ほしぞloveログ

天体観測始めました。

タグ:サドル

ゴールデンウィークの最後の方、5月3日の夜中(実際には0時を回っているので5月4日)、Askar  FMA135で白鳥座の辺りを撮影してみました。 QBPをつけての自宅の庭撮りです。


FMA135の一連のテスト

この日は本当はM57を狙おうと思っていて、VISACで色々やっていたのですが、シーイングがあまりに悪くて断念。その時点で午前2時過ぎです。 貴重な晴れの日なので、あと少しなにかできないかと思いつつ、ちょうど白鳥座がもう上がってきているので、FMA135を試してみようと考えました。

FMA135は先日星像がどの程度なのか見るために、ファーストライトで試し撮りています。


APS-Cだとほぼ完璧に点像でしたが、フルサイズだと周辺減光もあり星像も4方向に流れてしまいます。でも星像も周辺減光も、そこまで酷いことはなかったので、やはりここはフルサイズのEOS 6Dでの撮影としました。

その後、FMA135で電視観望も試していますので、興味がある方はこちらもご覧ください。


今回の撮影のターゲットは白鳥座のデネブからサドルにかけて。135mmの焦点距離は結構な広角になるので、広い範囲でHα領域が広がる白鳥座付近は絶好のターゲットです。


セットアップ

撮影の準備でフィルターをどうしようか考えているときに、面白いことに気づきました。FMA135はアメリカンサイズのフィルターなら先端に直接取り付けることができるのです。FMA135には金属のキャップが付いているのですが、これが2段の蓋のような変な形をしているのです。試しに出っ張っている蓋を回して外し、その代わりにアメリカンサイズのフィルターをはめてみると、ぴったりハマります。今回はHα領域なので、QBP(Quad BandPass)フィルターのアメリカンサイズを取り付けることにしました。

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赤道儀からVISACを外し、6Dをそのまま載せます。ところが、いくつか問題が出てきました。カメラを赤道儀に縦長に固定したかったのですが、BackYardEOSを使うために6DにUSBケーブルを繋ぐと、コネクタが どうしても下のクランプに当たってしまうのです。結局カメラの固定はクランプの一部だけを利用してもう仮止め状態です。ちょっとぐらぐらしますが、風があまり吹いてないのでなんとかなるでしょう。

こんなことをしていたら、もう午前3時前。このときかなり焦っていてピントを合わせ損いました。画角を決めて「から」ピントをデネブで合わせてしまったのです。デネブが画面中央にあればよかったのですが、結構端の方にあります。星像が全面で点像ならそれでもよかったのですが、フルサイズだと収差で星が流れてしまうために、そこでピントを合わせたら当然中央ではズレてしまいます。デネブを中央に持ってきて、ピントを合わせてから画角を決めなければならなかったのです。このことは撮影後のチェッックで気づいたので、もう諦めてそのまま仕上げるしかありませんでした。

ISO3200で3分露光に設定し、撮影を始めたのは午前3時。薄明が4時前なので、もう1時間もありません。撮影を始めてから家の中で少しうとうとしてしまい、目が覚めた午前4時過ぎに外に出たらもう明るくなりはじめていました。そのまま片付けて、4時20分にはもうベッドの中。自宅撮影はここが楽なところです。

後で見たらやはり撮影途中から明るくなっていて、実際に使えたのは19枚でトータル57分、1時間に満たないくらいでした。撮って出しJPEGを載せておきます。周辺減光の様子とかが分かるかと思います。
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フラットは後日昼間の障子越しの光を写して64枚撮影、フラットダークはそのままキャップを閉じて64枚撮影、ダークは以前撮影したものを9枚だけ使い回しです。ただしダークはライトフレームと同じ180秒ではなく90秒のものを使い、PIで最適化オプションをつけています。6Dのダークノイズはあまり変な振る舞いをしないので、多分大丈夫でしょう。

ちょっと話がそれますが、ここら辺がいまだに6Dをメインで使い続けている理由です。とにかくいろんな面において素直だと思います。しかもフルサイズで、素子サイズが6.3μmもあり高感度で、かつ天体改造済みで十数万と安価。唯一の不満は冷却でないことですが、手軽さを考えたら冷却なしで全然構いません。

さてこれで画像処理を進めます。スタックとストレッチ処理はPixInsight (PI)を主に使いますが、露光時間が短いのでどうしても荒れてしまいます。

途中、一つ大きな欠点が見つかりました。日の丸よりもう少し大きな位の明るさの段差が見えるのです。
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わかりますでしょうか?

