ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ: 観測機器

日本の電視観望の現状を振り返ってみようと思います。できるなら、これから電視観望を始める人の機材とかの選定に役立ってくれればと思います。


「電視観望」に至るまでの歴史

アマチュアレベルで、CCDカメラを使って星雲星団などを撮るという意味では、おそらく最古に近いものは昔の天文ガイドに出ている1980年年代前半くらいなのでしょうか。


上の記事では宇宙科学研究所と書いてあるくらいなので、アマチュアというよりは研究室レベルの話なのかもしれません。その後、CCDカメラが発達してアマチュア天文家に撮影の門戸が開かれていったのかと思いますが、それでもカメラの値段は相当高価で、一部のハイアマチュアの方に限られていたのかと思います。

むしろ電視観望に直結するのは、それよりも以前に行われていたイメージインテンシファイアを使ったリアルタイム表示でしょうか。昔の1981年1月号の天文ガイドにも記事があります。当然私はこの時代のことは知らないのですが、いつの時代にも同じようなことを考える人は必ずいるのかと実感させられます。そのころのイメージインテンシファイアは、当然星雲に色なんかつかないですし、値段からいっても一般の人にとってはとても手が出るものではなかったのかもしれませんが、今ではそれよりはるかに高感度なセンサーが、もう全然手の出る値段で出ています。以前のこの記事



でもないですが、天文に関して言えば今は夢にまで見た未来の世界なんだと思います。

一般のアマチュアでも星雲を高感度のCCDや一眼レフカメラを使って電視観望っぽいことをやっていた方は、結構前からいたようです。動画という意味で一番古そうなのは、Youtubeで見つけた限り7年前。でもこれらは今の電視観望のような、リアルタイムでその場で見るというよりは、「天体を動画で撮影をしてみる」という意味合いが強かったように思えます。

Sonyのα7Sが出た2014年あたりから、さらに電視観望に近いことをやっていた方が増えているのは特筆すべきです。やはり、高感度カメラの一般化とともに発展していくような技術なのかと思います。それでもまだ、モニターに映してみんなで見るというようなスタイルにはなっていなくて、あくまで動画で撮影してみるという類のものだったと思われます。


「電視観望」の始まり

「電視観望」という言葉は、SWATマニアで有名な愛知のHUQさんの造語です。HUQさんの方法は、α7Sを使うところはそれ以前と同じなのですが、それをHDMIで外部モニターにつないで、赤い星雲をみんなで共有して見ていたところが新しいのかと思います。当然α7Sも天体改造済みで、さらに色がおかしくならないようにUVカットフィルターも入れていたはずです。



HUQさん曰く、もともと「電視」としたかったらしいのですが、これだと中国語でテレビの意味になってしまうので「観望」をつけて電視観望としたとのことです。最近は電”子”観望と言われることもあるようですが、「でんしかんぼう」という造語を端に「電子観望」もできたものなので、大元は「電視観望」なのでしょう。言葉は時代とともに変わっていくので、どちらでも良いのかと思いますが、私は個人的にこの手法を直接見せてくれたHUQさんに敬意をはらい「電視観望」の方を使っています。


CMOSカメラを使っての電視観望のはじまり

おそらく日本では私が最初に、ZWO社のCMOSカメラを使ってその場で見ることを目的に電視観望を始めたのかと思います。当時調べた限りでは、少なくともCMOSカメラを電視観望相当のことに使っている例は見つかりませんでした。



当時私はまだ星を始めたばかりで、α7Sなんていう高級機はとても買えませんでした。上のHUQさんの方法をなんとか使えないかと、苦し紛れに、惑星用に使っていた同じSonyセンサーのASI224MCを流用したわけです。たまたまセンサーの感度がSony製で物凄く良かったこと、センサー面積などの制限から、小口径短焦点化など、逆に色々と発展させることができたのではと、後になって理解することができました。


海外の状況

ちなみに海外で電視観望に相当するのは別の言葉があって、EAA(Electronically-Assisted Astronomy)というのが正式名称のようです。直訳すると「電子補助天文」くらいでしょうか。調べてみるとEAAという言葉ができたのはそう古いことではなく、Cloudy Nightsでは2015年くらいから使われ始めたようです。私が始めたのが2016年なので、その一年くらい前ということになりますが、EAAの概念はもっと前からあったと思われます。2016年にはEAAをより一般化しようとするRevolution Imagerという製品がすでにできていました。



私はその当時、海外の状況を全然(それどころか、日本の天文事情もまだほとんど全く)知らなかったので、今の日本の電視観望の方法はある意味独立に発展してきたと言っていいと思います。というより、私は今だに海外のEAAの状況をあまり把握していないので、これまでの日本での電視観望の技術がどれくらい通用するか、一度海外の方で披露などしてみて、技術をすり合わせてみたいと思っています。少なくとも今の光害地でも余裕で見ることのできる技術は、海外と比べてもそんなに引けを取るものでもないと思っているのですが、どうでしょうか?


