ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:鏡筒 > FC-76

新月期、天気が良かったので平日ですが、自宅で撮影しました。ターゲットは季節柄、M31アンドロメダ銀河としました。アンドロメダ銀河の撮影は、なんと4年ぶりとなります。4年でやっと最初に戻った感じでしょうか。


そろそろ2巡目

4年前当初は、まだ星を始めたばかりで、初めてオートガイドが成功したと喜んでいた頃でした。当時はすごくうまく出てきたと思っていたアンドロメダも、流石に色褪せて見えてきました。そろそろこれまで撮影したメジャー天体の再撮影をしてもいい時期なのかもしれません。

今回の撮影の目的は2つあります。
  • 一つは、4年経ってどれくらい進歩したのかをみること。
  • もう一つは、4年前の撮影が数河高原と環境が格段良かったのに対し、今回は自宅で数段劣る空でも銀河撮影に耐えうる環境なのかを見極めること。
機材も画像処理の技術も進歩したはずです。少なくともカメラはAPS-CのEOS 60DからフルサイズのEOS 6D、鏡筒はFS-60CBから、FC-76と少し口径アップです。ですがこのFC-76、レンズが白濁してるやつです。果たして上手く写るのか?まあ、これまでHαはうまく出てるので、なんとかなるでしょう。

自宅なので空の環境が4年前より悪い代わりに、平日にもかかわらず撮影時間は朝まで気にしないで長時間できることはメリットになります。これがどこまで有利に働くか?うまく撮影できるなら、休日前に遠征に行くか、平日でも自宅で撮るかで、おそらく後者の方が圧倒的に撮れるチャンスは増えるはずです。


撮影開始

セットアップは順調で、19時半頃には撮影を開始できました。ちなみにフィルターは無し。最初CBPを入れてテスト撮影しましたが、流石に銀河部分もかなり暗くなるので、CBPは外しました。カメラが6Dなので、フィルターは鏡筒のフォーカサー付近につけるしかなく、この大きさで他に使えるフィルターもないため、今回はフィルター無しでの撮影としました。後の結果を見ると、フィルターなしでも十分戦えそうです。

でも後で見てみると、低空で北向に近い19時台と20時台は背景が明るすぎたので、ばっさり捨てました。富山の北は街明かりでかなり厳しいです。天頂付近と比べて明るさが倍以上違います。最初3分露光のISO1600でヒストグラムのピーク位置が半分くらいまできてたのでISO下げるか迷ったのですが、下げなくて良かったです。一番暗い時はピーク位置で25%以下にまでなってました。

19時の撮って出しJPG:
M31_LIGHT_180s_ISO1600_+22c_20201020-19h36m14s797ms
最初これを見た時、あー自宅はやっぱりダメだなと思いました。流石に淡すぎる気がします。

PHD2でのガイドは極めて安定でした。RMSで1秒程度、ピークでも数秒です。
BA6EAFC8-6F33-4859-AC18-3AA4F19626FA

今回は6Dでの撮影なのでBackYardEOS(BYE)を使いましたが、途中3回くらい停止しました。PHD2からのDitherが始まるか終わるかするところで泊まるみたいです。どうもPCの負荷と関係あるようで、プロセスを見るとなぜか「System」が異常に高いCPUパワーを食っていました。後日、なにもUSBに繋げずに立ち上げ直した時はそんな負荷はなかったので、何か撮影時につないでいるものが悪さをしているようです。6DでもNINAに乗り換えた方がいいのかもしれません。

結局画像処理使ったのはBYEが止まってたのを復帰させたあとの21時半頃から、翌日の午前3時半頃までの、91枚。3分露光なので273分で、4時間半ちょっと分です。

0時頃、天頂付近の撮って出しJPG:
M31_LIGHT_180s_ISO1600_+17c_20201020-23h59m04s734ms
時間が経つにつれかなりマシになっていきました。まあこれならなんとかなるかもと思い始めました。あとは長時間で枚数を稼ぐのがどれだけ効いてくるか?ちょっと楽しみになってきました。


画像処理と結果

画像処理はいつも通りPIで、途中からPSに渡します。
  • ライトフレームが3分で91枚。
  • 後日同様の時刻に外で鏡筒に蓋をして撮影したダーク66枚。
  • フラットを障子越しに同じISOの1600で1/400秒で100枚。
  • 今回はWBPを使ったのでフラットダークも撮影しました。こちらもフラット撮影の時間が短いので簡単で、フラット撮影後そのまま蓋を閉じ、暗いところにもっていって同様の設定で撮影するだけです。
  • バイアスは以前撮ったものを流用。
全部をPIのWBPに放り込み、しばらく待ちます。1時間もかからなかったでしょうか、できた画像をとりあえずオートストレッチだけしてみます。

masterLight-BINNING_1-FILTER_NoFilter-EXPTIME_180.5

うん、悪く無いですね。

画像処理の手順は
  1. フラットで補正し切れてない所をDBEで滑らかに
  2. PCCで色合わせ
  3. 恒星の色を出したいので今回はArcsinhStretchでストレッチ
  4. StarNetで恒星部と分けて
  5. あとはPSで炙り出し
  6. DeNoiseでノイズ除去
くらいです。出来上がりは下のようになりました。色はタカsiさんのM31があまりに綺麗だったので、参考にさせてもらいました。

「M31アンドロメダ銀河」
masterLight_DBE1_PCC_AS_all4
  • 撮影日: 2020年10月19日21時37分-20日3時40分
  • 撮影場所: 富山市自宅
  • 鏡筒: タカハシ FC-76 (口径76mm, 焦点距離600mm) + FC/FSマルチフラットナー(x1.04)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • センサー: Canon EOS 6D HKIR改造
  • ガイド: PHD2 + f=120mmガイド鏡 + ASI290MMによるディザリング
  • 撮影: BackYard EOS, ISO1600,  露光時間: 300秒 x 91枚 = 4時間35分
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC, DeNoise

