ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:software > SharpCap

「電視観望技術を利用して天体写真を撮影してみよう」ですが、前回までに機材の準備はある程度整いました。今回は、実際に動作させて、画面に天体を映してみます。




ここで準備するもの

今回必要なものは主に電気関連で、
  • ノート型などのWidows10以上が走るパソコン (PC)
  • PCとメインカメラUranus-C Proを繋ぐUSB3.0以上の、Type-Cケーブル
  • PCとガイドカメラNeptune C-IIを繋ぐUSB3.0以上の、Type-Bケーブル
  • PCと赤道儀を繋ぐ付属のUSB2.0、Type-Bケーブル
  • PCに複数のUSB端子がない場合は、USB増設アダプターなど
  • DC12V出力があるバッテリー
  • バッテリーと赤道儀を繋ぐDC電源用ケーブル(単3電池駆動なら必要ありません)
  • バッテリーとメインの冷却カメラを繋ぐDC電源用ケーブル
  • バッテリーに12V端子が1つしかないなら、二股ケーブルなど
などでしょうか。これだけでも結構大変ですね。

その他、あると便利なものですが、
  • テーブルなど、PCやその他のものを置いたりできる台
  • 椅子
などです。

IMG_8985


テーブルはホームセンターなどで適当なものを見つければいいでしょうか。コンパクトなものをさがせばいいでしょう。

椅子も適当なのでもいいですが、私は座面の高さを変えることができる作業用の椅子を使っています。具体的にはルネセイコウの作業用の椅子です。
 

少し高価ですが、望遠鏡で星を見るときに高さ調整できるのでとても使い勝手が良く、自宅でも玄関にいつも置いてあり、遠征には車に積んで使っています。


ソフトウェア

PCはWindows10以降が動くものなら問題ないでしょう。ソフトウェアは
などが必要になります。それぞれダウンロードしてインストールしておきます。ASCOMプラットフォームはインストール時に、各種ランタイムライブラリーなどのインストールを要求されるかもしれませんので、指示にに違ってください。

SharpCapは無料でも使えますが、有用な機能の多くの部分が制限されています。年間2000円なので、できれば有料版にアップグレーとしておいた方が有利です。しらはいはPayPalが楽でいいです。

カメラのドライバーがないと、SharpCapからカメラが認識されません。忘れないようにインストールしておいてください。同様に、PHD2からPlayerOneのカメラを使うときは、ASCOM経由で使うことになるので、PlayerOneカメラ用のASCOMドライバーをインストールすることも忘れないでください。詳しくはここを参照してください。



機材の設置

機材を夜に外に設置します。空が十分に開けた場所を探しましょう。周りに明るい光があると、撮影時に映り込むこともあるので、できるだけ暗い場所を探しましょう。街の大きさにもよりますが、住宅街程度でも、近くに街灯などがなければおそらく大丈夫でしょう。

まず最初に、すべてのケーブルを接続しましょう。できれば機材の設置も、ケーブルの接続も、できれば暗くなる前の明るいうちに済ませておいた方がいいかと思います。ただ暗くならないと、周りの街頭の明るさなど、わからないこともあるので、事前にロケハンで暗くなる時も合わせて見ておいたほうがいいかもしれません。

今回ケーブルは5本あります。USBが3本で、DC12Vが2本です。PCの電源ケーブルも必要なら6本でしょうか。それぞれ絡んだりしないように接続します。特にカメラに繋ぐUSBケーブルと、冷却カメラに繋ぐ電源ケーブルは、撮影中は時間と共に赤経体が動いていくので、引っ張られたり、噛んだりしないように注意が必要です。ケーブルタイやスパイラルチューブなどを使い、あらかじめまとめておくと良いかもしれません。

赤経体は鏡筒部が上になるような回転方向に、赤緯体は鏡筒先端が一番上になるような「ホームポジション」にして、鏡筒先端が北向きになるような方向で設置します。その際、方角はスマホなどのコンパスアプリを使うのが便利です。アプリによっては「磁北」ではなく「真北」を選べるものがあります。「磁北」は天体観測に必要な「真北」から7度程度ずれているので、もし「真北」が選べるならそちらを選んでください。スマホを赤道儀本体に真っ直ぐになるような面でくっつけて調整するといいでしょう。正確な方向はのちに「極軸合わせ」でするので、ここでは数度の範囲で設置できれば十分です。

三脚は赤道儀がざっくりでいいので水平になるように、足の長さを調整します。足の長さはできるだけ短くしておいた方が、安定になりますので、むやみに伸ばさないようにしましょう。


SharpCapの立ち上げと極軸合わせ

まずはPCとガイドカメラ、PCと撮影用の冷却カメラがUSBケーブルで接続されていることを確認し、PCの電源を入れ、SharpCapを立ち上げます。

SharpCapから最初はガイド用のカメラを接続します。SharpCapの上部のメニューの「カメラ」から今回はガイドカメラとして使っているNeptune II-Cを選択します。
01_SharpCap_Neptune2

画面がカメラ画面に切り替わったことを確認します。明るいライトなどをカメラ前にかざしてみると、画面に何か見えるはずです。何も反応がなく真っ暗な場合は、レンズキャップを外し忘れていないか確認してみてください。

SharpCapの右側のパネルの「カメラコントロール」から、「露出時間」を800ミリ秒とか、1000ミリ秒程度にして、「アナログゲイン」を400程度の高めにして、ガイドレンズのピントを合わせてみます。すでに鏡筒が北の空を向き、北極星の近くを見ていると思うので、うまくピントが合ってくると星が見えてくると思いますが、その星の一つ一つが一番小さくなるようにピントを調節してください。

もし星が暗くてみにくい場合は、アナログゲインをもっと上げるか、右側パネルの「ヒストグラムストレッチ」で雷マークのボタンを押してオートストレッチしてみてください。暗い星も一気に見やすくなると思います。ただし、このオートストレッチ機能はSharpCapの有料版のみで使える機能なので、無料版を使っている場合は、手でこのオートストレッチ相当のことをしてやる必要があります。具体的には、ヒストグラムストレッチ画面に3本の黄色の縦の点線があるのですが、そのうち左側と真ん中の線を移動して、ヒストグラムの山を挟むようにしてやります。

ピントが合ったら、そのままの状態にして、次の極軸合わせに移ります。


極軸合わせ

まず前提条件として、この極軸調整機能も先ほどのオートストレッチと同じで、SharpCapの有料版のみで使える機能です。無料版では使うことができないので、別途SA-GTi付属の極軸望遠鏡などで極軸を合わせる必要があります。でも、極軸望遠鏡で合わせた精度は、SharpCapで合わせることができる精度に遥か及ばないので、SharpCapの有料版を購入することを強くお勧めします。2024年2月現在、年間2000円です。極軸調整だけのためこれだけ払っても十分お釣りが来るくらい、SharpCapはとても強力です。

というより、電視観望で撮影をするためにSharpCapをフルで使うので、あらかじめ有料版にしておく必要があります。そうでないと、便利な機能のかなりの部分が使えなかったり、撮影画像に透かし文字が入ったりすることがあります。

さて、実際の極軸調整を始めましょう。鏡筒はホームポジションに戻してあるので、ある程度北極星の方向をむいているはずです。SharpCapが立ち上がり、ガイドカメラはつながっていますね。この時点ではまだ赤道儀の電源を入れる必要はありません。

まずは準備です。
  • SharpCapのメニューの設定から「極軸合わせ」タブを選んでください。「大気差を補正する」を選択し、インターネットに繋いだ環境で「タイムゾーンから自動的に推測する」を選びます。これがうまくいかない時は「以下の位置情報を使用」を選び、マニュアルで入力する必要があるのですが、経度緯度が何度何分何秒の形式になっていなくて、何点何々度形式なので、正確な値を入れるのに苦労します。まあ、そこそこ合っていれば多少ずれていてもたいしたずれにはならないので、必要なら適当に何点何度くらいまでは入れておきましょう。

実際の曲軸合わせです。

1. 「ツール」「極軸あわせ」から「極軸調整」を選択します。
2. その時のカメラの露光時間は800ミリ秒とか1.6秒くらにしてください。ゲインは高めの400くらいでいいと思います。この時点で、右画面のヒストグラムで雷ボタンを押してオートストレッチをしておくと、星が画面に明るく見えるようになります。
3. 下の「Next」ボタンを押します。
02_polar1

