前回のSCA260でのトール兜星雲の撮影で、赤道儀を反転させると星像が大きく崩れてしまいました。



日曜の昼間をかけて光軸ズレの原因を探っていました。なかなか大変でしたがなんとか解決しました。


光軸の確認と副鏡の調整

天気は雪だったり曇りだったり時に晴れたりでコロコロ変わり、赤道儀を外に出すのは憚られたので 、少し狭いですが玄関で作業です。

まずは先日起きたことの再現です。

1. 鏡筒が西側に来て水平になるように、赤道儀を回転させます。接眼部にコリメータをつけて覗いてみると、そこそこセンターにいますが、少しだけズレています。
01_West_initial

2. 次に赤道儀を反転させ、今度は鏡筒が東側に来て水平になるようにします。再びコリメータを覗いてみると大きくズレています。縦方向にマーカーが下に落ちたようなずれかたです。これだけずれているなら、前回の赤道儀を反転させた時の星像のずれも十分説明ができるのかと思います。
02_West_low

3. 赤道儀を再反転し鏡筒を西側に戻し、再現性があるかどうかを確認します。マーカーがセンターにそこそこ来ることを確認し、反転時のズレよりはたいしたことないことがわかったので、十分再現性があると言っていいでしょう。
02_West_2nd

4. ここで、接眼部にガタがあることに気づきました。持ち上げるとカタンとずれます。原因は接眼部根本の回転部の3本のネジが緩かったことです。回転の滑り具合を調整し易くするために、元あったイモネジからキャップネジに変えています。その際、3本の固定ネジも調整したのですがゆる過ぎたようです。実際には接眼部を持ち上げてガタを取った時のズレが下の写真くらいです。これは反転したときに比べても大したズレではないので、無視して3本のネジをもう少し締めてガタをなくし、先に進みます。
04_West_2nd_focuser

5. ここで一度、大したズレではないですが一応副鏡を触って中心のマーカーがセンターで同心円になるようにします。 
05_West_center

6. 次に、何がずれているか確かめるために、鏡筒を東側にして、マーカーがズレた状態で副鏡二つのネジを90°程回して大きく調整し、センターに持ってきます。副鏡調整でマーカーをセンターにすることが可能だとわかったので、この時点でなんらかの理由で副鏡がずれていると判断しました。
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06_East_centering

7. 主鏡が少しズレているようなので(上の写真の一番黒いリングが、外のリングと同心円になっていない)、主鏡のネジを2つそれぞれ90°程度回転し、調整します。ですが、主鏡のズレはそれほど重要でないことが後でわかりました。

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上部アルミプレートを外したことの影響

次は、一番怪しいと思った上部プレートを取り付けて同じようなことを繰り返します。

1. この時点では上の一番最後の写真のように、鏡筒が東側にあって、マーカーがセンターに来ている状態です。

2. 作業しやすいように鏡筒をホームポジション(鏡筒が真上に来ていて北を向いている状態)に戻し、自分で取り付けた2つのハンドルを外し、もともとあったアルミのプレートを鏡筒上部に取り付けます。

3. 再び鏡筒を東側にして水平を取りますが、マーカーはほとんどずれていません。
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11_East_after_upperplate

4. 次に赤道儀を反転させ鏡筒を西側にしてコリメータを見てみます。これでズレてなければプレートを外したことが原因で鏡筒のたわみを引き起こし、副鏡がズレたことになります。果たして...ズレは???

12_West_after_upperplate

なんと、前回見た時と同じくマーカーが下に落ちたような状態でした。ズレ幅もほとんど変わりません。ということは、上のプレートは関係ない?言い換えると、鏡筒のたわみとかではない???


じゃあ原因は?

