ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:観測機器 > VC200L

先日のVAISCでの月の撮影時の分解能について、天文リフレクションズのピックアップで少し取り上げてもらえました。



まず、
  • VISACのエアリーディスク径が12μmでASI294MC Proのピクセルピッチが4.65μmでもアンダーサンプリングで、最小星像径の1/2.5の大きさのピクセルでは光学系の性能はフル発揮できないことは衝撃的
との指摘で、その後の投稿で
  • 星が1ピクセルでは全く足りなくて、2x2ピクセルでもまだ不足。星像径12μでASI178MCのピクセルピッチ2.4uが充分効果的というのは納得 
という意見でした。実際の場合でも納得というのは心強い意見です。

さらにHIROPONさんから
  • 鏡筒の「遮断空間周波数」(Spatial cutoff frequency)とセンサーのナイキスト周波数から考えて、2.25μmがフルに鏡筒の性能を生かせる
 という説明がありました。2.25umは実際に試した2.4umに近いピッチだったので、それほど間違ったことをやっているわけでもないと思います。標本化定理を考えると、情報を落とさないという意味では理論的にはほぼこれで決定なのですが、今回はもう少し実感が湧くように実際の画像で考えてみたいと思います。


エアリーディスクの可視化

エアリーディスクについては、以前ラッキーイメージングのところで議論しましたが、



1次のベッセル関数を使って

2J1(x)/x

のように書くことができます。ただしこれは1次元の場合なので、平面で表すためにxをr=sqrt(x^2+y^2)と書いてやり、2次元で表します。それを例えばMathematicaなどで等高図(密度分布)で書いてやると

airydisk


のようにエアリーディスクの形になり、ディフラクションリングも(グラフではちょと薄く見えてしまいますが)実際のイメージに近く見えるようになります。さて、今回はこれを元にCMOSカメラで分解能がどれくらい出るかを検証します、


レイリー限界

今回、カメラの分解能をわかりやすく見るために何が一番いい指標になるか、色々考えてみました。エアリーディスクそのままよりも、レイリー限界に相当する2つのエアリーディスクを2次元等高線で書いてから、それをカメラのピクセルピッチの粗い画素で見たときにどうなるかを表すのがわかりやすいのではと考えました。

まずはレイリー限界で離れている2つのエアリーディスクを等高図で出してみます。レイリー限界は、エアリーディスクの最初に一番暗くなった部分が、隣のエアリーディスクの最大のところにかかるというのが定義です。

VISACの場合、F9なので、標準の550nmの波長を考えた時に、エアリーディスク径は

Da = 2.44 F λ = 2.44 x 9 x 0.55 [um] = 12.1 [um]

となります。一方レイリー限界は一般的な式では口径のみで決まり、


DR=127.5D[mm][arcsec] = 0.6375 [arcsec] 

となりなります。単位が秒角なので、これをわかりやすいようにumに変換します。焦点距離1800mmの場合のarcsecからumへの変換係数

Cumarcsec=tan(12×60×60π180)×2× 1800×1000       = 8.73 [um/arcsec]

をかけてやると、レイリー限界は0.6375 [arcsec] x 0.73 [um/arcsec] = 5.56umということになります。このように、レイリー限界がエアリーディスク径の約半分になるということはラッキーイメージングの時に議論しました。

これをMathematicaでグラフで表してやると

DensityPlot[(2 BesselJ[1, Sqrt[(x - 3.831705970207512`/2)^2 + y^2]]/
      Sqrt[(x - 3.831705970207512`/2)^2 + y^2])^2 + (2 BesselJ[1, 
       Sqrt[(x + 3.831705970207512`/2)^2 + y^2]]/
      Sqrt[(x + 3.831705970207512`/2)^2 + y^2])^2, {x, -10, 
  10}, {y, -10, 10}, PlotPoints -> 100, PlotRange -> All, 
 PlotLegends -> Automatic, ColorFunction -> ColorData["GrayTones"]
 ]

rayleigh

エアリーディスクの暗くなった部分の中心が、隣のエアリーディスクの一番明るい部分を通っていることがわかると思います。式の中の、3.8317...とかいう数字は、一番最初のエアリーディスク径の式で強度が0になるxの値です。これがVISACの場合、5.56umに一致するというわけです。