4. 星の位置の認識がうまくいき、位置認識の計算が終わると、下の「Next」ボタンが緑色になるので、押します。
02_polar2

5. 赤経体のネジを緩めて、赤経体が動く状態にして、手で大まかに90度くらい回転させ、鏡筒が赤道儀の横側にくるようにして、ネジを固定します。
IMG_8963

6. 再び星の認識がうまくいき、位置認識の計算が終わると、下の「Next」ボタンが緑色になるので、押します。
02_polar6

7. ある星から長い黄色の線が出ているのでl、赤道儀の上下(ピッチ)方向調節ネジと、横(ヨー方向)方向調整ネジを使って、その線が短くなっていくように、調整します。
02_polar7

8. 線が短くなると同時に、画面右下の「Polar Align Error」の数値が小さくなっていくので、画面を見ながら線の長さが最短近くになるまで合わせ込みます。数値が1分角以下になっていれば十分です。
02_polar8

これ以降は、赤道儀を蹴飛ばしたりしないでください。万が一赤道儀に何か当たって位置がずれてしまったら、この極軸合わせからやり直します。


メインカメラの接続と、ピント出し

いよいよ、メインのカメラの画像を見てみます。SharpCapのメニューの「カメラ」からUranus-C Proを選びます。
01_SharpCap_Uranus

方角的には真北を向いているので、星は入っているはずですが、ピントがずれていて星はほとんど見えていないと思います。

鏡筒のフォーカサーの上についているピント固定ネジが緩んでいることを確認して、フォーカサー左右についているピント調節ネジを、SharpCapの画面を見ながら回してみます。SharpCapの設定は、露光時間は800ミリ秒とか、1000ミリ秒くらいでいいでしょう。アナログゲインは400程度の高めの値にします。

画面が真っ暗のままで全然見えない場合は、鏡筒の先のキャップを撮り忘れていないか確認してみてください。

最初は左側のピント調節ネジで粗動でざっくり合わせてみて、画面に出る星が小さくなってきたら、SharpCapのメニューと同じ段の右の方にある「ズーム」を100%とか200%にして星を拡大してピントを合わせやすくしてから、右側のピント調節ネジの微調整ネジで調節するといいでしょう。

ピントが合ったら、フォーカサーの上部のピント固定ネジを締めておくと、これ以上ピントがずれなくなります。でも次回ピント調整する時は必ずこのネジが緩んでいることを確認してから調整するようにしてください。ネジを締めたまま調整しようとすると、最悪壊してしまいます。

さて、実際にピント合わせをやってみるとわかるのですが、うーん、かなり揺れますね。三脚の頭を手で回転方向に捻ってやると結構動きます。やはり評判通り三脚が少し弱いようです。これだとピント調整する時に鏡筒に触れるだけで揺れ過ぎてしまい、かなり合わせにくいです。少しでも揺れを抑えるために、とりあえず赤道儀と三脚の間に入っているハーフピラーを外すことにしました。

IMG_8984

さらにですが、三脚の足の赤道儀に近い根本のネジを一本につき両側から2箇所、合計6箇所増し締めします。実際、いくつかのネジはかなり緩かったです。

これだけでも多少揺れは収まるので、ピント調整の際も、撮影の際も有利になると思います。


SynScan Proとの接続と初期アラインメント

赤道儀SA-GTiのコントロールパネルの赤いスイッチを入れて、電源をオンにします。

次に、アプリとの接続です。接続は、WiFi、bluetooth、シリアルと3種ありますが、長時間の撮影なので安定性を考えて、USBケーブルを使ったシリアル接続とします。

03_Synscan_net

ちなみにですが、iPhoneのSynScan Proを最新版にしたら、iPhoneからのWiFi接続では、「赤道儀モードか経緯台モードかの判断がつかない」とというエラーが出て、接続できませんでした。旧バージョン(1.19)のSynScan Proだと大丈夫なので、iPhone版の最新版にアップデートする際は注意してください。PCからUSBケーブルで接続した場合は、最新版のSynScan Proでも問題なく接続できました。

接続ができたら、いくつか設定です。
  • 高度制限が入っていると、高いところの天体を導入などできなくなります。「設定」「高度制限」から「Upper Go To Limit」を90度まで上げてください。
  • 緯度経度情報を忘れずに入れてください。PCと接続する場合は、自動的に情報が取れない場合が多いです。私はiPhoneのコンパスアプリを開いて、緯度経度情報を得て、それを手入力しています。

最初にやるべきことはこれくらいでしょうか。これらは最初に一度やればいいことで、大きく撮影場所を移動しなければ、緯度経度情報もいじる必要はありません。逆に、場所を移動して、最初の導入でうまくいかない場倍は、この緯度経度情報が間違っていないか疑ってみてください。


初期アラインメント

最初にやることは、SynScan Proでの初期アラインメントです。初期画面から「アラインメント」で「1スターアラインメント」を選びます。他にも何種類かのアラインメント方法がありますが、赤道儀の極軸がしっかり合わせてあること、次にプレートソルブで導入の補助をするので、1スターアラインメントで十分です。
10_synscanpro_alignment

星はターゲットのオリオン大星雲の近くの「リゲル」を選択しましょうか。
11_synscanpro_alignment_rigel

アラインメントを開始すると、赤道儀がターゲットの方向に向かって動き出します。SharpCapの画面で見ていても、星が動いていく様子が見えると思います。赤道儀が止まったら、SynScan Proは下のような画面になります。
03_Synscan_done


SharpCapの画面を見てみましょう。リゲルは画面の中に入っていますでしょうか?一つだけ明るい星ですので、入っていればすぐにわかるのですが、大抵の場合は画面の中に入ってこないと思います。でもここで落ち込む必要はありません。解決策はきちんとあります。


プレートソルブによる導入補助

次にSharpCapに最近標準で搭載されるようになったプレートソルブ機能を使って、リゲルを自動で画面中央まで持って来ることにしましょう。

まず下準備です。SharpCapのメニューの「ファイル」からSharpCapの設定画面を開き、「プレートソルブ」タブを選びます。

04_SharpCap_setting_platesolve

  1. 「プレート解析エンジン」のところで「SharpSolve(SharpCap's built in plate solver)」を選びます。もしこの選択肢が出てこない場合は、SharpCapのバージョンが古いことが考えられますので、最新版のSharpCapをダウンロードしてインストールしてください。
  2. 焦点距離は自分が使っている望遠鏡の値を正しく入れてください。
  3. 最後に一番下の「適用」もしくは「OK」を押します。

次に、同じくSharpCapのメニューから設定に行き、「ハードウェア」タブのところに行きます。
03_SharpCap_setting_hardware
  1. 「マウント」の「ハードウェアの選択」のところで、接続したい赤道儀を選びます。今回はSA-GTiをSynScan Proで操作するので「SynScan App Driver」を選びます。
  2. 一番下の「OK」を押します。
  3. SharpCap画面の右パネルの「望遠鏡制御」の「接続済み」のところの四角を押します。ASCOMを介して接続するのですが、10秒くらい待ってうまく接続されると数字などが出てきて、赤道儀がどちらを向いているかSharpCapで認識できるようになります。
01_SharpCap_ok_cut

これでだいたい準備は完了です。

実際にプレートソルブを走らせてみましょう。

1. 露光時間を3秒程度にしておくといいでしょう。短すぎると星の数が少なくて、長すぎると星が流れてしまってうまくいかないことがあります。
2. SharpCapメニューの「ツール」から「プレートソルブ後再同期」を選ぶか、右側パネルの「望遠鏡制御」の方向矢印の左下の方角マークのようなアイコンを押します。
04_platesolve

3. 今見ている画面から実際に見ている方向を計算して、赤道儀が認識している方向とどれだけ違うかの差を認識して、その差を赤道儀にフィードバックして、赤道儀が見ていると思っている方向に向きを変えて合わせてくれます。
4. うまく行くと、下の画面のようにリゲルが真ん中に来て、上部の緑色のところにプレートソルブが成功したことが表示されます。今回の場合2.72度ずれていたそうです。
06_platesolve

うまくいったら、PC上で走っているSynScan Proのアラインメント完了の意味で、星マークのボタンを押します。

その後は、SynScan Proを使って、自由に目標の天体を導入してみましょう。例えば今回の目標はオリオン大星雲なので、SynScan Proの初期画面から「ディープスカイ」を選びます。
09_synscanpro

