ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:赤道儀・経緯台・三脚 > SWAT350

本記事は、一連のSWAT+AZ-GTi=SWAgTi (「スワッティ」gは発音せず) の関連記事になります。




目的

今回は、
  1. SharpCapの極軸調整を一眼レフカメラでやれるかどうか?
  2. プレートソルブを一眼レフカメラでできるかどうか?
という2つのことに挑戦したいと思います。

元々の動機は「SWATユーザーには一眼レフカメラを使って撮影している人が多い」という、開発元のユニテックさんからの情報です。せっかくAZ-GTiで自動導入ができるので、一眼レフカメラでもプレートソルブができないかと考えたことが始まりです。ついでにプレートソルブができるなら極軸合わせもできるのではないかと考えました。

本当は、胎内星まつりのSWAgTiの実演でEOS 6Dで試すところを披露したかったのですが、そこまで全く辿り着かず、いつもやっているCMOSカメラでさえ極軸調整がうまくいかなかったので、その後自宅に帰ってからやっと試すことができたというわけです。胎内で期待されていた方がいましたら、申し訳ありませんでした。この記事で代替とさせてください。


セットアップ

実際のセットアップです。鏡筒はFS-60CBにマルチフラットナーで、鏡筒とフラットナーの間にサイトロンのDBP(Dual Band Pass)フィルターを入れています。そのため恒星が多少暗くなり、極軸調整でもプレートソルブでも影響があるかもしれません。それでも簡単のために撮影時の設定を崩したくないので、今回はフィルターを外したりせずにそのまま試すことにしました。一眼レフカメラとしては天体改造済みのEOS 6Dです。これらをSWAT+AZ-GTiのSWAgTiに載せます。SWAgTiはいつものようにGitzo製のバサルトのミニ三脚に載せます。

鏡筒とカメラである程度重くなっているので、ホームセンターで買った12mmのネジが切ってある金属棒をAZ-GTiにつけ、そこにウェイトをつけています。胎内でユニテックさんにデモを見せてもらったように、SWATの回転方向のバランスをきちんと取らないとSWATのギヤに大きな負担がかかることを学んだので、今後はウェイトを使って赤経方向のバランスを取ることを心がけるようになりました。CMOSカメラの時はウェイト側が重過ぎてバランスが取りきれていなかったのですが、一眼レフカメラになってちょどバランスが取れる範囲になりました。

IMG_8504


極軸合わせ

まずはSharpCapで6Dを認識させることからです。今のSharpCapはASCOM経由で一眼レフカメラのかなりの機種を接続することができます。



ポイントは、SharpCapで一眼レフ用のASCOMドライバーを立ち上げる際には、カメラをケーブルで接続をしない状態で行うか、ケーブルで接続をしてもカメラの電源を入れないことです。こうすることで、エラーなど出ずに下の画面のように設定画面でカメラの設定をすることができます。

11_canon

ISOですが、設定画面で設定しものが反映されないことがあるようなので、その場合は一度接続ケーブルを外し、カメラ本体側で操作できるようにしてから設定します。

設定が完了したらカメラを接続して、さらにカメラの電源を入れて、上記設定画面の「OK」ボタンを押します。「カシャーン」とシャッターが上がる音がして動作開始です。おそらく初めて繋ぐときはライブビューモードになっているので、自動的にSharpCapでカメラからの撮影画面が出ますが、これだとシャッターを切り続けてしまい落ち着かないので、すかさず画面右上の「ライブビュー」ボタンを押して以下の画面のようなスティルモードにしてシャッターを切り続けるのを止めます。

10_still

露光時間を設定しますが、今回は16秒で試してみました。シャッター回数が増え過ぎず、一つの動作をあまり待たないくらいの時間という意味です。

ここからはSharpCap上で普通に極軸調整をします。どうやら極軸調整を選ぶと自動的にライブビューモードに切り替わるようです。なので、少なくともここに来るまでに適した露光時間にしておいてください。

12_polar
極軸合わせでは自動的にライブビューモードになるようです。

ここからは単に、一コマ一コマに16秒かかる極軸調整になるだけです。星の認識も問題なくできます。
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通常通りNextを押して途中SWAT側で赤経つまみを緩めて90度回転し、どれだけずれているか計算してもらいます。下の画面は2度くらいずれてますね。
03_polar

あとは三脚の足の伸び縮みと、三脚をずらしての水平方向の回転で調整します。今回は下のように、30秒角程度まで合わせこむことができました。ここまで合わせると、ずれは4分間かかっても0.3秒程度になるので、今回ターゲットとしている3分間程度の露光では極軸のずれによる星像の流れは完全に無視できるレベルです。おそらく機材のたわみによるズレの方が支配的になってくると思われます。

07_polar

でも露光時間が長いので合わせこむ回数にどうしても制限ができてしまいます。あまり突き詰めなくても、3分角程度まで合わすことができれば十分でしょう。これでも最大で4分間で3秒角程度ずれていく程度なので、SWATの精度と同等くらいになります。


極軸合わせのまとめですが、試してみた結果、露光時間が長いので少し時間はかかりますが、それ以外はCMOSカメラでの極軸合わせと何ら変わりはなく、一眼レフカメラでも十分に極軸を合わせられることがわかりました。

ちなみに、最初はASCOMドライバーでライブビューモードを選び、動画モードで極軸合わせができればと考えていたのですが、感度が全く足りませんでした。そもそも動画レベルなので露光時間が1秒より遥かに短くしか撮れていないことが原因です。1等星クラスの明るい星なら見えるかもしれませんが、ほとんどの星はSharpCapの画面上で見ることができません。

bad
ライブビューモードは使い物になりませんでした。 


プレートソル

極軸合わせでうまくいったので、気を良くして次はAZ-GTiでの初期アラインメントです。ここではちょっと冒険をしてAZ-GTiを使ったプレートソルブを試してみます。

SharpCapからAZ-GTiまでの接続ですが、まずAZ-GTiはSWATの上に乗っかっていて、PC上で立ち上げたSynScan Proから WiFiで接続されています。接続時には赤道儀モードを選んでいます。SharpCapからはASCOMドライバーを介してSynScan Proに繋げます。

