ってSharpCapで撮影、画像処理までしてみて、(ディザーはやりにくいのでパスするかもしれませんが)青ズレが出ない仕上げ画像まで作ってみることでしょうか。


まとめ

ここまでの結果が正しいのなら、問題はハードではなくてソフトで解決できるということになります。ここが切り分けられるだけでも、かなりSV405CCの未来は明るくなります。その際、彩度がこれまで通り出なくなるのかちょっと気になりますが、まあ優先度としては次の話でしょう。

SV405CCの初期の評価、長かったですがやっと解決につながる道を見つけることができました。やっとあぷらなーとさんにお渡しすることができそうですが、どうもあぷらなーとさん骨折で入院しいるとかで心配です。焦らせてしまっても申し訳ないので、活動できるようになってから渡るようにしたいと思います。


前回のSV405CCのセンサー解析レポートに続き、撮影編でのレポートになります。




撮影準備

6月17日の金曜、天文薄明終了が21時過ぎ、その後月が22時過ぎから昇ってきて明るくなりますが、貴重な梅雨の晴れ間です。SV405CCでの撮影を敢行しました。

ターゲットは北アメリカ星雲としました。理由は
  • 月から離れていること。
  • 以前自分で撮影していて、比較しやすいこと。
  • メジャーな天体で、他の人も認識比較できること。
  • 自宅撮影なのと、途中から月が出てくるので、ある程度明るい天体。
  • ワンショットなローバンドフィルターを使いコントラストを上げたいため、輝線星雲であること。
  • 最後の決定打は、そこそこ広角で手軽なFS-60CBで撮影できるくらい大きめのもの。
などから決めました。

といっても、この日の空はうっすら霞んでいる様な状況で、撮影に適した日とは到底言えません。

夏至が近く、日が長いので、明るいうちに準備ができます。機材はFS-60CB+マルチフラットナー+CGEM II。フィルターはCBPのアメリカンサイズとしました。ガイド鏡はいつも使っている120mmのサイトロンのもの、ガイドカメラはASI290MMです。

CBPをノーズアダプターに取り付ける時、ASI294MC Proについていくるものは途中までしかねじ込めませんが、SV405CCに付属のものには最後まできっちりねじ込めます。使いたいフィルターのネジ規格によるのですが、私はサイト論のものをよく使うので、SV405CCのノーズアダプターの方がいいのかもしれません。

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今回の撮影は、もともとASI294MC ProやASI294MM Proでのセットアップに近く、ケーブルも普段組んでいる物を使いました。そうすると、SV405CCの背面にUSBの分岐がないのが地味に辛くて、結局長いケーブルをもう一本這わせることにしました。これまで意識していなかったですが、意外にカメラでのUSB分岐が役に立っていたのだと実感しました。

SV405CCは冷却初期モデルなのでまだそこまで手が回っていないと思いますが、将来的にはUSB分岐もあると、ZWOカメラと互換性が高まりユーザー側でのケーブルなどの取り回しが楽になると思うので、考えてもらえると嬉しいかもしれません。ガイド鏡などは速度を求めないので、USB2.0で十分かと思います。

初期アラインメントや、最初のピント合わせでSharpCapで実際の星を見てみました。時間はほとんどかけられませんでしたが、RGBカラー調整バーのジャンプが少し気になりました。一段変えようとすると50飛びで変化が大きすぎです。マウスやカーソルでもう少し細かい変更ができると嬉しいです。

今回はコントラストなどのパラメータはほぼ何も触っていません。というのもSV305で触ると設定が大きく外れて一気に画面上で見えなくなった経験があるのと、実際には撮影までの時間が惜しいので、余分なことはやりたくなかったというのです。SV405CCで電視観望を試したいので、その時にいろいろ触ってみようと思います。

SharpCapで試したことで一番大きかったことが、プレートソルブが問題なくできたことでしょうか。少し前の記事で書きましたが、最近は極軸調整が終わった後の赤道儀での初期アラインメント(ワンスターアランメンと)で、目的天体が入ったかどうかの確認を省略しています。その代わりにプレートソルブでずれを認識し、赤道儀にフィードバックして目標天体を入れるようにしています。今回SV405CCでも待ってく問題なくプレートソルブできたので、少なくとも全然おかしな像が来ているとかはないことがわかります。


NINAでSV405CCを動かすには

そのまま撮影のためにNINAに移ります。撮影にSharpCapではなくNINAを使う理由が、ガイド時のディザーの扱いです。最近のSharpCapもスクリプトなどでかなりのことができる様になってきましたが、ディザーを含めた撮影はまだNINAの方がかなり楽なのかと思います。

