昨晩は本当に久しぶりのごくごく普通の観望会で盛り上がりました。飛騨コスモスの月例の観望会です。
先月もペルセウス流星群で観望会はあったのですが、これは特別行事に相当します。天気もあいにくで、ほぼ解散してからやっと星が見え始めたくらいで、残っていた一般参加の方は1組のみ。今回は定例の観望会で、お客さんもたくさん来てくれて、普通に見えるものを見ます。天気も最初はそこまで良くはなかったですが、惑星とかはちょくちょく見え、最後は全面晴れ渡り、結局大盛り上がりでとても楽しい観望会となりました。調子に乗って書いてしまったので、また長い記事となってしまいました。もしよろしければ、昨晩の様子にお付き合いください。
夕方荷物を車一杯に積み込み、一人で出発。最近は子供は全然付いてくる気はないみたいです。なので機材は後部座席も助手席にもたくさん入ります。富山を出る時点ではそこまで晴れてなかったですが、それでも雲間から青空がまだ見えていました。なので機材の選定は微妙です。とりあえず惑星がメインになりそうなので、口径20cmで比較的軽量なC8、電視観望セット一式。あと迷ったのですが、子供用にSCOPETECHを最後に押し込みました。でもこれが大活躍。子供たちがくるような普通の観望会では、こういった自由に触れる望遠鏡は意外なほど好評です。
途中コンビニに寄り、夕食を買って運転しながらのおにぎりだけの簡易ディナー。天気も富山から出た時より悪くなっています。現場に着いたのは18時半頃でしょうか。国道から天文台へ行く脇道に入る時に、対向車線からちょうど車が来て同じ方向に行くようでした。先に行ってもらったのですが、ゆっくりと途中何ヶ所かの曲がり角を確かめながら進んでいるようでした。やはり観望会のお客さんで、年配の女性の方。今日初めてだそうです。
すでに木星が出ていたので「あれが木星ですよ」と伝えました。自分で双眼鏡を持ってきたらしくて見始めていましたが、なんと30年以上の昔の大きな双眼鏡で、倍率が25倍!メーカーも聞いたことないようなものなので、私が以前星まつりで手に入れた双眼鏡のような国内の小さな光学メーカーが作ったものの一つかと思います。
問題はその倍率で「わー、線が見える!」とか言っていたので、「え、木星の縞が見えるの?すごい!」と一瞬思ったのですが、双眼鏡をお借りしてみたら納得。手ぶれで木星が大きく揺れてしまうのが線になって見えてしまうのです。「さすがに25倍は手持ちでは難しいです。三脚がいりますよ」とか説明して、その間にSCOPETECHを用意して木星を見てもらうと「止まって見える!」と喜んでもらえました。
でもびっくりしたのはそこからで、衛星が見えるのはもちろん、木星の縞も余裕で見えるし、空を見上げて「木星の横の星は?」とか言うのですが、私にはまだ全然見えてません。もちろんそれは土星だったのですが、聞いたら視力2.0とのこと。そりゃよく見えるはずです。老眼だそうですが、ちょっと羨ましいくらいでした。
それからスタッフも、お客さんも続々と集まってきました。今回あまり確認できていませんが、お客さんだけで全部で7-8組くらいは来ていたと思います。ほとんど飛騨市や高山市の地元の人ばかりでした。多分私が富山からで一番遠いくらいです。スタッフも合わせたら20人くらいはいたと思います。
到着直後はまだ晴れ間が見えてたのですが、その後はすぐにずーっと雲がほぼ全面にいきわたって、ごく切れ間から明るい惑星が時折り見えるくらいです。でも雨が降るような雲でもなさそうだったので、機材の準備は進めることにしました。最初SCOPETECHで20mmのアイピースで小さな木星と土星を見てもらって、そのうち準備のできたC8で見てもらいました。まず比較で木星を見てもらうと、C8での明るさと、大きく細かく見えるその姿にみんな「わーっ!」と声をあげます。「衛星が3つ見えた!」「いや4つある!」「右に3つあるでしょ!」「2つしかないよ!」など、感想も様々です。さらに土星を入れるとその輪っかの美しさに皆さん簡単の声をあげます。一番最初に来た方の「あー、あの腰巻きがあるやつね」という独特の表現にはちょっとびっくりしましたが。
