ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ: アイデア、理論など

先日のVAISCでの月の撮影時の分解能について、天文リフレクションズのピックアップで少し取り上げてもらえました。



まず、
  • VISACのエアリーディスク径が12μmでASI294MC Proのピクセルピッチが4.65μmでもアンダーサンプリングで、最小星像径の1/2.5の大きさのピクセルでは光学系の性能はフル発揮できないことは衝撃的
との指摘で、その後の投稿で
  • 星が1ピクセルでは全く足りなくて、2x2ピクセルでもまだ不足。星像径12μでASI178MCのピクセルピッチ2.4uが充分効果的というのは納得 
という意見でした。実際の場合でも納得というのは心強い意見です。

さらにHIROPONさんから
  • 鏡筒の「遮断空間周波数」(Spatial cutoff frequency)とセンサーのナイキスト周波数から考えて、2.25μmがフルに鏡筒の性能を生かせる
 という説明がありました。2.25umは実際に試した2.4umに近いピッチだったので、それほど間違ったことをやっているわけでもないと思います。標本化定理を考えると、情報を落とさないという意味では理論的にはほぼこれで決定なのですが、今回はもう少し実感が湧くように実際の画像で考えてみたいと思います。


エアリーディスクの可視化

エアリーディスクについては、以前ラッキーイメージングのところで議論しましたが、



1次のベッセル関数を使って

2J1(x)/x

のように書くことができます。ただしこれは1次元の場合なので、平面で表すためにxをr=sqrt(x^2+y^2)と書いてやり、2次元で表します。それを例えばMathematicaなどで等高図(密度分布)で書いてやると

airydisk


のようにエアリーディスクの形になり、ディフラクションリングも(グラフではちょと薄く見えてしまいますが)実際のイメージに近く見えるようになります。さて、今回はこれを元にCMOSカメラで分解能がどれくらい出るかを検証します、


レイリー限界

今回、カメラの分解能をわかりやすく見るために何が一番いい指標になるか、色々考えてみました。エアリーディスクそのままよりも、レイリー限界に相当する2つのエアリーディスクを2次元等高線で書いてから、それをカメラのピクセルピッチの粗い画素で見たときにどうなるかを表すのがわかりやすいのではと考えました。

まずはレイリー限界で離れている2つのエアリーディスクを等高図で出してみます。レイリー限界は、エアリーディスクの最初に一番暗くなった部分が、隣のエアリーディスクの最大のところにかかるというのが定義です。

VISACの場合、F9なので、標準の550nmの波長を考えた時に、エアリーディスク径は

Da = 2.44 F λ = 2.44 x 9 x 0.55 [um] = 12.1 [um]

となります。一方レイリー限界は一般的な式では口径のみで決まり、


DR=127.5D[mm][arcsec] = 0.6375 [arcsec] 

となりなります。単位が秒角なので、これをわかりやすいようにumに変換します。焦点距離1800mmの場合のarcsecからumへの変換係数

Cumarcsec=tan(12×60×60π180)×2× 1800×1000       = 8.73 [um/arcsec]

をかけてやると、レイリー限界は0.6375 [arcsec] x 0.73 [um/arcsec] = 5.56umということになります。このように、レイリー限界がエアリーディスク径の約半分になるということはラッキーイメージングの時に議論しました。

これをMathematicaでグラフで表してやると

DensityPlot[(2 BesselJ[1, Sqrt[(x - 3.831705970207512`/2)^2 + y^2]]/
      Sqrt[(x - 3.831705970207512`/2)^2 + y^2])^2 + (2 BesselJ[1, 
       Sqrt[(x + 3.831705970207512`/2)^2 + y^2]]/
      Sqrt[(x + 3.831705970207512`/2)^2 + y^2])^2, {x, -10, 
  10}, {y, -10, 10}, PlotPoints -> 100, PlotRange -> All, 
 PlotLegends -> Automatic, ColorFunction -> ColorData["GrayTones"]
 ]

rayleigh

エアリーディスクの暗くなった部分の中心が、隣のエアリーディスクの一番明るい部分を通っていることがわかると思います。式の中の、3.8317...とかいう数字は、一番最初のエアリーディスク径の式で強度が0になるxの値です。これがVISACの場合、5.56umに一致するというわけです。

ちなみに、ASI294MC Proのピクセルピッチが4.63umなので、だいたいレイリー限界くらい、もしくはエアリーディスクの半分か、3分の1くらいになります。


カメラセンサーで見た場合1: レイリー限界ピッチ

さて、面白いのはここからです。Mathematica上でセンサーアレイを再現するために、Table関数を使いました。あ、本当はカラーセンサーにしたいのですが、とりあえずモノクロで考えます。まずは、センサーのピクセルピッチがレイリー限界と同じ5.56umだった場合です。ASI294MC Proでもざっくりこれくらいと同じと考えていいでしょう。

array = Table[(2 BesselJ[1, Sqrt[(x - 3.831705970207512`/2)^2 + y^2]]/
        Sqrt[(x - 3.831705970207512`/2)^2 + y^2])^2 + (2 BesselJ[1, 
         Sqrt[(x + 3.831705970207512`/2)^2 + y^2]]/
        Sqrt[(x + 3.831705970207512`/2)^2 + 
          y^2])^2, {y, -3.831705970207512` 3, 3.831705970207512` 3, 
    3.831705970207512`/1}, {x, -3.831705970207512` 3, 
    3.831705970207512` 3, 3.831705970207512`/1}];

plot = ArrayPlot[array, Frame -> True, FrameTicks -> Automatic, 
  ImageSize -> 1.95/2 -> {50, 50}, PlotRangePadding -> 0.12, 
  PlotLegends -> Automatic,  ColorFunction -> ColorData["GrayTones"], 
  PlotRange -> All]

rayleigh_CMOS

まあ予想通りというか、全く分離できていません。横に広がっているだけに見えます。この場合はたまたまピクセルの中央がちょうど二つのエアリーディスクの中心と一致した場合です。ピクセルの境がエアリーディスクの中心と一致した場合はどうなるかというと、

rayleigh_CMOS_border
と、こちらも2ピクセルが同じような明るさになりますが、横長に見えるだけなのは変わりません。


カメラセンサーで見た場合2: レイリー限界の半分のピッチ

では次に、ピクセルピッチをレイリー限界の半分の2.78 [um] にしてみましょう。

rayleigh_CMOS_half
これは劇的な変化です。完全に二つのエアリーディスク光源が分離できます。

この時点で言えることは、レイリー限界よりピクセルピッチを小さくすることで、まだまだ鏡筒が持っている分解能のポテンシャルを引き出すことができる可能性があることを示しています。


さて、調子に乗ってもう少し試します。ピクセルピッチをレイリー限界の3分の1にした場合です。

rayleigh_CMOS_one_3rd
当然ですが、まだ分解能は上がります。さて、どこまで分解能が上がるかと言うと、理想的には一番上の図のようなところまで見えるのですが、実際にはそんなことはなく必ずいろんな制限があります。

まず、オーバーサンプリングの時に出てくるエイリアスの効果は入っていないので、実際にはゴーストのような像が出てくる可能性があります。また、シンチレーションが悪い、地面の揺れや風などで鏡筒が揺らされている場合は、このような改善は全く得られない可能性があることは言うまでもありません。特に長時間露光が必要なDSOなどの撮影では、揺れの効果が積分されるので、ピクセルピッチをあげても鏡筒の性能を引き出すことは難しい場合もあることを忘れないでおきたいです。

逆に、惑星や月のように明る天体を短時間露光で動画などで多数枚画像をスタックすると、シンチレーションの影響などを小さくすることができ、今回検証したようなピクセルピッチを小さくすることで分解能の改善が期待できるような理想的な状態に近づくのかと思います。


実際のカメラのピクセルサイズで

最後に、前回試したASI294MC ProとASI178MCのピクセルピッチで計算してみます。ただし、これらのカメラはカラーセンサーで、4ピクセルを使って3つのカラーの画素を出すので、分解能は上のモノクロのものよりも更に悪くなるはずです。本当はカラーセンサーをシミュレートしたかったのですが、ちょっと力尽きました。なので、以下の結果は参考程度で、実際にはこれの倍くらい分解能が悪くなると思ってください。


ASI294MC Proでピクセルピッチが4.63umの場合:

rayleigh_CMOS_294
ピクセルピッチがレイリー限界の時とほとんど変わらない結果ですね。

次にASI178MCの場合で、ピクセルピッチが2.4umのときです。

rayleigh_CMOS_178
これもピクセルピッチをレイリー限界の半分にした時の結果とほとんど変わらないです。。

繰り返しになりますが、これはモノクロセンサーと仮定し計算した時のものなので、カラーセンサーにした時には分解能が更に倍悪くなります。そのためピッチを小さくする効果はもっと大きくなるのかと思います。


まとめ

簡単な検証でしたが、ピクセルピッチを小さくするのは分解能を上げるのまだまだ有効で、特にシンチレーションの影響を避けることができる惑星や月の撮影では効果が高いと思われます。ただし、ピクセルサイズを小さくすると一般的に感度が悪くなるので、特にDSOなどの暗い天体をラッキーイメージングなどで撮影する場合には、実質損をしないかどうかきちんと検討する必要があります。

