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天体観測始めました。

カテゴリ:イベント > メシエマラソン

ちょっと前のことになってしまいますが、2017/4/2の日曜日は一日中見事に晴れ渡り、昼間の立山の見え具合からも透明度も悪くなさそうでした。ただ、月が12時近くまで出ているのと、次の日の仕事に響くとまずいので、無理をせず自宅の庭で、その前の土曜の晩曇りでできなかった電視メシエマラソンを少しだけ試してみました。

そもそもスタートも、日曜日なので家族サービスで18時半ころ帰宅してからの準備開始です。極軸合わせや赤道儀のアラインメント、夕食などにも時間を取られ、実際のマラソンスタートは20時20分頃なので、すでにいくつかのメシエ天体は沈んでしまっていて、かつ自宅で周りが家や木などに遮られていることもあり、空の開口率、特に西の空の低いところはあまり良くなく、最初の出だしの相当数を逃しています。


まず、機材などの条件を記しておきます。
  • 鏡筒: FS-60CB (FS-60Qのエクステンダーを外した状態で焦点距離355mm)、途中から純正フラットナーを装着したため焦点距離は370mm
  • 電視のためのCMOSカメラ: ASI224MC0.5倍のレデューサ(ノーブランド)+IRカットフィルター(Revolution Imageについてきたノーブランドの物)を装着 -> 結局焦点距離は180mm程度になっているはずです。F値は3まで下がっています。画角は1.5°x1.2°程度でほぼ全てのメシエ天体が画角内に収まるくらいになっています。
  • 赤道儀: Advanced VX
  • 電視、導入用計算機: Stick PC DG-STK4D
  • 電視用ソフトウェア: SharpCap 2.10(β版) (どうやら間も無く有料になるようです。)
  • 自動導入ソフトウェア: Stellarium
電視で見えればいいというものなので、あまりこだわった光学系ではありません。フラットナーを入れてもレデューサーのせいなどでコマ収差も出まくっています。

機材の写真を載せておきます。

IMG_1619


注目して欲しいところは、PCと望遠鏡側がケーブルで接続されていないです。Stick PCに外部PCからRemote Desktopでつないでいるためリモートで操作できるようになっていて、ネットワークの届く範囲ならどこにでも持って行くことができます。今回は自宅の庭での観測なので、自宅のネットワークを使うことができるため、家の中からでも自動導入や観測をすることができます。肝心なスピードですが、ほとんどストレスを感じることはありません。ただしリモート接続時の画面の色の階調を制限しているようで、例えば暗いところの色が見かけ上、階段状になってしまったりはします。あと、たまにブロックノイズが出ますが、それでも操作感を損ねることはほとんどありません。

IMG_1622

上の写真の左の小さな箱がStickPCで、大きな黒いバッテリーに亀の子状態で、マジックテープで互いにくっつくようにしています。右のコントローラーはAVXのものですが、ここにRS-232Cケーブルがつながっていて、StellariumからAVXをリモートコントロールできるようにしています。リモート接続と相まって自宅の中や車の中から自動導入さえもできてしまうので、無茶苦茶便利です。

CMOSカメラ部分と鏡筒の固定方法です。

IMG_1632
鏡筒は上下K-ASTEC製のアルカプレートで挟み込んであります。下のプレートにさらにアリガタプレートをつけてAVXに固定しています。CMOSカメラはFS-60Q付属のアイピース取り付け口に差し込んでいて、USB3ケーブルでStickPCにつなげています。黒いケーブルが少し見えると思いますが、これはCMOSカメラからAVXのガイド端子に繋いでおくことで、SharpCapからスピードはx1倍と遅いですが、赤経、赤緯共にリモートで微調整することができます。ピント調節つまみが標準のものと違うのですが、これは自作の減速機です。

実際の観測ですが、自動導入ありなのでドーピング部門になります。電視と自動導入はとても相性がいいのと、一人で少しでも気軽にできるようにという意味で自動導入はありとしました。自動導入はAVXのものとStellariumを併用します。これはAVXのものとStellariumの現在の位置の認識で少しズレがあり、精度が必要な時はAVX、見やすいインターフェースが必要な時はStellariumというように随時使い分けていたからです。なぜズレが生じるのかはもう少し検討する必要がありそうです。