NINAでSV405CCを使うためには、ドライバーが必要です。ただしNINAの最新版NINASetupBundle_2.0.0.9001.zipに入っているSCBONYのカメラのdllの日付は2022/4/4なので、6月13日付のドライバーは入っていません。そのため最新ドライバーを使用して撮影するためには、ドライバーを手動でインストールする必要があります。

私を含め、SV405CCユーザーには直接6月11日に新ドライバーが送られてきたようですが、日本の公式ページを見ても全てのカメラを含むドライバーの2022-02-21版がアップされているだけで、SV405CC用のドライバーはまだアップロードされていません。と思ってよく探したら、本国のSVBONYの方には6月13日にアップロードされていました。というわけで、SharpCap、NINAともにSV405CCを使う場合には、

https://www.svbony.com


に行き、上のタブの「SUPPORT」 -> 「Software & Driver」 -> 横の「Windos」と進み、「SVBONY Cameras」の最新版(Release date:2022-06-13以降)をダウンロードする必要があります。その後、解凍してRead Me.docをよく読みNINAのインストールディレクトリの「External」「X64(64bit OSの場合)」「SVbony」のSVBCameraSDK.dllを新しいものに自分でコピペして入れ替えるひつようがあります。

こうすると無事にNINAでも新ドライバーで動くようになります。


さらに新しいドライバー

実は撮影を開始する2時間ほど前に、TwitterのダイレクトメールでSVBONYさんから直接、6月14日更新のドライバーができたと連絡がありました。Google Driveにアップしたのでダウンロードしてくださいとのことです。ところが非常に残念なことに、Googleの何らかのポリシーに反しているらしくて、アクセスさえできません。Googleをログオフしたり、別アカウントでログインしたり、Mac、Windows、iPadなどいくつか試しましたが、いずれも状況はかわらず、撮影準備時間にも限りがあるのでなくなく6月11日に送られてきたドライバーのままで撮影を始めました。

このドライバー、前回のレポートで書いていますが、HCGモードのゲイン設定がおかしいことがわかっています。私の解釈が正しければ、HCGモードのダイナミックレンジが得をする一番美味しいゲイン設定ができないという結果なので、是非とも改善されたドライバーで試したかったのですが、まあ仕方ないです。

それでも、数日のオーダーでドライバーを貪欲に書き換えてくるレスポンスの速さは素晴らしいと思います。


実際の撮影

実際にNINAでSV405CCで撮影を開始しました。ゲインは迷いましたが、後で比較できるようにASI294MC Proでいつも撮影しているのと同じ120にしました。露光時間は3分間です。冷却温度はいつも撮影している-10℃に設定します。ただし梅雨時期に入り、気温も高くなってきているので、そこは考慮すべきかと思います。この日は夜になっても暑く、撮影開始時には外でも25℃程度はありました。

この日は薄曇りというか、空全体が霞みがかっていて、北極星はほぼ何も見えなくて、夏の大三角がかろうじて見えるくらいでした。それもあってか、1枚目の画像はなぜかとても暗くて、北アメリカ星雲ですが、淡いところがほとんど何も出てきません。ASIFitsViewでのオートストレッチですが、実際電視観望で見えるよりはるか以下です。

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ところが2枚目には普通に星雲が見えます。これは一旦撮影を止めた次の撮影でも再現しました。

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ここの1枚目と4枚目です。全く同じ設定で星の数が4分の1ほどです。突然雲が来たかとも思ったのですが、ガイド鏡の画面を見ている限りそんなことはありません。

ところが次にASI294MC Proで撮影を終え、再びSV405CCに切り替えた3度目の連続撮影では最初から普通に撮影できます。何かあるのか?、たまたまなのか?、もう少し検証すべきですが、少なくともこんなことがあったので一応書いておきます。

さて、その最初の撮影ロットの2枚目、大きな問題が発生です。画像を見てもらうとすぐにわかります。

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真ん中に大きな影があります。右下の小さな円状の影は埃であることが判明しているので、ここでは無視します。さてこの真ん中の影、結局はセンサー面の結露でした。

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数枚撮影した後、温度を0度に変更することでこの結露は消えました。よほど湿気っぽかったのかもしれません。ただ、後で撮影した画像をいくつか見ると、-10℃のままでも曇ったエリアが小さくなっていたので、待っていればよかったかもしれません。


撮って出し撮影画像

なんだかんだトラブルもあり、まともな画像が撮影できたのは22時頃から。とりあえず10枚で30分撮影します。高度が上がってくると淡かった星雲も少しづつ濃くなってきます。10枚目を22時30分に撮影し終わりました。その時の画像をASIFitsViewでオートストレッチしたものです。

