ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:調整・改造 > テスト

お盆休みの月曜日、昼からずっと空全体にかかっている薄雲が恨めしく、夕方以降何度外に出ても月がボヤーッと朧(おぼろ)状態です。ペルセウス座流星群が最盛期だとしてもこの月の明るさと、さらに雲なので何もやる気が起きず、もう寝ようかと思って22時頃外に出ると、雲がだいぶ無くなっていて月もキリッとしています。ここは気を取り直してVISAC君ことVC200Lのテスト再開です。

アペニン山脈の分解能

最初に試したかったことは、前回のファーストライトの時に撮影したアペニン山脈が、なぜ過去に撮影したC8で撮影した時の分解能にはるか及ばないかを調べることです。

comp_C8_VISAC
左のC8で撮った方がはるかに解像度が良いです。

口径は同じ200mm、C8の焦点距離は2000mmでVISACが1800mmなので高々1割の違い。それで解像度が大きく違うとは全然思えません。ましてやスポットダイアグラムの優れているはずのVISACが大きく劣るとは、なかなか不思議な結果です。一番大きな違いはカメラで、C8はASI178MCで1素子のサイズが2.4um、VISACがASI294MC Proで1素子のサイズが4.6um。2倍近く178の方が細かく撮れるはずですが、それだけで上の比較写真くらいまでの違いが出るものなのでしょうか?他にもピントがどれくらいあっているか、シンチレーションが違うのかなどもあるかと思います。

このナゾを解くため、今回はVISACにASI178MCを取り付けて、同様な画角で写してみます。撮影条件は12.5msec露光で、ゲイン120。1000コマ撮影して25%、上位250コマをスタックしました。その結果が以下になります。

Capture_ 23_34_49_23_34_49_lapl3_ap2661_RS_cut
VISACにASI178MCを載せて撮り直し。きちんと分解能が出ています。

月齢11.5日で満月に近く、陰影はあまりないですが、解像度は相当上がったように見えていて、C8で撮影したものにほぼ差し迫っていると思います。ということは少なくともASI178MCで同条件で撮影したら、以前C8でとったかなりの解像度までは迫ることができるということがわかりました。ただし、(これは最後の解析までしてやっと気付いたのですが)まだ少なくとも同じくらいのものが撮れたというだけで、この時点では他の条件の違いの可能性もあるので、カメラの違いかどうかの確証はありません。

と、ここでふと思いました。VISACでM57をASI178MCで撮ったらもう少し分解能が上がるのではないかと。


M57の中心星を出す

やることは単純です。VISACでカメラをASI178MCにして撮影するだけ。ただしセンサーサイズが1/1.8インチと小さいので見ている範囲がせまく、導入に少し苦労します。露光時間は10秒にして、ゲインは470と高めです。これはASI178MCの感度がいつも使っているASI294MC Proなどに比べて約4分の1と低いため、ある程度の露光時間をかけて、かつゲインも上げてやらなければ、そもそも満足に写りもしないからです。

とりあえず、10秒一枚の撮って出しを見せます。オートストレッチをかけてあるだけです。

Capture 00_59_11_Stack_16bits_7frames_70s
中心星がこんなに点で出るのは初めてです、

一枚なのでノイジーなのは仕方ないとして、驚くべきことにM57の中心星と隣の星がほぼ完全に点になっています。これまでこんなに点になるとは、考えることさえできなかったレベルです。

この時点でも、おむすび型の星像はまだ残っています。でも前回のテストは1秒露光で鏡筒が持っている星像がかなりそのまま出ていたはずですが、今回は10秒露光なので機材の揺れやシンチレーションで積分され、オリジナルな星像は鈍って多少真円に近くなっています。

これをスタックして画像処理をしてみます。Live Stackで6枚の60秒分の画像をSharpCap上でスタックし1枚の画像としそれを45枚、すなわちトータル45分の露光時間となります。ダーク補正は撮影中にリアルタイムでしてありますが、フラット補正とバイアス補正は今回省略しています。その結果が以下になります。

integration_DBE_PS2
中心星はOK、でも星の形がやはりいびつ。

M57の中心星と隣の星に関してはかなり満足なレベル。M57の12時方向の2つの距離の近い星も、何の苦労もなくはっきり分かれています。

フラット補正をしていないので、背景はグチャグチャで適当にごまかしています。こうなってくると星像のアラがどうしても目立ちます。次はおにぎりさんの改善を目指すことにします。今情報を集めてますが、少なくとも改善の方法はありそうなことがわかってきました。こちらはもう少し実践してからまた記事にします。


考察

さて今回の疑問は、1素子のサイズが高々2分の1もいかないくらいになっただけで、こうもいろいろ変わるのかということです?

いろいろ考えたのですが、なかなかこの差を説明することができなかったので、頭を切り替えて、C8で撮った画像をどれくらい解像度を落とすとVISACで撮ったのと同程度になるのか試してみました。

1素子のサイズ比 = 46./2.4 = 1.93なので、まずはC8の画像の解像度を1.93分の1にしてやってみました。でも結果はまだ全然、あからさまにC8のほうがいいです。やはり高々2倍くらいの素子のサイズ違いでは全く説明できないです。

そこそこ合うなと思ったレベルはC8の画像の画素数を一辺で8分の1にしたとき、すなわち3128 bx 2014 pixelの画像を、Photoshopで一旦391 x 263 pixelにまで落として、それをバイキュービック法で再び3128 x 2014 pixelに戻したくらいの相当荒い画像でやっと一致するということです。以下がその画像になります。

comp_C8_VISAC_x8
最初の画像の左のC8の方の分解能を8分の一くらいに悪くして、
やっと前回とったVISACと同等です。

これくらいまで落として、やっとVISACの画像と同程度か、下手をしたらまだいいかもしれません。流石にこれだけの違いをカメラの解像度だけで説明するのは無理なので、今回はおそらくVISACで最初に撮った画像がピンボケだったと言うくらいしかないです。ただし、VISACの方は視野の端で撮ったからという影響も無いとは言い切れていません。

ピンボケだったとするとまあ間抜けな話なのですが、でもこれはある意味怪我の功名で、少なくともカメラを代えたりしたり手間をかけての検証でしたが、M57の解像度を上げることにはつながったことになります。

じゃあM57の画像もピンボケだったのかと言うと、どうやら多分そうだったみたいです。今回VISACとASI178MCで撮った画像の解像度を半分くらいに落としましたが、まだまだ中心星も全然点像で十分な解像度があります。こちらも解像度を6分の1くらいに落としてやっと前回撮影したM57と同レベルになりました。

comp_camera
こちらも前回のASI294に一致させるためには、
解像度を6分の1くらい悪くする必要があると言う結果です。

こちらもこれだけの違いを、カメラの1素子のサイズの違いだけで説明することはやはり困難かと思います。前回はファーストライトでまだ慣れてなくてピンボケで、今回は気を使ったと言うことになるかと思います。


まとめ

でもまだ本当にピンボケだったのか、100%そうかと言われるとイマイチ自信がありません。今回のASI178MCの点像の出方が良すぎるからです。もしピント問題だったとすると、ピント位置は結構シビアな可能性が出てきます。今一度VISACにASI294MC Proをのせて、M57できちんとピントを合わせて見てみるなどすると、単にピント問題だったのかがより確定すると思います。

また、C8やMEADEでも例えばASI178MCを使えば同じように解像度よく出るのか、それともやはりVISACだけがすごいのか、まだもう少し検証してみたいです。

うーん、でもかなり楽しくなってきました。いままでC8とMEADEで全く無理だったこの点像。少なくともこの点像を出せるだけでもVISAC侮れないです。


原村星まつり直前、なぜこんな時に!?と生えてきたVixenのVISACことVC200L。梅雨の間ずっと我慢していたのですが、最後の最後でポチリヌス菌に感染してしまったようです。原村星まつりであまり買い物が進まなかった理由の一つがこれです。予算が厳しかったのです。




購入の理由

とにかくやりたいのがDSO(Deep Sky Object)、すなわち系外銀河などの長焦点での撮影です。長焦点でシャープな星像を撮影することができる鏡筒をずっと探していました。ラッキーイメージももう少し試したくて、短時間露光で揺れを排除して星像を絞る時に、シャープでないと意味がないという理由もあります。安価で、ハズレでなさそうなVC200Lが出るのをずっと待っていました。


手持ちのシュミカセはダメなの?

手持ちの機器のうち、長焦点に相当する鏡筒が口径20cmのCelestronのC8と、口径25cmのMEADEのLX200-25のF6.3仕様のもので、いずれもシュミカセ(シュミットカセグレン) です。シュミカセはシュミット補正板を入れた、カセグレン式の、鏡筒の長さを短くしたもので、重量も大したことなくコンパクトで扱いやすく、広く出回っている鏡筒です。

オリジナルのシュミットカメラは、球面収差とコマ収差と非点収差を解決しているいわゆるスチグマート条件を満たしていて性能的に有利である一方、鏡筒が巨大になる、撮像面を湾曲させなければならないなどの扱いにくさもあるおかげで、市販品としてはコンパクトなシュミットカセグレン式の方が圧倒的に数が出ています。一方、そのコンパクトさを実現するために、性能的に必ず妥協をしていて、スポットダイアグラムも星像が肥大していて、比較するとその違いはすぐにわかります。特に四隅に出てくるコマ収差は非常に目立つため、シュミカセの撮影は惑星などの中心像を生かすものが主となっています。

最近ずっと触ってきたLX-200-25ですが、スポットダイアグラムがあまり出回っていないのではっきりとはわからないのですが、F値が6.3と小さいこともあり、コマ収差が大きいです。コマ収差はF値の-2乗で効いてくるので、F10のC8に比べコマ収差は(10/6.8)^2 = 2.5倍にもなります。星像が単純に2.5倍伸びてしまいます。そのため撮影する場合にはコマコレクター が必須なのですが、質の良いものはコマコレクターだけでも高額なので、私はバーダーのMCPP MarkIIIを使っています。これはF値が6までしか対応していないのですが、F6.3のMEADEに入れてもある程度の改善があることがわかっています。

コマはある程度許容範囲に収まるのですが、もう一つの問題が片ボケ。光軸調整をしても、どうしてもいつも同じ側の片ボケが残ってしまいます。主鏡の向きがずれていると考えられるのですが、こちらはいつは直したいと思っていますが、全バラに近い形になるはずなので今は躊躇しています。