ついでにAnnotationです。
masterLight_DBE1_PCC_AS_all4_Annotated

どうでしょうか、タカsiさんのと比べるとまだまだ全然ですが、自宅でFC-76(しかも白濁で格安)でここまで撮れたのなら、私的にはまあ満足です。恒星の色もきちんと出ています。4年前の撮影より空は格段に劣るにもかかわらず、ありとあらゆるところで更新できたと思います。画像処理の技術もそうですが、5時間近くを平気で撮影できるようになったというのも自分の技術の進歩かと思います。やはり4年は大きいですね。

反省点としては、赤ポチがやはり出ないところでしょうか。これはHαだけ別撮りして足すとかしないとダメなのかもしれません。

ちなみに4年前のはこんな感じ。アラもたくさんあるのは当たり前ですが、画像処理も含めて随分頑張っていたことを思い出します。

b6f6ef8a

あと、今回の画像処理はすごく楽でした。5時間近くの露光になるとやはりスタックされた画像はかなりのクォリティーになるのでしょうか、あまりいじったり強調したりすることなく、無理なく細部も出てきます。これなら個人で撮影して喜んでいる分には十分です。一晩を目処に自宅で、というのをしばらく続けてみたいと思います。

実はもう少し、初期の頃に撮ったM42とかをTSA-120と6Dで真面目に撮り直してみたいです。でもまたしばらく天気が悪く、回復するのは上弦の月くらいのようです。


年末の土曜日、次の日もまだ仕事があったのですが、夜から晴れてきたので撮影開始です。ターゲットはバラ星雲。過去に何度か挑戦していますが、いまだに満足したのは撮れていなくて再チャレンジです。


天気は微妙

この日は天気予報では午後蔵から晴れる予定でした。でもずっと曇り空が続いていて、1時間天気予報も時間と共に曇りの時間が後ろに下がっていって、なかなか晴れません。夕方もダメ、夕食前にいったん晴れてご飯食べてから外に出るとまた一面曇り。のんびりして夜21時頃に出ると星は見えるけど薄曇り。22時過ぎにもう寝ようかと思って最後外に出ると、やっと晴れてました。すぐに準備を始めます。

機材

バラ星雲だと画角的に600mmとフルサイズでぴったりくらいなので、この日はいつものFS-60Qではなく、同じ600mmのFC-76を持ち出すことにしました。あの白濁レンズのFC-76です。

  • 鏡筒: タカハシ FC-76 (口径76mm, 焦点距離600mm、対物レンズが白濁) + FC/FSマルチフラットナー(x1.04)
  • 赤道儀: Celestron CGEMII
  • センサー: Canon EOS 6D HKIR改造
  • フィルター: サイトロン QBP(Quad Band Pass) filter
  • 日時: 2019年12月29日0時52分-44時17分
  • 場所: 富山市下大久保
  • 月齢: 22.1、ほぼ下弦の月
  • 撮影対象: バラ星雲 (The Rosette Nebula 、NGC 2237-9, 2246、Caldwell 49)
  • 露光時間: 300秒 x 32枚 = 2時間40分

いつも通りSharpCapとASI178MCで赤道儀の極軸を合わせて、その後はコンパクトなStickPC上のBack Yard EOSで撮影、その画像をAll Sky Plate Solverで位置特定して、赤道儀の向きとの誤差をCarte du Cielにフィードバックして位置合わせをします。

でもここでトラブル。この状態でプレビューをすると何故か画面が流れています。PHD2で見ていてもターゲット性自身がどんどんずれていく始末。極軸の精度がものすごく悪いのか、赤道儀のトラッキングレートが恒星時以外になっていないか、ケーブルとか変なテンションはかかっていないかなど、いろいろチェックしましたがラチがあきません。諦めて最初からやろうと赤道儀をホームポジションにしようとしたのですが、何故か少しだけ動いてすぐに止まってしまいます。これは先日交換したバッテリーが悪いのかと一瞬疑いましたが、それも大丈夫そう。さらにCarte du Cielで自動導入しようとしても同じ様に少しだけ動いてすぐに止まってしまって、全然目的の天体まで行きません。何かおかしいです。

この時点でやっと、CMOSカメラからのガイドケーブルと、赤道儀のハントコントローラーにPCからつないであるケーブルを引き抜くと、きちんとホームポジションまで動くことが判明しました。どうも機械系のトラブルとかいうよりは、ソフト系のトラブルのようです。そもそもASCOMドライバーにBack Yard EOS、All Sky Plate Solver、Carte du Ciel、PHD2と合計4つのソフトがアクセスしています。一度全部落として、Back Yard EOSは立ち上げてもASCOMに接続させず、All Sky Plate Solver、Carte du CielだけASCOMに接続して位置特定と赤道美の位置合わせ、その後All Sky Plate Solver、Carte du Cielを落としてからPHD2でASCOMにつないでガイドとしたら、無事に動き出しました。やはり全部をASCOMに繋いでしまうと赤道儀の制御の取り合いになってしまう様です。

あ、あと位置合わせで少しトラブルがありました。All Sky Plate Solver、Carte du Cielどうしても位置のズレが出てしまいます。画角の横幅の5分の1くらいでしょうか、今回バラ星雲の中心がどうしてもずれてしまいます。何度やっても同じようになります。こちらは仕方ないので、マニュアルで少し動かして最終位置調整をしました。以前はこんなことはなかった気がしますが、また時間のある時にテストし直してみます。