この日は気流が安定していたのでしょう。C8ではカッシーニの間隙もかなりはっきり見えていて、来ていた方達に「輪っかの中に黒いすきまがあるのわかりますか?」と聞くと、ほぼ全員がよく見えたようです。本当は惑星が揺れるのを見てもらって、大気の揺れのことを説明したかったのですが、その揺れが眼視ではわからないほど安定でした。
小1の女の子の食いつきがものすごかったです。木星も土星も、とにかくもう興味津々。一瞬天頂に夏の大三角が見えた時には、ずーっと説明してくれてました。わし座のアルタイルが出てこなくて、助け舟で「わ、わ、わ、、、、わし、わし、わし、、、」と言うと、「あ、わし座!」。「ア、ア、ア、、、、アル、アル、アル、」とヒントを出すと「あ、アルタイル!」とか反応がすごく可愛かったです。「星が大好きなんだよ!」とか言ってくれて、将来が楽しみな女の子です。
その後、所々晴れる場所も出てきて、上り始めたばかり火星を見てもらって「あー赤い!ぼやけてる!」と感想が。高度が低くて、グランドののフェンス越しなので仕方ないです。
たまたまれた晴れた天頂付近で、アルビレオを入れて見てもらったら「わーっ、綺麗!」「赤と青」「オレンジに見える」「あー、トパーズ色かぁ!」とか、皆さんそれぞれの色を楽しんでくれたみたいです。
途中、シートで寝っ転がって見ている人も。地面が暖かくて気持ちいんですよね。眠くなってしまいそうです。
お客さんの中に星にすごく興味がありそうな若いカップルの方がいました。入門用のSCOPETECHを覗いて土星とかもよく見えるのに驚いて「これ幾らくらいなのですか?」と聞かれました。特価でゴニョゴニョ千円」くらいですと答えます。「わー、それだったら欲しい!撮影とかもできますか?」となんか写す方に興味がありそうです。よくよく聞いてみると、カメラ好きで星の撮影もしたいとのこと。しかもフルサイズというので「え、機種は?」と聞いてみるとなんとEOS 6D。どうも星を写すことも考えて、あえて感度の良い6Dにしたみたいです。「レンズは?」と聞いてみるとTamronの45mm F1.8。星景なら十分です。しかもこの日も持ってきてるというので「じゃあ、撮影してみませんか?」ということで、まだ雲が多かったですが雲間の星を狙って急遽撮影開始。
これまでも星は撮ったことはあるようでしたが、そこまで本格的に撮っていたわけではないようです。最初「ISO100でも写ります」とか言って撮影してくれたのですが、さすがにF1.8でもISO100では恒星は写ることは写りますが、暗すぎます。「じゃあ、ISO1600で10秒とか20秒で撮影してみてください。」とか言うと「ずいぶん明るくするんですね」とのことです。さらに、温度が高すぎてかなり赤によっているので「温度を下げてください。夜空のイメージが欲しかったら3500度くらいまで下げてもいいですよ。」とアドバイスを。きちんとRAWで撮っているので後からどうとでもなりますが、他の一般の人にお見てもらえたらと思い、少し青目にしてもらいました。何枚か写してもらい、さらには南西方向に少し雲の切れ間があったので、そこを写してもらうと雲越しの天の川もバッチリ。
途中アンドロメダ方向を撮ってくれて、M31が写っていたので、これはいいと他の方にも見てもらうことに。わーっと人が集まってきました。もしかしたら、こうやって見てもらう楽しみも味わってもらえたかもしれません。
200mmくらいの明るいレンズも持ってるとのこと。星雲とか、銀河とか、惑星とかの対象によってレンズもしくは鏡筒が変わること、赤道儀もそのうち必要になるかも、星景写真だったら三脚だけでもしばらく大丈夫なこととか話して、わからなかったまた連絡して下さいと伝えておきました。
この日一番活躍したのはSCOPETECHでしょう。星を始めた年の原村の星まつりでSCOPETECHブースで手に入れた特価品ですが、意外なほどよく見えるのと、秀逸な二つ穴のファインダー、軽量、手に入れた値段から気軽に扱えることなどで、基本的に子供用に解放して自由に使ってもらっています。時には天頂プリズムに付いたアイピースを、まるで何かのレバーのようにレンズのところに親指を押し当てる子もいたりしますが、そんなことを気にするようではまだまだです。今回も、微動ハンドルがすっぽ抜けて「壊れたー」とか騒いでいましたが、それも経験です。
