ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:調整・改造 > 評価

みなさんこんにちは、ほしぞloveログのSamです。最近「ほしぞloveさん」とか呼ばれたりしますが、ハンドルネームは「Sam」です。「ほしぞloveログ」と書いて星空ブログ(ほしぞらぶろぐ)と読みます。

前回
前々々回の記事で、先週金曜日にペルセウス座流星群と天の川の撮影をしてたと書きましたが、本当は今回書く記事が一番試したいことでした。少し時間がかかってしまいましたが、やっと画像処理も終わったのでまとめておきます。

QBPのこれまでのまとめ

これまで好んで使っていた、サイトロンのQBP(Quad Band Pass)はHα、SII、Hβ、OIIIの4つ(Quad)の基線を通すためこの名前がついています。このフィルターかなり便利で、自宅のような光害地でも、多少の月明かりがあっても、星雲を相当炙り出すことができます。

QBPの作例については以下をご覧ください。

















さらになんと、私がTwitterで電視観望でも使いたいと呟いたリクエストで、QBPのアメリカンサイズまで作ってくれ、もうサイトロンさんには感謝しても仕切れないくらいです。



私にとって、QBPは撮影にも電視観望にも、すでに無くてはならないフィルターになっています。


QBPの不満

このQBP、ものすごく便利なのですが、実は2つ不満があります。
  1. 一つは、最初の方の作例を見てもらうとわかるのですが、普通に赤を出そうとするとどうしても朱色がかった赤になってしまうのです。他の方の作例を見ても同様の傾向が多いので、これはQBPの特徴の一つなのかと思います。でもこれは何度か画像処理をしていて、青を少し強調してやると赤の色バランスがよくなることに気づきました。QBPの特性として、どうも相対的に青色が弱く写ってしまうようです。最後の方のバラ星雲なんかは適度に補正してあるので、初期の頃とだいぶ色合いが違うのがわかるかと思います。
  2. もう一つは記事の中で時々書いているのですが、恒星の色、特にオレンジとか緑とかが出ないのです。これは結局解決に至らず、適当に色が抜けたような状態でごまかしています。なので、どうしても色を出したい場合はQBPをあえて使わない時もありました。
そもそもQBPは青が強いM45プレアデス星団や、恒星の色に近い銀河はあまりきちんとした色が出ないようで、今のところ主にHαを出したい時にQBPをよく使っています。

そうは言っても、QBPはこの手のフィルターにしては比較的波長帯の制限をゆるくしてあるために、色バランスが崩れにくいというのが大方の評判で、私もその意見に賛成です。ただ、上記のような不満もあるのも事実なので、これをなんとか改善できないかとずっと思っていました。


CBPの検証開始

今回やったことはサイトロンから少し前に発売されたCBP(Comet Band Pass)フィルターの検証です。

 

一方、今回使ってみたCBPは彗星用に開発されたフィルターということもあり、青や緑の波長帯を通すとのことで、QBPの弱点であった、赤以外の色が意外にバランスよくでるのではという期待があります。ただ、星雲用に開発されたわけではないので、これは自分で試してみないとよくわからないでしょう。

というわけで、毎度のこと前置きが長かったですが、やっと検証の開始です。

今回のターゲット天体は青色を適度に含むM20、三裂星雲です。機材はTSA-120に35フラットナーをつけ、ASI294MC Proで撮影をします。もう8月後半なので、M20は宵のうちから高い位置にあり、しかもこの日はちょうど下弦の月のころなので、M20が沈むくらいまでは月は出てきません。さらに前回の記事でも書いたとおり、この場所は天の川が結構はっきり見える(2つに分かれているのは十分に分かります)場所なので、光害の影響があまりないところです。条件としてはいいのですが、光害のカットという意味での検証にはならないということは注意が必要です。

今回はM20を
  1. フィルター無し
  2. 48mmのCBPを取り付ける
  3. 48mmのQBPを取り付ける
という3つのケースで撮影して比較したいと思います。時間的にはこの順番で、それぞれ上から17枚、9枚、6枚撮影しました。枚数が違うのは、だんだん時間が無くなってきて焦ってきたからです。同じ日で撮った方が公平になると思ったので時間が限られてしまいました。ここら辺はご容赦ください。

高度から考えると、時間と共に位置が下がってくるので、1のフィルター無しが一番有利で、順にCBP、QBPとなるはずで、QBPの7枚目以降はまだそこそこ高度はあったのですが、背の高い木が少し入ってしまったので、そういったうまく撮れていないのは省いた枚数になります。


結果の比較

今回非常に面白い結果が得られたので、早速撮影された画像を見て見てみましょう。画像はどの場合も、1枚のRAWファイル(fits形式)をPixInsightでDebayerして、STFでオートストレッチをかけただけです。画角が同じなので、オートストレッチが公平に働いて、画像の質によって星雲などのコントラストがそのまま表されてきます。

1. フィルター無し

まずはフィルター無しのノーマルです。
masterLight-BINNING_1-FILTER_NoFilter-EXPTIME_180
フィルターなしの場合。

特に色をあぶり出したりしているわけではないので、のっぺりした色合いになっています。それでも暗いところなのでM20の赤と青はそこそこ出ています。


2. QBP

先にQBPを見せます。
masterLight-BINNING_1-FILTER_NoFilter-EXPTIME_180
QBPフィルターを適用。

QBPの実力通り、フィルター無しに比べて赤が相当強調されています。実際に画像をスタックして画像処理までして比較してもみたのですが、一枚でこれだけ差が出ていると、スタックしても結果に大きな違いが出ます。フィルターなしの方が枚数が多いので当然ノイズは少ないですが、淡いところの赤を出そうと思っても最初から色が出ていないものは後から処理してもなかなか出てきません。枚数が少ないQBPの方が遥かに簡単に色が出ます。


3. CBP

ではお待ちかね、最後はCBPです。

masterLight-BINNING_1-FILTER_NoFilter-EXPTIME_180
CBPフィルターを適用。

明らかに青がノーマルの時よりはもちろん、QBPの時よりも強調されています。赤はフィルターなしの場合より濃くなっていますが、QBPよりは若干薄いでしょうか。


分かりやすいように並べてみます。

com1

左から、フィルターなし、QBP、CBPの順です。CBPで青が明らかによく出ているのがわかるかと思います。赤い三裂(4裂?)の周り、特に上部や下部の青なんかは違いが顕著です。

赤はやはりQBPが一番出ていますが、ノーマルと比べるとすでに朱色がかっているのがわかるかと思います。CBPは赤に関してはある意味ノーマルとQBPの中間で、まだそこまで朱色がかっていないです。

これは期待通りというか、期待以上の結果です。


光害に対する効果

QBPよりもCBPの方が波長の透過域が増えるので、光害に対しての効果は減ると推測されます。今回は光害の影響があまりない場所での撮影だったので効果が分かりにくいため、あくまで暫定的ですが少しだけ評価してみます。

PixInsightのSTFのオートストレッチは、画像の持っている明るさによってストレッチ(あぶり出し)のパラメータを決めます。撮影したRAWファイルを何倍くらい明るくするかは、(同じ画角で撮った場合)光害に依るという意味です。光外の少ない暗い画像ほど大きな倍率をとって明るくするはずですし、光害が多く明るく写った画像ほど倍率は小さくなるはずです。出来上がった画像の(背景の)明るさはあまり変わらなくなります。

そのため、撮影した画像の背景の明るさと天体(淡い星雲)の明るさに差があるほど、背景を同じ明るさにした場合には天体がよりコントラスト良く浮き上がってくるはずです。この時のオートストレッチの倍率を比較することで、光害がどれだけ軽減されるか、言い換えると光害防止フィルターがどれくらい働いているか推測することができるはずです。

オートストレッチの値から、フィルターなしを1としたときにQBP、CBPでそれぞれ何倍明るくしたかを表にしました。色によって倍率が違うのでRed、Green、Blueで別々に計算しています。具体的にはSTFのスパナマークを押すと表が出ます。最初なかなか意味がわからなかったのですが、いろいろ試して、結局真ん中の列の逆数が元の画像から何倍ストレッチしたかに相当することがわかりました。結果は以下のようになります。

 RGB
No filer111
QBP3.983566944.486127173.40584795
CBP3.537339063.440159572.7432878

さて、結果をじっくりみていきましょう。


QBP:


この結果を見ると、まずQBPはフィルターなしに比べて4倍くらい明るくできるので、言い換えると余分な光を4分の1くらいにしているということがわかります。以前、波長帯の広がりからざっくり4倍くらい得すると推測していましたが、実測もかなりこの推測に従っているようです。




CBP:

次にCBPです。まず第一に、結果の数値だけを見るとそこまでQBPとは大きく違わないというのが印象です。CBPの方がかなり(下手したら何倍も)明るく出るのではと思っていたのですが、平均だと1.2倍程度です。

R関しては除去比は少しQBP劣りますが、ほとんど違いがありません。GとBに関してはCBPの方が光害を除去しないことになります。と言っても高々1.3倍とか1.2倍です。これはCBPが彗星の核や尾のCN, C2, C3らの基線を透過させるように、主に紫外から青を新たに通すように設計してあるため、この波長での光害に対する除去効果は軽減されるので納得です。ただ、青よりも緑の方が違いが大きいというのが少し疑問ですが、Gセンサーも青の帯域に感度はあるので、これはあり得るのかもしれません。

ここでパッと疑問に思ったのは、青に対する明るさの倍率が低いCBPがなぜQBPよりもより青色を出すか?です。これは当然、これまでカットしてしまっていた青い光をより通すようになったからと考えることができます。倍率が低くても、捨てていた青い光を拾った方が得だったということです。


結論

というわけで、ここでの結論は「CBPはQBPよりも光害に対する効果は多少低いが、違いは全然大きくはなく、むしろ青を通すことでより強調する効果がある。これは青い成分を持つ星雲に有効である。」と言っていいのかと思います。もちろんこの値は光源に依ります。繰り返しになりますが、今回は光外の影響があまりないところで試したので、街明かりの場合や月明かりの場合は結果が違ってくる可能性もあるかと思います。

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さらなるCBPの効果

でもでも、実は面白いのはここからだったのです。この検証の過程で3つの画面を見比べていて、一つ気付いたことがあります。もしかしたら勘のいい人はもう気付いているかもしれません。

上で出した3つの比較画像のそれぞれの左上の明るい星に注目してください。その左横に2つの星があると思います。これを3つで見比べてみてください。わかりやすいように拡大して並べて比較します。左からフィルターなし、QBP、CBPです。

com2


わかりますでしょうか?

なんと、CBPの星像が一番小さくて、しかも色がきちんと出ているのです。ピントの違いの可能性もありますが、他の星の大きさが大きくは変わっていないので、おそらくピントは関係なく、フィルターの違いから来ていると思われます。これは最初の方で書いた2つ目の不満「恒星の色が出ない」を解決する可能性があります。特にオレンジに近い色が出なかったので、期待できます。


なぜこんなことが起きるかというと、ここからはまだ推測なのではっきりとは言えませんが、QBPは実は赤外を通すのではという推測があります。シベットさんがここらへんの話に詳しくて



に記述があります。また、あぷらなーとさんの最近の実験でもその推測を推す結果となったようです。

QBPは赤外を素通しで、赤外の方では収差を補正しきれていない鏡筒ではハロとなって出るが、それに比べて、CBPはきちんと赤外の波長が透過しないように処理もしてあるのではという推測です。このハロを除去したい場合、QBPでは別途フィルターを入れる必要があるが、CBPでは1枚で済んで、恒星の色の再現性も高いということが考えられます。

これまでQBPで恒星の色が出なかったという方は試してみてもいいかもしれません。


まとめ

というわけで長かったですが、CBPの検証はこれで終わりです。赤はもちろん青も出て、色バランスも良く、恒星の色もきちんと出て、光害にも効果がありそうというので、私的にはある意味理想的なフィルターになりそうです。CBPはQBPであった不満をほとんど解決してくれそうです。かなり期待できそうなので、今後CBPの作例を増やしてもう少し検証していきたいと思います。


次の記事で今回撮影した三裂星雲を画像処理して仕上げています。



 



前回のZEROの振動減衰特性の続きになります。さらにマニアックなものになっているかもしれません。でもこの揺れに隠れいている物理をきちんと考えてみると、今後役に立つこともあるのかと思います。数式もあるので少し読みにくい記事になっているかもしれませんが、興味のある方は是非最後まで読んでいただけるとありがたいです。

IMG_0273


今回の記事の目的

とりあえず前回の記事では定量的な評価は控え、定性的にこんな傾向だというところを示しました。揺れの影響を比べるとポルタIIとZEROでは思ったより違うという印象を持たれた方も多いかと思います。

感覚的にでいいので、映像を見比べてポルタIIとZEROで揺れがどれくらい違うと思いましたか?2〜3倍くらい?10倍くらい?30倍くらい?100倍?数値的には答えが最後に出ますので、

みなさん動画を見比べたときの自分の印象を、
是非ここで一度考えてみてください

今回の記事のタイトルにはあえて解析とつけてしまいましたが、もう少し突っ込んで数値で比較できれば思っています。実際には、前回の使った動画から色々数値的なパラメータを引き出して定量的に評価します。これらをできるだけ一般化して、他の機器と比較した場合にも応用ができるようになればと思っています。具体的には共振周波数と半減期とQ値の関係を示し、それが実際の揺れ具合に感覚的にあっているかまで議論できれば上出来と言えますでしょうか。


共振周波数と半減期

今回の解析は前回撮影した映像をさらに突っ込んで解析します。特に新しいデータを取ったというわけではありません。まず、引き出したいパラメータは「共振周波数」と「半減期」です。

160倍相当に拡大し、できるだけフレームレートを上げて撮影した4本(ポルタIIとZEROのそれぞれ縦と横)の動画を解析します。鏡筒をピンと弾いて揺らしたので、インパルス的(「瞬間的な」という意味)な力を与えて、それが主としてそのモード(縦とか横とかいう意味)における最低次(一番低い周波数という意味)の振動を励起し、その振動が減衰していく様子が動画に記録されています。

