ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:観測・撮影 > 星団・星雲

前回記事のゴースト星雲の処理の続きです。




前回はSPCCまでで、モノクロ撮影でBaaderフィルターを選んだらうまく補正ができたという話でした。今回は主にBlurXTerminatorについて試してみて、ゴースト星雲を仕上げています。


BlurXTerminator 

今回はBlurXTerminator (以下BXT)と呼ばれるdeconvolutionソフトを処理してみます。このソフトはRussell Croman氏が独自に書いているもので、氏が書いているいくつかのソフトの最新のものです。特に2021年から機械学習を取り入れたXTerminatorシリーズはノイズ除去のためのNoiseXTerminator (NXT)、スターレス画像を作るStarXTerminator (SXT)といずれも大きな話題となっています。

ノイズ除去ソフトは他にも実用レベルのものがいくつもあるのと、スターレス画像についてはStarNet V2が無料でかなり性能がいいので、私はこれまで氏のソフトは使ってきませんでした。それでも今回のBXTは分解能が信じられないほどに向上するようです。

私自身がdeconvolutionが苦手で、これまでも実際に作例にまで適用したのは数例。大抵は試してもあまり効果がなかったり、リンギングが出たりで、よほどうまくいった場合でないと適用してきませんでした。deconvolutionはどうしても時間を費やしてしまうので、画像処理の中でも大きな鬼門の一つでした。

BXTは、マニュアルとかに書いてあるわけではないようなのですが、基本的にはリニア画像のL画像のみに使うべきだという噂です。とりあえずまずはスタック直後のL画像で検証してみます。パラメータは基本的に2つだけで、
  1. 星像をどこまで小さくするかと、
  2. 分解能をどこまで出すか
だけです。

星像の補正

パラメータは上記の2つだけですが、BXTで「Correct」と呼ばれている、あまり注目されていな星像補正の効果があります。これだけでもかなりすごいので、まずはそこに注目してみたいと思います。

この機能はBXTを走らせるとデフォルトで適用される機能です。ですがこの機能の凄さを確かめるために「Correct Only」オプションをオンにして、この機能だけを試してみます。星像を小さくしたりとか、星雲の分解能を上げるといいった効果を適用「しない」、ある意味BXTのベースとなるような機能です。

マニュアルを読むと以下のものを補正できるそうです。
  • limited amounts of motion blur (guiding errors)
  • astigmatism
  • primary and secondary coma
  • unequal FWHM in color channels
  • slight chromatic aberration
  • asymmetric star halos.
とあります。日本語に意訳すると、
  • ある程度のブレ(ガイドエラー)
  • 非点収差
  • 1、2次のコマ収差
  • 各色のFWHM (星像の大きさ) の違い
  • 多少の色収差
  • 非対称なハロ
となります。どうやらものすごい威力のようです。マニュアルにはさらに「画像位置によってそれぞれローカルなPSFを適用する」ということで、たとえば四隅ごとに星像の流れが違っていてもそれぞれの流れに応じて補正してくれるようです。こんなソフトは私の知る限りこれまでなかったはずで、もし本当ならすごいことです。

試しにスタック後のL画像でオリジナルの画像とCorrect onlyだけで試した結果を比較して、四隅をGIFアニメにしてみました。
masterLight_BIN_2_4144x2822_EXPOSURE_300_00s_FILTER_L

自分的には四隅とも十分真円に見えていたので、全然問題ないと思っていました。でもBXTは躊躇することなくおかしいと認識しているようで、正しく直してくれているようです。左下は星像の大きさが少し小さくなるくらいでままだましですが、左上の画像は少し下方向に、右上の画像は大きく左下方向に、右下の画像は大きく左方向にずれていたことがわかります。本当に正しく直しているかどうかは今の段階では不明ですが、少なくとも見た目は正しい方向に直しくれているようです。効果が分かりにくいという方は、できるだけ画面を拡大して見てみてください。

この結果はすごいです。実際の撮影が完璧にできることはほとんど無理で、何らかの不具合がある方がごくごく普通です。これらのことが画像処理で補正できるなら、安価な機材が高価な機材に迫ることができるかもしれませんし、なにより撮影時のミスなどで無駄にしたと思われる時間を救い出せるかもしれません。はっきり言って、この機能だけでも購入する価値があると思います。

また、BXTはL画像のみに適用した方がいいとも言われていますが、マニュアルによると各色の星像の大きさの違いも補正できるということなので、BXTをカラー画像に適用することも可能かと思われます。


恒星の縮小

上記補正はBXTでデフォルトで適用される機能。さらにすごい機能が続きます。BXTの適用例を見ていると、普通は星雲部の構造を出すのに期待すると思うのですが、私はdeconvolutionの原理といってもいい星像を小さくする効果にとんでもなく驚かされました。まずは背景の効果をオフにして、星像改善のみSharpen Starsが0.25、Adust Star Halosが-0.25として、適用してみます。

Original:
orignal

BXT (恒星の縮小のみ):
staronly

まだ小さくすることもでき不自然になることもほとんどないですが、とりあえず今回はほどほどにしておきます。特に左下の明るい星に注目してもらえるとよくわかるかと思いますが、近づいていていあまり分離できていない2つの星がはっきりと分離されます。パラメータによってはハロの処理が少し不自然に見えたりもしますが、自分で頑張ってやった場合より遥かにましなハロになっているので、全然許容範囲です。

これもすごい効果ですね。星像を小さくするのはいつも相当苦労するのですが、リンギングなどもほとんど出ることがなく、このソフトが決定版の気がしています。ぜひともM57の分解能ベンチマークに使ってみたいです。


背景の分解能出し

やっとBXTの一番の目玉の背景の構造を出す機能です。今回はゴースト星雲のバンザイしている手のところなどを見ながらパラメータを攻めていきました。結局のところ、構造を出すSharpen Nonstellerはかなり大きな値にしないとほとんど効果は見えなかったのでデフォルトの0.9のまま、それよりもPSFをマニュアルで設定することで効果が大きく変わることがわかりました。興味があるところをpreviewで表示して効果を見ながら値を決めればいいと思いますが、今回は最終的にPSF Diameterを0.75、Sharpen Nonstellerを0.90にしました。

結果としては以下のような違いとなりました。

Original:
orignal

BTX(恒星の縮小と背景の分解能出し):
BXT_all

あまり効果があるように見えていませんが、これ以上分解能を出すと、ゴースト君が崩れてきてしまいました。かなり拡大して見ているのですが、ここまで拡大してみることをしないなら、もっと大きな構造を見ながら細部を調整するという手もあるかと思います。


その後の画像処理

でもですね、結局L画像にBXTを適用するのは止めました。じゃあどうしたかというと、スタック後RGB合成した後、そのままL画像とLRGB合成をして、その後にSPCC、CTで色出し、その後にやっとBXTを適用しました。

理由は、L画像のみに適用するよりもLRGB画像に適用する方が、特に細部出しのところでノイズに負けずにゴースト部分が出たというのが大きいです。

カラー画像に適用した場合でも、懸念していた恒星の色ズレもなかったです。今回は色々やって最後この順序になりましたが、この順序が正しいかどうかもまだよく分かっていません。BXTはパラメータこそ少ないですが、他のプロセスとの組み合わせで、順序なども考えたら無限の組み合わせがあり、ものすごく奥の深いソフトなのかと思います。

その際、BXTのついでに、NoiseXTerminator(NXT)も使ってみました。もちろんノイズ除去の効果があったのはいうまでもないのですが、その結果大きく変わったことがありました。PixInsightの使用する割合が多くなり、これまでストレッチ後のほとんどの処理を担っていたPhotoshopの割合が相当減って、処理の大方針が大きく変わったのです。具体的にはdeconvolutionが楽になったこと、そのため恒星の処理が楽になったこと、ノイズ処理もPixInsightでNXTで動くことが大きいです。不確定要素を少なくするという意味でも、PIの処理を増やすのは多分真っ当な方向で、以前から考えていてできる限りの処理をPIのみで済ませたいという思いがやっと実現できつつある気がします。

あともう一つ、PIのWBPPでいつものようにLocal Normarizationをオンにしおいたのですが、どうやらこれが悪さをしていたようでした。RGBでそれぞれの背景の大構造でズレが起きてしまったようで、背景に大きな色むらができてしまいました。ABEのせいかとも思い色々探っていって、やっと最後にLNが原因だと突き止めるに至りました。明るい光害地で、かなり無理して淡いところを出していて、スカイノイズの影響は大きいはずです。もしかしたらそこら辺も関連しているのかもしれません。暗いところに行くか、さらに撮影時間を伸ばす必要がありそうです。ここら辺が今後の課題でしょうか。


仕上げ

今回Photoshopでやったことは、最後の好みの色付けくらいです。恒星も背景もPIできちんと出してからPhotoshopに渡したので、かなり楽でした。

「sh2-136ゴースト星雲」
Image13_ABE_ABE_ABE_cut
  • 撮影日: 2022年10月25日20時2分-26日0時27分、10月26日19時17分-21日0時0分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (初日分は-10℃、2日目は+9℃から11℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、L: 54枚、R: 18枚、G: 15枚、B: 12枚の計99枚で総露光時間9時間55分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 L: 0.001秒、128枚、RGB: 0.01秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


おまけ

恒例のAnnotatonです。
Image13_ABE_ABE_ABE_cut_Annotated

あと、前以前飛騨コスモス天文台でTSA120で撮影したゴースト星雲と比較してみます。

まずは以前のもの:
TSA120

今回の画像を同じ画角で比べると、
Image13_ABE_ABE_ABE_cut_comp
自宅といえど、さすが大口径で露光時間も長いだけあります。分解能、恒星、ノイズ、いずれも大きく進歩しています。バンザイしているところもきれいに出ていますね。


まとめ

画像処理をサボっている間に、SPCCやBXTとかなり状況が進んでいました。新しいツールも躊躇せずに、どんどん取り込んでいければと思います。BXTも迷走したりしていますが、使い方によって明らかに良くなったりするので、最適な方法を探っていくほかないと思います。


今回はケフェウス座のSh2-136: ゴースト星雲です。撮影したのはもう結構前で、10月終わり頃になります。

前後関係で言うと、自宅でSCA260で撮影したアイリス星雲とセットで撮影したもので、その意味ではもっと早く処理していても良かったものです。


現実的には撮影後に、小海の星フェスや皆既月食など、他にも色々忙しくてなかなか取り掛かることができなかったという理由もあります。最近のBlurXTerminatorが結構凄そうなので、少し試してみたくなり、時間の取れる年末年始に画像処理を進めてみました。


R画像?