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22時半頃にASI294MC Proに交換。この頃から少しづつ雲が出てきます。カメラの回転角、ピントを合わせ直し、雲が通り過ぎるのを少し待ちます。撮影時のゲインはSV405CCの時と同じ120、露光時間も同じ3分です。温度も比較しやすい様にSV405CCで撮影したのと同じ0℃にあわせます。

22時49分にやっとASI294MC Proでの1枚目が撮影できました。その1枚目をASIFitsViewでオートストレッチしたものです。

2022-06-17_22-46-43_0016_ASI294MCPro

2枚の画像を比べても、ストレッチをした後だと極端な差はないことがわかります。最初、SV405CCの北アメリカ星雲がかなり淡かったので心配していましたが、ASI294MC Proで見ても大きな差がなかったので、この日の空の状況がよくないということで理解でき、少し安心しました。

ただし、クリックして拡大などしてみていただければわかりますが、滑らかさに差があるわかるかと思います。これはヒストグラムを見比べるとなぜだかわかります。2枚の画像のヒストグラムASIViewerで見てみます。上がSV405CC、下がASI294MC Proです。

histgram_SV405CC


histgram_ASI294MCPro

まず、明らかに山の位置に違いがあり、上のSV405CCの方が右側に出ていて明るいことがわかります。ゲインと露光時間は同じなのに明るさが違います。これは前回のレポートで、今公開されているSV405CCのドライバーではゲインが120ズレていて実際には明るく撮影されてしまうという報告をしましたが、傾向としては合ってそうです。ただ、明るさはゲインで120ズレているなら12dB=4倍のズレになるはずなのですが、平均値で比べると2倍弱の明るさの違いしかありません。この原因は今のところ不明です。

また、SV405CVの方の赤の広がりが大きいのが気になります。ASIFitsViewのオートストレッチはノイズはいじっていないはずなので、この広がりはノイズそのものを表すはずです。しかもこのヒストグラムの山は主に背景を表しているはずなので、RとGBでそれほど差が出ることはないはずです。Debayerのアルゴリズムのせいかもしれませんが、ドライバーの方でチューニングできるなら今度のアップデートを待ちたいかと思います。


その後の撮影と片付け

結局撮影は、最初にSV405CCで10枚の30分、ASI294MC Proで10枚の30分、さらにSV405CCで20枚の1時間です。雲などが入り明らかに写りが悪いのは省いた上での枚数です。最後の方でガイドがものすごく揺れているので外に出てみたら、机やPCが吹っ飛びそうなくらいの強風が吹いていました。危険なのと、星像も揺れるはずなのでここで終了として撤収しました。
  • 今回の画像で最適化されていないことがいくつかあります。一つはバックフォーカスで、FS-CB60にマルチフラットナーをつけた時に、きちんとそこから定められた距離にセンサーを置かなければいけないのですが、今回は合わせている時間がもったいないので適当にしました。なので四隅が流れてしまっていますが、ご容赦ください。
  • また、SV405CCの画像にほこりがついていて影になってしまっていますが、これも取り除く時間がもったいなかったのでそのままにしてあります。こちらはフラット補正で消えることを期待しています。
  • また、カメラの回転角とピントも同じで合わせきれていません。少しづつズレてしまっていますが、此処もご容赦ください。


今後

現在ダークフレーム、フラットフレーム、フラットダークフレームなど撮影しています。画像処理を引き続き進めますが、空は悪かったので写りは大したことないかもしれませんが、ASI294MCも同時に画像処理して比較してみますので、差を見ることでカメラとしてどれくらいの能力を持っているかわかるかと思います。

とりあえず画像処理はまだ時間がかかりそうなので、今回は主に撮影の様子と、撮って出しの比較くらいまでの記事としたいと思います。次回記事で画像処理の結果を見せたいと思います。

また、SV405CCドライバーはまだ発展途上なので、画像も今後大きく変わる可能性もあります。そこら辺も見所になるかと思います。


  1. SV405CCの評価(その1): センサー編 
  2. SV405CCの評価(その2): 撮影編 
  3. SV405CCの評価(その3): 画像比較
  4. SV405CCの評価(その4): 新ドライバーでの画像比較
  5. SV405CCの評価(その5): 青ズレの調査と作例
  6. 番外編1: 階調が出ない時のPedestalの効果
  7. 番外編2: ASI294MC Proでの結露

2022年の初記事ですね。皆様、あけましておめでとうございます。

年末からずっと天気が悪くてほとんど何もできなかったのですが、1月8、9、10日の連休中は北陸としては意外なほど天気が良かったです。ただしシーイングや風など色々問題もあって、結果としてはどれもイマイチでした。記録がわりに簡単に書いておきます。

