ほしぞloveログ

天体観測始めました。

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MetaGuideというガイドソフトを試してみました。特徴は、ホームページによると、低遅延でのガイドが可能とのことなので、早い揺れを殺すためのガイドに期待ができそうです。歴史的にはPHDと並び古くからあるソフトらしいのですが、しばらくアップデートされていなくて、先月久しぶりにアップデートされたとのことです。ただ、あまり日本ではメジャーではないみたいで、使っている人はいるみたいですが、使用記などは日本語ではほとんど見つかりませんでした。

インストール自身は簡単です。ただし、3月にアップデートされた最新のβバージョン5.2.18をインストールしたい場合は、まず5.2.6をダウンロードし、一旦インストールして、さらに最新の5.2.18をダウンロードし、解凍した中身で先にインストールした5.2.6の中のファイルを置き換えます。その後、管理者権限でコマンドラインを開き、5.2.6をインストールしたディレクトリに行き

regsvr32 GuideFilter.ax

と打ち込んで、レジストリをアップデートする必要があるとのことです。

その後立ち上げるのですが、接続されているカメラがあると立ち上げ直後からカメラの映像が画面の中に映し出されます。私はカメラにZWO社のASI224MCを使っていますが、まったく認識されませんでした。ASI224MCは画素数が少なく感度が相当いいカメラで、転送がフルサイズでも64fps、サイズを制限すると256.4fpsにも達する相当早いカメラで、低遅延ガイドにはもってこいかと思っていました。色々試したのですが、どうにもこうにもうまくいきません。作者のドキュメントにASI120についての記述はあったのですが、Googleなどで検索してASI224でMetaGuideを動かしているという記事を見つけはできませんでした。MetaGuideのためだけにASI120を本気で買おうかと思ったのですが、一晩たって再度色々海外のブログなどをあさっていたら、Directshow対応のWDM (Windows Driver Model)で動かせばいいという記事が載っていました。WDMドライバーはZWOのダウンロードページの一番下の方にあるとの情報もいっしょにあったので、早速WDMドライバー2.0.1.9をダウンロードして試してみました。メインのドライバーとは別に結構ひっそりと置いてあるので、気づかない人も多いのかと思います。WDMインストール後は何の問題もなくカメラが認識されました

IMG_1658


赤道儀を適当な天体に向けて実際のガイドを試してみます。ターゲットの星は、カメラからの映像の中で一番明るい点が自動で選択されます。「VidProps」というボタンを押して、カメラのゲインや露光時間などを調整します。うまく星が選択されたら、LockStarというチェックボックスがあるので、チェックしておくといかもしれません。それでも星がなくなると勝手に他のところに移ったりするので、完全なロックではないようです。

ガイドのためにはどうやらターゲットの星をセンターに持ってくる必要があります。Centerボタンを押すと勝手にセンターに持ってきてくれるのですが、ターゲットの位置が変わってしまうので困りものです。センターに持ってくるとキャリブレーションが可能になります。この際赤道儀に信号を返す必要があるのですが、ここで一つ問題が起きました。ASI224MCからST4互換のケーブルで赤道儀のAdvanced VXにつないでいるのですが、どうもAdvanced VXが認識されません。同様のセットアップでPHD2ではきちんと赤道儀に接続できるので、ハードウェアの問題ではなく、ソフトウェアの問題だということはわかりました。一つの可能性は上記のWDMで動かしていることです。どうしても解決しなかったので、仕方なくASCOM経由でAdvanced VXと接続することできちんと反応して、なんとかCalibrationに進むことができました。その代わりにUSBケーブルがCMOSカメラ、EOS 60D、ASCOMと3本になるので、USBポートが2つしかないStick PCでは、USBハブが必須となり、しかもCMOSカメラはUSB3.0でその他は2.0なのでハブで混在させるとUSB3.0が使えなくなるので、3.0はStick PCに直結、2.0はハブというようにせざるを得ません。さらに問題が起きます。BackYard EOSでEOS 60Dと接続しているのですが、これもハブがあると接続できないと文句を言われてしまいました。ハブかケーブルを一度総ざらい検証する必要があります。

