ほしぞloveログ

天体観測始めました。

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M104の画像処理の最中に、BXTの恒星のにんしきでで気付いたことがありました。これも補足がてら書いておきます。



BXTの適用限界の一例

BXTについてはある程度一定の評価が定着したのかと思います。私もお世話になっていますし、今回のM104本体の内部構造を出すのにも大きな効果がありました。焦点距離1300mmのSCA260に対してM104は少し小さくて、拡大して細部を見ながら処理をすることも多いです。その拡大しながらの処理の最中で改めて気になったのは、BXTでどこまで微恒星を補正できるのか?ということです。

下の画像を見てください。左から順に1. BXT無し、2. BXTのCollect only、3. BXTで恒星を小さくし背景(銀河本体)の解像度の上げたたものになります。
名称未設定 1

星像を改善しているのはすぐにわかると思いますが、その中で目で見て明らかに微恒星とわかるものをいくつか取りこぼしてしまっているものがあります。次の画像は、仕上げ前にStarNet V2で恒星を分離し取り除いた画像になります。

Image07_ABE1_crop_ABE4_DBE_BXTc_SPCC_BXT_LRGB_GHS_GHS_Preview01

BXTで救いきれなかったものは(BXTとは別ソフトのStarNetでも)背景として認識されるようです。でもそれらは、人の目には微恒星側に認識できるものも明らかにあるのかと思います。

シンチレーションなどでブレてしまい星の鋭さが出ていないのが原因かと思われますが、問題はBXTで星と「認識される」か「認識されてない」かで、その切り替わりを境に本来の明るさや大きさが大きく変わり、差が出てしまうことです。以前、BXT2にバージョンアップする前にも同じようなことを書いていま。


その後BXT2にアップデートした時に、微恒星をより拾うようになっていると解説されています。

そのためかなりマシになっているはずなのですが、今のところは今回程度の認識が限界になるようです。

この程度のことは強拡大しない限りほとんど気になることはないでしょう。さらに今回の最終結果としては背景をそこまで明るくすることはないので、微恒星と思われるシミのようなものは実際には見えなくなってしまい、実用上はなんら問題はないと思います。ただ、強拡大したり、淡い背景を強炙り出しする場合は、この問題が露呈する可能性があることは、頭の隅に置いておいた方がいいのかもしれません。

もう少し突っ込みます。微恒星をできる限り拾うって、色々価値があると思うんですよ。上の背景だけの画像を見てたら、微恒星と思われるところは輝度としては明らかに盛り上がっているので、その部分だけうまく集光できないかなと思ってしまうわけです。FWHMが星の明るさによらずに一定なように、恒星の広がり具合は本来明るい星でも暗い星でも同じはずです。でも暗い星は背景のノイズに埋もれてしまうために鋭さが出ないのかと思います。この鋭さを仮想的に補助してやればいいのかと思います。手動だと銀河本体はマスクをかけて、背景の中の輝度差で微恒星部を分離して、その盛り上がり部を背景に対して増強してやることでしょうか。もしくはここからBXTのcorrect onlyでまともな星像にしてもらうとかできればいいのかもしれません。あ、でもこれだと本来の輝度から変わってしまうかもしれません。まあ何か方法はありそうなので、じっくり考えてみると面白いかもしれません。


bin1にdrizzle x2に、さらにBXT

今出せる解像度の限界は、bin1にdrizzleを2倍以上かけて、さらにBXTでしょうか?PowerMATEなどのバローでも分解能は増す可能性はありますが、ここでは考えないことにします。

どこまで細かいのが出せるのか、果たしたそれに意味があるのかを試してみました。使ったのは2023年5月に撮影した5分露光のL画像を36枚、WBPPでインテグレートしたものです。その際、drizzle無しと、drizzle x2で出力しました。bin1なのでdrizzle x2の方は解像度は16576x11288で、ファイルサイズは1枚だけで1.5GBになります。全ての処理が重く、簡単な操作さえ非常にもっさりしています。画像処理もものすごいディスク食いで、はっきり言ってこの時点でもう実用的でもなんでもありません。

このdrizzle無しとx2それぞれにBXTをかけてみました。

まずはdrizzle無し。左から順にBXT無し、BXTのCollect only、BXTで恒星を小さくし背景(銀河本体)の解像度の上げたたものになります。
comp1

次にdrizzle x2の場合。BXTに関しては上と同じです。
comp2

この結果は面白いです。drizzle x2のほうがBXTが適用されない微恒星が多いのです。理由は今のところよくわかりませんが、niwaさんのブログのこの記事がヒントになるでしょうか。どうもBXTには適用範囲というものがあり、FWHMで言うと最大8ピクセルまでだとのことです。

でも今回、そもそもdrizzle無しでもFWHMが12とか13で、すでにこの時点で大きすぎます。drizzle x2だとするとさらに2倍で、はるかに範囲外です。でも不思議なのは、FWHMが12とか13でも、たとえそのれの2倍でも、一部の恒星にはBXTが適用できているんですよね。なので少なくとも私はまだこの適用範囲の意味はよくわかっていません。

あと、niwaさんのブログの同じ記事内にあった、明るい星に寄生する星が出てくることが私も今回M104でありました。
fakestars
真ん中の明るい星の下と左上に偽の星ができてしまっています。

niwaさんはdrizzle x2だと出て、drizzle x1だと緩和されると書いてありましたが、私の場合はdrizzle x1でした。恒星を小さくすることと、ハロを小さくすることが関係しているようで、両パラメータの効きを弱くしたら目立たないくらいになりました。そのため今回の画像では恒星を小さくしきれていないため、さらに星雲本体を拡大してあるため、恒星が多少大きい印象となってしまっているかもしれません。

いずれにせよ、ここでわかった重要なことは、むやみやたらに元画像の解像度を上げてもよくならないどころか、不利になることさえあるということです。BXTの効かせすぎも寄生星を生む可能性があります。ファイルサイズのこともあるのでbin1とdrizzle x2はそもそも実用的ではないし、さらにこれにBXTを使うなんてことは今後もうないでしょう。今のところbin2でdrizzle x2にBXT、bin1にdrizzle無しでBXTくらいが実用的なのかと思います。小さい銀河みたいに拡大すること前提で分解能を求めるとかでなければ、bin2にdrizzle無しでBXTでも十分なのかと思います。

「電視観望技術を利用して天体写真を撮影してみよう」ですが、前回までに機材の準備はある程度整いました。今回は、実際に動作させて、画面に天体を映してみます。




ここで準備するもの

今回必要なものは主に電気関連で、
  • ノート型などのWidows10以上が走るパソコン (PC)
  • PCとメインカメラUranus-C Proを繋ぐUSB3.0以上の、Type-Cケーブル
  • PCとガイドカメラNeptune C-IIを繋ぐUSB3.0以上の、Type-Bケーブル
  • PCと赤道儀を繋ぐ付属のUSB2.0、Type-Bケーブル
  • PCに複数のUSB端子がない場合は、USB増設アダプターなど
  • DC12V出力があるバッテリー
  • バッテリーと赤道儀を繋ぐDC電源用ケーブル(単3電池駆動なら必要ありません)
  • バッテリーとメインの冷却カメラを繋ぐDC電源用ケーブル
  • バッテリーに12V端子が1つしかないなら、二股ケーブルなど
などでしょうか。これだけでも結構大変ですね。

その他、あると便利なものですが、
  • テーブルなど、PCやその他のものを置いたりできる台
  • 椅子
などです。

IMG_8985


テーブルはホームセンターなどで適当なものを見つければいいでしょうか。コンパクトなものをさがせばいいでしょう。

椅子も適当なのでもいいですが、私は座面の高さを変えることができる作業用の椅子を使っています。具体的にはルネセイコウの作業用の椅子です。
 

少し高価ですが、望遠鏡で星を見るときに高さ調整できるのでとても使い勝手が良く、自宅でも玄関にいつも置いてあり、遠征には車に積んで使っています。


ソフトウェア

PCはWindows10以降が動くものなら問題ないでしょう。ソフトウェアは
などが必要になります。それぞれダウンロードしてインストールしておきます。ASCOMプラットフォームはインストール時に、各種ランタイムライブラリーなどのインストールを要求されるかもしれませんので、指示にに違ってください。

SharpCapは無料でも使えますが、有用な機能の多くの部分が制限されています。年間2000円なので、できれば有料版にアップグレーとしておいた方が有利です。しらはいはPayPalが楽でいいです。

カメラのドライバーがないと、SharpCapからカメラが認識されません。忘れないようにインストールしておいてください。同様に、PHD2からPlayerOneのカメラを使うときは、ASCOM経由で使うことになるので、PlayerOneカメラ用のASCOMドライバーをインストールすることも忘れないでください。詳しくはここを参照してください。



機材の設置

機材を夜に外に設置します。空が十分に開けた場所を探しましょう。周りに明るい光があると、撮影時に映り込むこともあるので、できるだけ暗い場所を探しましょう。街の大きさにもよりますが、住宅街程度でも、近くに街灯などがなければおそらく大丈夫でしょう。

まず最初に、すべてのケーブルを接続しましょう。できれば機材の設置も、ケーブルの接続も、できれば暗くなる前の明るいうちに済ませておいた方がいいかと思います。ただ暗くならないと、周りの街頭の明るさなど、わからないこともあるので、事前にロケハンで暗くなる時も合わせて見ておいたほうがいいかもしれません。

