ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:観測機器 > TSA-120

前回のCBPの検証記事が長くなりすぎたので、撮影した三裂星雲の画像処理と仕上げは別途この記事で書いておきます。




撮影時の様子とトラブル

機材は前回の記事で書いたので詳しい事は省きます。撮影ソフトはNINAを使いました。最近これが多いです。撮影自体は問題なかったのですが、「撮像」タブにあるLiveviewがいまいちうまくいかなかったです。(→後に、LiveViewではなく、1秒露光とかにして循環(ループ)をオンにして、その上で「撮像」を押すといいと分かりました。)やはりLiveViewは安定性、操作性ともSharpCapに軍配が上がると思います。そのせいか、ASI294MC Prpの露光時間とゲインの調整がすこしうまくいきませんでした。結局180秒露光で、ゲイン120にしたのですが、まだ少し明るすぎたようで、恒星が一部サチってしまっていたようです。3分露光なら0dBでもいいかもです。ゲイン120下げるとすると、-12dBなので高々4分の1です。恒星がサチると、あぶり出しのときにArcsinhStretchが使えなかったりするので結構不利になったりします。 

あと、カメラの温度は-10℃に設定したのですが、夏場で夜でも暑かったのか思ったより電力を食い、冷却用のバッテリーが一番最初に切れました。真夏は-5℃とか0℃くらいの方がいいかもしれません。少し温度を上げるだけでバッテリーの持ちが随分とよくなるようです。


撮影結果

今回撮影した32枚、合計96分の画像を全て使い、最後まで画像処理してみました。北が上になります。三裂星雲M20の青がきれいに出ています。左上に写っているのは連番のM21になります。

「M20三裂星雲とM21」
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  • 撮影日: 2020年8月14日21時4分-23時40分
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 鏡筒: 鏡筒: Takahashi TSA-120 + 35フラットナー赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO ASI294MC Pro、温度-10℃
  • ガイド: PHD2 + f=120mmガイド鏡 + ASI290MMによるディザリング
  • 撮影: NINA、露光時間180秒x32枚(フィルター無し17枚、サイトロン CBP (48mm): 9枚、サイトロン QBP (48mm): 6枚)  = 1時間32分  
  • 画像処理: PixInsight、StarNet++、Photoshop CC

昔FC-76で自宅でQPBで撮影したもの
と比べると、もちろん機材も露光時間も違いますが、今回の方が明らかに青色も広範囲に渡って出ているのが分かります。ただし今回処理した画像は、フィルター無しのノーマル画像の数が一番多いので、青色がCBPによって出たかどうかの影響は少ないです。あくまで撮った全部を使いたかったという、私のもったいない精神でこうなりました(笑)。

CBP純粋の効果は次回以降のお楽しみとさせてください。


エピローグ

この日の撮影はお盆の金曜日。お盆はずっと晴れていたので、すでにこの日で3日連続の出撃でした。この後、三日月星雲とかも撮ったのですが、雲が出てきて枚数不足でした。この日は撤収で自宅に帰りましたが、夜起きてる習慣がついてしまい、結局明け方まで寝られませんでした。

その次の日、土曜の夜も同じ場所に行ったのですが、さすがに4晩目は疲れてきました。赤道儀まで出したのですが、少し雲が出ていたのを見て気力が萎えてしまって、早々と撤収。帰ろうとすると珍しく一台の車が。この場所で他の人を見るのは初めてです。

「こんばんは」と声をかけると、両親と男の子の3人で天の川を撮っているみたいです。話を聞くと子供は中学一年生、星はお父さんの趣味。小4の娘は車の中でぐっすり寝ていて、4人できているとのことです。と、こんなことを話していると奥様が突然「〇〇さんですか?」と真っ暗な中、私の名前を言うではありませんか?「えー!見えないのになんでわかるんですか?」と聞いたら「声でわかった」とのこと。でも私は心当たりはありません。聞いたら妻の知り合いで、子供つながりで私も何度か会ったことのある方です。でも声だけでわかるなんて...。そんなに特徴のある声だったのでしょうか?天の川狙いなので、短時間でもいいので雲の晴れるのを待っているとのことです。

私はこの日はもう諦めたのですが、どうやら後から晴れたみたいで、この日は全国的に天気が良かったとのことです。残念でしたが、家に着いたら結局すぐに寝てしまい、もう朝までぐっすりでした。

その後、今週はほぼずっと晴れていたので、自宅でCBP何度か撮影しました。画像処理が進んだらまた記事にします。

 

ZEROの振動特性でもう一つやってみたかったことです。TSA-120を載せて使い勝手を試してみました。


ZEROのこれまでの経緯

手持ちのポルタIIの経緯台と付属の三脚で惑星などを見ると、結構揺れてしまうのが不満でした。初心者向けというのでコストの限界もあるため仕方ない面もあるのですが、見ている最中にフレキシブルハンドルの揺れで視野が揺れてしまったり。なのでこれまで観望会などでもあまり出番がありませんでした。

フリーストップの操作性の良さを保ちつつ揺れの改善ができるならと、ZEROにAdvanced VX付属の三脚をつけて試してみたところ、揺れを大幅に改善することができ、体感的にはざっくり10分の1程度になったというのが前回までの結果です。これで観望会などでも不満なく使ってもらえるようになりそうです。


TSA120をもっと気軽に使いたい

この一連の検証の過程にはもう一つの大きな目的がありました。口径120mmのTSA-120をZEROに載せてもっと気楽に使えないかということです。

TSA-120にはロスマンディー規格のアリガタを付けていて、通常CGEM IIに載せて使っています。CGEM II自身は頑丈で操作性もよく不満はないのですがやはり重くて、気軽に出すというよりはいつも気合をいれて出しています。これが観望会でも気楽にパッと出すことができるなら、TSA120の稼働率がかなり上がるはずです。

前回までの検証ではポルタII付属の口径80mmの鏡筒を使いましたが、ZERO+AVX三脚で十分な揺れの少なさを実現できました。どれくらいの共振周波数だったら実用的にどれくらいの揺れになるか、感覚的にもある程度結びついたので、他の組み合わせを測定して比較する準備もある程度できてきたと言えると思います。そこで今回
  • メーカーでは推奨TSA-120をZEROに載せるのは推奨していない
  • 某ショップ店員さんが試したところ、やはりTSA-120+ZEROは揺れてしまうという報告があった
ということを気にしつつ、本当のところはどうなのかというのを自分で確認して使えるかどうかを判断したいと思います。


実際に載せてみる

まず、ZEROに取り付けるためにロスマンディー規格のアリガタをVixen企画のアリガタに取り替えました。その状態で実際にZEROに取り付けてみたのですが、さすがにあれだけの重さと、値段(笑)のものをネジ一本で固定するのは不安になってきて、結局Takahashi純正の鏡筒バンドをZERO側に取り付けることにしました。M6ネジ2本で固定されているZERO付属のアリミゾを外すと、90度ずれた方向にM8ネジ用のねじ穴も空けてあるため、M8ネジ2本で固定する純正鏡筒バンドもそのまま取り付けることができます。ここら辺の柔軟性はさすがです。

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実際にとりつけた写真です。

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さらに実際に鏡筒も取り付けた場合です。三脚が丈夫なせいか、不安定になるようなことはなく、転倒などの心配は皆無でした。

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揺れの見積もり

一応この時点で鏡筒の端を少したたいてみます。すると、思ったより揺れるではないですか。ポルタII鏡筒の時より揺れも持続しているみたいです。ちょっと心配なので、簡単に揺れを見積もってみました。

前回の結果から、揺れの実感は基本モードの共振周波数の違いの3乗で効きそうだということが分かっています。共振周波数は慣性モーメントで効くはずなので、まずは慣性モーメントを概算してみます。効いてくる違いは2点、
  • ポルタII鏡筒A80MfとTSA-120の重さが3.3kgと6.7kgで約2倍の違い。
  • 鏡筒の長さが焦点距離に比例するとして910mm(初出の焦点距離に間違いがありました。910mmが正しいです。)と900mmでほぼ同じ。
中空円筒のピッチ方向とヨー方向の慣性モーメントの式は

m/4{(外径^2+内径^2)/4+(鏡筒長^2)/3)}

と書けますが、外径と内径が鏡筒長に比べて十分短いので前項を無視して

m/12 x 鏡筒長^2

とすると計算が簡単になり、上の数値を当てはめると慣性モーメントはそれぞれ、0.23 と0.45 [kg m^2]となります。鏡筒長は2乗で効きますが、両方とも900mm程度でほぼ同じなので、実質重量の違いだけの違いになっています。

共振周波数は慣性モーメントのルートで効いてくるので、sqrt(0.45/0.23)=1.4となり、ZEROにA80Mfを載せたの時の14.1Hzと比べて1.4分の1、すなわち10.0Hz程度まで下がることになりそうです。

Q値が変わらないと仮定すると、共振周波数の3乗で揺れることになるので、1.4の3乗で2.7倍程度揺れを感じることになるはずです。ポルタIIとZERO+AVX三脚の揺れの違いが10倍程度だったので、その中間くらいという予測になります。