この画像は、フラットやダークの補正後、スタックした直後にオートストレッチしただけのものです。このリング、多分リアルだと思いますがいまいち確証がありません。というのも、右側は中心が暗く、外が明るいのに、左側は外側が暗く、中が明るいのです。しかもここで見えるなら、フラット画像とか出ていてもおかしくありませんが、フラット画像をABEなどで平らにしてよく見てもそのような段差は見えません。これがFMA135本体のせいなのか、QBPフィルターを取り付けたせいなのか、もしくは処理の過程で出てきたのかは不明なので、今後確認する必要があります。いずれにせよ、この程度なら画像処理でなんとかなるレベルです。

あと、センサー面のゴミがやっぱりまだ残っています。前回クリーニングしたのですが、それとは別の位置にさらにゴミがついたようです。しかも撮影中に移動しています。なんとかしなくてはダメですね。

気づいたことはこれくらいです。PIでストレッチまで終わっているので、あとはいつものようにPhotoshopに渡します。結果は以下のようになりました。

FMA135_2
  • 撮影日: 2021年日5月4日2時35分-3時48分
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 鏡筒: FMA135
  • フィルター: QBP
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  Canon EOS 6D HKIR改造
  • ガイド: なし
  • 撮影: BackYard EOS, ISO3200, 露光時間: 180秒 x 19枚 = 57分、dark: ISO3200, 90秒x9枚、flat: ISO3200, 1/1250秒x64枚、flatdark: ISO3200, 1/1250秒x64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

まあ、なんとか見えるくらいにはなりましたでしょうか。4隅の流れは確かにありますが、周辺減光は画像処理で気にならないくらいにはなります。今回ピントの合わせ方がまずかったので、中心より少し上くらいでピントがでしまっています。それを除けば、拡大してみない限りフルサイズでも十分に絵になると思います。

135mmの短焦点が実売4万でここまで実用なら、十分に面白いと思います。忘れてるかもしれませんが、これ口径わずか3cmの鏡筒です。焦点距離が短いためにF4.5とそこまで暗くはないので、撮影しても淡い天体も十分に出るのかと思います。今回の出来上がりを見ると、さすがにもう少し露光時間が欲しいところです。


まとめ

FMA135で写したデネブ からサドルにかけて、私の腕が未熟なために色々見苦しいところがありましたが、それらも含めて今一度リベンジしたいと思っています。触ってみるとわかりますが、かなり楽しい鏡筒です。色々試したくなってしまいます。

次回フィルターをつけるかどうか迷っていますが、もしQBPかCBPをつけるとしたら、手持ちの大きいM48サイズのQBPかCBPにするつもりです。Twitter上の情報ですが、hiroooo000さんによると、M36からM48に変換する変換するリングがあれば、M48サイズのフィルターを取り付けられるみたいです。



さらに、その後ブラックパンダさんから、専用のリングを設計中との報告が!


まだ時間はかかるみたいですが、なんかFMA135盛り上がるような気がします。

ちょうど新月期ですが、天気がいまいちっぽいです。できればアンタレス 付近を狙いたいのですが、今晩晴れてくれるかどうか?

週末の土曜日、天気がいいので撮影してたんですが、あまりに風が強くて途中で断念。その代わりに、一昨晩に試したリモート電視観望をさらにブラッシュアップしてみました。ただしこの日は中継は無しです。色々調整しながらやりたかったのと、さすがに二晩連続中継だとヘビー過ぎます。


前回の反省と、今回試したいこと

今回一番試したかったことは広域電視観望でのLiveStackです。原因は亜鈴状星雲M27がほとんと全く見えなかったこと。小さすぎるのもありますが、ノイジーだったのでLiveStackでもう少しノイズが減れば形くらいはわかったかなというものです。でもなぜか広角でのSharpCapでのLiveStackが全くうまくいきませんでした。

原因はStickPCが非力すぎたかもというのと、収差の多いレンズだったので星像が崩れて星として認識されなかった可能性が高いです。また、広角すぎたのも原因の一つかと思いましたが、ROIで画面を区切ってLiveStackしようとしてもできなかったので、広角なことが直接の原因ではない気がします。もしかしたら複合原因の可能性もあります。

というわけで今回のLiveStack実現のための改善点は
  • PCをハイスペックなものに交換。太陽撮影とかにも使っているSurface pro 7を投入します。可搬性は少し悪くなりますが、性能的には問題ないはずです。
  • もう一つは、レンズをPENTAXの6x7の105mm/F2.4に交換
です。よく考えたら、広域電視観望のLiveStackってこれまだやったことがありません。どれくらい改善されるか楽しみでもあります。