今回ケーブルは5本あります。USBが3本で、DC12Vが2本です。PCの電源ケーブルも必要なら6本でしょうか。それぞれ絡んだりしないように接続します。特にカメラに繋ぐUSBケーブルと、冷却カメラに繋ぐ電源ケーブルは、撮影中は時間と共に赤経体が動いていくので、引っ張られたり、噛んだりしないように注意が必要です。ケーブルタイやスパイラルチューブなどを使い、あらかじめまとめておくと良いかもしれません。

赤経体は鏡筒部が上になるような回転方向に、赤緯体は鏡筒先端が一番上になるような「ホームポジション」にして、鏡筒先端が北向きになるような方向で設置します。その際、方角はスマホなどのコンパスアプリを使うのが便利です。アプリによっては「磁北」ではなく「真北」を選べるものがあります。「磁北」は天体観測に必要な「真北」から7度程度ずれているので、もし「真北」が選べるならそちらを選んでください。スマホを赤道儀本体に真っ直ぐになるような面でくっつけて調整するといいでしょう。正確な方向はのちに「極軸合わせ」でするので、ここでは数度の範囲で設置できれば十分です。

三脚は赤道儀がざっくりでいいので水平になるように、足の長さを調整します。足の長さはできるだけ短くしておいた方が、安定になりますので、むやみに伸ばさないようにしましょう。


SharpCapの立ち上げと極軸合わせ

まずはPCとガイドカメラ、PCと撮影用の冷却カメラがUSBケーブルで接続されていることを確認し、PCの電源を入れ、SharpCapを立ち上げます。

SharpCapから最初はガイド用のカメラを接続します。SharpCapの上部のメニューの「カメラ」から今回はガイドカメラとして使っているNeptune II-Cを選択します。
01_SharpCap_Neptune2

画面がカメラ画面に切り替わったことを確認します。明るいライトなどをカメラ前にかざしてみると、画面に何か見えるはずです。何も反応がなく真っ暗な場合は、レンズキャップを外し忘れていないか確認してみてください。

SharpCapの右側のパネルの「カメラコントロール」から、「露出時間」を800ミリ秒とか、1000ミリ秒程度にして、「アナログゲイン」を400程度の高めにして、ガイドレンズのピントを合わせてみます。すでに鏡筒が北の空を向き、北極星の近くを見ていると思うので、うまくピントが合ってくると星が見えてくると思いますが、その星の一つ一つが一番小さくなるようにピントを調節してください。

もし星が暗くてみにくい場合は、アナログゲインをもっと上げるか、右側パネルの「ヒストグラムストレッチ」で雷マークのボタンを押してオートストレッチしてみてください。暗い星も一気に見やすくなると思います。ただし、このオートストレッチ機能はSharpCapの有料版のみで使える機能なので、無料版を使っている場合は、手でこのオートストレッチ相当のことをしてやる必要があります。具体的には、ヒストグラムストレッチ画面に3本の黄色の縦の点線があるのですが、そのうち左側と真ん中の線を移動して、ヒストグラムの山を挟むようにしてやります。

ピントが合ったら、そのままの状態にして、次の極軸合わせに移ります。


極軸合わせ

まず前提条件として、この極軸調整機能も先ほどのオートストレッチと同じで、SharpCapの有料版のみで使える機能です。無料版では使うことができないので、別途SA-GTi付属の極軸望遠鏡などで極軸を合わせる必要があります。でも、極軸望遠鏡で合わせた精度は、SharpCapで合わせることができる精度に遥か及ばないので、SharpCapの有料版を購入することを強くお勧めします。2024年2月現在、年間2000円です。極軸調整だけのためこれだけ払っても十分お釣りが来るくらい、SharpCapはとても強力です。

というより、電視観望で撮影をするためにSharpCapをフルで使うので、あらかじめ有料版にしておく必要があります。そうでないと、便利な機能のかなりの部分が使えなかったり、撮影画像に透かし文字が入ったりすることがあります。

さて、実際の極軸調整を始めましょう。鏡筒はホームポジションに戻してあるので、ある程度北極星の方向をむいているはずです。SharpCapが立ち上がり、ガイドカメラはつながっていますね。この時点ではまだ赤道儀の電源を入れる必要はありません。

まずは準備です。
  • SharpCapのメニューの設定から「極軸合わせ」タブを選んでください。「大気差を補正する」を選択し、インターネットに繋いだ環境で「タイムゾーンから自動的に推測する」を選びます。これがうまくいかない時は「以下の位置情報を使用」を選び、マニュアルで入力する必要があるのですが、経度緯度が何度何分何秒の形式になっていなくて、何点何々度形式なので、正確な値を入れるのに苦労します。まあ、そこそこ合っていれば多少ずれていてもたいしたずれにはならないので、必要なら適当に何点何度くらいまでは入れておきましょう。

実際の曲軸合わせです。

1. 「ツール」「極軸あわせ」から「極軸調整」を選択します。
2. その時のカメラの露光時間は800ミリ秒とか1.6秒くらにしてください。ゲインは高めの400くらいでいいと思います。この時点で、右画面のヒストグラムで雷ボタンを押してオートストレッチをしておくと、星が画面に明るく見えるようになります。
3. 下の「Next」ボタンを押します。
02_polar1

4. 星の位置の認識がうまくいき、位置認識の計算が終わると、下の「Next」ボタンが緑色になるので、押します。
02_polar2

5. 赤経体のネジを緩めて、赤経体が動く状態にして、手で大まかに90度くらい回転させ、鏡筒が赤道儀の横側にくるようにして、ネジを固定します。
IMG_8963

6. 再び星の認識がうまくいき、位置認識の計算が終わると、下の「Next」ボタンが緑色になるので、押します。
02_polar6

7. ある星から長い黄色の線が出ているのでl、赤道儀の上下(ピッチ)方向調節ネジと、横(ヨー方向)方向調整ネジを使って、その線が短くなっていくように、調整します。
02_polar7

8. 線が短くなると同時に、画面右下の「Polar Align Error」の数値が小さくなっていくので、画面を見ながら線の長さが最短近くになるまで合わせ込みます。数値が1分角以下になっていれば十分です。
02_polar8

これ以降は、赤道儀を蹴飛ばしたりしないでください。万が一赤道儀に何か当たって位置がずれてしまったら、この極軸合わせからやり直します。


メインカメラの接続と、ピント出し

いよいよ、メインのカメラの画像を見てみます。SharpCapのメニューの「カメラ」からUranus-C Proを選びます。
01_SharpCap_Uranus

方角的には真北を向いているので、星は入っているはずですが、ピントがずれていて星はほとんど見えていないと思います。

鏡筒のフォーカサーの上についているピント固定ネジが緩んでいることを確認して、フォーカサー左右についているピント調節ネジを、SharpCapの画面を見ながら回してみます。SharpCapの設定は、露光時間は800ミリ秒とか、1000ミリ秒くらいでいいでしょう。アナログゲインは400程度の高めの値にします。

画面が真っ暗のままで全然見えない場合は、鏡筒の先のキャップを撮り忘れていないか確認してみてください。

最初は左側のピント調節ネジで粗動でざっくり合わせてみて、画面に出る星が小さくなってきたら、SharpCapのメニューと同じ段の右の方にある「ズーム」を100%とか200%にして星を拡大してピントを合わせやすくしてから、右側のピント調節ネジの微調整ネジで調節するといいでしょう。

ピントが合ったら、フォーカサーの上部のピント固定ネジを締めておくと、これ以上ピントがずれなくなります。でも次回ピント調整する時は必ずこのネジが緩んでいることを確認してから調整するようにしてください。ネジを締めたまま調整しようとすると、最悪壊してしまいます。

さて、実際にピント合わせをやってみるとわかるのですが、うーん、かなり揺れますね。三脚の頭を手で回転方向に捻ってやると結構動きます。やはり評判通り三脚が少し弱いようです。これだとピント調整する時に鏡筒に触れるだけで揺れ過ぎてしまい、かなり合わせにくいです。少しでも揺れを抑えるために、とりあえず赤道儀と三脚の間に入っているハーフピラーを外すことにしました。

IMG_8984

さらにですが、三脚の足の赤道儀に近い根本のネジを一本につき両側から2箇所、合計6箇所増し締めします。実際、いくつかのネジはかなり緩かったです。

これだけでも多少揺れは収まるので、ピント調整の際も、撮影の際も有利になると思います。


SynScan Proとの接続と初期アラインメント

赤道儀SA-GTiのコントロールパネルの赤いスイッチを入れて、電源をオンにします。

次に、アプリとの接続です。接続は、WiFi、bluetooth、シリアルと3種ありますが、長時間の撮影なので安定性を考えて、USBケーブルを使ったシリアル接続とします。

03_Synscan_net

ちなみにですが、iPhoneのSynScan Proを最新版にしたら、iPhoneからのWiFi接続では、「赤道儀モードか経緯台モードかの判断がつかない」とというエラーが出て、接続できませんでした。旧バージョン(1.19)のSynScan Proだと大丈夫なので、iPhone版の最新版にアップデートする際は注意してください。PCからUSBケーブルで接続した場合は、最新版のSynScan Proでも問題なく接続できました。

