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天体観測始めました。

カテゴリ:参考資料 > 書籍

CMOSカメラの理解に

2022年4月にCQ出版から発行された、米本和也著の「CCD/CMOSイメージセンサの性能と測定評価」という本を最近購入しました。

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ここしばらくASI2400MC ProというフルサイズのCMOSカメラを使っていたのですが、その性能の良さにびっくりしています。フルサイズというと徐々にハイエンドに近いセンサーになりつつあり、最先端の技術も注ぎ込まれていると想像します。この本を読むと、天文カメラメーカーから出ている仕様説明はごく僅かで、他に多くの技術やパラメータが絡む仕様があることがわかります。


アマチュア天文という観点から中身を見てみると

著者は1980年代からソニーでCCDに関わっていて、2001年以降各社で経験を積み、2016年から再びソニーセミコンダクタソリューションズの研究部門に戻っているとのことで、完全にプロの開発者視点での解説書になります。

1章は概要や単位などの解説。

2章の原理説明はCCDが基本で、CMOSも追加で説明という感じで、両方の原理を理解する必要がありますが、ここら辺は基本なので理解しておいた方がいいでしょう。ただし、初読でここだけを読んで理解するのは大変かと思います。

その場合、同著者の2003年発行の前作、CQ出版の「CCD/CMOSイメージ・センサの基礎と応用」を読むといいでしょう。

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こちらの方はもっと原理から解説していますので、アマチュア天文という観点からは今回の新しく出た方が身近に感じるのかと思います。

今回は前作から20年近く経っているためでしょう、CMOSカメラの解説が多くなってきていて、タイトルにあるように「測定」にも言及するなど、CMOSカメラでの撮影が主流になったアマチュア天文民にも役に立つことも多いです。それでも今回も原理的な説明もかなり多いためか、参考文献を見ても1960年代や70年代のものがあります。随時2000年代、2010年代の参考文献が入ってくるので、新しい話も貪欲に取り込んでくれているのかと思われます。

3章以降が具体的な信号ノイズの例や、測定についてです。アマチュア天文ユースという観点で読み込んでいくうちの、いくつかポイントを書いておきます。

3章は感度についてです。基本的に暗い天体を撮影することが多いため、これまでノイズのことはこのブログでも色々言及してきましたが、その一方、明るい信号側に相当する感度のことはせいぜい量子効率くらいで、私自身あまり考えてこなかったことを痛感させられました。裏面照射の構造とマイクロレンズの関係、周辺減光と瞳補正など、これまで知らなかったことも多いです。

4章は飽和に関してです。ここもかなり原理的に説明してくれています。これまでほとんど知識がないところでした。ダイナミックレンジの話や、飽和電指数の測定の話は、私はまだ馴染み深かったです。

天体写真という観点で一番関連するとことは、やはり5章のノイズでしょうか。P93の図5−1はEMVA1288規格でもよく出てくる図で、理解しておいた方がいいかもしれません。

特に固定ノイズの説明が詳しいです。天体写真関連ではバイアスノイズ(バイアスフレームに出る縞々のノイズのこと)とかが関係するのかと思います。今までなんでこんなノイズが出るのかあまり知らなかったのですが、ここを読むとよく理解できます。ただし読んでいる限り、ユーザーでどうこうできるわけではないことがわかるので、これは今後のメーカーの開発に期待するしかないですね。

ランダムノイズに関しては、天体写真をやられる方は普段から身近につきあっていると思いますので、比較的読みやすいかと思います。

3章の信号測定の方はあまり考えたことがなくて読んでいてもなかなか想像がつきにくかったですが、5章のノイズの測定のほうはまだ馴染み深いです。それでもかなり原理的な測定の説明も多く、実際これだけ読んで自分で測定するというのはなかなか難しいかと思います。むしろ、天体写真の画像処理はノイズ測定に近い様なことをやっているようなものです。実際にこの本を元に測定するにはもう一段階、具体的な説明が欲しいとことです。