この際気を付けることは、SharpCapとSynScan Proがきちんと接続されているか確認することです。きちんと接続されると、SharpCapのコントローラ部に今どちらの方向を向いているかの数字が表示され、その数字が時間とともに動いている様子が見えます。数字が動いていなかったり、0付近になっているとか実際に向いている方向と明らかに違う数字が出ている場合はうまく接続されていません。この場合は、PC上のSynScan Proを一旦閉じて、再度立ち上げてから繋ぐとうまく接続できるかと思います。うまくいかない場合は、PC上のSynScan Proの緯度経度情報を確かめてみてください。スマホやタブレットで繋いだときはGPSがあるので自動的に緯度経度情報は取得できますが、PCは通常GPSがないので緯度経度情報がうまく設定されていないかもしれません。

プレートソルブの設定はSharpCapの設定画面のプレートソルブタブから行います。

14_ps_gauss

私はASTAPとAll Sky Plate Solver(ASPS)を併用していますが、普段はほとんどASTAPです。まれにASTAPでうまく解決できなくてASPSだとうまくいくことがありますが、ASPSのほうが少し余分に時間がかかります。あと注意は、焦点距離をきちんと入れておくことでしょうか。自分の機材にあった焦点距離を大体でいいので入力しておきます。ここが大きくずれているとどうやってもプレートソルブはうまくいかないです。

設定画面には、ズレを計算した後にどうやってAZ-GTiに返すかですが、4つのオプションがあります。以前は2つ目のオプションのきちんと同期するところまでやっていたのですが、最後のAZ-GTiに返すところでうまく動いてくれないことも多くて、最近は4つ目のオプションの「マウント位置をオフセットして、天体を中央に配置する」を選ぶことが多くなりました。

とりあえず実際にプレートソルブをやってみましょう。まずはPC上のSynScan Proから初期アラインメントをします。赤道儀の極軸がかなり合っているので、ワンスターアラインメントで十分でしょう。適当に星を選びます。今回はアルタイルで試しました。一番最初に初期アラインメントで自動導入した後、下のように「マニュアルで中心に」と出ますので、この時にマニュアルで合わせる代わりに上で書いた「4つ目のオプションをえらんで」プレートソルブを使います。

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うまくいくと、赤道儀が見ていると思っている方向と、実際に今見ている画面から計算した方向のずれが角どで上の緑のバーのところに表示されます。
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その後、自動的にターゲットの星が真ん中に来ます。
21_PS_ok

このようにターゲット星が真ん中に来て、赤道儀が見ていると思っている方向と、実際に今見ている方向が一致している状態で、SynScan Proの初期アラインメントを完了してください。これで同期が完了し、これ以降は、(SWATの水平出しに依りますが)自動導入でターゲット天体がほぼ正しい位置に来るはずです。


うまくいかない時:
実は今回、初期アラインメントのテストにあたり、一番最初アルタイルでなくベガを選びました。実際初期導入すると、すでにベガが画面の端の方に入ってきました。ところが真ん中に持っていこうとプレートソルブをかけますが、なぜか全然位置を解決できません。ASTAPもASPSも両方ともダメです。一眼レフカメラなので何か弊害があるかと思い、露光時間、ISO、その他各種設定を色々いじっても全くダメです。もしかしたら本当にダメなのか...と、諦めかけていたのですが、ターゲットをベガからアルタイルに変えたら、一発で解決しました。しかも露光時間など多少設定を変えても全部きちんと解決してくれます。もしプレートソルブがうまくいかない場合は、早々に諦めてべつのターゲットにしてみるというのも手なのかと思います。


まとめ

この日は月も明るく、平日だったので、プレートソルブのテストまでで、撮影は敢行しませんでした。極軸調整もプレートソルブも、SharpCapを一眼レフカメラで使う時特有の、ライブビューモードとスティルモードをきちんと意識して使い分けることで、CMOSカメラと比べてもほとんど遜色なく使うことができるとわかりました。この際、露光時間を16秒としたのですが、やはりこのくらいが適当かと思います。短かすぎると操作性はよくなりますが、シャッターを切りまくるのでメカニカルシャッターの寿命が気になりますし、長すぎると操作性が悪くなるかと思います。

次は実際の撮影をどうするかですが、月のない天気の良い日を待ちたいと思います。SharpCapで撮影すべきか、これまで通りBackYardEOSを使うべきか、それともソフトなど使わずにシャッターを切るだけにするか。まだちょっと迷っています。


今回の目的はSWAgTi君を使って、ノータッチガイド撮影でディザーをすることです。

でも結論だけ言うと、現段階の環境でノータッチガイドで、ディーザーだけ追加というのは難しいと言うことがわかりました。どんなことを試したか、実際の撮影に即して書いておこうと思います。


たわみの影響

前回の記事で、極軸の精度について話しました。でも実際に撮影を始めてみると、合わせたはずの極軸精度よりも、一方向に大きく流れていってしまうことがわかりました。

原因の目処はついています。機材の撓み(たわみ)によるものです。ここで言う撓みとは、一般的なガイド撮影で問題となる「鏡筒とガイド鏡の相対的な撓み」のことではなく、「鏡筒、ガイド鏡、AZ-GTi、SWAT、三脚など、ありとあらゆるところで起きる撓み」のことで、影響は遥かに大きいです。

ガイド撮影の場合は、ガイド鏡で見た星の初期位置からのずれを赤道儀に返すことで、撮影鏡筒の向きがずれないよう補正します。それでも、ガイド鏡の固定が十分でなかったりすると、その撓みによってガイド鏡と撮影鏡筒の相対的なずれが発生して、撮影鏡筒での星像の流れに繋がります。でもこのズレは高々相対ズレに起因することなので、実用上はそこまで大きくはないです。それでも数時間とかに及ぶ長時間撮影では無視できない量になり、縞ノイズになることがあり、ディーザーを使い撮影途中で少し方向を変え、縞ノイズになる原因のホットピクセルやクールピクセルを散らしてやることにより、スタック画像ではほぼ影響がなくなります。

今回のノータッチガイドの場合の撓みは、撮影中に起きたどの場所で起きた機材の撓みもそのまま直結して星の流れになっていくので、遥かに影響が大きくなります。その大きさをざっくりですが見積もってみました。使ったのはSharpCapの曲軸調整機能です。

まず、使う機材を設置して、ガイド鏡を北に向けて、通常のように極軸調整をします。今回はFS-60CBの焦点距離が370mmと大して長くないことと、カメラがUranus-Cでそこそこセンサー面積が広いので、ガイド鏡を使わずに撮影鏡筒で直接極軸調整をしました。前回の記事でも書きましたが、微動雲台とか使わなくても、三脚の足の伸び縮みと水平方向の移動で、1分角程度の精度で合わせることは十分に可能です。調整の際に、赤道儀の赤経方向を90度程度傾けることで、カメラで見た製造の位置を比べ極軸方向とのずれを計算します。今回も下のように1分角以下程度、42秒角の精度で調整することができました。