トラブルで撮影開始個を遅くなってしまいましたが、その後の撮影は順調そのもの。QBPのおかげもあり、自宅でもISO3200で5分まで露光させられます。後は放っておいて寝るだけです。

あさ8時ころに片付けたのですが、赤道儀用のパワータンクは中のバッテリーを交換したこともあり、全く問題なく朝でも稼働していました。その一方、デジカメのバッテリーが朝の5時半頃に切れてしまっていました。でも朝方少し雲が出たようで、実際に使えたのは4時半頃の画像まで。2時間半以上撮影できたので十分な時間です。


画像処理

まずはJPG撮って出し一枚画像です。苦労した魔女の横顔と違い、一枚だけでも十分に見えています。

ROSE_LIGHT_6D_300s_3200_+5cc_20191229-02h10m36s201ms

今回は期待できそうなので、最初からフラットもダークも撮影しました。フラットはiPadのColor Screenというアプリで白色最大輝度にして、ISO100、露光時間100mm秒で100枚ほど撮っています。周辺減光とセンサーのゴミはほとんど回避できました。当然空から来る緩やかな被りは少し残るので、PixInsightのDBEで大まかに取り除きます。

ダークも温度をできるだけ合わせる様にしました。昼までのダーク撮影で、いつもは冷蔵庫や冷凍庫に入れたりするのですが、あまり冷えなかったり冷えすぎたりするので、今回はクーラーボックスに冷凍した補正剤を入れてカメラとStick PCごと突っ込みました。機材が濡れない様に注意が必要ですが、温度はそこそこ安定していたのでこれはいい方法ではないかと思いました。保冷剤の位置を調整することで温度もある程度調整することができます。Stick PCごと入れる理由は、BackYardEOSを走らせることができて、センサーの温度をファイル名に書き込むことができて、後から温度管理が楽になるからです。温度がばらつくこともあるので、今回5分のダークファイルを100枚以上撮影し、その中で適した温度のものを37枚選びました。

画像処理も順調そのもの。QBPのせいもあり、青色が出にくいのですが、バラ星雲の中心は青色が綺麗です。少し青色を強めに強調していますが、おそらくこれまででは最も満足のいくバラ星雲になったかと思います。魔女の横顔で苦労したときのテクニックも随所に生きています。


綺麗に出た!

結果を見てください。自宅撮影でこれです。バラの細かい構造も結構出ています。私的にはかなり満足です。やはり光害地だとQBPの効果絶大です。

masterLight_integration_DBE1_PCC_AS_all2c

あえて不満を言うと、QBPのせいか恒星のオレンジ色が出にくいこと。もう少し恒星をうまく際出させることが次の課題でしょうか。

ちなみに、かなり昔に同じ6Dで自宅撮影で撮ったのがこれです。

light_BINNING_1_integration_DBE_PCC_AS1acut

2018年の3月なので1年半以上前です。違いはQBPだけのはずなのですが、本当に雲泥の差です。6Dもまだ使い始め、PixInsightも使い始めなので、もちろん慣れや画像処理の腕も違うと思いますが、こうやってみるとなんとか進化していますね。


まとめ

QBPって得意不得意があると思います。Hα領域は自然な色に近くなるので威力が発揮できるのかと思います。反面、青やオレンジは苦手な様で、自然な色に見せるためには画像処理でうまく補填してやる必要がありそうです。

魔女の横顔に引き続き、自宅で色々撮影ができる目処がついてきました。これくらい写るのなら、私的には今のところ満足です。もちろんうまく写るのは限定された天体だとは思いますが、できれば系外銀河まで自宅でうまく撮影できるようになればというのを目標にしたいと思います。


梅雨の合間にも関わらず珍しく晴れたので、久しぶりの撮影です。といっても平日なので宅撮り。

今日の課題は白濁したレンズのFC-76で撮影を試してみて、実用で耐えうるかどうかです。比較しやすいようにFS-60Qでも同様の撮影をしてみます。白濁したレンズでも電視観望では問題なさそうという結果でした。果たして撮影レベルではどうなるのでしょうか?


機材、撮影条件など

鏡筒1: タカハシ FC-76 (口径76mm, 焦点距離600mm、対物レンズが白濁) + 新フラットナー(x1.04)
鏡筒:2 タカハシ FS-60Q (FS-60CB+エクステンダー相当、口径60mm, 焦点距離600mm) 
赤道儀: Celestron CGEMII
センサー: Canon EOS 6D HKIR改造
フィルター: サイトロン QBP(Quad Band Pass) filter
日時: 2019年6月25日、22時頃から
場所: 富山市下大久保
月齢: 22.1、ほぼ下弦の月
撮影対象: M8干潟星雲とM20三裂星雲、猫の手星雲を同画角内に 


IMG_7532
FC-76のセットアップ。

IMG_7535
FS-60Qに交換後。赤道儀は反転。


FS-60Qとの共通オプション

FC-76での撮影をしてみてまず気づいたのが、これまで集めたFS-60Q用のオプション器材がかなり共通で、そのまま使えることです。
  • 具体的にはまずはカメラの回転装置。これはSKY-90用となっているのですが、タカハシのシステムチャートによるとFC-76もFS-60Qも接眼部へのネジの径が共通なために、これが標準の回転装置となります。
  • 同様に、ワイドタイプのカメラマウントDX-60Wもシステムチャートによると共通で使えます。
  • さらに新フラットナーもアダプターさえFC-76用を買い足せば使い回しがききます。アダプターは数千円と安価なので気軽に買うことができます。
実際今回撮影用途で購入したのはこのアダプターだけで、あとは何も買い足す必要がなかったのはありがたかったです。