土曜の太陽

そもそも今週は水曜、木曜と2日連続で、夕方からSCA260を出し、極軸をとり、カメラ回転角とピントを合わせ、撮影準備完了とともに曇って片付けるという空振り続きだったので、かなり不満が溜まっていました。連休初日の土曜日は朝から快晴。午前中はCostcoで買い物に付き合い午後から久しぶりに太陽撮影です。黒点も派手に出ているようです。ただしシーイングが相当悪かったので、結果だけ示します。

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AR2924群ですが、2つの大きな黒点と小さなたくさんの黒点がリングを作っています。問題は今のPSTだとHαの中心波長がきちんと見える範囲が画面の3−4割と一部のみで、今回のように複数の黒点が広い範囲に広がると、模様が均一に見えないことです。しかも右の黒点がピンボケのようになってしまいました。画面内でピントがずれるのはあまりないはずなのでちょっと不思議ですが、シーイングが悪かったのであまり議論しても意味がないのかもしれません。

プロミネンスもたくさん出ていましたが、一番大きなものを一つだけ処理しました。こちらもシーイングがよくないので、あまり気合が入っていません。
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土曜の月

そのまま星が見え出した夕方になだれ込み、SCA260に載せ替えて極軸を取り直しますが、徐々に雲が出始めました。まだ月がでているので、試しにSCA260とASI294MM Pro(常温)で、BIN1(ピクセルサイズ2.3μm)で高解像を狙い、RGBフィルターでカラー化してみました。撮影は星雲撮影のセットアップなのでStickPCを使っています。USBでの取り込み速度が速くないのですが、さらに間違えてfitsで保存していました。そのため0.1fpsくらいのスピードしか出なかったので、RGB各20枚のみの撮影です。serにしていたらもう少し速度が出たのかと思います。

画像処理はなかなか面倒で、まずRGB別々にAS!3でスタックします。BIN1で画素数が多いため、Regisgtaxは使えないので、ImPPGで細部出しをします。ImPPGは全面ごちゃごちゃしている太陽だといいのですが、平面がいくつかある月だとDenoise機能がないため細部にノイズが残ってしまいます。

更に問題がRGB合成です。最初PIで位置合わせしようとしましたが、星が写っていないため不可。ImPPGで位置合わせをしました。ただし、スタック時に画面を歪ませて位置合わせしているはずなので、RGBで本当に合っているかどうかよくわかりません。今回はシーイングが悪くて分解能的にも意味がなく、全くやる気無しだったので手を抜きましたが、根本的にやり方を考えた方が良さそうです。

一応画像だけ貼っておきます。

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その後、月が沈むに伴いトール兜星雲を狙っていたのですが、風がビューゴー言い出して星がすごい勢いてブレていて、やがて雲が空全面を覆ったので、あきらめて撤収しました。


Masaさんの北アメリカ星雲

連休2日目の日曜は天気が悪くほとんど何も成果がありません。Masa@MasaAstroPhotoさんからTwitterのDMで長時間撮影した北アメリカ星雲のファイルを公開するので処理してほしいとの依頼がありました。Twitterを見るとすでに何人かの方が画像をアップされています。

画像を実際に見てみると3つあって、一番短い時間のものでも23時間とものすごい露光時間です。Masaさんに了解との返事をして、夕方くらいから画像処理を始めました。あまり詳しいことは書きませんが、
  1. まずxisfフォーマットを開き明るい方でリジェクトされた画像を見ると、どうも何度か画像が回転しているようです。実際の画像は測定すると9.5度程度回転しています。そのためまずは南北を揃えて、はみ出した部分をトリミングします。
  2. 左側の緑カブリがひどかったのですが、DBEを暗い部分に3点打ちして1回、さらに4点打ちしてもう一回かけることで除去できました。
  3. PCCで恒星の色を合わせますが、QBP IIを使っているとのことなので、見た目を合わせる程度にしかならないでしょう。やはりオレンジは出にくいです。
  4. ストレッチはASSで色を保ち、かつ赤がサチらないようにHTで。
  5. あとはStarNetで星マスクを作ります。
  6. ストレッチ後の画像とマスク画像をPSに引き渡して、炙り出しです。QBP IIだと赤がのっぺりしてしまいます。そのため星雲部の青を少し出します。
  7. 超長時間露光のためでしょう、ノイズらしいものはほとんど目立たないため、思う存分あぶり出すことができます。ノイズ処理は何も必要ありませんでした。
出来上がった画像です。北アメリカ星雲真ん中の透明感を重視してみました。
masterLight_PCC_clone_DBE_DBE_PCC_AS2_HT5