できるだけ力が同じになるようにピンと弾いたのですが、衝撃の力積(力と、力をかけた時間の積)は必ずしも一定ではありません。それでもその衝撃で励起された「共振周波数」と、その振幅がある時から半分になる時間「半減期」は、最初に与えた衝撃によらずに、そのモードに固有で一定値となります。なのでそれらを測定してやれば、励起された振幅の大きさにかかわらずなんらかの特性が評価できるはずです。



実際の基本モードの測定



ポルタII 横の動き

一番揺れていてわかりやすい、ポルタIIの鏡筒を横向きに弾いた時の動画を例に「共振周波数」と「半減期」を測定してみましょう。ポルタIIの鏡筒を弾いたときの動きはこんな感じでした。

倍率160倍相当の横の動き: ポルタの場合

Youtubeに上げた動画では、細かい時間情報が消えてしまっているので、実際の解析にはSharpCapで録画した生の.serファイルを使いました。ser形式の場合、各フレームが測定された時間もそれぞれ記録されています。


実際に動画を見ながら測定すると、
  • 弾いてから2周期ほど揺れて最大振幅になったところの時間が、(UTCの14時29分)51.70秒
  • 10周期揺れた時の最大振幅の時間が、53.20秒
ということがわかったので、
  • 10回揺れるのに1.50秒かかっています。
ということは
  • 周期 P = 0.150秒
  • 最低次の共振周波数 \( f_0 = 1/P = \) 6.7Hz
ということがわかります。

また、先の弾いてから2周期ほど揺れてから最大振幅になった時(51.70秒)と比べて、
  • 振幅が半分になった時の時間は 52.75秒なので、
  • 半減期 \(t_{1/2} = \) 1.05秒
となります。


ZERO 横の動き

次はZEROの場合の揺れを確認します。

同様に横の基本モードの共振周波数と半減期を測定すると、
  • 弾いてからある最大振幅になったところの時間が、43.24秒
  • 10周期揺れた時の最大振幅の時間が、43.95秒
なので、
  • 10回揺れるのに0.71秒
かかっていることから、
  • 周期 P = 0.071秒
  • 最低次の共振周波数 \( f_0 = 1/P = \) 14.1Hz
また、先の弾いてから2周期ほど揺れてから最大振幅になった時(43.24秒)と比べて、
  • 振幅が半分になった時の時間は 43.66秒なので、
  • 半減期  \(t_{1/2} = \) 0.42秒
となります。

さて、これらのことから何が言えるでしょうか?まず、共振周波数から見ていきましょう。

ところで、ポルタIIとZEROでどれくらい違うか、印象を今一度確認してみてください。何倍くらい違うと思ったでしょうか?ここまでで共振周波数の違いは7Hzくらいと14Hzくらいなので、2倍くらいと既にわかりましたね。

でも揺れの印象だけ見るともっと違いが大きいような気がします。
皆さんはどう思いますでしょうか?


共振周波数について

ある系(この場合鏡筒と経緯台と三脚を含んだ望遠鏡全体)のある揺れやすいところ(方向)に衝撃を与えてやると、一番揺れやすい(軟らかい)ところで大きく揺れます。この揺れを基本モードと呼び、その揺れをその基本モードの共振、その共振の1秒あたりの揺れの回数を共振周波数と呼ぶことにします。

経緯台の骨格を太くしたりしてものを頑丈に固く作るほど、載せている鏡筒を軽くコンパクトに作るほど、基本モードの共振周波数は上がります。逆に、骨格が細く柔らかい系であるほど、また長く(レンズ部など)重さが端部に寄ったダンベル型に近い鏡筒なほど、基本モードの共振周波数が低くなります。

共振周波数が高いということは固いバネに相当し、共振周波数が低いということは軟らかいバネに相当します。中学の理科とか高校の物理の最初の方で習うフックの法則\(F=-kx\)という式を覚えていますでしょうか?ある力Fを加えると、固い(kが大きい)バネほど、伸びxが小さく、軟らかい(kが小さい)バネほど、伸びxが大きいという関係式です。

バネ定数は共振周波数と次のような関係で表されて、\[f_0=\frac{1}{2\pi}\sqrt{\frac{k}{M}}\]などと書くことができます。ここでMは質量に相当します。これをFの式に入れてやると\[F= -4\pi^2 f_0^2 M x\]と書くことができます。同じ質量で同じ力だとすると、共振周波数の2乗で揺れにくくなることがわかります。実際今回扱っているのは回転なので、質量Mは慣性モーメントで考える必要がありますし、係数も変わってきますが、物理的にはバネのイメージで本質的には間違っていないはずです。すなわち、同じ力で鏡筒を揺らすと揺れの振幅が共振周波数の2乗に反比例して小さくなる、言い換えると固い構造(バネ)ほど急激に揺れにくくなるということです。このことは実際の観測時にも同様で、鏡筒に手が当たったとかの場合、弱い(軟らかい)とよく揺れ、強い(固い)と揺れないというのは感覚的にも理解できるかと思います。


半減期について

では次に半減期です。これは一旦起きた振動がどれだけ早く収まっていくかを表すパラメータの一つと考えることができます。どれだけ「発生したエネルギー」をいかに「失わせるか」という損失の大きさに依存します。素材にもよりますし、構造の組み方などにもよります。

例えば金属でできている部分をゴムにすれば、その損失は大きくなり減衰は速くなります。ですが素材をゴムにすると当然やらかくもなるので、共振周波数も下がるので損をします。面白いのは、同じような素材、同じような構造で組むとこのロスというのは大体同じような値になるということです。

ここで、共振周波数と半減期の積を考えて見ましょう。
  • ポルタIIの場合6.7Hz x 1.05秒 = 7.04
  • ZEROの場合14.1Hz x 0.424 = 5.98
と、両者あまり違いがありません。若干ZEROの方が小さいくらいですが高々2割程度です。


Q値について考えてみる

ここで、以前検討したQ値というものを導入してみましょう。Q値は今回測定した共振周波数と半減期を使って、\[Q=4.53 f_0 t_{1/2}\]という式で表されます。共振周波数と半減期の積にある数値をかけたものになります。なぜ4.53なのかは以前の解説記事を参照してください。

ポルタIIの場合は\[Q=4.53 \times 6.7 \times 1.05 = 31.9\] ZEROの場合は\[Q=4.53 \times 14.1 \times 0.421 = 26.9\]という値になります。

ではこのQ値が何を意味するかです。Q値は元々あった揺れが共振によって何倍に拡大されるかということを知ることができるとても便利な値です。では何倍になるかというと、ずばりQ倍になります。その証明はこのページの伝達関数の式のf=f0の場合になります。

例えば地面が揺れていてそれが鏡筒を揺らすとすると、その揺れはQ倍に拡大されるというわけです。地面の揺れは\(10^{-7}/f^2 \rm{[m/\sqrt{Hz}]}\)という振幅になります。fはその揺れの周波数、単位が\( \rm{m/\sqrt{Hz}} \)となっていて少しややこしですが、\(\rm{ / \sqrt{Hz}}\)のところはちょっと無視してください(詳しいことが知りたい場合はこのページの最後を読んでみてください。)。ここでは簡単にm(メートル)で考えてしまいましょう。

ポルタIIの場合、共振周波数が6.7Hz、Qが31.9なので、地面振動からくる揺れは
  • \(Q \times 10^{-7}/f^2  = 31.9 \times 10^{-7} / 6.7^2 = 7.1 \times 10^{-7} \rm{[m/\sqrt{Hz}]}\)
ZEROの場合、共振周波数が14.1Hz、Qが26.9なので、地面振動からくる揺れは
  • \(Q \times 10^{-7}/f^2  = 26.9 \times 10^{-7} / 14.1^2 = 1.3 \times 10^{-7} \rm{[m/\sqrt{Hz}]}\)
程度となります。これは風などの外部の衝撃がない、揺れが落ち着いている時の揺れ幅に相当し、両方とも1マイクロメートル以下なので、実際に視野をのぞいていてもそれほど揺れているとは感じない程度でしょう。鏡筒を叩いて揺らした場合の揺れが減衰していくと、最終的に上記揺れ程度になるということです。それでもZEROのほうが揺れが5分の1程度に落ち着くというのは意識しておいたほうがいいでしょう。たいした大きさの揺れではないので、とりあえず地面の常微振動からくる揺れはあまり考えなくてよく、それよりも視野を移動した時の揺れを議論したようが有益だということが言えるのかと思います。

この実測値からも推定できるように、ポルタIIとZEROでは素材は金属(アルミ合金?)で、使える金属の種類もある程度限られるので、ロス(Q値)に関してはそこまで大きく変えることはできないと言えるのかと思います。逆にQ値が同じなら、Qの定義式から同じ力を加えたときは共振周波数が高いほうが減衰するまでの時間は小さくなるということが言えるわけです。


まとめ

上記検討のまとめをしてみましょう。

構造体に同じような金属を使うのでロス(Q値)が同程度だとして、共振周波数が高いとどれくらい得をするか考えてみましょう。同じ力で鏡筒を揺らした場合、
  • まず振幅が共振周波数の2乗分の1で小さくなります
  • 次にQの定義から、減衰するまでの時間は共振周波数分の1になるので
ざっくり考えて、振幅で2乗、減衰で1乗と、あわせて共振周波数の3乗くらいで揺れの影響が小さくなると言ってしまっていいのかと思います。ポルタIIとZEROでは共振周波数が2倍ちょっと違うので、3乗するとざっくり10倍くらい違うわけです。

皆さんの印象はどれくらいだったでしょうか?

10倍くらいだと思った方はいましたでしょうか?

ポルタIIに比べると、ZEROの共振周波数の違いが高々2倍くらいしか違わないのに、揺れの印象が感覚的にも10分の1くらいだかと思うのは、それほど間違っていないのではないかと思います。経緯台のような微動ハンドルを回して天体を追尾していく場合には、構造を固くして共振周波数を上げることがいかに重要かということが分かる結果です。


今後の展開

ZEROは非常に優秀で、口径100mm程度までなら載せても揺れが気にならないと聞いています。ただし、口径120mmのTSA-120をZEROに載せると、さすがに積載限界を超えているのか揺れてしまうとう報告がZEROの販売ページにあります。また非公式ですが、某天文ショップの店員さんから、同様のことを試して揺れが出てしまうという報告をTwitter経由で聞いています。

なので次はTSA-120をZEROに載せて、実際にどれくらい揺れるのかを、共振周波数を測定することで、比較してみたいと思います。これは自分自身でもかなり興味があって、うまくTSA-120をZEROで快適に使用する方法があるのかどうかを探ってみたいのです。鏡筒だけでなく、全体の系で共振周波数が決まるので三脚の影響も大きいかと思います。

気の向いた時にパッとTSA-120を出してZEROに載せて、振動なく見えるというのはかなり魅力的です。


今回、振動減衰特性が素晴らしいと評判の、スコープテック社の新型経緯台ZEROを手に入れました。梅雨ですが、晴れ間を狙って色々と評価してみました。


目的

この記事では、スコープテックの新型経緯台「ZERO」の振動減衰特性を評価をすることを目的とします。わかりやすいように、今回は入門機の標準と言ってもいい、Vixen製の天体望遠鏡「ポルタII A80Mf」と比較してみます。


ポルタII

ポルタIIに関しては言わずと知れたVixen社の看板製品の一つで、とりあえず望遠鏡が欲しくなったときに最初におすすめされる、おそらく日本で最も売れている望遠鏡かと思われます。

屈折型のA80Mf鏡筒とセットになっているものが一番有名で、鏡筒、ファインダー、経緯台、三脚、2種のアイピース、正立プリズムなど、基本的に必要なものは最初から付属しています。初心者でもすぐに天体観察を始めることができ、天文専門ショップのみでなく、全国カメラ店などでも購入でき、その販売網はさすがVixenと言えます。

機能的にもフリーストップを実現した経緯台方式で初心者にも扱いやすく、鏡筒はアクロマートながら口径80mmと惑星などを見るにも十分。全て込みでこの値段ならば、十分適正な価格であると思います。

私は2018年の小海の星と自然のフェスタのフリーマーケットで手に入れました。中古ですが付属品はアイピースなども含めて全て付いていて、おまけに別売のフレキシブルハンドルも付いてきました。また鏡筒キャップの中に乾燥剤が貼り付けてあったり、夜に機材が見えやすいように反射板を鏡筒や三脚にマーカーとして貼ってあったりと、前オーナーはかなり丁寧に使ってくれていたことが推測できます。

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ZEROの特徴

一方、ZEROは経緯台のみに特化した単体の製品です。鏡筒や三脚は基本的に付いていないので、別途用意する必要があります。発売開始は2020年3月なので、すでに解説記事などもたくさん書かれています。ZERO自身の機能的な解説はメーカーのZERO本体のページ天リフさんの特集記事が詳しいです。購入もスコープテックのページから直接できます。




スコープテックはもちろんですが、ZEROはサイトロンなどいくつかの販売店からも販売されています。シールをのぞいて同じものとのことです。違ったバージョンのシールにしたい場合はこちらから頼む手もありです。





本記事では、機能に関しては上記ページに任せて簡単な解説にとどめ、振動特性を中心に評価したい思います。

実際のZEROを見てみます。

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ZERO自身は実際に手に取って見ると思ったよりコンパクトです。初めて使う場合は「お使いになる前に必ずお読みください!」と書いてある紙が入っていますが、これだけでなくマニュアルも必ず読んだ方がいいでしょう。一旦組まれたものを外して、経緯台として動くように組み直す必要があります。また、手持ちの三脚に合わせて(注文時に選択した)アダプタープレートを合わせて組み込んで三脚とセットする必要があります。


なぜ片持ちなのか?