04_polar_after

極軸調整が終わった直後は、最初の位置に比べて鏡筒が90度赤経方向に傾いた位置にあります。今回、この位置から再度極軸調整をスタートします。再びずれの計算のために90度赤経方向に回転し、元の位置に戻します。その結果が以下になります。

05_polar_after_right

本来、たわみなどなければ最初に調整した時と同じくらいの値の1分角以下程度が出なければなりません。今回は3分角程度のずれが出てしまっています。何度か試しましたが、毎回有意にこれくらいずれます。反対側に90度回転させて測定した場合は5分角位のズレになることもありました。これは90度赤経方向に回転した時の撓みの量相当のずれをそのまま表していることになるはずです。

というこうこは、撮影して赤経が回転していくにつれ、6時間で3分角から5分角はずれてしまうことになります。STAgTi君での撮影時間を仮に2時間としても、1-2分角位はずれてしまということです。前回計算したように、カメラの1ピクセルが1.6秒角に相当するので、40ピクセルから80ピクセルくらい、もし左右両方向の回転のずれを合わせると120ピクセルくらいずれる可能性があり、それくらいの長さの縞ノイズが出ても全くおかしくないことになります。

例えば2時間程度何もいじらずに撮影した実際の画像はライブスタック画像は以下のようになり、盛大な縞ノイズが出ていることがわかります。縦方向に典型的に120ピクセルくらいの縞ノイズになっていて、オーダー的には撓み起因のずれで縞ノイズになっていると考えておかしくなさそうです。

Stack_16bits_21frames_3780s

この撓みがどこから来ているのか?三脚なのか、SWATの固定なのか、SWATとAZ-GTiの固定なのか、鏡筒の載せ方が悪いのか、はたまた全体で悪さをしているのか?今後調査して、弱いところが見つかったら補強していく方向になるかと思います。


撮影時のテクニック「DECモード」

ここで一つ、SWAgTiでの撮影し際してのテクニックです。ユニテックさんが前回の「ほしぞloveログ」の記事を紹介してくれた際に紹介してくれました。

SWATは電源ケーブルを繋ぐことですぐに動作体制に入りますが、その際赤経方向に一旦大きくズレ、やがて戻ってくるキックバックのようなことが起きます。元に戻るまで数十秒待つことになります。これを防ぐためには、あらかじめSWATの電源を入れておいて、その際に追尾モードを「DEC」に合わせておけば追尾をしないでそのまま止まってくれます。AZ-GTiの追尾をオフにする際に、この「DEC」を「STAR」にすれば、キックなしでスムーズに移行できるとのことです。

実際私も試してみましたが、撮影の際の画面を見る限りジャンプの様なものは全く見えずみ、スムーズに切り替えることが出来ました。


ディザーで縞ノイズを回避したい

今回の記事のメインの目的です。撮影する際にディザーを試してみます。

すでにSWATでの追尾にしてあり、AZ-GTiはSynScan ProとASCOM経由でSharpCapと接続されていますが追尾は止めてある状態から始めます。


1. SharpCap+AZ-GTi

SharpCapの設定でガイドのタブを選び、3つあるガイド検知方法のうちの一番下のASCOMを選びます。ちなみに1番上がphd2で、次がMGENです。3つ目を選ぶことで、ガイドソフトがなくてもディザーをすることができるようになります。

02_gudesetting


SharpCap上でガイド(ガイドソフトが有り無しにかかわらず)をする場合はライブスタックモードにする必要があります。ここらへんがSharpCapがイマイチ撮影に対してはちょっと?なところなのですが、まあこういうコンセプトということでとりあえずはよしとしましょう。

さて、撮影開始という意味でライブスタックを始めますが、ここで問題発生です。なぜかAZ-GTiの自動恒星追尾が勝手にオンになるのです。なので、再度マニュアルでAZ-GTiの自動追尾をオフにして、ずれた位置を少し合わせ直して、ライブスタックをクリアして一から撮影を始めます。ディザーは3枚おきにする様に設定しました。SharpCapのライブスタック画面のガイドタブのステータスを見ていると、ディーザーをしようとしているように見えます。でも10枚ほど撮影してから画像をチェックしても、全然ディザーされてる様子が見えません。

いろいろ試してわかったことは、ライブスタックを始めるときに「ガイドをするように選択している」と、勝手にAZ-GTiの「自動追尾がオン」になること、それをマニュアルであえてオフにしたりして「自動追尾がオン」にならない限りディザー信号はAZ-GTi側に行かないことがわかりました。

言い換えると、SharpCapからSynScan Proに信号を送る限りでは、AZ-GTiの自動追尾をSWATに切り替えた状態で、ノータッチガイドでディザーをする方法はないということです。


2. PHD2を使い、カメラ赤道儀共にシミュレーター

気を取り直して、次の方法を考えます。返す先がSynScan Proでだめなら、他の場所にと考えPHD2を立ち上げました。この場合、SharpCapの設定でガイドのタブの3つあるガイド検知方法のうち、一番上のPHD2を選びます。

03_guide_setting

ガイド鏡は使っていないので、PHD2は単なる擬似ガイダーとして使います。とりあえずはPHD2の設定でカメラも赤道儀もシミュレーターを選びます。SharpCapのディザー設定で、ディザーは3枚おきにするようにしました。3枚目になるとSharpCapはディザー信号をPHD2に送り、PHD2も反応していますが、AZ-GTiには信号が行かないようで、ディザー時にきちんと画角がずれている様子が全く確認できません。返す赤道儀がシミュレーターなので理解できる結果です。


2. PHD2を使い、カメラはシミュレーターだが、赤道儀はSynScan Proに設定

次に、カメラはシミュレーターで、赤道儀はSynScan Proを選び、実際にAZ-GTi信号を返すようにしてみます。確認ですが、ディザー信号だけ返したくて、SWATの精度を生かすためにガイド信号は返したくないです。

まず、PHD2の設定でガイド信号を返さないオプションを選んでみました。Advanced Setupの「guiding」タブの「Enable mount guide output」のチェックマークを外します。ですが、この状態だとSynScan Pro側に信号が全く行かないようで、ディザー信号も返すことができず、ディザー動作はしないようです。