オリオン大星雲はメシエ天体の42番目なので、「メシエ」を選び、「042」と入力し、「導入」を押します。うまく行くと、オリオン大星雲が画面に入ってくるのが見えるでしょう。

05_intro

もし画面内に入らなかったりした場合は、再びプレートソルブを走らせることで画面に入れることもできます。

今回は導入完了のここまでとします。次回は実際に撮影してみます。










SharpCapのバージョン4.1.11226 (10月30日) 以降から、独自のビルトインのプレートソルブ機能「SharpSolve」が搭載されました。これでもう、外部のプレートソルブソフトをインストールする必要がなくなります。不安定だと思われていたトラバースを使って試してみたので、記事にしておきます。


設定方法

使い方ですが、 メニューの「ファイル」SharpCapの設定画面を開き、「プレートソルブ」タブを選びます。
01_PS_setting
  1. 「プレート解析エンジン」のところで「SharpSolve(SharpCap's built in plate solver)」を選びます。もしこの選択肢が出てこない場合は、SharpCapのバージョンが古いことが考えられますので、今一度バージョンが4.1.11226より新しいかチェックしてみてください。バージョン番号はSharpCap画面の一番上のところに表示されています。
  2. 焦点距離は自分が使っている望遠鏡の値を正しく入れてください。
  3. 解析範囲が視野角で0.5度以上の場合はもうこれでOKですが、もし0.5度以下の視野で解析したい場合は、インターネットに繋いだ状態で「インデックスファイルのダウンロード」を押してください。ネットの速度にもよりますが、1分程度でダウンロードが終わり、その後「0.25度」が選択できるようになります。
設定はせいぜいこれくらいです。実際に試してみましょう。


SharpSolverのテスト

今回架台は経緯台のトラバースで試しました。以前ASTAPやASPSでプレートソルブ試した時に、AZ-GTiに比べてトラバースだと明らかに不安定なことがあり、その後コントローラーソフトのSynScan Proを最新版にしてAZ-GTiもトラバースもかなり安定になったという経緯があります。このトラバースで動くなら、おそらく他の架台だとほぼ問題なく動くでしょう。

適当に初期アラインメントをします。画面に星が表示されますが、最初の導入なのでおそらく方向は正確ではないはずです。今回もベテルギウスを導入したつもりが、全然画面内には来ていません。試しにまずはここでASTAPを実行してみました。

ASTAPでの恒星の認識はうまくいくときはうまくいくのですが、たまに(方角や、星の見え方によって)全くうまくいかない時があります。こんなときは代わりにプレートソルブエンジンをASPSに切り替えてその場を凌いでいたのですが、ASPSは解析するのに時間がかかってじれったいのと、ASPSでもうまくいかないことがあって、そんな場合は見ている方向をわざと変えてやって認識させたりしていました。

このSharpSolveはかなり優秀みたいで、今回たまたまASTAPでうまく認識できなかったのですが、SharpSolveに変えたら全く問題なく認識できました。しかも認識の速度がかなり速いです。ASTAPもそこそこ速いと思っていましたが、SharpSolverはそれ以上の速度です。

うまくいくと以下のような画面になり、何度くらいずれていたがが出てきます。
02_PS_setting_success

今回は2.23度ずれていたとのこです。赤道儀や経緯台をSharpCapに接続しておいて、このずれを架台にフィードバックして課題の向きを補正することで、架台が今向いていると思っている方向と、実際に向いている方向を自動的に一致させます。

ちなみに、「プレートソルブ」という単語の意味は、「今見いている視野の方向を計算して求める」ということに過ぎず、架台の方向を補正するという意味は含まれていませんが、最近では「方向の補正」まで含めてプレートソルブという単語で表すことが多くなってきていますね。


まとめ

今回はSharpCapの新機能「SharpSolve」でプレートソルブを試しましたが、安定性、速度はこれまでのプレートソルブソフトを凌駕しています。トラバースでも全く問題なく動いたので、かなりのものでしょう。これでトラバースでの電視観望が完全に実用レベルになったのかと思います。

まだSharpSolveを試していない方は是非とも試してみてください。


めだかと暮らすひとさんが、SharpCapでのライブスタック撮影で、縞ノイズに悩まされているようです。



ここではできる限り簡単な解決策の一つとして、ガイド無しのディザー撮影のやり方を示したいと思います。


縞ノイズの原因

 最近電視観望というと、リアルで見ると言うより、ライブスタックを使った簡単な撮影を指すことも多いようです。めだかと暮らすひとさんも、最近やっとAZ-GTiを赤道儀モードにして、視野回転のない追尾を実現したとのことです。でもまだガイド鏡もなく、ノータッチガイド(死語?)での撮影で、電視観望的にライブスタックを利用して、最後にスタックされた画像を処理しているとのことです。問題は、赤道儀の極軸が合っていないとライブスタックをの間に画面が流れていって、縞ノイズができてしまうことです。これは例え極軸が合っていたとしても、またガイド撮影をして画面が流れないように頑張っても、機材のたわみなどがごく普通に存在するので、1時間オーダーの長時間の撮影では縞ノイズが出ることがよくあります。

縞ノイズの原因は、ホットピクセルやクールピクセルなどの、センサーのある点にいつも存在する異常ピクセルが、画面の流れとともに全て同じ方向に動き、縞のようになることです。


縞ノイズの解決策

縞ノイズ軽減する方法の一つは、ダーク補正することです。SharpCapには簡単なダーク補正方法が搭載されていて、右側パネルの「ダーク補正」の「Hot and Cold Pixel Remove」を選び、簡易補正で済ませます。これはホットピクセルとコールドピクセルを簡易的に取り除く機能ですが、つい最近搭載されたもので、これまでは「Hot Pixel Removal Only」とホットピクセルのみの除去しかできませんでした。以前示したSharpCap上でダークファイルを撮影してリアルタイムダーク補正することもできますが、

ダークファイルでの補正だと基本的にコールドピクセルの補正はできないはずなので、簡易的ですが「Hot and Cold Pixel Remove」の方が有利な可能性が高いです。このオプションががある場合とない場合では数のような違いがあります。
comp
左がオプションなし、右がオプションありです。左の画像を見ると、赤とか緑の輝点が下向きに伸びているのがわかります、右もすごくよく見るとまだ輝点が残っているのがわかりますが、ほとんど目立っていないのがわかります。

それでもダーク補正では縞ノイズを軽減するだけで、完全に消すことはできません。一番確実な方法は、ディザー撮影をすること。ディザーというのは、長時間撮影の途中でわざと画面を数ピクセルとかずらして、異常ピクセルの影響を散らしてやることでかなり軽減できます。今回の問題はこのディザー、一般的にはガイド撮影と込で実現されるので、ガイド撮影をしていない限りディザーはできないと認識されているだろうことです。めだかと暮らすひとさんみたいに、ガイドをしていなくても縞ノイズを解決したいという要求はきっとあることでしょう。


ガイド無しディザーの方法

その方法ですが、前提としてSharpCapで経緯台、赤道儀などが接続されていて、SharpCapからコントロールできることです。赤道儀でなくてもコントロールできるなら経緯台でも構いません。今回はトラバースで試しました。トラバースはAZ-GTiのミニチュア版とも言える、自動導入、自動追尾機能がある経緯台です。

設定方法です。まずメニューの「ファイル」の「SharpCapの設定」の中の「ガイディング」タブで、下の画面のように「ガイディングアプリケーション」を3つ目の「ASCOMマウントパルス...」を選びます。

07_guide_setting
「ディザリング」の中の「最大ディザステップ」はある程度大きくしておいた方が効果が大きいです。私は「40」まで増やしました。値が小さいと効いているかどうかもわかりにくいので、最初多少大きめの値をとっておいて効果を確認し、大きすぎたら減らしていくがいいのかと思います。

その後、ライブスタックの下部設定画面の「Guiding」のところで、最初のチェック「Monitor Guideng Application...」をオンにします。「Automatically DIther」をオンにし、「Dither every:」でどの頻度ディザーするのか選びます。撮影の場合は「Frames」を選んで、何枚撮影することにディザーをするかを選んだ方がいいでしょう。実際には数分に1回くらい散らせば十分なので、今回の1回の露光時間が20秒とすると、10枚に1枚、3分ちょっとに1回ずらすことにしました。
05_dither