ちなみに、ASI294MC Proのピクセルピッチが4.63umなので、だいたいレイリー限界くらい、もしくはエアリーディスクの半分か、3分の1くらいになります。


カメラセンサーで見た場合1: レイリー限界ピッチ

さて、面白いのはここからです。Mathematica上でセンサーアレイを再現するために、Table関数を使いました。あ、本当はカラーセンサーにしたいのですが、とりあえずモノクロで考えます。まずは、センサーのピクセルピッチがレイリー限界と同じ5.56umだった場合です。ASI294MC Proでもざっくりこれくらいと同じと考えていいでしょう。

array = Table[(2 BesselJ[1, Sqrt[(x - 3.831705970207512`/2)^2 + y^2]]/
        Sqrt[(x - 3.831705970207512`/2)^2 + y^2])^2 + (2 BesselJ[1, 
         Sqrt[(x + 3.831705970207512`/2)^2 + y^2]]/
        Sqrt[(x + 3.831705970207512`/2)^2 + 
          y^2])^2, {y, -3.831705970207512` 3, 3.831705970207512` 3, 
    3.831705970207512`/1}, {x, -3.831705970207512` 3, 
    3.831705970207512` 3, 3.831705970207512`/1}];

plot = ArrayPlot[array, Frame -> True, FrameTicks -> Automatic, 
  ImageSize -> 1.95/2 -> {50, 50}, PlotRangePadding -> 0.12, 
  PlotLegends -> Automatic,  ColorFunction -> ColorData["GrayTones"], 
  PlotRange -> All]

rayleigh_CMOS

まあ予想通りというか、全く分離できていません。横に広がっているだけに見えます。この場合はたまたまピクセルの中央がちょうど二つのエアリーディスクの中心と一致した場合です。ピクセルの境がエアリーディスクの中心と一致した場合はどうなるかというと、

rayleigh_CMOS_border
と、こちらも2ピクセルが同じような明るさになりますが、横長に見えるだけなのは変わりません。


カメラセンサーで見た場合2: レイリー限界の半分のピッチ

では次に、ピクセルピッチをレイリー限界の半分の2.78 [um] にしてみましょう。

rayleigh_CMOS_half
これは劇的な変化です。完全に二つのエアリーディスク光源が分離できます。

この時点で言えることは、レイリー限界よりピクセルピッチを小さくすることで、まだまだ鏡筒が持っている分解能のポテンシャルを引き出すことができる可能性があることを示しています。


さて、調子に乗ってもう少し試します。ピクセルピッチをレイリー限界の3分の1にした場合です。

rayleigh_CMOS_one_3rd
当然ですが、まだ分解能は上がります。さて、どこまで分解能が上がるかと言うと、理想的には一番上の図のようなところまで見えるのですが、実際にはそんなことはなく必ずいろんな制限があります。

まず、オーバーサンプリングの時に出てくるエイリアスの効果は入っていないので、実際にはゴーストのような像が出てくる可能性があります。また、シンチレーションが悪い、地面の揺れや風などで鏡筒が揺らされている場合は、このような改善は全く得られない可能性があることは言うまでもありません。特に長時間露光が必要なDSOなどの撮影では、揺れの効果が積分されるので、ピクセルピッチをあげても鏡筒の性能を引き出すことは難しい場合もあることを忘れないでおきたいです。

逆に、惑星や月のように明る天体を短時間露光で動画などで多数枚画像をスタックすると、シンチレーションの影響などを小さくすることができ、今回検証したようなピクセルピッチを小さくすることで分解能の改善が期待できるような理想的な状態に近づくのかと思います。


実際のカメラのピクセルサイズで

最後に、前回試したASI294MC ProとASI178MCのピクセルピッチで計算してみます。ただし、これらのカメラはカラーセンサーで、4ピクセルを使って3つのカラーの画素を出すので、分解能は上のモノクロのものよりも更に悪くなるはずです。本当はカラーセンサーをシミュレートしたかったのですが、ちょっと力尽きました。なので、以下の結果は参考程度で、実際にはこれの倍くらい分解能が悪くなると思ってください。


