ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:観測・撮影 > 電視観望

タイトルを見てなんだ?と思われた方もいるかと思います。CP+でお会いしたMACHOさんのお誘いで、チリのリモートで電視観望を経験させて頂きました。地球の反対側なので、日本だと昼間というわけです。


チリのリモートを使っての電視観望のお誘い

そもそものお話は、CP+でセミナーを終えた土曜日の夜、天リフ編集長のお誘いで、あぷらなーとさんと星沼会の方達と横浜駅近くの中華料理店で飲んだ時です。 隣になったMACHOさんが高校生や中学生にちりのリモートを利用して電視観望をしているので、よかったら一緒にやってみませんかとお誘いを受けたのです。

チリのリモート望遠鏡はご存知の通り、Niwaさんが音頭をとって日本で広まっているもので、素晴らしい撮影結果がどんどん出ています。私はまだ経験したことがないので、これは願ってもない機会です。3月16日の土曜日、朝の10時半から、まずはZoomにつないで顔合わせです。その際、そーなのかーさんがヘルプに入ってくれます。そーなのかーさんとは、昨年のCP+2023でお会いした時に、チリ関連の交渉や輸送などに相当活躍されているというお話を聞きしました。今回も実際の操作など、不明なところは簡潔にとてもわかりやすく説明してくれて、そーなのかーさんのサポート体制が素晴らしいです。

ZoomでMACHOさんと、そーなのかーさんと挨拶して、早速すぐに接続してみようということになりました。チリにあるリモートPCへの接続は、シンテレワークというソフトを使うとのことです。私はこのソフトを触るのは初めてですが、シンプルでおそらく歴史のある、とても安定したリモートソフトの印象を受けました。 


実際の操作

私は南天の空は全然詳しくないので、事前に少し調べておきました。といっても、大マゼラン雲などメジャーなものばかりですが、最初なので十分満足するはずです。導入はCarte du Cielを使ってASCOM経由で赤道儀と繋いでいるいるようです。でもソフトも好きなものを使っていいということで、必要ならStellariumなどをインストールして赤道儀と接続してもいいとのことでした。とりあえず今回はお手本で、最初は大マゼラン雲を導入してもらいました。

SharpCapの画面常にすぐに大マゼラン雲の中心のが出てきます。今回は普段私が電視観望をどのようなパラメータでやっているか見てみたいとのことでしたので、私自身でSharpCapをいじらせてもらいました。このリモート接続用のシンテレワークはかなり優秀で、複数の人がリモート先のPCをコントロールすることができます。本当に同時に操作とかしなければ、実用で十分に複数人で話しながらいじることができました。私の今回の環境は、Windowsからシンテレワークで接続して、 MacではZoomでつないで、同じ画面を供してもらっていたので、2画面で同時に確認できて一見無駄に思えても、動作に確証が持てて意外に便利でした。一つ不満を言うと、SharpCapのヒストグラムの黄色の点線を移動するときに、その点線を選択することがちょっと大変だったことくらいでしょうか。どうもシンテレワークから見ると、線の上にマウスカーソルを持っていってもマウスポインタが変化しないので、ここら辺だったらOKだろうと見込みをつけて左ボタンを押して線を選ぶ必要があります。

今回電視観望用に使う機材はFRA300ProにASI2600MC Proをつけたものです。これは亀の子状態でTOA150の上に乗っているそうです。こちらは撮影用でカメラはASI6200MMとのことです。機材は別カメラでモニターできるそうです。下の画面の位置がホームポジションで、パークされた状態とのことです。
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電視観望はカラーカメラなので、すぐに色がついた大マゼラン雲が出てきます。パラメータは好きにいじっていいとのことなので、私がいつも設定するように、露光時間は6.4秒、ゲインは500くらいです。露光時間がこれより短いと、読み出しノイズのような横縞が目立ってきてしまうようで、これはASI2600MCがそこまで感度が高くないからではないかとのことでした。露光6.4秒でライブスタックすると、どんどんはっきりと、色鮮やかな大マゼラン雲になっていきます。この時点ではまだ操作に夢中で画面をキャプチャーするのを忘れてしまっています。

実際、大マゼラン雲をこのように自分で操作して見たりするのは初めてです。画面いっぱいに広がるので大迫力です。次に小マゼラン雲も見たかったのですが、こちらはまだ高度がかなり低いようなので諦めます。天文を始めたから結構すぐにオーストラリアに行ったことがあって、この時は大マゼラン雲はみいていなくて、小マゼラン雲だけ撮影したことがあります。でもその時はまだ技術的にも未熟で、しかも満月近くだったこともあり、記念撮影のレベルでした。今回は短時間の電視観望ですが、大マゼランになったこともあり、はるかに満足度が高いです。


SharpCapでのキャプチャ画像

小マゼラン雲の代わりに、りゅうこつ座にあるNGC3372: イータカリーナ星雲に行きました。ここでやっと忘れずにキャプチャできました。光害防止フィルターとか無しの電視観望で、こんなに見事に見えます。これで合計わずか2分半のライブスタックです。
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操作していて気づいたのですが、SharpCapのバージョンが4.0台と少し古くて、いくつかの重要な機能が使えなかったので、途中から最新版の4.1台にアップデートしました。こんなふうに気軽にアップデートができるのも、個人で全てを操作しているからで、公共の天文台の利用とかだとある程度使うソフトには制限があり、なかなかこうはいかないと思います。

4.1で使いたかった機能は、
  • ライブスタック時のカラーバランスの自動設定の際の、鮮やかさの調整機能。1−8段階で選ぶことができ、見かけがかなり変わるので、まだ試していない方は是非試して見てください。
  • 背景のノンリニアなフラット化機能。実際試したら少しだけ炙り出しが改善しましたが、もともとカブリなどほとんどない場所だと思いますので、あまり必要ないかもしれません。
  • ホットピクセルとコールドピクセルの簡易除去。カメラによると思いますが、ASI2600MCだと、今回特に冷却とかしていませんが、元々目立つようなホットピクセルとかないように見えるので、この機能もほとんど必要ないかと思われます。
あと、新機能ではないですが、ライブスタックのカラーバランスバーの右の彩度調整バーは今回いろいろ変更しながら使いました。やはり星雲など色がついているものは、ここを少し上げてやるとかなり見栄えが良くなります。

ライブスタックのヒストグラムでまず雷ボタンで一段階オートストレッチして、その結果が右パネルのヒストグラムに伝わるので、さらに右パネルの雷ボタンでオートストレッチすると、かなり見栄えが良くなります。その際、オートストレッチを使ってもいいですが、派手すぎたり、もっと炙り出したいとかもあったりするので、必要な時はマニュアルで黄色の点線を移動するようにしました。

途中で、「保存するときのファイル形式はどうしてますか?」という質問がありました。まず、RAW16になっていることを確認して、形式は普段はfitsにしています。TIFFでもいいのですが、後で画像処理をするときにはたいていPixInsightになることと、ASI FitsViewerで簡易的にストレッチして見るのが楽だからです。保存は、ライブスタックパネルの左の方の「SAVE」から、16bitか、3つ目のストレッチ込み(これはライブスタックのヒストグラムでストレッチしたところまで)、もしくは4つ目の見たまま(これはライブスタックのヒストグラムのストレッチと、右パネルのヒストグラムのストレッチがかけ合わさったもの)で保存します。後者2つは8bitのPNG形式に強制的になってしまいますが、十分ストレッチされていれば8bitでも大丈夫でしょう。


次々に大迫力の画面が!