基本的に片持ち構造は、強度や振動特性に関しては不利なはずです。それでもフリーストップにするためには片持ちが適しています。なぜなら鏡筒を縦方向に動かしたときにバランスが崩れないため、どこで止めてもつりあいがとれるからです。これがフリーストップを安定に実現させている理由です。

この片持ちという不利な構造にあえて選んで振動減衰特性に挑戦しているのが、ZEROの真骨頂と言えるでしょう。しかも軽量でコンパクトに折りたたむことができま、気軽に持ち運無ことができます。

フリーストップで、しかも揺れなくて、コンパクトとのこと。これは実は初心者に向いた設計と言ってしまってもいいのかと思うくらいです。スコープテッックが初心者向けの機材を相当丁寧に作ってくれていることは、私も実際に望遠鏡セット使って知っているので、おそらく本当に初心者のことを考えて今回のZEROも設計、製作しているのかと思われます。

でもこのZERO、初心者だけに使うのはもったいなさそうです。ベテランのアマチュア天文家が気楽にパッと出して星を見たいというときには、軽くて、且つ揺れないというのはベストのコンセプトです。観望会を開いて、お客さんに見てもらう場合とかでも十分に活躍してくれそうです。また、コンパクトなので遠征に気楽に持っていけそうです。遠征先の撮影の合間に気楽に観望とかでも使い勝手が良さそうです。


ポルタIIとは違い、ZEROは基本的に経緯台のみの単体販売で、三脚も鏡筒も付いてはきません。全部込み込みのポルタの実売価格はZERO単体よりも数千円高い程度ですので、価格的にはポルタIIに比べたら割高と感じるかもしれません。経緯台に特化した分だけの性能に対する価値を、どこまで見い出せるかがポイントになるのかと思います。


測定条件

まずは振動特性を見るための条件です。

共通項目
  • 鏡筒はポルタII付属のA80Mfを使う。
  • 微動ハンドルはVixen製のポルタ用のフレキシブルハンドルを使う。
  • 眼視を想定し、三脚の足を半分程度伸ばした状態で、2台の三脚を同じ高さにする。

IMG_0237
2台のセットアップです。三脚はほぼ同じ高さにしています。
鏡筒とフレキシブルハンドルを載せ替えて比較しています。
写真でZEROについているハンドルは無視してください。

2つの測定の違う点
  1. ポルタIIの経緯台をポルタIIの三脚に載せたものに鏡筒を載せる(以下このセットアップをポルタIIと呼びます)
  2. ZEROをCelestron社のAdvanced VX用の三脚に載せたものに1と同一の鏡筒を載せる(以下このセットアップをZEROと呼びます)

ただし、後から分かったことですが、三脚の強度に無視できないくらいの大きな違いがあることが判明しました。なので今回はZEROにAdvanced VX用三脚でここまで振動を抑えることができるという目安と考えていただければと思います。


観測方法

ポルタIIとZEROの2種で鏡筒部分を揺らし、その揺れがどのように減衰していく様子を、視野を撮影しながら見ていきます。


2種の倍率

それぞれ観測、測定のたびに鏡筒をフレキシブルハンドをポルタ経緯台とZEROに載せ換えます。光学的に2種類の設定をそれぞれの経緯台で試します。
  1. 40倍相当: 天体導入時を想定し、焦点距離800mmの鏡筒と焦点距離20mmのアイピースで40倍程度の視野を仮定し、フォーサーズ相当のCMOSカメラ(ASI294MC Pro)ので撮影
  2. 160倍相当: 天体導入後、拡大して観察する場合を想定し、焦点距離800mmの鏡筒と焦点距離5mmのアイピースで160倍程度の視野を仮定し、同一CMOSカメラの(ASI294MC Pro)一辺4分の1、面積にして16分の1を切り取って撮影
1.、2.ともにフレームレートを上げるために4倍のビニングをして画素をそもそも4分の1に落としています。また、2.ではさらに速い動きを見るために、画面を切り取って小さくしてフレームレートをできるだけ上げています。


昼間の景色で比べてみる

まずは大まかな動きを掴むために、昼間の明るい景色で40倍相当で比較してみました。最初に望遠鏡を買って、昼間に練習するのに相当すると思えば良いでしょうか。具体的には山の上に立っている鉄塔を端から真ん中ら辺に持ってきています。

まずは横方向(yaw, ヨー方向)です。フレキシブルハンドルをまわして動かします。動かした後にどれくらい揺れるかを見ます。

ポルタの場合です。
倍率40倍相当の横の動き: ポルタの場合



ZEROの場合です。
倍率40倍相当の横の動き: ZEROの場合

これを見るだけで相当インパクトのある比較になっています。とにかくZEROの振動減衰が見事です。

続いて縦方向(pithc, ピッチ方向)です。まずはポルタIIの場合

倍率40倍相当の縦の動き: ポルタの場合

次にZEROです。
倍率40倍相当の縦の動き: ZEROの場合

ポルタIIもZEROも、横よりは縦の方が揺れにくいのは同じのようです。これは構造的に縦は縦のみの機構を担っていますが、横は横の機構と縦の機構を合わせて担当しています。当然重くなるので、その分横が揺れやすいのは不思議ではありません。

ポルタIIの方は多少揺れますが、やはりここはZEROの揺れの少なさを褒めるべきでしょう。揺れの振幅も、揺れが小さくなる時間もZEROは素晴らしいです。ただしこの結果はかなり大きく揺らした場合なので、実際に初心者がポルタIIで昼間に最初に練習する時でも、そこまで困ることはないのかと思います。


実際の観測を想定して木星で比べてみる:  導入時相当

初心者が望遠鏡を買って見てみる醍醐味の一つが木星や土星などの惑星です。そのため、今度は実際の観察を想定して、夜に木星を見て揺れの具合を比較してみましょう。

まずは木星で40倍相当で判定します。これは低い倍率で天体を導入するときの動作に相当します。木星を端から真ん中ら辺に持ってくるときの揺れで比較します。

横方向の揺れです。まずはポルタIIから。

23_16_31_F001-193s
倍率40倍相当の横の動き: ポルタの場合

次は同じく横方向で、ZEROの場合です。
23_40_29_F001-193s
倍率40倍相当の横の動き: ZEROの場合


次に縦方向で、まずはポルタの場合。

23_18_10_F001-192s
倍率40倍相当の縦の動き: ポルタの場合

縦に振っているのですが、横の揺れの方が出やすいので多少横揺れがカップルしてしまっています。

次にZEROの場合です。
23_40_54_F001-192s
倍率40倍相当の縦の動き: ZEROの場合


惑星の動きで見てもZEROの振動の減衰具合は特筆すべきで、特に縦方向の操作はもう十分すぎるほど減衰してしまって、インパルス的に動きを与えることが困難になっているくらいです。

実際操作していて思ったのですが、どのようにハンドルを回してどういったインパルス応答を与えるかで揺れの具合は違ってきます。ポルタIIの場合でも熟練してくると、最終的な揺れを少なくするように、最初は大きく動かして、見たい所の近くでゆっくり動かすなどのテクニックを、自然に習得できるのかと思います。なので、倍率が低い天体導入の際には、慣れてくれば上記動画の差ほどは気にならなくなるかと思います。



実際の観測を想定して木星で比べてみる:  拡大時相当

次に、木星で160倍相当で見てみます。これは定倍率で導入された惑星を、倍率を上げて拡大して見るときに相当します。視野が狭いので、先ほどのようにフレキシブルハンドルを回すとうまく揺れてくれないので、鏡筒をピンと弾くことでインパルス応答に相当する揺れを与えました。

まずは揺れやすい横方向です。最初はポルタIIから。 
倍率160倍相当の横の動き: ポルタの場合

ZEROです。
倍率160倍相当の横の動き: ZEROの場合


次は縦。まずはポルタII。
倍率160倍相当の縦の動き: ポルタの場合


最後にZEROの縦方向です。

倍率160倍相当の縦の動き: ZEROの場合



この試験は、フレキシブルハンドルを回したわけではないので、例えば観望会などでお客さんが鏡筒に触れてしまったことなどに相当するのかと思われます。これくらいの倍率で惑星を拡大して見る場合、特に望遠鏡の扱いに慣れていない初心者には、揺れの違いは実際の快適さの差として出てくると思います。ZEROの揺れくらいで収まってくれると、木星の細かい模様をじっくり見るときにも見やすいでしょう。


実際の使い心地

使って見て思ったことです。確実にZEROの方が揺れが少ないのは上記映像を見てもわかるのですが、その一方ポルタ経緯台に比べてZEROの方がハンドルが固いです。これはフリーストップの調整ネジとかの問題ではなくて、ある程度強度を保つためにこれくらいの固さが必要だったのではという印象です。また、微動調整つまみをフレキシブルハンドルで回すとき、遊びが少し多いなと思いました。これらは好みかもしれませんが、ポルタとZEROを比べると硬さと遊びに関しては個人的にはポルタに一日の長があると思いました。

おそらく微動の固さに関連すると思うのですが、揺れに対しての感想は反対になります。ポルタだけを使っていた時は、揺れは多少は気になっていましたが比較したわけでないのでそこまでは気づかず、今回ZEROと比べて、初めてはっきりと不満と感じました。

繰り返しになりますが、私が持っているポルタ2は中古で手に入れたものなので、新品の時の性能が出ている保証がありません。ですが、初心者がこの揺れだけを見てメーカーに修理を出す判断をする、もしくは実際に修理を出す気になるとも到底思えず、仮に使っていてヘタったのだとしたら、耐久性という意味で少し考えた方がいいのかもしれません。いずれにせよ、私が持っているポルタ2は一例に過ぎず、当然全てのポルタ2を代表しているわけではありません。その上でのことですが、少なくとも手持ちのものは(ZEROと比べると改めて気づきますが)揺れは結構大きくで、フレキシブルハンドルから手を離して揺れてしまうと、フレキシブルハンドル自身の揺れで視野が揺れてしまうくらいです。


三脚に関して

今回ZEROと比較することにより、これまであまり気にしなかったポルタIIの弱点が見えてきました。なぜポルタがZEROに比べて揺れが出るのか明るいうちに見てみました。2つの原因があるのかと思います。
  • 経緯台の可動部が柔らかく、ハンドルを回すのも軽くて操作しやすい反面、ここでぐらついてしまっている可能性が高い。
  • 根本的に三脚が弱い。
特に三脚に関しては目で見て揺れやすいのがわかるくらいです。動画でその様子を撮影してみました。


わかりますでしょうか?鏡筒を揺らすと、三脚(真ん中手前がわかりやすいです)もつられて揺れてしまっています。わかりにくい場合は、全画面表示などにして見てみてください。一見小さな揺れに思えるかもしれませんが、本来三脚は載っているものを揺らさないような役割をするものです。鏡筒を揺らすだけでこれだけ三脚が揺れてしまうのは、無視できる範囲とは言い難いでしょう。触らなければ揺れないかと思いがちですが、風が吹いた時は致命的ですし、導入時はどうしても触れてしまうので揺れてしまう可能性が高いです。

ちなみに、ZEROをAVX三脚に乗せたときに、同様に鏡筒を揺らしたときの映像も載せておきます。


こちらは拡大しても揺れている様子が全く見えません。揺らしていないように思われるかもしれませんが、音を大きくして聞いてみると途中から鏡筒を叩いているのがわかるかと思います。人間の力なので必ずも同じ状況にはならないですが、基本的に同程度の力で叩いたつもりです。音が小さいと思われるかもしれませんが、やはり揺れていないので記録された音も小さくなっているのかと思われます。

本来三脚は積載物を安定に支えるのが役割なので、揺れないものの方がいいのは当然です。それでもやはりこれも程度問題で、頑丈すぎるものは逆に重くなったりして取り回しに苦労することもあります。ただ、Advanced VX用の三脚程度の重量とZEROの組み合わせでここまで振動が減るのなら、特に惑星などを拡大して見たときには十分に検討する価値があるのではないかと思います。ZEROの販売ページを見ると強化版の三脚を選べるようです。これだと今回使ったAdvanced VX三脚と同等クラスかと思いますので、より揺れを少なくしたい場合はこちらを選ぶのもいいかと思います。

これらのことから、まずポルタIIは少なくとも三脚を改善もしくは丈夫なものに交換するだけでも揺れは相当改善すると思われます。別の言い方をするなら、経緯台として考えるとZERO自身の揺れは相当小さいため、もしZEROの性能を引き出したい場合は、ある程度強度のある三脚を使わないともったいないとも言えます。でもこのことは三脚の重量増加にもつながるので、手軽さという利点を損なう可能性もあるので、ケースバイケースで強度と重量のバランスを考えて選択すればいいのかと思います。

今回はZERO用には相当強度の高い三脚を選択してしまいました。結局のところ、今回の比較は「入門機の標準と言ってもいいポルタIIとの振動に比べて、振動減衰特性を特徴として開発したZEROを使うと、どのくらいまで揺れを改善できるか」という例を示したことになるのかと思います。ポルタIIを改善していって、揺れないものにアップグレードしていくような楽しみ方を見出すこともできるのかと思います。


まとめ

星まつりで何度かプロトタイプには触れたことはあり、ある程度すごいことは知っていましたが、実際に使って見ると、ZEROの振動減衰に関しては驚くほどの結果でした。ポルタIIだけを使っていた時は揺れはここまで意識できていなかったので、例えば初心者がポルタIIを最初に買って普通に使う分には、特に気になるようなことはないでしょう。ただ、もし今使っている経緯台に不満がある場合は、ZEROを検討してみる価値は十分にあるのかと思います。

経緯台単体にそこまでかける価値があるのかというのは、人それぞれかと思います。個人的にはZEROは素晴らしい製品に仕上がっていて、スコープテックさんの努力や熱意を十分に伺うことができるのかと思います。満足です。


