少し前にリリースされた、ASILiveを試してみました。かなりいいです。

ZWO社がリリースしたASIカメラ用のASI Studioの中の3つのうちの一つで、主に電視観望などのためにライブスタックに特化したキャプチャソフトになります。 


ASI Studioのインストール

ASIStudioのダウンロードはこのページから。 2020年4月29現在、バージョンは1.01となっています。インストールしてASI Studioを立ち上げると、ASICap、ASIImg、ASILiveの3つのアプリがあるのがわかります。ASICapは惑星撮影用、ASIImgはディープスカイの撮影用、ASILiveが電視観望などのライブスタック用です。今回はASILiveを使います。

ASIStuidoの凄いところはWindosのみならずMac版やLinux版があること。ちょっとわかりにくくて見逃しがちなのですが、上記リンク先ページのところに「Mac」とか「Linux」というタブがあって、そこを選ぶとそれぞれのOS用のASIStudioがダウンロードできます。Windows以外にこういったソフトはなかなかないので、これはかなり助かります。


ASI Liveを使ってみよう

  1. さて3つあるアイコンの一番右を押して、早速ASILiveを立ち上げてみましょう。この時点で、ASIシリーズのカメラを接続していると、右上のところにカメラ名が出ているはずです。そのすぐ右横の三角の再生マークマークを押してみてください。早速カメラの画像が見えると思います。
  2. この時「Hist」のところがAutoになっていれば「オートストレッチ」がオンになっているので、暗い画面もかなり明るく見えていると思います。カメラに望遠鏡などをつけて星を写してみましょう。ピントもこの時に合わせてしまって下さい。
  3. さて、うまく星が見えたら早速ライブスタックをしてみましょう。 「Stack」のところにある再生ボタンが3つ重なっているようなアイコンを押して下さい。これだけです。あとは勝手に画像がスタックされてノイズがどんどん少なくなっていく様子が分かります。
  4. 調整するべきところは多くないです。「Gain」はLow、Middle、Highの3つだけ。最初はHighで始めた方がいいと思います。あ、Gainをいじることができないですか?そんな場合はライブスタックを一度止めて下さい。先ほどの「Stack」のところにある再生ボタンが3つ重なっているようなアイコンをもう一度押すと、ライブスタックが止まって、Gainが調整できるようになるはずです。
  5. 同じく「Exposure」もかえてみましょう。これもライブスタックを一旦止めて調整します。カメラの種類にもよりますが「1」秒から初めて「30」秒くらいまで写り方をみながら段階的に上げていって下さい。写りが十分ならそこまで長くする必要はないと思います。
  6. 設定を調整し終えたら、一度前回まで見えていたライブスタックの画面を消去した方がいいでしょう。「Stack」のところの、3つ目のアイコン、ホウキみたいなのを押して下さい。出てきたダイアログで「Yes」を押すと、前の残っていた画像がクリアされます。クリアした時にライブスタックがオンになっていないと、画面が出ないことがあります。そんな時はホウキボタンの右のライブスタックモードとライブスタックでないモードのとの切り替えボタンを押して下さい。単独の取り込み画面が出てくるはずです。
  7. 見栄えをよくするために「Image Processing」のところの「Brightness(明るさ)」「Contrast(コントラスト)」「Saturation(彩度)」をいじると画面がきれいになると思います。この調整はライブスタックを止める必要はなく、画面を見ながらいいところを探すことができます。
  8. 左上の矢印が2つ並んでいるところを押すと、フルスクリーンにもなります。この時、カーソルを画面の右に持っていくと、画面サイズを調整できるアイコンが現れます。3つ目のアイコンで画面いっぱいに広がるはずです。人に見せる時はフルスクリーンの方が迫力があります。こんなふうに簡単にフルスクリーン化できるのも特筆すべきことだと思います。

ちょっとやるだけで下の画面くらいのものが簡単に映るようになります。
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これはASI294MC Pro(冷却はしていない)に焦点距離105mmのカメラレンズをつけて、サイトロン社のアメリカンサイズのQBP(Quad BandPass)フィルターを中に入れています。ASILiveのゲインがHigh、露光時間が10秒です。他に触るところがないくらい簡単です。