最初に夢中になったのは、なぜかスタッフのSさん(だったと思います。暗くて見えてなくてすみません)。これまで怖くて操作したことがなかったらしいので、今回は木星から挑戦です。最初なかなかうまくいかなかったのですが、少し離れて鏡筒がまず大まかに木星に向いているかどうか、縦と横から見ること。例えば今回の場合、横方向はいいけど、縦方向が大きくずれていることを理解してもらいました。その後、二つ穴ファインダー、見にくかったらファインダーを使うこと。ファインダーは片目で見てもいいけど、両目で見ると入れやすいこととか説明して、しばらく触ってもらいました。最後、とうとう自分で入れることができたようで、すごく喜んでくれ、もう大はしゃぎでした。ここら辺は子供も大人も変わりありませんね。自分で初めて導入して見た天体は、言うまでもなく格別でしょう。
次に夢中になったのは小5の男の子。お母さんは少し心配そうにしてましたが、「もう遠慮なく、壊す気で触ってもらって構いません。」と伝え、思う存分いじってもらいました。子供は目がいいので、2つ穴ファインダーの方が楽みたいです。粗動と微動の違いを伝え、しばらく触ってもらって土星を入れることができ、もう大喜びでした。最初のうちこそ2つ穴ファインダーでさえもかなり苦労してましたが、すぐに慣れ、さらには木星も入れることができてました。面白かったのは「火星入れていいですか?」とわざわざ離れたところにいる私に聞きにくるのです。「もちろんです。聞きにくる必要なんてないですよ、自由にやってください。」と伝えると、あとは色々自分で試していたみたいです。途中、よほど嬉しかったのか、成果を見てもらいたかったのか、「火星うまく入れることができたので見にきてください」とお誘いが。見てみると、えらい大きく見えています。ピントがずれていたのですが、今の火星はずれていても模様のようなものが見えるので、大きい方がよく見えるように思ってしまったのでしょう。
と、これを見て突然小さい頃の記憶が蘇ってきました。多分小学校低学年のころ、父親が買ってきてくれた望遠鏡、KENKOの屈折だったと思うのですが、それで木星を見たときのことです。「縞が見えた」と喜んでいたのですが、今思うと多分収差を縞と勘違いしたのです。その時の像が突然頭に蘇ってきて、この時も大きな像でピントがずれていて、たぶん今回見た火星のようにそれを正しい木星だと思ってしまったのです。「あー、やっぱり同じことするんだ」と、多分40年くらいしてやっと当時の謎、私の中の数少ない少年期の星の記憶が一つ蘇ったのでした。
SCOPETECHでピントを合わせてあげると「こんな小さいんだ」とびっくりしていたようでした。それではと、上ってきた火星をC8で見てもらうと模様も見えるくらいはっきりとしていました。
もう終盤に近づいたころ、何人かの女性グループでM31アンドロメダ銀河探索が始まりました。前回のYさんの命日の時もそうでしたが、星座ビノを使って見るのです。「あ、見えた!」とか「どうしても見えん!」とか、もうわーわーキャーキャー大騒ぎです。
そのうち場所がわかってくると「肉眼でも見える!」とか言い出し、7倍の双眼鏡で見てもらうと「わーはっきりわかる!」とか、本当に楽しそうです。最後は皆さん、アンドロメダ銀河の位置はバッチリわかっったようで、大満足みたいでした。
途中、「アンドロメダ銀河を望遠鏡で見たい」と言うリクエストがあったのですが、多分大きく見え過ぎるので「双眼鏡くらいが楽しいですよ」と伝えておきました。これは後にM42プレアデス星団(すばる)をSCOPETECHで入れた時に理解してくれたみたいです。実際にすでにアイピースにすばるは入っているのに、どこだか分からないようなのです。対象が大きいので少し周りからみないとわからないんですね。「アンドロメダ銀河も同じ理由です。スバルはまだ明るいけど、銀河は暗いので中心だけがぼーっとして見えるくらいです。」とか言ったら妙に納得してくれてました。でも実際見てもらったほうがよかったのかもしれません。ただ、経緯台でマニュアル導入なので、ちょっと敷居が高いんですよね。でもいい訓練かも。次回挑戦してもらいましょう。