最近話題のNINAを試してみました。すごくいいです。試したのはVISACでM13を撮影したときです。


N.I.N.A.を使ってみた

そもそもAPTをまともに使い始めたばかりなのに、なんでNINAを使ってみたかというと、APTで少し不満があったからです。
  • Live viewの映像がうまくストレッチできない。
  • ピント合わせで拡大できない。
  • 撮影ごとのログが残らない。fitsに特化しているので、各ファイルの中に情報は含まれてますが、いちいちヘッダを見なくてはならないのが少し不満です。
  • 撮影中の設定が結構制限される。例えばカメラのカラーバランスやストレッチの設定など、撮影中も触りたいのにできない。(でも、撮影中に弄れたことも一度だけあるのですが、再現性無しです。不思議です。)
と言っても、上のように細かいことだけで、普通に撮影するだけならAPTは十分な機能を持っています。「今回の撮影は前と同じM13で、余裕があるので失敗してもいいからNINA試してみようか」くらいの気分でした。しかもNINAで上記不満が解決されたかというと、実はそうでもなく、せいぜいLive Viewがマシになったくらいでしょうか。

でもそれ以外にいい所がかなりあり、極めて順調に撮影までできたので、この記事を書いています。


N.I.N.A.のインストール

ダウンロードはここからです。

2020年5月13日現在、最新の安定バージョンは1.9ですが、事前情報から日本語を使うためにはベータバージョンを使う必要があり、Version 1.10 BETA002(5月16日の今日、アクセスしてみたらすでにBETA004になっています)をダウンロードしました。

Windows版のみ存在し、MacやLinux版はないようです。32ビット版と64ビット版がありますので、各自の環境に合わせて選択します。自分のWindowsが32ビットか64ビットか分からない場合はここなどを参考にして確認して下さい。

今回は64ビット版を使ってみましたが、注意事項が書いてあって、もしNINAの64ビット版を使う場合はASCOMも64ビット版を使う必要があるそうです。いくつかのASCOMドライバーは未だ32ビットのままなので、その場合は32ビット版を使うか、64ビット版のドライバーの開発を促してくれとか書いてあります。とりあえず今回の使用(一通りセットアップして、plate solvingして導入、長時間撮影とかするくらいまで)では64ビット版で困ることはありませんでしたが、たくさんの機器を繋いで本格的に稼働させるとかの人は32ビット版の方がいいのかも知れません。

インストールは普通にやれば特に困ることはないでしょう。


最初の設定

インストール後、起動して一番最初にやるべきことは左端アイコン群の一番下「オプション」の「一般」の設定でしょう。そもそも日本語になってないと「Options」の「Genaral」になっています。まずは、そこの「Language」を「Japanese(Japan)」に変えます。変えた瞬間に日本語に切り替わるのが素晴らしいです。でも後から再起動して気づいたのですが、細かいところ、例えば先ほどの「Japanese(Japan)」は再起動して初めて「日本語(日本)」に切り替わるので、全ての項目が瞬時に切り替わるわけではないようです。一応言語を切り替えたら、一旦終了して立ち上げ直した方がいいでしょう。

同じページで「天文測定学」(ちょっと訳が微妙ですが)で緯度、経度を写真のように「137.12」などという形式で「度と分だけを小数点で区切った形」で入れておくといいでしょう。後の「スカイアトラス」のところで正しく表示されるようになり、撮影時間などの目安を立てやすくなります。


IMG_0090

「オプション」「撮像」「画像ファイルパス」で、撮影した画像を保存する場所を指定できます。好みの適当なところにしておくといいでしょう。


機材の接続

最低限の設定がとりあえず終わったら、次は「機材」ページです。この時点で、必要な機器はケーブルなどで実際に接続しておいた方がいいでしょう。今回設定したものはカメラ、望遠鏡(赤道儀のこと)、ガイダーです。これら3つは接続すると縦に並ぶアイコン群の右下に小さな電源マークが出るので、何が接続されているのか一目で分かります。

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それぞれのページの一番上で接続したい機器を選択し、その右の電源マークのアイコンを押して「接続」します。例えばカメラなら、すでにカメラが接続されていれば上の写真のように「ZWO ASI294MC Pro」という選択肢が出てきます。カメラが繋がれていないとASCOMとかN.I.N.A.のシミュレーターカメラとかしか出てこないので注意です。もしきちんとカメラにケーブルをつないでいても、つないだカメラ名が出てこない場合は、接続アイコンの左の矢印が回っている「デバイスの再スキャン」を押すと再認識されて、選択肢として出てくることがあります。

うまくカメラが接続できると温度制御やゲインの設定などができるようになります。冷却は設定温度を決めて、右横の雪の結晶マークのアイコンを押すだけです。撮影終了時の昇温は下の炎マークのアイコンを押します。オフセットはダークファイルのオフセットより大きな値が入っていればいいのかと思います。通常数十とかでしょうか。ゲインは後の「撮像」のところで改めて設定するので、適当でいいです。


適当な天体の導入と、PHD2でオートガイド

とりあえず、赤道儀での自動導入でも、マニュアル導入でもいいので、撮影したい適当な天体を導入します。最初はテスト撮影だと思って下さい。NINA自身の導入機能「フレーミング」については次回の記事で説明します。

一旦撮影したい天体が導入できたら、PHD2を起動してオートガイドを始めます。その際ですが、PHD2で赤道儀に接続した時に出てくる4方向ボタンのの小さな画面が後で導入すうる時に便利になるので、できればボタンを押してきちんと赤道儀が反応するか確かめておくといいでしょう、

きちんとオートガイドされていることが確認できたら、「オプション」「ガイダー」で、PHD2に接続して下さい。もしかしたら自動的に認識されて、すでに接続された状態になっているかも知れません。もし選択肢にPHD2が出てこなかったら、「オプション」「機材」の右下の「ガイダー設定」できちんと「PHD2パス」が設定されているか確認してみて下さい。私は先にPHD2を動かしていて、うまく動いている状態でNINAを立ち上げたので、特に何も設定する必要はなかったですが、うまくいかない場合はここが設定画面になるはずです。

IMG_0096

うまくPH2Dが接続されると、ガイドされているグラフが「機材」「ガイダー」のところに表示されます。PHD2の制御情報がそのままNINAで表示されるのがすごいです。左の方の選択で、y軸、x軸の表示設定とともに、誤差の単位を変えることができます。下の写真ではピクセル単位にしています。概ね0.5ピクセル以内に収まっているでしょうか。

IMG_0089

ついでにここで、NINA上でも赤道儀との接続も済ませておきましょう。PHD2がうまく動いているなら、すでに赤道儀はPCと接続されているはずです。NINAの「オプション」「望遠鏡」で自分の赤道儀のドライバーを選択し、右の「接続ボタン」で接続します。

IMG_0088



撮像

次はNINA画面の左端アイコンの下から二番目「撮像」ページです。ここは盛り沢山で混乱しますが、最初は最低限の機能から試します。

IMG_0094

まずは右上の「撮像」パネルのところのシャッターマークの「露光開始」ボタンを押して一枚テスト撮影して見て下さい。その際、「露出時間」は適当に10秒くらい、「ビニング」は1x1、「ゲイン」は200から400くらいいいでしょう。これらの設定はテスト撮影の時のみ有効で、本撮影では別の設定項目があり、そことは独立に設定ができます。撮影中は左下に「撮像:露出中」とか出て、時間バーが動いていきます。一枚撮影すると画像が出てくるはずです。望遠鏡の蓋がきちんと外れていて、ピントも合っていて、何かターゲットが入っているはずなのに真っ暗な画面しか出てこない場合は、撮影画面の上の右側にあるアイコン群の真ん中の棒のようなマークの「画像の自動オートストレッチをトグルスイッチでオン/オフする(表示のみ)」を押して、ボタンが明るくなるのを確認して下さい。同時にオートストレッチが効いて撮影画面も明るくなり、星などが見えてくると思います。

右上の「撮像」パネルのカメラマークの「ライブビュー」も同様です。「露出時間」を1秒とかにして「オートストレッチ」をうまく使って、リアルタイムで連続してみることができます。ただ、この「ライブビュー」うまくいかないことが何度かありました。「ライブビュー」ボタンを押して「露光開始」を押してうまくいったときもあれば、画面の拡大率を変えてうまく行った時もあります。同様のことをしてエラーが出たこともあります。ライブビューはまだ少し不安定な気がします。

ちなみに、この撮像画面のパネル、入れ替えとかしてぐちゃぐちゃになってしまったら、「オプション」の「撮像」タブにいき、右下の「画面配置のリセット」でデフォルトの設定に戻すことができます。


シーケンス設定

次にNINA画面左のアイコン群の「シーケンス」を押します。撮影計画をここで設定します。最低限
  • トータル#
  • 時間
  • ゲイン
  • オフセット
  • デザリング
だけ設定すればいいでしょう。デザリングはデフォルトでオンになっているようですが(下の写真はオフになっています。この場合ボタンを押して「オン」と表示されるようにしてください。)、PHD2が動いていてサーバーモードになっていれば、これだけでデザリングもできてしまいます。

IMG_0097

ちなみに、ディザー量などは「オプション」「機材」の右下の「ガイダー設定」で設定します。

シーケンス画面の左上の「対象」のところの「ターゲット名称」のところに希望の天体名を打ち込むと候補が出てきます。例えば「M13」と入れると「Herucles Globular Cluster」と出てくるので、それをクリックします。すると何時頃が撮影どきかとかも知らせてくれます。これと関連して、NINA画面左のアイコン群の「スカイアトラス」でも同じようなことができます。

IMG_0098

これらの画面にある「ガイド開始」「対象の導入」「ターゲットをセンタリング」「シーケンスの対象として設定」「導入」などのボタンはまだ試していません。ここら辺を駆使すれば、時間がくれば自動的に導入して撮影を始めるとかができるのかと思います。ドームでの撮影などでは便利なのかも知れません。


いよいよ撮影開始

さて、最低限の撮影準備が整ったと思います。いよいよ本撮影です。

IMG_0094


左端アイコンの下から二番目「撮像」ページに戻り、右側真ん中の「シーケンス」パネルの三角の再生マーク「シーケンスを開始します」を押して下さい。撮影が開始され、順次右下の「画像履歴」パネルに撮影された画像が溜まっていくと思います。Windowsのエクスプローラで実際に保存先フォルダを見て、ファイルがきちんと保存されているか確かめて見ましょう。私は一番最初だけエラーメッセージが出て、ファイルが保存できないと言われました。これは撮影中に保存先を変更してしまったことなどが原因かと思われます。最初の一度きりで、それ以降はこのようなエラーはなく安定して撮影できました。

撮影時の注意事項ですがが、あえてシーケンスの「リセット」ボタンを押さないと、途中枚数からの撮影が続行されてしまいます。テスト撮影で止めてしまった時など、必要枚数に達しなくなる時があるので、本撮影を始める時は必ず「リセット」を忘れないようにします。左端アイコン「シーケンス」に行って、左下のアイコン群の左から三番目の矢印が回っているマークのアイコンを押すとまた0枚に戻ります。

とりあえずここまでで、最低限のディザーの撮影までできるかと思います。


使っての感想など

うーん、NINAかなりいいです。もちろんどのソフトがいいかは機能だけでなく、インターフェースとかの好みはあるでしょうし、安定性なども大きなファクターです。NINAはまだまだ開発がどんどん進んでいる段階で、しかも今回はベータ版にもかかわらず、一度も落ちることはありませんでした。実は立ち上げてから一度も終了することなく撮影までできてしまうくらい分かりやすいインターフェースでした。オープンソースでこれだけのものができるのは、開発者の方々にただただ感謝です。

ベータ版ですが、すでに日本語が選択できるところもありがたいです。日本語訳もおかしなところはほとんどありません。どなたか日本人の貢献者がいらっしゃるのかと思います。感謝いたします。


感想など、細かいところをいくつか。
  • オンオフボタンがわかりにくいです。オンとオフどちらを押してもスイッチが切り替わってしまいます。どうやらボタンのところに「オン」と出ていたら「現在はオンの状態」、「オフ」と出ていたら「現在はオフの状態」という意味のようです。
  • ライブスタックはSharpCapと比べると流石にまだまだですが、APTよりははるかにマシです。多少不安定なところもありましたが、最低限操作の通りには動いてくれます。
  • 結局撮影ごとのログは残せませんでした。全体のログは残せるがトラブル時以外はあまり有用ではなさそうです。
  • 撮影中もほとんどの設定を変更できるところがいい。
  • 非力なStickPCで試さなかったので、重いかどうかがわかりません。でもホームページには2GBで動くと書いてあるので、意外に軽いのかも知れません。

とりあえず今回はここまで。次回はもう少し応用編として、「プレーとソルブ」と「フレーミング」などについて解説します。実はもう試してはいて、プレートソルブは簡単だったのですが、フレーミングに少し手間取りました。お楽しみに。

前回の記事の月の撮影をする、少し前に撮影したM42の内容です。今回は人様に見せるような記事ではなく、自分用のメモです。


35フラットナー

TSA-120での同じような内容のM42は以前記事にしましたが、今回の第一の目的はTSA-120用の35フラットナーと呼ばれるフラットナーのテストです。具体的には
  • フラットナーが使えるかどうか、星像がどこまで改善するのか見てみたい。
  • フラットナーでCMOSカメラを接続したらどうなるか?
  • トラペジウムを四隅の星像の崩れなしで撮っておきたかった。
  • 1秒露光のラッキーイメージングで上位画像だけを撮ったら分解能に効果があるかどうか調べたい。
くらいでしょうか。

撮影と画像処理

ガイドは用意までしたのですが、オリオン座が沈むまでに時間が限られていて準備が間に合わす、結局今回もノータッチガイドです。 
 
機材はTSA-120をCGEM IIに載せて、カメラはASI294MC Proを-15℃、間にQBPを入れてあります。撮影条件はSharpCapで1秒露光、ゲインは320。撮影中にダーク補正だけは64枚をリアルタイムでしました。約1513枚撮影し、FITS形式で保存しました。