IMG_7555
このように、FS-60CB用の機材がほぼそのまま使えます。


実際の撮影

実際の撮影ですが、久しぶりのこともあり、少し手間取りました。

今回撮影用のコンピュータとしてStick PCを使ったのですが、StickPCの動作がなぜか重い。64bit版のSharpCapはポーラーアラインメントを開始するとすぐに止まってしまいます。仕方ないので32bit版にしたら、こちらはなんとか最後まで動きました。あと、PlateSolvingで使っているAstroTortillaがうまく位置を検出してくれません。仕方ないので、All Sky Plate Solverを使いましたが、こちらは位置検出まではしてくれるものの、赤道儀へのフィードバックがうまくいきません。時間もあまりないことなので諦めて、何度かテスト撮影をして位置を決めました。でもFS-60Qに交換した時にPlateSolvingがなかったことが原因で、位置ズレと、さらにピンボケを導入してしまいます。

あと、これもStickPC関連かもしれませんが、BackYardEOS(BYE)が安定しなくなる時がありました。なぜかBYEが立ち上がらなくなること、接続はうまくいっているのになぜか撮影ボタンが押せなくなることでした。前者はPCを再起動することで、後者はBYEを再度立ち上げることで解決しました。これまであまりなかったことなので、少し気になります。

さらに、鏡筒をFS-60Qに切り替える時に、対象が南天を超えていたので赤道儀反転したこともあり、今一度アラインメントからやり直しました。その際、CGEMIIのハンドコントローラーにStickPCからのケーブルが繋がっていて電力が多少供給されていたので、赤道儀本体の電源スイッチを落としても電源が完全に落ちません。それに気づかずに、再度スイッチを入れた時にコントローラの明かりが半分暗いような状態になってしまって、あ、故障かも!と少し焦りました。電源を落として、かつハンドコントローラーに繋がっているケーブルを抜くことでこれも回避です。

これに加えて、もう一つ関連した問題が発生しました。FS-60Qに交換したた時に、鏡筒が軽くなりすぎてしまって、赤経方向の重量バランスが取れなくなり、初期アラインメントの途中でトルク不足で止まってしまうのです。ウェイトを一番内側まで持っていってもまだバランス不足でだめでした。今回はCelestronのパワータンクでなく、40000mAhくらいの大容量のリチウムイオンバッテリーを使ったのですが、このせいかもしれません。結局、ハンドコントローラーにUSBケーブルをつないで電力を少し加えたらなんとうまく初期アラインメントができました。FS-60QにCGEMIIは大げさすぎるのかもしれません。いずれにせよもう少し軽いウェイトを用意しておいたほうがよさそうです。

撮影時間はFC-76の180秒露光が10枚で計30分、300秒露光が6枚で計30分、FS-60Qでは300秒露光が6枚で同じく計30分となります。その他、ISOは全て3200で固定。撮影時間の違いの影響をできるだけなくすために、撮影対象の位置をちょうど南天を挟んで前半がFC-76、後半がFQ-60Qというようにしてあります。なので赤道儀も前半と後半で反転しています。

惜しむらくは、次の日仕事ということもあり、時間があまりなかったので、FS-60Qでのピントが少し甘くなったことです。途中で気づいてやり直そうか迷ったのですが、もう月が昇ってくるのと、対象が木の陰に隠れそうだったので泣く泣く諦めました。後で見たらやはり少し星像が肥大していました。


撮って出し

撮って出しJPG画像です。それぞれ撮影の1枚目の画像になります。このブログにアップロードするのに画像サイズが大きすぎたので、縦横2分の1に縮めました。

M8_LIGHT_6D_180s_3200_+24cc_20190625-21h59m48s127ms_cut
FC-76、180秒露光。

M8_LIGHT_6D_300s_3200_+25cc_20190625-22h45m11s577ms_cut
FC-76、300秒露光。

M8_LIGHT_6D_300s_3200_+27cc_20190626-00h42m55s063ms_cut
FS-60Q、300秒露光。星がはっきりしているように見えますが、
単にピンボケで星像が肥大しているだけです。拡大するとダメなのがよくわかります。

それぞれFC-76、FS-60Qが、干潟星雲、三裂星雲、猫の手星雲ともに綺麗に出ています。透明度は悪くなかったのですが、自宅でもこんなに出るのはやはりQBPの威力かと思います。後半のFS-60Qでは午前1時半頃まで撮影していたので月が少し上っていたはずですが、その影響もQBPのおかげかほとんど無いようです。これをみる限り、露光時間の違いによる明るさの違いはきちんとFC-76の300秒>FS-60Qの300秒> FC-76の180秒と順番通りになっていることと、FS-60Qでのピンボケ以外に、撮って出し画像ではほとんど差はわかりません。FC-76の周辺減光が少し目立ちますでしょうか。

少なくとも撮って出しだけではFC-76の白濁の影響があまりよくわからないという、ポジティブな意味です。



ダークとフラット画像

その後、次の日に180秒と300秒のダーク画像を撮影、さらにその次の日もかけてFC-76とFS-60Qのフラット画像を撮影しました。フラット画像はiPadのColor Screenというソフトを使い、モノクロ色にして最大の明るさで撮影しまして。全てISO100、露光時間1/4秒です。不思議なのは撮影条件を同じにしてもFC-76とFS-60Qでヒストグラムで見てヒストグラムのピークの位置がほとんど変わらないことです。口径で76/60=1.26倍の違いがあるので、光量ではその2乗の1.6倍の違いがあるはずです。この口径差がピーク位置に出てこないのが不思議です。