あとMEADEのシュミカセは少し重いこと。同サイズ(実際には少し違いますが)のセレストロンと比べると、無視できないくらいの重さの違いがあります。手持ちの赤道儀がCGEM IIなのですが、撮影をしようとすると鏡筒が大きく重いので慣性モーメントが大きくなってしまい、共振周波数が下がり揺れの振幅が大きくなるので、大きさとしてはギリギリか本当はもう少し頑丈な赤道儀が欲しいところなのです。

一方手持ちのC8は軽くて良いのですが、やはりスポットダイアグラムを見ると、シュミカセゆえどうしても星像はボテッとなってしまうのは避けられません。星像を改善するために、接眼側に補正レンズを入れたEdge HD800という同じ口径20cmのものが販売されていて、こちらも購入の候補の一つでした。


VISAC以外の候補

VC200L以外ではHD800が第一候補で、一時は新品で購入しようと思っていた時期もありました。

他の候補として、特に反射にこだわっているわけではなく、屈折でも構いません。スパイダーの光条線があまり好きでないので、屈折か、反射でも副鏡がスパイダーでなく補正板で固定されているものを探していました。でも屈折で大口径で長焦点でスポットダイアグラムが小さいのは、これまた値段的に全く手が出ないので、現実的な候補はなかなかありません。

他の反射では、ミューロンのCRC化されたものもかなり魅力なのですが、こちらも予算がグッとあがります。究極的にはCCA-250とかなんでしょうが、こちらは冗談でなく金額の桁があがり、今の財政では全く手が出ません。

安価に、自分の納得する範囲で満足できる鏡筒をずっと探していました。その一つの候補がVISACだったというわけです。


VISACにした理由

VISACを選んだ理由は、ひとえにものすごく鋭いスポットダイアグラムに期待したからです。Vixen独自の6次非球面の主鏡を採用したカタディオプトリック鏡筒で、バッフル内に3枚のフィールド補正レンズを内蔵、写野全域にわたってコマ収差・球面収差・像面湾曲を極限まで補正、写野周辺で星像15µmを達成しているそうです。このように宣伝文句だけ読んでいたらものすごく魅力的なのですが、悪い噂も多少聞きます。
  • 設計はものすごく良いのに、主鏡の精度が出ていなかったり、メカ的に弱かったり精度が出ていなかったりで、その設計思想を活かしきれていない。
  • 個体差で性能にばらつきがある。
などです。設計からも各種精度が必要そうなことは想像できるので、なかなか大変そうな機器なのかと思います。メーカーの方でもサポートは大変なのでしょう。

また、星像が悪かったとしても調整機構が隠されていて、ユーザーは基本的に調整することはしない方針のようです。その扱いにくさのせいか、中古で比較的安価で出回ることも多いです。今回のものは、ベルトバンドがついている古いものでしたが、専用アルミケースもついていたため収納や持ち運びにも便利で、適当な業者に回ったものではなく、天文が好きな人が昔の機材を手放したと判断。オークションで少し値が上がっても落とそうと狙っていました。

試したいのは、
  1. 設計の鋭いスポットダイアグラムは、シュミカセのボテっとした(と私は少なくとも思い込んでいる)星像と比較して本当にシャープな星像を結ぶのか?
  2. 調整機構がないが、もし星像がダメなら調整できるのか試してみたい。
といったところです。特に調整は全バラでも構わないと思っています。


いよいよファーストライト

さて、実際のフーストライトです。梅雨が明けてもなかなか晴れなかったのですが、昨晩22時過ぎは夕方に一面を覆っていた雲もすっかり消えました。上限過ぎの月も残っているので、撮影もあまりする気にならなく、むしろ絶好のテスト日和です。今回のファーストライトは自宅の庭で試します。架台はCGEM II。MEADEと比べてかなり軽いので、赤道儀としての強度は十分です。

IMG_7751

最初にアイピースで月を見てみました。アイピースはCelestronの8-24mmのズーム式で簡易なもの。雲間からの月ですが、像は非常にシャープという印象です。月と空のエッジを見ても色収差もほとんどありません。これはもしかしたら結構期待できるのかもしれません。

ピントの範囲もそれほどシビアではありません。減速機はあった方がいいですが、なくてもなんとかなりそうです。

テストがてらASI294MC Pro(冷却はしていない)で月の動画撮影をしてみました。テストなので極軸もきちんととっていないし、カメラの向きも適当です。1000枚をスタックしたものが以下になります。

Capture_ 22_42_33_22_42_33_lapl3_ap7557_RS2

画像を見ている限り、非常にシャープで特に問題になりそうなところはありません。以前撮ったFS-60CBの画像と比べても十分な解像度が出ています。

と思っていたのですが、以前C8で撮ったアペニン山脈付近を何気に見直してみましたら、こちらの方がはるかに高解像です。

comp_C8_VISAC

理由はいくつか考えられます。C8とVISACの焦点距離は2000mmと1800mmとそれほど変わらないはずですが、まずC8の時の撮影に使ったASI178MCの一素子のサイズが小さい(2.4um)ので、解像度は上がるはずです。しかもセンサーの大きさそのもが小さいため、C8の視野の中心部だけを撮っています。今回VISACで撮ったアペニン山脈はASI294MC Proが素子サイズの大きい(4.6um)センサーで、かなり視野の端を撮ったので、不利な点があるのは理解できます。でもそれだけでは説明できないくらい、C8の方が高解像度です。まあ、結論としては今回の撮影はピントが出ていなかったのではないかと。もしかしたらピントの範囲がもっと狭いのかもしれません。ここは一度カメラなども同条件にしてもう少し検証します。


気づいたこと

最初の操作でいくつか気づいたことがあります。
  • まず、とにかく軽い。MEADE 25cmよりははるかに軽いです。C8より軽く感じたくらいですが、実際にはC8が5.6kg、VC200Lが6.9kgとVISACの方が重いです。ベルトがついていたから持ちやすいのかもしれません。
  • 上にL字の小さな架台が付いていて、1/4インチのタップが切ってあるので、極望用のCMOSカメラなども載せることができます。
  • フォーカサーが結構ゆるいので、天頂付近に向けるとカメラの重みでずり落ちてきてピントがずれてしまいます。フォーカス固定ネジもあるのでいいのですが、もう少し固くてもいいかと思います。
全体的にちょっとヤワな気がします。値段から言ったら仕方ないでしょうか。その他は今の所不満などありません。


星像はどうか?

では肝心な星像はどうでしょうか?試しに、M57周りを撮影してみました。こちらも極軸もカメラの向きも適当で、ガイドも何もしていないので、露光時間を少し伸ばすと流れてしまいます。とりあえずASI294MC Proで常温、露光1秒、ゲイン470でRAW16をtifファイルに落とし、PixInsightでオートストレッチしてjpegに落としてあります。

Capture_00002_23_10_13_23_09_11_RGB_VNG


四隅の画像も載せておきます。これまで4隅250ピクセルを切り出していましたが、スターベース のタカハシ鏡筒の実写画像に準拠し、300ピクセル切り出しにし、枠線を少し細くしました。

Capture_00002_23_10_13_23_09_11_RGB_VNG_8cut

露光時間わずか1秒なのでノイジーなのは仕方ないとして、これを見る限り、コマ収差はほとんど出ていないし、四隅の星像も悪くありません。真ん中はM57の中心星と、その隣の星も普通に写っています。これは結構すごい。シンチレーションの具合もあるとは思いますが、やはりVISACのスポットダイアグラムはダテではないかもしれません。

この画像スタックすればもっとはっきりするはずです。同じ1秒露光をser形式のRAW動画で1000枚撮影し、上位600枚の計10分をAutoStakkert!3でスタックしてみました。画像処理は簡易なものです。

Capture_00_19_48_00_19_48_lapl5_ap3050_DBE

中心星もそこそこシャープに写っていて、四隅の崩れもありません。まあまあかなと思っっていたのですが、星を拡大するとどうもきれいな円になっていないことに気づきました。

Capture_00_19_48_00_19_48_lapl5_ap3050_DBE_cut

どの星も三角形に近い形をしています。星像としてはダメですね。一枚取りに戻ってよく見ると、星はやはり同様の形をしていることに気づきました。

ただし、この画像は1秒露光をスタックしたものでかなり鏡筒本来が持っている星像をそのままの形で表しています。これが10秒とかもっと長い時間露光した場合には機材の揺れやシンチレーションによるブレのためにこの三角の形は目立ちにくくなります。ただし、ラッキーイメジングを想定もしているので、短時間露光で星像が丸になるに越したことはありません。

また、これまで撮影したMEADEのコマ収差や片ボケよりはすでにはるかにましです。このことも考慮して、どこまで突き詰めるかを検討する必要があります。


まとめ

というわけで、星像に関して残念ながらはラッキーイメージングを考えた場合は許容範囲外と言っていいと思います。四隅まで鋭くて、途中結構期待していたのですが、最終的にはちょっとショックでした。気を取り直して調整の方法を探ることにします。少しだけ調べてみると、VC200Lではこのおにぎり型の星像が出ることが結構あるようです。どうも原因はネジの締めすぎ。また、コメントからの情報でスパイダーの影響が結構合って、星像が四角くなることもあるそうです。

原因がわかっていればとりあえずなんと取り除くては考えることができそうなので、まずは一安心です。先人の方達の知恵がありそうなので、一度中を見てみて調整がうまくできるかどうか探りたいと思います。



どうもMEADEの25cmのシュミカセ、LX200-25の星像がボテっとしていて満足できません。


FWHM測定がどうも信用できない

前回のラッキーメージングの記事から随分間が空きましたが、実は連休中も含めて色々やっていて、例えばいろんな状況下で星像のFWHM(半値全幅)の測定もしてみたのですが、これもなかなか微妙です。本来FWHMはゲインに依存しないはずですが、ゲインを上げるとFWHMもなぜか少し大きくなったりします。これは何らかのセンサーでの信号の大きさに依存性がありそうだということを示しています。本来、露光時間を伸ばすとシーイングの影響がより大きく出るためにFWHMが大きくなるのですが、ゲイン依存性があるということは信号が増えたことでFWHMが大きくなったのか、本当にシンチレーションで像が大きくなっているのか、いまいち切り分けができません。

それでもそんなことを差っ引いても、あくまで見た目ですが、MEADE LX-200-25を使ってDSOを撮影しようと長焦点で撮影すると、星像がどうしてもボテっとしてしまいます。


困った時の昼間の試験

どうも埒が明かないので、連休中の昼間に色々試してみました。ターゲットは100mくらい離れたところにあるBSアンテナ。

test
このアンテナの文字や、4つのビスを見ながら検証します。
なお、画像は動画から一枚取り出して、ブログ表示用に上下逆にしています。

SharpCapで映す画像を見ながら、まずは光軸調整です。ここではBSアンテナの文字がどれくらい読めるようになるかと、アンテナの真ん中についている4つのビスが綺麗に見える様に、副鏡の3つのネジを調整します。実際にはいじるのは2本のみ。3本目をいじると副鏡のオフセットをいじる自由度になるので、pitchとyawの2自由度に相当する2本のみというわけです。動画で見るとすごい速さでピョコピョコ揺れている様に見えるのですが、フォーカスを合わせることによりそのピョコピョコが収束していきます。光軸がうまく調整できていないと収束しないので、ネジをいじるのとフォーカスを合わせるのを繰り返しながら、出来るだけ収束する様にしてきます。これは通常の光軸調整に相当するので、まあ問題ないです。



昼間で星でなくてもなぜか揺れる?