TSA-120をZEROに載せたときの実際の揺れ

さて、実測はどうでしょうか?前回同様にASI294MC Proをつけて、木星を見てみました。カメラ部分を指で弾いてやり、その揺れの様子を撮影します。焦点距離5mmのアイピース程度を想定し、画素を4分の1程度にトリミングしています。前回と違うのはビニングをするのを忘れてしまったので、フレームレートが60fps程度となってしまいました。揺れを10回計測するので、測定結果には影響はないはずです。

まずは横揺れです。

Yaw(横向き)に揺らした場合

ZEROにA80Mfを載せた時より明らかにゆっくり揺れています。

動画から、10回揺れるのに36.392秒から37.428秒まで1.036秒かかっています。ということは1周期が0.1036秒となるので、共振周波数はその周期分の1で1/0.1036=9.7Hzとなります。予測の10.0Hzとほぼ一致ですね。重さもカタログ値、長さも焦点距離から換算しただけなのですが、こんな適当な見積もりでもそこそこ実測と合ってしまうことのほうが驚きでしょうか。

実際の揺れは共振周波数の3乗で効くとすると(14.1/9.7)^3=3.1と体感では約3倍になることがわかります。


ちなみに縦方向の揺れです。 

Pitch(縦向き)に揺らした場合



実際に使用しての感想

さらに、実際に眼視で使ってみての感想です。確かに揺れの感覚ではちょうどA80MfをポルタIIとZERO+AVX三脚の時の中間くらいと言っていいかと思います。

ではこれが許容範囲かというと、アイピースの焦点距離が20mmの900÷20=45倍程度ではそこまで不満ではないです。

問題はさらに拡大した場合、今回5mmのアイピースを使い900÷5=180倍にしたときははっきりと不満を感じました。何も触っていない時はそれでもまだ大丈夫です。微動ハンドルをいじっただけでも、そこまで揺れなくて、揺れても比較的すぐに揺れは収まるので、これもそこまで問題ではないです。1番の問題はピントを合わせるときです。鏡筒を直接触るので、かなり揺れます。揺れているとピントがあっているかどうかわからないので揺れが収まるまで待ちます。ダメならまた調整で揺れます。これでは微調整が難しくて実用とは言えません。観望会で「ピントが合ってなかったら自分で合わせてみてね」ということが言えないので、観望会での使用も厳しいでしょう。

では、元々のポルタの揺れは許容範囲ではないのかというと、低倍率ではまだいいと思います。ですが、強拡大するとやはり不満です。そもそも経緯台で180倍、ポルタでも6.3mmのアイピースが付属するので144倍計算になりますが、そこまで倍率を上げて見ることに意義があるか?ということです。これだけの倍率だと視野も狭くなり、経緯台だとすると追いかけるのが大変です。ポルタIIの場合は揺れもあるので、144倍でもう過剰倍率に近いのではと思います。

ところが、TSA120で高倍率で見てしまうと、話は変わってきてしまいます。ZEROにTSA120を載せて高倍率で木星と土星を見たのですが、それはそれは見事なものでした。


TSA-120で初めて見た惑星

今回はじめてTSA-120で惑星を見ました。TSA-120の眼視がすごいという理由が分かった気がします。このときの感動を、忘れないうちに書いておきます。
 
TSA-120で惑星を見ると違った世界が見えるとか、口径だけで説明できない何かがあるというようなことを聞いていたのですが、確かに納得です。より大口径のシュミカセでは、明るさはもちろん有利なのですが、像の甘さのようなものがあったことがよくわかりました。
  • 180倍だと木星の縞の濃淡がよーくわかります。
  • 土星のカッシーニの間隙が余裕で見えます。
  • また、大気収差が目立ちます。眼視でもADCを入れた方がいいかもしれません。
  • この日は大気揺らぎは小さい方だったと思います。 それでも細かい模様はユラユラ揺れてしまうので、もっと穏やかな日に見たら、さらによく見えることでしょう。
きちんと作った素性の良い鏡筒だとここまで見えるという、お手本のような見え方だと思います。できることなら、観望会でもこの素晴らしい惑星を来てくれた方達に見せてあげたいです。

しかしながら、TSA-120の性能を活かす高い倍率ではZEROでは特にピント合わせ時の揺れが気になってしまい、時間の限られている観望会での運用はやはり厳しいかと思います。また、ZEROに載せるために鏡筒バンドについているアリガタプレートを毎回外すのも楽とは言えず、手軽さという観点からは遠ざかっていきます。結論としては、今後はTSA-120を使う場合は観望会などでも重い赤道儀に載せて見ることになるかと思います。


まとめ

今回のA80MfとTSA-120の比較の結果は、鏡筒長がほぼ同じだったということもあり、重量の違いだけで揺れの具合を簡単に説明でき、それが実測ともかなり一致することがわかりました。高々共振周波数の1.4倍の違いが、揺れにすると3倍に相当することも、かなり体感と一致すると言っていいと思います。

でもこの3倍の揺れ、正直言うと使い方によっては十分許容範囲です。問題はTSA-120だと倍率を上げたくなる、ここに尽きると思います。高倍率にすると揺れが顕著に問題になるので、その意味ではTSA-120を高倍率で見ることまで考えると、ZEROでは少し力不足といったところでしょうか。でも、ピントさえ一旦合わせてしまって、一人で見続ける分には高倍率でもそこそこ使えると思います。

当初のZEROで気軽に「観望会とかの大人数で」TSA-120を使うという目論見は、残念ながら難しそうです。ZEROはメーカーの言うとおり、やはりせいぜい口径100mm位までの鏡筒に抑えておいて、気軽に見ることに重点をおいた方が向いていると思いました。

元々TSA-120まで見越して選んだAVX三脚はそこそこ重いので、手軽さと言う観点からは少し大袈裟な気がします。かと言ってポルタクラスの三脚だとさすがにZEROの性能を活かすのには勿体ないので、軽い頑丈な三脚を用意するのがいいのかもしれません。

あまり大きくないカーボン製を手に入れるか、もしかしたら今手持ちのGizzoのバサルトのトラベル三脚でもいいのかもしれません。これは足を伸ばしても相当安定しています。

 

球状星団を撮影するのは初めてになります。今回、ヘルクレス座の球状星団M13をTSA120を使って撮影してみました。全天で最も美しい球状星団と言われています。


初の球状星団撮影

連休初日に入るこの日の夜、天気は悪くなく、夜中から天の川を撮影しようと思っていたのですが、それまでの繋ぎでM13を撮影してみることにしました。よく考えたら、球状星団をまともに撮影するのは初めてのことです。もちろん、眼視や電視観望などでの簡易撮影などはあります。それでも時間をかけてまじめに撮影するのは初めて、いろいろわからないことがありそうです。
  • そもそも、撮影時間はどれくらいがいいのか?星雲ほど長くなくていいのか、それともやはり長ければ長いほどいいのか。
  • 1枚あたりの露光時間はこれまで通り5分でいいのか?
  • QBPはあってもいいのか?無いほうがいいのか?

天の川が出てくるまで1時間ほどあります。最初なのでとりあえずこれまでの星雲撮影のセッテングをベースとして、撮影時間を1時間としてみました。

撮影は順調。PHD2とAPTで、ガイドも含めて特に問題はなかったです。ちょうど同じ時間帯に、あぷらなーとさんもM13を狙っていたみたいです。


画像処理と結果

球状星団の画像処理も初めてのことで、まだ全然慣れていません。疑問だらけで、また太陽映像に取り掛かっていたこともあり、時間がかかってしまいました。

星雲の場合と違って、いじればいじるほど処理の跡が目立つような感触です。なかなかごまかしが効かない、素材の出来具合がそのまま処理後の出来に直結するような気がしました。とりあえず処理した結果です。



「ヘルクレス座球状星団M13」
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  • 撮影日: 2020年4月29日0時24分-1時23分
  • 撮影場所: 富山県富山市下大久保
  • 鏡筒: Takahashi TSA-120 + 35フラットナー + サイトロン QBP (48mm)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO ASI294MC Pro
  • ガイド: PHD2 + f=120mmガイド鏡 + ASI290MMによるディザリング
  • 撮影: ATP、ゲイン220、温度0℃、露光時間300秒x11枚 = 55分 
  • PixInsight、Photoshop CCで画像処理
中心部です。

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今調べたら簡易撮影では、星を始めて一番最初に撮影したメシエ天体がM13 M3(2020/5/16訂正:玄さんのコメントのおかげで4年を経てM3と気付くことができました。玄さん、どうもありがとうございました。)でした。星を始めて、一眼レフカメラを手に入れてすぐのM13 M3がこれ。1枚撮り、中心からずれてる、星がぶれてる、画像処理も何もしてない。さすがにこれを見ると、4年間で進歩したと思えます。でも望遠鏡とカメラでメシエ天体が写っただけでも、ものすごく嬉しかったこと覚えています。