撮影は10月25日の夜と、26日の夜の二日に渡っています。アイリス星雲を撮影していたセットアップのままなので、特に何か変更するでもなかったです。

画像処理を進めていくと、なぜかR画像のみ右上に変なスジが残りました。
masterLight_BIN-2_4144x2822_EXPOSURE-300.00s_FILTER-R_mono

最初は単にアンプグローの残りかと思ったのですが、そうだとすると2つ奇妙なことがあります。一つはGとBにこんなスジは全く出ていないこと、もう一つはダークフレームで見たアンプグローとスジの方向がずれていることです。R画像のスジは全部下向きですが、ダークフレームの筋は放射状に広がっていて、上剥き成分もあります。重ねて比べてみると、上向き成分のあるエリアでもR画像では下向き成分になってしまっているので、アンプグロー起因でない可能性が高い気がします。多数スタックで画角がずれてスジもずれたことも考えましたが、明らかに画角ずれ以上にスジがずれています。

こうなるとRフィルターが何か悪さをしているのかと思ったのですが、この前に撮影しているアイリス星雲のR画像にも、この後の同じ日に撮影している燃える木のR画像にも、そんなへんなスジは見当たりません。そうすると本当に存在するスジかとも思ってしまいますが、他の方の、かなり炙り出してある画像を見てもそれらしいものは見当たりません。釈然としませんが、今回は画像処理で誤魔化すことにしました。


USBケーブル

もう一つトラブルを思い出しました。ゴースト星雲と燃える木の撮影ターゲット切り替えの時に一つやらかしたことです。USBケーブルが引っかかってしまいました。

6B15B0B8-118F-499E-89DD-2B5595D700F1
子午線反転のところは必ずその場にいるようにしているのですが、ターゲット切り替えは部屋の中からリモートでやっています。中途半端に垂れ下がっているケーブルが赤道儀の出っ張りに引っかかったようです。ターゲット移動のときにカメラの映像を見ていたのですが、突然変な感じで映像が止まり、接続が切れたみたいだったのでもしやと思って外に出たら、案の定でした。幸いケーブルの方が破損しただけで、肝心なカメラの端子は無事で、USBケーブルを交換して接続し直したらきちんと認識され、撮影も可能でした。ケーブルの方を弱く作ってくれているのかと思いますが、こういったところはありがたいです。

反省点としては、
  • ケーブルの設置はきちんと弛まずに、かつ回転を妨げないようにすること
  • ターゲット移動の時もきちんと現場にいること
などしょうか。


SPCCの意義

新たにPixInsightで実装されたSPCC(SpectrophotometricColorCalibration )は、かなりすごいですね!懸案だったフィルター補正の機能をうまく実装したと思います。かなり原理的に正しい色に近づく可能性が高くなったと思います。

「PCCは科学的に正しいことをしているので、出来上がった色はおかしいはずがない」とかいう意見もちらほら聞きましたが、実際には全然そんなことはなかったということです。以前からPCCでは基準となるカメラと、個人が撮影するカメラの波長に対する応答が違うので、その分の色ズレが原理的に起きてしまうという主張をしていましたが、その機能が見事に実装されています。


個々のカメラの応答をデータとして持ち、参照カメラとの差を補正しない限り、正しい色にならないということです。今回のSPCCでは、実際に個々のフィルターやセンサー特性をデータベース化して持とうとしているため、原理的にも正しい方向に大きく進んだわけです。

さて、どれくらいの機能が実装されたのか、SPCCを使って実際に色合わせをしてみました。SPCCのインストール方法や、巨大なガイアのデータを落として使えるようになるまでは、マニュアルを見ればすぐにわかりますし、日本語の解説ページもいくつかありますのでそちらに任せるとして、使ってみてのポイントだけ少し書いておきたいと思います。

まず、プレートソルブがScriptのImageAnalysisにImageSolverに集約されたことです。これまではPCCは専用のプレートソルブ機能を持っていたのでですが、SPCCはもちろん、PCCもあらかじめ別途ImageSolverを走らせておかなければ、使うことができないようになってしまっています。このことを知らなければ、これまでのユーザはとまどうかもしれませんが、これは正常進化の一環で、一度わかってしまえばこれ以降特に問題にはなることはないはずです。

一番戸惑うところは、フィルターの選択でしょう。デフォルトはソニーセンサーのUV/IRカットフィルターになっています。今回の撮影ではASI294MM Proを使っているので、最初はここら辺から選ぶのだろう考えました。UV/IRフィルターは使っていないので、フィルターなしのソニーセンサーのRGBで試しました。フィッティンググラフは以下のようになります。
SPCC_Sony_RGB
ですが、これを見ると、明らかにフィッティング直線にかなりの星が載っていないことがわかります。

フィルターの選択肢をよく見ているとBaaderというのがありました。よく考えたら今回使っているカメラはモノクロで、応答の違いは主にRGBフィルターで起きていると思うと、使っているフィルターに応じて選ぶ方が良さそうです。実際に今回使ったはBaaderのRGBフィルターだったので、RGBそれぞれにBaaderを選んでみることにしました。すると以下のように、ほぼ全ての恒星がフィッティング直線に載るようになり、少なくともこちらのBaaderを選んだ方が正しそうなことがわかります。
SPCC_Baader
でもこれ、よく考えるとモノクロセンサーの特性は考慮していないんですよね。量子効率はソニーセンサーの選択肢がないので、理想的な場合を選びました。この場合量子効率は全波長で100%とのことなので、やはりセンサーの応答は実際には考慮されていません。

一眼レフカメラは、ある程度専用フィルターファイルが用意されているようです。でもCMOSカメラに関しては、一部のソニーセンサーの型番は専用フィルターを用意されているようですが、基本的には代表的な設定で代用しているので、まだまだ今後発展していくものと思われます。もしくはフィルターファイルは自分で用意できるようなので、実際に使っている環境に応じて自分でフィルターを書くことがいまの段階では正しい使い方と言えるでしょう。

重要なことは、考え方自体は真っ当な方向に進んでいて素晴らしいのですが、まだSPCCは今の段階では色合わせについては完璧はないということです。今後少なくともフィルターファイルが充実して、例えば複数選択できるなど、柔軟に対応することなどは必須でしょう。その上で多くのユーザーレベルで実際の色合わせの検証が進むことが重要かと思います。今後の発展にものすごく期待しています。

さて、PCCとも比較してみましょう。PCCでのフィッティングのグラフを示します。
PCC
SPCCに比べて一見ばらけていて誤差が多いように見えますが、縦軸、横軸のスケールに注意です。SPCCはかなり広い範囲をみているので、直線に載っているように見えるだけで、スケールを合わせるとばらつき具合はほとんど変わりません。実際に色合わせした画像を比べても、少なくとも私の目では大きな違いは見えません。

SPCC:
Image05_crop_ABE_ABE_SPCC_HT

PCC:
Image05_crop_ABE_ABE_PCC_HT

PCCは各恒星の点が2つのグループに分かれたりとフィッティング直線に乗らないケースもよくあります。そんな時はどうしようもなかったのですが、SPCCではそれらを解決する手段が手に入ることになります。SPCCは手持ちセンサーのデータを持つことで、色を正しい方向へ持っていこうとしています。科学的に正しい方向に進むのはいい方向で、少なくともそういった方向が選択肢として選べることは素晴らしいことだと考えています。

SPCCだけでもうかなり長くなってしまいました。続きもまだまだ長くなりそうなので、今回の記事はここまでにします。次は主にBlurXTerminatorについてですが、こちらもなかなか面白いです。

今回はSCA260で、最近マイブームのお気楽撮影でない、長時間かけて真面目に撮影した方です。と言っても、自宅庭撮りなのは同じですが。

ターゲットに決めたのはアイリス星雲です。アイリス星雲は1年ほど前、飛騨コスモス天文台でTSA120と6Dを使い、ゴースト星雲と共に少し広角で撮影したことがあります。


暗い空で環境的には良かったのですが、露光時間が2時間程度と短く、ノイジーであまり解像度も出なくて、リベンジ案件となっていたものでした。今回は自宅ながら、十分な露光時間をかけることができました。淡い分子雲なども多い領域ですが、どこまで出たのでしょうか?


撮影は20日ほど置いて2回

撮影は、10月1日(土)と10月20日(木)の2日に渡りました。初日の10月1日の撮影ですが、そのころ晴れが続いていて前日からのまゆ星雲の撮影のセットアップが残っていたのでとても楽でした。赤道儀を出しっぱなしにしたことは何度かありましたが、今回初めて鏡筒も含めて昼間もそのまま残っていたため、撮影準備から開始まで10分ほどしかかかりませんでした。万が一の雨のために昼間にカバーだけはかけていましたが、カバーをとって極軸を取ることもなくいきなり導入できます。ドームがあるといつもこれくらい楽なのかと、ちょっとドーム環境が羨ましくなりました。いつかはドームですかね。

IMG_0051


シンチレーションの違い

10月1日に撮ったものが、シンチレーションが格別良かったせいか、相当な分解能が出ています。でも撮影枚数が少なかったので、やっと晴れた10月20日に撮り増ししました。この日も決してシンチレーションは悪くなかったのですが、改めて比べると10月1日のシンチレーションの良さが際立ちました。10月20日のL画像よりも、10月1日のRGBの方が恒星など鋭かったくらいです。

comp
画像は左が10月1日のインテグレート済みのL画像、右が10月20日のぶんです。左が5分で6枚、右が5分で32枚と枚数が違うので、右の20日のほうが当然滑らかです。ですが恒星に関しては、特に2つ接近しているものなどを見るとよくわかりますが、左の方が鋭く分離度よく写っています。

恒星は10月1日の分だけ、背景は全部使うとかで、うまく合成しようと思いましたが、結局全て混ぜて使うことにしました。全部混ぜてしまうと、恒星の鋭さは10月1日のみのものと(有意な差はありましたが)差はそこまで大きくなく、背景は全部混ぜた方が明らかに良かったので、今回は変なごまかしをしない全部混ぜの方を採用することにしました。


ルーチン化されてきた画像処理

画像処理はPIのWBPPに関しては、最近は簡単なルーチンワークになっています。接眼部を取り外さないようにしてホコリの混入を限りなくなくすようにすることで、フラットを使い回せるようにしているのが一番の理由です。

WBPPのその後の処理もかなり楽になっています。LRGBは経験した回数は少ないのですが、今回はもうRGB画像とか作らずに、RとGとBとLのそれぞれの画像から直接LRGB合成してしまっています。その際、まゆ星雲の処理の時も経験したように、Weightを全部1にすることが大事なようです。特にLを小さくしてしまうと、例えば全部0.25とかにしても、Lの細部が生きないことが今回もわかりました。(ただし全部1にすると、恒星が飽和することがあるので、その場合は後でそれなりの処置が必要となります。今回は最後の方でPhotoshopで少しごまかしています。)

Lが効いていると細部は出ますが、逆に色は出ないので、LRGB直後にCurvedTransfomationで色出しをします。私の場合、PIで色を出しすぎるとPSで彩度を出しすぎる傾向があるので、色出しはそこそこで抑えるようにしました。