ところがです、光軸調整を十分にしてもまだ揺れているように見えるのです。星を見ているのと違って、昼間にたかだか100m先を見ているので、シンチレーションの影響はほとんどないはずです。それでも空気が揺らいで揺れることはありますが、時間はかなり経っているので温度順応は十分できているはずですし、見た目は少なくとも陽炎の様なゆらゆらとした揺れではありません。どうも何らかの外乱が入って揺れていると考えた方が良さそうです。揺れ方としては、上で書いた高速のピョコピョコよりももっとゆっくりした、1秒を切るくらいの間隔で、ピョコン、ピョコンとジャンプする様な感じです。

何でこんなことに気づいたかというと、このテストの間にFC-76も同じ様に見ていたのですが、(FC-76のほうが焦点距離が短いので)同じくらいの画角に拡大しても明らかにFC-76の方が揺れが少ないのです。高速のピョコピョコに関してもそうですし、低速のピョコン、ピョコンに関してもです。高速の方はLX200の方がまだ光軸調整を合わせきれていない、もしくはコマ収差のために全面で合わせきれていないのが原因かと思います。問題は低速。この時点で「あーそうか、地面の揺れが関係しているな」と推測しました。自分が座っている椅子とか動かした時に、像が大きくジャンプすることに気づいたのもここら辺です。


地面の揺れがどう効くのか

軽い鏡筒を赤道儀で支持している場合、共振周波数は高周波側にいきます。逆に重い鏡筒の場合、共振周波数は低くなります。正確には軽い重いというよりは、慣性モーメント(離れたところにどれだけ重いものがあるか)の違いになるのですが、まあここでは軽い重いとしておきましょう。共振で元の揺れが何倍くらい大きくなるか(Quality factor、日本語だと略してQ値とかいいます)は、それぞれのモードのロスに依るのですが、簡単のために全て同じと仮定しましょう。そうすると、一般的に地面振動は周波数の-2乗で落ちていくので、低い周波数に共振があった方がRMS振幅(高周波から低周波まで積分した振幅、要するに全体の揺れ幅のこと)としてはより大きく揺れます。もっと単純にいうと、地面振動起因の揺れに関しては重い鏡筒の方がよく揺れる。言い換えると、この赤道儀では実測13kgの鏡筒を支えるにはまだ剛性が不足しているというわけです。


じゃあ解決策は?

赤道儀を簡単に代えるわけにはいかないのですが、原因がわかれば解決策は色々あります。一番手っ取り早いのは防振でしょう。試しに三脚の下にゴムのシートを挟み込みました。たかだかゴムシートなので、共振周波数もそれほど低くなく、低周波の防振には役に立たないでしょう。それでもピョコンピョコンといったインパルス的な振動は高周波成分も含むので、かなり抑えられるはずです。

画面で見ると、明らかに動きは小さくなっている様に見えます。ただ、動画を見てもどの周波数に注目すればいいかなかなかわかりにくいので、わかりやすい結果として、10秒間の動画をゴムシート無しと有りで撮影し、アンテナのビスの部分を拡大し、それぞれの動画を静止画に落として、黒丸のところを見るために比較「暗」合成したものを載せます。

まずはゴムシートなしの、露光時間2.5msの一コマ分だけを示します。
test1_001
ゴムシートなし、1コマ2.5ms。

これを13FPSで撮った約10秒分、139コマを比較暗合成するとかなり像が肥大します。
no_rubber
ゴムシートなし、10秒比較暗合成


次に、ゴムシートをつけた場合の1コマ分。短時間なのでゴムシートなしと比べてそれほど差はありません。
test2_001
ゴムシートあり、1コマ2.5ms。


これを10秒分比較暗合成すると、像は肥大しますがゴムシートなしと比べるとかなりマシです。
with_rubber
ゴムシートあり、10秒比較暗合成。

これだけ見ても、もう明らかにゴムシート有りの方が揺れが少ないのがよくわかります。ビスの円形で考えてしまいがちなので、それほど大きな違いに見えないかもしれせんが、実際の星像は微恒星になるほど点になっていくので、示した画像のビスの黒線の「太さ」がどれくらい地面の揺れで成長するかを比べるべき、というところに注目すると、その効果の違いが実感できるかと思います。


定量的な評価

もう少し定量的に評価しましょう。いま、画像の揺れから計算すると揺れ幅は十秒間で15秒角くらい。一般的に地面振動は周波数密度で書くと1e-7/f^2 [sqrt(Hz)] 程度、街中なので一桁くらい大きいかも。ざっくり、1秒間で1μm、10秒間で3μm揺れるくらいの大きさです。地面振動の回転成分はよくわからないので、とりあえず赤道儀が地面震度で上記程度に揺らされて、中心で支えられている長さ50cm程度の鏡筒の前端と後端が同程度にランダムに揺れる様な回転成分になると仮定します。そうすると地面振動のみの揺れでも10秒間で

3e-6/0.5[rad]

くらい揺れることになって、角度に直すのに180/πをかけて、秒各に直すのに3600をかけてやると、

3e-6/0.5 x 180/pi x 3600 = 1.2[秒角]

共振でQ値が10程度と仮定すると12秒角となってしまい、もうすぐに画像で見たものと同じオーダーになってしまいます。普通、よく共振がダンプ(ロスに依る減衰)されたものでQ値が3-4程度なので、Q値が10というのはそれほどおかしい値でもないと思います。

結論としてはフルサイズ換算で焦点距離数千mmとかなってしまうようなDSOの撮影では地面振動が星像に影響してくると思っていいということでしょう。



驚くべきFC-76の結果

参考に、FC-76のものも載せます。MEADEの後に試したので、ゴムシートはすでに敷いてある状態です。ただし、焦点距離が短い分、画像が小さく画像が荒くなるので、上の画像と横幅が同じになるように拡大しています。なので3倍ほど荒いですが、同じ様な画角を見ていることになります。露光時間は(夕方で暗くなってきたので)長くなっていて5msです。

test_001L
ゴムシートあり、1コマ5ms。

output_compL
ゴムシートあり、10秒比較暗合成。

MEADEに比べて10秒たっても像の肥大が少ないことがわかります。これはやはり鏡筒の重さの影響だと考えられます。ちなにみ、10秒の方に見えている黒いポツポツは虫です。MEADEでは写らなかったのですが、FC-76の方がきちんと写っていたみたいです。


まとめ

これらの結果を見るとちょっと嫌になってきます。

鏡筒の揺れの影響で星像が制限されるので、、口径76mmが口径254mmに分解能で勝ってしまうという逆転現象が起きます。FC-76で撮影したときにカメラ上での解像度が荒く出るのは、焦点距離だけの問題なので、FC-76にバローを入れて焦点距離をMEADEに合わせてしまうと、より分解能よく撮影できてしまうという結果になってしまいます。まあ、光量では口径が大きい方がまだいいのは当たり前なのですが。

残念ですが、今の現状では事実なのでしょう。


先日、名古屋に帰省したときに生えてきたFC-76を、自宅に帰ってから実際に試してみました。

FC-76はフローライトレンズを使った口径76mm、焦点距離600mmのアポクロマート鏡筒です。往年のタカハシの作り込み感が半端なく、質実剛健、細部ものすごく丁寧、高級感に溢れていて、持っているだけでも満足感が満たされます。レンズキャップが鋳造物で、重いので下を向けると落ちてしまうと購入時に注意を受けました。キャップだけみても今では考えられないこだわりです。元々はファインダーもあったようですが、今回はファインダーはついていませんでした。でもどうせCMOSカメラで電子ファインダーにしてしまうので特に問題ありません。問題は対物レンズ。結構な白濁です。その分本当に、その場で決断できるくらい格安でした。

IMG_7068


レンズの白濁について

いろいろ調べてみると、この白濁現象は1987年くらいまでの初期のFCシリーズに使われたレンズの反射防止膜がモノコートだった時代のものに、時間が経つとどうしても起きてしまうようで、避けようがないとのこと。1987年より後の後期型のマルチコートになったものはこのような白濁現象は起きないとのことです。

白濁が起きる場所は、弱いと言われている2枚目のフローライトではなく、最初の一枚目の対物レンズの背面(接眼側)だそうです。確かによく見てみると、表面は綺麗。中のどこかが汚くて、ちょうどその表面に見えるレンズの裏面くらいの位置に見えます。

結構ひどいので、この白濁をなんとかできないか調べてみました。まずタカハシはもう清掃や再コーティングなどは受け付けていないようです。(2019年5月11日追記: スターベース東京で確認したところ、現在でも清掃、調整を受け付けているとのことです。)他のメンテナンス会社でも、いくつか清掃をしてくれるところが見つかりました。自分で分解して、レンズ研磨のようなことをして強者もいるみたいです。一眼レフカメラの昔のレンズの白濁除去で探すと、アルカリ溶液でコーティングを除去してしまう例も見つかりました。

おそらく今回のものはコーティングの劣化なので、コーティングを除去してしまえば白濁は無くなるだろうと予測しています。その代わり反射防止の効果がなくなるので、一般的には4%ほどの反射が出てしまいます。ARコートは普通1.数%の反射率に抑えてくれるので、3倍くらいの反射光が出ることになります。大したことないかもしれませんが、多重反射でゴーストにもつながるので注意が必要です。

