ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ: 観測・撮影

シュミットさんからお借りしているEVOSTAR 72EDですが、前回のおまけ記事で最後と思っていたのですが、せっかくなのでレデューサーを使っての撮影をし、画像処理までしてみました。




カメラ選択

カメラをフルサイズ一眼にするか、CMOSカメラにするか迷ったのですが、 結局ASI294MC Proにしました。理由は2つあります。

元々の焦点距離が420mmで0.72倍のレデューサーを入れると約300mm。これだと結構広い画角となるので対象が限られてきてしまいます。パッと思いつくのが
  • カリフォルニア星雲
  • カモメ星雲
  • 勾玉星雲
くらいです。複数天体もありとすると
  • オリオン大星雲と馬頭星雲まで
  • 馬頭星雲からバーナードループの一部まで
  • モンキー星雲とクラゲ星雲を一緒に
などですが、やはり一画面に二つの中くらいの天体だとインパクトに欠けそうです。他にもSH2-240もありますが、さすがに自宅からだと暗すぎます。マルカリアンチェーンもありですが、後述のQBPを使いたいので、銀河は今回はパスです。結局この画角だと対象が思ったより少ないので、少し画角を絞る意味でフォーサーズ相当のASI294MC Proにしました。

もう一つの理由が、31.7mmのアメリカンサイズQBP(Quad Band Pass) フィルターで撮影レベルできちんと試してみたかったことです。Black Pandaさんにせっかく作っていただいたQBPですが、これまでは元々の目的である電視観望でのみ試してきました。CMOSカメラに取り付けた状態で、もっと条件の厳しい撮影レベルで使えるかどうかの判断をしてみたかったのです。

ASI294MC Proとの組み合わせだと、対象天体も一気に増えてきます。冬だけでも
  • オリオン大星雲
  • 馬頭星雲と燃える木
  • モンキー星雲
  • クラゲ星雲
  • バラ星雲
  • 魔女の横顔
夏のことまで考えるとやはりこの画角が一番楽しそうです。その中で今回は、最初の星像チェックで見事に失敗したバラ星雲をリベンジしたいと思います。

一方、撮影時に気付いたのですが、ASI294MC Proにしたことにより、接眼部に取り付けるアダプターの選択肢が少ないために、レデューサーからのバックフォーカス長が長くなってしまっています。長くする方向には差し込み部分を少なくて調整し星像の違いを試したのですが、短くする方向に試すことができませんでした。長くする方向では星像は改善しなかったので、アダプターをもう少し考えて短くする方向を探る必要があるかと思います。


撮影

実はバラ星雲の撮影、4日間にわたっています。
  • 1日目は2時間ぶんの画像を撮ったのですが、ガイドなしで撮影してみてやはり縞ノイズが盛大に出てボツ。
  • 2日目は30分ぶんの画像を撮影したのですが、後からみたら透明度が悪くてボツ。
  • 3日目は準備して撮影を始めたら、1枚だけ綺麗に取れて、2枚目以降雲が出て全くダメでいやになってボツ。
  • 4日目にして2時間撮影して、人工衛星(流れ星?)が盛大に写っているのを除いてやっとまともな撮影画像を得ることができました。
おかげで4日目はセッティング開始から撮影を始めるまでにわずか20分ちょい。もう全部組んであるので、外に出すだけです。19時ころから玄関にある赤道儀と鏡筒を庭に運び、極軸をとって、バラさん導入。PHD2でガイドを始め、20時前には撮影を開始していました。今回は露光が5分と長時間撮影の範囲になります。撮影ソフトはディザーをしながらガイド撮影をしたいので、今回初めてAPT (Astro Photography Tools)を使いました。PHD2との組み合わせで、ほとんど何も考えることなくうまくディザーまでできました。これについては後日、別記事で扱います。

また、恥ずかしながらこれも実は初なのですが、今回初めて冷却してまともな撮影をしてみました。ダークノイズが減るのはもちろんいいことなのですが、ダークフレームを撮るときに温度を一意に固定できることにありがたみを感じました。これまで6Dで撮影した後は、カメラを冷蔵庫に入れたりしてダークフレームを撮っていたので、それに比べたら随分効率がいいです。

実際の撮影ですが、そもそも開始時から結構西の空の方なので光害であまりいい方向ではありません。それでも4日目は透明度が良かったせいもあり、そこそこの画像を20枚得ることができました。約2時間の撮影後は近所の屋根に隠れてしまうような状況でした。


画像処理

画像処理はいつも通りのPixInsight (PI)です。1日目の画像はディザーなしで縞ノイズでいろいろ頑張ったけど今回もやはりどうしようもなかったので、4日目に撮った画像のみ20枚を使っています。フラットは撮ったのですが、うまく合わなかったので諦めてPIのDBE (Dynamic Backgroud Extraction) で済ませました。アンプノイズのところは適当にごまかしています。ダークフレームは-15℃で28枚、バイアスフレームは同じゲインであることに気をつけ、温度に依存しないはずなので常温で最短露光時間で100枚撮っています。

BatchProcessでスタックされた画像まで出した後、DBEとストレッチまでPIで済ませてTIFFで保存。それをStarNet++で恒星と背景に分けてPhotoshop CCに渡してあぶり出します。今回はDeNoiseは(試用期間が切れてまだ購入していないこともあり)無しです。DeNoiseを使うと綺麗になりすぎるので、淡いところとかの評価をしにくくなります。でも本当の理由は今月はお小遣いがないのでただの負け惜しみです。素直に使ってもっと綺麗にしたいです(笑)。ただし、NikCollectionのDfine2は使っています。

結果です。

「バラ星雲」
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  • 撮影日: 2020年3月26日20時2分-21時59分
  • 撮影場所: 富山県富山市下大久保
  • 鏡筒: SkyWatcher EVOSTAR 72ED
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO ASI294MC Pro
  • 撮影条件: ゲイン220、温度-15℃、露光時間300秒x20枚 = 1時間40分 
  • フィルター: サイトロン QBP(アメリカンサイズ)
  • PixInsight、StarNet++、Photoshop CCで画像処理

淡いところの諧調がまだ不十分で少し不満ですが、2枚玉アポ入門機で、自宅での撮影、しかも季節終わりの西の空でここまで出れば十分と言えるのではないでしょうか。光害を軽減し撮影時のコントラストを上げるという意味で、QBPの効果も大きいです。以前心配していたハロなども何も気になるところはありませんでした。アメリカンサイズのQBPも撮影レベルで十分な性能を発揮できていると思います。

その一方、やはりレデューサーを入れても最周辺には星像の歪みがどうしても残ってしまっています。撮って出しではほどんど目立たなかったと思っていたのですが、その撮って出し画像もよくみるとAPS-Cサイズでも僅かながら歪んでいることに気づきました。今回のCMOSカメラではバックフォーカスが長くなってしまい調整し切れていないので、接眼部を改良しバックフォーカスを短くすることで星像はまだよくなる可能性は残されているはずです。今回はその歪みがあぶり出しによっって目立ってしまっているようです。といっても、本当に一番外側だけで、少し中に入るだけで一気にマシになるので、周辺を多少トリミングするつもりで最初から画角を決めるのがいいのかもしれません。


恒星の出し方

あと、個人的には今回のポイントは恒星の処理です。StarNet++で恒星と星雲画像を分けるのですが、恒星画像の結合時にできるだけ境目が目立たないように、一部の明るい星をのぞいてサチらないように、色の特徴が残るように仕上げてみました。今年の目標課題の一つでしたが、少し時間をかけて探ることができたので記録がてら手法を書いておきます。

レイヤーは「覆い焼き(リニア)加算」にします。「比較(明)」とか他にもいろいろ試しましたが、恒星の色が失われずに残るのと、境目が変に段になったりせずに滑らかになるので、これが一番いいみたいです。多分、StarNet++で作った星雲画像から、恒星だけの画像をPhotoshopで作るときに「差の絶対値」で作るので、くっつけるときは「和」である加算の方が素直なのだと思います。

ただし、名前の通り「加算」なので星雲背景が明るいと、構成部分の明るさのためにすぐにサチってしまいます。この場合は恒星レイヤーをCamera Rawフィルターのハイライトを下げることで、サチらない範囲まで持っていきます。ただしこのフィルター、レイヤーのみを表示しながらしか調整できないので、元の画面に戻って効果を確認するなど、何度も往復して微調整をする必要があります。

あと、個々の恒星の外周と背景のつなぎ目の諧調が飛ぶ場合があるので、その場合はCamera Rawフィルターの黒レベルで調整します。ここら辺に気をつければ、あとは彩度で色を出そうが、多少何をしても破綻するようなことはないようです。


まとめ

元々、前回の記事でもう終わりにしようと思っていたのですが、せっかくの鏡筒だったのでバラ星雲を再度撮影し、画像処理まで進めてみました。アメリカンサイズのQPDの撮影での実力も見えたので良かったです。こちらはやると言っていてなかなかできていなかったので、やっと少し肩の荷がおりました。

周辺の歪み改善にまだ少し課題を残しましたが、結構綺麗に出たのではないかと思っています。これだけの画像を残せるなら十分なコストパフォーマンスであると言えるのかと思います。正直いうと、後1時間くらいかけて淡いところをもう少し出したかった気もしますが、季節ギリギリなのでまあこれくらいが限界かと思います。