その後、背景のほぼ全面に星雲があるので、DBEを使わずにABEの1次と2次をかけるのみとしました。これでフラット使い回しの影響もほぼ回避できます。これまではRGB合成やLRGB合成する前にABEなどかけてましたが、最近は合成後にABEや必要ならDBEをしています。そもそもABEもDBEもカラー画像で使えるものなので、手間を省くと言うのがいちばんの理由です。今のところは合成前と合成後での適用で、差は大きくは出なさそうなので、何か問題が発覚するまでは、しばらくは合成後にフラット化しすることで手順を減らす方向でいきたいと思います。

その後のDeconvolutioinやEZ Star Reductionなどは背景の淡い諧調にに影響を与えることが多いので、今回も使わないことにしました。ストレッチはMaskedStretchのみで、恒星をできるだけ飽和から守ることに重点を置いています。

あとはPhotoshopに引き渡して、分子雲などを強調します。結果は以下のようになります。


結果

「C4, NGC7023: アイリス星雲」
Image19_ABE_ABE_crop_PCC_CT_CT_MS7_cut3
  • 撮影日: 2022年10月1日20時50分-2日0時9分、10月20日19時12分-21日0時39分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、L: 38枚、R: 14枚、G: 14枚、B: 17枚の計76枚で総露光時間6時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 L: 0.001秒、128枚、RGB: 0.01秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
実はこの画像、2度目の画像処理になります。1度目は金曜夜中に2時間くらいかけて寝る前にTwitterにアップしましたが、朝改めて見てみたら、処理のしすぎでコテコテになってしまっていたと思い直し、土曜に一からやり直しました。今度はもっと処理をシンプルにし、細部を残すところは残し、淡いところはノイズをなくすように。苦手な恒星も、おかしく見えないように少し気を使ってみました。まだ光条線が弱いとか、輝きが足りないとかありますが、多少マシになってきている気はしています。

青いところはかなり満足です。色もみずみずしい青になりましたし、細部も含めて自宅でここまで出たのは、十分リベンジした甲斐があったと言うものです。周りの分子雲もまあまあでしょうか。アイリス星雲はケフェウス座にあるので北の方角になります。自宅からだと富山の街明かりが北にあり、どうしても不利な方向になりますが、やっと淡いところを出すコツがわかってきた気がしています。一つはやはり長時間露光と、もう一つはそれでも淡くてノイジーなので、PI画像処理の時から暗い方の諧調をできるだけ壊さないように残し、PSでもその諧調をできるだけ残しながら、ノイズ処理もしつつ、拡大していくことかと思います。

あまり見せたくないですが、1回目の画像処理の結果も載せておきます。今見ると、細部は出ていないし、分子雲はかなりのっぺりしています。あ、でも青の色合いはこっちの方が良かったかもしれません。
Image19_ABE_ABE_crop_PCC_CT_CT_MS6_cut2

恒例のAnnotationです。
Image19_ABE_ABE_crop_PCC_CT_CT_MS7_cut3_Annotated

分子雲が多いせいか、思ったよりシンプルですね。


分解能比較

1年前に撮影した時と、分解能について少し検討したいと思います。どれくらい違うか、焦点距離とピクセルサイズで考えてみます。
  1. まず鏡筒が焦点距離900mmのTSA120と1300mmのSCA260で、1.4倍。
  2. ピクセルサイズが6Dの6.3umとASI294MM Proの4.3umで1.5倍。
  3. ただし今回はモノクロなのでさらに2倍。
ざっくり一辺で1.4x1.5x2=4.2倍なので、面積だと前回の1ピクセルを約18ピクセルで表現していることになります。

ちなみに、前回のTSA120で撮影したものを同じ画角で切り取ってみるとこれくらいになります。
TSA120

比べると改めてわかりますが、やはり検討分くらいの分解能は出ていることがわかります。


まとめ

SCA260での撮影が面白くて、最近こればかりです。なんでかというと、フィルターホイールとか、EAFとか、いろいろ揃ってこなれてきたので、楽で楽しいからです。画像処理も、露光時間3分でゲイン120と固定にしているのと、フラットが再利用できるようになってきたとかで、ライトフレームだけ撮影してそのままPIに放り込むだけでLRGBSAOのどれもがインテグレートまでできてしまいます。そのため、撮影してすぐにWBPPまで処理というルーチンワークがうまくできています。逆に、何ヶ月か前のフラットが合っていなくて、なかなか処理する気になれないものが、未だにいくつか処理が残ってしまっています。

平日でも自宅なので晴れたら撮影だけ開始して、放っておいて寝てしまっています。ただ、あまり処理する画像が多くなりすぎると、画像処理にかける時間が取れなくなってしまうので、一対象に数日かけて長時間で撮るようにしています。最近は5-10時間くらいですが、もう少し晴れる日が多ければ10時間越えくらいを平均にしたいと思っています。

いずれにせよ、自宅で明るい北の空も含めて、淡いところまで含めてそこそこ撮れるようになってきたので、しばらくは無理に遠征に出ることなしに、未撮影の天体を中心に数を増やすことを続けたいと思います。


前回のM45に引き続き、SCA260でのお気楽拡大撮影の第2弾、今回はC49: ばら星雲の中心部です。

 


2度目の拡大撮影

2022/10/20の木曜、実は前日の水曜から天気が良かったのですが水曜は疲れ果てていて泣く泣く寝てしまいました。反省して、この日は早めにセッティングです。今回のターゲットのバラ星雲中心部ですが、前回の拡大撮影同様に、通常撮影の後の余り時間で撮影しています。今回は月が出るまでメインでアイリス星雲を撮影していて、その後に撮影を開始しています。

実際の撮影を始めたのは午前1時過ぎ。5分露光で月の影響があまり無いうちにBGRの順で、その後ナローでOASの順で撮影します。撮影枚数は各フィルターにつき4-6枚、6種類なので合計約3時間です。天文薄明開始前の午前4時過ぎ頃に撮影終了予定ですが、平日ということもあり、撮影が始まると1枚だけ確認しあとはベッドに入って寝てしまったので、結果がどうなったかはわかりません。

画像処理のために確認すると、風のせいでしょうか何枚かはぶれたりしていますが、ほとんどはよく撮れています。20日ほど前に撮影したフラット画像にホコリの跡があり使えないことがわかったので、休日の土曜日にフラットとフラットダークを撮り直します。今回は外が雨になりそうだったので、部屋の中の白い壁を使って、外の光と蛍光灯の光を壁に当てて撮影しました。


画像処理

土日を使って画像処理です。RGBの他にAOOを試したのですが、OIIIが暗くてイマイチでした。SAOも試しましたが、こちらもOIIIとSIIが暗いせいで採用する気になれませんでした。結局、RGBのLをHαで置き換えて細部を出すことにしました。もう月が出ている時間でしたが、Hαは流石にコントラスよく撮れています。

今回少し工夫した(インチキした?)のはRGB合成をした時点でStarNetで背景と恒星を分離し、Hαも同様に単独でStarNetで背景と恒星を分離し、背景だけでRGBのLをHαで置き換え、恒星はRGBのみのものを使い、後で背景と恒星を合成しました。理由はHαの恒星が小さすぎて、恒星込みでLを置き換えると恒星の形も色も全然バランスが取れないからです。まあお気楽撮影なので、画像処理もあまりこだわらずに好きなようにやってみるかという方針です。

結果は以下のようになります。

「C49: ばら星雲中心部」
Image97_RGB_ABE_ABE_PCC_bg_ARGB3 _cut
  • 撮影日: 2022年10月21日1時26分-4時00分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB、Hα
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、RGBHαそれぞれ4枚の計16枚で総露光時間1時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 RGB:0.05秒、Hα:1秒で、それぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
Hαが効いているせいもあり、ものすごい構造が出ています。恒星に関してはまだシャープさが十分でないと思います。鏡筒の性能なのか、シンチレーションなのか、画像処理が不十分なのか、

月が出ている自宅での撮影で、各色20分
、合計露光時間わずか1時間20分。口径26cmの大口径ということもあるかとは思いますが、メイン撮影の後のお気楽撮影でここまででるわけです。明るい天体ならもうこれで十分いい気がしてきました。

ちなみに下が画像処理5分で仕上げたSAOです。SIIがどうしようもなく、ノイズ処理をかなりきつめにしてもこれくらいです。Sの淡いところはほとんど階調が飛んでしまっています。
Image07



まとめ

お気楽拡大撮影、あくまでついでの撮影なので労力に対するパフォーマンスがめっちゃいいです。メインの撮影画像より気軽に処理できるので、仕上がるまでも速いです。

次は燃える木を狙おうと思ってます。アルニタクが画面内に入ってくるので、新しくしたBaaderのSIIフィルターでゴーストが出なくなるかどうか検証する予定です。


何ヶ月ぶりの撮影でしょうか?記録を見ると5月31日にIC1396象の鼻星雲を撮影しているので、なんと4ヶ月ぶりということになります。


久しぶりの晴れ

IMG_6942

9月最終週の木曜夕方、少しだけ雲は残っていますが天気予報を見ると月曜まで晴れが続くとのこと。これは久しぶりに望遠鏡を出さなくてはいけません。

IMG_6930

ターゲットは色々迷いました。条件は
  • モノクロのSCA260がメインなので、引き続き焦点距離1300mmと294のフォーサーズを念頭に。
  • SIIフィルターでゴーストが出ることがわかってきたのでできればRGBかAOO。
  • 新月期が明ける頃でまだ月があまり出てないので、ナローバンドだともったいなく、RGBか?
  • Lも撮影できるので、LRGB処理の過程を確立したい。
などです。今回の候補は3つ。
  • まゆ星雲をRGBで
  • M27亜鈴状星雲をAOOで前回以上にリベンジ
  • らせん星雲をAOOで、瞳孔みたいな模様をだすリベンジ
などを考えましたが、結局久しぶりの撮影なので、今まで撮ったことのない天体ということでまゆ星雲に決定です。


久しぶりの撮影セットアップ

まずは木曜夜にRGBで撮影。ついで金曜夜にRGBの撮り増しとL画像を撮影です。久しぶりの撮影なので調整不足です。撮影画像の四隅を見てみると、左上と左下が結構流れています。どうもSCA260の光軸がずれているっぽいのです。初日はスルーしましたが、2日目のL画像撮影の時に我慢できなくなり、星像を見ながら調整しました。多少マシになってたので撮影続行。その後、土曜昼にコリメータで再調整することになりました。

週末はずっと晴れていたので、赤道儀は結局木曜夜から日曜午後まで庭に置きっぱなし。2日目以降は極軸を毎回とる必要がないのでものすごく楽です。2日目の撮影の再準備はわずか10分程度で終わってしまいます。2、3日目の金曜と土曜は近征するか迷ったのですが、疲れていたので結局自宅撮影にどとめました。そもそも3日目は曇りそうだったので、自宅でアイリス星雲を撮影していたらやはり前半で曇ってしまいました。