するとライブスタックで10枚スタックするごとに、下の画面のように上部にの緑色のバーが現れて、ディザーが実行されます。
06_dither

実際にディザーの効果があるか確認してみましょう。30フレーム分を動画にしてみました。輝点が右下に進んでいきますが、その途中で一度カクッと下に降りて、またカクッと上に上がるのがわかると思います。でもまだずれが少ないので、もっと大きな値でも良かったかもしれません。
Blink

実際のSharpCap上のライブスタック画面では、ディーザーが何度が進むと、最初に見えていたミミズが散らされてどんどん薄くなっていきます(すみません、画像を保存するのを忘れてしまいました)。

ただし、今回は雲がすぐに出てきてしまい、実際の長時間で縞ノイズが見えたわけではないので、ディざーなしで縞ノイズが出て、ディザーをオンにして縞ノイズが消えることを確認すべきなのですが、今回はとりあえず手法を書くだけにしました。後日確認ができたら、また結果を追加したいと思います。


ついでの画像処理

最後に、今回撮影した画像2種を仕上げてみました。FMA135にCBPを付け、Uranus-Cで撮ってます。課題はトラバースなので小さくて楽なものです。ただし経緯台なので星が回転もしくは流れてしまうので長時間露光はできず、1フレーム当たり20秒露光の露光で、ゲインは高めの300としています。共に、かなり淡いところまであぶ出していますが、上の動画でもわかりますが、少なくとも経緯台でガイド無しなので、撮影時にかなり流れてはいるのですが、これくらいの露光時間ではかなり炙り出しても縞ノイズは出ていないことがわかるかと思います。


M42: オリオン大星雲
オリオン大星雲はライブスタックで30フレームの計600秒、ちょうど10分経った時に保存したfitsファイルから画像処理しました。SharpCapの時点でスタックまで終わっているので、かなり楽です。星雲本体周りの分子雲も少し写っています。
Stack_16bits_30frames_600s_21_35_52_crop_SPCC_ABE4_BXT_MS2

向きを変えて星雲部分を切り取り。
Stack_16bits_30frames_600s_21_35_52_crop_SPCC_ABE4_BXT_MS_cut2

口径3cmの高々10分でこれならまずまずではないでしょうか。


M31: アンドロメダ銀河
2枚目はM31、アンドロメダ銀河です。こちらは途中雲がかかり、ライブスタック画像ではかすみがかってしまったので、別途1枚1枚保存してあったRAWファイルから、PixInisightでスタックして処理しました。トータル露光時間はM42よりさらに短く、14枚でわずか4分40秒です。
3856x2180_EXPOSURE_20_00s_ABE4_SPCC_BXT_GHT_HT_bg_rot
こんな短い時間でも、情報としてはある程度残っているものです。さすがにかなりギリギリ出しているので、どうしてもノイジーなのは否めません。


まとめ

今回は、ガイド無しでディザーする方法を示しました。まだ実際の長時間撮影はできていないので、またいつか試したいと思います。

曇りがちで十分な撮影時間をかけることができませんでしたが、それでも口径3cmでもそこそこ情報は残っていて、ある程度画像処理すれば十分見えるくらいにはなることがわかりました。途中で気づいたのですが、ライブスタック時にBrightnessフィルターを入れると、雲が入った時の画像のスタックを回避できるので、そういったことも今後試していきたいと思います。

こうやって見ると、小さなトラバースでも撮影に耐え得るくらい、十分に安定していることがわかります。



プレートソルブトラブル解決集の続報です。今回はある意味決定版になっています。前回あやふやにし解決できなかったことが、かなり確実に解決できるようになりました。




SynScan Proの最新版

2023/9/2にSynScan Proの最新版(v2.4.5)がリリースされました。リリースノートによると、今回のバージョンアップでプレートソルブ関連で以下のような改善をしています。
  • Re-enabled PAE, where were disabled from 2.3.4 to 2.3.9
  • Replaced "Align with Sync" page with "Sync samples" page.
  • Multi-star alignment, where performing any of the following adds a sync sample:
  • Using one of the alignment methods from the Alignment page
  • Centering on a celestial object at the prompt after any catalog object GOTO
  • Receiving a `SyncTo` command from ASCOM with a plate-solving software
これは2022年9月にバージョン1台からバージョン2台になって以来、初めてのプレートソルブ関連の大きな改善です。バージョン2以降では、上に書いてある2.3.4でPAE(調べるとPointing Accuracy Enhancementとのことです)をオフにしたことが唯一の変更で、それも今回戻してあるということなので、それを含めて初の大きな改善となるということです。

現実に、バージョン1台でそこそこ安定だったプレートソルブ関連は、バージョン2台で不安定になりがちでした。そのため、プレートソルブを試す際は、まずは手持ちのSynScan Proを現段階で最新のv2.4.5以降にすることをお勧めします。実際に、今回かなり安定な状況を実現できています。

また、最新のSynScan ProではPCに接続されたゲームコントローラーでAZ-GTiが動かせるそうです。私はまだ試していませんが、Xbox互換、PS3互換のものが使えるそうなので、興味がある方は一緒に試してみるのもいいかもしれません。

あと、SynScan Proではなく、ただのSynScanもアップデートされていますが、こちらはProを単に機能制限しただけのようなものです。その機能制限の中にはワンスターアラインメントなどあって然るべき機能も含まれて制限されてしまっているので、私は今はProの方しか使っていません。SNS上には、Proでない方でどうしても解決しなかったトラブルが、ショップの方の助言でProにしただけで一発で解決したという例もあるみたいなので、何か理由がない限りPro版を使う方がいいのかと思います。


接続の確認

今回の動作条件は、AZ-GTiを使ったプレートソルブをするために、PCにSynScan ProとSharpCapがインストールされていて、それぞれをASCOM環境で接続するためにASCOMプラットフォームがインストールされていることとします。プレートソルブはASTAPもしくはASPSを使います。最新のSharpCapではPlatesolve3もサポートしているので使えるかもしれません(私はまだ未検証)。

1. SynScan ProとAZ-ZTiの接続

まずはSynScan ProとAZ-ZTiの接続がきちんと確立されているか確認します。接続方法はデフォルトのWiFiを使っても、オプションのケーブルを使った有線でも、どちらでも構いません。プレートソルブをするためには「PC上の」SynScan ProとAZ-GTiを接続することが必要で、最初はスマホやタブレットのSynScan Proでの接続でも構いませんが、プレートソルブ時、より正確にいうとSharpCapと接続する時にはPC上で動いているSynScan Proとの接続が必要になります。

経緯台モードか赤道儀モードかはどちらでも構いません。自分が設置している状態に合わせてください、どちらのモードでも正しくプレートソルブができます。

一つ重要なことが、緯度経度情報が正しく入っているかです。SynScan Pro上で「設定」から「位置情報」を見て、きちんと緯度経度が入力されている確認します。

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PCはGPSを持っていないので、位置情報を自動的には取得できないことが多いです。GPSを持っていなくてもインターネットから位置情報を獲得することもできますが、正しい位置にならない場合もありますので、自分で数値で確認するのが確実です。ここが大きく間違っていると、プレートソルブも初期アラインメントも全然違った方向に行ってしまいます。関連した注意ですが、最初スマホやタブレットのSynScan Proに接続して正しい位置情報が入っていると思っても、PCに切り替えた時にはその情報は引き継がれません。なので、PC上のSynScan Proで位置情報を確かめるようにしてください。


2. SharpCapとSynScan Proの接続

次にSharpCapとSynScan ProをASCOM経由で接続します。ASCOMプラットフォームはASCOMのページから、SynScanアプリ用のASCOMドライバー(2023/9/11現在、2023/9/3のv1.4.0が最新)はSkyWatcherのページからダウンロードしてインストールしてあるとします。

SharpCapの「設定」の「ハードウェア」から「SynScan App driver」を選び、メイン画面右の「望遠鏡制御」の「接続済み」をオンにします。正しく接続されると、AZ-GTiが向いている方向などの数値が出てきます。一つ確認しておくといいのは、その数値が時間と共に動いているか、PC上のSynScan  Proの「ユーティリティ」の「情報」を見て、その数値と合っているかを見ることで、きちんと接続されているかがわかります。実際、以前のバージョンでは数値が動かなかったり、全部0だったりして、接続できたように見えてもうまく接続できていないことが何度かありました。今のところ、最新バージョンのSynScan Proでは接続に失敗したことはありません。