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反省点色々

最初は、初めてにしてはそこそこ中心部まで見えたのかなと思っていました。でもやはりまだまだですね。以下、反省点です。
  • 一つ一つの星像が大きい。もっと分離してもいいはず。
  • 星雲みたいに背景を出す話ではないので、構成を分離するStarNet++が意味をなさないはずです。今回は試すこともしませんでしたが、背景のノイズを減らすのには役に立つかも知れません。今後の課題とします。
  • 背景のノイズを無くそうと、DeNoiseやDfine2も試しましたが、見事に恒星の不自然さを強調します。今回は試しただけで、結局使いませんでした。
  • 炙り出していくと、背景ノイズがまだ多いです。今回はトータルで1時間弱の撮影だったので、もう少し総露光時間を増やしていいかもしれません。
  • すでに炙り出しすぎの感もあります。中心部から少しずれたところなんかは、微光星なのかノイズなのか見分けがつかなくなってきます。
  • 明るい恒星の裾部分の階調が少し不足しています。微光星を出そうとするとこうなってしまいます。もう少し中心部の微光星を抑えても良かったかも知れません。
  • 同様に、左上に写っている銀河も階調不足の感があります。
  • 中心部の画像を見ると、色が白、オレンジ、青緑と3系統にはっきり分かれています。現実は多分そんなことはないので、何かおかしな画像処理過程が入っているようです。それともQBPのせいでしょうか?
  • やはりまだ決定的に分解能不足です。というか、星が肥大化しています。これは画像処理以前の撮影時の問題です。
画像処理以前のこととして、決定的だと思ったのは、一枚の撮影時間の5分が長すぎたではないかということです。長時間露光はどうしてもブレが積分されるので星像がボケてしまいます。もちろんシンチレーションとか風の揺れによるのですが、1枚は1分程度に抑えて、枚数を増やした方がいいのかも知れません。

揺れに関して少し考えてみます。撮像の揺れ時間スケールで見ると
  • 秒以下の揺れ: シンチレーション、地面の揺れ、風による機材の振動
  • 1秒程度の揺れ: 風
  • 10秒周期以上の揺れ: 赤道儀のピリオディックモーション、機材のたわみ
などがあります。
  • この中で改善できるのは10秒以上の揺れのみ。オートガイドです。それでも1時間オーダーではたわみが問題になってきます。
  • 1秒から10秒程度の揺れはオートガイドで多少は抑えることができますが、速い揺れほどその効果は小さくなります。
  • 秒以下は今のところ打つ手なし。AOを使うことで、シンチレーションみたいな画面の中で揺れるもの以外は改善できます。でもAO高いです。自分で作ることを考えた方がいいかも知れません。
このように考えるとすぐにわかるように、一枚あたりの露光時間を1分程度に短くしても大した効果はありません。ただ、揺れの大きさで考えると、突風などの突発的事象で星像が肥大することはあり得るので、露光時間を短くしてそれらの揺れの大きいものを省くことはできます。ラッキーイメージの考え方ですかね。

さらに、カラーCMOSカメラで撮影していることも分解能を低下させている原因の一つです。モノクロの冷却CMOSカメラでそこそこのセンサー面積のものをそろそろ本気で考えた方がいいのかも知れません。

少なくとも今回の結果は、TSA-120のが持っている光学的な分解能には全く達していないと思います。


おまけとまとめ

最後にいつものアノテーションです。少しだけ斜めになってました。念のため再度ImageSolverで計算したら回転のズレ結果は0.41度でした。上が北で、経線が縮まっていくので上の方が間が小さくなっていまるので、より斜めに見えてしまっているようです。

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本当はこの撮影の後に天の川が登ってくる時間になり、中心部の干潟とか三裂星雲を狙おうとしていたのですが、外に出たら曇り。この日は撤収しました。

画像処理まで進めて、まだまだ改善の余地がたくさんあることがわかりました。球状星団は撮影時の条件がそのまま出てごまかしが来なさそうです。今回の撮影の後、もう少し試したくて、別の日にVISACで長時間撮影してみました。 これはまた次の記事で書きます。


 

M101に引き続き、TSA-120での単体銀河撮影の第2段、M51子持ち銀河です。


ピクセルサイズの小さいASI178MCで分解能を稼ぐ

M101よりだいぶん小さいので、ASI294MCで撮影すると

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のように、かなり小さく写ってしまいます。

しかもピクセルサイズが4.6umと大きめなASI294MCでは、解像度が足りなくてTSA-120の分解能は生かせきれないことが月とPowerMATEを使った検証でわかりました。

そのため、分解能を稼ぎたくてASI178MCで撮影してみたというのが今回の主題です。

でも実は今回の撮影は、上の分解能検証よりも先に済ませてしまっています。ASI178MCで撮影したものの妥当性を知りたくて上の検証をしたというのが実際です。結局、4倍バローを持って分解能は良くなったとしても、明るさが16分の1になるので厳しいというのが結論です。なので、口径を大きくして明るくして、焦点距離を上げてカメラの分解能を活かす方向で、系外銀河に関してはVISACを用いることになっていくのかと思います。

まあ、気を取り直してTSA-120とASI178MCで撮影したM51を処理してみたいと思います。


撮影状況

撮影は先週土曜日のことなので、1週間近く経ってしまってます。もう結構忘れてしまっていますが、透明度は良くなく、北極星がかろうじて見えるくらいでした。しかも風がかなり強かったです。最近もそうですが、春なのでしょうか、なかなか透明度がよくなりませんし、風が強い日が多いです。晴れているのに北極星が見えない日も多いです。

撮って出し(300秒1枚露光をDebayerしてAutoStretch)だとこんな程度です。おそらく風のせいでしょう、星像が肥大してしまっています。

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まあ、それでも一応写ってはいますね。あと炙り出すと178はアンプグローがかなりひどいです。しかも右上、右下、左下と3方向。ホットピクセルもひどいです。

結局今回は300秒露光を22枚で、トータル1時間50分の撮影。その後ダークを同条件で30枚撮影しました。


画像処理

画像処理は結構手抜きです。手抜きと言う意味は、
  1. 中心部のみを使っているのでフラット補正はそもそもあまり必要ないことと、長時間露光フラットはむしろ補正しない方が縞ノイズ回避できることがわかっていること、短時間フラット補正もイマイチまだ正しいかどうかわからないので、いずれにせよフラット補正はなし。
  2. また、UTOさんのコメントにより、Optimizeオプションのないダーク補正は、バイアス情報を含んで補正しているので、バイアスファイルも撮影せず。
と言う意味です。アンプグローが激しいので、ダーク補正だけはしっかりやります。

処理はいつものようにPixInsightでBatchPreProcessingですが、問題点が一点。星の数が少ないせいか位置合わせがうまくいかなくて、マニュアルでStarAlignmentをやり直しました。その際、「Star Detection」の「Noise Scales」を2に上げたらうまく行きました。ノイズスタック直後のオートストレッチ画像です。

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アンプグローがほぼ無くなっているところに注目です。バイアスノイズっぽいのも出ていません。カラーバランスですが、赤が小さく出てしまっているようです。ASI294MC Proの時とは逆のセンスです。

ここまできたら次はStarNet++。でも今回あまりうまくいきませんでした。明るい星は分離できるのですが、暗い星がうまく分離できません。おそらく風のせいで星像が甘いため分離できないのだと思います。これってStarNet++の弱点なんですかね。以前、M57やM1で試した時は全く分離できないこともありました。長焦点で星像が甘くなるとうまくいかなくなるのが一つの特徴かもしれません。

仕方ないので、一部分離できた状態でPhotoshopに渡します。ここからは適当に炙り出して、Dfine2とDeNoiseで適当にノイズをごまかして、ブレた端をトリミングして出来上がりです。

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  • 撮影日: 2020年4月25日20時48分-4月17日22時53分
  • 撮影場所: 富山県富山市下大久保
  • 鏡筒: Takahashi TSA-120
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO ASI178MC
  • 撮影条件: ゲイン220、温度20℃、露光時間300秒x22枚 = 1時間50分 
  • フィルター: サイトロン QBP (48mm)
  • PixInsight、StarNet++、Photoshop CC、DeNoise AIで画像処理

まとめ

最後まで仕上げましたが、恒星はぼやっとしてるし、星雲は細部が出ない出ない。口径、ピクセルサイズ、透明度などもまだ問題がありますが、今回の一番の原因は風でしょう。これはリベンジ案件です。いつか取り直します。まだ未処理物がいくつか残ってます。連休中にのんびりやります。


2020/5/17追記: VISACで撮影し直しました。





月曜でしたが、在宅勤務。せっかく明るいうちから自宅にいるので、夕方の月を見ます。


夕方の月と地球照

この日は月齢4日、まだそれほど太くはありません。明るい夕方だと白い月です。最大光度に近い金星も近くにいるはずですが、肉眼だとまだよくわかりません。せっかくなので3倍の星座ビノを使ってみました。これならさすがに青い空の中の金星も一発で見つけることができました。位置さえわかれば簡単です。肉眼でもすんなりと見つけることができました。 

そうだ、地球照でも撮影しようと思い、さっそくTSA-120をセットします。まだ北極もあまり見えていないので、極軸も適当です。

夕方と食後の暗くなってから、何ショットか撮影しました。

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  • 富山県富山市下大久, 2020年4月27日19時6分、月齢4.3
  • タカハシ TSA-120 + 35フラットナー + ZWO ASI294MC Pro (常温17.6℃) + Celestron CGEM II
  • SharpCapで撮影、露光時間 25ms, gain 50, RAW16で記録、800/1000フレームを使用
  • AS3でスタック, Registax6でWavelet, PhotoshopCCで画像処理 、月が画面に広がるようにトリミング
右下に赤い収差が見えているのは大気分散だと思われます。収差の方向と月の向き、高度からのずれの量も計算値とほぼ一致します。