また、センサーのピクセルサイズを小さくする代わりに、バローレンズで像を拡大して相対的にピクセルピッチを改善する方法もありますが、これも拡大することで明るさを失っていきます。天体の明るさ、鏡筒の口径とF値、カメラのピクセルピッチ、カメラの感度、露光時間、シンチレーションなどが複雑に絡んで実際の分解能に結びつきます。今回検証したのはその中のごくごくほんの一部です。

いつも思うことは、何が問題になっているのか、何が性能を制限しているのかを考え、そこを叩くことが重要なのかと思います。


ラッキーイメージングを少し始めたのですが、どうも腑に落ちません。トラベジウムの分離がイマイチできていない気がするのです。


星像の大きさについて

もともとは、MEADEの25cmシュミカセで0.1秒と1秒と10秒で星像を比べたのがきっかけです。もしシーイングが悪いせいで揺らぐなら、露光時間が短い場合と長い場合で、星像にあからさまに差がつくはずです。ですが、結果は差はつきますが本当にごくわずか。いろいろ試していたとき気づいたのが、そもそも中心像でもボタっとしていて、星像が大きすぎるのではないかということ。

それでも念の為ですが、M42を高解像度で撮ったと言われている、他の方の、すでに画像処理を施した他とトラペジウム周りを見比べてみると、自分のものはベストではないが、それほど悪いわけでもなさそうです。画像を見比べただけの分離度はそんなに差はありません。

また、もう一つ気づいたことがあって、微恒星がどこまで出るかも一つの指標になりそうです。例えばトラペジウムだけを分離度よく見せかけようとしたら、画像処理でどうにかできてしまいます。でも微恒星が写るかどうかは解像度に結構依っているようで、トラペジウムだけよく分離しているように誤魔化しても微恒星が出てこなくなります。なので、微恒星も同時にみるとどれだけ分解能が出ているかが判別しやすくなります。


目的

と、ここまでが前置きで、今回試したかったのは果たして理屈の上ではどれくらいの分解能があるはずで、実測した分解能とどれくらい乖離があるかを見極めることです。

もともとの目的は、今の手持ちのMEADE25cmおよびC8の性能がきちんと出ているのか、まだ性能が引き出せるい可能性があるのかを探りたいということです。要するにボテっとしている星像はこんなもんで正しいのか、それとももっと改善できるかが知りたいのです。

今回検討したことは4つ。
  1. エアリーディスク(Airy disk)
  2. レイリー限界(Rayleigh criterion)
  3. スポットダイアグラム(spot diagram)
  4. シーイング(seeing)
です。


エアリーディスク

エアリーディスクによる星像がどのようになるかですが、式の上ではエアリーディスク径Da

Da=2.44Fλ

のようになります。ここで、は鏡筒のF値で、λ は波長です。ただ、エアリーディスク径といっても、式だけみると一体どこの径のことを言っているのかよくわかりません。よく調べてみると、上の式の場合は直径を表しているとのことです。それでも直径といってもどこのことなのか?これはなぜこの式が出てきたのかの導出を調べるとわかります。

エアリーディスクの振幅は横軸を星像の半径方向、縦軸を振幅ととると1次ベッセル関数で表すことができます。式としては
2J1(x)/x

となり、半径 の関数である1次ベッセル関数 J1(x) を半径xで割ったような式です。この式の導出自身は平面波仮定した波素を無収差レンズに入れた時に、結像点でどのような振幅になるのかを積分してやるのですが、ここでは式の導出自体は目的ではないので、解説はその他専門の文献に譲ります。

上の式は振幅なの、実際の光強度にするためには2乗してやる必要があります。2乗したものをグラフに表すと、
airydisk

のようになります。エアリーディスク径といっているものは、このグラフで0からみて正負の方向に最初に0になる点の間の距離のことを言います。この点を求めるのはちょっと面倒なのですが、Mathematicaなどがあれば

In[192]:= FindRoot[(2 BesselJ[1, x]/x)^2 == 0, {x, 1, 5}]

Out[192]= {x -> 3.83171}

のように簡単に求めることができます。最初にゼロになるxは+/-3.83程度とわかります。

なんでこんなことをするかというと、実際の星像では強度がゼロになるところなど見えるわけがなく、普通真ん中が明るくて徐々に暗くなっていくような正規分布のような強度を持っているものにはFWHM(Full Width Half Maximam, 半値全幅)といって、最大強度の半分になるところの直径で評価します。

ではエアリーディスクのFWHMはどれくらいでしょうか?先ほどの式を2乗したもので、今度は0ではなく0.5になるようなところを求めればいいということになります。

In[198]:= FindRoot[(2 BesselJ[1, x]/x)^2 == 0.5, {x, 1, 5}]

Out[198]= {x -> 1.61634}

で、xが+/-1.62程度です。上のグラフで見ても実際にそれくらいのところですね。 なので、最初のエアリーディスク径の式を1.62/3.83=0.42倍したものがFWHMでみたエアリーディスクからくる星像と考えることができます。波長は目視の標準的な緑の550nmを選び、例えばC8の場合F10を考えるとエアリーディスク径C8

DC8=2.44Fλ=2.44×10×0.55[um]=13.42[um]

となり、FWHMでみたエアリーディスク径C8, FWHM

C8, FWHM = 13.42 [um] x 0.42 = 5.66 [um]

となります。

これを現在使っているASI294MCProで何ピクセルに相当するかも見たいので、画素ピッチ4.63[um]で割ってやると、1.22[pixel]となりますが、これだけみるとエアリーディスク径とピクセルサイズが大体同じくらいと、ずいぶん小さいことがわかります。

さらに、um(マイクロメーター)単位のものを秒角(arcsec)で表すために、umからarcsecに変換することを考えておきます。式としては

Cumarcsec=tan(12×60×60π180)×2×f×1000

となり、焦点距離 に依存します。基本的にはある焦点距離のレンズを通したものが、ある大きさ[mm]のセンサー面で結像し、そのセンサーの大きさを単位1としたという意味です。tanの中のセンサーの大きさ「1」を2で割っているのは、センサーの真ん中から片側分の大きさで決まるからです。3600で割っているのは秒から度にするため、あと、Excelなどの関数で計算する場合は単位がラジアンなので度からラジアンへの変換係数として180度で割って、πをかけています。最後の1000倍はセンサーの大きさを[mm]単位、エアリーディスクを[um]と考えたための変換係数です。

例えばC8の焦点距離200mmを入れてやると変換係数は9.70[um/arcsec]となりますが、実はエアリーディスクがF値の関数なので、エアリーディスクのF値と変換係数の焦点距離がキャンセルします。そのため、エアリーディスク径は視野角の秒で書くとF値や焦点距離にによらず一定で、FWHMで書いた場合0.584[arcsec]程度となります。


レイリー限界

レイリー限界を考えてみます。これも式は調べるとすぐに出てきます。

DR=127.5D[mm][arcsec]

鏡筒の口径[mm]だけで決まる量で、C8の場合の200mmを考えると、0.638[arcsec]となります。単位が秒角で出てくるので、上で求めた変換係数ををかけてやると、6.18umとなります。ん、FWHMで見たエアリーディスクと結構近いですね。でもこれはある意味当たり前で、レイリー限界が、2つの同じ高さのエアリーディスクを並べた時に、片側の最初の暗いリングの中心が、もう片側の強度のピークと一致する距離と定義したからです。なので結局(元の定義の)エアリーディスク径の半分程度になり、一方FWHMで見た時のエアリーディスクも元の定義の半分くらいになるので、同じような量になるわけです。

というわけで、結論としてはレイリーレンジはエアリーディスクと同じような原因なので、とりあえずここでは考えなくていいでしょう。

でもなんで一方のエアリーディスクは[um]で求めて、もう一方のレイリー限界は[arcsec] で求めるんでしょうね?両方ともarcsecで式を書いておいた方が、F値によらないので楽な気がするのですが。


スポットダイアグラム

だんだん、現実的になってきます。スポットダイアグラムはなかなか評価が難しいのですが、とりあえずC8相当の口径20cm、F10のシュミカセをLensCalでシュミレートしたスポットダイアグラムを元にします。緑の550nm付近が支配するくらいだと下からわかるように、黒い参照円の直径が20umなので、緑の部分は8um程度です。

IMG_6880

緑だけでなく、可視光とされる範囲の波長を考えると40umくらいになってしまいます。

IMG_6881

どの色までを考えるかはなかなか難しいです。実際の色のついた星をある波長依存性を持ったカメラで撮影して像を結んだものが、映った星像となるので、一概にはなかなか言えません。ここでは最大径として可視光を仮定します。

スポットダイアグラムは点光源とみなせる線素が多数入った時に収差によってどれくらいスポットが広がるかを示している図であって、少なくともLensCalではエアリーディスクの効果は入っていないようです。なので、それぞれの線素がエアリーディスク径を持つと仮定すると、スポットダイアグラムの外部にエアリーディスクの半径分の広がりを持つと考えることができます。スポットダイアグラムのFWHMは外周にある線素のエアリーディスクのFWHMだけ考えればいいので、下の手書き図のようにFWFMで考えたエアリーディスクの半径を外周に持つような台形に近い形となり、それをスポットダイアグラムの径と考えていいのかと思います。

IMG_6879

計算すると、スポットダイアグラムの広がりの40[um]にFWHMでのエアリーディスク径5.66[um]を足すことになって、45.66[um]。ピクセルに直して、9.86[pixel]です。かなり大きく、C8の場合はスポットダイアグラムが支配的なのがわかります。