さてこのPENTAXの105mm、収差はそこまでよくはないですが、前回のNIKKOR50mmよりは遥かにマシです。というか、明るいレンズを試してくても手持ちで明るいレンズがあまりなくて、これは私が持っているレンズの中でもF3を切っている数少ないレンズの一つになります。あと手持ちの明るいレンズといえばNIKKOR35mm/F1.4、Nikkon135mm/F2.8、PENTAX 165mm/F2.8くらいですが、35mmはさすがに収差大きすぎ、あとは100をずっと超えることになってしまいます。50mmからあまり離れたくないので、今回の105mm/F2.4くらいが適当かというところです。でもこの焦点距離を倍にしたことは次の改善点と合わせて結構当たりでした。


広角時の簡単な初期アラインメント

もう一つの改善点は、
  • AZ-GTiできちんと初期アラインメントをして、自動導入と自動追尾をできるようにした
ことです。これは手間の割にかなり効果が大きかったので詳しく書きます。

そもそも、前回のコンセプトは場所も方向も気にしない「ポン置き」でした。初期アラインメントはこのポン置きを崩してしまうために避けていたのですが、今回のように広角の場合には、初期アラインメントがものすごく簡単であることに気づきました。

まず一つ目の手間は、一番最初に鏡筒をそこそこ北向きに、そこそこ水平におかなければいけないこと。ポイントは「そこそこ」です。ポン置きから考えるとたいそうな手間に思えますが、はっきり言ってかなり適当でいいです。105mmレンズでフォーサーズ相当のASI294MC Proなら計算すると画角は10度近くあるわけです。方角も水平度も10度くらいの精度で置けばいいのなら、まあ相当適当でいいでしょう。

初期アラインメントは水平が取れていない場合は「ツースターアラインメント」がいいでしょう。アラインメントの過程で水平のズレを補正してくれます。その際、明るい星を2つ選びます。今回はベガとアークトゥルス。初期アラインメントで一番難しいのが、見ている画面内に対象天体が入ってこない場合。特に焦点距離の長い鏡筒を使う場合によくあります。でも今回は焦点距離105mmで相当広角なため、余程適当に向きを置いていない限り、初期アラインメント時に一発で画面の中に入ってきます。ベガなんか一番明るい星なので、すぐにわかります。

この状態でPCの画面を見ながら、対象天体が真ん中に来るようにアランメントを2回とります。その後、対象の天体を自動導入してみると、かなりの精度で導入できます。というよりも、広角での自動導入なのであまり精度がなくても、きちんと真ん中に来てしまうと言った方がいいかもしれません。

さらにもう一つ、途中でSynScan Proで矢印ボタンでマニュアルで方向を適当にずらしても、AZ-GTiの中に現在の位置が記憶されているので、次の自動導入時もきちんと対象天体を間違えずに導入します。なので、前回やったリモートでモーターだけを使ってマニュアルで自分で天体を探すということも併用できるわけです。どれだけ好きに動かして迷ったとしても、そのまますぐに自動導入で位置確認することができるわけです。


実際のリモート電視観望

焦点距離が前回から比べて倍なので、より暗い星まで見えますが、逆に見える範囲は狭くなり、どこを見ているのかわかりにくくなります。でも今回は自動導入があるので、基本的に迷うことはありません。迷ってもまた自動導入ですぐに位置を特定することができます。これは思った以上に便利でした。中継の時に迷いながら探すのも臨場感があって楽しいですのが、いざという時に戻ったり次の天体に移動することができるのは安心感があります。

では実際に自動導入をして画面に天体を入れてみましょう。まずは手始めは、建物からのぼるM8干潟星雲。建物からのぼる「月」とかではありません。繰り返しますが建物から上る「星雲」です。
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画面のほぼ真ん中にM8がきているのがわかると思います。自動導入の位置精度はこれくらいなので、十分だとわかると思います。この画面はまだLiveStack無し。1.6秒露光の一発撮りなので、建物も木もぶれていません。

次は昨日見えなかったM27です。LiveStackを使ってノイズを減らしますが、今回はLiveStackも全く問題なくうまくいきました。でもPCがパワーアップしたからなのか、レンズの収差が緩和されて製造が良くなったからなのかは特定できていません。
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M27ですが、それでも小さいので見やすいように少し拡大しています。見え方は前回よりは多少マシで、形もなんとかわかりますが、やはりまだ焦点距離不足です。というよりはしょせんカメラレンズ、強拡大すると星がどうしても肥大化されて見えてしまいます。