接続ができたら、いくつか設定です。
  • 高度制限が入っていると、高いところの天体を導入などできなくなります。「設定」「高度制限」から「Upper Go To Limit」を90度まで上げてください。
  • 緯度経度情報を忘れずに入れてください。PCと接続する場合は、自動的に情報が取れない場合が多いです。私はiPhoneのコンパスアプリを開いて、緯度経度情報を得て、それを手入力しています。

最初にやるべきことはこれくらいでしょうか。これらは最初に一度やればいいことで、大きく撮影場所を移動しなければ、緯度経度情報もいじる必要はありません。逆に、場所を移動して、最初の導入でうまくいかない場倍は、この緯度経度情報が間違っていないか疑ってみてください。


初期アラインメント

最初にやることは、SynScan Proでの初期アラインメントです。初期画面から「アラインメント」で「1スターアラインメント」を選びます。他にも何種類かのアラインメント方法がありますが、赤道儀の極軸がしっかり合わせてあること、次にプレートソルブで導入の補助をするので、1スターアラインメントで十分です。
10_synscanpro_alignment

星はターゲットのオリオン大星雲の近くの「リゲル」を選択しましょうか。
11_synscanpro_alignment_rigel

アラインメントを開始すると、赤道儀がターゲットの方向に向かって動き出します。SharpCapの画面で見ていても、星が動いていく様子が見えると思います。赤道儀が止まったら、SynScan Proは下のような画面になります。
03_Synscan_done


SharpCapの画面を見てみましょう。リゲルは画面の中に入っていますでしょうか?一つだけ明るい星ですので、入っていればすぐにわかるのですが、大抵の場合は画面の中に入ってこないと思います。でもここで落ち込む必要はありません。解決策はきちんとあります。


プレートソルブによる導入補助

次にSharpCapに最近標準で搭載されるようになったプレートソルブ機能を使って、リゲルを自動で画面中央まで持って来ることにしましょう。

まず下準備です。SharpCapのメニューの「ファイル」からSharpCapの設定画面を開き、「プレートソルブ」タブを選びます。

04_SharpCap_setting_platesolve

  1. 「プレート解析エンジン」のところで「SharpSolve(SharpCap's built in plate solver)」を選びます。もしこの選択肢が出てこない場合は、SharpCapのバージョンが古いことが考えられますので、最新版のSharpCapをダウンロードしてインストールしてください。
  2. 焦点距離は自分が使っている望遠鏡の値を正しく入れてください。
  3. 最後に一番下の「適用」もしくは「OK」を押します。

次に、同じくSharpCapのメニューから設定に行き、「ハードウェア」タブのところに行きます。
03_SharpCap_setting_hardware
  1. 「マウント」の「ハードウェアの選択」のところで、接続したい赤道儀を選びます。今回はSA-GTiをSynScan Proで操作するので「SynScan App Driver」を選びます。
  2. 一番下の「OK」を押します。
  3. SharpCap画面の右パネルの「望遠鏡制御」の「接続済み」のところの四角を押します。ASCOMを介して接続するのですが、10秒くらい待ってうまく接続されると数字などが出てきて、赤道儀がどちらを向いているかSharpCapで認識できるようになります。
01_SharpCap_ok_cut

これでだいたい準備は完了です。

実際にプレートソルブを走らせてみましょう。

1. 露光時間を3秒程度にしておくといいでしょう。短すぎると星の数が少なくて、長すぎると星が流れてしまってうまくいかないことがあります。
2. SharpCapメニューの「ツール」から「プレートソルブ後再同期」を選ぶか、右側パネルの「望遠鏡制御」の方向矢印の左下の方角マークのようなアイコンを押します。
04_platesolve

3. 今見ている画面から実際に見ている方向を計算して、赤道儀が認識している方向とどれだけ違うかの差を認識して、その差を赤道儀にフィードバックして、赤道儀が見ていると思っている方向に向きを変えて合わせてくれます。
4. うまく行くと、下の画面のようにリゲルが真ん中に来て、上部の緑色のところにプレートソルブが成功したことが表示されます。今回の場合2.72度ずれていたそうです。
06_platesolve

うまくいったら、PC上で走っているSynScan Proのアラインメント完了の意味で、星マークのボタンを押します。

その後は、SynScan Proを使って、自由に目標の天体を導入してみましょう。例えば今回の目標はオリオン大星雲なので、SynScan Proの初期画面から「ディープスカイ」を選びます。
09_synscanpro

オリオン大星雲はメシエ天体の42番目なので、「メシエ」を選び、「042」と入力し、「導入」を押します。うまく行くと、オリオン大星雲が画面に入ってくるのが見えるでしょう。

05_intro

もし画面内に入らなかったりした場合は、再びプレートソルブを走らせることで画面に入れることもできます。

今回は導入完了のここまでとします。次回は実際に撮影してみます。










BlurXTerminator version 2.0 and AI version 4がリリースされました。



以下BXT2とかAI4とか呼ぶことにします。以前のものはBXT1とか単にBXTでしょうか。BXTというのはバージョンに限らずBlurXTerminatorの略語の場合もあるので、ここでは文脈によって使い分けたいと思います。


Correct only

まず、恒星についてはこれまでのBXT1に比べて明らかに大きな改善です。以前もこの恒星の収差を改善するCorrect onlyがかなりすごいと思って評価しましたが、その当時は星雲の細かい模様出しが第一の話題の中心で、恒星を小さくすることが次くらいの話題でした。収差などを直すCorrect onlyはあまり話題になっていなかったのが残念でした。でも今回はむしろ、この収差補正の方が話題の中心になっていて、しかもその精度が格段に上がっているようなので、より精度の高いツールとして使うことができそうです。

今回のBXT2で修正できるものは:
  • First- and second-order coma and astigmatism: 1次と2次のコマと非点収差
  • Trefoil (common with pinched optics and in image corners with some camera lenses): トレフォイル(矢状収差?) (歪んだ光学系や、いくつかのカメラレンズで出る画面四隅において一般的)
  • Defocus (poor focus and/or field curvature): デフォーカス:  (焦点ズレや、もしくは像面歪曲)
  • Longitudinal and lateral chromatic aberration: (縦方向、横方向の色収差)
  • Motion blur (guiding errors): 動きのブレ(ガイドエラー)
  • Seeing/scatter variation per color channel: 各色ごとのシーイング/散乱の違い
  • Drizzle upsampling artifacts (2x only): ドリズルのアップサンプリング時の偽模様(2倍時のみ)
とのことです。

ちなみに、BXT1の時に修正できたのは以下のようなものなので、BXT2では圧倒的に進化しています。
  • limited amounts of motion blur (guiding errors): ある一定量までの動きのブレ(ガイドエラー)
  • astigmatism: 非点収差
  • primary and secondary coma: 1、2次のコマ収差
  • unequal FWHM in color channels: 各色のFWHM (星像の大きさ) の違い
  • slight chromatic aberration: 多少の色収差
  • asymmetric star halos: 非対称なハロ

なので、まずは星雲部分を補正する前に、一度Correct Olnyをチェックして収差などによって歪んで写った恒星がどれだけ改善されるのかを、十分に味わうべきでしょう!星雲部の模様出しとかは他のツールでも似たようなことはできますが、上に挙げたような収差補正をここまでやってくれるツールはBXTだけです。画面全体を見ている限りは一見このありがたさに気づかないかもしれませんが、拡大すればするほど、こんなに違うのか!というのを実感することと思います。

では実際に比較してみましょう。全て前回のクワガタ星雲の処理途中のリニアな段階での比較です。

1. オリジナル画像
まずはオリジナルの画像です。
Image13_mosaic_original
ε130Dは、スポットダイアグラムを見る限り非常に優秀な光学系です。同系列のε160EDやTOA-130N+TOA-645フラットナーといったスーパーな鏡筒には流石に負けますが、FSQ-130EDとコンパラくらいでしょうか。反射型なので光軸調整さえ安定してできれば、間違いなく最強の部類の鏡筒と言えると思います。上の画像は四隅でもかなり星像は小さくなっていますが、まだ少し流れが残っています。

2. BXT1相当 (BXT AI2)
ここにまずは、BXT1相当の、BXT2に従来のAI Ver.2を適用します。ここではCorrect onlyでの比較です。
Image13_mosaic01_BXT

四隅の星の流れは明らかに改善されていることがわかりますが、星の大きさなどは大きく変わることがなく、これだけ見てもε130Dの光学性能の優秀さが伺えるかと思います。

3. BXT2 AI4
では上の画像で十分で、高性能鏡筒に今回のAI4をかけても意味がないかというと、そんなことはありません。BXT1では微恒星を救いきれていない場合が多々ありました。このページの「もう少しL画像を評価」の2のところ以降に、

「BXTはかなり暗い最微恒星については恒星と認識するのは困難で、deconvolutionも適用できないようです。そうすると逆転現象が起きてしまうことも考えられ、より暗い星の方がそれより明るい星よりも(暗いけれど)大きくなってしまうなどの弊害も考えられます。」

と当時書いていました。そして暫定的な結論として

「この逆転現象とかはかなり拡大してみないとわからないこと、収差の補正や星雲部の分解能出しや明るい恒星のシャープ化など、現段階ではBXTを使う方のメリットがかなり大きいことから、今のところは私はこの問題を許容してBXTを使う方向で進めたいと思います。シンチレーションの良い日を選ぶなどでもっとシャープに撮影できるならこの問題は緩和されるはずであること、将来はこういった問題もソフト的に解決される可能性があることなども含んでの判断です。」 

と書いていますが、今回は実際にソフト的に改善されたと考えて良さそうです。

実際に見てみましょう。BXT2 AI4を適用したものです。
Image13_mosaic02_BXT2_4
一見BXT1との違いがわからないと思うかもしれませんが、少しぼやけて写っているような最微恒星に注目してみてください。BXT1では取りこぼしてぼやけたままに写っているものがBXT2ではきちんと取りこぼされずに星像が改善されています。

このことはリリース次のアナウンスの「Direct linear image processing」に詳しく書いてあります。

One of the most significant “under the hood” features of AI4 is that it processes linear images directly. Earlier versions performed an intermediate stretch prior to neural network processing, then precisely reversed this stretch afterwards to restore the image to a linear state. This was done because neural networks tend to perform best when their input values lie within a well-controlled statistical distribution.