ただしスポットダイアグラムを見てもわかるように、実際には端の方ほど密度が少ないので、このモデルは多分正しくなくて、やはりもっと中心が盛り上がったような、FWHMでは測ってももっと径が小さく出るようなモデルにするべきかもしれません。ここら辺は次の課題とします。


実際の星像と比較してみる

さて、実際に撮影した星像を見てみましょう。2019/4/4にC8でASI294MCPro撮影したものです。

IMG_6884


シーイングの影響を少なくするために露光時間250msecで撮影した動画から、一枚だけ抜き出してFWHM測定します。測定はPixInsightを使いました。そのままのRAW画像だとBayer配列なので、PixInsight上でDeBayerをして、測定したい星像を選択します。選ぶのは少なくともサチっていない星。さらにFWHM測定ツールがカラー画像には適用できないので、gray scaleに変換してから測定しています。結果は12.62 [pixel] とのこと。計算の9.86 [pixel] より3割ほど大きいです。

(実測では次に考えるシンチレーションの影響が入っているので、計算値より大きくなった分はシンチレーションの影響と考えていいかと思います。説明は後にして結果だけ書いておくと、露光時間250msecのシンチレーションの影響は1.3秒角となります。)

ただし、例えばトラペジウムのところを3次元の等高線図で見てみると、

IMG_6882

結構尖っていてあまり台形っぽくないので、やはりモデルの方があまり合っていないかもしれません。実際にはスポットダイアグラムも端の方の効果が小さくなる気がするのですが、その一方でそのようにすると形ももう少し尖り、計算上の見積もり径は小さくなるので、結果としてはズレていく方向になってしまいます。

もう一つは観測時に鏡筒のピントや光軸がずれていた可能性があることです。ピントはSharpCapでFWHMが最小になるように合わせたので、それほどずれているとは思えませんが、光軸はあまり自信がないです。露光時間がもっと短ければ、さらに計算値に近づくかもしれません。ここら辺も次回もう少し見直すところでしょうか。


シーイング

やっとシーイングにたどり着きました。シーイングが悪いと、露光時間が増えていけば星像が大きくなるはずです。

ではC8で露光時間を先ほどの100倍の25秒かけて撮影した動画から一枚を取り出したものを見てみます。同様のFWHMを測定してみると結果は19.56pixel。0.25秒の時の倍近くなので、明らかに肥大しています。

IMG_6885

この大きさがシーイングで決まっているとすると、スポットダイアグラムで決まるような径を持った星像がシーイングで揺らされて、ランダムにある範囲内を動き回ると考えられます。スポットダイアグラム径と同程度のゆらぎの場合にはスポットダイアグラムの形や強度も揺らぐと考えられますが、ここではそれはないと仮定します。そのため簡単なモデルとしてはやはり、スポットダイアグラムの時と同様に外周にエアリーディスクの半径が付いた台形型の星像が得られるとします。

モデルからどれくらいのシーイングがあれば星像はどのくらいの大きさになる計算できます。実測が19.56umなので、先に求めたumから秒角への変換係数を用いると、25秒露光ではシーイングにより6.5秒角程度揺らされていることになります。日本では2秒角だと静かな方で、3秒角くらいが平均、ひどいと10秒角くらいになるとのことです。確かにこの日シーイングはひどかったと考えられますが、C8の結果の6.5秒角は10秒角という範囲内で、評価はそれほど間違っていることはなさそうです。


MEADE 25cmで測定した時の場合

以上のことを、前回MEADEの口径25cm、焦点距離1600mmで測定した時の結果とも照らし合わせてみます。MEADEの場合、エアリーディスク系はFWHMで0.85[pixel]とかなり小さくなります。これはF値が小さくなるためです。そのためスポットダイアグラム、シーイングでも外周のエアリーディスク半径自身が小さくなるので、ともに星像の肥大が多少抑えられます。

例えば、前回
  • 0.1秒露光: FWHM = 6.952 pixel
  • 1秒露光: FWHM = 7.333 pixel
  • 10秒露光: FWHM = 8.108 pixel
という結果が得られましたが、これはあくまでスタックされたものです。それでも0.1秒露光の動画から一枚だけ抜き出してきてFWHMを測定しても6.0pixel程度とほとんど変わりません。スタックはそこそこうまくできていることがわかります。また、10秒露光でも肥大がそれほどないことから、この日はシーイングが相当よかったことがわかります。

本当はC8でやったような計算をMEADEの25cmでやりたいのですが、MEADE用のスポットダイアグラムがなかなか計算できない、もしくは見つからないのです。なので、MEADEのスポトダイアグラムは0.1秒露光の星像がシーイングでのブレが0だったと仮定して、スポットダイアグラムがほとんど径を制限しているとすると、スポットダイアグラムの上限は25[um]ほどになります。たとえ0.1秒露光でシーイングがある場合は、スポットダイアグラムが小さくなるセンスです。なのでこれが正しいなら、いずれにせよ中心像に関してはC8よりもMEADEの方がかなり性能がいいことになります。ただし、四隅のコマ収差はF値の2乗に反比例して悪くなっていくので、MEADEの方が(10/6.3)^2=2.5倍くらい大きく出るはずです。コマ補正は必須でしょう。

さらに、10秒露光での星像が長時間露光のためにシーイングで制限されているとすると、その揺れ幅はモデルから1.2秒角程度と計算できますです。C8で測定した時よりもはるかにシーイングの影響が少なく、揺れも少なかったものと考えられます。実際の動画を今更ながら見ても、ほとんど揺れていなかったことがよくわかります。トラペジウムのところで分離が悪いように見えましたが、あからさまにサチっていたので、これは何の評価にもなっていませんでした。

このような日はスポットダイアグラムで支配されるような星像がえられているはずなので、スポットダイアグラムがさらにいい鏡筒を選ぶことで、星像の大きさは改善されるはずですが、逆に言うとラッキイメージングで星像があまり改善されない日ということもできます。



考察

モデル化などまだ不十分な点はありますが、それでも今回のことからいろいろなことがわかります。
  • 露光時間が長くなると星像が肥大化することが確かめられた。
  • 露光時間によって径が変わる範囲では、シーイングによる影響が効いていると思って間違いない。
  • C8で測定した日はシーイングが悪かったようである。
  • このような場合、星像の大きさは現実的に撮影するような1秒以上の時間単位ではシーイングに制限されている。
  • 1秒をはるかに切るような短時間露光では、シーイングの影響のない星像を得ることができる可能性があるが、明るさが足りない、撮影枚数が増える、スタック処理が大変などを考えると、あまり現実的ではない。
  • ラッキーイメージで露光時間を短くすれば星像の改善にそのまま繋がる。
  • MEADEで測定した日はシーイングが良かったようである。
  • 短時間露光のスタック方法も、特に問題ないこともわかった。一枚だけの星像の径と、スタックした後の星像の径を比較すればすぐにわかる。
  • このような日は鏡筒の、特にスポットダイアグラムの性能が効いてくるので、より性能のいい鏡筒が星像を改善する。
  • 逆に言うと、ラッキーイメージでの星像の改善をあまり望めない日でもある。
画像を見ただけでは実際の径は全然わかりません。階調圧縮や拡大でFWHM径は容易にかわってしまいますし、単に画像処理で小さく見せてしまうこともできます。サチらない範囲で星像を撮影して、きちんと測定することが大事です。


課題もまだあります。
  • スポットダイアグラムの中心と端の部分で同じように評価していいのか。端の方が密度が薄くはずなので、実効径はもう少し小さくていいはずである。また、波長によってスポットダイアグラムがちがうので、これも端の方がより密度が低く、実効径はもう少し小さくなるはず。
  • 超短時間で露光した場合は、スポットダイアグラムで支配されるような径に一致するのか?もしそうなら、それがスポットダイアグラムの実測径とすることができそうである。

結論

まず結論の一つとして言えることは、実際の撮影では、短時間露光の動画を見て、明らかに揺れている場合は露光時間を短くとるといいということでしょう。短時間露光の動画を見て、あまり揺れていなければ露光時間を延ばしてリードノイズの効きを緩和していった方が有利です。

それでは今回の元々の目的の、C8やMEADEで撮影した星像はおかしいのでしょうか?それとも正しかったのでしょうか?計算してみると、シーイングにかなり左右されますが、少なくとも説明できる範囲内には入っているようで、光軸など多少の改善の余地はあるものの、性能としておかしなことが出ていると言うことではないようです。

シーイングがいい時にはこの鏡筒の性能に制限されることもありますが、シーイングが悪い時には性能は何ら問題ではないということがわかります。ただし、ラッキーイメージングでシーイングの影響を除いていく時に、鏡筒の性能で制限される時がくることがあるはずです。それでも現実の1秒程度の露光時間でもまだシーイングが効いている(星像が揺れている)時には鏡筒はこのままで十分でしょう。ただしこれはあくまで中心像のみの話で、周辺像の例えばコマ収差が効いてくるような場合はシーイングの影響よりもスポットダイアグラムで見た径が効いてくるので、この補正をきちんとするなりする必要があります。四隅の短時間露光映像もきちんと見て、全然揺れていなければラッキーイメージの効果はあまりなく、むしろ鏡筒の性能を改善した方がいいということです。