右下にM8干潟星雲、左上にM17オメガ星雲が写っています。天の川の中心部ですね。10秒露光でスタック適当に何回かしたあとです。


同じ画角をSharpCapで出した時の画面です。

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ShaprCapとくらべてもASILiveの画像が全く遜色ないことが分かります。ASILiveに比べるといろんな調整を頑張って、やっとできた画面です。ASILiveの方がはるかに簡単です。

もう一例です。ASILiveの画面です。北アメリカ星雲とペリカン星雲です。

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比較のSharpCap画像です。同じ日ですが、少し早い時間に観た時のものです。

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SharpCapの場合、私は少し青に寄せがちです。夜空のイメージを少し出しています。でもホワイトバランスをとった方が本当は正解なので、ASIAirの方がより正しいと言えます。ここら辺の好みを反映できるかどうかはASILiveとSharpCapで方向性が違うところです。


ASILiveの特徴

少し技術的な話をします。ASILiveの凄いところは、電視観望のキーと言っていい技術
  1. ホワイトバランス
  2. オートストレッチ
  3. ライブスタック
  4. アラインメント
をデフォルトで全て、あまりユーザーに意識させずに使っているところです。これは結構すごいことです。

SharpCapではこれらを基本的に全てマニュアルで、ユーザーが意識しながらやる必要があります。ASILiveのほうがはるかに簡単で、SharpCapに慣れていないなら、ASILiveの方がおそらくきれいな画面を出すことができるでしょう。少なくとも初心者にはSharpCapよりも圧倒的にASILiveの方が楽でいいと思います。

以下、SharpCapとの比較です。
  • ASILiveではオートストレッチが標準なので楽です。ただし、SharpCapのヒストグラムの一番右の調整線に相当するのがありません。でもほとんど使うことがないので問題ないでしょう。
  • ASILiveではホワイトバランスを自動でとってくれます。自分で調整する必要がないのでかなり便利ですが、逆に微調整したいときは出来ないのもどかしい時があります。
  • アラインメント(星の位置を認識し、画面をずらして星を重ねていく機能)を実装したことはすごいです。これがあるのでライブスタックを名乗れるのだと思います。一方計算スピードはSharpCapの方が早く、一日の長があります。同じ時間をかけるなら、ASILiveは計算しきれない取り込んだ画像を捨てているようなので、短時間露光の他数枚スタックの場合はSharpCapの方がきれいな画面になるはずです。
  • ASILiveではゲインの調整、露光時間の調整はあまり細かくできません。簡単でいいのですが、これが少し不満になるかもしれません。SharpCapは相当細かく設定できます。
  • やはりSharpCapの方がはるかに高機能で、他にいろいろなことができます。もしASILiveに慣れて、調整項目や機能に不満が出るようならSharpCapに移るのがいいでしょう。
  • でも、コントラストやブライトネスはASILiveのみにある機能です。


まとめ

ASILive思ったよりはるかにいいです。ものすごくうまく機能を絞っていて、高機能なところはユーザーに意識させないようにかなり気を使っています。とりあえず電視観望を試してみたい方や電視観望初心者の方は、SharpCapよりもASILiveから始める方がはるかに敷居が低いと思います。

うーんソフトウェアの力はすごいですね。DeNoiseの時も思いましたが、初心者とベテランの技術の差が一気に縮まります。電視観望の普及にも一役買ってもらえるレベルの仕上がりです。


ここからはASIに対する要望みたいなものです。
  • RGBのヒストグラムを個別に触れるならさらにいいです。でもこれは逆に初心者には複雑になりすぎるので、今のスタイルは必要かと思います。
  • できるなら別途、詳細モードとか作って、ホワイトバランスのマニュアル調整とか、RGB別のトーンカーブの調整がリアルタイムでできるとものすごく嬉しいです。
  • RGB別のトーンカーブ調整が実現すると、さらに電視観望での表現力が大幅に増し、LiveStackに関してはSharpCapを完全に越し最強の電視観望用ソフトになると思います。本気で欲しかったりするのですが、これは計算量も多そうなので難しいかもです。

いずれにせよ、電視観望で使えるソフトの選択肢が増えることはいいことです。ZWOさん、ありがとうございます。