気を取り直して、とりあえずEOS 60Dへの接続を外して、ASI224MCとASCOMだけで動かすことで、Calibrationも無事に終わって、やっとガイドを始めました。パラメータは結構たくさんあるのでまだまだ触っても効果のほどがいまいちわからないところも多いですが、その中で2つ大きく制御に関わるパラメータがあったので紹介して起きます。

一つは「Setup」ボタンを押した後に出てくる「Frame Rate fps」です。デフォルトは10ですが、これを上げてやるとカメラから読み取る速度が上がります。ただし実効的なfpsがメイン画面に出るのですが、せいぜい20fps止まりなので、むやみやたらに上げても意味がないようです。

もう一つはメイン画面の「NFrames」です。一フレームごとの星の位置は、シンチレーションの影響なので揺らぐので、その揺らぎをそのまま返すと本来静かな赤道儀が余計に揺らされることになります。NFramesはその画像を何回スタックするかを決める数なのですが、デフォルトが10でほぼそのまま使えますが、どうやらこれがMetaGuideの肝だと感じました。要するに普通の制御でいうセンサー部分の精度を上げようという試みです。その代わりにフィードバックの速度を犠牲にしているのですが、それでも実際の制御帯域は赤道儀のモーターの反応速度で制限されてしまうので、その制限にかかるまでは得をするということです。PHD2などで長時間露光しても同じようなことが得られますが、こちらは制御帯域をそのまま縮めるので、そのぶんMetaGuideの方が優位です。

実際のエラー信号のRMSを見てみると、3秒角以下になることもしょっちゅうで、上の写真ではそれぞれの自由度で1.8秒程度、合わせて2.7秒程度です。今使っているASI224MCに50mmの焦点距離のレンズだと1ピクセルあたり15秒角程度となるので、0.2ピクセル以下の精度となり相当なものです。PHDで0.2ピクセル以下にするのは結構大変です。ただし、PHD2に比べて表示がわかりにくいので、読み取ることができる情報量が少ない印象です。

PHD2と比べると色々こなれていない部分も目につきますが、とりあえずパッとやってPHD2を超える精度が出るのは、やはり単純にすごいと思いました。パラメータをいじることでもう少し改善できそうです。まだまだ使っていない機能もあるので、もう少し使い続けてみたいと思います。






 


 

色々苦労してきましたが、やっとSWAT-200で一軸ガイドで星像がほぼ真円に近くなりました。焦点距離600mmで、5分露光、一軸制御だけでのSWAT-200なので、まあまあの成果だと思います。現在のセットアップは写真のようになっています。

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鏡筒はFS-60Qで焦点距離は600mm、SWAT-200をPHD2で一軸ガイド。ガイド鏡はASI224MCに焦点距離50mmのノーブランドのCマウントレンズ。三脚はGitzoのGT3840Cです。SWATとFS-60Qはモノタロウで買った簡易なクランプ台で接続しています。これはより構造的にシンプルなものでまずは試したいと思っているからです。

2月4日の記事で、3秒露光時の原因が赤径へのガイド信号のフィードバックが原因と突き止め、ガイド信号を綺麗にすべく200mmのガイド鏡レンズを導入し、3月12日の記事でその200mmのレンズのたわみが赤緯方向に星像の流れを作っていたことまで突き止めていました。これらの過程で、PHD2の機能がだいぶ理解でき、Advanced VXの上で元の50mmのガイド鏡レンズで精度を上げつつ、流れを止めるというところまで持っていくことができました。

昨晩、満を辞してSWAT-200で試しました。ところが、最初はどうしても星像が赤緯方向に流れてしまいうまくいきません。極軸はいつものようにSharpCapで合わせてあるので、1分角程度の精度は出ているはずです。それでもPHD2で見ていても、赤緯方向の一方向に流れていきます。結局、この原因はターゲットの天体を変えるとかで機材に触ると、機材全体を動かしてしまい、結構簡単に極軸からずれしてまうことにありました。現在使っているGitzoの三脚は、揺れなどはあまりなくていいのですが、やはり全体的に軽いということがあり、機器に触ると数分角くらいのずれが出てしまうようです。