少し前の記事で書いたように、タカハシの新マルチフラットナーを持っている方は、フルサイズのカメラで同程度の画角になるはずです。周辺像が気になる方はこちらで試してみてもいいでしょう。

今回の撮影を通じで、必要に迫られてですが、やっとAPTでのディザーもうまくできたので、今後CMOSカメラでの撮影にも力を入れていこうと思います。



娘のNatsuも早いもので今中3。先日高校入試も終わり、来週の結果発表を待っています。コロナウィルスで休みだったこともあり、入試前からもうすっかり春休みモードで毎日だらだら過ごしているのですが、今日はめずらしく友達のMちゃんがライブに出るので聞きに行くとのこと。早めの夕食を自宅で取り、夕方くらいから出かけて行きました。

Natsuももう結構長いことギターをやっていて、最近の腕は目を見張るものがあり、自分で配信とかしているくらいです。でも友達のMちゃんは、Natsuなんかよりはるかにうまいとのこと。音楽一家らしくて、スタジオとかで練習しているくらいなので、確かに比較になりません。最近仲のいい音楽友達とのことです。

夜9時半くらいでしょうか、Mちゃんと一緒に帰ってきて、今日は我が家でお泊まりだそうです。最近すっかり星を見ることもなくなってしまったNatsuですが、ちょっと前に「友達が泊まりに来るけど、星が見たいって言ってる」とか言っていました。でも天気予報を調べたら冬場は相変わらずあまりよくなく、今日の当日になってもやはり朝から雨。予報も夜は曇りで、実際夕方になっても厚い雲で「今日見えないよ」と伝えてありました。

でも夜に帰ってくるなり「すごい晴れとる」だそうです。「えっ!?」と外に出てみると、本当に一面晴れ。いや、実際には雲が下の方には多少あるので、多分短時間だけ晴れているパターンです。「すぐ用意する、何見たい?」と聞きました。「天の川が見たい、牛岳に行きたい」とか言っていたのですが、天の川が上がってくるのが明け方近く。しかも月も上がってくるので多分見えません。何より、天気がもたないかもしれません。

「じゃあ、オリオンだけでもみよう」と言って、電視観望の準備。まだ22時前なのでオリオン大星雲は間に合います。Mちゃんはライブの格好のままで見るからに寒そう。「寒いから」といって、Mちゃん用に防寒着などを用意します。21時半頃から準備を始めて、21時45分に「準備できそうだよ」と呼びに行って、21時50分にはすでに画面にオリオン座が電視観望のPCの画面に現れていました。その間に、Natsuに椅子を出してもらって、星座ビノでMちゃんと一緒に見てもらっていました。

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実際に星座ビノでオリオン座を見ながら「三つ星はわかる?その下の縦に並んだ小さい3つの小三つ星があって、そこらへんにオリオン大星雲があるんだよ。」とか解説しながら、画面上のオリオン大星雲を見てもらいました。でも見えていたのはほんの5分ほどでしょうか、早速雲が迫ってきてしまいます。程なくしてM42は全く見えなくなってしまいました。

その後、天頂付近はまだ晴れていたので、星座ビノで見ながらしし座の形を確認。「じゃあ、しし座の三つ子銀河を見よう」と言って、導入。でも天頂付近は精度が出ず、しかもレグルスも高すぎて初期アラインメントの候補に上がってきません。仕方ないのでマニュアルで導入です。運良くなんとか銀河らしきものが引っ掛かったのですが、なぜか色が薄い。あれ?と思い、そういえばQBPが入っているのを思い出しました。今回はCMOSカメラに取り付けたアメリカンサイズのQBPなので、すぐに外すことができます。というか、これがやりたくてアメリカンサイズのQBPが欲しかったのです。実際、QBPを外すと三つ子銀河もよりはっきりと見えるようになりました。

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今回撮った電視観望の写真はこの一枚のみです。Mちゃんは星に詳しいわけではないのですが、わからないなりにも楽しそうでした。なんでも同じバンドメンバーにタイムラプスとかで星を撮っている結構ガチな子がいるそうです。その子とも星友になりたいです。

しし座まわりもほんの4ー5分で雲に覆われてきました。もう寒いのでNatsuとMちゃんは家に戻ります。私も片付け始めますが、片付け終わることにはもう一面雲に覆われてしまっていました。本当に一瞬だけのラッキーな時間でした。

「12時くらいに月が出るよ、晴れていたら呼ぼうか?」と聞いたら「いや、もういい」とのこと。多分疲れてるのですぐに寝てしまうことでしょう。中学時代の最後の楽しい思い出になると良いです。


夕方から暗くなるにかけて、少し晴れていたので、TSA-120を出してセカンドライトです。今日のターゲットは金星。西の空に明るく輝いています。今年の冬は暖かいので、防寒も全然必要ありません。気合を入れてセットアップします。

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用意したアイピースは3本。Hyperion 13mmとPENTAXの5mmと3.5mm。どこまで倍率を上げることができるか、楽しみです。

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ファインダーで見ながら、13mmで導入します。前回ファインダーを合わせておいたので、すぐに導入できます。倍率は900/13=70倍。この倍率でも金星の形もよく分かります。でももう少し倍率が欲しいか。

次にPENTAXの5mmに変更。かなり大きくなりました。180倍に相当。明るさもまだ十分です。

さらに3.5mmに変更。260倍相当。多少過剰倍率でしょうか、少し暗くなりますがさすが120mmの口径、それでも十分な明るさでしょう。

この季節は本来、金星の上側が欠けているように見えるはずですが、天頂プリズムとかなしで、アイピースで直接見ているので、上下が逆になり、下側が欠けているように見えます。この倍率だと収差が少しわかります。上が赤、欠けている下が青に見えます。金星は西の低空に見えるので、おそらく大気収差なのでしょうか。

シンチレーションのせいでチラチラします。さすがに眼視では表面の模様は確認できません。ピント合わせの時に暗いところが一部見えたような気がしましたが、これはただの気のせいですね。

十分に眼視で楽しんだ後、この状態でスマホで撮影してみました。なかなかカメラ位置に入れるのが難しいです。何枚か撮影して、形がわかるものもありました。露出はマニュアルで暗くしてあります。

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写真で見ても上が赤、下が青いのが分かりますね。
 
少し雲が出てきて、ちょうど家の中から廊下の窓をコンコン叩く音が。夕飯なのでここらへんでストップです。

その後、夕飯を終えて再び外に出てみたら残念ながら一面雲でした。天気予報でもこのまま今日はずっと曇りのようなので、もう撤収することにしました。

次はCMOSカメラで直焦点撮影でしょうか。一応この日もバローまで用意していたのですが、今回は時間切れです。でも撮影よりもしばらくは眼視を楽しみたいかもしれません。

先日試した、31.7mmQBPを使った電視観望システムですが、ある程度の完成をしたので、お披露目の記事になります。

ことの始まりはTwitterでのリクエストに答えてくれたサイトロンさんが送ってきてくれた、CMOSカメラに直接取り付けることができる31.7mm径のQuad Band Passフィルターです。ASI294MC Proに、付属のリングと共に取り付け、カメラレンズアダプターを併用すると、その先に一眼レフカメラのレンズを取り付けることができるようになります。



実際に焦点距離50mm、F1.4という非常に明るい昔のNIKKORレンズを取り付けて見てみました。結果は驚くべきことに、赤い星雲を直接探しながら空を見ることができるというもの。ただし、ハロが酷く、特に明るい構成のハロはネコの目のように目立ったしまいました。それを解決したのが前回、



レンズをF1.4という開放で使っていたのが原因でした。F2まで一段階絞ることで、猫目ハロは完全解決。でも天気が続かず、赤ハロの検証をするに至りませんでした。


まずはオリオン

天気のいい休日の夜、月が出るまでに1時間くらいあったので広域電視観望の続きを試してみました。前回と同じようにレンズを一段絞ってF2で始めます。少し暗いので、ゲインを一段階上げておきます。これで最大(550)まであと一段だけ(500)です。

まず手始めにオリオン座。自宅は東と天頂はそこそこ暗いのですが、北は全滅、西も道路と住宅の明かりでダメです。前々回の最初に試した時は、時間が遅くてオリオン座は明るい西の空で沈む寸前。前回は曇りでこれもだめだったので、実質初めての暗い空です。場所もまだまだ南天近くにいるので、かなりきれいに見ることができます。
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暗いと言っても住宅地なので、やはり光害地なのには変わりありません。もちろんQBPが入っているのでこれだけコントラストよく見えるわけです。

写真は1.6秒露光の72スタックで、115秒と2分切るくらいですが、これは写真を撮るのにもたもたしていたからで、もっと少ないスタック枚数でクオリティーは十分になります。10スタックもすれば相当見えるくらいになってきます。

もうバーナードループも余裕です。わずかこんな時間で、こんなに綺麗に見えるとは。レンズは一段絞ってF2にしてあるので、前回より少し画面が暗いですが、炙り出せば良いだけの話でそれはほとんど問題にならないです。ノイズが大きくても、少し待てば十分減ってくれます。


赤ハロ青ハロはレンズのせいだった

それよりも周辺で星がそこそこ歪みます。これは古いレンズなので仕方ないでしょう。さらに、真ん中が青ハロ、周辺が赤ハロとなっています。これは間違ってもQBPのせいではなくて、レンズ側の問題だとやっと確証が取れました。最後の方でもっとわかりやすい写真を見せますが、ピント位置によって赤ハロと青ハロの出方が相当変わります。今回、絞りを一段階暗くしてF2にしたことによって、このような細かいところがやっとわかるようになってきました。開放のF1.4の時のひどいハロでは、やはりここまで調整もできなかったと思います。


なんとエンゼルフィッシュ星雲も!