ついでに、目で見た明るさに(感覚で適当に)近づけてみました。こちらはトリミング無しです。でもこういったのってどうやって客観的な明るさにすればいいのでしょう?難しいです。

18_59_37_lapl2_ap231_RS2_evening

さらに地球照です。これもどんな色が正しいかよくわからないですが、夕方感を出してみました。

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PowerMATEを用いての分解能比較

さて、今日の課題はここからです。TSA-120に35フラットナーを付けた状態で、宮路泉さんにまだそのままお借りしている4倍のPowerMATEでどうなるかを見てみます。焦点は出るのか、分解能はどうなるか、変な収差は出ないかなどです。

接続は特に困ることもなく、35フラットナーの後ろにそのままPowerMATEを取り付けて、特に延長塔などつける必要もなく、そのまま少しフォーカス位置をずらすだけでピントが出ました。同様に月の一部を撮影しました。結果には影響ないと思いますが、ミスでRAW8で保存してしまいました。まあ、分解能をみたいだけなので多分問題ないでしょう。

とりあえずその結果です。

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  • 富山県富山市下大久, 2020年4月27日20時53分、月齢4.3
  • タカハシ TSA-120 + 35フラットナー + PowerMATE x4 + ZWO ASI294MC Pro (常温16.9℃) + Celestron CGEM II
  • SharpCapで撮影、露光時間 25ms, gain 300, RW8で記録、800/1000フレームを使用
  • AS3でスタック, Registax6でWavelet, PhotoshopCCで画像処理 

でもまあこれはどうでもよくて、見たいのはPowerMATEありなしの比較です。両方の画像を拡大して比較します。

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左が4倍のPowerMATEあり、右がPowerMATE無しです。左はQBPを入れてしまったで色が違うとかは気にしないでください。

PowerMATE無しもかなり検討していますが、やはりジャギーが目立ってしまっています。わかりにくい場合は画面をクリックして拡大してみてください。また、以前の結果と同じくPowerMATEによる変な像の乱れは私が見る限り確認できません。結論としては、今のTSA-120とASI294MCの組み合わせでは、4倍のPowerMATEを入れた方が有意に解像度が高いと言うことが言えます。

ここで少し比較のための情報を。
  • レイリー限界が1秒角くらい1ピクセルが1秒角くらい。なので、1ピクセルがレイリー限界と等価くらい。
  • でもカラーCMOSカメラなので、モノクロCMOSカメラに比べて解像度は4分の1程度のはず。 
レイリー限界を超えて見える可能性についてです。
  • 他数枚をスタックしているのでレイリー限界以上に(多少)解像度が上がってもおかしくはないはず。
  • RegistaxのWavelet変換でシャープになっている
  • 強度の画像処理はしていないので、擬似的に解像度を上げるようなことにはなっていないはず
これらの条件はPowerMATEのある無しに関わらず同じです。また、今回はカラーCMOSカメラなので、PowreMATE無しだとレイリー限界に全然到達していない可能性が高いです。PowerMATEで分解能が上がりましたが、レイリー限界が見えているかどうかは、今回の結果だけでは良くわかりません。PowerMATEで4倍にしているので、一応カラーCMOSであることも考えると、1ピクセルがちょうどレイリー限界と計算上はコンパラなくらいです。

と思って、最後の最後でPowerMATEありの方を1ピクセルが見えるくらいに強拡大してみました。
PowerMATE_Extended
まずは大気分散リミットのようです。どうやら、PowerMATEのおかげで大気分散が姿をあらわにしてきました。一応ちょっと検証します。

赤から青まで約20ピクセル。4倍なので、もともと5ピクセル。ということは画面からの概算は、1.08秒/ピクセルをかけて約5.5秒角。この時の月の高度は14度で、計算によると大気分散は6.2度。読み取り誤差を考えると大気分散で確定でしょう。

どうやら次に進む前に本格的にADCが必要か。


まとめと今後の方針

さて、これらの結果をものすごく単純にまとめると、ASI294MC ProだけではまだTSA-120の分解能を引き出し切れていないということだけは確実に言えます。
  • エクステンダーやバローレンズ
  • よりピクセルピッチの小さいカメラ
  • モノクロのカメラ
などが必要になります。もちろんこれらには欠点もあり、
  • エクステンダーやバローレンズは暗くなりますし、像を歪める可能性もあるので、高性能のものが必要となります。
  • センサーの感度は1ピクセルの大きさに大体比例するので、ピクセルピッチが小さくなると当然感度が落ちます。
  • モノクロカメラはカラーにしたい場合はRGBで撮る必要があるなど、手間も時間もかかります。
など、トレードオフになります。このような対策をして、次は大気分散のことを考えてやる必要が出てきます。


さて、今回の結果をどう活用するか。もともとは焦点距離900mmで撮影できる系外銀河を考えていたのですが、系外銀河って意外に、と言うか当たり前ですが小さくて、900mmで撮影できるものは少ないのです。口径からくる分解能に達しているかどうかを見極めたかったのですが、今のシステムではまだバローとかで焦点距離を伸ばしても得しそうということはわかったわけです。でも拡大すると暗くなるんですよね。4倍のPowerMATEだと焦点距離3600mmですが、明るさ16分の1です。
  1. 2倍くらいの性能の良いバローにして、今のカラーのASI294MC Proで撮り続けるか
  2. 口径の大きいVISACに移すか
  3. それともモノクロのカメラを買うか
うーん、迷いますが、やっぱり2かなあ?夏も近いので一度M57でVISACの再テストですかね。TSA-120では小さい銀河は諦めて、もう少し広い領域を目指すことになりそうです。


回転花火銀河M101を撮影してみました。この天体は電視観望では何度か観たことがありますが、撮影は初めてです。自宅からですが、富山特有の北の明るい空です。さて、どうなることやら。


light_BINNING_1_integration_ABE_DBE_STR_DBE_STR_SNP_all_PS4_cuts
銀河部分を大きくみるために最終結果を切り出したものです。


撮影

今回はもう少し北側のM101に挑戦です。挑戦と言う意味ですが、富山は日本海側のため基本的に北が市街地になっているので、北の空はどうしても明るくなってしまい、これまでも撮影は避けてきました。

前回、三つ子銀河の自宅からの撮影がQBPを入れたまま知らずに撮影してしまうというアクシデントのおかげか、思いの外うまくいったので味をしめてしまいました。これならもう少し明るい領域でもなんとかなるのではと思い、この季節北東から真北に動いていくM101にしました。

機材セットアップは三つ子銀河の時と全く同じで、TSA-120にQPDでASI294MCProです。撮影自身は順調。ガイドもほとんどズレなしです。透明度はというと、三つ子銀河の時よりは悪かったと思います。見た目でもわかるくらい三つ子さんの時は細かい星まで散りばめられていましたが、M101のこの日の空は、悪くはないですが、まあそこそこと言ったくらいでしょうか。普通に星は見えますが、細かい星まではあまり見えません。

撮影はStickPCを利用したリモート撮影です。いったんセットして撮影が始まってしまえば、あとは部屋からヌクヌク状態でモニターすることができます。予定では3時間以上の露光時間を狙います。ところが、天頂越えまでまだ少し時間がある頃、部屋からリモート接続のでダウンロードされる画像を見ていると、星が流れて出していることに気づきました。おかしいと思い、外に出てチェックしてみると、天頂越え直前でカメラが三脚の当たって止まってしまっていました。これまでこんなことあまりなかったのですが、鏡筒が長いと天頂近くになるとカメラ側が脚に当たってしまうこともあるのがわかりました。こんなことならAPTで赤道儀の反転テストを試せばよかったです。赤道儀が明らかにずれてしまったのと、もうしばらくすると月も出てくるので、この日はこれで終了としました。5分露光で30枚なので2時間半分の撮影です。


全体の流れ

ガイドのズレを見るためにいつものように2時間半分の画像を動画にしてみます。

Blink

今回は1方向に動いているわけではなく、一度左に行って、右に戻ってきているような感じです。APTのDithering Distanceで4としてあるのですが、このランダムな動きがその4というので動いているのかもよくわかりません。1方向のドリフトではないのですが、まだたわみか何かが原因で動きすぎている気がします。

上の動画は明るさを規格化してしまっていますが、一番最初と一番最後ではヒストグラムで見ると明るさが1.5倍くらい違います。なぜかだんだん暗くなっていきます。最初北東にあったM101が高度を上げながら真北へ向かっていくくらいまでを撮影したのですが、普通に目で見ても北の方が明るいのは確かです。高度が上がっていくから暗くなるのか、夜中になり町の明かりが減っていったから暗くなっていったのかはわかりませんが、(QBP有り無しで高々3倍の明るさの違いなので)1.5倍は無視できないくらいの違いです。2時間半分あるのですが、淡いところだけを出すのなら後半のみ使うくらいの方がいいのかもしれません。今回は、結局画像処理をやっている過程で、最初の30分を使うのをやめました。そのため淡い部分がもう少し出るようになった気がします。