ついでにAnnotationです。
masterLight_PCC_clone_DBE_DBE_PCC_AS2_HT5_Annotated

一言で言うと、非常に楽な処理でした。長時間撮影でノイズが少ないのもそうですが、元の3枚の画像を見比べてみても、星像などんほとんど差がなく、とても丁寧に撮影したことがわかります。長時間撮影自信がそもそも大変だと思うのですが、ノイズのことを考えたら明るい星雲でもこれくらいの長時間撮影をするのがいいのかもしれません。

他の方も色々特徴的な画像処理をされています。Masaが比較検討動画を作るとのことなので結果が楽しみです。


月曜は再び太陽撮影

3日目の月曜は朝から快晴です。期待しながら太陽撮影の用意をしますが、実際に見てみるとやはりシーイングが全くダメです。午前に黒点とプロミネンスを何ショットか撮影しました。午後に少しだけシーイングがいい時間があったので少し撮影し直し、その後に雲で撤収です。

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ピントがずれているかもと思い、カメラの傾きを緩めたらニュートンリングが出てしまいました。それでもまだ右上の黒点は少しピントがずれている気がします。傾きは後で戻しておきました。

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まとめ

3日間の結果としては全く冴えなかったですが、それでも晴れ間があっただけまだマシです。久しぶりでちょっと満足しました。 

最安クラスの新発売のCMOSカメラ、Ceres-Cでの電視観望を試してみました。果たしてどこまで見えるでしょうか?


最安値の天文用CMOSカメラ

感度の高いIMX224センサーを利用した、(おそらく)最安値の天体用途のCMOSカメラ、Player One社の新発売のCeres-Cを手に入れました。実売で税込1.65万円というのはかなりインパクトがある価格で、特に電視観望をやってみたいと思っている方の中には、この格安カメラに興味のある方も多いのではないでしょうか。




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右に写っているのがカメラ本体になりますが、小さいですね。でもこの小ささが今回の鍵になります。また、Player Oneのカメラに(おそらく)もれなく付いてくるブロアーはコンパクトで強力で、使い勝手が良さそうです。USBケーブルも付属なのですぐに使うことができます。

このカメラ、実はメーカーによるとエントリークラスの「ガイドカメラ」だそうです。でも接続はUSB3.0なので、惑星撮影などにも使えるはず。今回はこのガイドカメラと謳っているものが、電視観望用途に耐え得るものなのか、実際に試してみました。


鏡筒

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まず今回のテストに選んだ鏡筒が、サイトロンから発売されているNEWTONY


この鏡筒を選んだのには明確な理由があります。IMX224センサーはエントリークラスなので、値段が安い代わりにセンサー面積が小さいです。この場合、鏡筒の焦点距離を短くしないと見える視野が狭くなってしまい、天体の導入が難しくなってしまうために、快適な電視観望が実現できなくなってしまいます。NEWTONYの焦点距離は200mm。望遠鏡としてはかなり短い部類になります。

NEWTONYの値段は税込で約6千円。この価格も大きな魅力で、電視観望を始めてみようと思うきっかけになるのかと思います。

もちろんNEWTONY以外にも焦点距離200mm台の鏡筒は存在しますが、ほとんどが高級機と呼ばれるもので、値段は10倍以上とかになってしまいます。唯一多少安価なものにSky Watcher社のEVOGUIDE 50EDというのがありますが、これでも実売で4倍以上の値段です。

中古のカメラレンズを探せば、短焦点でさらに安いものが見つかることもあると思います。でもNEWTONYのように、入手しやすく安価な鏡筒という意味では、サポートなどのことも含めて現行モデルの方が初心者には心強いと思います。

しかもこのNEWTONY、横の蓋を開けると中身が見えて、ニュートン反射望遠鏡の仕組みがよく分かるので、入門者にとっては最適です。

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私はもともと、観望会とかで子供とかに望遠鏡の仕組みを説明したくてこの鏡筒を購入したので、そこまで実用的に使うことを考えていませんでした。でも焦点距離がここまで短いニュートン反射はこのNEWTONYくらいである意味貴重な存在で、今回電視観望でうまくいけば今後大いに活用することができます。


Ceres-CとNEWTONYの組み合わせ

ところがこのNEWTONY、通常のCMOSカメラと組み合わせると、少しというか重大な問題があります。ピントが出ないのです。アイピース口にカメラを取り付けるとき、ほとんどのカメラの場合あと5mm位中に入り込んでいけばピントが出るのですが、私も以前同じPlayer OneのNeptune C-IIを取り付けた時、あとすこしでピントが出なくて悔しい思いをしました。

Ceres-Cはその形を見てもわかりますが、アイピース差し込み口と同じ径が続いているので、奥まで差し込むことができ、それでピントが出るのです。Ceres-CとNEWTONYの組み合わせがここで効いてくるのです。