まあ、結論だけ言うとシンチレーションがあまりに悪くて、前回のM42の撮影時は写っていたE星、F星も撮影時から全く見えず、ほとんど最初から諦めモードでした。そのせいでしょう、1500枚のうちAutoStakkert!3で上位25%だけスタックしたものと、PixInsightで1500枚全部インテグレートしたものを比較しても、トラペジウムの写りはほとんど差がなく、枚数差で背景ノイズが滑らかになるかどうかの違いが見えただけでした。 

1000枚を超える処理は、PixInsightだと結構時間がかかるので、ラッキーイメージングのような短時間露光の時はser形式でRAW動画として保存して、AutoStakkert!3の方が楽そうです。一応AutoStakkert!3はFITS形式も読めるのですが、その前にdebayerしてカラー化しないとダメで、debayerをPixInsightでやると.xisf形式になってしまい直接は読めないので、さらにTIFF形式とかへの変換が必要になります。ただ、ser形式にすると、クールピクセル処理とかはできなくなりそうなので、これもまた考えものです。一度手法をきちんと確立する必要がありそうです。

しかも、ノータッチガイドで少し流れたので、縞ノイズやらカラーノイズが結構出てしまい、あまり画像処理をする気にもならないレベルでした。


撮影結果と四隅の具合

とりあえず結果だけ。

integration_ABE_PCC_STR_all_PS_2nd

背景がノイジーなので、全然炙り出せません。暗いままです。トラペジウムも前回よりボヤボヤです。天体画像としては不十分ですが、元々の目的のフラットナーの評価だけはできます。肝心の四隅だけ見てみます。

integration_ABE_PCC_STR_all_PS_2nd_cut9


それでも元々が1秒露光なこともあり、写っている星の数が少ないので評価しにくいです。例えば右下を見るとやはり少しだけ流れているように見えます。これは、フラットナーとカメラセンサーの距離がきちんと調整されていないことが一つの原因かと思います。少し分解能は落ちるかもしれませんが、早めに一眼レフカメラに移行して、きちんとしたバックフォーカス長で撮影した方がいいかもしれません。

ちなみに、フラットナーなしの場合はこうなります。

integration2_cut9

比較して見ると、四隅は当然ですがフラットナーなしの時よりは全然マシになっています。でもトラペジウムの解像度や、中心部の星雲の解像度は前回の方が全然上ですね。同じ機器でもこれだけの違いが出ます。ピントは今回もかなり気を使ったのですが、シンチレーションの差は如何ともし難いです。


まとめと来シーズンへのの課題

結論としては
  • フラットナーを一応使うことができた。焦点も出るし、星像も改善される。
  • CMOSカメラだと少し流れている。フラットナーからの距離の調整が必要かもしれない。
  • オリオンももう季節終わりで、トラペジウムベンチマークもまた来シーズン。 
  • 1秒露光は長時間になると結構大変になってくるので、もう少しやり方を考えた方がいいかもしれない。
とかでしょうか。特に最後の長時間のラッキーイメージはどうするかは課題です。分解能を稼ぐために新ちれションが悪いところを省きたいのですが、
  • 例えばLiveStackで枚数を減らすか?でもそれだと上位画像を選べない。
  • serフォーマットで撮るか?でもそれだとクールピクセル除去ができない。-> ディザー?
  • ガイドは必須。
  • でもティザーは?何分かおきにやるのか?
など、検討すべき点がたくさんあります。 他にも
  • バローを入れる。
  • 赤外の方がシンチレーションの影響が少ないか?
とかも興味のあるところです。

大元の目的がM42をトラペジウムのF星よりも分解能よく撮りたいというものです。来シーズンまた挑戦します。
 

久しぶりの晴れ、TSA-120の5th (フィフス) ライトです。トラペジウムE星、F星の撮影時のバローとの比較記事が元で、宮地泉さんからお借りすることができたPower MATEを試すことができました。




TSA-120の環境改善、ロスマンディー規格のアリガタ

メインのバロー比較の前に、TSA-120の改良について少しだけ。下のプレートが少し進化しました。ロスマンディー規格の304mm長のアリガタをMORE BLUEから購入しました。ヤフオクの方のみにある特価品みたいです。届いたものは多少傷がありましたが安かったので不満はありません。

実際にTSA-120に取り付けて、赤道儀に固定してみるとずいぶん安定化しました。どれくらいかというと、数値的には何も比べていないので感覚でしかないです。というより、落下の不安から解放された方が大きいかもしれません。CGEM IIのVixen規格のアリミゾは深さがあまりないので、いつも落下の不安が拭えません。

IMG_9763

鏡筒バンドをどうするか、まだ迷っています。K-ASTECと思っていたのですがMORE BLUEに傾きつつあります。安いのと軽いのと、思ったよりカッコ良さそうなことです。上のプレートとハンドルも色々考えています。


まずはシリウスで本日のシーイングチェック

さて、実際の比較に入る前にもう一つ、今日のシーイングチェックです。シリウスを導入して、この前見ることのできたシリウスBを見ることができるかチェックです。



15分くらいは粘ったでしょうか、この前はあんなに簡単に見えたシリウスBですが、全く同じ設定のPENTAXのXW3.5mmで結局見ることができませんでした。途中フッと「あ、もしかしたらこれ?」というのはありましたが、最後まで確証は持てませんでした。

焦点内像(フォーカサーが短くなる方向、でいいんですよね?)方向からジャスピン位置に迫ると、その間中ずーっと綺麗なリングが見えていて、リングがどんどん小さくなります。最後に点近くに収束して行きジャスピン位置ではディフラクションリングが見えます。この日は多分シーイングがそこまで良くはないのでディフラクションリングは多少揺れています。

ところが、そのまま焦点外像方向に進めると、内蔵で見えていた綺麗なリングとは程遠いグチャグチャな像になり、さらに外像方向に進めると再び綺麗なリングになり、そまま大きくなってます。外像から内像に進めても、外像側の一瞬グチャグチャになる様子は必ず見えるため、再現性もありです。これって正しい振る舞いなのでしょうか?ここら辺もまだまだよくわかっていないので、これから色々考えていこうと思います。

さて、この日のシーイングの確認も終わり、前回ほど良いというわけではないけれど、ディフラクションリングの揺れ具合から見て、そこまで極悪というわけでもないという状態で、トラペジウムに移行します。


トラペジウムでのバローレンズ比較

今回、TSA-120の直焦点撮影を2回とバロー系レンズ4種類の、計6回の撮影を比較しました。基本的に撮影は鏡筒がTSA-120にASI294MC Pro(常温で使用)を取り付け、赤道儀としてCGEM IIをに載せています。

撮影条件と画像処理ですが基本的に露光時間が100msでser形式の動画で撮影。そのうちの上位35%をAutoStakkert!3でスタックしてます。それをPixInsightで一旦オートストレッチして、E星、F星が一番みるように少しいじっています。なので出来上がり画像の明るさなどは多少違いがあります。

バローレンズごとに変わるパラメーターですが、一つはフレーム数。基本500フレーム撮影していますが、一部ファイルはミスで100フレームとか200フレーム程度になっています。ただ、フレーム数の違いは今回の結果にはほとんど影響していないと思いまう。もう一つのパラメーターがSharpCapでのカメラのゲイン設定です。バローを使わない直焦点撮影の時にSharpCap上のゲインを320にしました。バローの倍率によって暗くなるので、その分の補正をゲインを上げることでしています。

どの撮影も露光時間は100msのまま触っていなくて、例えば2倍ならゲインを60上げる、4倍なら120上げる、5倍なら140上げるとかです。Gainの200が20dB=10倍に相当するので、これで同等の明るさになるはずです。

ちなみに、10倍は20dB、2倍は6dB、3倍は10dBくらいまではよく知られていると思いますが、5倍が14dBはすぐに出ますでしょうか?考えればすぐにわかりますが、これきちんと考えて納得しておくと役に立つ時が多いです。答えは最後の方に書いておきます。

試したバローレンズは下の通り。

IMG_9658

  • TeleVue製PowerMATE 4倍: 宮路泉さんにお借りしたものです。言わずと知れた高級機です。
  • Scientific Explorer社製 5倍: ずっと前にKYOEIで買ったもの。あまり使ってません。
  • Celestrons製 3倍: 惑星用にC8と組み合わせてよく使ってます。
  • Vixen製 2倍: 一番最初に買ったバロー。当時のスターショップ(旧誠報社)で買った低価格のもの。
となります。


19時52分: TSA-120直焦点撮影

0.1秒を100フレームほどの撮影です。そのうち35枚をスタックしたことになります。

19_52_29_lapl2_ap1_ST

直焦点撮影のうち、トラペジウムが写っているほぼ中心部を切り出しています。画像が小さいですが、100x85ピクセルしかありません。ブログ上で大きく表示しようとすると解像度を上げる必要があり、解像度を上げるとどうしてもピクセル間が補完されてしまいなめらかになって客観的でなくなります。なので実際に見ている画面上で拡大などしてみてください。

E星ははっきりと、F星もかろうじてですが分離しています。ただし、ASI294MC Proの解像度だとピクセルサイズが4.6umと大きいこともあり、1ピクセルで約1秒角。C星とF星の中心感の距離はわずか4.5秒なので、分解能不足がたたってF星の分離がそこまでうまくいっていないようです。


20時11分: PowerMATE 4倍

次に一番試したかった、宮路泉さんにお借りした4倍のPowerMATEです。こちらの結果は面白いです。0.1秒を100フレーム撮影し、35%使ったので35フレーム分です。

20_11_11_lapl2_ap5_ST

CMOSカメラ側の分解能が足りていなかった直焦点撮影に比べて4倍に拡大しているので、カメラの分解の不足の制限からは解放され、鏡筒本来の性能に迫っています。F星の分解のが明らかに上がっていることがわかります。また、4倍のレンズを入れたことによる弊害もほぼ何も出ていないと思われます。さすがPowerMATEと言ったところでしょうか。

TSA-120の口径が120mmなので、レイリー限界はほぼ1秒角。直焦点撮影の場合のASI294MC Proの1ピクセルが約1秒に相当するので、4倍のPowerMATEで1秒を4ピクセルで表現することになります。スタックしているのと、ピクセルあたりの分解能がレイリー限界より4倍ほどいいので、画像を見る限りレイリー限界以上に分解しているようです。ここらへんの話は、以前ピクセルサイズと光学的分解能の話を検討しています。



一番明るいC星とその隣のF星の距離は約4.5秒。なので、PowerMATEによってこの距離を18ピクセルくらいで表現しているので、かなり余裕が出たということが言えます。結論としては、PowerMATEは分解能向上に明らかに貢献し、変な収差なども追加しない、評判通りの非常に高性能な拡大レンズだということがわかります。


20時23分: Scientificn Explorer 5倍

次はテレセントリック設計のScientificn Explorer 5倍バローレンズになります。こちらは倍率がさらに高いので、期待大です。500フレーム撮影して、175枚使っています。

ところが、期待していたにもかかわらず、撮影時からPowerMATEに比べて明らかに見え具合は悪かったのです。結果です。

20_23_53_lapl2_ap9_ST

E星は分離できていますが、F星の分離が厳しくなっています。星像も明らかに肥大しています。ピントズレの可能性も否定はできませんが、相当気を遣っていたのと、あと少しシンチレーションが悪くなってきている気がしました。それでも先の撮影からわずか12分後くらい、そこまで大きな変化はないと思っていて、それらマイナス要因を差っ引いても星像の悪化は無視できません。


20時31分: Celestron 3倍

前回も試したCelestronの3倍のバローレンズです。惑星で一番使っているものです。500フレーム撮影して、175枚使っています。

20_30_11_lapl2_ap5_ST

E星はOKですが、ほとんどF星が分離できていません。前回と同じような結果なので、ある程度再現性はあるのかと思います。上の5倍の時の見え具合とと同等か、少し悪いくらいでしょうか。


Vixen 2倍バロー

星を始めた最初の頃に、簡易的なバローと言われた上でお試しで買ったものです。値段的にも5-6千円だったと記憶しいて、今回の中では一番安価です。こちらも500フレーム撮影して、175枚使っています。

20_35_11_lapl2_ap1_ST

E星もボケ気味、F星分離できていないですね。

ここまでで「まあ予測された性能とまあ大体一致した結果かな」と思っていたんです。ところが、です。次の結果で色々覆されました。


20時41分: 直焦点再び

どうも、シンチレーションが悪くなってきたようなので、念のために直焦点でバローなしの場合を今一度撮影しておきました。撮影枚数は200枚です。処理後少し考え方を改めました。

20_41_09_lapl2_ap1_ST

50分前にはきちんと分離できていたF星はおろか、E星さえもほとんど分離できていません。シンチレーションが実際にどれくらい変わったかを、GIFアニメにしてみました。一コマが0.1秒露光に相当します。

まずは19時52分:
19_52_29_cut_F001-102
E星、F星も分離できていますし、そもそも星がほとんど動いていません。

次に20時41分の動画です:

20_41_09_cut_F001-225

トラペジウム全体の揺れ幅も大きくなっていますが、一つ一つの恒星のビヨビヨした歪み具合もすごいです。ピントの影響はないとは言えませんが、これだけみると明らかにピントというよりはシンチレーションが悪化したといえるでしょう。

ついでに、トラペジウム周りの星雲を少しだけ炙り出してみました。

シンチレーションの良かった19時52分:
_19_52_29_lapl2_ap1_ST_Preview01

シンチレーションが悪化した20時52分:
_20_41_09_lapl2_ap1_Preview01

前者と後者を比べると明らかに星雲部分の分解能も落ちていることが分かります。これは今後の撮影において、大きな指標となりそうです。すなわち、星雲の分解能を出そうと思ったらシンチレーションのいい日を選んだ方があきらかに有利だということです。