RGBは以前撮影したフラットの使い回しができればいいのですが、L画像のフラットはこれまで撮ったことがないので、いずれにせよ撮影し直しです。今回の撮影で一度接眼部を外す必要があることが分かったので、土曜の昼間に全てのフィルター分のRGB、AOS、L(no filter)のフラットを撮影。今回のフラットは青空を撮影しました。これまで鏡筒先端に白いビニール袋を被せて撮影したことはありますが、今回は袋なしで単に青空を撮しました。SCA260は接眼部から光が漏れている可能性があるので、撮影時とできるだけ同じ状況(鏡筒先端から入ってくる光も、たとえ他に漏れてくる光があったとしても)にして撮してやろうという魂胆です。

フラット画像で後から気付いたのですが、1割程度のコマに鳥や昆虫なのでしょうか、数秒の単位で何枚かに連続してゴミが映り込みます。今回は全て処理してから気付いたので、流石に面倒で放っておきました。そのまま使っても平均化されるので、多分大丈夫かと思います。

その後、土曜昼の接眼部の調整後も、再度青空でフラット撮影をしましたが、以降PIのblinkでチェックして弾くようにしました。

フラットダーク撮影も青空の元で同時に起きないます。先端には鏡筒カバーを被せます。鏡筒カバーは光をよく遮断することが分かっています。また、接眼部での光漏れを防ぐために防寒着を接眼部付近にかぶせて撮影しました。

まだ未処理のM81とM82は残っていますが、これをもってこれまでの設定での撮影ファイルに区切りをつけて、その週の土曜の昼間に一旦SCA260の接眼部を再設定することにしました。




初のLRGB処理

実はRGBはこれまで何度か処理していますが、LRGBでの画像処理は初めてになります。

まずはWBPPでLRGB全てをIntegrateまでします。WBPPの新バージョンの特徴のDrizzleもx1で試しましたが、Lも含めて特に改善は見られず通常のファイルで処理を開始します。まずはLRGB全てをABEの1次と2次で軽く差を取ります。そのままRGBだけ合成します。RGB画像はPCCをかけて色バランスを取っておきます。

今回の失敗は、L画像が明るすぎたようで、恒星の一部が飽和していました。そのため、LRGB合成しても、その影響は残ってしまいます。飽和しないようにLだけ露光時間を短くするとかでもいいのですが、できれば撮影時のゲインや露光時間は揃えたいです。もしくは、多少恒星がサチってもRepaired HSV Separationなどでなんとかなるので、手間を考えるとゲインと露光時間を統一するほうがトータルでは得かもしれないです。どうするかは今後の課題です。

Lはこの時点でDeconvolutionしたのですが、結果を見ると、元々飽和していなかった明るい恒星がいくつか、中心を抜いたリング状の形にどうしても飽和してしまうことに気づきました。そのため、結局はDeconvolution無しで進めることにしました。Deconvolutionは細部出しにはいいのですが、弊害も多いのでいつも苦労しています。


L合成のタイミングと彩度

Lとの合成はLRGBCombinationを使います。今の疑問はLとRGBの合成をいつのタイミングでやるかです。通常はRGBを彩度まで含めてストレッチして、Lもストレッチしてから合成するのが普通のようです。でも原理的に考えたらリニアの段階でやっても構わない気がしています。根拠は、ファイル上は32bitで十分な諧調があることです。例えば、RGB合成もあまり事前処理をせずに1:1:1でとりあえず混ぜてしまっています。これは後から輝度比を取り直しても、オフセットをそれぞれ変更しても、32bitあるファイル上の階調は十分取れているはずで、これまで困ったことはありません。

ただし、ちょっと心配なのが彩度がきちんと再現されるかです。比較のために
  1. RGBのみの場合
  2. LRGBをリニアの段階で合成して、CurvesTransformation(CT)でSaturation(彩度)を上げたもの
  3. LとRGBをそれぞれストレッチしてから、その後にLRGBで合成したもの
を比較して、彩度がどれくらい変わるのか見ることにします。彩度については、全く出ないということがなければよしとしますので、多少の違いはCTのかけ具合と思って無視してください。

1. RGBのみ
Image18_ABE_ABE

2. LRGBをリニアの段階で合成して、CTで彩度を上げ、その後にオートストレッチしたもの
Image18_ABE_ABE_LRGB_CT_HT

3. LとRGBをそれぞれオートストレッチしてから、その後にLRGBで合成したもの
Image18_ABE_ABE_HT_LRGB

まず1に比べて2と3はLの情報が入っているので、構造に関してはより詳細まで出ているのが確認できます。混ぜるときのLウェイトを小さくすると、構造の出具合が変わるようなので、LRGB全てウェイト1で合成しました。注意すべきはウェイトの値を全部小さく同じ値にしても、Lのみを選択してRGB画像にインスタンスを投げ込む場合はL画像の比率が小さくなり構造が出にくくなることでした。あと、RGB画像をチャンネルごとに分解して、LRGB全てを指定して合成する場合と、Lのみを選択してRGB画像にインスタンスを投げ込む場合でも少し結果が違う場合がありました。リファレンスなどを調べてLRGBCombinationがどう振る舞うか調べようとしたのですが、結局内部式などを見つけることはできませんでした。

肝心な色については、CTで彩度を上げると十分にその情報は残っていることがわかります。むしろ2の方が彩度が出ているのは単にCTをかけ過ぎただけで微調整がしにくかったに過ぎません。目的は色情報が残っているかを見ることなので、少なくとも元のRGBより(ノイズなどの悪影響がない範囲で)彩度が出れば良しとします。

2と3の結果だけを見ると、リニアの段階でLRGB合成をしても、ストレッチしてからLRGB合成したものに比べて彩度は劣らないと言えそうです。ただし、3はCTをかけていません。RGBとLに簡単のためScreenTransferFunctionでオートストレッチをしてHistgramTransformationしただけです。そのため恒星が飽和していますが、これはとりあえず無視するとします。2のリニアでの合成でCTをかけていないものを載せておきます。ちなみに2はオートストレッチはCTの後に最後にかけています。

masterLight_ABE_ABE_LRGB

これをみると、リニアの段階での合成は彩度が見かけ上は出ないように見えますが、情報としては残っていて、Saturationを十分に上げてやれば遜色ないと言えることがわかります。今後も注意深く見ていきますが、とりあえずはリニアの段階でLRGB合成をする方がのちの処理が楽そうなので、しばらくはこれで進めて行こうかと思います。

一応彩度は保たれそうなことが分かったので、ストレッチはArchsinhStretchを使わずにMaskedStretchを主に使うことにしました。ASにも飽和を避けるオプションはありますが、MSのほうが微調整ができて確実です。注意することは、ブラックレベルを上げすぎてしまうと後で背景の階調が取りにくくなってしまうことがあるので、かなり慎重に設定することくらいでしょうか。彩度はストレッチ後にCTで上げることにします。


背景

それでも背景の淡いところを持ち上げるのはなかなか難しいです。StarNet V2やRange maskなどを使いマスクを作り、主にPhotoshop上で駆使します。コツは暗いところを一気に切り詰めないことでしょうか。暗いところに淡い諧調が隠れているので、これらを注意深く拡大していくような感じです。

途中一つ気になったことがあります。PIの最終段階でEZ Star Reductionを使ったのですが、その画像をStarNetで切り分けた背景を見てると、なぜか分子雲に余分な細かい構造が追加されていることに気づきました。恒星の処理が背景に影響したものと考えられます。このままだと背景を炙り出しきれないことがわかったので、今回はEZ Star Reductionを使わない方向でいきました。

こう考えると、結局でPIではDecomvolutionもEZ Star ReductionもArchsinhStretchも使わず、結構シンプルな処理で落ち着きました。その代わり、PhotoshopではDeNoiseなどのノイズ除去を使っています。自宅だとやはり明るいせいでしょうか、6時間超でも淡い背景部分はまだまだノイジーで、強めのノイズ処理は必須でした。淡い部分を余裕を持って処理する場合は、10時間超え、明るい自宅なのでもしかしたらもっと長くとかになってしまうのかと思います。


結果

画像処理の結果は以下のようになります。

「IC514: まゆ星雲」
Image360_bg2_cut_tw
  • 撮影日: 2022年9月29日22時50分-30日3時42分、9月30日21時14分-10月1日2時37分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、L: 41枚、R: 19枚、G: 16枚、B: 22枚の計76枚で総露光時間6時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 L: 0.001秒、128枚、RGB: 0.01秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

今回の画像を見る限り、自宅撮影にしては背景の分子雲がそこそこ出てくれたと思います。まゆ星雲の周りにこんなにモクモクした分子雲があるとは思っていませんでした。背景の淡い分子雲の処理はずっと得意でなかったのですが、やっと少しコツをつかめてきた気がします。

そのきっかけの一つが10月9日に行われた天リフ超会議の「雲のじゅうざ。」さんの発言で、「StarNetなどで一旦恒星を分離して、分子雲の様子を見る」というものです。そこでDBEを使うということでしたが、今回私はDBEは使わずにABEを使っています。ポイントはDBEだろうがABEだろうが、できるだけ大まかな明暗が無い状態にして、ストレッチがうまく行くように、その上で分子雲のモクモクを残すと理解しました。確かに青い馬星雲の背景を出す時に、StarNetで恒星をなくした背景を見て、まだまだ諧調が出し切れていないと再処理したことを思い出しました。

まゆ星雲本体はもう少し強調してもいいのかもしれませんが、まゆ星雲全体が淡いホワホワしたイメージだったので、それに近づけるようにしました。それでも細部はかなり出たと思います。これはL画像のおかげでしょう。RGBだけでの画像とは一線を画しています。

恒星の処理は相変わらず得意でないです。もっと鋭く輝くように、且つ飽和しないようなものを目指したいですが、なかなか難しいです。


まとめ

とりあえず、自宅撮影でここまで出ればかなり満足です。L画像の威力もよくわかりました。

ただし、最近画像処理に時間をかけすぎている気がします。凝り性の性格が災いしてか、いったん疑問に思うと確かめない限り全然前に進めません。時間ばかり過ぎていき、成果が全然出ないのです。今回はまあ初めてのLRGB合成ということで、今後のことを考えると少し時間をかけておきたいのはあります。それでも画像処理を始めたのが10月1日で仕上がったのが10月16日と、半月もかかっています。実際にはこの記事に書ききれていないこともいろいろ試していて、ほとんどはボツになったものです。

ある程度の画像を求めるには長時間撮影が必要になってきてもいるので、そのぶんじっくり画像処理に時間をかけるというのも一つの手かもしれません。でもまだ未処理のものが5つ残っています。天気がずっと悪いからまあいいか...。