画像処理

今回結構色々学びました。特にAPTはまだまだ経験不足で慣れていないことも多いので、癖を知っておく必要がありそうです。


1. light frame

撮影した画像を見てみると、どうもホワイトバランスが根本的に取れてません。QBPのせいでしょうか?赤がどうしても強くなってしまいます。でも、後のフラットで逆に赤が暗くなったことを考えると、QBPのせいでもない気がします。

ight_redshift
rawファイルをカラーバランス補正なしでオートストレッチした画面。
ヒストグラムを見ても赤が支配的です。

SharpCapの場合はカラーバランスをソフト側でとることができて、fitsファイルにもそれが反映されてます。APTの場合にはカラーバランスを調整できる場所がありません。いや正確には見かけのカラーバランスは調整する場所はあるのですが、画面だけに反映され、fitsファイルにはそれは反映されないようです。


2. dark補正

今回はdarkの補正の時にアンプグローをうまく差っ引くために、前回のUTOさんのアドバイスを元にOptimizeオプションをオフにして処理しました。  オンとオフで比べてみます。

light-BINNING_1
デフォルトのOptimizeがオンのまま。右上にひどいアンプグローが残っています。

light-BINNING_1
ダーク補正の際のOptimizeをオフにした場合。
アンプグローは相当マシになります。

最初BatchPreProcessで設定場所が見つからなかったので、ImageCalibrationの中でOptimizeをオフにしてバッチ処理でなくその後もマニュアルでやったのですが、後にBatchPreProcessの右側のグローバルオプションのところに設定できる場所があることを見つけました。これでバッチ処理で手間をかけずに進めることができるようになりました。

ちなみに、ダークだけをものすごく炙り出してみるとこんな風になります。

Capture 00_12_39_00001 00_17_12_c_d

右上が目立ちますが、左上にもそこそこのアンプグローがあり、よく見ると右下にも少しあります。3箇所もあるので大変そうですが、ダーク補正でOptimizeをオフにすることで解決できるので、もうそれほど大きな問題ではないのかと思います。


3. bias補正

最初bias補正をすると画面が暗くなりすぎてしまいました。これはbais frameの撮影時のbiasの値(オフセット)が大きすぎたことと、次に書くフラット補正がうまく行っていなかったことが原因かと思われます。

badbias
カラーバランス補正をしてオートストレッチすると青と緑が暗すぎてしまう。
バイアス補正でオフセットが引かれ過ぎていると考えられる。

ligh frameの撮影時、APTでのbias設定が40でした。そのためbias frameの(オフセットの意味での)bais値は撮影時に40以下にしています。最初オフセットを30にしてSharpCapdで0.0032msで撮影したのですがまだ十分下げ切れていませんでした。それに合わせてflat frameのカラーバランスも合っていなかったせいで、赤が過補正のため青と緑が相対的にオフセットを引かれすぎた状態になってしまって、出来上がり画像の青と緑が暗すぎてしまったのかと思います。

そのため改めてbiasを撮影して、その際オフセットを20に下げ、今度は念のためAPTで撮影しました。一応これでうまく行きましたが、実際にはbias値を下げたからよくなったのか、後述のフラットのバランスが取るように対策したからなのかは不明です。


4. flat補正

その中でも、今回の撮影では特にflat補正で学ぶことが多かったです。TSA-120の口径が大きすぎて、いつもやっているようなiPadでのフラット撮影は出来ませんでした。手持ちのiPadでは画面が小さすぎてはみ出てしまうのです。その代わりにMacbook Proのモニターをフラットパネル代わりに使ってやりました。使ったツールは天リフさんのこのページです。



このページはカラーバランスを整えることができるので、非常に便利です。

短時間露光のflat frameなので、最初はディスクへの画像取り込み時間が速いのでSharpCapで撮影していたのですが、条件をそろえる意味で途中からAPTでの撮影に切り替えました。ゲインはlight frameと同じ220、露光時間は以前の検証から100msです。枚数は50枚程度ですが、これも以前の検証からこれくらいの枚数で十分だと思われます。

ここから色々不思議なことがあり、まだ完全に解決できていません。あいからわらずフラットは謎が多いです。

上の「1. light frame」のところでも述べましたが、APTでlight frameを撮影すると赤色が一番強調して撮影されます。上のスナップショットでヒストグラムのところを見ると、赤が青や緑に比べて1.5倍くらい明るいのがわかります。

これは有意なずれで画像処理に影響を与えるくらいかなり大きな差です。最初QBPのせいで赤くなっているのかなと思っていたのですが、不思議なことに鏡筒とカメラの設定を全く状態を変えないでMacのモニターでホワイトバランスをとったものをflat frameとして撮影すると、今度は赤が一番暗くなるのです。青や緑に比べて2分の1以下くらいの明るさです。

flat-BINNING_1

このflat frameを使いフラット処理をすると、もともと1.5倍明るい赤が、2分の1位の暗さの赤で割られるので、その結果赤が3倍くらい明るいlight frameが出来上がることがわかりました。そのため少なくともPIでは、light framとflat frameのカラーバランスは、そこそこ同じようにする必要があることがわかります。実際にはMacの画面のカラーバランスを、あらかじめ赤が3倍くらい明るいものにして、それを撮影することで、そこそこlight flameと同じカラーバランスの取れたflat frameを作ることできるようになりました。

もう一つ問題がありました。撮影したflatの画面のうち赤色だけ様子がおかしいのです。RGBに分解してみてやると、青や緑はいたって普通に見えますが、赤色だけはセンサーの長手方向に蝶形になるような、形が現れてきて、変に見えます。

flat_BINNING_1_integration_RGB_VNG
赤だけ変な形が現れる。

とりあえず軽減する方法は見つけました。どうもフラットパネル(今回はMacbook Proのモニター)で撮影することが悪さをしているようです。まず、フラットパネルを使わずに、昼間にスーパーの袋を二重に重ねてflatを撮影してみると、この変な形は随分とマシになります。カラーバランスはその時に入る光に依るので、少し赤っぽい、実際には電球色の光を入れています。

flat_BINNING_1_integration1_RGB_VNG
蝶のような形はなくなったようにみえます。 

画像を見ても少しマシになっていることがわかると思います。でもマシになっただけで、やはり同じような形は残っています。

で、結局最終的にやったことはというと、flat補正をしないという選択肢を取りました。どう見てもこれが一番マシなのです。そもそもカメラがフォーサーズ相当で周辺減光があまりないので、それほどフラット補正にこだわる必要はないのかもしれまん。

でもここで不思議なのは、同じ鏡筒で同じ条件で撮影しているのに、なんで普通のlight frameの撮影の方では、こんな変な模様が見えてこないかです。まだflat frameの撮影方法に問題があるような気がしています。ここらへんは時間があったらもう少し試してみます。


5. 仕上げ

フラット補正なしにしてスタックした画像がまともになるとやっと、その後の仕上げの画像処理に困ることはなくなりました。ちなみにこれ以前のフラットが合っていない時の画像処理は熾烈を極め、時間も相当かけてしまいました。ちなみに最後のフラット無しの結論に至るまでに、PixInsightでのフルスタックの画像処理の回数は11回。そのうちPhotoshopに移って最後まで処理を進めたのが4回。下処理がきちんとしていればいるほど、画像処理にかける時間も少なくなりますし、出来上がった画像もいいものになります。


結果

画像処理の段階で色々紆余曲折はしましたが、そこそこ満足のいく仕上がりになりました。透明度の差もあるのでしょうか、三つ子銀河の時ほどくっきり出すのは難しかったですが、アンプグローが軽減できたのと、フラットがマシになったぶんもあり、淡い部分をより炙り出すことができていると思います。

light_BINNING_1_integration_ABE_DBE_STR_DBE_STR_SNP_all_PS4_cut
  • 撮影日: 2020年4月16日21時29分-4月17日0時20分
  • 撮影場所: 富山県富山市下大久保
  • 鏡筒: Takahashi TSA-120
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO ASI294MC Pro
  • 撮影条件: ゲイン220、温度-15℃、露光時間300秒x24枚 = 2時間0分 
  • フィルター: サイトロン QBP (48mm)
  • PixInsight、StarNet++、Photoshop CC、DeNoise AIで画像処理

自宅でこれなら、まあ十分ではないでしょうか。これも一度暗いところへ行って撮影してみたい対象です。一体どれくらい変わるのか、真ん中のしわしわの部分をもっときれいに出せたらと思います。

その一方、富山の北の空でこれだけ出るのなら、もう少し自宅で時間をかけていろんな銀河を探っていきたくなりました。自宅からなら、天気さえ良ければ平日でも比較的気楽に試すことができます。


Annotation

天体の名前入りの画像です。こちらも定番になりそうです。

light__integration_ABE_DBE_STR_DBE_STR_SNP_all_PS4_cut_Ann


前回の三つ子銀河は全面縦横ズレなしだったのですが、今回は右はあっていても左側が斜めになっています。北の空だからでしょうか。座標に対しては画面が歪んで写るんですね。


まとめ

TSA-120の自宅での撮影第2段。QBPのおかげもあり、北の空の銀河でもそこそこ写ることがわかりました。銀河の撮影も楽しくなってきました。TSA-120での撮影を今しばらく続けていきたいと思います。

その一方、まだ画像処理では理解不足なところがあります。特にflatはいまだにミステリーです。きちんとしたflat撮影方法をもう少しきちんと考える必要がありそうです。
 