いずれも、結論としては短時間露光の動画を見てスポットが動くならラッキーイメージングで鏡筒の性能に迫る努力をする、動かないなら鏡筒の性能で制限されていると判断して差し支えないと思います。


まとめ

色々長々と書きましたが、計算量は大したことはありません。これだけの検討でかなりのことが納得できました。ラッキーイメージングで露光時間をどれくらいにすれば価値があるのかもだいぶんわかってきました。次回以降、実際の撮影で試していきたいと思います。

 

年が明けてもうだいぶん立っていますが、相変わらずやりたいことだらけです。でも時間も天気も全然思い通りになりません。なので今年の目標を書くだけ書いておこうかと思います。長期目標も入っているので、まあできる範囲ということで。


機材関連
  1. FS-60Qにカメラを付けたままでしまえるケース
  2. MEAD 25cmシュミカセ用フードをヒーターに改造
  3. Vixen Portaの経緯台の評価と安定化
  4. α7sの入手
  5. 焦点距離100mmくらいの、いいカメラレンズを手に入れる
  6. FS-60Qより長焦点の撮影鏡筒を手に入れる
  7. 双眼鏡の性能がわかるようになる
1のケースは今年初めに実家の名古屋のホームセンターで大きなものを見つけました。スポンジを入れて今はこんな風になっています。エクステンダーをつけてもカメラを外さずに入れることができます。とにかく、組み立ての時間を短縮したいので、できるだけ分解せずに出し入れできるケースにしました。何度か使ってみてもう少しスポンジの位置を調整します。

IMG_6195

2は国際光器で購入したフードがあるのですが、冬場にはヒーターが必須なことがわかりました。ヒータ付きのものはサイズが限られたり高価だったりするので、自分で改造するつもりです。実はもうニクロム線とかも買ってあるので、近いうちに改造です。

3ですが、VixenのPortaを小海の星フェスで手に入れて、自宅で一度月や星を見てみたのですが、思ったより揺れてしまいます。なんでこんなに揺れるのか、対策はできないかなど、時間ができたら試してみたいです。

IMG_5577


4は長期計画の一つで、予算ができたら手に入れておきたいと思っています。α7sとSharpCapでライブスタックができる可能性が何通りか見えてきているので、予算の都合がつけば早めに試したいところです。また、30秒縛りの星景写真でも威力を発揮しそうなので、できれば夏までには手に入れたいのですが、予算が...。

5ですが、FS-60CB+レデューサーで焦点距離255mmです。もう少し広角で撮りたい時のレンズが今のところありません。撮影に耐えるようなレンズを手に入れておきたいですが、3が先か、4が先か?

6はさらに長期での計画です。600mmを超えた長焦点の撮影鏡筒の可能性を探っているところで、今のシュミカセの延長になるのか、屈折にするのか?まだまだのんびりと結論を出すつもりです。

7ですが、このまえ安価な双眼鏡を購入しました。でもまだまだ双眼鏡を見る目を全然持っていません。そのうちレポートしますが、私にとって双眼鏡という分野はまだまだ長期計画の部類でしょうか。あ、できればもうこれ以上沼に落ちたくはないとは思っています。一応。


撮影

撮影関連の目標は結構具体的です。機材関連のことも一部入っています。
  1. FS-60CBでのレデューサとマルチフラットナーを使った継続的な撮影
  2. AZ-GTiの赤道儀モードでのガイド撮影
  3. C8での太陽Hα撮影
  4. シュミカセのコマ収差の補正
  5. シュミカセを使ったラッキーイメージ法での遠方銀河の撮影
  6. 冷却CMOSカメラに慣れる
  7. モノクロでの天体撮影
  8. モノクロ冷却カメラの入手と撮影
1はQBPの入手とともに、すでに始めています。ちょっとづつですが結果も出てきているので、継続して続けていきたいです。

2は昨年やり残したことで、ガイド付きではまだ撮影に入ったていません。すでに短時間の数ショットでは試しているのですが、長時間撮影までまだ及んでいません。近いうちに試そうと思っています。

3は昨年のリベンジです。危険でなく、口径を生かせる安価な方法を考えています。これは早いうちに試したいです。

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昨年C8で太陽の熱で割れたフィルター。もっと安全な方法を探ります。


4から6くらいまではセットで考えていて、最近冷却カメラを手に入れたので、夏頃までになんとかものにしたいです。

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7と8はまだ長期計画で、来年以降になるかもしれません。


画像処理
  1. FS-60CB用+レデューサーの四隅の処理法
  2. FS-60CB用+マルチフラットナーの四隅の処理法
新しく手に入れたレデューサーとマルチフラットナーですが、レデューサーで撮影した画像をみるとぱっと見は不満はないですが、強拡大すると四隅は完全な星像にはなっていません。画像処理でどこまで綺麗になるのか、もう少し試してみたいです。


電視観望
  1. 季節ごとの電視観望に適した天体リストの作成
  2. 電視メシエマラソン
昨年はASI294MCを手に入れたおかげで、電視観望のクオリティーが大幅に上がりました。これはセンサー面積によるところが大きいです。また、後半に手に入れたAZ-GTiが電視観望に向いているので、こちらも機材のコンパクト化に大きく貢献してくれました。

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AZ-GTiで電視観望用のセットアップがかなりコンパクトになりました。

2ですが、昔電視メシエマラソンの練習だけしました。月と天気を選んでまるまる一晩やってみたいです。ライブ配信とかできたらいいのですが、自宅から離れるとネット環境が厳しいのでなかなか難しそうです。


考察など
  1. シュミカセの補正レンズの設計と簡単な試験
  2. FS-60CBの光学設計を理解、フラットナー、レデューサーでの星像の再現
  3. CMOSカメラのゲインの最適値の議論
ラッキーイメージに関連して、もう少しきちんとシュミカセの理解と補正法を、光学設計の観点から確認しておきたいと思っています。あわよくば、FS-60CBで旧フラットナーとか今回購入したフラットナーとレデューサーのスポットダイアグラムの再現ができたらと思っています。

3はあぷらなーとさんのブログで質問されたのですが、なかなかパッと答えるのは難しくて、もう一度きちんと今考えることができるものを考慮して、一から追ってみたいと思っています。


その他
  1. 機材リストのアップデート
  2. 古い機材の整理整頓
星を始めてから2年半で手に入れた、ほぼ全ての機材のリストをエクセルで作っています。それぞれの値段も記載しててあるのですが、合計を取るのが怖い怖い。でも最近書き込むのをサボっているので、レシートとにらめっこでリストのアップデートが必要です。

ついでに今の機材で稼働率が良くないものを見直して、活用できる手を考えたいと思っています。


まとめ

まあ、こうやってみるとやっぱりやりたいことだらけですね。どこまでできることやら。でもどれも楽しみながらできそうで、あくまで仕事ではなく趣味の範囲なので、あせらず、やりたい時に気の向くままにやろうと思っています。

突然レンズ設計に目覚めてしまいました。ここ最近のマイブームで、四六時中ずっとレンズ設計のことを考えています。そもそもの動機が、シュミカセでコマ収差が盛大に出ていたのを、コマコレクターである程度軽減できることがわかったのですが、じゃあそもそもコマコレクター ってなんですか?というところから来ています。

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上の写真は手持ちのコマコレクター、バーダープラネタリウムのMPCC MarkIIIです。結構歪んで見えるので非球面レンズなのでしょうか?でも値段からいったら単純なレンズの組み合わせな気がします。説明書にはF4からF6まで対応すると書いてあるのですが、実際にコマ補正したい鏡筒はMEADEのLX-200の口径25cm、焦点距離1600mm、F6.3のものなので、少しだけ範囲から外れてしまいます。以前一度試しにつけてみたのですが、そこそこ効果があることはわかっています。

でもこのコマコレクターでこと足りるのか?最適な位置やバックフォーカスはどこなのか?もっといいコマコレクター はできないのか?と疑問は尽きず、気づいたらじゃあそもそもシュミカセってどんなものなの?という疑問に行き着きました。これを確かめるにはある程度シュミカセの設計自体を理解しなくてはダメです。


と言うわけで、前置きが長くなりましたがレンズ設計の挑戦の始まりです。どこまで続くことやら。

レンズ設計に関しては先人の理論、設計、ソフトウェアや検証など、多くの蓄積があります。まずはシュミカセに行く前に、レンズ設計ソフトを触ってみることにしました。あぷらなーとさんHIROPONさんがブログの中で試していらっしゃるので、それを捕捉する形で書いて行きたいと思います。ソフトはその中でオススメの「LensCal」です。製作者は京都の「星を求めて」でお会いすることができたラッキーイメージを得意とするYamashitaさんとのことです。Yamashitaさん、こんな素晴らしいソフトをフリーで提供していただいて、ありがとうございます。

とすぐにでもソフトに手を出したいのですが、ここではあぷらなーとさんが試したように、基準となる拠り所が欲しくて、まずはハルチング(今はハーティングと言うべきなのでしょうか)の公式に手を出してみました。


ハルチングの解とは、フランフォーフェル型と言う凸レンズと凹レンズの組み合わせにおいて、C線(656.27nmのHα)の焦点とF線(486.13nmのHβ)の焦点を一致させ、d線(587.56nmの黄)に対して球面収差とコマが最小になるような設計とのことです。2枚の設計したいレンズの上の3つの波長での屈折率を与えてやって、16個の連立方程式を解くと目的のレンズの曲率半径が求められるものです。