6章で面白いのはフレアパターンでしょうか。これは天文愛好家の間ではサッポロポテト現象とよばれているものかと思います。その発生メカニズムが書かれているので、理解が進みます。これまであまりきちんと書かれているのを見たことがなかったので新鮮でした。ただし、これもユーザーでどうこうできるわけではないようです。また、あぷらなーとさんが理解している、Quad配列のASI294シリーズでなぜサッポロポテト現象が出なくなるかは、この本を読んだだけではまだ理解できません。もっと考えるとわかるのかもしれませんが、まだ私は理解できていないです。

ところで、最後まで読んでもコンバージョンファクターなどの話が全く出てきませんでした。センサーの仕様を理解するためには重要な情報かと思っていたのですが、開発者から見たら当たり前すぎることなのかもしれません。そういえば、以前コンバージョンファクターのことを聞いたとき「論文になっているような専門的なことではないし、かといって教科書に出る様な基礎的なことでもない」とか聞いたことがあります。


まとめ

アマチュア天文の範疇でこの本がどこまで役に立つかは、かなり専門的なところもあるので、なかなか判断が難しいです。多くのことは開発者目線での解説になっています。ユーザーの視点でどうこうできるかは、タイトルにもなっている「測定評価」という点においても、なかなか具体的な手法というと難しいかと思います。アマチュア天文ということを考えても、この本は具体的な方法を学ぶというよりは、原理を学ぶという観点で読んだ方がいいのかと思います。

特にCMOSカメラで疑問がある方には、かなりの原理的なところまで立ち返って、相当のレベルで答えてくれる書籍であることは間違い無いでしょう。¥3300円と専門書としては比較的安価な部類です。天体写真に真面目に取り組んでいるアマチュアならば、持っていても損はないかと思います。


久しぶりに天文関連の小説を読みました。伊与原 新 作「オオルリ流星群」です。タイトルのオオルリは青く綺麗な鳥らしいです。私は鳥には詳しくありませんが、この小説には随所にオオルリが出てきます。


きっかけ

何週間か前、名古屋人の心の友「コメダ珈琲」で週刊誌を読んでいたら、面白そうな本の紹介が出ていました。今の世の中便利で、その場でスマホでアマゾンに注文して取り寄せてみました。読み終えたのは少し前になるのですが、ちょっと感想を書いてみます。

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プロの天文研究とアマチュア天文 

読み始めるとテンポよく進んでいきます。天文ファンなら十分に楽しめる内容でしょう。ただ、アマチュア天文の話かというと必ずしもそうでもなく、それよりも天文の研究者としてやっていくのがいかに大変かということが、よくわかる話なのかと思います。作者も研究者だったこともあり、そこら辺の経験が元になっているのかもしれません。

そもそも面白いのが、作者と私の年齢が同じところです。ということは小説に出てくる人物達もほぼ自分と同じような年齢。もう若くもなく、一方まだまだこれからやれることもあり、年齢に応じた考え方になってくるので、共感できるところも多々あります。また作者は一時期は富山大にいたとのことです。私も今富山に住んでいるのでちょっと親近感が湧きます。

ネタバレになるので多くは書きませんが、この小説の主人公の彗子は国立天文台の元研究員で、研究者としてはやっていけなくて諦めてしまったという設定です。最後の方はどんどん話が進み、謎が解けていくので、読むのを止められず夜更かししてしまいました。彗子の経歴にどんでん返しがあるのですが、その時の思いが作者の経験によるものなのか、創作なのかはわかりません。それでも道をあきらめるときの想いや厳しさが伝わってきます。これは研究者に限らず、ましてや大人や子供にも限らず、夢をあきらめるということが、本人にしかわからない人生に関わる深刻なことなのだと思い知らされます。