仕方ないので、PHD2の流れが出ないように南天で星が上(北)に動いていくときは極軸が西にずれているので、少し東に三脚の脚をずらしてやる、南天で星が下(南)に動いていくときは東に三脚の脚をずらしてやるという方法で、数回繰り返してやると、PHD2上の赤緯のずれをかなり減らすことができました。PHD2でトレンドから計算した極軸の向きのエラーもリアルタイムで表示されるのですが、ほぼ1分程度になりました。

結果を示しておきます。最初の写真が赤緯がずれていく場合、次がずれをなくした場合です。両方とも5分露光です。

LIGHT_300s_1600iso_+14c_20170326-00h04m18s064msa

LIGHT_300s_1600iso_+10c_20170326-00h55m51s199msa


実はこれ、うまくいったときの写真を最初にとって、その後機器に触ったときにずれてしまったものを撮った写真です。すぐにこんなにうまく取れたわけではないですが、少なくともやっとこれくらいのコントロールはできるようになったということです。

ちなみに、未だにSWAT下に微動回転装置をつけていないので、三脚の脚をずらすというローテクでやっていますが、なんとかなりそうな雰囲気です。軽量化や、構造的に弱いところをつくらいないという観点からはこちらの方がいいくらいです。

まあ、それでも微動回転装置を使った場合よりは精度は出ないということは以前計算していまして、とりあえず今回は5分間の露光では真円に近くなるくらいまでには精度を出すことができました。今回は自宅で試したので、それほど暗い環境ではなくこれくらいの露光時間で十分でしたが、より暗いところに行ったり、より低いISOでとる場合にはもう少し長い露光時間が欲しくなるため、さらに極軸の精度が必要になってきます。

あと、先日購入した回転装置のテストも同時に行いました。こちらはすこぶる快調で、まあ当たり前と言えば当たり前なのですが、これまでのようにカメラを回転させると毎回ピントがずれるというようなことはなくなり、時間の節約につながります。もっと早く買っておけばよかったです。ワイドリングの効果はAPS-Cなのでどこまであるかわかりませんが、フラット補正の時に詳しく検証して見たいと思います。

ちなみに、昨晩は新月期で機材のテストだけではもったいなかったので、星像流れのテストがてら3分露光で蠍座のIC4592付近を撮影しました。うまく画像処理ができたらまたアップします。


2017/3/11、休日の前日で晴れ。今晩は満月直前なので、星雲の撮影などはできそうもありませんが、せっかくの星空が勿体無いので何をしようか考えていました。やりたいこと、やらなければならないことはたくさんあるのですが、あくまで趣味なのでやりたいことをやろうと思い、気になっている星像の流れの原因を突き止めることにしました。

先日のマルカリアン銀河鎖の撮影の際、Advanced VXとPHD2でガイドをしているにもかかわらず星像が一定方向に流れるという問題があったのですが、やっと原因が判明しました。犯人はガイドの焦点距離を伸ばそうとして、ついこの間導入したCanonのZOOM LENS EF 55-200mmです。ガイドとして使っているCCD、ASI224MCにアダプタを介してレンズを取り付けているため、電動系は全く無意味で、当然ピントなどはマニュアル、というか手でレンズの先の筒をひねって伸ばしたりして合わせるのですが、その際すごく軽くて弱そうだなと思っていました。レンズの筒の部分にちょっと触るとCCDでの映像があからさまに揺れるのです。まあガイド中は触らないからいいかと思っていたのですが、これが間違いでした。

よくよくレンズを見てみると、ズームタイプでULTRASONICとか書いています。Webで調べたら、超音波モーターを使っているとのことです。静音でいいらしいのですが、パワーがなさそうなのは容易に想像できます。駆動力がないということは、動かす対象は軽くて、構造的に弱いものにならざるを得ないということでしょうか。四千円程度と安くてよかったのですが、天体用には向かないということがよくわかりました。