ただし、ピーク位置は変わりませんが、その広がりは雲泥の差があります。FC-76のヒストグラムがかなりブロードなのに対し、FS-60Qが非常に鋭いピークなのです。


IMG_7564
FC-76ではフラット画像のヒストグラムが広がっている。

IMG_7558
FS-60Qのフラット画像のヒストグラム。もう、全然鋭いです。

最初これが白濁の影響かと思いました。でもどうやらそれも間違いで、周辺減光の違いが大きいということがわかりました。下の画像、出すのも恥ずかしいのですが、適当にストレッチするとセンサー面のゴミがFC-76ではまだはっきり見えていないのに、周辺減光がすでに顕著です。一方FS-60Qでは相当余裕を持ってストレッチできていて、センサー面のゴミがはっきり見えていますが、まだ四隅は暗くなっていません。

IMG_7561
FC-76のフラット画像。まだあぶり出しきっていないのに、
周辺減光が大きく、ゴミもはっきり見えきっていません。

IMG_7563
一方FS-60Q。かなりあぶり出していて、ゴミがくっきり見えていますが、
まだ周辺減光は顕著ではありません。

これはちょっと意外でした。単純にFC-76のほうが口径が大きいので、周辺減光も余裕があると思っていたのですが、カメラの絞りと同じで、より絞ってあるFS-60Qの方がより均一に撮影できるということでしょうか。


リニア処理後の画像

画像処理の準備が整ったので、PixInsightでそれぞれリニア処理です。同様の手順がFC-76の180秒と300秒、FS-60Qの300秒と3通りあるので、手間を省くためにScriptのBatchPreProcessingを使います。バイアス、ダーク、フラット補正をしています。

出てきた結果をPhotometricColorCalibrationを使い、色を合わせます。それらをScreenTrasferFunctionでオートストレッチし、JPEGで保存したものを示します。まだ彩度を出す前の過程なので派手やかさはないですが、比較するには十分かと思います。

light-BINNING_1_PCC
FC-76、180秒露光。

light-BINNING_1_PCC
FC-76、300秒露光。

light-BINNING_1_PCC
FS-60Q、300秒露光。

検討

3枚を見比べます。
  • まずFS-60Qはピントが甘かったので星像が肥大しています。
  • 同じ600mmの鏡筒ですが、フラットナーが1.04倍の倍率があるので、FC-76の方が画角が少し狭いです。
  • ノイズに関してはFS-60Qが一番ザラザラしているように見えます。これは口径の違いからくる明るさの違いで説明できそうです。
  • 一見FS-60Qがコントラスト良く見えます。これらはオートストレッチが影響しているのかと思います。オートストレッチはフラット補正がどれくらいうまく当たっているかなど、最大/最小輝度に大きく依存するので、まあ誤差の範囲かなと。FC-76でも180sの方が一見コントラストがよく見えているので、白濁の影響でコントラストが悪くなっているとはこれだけで言うことは難しいと思います。
それ以上のことは、私の目ではほとんど差を見い出すことができません。


とりあえずの結論

できるだけ同じ撮影条件にしようとしましたが、それでもまだなかなか結論めいたことを言うのは大変そうです。ただ一つ言えることが、たとえ多少白濁があっても、撮影レベルで使ってももそれほど遜色なく写ってしまうということでしょうか。これは結構意外というか、驚きの結果です。

白濁が一番効果に現れるのはコントラスト低下かと思います。眼視の場合にはなかなか避けることは難しいでしょうが、それでもこのFC-76では多分よほど目の肥えている人でないと気づかないのではというのが、以前の記事の結論でした。一方、画像処理の過程では、低下したコントラストを補正するのは難しくありません。もちろんノイズとの交換条件になりますが、撮影の方が白濁の不利さは少なくなるのではというのが今回考えたことです。少なくとも私の画像処理のレベルでは、コントラスト差が問題になる程、結果に影響が出てこないようです。

白濁も、レンズについたゴミなども、どれくらい汚いと本当にダメになるのか、一度きちんと検証したほうがいいのかもしれません。特にニュートン反射の主鏡とか、汚れやすいけれども分解しないと綺麗にできないような部分も結構気にせず使ってしまっているので、意外なほど許容範囲は広いのかもしれません。撮影への影響まで含めて、何か定量的に評価できないものなのでしょうか?反射系の副鏡のMTFへの影響なんかは、うまい評価方法なのかもしれません。

今回は一応これで一区切りです。せっかく撮影したので、次の記事でこれら3枚を合わせて、最後まで画像処理をした結果を見せます。


FC-76のセカンドライトで電視観望を試してみました。

名古屋スターベースの閉店前に手に入れた
対物レンズが白濁しているFC-76。昼間にアイピースで景色を見て全く問題なさそうなので実戦投入を決意。夜に一度月でコントラストの低下を試してみたのですが、他の鏡筒と比べると少し落ちるものの、単体ではわからないくらいでした。

次の課題は星や星雲などを試すことです。どれくらい白濁が影響するのか?先ずは簡単に電視観望で見てみました。


機材、条件など

鏡筒: タカハシ FS-76 (口径76mm, 焦点距離600mm) + 旧フラットナー
架台: AZ-GTi(経緯台モード)
三脚: Gitzo GT3840Cをシステマティック化 + AZ-GTi用のハーフピラー 
センサー: ZWO ASI294MC Pro
フィルター: なし 
日時: 2019年6月1日、22時半頃から
場所: 富山市下大久保
月齢: 27.1
SQM: 19.05 

IMG_7297

FC-76本体より高くついたK-ASTECの鏡筒バンド、プレート、持ち手は快適そのもの。特に持ち手は、これくらいの大きさがあるとしっかりホールドして運ぶことができます。持ち手のところにつけたASI178MCでの電視ファインダーも、特に運搬に邪魔になるようなことはありません。水準器も上手い具合についたので、AZ-GTiの初期アランメントの水平出しも簡単で、今回も一発でベガが入りました。

IMG_7311


AZ-GTiだとカメラのケーブル一本だけの接続なのであいかわらず楽なもんです。FS-60CBより鏡筒は重くなっていますが、AZ-GTiで特に問題なく駆動することができました。