元々この小説は、京大の有松氏らが民生用の鏡筒Celestron社のRASA11を複数台使い、掩蔽(えんぺい)観測でカイパーベルト天体を見つけたという話に感銘を受けて書かれたとのことです。アマチュア用の機器を使うというところに、研究者を辞めても研究を続けたいという主人公の境遇をうまく当てはめています。

有松氏らの研究は、今のアマチュア天文家でも工夫すれば、普段の機器を使って研究に近いことができることを強烈に示しています。

でも実際にはアマチュア天文とプロの研究が関わることはごくごくまれです。少なくとも私が星を初めて2016年以降、アマチュアはほとんどアマチュアのみで集まっていて、プロの研究者が入ってくることは数えるほどしか例がありませんでした。例えば福島のスターライトフェスティバルには毎回国立天文台のW教授が来てくれるのですが、これはある意味例外中の例外で、アマチュアときちんと絡んでくれるのはとてもありがたいことです。昔は国立天文台のK台長がアマチュアのN氏に計算依頼をするなど、もっと交流があったのではと想像しますが、今日でもそれに類するようなやりとりはあるのでしょうか?

一方、アマチュア天文家にとってはプロの研究者は恐れ多いのかもしれませんが、講演会とか機会はあるのでもっと突っ込んでいっていいのかと思います。日本のアマチュア天文家の熱心さは特筆すべきで、この情熱を趣味だけにとどめておくのはもったいない気がします。趣味を止めるとかいうのではありません。もう少し建設的なプロとアマチュアの交流があってもいいのかと思うのです。

私もそうですが、撮影は楽しいですし、画像としてすぐに成果が見えます。一方研究はというと、例えばこの小説の元になったRASAの掩蔽観測を見ても、科学的な目的を持って計画立てて進めるなど、時間もかかるしとても大変でしょう。でも機器だけ見ても明らかにアマチュア側に寄ってきてくれてるんですよね。アマチュアグループのなかにも例えば流星観測とか、研究に寄っている活動もあります。

この小説は、ある意味プロとアマにある大きなギャップを小さくしてくれるようなヒントに溢れているように思えます。熱心なアマチュア天文家であると自認する方は、是非とも一読してみるといろんな目が開かされるのかもしれません。


今回は最近読んだ本の話です。ちょっと面白いことがありました。

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少し前に探偵ナイトスクープでオジロマコト作の「君は放課後インソムニア」というビッグコミックスピリッツで連載中のコミックが紹介されました。なんでも石川県の七尾の高校の天文部の話で、見た目も主人公そっくりの依頼者がモデルは自分ではないか確かめて欲しいという依頼でした。

天文を扱うコミックはあまりないので、早速当時出ていた4巻まで購入。インソムニア(不眠症のこと)の主人公が観望会を開こうとしたり、写真コンテストに出そうと星景写真にはまって行ったりで、天文好きな人なら楽しめる内容です。能登の真脇遺跡というのが星景写真として出てきました。私は真脇遺跡のことは知らなくて、俄然春か夏に天の川と一緒に写しに行きたくなりました。12月に発売された5巻には、キャンプで何度か行った見附島を撮影する場面やボラ待ちやぐらも出てきました。結構自分の中で盛り上がってきたので、来年は新月期に広角レンズをもって能登半島に何度も行くことになりそうです。 

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もう一冊は小説で遊歩新夢作の「星になりたかった君と」です。純愛小説ですが、表紙からフォーク式のリーチークレチアンだったり、SCWやら電子観望の話が出てきたりしてマニアが読んでも十分楽しめる内容です。

中でも面白かったのは、小説の中で重要な役割をする老人二人です。一人は天体軌道計算が専門の「長野秀一」氏。これはすぐに誰がモデルかわかってツボにはまりました。ところがもう一人の重要人物「秋田久雄」氏が誰のことか想像もつきません。

と、こんなことをTwitterで呟いたら、なんと作者様ご本人からコメントがあり、なんでも作者が知っている方で、当時その地域ではかなり知られた方がモデルだったとか。でも今でもその方が天文活動をしているかどうかは知らないとのことでした。尊敬の念でモデルにさせてもらったとのことです。