ついでにオリオン座のすぐ上のエンゼルフィッシュです。導入は自動導入なんてたいそうなものは必要ありません。画面を見ながら、三脚についている自由雲台を緩めて「エイ、ヤっ」とエンゼルフィッシュを「見ながら」導入します。
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これも1.6秒を72枚スタックですが、スタックなしの1.6秒一枚リアルタイムでもうっすら見えています。


拡大に耐えられるか?

続いてM42の拡大と、馬頭星雲の、SharpCap上での拡大です。
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流石に画面上で250とか300とかに拡大(全体を見る時が40なので、6倍とか8倍に相当)しているので、星像が肥大化して見えてしまっていることと、ハロも目立ってしまっています。観望会などで見せるには少し厳しいかもしれません。


冬の星雲巡り

今回は早い時間だったので、オリオン座が南中くらい。なので、その西の早い時間帯の星座にある星雲星団も確認できました。最初にプレアデス星団が見えました。その上にカリフォルニア星雲があるはずですが、レンズの向きが厳しいです。そんな時は面倒なのでエイやっと三脚ごと向きを変えます。こんな気軽な星雲観測は広域での電視観望ならではじゃないでしょうか。実際に見えたプレアデス星団とカリフォルニア星雲です。同じ画角に入りました。
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スタックなしの1.6秒ワンショットだと下の写真くらいです。それでも十分見えます。
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カリフォルニア星雲の拡大です。
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これくらいの拡大率なら、それほど星も肥大せずそこそこ見えます。

西の空にアンドロメダ銀河が沈む頃でしたが、流石に明るすぎました。でもそれを差っ引いてもやはりQBPは銀河は苦手な気がしています。こんな時に気軽にQBPを外すことができるようにアメリカンサイズをリクエストしたのですが、ごめんなさい、この時は外して確認することを忘れてました。
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前回も見たバラ星雲とカモメ星雲です。バラ星雲は少し拡大しています。
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カモメさんを拡大したらこんなもんです。
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モンキー星雲とクラゲ星雲です。
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同じ画角ですが、ピントが少しずれて赤ハロが盛大に出てしまった場合です。反対側にずれると青ハロが少し出ます。
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最後です。これを最初に見た時、何か一瞬わからなかったです。撮影したこともあるのに...。
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でもこれで答えを見ました。ああ、勾玉星雲だった...。



星雲の形をデフォルトで表示してくれるのですごくわかりやすいです。広域電視観望の地図がわりにぴったりです。長押しで他の波長も表示してくれます。


まとめ

いやー、楽しい。わずか小一時間で、冬の星雲を一網打尽できました。観望会でも大活躍しそうです。とにかく空を見ながら星雲を探す。これは本当に楽しいです。

一応、31.7mmのQBPと50mmの明るいレンズを使っての広域電視観望は実用レベルで使えることが分かりました。システムとして完成と言っていいでしょう。

もちろん光害の具合によっては見える度合いも違うでしょうし、まだまだ改良する点もあるでしょう。それでも、前回そうでしたが、月が出ていた時でもバーナードループくらいは見えているので、明るいところでもかなり楽しめるのではないかと思います。

やはりレンズの明るさは正義です。まだハロが少し残っているのと、拡大時の肥大が少し気になるので、もう少し良いレンズを探しても良いかもしれません。例えばシグマの50mm F1.4 DG HSMなんかものすごく良いのでしょう。でもさすがに、電視観望のためだけにこれだけの値段をかけていいものなのか。

最後に、今回何より重要だったのがQBPでした。以前の48mmのQBPも撮影では十分すぎるほど活躍してくれていたのですが、今回のカメラレンズと合わせるというのは31.7mmのQBPになって初めて実現したものです。QBPがなかったら、ここまでやろうとさえ思っていなかったでしょう。BLACK PANDAさん、私のちょっとつぶやいただけの希望を聞いていただいて本当にありがとうございました。

このシステム、賑やかな夏の空でも早く試してみたいです。

今回の目的は、AZ-GTiの経緯台モードを使って、できるだけ簡単に星雲を撮影しようというものです。


もっと簡単に星雲とか撮影できないか? 

ここしばらく、できるだけ簡単に星を楽しむことができないかを考えています。明るい広角レンズとただの三脚を使った電視観望もその過程のひとつです。これはQBPという武器があって初めて実現することでした。

同様に、撮影に関しても高すぎる敷居をもっと下げることができないか、ずっと考えていました。もちろん、究極的な画像を求めよういう場合は別ですが、もっと手軽に、画質は自分で満足できればいいくらいの撮影というのも、あっていいと思うのです。ここではAZ-GTiを武器として試しています。

眼視から少し手を伸ばしてみたい、電視観望よりもう少し綺麗な天体を自分で撮ってみたいとかいう人たちがきっといるはずです。天体写真の敷居を下げることで、天文人口を増やすことにつながればと思います。


経緯台撮影の問題点

赤道儀は極軸合わせなど、若干敷居が高いので、より簡単な経緯台を想定します。今回は自動導入と自動追尾がついているAZ-GTiを使うことにします。

しかしながら経緯台は撮影にはあまり向いているとはいえません。問題点は二つあります。
  • 経緯台なので撮影していると写野が回転していくのですが、それをどうするか?
  • ガイドも当然なしなので、星像がふらついたり流れたりして長時間露光ができない点。

でもこれらは、もしかしたら電視観望で培った技術が解決するのではと考えるようになってきました。カメラは一眼レフカメラは使わずに、その代わりに電視観望のようにCMOSカメラを使います。


撮影手順

簡単星雲撮影のセットアップは基本的に電視観望とよく似ています。今回はテスト記事なので全くの初心者が必要な細かい手順の説明は省きます。電視観望をやったことがある人くらいが対象です。本当の初心者向けの記事は、もっと細かい位置からの手順を踏まえて後日まとめるつもりです。

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経緯台にはAZ-GTi、鏡筒には評価用に手元にあったSkyWatcerのEVOSTAR 72EDを使います。比較的安価なアポクロマート鏡筒なので、初心者にも手頃かと思います。CMOSカメラはASI178MCを使います。ASI224MCでも良かったのですが、安価で少しでもセンサーの大きさを稼ぎたかったのでこれにしました。
  1. 今回のターゲットは初心者向けに、かなり明るいオリオン大星雲M42とします。
  2. AZ-GTiは経緯台モードで自動追尾します。精度はそこまでないのと、原理的に写野が回転していくので露光時間は長すぎると星が流れていきます。長くても30秒くらい、できれば10秒くらいまでが無難。今回は短めの3秒としました。
  3. ソフトは定番のSharpCapを使います。
  4. ゲインは高すぎるとノイズが多くなってしまいます。逆に低すぎると何も映りません。露光時間は短めなので、少し高めでもよくて、最大のゲインから1段か数段下げるといいかと思います。今回は310としました。
  5. 目的の天体がそこそこ見えていたらSharpCap上でライブスタックをしてみます。
  6. ライブスタックパネル左下の何分かおきに画像を保存するにチェックを入れます。今回は3分にしておきました。
  7. AZ-GTiの精度だと、長時間撮影していると画面がずれていくかもしれません。例えば10分くらい経ってから画面を見てみて、もし天体がずれているような時は再びSysScanのコントローラーを使って天体を真ん中に入れます。その際、ライブスタックのリセットボタンを押すのを忘れないようにしてください。
ポイントは、星像が流れないようにするために、短時間露光に抑えることです。その一方露光時間が短いと読み出しノイズが支配的になりがちですが、そこは枚数を稼ぐことで緩和します。ゲインが高いのでダイナミックレンジが不足しがちですが、淡い部分を映し出す方を優先します。また、ライブスタックを活用することで、撮影枚数を減らします。

と、ここまで読んで分かる通り、やっていることは電視観望とほとんど大差ありません。それでも、赤道儀やガイドなどの、通常の撮影に比べて遥かに手軽なことがわかると思います。

今回はライブスタック3秒x60スタックで、一枚あたり3分露光した画像を、合計1時間程度撮影し、その中の画面からずれていない10枚、30分ぶんの画像を取得しました。画像のズレはAZ-GTiのものもありますが、1時間も撮影するとそもそも15度程度写野が回転してしまいます。

写野の回転は原理的にどうしようもありません。多少の回転はトリミングで見えないようにします。なので超長時間露光は難しいですが、それとて時間が経ったらカメラ自身をマニュアルで回転させてしまえば対応できないこともありません。


撮影画像のスタック

初心者にとって厄介なのは、撮影よりもむしろ画像処理です。

写野の回転と同時に、周辺の歪みによるスタック時のずれが問題になってくる可能性があります。今回はPixInsightで星を認識して星像を合わせるような重ね方をしています。でも初心者にPIを求めるのは酷と言うものです。