While this worked well for most images, it introduced distortions that compromised performance. Flux was not well conserved, particularly for faint stars, and the network could not handle certain very high dynamic range objects (e.g., M42, Cat Eye nebula). These compromises have been eliminated with AI4, resulting in much more accurate flux conservation and extreme dynamic range handling.

要約すると、

BXT2では直にリニアデータを処理することができるようになった。BXT1ではニューラルネットワークの処理過程の制限から、一旦ストレッチした上で処理し、その後リニアデータに戻していた。そのため恒星の光量が変わってしまったり、特に淡い恒星では広いダイナミックレンジを扱うことが難しかった。BXT2ではこのような妥協を排除し、その結果より正確に光量を保つことができ、大きなダイナミックレンジを扱うことができるようになった。

というようなことが書かれています。これは大きな進化で、実際に自分の画像でも微恒星に関しては違いが確認できたことになります。


Nonsteller

Niwaさんが恒星の締まり具合から判断して、PSFを測定してその値を入れた方がいいという動画を配信していました。その後訂正され、PSFの設定はオートでいいとなりましたが、一方、私はこのPSFの設定は星雲部分の解像度をどれだけ出すかの自由度くらいにしか思っていないので、測定なんていう手間のかかることをしたことがなかったです。

BXTのパネルは上が「Steller Adjustments」となっていて、「Sharpen Stars」とか「Adjust Star Halos」とかあるので、こちらは恒星のためのパラメータで、恒星の評価はこちらを変えて判断すべきかと思います。とすると真ん中の「Nonsteller Adjustments」は恒星でない星雲部などのパラメータで、星雲部を見て判断すべきかと思われます。このPSFが星雲部にどう働くかはユーザーにとっては結構なブラックボックスですが、必ずしも測定値を入れなくても、星雲部の出具合を見て好きな値を入れればいいのかと思っていました(BXT2ではここが大きく変わっています)。

というわけで、いくつかのパラメータを入れてどう変わるかを見てみましたが、これまた興味深い結果になりました。

1. まずはオリジナルのBXTをかける前の画像です。こちらも前回のクワガタ星雲の画像の中のバブル星雲部分拡大していて、リニア処理時の画像になります。まだ、バブル星雲もかなりボケてますね。
Image13_ABE1_RGB_ABE4_SPCC_SCNR1_Preview01

2. 次は右下のリセットボタンを押して、すべてデフォルトの状態でどうなるかです。
Image13_ABE1_RGB_ABE4_SPCC_SCNR_BXTdefault_Preview01
恒星は上で書いた収差補正などが入り、さらに星を小さくする効果(0.5)で実際に星が小さくなっているのがわかります。そして確かに星雲部の分解能が上がっているのがわかります。今回の画像は全てBin2で撮影しDrizzle x2をかけてあることに注意で、これにBXTをかけたことになるので、相当な解像度になっています。

3. さてここで、PSFの効果を見てみます。パラメータはSharpen Stars: 0.70, Adjust Star Halos: 0.00, Sharpen Nonsteller: 1.00で、PSF Diameterだけ変えてみます。極端な場合のみ比べます。まずはPSFが最小の0の場合です。
Image13_ABE1_RGB_ABE4_SPCC_SCNR_BXTSS07PD0_Preview01

次にPSFが最大の8の場合です。
Image13_ABE1_RGB_ABE4_SPCC_SCNR_BXTSS07PD8_Preview01

あれ?恒星は確かに少し変わっていますが、星雲部が全く同じに見えます。このことは、PSFを1から7まで変えて比較しても確認しました。


4. BXT1時代にはPSFを変えたら星雲部が大きく変わっていたはずです。念のためAI2にして確認しました。

PSFが4.0の場合。
Image13_ABE1_RGB_ABE4_SPCC_SCNR_BXTSS05PD4_Preview01

PSFが8.0の場合です。
Image13_ABE1_RGB_ABE4_SPCC_SCNR_BXTSS05PD8_Preview01

他のパラメータは全て同じなので、やっぱり明らかにPSF Diameterだけで星雲部が大きく変わっています。

5. ここで、再びAI4に戻りもうひとつのパラメータ「Sharpen Nonsteller」をいじってみました。1.0からから0.5に変えています。
Image13_ABE1_RGB_ABE4_SPCC_SCNR_BXTSS07PD8N05_Preview01
これまでのSharpen Nonstellerが1.0の時と比べて、明らかに星雲部の分解能は出にくくなっています。

今回のリリースノートでは星雲部の記述がほとんどありません。ということはPSFに関しては大きな仕様変更?それともバグ?なのでしょうか。ちょっと不思議な振る舞いです。でもBXT1の時のように星雲部の解像度を出すパラメータがPSF DiameterとSharpen Nonstellerの2つあるのもおかしな気もするので、BXT2の方がまともな設計の気もします。いずれにせよ、今回のAI4ではすでに星雲部に関しては最初から最大限で分解能を出してしまっていて、これ以上の分解能は出せないようです。BXT1の時には星雲部の解像度出しが大きく扱われていたので、これを期待して購入すると、もしかしたら期待はずれになってしまうかもしれません。

でもちょっと待った、もう少しリリースノートを読んでみると、BXTの2度掛けについての記述が最後の方にあることに気づきます。

The “Correct First” convenience option is disabled for AI4 due to the new way it processes image data. It is also generally no longer necessary. If desired, the same effect can still be accomplished by applying BlurXTerminator twice: once in the Correct Only mode, and then again with the desired sharpening settings. The same is true for the “nonstellar then stellar” option: it is generally not needed anymore with AI4, but can be accomplished manually if desired.

Correct Firstとnonstellar then stellarはAI4では使えなくしたとのことで、その代わりに一度Correct Onlyをかけて、その後にCorrect Onlyを外して好きな効果をかければいいとのことです。

実際に試してみましたが、いくつか注意点が必要そうです。下の画像は、上で使ったオリジナルの画像から
  1. Correct Only
  2. Sharpen Stars: 0.70, Adjust Star Halos: 0.00, Automatic PSF: on, Sharpen Nonsteller: 1.00
  3. Sharpen Stars: 0.00, Adjust Star Halos: 0.00, Automatic PSF: on, Sharpen Nonsteller: 1.00
  4. Sharpen Stars: 0.00, Adjust Star Halos: 0.00, Automatic PSF: on, Sharpen Nonsteller: 1.00
4回かけています

Image13_ABE1_RGB_ABE4_SPCC_SCNR1_BXTCO_SS07auto_SS0auto_SS0auto

まず、星雲部の解像度出しを後ろ3回でかけていることになりますが、その効果は回数分きちんと出ていて、複数掛けで効果を増すことができるのがわかります。その一方、Sharpen Starsは2回目のみにかけ、それ以降はかけていません。これは繰り返しかけると恒星がどんどん小さくなっていき、すぐに破綻するからです。3回目のみにかけるとか、4回目のみにかける、もしくは小さい値で複数回かけてもいいかと思いますが、恒星が破綻しないように注意してチェックする必要があると思います。

最も重要なのが、PSFの設定です。BXT1時代にはここをマニュアルで数値を入れてやることで、星雲部の解像度が調整できましたが、ここまでの検証でBXT2ではその効果は無くなってしまっています。しかも、ここで試しているようなBXT2の複数回掛けで固定PSFにすると、小さくなっていく恒星に対して間違った値のPSFが適用されてしまい明らかに恒星が破綻していくので、Automatic PSFを必ずオンにしておく必要がありそうです。

というわけで、ここまでの検証でまとめておくと、
  • BXT2は星雲部の解像度出しの効果が弱いので、複数回がけで効果を強くすることができる。
  • 複数掛けは作者がOKを出している。
  • Sharpen Stars(と、今回は検証してませんが多分Adjust Star Halosも)は無理をしない。
  • PSFはオートにしておいた方が楽で変なことが起きないのでいい。
と言うことがわかりました。PSFはNiwaさんの言うようにBXT2をかけるたびに毎回きちんと測定してからその値を入れるのでもいいかもしれませんが、私の方では今回は検証していません。