SharpCapのプレートソルブの設定

接続がきちんとできていたら、次はプレートソルブの設定の確認です。まず、SharpCapの「設定」「プレートソルブ」画面を見ます。

14_ps_gauss

ASTAPもしくはASPS、もしくはその両方がインストールされているでしょうか?インストールされている場倍は、上の画面のように下の方にFoundとかでますが、まだインストールされていない場合は、どちらか、もしくは両方ともインストールしてください。「プレートソルブアプリケーションの選択」で選択することも忘れないでください。お勧めはASTAPですが、たまにASTAPだと解決できなくて、ASPSだと解決できることがあります。でもASPSは遅いので私は普段使いはASTAP、どうしてもダメな時はASPSとしています。

重要なことの一つ目は、焦点距離がきちんとあっているかです。これが実際の鏡筒と大きく間違っていると、どうやってもプレートソルブで位置解決ができません。

重要なことの二つ目は、下の画像のようにSynScanとの同期方法を4つ目の「マウント位置をオフセットして、天体位置を中央に配置する」を選ぶことです。これまでは2つ目の「マウントを同期し、天体を中央に再配置する」にしてたのですが、SysScan Proが反応せずAZ-GTiが動かないことがありました。4つ目のオプションは今のところほとんどの場合AZ-GTiをきちんと動かせています。

01_platesolve_gauss


初期アラインメント

準備ができたら、初期アランメントの最中にプレートソルブを試してみましょう。まずはSynScan Proから「アラインメント」を選びます。1スターアラインメントで十分でしょう。出てきたリストの中から、今見えているわかりやすい星を選び、そのまま導入します。今回は木星を選びました。

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SynScan Proがターゲット天体に向くまでに、ターゲットまでの差が角度で表示され、数字がどんどん小さくなっていきます。SynScan Proがターゲットの方向に向いたと思い込んだ時に下のような画面になります。

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ここで、SharpCapの画面にターゲットの星が出て来ればいいですが、出てこない場合はプレートソルブの出番です。上の画面で書いてある「マニュアルで中心に」というのの代わりに、「プレートソルブで中心に」持って行ってやるという意味です。なのでこの時点ではまだ、完了をSynScan Proに知らせる真ん中の「星印の横長ボタン」を押してはいけません


プレートソルブの実行

プレートソルブはSharpCapのメニューの「ツール」から「プレートソルブ後再同期」を選ぶか、右側パネルの「望遠鏡制御」の方向矢印の左下の方角マークのようなアイコンを押します。

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うまくプレートソルブが下位を見つけると、どれだけずれていたかの表示が角度で緑色のバーのところに表示され、自動的にターゲット天体が真ん中に来るようにAZ-GTi下に信号が送られて、下の画面のように実際にターゲット天体が導入されます。

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問題はこうならない時です。いろんなケースがあります。まず、以下のようにNo solution foundと出る場合です。2つの原因が考えられます。もし下の画面のように望遠鏡接続のところの数値が明らかにおかしい場合は、SharpCapとSynScan Proとの接続がうまくいっていません。再度接続しなおしてください。再接続でエラーなど出る場合は、SynScan Proをいったん閉じて再度開いてから、SharpCapから接続してみてください。

スクリーンショット 2023-06-21 204001

接続がうまくいっているはずなのにこのエラー場出る場合は、あまり追求せずにターゲット天体を変えてみてください。一度この状態でできる限りのことをやったことがあるのですが、結局どの試みも失敗し、最後あきらめがてらターゲット天体を変えたら、今までの苦労は何だったのかというくらい、一発でプレートソルブが成功しました。なので最近はこのエラーが出たら無駄なことはせずに、素直にターゲット天体を変えるようにしています。

上の問題が解決した時に、次によく出るエラーが、下の画面のような星が「多すぎる」とか「少なすぎる」とかいうものです。でもこのエラー、SynScan Proを最新版にしてから「多すぎる」というのは見なくなりました。今のところだけかもしれませんが、改善されたのかもしれません。星が「少なすぎる」というのは、プレートソルブをうまくやろうとしているが、取得した画像のクオリティが悪い場合に出てきます。雲が多い、空が明るすぎて星がよく見えないなどです。この場合は露光時間を延ばすとうまくいくケースが多いです。

スクリーンショット 2023-06-21 204001

ただし逆に、露光時間を延ばしすぎてうまくいかないこともあります。例えば星が流れてしまう場合です。私は5秒程度が最もうまくいっています。どれだけ星が流れるかは、AZ-GTiの水平出しの精度、見ている方向などによりますので、取得した画面で星が明らかに流れていないか確認してみてください。星が流れない限りは、露光時間は長いほうが有利です。

このエラーが回避されれば、あとはうまくいくでしょう。自動的にAZ-GTiが動き出し、ターゲット天体が画面真ん中近くに来るはずです。


初期アラインメントの完了と、次の天体の自動導入

プレートソルブがうまくいったら、初期アラインメントのマニュアルで中心へもっていくことが完了したことになります。SynScan Proに残っていた初期アラインメント画面の真ん中の星印バーを押すのを忘れないでください。これでプレートソルブを利用した初期アラインメントは完了です。実際に見てみたい天体をSynScan Proから自動導入してみてください。

さて、初期アラインメントで導入したターゲット天体の近くの天体を自動導入する場合は、特に問題なく画面真ん中らへんに来るかと思います。

ところが、遠くの天体を自動導入する場合は画面内に入らないこともあるかと思いますが、その場合もプレートソルブをしてみてください。設定などはうまくいっているはずなので、今度は特に問題なく真ん中に導入されるはずです。ただし自動導入でプレートソルブをしたとしても、AZ-GTiが認識している(遠くに移動した誤差のために間違って認識されている)位置がアップデートされるわけではないです。そのため、次の天体がもし今導入したものの近くにあったとしても、同じような誤差のために画面内に入ってこなくて、再度プレートソルブをする必要があるかと思います。そんな場合はSynScan Proでアラインメントを選んで、今見ている方向の近くにある星でアラインメントを取り直してみてください。同じように「マニュアルで中心に」と出たところで再びプレートソルブをして、うまく導入されたら初期アランメントを完了して、SynScan Proが認識している位置をアップデートしてみてください。こうすることで、その付近の天体の自動導入できちんと画面内に入るようになるはずです。


トラバースの場合

今回AZ-GTiだけでなく、少し前に発表されたSynScan仲間のトラバースもじっくり試してみました。



上の記事でも少し書いていますが、この記事で試した次の日の観望会でも接続やプレートソルブにトラブルがありました。その後自宅などでも何度か試していたのですが、うまくいく時とうまくいかない時の差がかなりあり、観望会本番で使うのは少し怖いという印象でした。少なくともAZ-GTiと比べると安定度の差はあったかと思います。

ところが、今回SynScan Proのバージョンを最新のものにアップデートしてからは、トラバースで以前経験したようなトラブルは今のところ一切なくなっています。少なくとも、もうAZ-GTiとの差は感じられないレベルの安定度です。

まだ何度か検証する必要はあるかと思いますが、観望会での実戦投入も含めて、実際に使っていけるレベルかと思いますので、今後どんどん活用していきたいと思います。


これ以降は、古いバージョンのSynScan Proで試したことも含めた補足記事です。ほとんど役に立たないと思いますが、参考がてら載せておきます。

Device Hubは関係なさそう

(古いSynScan Proで)AZ-GTiとトラバースを交互に使用するなど、複数台からの接続がうまくいかない場合、ASCOMのDevice Hubを使うといいという情報を得ました。Device Hubは複数の各機器のASCOMドライバーを管理し、接続を制御するという中間的なハブの役割をするものです。ダウンロード場所が分かりにくかったのですがここになります。



前回不安定だった状況を再現し、それがDevice Hubで解決するか試しましたが、残念ながらSharpCap上でASCOM Driver for SynScan Appに直接つなぐ方法と、Device Hubを通してSharpCap上でASCOM Driver for SynScan Appにつなぐ場合では、明確な違いを見ることはできませんでした。