こんなやりとりをしていたら、次の日の朝、さっそくけにやさんから情報が。関西のあるグループの代表の方ではとのことで、調べてみると今でも活発に活躍されている方のようです。名前を見るとなるほどと思えました。作者様に確認をとると正解とのことで、しかも活動されているグループもわかったので、連絡をとり、本を送ってみるとのことです。連絡を取るのは小笠原の日食で会って以来のことだというので、10年以上ぶりのことなのでしょうか。知らない間に自分がモデルの人が小説に出てきたと知ったら、おそらく本人もびっくりするのではないかと思います。なんか、ちょっと嬉しい話です。

「星になりたかった君と」は正月1月4日と5日に日本テレビでドラマ化ということです。両日とも24時59分からとのことです。数少ない天文系のドラマなので、必ず見ようと思ってます。でも作者様のところでは地方で放送されないとのことなので、富山の日テレ系列のKNBで放送されるか今のところわかりません。それでもHuluでも放送されるとのことなので、もし地上波で見えなければこちらでみようと思っています。


今年はあまりに天気が悪く、天気がいいときに限って月が明るいので、先月の月の時期にとうとうあきらめて月の撮影をはじめました。思ったより面白くて、途中拡大撮影にも挑戦したのですが、困ったことが起きました。その時撮れたクレーターの名前を調べるのに、エライ苦労をしたのです。

そんな話をFacebookでしていたら、以前ドームを見せてもらった小松のOさんが普段使いで勉強している本ということで紹介してくれたのが地人書館のA. ルークル 著 / 山田 卓 訳「月面ウォッチング」です。

この本は大判の科学書の類に入る本で値段も定価6000円とそこそこします。私は古本で旧版の方を手に入れたのですが、それでも定価ほどではないにしろ結構な値段でした。新版の方ももう絶版のようで中古のみあって、こちらはもう少し高かったです。 
  • 中身は最初の15ページほどに、月の特徴を簡潔に必要十分に書いてあり、ページ数も少ないので、すぐに読むことができます。 
  • 次の10ピージほどを使って、全体の写真と、地形の大まかな特徴などを書いています。
  • そのあとの160ページほどがこの本のメインで、月を76に分割して、240万分の一の詳細な手書きの絵で地形が描かれていて、分かり得るクレーターなどの地形に名前が書いてあって、その名前の由来が書いてあります。
  • 名前にはカタカナもふってあるので、日本語で表記するときの基準になるでしょう。
  • 一枚一枚の絵に縮尺が載っているので実感としてクレーターの大きさが分かります。
  • 160ページのうちの最後の10ページは秤動(ひょうどう)で見え隠れする部分を描いています。月はいつも同じ面を向けていると思いがちですが、多少左右に動いていて、その動きを秤動といいます。地球からはトータルで月面の59%の面が見えていて、41%が常に見えている面、18%が秤動で見え隠れする部分ということです。
  • 最後の「月50景」という写真ページや、観測のしかたなどの解説もあり、ここも簡潔で読みやすいです。
  • この本には命名方の解説も少し書いてあります。大元は1645年のラングレヌスの月面図だそうですが、現在の命名方の基礎は1651年のリッチョーリの月面図だそうです。クレーターについては功績のあった学者の名前をつけるという方法で統一し、月面の北から南に向かって歴史的な順序で配置されているそうです。実際に命名は長く複雑な歴史を繰り返しているので、簡単ではないようですが、この本(旧版)の発行された1996年で6233のクレーターに命名され、そのうち807が名前を持っているそうです。残りの5426は近くのクレーターの名前に文字をつけることで表現しているそうです。
  • 定価は旧版6000円、新刊4800円で新刊の方が値下げしたようです。原書は1989年初版で、翻訳に際し1992年を英語版を元に、日本語版を出した際に一部改訂をしているとのことでした。日本語版の旧版の方は1997年8月5日初版発行で、1996年の命名まで入っているようですが、新刊の方はもう少し新しいデータまで入っているのだと思います。
  • 訳者の山田卓氏は名古屋市科学館に勤務されていた方で、2004年に亡くなられているようです。サンフランシスコの書店で初めて原著を手にとったときの話、原作者とのやりとりのことなども書かれて、読んでいて訳者の思いが伝わってきます。謝辞の中にはこの間お会いした名古屋市科学館の職員さんの名前もありました。