BXTの中身について推測

BXTですが、まだまだブラックボックスなところはたくさんあります。ここからはあくまで個人的にですが、どんなことが行われているのか色々推測してみようと思います。

最初に、AIと言っていますがどこに使っているのか?です。自分だったらここに使うとだろうという意味も込めて推測しています。

まずは「恒星とその他の天体の区別」にAIを使っているのではないかと思います。これはStarXterminatorで既に実装されているのでおそらく確実でしょう。画像の中にはものすごい数の星があります。全てまともな形をしていればいいのですが、収差などで崩れた形の(元)恒星もきちんと恒星と認識しなければいけません。ここはAIの得意とする分野だと思います。でも、恒星の認識率も100%にするのはかなり難しいと思います。リリースノートで示されているような種類の収差を膨大な画像から学習しているものと思われ、逆にそうでないものは恒星でないと判断すると思います。ハッブルの画像などから学習したと書いていますが、ハッブルの画像は逆に収差は比較的小さいと思いますので、これと収差があるアマチュアクラスの画像を比べたりしたのでしょうか。それでも現段階でのAIなので、学習も判別も当然完璧では中々ないはずなのですが、例えば銀河などはかなりの精度で見分けているのかと思います。

個別に恒星が認識できたら、恒星にのみdeconvoutionを適用することが可能になるはずです。上での検討のように、BXT1では超微恒星は星像改善がなかったものが、BXT2では無事に恒星として認識できて星像改善されているので、このことは認識できた恒星にのみdeconvoutionを適用していることを示唆しているのかと思います。従来のdeconvolutionは効果を画面全体に一度に適用せざるを得ないので、恒星部と星雲部に同様にかかってしまいます。恒星が星雲を含む背景から分離でき、そこにのみdeconvolutionをかけられるなら、個別に効果を調整できるので、従来に比べてかなり有利になるでしょう。

ただし、恒星が小さくなった後に残る空白の部分は、従来のdeconvolutionでは黒いリング状になりがちなのですが、BXTはかなりうまく処理しているようです。説明を読んでも「リンギングなしでうまく持ち上げる」くらいしか書いていないのでわからないのですが、ここでもAIを使っているのかもしれません。例えば、簡単には周りの模様に合わせるとかですが、もう少し考えて、恒星の周りの中心よりは暗くなっているところの「背景天体の形による輝度差」をうまく使うとかも考えられます。輝度を周りに合わせるようにオフセット値を除いてやり、模様を出しやすくしてから、それを恒星が小さくなったところの背景にするなどです。S/Nは当然不利なのですが、そこをAIをつかってうまくノイズ処理するとかです。本当にこんな処理がされているかどうかは別にして、アイデアはいろいろ出てくるのかと思います。

あとBXTの優れているところが、画像を分割して処理しているところでしょう。512x512ピクセルを1つのタイルと処理しているとのことで、その1タイルごとにPSFを決めているとのことです。収差処理もおそらく1タイルごとにしているのでしょう。現在のAI処理はそれほど大きなピクセル数の画像を扱っていないので、どうしても一回の処理のための画像の大きさに制限が出るはずです。でもこのことは画像の各部分の個々の収差を、それぞれ別々のパラメータで扱うことにつながります。四隅の全然別の収差がどれも改善され、恒星が真円になっていくのは、見事というしかありません。これをマニュアルでやろうとしたら、もしくは何かスクリプトを書いて個々のタイルにdeconvolutionをかけようとしたら、それこそものすごい手間になります。画面全体に同じ処理をする従来のdeconvolutionなどとは、原理が同じだけで、もう全く違う処理といってもいいかもしれません。


微恒星の補正について

もう一つ、極々小さい微恒星がさらにdeconvolutionされたらどうなるか考えてみましょう。

もともと時間で変動する1次元の波形の周波数解析によく用いられるFFTでは、サンプリング周波数の半分の周波数以下でしか解析できません。この半分の周波数をナイキスト周波数と言います。要するに2サンプル以上ないと波として認識できず、周波数が決まらないということです。ではこの2サンプルのみに存在するインパルス的な波を、無理矢理時間軸で縮めるような処理をしてみたらどうなるでしょうか?元々あった2サンプルで表現されていた波が2サンプル以下で表現され、より高周波成分が存在するようになります。

これと同じことを2次元の画像で考えます。上のFFTの時間が、画像のドットに置き換わり、縦と横で2次元になったと考えます。周波数と言っているのは画面の細かさになり、「空間周波数」という言葉に置き換わります。細かい模様ほど空間周波数が高く、荒い模様ほど空間周波数が低いと言ったりします。

1ドットのみの恒星は、本当に恒星なのか単なるノイズなのか区別のしようがありません。少なくとも各辺2ドット、すなわち4ドットあって初めて広がりのある恒星だと認識できます。この各辺2ドットがナイキスト周波数に相当します。超微恒星に対するdeconvolution処理はこの4ドットで表されている恒星を、4ドット以下で表現しようとすることになります。その結果、この画像はナイキスト周波数以上の高周波成分を含むことになります。

deconvotionはもともと点像であった恒星と、その点像が光学機器によって広がりを持った場合の差を測定し、その広がりを戻すような処理です。その広がり方がPSFという関数で表されます。広がりは理想的には口径で決まるような回折限界で表されますが、現実的にはさら収差などの影響があり広がります。BXTはあくまでdeconvolutionと言っているので、ここに変なAIでの処理はしていないのかもしれませんし、もしくはAIを利用したdeconvolution「相当」なのかもしれません。

BXT1からBXT2へのバージョンアップで、処理できる収差の種類が増えていて明確に何ができるのか言っているのは注目すべきことかと思います。単なるdeconvolutionなら、どの収差を補正できるのか明確には言えないはずです。でもAIで収差の補正の学習の際、どの収差か区別して学習したとしたら、deconvolution相当でどのような収差に対応したかが言えるのかと思います。そういった意味では、やはりBXTのdeconvolutionは後者の「相当」で、AIで置き換えられたものかと思った方が自然かもしれません。


BXTの利用目的

ここまで書いたことは多分に私自身の推測も入っているので、全く間違っているかもしれません。BXTの中身の実際はユーザーには全部はわからないでしょう。でも中身はどうあれ、実際の効果はもう革命的と言っていいほどのものです。

個人的には「個々のタイルでバラバラな収差をそれぞれのPSFで補正をして、画像の全面に渡って同等な真円に近い星像を結果として出しているところ」が、マニュアルでは絶対にやれそうもないところなのでイチオシです。もちろん今のBXTでは完璧な処理は難しいと思いますが、現在でも相当の精度で処理されていて、BXT1からBXT2のように、今後もさらなる進化で精度が上がることも期待できそうです。

では、このBXTが完璧ではないからと言って、科学的な目的では使えないというような批判は野暮というものでしょう。そもそもBXTは科学的に使うことは目的とはしていないはずです。

それでもBXTを科学的な側面で絶対使えないかというと、使い方次第だと思います。例えば、新星を探すという目的で、BXTでより分解能を増した上で何か見つかったとしましょう。それが本物かフェイクかの「判断」は他のツールも使うなどして今の段階では「人間が」すべきでしょう。判断した上で、偽物ということもあるでしょうし、もし本物だったとしたら、例え判断はBXTだけでできなかったとしても、そのきっかけにBXTが使われたいうことだけで、BXTの相当大きな科学的な貢献になるかと思います。

要するに「ツールをどう使うか」ということだと思います。今の天文研究でもAIが盛んに使われようとしていますが、主流は人間がやるにはあまりに手間がかかる大量のデータを大まかに振り分けるのを得意としているようです。ある程度振り分けたら、最終的な判断はAIに任せるようなことはせず、やはり人の目を入れているのが現実なのかと思います。AIは完璧ではないことはよくわかっているのだと思います。


まとめ

BXTはどんどんすごいことになっていますね。今後はBXT以外にもさらに優れたツールも出てくるでしょう。将来が楽しみでなりません。

何年か前にDenoise AIが出た時も否定する意見はありましたし、今回のBXT2も推測含みで否定するケースも少なからずあったようです。デジカメが出た時も否定した人が当時一定数いたことも聞いていますし、おそらく惑星撮影でWavelet変換を利用した時も同じように否定した人はいたのかと思います。新しいものが出た時の人の反応としてはごく自然なのかもしれませんが、私は個人的にはこのような新しいツールは大歓迎です。新しいものが出たときに否定だけするような人から、新しい革新的なツール作られるようなことなどほぼあり得ないでしょう。新しいツールはその時点では未熟でも、将来に発展する可能性が大きく、その可能性にかけるのが正しい方向かなと思っています。

実際私も、電視観望をしていて頭ごなしに否定されたことが何度がありました。でも今では電視観望は、眼視と撮影の間の手法として確立してきているはずです。当時否定された方達に、改めて今電視観望についてどう思っているのかお聞きしてみたかったりします(笑)。

BXT素晴らしいです!!!