あと、自分で分解してクリーニングする場合には、光軸調整をきちんとして元に戻さないとダメなようです。私は屈折の光軸調整はごくわずかしかなく、全然自信がないのが正直なところです。これを機会に屈折の光軸調整に挑戦してもいいのかとも思いますが、タカハシなのでやはり躊躇してしまう気持ちもあります。まあとりあえずこの白濁が実際にどれくらい影響するかよくわからないので、まずは一度覗いてみることにしました。


FC-76の実際の見え味

IMG_7076

接眼側から対物側を覗いても、白濁がはっきり分かるので心配でした。とりあえず手持ちのタカハシの鏡筒バンドでサイズが合うものに取り付けて、アリガタを噛ませて赤道儀に載せました。アイピース口も元々25.4mm用ですが、手持ちのVixenの31.7mm交換アダプターで現行のアイピースが使えるようにします。アイピースはとりあえずそこらへんにあった、Vixenのポルタに付属の格安のものです。

昼間の景色を見てみます。白濁のひどさからあまり期待していなかったのですが、覗いた瞬間、その見え味にうっとりしてしまいました。もちろん白濁の影響はあるのでしょうが、アイピースで見ている限り全く気になりません。多分コントラストは落ちているのでしょう。確かに少し眠い気もします。それでも収差の少なさ、カリッカリの分解能の良さ、これで2諭吉さんちょっとなら十分すぎるくらいの性能です。FS-60Qでもそうですが、やっぱりフローライトっていいんですかね。分解清掃はもっと白濁が耐えられなくなるくらい進むまでしないことにしました。電視観望用にと考えていましたが、この分解能だともったいないくらいです。新型フラットナーを持っているので、うまくいくと撮影にも使えそうです。

試しにFC-76にASI294MC Proをつけて直焦点で撮影してみました。.serファイルで動画で撮影した一枚をjpegにまで落として、上下ひっくり返したものです。画像処理は何もしてません。拡大してみるとわかりますが、遠くのBSアンテナの4つのビスまできちんと写しこんでいます。ぱっと計算すると、ビスの直径が13秒角くらい、ビスの円を描いている黒線が3秒角くらいで、これだけみるともう少し出てそうです。3秒角でもすでにエアリーディスク径の2倍くらいなので、まあ相当なもんです。

test1

実は同じ構図でMEADEの25cmと比較していたのですが、分解能は口径と焦点距離の分FC-76が不利なはずなのに、口径差3倍以上でもFC-76も決して負けていません。焦点距離を合わせたら口径の差は消えてしまいそうなくらいです。それよりも考えさせらたのは画像の安定度で、軽いこともあるでしょうし、光軸調整が流石にタカハシレベルなのもあるのでしょうか、むしろFC-76の方がブレないです。この件もう少しまとまったらまたレポートします。

というわけでかなり使えそうなので、まずは鏡筒バンドとアリガタプレートなど、実戦配備に耐えうるように少し予算を割くことにしました。


GW特集の記事、もしかしたらもう一本書くかもしれませんが、こちらはちょっと時間がかかるかもしれません。

もう先々週になってしまいますが、3月8日金曜日の帰宅後、ちょっと疲れていたのですが新月期で天気も良かったので、かねてより試したかったAZ-GTiによる2軸ガイドを試してみました。これができると、かなり軽量コンパクトな撮影システムになるので、海外や登山でも持っていけそうです。

撮影対象はM42、オリオン大星雲です。画像処理に時間がかかってしまったので、記事にするのに時間がかかってしまいました。撮影結果を先に示しておきます。本来ガイドを試して星像を見るテストなのですが、今シーズン最後のオリオンになるだろうことと、撮影時間1時間弱にしてはそこそこ出たので、AZ-GTiで(まだまだ稚拙ですが)ここまでは出るという指標として、きちんと画像処理までしたものをあげておきます。

light_M42_PCC_maskstretched_ok_HDR_dark

富山県富山市下大久保 2019/3/6 21:23-23:04
f=600mm, F10 + AZ-GTi(赤道儀モード)
EOS 6D(HKIR改造, ISO3200, RAW)
300sec x 11frames 総露出時間55分 + HDRのため3sec x 12
PixInsight , Photoshop CCで画像処理




AZ-GTiのこれまでの経緯

これまで、これまでAZ-GTiを赤道儀モードも含めていろいろ試してきました。
  1. AZ-GTiのファーストテスト
  2. AZ-GTiの赤道儀化(その1): ハードウェア編
  3. AZ-GTiの赤道儀化(その2): ソフトウェア編
  4. AZ-GTiの赤道儀化(その3): 極軸調整とオートガイド
  5. AZ-GTiの赤道儀化(その4): Stick PCでのガイドとTips

実際4のところでガイドも試していますが、露光時間が30秒と短すぎたのでまだちゃんとしたテストにはなりませんでした。その後、この赤道儀モードでもう少し時間をかけた撮影を試みました。
  1. 昨年11月2日にAZ-GTiの赤道儀モードでノーガイドでテスト。
  2. 11月3日にAZ-GTiの赤道儀モード2軸ガイドに挑戦するが、接続問題で断念。
  3. その後、ブログの記事にはしていませんが、11月15日に少しくらい山の方に行ってAZ-GTiの赤道儀モード2軸ガイドに挑戦するが、ISO1600、3分で13枚だけとって、そのうち成功はわずか2枚、Maybeが5枚で、失敗6枚とほとんどダメだったので、検証は失敗。原因は風が強くて全く点像にならず。
と、現状はこういったところです。

この頃はまだQBPフィルターを手に入れる前なので、自宅ガイド無しで露光時間90秒が最長、山の中のガイドありでも3分が最長で、その代わり特に自宅だと露光時間の短さを補うためISOが6400と高めです。それからだいぶん日にちが経ってしまいましたが、今年の目標の中にはまだAZ-GTiの赤道儀モード2軸ガイドは入っていました。なかなか天気が良くなかったり、途中レデューサーフラットナーのテストも入ったりしたのですが、それらのテストも一巡して、FS-60CBだった鏡筒もやっとエクステンダーを付け直して、焦点距離600mmのFS-60Qに戻りました。やっと久しぶりのテスト再開です。


目標

さて、この「AZ-ZGiでの2軸ガイド」計画の目標ですが、具体的には
  1. 焦点距離600mmの鏡筒をAZ-GTiの赤道儀モードで稼働し、2軸のガイドを実現すること。
  2. フルサイズのカメラで撮影して、少なくとも3分以上の露光で、赤道儀起因の流れが十分無視できる程度の撮像が得られること。
  3. 撮影枚数のうち、8割以上の成功率を実現すること。
の3つです。これは海外へ行く時など、できる限り軽量で実用的な撮影ができるという条件から設定しています。この目標が達成できれば、十分海外へ持っていっても使い物になると考えることができます。

1については上で書いたように、赤道儀化テストの4番目や、昨年11月15日にシステムとしては稼働しているので、すでにほぼ目標達成です。2については上記の3に書いてあるように、3分で2枚だけ成功しているのですが、風が弱かった時での成功で、もしかしたらピリオディックモーションがたまたま小さかった時のみの成功かもしれません。なので主にここからの検証です。

機材とソフトウェア

  • 鏡筒: タカハシ FS-60Q (口径60mm, 焦点距離600mm)
  • 赤道儀: AZ-GTiを赤道儀モードで使用
  • センサー: Canon EOS 6D(HKIR改造)、ISO3200、露光時間5分x11枚、計55分 + HDR合成のため、3秒x12枚、バイアス画像100枚、ダーク画像5秒x15枚、フラット補正無し(撮影後、フラットを撮る前にセッティングを変えてしまったため)
  • 初期アラインメントおよび追尾ソフトウェア:iPhone上でのSynScan Pro、その後Windows10上のSynScan Pro
  • 自動導入および視野確認: Carte du Ciel + SynScan Pro AppのASCMOドライバー、Astro Trotilla + BackyardEOS
  • ガイド時のソフトウェア: Windows10上のSynScan Pro AppのASCMOドライバーにPHD2 + BackyardEOSでガイド+ディザー撮影
  • ガイド機器: ASI178MC + 50mm Cマウントレンズ
  • フィルターサイトロン Quad BP フィルター(クアッド バンドパス フィルター、 以下QBP)
  • 撮影場所: 富山県富山市下大久保
  • 日時: 2019年3月6日、21時23分から
  • 月齢: 29.6(新月)、天気快晴、風が少々
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


セットアップ

まずはAZ-GTiを赤道儀モードで稼働させることが前提です。経緯台モードでも2軸ガイドができるという情報もありますが、私はまだ試したことがありません。

AZ-GTiでの2軸ガイドのポイントの一つは、SynScan App用のASCOM driverをインストールして、PHD2からのガイド信号をSysScan経由でAZ-GTiにフィードバックすることです。すなわち、PC上で信号のやり取りはほぼ済んでしまうために、ケーブルとしてはガイドカメラからのUSBケーブル一本、あとは今回の場合BackYard EOSを使ってディザーガイドをしているため、PCとEOS 6DをつなぐUSBケーブルが一本の、計2本です。AZ-GTiの電源は乾電池で内臓、EOS 6Dの電源も電池のため内臓で、AZ-GTiの駆動はWi-Fi経由なので、本当にケーブル2本、もしディザーをしなくてカメラ単体でとるのならわずかケーブル1本での2軸ガイドが可能です。

さらに今回の場合、Stick PCを使い、PC自身も三脚あたりに取り付けてしまったため、本当にコンパクトな2軸制御システムとなりました。Stick PCの操作はWiFi経由なので、自宅からぬくぬくと撮影、モニターをすることができます。


実際の撮影

極軸合わせはいつも通りSharpCapで行いました。一つだけポイントを挙げておきます。

AZ-GTiは構造的にそこまで頑丈ではないです。SharpCapの極軸合わせで90度視野を回転させる場合、手で回す際はウェイトバーがついているところのネジを緩める必要があるのですが、その時全体が大きくたわんでしまいます。90度回す時はモーターで回転させた方がはるかに精度が出ます。

さて、実際の撮影はフル自動導入の赤道儀とほぼ同様に扱うことができます。これは、Carte du CielなどのプラネタリウムソフトでAZ-ZTiを制御して自動導入することもできますし、Astro Tortillaなどでplate solvingすることもできるので、撮影した写野から位置を特定することもできることを意味します。ようするに、操作性だけ言えば大型で高機能な赤道儀に全然遜色ないということです。