ASI294MC Proでピクセルピッチが4.63umの場合:

rayleigh_CMOS_294
ピクセルピッチがレイリー限界の時とほとんど変わらない結果ですね。

次にASI178MCの場合で、ピクセルピッチが2.4umのときです。

rayleigh_CMOS_178
これもピクセルピッチをレイリー限界の半分にした時の結果とほとんど変わらないです。。

繰り返しになりますが、これはモノクロセンサーと仮定し計算した時のものなので、カラーセンサーにした時には分解能が更に倍悪くなります。そのためピッチを小さくする効果はもっと大きくなるのかと思います。


まとめ

簡単な検証でしたが、ピクセルピッチを小さくするのは分解能を上げるのまだまだ有効で、特にシンチレーションの影響を避けることができる惑星や月の撮影では効果が高いと思われます。ただし、ピクセルサイズを小さくすると一般的に感度が悪くなるので、特にDSOなどの暗い天体をラッキーイメージングなどで撮影する場合には、実質損をしないかどうかきちんと検討する必要があります。

また、センサーのピクセルサイズを小さくする代わりに、バローレンズで像を拡大して相対的にピクセルピッチを改善する方法もありますが、これも拡大することで明るさを失っていきます。天体の明るさ、鏡筒の口径とF値、カメラのピクセルピッチ、カメラの感度、露光時間、シンチレーションなどが複雑に絡んで実際の分解能に結びつきます。今回検証したのはその中のごくごくほんの一部です。

いつも思うことは、何が問題になっているのか、何が性能を制限しているのかを考え、そこを叩くことが重要なのかと思います。


先日の撮影結果から、ファーストライトでVISACにASI294MC Proで撮影した際にはピンボケだったのではないかというお粗末な結論だったのですが、一応再度検証です。

この日は月齢13.5日、ほぼ満月に近いです。アペニン山脈を含んで撮影をし、これを以前の画像と比較します。


撮影条件

鏡筒: Vixen VC200L (口径200mm, 焦点距離1800mm)、通称VISAC
架台: Celestron CGEM II
センサー: ZWO ASI294MC Pro
フィルター: なし 
日時: 2019年8月14日、23時5分から
場所: 富山市下大久保
月齢: 13.5

露光時間4ms、ゲイン120、RAW16で1000フレーム撮影して、上位25%の250枚をAutostakkert!3でスタックします。Registaxで細部を出し、Photoshop CCでしあげます。


前回はピンボケだったのか?

まずは、今回撮影したものと、同条件で前回撮影してピンボケだったと思われるものの比較です。

comp_VISAC_focused
明らかに同条件での撮影で、今回の方が解像度が高いので、前回はピンボケだったと結論づけていいと思います。


ASI294MC Proのセンサーの分解能は足りているのか?

次に、今回ASI294MC Proで撮ったものと、前回ASI178MCで撮ったものとの比較です。1素子のサイズがそれぞれ4.65umと2.4umで、ASI178MCの方がより細かいです。比較してみます。

comp_VISAC_294_178
やはり明らかにASI178MCで撮った方が分解能が出ています。この時点で、左のASI294MCProで撮影した方は(ピンボケの可能性は捨て切れませんが、それでも相当気を使って合わせたので)、アンダーサンプリングのためカメラのセンサーの素子の細かさで制限されてしまっていて、鏡筒が持つ分解能を活かしきれていないと結論づけることができると思います。

その証拠の一つとして、上の画像の右のASI178MCで撮ったものをPhotoshopで解像度を約2分の1(正確には2.4um / 4.65um = 0.516倍)にして、もう一度もとの画素数に戻したものと比較します。

comp_VISAC_294_178low
これで見る限り、ASI178MCの解像度を半分にしたくらいで、かなり分解能は一致しているように見えるので、ASI294MC Proでの撮影結果も素子サイズ相当のものが得られていることがわかります。言い換えると、ASI294MC Proでの撮影はまだ工夫することによって分解能を上げることができそうだということです。


考察と結論

以上の結果から、VISACに素子サイズ4.65umのASI294MC Proで直焦点で撮影した場合、アンダーサンプリングで、センサーの素子の細かさが足りていないため、VISACの持つ光学的な分解能に達していなくて、その性能を引き出しきれていないことがわかりました。