SynScan Proのバージョン

PC上のSynScan Proですが、最新より少し前の2.3.9と(私が持っている古い)1.9.20では明確な違いがありました。今回のSynScan Proの最新版で再びオンにしたというちょっと謎のPAEに関連するかもしれません。 SharpCapから接続してAZ-GTiを動かすことまでは両方とも問題なくできます。ですが、プレートソルブになると2.3.9でAZ-GTiにフィードバックしようとするところまでは行きますが、どうやってもAZ-GTiが反応しないことがありました。それを1.9.20にしたところ、何の問題もなく動くことが何度かありました。1.9.20の方がどうも安定に動くのは確かなようです。

このことは、私だけでなくほかの方も同様の指摘をされていたので、偶然とかではないと思います。最新のSynScan Proのリリースノートにあったように、PAEをバージョン2台のどこかでオフにして再び最新版でオンにしているというので、もしかしたらこれがバージョン1台とバージョン2台の安定性の違いに関係していたのかもしれません


プレートソルブトラブルの振る舞い

もう一つ気づいたことがあります。プレートソルブの最初の段階ですぐに「星が多すぎるのでは」とかのエラーが出て全く動かないときですが、どうも探索範囲が毎回15度程度で止まってしまいこのエラーが出ます。うまくいかない時は、SharpCap上で認識されている鏡筒の向きと、撮影した画像が実際に向いている向きとで大きな違いがあるときに、このエラーが出るようです。問題は、実際にはSynScan Pro上では目標天体の近くを向いていると認識されていても、SharpCapがSynScan Proとうまく接続できていなくて、SharpCap上では全然違う方向を向いていると認識された場合は、このエラーが出るようです。

このエラー、SharpCapのメニューからプレートソルブ実行時に選択できる2つのうちの2つめの「同期までしようとする」とすぐに出るのに、一つ目の「同期せずにプレートソルブだけ試す」と出ないこともあるので、どうも同期までしようとすると15度までの探索とかの制限がかかっているからのかもしれません。

その時やらかしたのですが、SynScan Proの緯度軽度情報を間違っていたり、前回の情報が残っていたりで鏡筒のホームポジションがずれていた場合など、そもそもSynScan Proの方が実際の向きと大きく乖離していると、同じ状況に陥ります。色々触っていると、意外に何度かSynScan Proの段階で間違っていることがありました。この場合、SharpCapといくらうまく接続できていてもダメみたいです。このことの自戒も含めて、今回の記事では注意事項にそのようなことを入れています。


まとめ

今回のSynScan Proのアップデートは、AZ-GTiのプレートソルブに関してかなりの改善がなされたように思います。実際、セレストロン系の赤道儀でこれまでプレートソルブで不安定だったことは一度もなかったので、やはりこれはSynScan系のソフト的な問題だった可能性が高いと思っています。

あと、ASCOMドライバーに関してはアップデートに気づかなくて一つ前の1.3.1を使い続けていましたが、特に不具合は感じませんでした。更新日がSynScan Proとも近いので、もしかしたらアップデートした方がより安定になる可能性もあるかと思います。

あと、これまでのプレートソルブに関するトラブルは、SkyWatcherの代理店であるシュミットさんの方にも何度か報告させていただいていて、今回SynScanおよびSynScan Proがアップデートされた際には、いち早くプレートソルブ関連が改善された可能性があるので試してみて欲しいとの連絡を受けました。私からの報告が実際にフィードバックされたかどうかはわからないのですが、現実にアプリが改善され、連絡までしてもらえたのはとてもうれしく、ショップとしての真摯な対応に感謝したいと思います。また、実際に最新バージョンを試してから記事にするまでに、少し時間がかかってしまったことをお詫びします。

さて、これでAZ-GTiだけでなく、トラバースでのプレートソルブまで実用レベルに達したようなので、カバンの中に余裕で入るミニマムセットでの電視観望をどんどんやっていきたいと思います。

先週末の観望会の電視観望でプレートソルブがうまくいかずに大敗を喫したのですが、その原因を調べました。




機材など

一例ですが、私が使っている機材を今回の検証の前提条件として書いておきます。必ずしも同じ状況にしなくても、同様のトラブルはありえると思いますので、参考にしてください。

  • ハードウェア: 鏡筒(FMA135)、CMOSカメラ(Uranus-C)、AZ-GTi or TRAVERSE、三脚、PC(Surface 8, Surface 9, StickPC)
  • ソフトウェア: OSはWindows 10 or 11、SharpCap 4.1、SynScan Pro 231 or older、ASCOMプラットフォーム 6.1、SynScanアプリ用ASCOMドライバー 1.31 or 1.30、カメラドライバーなど

状態:
  1. AZ-GTiをスマホなどのSynScan Proを使って操作する準備ができている。
  2. PC上にSharpCapがインストールされていて、電視観望などができる準備ができている。
  3. PC上にSynScan Proがインストールされ、AZ-GTiに接続して操作する準備ができている。
  4. PC上にASTAPやASPSなどのプレートソルブ環境がインストールされている。
  5. SharpCapからASCOMを介して、SynScan Proに接続する。
  6. SharpCapを使ってプレートソルブをする。
今回は特に1、3、5、6がトラブル箇所で、中でも3と5、特に5が不安定な箇所です。


最初に確認しておきたいこと

まず最初は基本的なところで、PC上のSynScan ProとAZ-GTiがWi-Fi経由できちんと接続されているかです。接続ができているかと思っていても失敗している、もしくは接続していても知らない間に接続が切れていることなどもよくあります。チェックすべきことは
  • PC上のSynScan  Proの「ユーティリティ」の「情報」を見て、きちんと数字が動いているか?スマホやタブレットだけで繋がっていることがあります。
  • スマホとPCの両方から同時にAZ-GTiに接続していないか?
  • PC上で二つ以上のSynScan  Proが立ち上がっていて、重なってAZ-GTiに接続していないか?
  • 観望会などで間違えて他人のAZ-GTiに接続していないか?SynScan  Proの矢印ボタンを押して、きちんと自分のAZ-GTiが回転するか見ます。
などです。ここまではバグとかの可能性はほとんどないので、自分の設定ミスの可能性が高いです。でもこれ以降は自分の設定ミスというより、バグに近いものがたくさんあることがわかりました。ここまでで、きちんとPC上のSynScan ProとAZ-GTiが接続されていることが、ここからのトラブルシューティングの前提条件となります。


トラブル1: SharpCapとSynScan Pro接続の不安定性

ここからはさらにややこしい状況で、この不安定性はバグの一つかと思われます。

現象
  • SharpCapからASCOM経由でAZ-GTi(実際にはSynScan Pro)に接続しようとするとエラーメッセージが出て接続できない。
  • もしくは一旦SharpCapから接続できても、SharpCap上の矢印ボタンからAZ-GTiが反応しない。
  • もしくはSharpCapから接続できていたものを一旦外して、再度接続しようとするとエラーメッセージが出て接続できなくなる。

エラー
  • エラーメッセージはASCOMドライバーからで、下のように接続先が存在しないとか言われる。
スクリーンショット 2023-06-21 204049


状況確認
  • PC上のSynScan Proの「ユーティリティー」「情報」から、方位などの数字が動いているかどうか見る。止まっていたら(Wi-Fiなどの問題で)すでにPC上のSynScan ProとAZ-GTiの接続が切れているので、特に前項を見ながら接続をきちんと確認する。
スクリーンショット 2023-06-21 204520
  • SharpCapからまだ接続されいるなら、SharpCapのタブの望遠鏡パネルの数字が動いているかどうか見てみる。止まっていたらすでにSharpCapとPC上のSynScan Proの接続は確立されていない。次の解決策を試す。
  • SharpCapとの接続が確立されていないなら、次の解決策を試す。

解決策
  • PC上のSynScan Proを立ち上げ直す。わざわざ画面上部をクリックして「接続を切る」とかをする必要はありません。そのまま右上のxボタンを押してバチッと閉じてしまっていいです。


トラブル2: プレートソルブした時に解がない

トラブル1までで、ShaprCapとSynScan Proとの接続はうまくいっているはずです。その後プレートソルブをしようとして、以下画面のように「プレートソルブに解がない」とか言われる場合は、それでも前提のSynScan ProとAZ-GTiの接続がうまくいっていないことが多いです。再度前項目をチェックするなどして、SynScan ProとAZ-GTiの接続を確立、チェックしてください。