SharpCapのバージョン4.1.11226 (10月30日) 以降から、独自のビルトインのプレートソルブ機能「SharpSolve」が搭載されました。これでもう、外部のプレートソルブソフトをインストールする必要がなくなります。不安定だと思われていたトラバースを使って試してみたので、記事にしておきます。


設定方法

使い方ですが、 メニューの「ファイル」SharpCapの設定画面を開き、「プレートソルブ」タブを選びます。
01_PS_setting
  1. 「プレート解析エンジン」のところで「SharpSolve(SharpCap's built in plate solver)」を選びます。もしこの選択肢が出てこない場合は、SharpCapのバージョンが古いことが考えられますので、今一度バージョンが4.1.11226より新しいかチェックしてみてください。バージョン番号はSharpCap画面の一番上のところに表示されています。
  2. 焦点距離は自分が使っている望遠鏡の値を正しく入れてください。
  3. 解析範囲が視野角で0.5度以上の場合はもうこれでOKですが、もし0.5度以下の視野で解析したい場合は、インターネットに繋いだ状態で「インデックスファイルのダウンロード」を押してください。ネットの速度にもよりますが、1分程度でダウンロードが終わり、その後「0.25度」が選択できるようになります。
設定はせいぜいこれくらいです。実際に試してみましょう。


SharpSolverのテスト

今回架台は経緯台のトラバースで試しました。以前ASTAPやASPSでプレートソルブ試した時に、AZ-GTiに比べてトラバースだと明らかに不安定なことがあり、その後コントローラーソフトのSynScan Proを最新版にしてAZ-GTiもトラバースもかなり安定になったという経緯があります。このトラバースで動くなら、おそらく他の架台だとほぼ問題なく動くでしょう。

適当に初期アラインメントをします。画面に星が表示されますが、最初の導入なのでおそらく方向は正確ではないはずです。今回もベテルギウスを導入したつもりが、全然画面内には来ていません。試しにまずはここでASTAPを実行してみました。

ASTAPでの恒星の認識はうまくいくときはうまくいくのですが、たまに(方角や、星の見え方によって)全くうまくいかない時があります。こんなときは代わりにプレートソルブエンジンをASPSに切り替えてその場を凌いでいたのですが、ASPSは解析するのに時間がかかってじれったいのと、ASPSでもうまくいかないことがあって、そんな場合は見ている方向をわざと変えてやって認識させたりしていました。

このSharpSolveはかなり優秀みたいで、今回たまたまASTAPでうまく認識できなかったのですが、SharpSolveに変えたら全く問題なく認識できました。しかも認識の速度がかなり速いです。ASTAPもそこそこ速いと思っていましたが、SharpSolverはそれ以上の速度です。

うまくいくと以下のような画面になり、何度くらいずれていたがが出てきます。
02_PS_setting_success

今回は2.23度ずれていたとのこです。赤道儀や経緯台をSharpCapに接続しておいて、このずれを架台にフィードバックして課題の向きを補正することで、架台が今向いていると思っている方向と、実際に向いている方向を自動的に一致させます。

ちなみに、「プレートソルブ」という単語の意味は、「今見いている視野の方向を計算して求める」ということに過ぎず、架台の方向を補正するという意味は含まれていませんが、最近では「方向の補正」まで含めてプレートソルブという単語で表すことが多くなってきていますね。


まとめ

今回はSharpCapの新機能「SharpSolve」でプレートソルブを試しましたが、安定性、速度はこれまでのプレートソルブソフトを凌駕しています。トラバースでも全く問題なく動いたので、かなりのものでしょう。これでトラバースでの電視観望が完全に実用レベルになったのかと思います。

まだSharpSolveを試していない方は是非とも試してみてください。


めだかと暮らすひとさんが、SharpCapでのライブスタック撮影で、縞ノイズに悩まされているようです。



ここではできる限り簡単な解決策の一つとして、ガイド無しのディザー撮影のやり方を示したいと思います。


縞ノイズの原因

 最近電視観望というと、リアルで見ると言うより、ライブスタックを使った簡単な撮影を指すことも多いようです。めだかと暮らすひとさんも、最近やっとAZ-GTiを赤道儀モードにして、視野回転のない追尾を実現したとのことです。でもまだガイド鏡もなく、ノータッチガイド(死語?)での撮影で、電視観望的にライブスタックを利用して、最後にスタックされた画像を処理しているとのことです。問題は、赤道儀の極軸が合っていないとライブスタックをの間に画面が流れていって、縞ノイズができてしまうことです。これは例え極軸が合っていたとしても、またガイド撮影をして画面が流れないように頑張っても、機材のたわみなどがごく普通に存在するので、1時間オーダーの長時間の撮影では縞ノイズが出ることがよくあります。

縞ノイズの原因は、ホットピクセルやクールピクセルなどの、センサーのある点にいつも存在する異常ピクセルが、画面の流れとともに全て同じ方向に動き、縞のようになることです。


縞ノイズの解決策

縞ノイズ軽減する方法の一つは、ダーク補正することです。SharpCapには簡単なダーク補正方法が搭載されていて、右側パネルの「ダーク補正」の「Hot and Cold Pixel Remove」を選び、簡易補正で済ませます。これはホットピクセルとコールドピクセルを簡易的に取り除く機能ですが、つい最近搭載されたもので、これまでは「Hot Pixel Removal Only」とホットピクセルのみの除去しかできませんでした。以前示したSharpCap上でダークファイルを撮影してリアルタイムダーク補正することもできますが、

ダークファイルでの補正だと基本的にコールドピクセルの補正はできないはずなので、簡易的ですが「Hot and Cold Pixel Remove」の方が有利な可能性が高いです。このオプションががある場合とない場合では数のような違いがあります。
comp
左がオプションなし、右がオプションありです。左の画像を見ると、赤とか緑の輝点が下向きに伸びているのがわかります、右もすごくよく見るとまだ輝点が残っているのがわかりますが、ほとんど目立っていないのがわかります。

それでもダーク補正では縞ノイズを軽減するだけで、完全に消すことはできません。一番確実な方法は、ディザー撮影をすること。ディザーというのは、長時間撮影の途中でわざと画面を数ピクセルとかずらして、異常ピクセルの影響を散らしてやることでかなり軽減できます。今回の問題はこのディザー、一般的にはガイド撮影と込で実現されるので、ガイド撮影をしていない限りディザーはできないと認識されているだろうことです。めだかと暮らすひとさんみたいに、ガイドをしていなくても縞ノイズを解決したいという要求はきっとあることでしょう。


ガイド無しディザーの方法

その方法ですが、前提としてSharpCapで経緯台、赤道儀などが接続されていて、SharpCapからコントロールできることです。赤道儀でなくてもコントロールできるなら経緯台でも構いません。今回はトラバースで試しました。トラバースはAZ-GTiのミニチュア版とも言える、自動導入、自動追尾機能がある経緯台です。

設定方法です。まずメニューの「ファイル」の「SharpCapの設定」の中の「ガイディング」タブで、下の画面のように「ガイディングアプリケーション」を3つ目の「ASCOMマウントパルス...」を選びます。

07_guide_setting
「ディザリング」の中の「最大ディザステップ」はある程度大きくしておいた方が効果が大きいです。私は「40」まで増やしました。値が小さいと効いているかどうかもわかりにくいので、最初多少大きめの値をとっておいて効果を確認し、大きすぎたら減らしていくがいいのかと思います。

その後、ライブスタックの下部設定画面の「Guiding」のところで、最初のチェック「Monitor Guideng Application...」をオンにします。「Automatically DIther」をオンにし、「Dither every:」でどの頻度ディザーするのか選びます。撮影の場合は「Frames」を選んで、何枚撮影することにディザーをするかを選んだ方がいいでしょう。実際には数分に1回くらい散らせば十分なので、今回の1回の露光時間が20秒とすると、10枚に1枚、3分ちょっとに1回ずらすことにしました。
05_dither

するとライブスタックで10枚スタックするごとに、下の画面のように上部にの緑色のバーが現れて、ディザーが実行されます。
06_dither

実際にディザーの効果があるか確認してみましょう。30フレーム分を動画にしてみました。輝点が右下に進んでいきますが、その途中で一度カクッと下に降りて、またカクッと上に上がるのがわかると思います。でもまだずれが少ないので、もっと大きな値でも良かったかもしれません。
Blink

実際のSharpCap上のライブスタック画面では、ディーザーが何度が進むと、最初に見えていたミミズが散らされてどんどん薄くなっていきます(すみません、画像を保存するのを忘れてしまいました)。

ただし、今回は雲がすぐに出てきてしまい、実際の長時間で縞ノイズが見えたわけではないので、ディざーなしで縞ノイズが出て、ディザーをオンにして縞ノイズが消えることを確認すべきなのですが、今回はとりあえず手法を書くだけにしました。後日確認ができたら、また結果を追加したいと思います。


ついでの画像処理

最後に、今回撮影した画像2種を仕上げてみました。FMA135にCBPを付け、Uranus-Cで撮ってます。課題はトラバースなので小さくて楽なものです。ただし経緯台なので星が回転もしくは流れてしまうので長時間露光はできず、1フレーム当たり20秒露光の露光で、ゲインは高めの300としています。共に、かなり淡いところまであぶ出していますが、上の動画でもわかりますが、少なくとも経緯台でガイド無しなので、撮影時にかなり流れてはいるのですが、これくらいの露光時間ではかなり炙り出しても縞ノイズは出ていないことがわかるかと思います。