あ、今回電視観望は(珍しく)使いませんでした。正確にいうと、ほんの一瞬だけ6DとSharpCapではくちょう座辺りを見たのですが、網状星雲が1ー2ショット映って、すぐに雲に隠れたりとかで、今回は出番無しでした。
22時に差し掛かるくらいでしょうか、お客さんもぽちぽち帰り始め、だんだん人が少なくなってきた頃です。全面が晴れてきて、天の川が南西から北東に大きく架かるのが見えました。下手なところに行くよりも、天の川を見るならここは気軽に来ることができ、安全で、トイレもあり、充分暗くて、とてもいい場所です。
しかもここはなぜか私にはとても相性がいい場所で、どんなにダメそうな日でも、たとえ雨が降っていても、必ず途中から晴れて星に巡り合える、今のところ空振りは0の不思議な場所です。この日も短時間でしたが天の川まで見ることが出きて、最後まで残ってくれたお客さんたちは大満足なようでした。
あ、大満足で思い出しました。この日流れ星が結構多かったです。主にカシオペア方向でしょうか、21時過ぎくらいから22時過ぎくらいまで、大きなものも含めて多分10個以上は流れたと思います。流れ星を初めて見た人もいて、すごく喜んでくれていました。私は残念ながらかすみ程度のを一つ見ただけです。
私自身も久しぶりの至極真っ当な観望会で、しかも惑星、アルビレオ、天の川、流れ星とフルコース。SCOPETECHも大活躍。電視観望こそありませんでしたが、大満足でした。
来月は私は行くことができませんが、一ヶ月たつと2時間ぶん空が進んでいます。この日の21時に見えた空が、来月は19時に見えることになります。火星もすばるも最初から見えていることでしょう。来月も楽しんでもらえたらと思います。
先月もペルセウス流星群で観望会はあったのですが、これは特別行事に相当します。天気もあいにくで、ほぼ解散してからやっと星が見え始めたくらいで、残っていた一般参加の方は1組のみ。今回は定例の観望会で、お客さんもたくさん来てくれて、普通に見えるものを見ます。天気も最初はそこまで良くはなかったですが、惑星とかはちょくちょく見え、最後は全面晴れ渡り、結局大盛り上がりでとても楽しい観望会となりました。調子に乗って書いてしまったので、また長い記事となってしまいました。もしよろしければ、昨晩の様子にお付き合いください。
いざ出発
夕方荷物を車一杯に積み込み、一人で出発。最近は子供は全然付いてくる気はないみたいです。なので機材は後部座席も助手席にもたくさん入ります。富山を出る時点ではそこまで晴れてなかったですが、それでも雲間から青空がまだ見えていました。なので機材の選定は微妙です。とりあえず惑星がメインになりそうなので、口径20cmで比較的軽量なC8、電視観望セット一式。あと迷ったのですが、子供用にSCOPETECHを最後に押し込みました。でもこれが大活躍。子供たちがくるような普通の観望会では、こういった自由に触れる望遠鏡は意外なほど好評です。
途中コンビニに寄り、夕食を買って運転しながらのおにぎりだけの簡易ディナー。天気も富山から出た時より悪くなっています。現場に着いたのは18時半頃でしょうか。国道から天文台へ行く脇道に入る時に、対向車線からちょうど車が来て同じ方向に行くようでした。先に行ってもらったのですが、ゆっくりと途中何ヶ所かの曲がり角を確かめながら進んでいるようでした。やはり観望会のお客さんで、年配の女性の方。今日初めてだそうです。
最初のお客さん
すでに木星が出ていたので「あれが木星ですよ」と伝えました。自分で双眼鏡を持ってきたらしくて見始めていましたが、なんと30年以上の昔の大きな双眼鏡で、倍率が25倍!メーカーも聞いたことないようなものなので、私が以前星まつりで手に入れた双眼鏡のような国内の小さな光学メーカーが作ったものの一つかと思います。
問題はその倍率で「わー、線が見える!」とか言っていたので、「え、木星の縞が見えるの?すごい!」と一瞬思ったのですが、双眼鏡をお借りしてみたら納得。手ぶれで木星が大きく揺れてしまうのが線になって見えてしまうのです。「さすがに25倍は手持ちでは難しいです。三脚がいりますよ」とか説明して、その間にSCOPETECHを用意して木星を見てもらうと「止まって見える!」と喜んでもらえました。