大きな低気圧が抜けていき、透明度のいい日だったので、自宅からですがTSA-120で初めてまともな撮影を試みました。

これまでの準備

TSA-120に関しては、これまで撮影のためにいくつか準備をしてきました。









ガイド鏡のカメラにはこれまでピクセルサイズが2.4umと比較的小さいASI178MCを使っていましたが、カラーなので解像度的には4分の1になり、あまり得をしません。ピクセルサイズは2.9umと少し大きくなりますが、モノクロのASI290MMを使うことにしました。2.4/2.9x4 = 3.3倍くらい分解能が良くなっているはずです。ガイド鏡自身も焦点距離50mmのレンズから128mmにしたので、こちらも2.5倍くらい分解能の面で得しているはずです。合わせると8.5倍くらい分解能が良くなるので、精度向上が期待できます。

撮影するくらいまで準備が整ったので、チャンスを伺っていました。焦点距離880mmで、フォーサーズサイズのCMOSカメラなので、これまでのFS-60Qと6Dとかよりももう少し拡大して撮影できます。そこで、春で構図的にもちょうど治りがいいので、しし座の三つ子銀河をターゲットにすることにしました。


撮影

さて、TSA-120にフラットナーをつけての初のDSO撮影になります。テストでガイドなしのM42とか月とかの撮影はしていますが、今回はガイドありでの銀河です。四隅の星像にも注目したいと思っています。

そういえば、前回の月の撮影の時くらいから、鏡筒に差し込むカメラの回転角度に気を付けています。Facbookのあるフォーラムで解説されていた方法でやってみました。極軸合わせが終わった後、鏡筒が北極付近を向いている状態で、赤緯だけを揺らして星が平行、または(カメラの画角によっては90度傾いた状態だと)垂直に動くように、カメラの角度を調整すればいいというものです。

これまで画角の傾きには全く無頓着で、適当に水平垂直になったかなと思うくらいで合わせていました。ひどいと数十度のずれになっていることもありました。この方法は手軽で正確なのでいいです。後で示しますが、plate solvingで確認すると、ほとんど回転角0度になっていました。

今回のもう一つの大きな進展は、ガイド鏡の強化によりオートガイドの精度が大幅に上がったことでした。PHD2の画面の写真ですが、

IMG_9879

これをみるとRMSで1秒を切っています。

これまでのFS-60Qで撮影してきた時のとかの典型的なやつが
IMG_9761
になります(これでもかなり調子が良い時のものです)。グラフは同じスケールです。赤線、青線が相当フラットになったことからも、同心円のところばらつきが減ったことからも、明らかに精度が上がったことがわかります。

ところが、撮影した画像を位置合わせをせずに順に見ていくと

Blink

ランダムディザーで揺れてはいるのですが、やはり右に流れていきます。オリジナル画像だと1ピクセル1秒角くらいで、最初と最後を比べると約2時間で80ピクセルくらい右に流れていくので、約80秒角くらいずれたことになります。画像1枚が5分で、5分あたり3秒角ちょっとドリフトしてることになります。結構な量です。まだ撓み(たわみ)があるものと考えられます。これは一度きちんと定量的に評価する必要がありそうです。

今(ブログアップ直前)、ガイドグラフを改めて見てて気づいたのですが、ガイドの赤経をよく見ると一方向にのみ定期的にパルスが出ています。これってもしかしたらたわみがフィードバック信号に現れてしまって、その結果ドリフトを起こしているいるのかもしれません。パルス量とその周期から計算した赤道儀の回転量が、画面から計算したドリフト量あっていれば面白いです。このパルスがなくなるような対策をすればいいので、短時間で効果が見えると対策が楽になるはずです。

あと、撮影使ったソフトはAPTなのですが
  • 撮影画面のカラーバランスが取れず、赤く表示されてしまう。
  • やはりヒストグラムがあまり見やすくない。
  • オートストレッチが使いにくい。
  • カラーのヒストグラムを見ることができない。
などの不満がありました。その後、カラーバランスについては、APT Settingsの CCD/CMOS settingsタブのRed Channel Color BalanceとBlue Channel Color Balanceで色のバランスを取ることができるのがわかりました。保存されるRAWファイルには適用されず、見た目だけのバランスのようです。またオートストレッチに関しては、Auto Stretch Factorをいじると、デフォルトのオートストレッッチの強さを変えることができるので、これで合わせると程よい明るさで見ることができそうです。でもこの設定、撮影中にできる時と、撮影中はロックされて何も設定できない時がありました。再現性なくあまりよくわかりませんでした。

このとき試せなかったのが、天頂越えでの赤道儀の自動反転です。天頂越えくらいで月画で始めるので、ギリギリまで反転せずに撮っていたからです。いつかチャンスがあったら試したいです。


画像処理

画像処理に関してはまあいつも通りです。透明度が良かったせいか、RAW画像のコントラストが良かったこともあり、あまり苦労することはありませんでした。

フラットは前回までの検証から、100ミリ秒の短時間露光100枚でOKのはずです。ダークはバラ星雲の時に撮ったものの使い回し。

DeNoiseを少し使っています。ノイズが確実に緩和されるので随分と助かります。ヒストグラムで見るとすごいですよ。幅が尋常でないほど狭くなっています。最初、え、別のファイル開いたのか?と思ったくらいでした。

撮影結果です。

M65 M66 NGC3628: 三つ子銀河」
light_BINNING_1_integration_DBE_ST_PCC_SNP_all_PS3
  • 撮影日: 2020年4月14日21時4分-23時1分
  • 撮影場所: 富山県富山市下大久保
  • 鏡筒: Takahashi TSA-120
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO ASI294MC Pro
  • 撮影条件: ゲイン220、温度-15℃、露光時間300秒x22枚 = 1時間50分 
  • フィルター: サイトロン QBP (48mm)
  • PixInsight、StarNet++、Photoshop CC、DeNoise AIで画像処理
各銀河の細かいところもそこそこ出ています。赤いポツポツも出すことができました。四隅の星像は以前報告した通り、バックフォーカス長が調整し切れていないので少し歪みますが、まあ拡大しなければ目立たないでしょう。TSA-120初の撮影ですが、自宅からここまで出るのなら、そこそこ満足です

上手く取れたので、Annotationもつけてみました。nabeさんがやり方書いてくれていましたが、PIでScript -> Image Analysis -> ImageSolver で位置を解決して、そのままScript -> Render -> AnnotateImageでできます。

light_BINNING_1_integration_DBE_ST_PCC_SNP_all_PS3_Annotated

こうやってみるとかっこいいですね。格子がほぼ完全に縦横になっているので、カメラの回転角はかなり合わせることができていたとわかります。でもnabeさんのページにあるように、多少斜めになっていた方がカッコよく見えるのは気のせいでしょうか?(笑)

そういえば今回、PCCでも上のImageSolverでもそうだったのですがplate solvingが全然うまくいきませんでした。いろいろやって、結局解決したのがカタログをUCAC3に変更してからです。オートとか他のカタログは全滅でした。星の数が少ないから?原因不明です。


ところで、今回撮影した三つ子銀河が昔とどれくらい変わったかと言うと、以前FS-60Qで撮影した三つ子銀河が以下のものになります。

light_BINNING_1_Maximum_No_normalization_DBE_PCC

PixInsight使いたての頃で、縞ノイズに悩まされた時です。今回は口径が120mmで2倍になったのもありますが、QBPでコントラストが上がっていることと、縞ノイズを回避したこと、画像処理の腕は多分上がっていること、StarNet++のマスク効果と、DeNoiseの効果もあることなど、いろいろ進化していることがわかります。

でも不満なところもいくつかあって、一つはASI294MC特有のアンプグローです。背景を炙り出そうとすると目立ってくるので、なんとかごまかさないといけません。もう一つは、下の画像を見て欲しいのですが、強度に背景を強調したものです。

light_BINNING_1_integration_DBE_ST_PCC_SNP_all_potato

右上のアンプグローは原因もわかっているからまだいいとして、背景全体にある格子状の模様はサッポロポテト現象の一種なのでしょうか?銀河周りの淡い腕とか出したいときはここらへんまで炙り出す必要があり、どうしてもこの格子が邪魔になります。今回は適当にごまかしましたが、アンプグローも取り切れていないのも合わせて、バイアス補正とかがうまくいってないのでしょうか?今後の課題です。

2020/4/18 追記: Twitterでnagahiroさんから「この格子DeNoiseのせいでは?」と言う情報がありました。「画像をあの格子で区切って、それぞれにニューラルネットかけているのだと思ってます」とのことです。で、改めて確認してみました。その結果、DeNoiseの前後で格子がなかったのが見事に出てきました。DeNoiseの思わぬ欠点発覚ですね。さっそく一つ原因がわかってしまいました。nagahiroさん、どうもありがとうございました。


まとめ

TSA-120にフラットナーをつけて、ガイド、ディザーをしながら撮影してみました。カメラの回転角を合わせることもできるようになりましたし、ガイドもRMSで1秒角以下になっているので十分な精度です。やっと撮影までできる体制が整ったことになります。銀河の分解能から見ても鏡筒自身の性能は申し分ないです。基本的にTSA-120、眼視用で有名ですが撮影でも十分使い甲斐があると思います。