検証

今回の検証のためにやったことを書いておきます。まずは前回の再現。できる限り同じ機材、同じ環境で星像が流れるかを確認します。バラ星雲あたりとスピカあたりで試しましたが、見事に流れます。

使っている機材は撮影条件によらず共通のものが
  • 鏡筒: FS-60Q (f=600mm)
  • 赤道儀: Advanced VX
  • カメラ: EOS 60D
  • ガイド用CCD: ASI224MC
  • ガイドソフト: PHD2

変えている撮影条件は
となります。

1. 最初はバラ星雲あたりを、CanonのZOOM LENS EF 55-200mmを使いPHD2でAVXの2軸に返しました。5分露光で5枚、22時39分29秒から23時05分8秒まで25分39秒かけて撮った画像を比較明合成します。比較明合成はstarstax (紹介記事本家) というソフトを使いました。5分 x 5枚の25分より長くなっている理由は毎撮影時にBackyardEOSでPC側にダウンロードしているために、その間は撮影できないからです。

rosse_canon_2axis

左右が赤経方向、上下が赤緯方向に相当するので、どうも赤径方向に大きく流れているようです。

流れた距離をPhotoshopの定規ツール(スポイトツールに隠れています)で測定すると19.06pixelありました。

IMG_1270


EOS 60Dはセンサーサイズが22.7mm x 15.1mmなので、600mmの焦点距離だと画角は2.167 x 1.441度になります。これが5184 x 3456pixelの画像になるので、1pixelあたり0.0004181度になります。秒角に直すと1.505秒/pixelとなります。なので星像が流れた距離を角度で表すと

19.06pixel x 1.505秒/pixel = 28.69秒

となります。これを25分39秒、すなわち1539秒かけて撮影しているので、移動速度は

28.69秒角 / 1539秒 = 0.01864秒角/秒 = 1.119秒角/分 = 67.11秒角/時

となります。1分で1秒以上もずれたら、数分で流れが見えるようになるのも当たり前です。


2. 同じくバラ星雲あたりを、CanonのZOOM LENS EF 55-200mmを使いPHD2で今度は赤緯のフィードバックをなくし、赤経の1軸のみに返しました。

rosse_canon_1axis

同じく5分露光が5枚で、23時6分14秒から23時31分56秒の25分41秒です。先ほどの赤経方向の動きに、さらに赤緯の方向にずれが加わっているように見えます。これは極軸の精度が悪かったために加わったと考えられます。

移動距離は22.94pixelなので、速度は1.347秒角/分となり、少し速度が増しています。これは赤緯方向のずれが加わったからでしょうか。


3. もう少し時間が経って、バラ星雲がかなり西の低い高度に移動した時の速的です。2軸に返しているだけで上と条件は同じです。5分露光3枚で、0時6分13秒から0時21分36秒の15分23秒です。

rosse_canon_2axis_West

同様に測定すると、58.82pixelとなり、約15分でこの距離なので速度は相当速くなり、5.75秒角/分となりました。やはり方向は赤経方向が主です。CCDに付いているレンズがほぼ水平になり、赤経方向に重力がかかり非常にたわみやすい状況でした。


4.  ここでバラ星雲が沈んでいったので、次はスピカ近辺で試して見ました。レンズは同等で、2軸制御です。1時38分29秒から1時59分45秒の21分16秒です。

spica_canon_2axis

測定すると、距離は27.93pixelとなり、1.976秒角/分となりました。ちょっと速いですが、場所を移動しても再現性はありそうです。


いずれにせよ2軸制御をしているときは基本的にほぼ赤経の方向のみの流れです。ガイドのCCDの像とカメラで撮影している像が、なんらかの理由で赤経方向に相対的にずれることにより、星像が赤経方向に流れているということです。


5. ここでレンズが怪しいと睨み、以前使っていたCマウントの50mm、f=1.4の軽くて短いレンズに交換しました。実はレンズを交換する前に赤系も止めてフィードバックなしで撮影してしまおうとしたのですが、Advanced VXはピリオディックモーションが+/-15秒程度あることが実測で分かっているので、ちょうど今のずれとコンパラなオーダーなので混乱してしまうと思い、先にレンズを代えることにしました。この読みは正解で、星像の流れがぴったりと止まりました