次に、「Enable mount guide output」にチェックを入れ直して、ガイド信号を返すようにします。この場合も、ディザー信号のみ返してガイド信号は返したくないので、Agrを最初の0、MinMo(ズレがこの値を超えたら信号を赤道儀に返す)を最大の20、Hysを最小の10などとします。

04_PHD2_screen
ダミーカメラでSynScan Proに返しているため、
何度かディザーをしたあとはターゲット星が全然ずれてしまいます。

これは短時間では一見うまくいきます。3枚撮影するごとにディザー信号のみSynScan Proに返すようにしたので、3枚おきにディザー信号がAZ-Gtiまで行き、実際に指定したピクセル(上の設定だと50ピクセル)分だけ動きます。目で見てその動きがリアルタイムでわかるので、やっとうまくいったと喜んでいました。問題はそのまま長時間撮影が続いた場合です。疑似カメラのターゲット星からのズレがまだ小さい場合はいいのですが、そのズレが何度かディーザーを繰り返しある程度大きくなると、最大時間まで待って(上のSharpCapの設定だと20秒間)再び3分露光が始まります。さらに、あまりにターゲット星とのズレが大きくなると、PHD2の方でガイドが始まってしまい、これは実際にSynScan Proに信号を返していくので、その後どんどんズレが大きくなり、カメラは疑似カメラのままでフィードバックされたことを検知しないので収束することなく、最後破綻します。

あと、この過程で気づいた最大の問題は、AZ-GTiの精度がSWATと比べると悪いために、ディザー信号をAZ-GTiに返すと大きく揺れ過ぎてしまうことです。そのため、十分な緩和時間を取る必要があるのですが、上の20秒とかでは短すぎるようで、分単位の緩和時間が必要そうな様子です。


今後どうすべきか

今回はここで詰みとなりました。PHD2のパラメータはもう少し探れば何か見つかるかもしれませんが、大原則でディザーだけ返すというのはダメそうでした。その後、2軸ガイドとかも試したのですが、これはまた機会があったら記事にします。

ここまで試した上で、必要なことを考えてみます。とにかく大事なことは、ガイド信号を返さずに、ディザー信号だけ返すようなソフト側の対応です。今のところ一番見込みがあるのが、ASCOM経由でSynScan Proに信号を送る方法です。SynScan Proの恒星時追尾だけオフにして、SharpCapからのディザー信号をSynScan Proが受け取って実際にAZ-GTiを動かすことですが、上述のように恒星追尾をオフにするとディザー信号は伝わらないようで、今のところこれはできません。それでもSharpCapの矢印ボタンには反応するので、この矢印ボタン相当のところに返すことができれば、今回の目的は達成できそうです。

PHD2は触ってみた限り、そもそも外部から来た信号とPHD2から出す信号の区別がつかないようで、ディザー信号だけAZ-GTiに出すというのは根本的に難しいようです。

それでも原理的にソフト側で解決できる問題ではあるので、今のところはいつか解決するのを期待することとします。


せっかくなので仕上げてみる

ディザーは諦めたのですが、3日ほどに渡ってM27を色々試しながら撮り溜めた画像があり、それぞれバラバラの位置で撮影しているので、ある意味ナチュラルディザー状態になっています。せっかくなので仕上げてみます。


masterLight_180.00s_ABE124_SPCC_BXT_MS_NXT3
  • 撮影日: 2023年7月17日22時18分-23時16分、7月22日1時40分-2時6分、7月22日21時55分-23時39分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI FS-60CB+マルチフラットナー(f370mm、F6.2)
  • フィルター: サイトロン Dual Band Pass (DBP)
  • 赤道儀: SWAT+AZ-GTi
  • カメラ: Player One Uranus-C(常温)
  • ガイド: なし
  • 撮影: SharpCap、bin1、Gain 200、露光時間3分x57で総露光時間2時間51分
  • Dark: Gain 200、露光時間3分、常温、64枚
  • Flat, Darkflat, Gain200、0.05秒、64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

ある程度長時間連続で位置をずらさずに撮影した分の縞ノイズは多少なりとも出てしまいますが、画像処理でなんとかできるレベルです。今回はM27の周りの淡い羽部分が少し見え始めるくらいまで出すことはできました。

今回の撮影は富山の住宅街での自宅撮影なので光害はそこそこあります。これ以上出したい場合は、もっと鋭いワンショットナローバンドフィルターを使う、ナローバンドとモノクロカメラで撮影する、口径を大きくする、露光時間を伸ばすなどの工夫が必要になってくると思います。また、ダークノイズに関しては非冷却カメラはどうしても不利で、特に夏場の暑い夜はかなりのノイズが出ていることが1枚ショットの画像を見るとよくわかります。冷却のためのケーブルは増えてしまいお気軽撮影からは少し遠くなりますが、夏場で淡い天体を撮影する場合は冷却カメラの恩恵は無視できないでしょう。

今のところオートでディザーをする方法は見つかっていないので、縞ノイズがどうしても気になる場合は、少し面倒ですが、適時LiveStackの露光を一時停止して、マニュアルでランダムに位置を少しずらしてやれば、気にならないレベルに持ってくることができると思います。

SWATとAZ-GTiの組み合わせのSWAgTiというお気楽撮影に、少しだけマニュアルディザーをするという工夫を加えるだけで、ここくらいまでは出すことができることがわかってきました。


まとめ

結論としては、今のところノータッチガイドで撮影すると、どうしても縞ノイズが出てしまいます。ディザーはソフト側の対応が必要そうです。あと、AZ-GTiとの精度差があるので、十分な緩和時間をとることです。

マニュアルディザーである程度回避できるのですが、何かもっと簡単な方法はないのか?どうなるSWAgTi...