ステライメージは回転は補正してくれますが、画面を歪めて星を重ねるような機能はないので、こういった場合は難しいです。あとはDSSでしょうか。DSSは一番最初に星を始めた頃に触っただけなので、ほとんど理解していないのですが、調べた限りでは画面を歪ませて合わせるような機能はないみたいです。

そういった意味でも、小さめのセンサーを使って星像がブレにくい中心像だけ使うと言うのは理にかなっているとおもいます。DSSは無料で使えることもあり、最初からあまりお金をかけることができない初心者にとってはほとんど唯一の選択肢になるので、検討する余地は十分にあると思います。


追尾時のズレの様子

撮影した10枚をスタックして画像処理をしてみました。まず、どれくらいずれている10枚でやったのか、スタック直後でストレッチだけかけた画像です。

integration

初期アラインメントがワンスターアラインメントしかやっていないので、AZ-GTiの設置時の水平度不足による並行ずれと、長時間の撮影による回転のズレが生じているのがわかると思います。

水平精度をさぼったので、並行ズレは結構酷くて、10分に一回くらい構図を合わせ直していました。ちなみに、20枚撮影して落とした10枚は、様子を見ていなくて平行移動し過ぎてはみ出していたもので、10枚全部がそれです。さすがにこれはひどいので、水平をきちんと取ることにより、もう少し抑えることができるはずです。逆に言うと、星像のズレとかで落としたものは一枚もないです。SharpCapのアラインメントは相当優秀です。

回転ずれは時間とともに出てきます。もっと短時間で終わらせてしまうのも一つの手です。


撮影した画像の仕上げ

画像処理をして、そこからトリミングしてまともなところを切り出します。画像処理にそれほど時間をかけていないのでイマイチなところも多々ありますが、経緯台で簡易で撮ったにしては、そこそこ写るのかと思います。

integration2_cut
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 撮影時間: 2020年2月1日22時25分
  • 鏡筒: SkyWatcher EVOSTAR 72ED
  • 経緯台: SkyWatcher AZ-GTi
  • カメラ: ZWO ASI178MC
  • 露光: ゲイン310、3秒x60枚のライブスタック x10枚 = 総露光時間30分
  • フィルターなし、SharpCapでのリアルタイムダーク補正 (3秒x16枚)あり、フラット補正なし
  • PixInsigjt、Photoshopで画像処理
トラベジウムとか少し多段でマスクをかけましたが、そもそも短時間のラッキーイメージングの手法に近くて露光不足気味で、元々ほとんど飛んでいないところが効いてきています。


いっそ、一枚撮りで


もう一つの方法が、ライブスタックの画像保存までの時間を10分とか20分とか長くしてしまって、SharpCapのライブスタック結果の一枚画像のみにして、後からスタックをしないことです。

SharpCapでは、ライブスタックの最中は恒星を多数認識して、その星がずれないようにスタックするたびに画像を歪ませて重ね合わせるので、この機能を使う利点は相当大きいです。その代わりに、長時間撮影のために天体全体が徐々にずれていくのが問題になります。これは撮影の間に画面を見ていると回転していってずれていく様子が積算されていくのがわかるので、適当なところで止めてしまえばいいのかと思います。

さらに画像の保存方式も初心者にはいくつか選択肢があって、RAWのfits形式で保存することももちろんできるのですが、もっと一般なtiff形式、もしくはPNG形式でもいいのかもしれません。特に、PCで見えている画像そのものをファイルに保存してしまう機能もあるので、これを使うと後の画像処理でストレッチをする必要もなくなります。

これと似たようなことは実はかなり昔に試していて、どの形式で保存するのが綺麗かと言う比較をしたことがあります。意外なことに、SharpCapのライブスタックに任せてしまったPNGでも十分に見るに耐える画像になっています。

少し前ですが、名古屋での大晦日年越し電視観望中に1時間ほどほったらかしておいてた3秒露光の画像を、そのままライブスタックし続けた画像が残っていました。

Stack_198frames_634s_WithDisplayStretch
1時間くらい放っておいたライブスタック画像。撮って出し。

カメラはASI294MC Pro、鏡筒はFS-60CBに旧フラットナーですが、AZ-GTiでの自動追尾なので、そういった意味では今回の撮影方法そのものの、一枚撮りバージョンになります。ダーク補正とフラット補正をリアルタイムでしてあります。

撮って出しと言っていいのかよくわかりませんが、画面に見えているのをそのままPNGで落として、それをアップロード用にJPGにしたものです。撮影時間は1時間ほどと書きましたが、時間はあまりよく覚えていません。15度くらいいという画面の回転角から、それ位の長さだったんだろうと推測しているだけです。重要なのは、AZ-GTiでのほったらかしでも、水平の設置さえ良ければこれくらいの時間は位置を合わせ直すことなく撮影できることです。

上の画像をある程度仕上げてみます。回転で切れてしまっている部分をトリミング。ASI294MCはセンサー面積が広いので、中心部だけでも十分な面積が生き残っています。

まずはWindowsの「フォト」の「編集と作成」から「調整」のみを使った場合。

Stack_198frames_634s_WithDisplayStretch_win_photo
Windwos「フォト」での加工例。

簡単な調整だけでも多少は出てきます。

次はMacの「プレビュー」の「ツール」「カラーを調整」のみを使ったものです。

Stack_198frames_634s_WithDisplayStretch_mac
Mac「プレビュー」での加工例。

うーん、どうでしょうか、Windowsの方が、ディテール、ノイズともにまさっている気がします。ここら辺は腕にも大きく依存するので、容易に逆転するかもしれません。

いずれのケースでも、さすがにトラペジウム周りのサチってしまっているところは救い出すことはできませんでした。でも、一枚PNGからここら辺まで出れば、撮影を試してみるというのならある程度十分で、これに不満が出るならスタックや赤道儀を用いるなど、次のステップに進むことになるのかと思います。

重要なのは、このようなOS付属の簡易的なツールでも、多少は画像処理ができてしまうと言うことです。これは初心者にとっては大きなメリットでしょう。逆に、改めてみてわかったのは、さすがに1時間スタックは星像が多少肥大するとするということ。これは課題の一つかもしれません。

最後は、このPNG1枚画像をツールの制限なしに画像処理した場合です。と言ってもPhotoshopです。あと、最後の仕上げに今話題のTopazのDenoiseを試してみました。これは結構強力です。しかも簡単なので初心者向けです。有料なのが初心者にとって唯一のネックかもしれません。でもそれだけの金額を出す価値のあるソフトかと思います。Denoiseに関してはまた別記事で書こうと思います。

Stack_198frames_634s_WithDisplayStretch_DN_cut
Photoshop CC+Topaz Denoiseでの画像処理。


まとめ

AZ-GTiを使った経緯台での撮影は一言で言うと「やはり楽」です。似たようなことを既にやっている方も、もしかしたら初心者でも同様のことをごく自然な流れとしてやってしまっている方もいるのではないかと思います。

ポンと北に向けて適当に置くだけ、極軸を取る必要なし、ワンスターアラインメント、ガイドもなし、大きくずれたら直す、というので大幅に大変さを軽減できます。30分露光でここら辺まで出れば、最初に挑戦する撮影としてはかなり満足できるのではないかと思います。

その一方、画像処理の敷居は依然高いかもしれません。後でスタックするのが敷居が高いのも事実なので、一枚どりで画面の見たままで保存してしまうのでもいいのかと思います。あとはGIMPなどの無料の画像処理ソフトや、今回試したWindowsの「フォト」やMacのプレビューでの簡易画像処理だけでも最初はいいのかもしれません。 


後日、今回使ったEVOSTAR 72Dについて、試用記を書いています。よかったら合わせてご覧ください。



3.5nm HαフィルターをBFに代えて使おうとした試みの、最終回です。前回までで、撮影レベルではうまくいかなかったことまで報告しました。 今回は起死回生の利用方法についてです。

そもそも、BFに代えて3.5nm Hαフィルターを使ってみた撮影自身は11月には、それも2度も終えていました。でも結果はイマイチで、太陽の活動にも比例してか結構意気消沈していて自分の中で全く盛り上がっていませんでした。

ところが最近、シベットさんに触発されて電視観望でフィルターを入れるのが楽しそうなことを知りました。シベットさんも(こちらはもちろん普通に星雲にですが)3.5nmのHαフィルターを使っていました。あ、これも楽しそうだというのと、そろそろ国際光器さんに結果を報告しなくてはと思っていたのが先々週くらいです。


前回記事でクイズの答え

ジャンジャカジャーン!それでは前回の記事のクイズの正解発表です。答えは

「3.5nm HαフィルターをCMOSカメラに取り付けて写すだけ」

です。ブロッキングフィルターもつけたままです。

ズバリの正解はいませんでしたが、むしろ面白いアイデアがいくつかありました。確かに、シベットさんの言う『ERFを取り除く』はありかもしれません。でもERFは代替のものを安価で手に入れることができるのも分かっているので、いまいち動機が盛り上がりません。でも今回の記事を読むとわかりますが、シベットさんの『「Hα+エタロン+BF」で無茶苦茶コントラストが上がった』というのがほぼ正解ですかね。

Lambdaさんの『フィルターを傾けて中心周波数を移動させる』と言うのは全然考えつきませんでした。あぷらなーとさんの『ブロッキングフィルターを星雲に使う』は一度本当にやってみたい気もします。Twitterではいのさんが『QBPとかの他のフィルターと組み合わせる』も何か応用がありそうです。フィルターはまだまだ柔軟に考えるといろいろ発展しそうです。

え、正解が単純過ぎる?多分そう思いますよね。私も最初はそう思っていたんです。でもあからさまな違いがありあました。というわけで、今回の記事を始めます。


3.5nm Hαフィルターを多段に入れてしまおう!