電視観望に適した焦点距離

これまで電視観望はFS-60CBを主に使ってきましたが、FC-76にした場合に一番大きく違うところは焦点距離です。FS-60CBは355mmでしたから、2倍を切るくらいの焦点距離になります。そのため小さいものはより大きく見えるのですが、大きいものが画面に入りきらなくなってきます。カメラはフォーサーズのASI294MC Proを使っているのですが、なかなかフルサイズで電視観望に適したものを探すのは大変ですし、むしろさらにセンサーサイズが小さくなる方が最初に試す場合などは現実的なのかと思います。

今回見た惑星状星雲のM57なんかはかなり小さいので焦点距離が長い方が有利なのです。一方、例えば今回も試したのですが、北アメリカ星雲は全体像が見えなくてよくわからなかったですし、M8ラグーン星雲でも結構いっぱいいっぱいでしょう。秋冬だとM31アンドロメダ銀河やM42すばるは全然入りきらず、M42オリオン大星雲は画面いっぱいに広がります。

こうやって考えると、電視観望で見せることのできるネタの結構な割合を落としかねないので、実は焦点距離600mmというのは、フォーサーズカメラでも電視観望にはすでに長すぎの感があります。必要ならレデューサーなどの併用を考えて、焦点距離を短くできるようにしておいた方がいいかもしれません。

また、焦点距離が長いということは鏡筒の長さも長いということを意味します。実際に動かしてみて気づいたのですが、M57が天頂近くに来た時に、鏡筒に取り付けたカメラが三脚に当たるということがありました。アラインメントを合わせなおしになってしまい、時間が勿体無いのでこれも注意が必要です。

IMG_7310



実際の観望の様子

この日は昼くらいからずっと曇っていて、22時頃から少し星が見えてきた程度です。夏の大三角はまあまあわかります。ここらへんの北東の一部の分を除いて、基本的に薄い雲がかかり透明度はかなり悪い方でした。例えば肉眼だと、南では木星は見えますが、アンタレスは時間によってなんとか分かるくらいで、さそり座の形はほとんど全くわからないというくらいです。西はほとんど星が見えなく、北も光害と雲でダメ、天頂近くにある北斗七星は形がわかるくらいでした。こんな状態なので、とりあえず見えそうなものだけを試してみることにします。

先ずはM57。2秒露光で、Live Stackしています。ほおっておくと3分経つと一からスタックするようにしていて、下の写真は2分20秒くらい経ったところで撮影しています。実際には最初の10秒、20秒くらいでノイズがどんどん落ちていくのがわかり、あとは見た目はほとんど変化ないです。

IMG_7294

透明度の割に思ったより綺麗に見えています。中心星も何とか見えているので、分解能もまずまずです。これまでの口径60mmから76mmに変わった効果が出ているようです。これだけ見えるなら、少なくとも電視観望レベルではレンズの白濁はあまり気にしなくていいのかと思います。

ちなみに、上の画面ではかなり拡大表示していて、実際の画角は下を見てもらえればわかります。M57はやはりかなり小さい印象です。ASI294MCの画素数が多いため、上の画面くらいまで拡大してもそこそこ見えるわけです。

Capture_00001 23_13_20_23_13_21_WithDisplayStretch


次はM27。結果だけ載せておきます。ちょっと淡いですね。

IMG_7295


ついでに三烈星雲です。かなり無理してかろうじて色が出た感じです。透明度が悪いのでまあこのくらいなのでしょう。
IMG_7298



まとめ

あまり空の様子は良くなかったのですが、M57を見ている限り今回の目的のレンズの白濁は電視観望くらいでは特に問題にならないレベルなのかと思います。ただ淡いのが出なかったので、空の透明度のせいでなく、もしかしたら白濁レンズのせいもあるかもというのがふと頭をよぎりました。もう少し空がいい状態の時に今一度試してみたいと思います。

今回は白濁の問題というよりも、FC-76の焦点距離の長さでいろいろ制限されてしまったような感じでした。FS-60CBの方が軽くて取り回しがいいし、より広角なので見える天体が増えて、電視観望に適しているのではないかということです。

むしろFC-76を撮影に使ってみたくなりました。新フラットナーのFC-76用のリングはもう買ってあるので、次は撮影を試してみようと思います。FS-60Q状態と焦点距離が同じなので、直接の比較ができそうです。これでもし白濁が問題になるようなら、白濁除去の方法を考えようと思います。


CATに行った後にまだ少し時間があったので、FC-76を整備する目的で秋葉原に移り少しショップを回りました。

スターベース 


IMG_7110

まず寄ったのが、いつもの秋葉原のスターベース。目的は前回名古屋スターベースで手に入れた、ジャンクFC-76の新型フラットナー用のリングを買うことです。撮影までするかはまだ未定ですが、4隅の点像がどこまで出るかを確かめておきたいからです。到着して、いつも相談に乗ってくれS君はいなかったのですが、店長さんが「S君もうすぐ帰ってくるよ」と教えてくれたので、少し待つことにしました。10分も経たないうちに遅めの昼食を携えてS君が戻ってきました。まず目的のFC-76用リング。大した値段ではないので、テスト目的でも気軽に買うことができます。リングだけで各機種に対応できる新型フラットナーはずいぶんコストパフォーマンスがいいと思います。