比較結果の考察

今回の結果は色々と示唆に富んでいます。まず、シンチレーションの影響はものすごく大きく、製品比較の結果を左右するくらいであったこと。なので、安価だからと言って撮影結果から安易に性能が悪いとは言い切れません。また、撮影枚数の影響も避けきれません。ピントの再現性がどこまであるのかも客観的には検証できていません。

ただ、それらを差っ引いても、PowerMATEの性能の素晴らしさが突出しています。TSA-120単体ではもともとある焦点距離と一般的なカメラセンサーの分解能から、その性能を引き出しきれているとは言い難いです。バローレンズは明らかにその性能の引き出しに貢献すると言えるでしょう。その際のPowerMATEの精度は少なくとも実際の撮影において十分に鏡筒の性能を劣化させずに引き出すものであるということは、今回なんとか示せたかと思います。

一方、その直後に見た5倍のバローは時間の経ちかたから言ってそこまでシンチレーションが悪くなっていたとは言えず、PowerMATEに比べて性能に差があったように思えます。

今回自信を持っていえるのはそこらへんまでかと。これ以上は環境の変化の影響が大きかったということで推測になってしまうので、結論は出さないことにします。

画像処理に関しては、撮影してスタックした画像はその時点でもう引き出せる情報はある程度決まっていて、どのようにストレッチ加減をいじっても、分離できているものはすぐに分離できるし、分離できていないものはどういじっても分離できないということが分かりました。Wavelet変換相当のことをすると(今回は適用していません)もう少しエッジを立てたりして見栄えは良くなりますが、撮影した画像の順位を変えるには至りません。例えば今回示した6つの撮影画像の背景の暗さが多少違いますが、一番分離できるところに合わせているため、肥大していると背景が暗くなっていたりします。シンチレーションは順位に関係すると思いますが、そのシンチレーションで撮影された画像は、どう明るくしても暗くしても順位はわかることはありませんでした。

あと気になることとして、どの画像にも右斜め上に青ハロ、左下に赤ハロが出ていますが、これは直焦点撮影にも僅かにですが見えているので、大気収差によるものでしょう。前回セレストロンの3倍バローに青ハロが出ていると言いましたが、もしかしたら大気収差が強調されてしまっているものだった可能性があります。ただし、直焦点撮影に比べて明らかにE星、F星が見にくくなったことは確かなので、青ハロのせいというよりは、やはり分解能を悪化させる原因が少なからずあるものと思われます。時間的に悪くなっていった可能性は否定できません。

一つ面白い小話を。TSA-120のセカンドライトで金星を見た時の話をスターベースでしていたのですが、「せっかく鏡筒を買ったのに収差が見える」と意外に苦情が来るのがTOAとかTSAの高性能鏡筒なんだそうです。性能がいいので大気収差が普通に見えてしまい、それを鏡筒の収差と間違えてしまうそうです。大気収差はいつも方向が同じなので、そこが鏡筒による収差とは違うところですね。


まとめ

多くの機材を一度に比較するのは難しいということを実感しました。同じ環境を用意するのがいかに難しいかということです。シンチレーションは時間とともに自分が思っているより大きく変わっているようです。

シンチレーションがいいか悪いかは、シリウスやトラペジウムを直接見ることである程度把握できるようになってきました。シンチレーションのいい時間帯は貴重だということでしょう。もしいい時間帯があったら無駄にせずに、分解能の必要な撮影をしていけたらと思いました。

また、たかだか口径12cmの鏡筒の性能を引き出すだけでも相当大変だということがわかってきました。機材そのものの性能もそうですし、オプションの機材にも気を使う必要がありそうです。カメラの分解能もよく考えないと、せっかく鏡筒が高性能でももったいないです。あと、シンチレーションという運が一番重要で大変だということもよく分かりました。今回の結果を、今後の撮影に活かせたらと思います。

今回も楽しかったです。単に見るだけでなく色々比較することで、推測だけではわからなかったこともだんだんと見えてきます。こんなテストを自分でできるのも、天文趣味の醍醐味なのかと思います。

宮路泉さん、PowerMATEお貸し頂き、本当にありがとうございました!試すまでに時間がかかってしまって申し訳ありません。とても有意義なテストとなりました。今回の結果で、このクラスのものを手に入れておく必要性を感じました。購入を考えたいと思います。返却に関しては、またダイレクトメッセージの方で連絡します。よろしくお願いいたします。




最後はおまけです。

倍率とゲインとdBの関係

あ、最初の方に書いた5倍が14dBというのの考え方ですが、こんなふうに考えるとすぐに出ます。

5倍は10倍の2分の1です。10倍は20dB、2分の1は-6dBなので、20-6で14dBとなります。

この考え方を身に付けておくと、0.2もすぐにわかりますね。 0.2は5分の1なので、10分の1の2倍ということになります。-20dBと6dBで-14dBですね。他にも理解しておくといいのは
  • 4倍は? 2x2なので6+6=12dB。
  • 6倍は? 2x3なので、6+10=16dB。
  • 8倍は? 2x2x2なので6+6+6=18dB。
  • 7倍は6倍と8倍の間でざっくり17dB。
  • 9倍は8倍と10倍の間なのでざっくり19dBです。 
  • ルート2倍は? 2のルートなので対数の6dBだと半分になって3dB、すなわち約1.4倍が3dBですね。
  • 5dBは10dBの半分なのでルート3、すなわち約1.7倍
これくらいでしょうか。わかりにくい残りは1dB(1.1位)、2dB(1.2位)、4dB(10dB-6dBなので、3/2=1.5位)、7dB、8dB、9dB(1.4の3乗なので2.8というのはレンズを触っている人には馴染みがあるかも)11dB、13dB、15dB(1.73の3乗=3x1.7=5.2です)くらいだと思います。

重要なのはこれらを覚えることではなく、こういった導き方もあるということを理解しておくこと。この考え方を身につけておけば、いざという時に覚えていなくても導き出すことができます。

dBに10をかけたものがZWOシリーズのカメラのゲインになりますので、これは覚えておくといざという時に楽にゲインを合わせるとかできて便利でしょう。 例えばゲイン0は0dBで1倍、ゲイン60は6dBなので2倍、ゲイン400は40dBなので、100倍とかです。
 

今回はEVOSTAR 72EDでのいくつかの失敗などの裏話です。

前回までで、EVOSTAR 72EDのフルサイズの星像とレデューサーをつけた時の星像、追加でタカハシのマルチフラットナーを試した場合の星像を実際に撮影して示しました。





ところがこの試み最初全然うまくいかなかったのです。今回のお話は、何がうまくいかなかったのか、なんでうまくいかなかった、そんな反省の記事です。


フルサイズの撮影にいたるまで

EVOSTAR 72EDを受け取ったのが1月30日、最初のテストでASI178MCで簡易星雲撮影をしたのが2月1日、





2つめの記事の公開が、2月10日になります。主にこの2つめの使用記でのコメントをもとに、フルサイズの星像に挑戦しようと思うとともに、同じくリクエストのあった72ED用の専用レデューサーを借りることができないか、シュミットさんの方に問い合わせてみました。すると、ちょうど一つサンプルでレデューサーがあるというので、送ってもらえることになりました。

やはりアクロマートと言っても2枚玉なので、そのままフルサイズで写すだけだと星像の流れが大きいことが予想されます。でもレデューサーがあれば俄然やる気が出てきます。とりあえずレデューサーが到着するまで、撮影を進めることにしました。


ASI294MC画像の片ズレ

短時間だけ晴れた2月14日(金)の夜中近く、EVOSTAR 72DとASI294MC Proを使って、いきなりフルサイズには行かずに、まずはフォーサーズ相当での画像チェックをしてみました。なぜフルサイズにいかなかったかいうと、3つくらい理由があって、
  1. アメリカンサイズのQBPをCMOSカメラに取り付けての撮影テストを同時に試したかった。
  2. いきなりフルサイズだと、大きすぎる星像の流れが予想された。
  3. 手持ちのEOS 6Dへの接続準備がまだできていなくて、前回と同じCMOSカメラをアイピース口に差し込むだけの方が簡単だった。
ということくらいです。あまりたいした理由でないですね。単にフルサイズの接続が、その時面倒だっただけとも言えます(笑)。

ASI294MCをAZ-GTiをEVOSTAR 72Dとに取り付け、AZ-ZTiに載せ経緯第モードで薔薇星雲を自動導入します。SharpCapで10秒露光をLiveStackで18枚重ねて保存し、それを1枚の画像とします。合計5枚撮影したので15分ぶんの画像があります。他にも4枚の12分ぶんの馬頭星雲と燃える木も撮影しました。

ところがどの画像を見てもなぜか片側がずれるのです。その中の1枚です。撮影したFITS画像をPixInsightでオートストレッチして、JPEGに変換してあります。四隅の切り出し画像も載せておきます。

Stack_00_40_54_16bits_18frames_180s

Stack_00_40_54_16bits_18frames_180s_cut9

レデューサーなどの補正レンズをまだ使っていないので、四隅で流れるのは仕方ないのですが、明らかに左右のズレ方が違います。左側の方がズレが大きく、右側の方がズレが小さいです。他の4枚の画像も、馬頭星雲4枚も比べましたが、全て同様の傾向でした。私は当時この片ズレを鏡筒のせいだと思い込んでいました。


レデューサーでも片ズレ、しかも星像改善みられず

その後、シュミットさんからレデューサーが届いたのが2月15日、次に晴れた2月19日の平日、曇るまでの少しの間レデューサーをつけて、再度ASI294MC Proで同様の撮影をします。この時もAZ-GTiに載せて10秒露光の18枚LiveStackで180秒露光が一枚画像なのは変わりません。この日は10枚のバラ星雲を撮影しました。その中の1枚ですが、他の9枚も同様の映り具合です。

Stack_20_10_37_16bits_18frames_180s

Stack_20_10_37_16bits_18frames_180s_cut9

やはりこの場合も左側の星像の伸びが大きくて、右側が小さいです。右側は前回より少しだけマシかもしれませんが、それでも全然です。問題はこの時きちんとレデューサーつけてるんですよね。レデューサーは星像をかなりマシにするはずです。もしこの結果が本当だとしたらレデューサーでの星像改善が全然なされない!?ことになります。

ここでそうとう悩みました。もしこの片ズレが鏡筒から来ているのなら、カメラ側のスケアリング調整で直る可能性もあります。一旦シュミットさんと電話で相談して、「もしスケアリング調整でも片ボケが直らないのなら一度送り返してもらって調整してみましょうか?」という提案も頂きました。この個体だけなのか、もし他のユーザーにも同様の傾向があるなら販売店として心配だという思いがありありと伝わってきました。「いずれにせよ次の晴れ間に再度確認して、それでもダメなら送り返します。」という約束をして、次の晴れ間を待つことに。結構気合の必要なテストなので、ある程度の時間安定した晴れ間が必要です。


TSA-120での片ズレ!?

その間、短い晴れ間を利用してTSA-120のテストなどをしていたのですが、ここで重要なことに気づきました。

3月3日のトラペジウム撮影の際のことです。M42をTSA-120をCGEM IIに載せてASI294MC Proで1秒露光で60回LiveStackして、それを14枚重ねました。

integration1

integration1_cut9

20時41分から21時17分となっているので、実際にはスタック失敗のコマ落ちがたくさんあり、36分間かけて14分ぶんの画像を撮影しています。その14枚をスタックしたものをですが、ガイド撮影とか何もしていないため36分で一方向に結構な距離流れてしまい、縞ノイズが見えています。

四隅を気をつけて見てみると、右下の星像の伸びが一番ひどく、左上もまあひどい。一方、右上と左下はそれほどでもありません。このズレは当然、ガイドなしのために30分の撮影の間に赤道儀が左上から右下にかけて流れて知ってしまったために起こったものなのですが、少なくとも右下左上と右上左下でここまで違いが出るのです。

ここで「あ、EVOSTAR、片ズレとか言っていたけど、もしかしたら追尾のせいかも」と思うに至りました。EVOSTARでの撮影、鏡筒が軽いのをいいことに手を抜いてAZ-GTiで撮影していたのです。しかも1枚の画像が180秒露光に相当します。そもそもAZ-GTiの経緯台モードで撮影しているので、画面は1日で360度回転します。

例えAZ-GTiが誤差なしで完全に天体を追尾しても、3分間だと360度 x 3分 / (24時間 x 60分) = 18/24度 = 45分角と結構ズレます。これは0.013radに相当するので、画像の横幅が4144ドットとすると、4144 x 0.013 = 54ドットもずれていることになります。回転ズレはあぷらなーとさんが以前コメントしてくれたように、南天で最大、東と西で最小になりますが、この時はまだ西に沈む前。そこそこの回転速度のはずです。さらに加えてAZ-GTiの追尾誤差が入ってきます。

今回のズレの主な原因が回転だとしたら、効きは当然左右で逆方向になります。片ズレにもなるわけです。また、これだけずれていたらレデューサーの星像補正もへったくれもありません。


赤道儀を使った短時間露光撮影でやっと解決

というわけで、改めて鏡筒の片ボケ(まだこの時は片ボケも仮定はしていました)と視野の回転から来るズレを分離するために、まずは赤道儀に載せます。今回はCGEM IIを使い、極軸もSharpCapの極軸ツールを使い1分角以下のズレまで抑えました。また、露光時間も30秒に抑え、時間によるずれの効果を少なくしました。カメラも当然一気にフルサイズです。

その結果が、前回の



になるわけです。実際に撮影してみると、鏡筒の片ボケなんかは存在せず。純粋にAZ-GTiでの経緯台モードでの撮影から来る回転と、追尾の精度(光学系による星像の悪化を評価するには、露光時間が長すぎたということ)が問題だったということがわかりました。