次に見たのが、同じりゅうこつ座にあるIC2944 で、「走るにわとり星雲(Running Chicken Nebula)」と海外では呼ばれていますが、 日本では「バット星雲(コウモリ星雲)」と呼ばれているものです。いまいちニワトリに見えない気がするのですが、もう少し淡いところも出すとニワトリに見えてくるようです。
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途中、天体を辿っていくのに、アノテーション機能を使いました。アノテーション自身は単に天体の名前を示すものですが、上の画像のリストを見るとわかるように、画面内に写っている天体の名前がリスト化されていて、その中の天体を選択して中心に持ってくることができます。さらにリストの次のタブの「Objects Nearby」では画面外の近くの天体リストを出すことができて、その中の名前を選んで中心に持ってくることもできます。要するに、次々に近辺の天体に移動しながら、天体巡りができるというわけです。あと、別機能で画面内をクリックしてそこを中心に持ってくるとかもできるようになっていました。SharpCapも確実に進化しているようです。

もう一つ確認したかったのが南十字星でしたが、画角的にちょっと入らなさそうだったので、南十字座にあるNGC4755を見てみました。結構小さいのですが、少し拡大するだけで構成の色も含めて十分に見ることができました。真ん中に見えているNGC4755の右上に見えている明るい星が、南十字の一つのミモザになります。
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驚いたのは下の方に写っているコールサック(石炭袋)と呼ばれる暗黒隊が余裕で写っていることです。電視観望でこんな暗黒体が見えるのは、やはり空がいいからなのだと思います。

次に見たオメガ星団は見事でした。少し拡大していますが、まだまだつぶつぶ感満載です。かなり拡大しても大丈夫そうでした。日本からも見えますが、光度が低く、撮影するのもなかなか大変です。
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南半球特有の最後はケンタウルス座のAです。こちらも日本からも見えますが、例えば私が住んでいる富山では南天時でも高度10度くらいとかなり低く、実際ここまで見るのは難しいでしょう。今回は中心部の構造も見えています。
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最後は、比較のために北半球でも普通に見えるかもめ星雲を導入しました。最初結構淡いと思いましたが、これまで見ていた大マゼラン雲とかが鮮やかすぎるのです。しかも聞いてみたらノーフィルターだそうです。フィルターとかのことを話していたらそこそこ時間が経ったみたいで、ライブスタックが進みHαも鮮やかになっていました。これで約9分のライブスタックです。しかもOIIIでしょうか、青い部分も綺麗に見えてきています。

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ノーフィルターでこれだけ見えるのだから、やはりチリの空はすごいです。多分低いところですが月がまだ出ていたと思いますので、それでもこれだけでます!


まとめ

うーん、チリのこのセットアップ、羨ましくなってしまいました。元々は自宅の庭でそこそこ撮れればいいくらいが目標でした。目標の中には、自分でいろいろ機材をいじって改善して、その成果が撮影した画像になって現れるようなことも入っています。なので、あらかじめセットアップされたものは避けていたのですが、短時間の電視観望さえここまで違うと、一度撮影とかまでじっくり時間をかけてみたくなってしまいます。それくらいに魅力的な空でした。

今回はとても貴重な経験をさせて頂きました。初めての南天巡りということもあり、私自身は相当楽しめました。MACHOさんとそーなのかーさん、本当にありがとうございました。今後、中高生と電視観望会など開くときは、是非ともまた参加させていただければと思います。


CP+連動企画、「電視観望技術を利用して天体写真を撮影してみよう」ですが、前回までにオリオン大星雲の導入が済んだところまで進みました。今回は、実際に撮影してみます。いくつかコツがあるので、順次説明していきます。


撮影はとりあえずフルオプションで、やれることはやるという方針で進めます。今回はフルオプションで撮影が完了するところまで、次回の記事で簡略化した撮影方法を示しどんな影響があるかを検証したいと思います。

それでは、前回記事の終了時の、SharpCapの画面にオリオン大星雲が入っているところからスタートです。


カメラの回転角

まず、鏡筒に対してカメラをどのような角度で取り付けるかの、カメラの回転角を決めます。これはレデューサと鏡筒の間にある3つのネジがついたアダプターの、ネジを一つか、せいぜい二つ少し緩めるだけで、カメラを回転させられるようになります。カメラの回転角は適当でもいいのですが、一旦カメラを外して設定を変えた時とか、画角が回転方向に大きくずれる可能性があるので、できるなら毎回同じ向きにしておいたほうが無難です。

方法はこのブログの昔の記事に詳しく書いてありますが、

簡単におさらいしていきましょう。
  1. SharpCapで、右上アイコン群の中から、「ズーム」の一つ左にある、赤線のクロスのようなアイコンを何度か押し、同心円のレチクルを画面上に出しておきます。
  2. SynScan Proの方向矢印か、ASCOMで赤道儀とつながっているSharpCapの右パネルの「望遠鏡制御」の矢印で、見ている方向を少し変え、目立つ星を中心に入れる。
  3. 矢印の一方向をしばらく押し続け、星がレチクルの十字線に沿って垂直、もしくは水平方向に真っ直ぐ動くかどうか確認する。
  4. もし水平、垂直にピッタリ動かないなら、レデューサのところのネジを緩めてカメラを回転させ中心にあった星が、垂直線か水平線の上に来るように合わせる。その際、ネジをきちんと締めなおしてから位置を確認する。
  5. 再び矢印ボタンを押し続けて、星がレチクルの十字線に沿って垂直、もしくは水平方向に真っ直ぐ動くかどうか確認する。
  6. きちんと星が垂直、もしくは水平方向に真っ直ぐ動くまで4-5を繰り返す。

こうやって回転角をあわせます。参照記事にも書いていますが、この回転角調整は夜を待たなくても、昼間でもできます。目立つ星の代わりに、遠くの何か目印になる点を使えばいいだけです。例えば遠くにある鉄塔のてっぺんとかでもいいでしょう。もし余裕があるなら、昼間のうちに済ませておくといいでしょう。

この回転角調整で、ピントがズレる可能性があります。レデューサのところの回転固定ネジを締める時にきちんと締めていなかった場合です。ネジを閉めるときは毎回少し手で持ち上げて、下に落ち込まない状態で毎回きちんと最後までネジを締めると、安定してピントずれなどはなくなります。


位置決め

回転角調整で位置がずれてしまったので、再びオリオン大星雲を中心位置に入れます。SynScan ProでM42を再自動導入してもいいですし、SynScan Proか、SharpCapの「望遠鏡制御」の矢印ボタンで、自分がいいと思う位置に入れてもいいでしょう。私は以下のような位置にしました。

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これだと、右上方向に向かうオリオン大星雲の広がりが十分に入り、左のランニングマンもいい位置に来るはずです。


オートガイド

位置が決まったら、次はオートガイドです。ここではガイド鏡とガイドカメラ、ソフトはPHD2を使います。

繰り返しになりますが、PHD2で PlayerOneのカメラを使うときは、PlayerOneカメラのドライバーだけではだめです。前回のソフトの説明のところで書いたように、ASCOMプラットフォームとASCOMカメラドライバーをインストールしてください。ASCOMプラットフォームはここまででSharpCapと赤道儀がつながっていれば、すでにインストールされきちんと動いているはずです。詳しくは