今回は買い物だけでなく、情報として得るものが多かったです。S君がこのブログを読んでくれていたので話が早く、まずタカハシでFC-76の清掃をまだ受けつけているということを教えてくれました。実際にタカハシ工場でするもので、これには分解、清掃、組み立て、光軸調整が含まれるらしいです。問題は清掃がどこまでになるかはスターベースでもわからないようなのです。まず、白濁の具合によって完全に綺麗にならない場合があること。これはもちろん了承です。傷とかついていればそれは無理でしょうし、劣化がコーティングだけでなく、レンズ基材にまで食い込んでいたらそれも厳しいでしょう。でも実際の清掃というのが、ただ掃除するだけなのか、コーティングを剥がすのか、はたまた再コートまで(流石に値段的にはないと思いますが)してくれるのか、それはどうも職人さん判断の様で、店舗ではわからないという意味だと理解しました。

見積もりも見せてもらいましたが、タカハシの清掃、調整でも値段は全然許容範囲。鏡筒を特価で買った値段より安いです。また、タカハシの調整だけでなく、TOMITAさんでの清掃、調整もスターベース店舗で受け付けてくれるとのことです。TOMITAさんの方はさらにリーズナブルな値段でした。いずれにせよ、タカハシで清掃を受け付けてくれるとわかったことは大きいです。でもまだ自分で分解して屈折の光軸調整の方法を学びたいというのもあるので、もう少し様子見です。

一緒に店頭にあるFC-76DCを見ていると、現行機種がずいぶん細くなっているのを思い知らされます。筒の部分はFS-60CBと同じ太さです。私が手に入れた旧機種のFC-76は現行のFSQ-85EDPと同じ太さです。現行のFC-76DCのフードを外してみてみると、対物レンズ枠の外径が筒の径ギリギリまできていて、かなり頑張った構造になっているのがわかります。と、ここまでが前置きで、面白かったのがS君がフードをはめるときでした。ねじ込み式なので回転させながらはめるのですが、なぜか逆回転ではめようとしています。最初間違っているのか思い「回転逆では」と聞いてみたとこと、わざと逆に回転させて、ねじ込みの最初の位置を探しているとのことです。うまく垂直にフードを当てて逆回転で探っていくと、カタッと入り込むところがあり、そこから反転して通常の向きに回していくと、噛んだりすることなくきちんとはまっていくとのこと。私はこれまでそんなことに気を使ってこなかったので、目から鱗でした。さすがタカハシです。ものを長く大切に持たせる術を知っていて、きちんと店員にまでその教育が行き届いています。

あと、S君から白濁に関して面白い提案がありました。月を見てみると白濁の影響がよくわかるのでは?というのです。確かにうまくいくと(悪くすると?)コントラストが悪くなりそうです。早速帰ったら試してみようと思いました。

もう一つ、FC-76の鏡筒バンドを頑張ってK-ASTECのものにするか、もう少し安価なMOREBLUEのものにするか迷っていたのですが、スターベースでMOREBLUEの鏡筒バンドの扱いを始めたようです。ただし、今の所は鏡筒とのセット販売のみ。単体であれば買っていたかもしれません。


KYOEI

IMG_7112


さて次はKYOEIです。ところがいつも相談に乗ってくれるMさんは不在とのこと。KYOEIさんはK-ASTECの鏡筒バンドを扱っているのですが、事前のネット販売の方では大阪店には在庫があるけれど、東京店には在庫はないとの情報でした。それでも一応FC-76の旧型にあう95mmのものがあるか聞いてみると、たまたま一つだけ在庫があるとのこと。ついでにと思って、斜めに取り付けることができるとってもあるか聞いてみたら、こちらもたまたま一つだけあるとのこと。これも縁と思い、対応する上下プレートも合わせて購入してしまいました。でも鏡筒を買った価格より、鏡筒バンドの方が高価です。うーん、だんだん本末転倒になってきました。


戦利品

今回の戦利品です。斜めハンドルがポイントでしょうか。

IMG_7120


実際にFC-76と組んでみました。上部のハンドルの間にアルカスイスプレートをつけました。これは電子ファインダー用にCMOSカメラを取り付けるためです。あと下のプレートのさらに下に、手持ちのアリガタを取り付けました。

IMG_7136
うーん、かっこよくなってきました。

ちょっと重くなったので、後日もう少し軽量化するかもしれません。

注意ですが、鏡筒バンドには低頭ネジの長いのが4本、短いのが4本ついてきます。上下にプレートをつけるのですが、長いネジはもう少し厚い板用に用意されたものか、K-ASTECのプレートには長すぎて途中までしか入っていきません。短いネジを別途用意しておいた方がいいのですが、低頭ネジでないとはみ出てしまうので、あらかじめどこかで見つけて購入しておいた方がいいでしょう。私は手持ちで2本だけあったので、とりあえずトップは4カ所でなく2カ所で止めています。



FC-76ファーストライト

富山に帰ってから、FC-76の対物レンズの白濁の影響を検証するために、実際に月を見てみました。単体だとわかりにくいので、FS-60CBとVixenのポルタの80mmとも見比べてみます。アイピースは相変わらずポルタに付属の20mmです。倍率も低いので分解能の比較は難しいです。

まあ、はっきりいうと差は見えましたが、正直言ってごくわずかでほとんど気にならない程度でした。コントラストでいうと
ポルタ => FS-60CB > FC-76

と言ったところでしょうか。地球照が見えるかどうかで比較したので、ポルタの口径が大きいのが効いている気がします。それでもFC-76が口径の割にコントラストは低かったのは、やはり白濁のせいでしょう。よく比べると、FC-76で少し顔を動かして接眼レンズと目の相対位置を変えてみると、コントラストが少し変わるのがわかりました。これは白濁の酷さが局所的に違いがあるからだと思います。

でも何度か見比べて初めてわかるくらいのもので、単体でFC-76を覗いただけだったら、先入観なしでは、少なくとも眼視の経験があまりない私は白濁があるとは気づけないと思います。でも経験豊かな人はすぐにわかるかもしれません。