ネットを漁るとこのページにたどり着いて、ここから辿っていくとエクセルの表を手に入れることができます。ただ、これだけだと何をやっているかわからないので、式が書いてある掲示板を参照してみてください。私は吉田正太郎著「天文アマチュアのための望遠鏡光学〈屈折編〉」という本で式と概念をフォローしましたが、他の書籍でも同様の記述は見つかると思います。本の方では多少詳しい説明がありますが、連立方程式の導出から書いてあるわけではないので、結局は天下り的にこの連立方程式を解くだけです。リンク先で手に入るエクセルの表のパラメータも解も、上記書籍のパラメータ及び解と全く同じだったので、少なくとも表に特に変な間違がないことがわかるので安心できます。


この時のパラメータが最初のレンズをBK7、2枚目をF2で作るとして

BK7:
nC = 1.51385
nd = 1.516330
nF = 1.521900

F2:
nC = 1.615020
nd = 1.620041
nF = 1.632120

となっていて、最初のレンズの厚さが0.65mm、レンズ間距離が0.02mm、2枚目のレンズの厚さが0.45mmとするとします。

その時のハルチング公式からのそれぞれの曲率半径の解が

r1 = +60.572mm
r2 = -35.620mm
r3 = -36.041mm
r4 = -147.961mm

となるのは、上記書籍も、表計算の値も同じです。


さて、ハルチング解がある程度理解できたところで、やっとLensCalに移ります。ダウンロードインストールなどはマニュアルの通りです。Example of glass dataは必須ですし、Data.zipも落としておいた方がいいでしょう。ヘルプファイルは絶対あったほうがいいです。

一つ注意点は、ものすごく重要なヘルプファイルがWindow10だと中身を見ることができません。ヘルプファイル自身はダウンロードしてファイルをダブルクリックするだけでいいのですが、LensCalの掲示板にあるように

1.LensCal.chmを右クリックしてプロパティを開き、
2.いちばん下の「ブロックの解除」のボタン又はチェックボックスに印を入れてOKを押す
と読めるようになるようです。

とあるので、これに従うと無事にWindow10でもヘルプファイルの中身がきちんと見えるようになります。

基本的にはこのヘルプファイルの「簡単な使い方」のその1からその3までを丁寧に試していけばあるていどのことは学べてしまいます。ここで注意することは、ヘルプファイルの説明が少し添付データと違っていることです。2枚目のレンズのF2が「Sumita」から選ぶように書いてあるのですが、実際には「Schott」の方に入っています。しかもSchottのデーターも、Example of glass dataでダウンロードしたGlassData.zipを解凍して、出てきたファイルをLensCal.exeと同じフォルダに入れておかなければ、ガラスデータとして選択することができません(マニュアルにこのことは書かれています)。私が迷ったのは上記2点くらいで、他は全て問題なく、非常にわかりやすく扱いやすいソフトでした。

ヘルプに沿っていけば、「ベンディング」というらしいのですが、ある2つのパラメータを自由にして、収差を最小にするようなチューニングのようなこともできてしまいます。最適解を数値計算的に求めることもできるようです。ただ、最適解の場合は条件出しに少し癖があるようで、例えば波長の効き具合とかに、あまり効かせたくないと思って0を入れたりするとエラーが表示されて、立ち上げ直すまで2度と計算できなくなってしまったりします。そんなときは0.01とか小さな数を入れてやることで回避しています。

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上記写真は最適解とベンディングを駆使して求めた曲率ですが(距離は固定)、ガラスの屈折率にごくわずか違いがあることや、最適化の条件の調整が難しいこと、ベンディングの調整の誤差もあることなどから、ハルチングの解析解と少し違った値になっています。それでもまあ、かなりいいところまで最適化できていると言っていいでしょう。ここで気付いたのは、ハルチング公式の条件の一つの「C線(656.27nmのHα)の焦点とF線(486.13nmのHβ)の焦点を一致させ」というのは、シミュレーションでは球面収差を見ながら「有効径の外の方で合わせる」というのが解に近いみたいです。最初中心で焦点を合わせていたら、どうしても解析解とずれてしまいました。でも外側で合わせるというので本当に正しいのでしょうか?ここは謎が残ったままです。


さて、LensCalには20cm F10のシュミカセのサンプルファイルも添付されています。でもこのサンプルファイルにあるシュミット補正板の係数の値が本当に正しいかどうか、いまいち確信が持てません。シュミット補正板については同じ吉田正太郎著「天文アマチュアのための望遠鏡光学・反射編」にある程度書いてあるのですが、これも式の導出までは記述がないので、出ている式を天下り的に使うしかないのですが、どうもサンプルファイルの補正板の曲線の係数と全然一致しません。

もう一本Opt-Design 2000というソフトでも試していて、こちらもLensCalとある程度似たようなことができ、さらにこちらにも20cm F10のシュミカセのサンプルファイルが添付されています。でもこの補正板の係数の値もまた全然違います。

球面収差図を見ていると、原理から言って補正板の中性帯(曲率の正負が逆転する中間地点で、ここを入射する光は補正板の影響を受けない)を通るところで収差がなくなるはずで、LensCalの方はそれを再現しているようにも見えるので、LensCalの値が正しいように思えます。でもじゃあどうやってこの補正板の値を出したのかなど、まだ謎だらけです。

とりあえず、今やっとここら辺です。
 





 

ブログのコメントで赤道儀のセッティングについて議論があったので、少しまとめておきます。


目的

赤道儀の設定で何が重要かを考えてみる。
具体的には極軸を取るだけでいいのか、赤道儀の水平を取るのは必要なのかを考えます。


検討すべき状況

自分が地表のある経度、ある緯度、ある高度にいるとします。その位置において赤道儀を設置することを考えます。


考えるべき自由度の確認

極軸の向きで2自由度、赤経の初期位置の不定性で1自由度、同じく、赤緯の初期位置の不定性で1自由度の、計4自由度が考えられます。 


さて、検討を始めます。

極軸をきちんと合わせた状態ではどうなるか?

赤道儀の極軸調整だけして、水平とかは全然とれていない場合は何ができて何ができないのでしょうか?実はマニュアルで天体を導入して、あとは自動追尾するだけなら、これで十分です。赤道儀の水平が出ていようが出ていまいが、関係ありません。赤経、赤緯のクランプを緩めるなり、微動であわせるなりしして、マニュアルでターゲットの天体さえ導入さえすれば、あとは自動で追尾していきます。

自動追尾で時間とともに天体がずれていくのは別の問題で
  • 極軸あわせの精度が悪い
  • モーターの回転精度が日周変化とあっていないなど
  • ピリオディックモーションもこの範疇
などが原因です。いずれにせよ、極軸さえ合わせれば、自動追尾はできます。


自動導入は?

極軸をとるだけでは自動導入まで考えると不十分でしょう。では水平を取ればいいのか?他に気をつけることはないのか?
  1. まず初期アラインメントのことを考えてみます。簡単のために、赤道儀の極軸調整は理想的に取れていて、赤経軸は正しく極軸に一致していると仮定します。
  2. 各メーカーの初期アライメントの詳しいアルゴリズムはよくわかりませんが、普通にプログラミングのことを考えると、何かを仮定しなければいけません。ぱっと考えて、最初はまず鏡筒がきちんと極軸を向いているということを仮定するでしょう。
  3. これをもう少し分解すると、初期アラインメントアルゴリズムは(極軸は理想的にあっているとするので) A. 赤緯の初期位置(クランプを緩めて赤緯の回転体の矢印を二つを合わせて、きちんと北向き(極軸方向)にとるということ)はあっていると仮定する(かんたろうさんとの議論で今回の記事をここから何箇所か訂正しました)でしょうしかもしれませんし、さらにB. 赤経の初期位置(クランプを緩めて赤経の回転体の矢印を二つを合わせて、きちんと地面に対し垂直に向けるということ)もあっていると仮定するでしょうかもしれません。さらに、C. 赤道儀は水平に設置されていることも仮定するでしょうかもしれません。
  4. でもBとCは自由度としては同じことを言っていて、例え水平がずれていても、(極軸は理想的と仮定しているので)赤経の矢印合わせのところで少しずらして補正してやれば同じことです。なので、本質的には自由度はAとBCを合わせた2つになります。セレストロンの実際のアルゴリズムは赤緯体が天頂方向を向いていることだけを仮定しています。なので、赤緯体が天頂を向いていれさえすれば、必ずしも水平が取れている必要はありません。ただし、その場合赤経の矢印もずれることになります。
  5. でもこのことは、実際の初期アラインメント時には正しくないです。たとえ赤緯体がきちんと真上を向くように赤経を合わせてあっても、初期アラインメントプログラムは「水平が取れている状態できちんと赤経の0度が真上を向いているのか、水平がずれていて赤経の0度も真上から少しずれているのに赤緯体が真上を向いているか」を知る手段がないからです。なので普通にプログラムを組むことを考えた場合、赤経が0度が上を向いていて、かつ水平も取れている状態を仮定するでしょう。
  6. なので、一発目の導入をきちんと視野に入れたい場合には、赤緯体を天頂に向けるか、水平を取って赤経、赤緯はきちんと矢印を合わせたほうがいいというわけです。