でもびっくりしたのはそこからで、衛星が見えるのはもちろん、木星の縞も余裕で見えるし、空を見上げて「木星の横の星は?」とか言うのですが、私にはまだ全然見えてません。もちろんそれは土星だったのですが、聞いたら視力2.0とのこと。そりゃよく見えるはずです。老眼だそうですが、ちょっと羨ましいくらいでした。
皆さん続々と集合
それからスタッフも、お客さんも続々と集まってきました。今回あまり確認できていませんが、お客さんだけで全部で7-8組くらいは来ていたと思います。ほとんど飛騨市や高山市の地元の人ばかりでした。多分私が富山からで一番遠いくらいです。スタッフも合わせたら20人くらいはいたと思います。
- 上に書いた、一番乗りで私とほぼ同じ時間から来てくれた年配の女性の方。参加は初めてですが、実はスタッフと知り合いの方でした。しかも、昨年亡くなられたこの飛騨コスモス天文台の設立者のYさんが計画していた山歩きとかには、何度か参加してたそうです。
- 子供を連れてきている家族が3組くらい。子供は小1の女の子が一人、小5の男の子が一人、あともう一人いました。やっぱり子供がいると観望会っぽくなっていいです。
- 他にもカメラが趣味で、撮影どうですか?と勧めたら自前の6Dで撮影を始めたカップル。
- あまりお話できなかったですが、双眼鏡を持ってきているご夫婦。
- 他にもいたと思いますが、暗くて把握しきれませんでした。
最初は雲間の惑星から
到着直後はまだ晴れ間が見えてたのですが、その後はすぐにずーっと雲がほぼ全面にいきわたって、ごく切れ間から明るい惑星が時折り見えるくらいです。でも雨が降るような雲でもなさそうだったので、機材の準備は進めることにしました。最初SCOPETECHで20mmのアイピースで小さな木星と土星を見てもらって、そのうち準備のできたC8で見てもらいました。まず比較で木星を見てもらうと、C8での明るさと、大きく細かく見えるその姿にみんな「わーっ!」と声をあげます。「衛星が3つ見えた!」「いや4つある!」「右に3つあるでしょ!」「2つしかないよ!」など、感想も様々です。さらに土星を入れるとその輪っかの美しさに皆さん簡単の声をあげます。一番最初に来た方の「あー、あの腰巻きがあるやつね」という独特の表現にはちょっとびっくりしましたが。
この日は気流が安定していたのでしょう。C8ではカッシーニの間隙もかなりはっきり見えていて、来ていた方達に「輪っかの中に黒いすきまがあるのわかりますか?」と聞くと、ほぼ全員がよく見えたようです。本当は惑星が揺れるのを見てもらって、大気の揺れのことを説明したかったのですが、その揺れが眼視ではわからないほど安定でした。
小1の女の子の食いつきがものすごかったです。木星も土星も、とにかくもう興味津々。一瞬天頂に夏の大三角が見えた時には、ずーっと説明してくれてました。わし座のアルタイルが出てこなくて、助け舟で「わ、わ、わ、、、、わし、わし、わし、、、」と言うと、「あ、わし座!」。「ア、ア、ア、、、、アル、アル、アル、」とヒントを出すと「あ、アルタイル!」とか反応がすごく可愛かったです。「星が大好きなんだよ!」とか言ってくれて、将来が楽しみな女の子です。
その後、所々晴れる場所も出てきて、上り始めたばかり火星を見てもらって「あー赤い!ぼやけてる!」と感想が。高度が低くて、グランドののフェンス越しなので仕方ないです。
たまたまれた晴れた天頂付近で、アルビレオを入れて見てもらったら「わーっ、綺麗!」「赤と青」「オレンジに見える」「あー、トパーズ色かぁ!」とか、皆さんそれぞれの色を楽しんでくれたみたいです。
途中、シートで寝っ転がって見ている人も。地面が暖かくて気持ちいんですよね。眠くなってしまいそうです。
撮影に興味がありそうな人も
お客さんの中に星にすごく興味がありそうな若いカップルの方がいました。入門用のSCOPETECHを覗いて土星とかもよく見えるのに驚いて「これ幾らくらいなのですか?」と聞かれました。特価でゴニョゴニョ千円」くらいですと答えます。「わー、それだったら欲しい!撮影とかもできますか?」となんか写す方に興味がありそうです。よくよく聞いてみると、カメラ好きで星の撮影もしたいとのこと。しかもフルサイズというので「え、機種は?」と聞いてみるとなんとEOS 6D。どうも星を写すことも考えて、あえて感度の良い6Dにしたみたいです。「レンズは?」と聞いてみるとTamronの45mm F1.8。星景なら十分です。しかもこの日も持ってきてるというので「じゃあ、撮影してみませんか?」ということで、まだ雲が多かったですが雲間の星を狙って急遽撮影開始。