を参照してください。

PHD2の使い方はマニュアルなどを読んでいただければいいのですが、接続方法などごく簡単に書いておきます。
  1. Windows PC上で、ソフトの準備の時にインストールしておいたPHD2を立ち上げます。
  2. 初めてPHD2を立ち上げる場合は、ウィザードが出てきて、カメラなどの設定が始まるはずです。ほとんどは指示通り進めればいいのですが、カメラの選択は迷う可能性があります。特に同じメーカーのカメラが複数台接続されていると、Player One Camera (ASCOM)の1から3のどちらを繋いでいるかわかりにくい場合があります。もしどうしても分かりにくい場合は、メインカメラを一度ケーブルを抜いて切断してからPHD2のセットアップを開始して、Player One Camera 1(ASCOM)を選ぶのが確実です。もしここでPlayer One Camera 1(ASCOM)が出てこない場合は、Player One Camera用のASCOMドライバーがインストールされていない可能性があるので、上の説明を見て今一度確認してみてください。
  3. カメラを選択する際、ガイド鏡の焦点距離は手持ちのものをきちんと入れるようにしてください。ピクセルサイズはカメラがきちんと繋がれていれば、選択時に自動的に入力されるはずです。
  4. 赤道儀の接続はすでにすんでいるので、そのまま進んでしまえば自動的に適したパラメータが選択されるはずです。
  5. カメラや赤道儀の設定ごとにプロファイル名をつけることができます。後から認識できる適当な名前をつけておきましょう。
  6. ウィザードが終了すると、ダーク撮影に入ります。ガイド鏡にキャップを被せるなどして、光が入らないようにして、ダーク撮影を開始します。結構時間がかかるので、しばらく待ちます。慣れてくれば、必要な時間のみ選択すればいいでしょう。私は0.5秒から2秒くらいまでだけ撮影しています。
これで準備は完了です。2度目以降の立ち上げからはウィザードは自動で起動しません。カメラを変えた場合など、必要な場合はメイン画面の左下にあるUSB端子の絵が描いてあるアイコンをクリックすると、接続設定になるので、そこで再びウィザードを開始することができます。ウィーザードが終わった直後は下の2から始まるはずです。
  1. メイン画面の左下にあるUSB端子の絵が描いてあるアイコン「接続ボタン」をクリックします。
  2. カメラとマウント(赤道儀)を選択します。この際、カメラが複数台接続されていて、どのカメラが接続されるかわかない場合は矢印が二つに分かれるマークが書いてあるボタンを押すと、どちらのカメラか確認できます。カメラと赤道儀それぞれ「接続」ボタンを押します。赤道儀は接続されるまでに10秒くらいかかる可能性がありますので、少し待ちます。全て接続されたら下の「クローズ」ボタンを押します。
  3. メイン画面左下の左から二つ目の矢印が回転しているようなアイコン「露光開始ボタン」をクリックします。ここで画面にカメラからの映像がメイン画面上に表示されます。ガイド鏡のピントが合っていなかったら、ここで合わせてください。
  4. メイン画面左下の左から三つ目の星形のマークのアイコン「ガイド星選択ボタン」が黄色の星になっていることを確認してクリックします。黄色の星にならずに灰色のままの場合は、上記までのカメラの露光が開始されていないということです。いまいちどカメラの接続などを確認して、左から二つ目の矢印が回転しているようなアイコンをクリックしてください。うまくいくと、ガイドに必要な星が緑色の四角で選択されているのが、撮影画像で確認できます。
  5. メイン画面左下の左から四つ目の十字マークのアイコン「ガイド開始ボタン」が緑色になっていることを確認して、クリックします。緑色になっていない場合は、上のガイド星の選択が完了していないので、今一度確認してみてください。うまくいくとガイドに必要な星が緑色の四角で選択されます。
  6. 初回はここでキャリブレーションが始まります。キャリブレーションとはPHD2が動かそうと思った方向と、実際の画像でどちらの方向に動くかを確認し、方向合わせをするような機能です。
  7. キャリブレーションは数分から10分程度かかることもあります。気長に待ちましょう。その際、緑色の四角が、きちんと動いているか画面を見ているといいでしょう。うまく動かないとエラーが出てキャリブレーションが中断されます。赤道儀とのケーブルが断線しているなど、何らかの理由で赤道儀に送っている信号に対して反応がない場合などです。改めてケーブルの接続など、何かおかしいことがないかチェックしてみましょう。ガイド鏡のカメラに接続されずに、メインの撮影カメラに接続されてしまった場合なども、動かなさすぎたり、動きすぎたりして、エラーになる場合があります。
  8. キャリブレーションに成功すると、そのままガイドが始まります。下のグラフで、赤と青の線が時間と共にだんだんと伸びていくのがわかります。キャリブレーション情報を残すかどうかと言う質問が出ることがあると思いますが、「はい」としておくと、次回以降に赤道儀の向きを変えても初回にとってキャリブレーション情報を使い回してくれるので便利です。キャリブレーションが以前実行された場合は、すぐにガイドが始まりますが、あえてキャリブレーションをしたい場合には、「シフトキーを押しながら」ガイド開始ボタンを押してください。ガイドがうまくいかない場合、キャリブレーション情報が古くなっている可能性があります。そんな場合は今一度キャリブレーションを実行してください。
もしここで、ある程度の数の星が見えているのに、画面所の緑色の四角が一つしか見えなくて、選択されている星が一つの場合は、画面下の脳みそマークのアイコンを押して、「ガイド」タブから「Use multiple stars」を選ぶといいでしょう。複数の星をガイド星としてみなすので、精度が格段に上がります。


SharpCapの設定

あとは撮影に際してのSharpCapの設定を残すのみです。

まず最初にメインカメラの冷却機能をオンにします。
  1. SharpCap右側の「温度制御」パネルを開き、「設定温度」を「-10」程度にします。冬場だともっと冷えますが、ダークノイズの影響を考えるとこの程度で十分でしょう。
  2. さらに「冷却」を「オン」にします。
  3. 「温度」のところが徐々に下がっていって、設定温度に向かっていきます。

細かい設定です
  • 「フォーマット」パネルの「出力形式」は「FITSファイル(*.fits)」を選択。
  • 「フォーマット」パネルの「モード」はRAW16
  • 「カメラコントロール」パネルの「露出時間」はとりあえずテストなのですぐに画面が更新されるように1000msとしましょうか。あとで実際の撮影時には「長秒モード」オプションをオンにして「60s」とかにして長時間露光に変更します。
  • 「カメラコントロール」パネルの「アナログゲイン」はとりあえずUranus-C ProのHCG(High Conversioin Gain)モードがオンになる220とかにしておきましょう。これで、ゲインが高い状態で、「読み出しノイズが小さく」「ダイナミックレンジが大きく取れる」ようになります。明るすぎる場合はアナログゲインは0にします。実際の撮影ではアナログゲインは220か0のほぼ2択のみに限られ、それ以外ではダイナミックレンジの観点から不利になってしまいます。
  • 「カメラコントロール」パネルの「オフセット」は小さな値を入れておきます。0だと暗い部分がうまく表現されずに階調がガタガタになる可能性があります。今回はとりあえず「40」とします
  • 「前処理」パネルの「ダーク補正」のところで「Hot and Cold Pixel Remove」を選んでおきます。これはあくまで簡易処理ですが、今回のように電視観望技術を利用した簡単な撮影では、別途ダーク補正をする手間を省いているので、これを選んでおくと仕上がりに有利になると思われます。ただし、有効かどうかはカメラに依ます。実際試したところ今回のUranus-C Proではそもそもカメラに搭載されているDPS (Dead Pixes Suppression)機能が優秀なせいか、このオプション有無でほとんど差は見られませんでした。
  • 「前処理」パネルの「背景減算」は電視観望の時にはよく使うのですが、撮影に際しては1枚1枚で効果が違ってしまっておかしくなるようなので、オフにしました。今回はカブリが少ない状態で撮影したのですが、カブリが多い場合は試してみてもいいかもしれません。