うーん、この時点で一時中断。いろいろ考えます。鏡筒を西側、東側どちらにおいて合わせても、反転するとマーカーが下に行く。ということは重力が関わっている可能性が高いです。

いろいろ考えながら鏡筒を見たり触ったりしていると、副鏡を触ったときに「カタッ」と音がなりました。鏡筒内に手を突っ込み、副鏡を下から持ち上げるようにするとなんとカタカタ動くではありませんか!どうやら副鏡周りのネジが緩んでいるようです。

ところが、副鏡調整の3本のネジを締めても、中央のネジをかなり締めてもまだ同じようにカタカタ動きます。副鏡がどうやって取り付けられているのかわからなかったので一旦外そうと試みますが、SCA260の副鏡はかなり大きくて、スパイダーの隙間から出てきそうにありません。スパイダーごと外すか迷ってネジに手をかけて緩めようとしてふと立ち止まりました。

もしやと思って、手をつっこんで副鏡を回転させてみると、なんと副鏡をネジを締める方向に回すとうまく固定できるではありませんか!実際、一回転以上の緩みとなっていて無視できないような量でした。

この緩みが最初からあったのか、途中からあったのかわわかりませんが、副鏡が緩んでガタつくことがあり得るということは心に留めておいた方が良さそうです。ちなみのこの副鏡のガタ、少し触ってくらいでは多分気づきません。鏡筒内に手を突っ込んで副鏡全体を手でつかんでわかるくらいです。


一難去って、また一難、真の原因は?

これで問題解決のはずなので、嬉々として鏡筒を東側と西側でそれぞれ水平にして念のためマーカの位置を確認します。さて、結果はというと....

13_submirror_screw

え、え、え???

ズレの量は3分の1くらいにはなりましたが、まだ有意にズレが残るようです。

念のため副鏡を揺らしてみると、それでもまだ少しカタカタ揺れるではありませんか!!!

もう副鏡はきちんとねじ込んであるのでしっかり固定されています。それでも微妙にどこかがカタカタ揺れるのです。

いろいろ触っていてわかったのですが、結論としては二方向あるスパイダーの片方の張り具合が十分ではありませんでした。鏡筒外側の大きなマイナスネジを両側で締め込み、十分なテンションを持たせることで、やっと揺すってもガタガタいうことは無くなりました。

IMG_4334

この時点で再び東西でマーカー位置を比べると、やっとどちら向きにしてもセンターに止まり、動かなくなりました!!!

おそらくですが、このスパイダーの緩みは上部プレートを外したことによって引き起こされた可能性が高いと思っています。上部プレートはそこそこの強度を保っていますが、スパイダーの張力と釣り合っていたはずで、プレートを外した瞬間にバランスが崩れたるんだのかと推測しています。この場合は完全に自己責任ですね。


結局プレートを外してもOK

その後、上部アルミプレートを再び外し、ハンドルに取り付け元に戻します。ここでも一応東西でマーカーのズレがないことを確認し、作業終了です。

プレートが原因でないことはかなり助かりました。プレートを再び取り付けなければならないとなると、また慣性モーメント激増で、揺れとの戦いに戻るからです。


まとめ

実際の原因は、予測したものと全然違っていました。むしろ予測よりもっと単純なものでした。でもこんなのでさえ、見つけるのは結構大変なんですよね。

今回2つの問題がありました。
  • 一つは、副鏡が回転してしまっていてきちんと固定されていなかったこと。
  • スパイダーの張りが十分でなかったこと。
これらがいつ発生したかは不明です。後者はおそらくプレートを外した時ですが、前者は一回転以上とかだったので、後から緩んだ量としてはちょっと多すぎるかと思います。M33とかでも赤道儀反転はしていましたが、天頂付近だったことと、まだ揺れとの戦いの最中だったので気づかなかったのかもしれません。実際、トール兜の一夜目の時もシーイングが悪いとこんなもんかと思っていました。

いずれにせよ、今回きちんと原因が確定して解決の方法もわかったので、今後SCA260での南天時の赤道儀反転も心置きなくできます。今後同様な問題が再び出たとしても、ここら辺を疑うことで回避できるのかと思います。

今回のように、マニア向けの天文機材の場合、問題が起きた場合や普段の調整なども含めて、ある程度自分で解決することが必要となります。これを不満と感じてしまうか、楽しいと感じるかは人それぞれかと思いますが、少なくとも私はこういったトラブル解決や改良などが楽しくてたまらなくて、天体趣味の大きな動機になっています。

次回撮影でどんな成果がでるか、とても楽しみです。