視野が決まれば、あとは撮影です。QBPを使っているので、5分露光くらいまでは十分耐えることができます。ISOは3200としました。撮影中は自宅にいたのですが、今回は星像が気になってしまい、仮眠をとったりすることができませんでした。というのも、最初のうちはガイドは非常に安定していたのですが、30分くらいしてからガイド星の位置が結構頻繁に飛びはじめたのです。しかもピリオディックモーションが出ないはずの赤緯の方です。時に上に行ったり、時に下に行ったり、ガイドがかなり頑張って補正しているようでした。何か調子が悪いのかと思って外に出たらすぐに納得しました。明らかに風が強くなっていたのです。どうやらAZ-GTiは、撮影レベルになるとやはり外乱の影響を受けやすくなってしまうようです。もちろん三脚などでも変わると思うので、もう少し大型の三脚に載せてもいいかもしれませんが、それだと売りのコンパクトさが損なわれてしまいます。使えるのは風が強くない日限定でという制限をつけた方がいいかと思います。

この頃は冬も終わりに近づき、オリオン座も西に傾く時間がはやくなってしまっているので、結局撮影に使えた時間は21時半くらいから23時くらいまでと1時間半で、総露光時間は55分と1時間を切ってしまいました。


撮影結果

結局14枚撮って(ただし、撮影最後の西に沈んで影になった3枚はカウントから覗きました)11枚が成功でした。と言っても衛星が大きく通った一枚も失敗とカウントしたので、星像という意味では実際には14枚中12枚が成功と言っていいと思います。86%の成功率なので、目標達成といっていいでしょう。

隅の星像を(自作プログラムを改良して8隅が出るようにしました。)拡大してみます。大体のガイド性能までわかると思います。ただし、AZ-GTiのそもそものピリオディックモーションが+/-75秒程度とかなり大きいので、ガイドをしてもその影響を取り去ることはできません。また、風の影響も多少あります。

星像がまともと判断したものの中でベストに近いもの。まあまあ、丸になっていますが、やはり完全ではなく、わずかに斜め方向に伸びています。

M42_LIGHT_6D_300s_3200_+7cc_20190308-21h47m38s110ms_8cut


星像がまともと判断したものの中でワーストに近いもの。ここら辺までが許容限界としました。スタックすると多少は平均化されるのですが、拡大すると明らかに縦方向に伸びています。主に風の影響です。

MAYBE_M42_LIGHT_6D_300s_3200_+6cc_20190308-22h50m46s955ms_8cut


また、下のように風の影響で星像が2つに分かれてしまっているものもあります。一瞬大きな風が吹いたのかと思われます。これはもちろん使えないとしました。

BAD_M42_LIGHT_6D_300s_3200_+6cc_20190308-22h57m53s875ms_8cut


画像処理

画像処理は今回のテーマでないのですが、1時間弱にしては結構出すことができたので少しだけ書いておきます。

結果は一番上の画像を見ていただくとして、とりあえず処理してみると分子雲が結構出てきたので、少し強調してみました。露光時間が短いのでまだ粗いですが、自宅撮影でQBPがあればここら辺までは出せることはわかりました。また、青を出す方法も少しわかってきました。といっても、トーンカーブで青の真ん中らへんを持ち上げるだけですが。やはりQBPだと青色が出にくいので、少し強調してやる必要がありそうです。

最後に、全てスタックして画像処理をした画像(一番最初に示した画像)の星像です。やはり、ごくわずか縦長になってしまっています。どれくらい歪むかは風の強さによるかと思いますが、あとは歩留まりで調節するのかと思います。私的にはここら辺までなら、まあ許容範囲です。

light_M42_PCC_maskstretched_ok_HDR_dark_8cut




まとめ
  • AZ-GTiの赤道儀モードで、PHD2とSynScan用のASCOMドライバーを使った2軸ガイド撮影はそこそこ実用レベルで使用することができる。
  • 具体的には焦点距離600mm程度なら、露光時間5分でもある程度の歩留まりで星像は安定する。
  • ただし軽量システムのため、風に弱い点は否めない。
なんとか目標の歩留まり8割にたどり着きました。軽量コンパクトな撮影システムの構築という目的はある程度達成したと思います。次回海外へ行く時や、登山(多分することはないとわかっているのですが...)で持っていくシステムとしては完成です。このシステムは電視観望システムを含んでいるので、海外とかでのデモンストレーションもできることを考えると、当分コパクトシステムはこれで行くことになりそうです。やはり2軸制御できるところがポイントです。惜しむらくはピリオディックモーションです。もう少し小さいと星像ももっと安定すると思うのですが、この価格でそこまで求めるのは酷かもしれません。SWATなどの方がここら辺は利がありそうです。

AZ-GTiの購入から半年ちょっと、すごく楽しめました。軽量撮影システムとしてはこれで大体完成なのですが、本当に撮影で普段使いをするかというとこれはまた別問題。やはり風に弱いという欠点があるため、車が使える時や、自宅では頑丈な赤道儀を使っての撮影になるかと思います。あ、でも電視観望ではAZ-GTiは完全に主力ですよ。

AZ-GTiは、特に天文を始めたばかりの人でも、アイピースでの観察から電視観望、経緯台モードでの簡易撮影から、赤道儀モードでの本格的な撮影までこれ一台で相当楽しめるはずです。コストパフォーマンスを考えたら間違いなくオススメの一品です。


今回はASI294MC Proのバイアスフレームについて色々検証してみました。結構面白い結果が出たのでまとめておきます。


はじめに

昨日の昼間、めずらしくものすごい快晴。これはと思い、早速夜からカモメ星雲を撮影しようと準備をして、やっと撮影を始めたらわずか数枚で雲がもくもく。こんな日はむしゃくしゃするので、諦めてASI294MC Proの評価の続きです。

さて、大きな目的としては、前回の課題の一つダークノイズがどれくらい撮影に影響があるかですが、今回はその前々段階くらいにあたる、リードノイズのいろいろなテストです。実はあぷらなーとさんの解析に触発され、自分でももう少し泥臭い検証をしてみたくなりました。


バイアスフレーム一枚からのリードノイズの算出

あぷらなーとさんが自作ツールでバイアスフレームを解析し、見事メーカーが公表しているリードノイズと値が一致しました。私も前回の記事でSharpCapのSensor Analysis機能を使うことで、メーカー値と同じ値を確認したのですが、もう少し自由に測定できないか試したくなりました。それでも独自ツールを作るのは大変なので、今回はPixInsightの「ImageInspection」の「Statistics」を使いってリードノイズを求めたいと思います。

まず、SharpCapを使い、ASI294MC Proのバイアスフレームを撮影します。条件は
  • モード: RAW16 (16bit)
  • 露光時間: 0.0032ms
  • Gain: 121
  • Brightness(オフセット): 20
  • ホワイトバランス: Red 50, Blue 50
とします。それをPixInsightで読み込み、Statisticsツールを起動し、開いた画像を選択します。

IMG_6308


Statisticsツールでは「14bit [0,16383]」を選び「Normalized」にチェックを入れます。その時のavgDevの値を読みます。この場合、2.1でした。単位はADUなので、eに変換するためにコンバージョンファクターを使います。前回の測定から

IMG_6283

ゲイン121のところ見ると、0.88とあります。先ほどの2.1 [ADU]にこの0.88 [e/ADU]をかけると1.85 [e]となります。SharpCapで測定した値が1.86 [e]なのでほぼ正しい値が出ているようです。

ちなみにコンバージョンファクターがわからない時は、あぷらなーとさんのブログの記事でも紹介されていたように、ユニティーゲイン (UG、eとADUが同じになるゲインのこと、すなわちコンバージョンファクターが1ということ)から求めても同じことです。メーカーによるとUGが117とのことです。ゲイン121の時とは(117-121)/10=-0.4dB違うので、10^(-0.4/20) = 0.95となります。コンバージョンファクターも0.95倍すればいいので0.95 [e/ADU]となります。SharpCapの実測の0.88 [e/ADU]とは少し違いますが、UGをメーカー値としたためこれくらいのズレはあり得るでしょう。UGが正しいとしてリードノイズを求めると、2.1 [ADU] x 0.95 [e/ADU] = 2.00 [e]となりますが、それでもそれほどのズレではないです。


ちょっと脱線します。SharpCapで測定したデータですが、実際に測定しているところは

Gain Value e/ADU Read Noise (e) Full Well (e) Relative Gain Rel. Gain (db) Dynamic Range (Stops)
0 3.99686 7.80246 65484.6 1 0 13.0349
59 2.04740 6.86512 33544.6 1.95217 5.81034 12.2545
61 1.99842 6.83844 32742.1 2.00001 6.02064 12.2252
100 1.28103 6.34598 20988.4 3.12004 9.88322 11.6915
119 1.03257 6.11416 16917.6 3.87080 11.7560 11.4341
121 0.88019 1.85936 14421.0 4.54092 13.1429 12.9211
200 0.35776 1.59308 5861.64 11.1717 20.9624 11.8453
300 0.11418 1.41354 1870.75 35.0044 30.8825 10.3701
400 0.03624 1.35693 593.803 110.280 40.8499 8.77350
500 0.01171 1.32912 191.794 341.432 50.6661 7.17294

だけで、あとは全て計算値です。このことは、例えばFull Wellの値とRelative Gainをかけてみると、全てのゲインで65484.6(上の表は小さな桁を丸めてあるので少しずれます。)と同じ値になり、さらにこれにゲイン0の時のe/ADUの値3.996863906をかけるとぴったりと14bitで整数値の16384になることなどでわかります。Full Wellは本来サチルくらいの光量をカメラに入れて測定から求めるべきなのですが、SharpCapは14bitの最大値をサチった値と仮定して簡易的に求めていることもわかります。ZWOのメーカー値もどうやら同じように測定されているみたいなので、これはこれでありなのかもしれません。


さて、本題に戻ります。一例としてゲイン120の場合で計算してみましたが、他のゲインはどうでしょうか?他のゲインの値も、実際に撮影した画像からPixInsightを使ってリードノイズの値を求めてみたので、グラフにしてみます。赤がSharpCapのSensor Analysis機能で測定した線青がPixInsightを使って一枚一枚マニュアルで求めた線です。

03_readnoise_vs_gain1


グラフを見ても、SharpCapとマニュアル測定の差はほとんど誤差の範囲だとわかります。

というわけで、PixInsightを使うことで、リードノイズの値を画像からいつでも求めることができるという手法を手に入れたということになります。



バイアス画像を多数枚スタックするとどうなるか?