前回の記事のとおり、なかなかBFの代わりにするアイデアは上手くいかなくて、その後いろいろ考えていたのですが、突然閃きました。「BFの代わりと思っていたが、よく考えたらいっそのこと多段にしてもいいのではないか」と。

理由はいろいろあります。まず第一にフィルターに対していろいろ柔軟に考えるようになってきたこと。もともと、あまりフィルターは好きではなかったのですが、旧型のQBPの性能が良かったことと、NV(ナイトビジョン)ではフィルターが必須で、フィルターによって見え具合を変えていると言うのを知ったこと。特に最近31.7mmのQBPが手に入ったのが大きかったです。カメラレンズでもフィルター使えるようになるんだと妙に納得しました。直接のきっかけは31.7mmのQBPにUV/IRカットフィルターを実際に重ねたことでしょう。あ、そうかフィルターって多段でもいいんだ!もちろん知識では知っていましたが、この時の経験がBFとさらにHαを重ねてもいいのではと思うに至ったのです。

さて、思い立ったが吉日。なんとか少しだけ晴れている週末の日曜、15時頃からはじめました。

IMG_9357
今回はBFもついているので、マスキングテープの必要もありません。

今回は3.5nm HαフィルターをASI290MMに取り付けるのみ。ブロッキングフィルターはそのままです。撮影は3.5nm Hαフィルター有り/無しが違いだけです。画像処理とかもほぼ同様のプロセスです。


実際の撮影結果

結果をまず言うと、今回は大成功。まずPCの画面上ですでにはっきりと違いがわかりました。

3.5nm Hαフィルターをつけた方がもちろん暗いのですが、暗さの違いはわずか4dB、SharpCapのゲインのところで40だけです。それよりもフィルターありの時の明るさが相当均一になったのにまず驚きました。PSTのエタロンは決して性能が良いとは言えないので、明るいところと暗いところの差が結構出ます。エタロンの明暗自身は変わらないと思うのですが、このときにエタロンとは関係ない不自然な明暗がなくなり、かなり均一になって、言ってみれば至る所で周辺減光が減ったようなイメージです。

おそらくですが、、強烈な太陽光に対して鏡筒内にジャンク光がまだまだたくさん存在しているのかと思います。理想的にはHαだけが通り抜けてきているはずですが、実際には他の波長の光も明らかにカメラ側まできているのでしょう。PCの画面を見ながら鏡筒の位置を少し動かしたりしてみると、3.5nmフィルターがない時にこれまで見えていた明るくなったり暗くなったりが、あからさまに消えています。

同時に、ここからは画像を実際に見てもらったほうがいいのですが、フィルターありの方がコントラストが高く、明らかに像がキリッとしているのです。ImPPGまでの処理を終えたところでの比較です。

3.5nm Hαフィルターありと、
15_45_23_lapl4_ap1555_IP2

3.5nm Hαフィルターなし。
15_46_48_lapl4_ap1574_IP2

ほぼ同時刻、同条件、画像処理も同じです。フィルター分焦点がずれる可能性はあるので、ピントだけはそれぞれで調整しています。光彩面もそうですが、特に境のスピキュールのところのツンツン具合があからさまに違います。プロミネンスも明らかに出方が違いますが、これもPC上での撮影時もフィルターありほうが明らかに見易かったです。

別カットです。フィルターありと、
15_44_19_lapl4_ap1496_IP

フィルターなし。
15_48_02_lapl4_ap1972_IP

公平を記すために、先ほどと撮影順序を先後と後先と変えてあります。こちらも明らかにフィルターありの方が細部まで出ています。まるで分解能が完全に一皮むけた感じです。


仕上げと考察

せっかく上手く撮れる方法が見つかったので、少し仕上げまで持っていってみました。トリミングしています。

15_45_23_lapl4_ap1555_IP2_color_cut

Photoshopで更にあぶりだすと、明らかに細かいスピキュールがよく見えて、もうツンツンしています。スピキュールだけで言えばこれまで撮った中で一番きれいに出ています。同時に、これも当然かもしれませんが、プロミネンスの解像度もこれまでよりかなり楽に出るようになっています。撮影した日は夕方の西日で、決してシンチレーションがいいとは言えなかったので、これは3.5nm Hαフィルターを加えることによるジャンク光を取り除く改善効果と言ってしまっていいかと思います。

これくらいスピキュールやプロミネンスが出てくると、次に試したくなることが出てきます。プロミネンスの形の変化のアニメ化です。以前一度試していますが、位置がずれていくことによる、画質クオリティーのブレを補正するのが大変で、画像処理合わせと位置合わせでえらい苦労をしました。今回ジャンク光を軽減したことで、多少位置がずれても明るさが大きく変わらないので、この苦労が多少軽減されると思いますし、解像度も上がるのではと期待しています。あとは、いかに太陽撮影時のガイド方法を編み出して位置を固定することでしょうか。


まとめ

PSTではエタロン部を外から回転させることで、波長域を調整できるのですが、見えている全面に波長域が合っているかと言うと、ここは悲しいかな、安価なエタロンのためせいぜいきれいに見えるのは3-4割と言ったところです。このとき見えていないところは、今回の3.5nm Hαフィルターを入れても大きな改善はありません。逆にエタロンできちんと見えているところは、これまで入っていたジャンク光と思われるものがかなり減少したと考えられ、相当の改善が見られました。

今回の撮影は夕方の西日でした。これまで分解能が出たのはいずれも朝か、南中。西日ではたいていボケボケでした。その状態でもかなり分解能が出ているので、もっとましなシンチレーションや時間帯になれば、さらなる改善が期待できそうです。

元々の動機の「全体像をもう少し広い範囲で見る」というのはのは今回は諦めざるを得ませんでした。さすがにBFが高価なわけが少しわかった気がしました。今回の試みはある意味BFをサポートして能力を向上させるようなものかと考えられます。

今回のアイデアは、3.5nm HαフィルターをCMOSカメラに取り付けるだけという、極めて簡単にでき、誰でも試すことができる太陽撮影時の分解能向上です。また、アイピースに取り付けることもできるはずなので、安全性を守れば眼視にも適用でき、コントラストの増加につながるかもしれません。

もし3.5nm Hαフィルターを手に入れるチャンスがある方は、一度試してみることをお勧めします。その一方、私のは改造機なので、そもそもの性能が悪いだけで、たまたまそれが改善されただけなのかもしれません。実際に他の方でも効果があるのかどうか、結構興味があります。

最後に、私の突拍子もないアイデアに付き合って頂き、3.5nm Hαフィルターをご提供いただいた国際光器様、当初あまりよくない結果でお知らせするのをためらってしまっていましたが、別の効果は十分にあったのかなと思います。結果が遅くなってしまって申し訳ありませんでした。さらに、本来の使い方の星雲でも試してみたいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。

それにしても、太陽早く活動期にならないかな?たくさんの黒点とか、大きなプロミネンスとかフレアも今回のセットアップで撮ってみたいです。


前回の、3.5nm Hαフィルターがブロッキングフィルターとして使えるかの理論編の続きで、実際に撮影してみた実践編の結果です。


注  意

今回の使用法はPST、そして3.5nm Hαフィルターも含めて、本来想定される使用方法とは大きく異なります。この記事の目的は、決してこの使用方法を推奨するわけではなく、あくまで可能性を探る目的として、テスト的に試すものです。もし、この記事を見て追試や似たような方式を試される方がいたとして、何かトラブルになったとしても、本ブログは何の責任も負うことはできません。また、試験中に使用されるフィルターを提供して頂いた国際光器さんにも、一切の責任はありません。もし試される場合は、くれぐれも自己責任の範囲内でお願いいたします。

また、安全にはくれぐれも気をつけてください。一般的に太陽観察は危険を伴います。太陽はその強力な光源のために、直接、またはレンズを通して見ると、最悪失明の恐れがあります。少なくとも私はPSTの改造後、今回のテストも含めて一切眼視では見ていません。太陽像を確認する場合は、必ずカメラで撮影するようにしています。万が一、フィルターが割れていたなどの事故もあり得ます。カメラだけならば物の事故で終わりますが、目の場合は取り返しがつかないことがあります。

繰り返しますが、安全には最新の注意を払い、くれぐれも気をつけて、あくまで自己責任の範囲内でお願いします。


それではここからが今回の記事になります。

実際に3.5nm HαフィルターをBFの代わりで使って撮影してみる

そもそも、なんで10月の小海で3.5nm Hαフィルターを受け取って、11月には撮影していて、それでこんな時期の記事になったかというと、実はあまりいい結果がでなくて記事自体がお蔵入りになりかけていたからです。

昨年11月のある日、晴れていたので早速のテスト。とりあえず、これまで使っていたPSTを久しぶりに取り出してきて動作確認をします。そもそもずーっと太陽は停滞期。昨年4月の黒点以降、イマイチ盛り上がりに欠けます。なのでこの日も黒点はもちろん、プロミネンスもほとんど何もない状況。