実際の導入手順

上記のことより、実際の赤道儀のセッティングのしかたは例えば以下のような手順が考えられるでしょう。ここではコメントにあったAdvanced VXを例にとって考えます。

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  1. 初期アラインメントで一発目からある程度天体を導入したい場合は、赤緯体を天頂方向に向ける必要があります。インデックスマークを使う場合は水平を出す必要があります(赤緯体を天頂に向ける方法が他にあるなら、水平にこだわる必要はありません)。手持ちのAdvanced VXには水準器がついていないので、ホームセンターで小さな全方向の水準器を買ってきて、上の写真のようにエポキシ接着剤で三脚に取り付けました。
  2. 最初に水準器を取り付ける時の水平は、三脚と赤道儀の間に板を挟み、そこに水準器を乗せて足の長さを調整して水平を出し、その足の長さを保ったまま、水準器を三脚の上に移動し、水準器が水平を示すように接着剤でつけました。ここまでが事前準備です。
  3. ここからが、毎回の設置時の話です。初期アラインメントの前に、極軸合わせですが、さらにその前に、毎回必ず三脚の水準器で水平を出します。
  4. 水平を出しておけば、赤道儀を設置する場所の緯度が大きく変わらない限り、北極星の高さはほとんど狂わないので、赤道儀の下の横の2本のネジでYawだけを調整して北極星を視野中心に入れます。私の場合、鏡筒(600mmとか)につけたASI294MCをSharpCapで見た画面のだいたい真ん中くらいに北極星が入るようにします。
  5. この状態でSharpCapの極軸調整で1分角程度まで合わせこみます。
  6. その後、赤道儀の電源を入れ、赤経と赤緯の矢印マークをできるだけきちんとモーターで合わせてから初期アラインメントを始めます。
  7. 基本的に水平出しと、極軸合わせこみでほとんど一発目で、鏡筒につけたカメラのSharpCapの画面の中に入ってきます。
  8. ASI224MCの時はセンサー面積が小さく流石に600mmだと一発で入らない時もあったので、50mmのレンズにASI224をつけて電子ファイダーで一発目の導入を補助していましたが、それでも二発目は十分に600mm+ASI224で入ってきます。

実は最初に書いてませんでしたが、鏡筒を赤緯体に取り付ける時にきちんと鏡筒が赤緯軸に対して垂直な面内に存在するという仮定もしています。この仮定が破られている状況とは、例えば極軸がきちんとあっていて、赤緯が0度を向いているのに、鏡筒の頭が下がっていて全然極軸方向を向いていないなどです。アリガタやアリミゾの精度が悪かったり、アリガタに対して斜めに鏡筒を取り付けてしまったときに起こります。上記設定手順を試して、それでも初期アラインメントの一発目に目標天体が入らない時は、鏡筒の取付時のずれを見直してみるといいかもしれません。

というわけで、本当は最初に説明した極軸2自由度、赤経、赤緯の不定性2自由度、さらに赤緯体に対する鏡筒の向きの2自由度の計6自由度があって(厳密にいうと、赤緯の不定性と鏡筒の向きのYaw方向は同じ自由度なので計5つ)、極軸を合わせることで2自由度減り、残り4(厳密には3)自由度を求める必要があります。初期アラインメントの一度の導入で2自由度決まるので、2スターアラインメントで一応4自由度が求まるはずです。3スター以上だと、極軸のズレまでわかると思うのですが、そのアルゴリズムはどうやっているのかあまり想像できません。結構大変そうです。

また、1スターアラインメントだと、原理的に自由度が足りないので、どこかが合っていると仮定せざるを得ません。なので、簡易アラインメントと考えるべきでしょう。でも上記方法で赤道儀を設置すると、1スターアラインメントでも十分実用的になります。

最近のアルゴリズムは相当優秀なので、一発目に導入したいという要求を外してしまえば、2スターアラインメント以上を使えば、多少赤緯体が天頂からずれていても大丈夫ですし、水平もこだわる必要はないですし、矢印も多少ずれていても構いません。下手をすると多少極軸がずれてしまっていても補正しながら追尾することも可能かもしれません。

もっと言うと、赤道儀下部の極軸合わせのPitchとYawの押しネジのところにモーターをつけて、最近はやりのPlate Solvingなんかまで駆使したら、本当にポンと置いて全自動で極軸を取って、アランメント完了まで全自動でできそうな気がします。経緯台など、簡易的なものではすでに実現されつつありますが、元気のある中国メーカーとかが、撮影に耐えられるくらいの安定したレベルのものを赤道儀で作ってくれませんかね?


毎度長々と書いてしまってすみません。とりあえずパッと考えたことを書いただけなので間違ったことを言っているかもしれません。何かおかしなところがあったらコメントなどで指摘していただけると嬉しいです。 ->かんたろうさんのコメントとその後の議論で、初出の記事からいくつか訂正しました。



 

光害調査を進めていた娘の自由研究ですが、結構頑張っていて、私の目から見てもかなり面白い結果が出そうだというところまで以前報告しました。それがなんと、学校で代表に選ばれてしまったようです。妻からその時の話を聞きました。

富山の中学の自由研究の提出日は、夏休み終わり近くの登校日で今年は8月22日。意外に早く、ギリギリで仕上げる子にとっては死活問題です。その週のうちに学校の理科の先生から電話がかかってきて「自由研究が代表に選ばれました。夏休み中に一度打ち合わせに学校に来てください。」というものだったそうなのですが、なんとNatsuの返事がなんと「はぁ、ちょっと考えさせてください。」で、電話を切ってしまったそうです。あとで聞いてみたら「理科の先生あまり好きじゃない」が理由だそうです。どうもテストのための理科がつまらなくて、科学の楽しさを伝えてくれないところに不満があるみたいです。結局代表は引き受けたとのことですが、それでもせっかくの代表なのに、断ろうとするなんていったい何を考えてるのか...。周りはみんな呆れてました。そんな態度だとあぷらなーとさんに怒られますよ。

一応発表用にパワーポイントでプレゼン資料を作り出したのですが、これもまた結構凝りだして、せっかく星関連のことなのに全然私には手伝わさせてくれません。「グラフをパワポで作るの大変だった」とか「大丈夫だよ」とかいいながら全部自分でできてしまうようです。数少ない聞かれたことが「写真こっちのコンピュータに入れて欲しい」と「写真を小さくするの(パワポのトリミングのことらしい)ってどうやるの?」だけでした。それでもできた資料を見てみたら、ほとんど言うことなし。私があえて言った、たった一言のアドバイスが「観測した日にちは入れておいたら?」だけでした。嬉しいやら、悔しいやら、悲しいやら。

Natusに「今年はブログに書かないの?」と聞いたら「んー、まあいいや」とつれない返事です。なのでノートをこっそり写真に撮ったので一部だけ公開します(一応Natsuには許可をとっています。最初写真を5枚載せようとしましたが、許可が出たのは3枚でした。)。


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このノートも実は全部出来上がってから初めて見せてもらったのですが、まあよくまとめてあります。私も車を出したのだから、共同研究者くらいに入れてくれればいいのに、全然お構い無しでした。


最近悩んでいるのが、動画スタックによる画像の分解能の限界です。まだあまりよくわかっていないのですが、とりあえず簡単なことから始めようと思います。今回知りたいことは、そもそも「動画スタックでドーズ限界を超えることができるのかどうか」。印象としてはそんなんとっくに超えてるんじゃない?と勝手に思っていたのですが、実は確かめたことはなかったので、少し検証してみました。

IMG_9336



まずドーズ限界を感覚的に知るために、木星がもしドーズ限界で制限されるとしたらどのような画像になるかを試してみました。元画像はハッブルで最近(2018/4/25)撮影されたのものです。

JupiterOpal_HubbleMasztalerz_1880

検証するには十分な解像度があります(実際の画像は上の画像をクリックして拡大して見てください)。NASAの画像は著作権を主張していないとのことで、このようにブログでも使うことができるのでありがたいです。


これを手持ちのC8の画像と比べてみます。下は去年の惑星シーズン(2017/6/8)に撮影したもの。口径200mmでASI224MCを使いました。C8としてはそれほど悪い方でもなく、ちょっと頑張ればここら辺までは出るくらいかと思います。カメラがASI224MCでカラーなので、モノクロでL画像を撮ればもう少し改善の余地はあると思います。
2017-06-08-1241_5-RGB2


まずはドーズ限界による分解能を計算します。ドーズ限界は

115.8 / D [秒]

で表され、Dは口径をmmで表したものです。C8は口径203mmなので

115.8 / 203 = 0.570秒

となります。木星の視直径は変化しますが、撮影当時の視直径は調べてみると39.6秒だとのことです。なので、木星の直径を39.6/0.570=68.4ドットで表せばいいことになります。

Hubbleの画像の木星の直径(画面全体ではないことに注意)がキリのいい68ドットになるように画像の解像度をPhotoShopで落とし(その際、見かけが近くなるように彩度を落とし、上下逆にしました。)、その後、元のドットになるようにバイキュービック法で再び解像度を上げました。その結果がこちらになります。

JupiterOpal_HubbleMasztalerz_1880_200mm2

自分でC8で撮った上のものと比較してみると、ざっくりいって、ドーズ限界と同じかもう少し悪いくらいの分解能だったことがわかります。うーん、では状況がいいとドーズ限界に近づいていくのか、それでも超えることはないのか?もう少し検証してみます。