今回は実際の画像でそのことを確認したのですが、定量的に理屈とどこまであっているかも時間があれば検証したいと思います。


今後の課題

さて、VISACの性能を生かすためには、素子のサイズが小さいセンサーを選ぶ必要がありますが、当然素子が小さくなれば感度は落ちます。例えばASI224MCとASI294MCは素子サイズがほぼ同じなので同様の感度がありますが、ASI178MCは素子サイズが小さいため、実際に試してみたところ感度は4分の1程度しかありません。





もしくは、ASI294MC Proのサイズの大きさと感度を生かすためには、バローレンズなどを入れて中心部を拡大して撮影するなどの工夫で、VISACの分解能を生かしきれると考えられます。でもバローレンズを入れることで問題が起きないかなど、実際にきちんと検証する必要がありそうです。



最後はお月様の全体像

さて、せっかく満月に近いの日の撮影だったので、2枚をモザイク合成して全体をが見えるようにしてみました。合成はMicrosoftのICEを使いました。

2019-08-14-1406_4-Capture__lapl3_ap14709_RS_stitch
解像度もそこそこあるのでかなりシャープな月になったと思います。

仕事前の最後の休日の夜でしたが、澄んだ空で、明るすぎるくらいの大きな月がものすごく綺麗でした。


お盆休みの月曜日、昼からずっと空全体にかかっている薄雲が恨めしく、夕方以降何度外に出ても月がボヤーッと朧(おぼろ)状態です。ペルセウス座流星群が最盛期だとしてもこの月の明るさと、さらに雲なので何もやる気が起きず、もう寝ようかと思って22時頃外に出ると、雲がだいぶ無くなっていて月もキリッとしています。ここは気を取り直してVISAC君ことVC200Lのテスト再開です。

アペニン山脈の分解能

最初に試したかったことは、前回のファーストライトの時に撮影したアペニン山脈が、なぜ過去に撮影したC8で撮影した時の分解能にはるか及ばないかを調べることです。

comp_C8_VISAC
左のC8で撮った方がはるかに解像度が良いです。

口径は同じ200mm、C8の焦点距離は2000mmでVISACが1800mmなので高々1割の違い。それで解像度が大きく違うとは全然思えません。ましてやスポットダイアグラムの優れているはずのVISACが大きく劣るとは、なかなか不思議な結果です。一番大きな違いはカメラで、C8はASI178MCで1素子のサイズが2.4um、VISACがASI294MC Proで1素子のサイズが4.6um。2倍近く178の方が細かく撮れるはずですが、それだけで上の比較写真くらいまでの違いが出るものなのでしょうか?他にもピントがどれくらいあっているか、シンチレーションが違うのかなどもあるかと思います。

このナゾを解くため、今回はVISACにASI178MCを取り付けて、同様な画角で写してみます。撮影条件は12.5msec露光で、ゲイン120。1000コマ撮影して25%、上位250コマをスタックしました。その結果が以下になります。

Capture_ 23_34_49_23_34_49_lapl3_ap2661_RS_cut
VISACにASI178MCを載せて撮り直し。きちんと分解能が出ています。

月齢11.5日で満月に近く、陰影はあまりないですが、解像度は相当上がったように見えていて、C8で撮影したものにほぼ差し迫っていると思います。ということは少なくともASI178MCで同条件で撮影したら、以前C8でとったかなりの解像度までは迫ることができるということがわかりました。ただし、(これは最後の解析までしてやっと気付いたのですが)まだ少なくとも同じくらいのものが撮れたというだけで、この時点では他の条件の違いの可能性もあるので、カメラの違いかどうかの確証はありません。

と、ここでふと思いました。VISACでM57をASI178MCで撮ったらもう少し分解能が上がるのではないかと。


M57の中心星を出す

やることは単純です。VISACでカメラをASI178MCにして撮影するだけ。ただしセンサーサイズが1/1.8インチと小さいので見ている範囲がせまく、導入に少し苦労します。露光時間は10秒にして、ゲインは470と高めです。これはASI178MCの感度がいつも使っているASI294MC Proなどに比べて約4分の1と低いため、ある程度の露光時間をかけて、かつゲインも上げてやらなければ、そもそも満足に写りもしないからです。