M42: オリオン大星雲
オリオン大星雲はライブスタックで30フレームの計600秒、ちょうど10分経った時に保存したfitsファイルから画像処理しました。SharpCapの時点でスタックまで終わっているので、かなり楽です。星雲本体周りの分子雲も少し写っています。
Stack_16bits_30frames_600s_21_35_52_crop_SPCC_ABE4_BXT_MS2

向きを変えて星雲部分を切り取り。
Stack_16bits_30frames_600s_21_35_52_crop_SPCC_ABE4_BXT_MS_cut2

口径3cmの高々10分でこれならまずまずではないでしょうか。


M31: アンドロメダ銀河
2枚目はM31、アンドロメダ銀河です。こちらは途中雲がかかり、ライブスタック画像ではかすみがかってしまったので、別途1枚1枚保存してあったRAWファイルから、PixInisightでスタックして処理しました。トータル露光時間はM42よりさらに短く、14枚でわずか4分40秒です。
3856x2180_EXPOSURE_20_00s_ABE4_SPCC_BXT_GHT_HT_bg_rot
こんな短い時間でも、情報としてはある程度残っているものです。さすがにかなりギリギリ出しているので、どうしてもノイジーなのは否めません。


まとめ

今回は、ガイド無しでディザーする方法を示しました。まだ実際の長時間撮影はできていないので、またいつか試したいと思います。

曇りがちで十分な撮影時間をかけることができませんでしたが、それでも口径3cmでもそこそこ情報は残っていて、ある程度画像処理すれば十分見えるくらいにはなることがわかりました。途中で気づいたのですが、ライブスタック時にBrightnessフィルターを入れると、雲が入った時の画像のスタックを回避できるので、そういったことも今後試していきたいと思います。

こうやって見ると、小さなトラバースでも撮影に耐え得るくらい、十分に安定していることがわかります。



プレートソルブトラブル解決集の続報です。今回はある意味決定版になっています。前回あやふやにし解決できなかったことが、かなり確実に解決できるようになりました。




SynScan Proの最新版

2023/9/2にSynScan Proの最新版(v2.4.5)がリリースされました。リリースノートによると、今回のバージョンアップでプレートソルブ関連で以下のような改善をしています。
  • Re-enabled PAE, where were disabled from 2.3.4 to 2.3.9
  • Replaced "Align with Sync" page with "Sync samples" page.
  • Multi-star alignment, where performing any of the following adds a sync sample:
  • Using one of the alignment methods from the Alignment page
  • Centering on a celestial object at the prompt after any catalog object GOTO
  • Receiving a `SyncTo` command from ASCOM with a plate-solving software
これは2022年9月にバージョン1台からバージョン2台になって以来、初めてのプレートソルブ関連の大きな改善です。バージョン2以降では、上に書いてある2.3.4でPAE(調べるとPointing Accuracy Enhancementとのことです)をオフにしたことが唯一の変更で、それも今回戻してあるということなので、それを含めて初の大きな改善となるということです。

現実に、バージョン1台でそこそこ安定だったプレートソルブ関連は、バージョン2台で不安定になりがちでした。そのため、プレートソルブを試す際は、まずは手持ちのSynScan Proを現段階で最新のv2.4.5以降にすることをお勧めします。実際に、今回かなり安定な状況を実現できています。

また、最新のSynScan ProではPCに接続されたゲームコントローラーでAZ-GTiが動かせるそうです。私はまだ試していませんが、Xbox互換、PS3互換のものが使えるそうなので、興味がある方は一緒に試してみるのもいいかもしれません。

あと、SynScan Proではなく、ただのSynScanもアップデートされていますが、こちらはProを単に機能制限しただけのようなものです。その機能制限の中にはワンスターアラインメントなどあって然るべき機能も含まれて制限されてしまっているので、私は今はProの方しか使っていません。SNS上には、Proでない方でどうしても解決しなかったトラブルが、ショップの方の助言でProにしただけで一発で解決したという例もあるみたいなので、何か理由がない限りPro版を使う方がいいのかと思います。


接続の確認

今回の動作条件は、AZ-GTiを使ったプレートソルブをするために、PCにSynScan ProとSharpCapがインストールされていて、それぞれをASCOM環境で接続するためにASCOMプラットフォームがインストールされていることとします。プレートソルブはASTAPもしくはASPSを使います。最新のSharpCapではPlatesolve3もサポートしているので使えるかもしれません(私はまだ未検証)。

1. SynScan ProとAZ-ZTiの接続

まずはSynScan ProとAZ-ZTiの接続がきちんと確立されているか確認します。接続方法はデフォルトのWiFiを使っても、オプションのケーブルを使った有線でも、どちらでも構いません。プレートソルブをするためには「PC上の」SynScan ProとAZ-GTiを接続することが必要で、最初はスマホやタブレットのSynScan Proでの接続でも構いませんが、プレートソルブ時、より正確にいうとSharpCapと接続する時にはPC上で動いているSynScan Proとの接続が必要になります。

経緯台モードか赤道儀モードかはどちらでも構いません。自分が設置している状態に合わせてください、どちらのモードでも正しくプレートソルブができます。

一つ重要なことが、緯度経度情報が正しく入っているかです。SynScan Pro上で「設定」から「位置情報」を見て、きちんと緯度経度が入力されている確認します。

13

PCはGPSを持っていないので、位置情報を自動的には取得できないことが多いです。GPSを持っていなくてもインターネットから位置情報を獲得することもできますが、正しい位置にならない場合もありますので、自分で数値で確認するのが確実です。ここが大きく間違っていると、プレートソルブも初期アラインメントも全然違った方向に行ってしまいます。関連した注意ですが、最初スマホやタブレットのSynScan Proに接続して正しい位置情報が入っていると思っても、PCに切り替えた時にはその情報は引き継がれません。なので、PC上のSynScan Proで位置情報を確かめるようにしてください。


2. SharpCapとSynScan Proの接続

次にSharpCapとSynScan ProをASCOM経由で接続します。ASCOMプラットフォームはASCOMのページから、SynScanアプリ用のASCOMドライバー(2023/9/11現在、2023/9/3のv1.4.0が最新)はSkyWatcherのページからダウンロードしてインストールしてあるとします。

SharpCapの「設定」の「ハードウェア」から「SynScan App driver」を選び、メイン画面右の「望遠鏡制御」の「接続済み」をオンにします。正しく接続されると、AZ-GTiが向いている方向などの数値が出てきます。一つ確認しておくといいのは、その数値が時間と共に動いているか、PC上のSynScan  Proの「ユーティリティ」の「情報」を見て、その数値と合っているかを見ることで、きちんと接続されているかがわかります。実際、以前のバージョンでは数値が動かなかったり、全部0だったりして、接続できたように見えてもうまく接続できていないことが何度かありました。今のところ、最新バージョンのSynScan Proでは接続に失敗したことはありません。


SharpCapのプレートソルブの設定

接続がきちんとできていたら、次はプレートソルブの設定の確認です。まず、SharpCapの「設定」「プレートソルブ」画面を見ます。

14_ps_gauss

ASTAPもしくはASPS、もしくはその両方がインストールされているでしょうか?インストールされている場倍は、上の画面のように下の方にFoundとかでますが、まだインストールされていない場合は、どちらか、もしくは両方ともインストールしてください。「プレートソルブアプリケーションの選択」で選択することも忘れないでください。お勧めはASTAPですが、たまにASTAPだと解決できなくて、ASPSだと解決できることがあります。でもASPSは遅いので私は普段使いはASTAP、どうしてもダメな時はASPSとしています。

重要なことの一つ目は、焦点距離がきちんとあっているかです。これが実際の鏡筒と大きく間違っていると、どうやってもプレートソルブで位置解決ができません。

重要なことの二つ目は、下の画像のようにSynScanとの同期方法を4つ目の「マウント位置をオフセットして、天体位置を中央に配置する」を選ぶことです。これまでは2つ目の「マウントを同期し、天体を中央に再配置する」にしてたのですが、SysScan Proが反応せずAZ-GTiが動かないことがありました。4つ目のオプションは今のところほとんどの場合AZ-GTiをきちんと動かせています。

01_platesolve_gauss


初期アラインメント

準備ができたら、初期アランメントの最中にプレートソルブを試してみましょう。まずはSynScan Proから「アラインメント」を選びます。1スターアラインメントで十分でしょう。出てきたリストの中から、今見えているわかりやすい星を選び、そのまま導入します。今回は木星を選びました。

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SynScan Proがターゲット天体に向くまでに、ターゲットまでの差が角度で表示され、数字がどんどん小さくなっていきます。SynScan Proがターゲットの方向に向いたと思い込んだ時に下のような画面になります。

04

ここで、SharpCapの画面にターゲットの星が出て来ればいいですが、出てこない場合はプレートソルブの出番です。上の画面で書いてある「マニュアルで中心に」というのの代わりに、「プレートソルブで中心に」持って行ってやるという意味です。なのでこの時点ではまだ、完了をSynScan Proに知らせる真ん中の「星印の横長ボタン」を押してはいけません


プレートソルブの実行

プレートソルブはSharpCapのメニューの「ツール」から「プレートソルブ後再同期」を選ぶか、右側パネルの「望遠鏡制御」の方向矢印の左下の方角マークのようなアイコンを押します。

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うまくプレートソルブが下位を見つけると、どれだけずれていたかの表示が角度で緑色のバーのところに表示され、自動的にターゲット天体が真ん中に来るようにAZ-GTi下に信号が送られて、下の画面のように実際にターゲット天体が導入されます。