課題は
  • まだガイドが長時間でドリフトすること
  • アンプグローをもう少し取りたい
  • 格子状のノイズが残ること
くらいでしょうか。

今回は自宅でしたが、もっと暗いところに遠征することも考えても良さそうです。
 

前回の記事の月の撮影をする、少し前に撮影したM42の内容です。今回は人様に見せるような記事ではなく、自分用のメモです。


35フラットナー

TSA-120での同じような内容のM42は以前記事にしましたが、今回の第一の目的はTSA-120用の35フラットナーと呼ばれるフラットナーのテストです。具体的には
  • フラットナーが使えるかどうか、星像がどこまで改善するのか見てみたい。
  • フラットナーでCMOSカメラを接続したらどうなるか?
  • トラペジウムを四隅の星像の崩れなしで撮っておきたかった。
  • 1秒露光のラッキーイメージングで上位画像だけを撮ったら分解能に効果があるかどうか調べたい。
くらいでしょうか。

撮影と画像処理

ガイドは用意までしたのですが、オリオン座が沈むまでに時間が限られていて準備が間に合わす、結局今回もノータッチガイドです。 
 
機材はTSA-120をCGEM IIに載せて、カメラはASI294MC Proを-15℃、間にQBPを入れてあります。撮影条件はSharpCapで1秒露光、ゲインは320。撮影中にダーク補正だけは64枚をリアルタイムでしました。約1513枚撮影し、FITS形式で保存しました。

まあ、結論だけ言うとシンチレーションがあまりに悪くて、前回のM42の撮影時は写っていたE星、F星も撮影時から全く見えず、ほとんど最初から諦めモードでした。そのせいでしょう、1500枚のうちAutoStakkert!3で上位25%だけスタックしたものと、PixInsightで1500枚全部インテグレートしたものを比較しても、トラペジウムの写りはほとんど差がなく、枚数差で背景ノイズが滑らかになるかどうかの違いが見えただけでした。 

1000枚を超える処理は、PixInsightだと結構時間がかかるので、ラッキーイメージングのような短時間露光の時はser形式でRAW動画として保存して、AutoStakkert!3の方が楽そうです。一応AutoStakkert!3はFITS形式も読めるのですが、その前にdebayerしてカラー化しないとダメで、debayerをPixInsightでやると.xisf形式になってしまい直接は読めないので、さらにTIFF形式とかへの変換が必要になります。ただ、ser形式にすると、クールピクセル処理とかはできなくなりそうなので、これもまた考えものです。一度手法をきちんと確立する必要がありそうです。

しかも、ノータッチガイドで少し流れたので、縞ノイズやらカラーノイズが結構出てしまい、あまり画像処理をする気にもならないレベルでした。


撮影結果と四隅の具合

とりあえず結果だけ。

integration_ABE_PCC_STR_all_PS_2nd

背景がノイジーなので、全然炙り出せません。暗いままです。トラペジウムも前回よりボヤボヤです。天体画像としては不十分ですが、元々の目的のフラットナーの評価だけはできます。肝心の四隅だけ見てみます。

integration_ABE_PCC_STR_all_PS_2nd_cut9


それでも元々が1秒露光なこともあり、写っている星の数が少ないので評価しにくいです。例えば右下を見るとやはり少しだけ流れているように見えます。これは、フラットナーとカメラセンサーの距離がきちんと調整されていないことが一つの原因かと思います。少し分解能は落ちるかもしれませんが、早めに一眼レフカメラに移行して、きちんとしたバックフォーカス長で撮影した方がいいかもしれません。

ちなみに、フラットナーなしの場合はこうなります。

integration2_cut9

比較して見ると、四隅は当然ですがフラットナーなしの時よりは全然マシになっています。でもトラペジウムの解像度や、中心部の星雲の解像度は前回の方が全然上ですね。同じ機器でもこれだけの違いが出ます。ピントは今回もかなり気を使ったのですが、シンチレーションの差は如何ともし難いです。


まとめと来シーズンへのの課題

結論としては
  • フラットナーを一応使うことができた。焦点も出るし、星像も改善される。
  • CMOSカメラだと少し流れている。フラットナーからの距離の調整が必要かもしれない。
  • オリオンももう季節終わりで、トラペジウムベンチマークもまた来シーズン。 
  • 1秒露光は長時間になると結構大変になってくるので、もう少しやり方を考えた方がいいかもしれない。
とかでしょうか。特に最後の長時間のラッキーイメージはどうするかは課題です。分解能を稼ぐために新ちれションが悪いところを省きたいのですが、
  • 例えばLiveStackで枚数を減らすか?でもそれだと上位画像を選べない。
  • serフォーマットで撮るか?でもそれだとクールピクセル除去ができない。-> ディザー?
  • ガイドは必須。
  • でもティザーは?何分かおきにやるのか?
など、検討すべき点がたくさんあります。 他にも
  • バローを入れる。
  • 赤外の方がシンチレーションの影響が少ないか?
とかも興味のあるところです。

大元の目的がM42をトラペジウムのF星よりも分解能よく撮りたいというものです。来シーズンまた挑戦します。
 


昨晩TSA-120のフラットナーのテストの一環で、月齢10.1日の月を撮影しました。


月のテスト撮影

シンチレーションも悪くなく、シャープな月が撮影できました。TSA-120に35フラットナーをつけ、焦点距離880mm。これをASI294MC Proで撮影しています。パラメータとしては露光時間75ms、ゲイン0で1000枚をserフォーマットで撮影して、500枚をAutoStakkert!3でスタック、Registax6でWavelet変換しています。

あ、実は先のM42の撮影のセッティングがそのままになって、月の撮影は実はついでです。そのため、48mmのQBP(Quad Band Passフィルター )が入っているのと、カメラを-15℃で冷却していますが、月の撮影で両方ともあまり意味はありません。

元の画像の画質が良いので、今回はRegistaxでの細部出しはかなり抑えています。あくまで自然に、軽くシャープさを上げるだけにとどめています。最後にPhotoshop CCで少しだけ暗い部分を炙り出しています。また、周りの黒い部分が大きいので少しだけトリミングしています。

20_51_08_lapl5_ap2162_RS

さすがTSA-120とも言うべきでしょうか、細かい描写まで含めて、かなりシャープにしかも自然に出ています。


ん?収差?

とまあ、ここまでは至って順調である意味普通なのですが、 Photoshopで画像処理をしている時にあることに気づきました。どうもよく見ると上部(北)が青色、下部(南)が赤色の収差があるのです。目の錯覚のレベルではありません。
upper_blue

low_red

画面でわかりますでしょうか?ごくわずかですが、月と背景の境目が、上は青、下は赤になっています。

ここで、以前スターベースでS君と話したことを思い出しました。「収差があるとクレームが来る鏡筒は意外なことにTOAやTSAの高性能屈折鏡筒に多い。基本的に鏡筒が持っている収差はほとんど出てこないため、大気収差が目立って見えてしまい、それを鏡筒が持っている収差と勘違いする場合がある。」とのことです。このことを聞いてはいたのですが、「もしかして調整ミスとかもあり得るのでは!?」と考えてしまったのが今回の記事の始まりです。


実際の収差量の見積もり

さてこの収差、いったいどれくらいの量なのか実際に撮影した画像から見積もってみました。PhotoshopでチャンネルをRGBに分けて、下側にずれている赤色を上にずらしてみます。でもほんの1ピクセル上にずらしただけで今度は赤が上に出過ぎます。TSA-120とASI294の解像度から考えると1ピクセル当たり1.08秒なので、1秒以下、まあ大雑把に言って0.5秒くらいの収差があることになります。

この量は大気によって起こっている分散で説明できるのでしょうか?これまで月を撮影してこんな収差が気になったことはありません。もしかしたらこの量は大きすぎで、鏡筒の調整不足から来ていたりすることはないのでしょうか?


大気分散の計算

大気収差は正式には大気分散と言うそうです。大気分散の計算は、多少複雑な式に見えますが、微小量を無視すればわりと簡単に計算することができます。「大気分散」で検索すれば数式は探せば各所で見つかるのですが、今回は色の違いでの大気分散が知りたいので、波長の依存性を考慮した式を使う必要があります。でも簡単に見つかるうちのいくつかが(論文レベルなのに)どれも間違いがあったので、注意が必要です。大元の式を論文に載せる際に、タイポで写し間違えたものと考えられます。全部書くと長いので、0次オーダーの簡略化した式を書いておきます。

まず、「大気差」Rというのは「天体の見かけの高度」から「天体の真の高度」を引いたものとして定義されています。大気差Rは以下の式で計算されます。

R=(n01)tan(90V)[rad]

[deg]は見ている天体の見かけの高度です。n0は屈折率で、
\[(n_0-1)=C(\lambda)\frac{P}{T}\times10^{-8}\]
\[C(\lambda)=2371.34+683939.7(130-\frac{1}{\lambda^2})^{-1}\]
と表されます。このCが波長に依存する部分です。

ここで、Tは温度[K]なので15°Cとして288K、Pは気圧[hPa]で1013hPaとしました。λ[μm]は対象の波長で、ここでは赤色が0.65μm、青色が0.45μmとしました。赤色の場合のRrと青色の場合のRbの差が今回求めたい収差となります。撮影時の月の高度が69°で、大気差を求めると、ラジアンと分角、秒角に注意して、Rrが21.52秒角、Rbが21.82秒角となるので、その差は0.31秒角となります。