とりあえず、10秒一枚の撮って出しを見せます。オートストレッチをかけてあるだけです。

Capture 00_59_11_Stack_16bits_7frames_70s
中心星がこんなに点で出るのは初めてです、

一枚なのでノイジーなのは仕方ないとして、驚くべきことにM57の中心星と隣の星がほぼ完全に点になっています。これまでこんなに点になるとは、考えることさえできなかったレベルです。

この時点でも、おむすび型の星像はまだ残っています。でも前回のテストは1秒露光で鏡筒が持っている星像がかなりそのまま出ていたはずですが、今回は10秒露光なので機材の揺れやシンチレーションで積分され、オリジナルな星像は鈍って多少真円に近くなっています。

これをスタックして画像処理をしてみます。Live Stackで6枚の60秒分の画像をSharpCap上でスタックし1枚の画像としそれを45枚、すなわちトータル45分の露光時間となります。ダーク補正は撮影中にリアルタイムでしてありますが、フラット補正とバイアス補正は今回省略しています。その結果が以下になります。

integration_DBE_PS2
中心星はOK、でも星の形がやはりいびつ。

M57の中心星と隣の星に関してはかなり満足なレベル。M57の12時方向の2つの距離の近い星も、何の苦労もなくはっきり分かれています。

フラット補正をしていないので、背景はグチャグチャで適当にごまかしています。こうなってくると星像のアラがどうしても目立ちます。次はおにぎりさんの改善を目指すことにします。今情報を集めてますが、少なくとも改善の方法はありそうなことがわかってきました。こちらはもう少し実践してからまた記事にします。


考察

さて今回の疑問は、1素子のサイズが高々2分の1もいかないくらいになっただけで、こうもいろいろ変わるのかということです?

いろいろ考えたのですが、なかなかこの差を説明することができなかったので、頭を切り替えて、C8で撮った画像をどれくらい解像度を落とすとVISACで撮ったのと同程度になるのか試してみました。

1素子のサイズ比 = 46./2.4 = 1.93なので、まずはC8の画像の解像度を1.93分の1にしてやってみました。でも結果はまだ全然、あからさまにC8のほうがいいです。やはり高々2倍くらいの素子のサイズ違いでは全く説明できないです。

そこそこ合うなと思ったレベルはC8の画像の画素数を一辺で8分の1にしたとき、すなわち3128 bx 2014 pixelの画像を、Photoshopで一旦391 x 263 pixelにまで落として、それをバイキュービック法で再び3128 x 2014 pixelに戻したくらいの相当荒い画像でやっと一致するということです。以下がその画像になります。

comp_C8_VISAC_x8
最初の画像の左のC8の方の分解能を8分の一くらいに悪くして、
やっと前回とったVISACと同等です。

これくらいまで落として、やっとVISACの画像と同程度か、下手をしたらまだいいかもしれません。流石にこれだけの違いをカメラの解像度だけで説明するのは無理なので、今回はおそらくVISACで最初に撮った画像がピンボケだったと言うくらいしかないです。ただし、VISACの方は視野の端で撮ったからという影響も無いとは言い切れていません。

ピンボケだったとするとまあ間抜けな話なのですが、でもこれはある意味怪我の功名で、少なくともカメラを代えたりしたり手間をかけての検証でしたが、M57の解像度を上げることにはつながったことになります。

じゃあM57の画像もピンボケだったのかと言うと、どうやら多分そうだったみたいです。今回VISACとASI178MCで撮った画像の解像度を半分くらいに落としましたが、まだまだ中心星も全然点像で十分な解像度があります。こちらも解像度を6分の1くらいに落としてやっと前回撮影したM57と同レベルになりました。

comp_camera
こちらも前回のASI294に一致させるためには、
解像度を6分の1くらい悪くする必要があると言う結果です。

こちらもこれだけの違いを、カメラの1素子のサイズの違いだけで説明することはやはり困難かと思います。前回はファーストライトでまだ慣れてなくてピンボケで、今回は気を使ったと言うことになるかと思います。


まとめ

でもまだ本当にピンボケだったのか、100%そうかと言われるとイマイチ自信がありません。今回のASI178MCの点像の出方が良すぎるからです。もしピント問題だったとすると、ピント位置は結構シビアな可能性が出てきます。今一度VISACにASI294MC Proをのせて、M57できちんとピントを合わせて見てみるなどすると、単にピント問題だったのかがより確定すると思います。