次にC14を想定して、355mmの口径の場合で、最近の木星の視直径44.1秒を仮定してドーズ限界での画像を再現してみると

JupiterOpal_HubbleMasztalerz_1880_355mm

くらいになります。これだと木星の直径を136ドットで表すことに相当します。ところが、例えばC14で最近撮影された日本の惑星撮影で代表的な「RB星のブログ」さんの2018/4/21の画像(RB星さんのご好意で掲載許可をいただきました)

j180421s1

と比べると、明らかにドーズ限界を超えて綺麗に見えています。この日はシーイングがベストではなかったとのことですが、C14では最高峰に近い木星画像かと思います。

ちなみにドーズ限界を1.5倍くらいよくしたものが

5

になりますが、これくらいだとだいたい同じくらいか、まだ撮影した方が少しいいくらいでしょうか。高々1.5倍の解像度増ですが、見え味は相当よくなるのがわかります。ちなみに今回の場合、2倍だと明らかに良くなりすぎてしまうので、条件が整えばドーズ限界の1.5倍から、2倍くらまで迫ることが出来そうだということがわかります。

うーん、でも個人的にはドーズ限界なんかはもっとはるかに越えていけるのかと勝手に思っていました。意外に近い結果でしたが、まあ考えてみれば光学的には回折限界から来ているので、当たり前かといえば当たり前ですかね。

ただし、波長によっても分解能は違うはずで、PhotoShopでRGBにチェンネル分解し波長に応じてドーズ限界を求めて再びチャンネル統合して試してみたのですが、Rが解像度が悪くなり、Bが解像度が良くなるので、結果的には相殺しほとんど見た目の影響はありませんでした。なので、上の画像には波長の依存性は入っていません。

こうやってみると、やはり口径の効果は大です。他の素晴らしい成果を出している方々の画像を見比べてみても、C8よりC11、C11よりC14の方がより精細なところまで描写できているので、やはりドーズ限界のような光学的な限界がまだまだ効いていると言えるでしょう。ここにシンチレーションなどの効果が邪魔をしているので、現在の手法はそのシンチレーションの効果を除き、いかに光学的な限界まで迫るのかという状況なのかと思われます。

では他に何が関わってくるかというと、例えばシンチレーションの軽減には
  • 露光時間(転送速度とも関係あり)
  • スタック枚数
などが関わり、ノイズには
  • カメラの感度
が関わってくると言えるでしょうか。カメラをモノクロにしてLを撮影してさらに解像度が上がったりもしているので、感度も解像度に効いてくると思うのですが、まだそのメカニズムがよく理解できていません。また、C14くらいの口径では
  • カメラの解像度
は今回の検証から考えるとまだまだ余裕がありますが、さらに大きい口径だと解像度が効いてくるようになるのかと思います。あと大きな効果は
  • 画像処理
でしょう。特にRegistaxなどのWavelet処理は見た目の解像度に大きく影響します。

さて、モノクロカメラを買うかどうか。まだ結論は出てませんが、まずは今のカラーカメラで口径を250mmで撮影してみて、去年の結果を超えることを目標にして、その結果が出てから考えます。



P.S.T.でFabry-Perot etalonを扱い始めたので、そこらへんの理屈を少しまとめておきたいと思います。今回はまず、前回示したFSR(Free Spectral Range)が、なぜこのような式になるのか簡単に考えたいと思います。

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 写真はゴムの滑り止めのリングを外して中のネジを取って、金属のリングを外したところ。本来このネジのところにシールが貼ってあって、はがさないような指示があるらしいのですが、購入したものにはそのようなシールはありませんでした。既に誰かが剥がしたのでしょうか?

このリングを外すと中にいくつも穴が見えます。この位置を調節することにより、エタロンの入射光への角度をより大きく変えることができるそうですが、これは次回晴れの日に実際の像を見ながら調整したいと思います。


概念
  1. 簡単のために波長1μm(マイクロメートル、10^-6m, 1e-6m)の赤外光を考えます。
  2. これまた簡単のために、まずはエタロンを構成する2枚の鏡の間の距離を上の光の波長と同じ1μmとします。
  3. このエタロンに上の光を入れると、ちょうど波長の長さとエタロン間のギャップの長さが同じなので定在波がたち*(もう少し詳し話は最後にします。)光が共振します。すなわち対物レンズ側から入った光がアイピース側に十分透過していきます。
  4. 次にエタロンを構成する2枚の鏡の間の距離を光の波長の10倍のと同じ10μmとして考えます。この場合、ギャップ感には10個の波がちょうど入ることになります。定在波が立つので、光は透過していきます。
  5. さてここで、ギャップの長さを10μmに保ったまま、波長の長さを少し長くしてみましょう。どれくらい長くするかというと、ギャップに9個波が入るくらいの長さの波長にします。10μm/9=1.11...μmくらいの長さの波長ということです。この場合も定在波が立つので光が共振し、光はそのままエタロンを透過していきます。
  6. 逆に波長の長さを短くして11個入れてみましょう。10μm/11=0.9090..μmの波長の光です。これも共振し透過します。
  7. 同じように、8個の波、12この波...も全て透過していきます。これが櫛のように光の波長を周期的に通すという理屈です。
  8. ギャップの長さをさらに10倍して100μmのものを考えましょう。100個の波も101個の波も99個の波も...透過していきます。P.S.T.では使われているエタロンは0.1mmくらいのギャップだというので、これくらいの数の波が実際にエタロンの中に入っていることになります。あ、ターゲットはH alphaの0.6536μmの長さの波長なのでもう少し入っている波の数は多いですね。

定式化

さて、理屈がわかったのでこれを式にしてみます。前回書いた式を考えてみましょう。

Δλ=λ22nlcosθ

  • λ: 中心波長、今回の場合6563Å=656.3nm。
  • n: キャビティー中の媒質の屈折率、今回の場合空気なので1でいいでしょう。
  • l: 2枚の間の鏡の距離、今回の場合0.1mm以下程度とのこと。
  • θ: 光の入射角、PSTの場合ここを回転つまみで調整している。動かせる幅はPSTでは0.5度程度とのこと。

1. まず、エタロンのギャップの中に含まれる波の数は

m=lλ [個]

と書くことができます。

2. エタロンのギャップの長さをキープしたまま、入射する波長の長さを変えていった時に、波長がどれくらいおきにエタロンを通過するかは大まかに言って、エタロンのギャップの長さを、含まれる波の個数で割った長さごとに起きるので、

Δλ=λm=λ2l

と書くことができます。だんだん近くなってきました。

3. ここで波はエタロンを往復しているこいうことを忘れてはいけません。そのためにエタロンのギャップの長さlの効きが2倍になります。そのためにlのところに2をかけます。

Δλ=λ22l

4. エタロンの中の媒質の屈折率が上がるとそのぶん波は進みにくくなるので密度が増します。周期的には短くなるセンスです。これは1次で効いてくるので分母にnと置いてやって割ります。

Δλ=λ22nl

5. 最後に、エタロンを光の入射方向に対して傾けると入射光から見るとエタロン間のギャップの距離が1/cosθで長くなったように見えます。これはFSRが長くなるセンスです。その項を考えると

Δλ=λ22nlcosθ

となります。やっと先日書いた式と同じになりました。

実際にはP.S.T.では入射角を0.5度程度を変えられるらしいです。近似でcosθ = 1 - θ^2 / 2と考えると、cos(0.5deg) = cos(0.5/180 * pi) = cos(0.0087) = 1- 0.0087^2/2 = 0.999962とほとんど1に近くなりますが、FSRが変わるということは、個々の透過光のピークトピークの間隔がこれくらい変わるということなので、全体の長さはこれのλ / FSR倍くらい変わるはずです。波長が600nm程度でFSRが2nmとすると300倍くらい効くはずで、1- 0.0087^2/2 * 300 = 0.978となり、透過光のピーク位置でFSRの2%くらいは変更できるはずです。うーん、でもまだ変化が小さすぎるような気がします。何か計算間違ってますでしょうか?



