シベットさんが最近フィルターを使った電視観望を盛んに試されています。私のところにも31.7mmのアメリカンサイズのQBPフィルターが届いたので、ずっと試したかったテストをしてみます。


アメリカンサイズのQBPができた!

そもそもは昨年9月にQBPを使って電視観望をするとどれくらい見えるようになるかというテストをしたことに始まります。



この時の結論はHαで見えている赤い星雲はQBPによって相当見やすくなる一方、プレアデス星団などの青い星雲や白色光に近い系外銀河はむしろQBPによって電視観望では見えにくくなってしまうというものでした。なので、見る対象によってQBPをつけたり外したりするといいのですが、48mm版のQBPはFS-60CBの鏡筒とフラットナーの間に入れてあって、なかなか取り外しにくいのです。

そんな折、ちょうどBLACK PANDAさんからTwitter上でQBPの新バージョンができるというアナウンスがありました。なんでも基材を合成石英にアップグレードするということです。これまでの基材が何かはわからない(2020/2/3追記: B270だそうです。)のですが、合成石英は研究レベルでもよく使われ、熱膨張が少なく、紫外、赤外共に透過率が高かったりします。

上のブログの更新時のTwitterでのアナウンスでBLACK PANDAさんがコメントをくれ、「QBP入れ替えができるように、CMOSカメラに直接つけることができる31.7mmサイズがあればいいなあ」とか返事をしたら、なんと本当に反応してくれました。新バージョンを作る際に、31.7mmバージョンも作ってくれるというのです!これは期待大です。

合成石英を使用した新バージョンのQBP自身は11月半ばにできたと記憶しています。その時のものは元と同じ48mmサイズでした。その後、つい先日の1月29日、とうとう新バージョンの52mm版と、まさかまさかの31.7mm版が本当に発売されたのです!約束を守っていただいて本当に嬉しいです。BLACK PANDAさんどうもありがとうございました。

しかも値段を見ると、アメリカンサイズはこれまでの約半額、税抜きだとなんと1万円切りです。これならユーザーとしては気軽に試すことができるので、大変嬉しい価格設定です。

さらにここから話は急展開します。なんと製品を送るのでテストで使って欲しいとのこと。願いまで聞いていただいて、しかもサンプルも送っていただけるとは!

というわけで、送っていただいた新型のアメリカンサイズのQBP、やっと昨晩テストを敢行することができました。


31.7mmのQBPが生きるところ

フィルターサイズが小さくなって一番良かったのは、CMOSカメラに直接取り付けたり、フィルターホイールに入れたりできるところでしょうか。センサーサイズ的にはフォーサーズまでは使うことができるはずです。電視観望でよく使うASI294MCならば大丈夫でしょう。

もともとはASIカメラについている前に出ているアダプター

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に取り付けることを考えていましたが、年末の名古屋年越し観望会の智さんのレデューサートラブルの検討のときのコメントで「ASI294MC Proについていた薄いアダプターに31.7mmフィルターを取り付けるこができる穴が開いていて、以前よりも飛び出ることなくセンサーに近いところにフィルターを取り付けることができる」ということを教えてもらいました。

実際にASI294MC ProにQBPを取り付けると下のようになります。

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これまでは鏡筒に取り付ける時のみQBPを利用することができました。これならば、一眼レフのレンズをASIカメラに取り付ける時にも、アダプターの中に十分スペースがあるので、広角レンズを使ってもQBPを試すことができます。シベットさんはすでに同様のことを各種フィルターで試しているようなので、私も今回チャレンジしてみます。

今回は上の写真のように、古いオールドNIKKORの50mm/f1.4の明るいレンズにCanonレンズのアダプターをつけて、そこにさらに、ZWOが出しているASIカメラにCanonレンズを取り付けることができるアダプターを取りつけています。そのアダプタの空間にフィルターがうまく収まっています。

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明るいレンズとQBPを組み合わせての電視観望

さて、土曜の晩晴れた際にTSA-120のファーストライトの合間を縫って、このセットアップで電視観望を試しました。ポイントは焦点距離が50mmと広角なので、赤道儀やAZ-GTiさえ使う必要がなく、ただの三脚と自由雲台に載せただけで、手で動かすだけで見たいところを見ることができます。

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このセットアップ、本当に超手軽です。ぱっと持ち出してPCとケーブル一本繋ぐだけです。

もう一つのポイントは、f1.4の相当明るいレンズを使っていることです。以前ASI294MCを最初に手に入れたときその後何度か明るい広角のレンズを使って電視観望をしています。それでも十分に見えたのですが、明るすぎるレンズは画面が飛ばないように露光時間やゲインを抑える必要があるので、星雲なども当然見えにくくなってしまいます。今回はQBPを使って光害をカットしているので、星雲のコントラストが上がり見えやすくなっています。しかも明るいレンズのために露光時間をそこまで伸ばさなくても、十分情報を得ることができ、リアルタイム性に一役買っています。


実際の見え方

実際の見え味ですが、結構衝撃的です。まずは1.6秒露光のライブスタックなしのオリオン座です。

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真ん中に三つ星が映っているのがわかると思います。すぐ下のオレンジの明るいところがM42オリオン大星雲になります。繰り返しますが、これわずかトータル時間で1.6秒だけ露光したものです。三つ星の一番左のところに馬頭星雲らしきものがうっすら出ています。それどころか、よく見るとバーナードループ まですでに出ています。