2軸制御で、2時6分50秒から2時32分35秒の25分45秒です。

spica_50mm_2axis


流れる距離が短すぎるので誤差も大きいですが、とりあえず2.14pixelと計測しました。速度はなんと0.125秒角/分となり、星像が流れる量は10分の1位になったということです。

しかも、明るいレンズのせいなのかと思いますが、PHD2のカメラのゲイン設定をデフォルトの95%から60%くらいまで下げと、カメラからのノイズが減って背景がすごく安定し、位置を読み取る時のピークの山の形がほとんど変形せずきれいになるので、位置精度が上がるためでしょう、ピクセルあたりの精度が余裕でRMSで0.2ピクセルを切っています。200mmの時の精度が適当なときは0.35-0.4ピクセル、すごく頑張って0.25ピクセル程度なので平均だとピクセルあたりで倍近くいいです。角度で表すと、2.5秒くらいまでいく(200mmの場合は1秒ちょっとくらい)ので、レンズの焦点距離の4倍の違い程の差は出ずに、実質2倍くらいの差しかありません。星像の流れは比べるまでもなく50mmのほうがいいので、しばらくは50mmでもう少しパラメータを詰めていくことにします。


さて、ここで一つ疑問が湧きました。なぜ星像の流れは赤経方向ばっかり出たのかということです。

1. まずレンズ自身が弱くてたわんだと仮定します。レンズは円筒形なので、円柱の軸に対しては円対称で、たわみは円柱軸の回転方向に依らないはずなので、星像の流れの方向は鏡筒の向きが変われば変わるはずです。なので赤緯方向に出てもおかしくありません。

2. 一方、これまではレンズが大きくて重いから、レンズやCCDを支えている根元の機械的な構造の強度が十分でなくたわんだと仮定します。構造的に赤経方向の固定方法が何かしら弱いとすれば、赤経方向のみに流れが出たというのは納得できます。

実際には赤経方向のみに流れが出ているので、一見2が正しいように思えます。ですがもし2が正しいとすると、50mmのレンズに変えた場合にずれの量は2つのレンズのモーメント比くらいでしか改善されないはずです。200mmのレンズは図体は大きいけれど密度が低いので、重さは50mmのレンズと大して変わりません。長さは200mmの方が倍くらいあるので、モーメント比はたかだか2倍です。ということは50mmのレンズに変えたとしてもずれの量は半分くらいにしかならないはずですが、実測では10分の1と圧倒的にずれは小さくなっています。

しばらく悩んだのですが、色々考えてやっと分かったのは、実は赤道儀に載せて南の空に鏡筒を向けると、いつも鏡筒が長手軸方向を中心に90度傾いた状態になるということです。これは実際にやってみるとすぐにわかるのですが、鏡筒が極軸方向を向いているホームポジションでは、長手軸方向の回転で考えた時に水平になりますが、南方向では地面の下を見ない限り、水平にはなりません。ベテランの方には当たり前のことなのかもしれませんが、少なくとも私は今回初めて気づきました。そのために重力は常に赤経方向に働き、レンズはいつも赤経方向にたわむというわけで、1のレンズ自身がたわんだと考えて矛盾しないのです。


もう一つ気になったのはPHD2のカメラのゲインがどうも自動で変わっているようなのです。これはスピカを画角に入れた時に気付いたのですが、明らかに背景が真っ暗になります。どこにもオートゲインの切り替えの設定場所はないので、というかゲインは任意に変えることができるので固定のはずなのですが、これはバグなのでしょうか?