せっかくなので、試しに以前撮影したアペニン山脈周りで、本を見ながら名前を振ってみました。この写真だけでも図5、6、11、12、13、14、20、21、22、23、24、25、31、32、33、34、35と見なくてはならず結構大変でしたが、時間を忘れてのめりこんでしまいました。

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この写真の中だけでも教科書に出てくるような科学者の名前が目白押しです。図と、撮った写真とを比較してみるとかなり面白いです。かなり小さなクレーターまで名前がついていて、他にも何か大きなクレータの名前+アルファベットで表しているクレーターもあるのですが、それらは今回省きました。クレーターが黄色、山や谷がオレンジ、平地が緑です。
  • 例えばコーカサス山脈の上の方のカリッポスの下にカリッポス谷というのが絵には載っているのですが、写真では判別できませんでした。
  • また、アリスティルスの右側にテアエテトス谷というのがあるはずなのですが、こちらも写真では判別できません。
  • 左上のヒガツィー尾根の上にあるはずのシュティレ尾根、右にあるはずのグレボーボー尾根は暗すぎて見えていません。
  • 腐敗の海の上の部分にスパーという溶岩に満たされた直径13Kmのクレーターの跡があるはずなのですが、やはり明確には確認できません。(追記: なんとか場所が特定できました。かなり薄いですが一応名前を書いておきました。)
  • アルキメデス谷も一応書いておきましたがはっきりしません。一方すぐ下の横に走っているブラッドリー谷は綺麗に見えます。
  • 左上のティモカリスの下の、直径7.4kmのハインリヒと7.5kmマクミランはなんとか見えますが、その間にあるはずの2kmのプーピンは見えません。
  • 信頼の入江の奥にあるコノン谷も全く見えません。
  • 右上ビュルグ横のビュルグ谷、その下のダニエル谷も見えません。
  • 真ん中少し右にある小さなガスト尾根とホーンスビーの間にクリシュナという直径2.8kmのクレータがあるはずなのですが、全く分かりません。そこに続くオーエン尾根も不明です。
  • 一番下のマーチスンは周囲が崩壊してはっきりしない直径58kmのクレーターとのことですが、結構見えます。
こうやってみると、谷は写真には写りにくく、クレーターは5kmより小さくなるとほとんど写っていなことがわかります。見えていないものはもう少し拡大撮影を試みて、いつかリベンジしたいです。結構月は面白いです。



月の名前はWeb場でも詳しく記しているページがあります。このページの名前もほとんどこの本の日本語表記と一致します。このページは新たに追加されたクレーターや除外されたものも更新しているので、合わせて参考にするといいのでしょう。

 

夏休みは観望会のシーズンです。お盆休み初日、毎年恒例の近所のお寺での観望会が開かれました。自宅から歩いて30秒ほどの隣のお寺で、昨年に引き続き参加しました。富山県天文学会のメンバーのKさんがこれまた歩いてそれこそ10秒のすぐお隣さんに住んでいて、今回はその方と私の二人で盛り上げていきます。

ところが今日の天気はGPVの予報で見ても全くダメ。曇りどころか雨が降りそうです。仕方ないのでお寺のお堂でのお話のみになりそうな雰囲気です。ところが今日は朝から、先の記事でも書いていた通り、望遠鏡の整備に時間を費やしてしまい、いまいちお話の準備ができていません。どうもお客さんの層を聞いて見ると小さい子が多そうなので、かねてから考えいた、絵本「ホシオくん天文台へゆく」の読み聞かせをすることにしました。