一旦ここで、どのような画像になるか確認します。「ヒストグラムストレッチ」パネルの右側アイコン群の左列上から2番目の雷マークの「オートストレッチ」ボタンを押します。すると、ヒストグラムの左の山のピークを、3本ある黄色の点線の左と真ん中の2本の線で挟むような形になり、画面にオリオン大星雲がバッと明るく出てくると思います。ただし、このオートストレッチ機能は有料版のみ使うことができます。無料版の場合は、マニュアルで黄色の2本の点線を動かして、山のピークを挟むようにしてください。

もしこの時点でオリオン大星雲の位置がおかしい場合は、ガイドを一旦中断して位置調整をしましょう。
  1. PHD2のメイン画面の左下の「STOP」アイコンを押してください。
  2. その後に、SynScan ProやSharpCapの望遠鏡制御の矢印ボタンで位置合わせをします。
  3. PHD2の「露出開始ボタン」「ガイド星選択ボタン」「ガイド開始ボタン」を順に押して、ガイドを再開します。
このように、ガイドを一旦中止してから位置合わせをしないと、ガイドが元の位置に戻そうとしてしまうので、位置を変えることができないことに注意です。

ガイドとディザーの設定をします。
  1. SharpCapメニューの「ファイル」から設定を選び、「ガイディング」タブを開きます。
  2. 「ガイディングアプリケーション」をPHD2に選びます。ホスト名やポートは特に変更したりしてなければデフォルトのままでいいでしょう。
  3. 最大ステップは大きくしすぎると、画面が大きくずれてしまうので、ここでは最小の2としてありますが、もし縞ノイズが目立つようなら増やしてください。また、ライブスタックするたびに星がずれて伸びて見える場合は、個々の値が大きすぎて揺れが収束しきれない場合です。その場合はこの値を小さくしてください。この揺れは次の最小整定時間とも関係があります。
  4. 「最小整定時間」はSA-GTiが多少暴れることがあるので、少し長めに取っておくといいでしょう。ここでは30秒としました。
  5. 最後に下の「OK」を押します。
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ライブスタックで撮影開始

いよいよ撮影のための最終設定です。電視観望の技術を利用すると言うことで、今回の撮影はSharpCapのライブスタックを使います。

1. 「カメラコントロール」パネルの「露出時間」の「長秒モード」オプションをオンにして、露出時間を「60s(秒)」くらいにします。
2. アナログゲインは最初220で試しましたが、明るすぎたので、のちに0としました。CP+で見せる最終画像に至るまでにフィルターの種類や、いくつかの設定パラメータについては何種類か試していて、これまでの説明から変わったところもあります。パラメータの変更については、次回以降の記事で詳しく解説します。
3. LiveStackを開始します。SharpCapのメニューの下のアイコン群の「ライブスタック」と書いてあるボタンを押します。
4. 下のライブスタック画面の「Guiding」タブを選び、「Setting」の中のオプションを全部オンにします。「Dither every」のところは、枚数区切りでディザーをかけたいので「Frames」します。枚数は数分から10分おきくらいで十分なので、今回は「6」としました。「Only stack...」をオンにしておくと、雲などが出てPHD2が星を見失った時はライブスタックで画像を重ねることをしなくなるので、不慮の天候悪化時の出来上がり画像の劣化を防ぐことができます。
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5. 下のライブスタック画面の「Controls」の「Stacking」で「Sigma Clipping」を選んでおくと、人工衛星の軌跡などが目立たなくなります。
6. 同じ「Controls」の「Raw Frames」で「SAVE all」を選んでおくと、LiveStackが途中で失敗した時に、後から救い出せるかもしれません。ただし、ディスク容量をかなり消費することと、さらにディザーの際の短い露出時間のファイルも全て残されるので、もしこれらのRAWファイルを使う際は、ディーザーの際の余分なファイルは後から手で削除する必要があります。
7. 撮影終了時間が決まっているなら、「Save and Reset every...」をオンにしておくといいでしょう。例えば「60」minutes total exposureとしておくと、60分経ったときに、素のままのRAWファイルと画面で見えているままの画像をファイルとして自動的に保存してくれます。ただし、その時点でライブスタックがクリアされてしまうので、できるだけ長い時間撮りたい場合はオフにしておいた方がいいでしょう。

あと撮影ファイルの出力場所を設定しておきましょう。
  1. SharpCapメニューの「ファイル」から設定画面を開きます。
  2. 「ファイル名」タブを開いて、「フォルダー」のところに保存したい場所を指定します。 
  3. 下の「OK」を押します。

これで全部の準備が完了でしょうか。長かったですが、ここまでうまくできていますでしょうか?さあ、撮影開始です。
  1. 下のライブスタック設定画面の、左側の「Actions」の「Clear」ボタンを押してください。画面が一旦クリアされ、これまで溜まっていた画像が一新され、新しくライブスタックが始まり、撮影が開始されます。
  2. 露出時間で設定した「60秒」待つと、画面に撮影した画像が出てきます。
  3. ここで、ライブスタック画面の「Histogram」タブを開き、右の上の雷マークアイコンを押し、オートストレッチします。その際はSharpCapの右パネルの「ヒストグラムストレッチ」はぐるっと回転する矢印の「リセット」アイコンを押して、ストレッチがない状態にすると見えやすくなるでしょう。もしくは、新たに右パネル「ヒストグラムストレッチ」の方の雷マークを押すと、さらに炙り出した画像が出てきます。二つのストレッチの関係ですが、ライブスタックのヒストグラム画像であぶり出した際の状態が、右側パネルのヒストグラムに受け渡されます。右のヒストグラムでは、さらに重ねてあるり出しをすることができます。撮影画面には両方のヒストグラムのあぶり出しが重ね掛けされた結果が表示されます。
  4. 撮影中に、上で指定した保存フォルダーの中身をエクスプローラーで確認してみましょう。フォルダの中の「RAWFILES」フォルダを確認して、60秒ごとにfitsファイルができていくか確認してみてください。
  5. (RAWファイル以外の) ライブスタックの結果画像の保存は、ライブスタック終了時に自動的にされますが、任意の時間にあらわに保存したい場合は、ライブスタック画面の左の「Action」から「SAVE」を押します。いくつか選べるのですが、「Save as 16 Bit Stack」と「Save with Adjustments」と「Save exactlly as seen」の3つをそれぞれ保存しておくのがいいでしょう。「Save as 16 Bit Stack」はRAWフォーマットでfitsファイル形式で保村されます。これが最も情報を持っていますが、ストレッチされていないので最初は扱いにくいと思います。「Save with Adjustments」はライブスタックのヒストグラムでストレッチされた分までがpngフォーマット(8bit)で、「Save exactlly as seen」はさらに右パネルのヒストグラムでストレッチされた分までの画像がpngフォーマット(8bit)保存されます。
保存されたRAWファイルや、スタックされたfitsファイルを見るには、ASIStudioの中にあるASIFitsViewが便利です。ASIStudioはWindowsだけではなく、Mac版やLinux版もあるので、ある意味貴重なアプリです。ここからダウンロードできます。


保存されたfitsファイルはストレッチされていないので、通常開いただけでは真っ暗にしか見えません。ASIFitsViewは自動でオートストレッチもしてくれるので、オリオン大星雲があぶり出された状態で見えるはずです。下にあるアイコン群の中の、「ヒストグラム」マークをクリックして、「リセット」ボタンを押すと、ストレッチされる前の真っ暗な画像を確認することもできます。また、ストレッチ後のファイルを保存することもできます。