とりあえず、簡単にリードノイズを測定することができるようになったので、色々やってみたいと思います。

まずは、これらバイアスフレームを多数枚スタックするとどうなるのでしょうか?

スタックするとばらつきが平均化されるので、もしバイアスフレームに存在するノイズが完全にランダムなら、理想的には枚数のルートに比例してノイズが小さくなっていくはずです。

2、4、16、256、1024枚と、枚数を増やして、上と同様にPixInsightで実測したリードノイズの値を求めてみました。その結果をグラフに示します。理想の場合(青線)と、実際にスタックした場合(赤線)での比較になります。スタックはPixInsightのIntegration機能を使いました。蛇足になりますが、Macbook Proでスタックした場合4144x2822の16bitのfits画像1024枚でスタック時間は7分くらいでした。これくらいなら待つことができます。



03_readnoise_vs_gain2


グラフを見るとわかりますが、理想的なノイズの減り方に比べて、実測の方が明らかにノイズの減り具合が悪いです。これはなぜなのでしょうか?


実際のスタックしたバイアス画像を見比べてみる

この謎を解決するために、実際にスタックした画像を見比べてみましょう。まずはこちら、

IMG_6310


左上の奥の画像から1、4、16枚、最後の右下手前の画像が256枚重ねたものです。輝度は1枚ときの画像に全て合わせているので、直接見比べることができます。ぱっと見てわかるのは、枚数が多くなると明らかにノイズが滑らかになっていることでしょうか。これを見る限りは理想的にはどんどんノイズ(ばらつき具合)は少なくなっていってもいいはずです。


では次に、同じ画像で輝度を256枚重ねた画像に合わせてみましょう。

IMG_6312


前は綺麗に見えていた256枚画像も、実は完全にランダムなノイズではないことがわかります。縦線みたいなものが残っています。逆に1枚の時には横線が目立っています。これは横線に関してはランダムに近いノイズで、枚数を重ねることで滑らかになっていくのですが、それでも全枚数に共通に存在する縦縞のノイズが残ってしまい、それがグラフでの理想値との差を生むと推測されます。実際に1枚重ねだけの画像を何枚も見比べてみると、横線がてんでバラバラに入っていることがわかります。

ここからわかることは、
  • 多数のバイアスフレームを使うのは、バイアスフレームのランダムに存在するノイズを減少させるため。
  • バイアスフレームでライトフレームを補正するのは、スタックしたバイアスでさえも残った、バイアスフレーム全てが持つ共通のノイズを除くため。
ということが言えるのではと思います。

まとめ


はあ、ババーッとまとめてさすがに疲れたので、今日はこれくらいにします。まだまだ面白いことはあるのですが、さすがに書くスピードの方が追いつきません。さて、今日のまとめです。
  • 単体のバイアスフレームから、リードノイズを見積もることができる。
  • SharpCapも全部のゲインで全部の測定をしているわけでなく、一部を測定して、あとは計算で出している。
  • バイアスフレームをスタックすると、ノイズは減っていくくが、無限に小さくなるわけではない。
  • バイアスフレーム全てに共通するノイズが存在し、それらはバイアス補正でライトフレームから差っ引くことができる。
といったところでしょうか。

ちなみに、あぷらなーとさんはバイアス解析だけ1万枚も撮影するというような、言わずと知れた変な人です。私はたかだか千枚ほどしか撮影していないので、あぷらなーとさんに比べて10分の1くらいしか変でないということがわかってもらえると思います。






先日の名古屋名城公園での電視観望の際、最初新しいiPhone XRのSynScan Proで操作していたのですが、どうもWi-Fi接続が時間にして分くらいのオーダーですぐに切れてしまいます。接続し直すと再度操作できるようになるのですが、ちょっと手間なのとアラインメントが保たれるか不安だったので、その時は仕方なくPCの方のSynScan ProでWi-Fi接続してことなきを得ました。PCからの接続は安定していて、際接続が必要なことはなかったのですが、SharpCapと併用していたのでいちいちソフトを切り替えるのが面倒だったくらいです。

この件ちょっと気になっていたので、色々調べてみました。


問題点の確認

まず検証できる手持ちの機材ですが、
機種SynScan Pro Ver.SynScan Ver.
iPhone XR1.13.01.12.0
iPhone 51.9.01.9.0
iPad mini 31.9.01.9.0

の3機種で、それぞれに上記のようなバージョンのSynScanとSyncScan Proが入れてあります。iPhone XRに入れてあるバージョンのみが他と比べて新しいです。

この状態で3機種を比べました。
  • まず、iPhone XRのみ不安定です。iPhone 5とiPad mini 3においては以下の現象は発生しません。
  • 現象としては、一旦接続をして操作ができる状態になった状態で、右スイッチで一旦画面を暗くしたり、自動ロックで画面が暗くなってしまうと、そこで接続が切れてしまうようです。再度アプリに戻って矢印を押したり、「設定」->「Diagnostic」->「Response Time」と調べてもわかるのですが、接続が確立されていません。
  • その後、上部の「AZ-GTi(経緯台)」とか書いてあるところをクリックし、一旦切断してから、
  • 再度接続をやり直すとまた接続が確立し、操作できるようになります。
  • この状況は、SynScan、SyncScan Proともに同じです。
  • また、アクセスポイントモードでつながっていても、ステーションモードでつながっていてもともに同様に起きるため、AZ-GTiのハードの方の問題というよりは、SynScanとSyncScan Proと考えられます。
SynScanとSyncScan Proのバージョンが関係しているかどうかはこの時点では不明です。でもこの間バージョンアップするまではiPhone XR普通に安定に動いていたと思うので、バージョンアップによって引き起こされた可能性も高いです。SyncScan Proのバージョンを落とそうと努力したのですが、最近は普通の方法だと難しそうなので結局あきらめました。

他の方の状況

ネットを調べてみても、あまりこのような状況をあらわに書いてある記事が見当たりません。数少ない記事の中、あっかさんという方のブログにそれらしきことが書いてありました。よく似た現象なので、再接続をしていないからかと思ったのですが、のちの記事にアライメント方法で解決したと書いてあるので、もしかしたら勘違いかもしれません。(追記: その後、あっかさんのブログのここ半年の記事を全部読んだら、そのものの記事がこことか、ここにありました。)

ほかにも、TAKさんという方のページにSkySfariとの接続の記事があって、その中に「現行のiOSはバックグランドの処理で...」とか書いてあるので、もしかしたらiOSのアップデートも関係するのではと考え、とりあえず最新のiOSにしました。結果はまったく改善せず。同様の記事で、iPadだとバックグランド処理も問題ないとどこかに書いてあったので、やはりiPhone XRが問題なのか?


アップデート実験 

問題を切り分けるために、今ある古いバージョンのものをアップデートしてもいいのですが、それによって今使えているものが不安定になるのも嫌です。なので一番使用頻度の低いiPhone 5のSynScanのみ最新版の1.13.0にアップデートしてみました。

すると、最新バージョンのSynScanではiPhone 5でも同様に接続が切断されることがわかりました。同じiPhone 5でも、アップデートしなかったProの方は画面を一旦画面ロックしても安定に接続し続けています。

結局最新バージョンのSynScanアプリの問題ということで確定
です。もし、今のバージョンで接続が安定して保っているなら、この問題が解決するまでは今しばらくSynScanとSyncScan Proのアップデートは控えておいたほうが賢明かと思います

IMG_6139
こんな風に右上にクルクルマークが出たら、もうダメです。
再接続しか手がありません。


  • 同様に困ってる方いらっしゃいますでしょうか? 情報を共有したいです。コメントに書き込んでいただけるとありがたいです。
  • Sky-Watcherさんには早急に対策をしていただきたいです。


その他Tips

この検証の過程でいくつか発見したことがありました。メモがわりに載せておきます。
  • AZ-GTiのWi-Fiはいくつも同時に接続できるようです。例えば3機種同時に接続してもきちんと反応します。それぞれで操作してバッティングしないか、例えばアラインメント情報がどうなるかとかはまだ不明です。
  • ネットワークの情報は本体の方に保存されているようです。例えば一旦アクセスポイントモードステーションモードを両立させてしまえば、その後AZ-GTiの電源を切ってもその情報は保存され、再度立ち上げた時に同様のWi-Fiが使えればステーションモードで勝手につながります。
  • SynScan、SynScan Proの「設定」->「ユーザーインターフェース」にある「Keep screen on」をオンにておくと、SynScan、SynScan Proが立ち上がってる最中は画面の自動ロックがかからなくなるので接続は保たれます。それでも自分でロックして画面を暗くしてしまうと接続が外れるので注意です。あと、付けっ放しになるので電池の持ちにも注意ですね。


後日談

ここから2019/1/14に追記です。

バージョンが1.14.1になって画面ロックでの接続断は解決されたようです。自分でも確かめました。皆さんの情報のおかげです。販売店に伝える時も何人もの人が同じ状況だと説明できたので、説得力が増しました。どうもありがとうございました。
販売店に伝えたのが1月8日で、その時点でもメーカー側も把握していなかったとのことで、それからわずか10日ほどでの解決となります。メーカーの方の素早い対応にも感謝です。 

赤道儀のセッティングの記事のコメント欄で延々と続いていた、Advanced VXの時刻の保持の謎がやっと解けました。

わかってしまえば簡単なのですが、謎が解けるまでにいろんなことをやりました。このブログは自分の天文関連の日記のような役割もあるので、読んでくださる方にはまためんどくさいことをと思われるかもしれませんが、一応失敗したことも含めて書いておきます。

IMG_5986
ハンドコントローラーの内部。
基板上に内蔵電池らしきものは見当たりません。(後述)