これまでも星は撮ったことはあるようでしたが、そこまで本格的に撮っていたわけではないようです。最初「ISO100でも写ります」とか言って撮影してくれたのですが、さすがにF1.8でもISO100では恒星は写ることは写りますが、暗すぎます。「じゃあ、ISO1600で10秒とか20秒で撮影してみてください。」とか言うと「ずいぶん明るくするんですね」とのことです。さらに、温度が高すぎてかなり赤によっているので「温度を下げてください。夜空のイメージが欲しかったら3500度くらいまで下げてもいいですよ。」とアドバイスを。きちんとRAWで撮っているので後からどうとでもなりますが、他の一般の人にお見てもらえたらと思い、少し青目にしてもらいました。何枚か写してもらい、さらには南西方向に少し雲の切れ間があったので、そこを写してもらうと雲越しの天の川もバッチリ。
途中アンドロメダ方向を撮ってくれて、M31が写っていたので、これはいいと他の方にも見てもらうことに。わーっと人が集まってきました。もしかしたら、こうやって見てもらう楽しみも味わってもらえたかもしれません。
200mmくらいの明るいレンズも持ってるとのこと。星雲とか、銀河とか、惑星とかの対象によってレンズもしくは鏡筒が変わること、赤道儀もそのうち必要になるかも、星景写真だったら三脚だけでもしばらく大丈夫なこととか話して、わからなかったまた連絡して下さいと伝えておきました。
SCOPETECHが大活躍
この日一番活躍したのはSCOPETECHでしょう。星を始めた年の原村の星まつりでSCOPETECHブースで手に入れた特価品ですが、意外なほどよく見えるのと、秀逸な二つ穴のファインダー、軽量、手に入れた値段から気軽に扱えることなどで、基本的に子供用に解放して自由に使ってもらっています。時には天頂プリズムに付いたアイピースを、まるで何かのレバーのようにレンズのところに親指を押し当てる子もいたりしますが、そんなことを気にするようではまだまだです。今回も、微動ハンドルがすっぽ抜けて「壊れたー」とか騒いでいましたが、それも経験です。
最初に夢中になったのは、なぜかスタッフのSさん(だったと思います。暗くて見えてなくてすみません)。これまで怖くて操作したことがなかったらしいので、今回は木星から挑戦です。最初なかなかうまくいかなかったのですが、少し離れて鏡筒がまず大まかに木星に向いているかどうか、縦と横から見ること。例えば今回の場合、横方向はいいけど、縦方向が大きくずれていることを理解してもらいました。その後、二つ穴ファインダー、見にくかったらファインダーを使うこと。ファインダーは片目で見てもいいけど、両目で見ると入れやすいこととか説明して、しばらく触ってもらいました。最後、とうとう自分で入れることができたようで、すごく喜んでくれ、もう大はしゃぎでした。ここら辺は子供も大人も変わりありませんね。自分で初めて導入して見た天体は、言うまでもなく格別でしょう。
次に夢中になったのは小5の男の子。お母さんは少し心配そうにしてましたが、「もう遠慮なく、壊す気で触ってもらって構いません。」と伝え、思う存分いじってもらいました。子供は目がいいので、2つ穴ファインダーの方が楽みたいです。粗動と微動の違いを伝え、しばらく触ってもらって土星を入れることができ、もう大喜びでした。最初のうちこそ2つ穴ファインダーでさえもかなり苦労してましたが、すぐに慣れ、さらには木星も入れることができてました。面白かったのは「火星入れていいですか?」とわざわざ離れたところにいる私に聞きにくるのです。「もちろんです。聞きにくる必要なんてないですよ、自由にやってください。」と伝えると、あとは色々自分で試していたみたいです。途中、よほど嬉しかったのか、成果を見てもらいたかったのか、「火星うまく入れることができたので見にきてください」とお誘いが。見てみると、えらい大きく見えています。ピントがずれていたのですが、今の火星はずれていても模様のようなものが見えるので、大きい方がよく見えるように思ってしまったのでしょう。