AZ-GTi

もう一つ重要なアイテムを紹介しておきます。SkyWatcher社のAZ-GTiです。



いくらNEWTONYが短焦点といっても、空のかなり狭い範囲を見ることになります。地球は回っているので、空を見ていると星は動いていくように見えます。
  1. 見たい天体をスムーズに導入することと、
  2. 星を追いかけるために自動導入、自動追尾の機能
がある「台」が必要になります。今回はこの手の機能を持った機器としては最安に近いAZ-GTiを使うことにします。もし、既に赤道儀などを持っていたら、もちろんそれらを使うこともできます。


組み立て

さて、実際に機材を組み合わせてセットアップしてみましょう。まずはNEWTONYをAZ-GTiに取り付けます。この場合、NEWTONY付属の簡易三脚から鏡筒本体を外して、それまで三脚が付いていた本体下面のネジを利用してアリガタを取り付けます。

アリガタはCeres-Cの販売店のシュミットにもいくつかありますし、

アマゾンなどでも「アリガタ」で検索すればいくつも見つかると思います。

私は簡単に取り外せるよう、アリミゾからアルカスイス互換のクランプへの変換アダプターを作り、NEWTONYにはアルカスイス互換のプレートをつけて、取り付けるようにしています。普通はビクセン規格のアリガタを直接取り付けるので十分でしょう。

次はNEWTONYにCeres-Cをとりつけます。アイピース口のところに差し込み、固定ネジを締めるだけです。
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PCとソフトウェア関連

カメラをPCに接続しますが、その前にあらかじめPlayer Oneのサポートページに行って、ドライバーをダウンロードしインストールしておいてください。
 
リンク先の「Native driver」の中の「Camera driver」を選びます。

今回電視観望用に使うソフトは「SharpCap」。



これもダウンロードしてインストールしておいてください。無料でも使えますが、いくつかの機能は有料版のみで使えます。基本的な電視観望は無料版でもできますが、オートストレッチなど有料版の機能を使うと便利な時があります。年間2000円程度なので、もし電視観望が楽しいと思って続けたいと思うなら、有料版を考えてもいいのかもしれません。

ソフトの準備ができているなら、カメラをUSBケーブルでPCと接続します。SharpCapでカメラを認識させますが、ドライバーなどがうまくインストールされていれば、Ceres-Cがカメラの選択肢として出てくるはずです。
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これらのことは、あらかじめ昼間などの明るい時に試しておくといいかもしれません。うまく接続できたら、露光時間とゲインを適当に合わせてPCの画面にカメラで見ている映像が出ているのを確認してみてください。もともと天体用のカメラなので、昼間に見ると明るすぎる場合があります。その際は露光時間を数ミリ秒とか、ゲインを0近くにするとかして、きちんと画面に反応があるかを確認してみてください。


ピント合わせについて

さて、ここで気づくと思うのですが、NEWTONYが安価なせいもあり、ピント合わせがアイピース全体を回転させる方式になっています。そのため、カメラを固定したままだと視野が回転してしまうことと、ねじ込み式のためにきちんと固定できず、多少ガタついてしまいます。

なので、カメラの固定ネジを緩めて、何か景色や夜なら星にNEWTONYを向けて、PCの画面を見ながらカメラを出し入れしてみます。ある程度ピントがあったところで固定ネジを締めてカメラを固定します。その後、わずかにカメラごと回転させてピントを合わせるようにします。視野は多少回転しますが、ピントの調整範囲はごくわずかなので、回転もごくわずかに抑えられるはずです。

その後は、USBケーブルに無理なテンションなどかけなければ、ガタでピントがずれるようなことはありませんでした。


電視観望に使えるか?

さて、実際に夜に電視観望でCeres-Cを使ってみます。この安価な「ガイド用」と言われているカメラ、どこまで使えるのか非常に楽しみです。

試したのは2021年10月14日の夜、夕方からずっと曇りだったのですが、23時頃から晴れ始めたので早速準備です。この日は月齢8日の半月を越えたくらいの明るい月が西の空に傾いているような空でした。

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セットアップした機材を外に出し、アウトドア用の机を別途用意し、PCをそこに置いて操作します。AZ-GTiで、明るいこと座のベガを初期アラインメントで導入します。

ピント合わせは先に説明したように、カメラをアイピース 口に出し入れしてある程度合わせてから、回転で微調整します。星を見ながらやってみてもきちんとピントが合うことが確認できました。

さて、これで準備完了。目的の天体を自動導入します。


M27: 亜鈴状星雲でファーストライト

まず最初に見たのは、西の隣の家の屋根に沈みそうになっているM27亜鈴状星雲です。
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Gain300、露光時間3.2秒、LiveStack89枚、4分40秒