07

問題はこうならない時です。いろんなケースがあります。まず、以下のようにNo solution foundと出る場合です。2つの原因が考えられます。もし下の画面のように望遠鏡接続のところの数値が明らかにおかしい場合は、SharpCapとSynScan Proとの接続がうまくいっていません。再度接続しなおしてください。再接続でエラーなど出る場合は、SynScan Proをいったん閉じて再度開いてから、SharpCapから接続してみてください。

スクリーンショット 2023-06-21 204001

接続がうまくいっているはずなのにこのエラー場出る場合は、あまり追求せずにターゲット天体を変えてみてください。一度この状態でできる限りのことをやったことがあるのですが、結局どの試みも失敗し、最後あきらめがてらターゲット天体を変えたら、今までの苦労は何だったのかというくらい、一発でプレートソルブが成功しました。なので最近はこのエラーが出たら無駄なことはせずに、素直にターゲット天体を変えるようにしています。

上の問題が解決した時に、次によく出るエラーが、下の画面のような星が「多すぎる」とか「少なすぎる」とかいうものです。でもこのエラー、SynScan Proを最新版にしてから「多すぎる」というのは見なくなりました。今のところだけかもしれませんが、改善されたのかもしれません。星が「少なすぎる」というのは、プレートソルブをうまくやろうとしているが、取得した画像のクオリティが悪い場合に出てきます。雲が多い、空が明るすぎて星がよく見えないなどです。この場合は露光時間を延ばすとうまくいくケースが多いです。

スクリーンショット 2023-06-21 204001

ただし逆に、露光時間を延ばしすぎてうまくいかないこともあります。例えば星が流れてしまう場合です。私は5秒程度が最もうまくいっています。どれだけ星が流れるかは、AZ-GTiの水平出しの精度、見ている方向などによりますので、取得した画面で星が明らかに流れていないか確認してみてください。星が流れない限りは、露光時間は長いほうが有利です。

このエラーが回避されれば、あとはうまくいくでしょう。自動的にAZ-GTiが動き出し、ターゲット天体が画面真ん中近くに来るはずです。


初期アラインメントの完了と、次の天体の自動導入

プレートソルブがうまくいったら、初期アラインメントのマニュアルで中心へもっていくことが完了したことになります。SynScan Proに残っていた初期アラインメント画面の真ん中の星印バーを押すのを忘れないでください。これでプレートソルブを利用した初期アラインメントは完了です。実際に見てみたい天体をSynScan Proから自動導入してみてください。

さて、初期アラインメントで導入したターゲット天体の近くの天体を自動導入する場合は、特に問題なく画面真ん中らへんに来るかと思います。

ところが、遠くの天体を自動導入する場合は画面内に入らないこともあるかと思いますが、その場合もプレートソルブをしてみてください。設定などはうまくいっているはずなので、今度は特に問題なく真ん中に導入されるはずです。ただし自動導入でプレートソルブをしたとしても、AZ-GTiが認識している(遠くに移動した誤差のために間違って認識されている)位置がアップデートされるわけではないです。そのため、次の天体がもし今導入したものの近くにあったとしても、同じような誤差のために画面内に入ってこなくて、再度プレートソルブをする必要があるかと思います。そんな場合はSynScan Proでアラインメントを選んで、今見ている方向の近くにある星でアラインメントを取り直してみてください。同じように「マニュアルで中心に」と出たところで再びプレートソルブをして、うまく導入されたら初期アランメントを完了して、SynScan Proが認識している位置をアップデートしてみてください。こうすることで、その付近の天体の自動導入できちんと画面内に入るようになるはずです。


トラバースの場合

今回AZ-GTiだけでなく、少し前に発表されたSynScan仲間のトラバースもじっくり試してみました。



上の記事でも少し書いていますが、この記事で試した次の日の観望会でも接続やプレートソルブにトラブルがありました。その後自宅などでも何度か試していたのですが、うまくいく時とうまくいかない時の差がかなりあり、観望会本番で使うのは少し怖いという印象でした。少なくともAZ-GTiと比べると安定度の差はあったかと思います。

ところが、今回SynScan Proのバージョンを最新のものにアップデートしてからは、トラバースで以前経験したようなトラブルは今のところ一切なくなっています。少なくとも、もうAZ-GTiとの差は感じられないレベルの安定度です。

まだ何度か検証する必要はあるかと思いますが、観望会での実戦投入も含めて、実際に使っていけるレベルかと思いますので、今後どんどん活用していきたいと思います。


これ以降は、古いバージョンのSynScan Proで試したことも含めた補足記事です。ほとんど役に立たないと思いますが、参考がてら載せておきます。

Device Hubは関係なさそう

(古いSynScan Proで)AZ-GTiとトラバースを交互に使用するなど、複数台からの接続がうまくいかない場合、ASCOMのDevice Hubを使うといいという情報を得ました。Device Hubは複数の各機器のASCOMドライバーを管理し、接続を制御するという中間的なハブの役割をするものです。ダウンロード場所が分かりにくかったのですがここになります。



前回不安定だった状況を再現し、それがDevice Hubで解決するか試しましたが、残念ながらSharpCap上でASCOM Driver for SynScan Appに直接つなぐ方法と、Device Hubを通してSharpCap上でASCOM Driver for SynScan Appにつなぐ場合では、明確な違いを見ることはできませんでした。


SynScan Proのバージョン

PC上のSynScan Proですが、最新より少し前の2.3.9と(私が持っている古い)1.9.20では明確な違いがありました。今回のSynScan Proの最新版で再びオンにしたというちょっと謎のPAEに関連するかもしれません。 SharpCapから接続してAZ-GTiを動かすことまでは両方とも問題なくできます。ですが、プレートソルブになると2.3.9でAZ-GTiにフィードバックしようとするところまでは行きますが、どうやってもAZ-GTiが反応しないことがありました。それを1.9.20にしたところ、何の問題もなく動くことが何度かありました。1.9.20の方がどうも安定に動くのは確かなようです。

このことは、私だけでなくほかの方も同様の指摘をされていたので、偶然とかではないと思います。最新のSynScan Proのリリースノートにあったように、PAEをバージョン2台のどこかでオフにして再び最新版でオンにしているというので、もしかしたらこれがバージョン1台とバージョン2台の安定性の違いに関係していたのかもしれません


プレートソルブトラブルの振る舞い

もう一つ気づいたことがあります。プレートソルブの最初の段階ですぐに「星が多すぎるのでは」とかのエラーが出て全く動かないときですが、どうも探索範囲が毎回15度程度で止まってしまいこのエラーが出ます。うまくいかない時は、SharpCap上で認識されている鏡筒の向きと、撮影した画像が実際に向いている向きとで大きな違いがあるときに、このエラーが出るようです。問題は、実際にはSynScan Pro上では目標天体の近くを向いていると認識されていても、SharpCapがSynScan Proとうまく接続できていなくて、SharpCap上では全然違う方向を向いていると認識された場合は、このエラーが出るようです。

このエラー、SharpCapのメニューからプレートソルブ実行時に選択できる2つのうちの2つめの「同期までしようとする」とすぐに出るのに、一つ目の「同期せずにプレートソルブだけ試す」と出ないこともあるので、どうも同期までしようとすると15度までの探索とかの制限がかかっているからのかもしれません。

その時やらかしたのですが、SynScan Proの緯度軽度情報を間違っていたり、前回の情報が残っていたりで鏡筒のホームポジションがずれていた場合など、そもそもSynScan Proの方が実際の向きと大きく乖離していると、同じ状況に陥ります。色々触っていると、意外に何度かSynScan Proの段階で間違っていることがありました。この場合、SharpCapといくらうまく接続できていてもダメみたいです。このことの自戒も含めて、今回の記事では注意事項にそのようなことを入れています。


まとめ

今回のSynScan Proのアップデートは、AZ-GTiのプレートソルブに関してかなりの改善がなされたように思います。実際、セレストロン系の赤道儀でこれまでプレートソルブで不安定だったことは一度もなかったので、やはりこれはSynScan系のソフト的な問題だった可能性が高いと思っています。

あと、ASCOMドライバーに関してはアップデートに気づかなくて一つ前の1.3.1を使い続けていましたが、特に不具合は感じませんでした。更新日がSynScan Proとも近いので、もしかしたらアップデートした方がより安定になる可能性もあるかと思います。

あと、これまでのプレートソルブに関するトラブルは、SkyWatcherの代理店であるシュミットさんの方にも何度か報告させていただいていて、今回SynScanおよびSynScan Proがアップデートされた際には、いち早くプレートソルブ関連が改善された可能性があるので試してみて欲しいとの連絡を受けました。私からの報告が実際にフィードバックされたかどうかはわからないのですが、現実にアプリが改善され、連絡までしてもらえたのはとてもうれしく、ショップとしての真摯な対応に感謝したいと思います。また、実際に最新バージョンを試してから記事にするまでに、少し時間がかかってしまったことをお詫びします。

さて、これでAZ-GTiだけでなく、トラバースでのプレートソルブまで実用レベルに達したようなので、カバンの中に余裕で入るミニマムセットでの電視観望をどんどんやっていきたいと思います。

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