撮影がうまくいくと、SharpCapではこんな画面になっているはずです。
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今回はここまでとして、ここからの画像処理についてはCP+当日に実演として公開することにしましょう。

CP+まではまだ少し時間がありますので、撮影方法に関してもう1回か2回ブログ更新する予定です。今回までは主に初心者を対象に、かなり基礎から説明しましたが、次回からは少し突っ込んだ記事になります。









富山の街中で観望会があり、できることなら天の川を見せたくて、広角の電視観望で見せることができないか、前日に自宅で練習してみました。


天の川のための広角電視観望

富山県主催のスターウォッチングがあるのですが、今回広角電視観望を使って天の川をお客さんに見せることができないか考えてみました。前日の夜に自宅で練習してみました。

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十分な広角なので、PCの画面を見ながらの手動での導入です。

試した機材のセットアップを詳しく書いておきます。
  • 望遠鏡代わりに1970年台の古いNIKKORレンズの35mm、F1.4、これを2.0に絞って使用しました。F1.4だと明るい星にハロが出てしまうので、1段だけ絞っています。これと、後述の光害防止フィルターでハロはほぼ抑えることができました。
  • カメラは広角狙いでASI294MCです。気軽に操作したいので冷却とかは無しです。ホットピクセルについてはSharpCapの「ダーク補正」の「Hot Pixel Removal Only」を選び、簡易補正で済ませます。
  • フィルターはQBP IIIを使用しました。天の川なので色再現はあまり意味がないですが、それでも色バランスが多少難しくなるQBP IIIで、天の川っぽい色にすることは十分に可能なようです。
  • 三脚は普通のカメラ三脚に自由雲台です。広角なので完全マニュアル導入。自動追尾も無しです。

結果としては下の画像のように天の川を十分に見ることができました。6.4秒露光で、ライブスタックで17枚加算。総露光は2分弱の109秒。この程度で天の川の形まではっきりとわかります。

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小さいですが、M8、M20、M17、M16などの星雲もハッキリと見えています。星雲でなく、普通の雲の流れも見えているので、多少雲があってもなんとかなりそうです。

ポイントは、これくらいの広角でもSharpCapのライブスタックが余裕で機能し、時間を追うごとに天の川がはっきりくっきり出てくるところです。ただし、それらしく見せるのは少しコツが必要そうです。メモ程度ですが書いておきます。
  • カラーバランスはオートだと少し赤が強過ぎたり、青が弱すぎたりします。ライブスタック時の右側のカラーバーで微調整するといいでしょう。
  • 明るさもかなり微調整が必要かと思います。特にオートストレッチの効きをよくするために、β版のSharpCap、バージョン4.1.10931を使い、「背景減算」を一番下の「低周波」か、一つ上の「非線形勾配除去」を使います。これで画面がフラット化されます。その上でライブスタック上でオートストレッチを使うとより淡い光量の差をあぶり出すことができます。それでもさらに微調整が必要で、少しだけ左2本の線の間隔を広げて、最後右パネルのヒストグラムで見た目でいいくらいに仕上げます。

上の通り、街の中心からは少し離れている自宅では天の川を余裕で出すことが出来ました。ちなみに、自宅がある場所では年数回透明度のすごくいい日に天の川が薄っすら見えることがあるくらいです。でもこの日はカスリもしないくらい、目では天の川は全く見えることはありませんでした。

ついでにもう一枚、屋根の横の北アメリカ星雲です。35mmの広角ならではで、自宅と星雲が同時に見え、リアルタイム観望感が味わえます、こういったのも電視観望の楽しみ方の一つかと思います。

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まとめ

広角電視観望で天の川を見ることを試してみました。画面にはっきり出すのは少しコツが必要そうですが、十分に見ることができるくらいにはなります。機材や設定値は一例ですが、まだいろんなパラメータを試すことができそうです。

さて自宅ではうまく出ましたが、これが市の中心街にかなり近い環水公園でどこまで見えるのか?それとも全く見えないのか?結果が楽しみです。

5月27、28日の土日に福井市で行われた、日本天文教育普及研究会中部支部会に出席してきました。今回は招待公演で、電視観望の話をしてほしいという依頼です。テーマは「天文教育普及 with COVID-19へ新展開~感染症禍から"新しい日常"への"回帰"~」ということで、コロナ禍の3年間を振り返り今後の道を模索していくとのことです。

もともと去年の3月にこの研究会のメンバーの一人に誘われて、関東支部大会というのでオンラインでトークをしたのがきっかけですが、



これがその後、島根での公開天文台協会の全国大会でのトークにつながり、



今回も直接つながりではないですが、中部支部からのオファーにつながったのかと思っています。上記二つと重なるメンバーも一部いるのかもしれませんが、電視観望を知ってもらうせっかくの機会なので、気合を入れて臨みます。


初日

土曜の朝、車で富山から福井に移動します。朝はかなり早く起きたので、午前7時過ぎには出発。9時過ぎには福井に到着しました。受付開始が12時半からなのでまだかなり時間があります。福井北インターから福井駅までの途中にコメダ珈琲があったので、そこに居着いてトークスライドの最終調整です。今回のトークは60分+質疑10分ということで、合計70分ももらっていたので、スライドも長丁場になります。

主題は電視観望なのですが、やはり研究会の名前にも入っている「教育」と「普及」について述べる必要があります。そのため、今回は観望「会」をかなり意識した内容にしました。観望会で電視観望をどう利用すればいいか、私がこれまで経験してきたことを含めて、公共の大型望遠鏡などで使う場合の提案などです。スライドは60枚程度になりました。1枚1分くらいなので、適度な量かと思います。

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今シーズン初のコメダかき氷。
富山だと6月中旬からなのに、福井ではもう食べられます。

12時前くらいになりコメダを出て、今日泊まることになっている駅前のホテルに向かいます。ホテルの駐車場がチェックイン前でも追加料金を払えば利用できるとのことです。しかも周りの駐車場よりも安かったのと、一旦車を入れて仕舞えばあとは次の日まで車の心配をしなくていいので、そのまま車庫に入れてしまうことにしました。チェックインの時間にはまだ早いので、そのまま駅前の会場に向かいます。

ホテルを出てすぐに、会場となる建物はわかりました。ハピリンという大きなビルの3階と5階が今回の会場で、外から見てもドームの形がすぐにわかります。「恐竜広場」では恐竜さんが出向かえてくれました。

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そのまま歩いていくと、ハピリンの前に大きなクラフトビールフェア会場が!流石に発表前に酔っ払う前にはいかないので、スルーします。

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ビルの中に入り、3階まで行き、受付を済ませます。今日の会場は下の写真のような感じです。かなり広いですが、これは来年同じ福井のこの場所で行われる大規模な「年会」のために、会場の使い勝手を調べる目的もあるとのことです。ちなみに今回の参加者は30人程度。支部会なので毎回これくらいの人数だそうです。

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研究会は13時からの開始で、初めの挨拶や説明などがあり、その後は早速各人のトークが始まります。この日は4本のトークと、招待講演があります。最初の愛知の公立高校のコロナ禍の3年間の天文活動の話が興味深かったです。富山の公立高校では現在では天文部などは全滅と聞いています。これはコロナと関係なく、近年は夜の活動がしにくくなってきたことが影響していると聞いています。たとえ天文部があったとしても、このコロナ禍を乗り越えるのは相当大変だったと思います。今回話をされた顧問の先生がかなり星が好きなことはよくわかりました。部活として成り立っているのはこの先生の力が大きいのかと思います。でも来年定年で退官されるとのことで、引き継ぎの先生は女性の方だそうです。その先生も星が好きなのか聞いてみたら、旦那様が星好きとのこと。だから大丈夫なのではとおっしゃっていました。今後も是非ともうまく活動を盛り上げていってもらえればと思います。