Celestron Advanced VXのアップデート手順

時刻の保持とは関係ないかもしれませんが、まずはファームウェアのアップデートです。はっきり言ってこの手順も分かりにくいですね。自己責任らしいのですが、他の方にも役立つかもしれないので、とりあえず試した順に書いておきます。
  1. 機器の接続ですが、ハンドコントローラー (NexStar+、以下コントローラー) と赤道儀本体は繋いでおいて、電源もいれておきます。コントローラーとPCの接続はRS232Cです。最近のPCでRS232Cがついているものは稀なので、USB-RS232C変換ケーブルなどを購入してつなぎます。RS232C端子とコントローラーは、赤道儀を買った時についてくる付属のRS232C-4pinモジュラー変換ケーブルで接続します。私はこのケーブルの存在を完全に忘れていて、過去に改めて買おうと思ったことがあるので注意が必要です。持っていないという方は箱の中を探してみてください。最初から付属しています。
  2. 一方ソフトの方ですが、CelestronのサイトからSUPPORT -> Manuals & Softwareに進み、Drivers & Softwareのページに行きます。その後たくさんあるソフトの中から適したものを選ばなければいけまえん。Hand Control Firmware Updatesとか、Motor Control Firmware Updatesとかそれらしい名前があるのですが、これらは古い機種用のアップデートツールみたいです。Advanced VXの場合は、Celestron Firmware Manager (CFM)を選びます。私がダウンロードしたのは2.3.7111というバージョンでした。
  3. ダウンロードしたzipファイルを解凍して、その中のCFM.jarファイルをダブルクリックします。あ、Windowsでしか動かないのと(追記: あれ?JAVAだから機種依存しない?未確認です。)、あと、JAVAがインストールされていないと実行できませんので、必ずJAVA(JRE)をインストールしておきます。
  4. ここまでできたら、あとは勝手にCFMが機器を認識してくれるはずです。最初ちょっとわかりにくかったのですが、コントローラーと赤道儀本体の「2つ」の機器が認識されたと出るはずです。一度のアップデートで、コントローラーと赤道儀本体の二つともアップデートしてくれます。
  5. うまく認識されたら、Updateボタンが押せるようになるはずなので、押します。12個のファイルをアップデートして終了です。
IMG_5993
アップデート時の様子。
この写真を撮っているときにケーブルを触ってしまい、
この後、失敗します。

ところがここでポカをやらかしました。12個目のファイルをアップデートしている最中にケーブルが外れてしまったのです。アップデートは当然停止、しかも赤道儀を立ち上げると「Bootloader invalid pkg: 0002」とかいうエラーが出て何もできなくなります。ここから迷走し出したのですが、Celestron Firmware Managerで機器が認識できない時に出る解説の通り、一旦赤道儀の電源を切り、コントローラーの左下のボタンと、すぐ上のMENUボタンを同時に押して、立ち上げなおします。「BOOT LOADER Serial User Keyoad Entry」とでて、本来これでファームウェアが壊れていても接続できる状態になっているはずなのですがなにをどうやっても接続できません。ファームが壊れて接続自身ができなくなったと思い込んでしまいました。

この段階で小一時間格闘して、別のPCを持ってきてやっと原因が判明しました。COMポートの自動選択がうまくいかなかったようです。最初のPCにはCOMポートが複数あり、うまくいった時は自動で赤道が繋がったものを見つけ出したようですが、うまくいかなくなった時はコントローラーが繋がっていないCOMポートを見ていて、その結果繋がらないというメッセージを繰り返していたというわけです。別のPCはCOMポートが一つしかなくて間違えようがなかったということです。Celestron Firmware Manager はCOMポートの選択を任意にできないようなので注意が必要です。

とにかく、ケーブルの接続に注意して再びアップデート。今度はうまく行きました。バージョンを見てみると
  • HC:GEM 5.28.5184
  • MC:7.11.4244
から
  • HC:GEM 5.29.7137
  • MC:7.15.8270
にアップデートされていました。 HCはハンドコントローラーのこと、MCがモーターコントローラーで赤道儀のことを表しているとやっと理解できました。

ファームウェアは日本語が含まれるものと含まれないもの2種類あるのは、以前CGEMIIをアップデートした時のブログのコメントでの情報で知っていましたが、今回は自動的に日本語が含まれるファームが適用されました。
 
IMG_5995
 


時刻の保持

やっと今回のメイン記事に当たるのですが、ここでも結構手こずりました。無駄なことも含まれてますが、やったことを書いておきます。

  1. アップデート後、一旦アラインメントで時刻を設定し、再度立ち上げなおして時刻が保持されるか確認しましたが、時刻は最初に設定した時のままで進まず。
  2. アップデート時に工場出荷時にされますが、りっくんさんがされたようにあえて再度工場出荷時にリセット。それでも同じで、立ち上げた時に設定した時刻が残るのみです。
  3. いろいろ触っていて一つ気づきました。「MENU」ボタンを押して上下ボタンを適当に押すと出てくる「時刻・場所の表示」です。これを押すと「位置を記憶」というのが出てきます。ここでEnterを押してやると、その時の時刻が保存されるようです。でも時刻が進むことはありません。でも保存時刻をコントロールできることはこの時点でわかりました。
  4. 半分諦めかけて、昼食を食べ買い物に行って帰ってきてから、後片付けの前に最後にと思って「advanced vx time keep」で検索してCloudy nightsでやっと答えが見つかりました。「MENU」ボタン -> ユーティリティー -> RTCのON/OFFです。RTCとはReal Time Clockとのことで、これをオンにすると内部時計が電源を切っても進み出します。
  5. でもこれもなかなか曲者で、時刻を合わせても、なぜかRTCをオンにすると「現地時刻」が30分くらいずれてしまいます。諦めずに、再度工場出荷時にリセットし、最初の時刻を合わせ、RTCをオンにし、30分くらいのズレが出ても「MENU」ボタン -> スコープセットアップ -> 時刻・場所の設定で時刻を合わせなおして、やっと現地時刻が正確な時間になりました。
  6. 確認方法は、赤道儀のスイッチを入れた時に、これまで時刻を合わせていたところで突然場所の設定が表示されてしまいます。ここでビビらずに、下ボタンを押すと現地時刻が表示され、しかも時間がリアルタイムで進んでいるのが分かります。

幾つか不具合や謎らしきものも見受けられました。
  • ユーティリティー -> スコープセットアップ -> 時刻・場所の設定でtoyamaを選択してもなぜかakitaになってしまう。何度かやったらやっとtoyamaになりました。
  • Cloudy Nightsによると、しかも電池(CR2032)もあると。前回ネジを外してカバーを取って基板を見ても見つからなかったので、今一度、裏表も含めてきちんと見てもやはり見当たりません。2032なら大きいのですぐに見えるはずなのですが、不思議です。
  • 内部電池が見えないので、まさかと思って一旦ハンドコントローラーも赤道儀も電源ケーブルも全て外してしばらくしてから再接続し、再起動しましたが、時間は保持しているようです。何かどこかに時間を保持する電力があるはずなのですが、今のところ不明です。(追記: Twitterで情報がありました。電池は赤道儀本体側にあるとのことです。)

とはいえ、やっとAdvanced VXの時刻保持の謎が解けました。結構長かったです。知っている人にとってはあたりまえのことかもしれませんが、りっくんさんもkiharaさんも私もそうだったのですが、このことに気づいていない人は意外にたくさんいるのかと思います。

外は大雪。こういったことに時間をかけられるのは、なかなか星の出ない北陸の冬だからこそですね。
 

週末土曜日、満月の日。一晩中明るい月が出ていますが、北陸の貴重な晴れの日と、週末が重なったので、こんな日は絶好の機材のテスト日和です。

せっかくなので、先日シュミットで購入した月明かりでも撮影が可能だというQuad BP フィルターを試してみたいと思います。そこそこ写るなら遠征に行けない「平日」でも、「月」が出ていても、「自宅で気楽に」撮影を楽しむことができます。


セットアップ

  • 鏡筒: タカハシ FS-60Q (口径60mm, 焦点距離600mm)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • センサー: Canon EOS 6D(HKIR改造)
  • 日時: 2018年12月22日、22時頃から
  • 月齢: 15.2、満月
  • テスト対象: サイトロン Quad BP フィルター(クアッド バンドパス フィルター、 以下QBP)
少し困ったのが、QBPをFS-60Qにどうやって取り付けるかです。フィルター径は48mm。ところが、FS-60シリーズは回転装置の出口部分内側に52mmのフィルターネジが切ってあるため、48mm径のフィルターはそのままでは取り付けられません。いろいろ試してみると、回転装置と延長鏡筒の間に挟み込むと、ねじ込みや固定はできないのですが、うまい具合にピッタリはまって取り付けられそうです。

IMG_5912


コツは、フィルターのネジが切ってある側を鏡筒の対物レンズ側に入れ込むことです。こうしないと延長鏡筒を1-2回転くらいしかねじ込めなくて、不安定になります。まあとりあえず大丈夫そうなので、今回はこの状態で撮影してみます。


対象天体

M42 オリオン大星雲:
  • これまでなんども撮っているので比較しやすい。
  • 満月との距離が25度角程度とあまり遠くなく、この日は非常に明るい領域。
  • 肉眼で見ている限り、リゲルとベテルギウスはなんとか月の光に負けずに見える。3つ星はほとんど見えないくらい。

画像比較1: 同じ露光時間でQBPありなしでの比較


まずは、露光時間を同じにしてQBP有り、無しで比較してみます。JPEG撮って出し画像での比較です。

  • QBPなしの通常の撮影: ISO1600, 10秒露光
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+8cc_20181222-22h07m33s760ms

10秒以上の露光だと明るすぎなので、これくらいまでしか露光できません。

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 10秒露光
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+14cc_20181222-22h21m29s692ms


同じ時間でもQBPフィルターがあると、当然の結果ですが随分暗くなることがわかります。


なお、上の2枚とも色温度設定が3200Kと低いので青が強く出てしまっています。


画像比較2: 露光時間を変えて背景明るさを合わせる

これもJPEG撮って出しです。
  • QBPなしの通常の撮影: ISO1600, 10秒露光(画像比較1と同じもの)
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+8cc_20181222-22h07m33s760ms

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 30秒露光
M42_LIGHT_6D_30s_1600_+10cc_20181222-22h28m12s224ms

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 60秒露光
M42_LIGHT_6D_60s_1600_+8cc_20181222-22h37m16s270ms



実際の背景の明るさを比べると、最初のQBPなしの1枚と、後のQBPありの2枚を比べるとわかりますが、露光時間が3倍だとまだ少し暗く、6倍だとかなり明るいくらいなので、4倍程度の違いでしょうか。


QBPによる背景明るさの変化の簡単な推定


月の明かりが太陽の反射なので白色光に近いとして、太陽光のスペクトル

SunLightSpectrum-280-2500nm-J
(Wikipediaより引用)

にセンサーの感度曲線をかけたものと、さらに今回のQBPの透過率

qbpf_g
(シュミットの販売ページより引用)