19時半からなのですが、19時少し前にお寺に行くと、すでにKさんはC9.25を準備が完了していて、屋根のある軒下に置いてありました。私の方はというと、おそらく雨も降りそうなので赤道儀を出すのは最初からあきらめ、子供に勝手に触ってもらうための、いつも大活躍のSCOPETECHと、昨日から整備しているミニポルタA70LFを自宅から手で運び、あとは曇り用にいつもの高感度CMOSカメラASI224MCで雲の隙間からの星をねらおうと準備しました。

設置している途中から子供に適当な景色を入れてもらったりしていましたが、高感度カメラで見ても結局雲間からも星は全く見えず、19時半になるとお堂で集まってのお話が始まりました。最初はKさんのお話で、MITAKAを使っての星空の紹介だったと思うのですが、実はその間も自分のトークの準備をしていて、ほとんど聞けていませんでした。ちょうどKさんの話が終わる頃に準備も完了し、まずは「ホシオくん天文台へゆく」の読み聞かせです。

私は絵本の読み聞かせというのは初めてで、うまくいくかどうかわからなかったのですが、さすがホシオくんとウチュウさんの奇妙なやりとり、小さい子もきちんと話を聞いてくれていました。総ページ数54ページと、絵本としては異例の分厚さなのですが、今日は空が見えないのでお話だけで済ませなくてはならないと思い、少しゆっくり目に読みました。長すぎもせず、早く終わりすぎもせず、ちょうどいい時間で終わるくらいでした。

その後はスライドを使って、「ホシオくん天文台にゆく」ならぬ、富山の天文台も行って星を見てみようというお話と、富山で天の川を見るには牛岳へ行ったらいいという話を交えて、これまで撮った写真などを紹介しました。こちらの方は付き添いの大人の方も楽しめたのではないかと思います。

話の途中でKさんから北極星が見え出したとの情報が入ったので、急遽話のピッチを上げて切り上げ、皆さんに外に出てもらいました。出た直後は北極星は消えてしまっていてやはりダメかとも思ったのですが、程なくして少しづつ星が見え始め、ISSが見えるほんの数分前にはちょうど北から西の空が結構見え始め、もしかしたらイリジウムフレアも見えるかもと期待が高まりました。雲が少し残っていたのですが、予測時間くらいに誰かが、「あ、動いている」とか言い出し、すぐにかなり明るい光がお寺の屋根の上をゆっくりと動いて行くのがわかりました。今日は星が見えることさえ全く期待していなかったので、かなり盛り上がりました。

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さらにその頃には土星が見え始め、早速整備したミニポルタで土星を導入しました。Kさんの方もC9.25で入ったとの声が上がり、さらに下の子がSCOPETECHでも導入して、3台体制でほぼ全員の人が土星を見ることができました。さすがに経緯台なので倍率をあまり上げることはできないのですが、それでもSCOPETECHもミニポルタも土星の輪ははっきりとわかるので、皆さん、特に初めて見る方は歓声を上げていました。

もともとこの観望会は子供が対象なのですが、今日はたまたま知り合いの高校生のお客さんも先生と一緒に何人か来ていて、先生も高校生も子供に混じって経緯台を駆使して土星などを導入しようとしていました。実際に私もミニポルタで自分でつけた二つ穴で導入しようとしたのですが、穴が少し小さいせいか、雲がまだかかっていて土星が明るく見えないせいか、結構難しかったのです。うちの下の子は目がいいのか、そんなことは全く気にせず平気で導入していました。

途中から夏の大三角も見え始め、星座解説も少しだけすることができました。それにしても今日は朝からずっと曇りで雨も降っていて、しかも天気予報でも夜の天気は全く期待できなかったことを思うと、意外や意外、大満足の観望会でした。