撮影してみて、特に10cmPST自身動作に問題はなく、光彩面の模様は普通に見えます。この像を基準とします。下はBFはオリジナルのままで実際に撮影した画像で、撮影後画像処理をしたものです。

2019-11-04-0535_5-Capture_lapl5_ap2568_IP
BF換装前のオリジナルの状態。これを基準にします。

基本的にはSharpCapで撮影して、Registaxでスタック、ImPPGで模様を出します。本来はここからPhotoshopでフラット補正やカラー化、トリミングなどしますが、今回は比較だけのためImPPGで止めておきます。

さて、肝心のBFを3.5nm Hαフィルターで置き換えた場合です。まず、そもそもBFがアイピース止め口と一体になっているので、BFをを外してしまうとアイピースやカメラをきちんと固定することができません。今回の場合は仕方ないので、マスキングテープを利用して仮止めします。

IMG_8581

固定方法は雑ですが、とりあえず撮像を見ることはできます。ピントも普通に出すことができました。

まず、撮影していてPCの画面を見て思ったのが「明るい」でした。これは当然で、元々のBFよりも波長透過域が広いので明るくなるのは正しいです。でも模様が明らかに少ない気が。Registax直後の画像がこれです。

2019-11-04-0659_0-Capture_lapl5_ap1306

というか、ほぼのっぺらぼうです。この時点では「あー、これはダメかな」と思っていました。その後、ImPPGで模様だし。その際ガンマを相当下げたらやっと少し見えてきました。

2019-11-04-0659_0-Capture_lapl5_ap1306_IP

なんとか光彩面の模様も見えたか?と言ったレベルでしょうか。明るさで隠れていた情報は画像処理で多少引き出せたのかと思います。それでも元のオリジナルのBFに遥かに劣るように見えます。

少し詳しく見ると、分解能に関してはそれほど悪いとも思えない一方、コントラストは明らかに悪いです。エタロン自身は同じなので分解能はそこである程度決まってしまい、その後出てくる余分な光があるかどうかでコントラストが決まってしまうような気がします。

それでもさすがにこのレベルだと撮影としては使い物になりません。ただ、元のBFでの画像も意外なほどボケボケなので、たまたまその日がシンチレーションが悪かったということもあるかと思います。一応その週末に確認のために、再度撮影をしてみました。

1週間後に撮ったオリジナルBFでの太陽と

2019-11-09-0239_2-Capture_lapl5_ap1950_IP

BFを3.5nm Hαフィルターで取り替えた場合の画像です。

2019-11-09-0235_6-Capture_lapl5_ap2085_IP

残念ながらこの日はさらに差が広がってしまいました。と、ここら辺で今回の取り組みは諦めとなりました。


結論とまとめ、そして今後の展開

まあ、結論としては「3.5nm Hαフィルターをブロッキングフィルターとして使うと、かろうじて像をあぶり出すが、実際の撮影レベルで使うには厳しい」と言ったところでしょうか。うーん、せっかく面白いアイデアだと思ったのに、非常に残念です。とりあえずBFの「代わりとして」使うことは諦めることにします。もしこれがいい成果を出せたなら、BFを安価に大口径化できたはずなのですが。

もし興味があって追試される方がいるかもしれませんが、BFを抜いた状態になりますので、安全にはくれぐれも気をつけてください。今回の散々な結果を見て試したいと思われる方はほとんどいらっしゃらないとは思いますが。

ところで、そもそもなんで11月にお蔵入り状態だった記事が、2月のこの時期に突然復活したのか?それはつい最近3.5nm Hαフィルターを使って進展があったからです。ここでクイズです。

Baader製3.5nm Hαフィルターを使って確認できた
進展とはいったいどんなものだったでしょうか?

何か思いついた方はコメント欄に書いてみてください。全然難しいことではありません、むしろ単純です。ヒントは、近頃凝っている電視観望でのフィルター使用の経験が生きているということです。


起死回生の案の実際は、次の最終回の記事で。乞うご期待。



10cm PSTでの太陽撮影時の問題点

太陽のHα撮影はPSTを使っています。PSTは太陽望遠鏡の中でも入門用ということもあり、口径4cm程度です。分解能の観点からいくと口径で制限されていることはわかっているので、PSTに10cmアクロマートを無理やり取り付けた魔改造機で観測を続けてきました。

PSTの中に入っている波長選別器の働きをする2枚合わせ鏡のエタロンは、入射光に平行光を要求するために、直前においたレンズ系で平行光を作り出しています。このレンズ系はF10の光学系を要求するために、元々の口径4cmの鏡筒は焦点距離400mmでの設計。口径10cmのアクロマートも焦点距離はF10を保つために1000mmのものを選んでいます。焦点距離が長くなると、より拡大して見えるわけですが、焦点距離1000mmは太陽の全体像を見るのにもうギリギリです。ASI294MCを使っていてもセンサーいっぱいに太陽像が広がります。

根本的な問題は、センサーに来るまでにすでにサイズがギリギリいっぱいになっていて、少し光軸がずれるだけで太陽像が欠けてしまうところです。このサイズを制限しているのが、BF(ブロッキングフィルター)になります。安価なPSTには一辺わずか5mm程度のBFが使われています。実際にはこんな感じです。

IMG_3657

このBFのサイズを大きくすればいろいろ解決するのですが、このBFがとにかく高いのです。単体で購入するとざっくり1cm10万円が相場で、ちょっとサイズを大きくするだけで平気で数十万円とかいったりします。太陽は本気でやるとものすごい金食い虫で、私のような低予算組にはなかなか手が出ないのが現実です。

何かいい方法はないかと考えていた時に、半年くらい前、国際光器さんからバーダープラネタリウム製のの3.5nmのHαフィルターが販売されるとの情報がありました。「3.5nm? 結構線幅狭いな!」と思い、その時にパッと浮かんだアイデアが「もしかして3.5nmのHαフィルター、安価なBFの代わりにならないかな?」というものでした。


太陽Hα望遠鏡の仕組み

ここでまず、太陽Hα望遠鏡の仕組みを理解しなくてはいけません。PSTの場合、太陽側からアイピースに行くに向かって
  1. 対物レンズ
  2. 平行光を作るレンズ
  3. ファブリペローエタロン
  4. BF(ブロッキングフィルター)
  5. ERF (Energy Reducing Filter)
などで構成されています。PSTを以前分解したことがあるので、この記事を見ると中身がよくわかるかと思います。



この中で一番重要なのはファブリペローエタロン(太陽でHαフィルターと言ったら普通これを指す、以下エタロンとか呼びます)です。光彩面の模様やプロミネンスなどHα線をできるだけ単一波長で鋭くみるために必要です。PSTに入っているエタロンは1Å (オングストローム、0.1nm) の超狭帯域幅の波長を通すためのフィルターとのことです。このエタロンがあるから、一般的に太陽望遠鏡はおそろしく高価になります。エタロンの原理に関しては過去記事をご参照ください。

でもこのフィルターには決定的な欠点があります。Hαの656.3nmだけ0.1nm幅で通してくれればいいのですが、その波長幅を周期的に他の波長に対していくつも通してしまうのです。なのでコーム(櫛形)フィルターなどと呼ばれたりもしています。実際、エタロンに光を通してみても暗いわけではなく、様々な周期的な波長の光が通ってきているために、意外に明るかったりします。

でも太陽観測のためにはHα線だけを見たいので、Hα以外の波長をブロックする必要があります。そこで登場するのがBF(ブロッキングフィルター)になります。Hα周りに、エタロンよりももう少し広い波長幅で透過するようなフィルターで、余分な波長をカットしてくれます。

さらにさらに、実はBFもHαのみを通すのではなく、もっと短い波長、もっと長い波長を素通ししてしまいます。なので、その素通しを防ぐためにもっと広い範囲でHαのみを通し、さらに短い波長と長い波長は全てカットするフルターを入れる必要があります。その役割を果たすのが最後のERFです。

このように太陽望遠鏡は3段階のフィルターで構成されているというわけです。エタロンと、BFと、ERFの3つですが、順序はそれほど重要ではありません。例えば初期のころのPSTは、対物レンズにERF用のコーティングをしていました。これはコーティングの劣化で対物レンズごとダメになるので、そのうちにアイピース側に置く小さなERFに置き換えられました。


エタロンの透過波長の間隔

さて、エタロンが周期的に波長を透過すると言いましたが、その周期はどれくらいでしょうか?これはFabry-Perto etalonの2枚の鏡間の距離のみで決まるような、FSR(Free Spectral Range)という量で表され、以前計算しています。繰り返しになりますが式で表すと、以下のようになります。

Δλ=λ22nlcosθ

  • λ: 中心波長、今回の場合6563Å=656.3nm。
  • n: キャビティー中の媒質の屈折率、今回の場合空気なので1でいいでしょう。
  • l: 2枚の間の鏡の距離、PSTの場合0.1mm以下程度とのこと。
  • θ: 光の入射角、PSTの場合ここを回転つまみで調整している。動かせる幅はPSTでは0.5度程度とのこと。今回は初期状態として0としておきます。
これらの値を入れていくと、FSRは鏡の距離だけで決まるような量になり、

Δλ=λ22×1×l×cos0=λ22l

=656.3[nm]22×0.1[mm]=2.15[nm]

のように、PSTの場合 Δλ = 2nm ( = 20Å) か、(鏡間の距離が0.1mmより狭いということなので)2nmよりもう少し長い程度になります。

要するに、Hα線の656.3nm左右に2nm空けて、654.3nmと658.3nmも、さらに外側の波長も2nmおきに通してしまうということです。


ブロッキングフィルターの波長透過幅

では、BFの透過波長幅はどれくらいでしょうか?PSTのものではないですが、ここに同じCORONADOのBF15の透過率のグラフがあります。このグラフによるとFWHM(Full width Half Maximu: 半値全幅、最大値の半分の値になるところの両側の幅という意味) は縦軸最大の66%の半分の値の33%くらいのところの横軸の幅を見て、まあだいたい0.75nm程度ですね。エタロンの線幅の7倍くらいでHα線をとおし、左右2nm離れた波長は十分にカットできる性能を持っていると言うことが分かります。

ちなみに2nm離れたところでどれくらい光を通すかと言うと、左右ともにグラフの範囲外なのではっきりとした値はわかりませんが、上の658.3nmは無視できるくらい小さく、一方下の654.3nmは数%は透過してしまうことが推測できます。


3.5nm HαフィルターはBFとして使えるか? 