いろいろ進んだり後退したりして回り道をしていますが、PHD2の理解がだいぶん進んできたのはもうけものです。なんとなくですがSWATでの撮影も見込みが出そうな気がしてきました。

 

なんと、一昨日金曜夜に引き続き、昨日2017/3/4の土曜夜も撮影できました。気温も上がってきて、夜でもそこまで寒くはならず、だんだん春を感じてきています。

IMG_1230


一昨日のマルカリアンの銀河鎖の撮影ではが星像が少し流れてしまったので、引き続きリベンジで土曜の夜もMarkarian chainを狙って撮影しました。他の天体も考えたのですが、流石に月が明るくなってきて、0時前の撮影は厳しかったです。

さて、なぜ撮影時に星像が流れてしまったかは一応わかりました。カメラの方でとった写真を1時間くらいの単位で連続で見てみると、ずっと一方向に流れています。2分のバラではほとんど出なくて、4分のマルカリアンだとその流れが4分の間に見えるまでになってしまうというわけです。というわけで撮影で流れた星像が写った理由はわかりましたが、肝心の「なぜずっと一方向に流れるのか」の原因がまだわかっていません。

単純に考えると、ガイドのCCDはずっと一つの星を追っているのでCCDでの画面上はずれないはずで、それでもカメラに映った星像が流れるというのは、ガイドCCDと鏡筒に取り付けたカメラに相対的なずれが生じたということになります。すぐに考えられるのは何らかのたわみで、赤道儀の回転とともにたわみが一方向に出続け大きくなっていくというものです。心当たりがあるのは、60Dの鏡筒への固定が、適当なTリングとアイピース固定用の締め具だけで止めてあるので、弱い可能性があります。もう一つがASI224MCに取り付けた、新たに導入した55-200mmのCanonレンズが、ピント合わせのところを触るとすぐにずれるのと、光軸と垂直方向にもさわると結構ぶれる点です。もしくはレンズが重くなったので、そのせいでのたわみなのかもしれません。根拠はこれまでの軽い50mmの単焦点レンズだと、一方向にずれていくような動きは見たことがないということです。これから満月期に向かうので、平日夜あまり遅くならない程度に検証してみようと思います。


それでも2日目は制御の方で少し改善するようにしました。

1. まず、ターゲット星のPHD2上の検出している位置が結構ぶれることです。下の方に緑で出ているS/Nの数値を見ていると30以上は必要みたいで、自動選択だと暗すぎてS/Nが20以下とかになることがあり、ターゲットの位置検出精度が悪くなる時があります。もちろん明るすぎてサチるのには気を付けなければなりません。これは下の方に赤字で「SAT」とか出るのでわかります。

2. ターゲット星の検出精度にもう一つ関係するのが、プロファイルで見た時の形です。きれいなガウス分布の形をしていればいいのですが、実際にはかなりいびつでガタガタで、時間とともに毎回形が大きく変わります。ここはPHD2の下のほうの脳みそマークの左のガンマの値をいじって明るさを変えることで、できるだけきれいで安定した形にすることが大事みたいです。

3. 一つ気づいたことが、赤緯なのですが、フィードバックしない方が揺れのRMSが小さいのです。SWATの時にも同じ現象がみられましたが、これはフィードバックすることでノイズを加えていたことを意味します。下の画面はこれまでの200mmでのガイドです。CCD1ピクセルあたり3.8秒角の視野で、制御すると赤経、赤緯共に0.4ピクセルくらいのRMSで抑えることができています。実際にはRMSはがんばれば0.2ピクセルくらいまでいくことができるので、そこから見て倍くらい精度が悪いということです。

IMG_1221


次に、下の画面を見ると赤いフィードバックの線がないのがわかると思います。RMSのゆれは上の写真と比べて小さくなって0.3ピクセル以下になっていることがわかります。

IMG_1222



4. そのため、Agressiveの値を赤経、赤緯ともに40まで下げました。もう一つは、動き出す値をデフォルトの0.19pixelから0.39pixelに上げたことです。これで無駄にフィードバックする頻度が減りました。

IMG_1223


グラフの揺れ幅が変わっているところが値を変えた時間で、フィードバックの振幅、頻度共に少なくなって、実際の揺れも特に赤緯では明らかに小さくなっているのがわかると思います。


以上で、多少精度は良くなり、RMSでいい時で0.2程度、悪くても0.3程度の揺れまでに抑えることができるようになりました。もちろん風などの影響により実際の揺れは変化するのですが、風の時には赤系、赤緯ともに突発的に揺れるので、だいぶん見分けることができるようになりました。それでも一方向に流れていくのはまだ出ていますが、昨日よりマシみたいです。原因は依然不明です。