まだ画像処理をしてませんが、9月29日、30日と自宅でまゆ星雲を撮影(追記: 10/26に記事化)していました。29日の結果から高度が低くなってしまうとかなり画質が落ちることが分かったので、30日は早めに切り上げて、あまり時間で何かもう1天体撮影できないかと考えていました。

決めたターゲットは秋の大物M45プレアデス星団、すばるです。午前3時頃なので、この季節だとかなり高い位置まで昇ってきています。


余り時間での拡大撮影

残り時間で少し欲張っての撮影なので、多少失敗しても構いません。何か撮れたらラッキーくらいのお気楽撮影です。

M45にした理由ですが、
  • 以前から、すばるの青が自宅でどこまで出るかを試したかったこと。
  • 以前TSA120とフルサイズの6DでM45を撮影したのですが、少し画角が広くて一番迫力のあるハケで描いたような模様が小さくまとまってしまったこと。 
  • 短時間で撮影するので、比較的明るい天体であること。
  • 以前馬頭星雲を拡大して撮ったのですが、大きな星雲の一部を撮るのは意外に面白いこと。
  • 時間がもったいないので、SCA260の設定(カメラの回転角とか)を崩さずにそのまま撮影できること。
などです。


お気楽撮影開始

といっても、天文薄明開始まで1時間位しかありません。カメラ交換などは時間的にきびしいので、モノクロのASI294MM Proのまま。撮影は簡単なRGBで。結局撮影できたのはRGBそれぞれ1枚、4枚、5枚でした。少しでも有利なようにBを最初に撮影しました。Bの最初の1枚はブレてしまったので、結局使用できたのはRGBで1枚、4枚、4枚で合計45分、撮影終了が午前4時15分と、ほぼ天文薄明開始と同じ時間でした。

この撮影の時の週末はかなり天気が良く、片付けは赤道儀の極軸を保ちたかったので、鏡筒だけ外してカバーを被せるだけです。重い赤道儀を片付けなくていいだけでも相当楽です。


画像処理

半分遊び気分なので、多少撮影が失敗していても余り気にならないだろうし、画像処理も簡単に済ませてしまえばいいかと気楽に思っていました。なので画像処理も特にこだわらず、姑息なテクニックもバンバン使います。DeNoiseもok、カラーバランスも自分の好きな色にします。今回の目的は「光害のある自宅撮影で、どこまで背景のモヤモヤが出るか?」です。

撮影時は開始の時のBだけチェックして、あとは寝てしまったので、後からRをストレッチして見てみたら「ギャー」となりました。すごいゴースト?です。
2022-10-01_03-49-23_M 45_R_-10.00C_300.00s_0000

GとBにはそんなものはこれっぽっちも見えないです。
2022-10-01_03-56-49_M 45_G_-10.00C_300.00s_0000

2022-10-01_03-28-59_M 45_B_-10.50C_300.00s_0001

同じBaaderのフィルターなのですが、Rだけ何か違いがあるのでしょうか?不思議です。

でもすばるは青系統が主なので、今回は赤をあまり出さなくてよく、結局はほとんど影響がありませんでした。ちょっと安心ですが、今後明るい輝星を撮るときはRには気をつける必要がありそうです。

画像処理はいつものようにPixInsightでWBPP。ダークは以前のMasterファイルが使えます。フラットはこの後のメンテナンスの直前に一通り取ったものを使います。バイアスは最近のPIでは使わない(ダークに含まれているバイアスを使うというスタンス)ので一手間省けます。ちょっと前のバージョンでは、バイアスを使わない場合でも、バイアスを指定しておかないと文句を言われたり、うまく走らないことがあったのですが、今の最新版では直っているようです。

簡易画像処理のつもりなのでカラーバランスとかも適当です。というか、PCCをかけたのですが、赤のゴーストが目立ってしまい使い物になりませんでした。なのでマニュアルでバランスを取ったというわけです。

あと模様出しをしていて気づいたのですが、背景のモヤモヤってBだけに入っていると思っていました。でも実際は、BよりもGの方が細かい情報を持っているんですね。これは眼から鱗でした。

「M45: プレアデス星団(和名: すばる)」
Image06_PCC3_cut
  • 撮影日: 2022年10月1日3時28分-4時12分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader RGB
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、R: 1枚、G: 4枚、B: 4枚の計9枚で総露光時間45分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 RGB:0.01秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

できた画像を見てみると、光常線が一部二重になっているところがあります。これは撮影時に光軸がずれていたことが原因で、この後に前回の記事に書いたSCA260のメンテナンスをすることになったというわけです。

実は今回、画像処理だけで3回繰り返しています。1度目は本当に気楽に、WBPP後、STFでオートストレッチしただけでPhotoshopに渡し、適当にあぶり出しただけ。
Image04_ABE

その際に背景が結構出ることがわかり、恒星も含めてもう少し真面目に2度目の画像処理しました。でも画面の下の方に衛星の軌跡がどうしても残ってしまいました。3度目の画像処理は衛星の後が走った1枚を除いて一から画像処理をしたのですが、2度目の処理にどうしても及びませんでした。結局、2度目の画像処理でできた画像を少しトリミングしてそれを採用としました。背景を出すことを第一に考えていたので、姑息な手段も多用していて再現性がなかったことが原因です。はい、全然褒められた話ではないです...。


短時間拡大撮影の面白さ

ここからが本題なのですが、今回のこの短時間での拡大撮影、当初のお気楽気分にもかかわらず、意外なほど面白かったわけです。
  • 最初のポイントは、短時間でお気楽撮影なこと。今回の機材は口径260mmと大層なものですが、何かの撮影の余った時間のついでなので、やっぱり気楽なわけです。しかも短時間だから対象数を増やせます。
  • 当然、淡い天体は難しいでしょう。今回M45と明るい天体なので成り立ったのかと思われます。それでもすばるの青が自宅でここまで出るとは思っていませんでした。嬉しい誤算です。
  • 長焦点鏡筒で、大きい天体の一部を切り取るというのもポイントです。ちょっと見慣れない構図になりますし、面白い部分の強調にもなります。一番いいところを狙えるので迫力が出ます。
  • 突き詰めた撮影ではないので、画像処理も気楽にできます。短時間でノイジーなので、強力なノイズ処理ツールを使わざるえなくて、かえって諦めがついて罪悪感もなくなります。同様に、例えば今回はモヤモヤを出したいという目的があるので、他のこと(例えばカラーバランスなど)をあえて気にしないでサクサク進めることができます。
出来上がった画像を見ても分かるように、アラもたくさんあることは重々承知の上ですが、楽しい方を優先させてみました。今回は拡大撮影という位置付けですが、これをモザイク撮影とかに拡張しても楽しいかもしれません。モザイク撮影だとアラは目立たなくなる方向なので、さらに大胆なことができるかもです。


まとめ

今回の短時間拡大撮影、天体写真としてはかなり邪道になるのかもしれませんが、そこは短時間撮影の範疇でできることをというスタンスで、割り切ってしまっています。

そもそもの天体撮影を始めた目的が、気楽にそこそこ撮れればいいなということだったので、この方法はある意味当初の目的に最も合っているのかもしれません。究極的なものを求める修羅の道も楽しみ方の一つですが、私的には今回のお気楽撮影もかなり楽しめる方法です。特に今回はモヤモヤを出すのがかなり楽しかったです。

機会があれば、真面目な撮影の合間とかにでも、また試したいと思います。(追記: 10/20(木)の夜に薔薇星雲中心部で試しました。また記事にします。)


3波ナローバンドの作例も3つ目になります。今回はケフェウス座IC1396の中にあるVdB142: 「象の鼻星雲」になります。

IC1396

IC1396といえば、以前撮影して記事にしています。6月初めの記事で、撮影したのが5月28日の夜です。



大きな星雲なので焦点距離370mmのFS-60CBに、フルサイズのCMOSカメラASI2400MCで撮影しています。Annotationしていなかった(当時うまくできなくて、今回Alignment algorithmをpolygonsで試したらできました)ようなので、ここで示しておきます。

ABE_PCC_ASx5_HT_starreduction_SCNR3a_tw_Annotated

今回の象の鼻星雲はこの中にあり、ちょっとわかりいくいですが、右側から中心に向かって伸びています。画像の中のVdB142と書いてあるところが先端になります。今回の象の鼻星雲の撮影日は5月31日の夜で、実は上のIC1396を撮影してからすぐに撮っていますが、画像処理は随分とかかってしまいました。


SAO合成

前回までにM17: オメガ星雲NGC6888:三日月星雲とナローバンドを試してきましたが、いずれもまだ手法を探っている状態で、しかも三日月星雲はSIIにほとんど何も写らないことを撮影後に理解し、かなり迷走状態でした。



今回の象の鼻星雲はナローバンドでの作例も豊富で、満を辞してのSAO合成となります。1枚あたりの露光時間はこれまでの10分から5分にしています。10分だとそこそこ長くて採択率も少し下がります。また、星像が肥大しがちなのが気になっていました。私はあまり恒星の処理が得意でないので、もう少し短い方がいいと思い、今回半分の長さにしてみました。微恒星の数が減るかもしれませんが、結果を見る限り5分の方が星像は綺麗に出るようです。

実際の撮影は、夜の前半にSCA260+ASI294MM ProでM82を撮り、その後設定はまるっきりそのままに夜中から象の鼻星雲に移って撮影を続けます。平日の自宅なので撮影開始で寝てしまい、朝に片付けです。

採択/撮影枚数はHα:10/10枚、OIII:9/10枚、SII:9/10枚で、総露光時間は2時間20分と大した長さではありません。結果を見ても少しノイジーなので、もう少し撮り増しして撮影時間を伸ばしてもよかったかもしれません。実際次の日に撮影したのですが、風が強く7枚撮った時点で撤収、後から見てもブレブレで使い物にならなくて、結局画像処理には最初に撮った日の分だけを使っています。

スタック後のHα、OIII、SIIをオートストレッチしたものをそれぞれ見比べてみましょう。

masterLight_BIN-2_4144x2822_EXPOSURE-300.00s_FILTER-A_Mono

masterLight_BIN-2_4144x2822_EXPOSURE-300.00s_FILTER-O_Mono
OIII

masterLight_BIN-2_4144x2822_EXPOSURE-300.00s_FILTER-S_Mono
SII

SIIは相変わらず淡いですが、それでも明らかに模様が見えています。今回はやっと期待ができそうなので、迷わずにSAO合成一本で行きます。


画像処理

まずは普通にRGBにSII 、Hα、OIIIを1:1:1で割り当てます。すると、強いHαを割り当てた緑がやはり主になってしまうので、のんたさんがM17の時のコメントでアドバイスしてくれたように、PixInsightのSCNRで緑のノイズをAmplitude1.0で除いてやります。そうすると淡いですが青とオレンジが残り、ハッブルパレットのような色調になりました。