他にも、電視観望と眼視をどう併用していく話とか、観望会を企画して立ち上げた話や、出張観望会の話など、既に電視観望を活用されているたり、これから活用していきたいとのことで、電視観望がなかり浸透している様子が伺えました。


電視観望講演

さて私のトークですが、最初に電視観望を実際に見たことがあるかどうか聞いてみたところ、ちょうど半々か、見たことがない人が少し多いかくらいでした。このトークを聞きたくて参加してくれた方もいるとのことで、気合が入ります。

詳しい内容はここでは書きませんが、ちょっと詰め込みすぎたようで、これまでも何度か私の話を聞いたことがある方からは「今回はこれまでで一番盛り込んでますよね!」と言われてしまいました。このトークのセッションの後に行われた自己紹介の時の時に、あと何人かの方にも直接「うまく伝わりましたか?」と聞いてみたのですが、いずれも「よくわかって楽しかった」とのことでした。「とても参考になった」とも聞きましたし、中には「感動した」と言ってくれた方や、「これだけの人数だけ聞くにはでは勿体無い」という意見もあったので、まあうまくいったのかと思います。

皆さんそれぞれが天文の普及を本気で考えている人たちで、そんな人たちの集まりです。この講演がきっかけで電視観望が天文普及に少しでも貢献してくれれば、私としてもとても嬉しいです。


見学会

講演終了後はセーレンプラネット施設の見学です。展示施設と、プラネタリウム上映、その裏方を見ることができました。

ここの展示施設ですが、普通の科学館とかの展示とはちょっと違う気がします。かなり贅沢な配置をしていて、福井と天文というような雰囲気づくりを重点に置いているようです。例えば下の写真は、天井に見えるリングの最中心がこのドームにあたり、そこから福井エリアと広がって行って、最後は宇宙の果てまで行くとかいう感じです。

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面白いのは、天文に関する質問にかなり真面目に答えていて、たとえ字を書き始めたような小さな子の質問にも丁寧に答えているところです。

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これらは一定期間の展示の後、別途分野別に分けられて冊子になってまとまっていました。特に子供の素朴な疑問とか、答えるだけでもかなり大変なのかと思います。スタッフの皆さんの真剣さが伝わります。

あと、展示で面白かったのが地球が太陽からどれだけ離れていると青い地球になるのかという装置です。太陽に近すぎたり、遠すぎたりすると、写真にある青い地球が変化する、結構凝った装置です。ちなみに、地球の移動のスケールはリニアでなくlogでした。

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ドームの方はというと、一般の解説の後に、皆さん残って裏方を見ることができました。ここで写真を公開することはできませんが、コンソールだとか、解説の大変なところなどを聞くことができました。このドームは8Kのプロジェクターを8台使用しているとのことなのですが、その位置合わせの話だとか、プロジェクターを動作させるための8台のサーバーを見ることもできました。一番面白かったのは、グリッドと言って格子状の模様をドーム全体に映して、それぞれのプロジェクターの担当範囲、ずれの具合などを見るモードでした。こんなのを見たのは初めてで、かなり興味深かったです。

プラネタリウムとして考えると、駅前にあるのは立地的にはかなりの好条件かと思います。家族で電車で来て、そのまま歩いてすぐの距離です。恐竜が有名な福井ですが、この福井駅前の「セーレンプラネット」のドームシアターと、坂井市にあるもう一つのプラネタリウム「エンゼルランドふくい」と合わせて、天文という施設でも充実しているのかと思います。特に今回見たドームシアターはプロジェクター型のプラネタリウムとしては最高クラスの解像度とコントラストを誇るそうで、先日来館したKAGAYA氏から「一番の上映クオリティーの『銀河鉄道の夜』」との太鼓判をいただいたそうです。

また、2日目の講演でも解説があったのですが、乳幼児向けのプラネタリウム「ベビープラネタリウム」も随時開催しているとのことで、赤ちゃんが泣いても騒いでも大丈夫とのこと。お子さん連れでプラネタリウムデビューというのもいかがでしょうか?


情報交換会?飲み会?

18時半頃でしょうか、この日のオフィシャルなプログラムは全て終わりとなりました。その後、各自ホテルのチェックインなどを済ませました。

重要なのは、その後の「情報交換会」という名の飲み会です。19時半から駅前の「弥吉」という店で始まりました。17人もの参加者があり、相当盛り上がりました。皆さんと話していてわかったのは、この天文教育普及研究会のメンバーはもれなく星好きだということです。義務でやっているというよりは、星好きが高じて、どうやったら天文を広めることができるかということを考えている人達の集まりのようです。なので何を話しても盛り上がります。

ただ、天体写真の沼にどっぷり使っているとかのハイアマチュア層とはやはり少し違うみたいで、人数、回数共に一般の方と真正面に向き合っているプロの方が多いという印象です。学校の先生とかもメンバー員なので、島根での公開天文台協会であった方達よりももう少し広い層だと思いますが、一般の多数の人と天文で関わるという意味では、同じような印象を受けました。私が普段交流している層とはやはり違うので、どの方の話もとても参考になりました。

電視観望についてもいろいろ聞かれました。やっていてわからないことがある方や、これから始めたいのでぜひ参考したいという方などです。今回は天気があまり良くなかったこともあり、(一応機器は飲み会の席にも持ってきていましたが)実演というわけにはいかなかったので「もしやっていてわからないことがあれば、遠慮せずに連絡をください」と伝えました。いつものようにZoomなどで繋いでリモートで画面を見ながら解決できればと思います。

22時頃でしょうか、盛り上がりもそのままに2次会になだれ込みます。この時点でも9人が残っていて、この人数を受け入れてくれるところがあまりなかったのですが、今回は会場のスタッフの方が2次会メンバーで地元の店もよく知っていて、人数が多くて何度も断れれながらも、4-5軒の店をあたってくれました。見つかった2次会会場は駅近くのバーで、ここでも天文普及や電視観望がどう広がっていくかなど、かなり熱い議論が交わされました。0時を過ぎて日も変わった頃にやっと店を出て解散です。

よく考えたら研究会も対面で、しかも懇親会もさらには2次会まで、制限なしでできたのは本当に久しぶりのことです。オンラインはオンラインで、遠方の来れない方が参加できるとかのいいところもあるのですが、リアル対面はこれまたこれで、かなり充実します。

この日はとても楽しく過ごすことができました。ホテルに着いて、大浴場が午前2時まで入ることができるというので、お風呂でさっぱりしてから、酔いも回ってか疲れ果てていて、そのまますぐに寝てしまいました。


2日目

朝からホテルのバイキングメニューをしっかり食べ、チェックアウトを済ませて9時に会場に向かいました。昨日だけ参加の方もいたので、この日は20人程度でした。そのため会場は昨日の自己紹介などでも使った少し狭い多目的ホールでした。

この日も4つのトークがあり、特に先にも書いたベビープラネタリウムの話はアメリカ時代に子供がまだ小さくてベビーカー(向こうではストローラーと言ってましたが)に乗せていた頃のことを思い出しました。ここセーレンプラネットには普段はベビーカー置き場がないので、ベビープラネタリウムの日はドームの脇をベビーカー置き場にしたとのことです。アメリカ時代ベビーカーの置き場で困ったことは一度もなく、日本に帰国してからいろいろ不満だったのを今更ながらに思い出しました。日本はこういったイベントは得意なのかと思いますが、普段から赤ちゃんにも優しく若い両親が困ることのない社会になっていくといいなあと、もう十何年も前に思っていたことを思い返していました。