さて、これで求めたい条件が揃いました。これでやっと本題の3.5nmのHαフィルターはBFとして使えるかどうか?に答えが出せます。

単純に言えば2nmかそれより長い長さおきに、0.1nmのピークがあるわけです。今回のHαフィルターの中心周波数が656.3nmで、そこを中心に3.5nmだけの広がりを持っていたら、左右の2nm離れたところの0.1nmの広がりを持つ波長はカットされるはずです。

おお、やった!これなら安価にBFの代わりに使うことができる!と思ったわけです。


補足:
ただし、現実的には3.5nmの幅の定義があまりはっきりしてなくて、Baaderのページを見るとどうもFWHMらしいことがわかります。仮に3.5nmの幅がFWHMで定義されていて、かつその透過曲線をガウス分布と仮定すると、左右2nmのところではまだ40.5%程度の光を透過してしまいます。左右3nmのところまで広がっていれば13%透過まで絞れます。

やはりまだ隣の波長の光が多少漏れそうなので、もう少し透過幅の小さいフィルターがあるといいのかもしれません。現在では3.5nmが一般的に手に入れられる最狭(さいきょう、最強?)のものなので、まずはこれを考えることにします。

ちなみに、透過幅がこれまで販売されていた7nmのものだと、2nmのところでは計算上80%もの光を通してしまいます。これだとほとんど効果がないので、やはり3.5nmがでたことで可能性が出てきたと言ってもいいかと思います。



なんと国際光器さんの協力が!

と、こんな話を確か胎内の星まつりの時に、3.5nmのHαフィルターの輸入元の国際光器さんと話していました。その場で在庫があれば購入することも考えていたのですが、その時はまだ輸入するかしないかの頃で、天リフさんでやっとレポートが出たくらい。その場には当然在庫は無し。でも国際光器さんが、これは面白そうだということで、テスト用に無償で提供してくれることになり、なんと小海の星まつりで本当に持ってきてもらえたのです。これでとうとうテストすることができます。国際光器さん、本当にありがとうございました。

というわけで、小海から帰ってしばらくしての11月の晴れた日の昼間、早速テストです。まずは3.5nmのHαフィルターをASI290MMに取り付けます。

IMG_9361

うーん、なんかスペシャル感が漂います。でも写真の赤い色と実際の金色のような色が違うのが気になりますが、写真はまあイメージなのでしょう。

さて今回の記事、理論編はここまで。
実際撮影してみてのテスト結果は、また次の実践編で。


週末に試した50mm、F1.4レンズと31.7mmの新型QBPを使った電視観望の続報です。



平日なので、時間も限られていることもあり、限られた事しかできていませんので、速報のようなものと思っていただけると助かります。


UV/IRフィルターの影響

まず試したのが、UV/IRフィルターを入れた場合です。とりあえずは前回の猫目ハロの再現。

センサーには前回同様T2-1.25''変換フィルター



がついていて、そこに31.7mmのQBPがついています。QBPの先に、2017年の胎内星まつりで買ったZWO社製の31.7mm径のUV/IRカットフィルターをつけています。その状態で撮った写真が

IMG_9383a


になります。前回と違い、月がすぐ近くにあるためにさらなる炙り出しが必要で、周辺減光が目立っていますが、取りえず無視してください。前回UV/IRがない時にQBPだけでとったもの

IMG_9322a

と比べても、若干カラフルさは無くなったような気はしますが、猫目はほとんど改善されていないことがわかります。また、今回の方が若干星の周りの青ハロが改善されているようにも見えますが、ピント位置にもよりまだ時間をかけて検証できていません。とりあえず誤差の範囲だと思ってください。



猫目ハロとピントの関係

いろいろ試している間に一つ気づいたことがありました。ピントによって猫目の大きさが大きく変わるのです。例えば、ピントを少しずらすと猫目が消えます。その代わりに他の星がぼやけます。

IMG_9381a


ちなみに猫目とピントを共に妥協したくらいだと以下の写真くらいでしょうか?

IMG_9384a


ここら辺で、ハハァー、と何となくかわかってきました。

猫目ハロはQBPのせいではなく
レンズから来ている可能性が高い

と。


絞りを変えてみる

ここで、絞りを一つだけ絞ってみました。F1.4からF2になります。

撮れた写真がちょっと雲が出てきた時のものしか残っていなくて(実は別ショットをSharpCapでsnapshotをPNGで取っておいたですが、設定不足でなぜか白黒)写真では完全に直接比較とはいきませんが、見ている限りジャスピンでも劇的に改善しています。

IMG_9389a

もちろん一段階暗くなるので、その分ゲインを上げるとか、ヒストグラムでより攻めるなどの対策が必要となります。それでも同じ露光時間でリアルタイム製を損なうことなくバラ星雲は見えるので、まあノイズ的には許容範囲かもしれません。

一応白黒も出しておきます。F1.4の時のシリウスと

Capture_00001

F2の時のシリウスです。明らかにこちらの方が改善されています。

Capture_00002


NIKKOR 50mm F1.4レンズについて

改めて「NIKKOR オールドレンズ 50mm」で調べてみると「F1.4ではボケを楽しめる」だとか、「F1.4だとイマイチだがF2にすると結構いい」というような評価が散見していました。今回はそれを裏付けるような結果になっているかと思います。F1.8レンズの方が安くて性能が良いという評価も見られました。

やはり安いだけのレンズでは問題もあるということがわかってきました。もちろんどこまで妥協するかという問題で、明るい星を見なければF1.4のままでもいいのかもしれません。でも50mmレンズとASI294の組み合わせの場合だと比較的広い範囲を見るので、明るい星が入る可能性が高く、やはりF2が実用的なラインかと言えると思います。

結論とまとめ

今回の結果から、前回出した猫目ハロはQBPのせいではないことがわかりました。31.7mmの新型QBPでひどいハロが出るような印象を与えてしまい、申し訳ありませんでした。少なくとも猫目ハロに関してはレンズのせいであったことは明白で、QBPのせいでは全くありません

ただ、シベットさんが報告しているような赤ハロの方は、今回検証する時間もなく雲が出てきてしまいました。こちらは次回以降にまた試してみます。(追記: 今回のアメリカンサイズQBPで、後日バラ星雲を撮影画像処理までしてみました。QBPでハロが問題になるようなことはありませんでした。)

せっかく作って頂いたQBPなので、実際に確かめてみて、使えるという確証を早く得たいと思っています。新型QBPがきちんとした撮影レベルで使えるかどうかも、次回以降、晴れて天気が安定している時にきちんと検証するつもりです。今しばらくお待ちください。


シベットさんが最近フィルターを使った電視観望を盛んに試されています。私のところにも31.7mmのアメリカンサイズのQBPフィルターが届いたので、ずっと試したかったテストをしてみます。


アメリカンサイズのQBPができた!

そもそもは昨年9月にQBPを使って電視観望をするとどれくらい見えるようになるかというテストをしたことに始まります。



この時の結論はHαで見えている赤い星雲はQBPによって相当見やすくなる一方、プレアデス星団などの青い星雲や白色光に近い系外銀河はむしろQBPによって電視観望では見えにくくなってしまうというものでした。なので、見る対象によってQBPをつけたり外したりするといいのですが、48mm版のQBPはFS-60CBの鏡筒とフラットナーの間に入れてあって、なかなか取り外しにくいのです。

そんな折、ちょうどBLACK PANDAさんからTwitter上でQBPの新バージョンができるというアナウンスがありました。なんでも基材を合成石英にアップグレードするということです。これまでの基材が何かはわからない(2020/2/3追記: B270だそうです。)のですが、合成石英は研究レベルでもよく使われ、熱膨張が少なく、紫外、赤外共に透過率が高かったりします。

上のブログの更新時のTwitterでのアナウンスでBLACK PANDAさんがコメントをくれ、「QBP入れ替えができるように、CMOSカメラに直接つけることができる31.7mmサイズがあればいいなあ」とか返事をしたら、なんと本当に反応してくれました。新バージョンを作る際に、31.7mmバージョンも作ってくれるというのです!これは期待大です。

合成石英を使用した新バージョンのQBP自身は11月半ばにできたと記憶しています。その時のものは元と同じ48mmサイズでした。その後、つい先日の1月29日、とうとう新バージョンの52mm版と、まさかまさかの31.7mm版が本当に発売されたのです!約束を守っていただいて本当に嬉しいです。BLACK PANDAさんどうもありがとうございました。

しかも値段を見ると、アメリカンサイズはこれまでの約半額、税抜きだとなんと1万円切りです。これならユーザーとしては気軽に試すことができるので、大変嬉しい価格設定です。

さらにここから話は急展開します。なんと製品を送るのでテストで使って欲しいとのこと。願いまで聞いていただいて、しかもサンプルも送っていただけるとは!