結局この日は撮影したまま午前1時頃に仮眠をとって、3時半頃に目を覚まして状況をチェックしたら、2時くらいから雲が出ていたみたいで、撮れた写真を見て見ると4分x30枚ほどにマルカリアンが写っていました。ここから星像が流れている写真などを除くと使えそうなのは15枚くらいで、約50%の率でした。少し枚数が少ないので、一昨日のと合わせて画像処理しようと思います。





 

以前の記事でSWATの揺れが風と特定したと書きましたが、どうやらこれは嘘を書いていたことが判明してきました。つい先日の晴れ間のテスト (その後、こちらに移動)で3秒のトラベジウムが赤経方向にのみ伸びているので、ガイドが悪さをしているのではないかと疑いを持ち始めたわけです。これに決着をつけるべく、同様にトラペジウムをガイドのあるなしで撮影し、優位に差が出るのかを試しました。

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まずは、前回の再現です。条件は、FS-60Q(焦点距離600mm)、SWAT-200での一軸追尾、極軸合わせはSharpCapで今回は1分程度の精度。撮影のカメラはEOS 60D、Backyard EOSでピント合わせをしています。その上で焦点距離50mmのガイド鏡(ASI224MCにCマウントレンズを組み合わせたもの、1ピクセル3.75umで、1ピクセルあたり15秒角とかなり大きい)を用いたPHD2での一軸のガイドありで、ISO1600、3秒露光で撮ったトラベジウムです。ガイドの条件はCCDが1秒露光で、あとはデフォルトの状態です。ただし、鏡筒の取り付けをより安定にするために、SWATから鏡筒への部品点数をできる限り少ない状態にしました。これは外乱による揺れの影響をできる限り避けて検証したかったからですが、少し条件が変わってくるので、ここが影響するようならまた別に検証する必要がありますが、以下の結果を見る限りその心配はなさそうです。さてこの状態で撮影すると以下のようになりました。

guide

写真を見る限り以前のブレの再現性はあり、赤経方向に明らかに流れているものが20枚中13枚、気持ち赤経に流れているようなものが4枚、真円に近いものが3枚でした。その際のPHD2の制御状況を見て見ると、RMSでは赤緯の方が小さくなっています。

IMG_1132


これは赤経の方がガイドにより乱されているという結果と一致します。赤緯の方のピーク値があまりずれていかないのは、極軸の精度がそこそこあっているからです。先日試した時には北極星が見えなくて、適当な極軸合わせでやってしまったので、赤緯のピーク値(オフセット)がどんどん大きくなっていきましたが、今回はそんなことはないようです。


次に、ガイドを切ってSWAT-200の赤経方向の追尾だけで撮影しました。条件はガイドがなくなっただけで他は全て上と同じです。

noguide


これは典型的なものですが、写真を見ると明らかに赤経方向の伸びがなくなっているのがわかります。20枚取って赤経方向のみに流れているものは一枚もありませんでした。その後さらにガイドありなしで何度か繰り返してでやってみましたが、再現性もあるため原因はこれでほとんど確定です。さらにミラーアップの影響があるかどうかを3秒のディレイを入れて試してみましたが、有意な差は見られませんでした。


ここまでの結論は、やはり焦点距離50mm、ASI224MCとの組み合わせのガイド鏡では、PHD2によるガイドだと4秒角程度の精度でしか合わせることができず、ガイドをすることによりむしろ誤差を増やしてしまっているということが言えると思います。


次に、ガイドレンズを200mmにしてみました。一番最初の頃に買ったEOS X7についてきた55-250mmのズームレンズです。これを200mmに合わせて、以前買ったCanonレンズをASI224MCに取り付けることができるマウントを使って、55mmから250mmの可変のガイドCCDを実現しました。