こうなれば、あとは彩度を出していくだけで、特に色バランスをいじることなく青とオレンジの対比が綺麗な仕上がりにすることができました。

特に今回の画像処理は相当シンプルで、DBEはおろかABEもしていなくて、定番のPCCやクロップもしていません。一応全部試した上で、ない方がいいという判断です。その代わりDeconvolutionとEZ star reductionをかけて細部を出しています。マスクはStarNetのV2で恒星を分離したものだけを使いましたが、その他星雲マスクなどは使っていません(というか、全面モクモクしているので使えませんでした)。ストレッチは主にArcSinhStretchで、恒星の芯を出したくて最後にHistgramTransformationを使っています。

その後はPhotoshopに渡しましたが、彩度出しが主で、他に大したことはしていません。結果です。

Image05_SCNR_ASx4_HT_SR_bg4_low
  • 撮影日: 2022年6月1日0時29分-3時2分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 6.5nm、Optlong: SII 6.5nm
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、Hα: 10枚、OIII: 9枚、SII: 9枚の計28枚で総露光時間2時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα、OIII、SII、それぞれ20秒、16枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
SAOならではで、Twitterで初期出しした時より少し派手目の色使いとしています。露光時間が短くまだノイジーなのは否めませんが、構造もかなり細かく出ていて、この露光時間と自宅での撮影でここまで出るは、さすがナローバントといったところでしょうか、自分的にはかなり満足です。


Annotationです。
Image05_SCNR_ASx4_HT_SR_bg4_Annotated


忍者星雲

画像処理が一段落して一度Twitterに投稿したときに、海外の方からNinjaに見えるとの感想がありました。私は色使いが忍者かと思ったのですが、形が似ているというのです。

頭巾を被った片目の忍者が立っていて、右腕が下に伸びていて、腕の先に刀を下向きに持っているとのこと。

だめですね、一度そう見えると本当にずっとそう見えてしまいます。しかも雲隠れする直前の忍者に見えてきました。その後、彼と色について少しやりとりしました。忍者の服の色って黒だけでなく、濃紺だったり、濃い柿の色だったりするんですよね。これがハッブルパレットの青とオレンジの対比に結構ぴったりだと思ったのです。もちろん自然の色ではないので、忍者の服の色と言うには強引かもしれませんが、ここまでくると他の方の写真の色違いのを見ても、もう忍者にしか見えなくなってしまいました。

彼がいうには「Ninja Nebula」と言った方がいいのではとのことですが、私は「象の鼻星雲」という名前を尊重しています。でも忍者にも見えてしまうので、別名で忍者星雲もいいかなと思えてきました。

皆さんどうでしょうか(笑)?


まとめ

今回やっと青とオレンジのハッブルパレットっぽいのが綺麗に出たのが嬉しかったです。過去のSAO2作品ではどうしても納得できなかったのですが、やっとSAO合成の面白さを味わうことができてきたかと思います。忍者に見えるのも面白いです。

とりあえずナローバンドの撮影ストックはここまで。あとはDSOはRGBでM81とM82が残っていて、天の川関連がもう少し残っています。全然晴れないので、焦らずゆっくり進めていこうと思います。



ナローバンドをもう少し試してみる

ゴールデンウィーク後、しばらく晴れていたので自宅での撮影を続けていました。夜中から過ぎからのNGC6888三日月星雲でナローバンド撮影です。前回の記事がM17のナローバンドだったので、こちら方面をもう少し掘り下げるために、他に待っている未処理画像もありますが、三日月星雲を先に処理します。





三日月星雲

三日月星雲は2年ほど前、CBPを試す一環でTSA120とASI294MC Proで、自宅で撮影しています。カラーで手軽だったのですが、背景の青いところはモヤッとしか出なくて悔しかったことを覚えています。でも青いのが出てるのはほとんどナロー撮影で、カラーで青が出ただけでもましで、いつかナローで撮影したいと思っていました。





撮影

カメラはASI294MM Pro、ゲインは120、露光時間は10分と、これまでのSCA260での撮影での標準的な設定です。なのでダークはこれまでの使い回し、フラットもM17で撮影したもの使い回しで済むので楽なものです。

何で対象を三日月星雲にしたかはあまり覚えていません。多分ですが、
  • その頃は前半はM81やM82を撮影していて、条件的に後半の夜中に上に昇ってくるもの。
  • 画角的に1300mmの焦点距離に合うもの。
  • 5枚用だったフィルターホイールを新調して8枚装着できるようになり。
  • やっとOIIIとSIIが入れ替えなしに撮影できるようになったので、やはりナローを試したかったこと。
  • 自宅なので明るい北側でないこと。
くらいでしょうか。今思うと、ナローなので多少明るくても、月が出ていてもあまり関係なかったかもしれません。むしろ新月に向かうような時期だったので、RGBとかブロードの方がにしておいた方がもったいなくなかったかもしれません。でも0時過ぎからのついでの撮影みたいな気分だったので、まあよしとします。

記録を見ると撮影は自宅で3日に渡っています。どれも前半の撮影(M82)を終えた0時過ぎからで、平日か次の日仕事の日曜なので、セットアップだけして寝てしまっていたはずです。


画像処理

撮影枚数と処理に回した枚数はHα:12/15枚、OIII: 13/15枚、SII: 13/15枚なので、10分露光としては十分な採択率です。合計6時間20分になります。

Hα、OIII、SIIの順でスタック済みのものを見てみます。

A

O

S

今回はそれぞれ2時間強と露光時間もかけているので、横シマのノイズが見えることはありません。それでもSIIの淡いこと淡いこと。これだと実際にはほとんど効かないですね。どうしたらいいものなのか?

とりあえず処理は簡単なAOOから始めます。目的は背景の青を出すことですが、OIIIはその目的を託すくらい十分に撮れていることがわかりました。

「NGC6888: 三日月星雲」
Image11_ABE1_PCC_ABE4_cropped2_mod
  • 撮影日: 2022年5月25日1時8分-2時59分、26日0時33分-2時56分、30日0時37分-3時0分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 6.5nm、Optlong: SII 6.5nm
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間10分、Hα: 12枚、OIII: 13枚、SII: 13枚の計38枚で総露光時間6時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間10分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα、OIII、SII、それぞれ20秒、16枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

さすがAOOです。脳味噌みたいなシワシワも、CBPでは出なかった背景の青も、形がきちんとわかります。

恒例のAnnotationです。

Image11_ABE1_PCC_ABE4_cropped2_mod_Annotated

ちなみに、2年前の画像がこれ

masterLight_ABE_PCC_STR_SNP10_cut

この時は本体の背景の青が全然はっきりしていなくて、ぼかしてごまかしています。なので今回は自己ベストと言っていいかと思います。

でも実は今回、画像処理で相当てこずっていて、1週間くらいの間に4回やり直して、やっとトータルで前の結果を超えたと思えました。決め手は休日の楽しみのコメダ珈琲。この日も朝昼ごはんでカツカリーサンドです。お腹一杯になりました。
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写真を見てもわかりますが、久しぶりに落ち着きながら画像処理ができました。今回のポイントはマスクをいかに上手く作るかでした。三日月星雲は星雲本体と背景で出したい分解能が大きく違いますし、各色で色の淡さも大きく違います。焦ってやってはダメですね。1週間くらい悩んでたのが、コメダに来てやっと解決しました。


3波での完全迷走状態

一方、3波合成は相当な迷走に入ります。試しただけでも
  1. SAO
  2. Sが淡いので、SAOのRにおいてAを5割としたもの
  3. OSA
  4. OSA reverse(あぷらなーとさん記事参照)
  5. AOOで見栄えがいいので、その逆のOAA
  6. AOOのRとGにSを3割としたもの
  7. オレンジを狙って、AOOのGにおいてAを2割入れたもの
  8. Yellowを狙って、AOOのGにおいてAを5割入れたもの
  9. 上の8にさらにSを使おうと思ってRとBにおいてSを3割入れたもの
  10. AOOをベースにGにおいてAを2割入れて、RにおいてSを3割加えたもの
などです。でも結局のところはSに特徴がないので何をやってもダメで、AOOが一番ましという結論で、お盆休みの中の丸一日をかけましたが、ほぼ徒労に終わりました。

一応ですが、それでも特徴的な画像を上げておきます。合成後にオートストレッチしただけなので画像処理らしいことは何もていない状態です。

1. SAO
Image10_ABE_cropped_HT

3. OSA
Image07

4. OSA reverse(あぷらなーとさん記事参照)
Image06

5. AOOで見栄えがいいので、その逆のOAA
Image04


8. Yellowを狙って、AOOのGにおいてAを5割入れたもの
Image08

一見良さげに見えるのもあるのですが、実質SIIがほとんどなにも効いていなくてHαとOIII2つのバリエーションになっています。


一応3波で仕上げてみる

結局選んだのが、SAOをベースとすること。ただしSIIがあまりに弱いので、RにHαを混ぜS:A = 0.8:0.2とし、その代わりにGにSIIを混ぜA:S = 0.8:0.2としました。それでもまだ色の比率が厳しいので、ストレッチの際にRとBを強調しています。青とオレンジの対比を示したかったのですが、ここらへんが限界で、結局はM17で試した過程とよく似ています。

20220809_NGC6888_SCA260_SAO_ASI294MMPro_CGXL2

まだまだですね。皆さんかなり工夫しているのかと思います。


あぷらなーとさんのreverseをPIで

今回の唯一の成果ですが、PixInsightでもあぷらなーとさんが提唱するreverseのやり方はわかりました。RGBの代わりにCMYに割り当てればいいのですが、例えばHαをYellowに割り当てたければRとGに50%づつ割り当てればいいというわけです。なのでOSA reversはPixel Mathを利用して

PixelMath


  • R: A*0.5+S*0.5
  • G: A*0.5+O*0.5
  • B: O*0.5+S*0.5

などとしてやればいいようです。今回は簡単に指示するために、AとかOとかSはファイル名をそのようにして保存しました。


まとめ

露光時間をかけたにもかかわらず、SIIがここまで何も出ないのは予想外でした。そのためAOOで仕上げたのですが、こちらは目的の背景にある青ははっきり出たので良しとします。

ハッブルとか見ると本当に青とオレンジのコントラストの対比が綺麗です。これやっぱり違う波長を使っているのでしょうか?ナローはもう少し研究の余地ありです。でも次のナロー画像処理は象の鼻。こちらはSAOとかの作例も多いので、SIIに特徴があるのかと期待しています。

北アメリカ星雲撮影後、6月13日付で新型ドライバー1.7.3が出ました。今回の記事はこのドライバーを適用して書いています。


新ドライバーでのセンサー解析

早速ですが、前ドライバーでも試したように、SharpCapを使いセンサー解析を実行します。

20220630_SV405CC_1.7.3

この結果を見る限り、100と150の間、おそらく120あたりでHCGもオンになり、前回測定した時のような変なゲイン設定と実測のゲインがずれるというようなおかしな振る舞いももう見られません。