長いので、その2に続きます。



その1: 準備編
からの続きです。


メシエ天体が実際に電視で見えるかどうかはSharpCapの設定に大きく関わってきます。以前解説を書いたのですが、バージョンが上がって新しい機能が追加されていることなどもあるので、今一度簡単に書いておきます。本質的にはSharpCapのパラメータは以前書いたものとあまり変わらず、8秒露光、ゲインは350程度、Image Controlsのgamma 50、Brightness 240で固定、あとはDisplay Controlsでいじります。

ポイントはLiveStack機能のタブの一つのhistgramでのレベル補正が、特に淡い天体の場合の見やすさにかなり効いてきます。基本的にはdark側のスライドをピークの左側の裾野くらいまで持ってくることです。あとは左側の上下スライドでダークの効き具合をいじるだけです。

見たという事実が大事で、見え方は所詮低解像度のカメラでそれほどこだわらないので、これくらいの設定で十分だと思います。

次に画像の保存方法です。SnapshotファイルはStackした画像とは必ずしも一致しないようで、たいてい画面で見ているより保存された画像の方がイマイチな場合が多いです。さらにSnapshot機能はLive Stack機能がオンになっていると使えないので、
  1. 一旦StackをPauseしてから
  2. Live Stack機能をオフ
  3. SnapShotボタンを押してPNG画像ファイルを保存
  4. Live Stack機能をオン
  5. Auto saveにチェックを入れる
  6. Clearボタンを押してfits形式で保存
  7. Auto saveにチェックを外し、次のメシエ天体へ
というような手順でStackの機能があまり反映されないsnapshotファイルと、Stackの機能が反映されたfitsファイルを保存します。さらに注意点ですが、Live機能をオフにしてからDisplay Controlsなどのパラメータを変えると保存されるSnapshotファイルの色などが落ちてしまい、みすぼらしくなるので、LiveStack機能をオフにしたら何も触らずにすぐにSnapShotボタンを押してPNG画像ファイルを保存するようにします。

今回はそれに加え、何枚かPCの画面を直接iPhoneで撮影するという、これまでよくやっていた方法でも画像を撮りましたが、メシエマラソンの場合は時間との勝負で、画質にはこだわらないので、実はこの方法が一番いいのではと後から思いました。

実際に撮った写真を、数が多いのでちょっと迷ったのですが、参考になればと思い全部載せることにしました。
  • 20時21分: とりあえず見やすいM45 (プレアデス星団、すばる)。月明かりもあるため星間分子ガスなどは見えず。左下に大きなゴミがあるみたいで写り込んでしまっています。最初の頃はSharpCapのSnapshotで保存です。
Capture 20_21_36_0001_M45


  • 20時30分: やはり見やすいM42とM43 (オリオン大星雲)。さすがにこれは月明かりがあってもよく見えます。
Capture 20_21_36_0002_M42_M43

  • 20時35分: M103。SharpCapの使い方ミス(Stackをオフにしてからパラメータを触ってしまった)で白黒になってしまいました。
Capture 20_21_36_0003_M103


  • 20時44分: M52。ゴミの写り込みが目立ちます。
Capture 20_21_36_0007_M52

  • 21時03分: M41。かなり下の方に来ていて、気付いた時には木に隠れかけていました。枝が写り込んでしまっています。これも焦っていて白黒に。この直前にCMOSカメラをクリーニングしたため、ゴミの写り込みがなくなっています。
Capture 20_21_36_0008_M41

  • 21時17分: M78。写っているのか写っていないのか、真ん中に何か見えますが、かなり薄くしか見えていません。
Capture 20_21_36_0009_M78

  • 21時44分: M1。月がすぐ真横にあるせいなのか明るすぎるのと、これまで見たことないような変な模様が写ってしまっています。真ん中に薄くぼんやりと何か写っているのですが、これだけ写すだけでもかなり手こずって、すごく時間を費やしてしまっています。
Capture 20_21_36_0010_M1