夜も21時を過ぎしばらくするとお客さんもだんだん減って来て、月の明かりが少し見え出したのですが、肝心の月の姿は厚い雲に隠れていて、まだほとんど何も見ることができません。片付け始めることに少し月が見えてきたのがわかったので、来てくれた高校生を招待して、自宅の庭で観望会第2弾の月の観望会を開始しました。そこにはSCOPETECHとミニポルタに加えて、娘が使い始めている焦点距離1200mmのビクセンのポラリス80Lと、2000mmの長焦点のC8も加えて、月を見ることにしました。計4台あったので、ほとんど一人が一台の状態で、月のクレーターの美しさにみんな感嘆の声を上げていました。22時半頃までいたでしょうか、月が雲に隠れてしまい、片付けも手伝ってもらって、ここでお開きとなりました。

今回のお寺の観望会の参加も2回目となり、昨年よりはだいぶん手慣れた自分がいることがわかりました。昨年は、確かこの観望会で初めてお客さんに自分の望遠鏡を見てもらったはずで、その時随分戸惑っていた覚えがあるので、一年経ってやっと多少お客さんにも余裕を持って楽しんでもらうことができるようになってきたのだと、少し成長が実感でき嬉しかったです。

来週このお寺の敷地を借り、下の息子Sukeが、お墓の周りを歩く肝試しをやるそうです。すでに30人以上から申し込みがあったとか。肝試しが終わったら昨年やったお化け屋敷観望会に引き続き、肝試し観望会でも開きますか。お寺さんには毎回こんな行事のために快く場所を提供していただいて、感謝感謝です。

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かなり大きな本屋に行く機会があったので、何か面白い本がないか探していたら「反射望遠鏡の作り方」という復刻された本を見つけました。星野次郎著で、昭和49年7月18日初版発行で、平成21年8月10日復刻版1刷発行だそうです。値段は税込6480円と専門書にふさわしい値段だったので、少し迷ったのですが、いい本は縁なので、手に取って見て面白そうだったため購入してしまいました。


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5章構成になっていて、1章目は望遠鏡についての基本的な話をし気を使いながらわかりやすく書いていて、2章に反射鏡の作り方、3章に架台、4章が反射型の各種方式を式を交えて説明していて、5章は研磨機についてです。

前半は鏡の作り方にかなりのページを割いています。さすがに自分で鏡を磨いて作ることは今はないと思っていますが、以前読んだ「宙のまにまに」というコミックの中で、天文部で反射型の主鏡を磨く話が出ていたので興味はありました。ただ、マンガの中の話なのであくまで簡単な作り方が描いてあるだけで、詳細な作り方をもう少し知りたいと思っていました。 もちろん古い本なので情報が古いところもたくさんありますが、鏡のテストの仕方などは今だに通用しそうです。特にロンキーテストは以前やり方を調べたのですが結局わからなかったので、今回の説明を読んでやっと概要が理解できました。

後半は主に架台への固定方法で、「マウンチング」というちょっと古い表現になっていまが、赤道儀にまでかなり突っ込んで言及していて、赤道儀の機械系を基礎から理解するためには非常に有効です。モーターに関しての記述が薄いことと、当然コンピュータと組み合わせた現代の自動導入などの記述は無いのが少し物足りないですが、赤道儀のギヤなどの理屈や、実際に作る際の細かい技術など、読むだけで参考になるところがたくさんあります。

4章が意外に面白く、例えばシュミットカメラの補正板の式なども書いてくれています。最近手に入れた天文ガイドの過去の記事にも同じ式が書いてあることに気づき、読み比べてやっと理解できました。手持ちのC8をバラしたときに、補正板の意味がいまいちわからなくて、回転方向の位置が決まらなかったのですが、これを見ると回転位置はあまり関係ないということがわかります。補正板のずれは星像の歪みとなって出てくるので、惑星とかの撮影にはあまり関係なく、ディープスカイに走った時にもし星像がズレるならば回転方向を変えてみてもいいかもしれません。


 

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