次にチェックするのが、ShaprCapとSynScan Proとの接続です。普通は右パネルの「望遠鏡制御」のチェックボックスを押すて5秒くらい待つとチェックボックスが出て接続が確立されます。この時点でチェックマークがつかない場合はトラブル1などを見直します。問題はチェックマークがつくのに、実際には接続されていない場合です。

スクリーンショット 2023-06-21 204001
その証拠の一つが、上の画面の右下の接続状況を示すパネルです。接続のチェックマークがきちんと出ていますが、AZ-GTiからの数値の多くが0になっていて明らかにおかしいです。接続されたと見えて実は接続できていないケースで、バグの一つです。

最初接続されても、途中で接続が切れて、右下の接続状況を示すパネルの数値が止まってしまっている場合などもこのケースですが、これはバグというよりは例えばAZ-GTiの電池がなくなったとか、Wi-Fiがなんらかの原因で切れたとかの、ミスの部類になります。

解決方法ですが、とにかく右下の接続状況を示すパネルの数値がきちんと動き出すまで、PC上のSynScan Proを立ち上げ成すなどして接続を繰り返してください。どうしても上手くいかない時は、ASCMOMドライバーのバージョンを落とすなどして入れ替えたり、SynScan Pro のバージョンを落とすなどして入れ替えたりしたら途端に直るということを何度か経験しました。ただし、どのバージョンだと動くとか(3種のPCで試しましたが)法則は無いようで、どうも入れ替えたこと自体が何か書き換えて回避するような感じです。


トラブル3: プレートソルブが全く進まない

現象
  • プレートソルブすると「星が多すぎるので、露光時間を減らすとかしろ」とエラーが出て全く進まない。実際の画面の星の数はそんなに多くはない。
キャプチャ_02


状況
  • PC上のSynScan Proの緯度経度情報が大きく間違っている。
  • AZ-GTiが向いていると思っている方向と、実際の方向があまりに違う。

解決策
  • PC上のSynScan Proの緯度経度情報を確認します。「設定」の「観測位置」から確認できます。PCは普通GPSユニットはもっていないことが多いので、マニュアルで数値を入れる必要があります。スマホなどのコンパスアプリでその場の緯度経度の値を取得できるかと思います。
  • 緯度経度を合わせ直したら、再度一からアラインメントをやり直します。
  • 星が多いというのはおそらくノイズをカウントしてしまっています。エラーメッセージとは逆ですが、まずは露光時間を伸ばしてみてください。

トラブル4: 同期なしプレートソルブはできるが、同期ありだと何も進まない

これはかなりたちの悪いバグです。

現象
  • 同期なしのプレートソルブはうまくいくのに、同期ありだとプレートソルブすることなく「星が多すぎる」とエラーが出る。
  • ASTAPだと上記の状況だが、ASPSだと同期ありもとりあえずプレートソルブには進むが、次のトラブル5のように実際には同期できない。

原因
  • トラブル2のところでチェックしたように、右下の接続パネルの数値が動いていて一見うまく接続できているように見えても、実はまだ内部で接続がうまくいっていない。
  • PC上のSynScan用のASCOM driverが悪い。

解決策
  • トラブル2でやったように、ShaprCapとSynScan Proの接続を何度かやり直す。
  • ASCOM  driverのバージョンを変える。最新版(1.31)は明らかに挙動がおかしかった。1.30戻したらエラーは出なくなり、プレートソルブを継続するようになった

ハマってしまうと、一番時間がかかるところだと思います。不思議なことに、全くトラブルなしで行く場合もあれば、接続をし直して一度うまくいくとそれ以降は問題が一切出なくなったり、何度接続し直してもうまくいかずに、ASCOMドライバーのバージョンを一つ(1.31から1.30)に落としたら途端に上手くいったとか、とにかく現象も解決策も不安定なバグです。

あと、ドライバーなどの以前のバージョンを落とすには

https://inter-static.skywatcher.com/downloads/setup_synscan_app_ascom_driver_131.exe



https://inter-static.skywatcher.com/downloads/setup_synscan_app_ascom_driver_130.exe

などとウェブブラウザーのアドレスのところを書き換えてアクセスすると、そのファイルが存在すれば落とすことができます。

SynScan Proの場合は

https://inter-static.skywatcher.com/downloads/synscanpro_windows_238.zip



https://inter-static.skywatcher.com/downloads/synscanpro_windows_220.zip

などと書き換えます。


トラブル4: 同期しようとするが、実際には同期されない

これもかなり解決しにくいバグです。

現象
  • 同期なしのプレートソルブはうまくいって、同期ありだと何度ずれているという計算結果まで出てこれから同期すると表示されるのに、実際にはAZ-GTiが反応せずに同期されない。
  • ASTAPでもASPSでも同じ状況。
スクリーンショット 2023-06-21 211349
ここまで行くのに、なぜが経緯台側が動いてくれない。

原因
  • ASTAPでもASPSでも同じ状況なので、プレートソルブソフトの問題ではないと推測。SharpCapの信号を出す部分か、その信号を受け取る部分が悪いと推測。結局PC上のSynScan Proが悪かった。 

解決策
  • トラブル2でやったように、ShaprCapとSynScan Proの接続を再度やり直す。
  • SynScan Proのバージョンを最新版から戻したら解決した。

はっきりした解決策は、いまだに分かっていません。再接続を何度かやったり、PC上のSynScan Proを入れ替えると突然直ったりしました。

一つ言えることは、どうも全体的にSharpCapのバグというよりは、ASCMOドライバー、SynScan Pro側のトラブルという感触です。SharpCapのバージョンもいくつかえて試したりしましたが、何ら改善も悪化もしませんでした。なので疑うとしたら ASCMOドライバー、SynScan Proかと思います。あとAZ-GTiのファームウェアを赤道儀化をかなり昔にして以来アップデートしていないので、それが問題の可能性もありますが、今回は少なくともAZ-GTiの方はいじらずに、また、TRAVERSEのファームは最新に近いはずなので、あまり関係ないと思っています。


ASTAPは動かずASPSだと動く

うまくいくならASTAPのほうが速いので、私は普段ASTAPを使うのですが、ASTAPだと解まで辿り着かなくて、ASPSだと解決して同期までできるるということが何度かありました。でも不思議なことに、一度ASPSで同期までできると次はASTAPでも同期までできたりします。まだ感覚的な範囲なのですが、どうもAZ-GTiで認識している方向と、実際の方向に大きな差があったりするとASTAPだとうまくいかないことがあるような気がしています。でも気のせいかもしれません。とにかくASTAPでうまくいかない時はASPSも試してみてください。ちなみに、ASPSがうまくいかなくてASTAPだけ上手くいったことは今のところありません。なので普段使いでASPSでもいいのかと思います。ただし遅いです。


まとめ

もちろん、今回のトラブル回避が全てではなく、環境によっては再現できなかったり、違った振る舞いになることもあるかと思います。この情報を鵜呑みにするのではなく、トラブルに出会った場合は、こんなところが怪しい可能性があるという程度で参考にするのがいいのかと思います。基本的にトラブルさえなければ必ずプレートソルブは動きます。

今回は3台のPCで試したところ、とりあえず飛騨コスモス観望会で発生したトラブルを全て再現できて、無事にどのPCでも解決しました。解決する手段は必ずあるということです。でもその解決策もまだまだ不安定で、ソフトやドライバーのバージョンを変えるとしても最新版が必ずしもいいわけでもなさそうです。さらに古いものも、どのバージョンがいいかまでは検証できませんでした。途中でも書いたのですが、入れ替えること自体がどこかの値を書き直して、それで解決している可能性もあります。

今回の経験から、まずはSynScan ProとAZ-GTiの接続をきちんと確立すること、緯度経度情報が重要なことなどがわかりましたし、さらにはShapCapとSynScan Proの接続の確立が一番大切なこと。むやみやたらに最新版にバージョンアップしないことが重要なようです。もし安定に動いているならそれを保つこと。アップデートする場合は、必ず時間のあるきに行い、実際の星空でテストすることが大事かと思います。安定に動いていても、何かの拍子に不安定になることもあります。

今思うと、AZ-GTiだけなら安定だったのが、2台目としてTRAVERSEもつないだことが突然のトラブル発生の気もしています。最初TRAVERSEで発生したので、一度はTRAVERSEを疑いましたが、同じことがAZ-GTiで起ったのでTRAVERSEのせいというわけでも、かと言ってAZ-GTiのせいというわけでもなく、複数台を運用したことが問題の可能性が高いのかと思われます。おそらくですが、複数台でどこかのアドレスの値を共有しているのが原因かなと思います。