また、C8やMEADEでも例えばASI178MCを使えば同じように解像度よく出るのか、それともやはりVISACだけがすごいのか、まだもう少し検証してみたいです。

うーん、でもかなり楽しくなってきました。いままでC8とMEADEで全く無理だったこの点像。少なくともこの点像を出せるだけでもVISAC侮れないです。


原村星まつり直前、なぜこんな時に!?と生えてきたVixenのVISACことVC200L。梅雨の間ずっと我慢していたのですが、最後の最後でポチリヌス菌に感染してしまったようです。原村星まつりであまり買い物が進まなかった理由の一つがこれです。予算が厳しかったのです。




購入の理由

とにかくやりたいのがDSO(Deep Sky Object)、すなわち系外銀河などの長焦点での撮影です。長焦点でシャープな星像を撮影することができる鏡筒をずっと探していました。ラッキーイメージももう少し試したくて、短時間露光で揺れを排除して星像を絞る時に、シャープでないと意味がないという理由もあります。安価で、ハズレでなさそうなVC200Lが出るのをずっと待っていました。


手持ちのシュミカセはダメなの?

手持ちの機器のうち、長焦点に相当する鏡筒が口径20cmのCelestronのC8と、口径25cmのMEADEのLX200-25のF6.3仕様のもので、いずれもシュミカセ(シュミットカセグレン) です。シュミカセはシュミット補正板を入れた、カセグレン式の、鏡筒の長さを短くしたもので、重量も大したことなくコンパクトで扱いやすく、広く出回っている鏡筒です。

オリジナルのシュミットカメラは、球面収差とコマ収差と非点収差を解決しているいわゆるスチグマート条件を満たしていて性能的に有利である一方、鏡筒が巨大になる、撮像面を湾曲させなければならないなどの扱いにくさもあるおかげで、市販品としてはコンパクトなシュミットカセグレン式の方が圧倒的に数が出ています。一方、そのコンパクトさを実現するために、性能的に必ず妥協をしていて、スポットダイアグラムも星像が肥大していて、比較するとその違いはすぐにわかります。特に四隅に出てくるコマ収差は非常に目立つため、シュミカセの撮影は惑星などの中心像を生かすものが主となっています。

最近ずっと触ってきたLX-200-25ですが、スポットダイアグラムがあまり出回っていないのではっきりとはわからないのですが、F値が6.3と小さいこともあり、コマ収差が大きいです。コマ収差はF値の-2乗で効いてくるので、F10のC8に比べコマ収差は(10/6.8)^2 = 2.5倍にもなります。星像が単純に2.5倍伸びてしまいます。そのため撮影する場合にはコマコレクター が必須なのですが、質の良いものはコマコレクターだけでも高額なので、私はバーダーのMCPP MarkIIIを使っています。これはF値が6までしか対応していないのですが、F6.3のMEADEに入れてもある程度の改善があることがわかっています。

コマはある程度許容範囲に収まるのですが、もう一つの問題が片ボケ。光軸調整をしても、どうしてもいつも同じ側の片ボケが残ってしまいます。主鏡の向きがずれていると考えられるのですが、こちらはいつは直したいと思っていますが、全バラに近い形になるはずなので今は躊躇しています。

あとMEADEのシュミカセは少し重いこと。同サイズ(実際には少し違いますが)のセレストロンと比べると、無視できないくらいの重さの違いがあります。手持ちの赤道儀がCGEM IIなのですが、撮影をしようとすると鏡筒が大きく重いので慣性モーメントが大きくなってしまい、共振周波数が下がり揺れの振幅が大きくなるので、大きさとしてはギリギリか本当はもう少し頑丈な赤道儀が欲しいところなのです。

一方手持ちのC8は軽くて良いのですが、やはりスポットダイアグラムを見ると、シュミカセゆえどうしても星像はボテッとなってしまうのは避けられません。星像を改善するために、接眼側に補正レンズを入れたEdge HD800という同じ口径20cmのものが販売されていて、こちらも購入の候補の一つでした。