あ、一応ネタとしてM57も見せますか。
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真ん中少し下の緑の明るいのがM57です。でも恒星に赤ハロが出ているのとほとんど見分けがつきません。さすがにもう少し焦点距離が必要です。


気を取り直して、次はサドルから少し東方向です。これは三日月星雲で自動導入しています。わかりにくいかもしれませんが、ど真ん中に写っているのが三日月星雲です。画像をクリックして、さらに拡大すると多分わかります。これもLiveStackありです。
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サドルからマニュアルで少し北に寄ったところ。真ん中より少し右下に見えるのがサドルです。
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これもLiveStackあり。左側の淡いところがどこまで見えるか試したのですが、驚くほどよく見えています。この後はまた自動導入に戻りました。

アンタレス周辺ですが、ここら辺が今回のシステムの限界でしょうか。赤と黄色は辛うじてわかるものの、青が(なんかモヤッとしている気もしますが)相当微妙です。
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青色はQBPの苦手とする色の一つなので、青だけヒストグラムで補強するような機能があるといいのですが、今のところリアルタイムではできません。


今回のハイライトでしょうか、屋根から上る北アメリカ星雲。自分の家の屋根なのですが、こんなのが家の中から見えるわけです。臨場感がないわけがありません。

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最後は再び干潟星雲とか、天の川中心部です。今度はLiveStackしています。本当にLiveStackさまさまですが、まあよく見えること。

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今回の問題点とまとめ

前回のシステムから少しの変更でしたが、見え方は相当変わりました。もちろん、そもそものASI294MC Proの感度が素晴らしいのと、光害地でも劇的な見え方の改善を提供してくれるQBP(Quad Band Pass)フィルターの性能があってのことです。

今回、広帯域電視観望で初めて試したLiveStackですが、やはりものすごいです。改めてその威力を実感しました。その一方、きれいな画面を見せようとすると露光時間が長く(今回は最長12.8秒)なり、さらにノイズが緩和されるまでスタックを重ねると、どうしても見栄えが良くなるまで時間がかかってしまいます。ただ、中継の時などでも実際にはそこまで頻繁に移動するわけではないです。中継で話しながら見せることになるので、話している時間でLiveStackをするとちょうどいいのかと思います。画面の移動の時は逆にリアルタイム性を出すために、露光時間を短くしたりして星の軌跡を出したりします。中継ではその辺りの作業の様子も全部見せることができるので、電視観望の技術交換にもなるかと思います。

また、今回AZ-GTiの自動導入を使ったのですが、広域電視観望でも自動導入は使った方が圧倒的にいいです。広角レンズとカメラなら、初期アラインメントで「必ず」ターゲット天体が画角に入ってきます。ベガとか明るい星を選んでおけば画面で確実にどれた対象天体かすぐにわかります。なので初期アラインメントの手間はほとんどかかりません。そしてその後の快適さが半端ないです。

レンズに関しては前回のNIKKOR50mmよりは星像はかなりマシで、自動導入もあるので今回の105mmの焦点距離でも、画角の狭さで今いる位置に迷うことはまずありません。その一方、まだ恒星周りを見ると赤ハロが目立ちます。これはピントが少し甘かったかもしれません。また、炙り出した時に出る明るい星の周りの白い大きなハロ。これは一段絞って2.8にした方がいいのかもしれません。


今後のこと

まだ多少の改善すべき点はありますが、夏の天の川がこれだけ見えるなら相当楽しいです。また時間のある時にZoomを使って中継してみたいと思います。前回参加できなかった方も、次回はよかったらぜひ参加してみてください。

ただ、天の川を見ようとするとまだこの時期は遅い時間からになってしまいます。最初はまだあまりたくさんの人数だとトラブってしまうかもしれないので、もう一回くらい遅い時間に始めるかもしれません。あ、でもこれから月が出てくるんですよね。まあ、月がある時にどれだけ見えるか試すのもいいテストになるのかもしれません。

一方、なかなか遠征などができないこの時期に中継してみなさんと繋がりたいという気持ちもあります。その場合は天の川にこだわらず、話が中心になるんでしょうか。

あと、今回の騒動が落ち着いたらいつか観望会でこのシステムを稼働させて、できるなら科学館とかのもっも街中で天の川を子供たちに見せてあげれたらと思います。

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