というわけで、送っていただいた新型のアメリカンサイズのQBP、やっと昨晩テストを敢行することができました。


31.7mmのQBPが生きるところ

フィルターサイズが小さくなって一番良かったのは、CMOSカメラに直接取り付けたり、フィルターホイールに入れたりできるところでしょうか。センサーサイズ的にはフォーサーズまでは使うことができるはずです。電視観望でよく使うASI294MCならば大丈夫でしょう。

もともとはASIカメラについている前に出ているアダプター

IMG_9368


に取り付けることを考えていましたが、年末の名古屋年越し観望会の智さんのレデューサートラブルの検討のときのコメントで「ASI294MC Proについていた薄いアダプターに31.7mmフィルターを取り付けるこができる穴が開いていて、以前よりも飛び出ることなくセンサーに近いところにフィルターを取り付けることができる」ということを教えてもらいました。

実際にASI294MC ProにQBPを取り付けると下のようになります。

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これまでは鏡筒に取り付ける時のみQBPを利用することができました。これならば、一眼レフのレンズをASIカメラに取り付ける時にも、アダプターの中に十分スペースがあるので、広角レンズを使ってもQBPを試すことができます。シベットさんはすでに同様のことを各種フィルターで試しているようなので、私も今回チャレンジしてみます。

今回は上の写真のように、古いオールドNIKKORの50mm/f1.4の明るいレンズにCanonレンズのアダプターをつけて、そこにさらに、ZWOが出しているASIカメラにCanonレンズを取り付けることができるアダプターを取りつけています。そのアダプタの空間にフィルターがうまく収まっています。

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明るいレンズとQBPを組み合わせての電視観望

さて、土曜の晩晴れた際にTSA-120のファーストライトの合間を縫って、このセットアップで電視観望を試しました。ポイントは焦点距離が50mmと広角なので、赤道儀やAZ-GTiさえ使う必要がなく、ただの三脚と自由雲台に載せただけで、手で動かすだけで見たいところを見ることができます。

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このセットアップ、本当に超手軽です。ぱっと持ち出してPCとケーブル一本繋ぐだけです。

もう一つのポイントは、f1.4の相当明るいレンズを使っていることです。以前ASI294MCを最初に手に入れたときその後何度か明るい広角のレンズを使って電視観望をしています。それでも十分に見えたのですが、明るすぎるレンズは画面が飛ばないように露光時間やゲインを抑える必要があるので、星雲なども当然見えにくくなってしまいます。今回はQBPを使って光害をカットしているので、星雲のコントラストが上がり見えやすくなっています。しかも明るいレンズのために露光時間をそこまで伸ばさなくても、十分情報を得ることができ、リアルタイム性に一役買っています。


実際の見え方

実際の見え味ですが、結構衝撃的です。まずは1.6秒露光のライブスタックなしのオリオン座です。

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真ん中に三つ星が映っているのがわかると思います。すぐ下のオレンジの明るいところがM42オリオン大星雲になります。繰り返しますが、これわずかトータル時間で1.6秒だけ露光したものです。三つ星の一番左のところに馬頭星雲らしきものがうっすら出ています。それどころか、よく見るとバーナードループ まですでに出ています。

これを24枚スタックしたのが次の写真です。あ、写真は全てPCの画面をiPhoneで写しているだけなので、ほとんど実際の見え味と同じです。

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馬頭星雲も燃える木もバーナードループも普通にはっきりしています。これでもトータル40秒以下です。

さてここで、ちょっと嫌なことに気づきました。明るい星の周りにハロが出ている(2020/2/5追記: 猫目ハロは解決しました。新型QBPが問題ではなく、カメラレンズが問題でした。)のです。炙り出しなどせずに普通に見ているだけではこのハロは気付きません。電視観望でヒストグラムをいじって炙り出すと目立ってきます。この時点ではQBPのせいなのか、レンズが悪いのかはっきりしなかったので、ここでQBPを外してみました。

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同じ1.6秒露光、30枚スタックです。QBPがないと明るくなりすぎるのでゲインを50(5dB、半分近く)落としています。バーナードループも辛うじて見えているようですが、明らかにコントラストは悪くなっています。これはQBPの効果が大だったといえるでしょう。でもその一方、ハロは抑えられています。

シベットさんがブログの中でQBPは赤外を通すためにハロがでるのではという報告をしています。その中でアポクロマートなど赤外でも収差補正をきちんとしている鏡筒はこの問題は出ないのではという考察がされています。これまで私もFS-60CBやFS-60Q、FC-76で旧版の48mmのQBPを使ったのですが、星がサチらない限りはハロは出ることはありませんでした。

今回星がサチっている可能性が一つと、単なる相当昔のカメラレンズなので、赤外で収差があるのは十分可能性があるでしょう。ただ、ハロの様子が赤だけでなく、なんかカラフルになっているのも気になります。シベットさんによるとUV/IRカットフィルターを併用すると、星像はフィルター間の反射で少し悪くなるが、ハロは消えたという報告がなされているので、次回私も試してみようと思います。

ハロは確かにあるのですが(2020/2/5追記: 猫目ハロは解決しました。新型QBPが問題ではなく、カメラレンズが問題でした。)、暗い星ではそこまで気にならないのと、星雲の出かたが思いの他すごいので、とりあえず今回はQBPをつけてこのまま進めます。


ばら星雲です。1.6秒露光で31スタック。トータル50秒くらいです。

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ばら星雲の上にも少し赤い領域があります。クリスマスツリー星雲ですね。

というか、今回何かを導入するというのではなく、画面を見ながら赤いのがあるとこれはなんだ?と、「星雲を見ながら探す」という夢のような体験をしています。例えば上のバラはリアルタイムの1.6秒一枚露光ではこのように見えます。

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もう、全然見える範囲の明るさです。

一番衝撃的だったのは次の例でした。

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真ん中らへんに何か赤いのが見えます。スタックするとさすがにわかります。

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そう、電柱の上をカモメが飛んでいるわけです。もう夜中に一人で大爆笑。普通の住宅街でこんなのがほぼリアルタイムで見えるわけです。面白くないわけがありません。

その様子を動画にまとめました。


左手でiPhonedで撮影しながら、右手で三脚の自由雲台の上のCMOSカメラを操作しているので、揺れたりして見にくい点はご容赦ください。オリオン座から電柱上のカモメ星雲、次にバラ星雲を突き止めて、最後にまたオリオン座に帰ります。バラ星雲なんかポンッと出てきます。実際にホントにこのように見えるわけです。

他にもプレセペ星団、

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M46、47、48です。

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適当にレンズを向けて見えたものです。1.6秒だけの露光なのでM46、47、48は少し見にくいですが、カモメ星雲のところの左上にもM46とM47は写り込んでいます。

あいにく、系外銀河は一つも認識できませんでした。アンドロメダとか出ていれば別ですが、さすがに広角レンズでは銀河は小さすぎるのと、やはりQBPは白色の系外銀河が苦手なのかと思います。あと今回はハロがキツかったので、恒星と銀河の見分けがつきにくかったのもあるかと思います。

最後に、オリオンが沈みかけるところです。右のほうが赤カブリになっていますが、それでもよく見るとエンゼルフィッシュ、辛うじてですが写ってますよね!

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まとめ

まだハロの件など克服すべき課題も多い(2020/2/5追記: 猫目ハロは解決しました。新型QBPが問題ではなく、カメラレンズが問題でした。)ですが、QBPと明るい広角レンズを用いることで、

光害地で、導入いらず、
リアルタイムにかなり近い、超お手軽な星雲星団観察

が可能だというのは特筆すべきことだと思います。一番最初にHUQさんが見せてくれてα7Sでの電視観望に近いかもしれません。α7Sの凄いセンサー感度にSharpCapとQBPで頑張って迫っているという感じでしょうか。

ちなみにこの50mm/f1.4レンズ、古くても標準レンズだったこともあり、今でも中古カメラ店やヤフオクで格安で普通に手に入れることができます。私は名古屋のコメ兵で5-6千円くらいだったと思います。

レンズは安くてもやはりASI294MCがまだ高いですかね。そこはASI385MCとかに代えて節約するという手もあります。

キットの望遠レンズを使った電子観望
も以前試しましたが、



広角、QBPが違う点になります。今回のこの手法も同様に、導入のための機器もいらないのと、さらに広角レンズを使っているために導入スキルも必要ありません。なので、相当手軽かと思います。

自由に空を見て星雲を探すインパクトは相当なものなのですが、今回のブログでそれが伝わったかどうか?比較的楽なセットアップだと思いますので、これまで電視観望を試したことがない人も、よかったら試してみてください。




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