VISAC以外の候補

VC200L以外ではHD800が第一候補で、一時は新品で購入しようと思っていた時期もありました。

他の候補として、特に反射にこだわっているわけではなく、屈折でも構いません。スパイダーの光条線があまり好きでないので、屈折か、反射でも副鏡がスパイダーでなく補正板で固定されているものを探していました。でも屈折で大口径で長焦点でスポットダイアグラムが小さいのは、これまた値段的に全く手が出ないので、現実的な候補はなかなかありません。

他の反射では、ミューロンのCRC化されたものもかなり魅力なのですが、こちらも予算がグッとあがります。究極的にはCCA-250とかなんでしょうが、こちらは冗談でなく金額の桁があがり、今の財政では全く手が出ません。

安価に、自分の納得する範囲で満足できる鏡筒をずっと探していました。その一つの候補がVISACだったというわけです。


VISACにした理由

VISACを選んだ理由は、ひとえにものすごく鋭いスポットダイアグラムに期待したからです。Vixen独自の6次非球面の主鏡を採用したカタディオプトリック鏡筒で、バッフル内に3枚のフィールド補正レンズを内蔵、写野全域にわたってコマ収差・球面収差・像面湾曲を極限まで補正、写野周辺で星像15µmを達成しているそうです。このように宣伝文句だけ読んでいたらものすごく魅力的なのですが、悪い噂も多少聞きます。
  • 設計はものすごく良いのに、主鏡の精度が出ていなかったり、メカ的に弱かったり精度が出ていなかったりで、その設計思想を活かしきれていない。
  • 個体差で性能にばらつきがある。
などです。設計からも各種精度が必要そうなことは想像できるので、なかなか大変そうな機器なのかと思います。メーカーの方でもサポートは大変なのでしょう。

また、星像が悪かったとしても調整機構が隠されていて、ユーザーは基本的に調整することはしない方針のようです。その扱いにくさのせいか、中古で比較的安価で出回ることも多いです。今回のものは、ベルトバンドがついている古いものでしたが、専用アルミケースもついていたため収納や持ち運びにも便利で、適当な業者に回ったものではなく、天文が好きな人が昔の機材を手放したと判断。オークションで少し値が上がっても落とそうと狙っていました。

試したいのは、
  1. 設計の鋭いスポットダイアグラムは、シュミカセのボテっとした(と私は少なくとも思い込んでいる)星像と比較して本当にシャープな星像を結ぶのか?
  2. 調整機構がないが、もし星像がダメなら調整できるのか試してみたい。
といったところです。特に調整は全バラでも構わないと思っています。


いよいよファーストライト

さて、実際のフーストライトです。梅雨が明けてもなかなか晴れなかったのですが、昨晩22時過ぎは夕方に一面を覆っていた雲もすっかり消えました。上限過ぎの月も残っているので、撮影もあまりする気にならなく、むしろ絶好のテスト日和です。今回のファーストライトは自宅の庭で試します。架台はCGEM II。MEADEと比べてかなり軽いので、赤道儀としての強度は十分です。

IMG_7751

最初にアイピースで月を見てみました。アイピースはCelestronの8-24mmのズーム式で簡易なもの。雲間からの月ですが、像は非常にシャープという印象です。月と空のエッジを見ても色収差もほとんどありません。これはもしかしたら結構期待できるのかもしれません。

ピントの範囲もそれほどシビアではありません。減速機はあった方がいいですが、なくてもなんとかなりそうです。

テストがてらASI294MC Pro(冷却はしていない)で月の動画撮影をしてみました。テストなので極軸もきちんととっていないし、カメラの向きも適当です。1000枚をスタックしたものが以下になります。

Capture_ 22_42_33_22_42_33_lapl3_ap7557_RS2

画像を見ている限り、非常にシャープで特に問題になりそうなところはありません。以前撮ったFS-60CBの画像と比べても十分な解像度が出ています。

と思っていたのですが、以前C8で撮ったアペニン山脈付近を何気に見直してみましたら、こちらの方がはるかに高解像です。

comp_C8_VISAC

理由はいくつか考えられます。C8とVISACの焦点距離は2000mmと1800mmとそれほど変わらないはずですが、まずC8の時の撮影に使ったASI178MCの一素子のサイズが小さい(2.4um)ので、解像度は上がるはずです。しかもセンサーの大きさそのもが小さいため、C8の視野の中心部だけを撮っています。今回VISACで撮ったアペニン山脈はASI294MC Proが素子サイズの大きい(4.6um)センサーで、かなり視野の端を撮ったので、不利な点があるのは理解できます。でもそれだけでは説明できないくらい、C8の方が高解像度です。まあ、結論としては今回の撮影はピントが出ていなかったのではないかと。もしかしたらピントの範囲がもっと狭いのかもしれません。ここは一度カメラなども同条件にしてもう少し検証します。