これを24枚スタックしたのが次の写真です。あ、写真は全てPCの画面をiPhoneで写しているだけなので、ほとんど実際の見え味と同じです。

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馬頭星雲も燃える木もバーナードループも普通にはっきりしています。これでもトータル40秒以下です。

さてここで、ちょっと嫌なことに気づきました。明るい星の周りにハロが出ている(2020/2/5追記: 猫目ハロは解決しました。新型QBPが問題ではなく、カメラレンズが問題でした。)のです。炙り出しなどせずに普通に見ているだけではこのハロは気付きません。電視観望でヒストグラムをいじって炙り出すと目立ってきます。この時点ではQBPのせいなのか、レンズが悪いのかはっきりしなかったので、ここでQBPを外してみました。

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同じ1.6秒露光、30枚スタックです。QBPがないと明るくなりすぎるのでゲインを50(5dB、半分近く)落としています。バーナードループも辛うじて見えているようですが、明らかにコントラストは悪くなっています。これはQBPの効果が大だったといえるでしょう。でもその一方、ハロは抑えられています。

シベットさんがブログの中でQBPは赤外を通すためにハロがでるのではという報告をしています。その中でアポクロマートなど赤外でも収差補正をきちんとしている鏡筒はこの問題は出ないのではという考察がされています。これまで私もFS-60CBやFS-60Q、FC-76で旧版の48mmのQBPを使ったのですが、星がサチらない限りはハロは出ることはありませんでした。

今回星がサチっている可能性が一つと、単なる相当昔のカメラレンズなので、赤外で収差があるのは十分可能性があるでしょう。ただ、ハロの様子が赤だけでなく、なんかカラフルになっているのも気になります。シベットさんによるとUV/IRカットフィルターを併用すると、星像はフィルター間の反射で少し悪くなるが、ハロは消えたという報告がなされているので、次回私も試してみようと思います。

ハロは確かにあるのですが(2020/2/5追記: 猫目ハロは解決しました。新型QBPが問題ではなく、カメラレンズが問題でした。)、暗い星ではそこまで気にならないのと、星雲の出かたが思いの他すごいので、とりあえず今回はQBPをつけてこのまま進めます。


ばら星雲です。1.6秒露光で31スタック。トータル50秒くらいです。

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ばら星雲の上にも少し赤い領域があります。クリスマスツリー星雲ですね。

というか、今回何かを導入するというのではなく、画面を見ながら赤いのがあるとこれはなんだ?と、「星雲を見ながら探す」という夢のような体験をしています。例えば上のバラはリアルタイムの1.6秒一枚露光ではこのように見えます。

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もう、全然見える範囲の明るさです。

一番衝撃的だったのは次の例でした。

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真ん中らへんに何か赤いのが見えます。スタックするとさすがにわかります。

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そう、電柱の上をカモメが飛んでいるわけです。もう夜中に一人で大爆笑。普通の住宅街でこんなのがほぼリアルタイムで見えるわけです。面白くないわけがありません。

その様子を動画にまとめました。


左手でiPhonedで撮影しながら、右手で三脚の自由雲台の上のCMOSカメラを操作しているので、揺れたりして見にくい点はご容赦ください。オリオン座から電柱上のカモメ星雲、次にバラ星雲を突き止めて、最後にまたオリオン座に帰ります。バラ星雲なんかポンッと出てきます。実際にホントにこのように見えるわけです。

他にもプレセペ星団、

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M46、47、48です。

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適当にレンズを向けて見えたものです。1.6秒だけの露光なのでM46、47、48は少し見にくいですが、カモメ星雲のところの左上にもM46とM47は写り込んでいます。

あいにく、系外銀河は一つも認識できませんでした。アンドロメダとか出ていれば別ですが、さすがに広角レンズでは銀河は小さすぎるのと、やはりQBPは白色の系外銀河が苦手なのかと思います。あと今回はハロがキツかったので、恒星と銀河の見分けがつきにくかったのもあるかと思います。

最後に、オリオンが沈みかけるところです。右のほうが赤カブリになっていますが、それでもよく見るとエンゼルフィッシュ、辛うじてですが写ってますよね!

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まとめ

まだハロの件など克服すべき課題も多い(2020/2/5追記: 猫目ハロは解決しました。新型QBPが問題ではなく、カメラレンズが問題でした。)ですが、QBPと明るい広角レンズを用いることで、

光害地で、導入いらず、
リアルタイムにかなり近い、超お手軽な星雲星団観察

が可能だというのは特筆すべきことだと思います。一番最初にHUQさんが見せてくれてα7Sでの電視観望に近いかもしれません。α7Sの凄いセンサー感度にSharpCapとQBPで頑張って迫っているという感じでしょうか。

ちなみにこの50mm/f1.4レンズ、古くても標準レンズだったこともあり、今でも中古カメラ店やヤフオクで格安で普通に手に入れることができます。私は名古屋のコメ兵で5-6千円くらいだったと思います。

レンズは安くてもやはりASI294MCがまだ高いですかね。そこはASI385MCとかに代えて節約するという手もあります。

キットの望遠レンズを使った電子観望
も以前試しましたが、



広角、QBPが違う点になります。今回のこの手法も同様に、導入のための機器もいらないのと、さらに広角レンズを使っているために導入スキルも必要ありません。なので、相当手軽かと思います。

自由に空を見て星雲を探すインパクトは相当なものなのですが、今回のブログでそれが伝わったかどうか?比較的楽なセットアップだと思いますので、これまで電視観望を試したことがない人も、よかったら試してみてください。