その上でレデューサーの星像補正の効果も十分に見ることができたというわけです。これでやっと一安心できました。


反省点

今回のことは色々教訓を含んでいます。まず技術的な面。
  • 経緯台での自動追尾は長時間露光だと星像が大きく流れてしまう。
  • 誤差は一番大きなものが出てしまうので、レデューサーの微妙な補正効果などは吹っ飛んでしまう。
  • 赤道儀でも長時間の追尾ズレ(ノータッチガイド、ガイド鏡のたわみなどによるガイドのドリフト)でも星像を壊す可能性が十分にある
  • いくら性能のいい鏡筒を使っても、運用上のずれでその性能は容易に台無しになってしまう可能性がある
といったところでしょうか。普段気を付けているつもりだったのですが、今回軽い鏡筒ということもあり「AZ-GTiでいいや」と完全に油断しました。撮影時は精度が必要と、今後肝に銘じておく必要があります。

もう一つ、こちらは別の意味でもっと重要なのですが、機器をお借りしての評価なので、間違った方法で判断してしまうと、メーカーの信頼を損なう恐れがあることです。もともと勝手に始めた評価だったのですが、自分の発した言葉には必ず責任が伴ってきます。自分のことだけならまだしも、他人を巻き込んでのことなので、安易な結論を出す前に、きちんと考える必要があります。以下が、今回得た教訓と言ってもいいのかもしれませんが、
  • おかしなことがあっても、必ず別の日、別の条件などで再現性があるか試す。
  • 納得がいかなかったら、原因を色々考える。
  • 安い機材だからダメだとか、高級機だからいいとか、先入観を持たない。
以上のことは、お借りした機材だけでなく、自分だけのテストでも心がけるようにしたいと、切に思うようになりました。

実際、今回は鏡筒がおかしいと判断して送り返してしまう一歩手前まで行きました。当然送り返した先の検査では問題ないと出たでしょうし、そうなると泥沼です。このブログを読んでくれている方に間違った情報を伝えてしまいますし、このブログの内容も信頼をなくすことになるでしょう。もしかしたら機材の売り上げにも影響するかもしれません。

もちろん、所詮個人が試しているレベルのことなので、ミスもあるでしょうし、これからも勘違いもあることでしょう。完璧は難しいですが、今回のことを反省材料に、できる限り客観的に、精確に評価できるよう心がけてきたいと思います。


まとめ

正直、実際に撮影しながらレデューサーの性能が出た時、やっとほっとしました。評価終了までずいぶんと時間がかかってしまったので、サイトロンさんには申し訳なく思っています。

今回の反省記事も含めて4回(最初の簡易星雲撮影も入れたら5回 (2020/3/30 追記: ついでにおまけ記事撮影まで試したので計7回の記事になりました。) )にわたりEVOSTAR 72EDについて書いてきました。色々紆余曲折もありましたが、実際に触りながらのレポートで、EVOSTAR 72EDの魅力も十分に伝わってくれていればと思います。

EVOSTAR 72EDですが、電視観望鏡筒として、入門機の次のステップとして、初めての撮影になど、すでに持っている方も、今後実際に購入して試す方もたくさんいらっしゃるかと思います。レデューサーはじめ、いろいろ工夫することで撮影にも十分耐えうる鏡筒だと思います。値段も付属品の充実具合とともに、アポクロマートとしては十分魅力的だと思います。

今回の私のような失敗をしないように、いや例え失敗したとしてもきちんと検証して次に進み、鏡筒が持っている性能をうまく引き出すことができるようになると、さらに楽しさが増すのかと思います。今回のEVOSTAR 72EDは、そんなテストにも十分耐えうるだけの性能を持ち、かつ値段的にもいろんなテストが気軽にできる、ある意味とても使いがいのある鏡筒なのかと思います。鏡筒の性能を十二分に引き出して、もしそこで不満が出たら次のステップに進むのも、さらにまた道が広がっていくのかと思います。

EVOSTAR 72EDシリーズの記事もこれでひと段落になります。また何か面白いことがあったら記事にします。

追記: その後撮影の一例として、レデューサーにASI294MC Proをつけ、バラ星雲を撮影し画像処理まで進めてみました。


おまけ、カメラ落下事件

あ、撮影中にカメラ(EOS 6D)を落下させたこと書くのを忘れてました。これも失敗の一つです。

私の持っているM42から2インチスリーブへの変換のカメラアダプター、長さが1cm位と短いのです。しかもそのアダプターを固定する2インチスリーブの3つあるネジの一つを閉め忘れて赤道儀に鏡筒を取り付けたら、6D君が見事に外れてそのままアスファルトの地面に落下。落下はC8以来、久しぶりにやらかしました。

実はこのカメラL字アルカスイスプレートをつけてあって、後で傷を見たら、ラッキなーことにそのL字プレートのところで地面に激突したみたいです。

IMG_9747


動作も問題ありませんでした。L字アダプターさまさまです。アダプターの選択と、ネジの閉め忘れには十分なご注意を。



先日テストした、シュミットさんからお借りしているEVOSTAR 72EDですが、簡易星雲撮影ということで、カメラに1/1.8インチというセンサー面積の小さいASI178MCを使い、星像が綺麗な中心像を主に使った例を示しました。




コメントの中で、APS-Cやフルサイズ面積の星像もみたいというリクエストがありました。天気もあまりチャンスがなく、トラブルなどもありなかなか進展していませんでしたが、やっとまともに検証できたので結果を示したいと思います。


一眼レフカメラの取り付け

72EDには2インチアイピース口が標準となります。基本的には他のアダプターなどは付属していないので、一眼レフカメラを取り付けために、いくつかのアダプターをあらかじめ準備しておく必要があります。

まずは、EVOSTAR 72EDの販売ページに行ってみます。



そこに色々なオプションパーツへのリンクが張ってあります。この中で必要なものを挙げていきます。

とりあえずはカメラ接続だけなら2インチの延長等を兼ねたM42への変換アダプター



が必要になります。これがあればあとはカメラメーカーごとに対応したT2マウントアダプターがあれば、手持ちの一眼レフカメラに直接接続できます。




撮影だけの場合は上記のものでいいのですが、普通は31.7mmサイズのアイピースも使うと思いますので、上記の代わりに別のM42ネジになっていないタイプの2インチ延長筒と、2インチから1.25インチの変換アダプターにしておいた方がいいかもしれません。





この場合、カメラを取り付けるにはさらに2インチスリーブとM42ネジへの変換アダプターが必要になります。



実はカメラを鏡筒に取り付けるだけなら、2インチスリーブとM42ネジへの変換アダプターだけでもいいのですが、フォーカサーの伸びに限界があるためピントが出ません。そのため実際には延長筒は必須になります。

私は今回は後者のタイプでカメラを接続しています。後者の場合もT2マウントアダプターが必要なのは、前者と同様です。

実際に接続した場合、下の写真のようになります。

IMG_9649

惜しむらくは、鏡筒バンドを取り付けることのできる位置が限られているので、一眼レフカメラを取り付けるとどうしても後ろが重くなりがちになってしまうことです。赤道儀などに取り付ける際はバランスに注意が必要です。


72ED用、専用レデューサー

前回の評価記事のコメントの一つに「レデューサーの性能も見たい」と言うようなコメントがありました。でも今回お借りしたのは鏡筒だけで、レデューサーは無いんですよね。

と・こ・ろ・が、前回の記事を見てシュミットさんが、な、なんと、レデューサーも評価用のサンプルがたまたまあるとのことで、貸してくれることになりました。これで俄然撮影の方もやる気になってきます。

ジャンジャカジャーン!とうとう専用レデューサー到着でーす。

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「焦点距離を0.85倍に縮小し(焦点距離357mm 口径比4.9)、視野周辺の星像を改善する」とのことなので期待大です。定価は40,975円(税込)ですが、今ホームページを見ると20%オフになっていて税込 32,780円になっていました。鏡筒の値段が税込 47,300円なので、決して安いものではありませんが、価値があるかどうかは後の実際の画像を見て判断してみてください。


専用レデューサーの実際の取り付け

レデューサーの取り付けは、中にマニュアルが入っているので迷うことはないかと思います。ただ、日本語になっていないので少しわかりにくいかもしれません。簡単にですがここで解説しておきます。

まず、付属の2インチスリーブを回して取り外し、代わりにレデューサーに付属のアダプターリングを取り付けます。レデューサー本体の前後のキャップを回して外し、そのアダプターリングに直接取り付けるだけです。

IMG_9505


(お詫び: 初出記事にレデューサーのネジ径に間違いがありました。レデューサーのカメラ側の接続ネジはM48径が正しいです。ご迷惑をおかけしました。)

次にカメラ用アダプターの接続ですが、ここで問題が発生しました。レデューサーのカメラ側のネジがM48ではないようで、普通のT2アダプターだとM42が標準のようでねじ込むことができません。

ホームページ
にはきちんとM48と書いてあります。しかもよく見ると「同社」専用アダプターを使って下さいと書いています。

EOS用、NIKON用があるようです。





さらに専用の回転装置もあるようです。



回転装置は鏡筒とレデューサーの間に挟むものなので、レデューサーとカメラ間の距離はカメラアダプターのみで決まるようです。

さて、レデューサーについているカメラ側のネジを実測するとM53のやはりM48のようです。私の場合はたまたま持っていたタカハシのカメラマウントDX-S EOS:KA01250がM53の一段下がった内側についているネジがM48だったので、接続だけはできました。

下の写真の左がレデューサー、右側のアダプターが一般的なT2アダプターでM42(自宅にあるのは3つともM42でした)、真ん中がタカハシのM53ので外側がM53、内側にM48が切ってあります。径の違いが写真でもわかるかと思います。カメラ接続アダプターを購入するときはT2(M42)でなく、間違えずにM48のものを選んでください。バックフォーカスも考えると、上記の専用品を買うのが良いのかもしれません(すみません、今回は検証できていません)。


IMG_9738


今回このタカハシのM53のアダプターの内側のM48を使って固定することで撮影しましたが、専用品と違ってカメラセンサーまでの距離が変わりますし、ねじ込みも数回転しかねじ山が引っかからずに少し不安だったので、あり合わせのものを使わずに、専用品を購入した方がいいでしょう。

さて、とりあえず撮影の準備ができました!実際に撮影して星像を見てみましょう。


撮影環境

今回はセットアップしたEVOSTAR 72EDを手持ちの赤道儀CGEM IIに鏡筒を載せて撮影しています。
  • 露光時間30秒でM42付近を撮影しています。
  • テスト撮影で星像を見るだけなので、1ショットの30秒短時間撮影の撮って出しとしています。
  • スタックなどの画像処理は一切していません。
  • QBPなどのフィルター類も入れていません。
  • カメラはEOS 6D。天体用に赤外線フィルターを外したものです。

赤道儀への取り付けですが、先に書いた通り、前後バランスはやはりカメラがついているせいもあり、後ろ側が重いです。赤道儀に取り付ける際、できるだけ前の方に取り付けるようにします。


フルサイズ星像

撮影結果です。まずは鏡筒単体です。露光時間30秒は全部共通、ここでのISOは3200です。JPEGの撮って出し画像になります。

IMG_5427

やはり、アポクロマート鏡筒と言っても2枚玉の限界、さすがに四隅の星像は大きく歪んでしまっています。さらに気になるのが周辺減光です。撮って出しなのでなんの加工もしていません。思った周りが暗くなるようです。

四隅を拡大して見てみます。300ピクセル四方を切り出しています。最周辺の8マスがフルサイズ換算、中の周囲8マスがAPS-C相当になります。

IMG_5427_cut

中心像はいいのですが、やはり素のままの鏡筒ではフルサイズでもAPS-Cでも星像の流れは大きいです。


専用レデューサーでの星像

次に、専用レデューサーでの星像です。0.72倍で明るくなるので、ISOを1600に落としてあります。あとは露光時間30秒も含めて全て同じ条件です。あ、回転角は取り付け時にサボって合わせなかったために(合わせるためにはイモネジを緩めて調整する必要があります)適当です。こんなことを回避するためにも専用回転装置はあったほうがいいのかと思います。

IMG_5429

レデューサーのおかげで鏡筒単体に比べて、圧倒的に星像が改善されています。あと、特筆すべきが周辺減光の改善です。普通は周辺減光厳しくなるのかと思いましたが、JPEG撮って出しで特に何もしていないので、実際に改善されているものと思われます。

四隅も拡大して見てみます。

IMG_5429_cut

相当いいです。フルサイズだと、よく見るとまだ少し歪んでいるところもありますが、APS-Cだとほぼ点像になっています。しかも今回使ったカメラ接続アダプターが専用のものではないので、レデューサーとカメラセンサー間の距離がメーカー推奨値と違うため、最適化されたものとはまだ違う可能性があることも考慮に入れておく必要があります。それでも十分な星像です。

手持ちのものに例えるなら、フルサイズだとFS-60CBにレデューサーをつけたものとそう変わりはないくらいでしょうか。この値段でこれだけの星像を得られるのは、ある意味驚きです。撮影にも余裕で耐えることのできる十分な性能だと思います。


まとめ

今回の記事で、フルサイズまでの星像を見てみました。素のままでは2枚玉の限界もあり、四隅の星像は乱されてしまいますが、レデューサーをつけることで相当改善することがわかりました。APS-Cサイズならほぼ点像、フルサイズでも十分許容範囲の星像です。

初めてのアポクロマートとしては相当魅力的な値段がつけられているEVOSTAR 72ED。前回の記事で電視観望用として最適ではと書きましたが、レデューサーを取り付ければ撮影用鏡筒としても十分な性能を発揮しそうです。


EVOSTAR 72ED関連の記事、まだ続きます。あと2つくらいネタがあります。乞うご期待。

2020/3/15 追記: 次の記事でレデューサーに引き続き、フラットナー?を試しています。




手持ちでまだ試していないレンズが2本あって、少しの晴れ間にその2本の星像チェックをしてみました。

これまでも主にPENTAXレンズでの星像を試していますが、例えば前回の2本は期待の135mm F4がいまいち、300mm F4が意外に良かったなど、なかなか予想し難くて、これまでの成績は1勝、2敗、2分け(自己評価)といったところです。