気づいたこと

最初の操作でいくつか気づいたことがあります。
  • まず、とにかく軽い。MEADE 25cmよりははるかに軽いです。C8より軽く感じたくらいですが、実際にはC8が5.6kg、VC200Lが6.9kgとVISACの方が重いです。ベルトがついていたから持ちやすいのかもしれません。
  • 上にL字の小さな架台が付いていて、1/4インチのタップが切ってあるので、極望用のCMOSカメラなども載せることができます。
  • フォーカサーが結構ゆるいので、天頂付近に向けるとカメラの重みでずり落ちてきてピントがずれてしまいます。フォーカス固定ネジもあるのでいいのですが、もう少し固くてもいいかと思います。
全体的にちょっとヤワな気がします。値段から言ったら仕方ないでしょうか。その他は今の所不満などありません。


星像はどうか?

では肝心な星像はどうでしょうか?試しに、M57周りを撮影してみました。こちらも極軸もカメラの向きも適当で、ガイドも何もしていないので、露光時間を少し伸ばすと流れてしまいます。とりあえずASI294MC Proで常温、露光1秒、ゲイン470でRAW16をtifファイルに落とし、PixInsightでオートストレッチしてjpegに落としてあります。

Capture_00002_23_10_13_23_09_11_RGB_VNG


四隅の画像も載せておきます。これまで4隅250ピクセルを切り出していましたが、スターベース のタカハシ鏡筒の実写画像に準拠し、300ピクセル切り出しにし、枠線を少し細くしました。

Capture_00002_23_10_13_23_09_11_RGB_VNG_8cut

露光時間わずか1秒なのでノイジーなのは仕方ないとして、これを見る限り、コマ収差はほとんど出ていないし、四隅の星像も悪くありません。真ん中はM57の中心星と、その隣の星も普通に写っています。これは結構すごい。シンチレーションの具合もあるとは思いますが、やはりVISACのスポットダイアグラムはダテではないかもしれません。

この画像スタックすればもっとはっきりするはずです。同じ1秒露光をser形式のRAW動画で1000枚撮影し、上位600枚の計10分をAutoStakkert!3でスタックしてみました。画像処理は簡易なものです。

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中心星もそこそこシャープに写っていて、四隅の崩れもありません。まあまあかなと思っっていたのですが、星を拡大するとどうもきれいな円になっていないことに気づきました。

Capture_00_19_48_00_19_48_lapl5_ap3050_DBE_cut

どの星も三角形に近い形をしています。星像としてはダメですね。一枚取りに戻ってよく見ると、星はやはり同様の形をしていることに気づきました。

ただし、この画像は1秒露光をスタックしたものでかなり鏡筒本来が持っている星像をそのままの形で表しています。これが10秒とかもっと長い時間露光した場合には機材の揺れやシンチレーションによるブレのためにこの三角の形は目立ちにくくなります。ただし、ラッキーイメジングを想定もしているので、短時間露光で星像が丸になるに越したことはありません。

また、これまで撮影したMEADEのコマ収差や片ボケよりはすでにはるかにましです。このことも考慮して、どこまで突き詰めるかを検討する必要があります。


まとめ

というわけで、星像に関して残念ながらはラッキーイメージングを考えた場合は許容範囲外と言っていいと思います。四隅まで鋭くて、途中結構期待していたのですが、最終的にはちょっとショックでした。気を取り直して調整の方法を探ることにします。少しだけ調べてみると、VC200Lではこのおにぎり型の星像が出ることが結構あるようです。どうも原因はネジの締めすぎ。また、コメントからの情報でスパイダーの影響が結構合って、星像が四角くなることもあるそうです。

原因がわかっていればとりあえずなんと取り除くては考えることができそうなので、まずは一安心です。先人の方達の知恵がありそうなので、一度中を見てみて調整がうまくできるかどうか探りたいと思います。



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