さすが224系のセンサーです。綺麗に見えますね。どうやら電視観望用途としてもこのCeres-C、十分に使えるようです。この時は露光時間3.2秒、ゲインを300に設定しました。最初ゲインを500とかに設定したのですが、明るすぎて画面が真っ白になってしまいました。ゲインは最大780まで設定できるようですが、300程度で十分なことがわかりました。

上の画像のように明るく見るためには、SharpCapの右パネルのヒストグラムを見ながらの調整が必要になります。ヒストグラムをよくみると3本の黄色い縦の点線があります。そのうち左と真ん中の点線で、山を挟むようにします。すると淡い部分ががあぶり出されてくるはずです。線の位置は画面を見ながら色々微調整してみてください。ちなみに、有料版のSharpCapではこのあぶり出し操作を自動でやってもらうことができます。有料版を持っている場合は、ヒストグラムにある雷マークのようなボタンを押してみて下さい。自動的に淡い部分があぶり出されてくるのが分かると思います。このことを「オートストレッチ」と言います。

うまくあぶり出されて、見たい天体が画面内に入っていることが確認できたら、ライブススタックでノイズを落としてみましょう。メニューの「ツール」から「ライブスタック」を選びます。下に出てくるライブススタックの中のヒストグラムを同様にいじって、左と真ん中の黄色い点線で山を挟んでみて下さい。その際は右パネルのヒストグラムの線で挟むのは一旦元の位置に戻しておいて下さい。雷マークの横のリセットボタンを押すと一発で戻るはずです。リセットしておかないと画面が真っ白に近くなってしまいます。

ライブスタックでは、時間が経つにつれて画面が重なっていき、背景のノイズがどんどん綺麗になっていくのが分かると思います。ライブススタックのヒストグラムで大まかにあぶり出し、右のパネルのヒストグラムで微調整するなどもできます。各自色々試してみて下さい。


M57: 惑星状星雲で迷光が...

M27でCeres-CとNEWTONYでかなり見えることがわかったので、次の天体に移動します。次も今にも沈みそうなM57、こと座のM57惑星状星雲です。小さいですが、輝度の明るい星雲なのでハッキリ見えます。

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Gain300、露光時間3.2秒、LiveStack56枚、3分

実はM57を導入した時に、最初妙な迷光が画面に表れてきました。
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迷光エリアの中の真ん中少し上にM57が写っています。小さいですね。

色々な方向を遮ったりして試した結果、隣の家の窓の明かりが入ってきていることに気づきました。カメラの取り付け位置が鏡筒のかなり先端に近い所にあるので、鏡筒先端から入ってくる光がカメラに入り込んでしまうためです。今回はとりあえず光を遮るようにテーブルを移動して影になるようにして迷光を避けましたが、フードのようなものを自作するのが良いのかもしれません。自分で工作などして鏡筒を育て上げていくのもまた、趣味としては楽しいことなのかと思います。

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手前から来る光を机とPCで遮ってカメラに入らないようにする。


M31: アンドロメダ銀河でレデューサを試す

次は銀河を見てみます。秋と言えばM31アンドロメダ銀河です。

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Gain300、露光時間3.2秒、LiveStack69枚、3分40秒

腕の構造も多少見えているのが分かるかと思います。かなり感度の良いカメラと言えると思います。

焦点距離200mmですが、さすがにアンドロメダ銀河は大きくてCeres-Cでは入りきりません。そこで、レデューサのテストをしてみました。SVBONYの0.5倍のもので、アマゾンなどでも安価に手に入れることができます。Ceres-Cの先端にはねじ山がきってあるので、このようなアメリカンサイズ(31.7mm)のレデューサやフィルターなどを付けることができます。レデューサを直接とりつけてみます。

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Ceres-Cの先にレデューサやフィルターなどをつけることができます。
この写真ではレデューサと、次の北アメリカ星雲で使うCBPをすでに取り付けてあります。

まずはレデューサが最低限使えるかどうかですが、カメラ位置を前後することで全く問題なくピントが出てくることがわかりました。その時の画像です。

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Gain300、露光時間3.2秒、LiveStack24枚、1分17秒

多少画角が広がっていることがわかります。ただし、レデューサをセンサーにかなり近づけた状態でとりつけてあるので、倍率はおそらく0.7倍くらいであまり減少されていなくて、見える範囲もそれほど広がっていません。また、この時間帯M31は天頂付近にあるため、経緯台では追うことが苦手で、短時間でも流れてしまっていることがわかります。