補足: 光の共振

上で「定在波が立つ」という書き方をしましたが、あまり正確な表現ではありません。もう少し正確に記述します。

エタロンの対物レンズ側の1枚目の鏡を(ある透過率で)透過した光が、アイピース側の2枚目の鏡で反射して、1枚目の鏡に戻り再び1枚目の鏡で反射します。その時対物レンズ側から入ってきた光と先ほどの反射光の光の位相が一致すると光は強めあって共振します。それらの光はまた2枚目の鏡で反射し、さらに1枚目の鏡で外から入射してきた光と(今度は自動的に)位相が合うので、さらに共振して強め合います。このような折り返し反射を何度か繰り返すのですが、何回くらい折り返すかはエタロンで使っている鏡の反射率と透過率で決まります。

例えば、反射率90%、透過率10%の鏡を両端に持っていると、最初に1枚目の鏡を10%光が透過して入ってきます。その光は2枚目の鏡で10%抜けるけれども9割は戻ってきます。戻ってきて9割は1割は入射側に抜けていきますが、9割は反射するので、約8割はまたエタロンの中に戻されます。大まかに言って1割抜けていくのを10回繰り返すと光は全て共振器の中からなくなるでしょう。この場合、10回片道旅行できるので5往復します。

これが反射率99%、透過率1%の鏡を使うと、100回片道旅行ができるので50往復できるでしょう。ただし、鏡のロスとかを無視しているので、ロスがあるとこの回数は当然減っていきます。P.S.TはFinesseが15程度といっているので、折り返し回数は15 / Pi * 2 = 10回程度とすると、反射率95%、透過率5%程度の鏡を使っていると考えられます。

とりあえず訂正的な説明と、少し数値を入れてみましたが、イメージは多少しやすくなったかなと思います。式をきちんと書いた方がスッキリするかもしれませんが、また時間とやる気のある時に書いてみるかもしれません。

 続き その6へ: 実際に太陽での撮影をしてみました。 

Natusです。今年(中1)の夏休みの自由研究を紹介します。

夏休み明けに学校に提出した後、学校で展示していました。1ヶ月ほどで返って来たのですが、そのまま放りっぱなしになっていました。せっかくなのでブログにまとめておきます。


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テーマは「手動赤道儀の恒星自動追尾化」です。
去年の自由研究の「星でめぐる銀河鉄道の夜」に続き、今年も天文関係のテーマにしました。
夏休み前にハンドルを手で回して星を追う手動赤道儀型の天体望遠鏡を手に入れたので、手でハンドルを回さなくて済むように、自分で赤道儀を自動追尾化させてみようという内容です。




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使用した望遠鏡:ポラリス80L

<望遠鏡の説明>
    夏休み前に名古屋のスコーピオで手に入れました。

望遠鏡セット:Vixenのポラリス80L
       40年ほど前の製品で、1980年にはすでに発売されていたことが確認できた
      
   赤道儀:手動
       赤緯を0度にすることで経緯台にもなるタイプ
       目盛り環付き
       赤経、赤緯軸ともに微動ハンドル付き

<視野角の測定>
 昼間に下の写真のように望遠鏡から10m離れたところにあるメジャーを見てどのくらい見えるのかを調べ、その結果から望遠鏡の視野角を計算しました。 
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望遠鏡の視野角の測定

<赤道儀を動かす>
目標は「10分経っても視野の中心に入れた星が真ん中と端の中間を超えない」ようにすることです。そのためにはできるだけ正確に10分間で微動ハンドルを1回転させる必要があります。    
 
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1番のポイントは微動ハンドルをどうやって回すかということですが、最初、重りを使って回してはどうかと考えました。モーターの代わりに何らかの重りを使って回転軸をまわすというものです。

ところが、重りでは動摩擦係数と静止摩擦係数の差が大きすぎるため、なかなか星を追う時の回転速度を安定させて出すような仕組みは作れそうにないことが分かりました。



次にモーターで赤道儀を動かすことにしました。

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モーターを取り付けた写真

 
モーターのギアと微動ハンドルを外したところにつけたギアを噛み合わせて動かします。
モーターの回転速度は計測するとぴったりでそのまま使うことができました。



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極軸が1°ずれたときの星の動きと赤道儀の動きの誤差の計算

<実測>
実際に星を自動追尾させてみました。
モーターで星を自動追尾させ、目標の視野の真ん中と端の中間を超えるまでの時間を計測します。
前の日も計測をしたのですが、極軸を正確に合わせていなかったため、8分ほどで星が中間を超えてしまいました。
今回は極軸をできるかぎり正確に合わせました。(2分のずれ)

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結果、1時間経っても星は視野の中心からまったくずれませんでした。極軸合わせで結果がここまで変わるのかと驚きました。



<結論・感想>
元々の目標の10分間の追尾を大幅に越して、1時間をこえても目では確認できないくらいの星像の流れに収めることができたので、大成功です。
今までただ見ていただけの星を自分で追いかけることができると分かったことに、何より感動しました。
来年はもっとレベルアップしたものに挑戦したいです。



夜に晴れるのを待ちこがれながら、雪の日曜日の昼間にSharpCapでテストをしています。β版がまた期限切れになってしまったのでアップデートしたら、ヒストグラムがすごいことになっていました。


ヒストグラムと情報

小さなヒストグラムがLive stackモードにしなくても使えるようになったのは以前報告しましたが、右の狭いエリアの中にしか表示できなかったので、見にくかったのと操作がちょっとしにくかったです。今回のアップデートでは、以前Live stackモードでしか出てこなかった大きな画面でのヒストグラムが、スタックとは独立にいつでも見えるようになりました。上の方のズームのすぐ右にある緑色のアイコンを押すと出てきます。もしくは「Tools」メニューからから選ぶこともできます。

まず便利なことは、カーソルを置くと、その位置での情報が見えます。

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意味は上から順に
  • Value: 横軸に相当。一番右端で2048(11bit?なぜ?)で100%になります。
  • Count: 縦軸に相当。カーソルを置いた位置でのピクセル数。
  • True ADU: 横軸に相当。ADCで数えたカウント数。一番右端で今回の場合14bitなので16384。単位は [ADU]。
  • Electrons: 上の数にコンバージョンファクターfcをかけたもの。単位は [e-]。
  • Electron Rate: 謎です。単位は[e-/s/um^2]
となるみたいです。また、RGBそれぞれの平均値(Mean)と標準偏差(SD, standard deviation)もわかるのもすごいです。

これらのヒストグラムの値は、デフォルトでは全画面ですが、上の方の赤い枠が表示されている小さなアイコンを押すと、エリアが選択できるようになり、場所と面積を任意に選べるようになります。その場合はヒストグラムはそのエリア内の情報を示すようになります。


読み出しノイズの影響

これだけでもすごいのですが、このヒストグラムの真骨頂は使っているセンサーの性能から、今見ている画面が読み出しノイズに支配されているか、ADCの分解能の影響があるかないかなどが、大まかにですがものすごく簡単にわかることです。ただし、まずはセンサーの性能を測定しないと、この機能が出てこないので注意です。8bit rawモードもしくは16bit rawモードで測定する必要がありますが、測定したモードの分しかこの機能は出てきないので、これも注意です。

さて実際の機能ですが、ヒストグラムの上の方に2本の色付きのバーが見えます。上のバーが読み出しノイズがどれだけ影響するかを示すもの。星雲の淡い成分もヒストグラムのピークより少し右側くらいにいますから、目安としてはヒストグラムのピーク位置で考えればいいと思います。このピークがどの色のところに来ているかで、読み出しノイズが支配的かどうかがわかります。赤のエリアにピークが来ている場合は、読み出しノイズが支配的なので、露出時間を長くすると読み出しノイズの影響を抑えることができるということを示しています。

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ピーク位置が上のバーの赤色のところにあると、読み出しノイズに支配されています。
露出時間を上げることで画質が改善されます。


オレンジはまだましですが、それでも読み出しノイズに影響されています。これもさらに露光時間を長くとった方がいいということです。

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ピークがオレンジのところだと、読み出しノイズが画質に明らかに影響があるという意味です。
これも露出時間を伸ばすと画質が改善されます。


グリーンのところに来ていれば問題ありません。このエリアになるまで露光時間を増やすといいということがわかります。

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この緑のところにヒストグラムのピークが来ると、読み出しノイズは画質には影響ありません。

上のバーの色の割合は、ゲインを変えると変化します。それぞれのゲインにあったピーク位置が存在するということです。一方、露光時間を変えただけではバーの色の割合は変化しません。このことはちょうど昨日記事にした、「読み出しノイズは露出時間を長くすると無視することができるようになる」と言っていたことと一致します。でも、昨日の時点でこの機能のことは知らなかったので、今朝のアップデートはものすごくタイムリーな機能を知ることとなりました。


ADCのbit分解能は十分?

一方、下のバーは8bitでいいのか、16bitの方が有利なのかを教えてくれます。 左の緑のエリアにピーク位置があると、8bitでは足りていなくて、このASI224MCが持っている14bit、もしくはもし得られるならばそれ以上のbit数の方が有利ということを示しています。

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ここの位置にピークが来ていると、SharpCapの設定で8bitにした場合と、
16bitにした場合に明らかに差があって、16bitに設定した方が有利だと示しています。


一方、ピークが黄緑の位置にある時は8bitでも14bitでもどちらでも画質に差はないということを示しています。

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黄緑のところにヒストグラムのピーク位置がくれば、
8bitモードでも16bitモードでも差がないということを示しています。



このことは、長年の疑問の一つ、ピーク位置をどこに持ってくればいいのかという疑問に対して一つの指針を示してくれています。ゲインを上げて、ピーク位置を黄緑のところまで持ってくれば8bitでもいいということです。ただし、これには注意が必要で、ピークを右側に持ってくれば当然明るい部分が飽和するまでに余裕がなくなってしまいます。なので当然14bitで撮影する(SharpCapの設定では16bit RAW)として、ピーク位置を緑と黄緑の境界くらいに持って来ると、暗い方の階調に関しては手持ちのbit数を最大限引き出しているということになるのかと思います。ただし、これも明るい部分の飽和には注意する必要があります。


背景光の測定モードも

他にもまだスカイノイズの測定もできるようです。バーの左上の脳みそマークを押すと、測定画面が出て来ます。こちらは暗い空を必要とするようなので、またいずれ試そうと思います。 

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最近のSharpCapのアップデート、特にTool類の追加はセンサー性能実測機能にとどまらず、凄まじいものがあります。特に最近個人的にはちょうどカメラのノイズのことを考え出したので、(もちろんただの偶然ですが)まるで自分のノイズの理解度に呼応してアップデートしてくれているような気分になってしまっています。 
 

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