他にも、天文関連の教職課程の話や、光街の市民運動の話、このセイレーン施設の話など、この日も興味深い話をたくさん聞くことができました。その後は来年の年会の話など、事務的な話があり、12時頃に無事に解散となりました。

この後、ちょうどすぐ近くの場所で某有名歌手のコンサートがあり、うちの子が朝から富山から移動して参加しています。コンサートが終わるころに迎えにいくことにしていて、しばらく時間を潰しながらこのブログを書いています。

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2日連続コメダ。時間潰しにブログを書いてます。

今回は二日間に渡り、とても楽しく過ごすことができました。研究会を運営してくださったスタッフの方々、本当にありがとうございました。また今回招待公演に呼んでいただき、とても感謝しています。また今後ともよろしくお願いいたします。

日曜の夜、以前自宅にご家族で来ていただいたEさんとZooでリモート接続して、電視観望のヘルプをしました。


電視観望がうまくいかない!

昨年秋の小海の「星と自然のフェスタ」が縁で自宅に遊びに来てくれた富山のEさん一家、

 

その時おっしゃっていたように、お父さんだけ三重県に単身赴任されたようです。三重といえばアイベル、当然Eさんも通うことになり、FMA180を注文されたと聞いていました。でも結局FMA180は入荷されなくて、その代わりにFMA180 Proが手元に届いたそうです。Proの方はかなり良くなったと噂で聞いているので、少し待つことになったかと思いますが、ラッキーだったのかもしれません。

そんな折にメールがあり「電視観望を試してみたがうまくいかない」とのことです。画像が添付されてきましたが、オリオン大星雲が思ったより暗くしか出ていません。ヒストグラムでストレッチしてしまうと、画面が真っ白になってしまうとか、星雲の色が出ないとか、色々トラブっているようです。フィルターはと言うとCBPも入っているそうです。よっぽど都会の明るいところだと厳しいかもしれませんが、三重なら普通の住宅街なら特に問題なく見えるはずです。試した時は満月に近い月があったので、そのせいかもしれません。

「Zoomで一度接続しながら一緒に見てみましょうか?」

と提案すると、日曜の夜なら都合がつくと言うことで、4月9日の20時頃から接続して試してみることにしました。


ステーションモード接続の利点

EさんはPCにも詳しそうで、既にSharpCapの画面はすぐに共有できました。スマホのSynScan ProでAZ-GTiにも既に接続完了しているとのこと。でも自動導入でターゲットがうまく入らないので、PCからAZ-GTiに接続してプレートソルブを試してみることに。ここでEさんが

「今からPCをAZ-GTiに接続するので、一旦Zoomが切れます。」

と言うのです。確かにPCから直でAZ-GTiにつなぐとインターネットと接続が切れるので、Zoomとも切れてしまいます。そこで

AZ-GTiを自宅のWi-Fiに繋げませんか?

と聞くと、

「え?そんなことできるのですか?」

とのことなので、AZ-GTiをアクセスポイントモード接続ではなく、ステーションモードにする方法を伝えます。スマホからは既に接続できているので、スマホのSynScan Proで操作です。
  • 「設定」->「SynScan Wi-Fi」で、「ステーションを変更する」をオンにして、
  • 「ステーションモード」を有効にして
  • 自宅Wi-FiのSSIDとパスワードを入力していきます。
この時、必ず2.4Hzのネットワークを選びます。AZ-GTiは5GHzのWi-Fiにはそもそも対応していません。

問題は、Eさんが引っ越したのはアパートかマンションかで、住民共有のWi-Fiでインターネットに接続しているらしいのです。集合住宅の共有LANを通してSynScan ProからAZ-GTiを認識できるかとかは試したことがなかったので、私も良い経験になりました。結果は、普通にSSIDを指定すれば集合住宅の共有LANでもAZ-GTiの認識OKというもので、先のスマホからのSynScan Proでのネットワーク設定画面で最後に
  • 「適用」を押して、
  • その後PCのSynScan Proから上部の「接続する」で「デバイスを探す」
で、見事にIPが表示されて、うまくPCから接続することができました。矢印ボタンを押すと、きちんとAZ-GTiが反応しています。これで、PCからAZ-GTiを操作しつつ、インターネットにも接続できます。

でもその後、星がカックンカックンと変な動きをしだしました。最初ちょっと戸惑いましたがすぐに原因はわかって、「あー、これはスマホの接続と喧嘩してますね。スマホのSynScanの接続を切ってください。」といって、スマホからの接続を切ってもらうと、変な星の動きは無くなりました。


ASTAPがお薦め

PCからのプレートソルブですが、EさんはASPS(All Sky Plate Solver)をインストールされてました。残念ながら今回はASPSだと余りうまくいきませんでした。今はASTAPの方がいいので、ASTAPをお薦めしておきました。あと、焦点距離正しく入力するのがコツであることも説明しておきました。

プレートソルブは諦めましたが、シリウスで自動導入するとなんとか画面に入ってきたので、まあ大丈夫でしょう。もたもたしているとオリオン座が西の空に沈んでしまうので、すぐにM42を導入します。


ライブスタックで星雲の色が出ない?!

M42がうまく導入され画面に見えてきます。
  • モードがRGB24になっていたので、RAW16に変えてもらいました。
  • 露光時間を8秒ほどにしてもらいます。
それ以外は設定画面を見る限り特に変なところはなく、リアルタイムでM42もそこそこ見えているのでOKそうです。

そのままライブスタックをしてもらいます。と、ここで問題発覚です。色が全くついていなくて、まるでモノクロ映像です。最初Debayerされてないかと思いましたが、ライブスタック前までは色付きで見えていたはずです。「ははぁー」とピンときました。なんと、ライブスタック画面のヒストグラムの右端のカラーバーの横の、彩度を調整する4本目のバーのスライダーが最下段まで落ちているのです。これを真ん中より上に上げることで、見事に色がつきました。あとはライブスタックで待っているだけでどんどんノイズが落ちてきます。


あとはどんどん電視観望

Eさん、自分でやった時モノクロだったのでかなり心配していて、今回色がきちんと出たことでかなり感動したようで「これはすごい、これはおもしろい!」と盛んに言っていました。その後、自分で試して全く見えなかった
  • 馬頭星雲と燃える木
に移り、これも色付きではっきり見えて、やはり盛んに「これはおもしろい!」と繰り返してました。

ベランダ観望のため、クラゲ星雲とモンキー星雲は隣の屋根か何かにぎりぎりで隠れてしまい見えませんでしたが、その後も
  • ばら星雲
  • かもめ星雲
  • クリスマスツリー星団
など、短時間のうちにいくつもの天体を巡りました。

21時半頃には終わったので、わずか1時間半くらいでしたが、一通りの操作はできたので、今後は自分で十分に楽しめるかと思います。今回のポイントは
  • ステーションモードにするとPCから操作でき、かつインターネットも接続したままにでき、自宅Wi-Fiの届く範囲でリモート電視観望が実現できる。
  • ステーションモードは共用Wi-Fiでも普通にできる。
  • プレートソルブのお薦めはASTAP。
  • 彩度調整バーの存在は分かりにくい。ライブスタック画面の3色のRGBバーの横の4本目で、これが下に下がっていると色が出ない。
といったところでしょうか。初心者がつまづくポイントは、私にとっても参考になります。