寒冷地でのSWAT

ユニテックさんとやりとりしていて、また面白い情報を聞くことができました。もしかしたら興味があるかともいるかと思いますので、共有します。SWATの寒冷地での使用についてで、個別で対応してくれるかもと言うことです。以下、ユニテックさんのメールから抜粋です。

「ちなみにSWAT用のグリスは-50℃に対応したものを使っています。ただし-50℃対応はグリスメーカーの仕様書での値でSWATの動作を保証しているわけではないです(試したことがない)。公称してませんが、実用最低温度は-10℃程度(自分で試した値)としています(-20℃で動いたという報告はあります)。

ただしボールベアリングは汎用のシールド型なので、-20℃くらいが限界と思います。寒冷地仕様の場合は、開放型のボールベアリングにして、上の-50℃対応のグリスにします。金属の収縮率の違いもあるので、極低温動作を保証してトラブルになると大変なので…。

寒冷地仕様は各部クリアランスをわずかに大きくつける(熱収縮を考慮して)ので、遊びが大きくなるデメリットもあり、個別に希望した方のみの対応です。こういった小回りが効くのは手作りの弱小メーカーだからですね。(笑)」

とのことです。もし寒冷地で使うことを想定している場合は、個別に相談してみるのがいいのかと思います。





 
 
 
 
 


前回かなり反響のあったSWAT+AZ-GTiの組み合わせですが、その後さらに試してみました。今回は特に精度について少し議論します。あと、名前をつけてあげました。


命名

せっかくなのでこのSWATとAZ-GTiの組み合わせに名前を付けてあげようかと思います。

いろいろ考えたのですが、SWAT+AZ-GTiなので「SWAgTi」というのはどうでしょうか?ただしgは発音せず「スワッティ」と呼びます。

ユニテックの方もカッコイイと言ってくださいました。メーカーのお墨付き(?)ももらえたということで、これからはこの組み合わせ、「SWAgTi」と呼ぶことにしたいと思います。よろしくお願いします。


鏡筒をFS-60CB+マルチフラットナーに

実用度を上げるために、もう少し焦点距離を伸ばすことを考えました。具体的には鏡筒を前回の焦点距離135mmのFMA135から変更して、焦点距離370mmのFS-60CB+マルチフラットナーにしてみました。カメラはお手軽にということでそのままのUranus-Cで冷却は無しです。暑い夏なので、ダークノイズの処理をどうするかちょっと迷っています。この画角なら、選択肢となる天体もかなり増えるかと思います。焦点距離が長くなるので、ノータッチガイドだとより精度が要求されます。SWATがどこまで行けるのか?テストも兼ねています。

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鏡筒の変更に伴い、まだ大丈夫かと思うのですが一応ウェイトを付けました。どうしても鏡筒側が重たくなってしまって、回転ネジなどを緩めた際にガクンと落ちてしまうことを避ける意味です。ただし、手持ちの最軽のウェイトでも重すぎるので、ウェイト側に荷重がかかっていますが、それでも回転して鏡筒側がストンと落ちるよりはマシでしょう。

実はこの状態で最初に試した時、カメラを見たら星がグワングワン揺れていました。鏡筒を重くしただけでこれだけ揺れるのか???と一瞬思ったのですが、いろいろ触ってみるとSWATとAZ-GTiのねじ込みが全然十分ではありませんでした。しっかり締め込むと、FS-60CB程度の重量ではピクッともしないくらい、多少の風があろうが、揺れは全く気にならなくなりました。もし自分で試したセットアップで揺れが気になるようなら、各箇所のねじ込みをしっかり確認してみてください。

この状態でどのくらいの精度が必要なのか少し議論してみます。


必要な極軸精度

SWATの高精度の追尾性能を活かしてノータッチガイド撮影で露光時間を伸ばしたい場合、重要になるのが極軸調整の精度です。どれくらいの精度で合わせると、どれくらいドリフトで星像が流れる可能性があるのかというのは、以前簡単に評価したことがあって、



ざっくりですが「1分角の精度で極軸を合わせると、4分間で1秒角、星が流れる」ということです。これは星が最も早く動く、天の赤道上の星像での評価なので、最大これくらい流れると言う意味で、天の赤道から離れるとこのずれは小さくなっていきます。

例えば、前回のFMA135とUranus-Cだと焦点距離135mmとセンサーが11.2mm×6.3mmで3856×2180なので、このページなどを利用して計算すると



水平方向では約4.79度角(=17200秒角)の視野となり、横方向の3856ピクセルで割ると1ピクセルあたり約4.5秒角となります。これだと天の赤道上でも(4分x4.5秒角/1秒角=)18分露光くらいしてやっと1ピクセル以上流れ始めるので、相当余裕があることになります。

今回のFS-60CB+マルチフラットナーだと焦点距離が370mmになるので、水平方向で1.73度角の視野となり、1ピクセルあたり約1.6秒角となります。これでも天の赤道上で(4分x1.6秒角/1秒角=)6.4分くらいして1ピクセルのずれなので、前回試した3分間露光としても倍以上余裕があります。最も星像が流れていく天の赤道儀上でこれなので、逆に言うと今回は2分角くらいの精度で極軸をあわせれば十分と言うことになります。

ただ、何の手段もなく適当にやって2分角の精度はさすがに出ないので、私はSharpCapの極軸合わせ機能を使っています。この機能、SharpCapのかなり初期の頃から搭載されていますが、現在では有料版でしか使うことができません。もう8年位前の記事になりますが、詳しくはこちらを参照してください。



相当簡単に極軸の精度が出るので、この機能だけでもSharpCapを有料版にしてもいいくらいかと思います。

問題は、今回のセットアップのようにSWATの下に微動雲台がない場合です。以前井戸端さんの微動自由雲台を評価した時の様に、微動調整機構があればいいのですが、今回は三脚の足の伸び縮みと、三脚の足をずらして水平回転を調節しています。そこそこの微調整になるので、少しテクニックが必要ですが、なれれば1分角くらいまでなら何とかなります。あと、1分角くらいの精度になってくると、大気密度によるズレが問題になってくるので、SharpCapの環境設定の極軸設定タブのところで、きちんと緯度経度を設定して大気補正オプションをオンにするようにしてください。


SWATの精度

1ピクセルあたりの秒角が、SWATの精度を超えなければ、原理的には露光時間に制限はなくなります。例えば今回使っているSWAT350 V-spec PremiumではPECを使うとピリオディックモーションが+/-2.8秒程度ということなので、先ほど計算したFMA135の場合1ピクセルあたり 4.5秒角なので、SWATで発生する誤差は1ピクセルと同等か僅かに大きいくらいのレベルになります。FS-60CB+マルチフラットナーでは1ピクセルあたり 1.6秒角なので、SWAT起因の揺れが3ピクセル程度になります。