ここで改めてASI294MC Proの測定結果を再掲して比較してみます。

ASI294MCPro

  • まず、コンバージョンファクターがSV405CCの方が2割ほど大きく出ています。
  • 読み出しノイズも2割ほど大きく出ているように見えますが、これは単位が [e] になっています。これを2割大きく測定されたコンバージョンファクターで割ってやり [ADU] で見てやると、ASI294MC Proの結果とほとんど同じになります。なので、ノイズに関しては同様の結果で、コンバージョンファクターに差があるということです。
  • フルウェルに関しても同様です。SV405CCの方が2割ほど増して電荷を貯めることができるように思われるかもしれませんが、これは14bit = 16384 [ADU] にコンバージョンファクターをかけているだけなので、コンバージョンファクターが大きいと勝手に大きなフルウェルとなってしまうだけです。
結局突き詰めると、コンバージョンファクターのみがASI294MC ProとSV405CCで2割ほど違うということになります。ではなぜSV405CCのコンバージョンファクターが大きく出たのでしょうか?少し考えてみます。

そもそもコンバージョンファクターは撮影された輝度(信号)と、その輝度のばらつき具合(ノイズ)の比から計算されます。さまざまな輝度を横軸に、ばらつき具合縦軸にプロットし、その傾きの逆数がコンバージョンファクターとなります(簡易証明はここを参照)。ということは、コンバージョンファクターが大きいということは、同じ量の輝度に対し(傾きの逆数なので)その輝度のばらつき具合が小さいということになります。簡単にいうと、ノイズが小さいということです。今回の測定結果だけ考えると、SV405CCの方がASI294MC Proよりもノイズが小さいということです。また、言い換えるとADCの1カウントを稼ぐためにより多くの電子(突き詰めれば光子)が必要になるため、効率が悪いとも言えます。効率が悪いために、ADCの飽和までにより多くの殿下が必要になり、フルウェルが大きく出るというわけです。

ただ、センサーが同じで測定結果が違うということなので、そのまま信じるのも少し疑問が残り、他に何か別の要因が効いている可能性は残されていると思います。今のところは測定結果がわかっているのみで、それ以上のことはわかっていないので、これはこれで事実として置いておくとして、先に進みます。


画像比較

今回はM8干潟星雲とM20三裂星雲で画像を比較してみました。機材は前回同様FS-60CBとCBPで、ASI294MC ProとSV405CCで自宅撮影した画像での比較です。撮影日の透明度はかなり良く、白鳥座の羽は端まで見えていていて、こと座も三角形と平行四辺形が良く見えました。天の川も薄っすらですが見えていて、3分露光一枚でもかなりはっきり写るくらいでした。

NINAの画面と、ASIFitsViewerでのヒストグラムを示します。


SV405CC

01_capture

3分露光のオートストレッチになりますが、すでにこの時点でかなり色濃く出ています。

撮影画面の右下隣のグラフを見るとわかりますが、黄土色の線が検出された星の数を表していて、相変わらず最初の1枚はなぜか暗く撮影されるため、星の数が少ない状態で写っています。

少し気になるのは、冷却時のパワーが大きいことです。1.7.2の時から冷却時も加熱時も時間がかかるようになりました。それはそれで結露しにくくなるはずなのでいいのですが、同じ温度にするときにSV405CCが65%で、ASI294MC Proが48%なので、1.4倍ほどパワーを食うようです。冷却効率はまだASI294MC Proに分があるようです。

02_histgram

ヒストグラムも全ドライバーのように右にシフトすることもないですし、赤だけ山の広がりが極端に大きいということもありません。


ASI294MC Pro

比較のASI294MC Proです。
03_capture_ASI294MCPro

上と比べると明らかに色は淡いです。ただ、右下グラフの緑線を見ると、恒星の径が294に移った時点で3.15を切るくらいから2.9付近に1割近く改善しています。これも毎回のことでそこそ再現性があり、不思議なところの一つです。

02_histgram_ASI294MCPro

このヒストグラムと比べると、まだSV405CCは最適化の余地があるように思えます。まず山の左側の裾の具合が違います。ASI294MC Proのほうが左側がスパッと切れていて、理想に近いです。

あと、やはりSV405CCの赤はまだ少し広がりが大きいようにも見えます。ただ、後の画像処理では前回起きたPCCの背景がニュートラルにならないというようなことはありませんでした。

それぞれ30分程度撮影して、PixInsightのWBPPでインテグレーションまでして、オートストレッチしたものを比較します。天頂を挟んで先にSV405CCで30分撮影、その後ASI294MC Proで30分撮影しました。ASI294MC Proの方が心持ち天頂に近く、10分ぶんくらいの差で少しだけ有利ですが、まあ誤差の範囲でしょう。

上がSV405CCで、下がASI294MC Proになります。
masterLight_BIN-1_4144x2820_EXPOSURE-180.00s_FILTER-NoFilter_RGB

masterLight_BIN-1_4144x2822_EXPOSURE-180.00s_FILTER-NoFilter_RGB

ここで見ても、明らかにSV405CCの方が色が濃いことがわかります。その代わりに、SV405CCの方は恒星の青ズレが依然出ていることも変わりません。

また、SV405CCのマスターダークファイルは以下のようになり、やはりアンプグロー抑制のような効果は確認することができませんでした。
masterDark_BIN-1_4144x2820_EXPOSURE-180.00s


ただ、これはASI294MC Proでも以下のように同様に出ているので、SV405CCが不利ということではありません。
masterDark_BIN-1_4144x2822_EXPOSURE-180.00s

その証拠に上のWBPP後の画像を見ても、SV405CCの場合も、ASI294MC Proの場合もアンプグローのような後は確認できません。


SV405で撮影したM8干潟星雲とM20三裂星雲

その後、さらにSV405CCで追加撮影して、M8干潟星雲とM20三裂星雲を仕上げてみました。テスト撮影の時と同様にFS-60CBにCBP入れて自宅庭撮りで、露光時間は3分x34枚でトータル1時間42分です。

WBPPでインテグレーションした直後の画像です。さすがに上の30分の画像よりは滑らかになっています。

masterLight_BIN-1_4144x2820_EXPOSURE-180.00s_FILTER-NoFilter_RGB

あとはいつも通りPIでストレッチして、Photoshopで仕上げたものが以下になります。
masterLight_180_00s_FILTER_NoFilter_ABE2_mod_cut
  • 撮影日: 2022年6月30日23時56分-7月1日1時39分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI FS-60CB+マルチフラットナー(f370mm)
  • フィルター: SIGHTRON CBP(Comet BandPass filter)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: SVBONY SV405CC (0℃)
  • ガイド:  f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイド
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分x34枚で総露光時間1時間42分
  • Dark: Gain 120、露光時間3分、128枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120、露光時間 0.3秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

このカメラ、画像処理するとよく分かりますが、色がかなり出やすいです。三裂星雲の周りの青も簡単に出ました。そもそも1枚画像でも色が出てますし、インテグレーション直後でもかなりきちんと色が出ているので、色出しについては全然楽です。実際、明らかにASI294MC Proで画像処理を試したときよりもはるかに楽でした。

画像処理の中でも、色出しは最初のうちは苦労すると思うので、撮影用の入門カメラとしては大きな特徴であると言えるのかもしれません。ただし、青ズレが気になる場合は画像処理でどうにかする必要があり、上の画像くらいには目立たなくすることは可能かと思われます。

正直言うと、庭撮りでここまで色が出やすいなら利点の方が大きく、青ズレのことは画像処理である程度気にならないくらいになるので、結構満足です。

ちなみに、以前FC-76で自宅で撮影したものが以下になります。

integration_DBE_PCC_stretched3

当時はそこそこ満足していましたが、今回の方がM20周りの青の出方、指先の青、階調、分子雲、どれをとっても圧倒的に進歩していると思います。


まとめ

SV405CCですが、最新のドライバー1.7.3でセンサーの振る舞いとしてはかなりまともになりました。

撮影では依然青ズレは存在しますが、画像処理まで考えると色が出やすく一気に評価が高くなります。とくに、画像処理初心者にとっては色が出るというのはかなりの魅力なのではないでしょうか?青ズレ問題は画像処理である程度目立たなくすることもできるのかと思います。

そうは言ってもこの青ズレ問題、できることならやはり解決したいと思っているので、もう少し検証してみます。その一方心配しているのが、青ズレがなくなると同時に、この色が出やすいと言う特徴ももしかしたら無くなってしまうのではという可能性です。まだ解決法も見つかっていない状態なので、結果がどうなるかは分かりませんが、もう少しお付き合いください。


  1. SV405CCの評価(その1): センサー編 
  2. SV405CCの評価(その2): 撮影編 
  3. SV405CCの評価(その3): 画像比較
  4. SV405CCの評価(その4): 新ドライバーでの画像比較
  5. SV405CCの評価(その5): 青ズレの調査と作例
  6. 番外編1: 階調が出ない時のPedestalの効果
  7. 番外編2: ASI294MC Proでの結露


前回のSV405CCのセンサー解析レポートに続き、撮影編でのレポートになります。




撮影準備

6月17日の金曜、天文薄明終了が21時過ぎ、その後月が22時過ぎから昇ってきて明るくなりますが、貴重な梅雨の晴れ間です。SV405CCでの撮影を敢行しました。

ターゲットは北アメリカ星雲としました。理由は
  • 月から離れていること。
  • 以前自分で撮影していて、比較しやすいこと。
  • メジャーな天体で、他の人も認識比較できること。
  • 自宅撮影なのと、途中から月が出てくるので、ある程度明るい天体。
  • ワンショットなローバンドフィルターを使いコントラストを上げたいため、輝線星雲であること。
  • 最後の決定打は、そこそこ広角で手軽なFS-60CBで撮影できるくらい大きめのもの。
などから決めました。

といっても、この日の空はうっすら霞んでいる様な状況で、撮影に適した日とは到底言えません。

夏至が近く、日が長いので、明るいうちに準備ができます。機材はFS-60CB+マルチフラットナー+CGEM II。フィルターはCBPのアメリカンサイズとしました。ガイド鏡はいつも使っている120mmのサイトロンのもの、ガイドカメラはASI290MMです。

CBPをノーズアダプターに取り付ける時、ASI294MC Proについていくるものは途中までしかねじ込めませんが、SV405CCに付属のものには最後まできっちりねじ込めます。使いたいフィルターのネジ規格によるのですが、私はサイト論のものをよく使うので、SV405CCのノーズアダプターの方がいいのかもしれません。

IMG_5758

今回の撮影は、もともとASI294MC ProやASI294MM Proでのセットアップに近く、ケーブルも普段組んでいる物を使いました。そうすると、SV405CCの背面にUSBの分岐がないのが地味に辛くて、結局長いケーブルをもう一本這わせることにしました。これまで意識していなかったですが、意外にカメラでのUSB分岐が役に立っていたのだと実感しました。