「またわからなかったらいつでも聞いてください。」

と結んで、この日は終了となりました。前回、自宅に来ていただいた時、奥様がとても楽しく過ごせたみたいで、また家族で伺いたいとのことです。ぜひまた何か企画したいと思います。

3月末、茨城県石岡市にある「カフェぽうざ」に行ってきました。おそらく日本では唯一の、食事やコーヒーを楽しみながら、電視観望を実演してくれるカフェです。



事の発端は、半年ほど前に天リフ超会議の電視スペシャルで基調講演で話した際に、YouTube 経由でとても丁寧なコメントを頂いたことです。天リフ編集長がこんなコメントがありましたと、わざわざ知らせてくれました。内容はというと、細かいことはYouTubeのコメント欄を直接読んで頂いた方がいいと思いますが、大雑把には

....この夏からカフェ店内で電子観望を楽しんでもらう「星空カフェ」を開くまでになりました。食事や飲み物メニューとならんで写真付きの星空メニューをテーブル上に用意し、星を注文してもらうサービスです。
....様々なノウハウを公開してくださったSamさんをはじめ天リフチャンネルのオーナーさんや多くの方々のおかげと感謝しています。

とのことです。このコメントには返信することもできたので、私の方も「いつか立ち寄らせて下さい」と返事をさせて頂きました。今回関東の方に行く用事があり、やっとその約束が実現したというわけです。

カフェは住宅街の中にあり、青い壁と煙突が目印になっています。駅から離れているために車で来ることになるかと思いますが、店の前が駐車スペースになっています。

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カフェは現在は週1回の営業で、基本は日曜のランチから夕方くらいまでとのこと。電視観望の実演では夜の営業があり、今のところ2ヶ月に1回程度の頻度だそうです。お客さんは主に、地元の方と遠方から車で来る方が多く、星空実演の日は予約ですぐに埋まってしまうそうです。

玄関を入ります。
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中はとてもおしゃれな空間になっていて、暖炉もあります。
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反対側を見ると早速、目の前には望遠鏡が!
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「カフェぽうざ」のマスターですが、電視観望を始めたというので初心者の方と思っていたら、子供の頃から星が好きで、高校のころは天文部、銀塩で撮影もされていた大ベテランの方でした。震災で天文から遠ざかってしまったのですが、少し前にカフェを始められて、天文復帰された際にちょうどいいというので、カフェで電視観望を始めたとのことです。

復帰直後は浦島状態で、断念した時の天体写真撮影を念頭に再開したとのことですが、CMOSカメラが凄いことになっていて、天文の世界全体が大きく進化していてびっくりしたそうです。ASI385MCからはじめて、電視観望が面白いと本格的にASI294MC Proを購入し、今はこちらをε160に取りつけてメインに使っているそうです。

カフェのオペレーションをしながらの電視観望操作なので、オートフォーカスのEAFは必須。星雲と銀河でフィルターを切り分けるためにもホイールでの自動切り替えも必須。カフェの中にいながら外に置いた機器をいじるので、これらの機器を使い全てリモート操作だそうです。一人で簡単に操作するためASIAirを使っていて、安定動作させるために接続はカフェの中から庭先まであえて有線LANにするなど、かなり独自に工夫されています。お客さんが居ながらの操作なので、実際には相当大変かと思います。最初の頃はトラブル続きで、やっとこの形で安定になってきたそうです。

晴れていればその日、その場で見えている天体を、上の写真にも少し写っている大きなスクリーンに映し出すそうです。晴れていればいいのですが、天気が悪い時に備えてこんな星空メニューを作ってあります。
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電視観望で見えない時はこのメニューに載っている天体を、料理を注文するかのように選んでもらい、スクリーンに映し出すそうなのです。その映し出す写真は事前に撮っておくことになるので、その準備が大変で今のところは2ヶ月に1度程度の開催にしているそうです。電視観望での星空実演は昨年夏からで、まだ1年に満たないくらい、一回りしたら写真のストックもできてメニュー作りも楽になるので、もう少し回数を増やせるかもとのことでした。

立ち寄ったのは平日で営業日ではなかったのですが、ランチで出しているというメニューをご馳走になりました。
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鶏肉は麹に漬け込んだものということで、柔らかくてとてもおいしかったです。

パスタはペペロンチーノで、ニンニクを焦がさないように作った本格的なもので、地ビールとよく合い絶品でした。
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マスターはコーヒーにもかなりこだわっているとのことです。この日出して頂いたのはエチオピア産の豆を使ったもの。カップも好みのものを選ばせてもらえました。
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奥様が焼いた手作りケーキと合わせて、とても美味しくいただけました。

食事が終わる頃には日も沈み、星空観望の時間になります。マスターも私も電視観望の準備です。
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私はすぐ隣でいつものFMA135とUranus-Cです。
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この日は少し雲があり、上弦を過ぎた月も出ていて明るかったので大したものは見えませんでしたが、それでも雲間からオリオン大星雲、バラ星雲、しし座の三つ子銀河など、いくつか見ることができました。
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実際の電視観望もよかったのですが、それよりもマスターと色々お話しできたことがとても楽しかったです。お互いの星歴や機材のこと、カフェで電視観望に行き着くまでの話、家族のこと、かなり話し込んでしまいました。

実はマスターが機材を準備している間、奥様ともかなりお話しさせて頂いたのですが、マスターはとても寡黙な人であまり感情を出さないタイプだったそうです。でも私の印象だととても気さくに話してくれるので「え?、今日はお会いした時からずっと話してくれてますよ」と言ったら、カフェで星の解説をし出したらとても饒舌に話すのでビックリしたと言うのです。しかも今日私がくると聞いてからここ何日かずっと嬉しそうで、もう社会人になっている娘さんたちにも喜んで話していたとのこと。わざわざ遠くから来てくれた訪問客へのお世辞なのかもしれませんが、私もとても嬉しくなりました。

雲が出てきて電視観望も終わりにしたあと、日本酒をご馳走になりました。石岡市の地酒とのことですが「渡舟」というお酒でとにかくフルーティー。物凄く上品なジュースのようで、アルコールにあまり強くない私ですが、全く抵抗なく飲むことができます。なんでも地元茨城の酒米を使っていて、天候などの影響を受けやすく昭和初期に一度絶てしまった品種を、研究所に残っていた種籾から復活させたということです。まるで「夏子の酒」の中で復活させた酒米と同じような話です。

このお酒を飲みながらもずっとマスターと話していたのですが、そもそも地元での星仲間もほとんどいないとのことで、星のことで話す相手がこれまであまりいなかったそうです。同じ趣味で話すのは、それはもう楽しくないはずはないですよね。星まつりもまだ参加したことがないというので、いつか星まつりで、奥様とも一緒にお会いできたらと約束しました。

夜もかなりふけてしまい、ありがたいことに石岡駅まで送っていただきました。新しい星仲間とのとても楽しかった時間、この趣味を続けていればこれからも必ず関わり続けることができるはずです。星まつりでの再開を近い、この日はお別れとなりました。

帰り際にマスター手作りのガラス板にエッチングしてLEDをはめ込んだという「ぽうざ」の看板が青く綺麗にかがやいていました。

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もし近場で電視観望に興味がある方は、ぜひとも「カフェぽうざ」を訪れてみてください。とても楽しい時間になるはずです。

その際は「開催日が限られてもいますので、あらかじめご予約して下さい」とのことです。

予約はこのページからできるようです。


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