北アメリカ星雲

次に、白鳥座付近に移って北アメリカ星雲を見てみます。ところが、もうかなり西の低い空に傾いていて隣の家の明かりの影響が出ているせいか、位置はあっているはずなのにどう調整しても全く何もあぶりだすことができません。おそらく強烈なカブリのために大きな輝度差があって、ストレッチとかが役に立たないからだと思われます。

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こんな時は光害防止フィルターの類を入れると状況は劇的に改善されます。今回はサイトロン社のCBP(Comet Band Pass)フィルターを使いました。このフィルターをカメラと先ほどつけたレデューサとの間に挟むように取り付けます。こうすることでレデューサとセンサー間の距離を稼ぎ、倍率を下げることでより大きい範囲を見ようとしてます。その結果が以下の画像です。

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Gain300、露光時間3.2秒、LiveStack33枚、1分45秒

同じ位置を見ているのに、CBPがあるだけで劇的に星雲のあぶり出しが改善されることが分かるかと思います。また、星の位置を比較することで、より大きなエリアを見ていることも分かるかと思います。これで0.5倍程度になると思うので、焦点距離100mmの鏡筒にCeres-Cを取り付けているのと同じことになります。また、レデューサの星で四隅の星像が流れてしまっているのがわかります。これは安価な汎用的なレデューサのため、性能があまり良くないので仕方ないでしょう。

レデューサをつけたとしても北アメリカ星雲の一部しか見えていないので、大きな天体を見るにはCeres-Cではまだセンサー面積が小さいことがわかります。これ以上のエリアを見ようと思ったら、もっと短い焦点距離が必要で、こうなってくると望遠鏡というよりは、カメラレンズの範疇になってきます。次回、カメラレンズでも試してみようと思っています。


M42: オリオン大星雲

0時半頃、既にオリオン座がそこそこの高さまで昇ってきています。M42オリオン大星雲を導入してみました。オリオン大星雲は明るいので、わずか1分ちょっとの露光でも十分きれいになります。CBPはつけたままです。

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Gain300、露光時間3.2秒、LiveStack23枚、1分14秒

レデューサが入っているので、四隅は流れてしまっています。上の方にランニングマンも見えていますが、レデューサが入ってやっとM42と合わせて画角に収めることができます。


馬頭星雲と燃える木

最後は馬頭星雲と燃える木です。馬頭星雲は結構淡いので、露光時間を6.4秒に伸ばしました。

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Gain300、露光時間6.4秒、LiveStack18枚、1分55秒

それでも2分弱でここまで出ます。感度やノイズの少なさも含めて、Ceres-Cがセンサーの性能をきちんと引き出すようにうまく作られているのを、この画像がよく表していると思います。

次の日も朝が早いのと、ちょうどPCのバッテリーが少なくなったとの警告が出たので、ちょっと名残惜しかったですが、ここで撤収としました。


Ceres-Cの評価

Ceres-Cでの電視観望どうでしたでしょうか?私の評価は「相当いい」です。入門用の電視観望カメラとしては間違いなくベストバイだと思います。

まず値段。初心者にとってこの値段は電視観望をやってみる敷居が相当下がるのではないでしょうか?この値段で、作りに手を抜いているようなところは全くみられなかったです。

次に感度。予想より相当いいです。ガイド用と謳われているので心配してましたが、全くの杞憂で電視観望用途には十分な性能があると思います。IMX224はセンサーとしてはかなり古い(2014年発表)部類で、相当こなれているといえます。Ceres-Cは現在の技術でこなれたセンサーの性能を余すところ無く引き出しているような印象です。

ダークノイズに関しても秀逸です。見ている限り輝点に相当するものは一つしか確認できませんでした。秋になってきて涼しくなってきたとはいえ、これは驚異的です。Ceres-Cの解説を見ると

「Player OneのプラネタリーカメラにはDPS(Dead Pixel Suppression)テクノロジーが搭載されています。DSPにより自動的にデッドピクセル(ホットピクセル、コールドピクセル)が一掃されます。 」

とあります。おそらくこれが効いているのかと思いますが、電視観望には非常に有利に働くのかと思います。仮に輝点がたくさんあったとしても、SharpCapのリアルタイムダーク補正機能である程度緩和することはできますが、露光時間やゲインを変えるたびにダークファイルを入れ替える必要があります。ダーク補正をしないでいいのなら、しないに越したことはありません。特に初心者にとっては、手軽に綺麗な画像を得られるのは相当なメリットかと思います。


まとめ

 結論だけ言うと、電視観望用に購入する初めての入門用カメラとしては確実に「買い」でしょう。まだ1日触っただけですが、相当高性能で素直な印象を受けました。私としてはかなりの高評価です。

期待以上によく見えたので、まだまだ色々試したいです。Ceres-C関連の記事、もう少し続けようと思いますので、ぜひご期待ください。

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