撮影した画像から評価した0.5秒角くらいなので、オーダーでは結構あっています。それでも上の計算はかなり簡略化された式を使ったので、誤差も大きいです。簡略化されていない式を使って、もう少しまじめに計算すると0.600秒角となります。こちらのほうは実際の画像から見積もった(1ピクセルズレだと大きすぎ、0.3ピクセルズレとすると小さすぎという感じです)評価に相当近いです。

エクセルで計算した過程をここにアップロードしておきました。簡略化していない式で計算してありますので、ここを見るとどんな計算過程かもわかるかと思います。興味がある方はご覧ください。


考察

実際の画像から評価した赤色と青色の収差が、大気分散と仮定して計算した値とほぼ一致したので、今回見えた収差は大気によるものと考えて良さそうです。鏡筒の調整不足なんてことは考えなくていいということがわかりました。

さて少し考えたいのは、なぜ今回この収差が「初めて」気になったのかです。以前撮った月の画像を見てみました。まずFS-60CBとASI178MCで撮っていたものだと、分解能不足で大気収差を認識することはできていません。同ページのC8で撮ったエッジを見ても、収差らしき色はほとんどわかりません。スーパームーンの時にFS-60CBで撮ったものでも同様です。

かなりシャープな像が特徴のVC200Lで撮った満月の画像を見てみると、確かに少し赤と青がわかるかもしれませんが、エッジを出しすぎていたせいもあり、当時は全く気付くことはありませんでしたし、気にもなりませんでした。

今回TSA-120でこの収差が気になったのは、やはり鏡筒の性能がいいということと、もう一つはRegistaxでのエッジ出しを控えたこともあるのかと思います。でも0.5ピクセルというと0.5秒角ということになり、既に口径120mmのレイリー限界の1秒角を超えているようなものです。まあ、色での判断という大局的な話なので、実際の分解能があるということには直接はなりません。また、レイリー限界というのもある意味ただの指標なので、カメラの分解能、画像処理での炙り出しによってはそれ以上に見えることはあり得る話です。ただ、ここまで鏡筒の原理性能に迫ることができるTSA-120は、やはり高性能の鏡筒というということなのでしょう。

もう一つ、QBPの影響についても少し述べておきます。月の前の撮影のセッティングがそのままでQBPが入ったままでした。今回の収差は、上部が赤で下部が青なのと、計算値ともほぼ合うことから明らかに大気分散と言えると思います。なので、QBPで変な収差が起こっているようなことは基本的に無いと言っていいでしょう。少なくとも、大気収差が気になるレベルで見ても何の影響もないということで、撮影レベルでも安心してQBPを使えるのかと思います。では、QBPが逆に大気分散をより炙り出したと言う可能性はあるでしょうか?これはもう少し追調査が必要です。少なくとも、QBPで余分な波長の光はカットされているので、コントラストが上がりより見やすくなったと言うのはあり得るのかと思います。


まとめ

結局、鏡筒の性能を一瞬でも疑った私がバカでした。タカハシ高性能屈折鏡筒恐るべしです。

スターベースのS君の話は多分誇張でもなんでもなく、本当にクレームが来るのでしょう。そのことを聞いていて、金星を見た時も大気収差と疑わなかった私でも、今回はもしかしてと疑ってしまいました。

こんな大気収差の描写と議論ができるくらいのきちんとした設計と、それを引き出すタカハシ工場の職人芸的な調整には感服しました。


TSA-120の取り回しが完成しつつあります。

アリガタプレート変更


2月前に購入した直後は星まつりで100円で買ったVixenのアリガタを使っていたのですが、ちょと前の記事で書いたように、タカハシ純正の鏡筒バンドにMORE BLUE製のLosmandy規格のプレートを付けました。これでも実際には十分な強度だと思います。

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タカハシ の鏡筒バンドの裏側には、直径5cmくらいの円状の高さ1mmくらいの出っ張りがあり、そこがタカハシ製の赤道儀にピッタリはまるようになっています。そのため上の写真のようなプレートに取り付けると、その5cm円の面のみで接触します。揺れや剛性などは一番細いところで決まってしまうので、結局一番小さいこの円の面積が支配的になります。タカハシ純正の赤道儀だと、ちょうどピッタリハマるので、鏡筒バンドの軸の太さと赤緯体の太さが同じになり、弱いところがなくなるのがメリットです。


セパレート式鏡筒バンド

赤道儀はCGEM IIを使っているためVixenかLosmandy規格のアリガタになり、タカハシ鏡筒バンドはタカハシ赤道儀のようにはうまくくっつきません。最初の頃、Vixen規格のアリガタで固定していた時は、ピント合わせなどの時に結構揺れていました。Losmandy規格になり少しマシになりましたが、やはりもう少し剛性が欲しくて、セパレート式の鏡筒バンドにしようと思っていました。

鏡筒バンドはこれまでFS-60QやFC-76で使っていたK-ASTECのものにしようと思っていたのですが、結局MORE BLUEのものにしました。

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決めては値段と、重量、そして底プレートからの高さが低いことです。実際にどれくらい効くかはよくわかりませんが、鏡筒の重心位置が赤経中心数cmのオーダーで近づくことになります。

また、鏡筒バンド間の距離をできるだけ大きくとったので、剛性として相当増しているはずです。実際に星を見て、ピント合わせ時などでも多少改善されることを期待しています。


汎用のアルカスイス プレートの取り付け

次は鏡筒バンド上部。今回は汎用の300mmのアルカスイス プレートを少し加工して取り付けました。

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元々端の方にあったたくさんのM3穴のうち4つを、M10まで広げています。使っているネジはM6ですが、元々の穴が鏡筒バンドのねじ穴と少しずれていて、多少大きめな穴を空けなければ、鏡筒バンドのネジ穴までアクセス出来なかったからです。

このプレートは持ち手がわりにもなりますが、鏡筒との間の距離が短いので指が完全に入らないです。もしかしたらMORE BLUEで販売されている専用スペーサーを上側だけに入れるかもしれません。もしくは別のハンドルをつけてしまってもいいかと思っています。

ただ、このプレート少し厚いので、もっと薄いプレートにしてもいいのかもしれません。その際は、M6用の穴をきちんとした位置で空けるのかと思います。


ファインダーやガイド鏡の取り付け

上部をアルカスイス互換プレートにしたので、ここにいろんなものを簡単に取り付けれるようになります。今回試しに用意したのは、光学ファインダーと電子ファインダー、ガイド鏡です。こんなふうに取り付けます。

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光学ファインダーがこうなった経緯

これまでずっと電子ファインダーが主だったので、FS-60Qなどの付属光学ファインダーは実際ほとんど使っていなくて、鏡筒からは基本取り外して保管箱にしまいこんでいました。 

でもTSA-120の場合、眼視で使うことも多いので光学ファインダーって結構使ってるんですよね。問題は、光学ファインダーがでかいこと。ケースに収める時も苦労したので、まずは取り外し式にしたいというのがありました。

取り外し式にする時に問題になるのが、台座をどうするか。タカハシのファインダー台の取り付け穴って、鏡筒軸に対して垂直にねじ穴が二つ開いていて、しかもそのねじ穴の幅が27.5mmと微妙に広すぎるんです。手持ちでそこらへんにあったVixen用のファインダー台座とかを取り付けることができません。アルカスイス クランプに取り付けるにしても、この幅が仇になり、なかなかうまいこと固定することができません。

既製品をいろいろ調べたのですが、3種類くらいがすぐに見つかりました。
  1. まずはタカハシ純正のFQR-1ですが、対応品の中にTSA-120が出ていないので不安なのと、少し大きいのがマイナスポイントです。あと、タカハシというだけあるのでしょうが、1万円程度と台座だけにしてはちょっと高価です。
  2. 他にNorthern Crossのものがすぐに見つかりました。Vixen互換でタカハシ鏡筒にも対応しているというもので、幅広のタカハシ規格のために爪の真ん中に切り込みを入れてあり、2つになった爪を2つのネジでそれぞれ締めるようになっています。2つネジは安定になりそうなのですが、少し冗長な気もします。
  3. Northern Crossのように切り書きが入っているのですが、ネジが片側だけにしかついてないものもありました。これはこれで固定に不安も出てきます。
結局のところ、そもそも巨大なTSA-120純正の光学ファインダーを使うのはやめて、手持ちで転がっていたもっと小さい、普通サイズの光学ファインダーを使うことにしました。そうするともはや元々の光学ファインダーの位置にこだわる必要もなくなります。

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いくつかある手持ちの光学ファインダーの中で選んだのが、上の写真です。古いもののようで、どこのメーカのかもわかりません。多分どこかの星まつりで買ったもので、手作りと思われるアルミ製のホルダーと台座がついている結構しっかりした物です。レンズとか少し汚れていましたが、分解して掃除したらまともに見えるようになりました。これにアルカスイス互換クランプを取り付けることで、鏡筒上部のアルカスイス互換プレートに簡単に取り付けられるようになりました。


まとめ

今回の鏡筒バンド周りのセットアップで、着々と撮影の準備ができてきました。次はいよいよ専用フラットナーを取り付けてみます。

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