今回、一応全部解決はしましたが、明らかにバグと思われる部分もあるので、できればメーカーの方で複数台のテストも十分にしていただけると、ユーザーは助かるかなと思います。特に、SynScan Pro単体では問題には見えなくても、ASCOM経由で接続すると不安定さが露呈します。3台のPCで同様のトラブルが確認できたので、偶然とかではないはずです。AZ-GTiはかなりの数が出ているので、複数台を使っている方も少なくないかと思います。ちなみに、Celestronの赤道儀を3種をこれまで3台程度のPCで入れ替えて使っていますが、同様のASCOM経由の接続でのプレートソルブで、このようなトラブルは一度も遭遇したことはありません。


SharpCap(有料版のみ)やASILiveには、リアルタイムでダーク補正をしてくれる機能がついています。これがどこまで有効なのか、常にオンにしておいた方がいいのか?色々やり方はあると思います。今回は私Samが普段どうしているかSharpCapを使って解説したいと思います。


ホットピクセルがはいずった痕

SharpCapでの電視観望中Live stackをしていると、よく赤、青、緑の単色のミミズみたいなノイズが入ることがあります。「ホットピクセル」とか言われているもので、長時間露光時やセンサー温度が高い時に出てくるダークノイズの言われるもの一種です(下の画像をクリックして拡大して見て下さい)。
hot

この画像は、自動追尾さえしてなくて、Livestackのみで星像を重ねています。なのでこんな短時間で長いミミズさんがでてますが、自動追尾している場合は同じ時間ならこれより遥かに短くなります。

いずれにせよ電視観望でも見栄えが良くないので、これを取り除きたくなるかと思います。こんな時はリアルタイムでダーク補正ができる機能があります。


ダーク補正機能の注意点1

SharpCapでのダーク補正は簡単で便利なのですが、いくつか注意があります。まず一つ目、これはSharpCapに限らず一般的なことなのですが、

撮影したダークフレームは、
同じ露光時間、同じゲインでしか
使用できない

ということです。見たいものが安定していて、露光時間とゲインが確定していれば問題ないのですが、電視観望みたいに露光時間やゲインをちょこちょこ変えて見ていると、ダークフレームをどの設定で撮影すればいいか決まりません。もちろん厳密に合わせなくてもダーク補正の効果はあります。ただし、設定がズレればずれるほど、その補正効果も小さくなっていくので、やはりできるだけ合わせておいた方がいいでしょう。

実際の電視観望では、導入時(移動する動きを見たいので、露光時間は例えば400ms程度)、観察時(止まっているので長い露光時間、例えば1.6秒とか、3.2秒、長くても12.8秒程度まで)の露光時間をあらかじめ決めておきます。ゲインは最大から一段階下げるくらいで、高い位置のままいじりません。このようにして、ダークフレームは観察時の設定に合わせるように一種類だけ撮影しておけば、基本的には事足りるはずです。何種類もとって切り替えてもいいですが、観望会でお客さんがいる時などは、時間のロスになってしまうかもしれません。


ダーク補正機能の使い方

SharpCapでの実際のダーク補正のやり方です。

1. まずはメニューの「キャプチャ」から「ダークフレームキャプチャ」を選びます。
2. 撮影前に、必ず鏡筒に蓋をするのを忘れないで下さい。
3. 枚数は多くなくていいです。8枚とか、16枚で十分でしょう。ただし、撮影のようなことをしたくて数十分以上とかの超長時間ライブスタックを掛ける場合はそれなりの枚数にして下さい。
darkcapture

4. ダークフレームの撮影を開始し、スタックし終わるのを待ちます。
darkcapturing

5. ダークファイルができたら、右の「前処理」タブの「ダーク補正」で「参照」を押し、ダークファイルを選択します。自動的にできたファイルのフォルダに移動さるはずなので、そこにあるファイルを選べばいいでしょう。

これでLive stackをしてみると、目立っていたミミズさんはすっかり消えているはずです。ただ、細かいたくさんの縞が残るかもしれません。それでもダーク補正しないよりはマシになるかと思います。

LS_80


ダーク補正機能の注意点2

さて、ここから少しテクニックです。この状態で鏡筒にカバーをしてヒストグラムを見てみましょう。
nohot

ここでの問題は、ヒストグラムの山の左端が切れてしまっていることです。SharpCapでは輝度が負の値になるようなことはなく、0以下は全て0になるようなので、ものすごくおかしなことは発生しません。でもこれは読み出しノイズがガウス分布に従わずに、不自然な状態になってしまっていることになります。言い換えると、
リードノイズの暗い部分はバッサリ斬られていて、
階調がとれなくなります
これが2つ目の注意点です。

階調がとれないとはどういうことでしょうか?例えば、先ほどの北アメリカ星雲を見ている時に輝度をあえて下げてやって、ヒストグラムの山の左端を欠いてやります。

LS_bad

ライブスタックのヒストグラムの左が欠けていますね。すると色バランスが損なわれ、どういじってもこの画像のように見た目にもおかしいものしか出てきません。

これは極端な場合なので、普通に電視観望している範囲では基本的にはこんなことは発生しません。でも、もし画像を見て階調が取れないような時は変にヒストグラムがカットされていないかを疑った方がいいこともあるので、心に留めておきましょう。


ヒストグラムの山を回復する

さて、リードノイズに関して、このような階調不足を避ける方法を考えます。まず、ダークフレームを撮影する前に、右の「画像情報」タブの「輝度」のところを、最初から少しあげておきます

withhot

私は最大値(ASI294MCの場合80)の半分くらい(40)にします。ポイントは右パネルのの「ヒストグラムストレッチ」で見て、まずはダークフレーム取得時点で山の左が欠けていないことを保証すること。山の左すそが、一番下まで言っていればいいです。山が左に行きすぎて左すそが途中で無くなっているような状況は避けてください。

ここまではいいのですが、この状態でダークフレームを撮影してダーク補正を適用すると、オフセットも消そうとするためヒストグラムの山の左が欠けた状態になります。
nohot

ここで、さらに「画像情報」タブの「輝度」の値を上げて、ヒストグラムに山の左側に欠けがないように再び設定します。

nohot_withoffset
山が回復したのがわかるかと思います。

ちなみに、電視観望をやっているだけなら、上記の補正は特にしなくても、特におかしいことはないと思います。補正の有無で以下のようになります。

LS_80
輝度補正なし(40のまま)。

LS_80real
輝度補正あり(80に増加)。

補正有無で比べても特にどちらかが悪いということはないと思います。ただこれを画像処理とかして、撮影画像とかして扱うときは補正なしだと少し気をつけた方がいいかもしれません。リードノイズに相当する部分が既に破綻しているので、もしかしたら何か影響があるかもしれません。


リアルタイムダーク補正は必要か?

ちなみに、私は電視観望の際は大原則としてリアルタイムダーク補正はしません。理由は、露光時間、ゲインを頻繁に変えることが多いからです。また、月や惑星などの明るい天体を見ていて、ライブスタックに入らないような場合には、ホットピクセルは点のままで線にはならないので、そこまで問題にならないはずです。

ホットピクセルが多い場合(カメラの機種に依りますし、気温にも依ります。)で、ライブスタックに入り、かつ露光時間とゲインの設定をあまりいじらなくていいくらいになると、リアルタイムダーク補正をすることがあります。特に、ライブスタックで数分以上の長さでしばらく放っておくような時です。

リアルタイムダーク補正を行う際は、上で説明したリードノイズの山の形の補正は必ずやるようにしています。といっても、炙り出しがキワキワになった時にもしかしたら効くかもしれないと思ってしまうからという程度です。

あとよく似たことで、リアルタイムフラット補正は使ったことがないです。これは鏡筒の方向を変えるとカブリなどの状況がガラッと変わるからです。かなり昔に一度だけリアルタイムフラット補正を試したことがありますが、あまりうまくいかなくてそれ以来使っていません。その頃から大分状況は変わっているので、もしかしたら今試してみたらもう少しいい方法があるのかもしれません。


まとめ

いつかこのリアルタイムダーク補正の話を書こうと思って、途中書きになっていたのですが、前回の記事のコメントでちょうどカトーさんからダーク補正についての質問がありました。これが答えになってくれるといいのですが。


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