結論としては撮影に使わなければ、とりあえず十分です。値段が値段だったので、私としては満足です。はっきり言って撮影でも使えそうな気もしています。でも付属品の方が高くついてくるのは、まあ仕方ないですね。

次は電視観望で試してみます。

先日、名古屋に帰省したときに生えてきたFC-76を、自宅に帰ってから実際に試してみました。

FC-76はフローライトレンズを使った口径76mm、焦点距離600mmのアポクロマート鏡筒です。往年のタカハシの作り込み感が半端なく、質実剛健、細部ものすごく丁寧、高級感に溢れていて、持っているだけでも満足感が満たされます。レンズキャップが鋳造物で、重いので下を向けると落ちてしまうと購入時に注意を受けました。キャップだけみても今では考えられないこだわりです。元々はファインダーもあったようですが、今回はファインダーはついていませんでした。でもどうせCMOSカメラで電子ファインダーにしてしまうので特に問題ありません。問題は対物レンズ。結構な白濁です。その分本当に、その場で決断できるくらい格安でした。

IMG_7068


レンズの白濁について

いろいろ調べてみると、この白濁現象は1987年くらいまでの初期のFCシリーズに使われたレンズの反射防止膜がモノコートだった時代のものに、時間が経つとどうしても起きてしまうようで、避けようがないとのこと。1987年より後の後期型のマルチコートになったものはこのような白濁現象は起きないとのことです。

白濁が起きる場所は、弱いと言われている2枚目のフローライトではなく、最初の一枚目の対物レンズの背面(接眼側)だそうです。確かによく見てみると、表面は綺麗。中のどこかが汚くて、ちょうどその表面に見えるレンズの裏面くらいの位置に見えます。

結構ひどいので、この白濁をなんとかできないか調べてみました。まずタカハシはもう清掃や再コーティングなどは受け付けていないようです。(2019年5月11日追記: スターベース東京で確認したところ、現在でも清掃、調整を受け付けているとのことです。)他のメンテナンス会社でも、いくつか清掃をしてくれるところが見つかりました。自分で分解して、レンズ研磨のようなことをして強者もいるみたいです。一眼レフカメラの昔のレンズの白濁除去で探すと、アルカリ溶液でコーティングを除去してしまう例も見つかりました。

おそらく今回のものはコーティングの劣化なので、コーティングを除去してしまえば白濁は無くなるだろうと予測しています。その代わり反射防止の効果がなくなるので、一般的には4%ほどの反射が出てしまいます。ARコートは普通1.数%の反射率に抑えてくれるので、3倍くらいの反射光が出ることになります。大したことないかもしれませんが、多重反射でゴーストにもつながるので注意が必要です。

あと、自分で分解してクリーニングする場合には、光軸調整をきちんとして元に戻さないとダメなようです。私は屈折の光軸調整はごくわずかしかなく、全然自信がないのが正直なところです。これを機会に屈折の光軸調整に挑戦してもいいのかとも思いますが、タカハシなのでやはり躊躇してしまう気持ちもあります。まあとりあえずこの白濁が実際にどれくらい影響するかよくわからないので、まずは一度覗いてみることにしました。


FC-76の実際の見え味

IMG_7076

接眼側から対物側を覗いても、白濁がはっきり分かるので心配でした。とりあえず手持ちのタカハシの鏡筒バンドでサイズが合うものに取り付けて、アリガタを噛ませて赤道儀に載せました。アイピース口も元々25.4mm用ですが、手持ちのVixenの31.7mm交換アダプターで現行のアイピースが使えるようにします。アイピースはとりあえずそこらへんにあった、Vixenのポルタに付属の格安のものです。

昼間の景色を見てみます。白濁のひどさからあまり期待していなかったのですが、覗いた瞬間、その見え味にうっとりしてしまいました。もちろん白濁の影響はあるのでしょうが、アイピースで見ている限り全く気になりません。多分コントラストは落ちているのでしょう。確かに少し眠い気もします。それでも収差の少なさ、カリッカリの分解能の良さ、これで2諭吉さんちょっとなら十分すぎるくらいの性能です。FS-60Qでもそうですが、やっぱりフローライトっていいんですかね。分解清掃はもっと白濁が耐えられなくなるくらい進むまでしないことにしました。電視観望用にと考えていましたが、この分解能だともったいないくらいです。新型フラットナーを持っているので、うまくいくと撮影にも使えそうです。

試しにFC-76にASI294MC Proをつけて直焦点で撮影してみました。.serファイルで動画で撮影した一枚をjpegにまで落として、上下ひっくり返したものです。画像処理は何もしてません。拡大してみるとわかりますが、遠くのBSアンテナの4つのビスまできちんと写しこんでいます。ぱっと計算すると、ビスの直径が13秒角くらい、ビスの円を描いている黒線が3秒角くらいで、これだけみるともう少し出てそうです。3秒角でもすでにエアリーディスク径の2倍くらいなので、まあ相当なもんです。

test1

実は同じ構図でMEADEの25cmと比較していたのですが、分解能は口径と焦点距離の分FC-76が不利なはずなのに、口径差3倍以上でもFC-76も決して負けていません。焦点距離を合わせたら口径の差は消えてしまいそうなくらいです。それよりも考えさせらたのは画像の安定度で、軽いこともあるでしょうし、光軸調整が流石にタカハシレベルなのもあるのでしょうか、むしろFC-76の方がブレないです。この件もう少しまとまったらまたレポートします。

というわけでかなり使えそうなので、まずは鏡筒バンドとアリガタプレートなど、実戦配備に耐えうるように少し予算を割くことにしました。


GW特集の記事、もしかしたらもう一本書くかもしれませんが、こちらはちょっと時間がかかるかもしれません。

このページのトップヘ