SWATの精度が、1ピクセルあたりの秒角を超えてしまうと、星像に歪みが出る可能性が出てきます。ピリオディックエラーは理想的にはSin波で表されるので、振幅が大きいところでは変化は小さく、振幅が小さいところでは変化は大きいです。そのためピリオディックモーションの周期よりも露光時間が長い場合にはピリオディックモーションの振幅が1ピクセルを超えると星像は伸びますが、短い場合には星像の伸び幅は、どのタイミングで撮影したかに依ってきます。撮影した画像が使えるか、使えないかはの歩留まりりつの評価は天リフさんのSA-GTi赤道儀の記事の最後の方での説明



が秀逸ですので、説明はそちらに譲りたいと思います。

現実的には、2ピクセルくらいまでの揺れは許容範囲であること、何よりシンチレーションや風の揺れなどで星像が乱されることも多く、SWAT単体での揺れがその範囲内に収まる場合には、SWATの精度は問題になりません。今回の撮影でも星像を見る限り、3分露光では370mmの焦点距離でも歩留まり率は100%でした。もちろん許容範囲は人にも寄りますが、ピリオディックモーションや特定方向に軟かくて揺れが出る時は一方向に揺れるのでスタックしても目立ちますが、シンチレーションなどの場合は星像が楕円になったとしても撮影ごとにランダムな方向になっているので、スタックすると目立ちにくかったりもします。


実際の星像

実際に3分露光と5分露光で比較してみます。

3分露光だと風とかの突発的な現象が起きない限り、星像の伸びはほぼないと言っていいでしょう。目で見ている限り、ピリオディックモーションによる星像の伸び縮みは確認できませんでした。突発的な伸び縮みは見られましたが、これはSWATの精度とは別で、ランダムな方向に出てくるので、スタックしてしまうとある程度平均化されるので、あまり目立つことはありません。

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3分露光の1枚撮り。

5分露光だと、少し星像が伸びてしまう画像が出てきます。下の画像はピリオディックモーションと思われる縦方向に周期的に伸び縮みする揺れの一番大きな振幅の時の典型的なものです。縦方向に少し伸びていることがわかります。

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実際にはこれ以上のランダムな方向の揺れが(5分露光の時にも、3分露光の時にも)存在するのですが、ピリオディックモーションは伸びる方向は決まっているので、スタックしても同じ方向の伸びが目立つことになります。

300秒露光で16枚撮影して、上と同程度の星像のものが4枚くらいありました。ちなみに、その4枚も含めて16枚をスタックしたものが以下になります。

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この程度だと他の上手く撮れているものと混ざるので結果としてはほとんど目立たないですが、必要によっては間引いた方が星像が丸に近くなります。よく見るとやはり若干縦方向に伸びてしまっていますでしょうか?これくらいなので、気になる人は気になるかもれませんが、実用上はほぼ問題がないくらいかと思います。


まとめ

まとめると、ノータッチガイドだと、370mmの焦点距離と2.9μmのピクセルサイズで、3分露光くらいだと十分に実用的、5分露光だとピリオディックモーションが影響し始めてくるといったところです。もちろん上で議論したように、焦点距離を短くしたり、ピクセルサイズの大きいカメラを使うなどで露光時間を改善できる可能性があります。

すでに記事がかなり長くなっているので、とりあえず、今回は実験的なことはここまでとします。次回は実際に長時間撮影してみてです。


あとおまけで、開発側のユニテックさんとやりとりした際、かなり面白い話を聞いたので、少し紹介します。

長期間の安定性にも有利とのこと

今回のSWAT+AZ-GTiの組み合わせをユニテックの方にお知らせしたところ、かなり興味を持って頂き、ユニテックのブログの方で紹介していただきました。



とても面白いと言うことで、胎内の星まつりでこのセットアップを展示したいとの提案がありました。どんどん盛り上がりの方向にいきそうで、期待してしまいます。その際のメールのやりとりの中で、いくつか非常に興味深い話を伺うことができました。他メーカーなどの話もあったので、そこらへんのところはうまくぼかしつつ、一般に有益かと思われる話を書いておこうと思います。

ユニテックでも以前2軸の制御を考えたそうです。2020年頃に実際SWATを2つ使い、2軸で制御するモデルが発表されました。いくつかテスト記事はありますが、今のホームページに「赤緯モード搭載」とあるのがおそらくその機能かと思うのですが、追尾スイッチを「DEC」モードに合わせることで追尾を止めることことで実現するものと思われます。あまりあらわに2軸とは書いてなくて、コスト的には不利になることは否めないのかと思います。

今回のアイデアで最も評価してもらえたのが、高速での粗動をAZ-GTiに、低速での微動をSWATに「分けた」ことでした。特に長期の安定性についてコメントして頂いたのですが、この視点は私は完全に欠落していたところです。メールからの一部引用になりますが紹介します。

「というのは、一つのウォームギアで超高精度の恒星時運転と高速にギュインギュイン回して自動導入を兼ねるのは高精度の維持という観点からかなり不安なんです。赤道儀の場合、数十倍速程度の低速運転だけなら長期間心配ないですが、自動導入対応の高速運転を長時間させると最悪焼き付きを起こすことも考えられなくはないです。SWATでも現構造のまま1万倍速で長時間試験したり、かなり無茶(実際の使い方なら100年分くらい?)な実験をしましたが、最終的に焼き付くことはありませんでした。ただウォームの歯面とメタル軸受けの摺動部に潤滑不足の摩耗が生じて歯面が傷だらけで、ハードな使用には何からの対策は必要でした。

解決策として、ウォームギアを2段に配置し、高精度追尾用と粗動用を分けようかというアイデアがあったのですが、大きく、しかも重くなり、それぞれに適したギアと駆動系が2セット必要になるなど、高価になりすぎて現実的ではないと即ボツになりました。

今回のAZ-GTi載せは、粗動と微動を分けることで、見事に上記の問題を解決してしまいました。
しかもAZ-GTiの高機能も満喫できます。私もやってみたくなりました。(笑)」

とのことです。長期間で考えると、ピリオディックモーションの補正に関しても影響があるかもとのことでしたが、こういったことも解決でき製品寿命も伸びるのではということです。メーカーの方からここまで言ってもらえるのは感無量です。




 
 
 
 
 

実は福島の星まつりでSWAT350を手に入れました。UNITECさんのところで話していて盛り上がり、後日レポートを書くということで、特価で譲ってもらうことになりました。実際に試してみて、忌憚のない意見が聞きたいということなので、思う存分楽しみます。


SWAT到着

福島の星まつりの後、しばらくしてから自宅にSWATが到着。ご存知の方はご存知かと思いますが、そもそもSWATは1軸での追尾精度を追求したコンパクトなポータブル赤道儀です。

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青いボディーがかっこいいです。

今回手に入れたものは、PEC付きのSWAT-350V-spec Premiumという機種で、SWATの中でもフラッグシップモデルに当たります。ピリオディックエラーの精度はノーマルでも+/-4.5秒前後と相当なもので、PECが効く片側荷重だとなんと+/-2.8秒前後と驚異的な性能を出すそうです。基本的にはその高精度な追尾を利用した、ガチ撮影用のポータブル赤道儀なので、元々考えていた使用法は、
  • 海外での撮影のための軽量機材
  • もしくは本格撮影の横で、簡単に設置しての撮影
とかです。


SWAT超進化

でも今回SWATで試したのは精度を測るとか、そんな高尚なことでは全然ありません。代わりに超面白いアイデアを思いついてしまったのです!!