  • 21時48分: M38。星雲に比べると星団は楽で、導入と電視、ファイルの保存までわずか4分しかかかっていません。
Capture 20_21_36_0011_M38


  • 21時52分: M36。こちらもわずか4分。
Capture 20_21_36_0016_M36

  • 21時55分: M37。これは星が集まっていて綺麗です。
Capture 20_21_36_0017_M37

電視中のものをiPhoneで撮影すると下のようになります。実際の電視中の印象にとても近いです。これくらいの印象になると思ってもらえるといいです。

IMG_1614_M37


  • 21時59分: M35。
Capture 20_21_36_0018_M35

  • 22時03分: M50。
Capture 20_21_36_0019_M50

  • 22時05分: M47。散開星団続きでつまらないで、ちょっと飽きてきたところです。
Capture 20_21_36_0020_M47

  • 22時11分: M46。
Capture 20_21_36_0021_M46

上のは撮って出しですが、下のは画像処理をしたものです。と言ってもホワイトバランスとレベル調整だけです。
Stack_32bits_4frames_32s_M46


  • 22時14分: M48。
Capture 20_21_36_0022_M48

  • 22時21分: M44。これも白黒になってしまいました。
Capture 20_21_36_0023_M44

  • 22時25分: M67。星がたくさん集まっていてちょっと変化があります。
Capture 20_21_36_0024_M67

  • 22時37分: M65とM66。系外銀河です。SharpCapのパラメーターが変わるので、ファイルにするまでに時間がかかりました。系外銀河は見にくいので画像処理をしています。
Stack_32bits_10frames_80s_M65_M66


  • 22時42分: M98。系外銀河もパラメータさえ決まるとすぐに写ります。ちなみに、今回ほとんどのものが8秒露光の複数スタックです。
Stack_32bits_12frames_96s_M98

  • 22時46分: M99。渦までよく見えます。画像処理済みです。
Stack_32bits_13frames_104s_M99

ちなみに撮って出しだと下のようになります。これでも渦はなんとか見えますね。電視上はこんなもんです。
Capture 20_21_36_0028_M99


  • 22時48分: M100。
Stack_32bits_16frames_128s_M100



この時点で、あまりに寒いのと明日の仕事があるので撤収することにしました。結局20時20分ころから22時50分頃と約2時間半で、23天体。一時間あたり10天体くらいはいけるので、練習としては上出来かと思います。実は自動導入付きのドーピング部門なのでもっと早く進めることができるのではと鷹をくくっていたのですが、スタック時間や撮影に多少かかってしまい、これくらいのスピードになってしまいました。完走するのに結構ギリギリのペースです。もし普通の星図片手にマニュアル導入でのメシエマラソンだと相当なペースで進めないと完走しないこともよくわかりました。

こうやって並べてみると、ホワイトバランスもめちゃくちゃだし、収差もあるし、解像度も低いしなので、iPhoneで写すのでやはり十分な気がします。そんなことより、次々見えるメシエ天体が楽しくて楽しくて。人がたくさんいたらみんなで一つの画面を共有して見ながらできるので、とても盛り上がると思います。

電視の利点の一つに、Stick PCでのリモート観望というのがあるので、実はメシエマラソンでもリモートでほぼ全ての操作が可能で、自宅内からでも可能なのですが、やはり空を見ながらやることに意義があると思い、今回は全て外で見ることにしました。でも結局一人で電視だと画面とにらめっこで、あまり外に出ている意味がなかったです。やはり何人かで手分けしてやるのが楽しい気がしました。たとえばソフトで次の天体をどれにするか決める人、天体をあぶり出す人、画像を記録する人、タイムキーバー、記録係などです。多分これが本来のメシエマラソンのやり方であり、楽しみ方なのでしょう。

ちなみに子供達は春休みの最中なので、一緒に外に出て星を見ていたのですが、早々と寝袋にくるまって眠ってしまい、マラソンどころでは全くありませんでした。

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