 

 





機材と撮影条件

今回試すのは
  • PENTAX 6x7 165mm F2.8
  • Nikkon 135mm F2.8
です。実は先週末に両レンズとも一度試したのですが、赤道儀に載せるのをサボってしまい、カメラ三脚と自由雲台で撮影して見たら5秒露光でも星像が流れてしまってうまく評価できなかったので、今回はきちんと赤道儀に乗せて少なくとも30秒くらいまでの露光では星像が流れていかないようにしてのテストです。

撮影した領域はオリオン座のM42と三つ星が入るくらい。リゲルもギリギリ入っています。それぞれのレンズにCANON EF用の変換マウントを取り付け、EOS 6Dで撮影します。カメラはCGEM IIにアルカスイス互換マウントを取り付け、カメラに取り付けたL字プレートに固定します。撮影条件は
  • ISO1600
  • 露光時間5秒
が基本です。


Nikon 135mm F2.8

まずは、昨年10月前半に手に入れていたNikkonの135mm F2.8です。

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このレンズを買った直後の、同じ10月の後半からPENATXレンズに走り始めてしまって、いまいちNikonレンズに対する盛り上がりに欠けてしまっていて、ずっとほっぽらかしでした。いや、元々の動機はFS-60CB+レデューサの焦点距離255mmを下回るレンズを探していたことにあります。以前撮影したアンタレス周辺をもう少し広角で撮影したいというのが最初の動機です。このレンズはちょうど255mmの半分くらいの焦点距離で良かったのですが、なにしろPENTAXの方が面白くなってしまったのが原因で今になってしまったというわけです。

カメラのモニターで見る限りは拡大してもそれほど悪くありません。ピントは回し切って少し戻すくらいが星像の最小点になります。中心像ではピント最小点で赤ハロ、青ハロ共に消えてくれます。

ISO1600、5秒の撮って出しJPGです。取っているときに気づいたのですが、薄ーい雲がかかってき始めていたようで、星いっぱいというわけにはいきませんでした。

IMG_5418

それでも四隅の像を比較することはできます。いつもの300ピクセルを切り出して見てみます。

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右上と右中にに少しコマ収差が出てしまっていますが、それ以外はそれほどひどくはなく、一応使えるレベルでしょうか。コマ収差も一部のみの方向ですし、大きさそのものも105mmの時よりはマシです。

少しわかりやすいように、上の画面をPixInsightでオートストレッチをかけてみました。

IMG_5418_STF_4_8cut

細かく見ると、右側以外にも四隅ともコマ収差は確認できます。そのために星像の外側が角ばっているような印象を受けます。それでもひどいものではないので、拡大して見ない限りはそれほど気にならないくらいだと思います。



PENTAX 6x7 165mm F2.8

次は先月、中古TSA-120をスターベースで見る前に、同じ秋葉原のキタムラで見つけてしまったPENTAX 6x7 165mm F2.8です。

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ISO1600、5秒の撮って出しJPGです。この頃には結構雲がかかってしまい、続行するか迷いましたが、同じ日で比べたいので、とりあえず撮影だけはしておきました。

IMG_5412


四隅です。
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そもそも雲であまり星の数が写っていませんが、それを差っ引いてもかなりいいです。間違いなく当たりクラスです。75mmのときも悪くないと思っていましたが、それでも強拡大すると周辺で十字になっていたりします。今回の165mmはそれと同等か、それよりもいいくらいです。

念のため、これもオートストレッチをかけたものを載せておきます。
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多少の崩れは見えてきますが、それでも全然悪くありません。比較しやすいように75mmの星像も再掲載しておきます。

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これも当時はかなり良く思えましたが、今回の165mmの方がやはりいいと思います。


まとめ

今回は2本とも悪くないです。特にPENTAXの方は大当たりで、しかもF2.8と、そこそこ明るいので使いがいがありそうです。今年の春から初夏にかけてこれでアンタレス付近を攻めることになると思います。

さて、今回のものを含めて順位で言うと、
  1. PENTAX 165mm F2.8 >
  2. PENTAX 75mm F4.5 >>
  3. PENTAX 300mm(全面に青ハロによるわずかの星像肥大) =
  4. NIKKON135mm F2.8(右側コマ小) >
  5. PENTAX 105mm F2.4(全体にコマ中) >>
  6. PENTAX 135mm F4(全体にコマ中大) >>
  7. PENTAX 200mm F4(全体にコマ大、赤ハロ大)
 と言ったところでしょうか。勝敗で言うと上から、2勝、3分け、2敗と言う自己評価です。

ちなみに値段は

3.5諭吉 > PENTAX 105mm F2.4 >> PENTAX 165mm F2.8 > 2諭吉 > NIKKON135mm F2.8 > 1諭吉 > PENTAX 75mm F4.5  > PENTAX 135mm F4 > PENTAX 200mm F4 >> PENTAX 300mm > 1漱石

と言ったところです。値段はあまり当てにならないようです。

今回ダメだったらもうPENTAXは諦めようと思っていたのですが、こんなふうに当たってしまうときがあると思うと、ますますレンズあさりはやめられないです。安いからまだいいですが、これもまた沼ですね。
 

今回の記事は、ここ何回かの過去記事の裏話的なことから始まります。前回の記事を見て、「あれ?SkyWatcherの鏡筒がなぜあるの?」と思った方もいらっしゃることでしょう。

AZ-GTiのレビュー依頼

実は今回、QBPを送って頂いた際に、普段から使っているAZ-GTiのレビューをお願いできないかをサイトロンさんに頼まれました。AZ-GTiは稼働率断然No.1。本当によく動いてくれるのですぐに快諾しました。

最初のやりとりで「電視観望によく使っているので、そのことを書きましょうか?」と提案すると、「それは面白い!」と。電視観望の時の様子や、画面に出ている様子の写真もあるといいとのこと。

ところがその際に「AZ-GTiで何か作例がないのでしょうか?」との相談を受けたのです。電視観望はあくまでリアルタイムで見ることを目的としているので、普段PCの画面を撮っていますが、あれはむしろ記録として撮っているに近くて、作品として人様に見せるようなものではありません。

それでパッと思いついたのが、以前AZ-GTiを赤道儀化して2軸ガイドでテスト撮影したものです。「それでもいい」と言ってくれたのですが、よくよく考えるとAZ-GTiの赤道儀化って、メーカの正式の使い方ではないんですよね。それなら「新たに経緯台モードで撮影してみようかと思っている」と相談したら、「せっかくなので同じSkyWatcherのEVOSTAR 72EDを使ってみてくれないか?」とトントン拍子に話が進みました。その時の結果が前回の記事の「AZ-GTi経緯台モードを使っての簡単星雲撮影」につながっています。




SkyWatcher EVOSTAR 72ED

EVOSTAR 72EDが到着したのがTSA-120が到着した週の木曜日。TSA-120が到着したばかりで、1週間も空けずにさらに大きな箱が届くので、怖いことにならないように妻にはあらかじめ「評価用のサンプルだからね!買ったんじゃないからね!」と強く念を押しておきました。

EVOSTAR 72EDはコンパクトなEDレンズを使った2枚玉アポクロマート鏡筒です。焦点距離が420mmと短いので、電視観望にもってこいです。電視観望で使えるなら、今回の目的の簡単撮影でも十分に使えるのではとの考えです。

実売で税込5万円を切っているので、手の出しやすい価格だと思います。この値段で、まずアルミ専用ケースがついてきます。専用ケースは持ち運びや保管にはやはり便利なので、素直にいいと思いました。

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蓋を開けてみると、鏡筒バンド、アリガタまでついているのでもう至れり尽くせりです。

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さらにフォーカサーには減速器もついていて、そのまま撮影にも使えそうです。

その一方、アイピースは付属していません。アポクロマートクラスを選択肢にするような人だと、アイピースは好みがあるので付属されていなくても問題ないと思います。一方、ファインダーも標準ではついていないとのことです。オプションで純正のファインダーが用意されているので困ることはないのですが、初心者にはわかりにくいので、購入時はショップなどでサポートが必要かもしれません。

シュミットのEVOSTAR 72EDの販売ページからオプションを選ぶことができます。惜しむらくは専用ファインダーが載っていないことでしょうか。

私の場合は電子ファインダーを使ってしまうか、420mmと焦点距離が短いのでそのまま鏡筒を使って、強引に自動導入の初期アラインメントに持っていってしまうと思います。このようにファインダーが必要のない人もいるので、その分オプションにして値段を下げるというのは、選択肢が増えるという意味で正しい方向なのかと思います。


実際にEVOSTAR ED72を使ってみて

2月1日、本当に久しぶりの晴れの週末の土曜日、もうこの日しかないと思い、TSA-120のファーストライト、広角リアルタイム電視観望、さらに今回のEVOSTAR ED72を使ったAZ-GTiの経緯台モードでの簡単星雲撮影の、3つを同時並行で進めることになってしまいました。

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簡単星雲撮影の話は前回の記事を読んでもらうとして、ここではEVOSTAR ED72の使い勝手について書きます。
  • サイズ的にはAZ-GTiにも余裕で載るくらいの軽量でセッティングも楽です。
  • 焦点距離420mmと短いので、比較的広角で見ることができます。
  • 口径72mmなので、F5.8。実際に使ってみてもそこそこの明るさがあります。
  • CMOSカメラを鏡筒にそのままつけると、フォーカサーの稼働範囲内では短すぎて焦点が出ないので、予めアイピース口にはめる延長筒を用意しておくといいでしょう。
  • 光学性能は少なくとも電視観望にはもったいないくらい十分。撮影レベルでも前回の結果を見ていたければ分かる通り、星像はほぼ点像。組み立て精度も悪くなく、十分な性能を持っていることが分かります。
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  • ただ一点、撮影時にSharpCapのPCの画面を見て気付いたのですが、恒星周りに少しだけ青ハロが出るようです。
スタックしただけの未処理に近い写真を見てもらうとわかりますが、恒星の周りが少し青くなっているのが分かると思います。
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と言ってもひどいものではなく、電視観望では逆にこれが画面にカラフルな印象を与えてくれて悪くないのですが、やはり画像として仕上げるときには気になる人もいるかと思います。

シュミットの店長さんにも電話でこの件を話しましたが「いえ、正直に書いていただいて結構です。」とのこと。欠点を隠したりしない姿勢はとても好感が持てます。やはりアポクロマートと言っても、ここらへんは2枚玉の限界のようです。

SkyWatcherの屈折鏡筒を調べてみると、アポクロマートだけでも3クラスあるようです。
  • 一番上のクラスはEspirit apoシリーズ。3枚玉の高級機です。日本では正式には未発売のようで、アマゾンで一部取り扱っているだけです。
  • 真ん中がBK EDシリーズ。値段的にはEVOSTARの倍くらいでしょうか。
  • そして今回の72EDを含むEVOSTARシリーズ。アポクロマートの入門機の位置づけで、値段的にも手頃です。
  • さらにEVOLUXというシリーズもできるそうです。これもEDレンズを使っているようなので、これを合わせるとアポクロマートは4クラスになるのでしょうか。

青ハロの簡単な改善方法

さて、わずかの青ハロですが、せっかくなので簡単に改善する方法を考えてみましょう。

きちんと処理しようとすると、RGBの各チャンネルに分けて、B画像の星像を縮小するような加工をかけたりするので、結構な手間となります。でもここで提案するのは、Photoshopの「色相・彩度」をいじる簡単な方法です。

Photoshopの「イメージ」メニューの「色調補正」「色相・彩度」と進みます。出てきたダイアログで「マスター」と出ている選択肢を「ブルー系」に変えます。その後、「彩度」もしくは「明度」を弄ります。通常は明度を下げるだけで十分でしょう。今回は-30ほどにまで下げてみましたが、それだけで以下のようになります。

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これだけの操作ですが、青ハロがほとんど目立たなくなっていることが分かると思います。このテクニックは画面の中に青い部分がそれほどない画像に使えます。プレアデス星団など、青い部分が多い画像では一番出したい部分を目立たなくしてしまうので、先に挙げたRGBに分離するなどして丁寧に処理流必要がありますが、今回のようなHαがメインの画像には簡単に使える有効なテクニックです。


まとめ

今回、ひょんなことからEVOSTAR ED72を使うことになりました。最初に書いた通り元々はAZ-GTiのレビューの依頼でした。でもAZ-GTiに関してはこれまでこのブログでも散々書いているので、今回は頼まれてもいないEVOSTAR 72EDの方を、勝手にレビューしてしまいました。あ、一応ブログに書くと言うことは伝えてあります。「正直に書いてください」と言うことなので、忌憚なく書かせていただきました。

2枚玉のアポクロマートということで、星像に関しては思っていたより全然鋭く、形もきれいに点像になります。青ハロが少しでますが、人によっては気になる方もいるかもしれません。それでも画像処理で簡単にどうこうなるレベルです。それよりも、最初からアルミケースがついている、減速機付きのフォーカサーもついていると、遠征や撮影まで考えて、この値段でこれだけ付属品をつけてくるのはすごいです。特にケースは、後から適したサイズのケースを探す苦労を考えると、純正品でついてくるのは大きな利点です。

個人的には「電視観望に最適なのではないでしょうか」と、お勧めしたいです。値段的にも手頃で、かつ星像もしっかりしているので、前回の簡単星雲撮影なんかを試すのにも十分適した鏡筒だと思います。電視観望に気軽に使えるアポクロマートという位置づけで考えたら、現実的に周りを見渡しても、値段と性能のバランスから、多分ベストの選択肢に近いのではないかと思えました。これでもし不満が出てきたなら、撮影用に次にステップアップするのもいいのかと思います。

さてこの鏡筒、まだしばらく使っててもいいということなので、もう少し楽しんでみます。また何か面白いことがあったら報告します。

2020/3/15 追記: その後、フルサイズ域での星像を、素のままの鏡筒とレデューサーをつけた場合で撮影比較してみました。

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