SV405CCは冷却初期モデルなのでまだそこまで手が回っていないと思いますが、将来的にはUSB分岐もあると、ZWOカメラと互換性が高まりユーザー側でのケーブルなどの取り回しが楽になると思うので、考えてもらえると嬉しいかもしれません。ガイド鏡などは速度を求めないので、USB2.0で十分かと思います。

初期アラインメントや、最初のピント合わせでSharpCapで実際の星を見てみました。時間はほとんどかけられませんでしたが、RGBカラー調整バーのジャンプが少し気になりました。一段変えようとすると50飛びで変化が大きすぎです。マウスやカーソルでもう少し細かい変更ができると嬉しいです。

今回はコントラストなどのパラメータはほぼ何も触っていません。というのもSV305で触ると設定が大きく外れて一気に画面上で見えなくなった経験があるのと、実際には撮影までの時間が惜しいので、余分なことはやりたくなかったというのです。SV405CCで電視観望を試したいので、その時にいろいろ触ってみようと思います。

SharpCapで試したことで一番大きかったことが、プレートソルブが問題なくできたことでしょうか。少し前の記事で書きましたが、最近は極軸調整が終わった後の赤道儀での初期アラインメント(ワンスターアランメンと)で、目的天体が入ったかどうかの確認を省略しています。その代わりにプレートソルブでずれを認識し、赤道儀にフィードバックして目標天体を入れるようにしています。今回SV405CCでも待ってく問題なくプレートソルブできたので、少なくとも全然おかしな像が来ているとかはないことがわかります。


NINAでSV405CCを動かすには

そのまま撮影のためにNINAに移ります。撮影にSharpCapではなくNINAを使う理由が、ガイド時のディザーの扱いです。最近のSharpCapもスクリプトなどでかなりのことができる様になってきましたが、ディザーを含めた撮影はまだNINAの方がかなり楽なのかと思います。

NINAでSV405CCを使うためには、ドライバーが必要です。ただしNINAの最新版NINASetupBundle_2.0.0.9001.zipに入っているSCBONYのカメラのdllの日付は2022/4/4なので、6月13日付のドライバーは入っていません。そのため最新ドライバーを使用して撮影するためには、ドライバーを手動でインストールする必要があります。

私を含め、SV405CCユーザーには直接6月11日に新ドライバーが送られてきたようですが、日本の公式ページを見ても全てのカメラを含むドライバーの2022-02-21版がアップされているだけで、SV405CC用のドライバーはまだアップロードされていません。と思ってよく探したら、本国のSVBONYの方には6月13日にアップロードされていました。というわけで、SharpCap、NINAともにSV405CCを使う場合には、

https://www.svbony.com


に行き、上のタブの「SUPPORT」 -> 「Software & Driver」 -> 横の「Windos」と進み、「SVBONY Cameras」の最新版(Release date:2022-06-13以降)をダウンロードする必要があります。その後、解凍してRead Me.docをよく読みNINAのインストールディレクトリの「External」「X64(64bit OSの場合)」「SVbony」のSVBCameraSDK.dllを新しいものに自分でコピペして入れ替えるひつようがあります。

こうすると無事にNINAでも新ドライバーで動くようになります。


さらに新しいドライバー

実は撮影を開始する2時間ほど前に、TwitterのダイレクトメールでSVBONYさんから直接、6月14日更新のドライバーができたと連絡がありました。Google Driveにアップしたのでダウンロードしてくださいとのことです。ところが非常に残念なことに、Googleの何らかのポリシーに反しているらしくて、アクセスさえできません。Googleをログオフしたり、別アカウントでログインしたり、Mac、Windows、iPadなどいくつか試しましたが、いずれも状況はかわらず、撮影準備時間にも限りがあるのでなくなく6月11日に送られてきたドライバーのままで撮影を始めました。

このドライバー、前回のレポートで書いていますが、HCGモードのゲイン設定がおかしいことがわかっています。私の解釈が正しければ、HCGモードのダイナミックレンジが得をする一番美味しいゲイン設定ができないという結果なので、是非とも改善されたドライバーで試したかったのですが、まあ仕方ないです。

それでも、数日のオーダーでドライバーを貪欲に書き換えてくるレスポンスの速さは素晴らしいと思います。


実際の撮影

実際にNINAでSV405CCで撮影を開始しました。ゲインは迷いましたが、後で比較できるようにASI294MC Proでいつも撮影しているのと同じ120にしました。露光時間は3分間です。冷却温度はいつも撮影している-10℃に設定します。ただし梅雨時期に入り、気温も高くなってきているので、そこは考慮すべきかと思います。この日は夜になっても暑く、撮影開始時には外でも25℃程度はありました。

この日は薄曇りというか、空全体が霞みがかっていて、北極星はほぼ何も見えなくて、夏の大三角がかろうじて見えるくらいでした。それもあってか、1枚目の画像はなぜかとても暗くて、北アメリカ星雲ですが、淡いところがほとんど何も出てきません。ASIFitsViewでのオートストレッチですが、実際電視観望で見えるよりはるか以下です。

2022-06-17_21-27-39_0000


ところが2枚目には普通に星雲が見えます。これは一旦撮影を止めた次の撮影でも再現しました。

IMG_5757
ここの1枚目と4枚目です。全く同じ設定で星の数が4分の1ほどです。突然雲が来たかとも思ったのですが、ガイド鏡の画面を見ている限りそんなことはありません。

ところが次にASI294MC Proで撮影を終え、再びSV405CCに切り替えた3度目の連続撮影では最初から普通に撮影できます。何かあるのか?、たまたまなのか?、もう少し検証すべきですが、少なくともこんなことがあったので一応書いておきます。

さて、その最初の撮影ロットの2枚目、大きな問題が発生です。画像を見てもらうとすぐにわかります。

2022-06-17_21-30-39_0001

真ん中に大きな影があります。右下の小さな円状の影は埃であることが判明しているので、ここでは無視します。さてこの真ん中の影、結局はセンサー面の結露でした。

IMG_5753

数枚撮影した後、温度を0度に変更することでこの結露は消えました。よほど湿気っぽかったのかもしれません。ただ、後で撮影した画像をいくつか見ると、-10℃のままでも曇ったエリアが小さくなっていたので、待っていればよかったかもしれません。


撮って出し撮影画像

なんだかんだトラブルもあり、まともな画像が撮影できたのは22時頃から。とりあえず10枚で30分撮影します。高度が上がってくると淡かった星雲も少しづつ濃くなってきます。10枚目を22時30分に撮影し終わりました。その時の画像をASIFitsViewでオートストレッチしたものです。

2022-06-17_22-27-48_15_SV405CCb

22時半頃にASI294MC Proに交換。この頃から少しづつ雲が出てきます。カメラの回転角、ピントを合わせ直し、雲が通り過ぎるのを少し待ちます。撮影時のゲインはSV405CCの時と同じ120、露光時間も同じ3分です。温度も比較しやすい様にSV405CCで撮影したのと同じ0℃にあわせます。

22時49分にやっとASI294MC Proでの1枚目が撮影できました。その1枚目をASIFitsViewでオートストレッチしたものです。

2022-06-17_22-46-43_0016_ASI294MCPro

2枚の画像を比べても、ストレッチをした後だと極端な差はないことがわかります。最初、SV405CCの北アメリカ星雲がかなり淡かったので心配していましたが、ASI294MC Proで見ても大きな差がなかったので、この日の空の状況がよくないということで理解でき、少し安心しました。

ただし、クリックして拡大などしてみていただければわかりますが、滑らかさに差があるわかるかと思います。これはヒストグラムを見比べるとなぜだかわかります。2枚の画像のヒストグラムASIViewerで見てみます。上がSV405CC、下がASI294MC Proです。

histgram_SV405CC


histgram_ASI294MCPro

まず、明らかに山の位置に違いがあり、上のSV405CCの方が右側に出ていて明るいことがわかります。ゲインと露光時間は同じなのに明るさが違います。これは前回のレポートで、今公開されているSV405CCのドライバーではゲインが120ズレていて実際には明るく撮影されてしまうという報告をしましたが、傾向としては合ってそうです。ただ、明るさはゲインで120ズレているなら12dB=4倍のズレになるはずなのですが、平均値で比べると2倍弱の明るさの違いしかありません。この原因は今のところ不明です。

また、SV405CVの方の赤の広がりが大きいのが気になります。ASIFitsViewのオートストレッチはノイズはいじっていないはずなので、この広がりはノイズそのものを表すはずです。しかもこのヒストグラムの山は主に背景を表しているはずなので、RとGBでそれほど差が出ることはないはずです。Debayerのアルゴリズムのせいかもしれませんが、ドライバーの方でチューニングできるなら今度のアップデートを待ちたいかと思います。


その後の撮影と片付け

結局撮影は、最初にSV405CCで10枚の30分、ASI294MC Proで10枚の30分、さらにSV405CCで20枚の1時間です。雲などが入り明らかに写りが悪いのは省いた上での枚数です。最後の方でガイドがものすごく揺れているので外に出てみたら、机やPCが吹っ飛びそうなくらいの強風が吹いていました。危険なのと、星像も揺れるはずなのでここで終了として撤収しました。
  • 今回の画像で最適化されていないことがいくつかあります。一つはバックフォーカスで、FS-CB60にマルチフラットナーをつけた時に、きちんとそこから定められた距離にセンサーを置かなければいけないのですが、今回は合わせている時間がもったいないので適当にしました。なので四隅が流れてしまっていますが、ご容赦ください。
  • また、SV405CCの画像にほこりがついていて影になってしまっていますが、これも取り除く時間がもったいなかったのでそのままにしてあります。こちらはフラット補正で消えることを期待しています。
  • また、カメラの回転角とピントも同じで合わせきれていません。少しづつズレてしまっていますが、此処もご容赦ください。


今後

現在ダークフレーム、フラットフレーム、フラットダークフレームなど撮影しています。画像処理を引き続き進めますが、空は悪かったので写りは大したことないかもしれませんが、ASI294MCも同時に画像処理して比較してみますので、差を見ることでカメラとしてどれくらいの能力を持っているかわかるかと思います。

とりあえず画像処理はまだ時間がかかりそうなので、今回は主に撮影の様子と、撮って出しの比較くらいまでの記事としたいと思います。次回記事で画像処理の結果を見せたいと思います。

また、SV405CCドライバーはまだ発展途上なので、画像も今後大きく変わる可能性もあります。そこら辺も見所になるかと思います。


  1. SV405CCの評価(その1): センサー編 
  2. SV405CCの評価(その2): 撮影編 
  3. SV405CCの評価(その3): 画像比較
  4. SV405CCの評価(その4): 新ドライバーでの画像比較
  5. SV405CCの評価(その5): 青ズレの調査と作例
  6. 番外編1: 階調が出ない時のPedestalの効果
  7. 番外編2: ASI294MC Proでの結露

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