SWATは1軸のポタ赤なので、赤緯にあたる2軸目をそもそも持っていません。できることは基本的に精度のいい自動追尾のみ。当然自動導入はできませんし、最近流行りのプレートソルブなんかは夢のまた夢です。もちろんそれを納得して手に入れました。でも実際に撮影しようとすると、これまでずっと自動導入とプレートソルブに頼り切っている軟弱な私には、DSOのマニュアル導入はめんどくさすぎることに気づいてしまったのです。天気もあまり良くなく、実際テスト撮影しようとしても画角もなかなか定まらずで、しばらくSWAT君放っておいてしまいました。

ある日、SWATのことを考えながら風呂場でシャワーを浴びていたら、ふと思いついてしまいました。追尾精度は全然無いが超高機能のAZ-GTiを、超シンプル機能だが超高精度のSWATに載っけたらどうなるんだろう?

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「えーっ??」と思った方もいるかもしれませんが、でもこれかなりすごいですよ。


SWATで自動導入とプレートソルブ!?

SWATは普通に三脚にネジ止めします。底面が斜めに傾いているので、日本だと北方向に置くと、ちょうど回転軸が北極星方向を向くようになります。

AZ-GTiはデフォルトでは経緯台ですが、ファームをアップデートすれば(メーカー保証はありませんが)赤道儀モードで動かすことができます。今回はセットアップといっても、赤道儀モードのAZ-GTiを、本当にそのままSWATに載っけるだけです。AZ-GTiを赤道儀モードで使うときに大変なのは、極軸方向に向けるための傾いたアダプターを用意することです。タカハシなどで販売していますが、それでもそこまで頑丈ではなくて揺れてしまうこともあり、気にする人は自作したりしています。今回はこの斜めアダプターもSWAT自身が兼ねてくれます。

鏡筒は北極星方向に向けて取り付けます。天体導入完了まではSWATの電源は入れず、AZ-GTiだけを使います。なんならPC上のSynScan Proと接続して、さらにASCOM経由でSharpCapと繋いでおけば、初期アラインメントの時からプレートソルブすることさえできます。もちろん、自動導入の際もプレートソルブ機能を使えます。

導入が完了したら、駆動をAZ-GTiからSWATに切り替えます。撮影は精度のいいSWATを使うということです。ちなみに、以前測定したAZ-GTiの追尾精度が実測+/-75秒くらいだったので、SWATの精度が+/-4.5秒とすると17倍、+/-2.8秒だとしたら27倍の精度向上になります。なので、こんなことができます。

キャプチャ

え?何がこんなことかって?露光時間をよく見てください。望遠鏡接続パネルでは確かにSynScan Proに接続しているにもかかわらず、何と1枚180秒の3分露光ですよ!もちろんノータッチガイド(死語?)です。

鏡筒はFMA135で、カメラがUranus-Cと、とりあえず普段の電視観望そのままですが、画角的には撮影対象に困ることはない、ちょうど良いくらいです。これくらいの焦点距離なら、このSWATの性能で3分露光だと、1ピクセルさえも動かないくらいで、ガイドなしで全然余裕です。

SWATの精度とAZ-GTiの機能のいいとこ取りというわけです。


実際の設置

実際に試した手順を書いておきます。まず、組み立ては簡単そのも。三脚とSWATとAZ-GTiと鏡筒とカメラをネジで止めていくだけです。全部組み合わせても、片手で持てるくらいの軽さで、持ち運びも余裕です。

電源はというと、カメラを駆動させるためのPCからのUSB、SWATを駆動させるためのDC12Vだけなので、ケーブルは全部でわずか2本です。ケーブルの数が少ないのも簡単撮影ならではだと思います。ケーブル数が少ないのは、トラブルを起こす率も下がるので、実用上もメリットがあります。

設置ですが、今回はSharpCapの極軸合わせを使いました。ドリフトでズレていく量を抑えたいからです。1分角程度のGoodまで出せばもう十分です。

次にAZ-GTiで初期アラインメントをします。最近は面倒くさいので、本格撮影の時でも極軸は合わせても水平は取っていないです。そのため、一番最初の導入では少し目標とズレてしまうこともありますが、気にせずアラインメント完了にして、そのままプレートソルブしてしまいます。プレートソルブはすごく便利で、これが使いたくてAZ-GTiをくっつけたといっても過言ではありません。同期までうまくいくと、初期アラインメントした天体が画面に出てきます。SWAT使用でこんなことができるとは感無量です。初期アランメント完了後は、目的の天体に自動導入します。今回はM8干潟星雲とM20三裂星雲としました。

天体が画面内に入ってきたら、SWATに切り替えます。きちんと撮影位置まで来なくても、そこそこの位置に見えたら、SWATに切り替えてしまって構いません。この切り替えがまたポイントで、まずSWATの電源を入れますが、その際にAZ-GTiの電源を切るのではなく、恒星追尾をオフにするだけします。そうするとAZ-GTiはこれ以上追尾はしませんが、モーター駆動は2軸ともまだ生きているので、画角の微調整がSynScan ProやSharpCapの望遠鏡制御パネルなどからできてしまうのです。AZ-GTiは追尾さえしなければ精度が悪くなることはなく、構造的にはかなり頑丈です。

AZ-GTiをワイヤレスのリモートコントロールができる強固な微動雲台と考えると、ある意味とんでもなく格安です。AZ-GTiと組み合わせることで、SWATが精度そのままで根本的にアップグレードされたみたいで、便利すぎる使用感となります。


