まだ画像処理をしてませんが、9月29日、30日と自宅でまゆ星雲を撮影(追記: 10/26に記事化)していました。29日の結果から高度が低くなってしまうとかなり画質が落ちることが分かったので、30日は早めに切り上げて、あまり時間で何かもう1天体撮影できないかと考えていました。

決めたターゲットは秋の大物M45プレアデス星団、すばるです。午前3時頃なので、この季節だとかなり高い位置まで昇ってきています。


余り時間での拡大撮影

残り時間で少し欲張っての撮影なので、多少失敗しても構いません。何か撮れたらラッキーくらいのお気楽撮影です。

M45にした理由ですが、
  • 以前から、すばるの青が自宅でどこまで出るかを試したかったこと。
  • 以前TSA120とフルサイズの6DでM45を撮影したのですが、少し画角が広くて一番迫力のあるハケで描いたような模様が小さくまとまってしまったこと。 
  • 短時間で撮影するので、比較的明るい天体であること。
  • 以前馬頭星雲を拡大して撮ったのですが、大きな星雲の一部を撮るのは意外に面白いこと。
  • 時間がもったいないので、SCA260の設定(カメラの回転角とか)を崩さずにそのまま撮影できること。
などです。


お気楽撮影開始

といっても、天文薄明開始まで1時間位しかありません。カメラ交換などは時間的にきびしいので、モノクロのASI294MM Proのまま。撮影は簡単なRGBで。結局撮影できたのはRGBそれぞれ1枚、4枚、5枚でした。少しでも有利なようにBを最初に撮影しました。Bの最初の1枚はブレてしまったので、結局使用できたのはRGBで1枚、4枚、4枚で合計45分、撮影終了が午前4時15分と、ほぼ天文薄明開始と同じ時間でした。

この撮影の時の週末はかなり天気が良く、片付けは赤道儀の極軸を保ちたかったので、鏡筒だけ外してカバーを被せるだけです。重い赤道儀を片付けなくていいだけでも相当楽です。


画像処理

半分遊び気分なので、多少撮影が失敗していても余り気にならないだろうし、画像処理も簡単に済ませてしまえばいいかと気楽に思っていました。なので画像処理も特にこだわらず、姑息なテクニックもバンバン使います。DeNoiseもok、カラーバランスも自分の好きな色にします。今回の目的は「光害のある自宅撮影で、どこまで背景のモヤモヤが出るか?」です。

撮影時は開始の時のBだけチェックして、あとは寝てしまったので、後からRをストレッチして見てみたら「ギャー」となりました。すごいゴースト?です。
2022-10-01_03-49-23_M 45_R_-10.00C_300.00s_0000

GとBにはそんなものはこれっぽっちも見えないです。
2022-10-01_03-56-49_M 45_G_-10.00C_300.00s_0000

2022-10-01_03-28-59_M 45_B_-10.50C_300.00s_0001

同じBaaderのフィルターなのですが、Rだけ何か違いがあるのでしょうか?不思議です。

でもすばるは青系統が主なので、今回は赤をあまり出さなくてよく、結局はほとんど影響がありませんでした。ちょっと安心ですが、今後明るい輝星を撮るときはRには気をつける必要がありそうです。

画像処理はいつものようにPixInsightでWBPP。ダークは以前のMasterファイルが使えます。フラットはこの後のメンテナンスの直前に一通り取ったものを使います。バイアスは最近のPIでは使わない(ダークに含まれているバイアスを使うというスタンス)ので一手間省けます。ちょっと前のバージョンでは、バイアスを使わない場合でも、バイアスを指定しておかないと文句を言われたり、うまく走らないことがあったのですが、今の最新版では直っているようです。

簡易画像処理のつもりなのでカラーバランスとかも適当です。というか、PCCをかけたのですが、赤のゴーストが目立ってしまい使い物になりませんでした。なのでマニュアルでバランスを取ったというわけです。

あと模様出しをしていて気づいたのですが、背景のモヤモヤってBだけに入っていると思っていました。でも実際は、BよりもGの方が細かい情報を持っているんですね。これは眼から鱗でした。

「M45: プレアデス星団(和名: すばる)」
Image06_PCC3_cut
  • 撮影日: 2022年10月1日3時28分-4時12分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、R: 1枚、G: 4枚、B: 4枚の計9枚で総露光時間45分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 RGB:0.01秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

できた画像を見てみると、光常線が一部二重になっているところがあります。これは撮影時に光軸がずれていたことが原因で、この後に前回の記事に書いたSCA260のメンテナンスをすることになったというわけです。

実は今回、画像処理だけで3回繰り返しています。1度目は本当に気楽に、WBPP後、STFでオートストレッチしただけでPhotoshopに渡し、適当にあぶり出しただけ。
Image04_ABE

その際に背景が結構出ることがわかり、恒星も含めてもう少し真面目に2度目の画像処理しました。でも画面の下の方に衛星の軌跡がどうしても残ってしまいました。3度目の画像処理は衛星の後が走った1枚を除いて一から画像処理をしたのですが、2度目の処理にどうしても及びませんでした。結局、2度目の画像処理でできた画像を少しトリミングしてそれを採用としました。背景を出すことを第一に考えていたので、姑息な手段も多用していて再現性がなかったことが原因です。はい、全然褒められた話ではないです...。


短時間拡大撮影の面白さ

ここからが本題なのですが、今回のこの短時間での拡大撮影、当初のお気楽気分にもかかわらず、意外なほど面白かったわけです。
  • 最初のポイントは、短時間でお気楽撮影なこと。今回の機材は口径260mmと大層なものですが、何かの撮影の余った時間のついでなので、やっぱり気楽なわけです。しかも短時間だから対象数を増やせます。
  • 当然、淡い天体は難しいでしょう。今回M45と明るい天体なので成り立ったのかと思われます。それでもすばるの青が自宅でここまで出るとは思っていませんでした。嬉しい誤算です。
  • 長焦点鏡筒で、大きい天体の一部を切り取るというのもポイントです。ちょっと見慣れない構図になりますし、面白い部分の強調にもなります。一番いいところを狙えるので迫力が出ます。
  • 突き詰めた撮影ではないので、画像処理も気楽にできます。短時間でノイジーなので、強力なノイズ処理ツールを使わざるえなくて、かえって諦めがついて罪悪感もなくなります。同様に、例えば今回はモヤモヤを出したいという目的があるので、他のこと(例えばカラーバランスなど)をあえて気にしないでサクサク進めることができます。
出来上がった画像を見ても分かるように、アラもたくさんあることは重々承知の上ですが、楽しい方を優先させてみました。今回は拡大撮影という位置付けですが、これをモザイク撮影とかに拡張しても楽しいかもしれません。モザイク撮影だとアラは目立たなくなる方向なので、さらに大胆なことができるかもです。


まとめ

今回の短時間拡大撮影、天体写真としてはかなり邪道になるのかもしれませんが、そこは短時間撮影の範疇でできることをというスタンスで、割り切ってしまっています。

そもそもの天体撮影を始めた目的が、気楽にそこそこ撮れればいいなということだったので、この方法はある意味当初の目的に最も合っているのかもしれません。究極的なものを求める修羅の道も楽しみ方の一つですが、私的には今回のお気楽撮影もかなり楽しめる方法です。特に今回はモヤモヤを出すのがかなり楽しかったです。

機会があれば、真面目な撮影の合間とかにでも、また試したいと思います。(追記: 10/20(木)の夜に薔薇星雲中心部で試しました。また記事にします。)