IMG_1136


統計情報を見てみると、1.5秒程度の揺れに収まりほぼ期待通りの結果になっています。この状態で撮った写真が以下のようです。

fineguide

微妙なとことで、赤経方向に伸びているものもあれば、真円に近いものもあるという、言ってみればまだ精度が足りていないような感じの結果でした。内訳は20枚のうち、明らかに赤経に流れているものが5枚、流れているような気がするものが8枚、流れていないものが9枚でした。

少し納得できなかったので、EOS 60Dでの位置ピクセルあたりの画角を計算してみました。すると1.6秒程度と、今回の精度とほぼコンパラな値です。実際に画像に写るのは揺れのバラツキなので、それをルート2倍ほどとすると、まあガイドにより画面で見て伸びが見えたり見えなかったりというのは納得できるような結果かもしれません。言い換えると、もう2倍ほど、できれば1秒以下くらいの精度が欲しいということになります。精度を上げるとすると、300mmクラスのレンズにするのか、もっとピクセルサイズの小さいCCDを使うのか、Def-Guiderなどでソフト的に精度を上げるかなどですが、もう少し検討です。


あと驚くべきことは、赤緯方向も短時間ならガイドをしなくても少なくとも1秒角ちょっとの精度が出ていることです。CCDのピクセルあたりの誤差が大きいので、実際にはもっといいかもしれません。200mmレンズの結果を見てもまだ赤経の方が伸びている場合が多いので、赤緯の精度は見えていないだけで実際もっといいと言えるでしょう。実はノータッチガイドの時の精度は正直もっと悪いかと思っていました。ここら辺の見込み違いが今回の誤解につながっていることは否めません。


さてこの結果を踏まえて、この日は空が晴れわたっていたので、月も沈んだ0時頃から満を持して撮影に入ろうとしたのですが、何と大結露大会で鏡筒はおろか、CCDのレンズ、カメラ本体に至るまで全て結露し、しかもだんだん凍りついてきたので、泣く泣く退散しました。真冬の深夜の撮影は思ったより厳しく、ヒーターを増強させる必要があります。

追記: 2017/3/26、やっと3分露光で星像が真円になりました。

SWAT-200でPHD2によるガイドをしながら、ISO1600、3秒露出で撮ったトラペジウムの典型的な一枚です。

20170128_long


このように長く伸びてしまったものが何枚かありました。いずれも伸びの方向はどれも同じで、赤径方向と一致した伸びです。風や地面の外乱が原因の場合、赤緯がほとんど揺れていなくて赤径方向のみ揺れるというのは、赤道儀の構造的に問題があれば別ですが、普通はあまり考えられないはずです。今回、ガイドをオンにして撮影してしまったのですが、もしかしたらこれが原因なのかもしれません。そもそもガイド鏡に相当するものは、CCDに50mmの焦点距離のレンズをつけたもので、CCDセンサーの1ピクセルあたり約15秒の角度があります。ガイドでの精度は0.3ピクセルくらいで、3秒間の間にもなんどもフィードバックするので、4秒角くらいのブレがあってもおかしくありません。トラベジウムの最長辺が20秒角くらいなので、写真の比から考えても4秒角くらいブレてしまうというのはあながち間違っていません

実はDef-Guiderで複数のガイド星を用いて精度を上げようと、この日試みたのですが、キャリブレーションのところでエラーで落ちてしまい、どうすることもできませんでした。Def-Guiderは昼間のうちにまた試してみますが、ガイドCCDの焦点距離を伸ばす方向にいった方がいいかもしれません。例えば200mm程度のレンズを使えば計算上1秒角程度にブレを抑えることができ、十分です。CanonレンズをCマウントに変換できるアダプターがあるので、次は手持ちの55-200mmのレンズを試してみようと思います。

今書いていて思ったのですが、最初の方で3枚出したトラペジウムのうち最初の一枚はSWATで一軸制御、あとの2枚はAdvanced VXで2軸制御です。もしかしたら2軸制御のせいで縦横にブレてピンボケのようになっただけなのかもしれません。もしくはピンボケなので、縦に揺れても横に揺れてもあまり目立たなかったとかです。いずれにせよガイドの有無でも比べてみて決着をつける必要があります。(追記: 2017/2/3確認しました。)

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