突如、少年期の記憶が
と、これを見て突然小さい頃の記憶が蘇ってきました。多分小学校低学年のころ、父親が買ってきてくれた望遠鏡、KENKOの屈折だったと思うのですが、それで木星を見たときのことです。「縞が見えた」と喜んでいたのですが、今思うと多分収差を縞と勘違いしたのです。その時の像が突然頭に蘇ってきて、この時も大きな像でピントがずれていて、たぶん今回見た火星のようにそれを正しい木星だと思ってしまったのです。「あー、やっぱり同じことするんだ」と、多分40年くらいしてやっと当時の謎、私の中の数少ない少年期の星の記憶が一つ蘇ったのでした。
SCOPETECHでピントを合わせてあげると「こんな小さいんだ」とびっくりしていたようでした。それではと、上ってきた火星をC8で見てもらうと模様も見えるくらいはっきりとしていました。
終盤に近づき
もう終盤に近づいたころ、何人かの女性グループでM31アンドロメダ銀河探索が始まりました。前回のYさんの命日の時もそうでしたが、星座ビノを使って見るのです。「あ、見えた!」とか「どうしても見えん!」とか、もうわーわーキャーキャー大騒ぎです。
そのうち場所がわかってくると「肉眼でも見える!」とか言い出し、7倍の双眼鏡で見てもらうと「わーはっきりわかる!」とか、本当に楽しそうです。最後は皆さん、アンドロメダ銀河の位置はバッチリわかっったようで、大満足みたいでした。
途中、「アンドロメダ銀河を望遠鏡で見たい」と言うリクエストがあったのですが、多分大きく見え過ぎるので「双眼鏡くらいが楽しいですよ」と伝えておきました。これは後にM42プレアデス星団(すばる)をSCOPETECHで入れた時に理解してくれたみたいです。実際にすでにアイピースにすばるは入っているのに、どこだか分からないようなのです。対象が大きいので少し周りからみないとわからないんですね。「アンドロメダ銀河も同じ理由です。スバルはまだ明るいけど、銀河は暗いので中心だけがぼーっとして見えるくらいです。」とか言ったら妙に納得してくれてました。でも実際見てもらったほうがよかったのかもしれません。ただ、経緯台でマニュアル導入なので、ちょっと敷居が高いんですよね。でもいい訓練かも。次回挑戦してもらいましょう。
あ、今回電視観望は(珍しく)使いませんでした。正確にいうと、ほんの一瞬だけ6DとSharpCapではくちょう座辺りを見たのですが、網状星雲が1ー2ショット映って、すぐに雲に隠れたりとかで、今回は出番無しでした。
22時に差し掛かるくらいでしょうか、お客さんもぽちぽち帰り始め、だんだん人が少なくなってきた頃です。全面が晴れてきて、天の川が南西から北東に大きく架かるのが見えました。下手なところに行くよりも、天の川を見るならここは気軽に来ることができ、安全で、トイレもあり、充分暗くて、とてもいい場所です。
しかもここはなぜか私にはとても相性がいい場所で、どんなにダメそうな日でも、たとえ雨が降っていても、必ず途中から晴れて星に巡り合える、今のところ空振りは0の不思議な場所です。この日も短時間でしたが天の川まで見ることが出きて、最後まで残ってくれたお客さんたちは大満足なようでした。
あ、大満足で思い出しました。この日流れ星が結構多かったです。主にカシオペア方向でしょうか、21時過ぎくらいから22時過ぎくらいまで、大きなものも含めて多分10個以上は流れたと思います。流れ星を初めて見た人もいて、すごく喜んでくれていました。私は残念ながらかすみ程度のを一つ見ただけです。
あー、楽しかった
私自身も久しぶりの至極真っ当な観望会で、しかも惑星、アルビレオ、天の川、流れ星とフルコース。SCOPETECHも大活躍。電視観望こそありませんでしたが、大満足でした。
来月は私は行くことができませんが、一ヶ月たつと2時間ぶん空が進んでいます。この日の21時に見えた空が、来月は19時に見えることになります。火星もすばるも最初から見えていることでしょう。来月も楽しんでもらえたらと思います。