撮影の開始

準備ができたので、実際に撮影までしてみましょう。

撮影ソフトは簡単のためにSharpCapを使います。SWATの精度が期待できるので、ガイドはしません。なので、わざわざガイドにきっちり対応したNINAとかを使う必要もありません。EAFも使わないのでピントはマニュアルです。カメラの冷却さえもしないので、PlayerOneのカメラのDPS(Dead Pixel Suppression)機能でホットピクセル除去を期待します。一応今回はSharpCapの簡易ホットピクセル除去も念のため使いました。できるだけ簡単撮影がモットーで、後でダーク補正をする気など全くありません。

露光時間ですが、とりあえず今回は3分で試します。電視観望を利用した撮影に比べて、1枚あたり十分な露光時間が取れるため、合計撮影枚数を減らすことができるます。このことは二つのメリットがあります。
  1. 1回の露光のたびに入ってくる読み出しノイズの緩和が期待できること。
  2. カメラのアナログゲインを下げることもでき、ダイナミックレンジを十分に残した撮影ができ、飽和を防ぎやすくなります。今回はHGCモードが発動するゲイン200を選びました。
これまでのAZ-GTiを利用した電視観望的な撮影(1回の露光時間が10秒とかの短い撮影のこと)とは一線を画します。

撮影は後の画像処理を簡単にするために、試しに電視観望的な撮影としてライブスタックを使ってみました。一旦撮影が始まったらあとは放っておくだけです。たまにライブスタックされている画面を見てみますが、順調にノイズが軽減さていきます。

調子に乗って、3分露光で合計2時間くらいライブスタックしてしまいました。それだけ撮影しても、見ている限り恒星の流れはなく、SWATの精度とAZ-GTiが動いていないことでその精度を壊す様なことはなく、全体として非常に精度良く追尾してくれているようです。

取得できた画像ですが、3種類あります。
  • 全てスタックされて見た目も画面そのままのPNGフォーマットの画像が1枚
  • ストレッチなどしていないRAW画像のFITSフォーマットの画像が1枚
撮影終了時にすでにスタックや、PNGファイルはストレッチまで完了しているので、その後の画像処理もかなり楽になります。

今回は比較のために、
  • 毎回の露光ファイルも全て保存
の計3種類です。

SharpCapで自動的に1枚にスタックされたPNGとRAW、さらに自分でスタックしたものでそれぞれ仕上げて、後で出来を比べることにします。


画像処理しての比較

3種の画像で最後まで処理してみます。

ライブスタックされたものを見たまま:
まずはライブスタックされ、ストレッチまでされたPNGファイルです。あらかたの画像処理はすでに終わっているようなものです。これに5分程度Photoshopで処理しただけのものになります。

Stack_39frames_7020s_ABE_NXT3

8bitで出力されるので、あまり大したことはできませんが、それでもかなり出ていますね。周りの分子雲がノイジーなことと、恒星が少しうるさいかもしれません。それでも3分x39枚=1時間57分の露光で、星は全くズレていません。これだけでも驚異的かと思います。


ライブスタックされた1枚画像をストレッチなしで:
上のように、これくらいまで出るならもう十分かとも思いますが、ここから次の画像と比較していきます。二つ目はスタックまではされてますが、ストレッチはされていない暗いままで、RAWフォーマットに近いものになります。RAW画像なのでPixInsightでSPCCなどのリニア処理をして、ストレッチした後にPhotoshopに渡します。

Stack_16bits_39frames_7020s_ABE1_SPCC_MS_NXT_bg

さすがに画像処理も多少凝ったことができるので、PNG画像よりはマシになります。StarNetを使うことで特に恒星がうるさいのを消すことができています。BXTは比較するにはチートすぎるので、今回は使っていません。


ライブスタック時の1枚1枚を個別に保存し、マニュアルでスタック:
最後が一番手間のかかる、3分露光が48枚あるファイルを、自分でスタックするところから始めます。ホットピクセルはほとんど出ていないとして、ダーク補正はなし、公平を期すためにフラット補正も無しとします。

masterLight_3856x2180_180_00s_RGB_combination_ABE1_SPCC_MS_NXT2

一から手間をかけただけあって、多少滑らかになってます。でも、輝点が少し目立ってしまっています。やはりここまでやるなら真面目にダーク補正をしてもいいかもしれません。


SWAT+AZ-GTiの威力

今回のアイデアですが、もしかしたらすごい組み合わせかもしれません。ガイド無しで本格的な撮影がかなり楽にできる可能性を秘めています。というかなんか楽しくて、早く次の撮影を試したいです。梅雨で天気待ちなのですが、メイン鏡筒の横で気楽に試せそうなのが良いです。

あまりに楽なので、是非みなさんにこのアイデアをオススメしたいです。
  • SWAT持ってる人はAZ-GTiを買おう!
  • AZ-Gtiを持っていて精度のいい撮影をしたい人はSWATを買おう!
  • SWATとAZ-Gtiの両方を持っている人はすぐにでも試してみてください!

SWATを高いと思うかもしれませんが、1軸に絞っていることもあり、この価格でこの精度を出せるのはむしろ格安というか、多分最安です。一気に長時間露光の本格撮影に手が届きます。


反省点と次回挑戦

今回の撮影の失敗点ですが、ノータッチガイドだけありどうしてもわずかなドリフトが出てしまい、数時間という露光時間のオーダーだとゆっくり画角が一方向に流れていきました。これが結果として、縞ノイズとなって出てしまいました。画像処理である程度誤魔化しましたが、やっぱりガイド必須かなあと思ってしまったのは事実です。それでもやはり「簡単撮影にしたいのになあ」、「ケーブルが増えるのやだなあ」との思いがあります。

そんなことを考えていたのですが、「そういえばSharpCapのライブスタックにディザー機能があったはずで、確かガイドなしでも単独で動いたはずだ」と思い出しました。マニュアルを確認してみたのですが、どうやらうまく動きそうです。次回はこれでリベンジしたいと思います。

今回はテストで135mmと短い焦点距離にしましたが、まだまだ全然大丈夫そうなので、今度はもう少し長焦点で試して、SWATの性能に迫りたいと思います。当然ガイドなしです。

他にも次回以降、検証、挑戦したいことを書いておきます。
  • 焦点距離と、カメラのピクセルと、追尾精度の関係の確認
  • ギヤの大きさと精度の関係の確認
  • 精度の実測
  • SWAT各機種との比較と、それぞれどこまでガイドなしでできるか計算
などです。たくさんやりたいことありますが、無理のない範囲で進めていきたいと思います。




 
 
 
 
 

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