をかけたものとの面積比を比較すると、この明るさの比になります。太陽のスペクトルは調べるとすぐにでくるのですが、EOS 6Dセンサーの感度曲線が調べても出てきません。しかも天体改造してあるので、さらに良くわかりません。

それでもものすごくざっくりとした見積もりをしてみます。太陽のスペクトルが350nmくらいから900nmくらいまではそこそこ一定とし、一般的なCOMSセンサーの感度も350nmくらいから700nmくらいまでは一定と考えます。そうすると、QBPの透過率がある部分が465-510nmと640-685nmくらいまでと読み取ります。それぞれ透過幅はともに45nmとなり、合計90nmです。透過率は95%と程度としますが、ざっくり1としてしまってもいいでしょう。すなわち、350nmのうち90nmくらい通すと考えてしまうと、90/350 x 0.95 = 0.24となり、QBPと通すと月の光で制限されるような背景の場合の光量は24%程度になるということです。言い換えると、1/0.24 ~ 4なので、露光時間が4倍くらいで同じ明るさになるということで、実際の撮影結果にもかなり合っています。

これとは別に、月明かりがない場合の人工光による光害が支配的な場合、露光時間をどれくらい伸ばせるかはまた興味深いところです。これは場所や光源の種類に大きく依存するはずですが、LED灯でも上記くらいの改善比、水銀燈やナトリウム灯ならかなり高い改善比が期待できるはずです。


画像処理をした場合のQBPの効果


さて、一番興味のあるフィルターの効果の確認ですが、画像処理をかけた場合を想定して比較したいと思います。できるだけシンプルでわかりやすくするために、PixInsightで1枚どりの上記RAW画像に
  1. ScreenTransferFunctionでLink RGB Channelsをオフにして各色のロックを外してからオートストレッチをかけて
  2. HistgramTransformationで実際に画像に適用し
  3. JPGで保存
というような工程をとりました。

上記工程で、上の3枚の画像処理したものを比較してみます。

  • QBPなしの通常の撮影: ISO1600, 10秒露光
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+8cc_20181222-22h07m33s760ms

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 30秒露光
M42_LIGHT_6D_10s_1600_+14cc_20181222-22h21m29s692ms

  • QBPありでの撮影: ISO1600, 60秒露光
M42_LIGHT_6D_30s_1600_+10cc_20181222-22h28m12s224ms


検討してみます。
  • まず、10秒という同じ露光時間のものでも、QBPありの方が構造がはっきり出ていることがわかります。
  • 次に、QBPありの場合はさらに露光時間を延ばすことができ、より構造が鮮明になります。
  • QBPなしとQBPありで思ったより色の変化がないです。これは意外でした。
最近シュミットから出たM42のデモ画像は、思ったより赤が出ていたので、青が相当出にくいのかと思っていましたが、そうでもないようです。他の方の例を見ても青は思ったより普通に出ていたので、青の出方に関してもそれほど心配ないというのが今回自分で試した上での感想になります。


簡易画像処理

QBPを通して撮った画像をスタックして、画像処理をしてみました。と言っても、結局雲間での撮影で、きちんと撮影できたのは60秒の露光でわずか18枚の、総露光時間18分の画像です。

画像処理はPixInsightでプリプロセッシング、(フラット撮影はサボってしまったので)DynamicBackgroundExtraction (DBE)で背景ムラを整えて、PhotometricColorCalibration (PCC)で恒星の色を合わせました。恒星の色がうまく出るか心配だったのですが、確かに少し近似直線上から分布がずれるきらいはありましたが、それほどおかしくないレベルで色は出ているのかと思います。

結果だけ示します。

light_BINNING_1_integration_DBE_CP_Stretched_cut

本当はもっとあぶり出したかったのですが、かなり大きなレンジ(空間周波数が低いという意味)での色むらが残ってしまっていて、背景を出すと目立ってくるので、ここら辺までに押さえておきました。この色むらはフィルターのせいなのか、総露光時間が足りないからなのか、はたまた雲が常時流れていてその合間を縫っての撮影なのでその影響が出てしまったのかなどの判断はまだできていません。

本当はM42の後、もう少し淡いカモメ星雲を撮りたかったのですが、雲が多くなってきて撮影できるレベルではなくなってしまったので、ここで撤収しました。


Quad Band Pass フィルターを使ってみて 

うーん、今回のQBPかなり良いのではないでしょうか。満月下でこれだけ遊べれば十分満足です。色が思ったより変わらなかったのも、私的には気軽に楽しめるので、いい点です。今回は雲のために実際の撮影時間が短かったのでちょっとしたテストくらいでしたが、長い時間かけてじっくり撮影してみたいです。

元々の目的が、平日で遠征などできないときに、自宅の庭で月明かりや光害下でも気軽に撮影が楽しめたらというものです。このくらいの目的ならば十分に達成できそうです。あとは、月がない環境で自宅の光害下でどれくらい効果があるかを試してみたいです。以前の結果からも、透明度がいいときはそこそこ撮影も楽しめるくらいの環境です。ただし、暗い天体は今の所、フィルター無しでは自宅庭からでは全滅です。このQBPでもう少し暗い天体も狙えるようになれば、購入しただけの価値は十二分にあります。また試してみます。


先々週の赤道儀のセッティングの記事で、水平出しのことが議論になりました。コメントがいくつかあったのですが、かんたろうさんとその後もメールのやり取りをして、白熱した議論となりました。以後の議論では赤道儀の極軸は十分な精度であっていて、また、鏡筒も極軸と平行に設置されるものと仮定しています。

突き詰めていくと、今回の論点は、

  • Celestronの赤道儀Advanced VXで、ワンスターアラインメントでの初期アラインメントの時に、水平出しをしていることで、きちんと視野に入るかな入らないかに影響があるか?

というものになります。私は水平出しをしていなければ入らないという主張で、かんたろうさんは必ずしも水平出しをしていなくても、赤緯体が天頂方向を向いていれば、きちんと視野に入るというものです。

もう少し噛み砕いていうと、私はいつも赤道儀の水平出しをしてからインデックスマークを合わせるので、赤緯体は基本的に誤差の範囲内で天頂方向を向きます。かんたろうさんのは赤道儀の水平を出していなくても、赤緯体を天頂方向に向ければそれでよくて、その場合は赤経のインデックスマークが(水8兵からずれた分だけ)ずれた状態となるということです。赤緯体を天頂方向に向ける方法は、赤緯方向を90度傾けて鏡筒を東西に向ける。鏡筒の上に水準器を乗せて、赤経を調整して水平を出せば、赤緯体は天頂方向を向くというものです。

議論は平行線で、やはり実際に確かめなければ納得できなかったので、久しぶりに晴れた今日、試してみみました。

まずは、自分の方法できちんとワンスターアラインメントで入ることで、機器に異常がないかどうか確かめます。三脚についた水準器で赤道儀の水平を出し、

IMG_5885


SharpCapで極軸を1分角以下の精度であわせて、

IMG_5886


ワンスターアラインメントで手近なカペラを導入します。まあいつもやっているのでわかっているのですが、結果はきちんと視野の中に入ってきて、

IMG_5887


左がASI178に50mmのレンズをつけた電子ファインダー、右がASI294MCを600mmのFS-60Qに取り付けた鏡筒の視野です。両方とも明るいのがカペラです。電子ファインダー、鏡筒の視野ともに、赤いクロスの交点は一致しています。すなわち、右の鏡筒でクロス点にきているなら、左の電子ファインダーでもクロス点にきます。実際の導入はファインダーでざっくり0.8度くらい中心からずれた位置で導入されています。水平出しやインデックスマークの誤差もこれくらいのオーダーなので、特におかしくない精度です。機器に特に異常もないと思われます。


次に、三脚の脚の一本を数cm伸ばします。

IMG_5888


三脚につけた水準器はこの時点で全く水平を示していません。

IMG_5889


この状態で極軸をSharpCapを使って再び1分角以内の精度で合わせ直します。

IMG_5890


ここから、赤緯を90度程度傾けて、鏡筒に水準器を乗せて、赤経を調整してその水準器が水平になるようにします。

IMG_5893


この時点で赤緯体は天頂方向を向き、赤経のインデックスマークは当然ずれます。

IMG_5894


90度傾けた赤緯を戻して、赤緯のインデックスマークを合わせて準備完了です。この状態でワンスターアラインメントを実行します。

私の説が正しければ天体は導入できない、かんたろうさんが正しければ天体は導入できることとなります。果たして結果は...



なんと、見事カペラが導入されました。

IMG_5895


確かめるべく、ベテルギウス、リゲルなどもそのまま導入してみましたが、きちんと導入されます。これは完全に私の負けです。

さてここでやっと、なんできちんと導入されたのか考えました。答えはすぐにわかりました。私はワンスターアランメント(2スターアラインメントの最初でも同じです)のアルゴリズムは「赤道儀の水平」を仮定していると思い込んでいたのですが、実際にはアルゴリズムは「赤緯体が天頂を向いている」ということを仮定していたわけです。落ち着いてよく考えてみると確かに、水平を仮定するよりも赤緯体が天頂を向いていると仮定する方が、より条件が緩く、かつこれで十分だということがわかります。

すぐにかんたろうさんに電話して、私が間違っていたことを素直に伝えました。最後まで意見を変えなかった頑固な私に、ずっと付き合って頂いたかんたろうさん、どうもありがとうございました。改めてお礼を述べさせていただきます。


というわけで、赤道儀の初期アラインメントで一発目に天体を視野に入れるためには、必ずしも水平は必要ないと訂正しておきます。ただし赤緯体を天頂に向ける必要があることは変わりありません。かんたろうさんの方法を使ってインデックスはずれた状態で赤緯体を天頂に向けるもよし、赤道儀のの水平を出してインデックスを合わせて赤緯体を天頂に向けるもよしです。

ちなみに、言うまでもないかもしれませんが、「初期アラインメントで一発目」にさえこだわらなければ、水平も出す必要はないですし、赤緯体を天頂に向ける必要はありません。2スターアラインメント以上でマニュアルで一つづつ丁寧に導入していけば、自動導入可能な状態までもっていけます。


とにかくやっと納得しました。やはり自分で実際に試すのが一番わかりやすいです。かんたろうさんはじめ、コメントをくれたせろおさん、りっくんさん、いろいろお騒がせして申し訳ありませんでした。

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