電視観望の広がり

さてこんな状況なのですが、日本では2016年夏の当初、電視観望なんて言葉は全く浸透していませんでした。その後、星まつりで披露して注目を浴びたり、



2017年にCAMPで披露してハイアマチュアの方の目にも入ったりしたのですが、



実際に電視観望という言葉がかなり一般的になってきたのは、2018年に入ってからくらいかと思います。日本で最大規模の販売店のKYOEIさんが力を入れてくれたり、天リフさんで積極的に取り上げてくれたのも影響が大きいと思います。

そんなこんなで、今では少なくとも天文マニアの間では電視観望という言葉はほぼ一般用語となり、会話の中でも普通に使われていますし、実際にかなりの人数の方が電視観望を試してくれていて、各地の観望会で成果を挙げているようです。


電視観望の分類

独断と偏見でですが、現在の電視観望を分類してみたいと思います。大きく分けて4通りくらいあるかと思います。
  1. まずはHUQさんが用いたオリジナルのα7Sを使う方法。これは後に明るさに走り、RASAを用いるような形に発展していきます。
  2. 2つ目は私が始めたCMOSカメラを比較的小口径の鏡筒で使う方法。これはひとえにSharpCapというソフトがあって発展した方法だと思います。今の日本で電視観望というと、これが主流なのかと思います。
  3. もう一つはRevolution Imagerを使った、PCを使わない簡単な方法。日本ではKYOEIさんで販売が開始されたのがきっかけです。
  4. さらに最近はASIAIRを使った方法なども出てきています。
これに加え、公共天文台などの大型望遠鏡を使った電視観望も始まっていますが、こちらはここ一年くらいでやっと公共天文台も注目し始めてくれたといった状況でしょうか。まだ、どこの天文台にもあるという状態からは程遠いです。大型モニターなどを常設することで、より多くの方に宇宙の深淵を身近に、リアルタイムに感じてもらうことができると思います。


さて、毎度長くて申し訳ないのですが、ここまでが前置きです。今回の記事の目的は、こんな背景を元にこれから電視観望を始める人がどんな方法があるのか、機材はどんなものを揃えたらいいのかというのを理解してもらうことにあります。

というわけで、まずは1から4の方法をもう少し詳しく見ていきましょう。

1. α7Sを使った方法

この方法が電視観望のオリジナルの方法と言ってしまっていいと思います。なぜなら電視観望という言葉を作ったHUQ氏本人が提唱している方法だからです。

  • 発案者: HUQ氏
  • カメラ: Sony α7S(天体改造済み)
  • 鏡筒など: F値の低い明るいカメラレンズ、のちにRASAに発展。
  • その他: HDMIケーブルで外部モニターにつなげると、みんなで共有して見ることができます。
  • 金額: α7Sが中古で10万からα7SIIが25万円くらい+天体改造3万円くらい、レンズはピンキリ(1万程度から、明るいレンズだと10万円以上の場合も)。HDMIモニターが1万円位。RASAだと8インチで25万円、11インチで45万円。11インチRASAを駆動するなら中~大型赤道儀でそれだけでも数十万円コースか。
α7Sの超高感度特性を利用した方法です。当初はカメラの天体改造も含め敷居が高かったのですが、最近は中古で10万円程度でα7Sを手に入れることができるので、かなり敷居は下がりました。

初期の頃は、50mm程度でF1.2というそこそこ広角のかなり明るいカメラレンズを使い、天の川なども含めてモニターに映す方法を取っていましたが、のちに焦点距離を伸ばす方向にも発展していきました。

カメラ単体は高感度なのですが、ISOを上げることのみで、外部ソフトを使うなどは基本できないので、どうしても鏡筒の明るさが欲しくなります。行き着く先はRASAなどの大口径で超低F値のものとなり、2017年の福島では11インチRASAで電視?と一部世間を騒がせました。



流石に11インチRASAは、それを乗せる赤道儀まで考えるとちょっと敷居が高くなりますが、ある意味究極の方法なのかもしれません。

ちなみに、α7S動画の場合の露光時間が秒最長でも0.25秒なので、その制限もあり明るさに限界があるのですが、必ず0.25秒刻みより速く見えるので、逆にリアルタイム性ではこれが一番面白いです。


2. 高感度CMOSカメラを使った方法

おそらく現在では、電視観望を言えばこの方法が主流なのかと思います。特徴はSony製の超高感度CMOSセンサーを使ったカメラを使い、比較的安価で小口径な鏡筒でもそこそこ見えるため、最初に始めるのには敷居が低く、とっかかりやすいことだ思います。

  • 発案者: Sam
  • カメラ: CMOSカメラ、ASI224MCやASI385MC、ASI294MCなど。
  • 鏡筒など: 短焦点で安価なものからOK。自動導入があるといいのでAZ-GTiがおすすめ。
  • コントローラー: SharpCap
  • その他: 画面を写すためにPCが必要。
  • 金額: カメラがセンサーサイズに応じて3万から10万円、鏡筒が安価な1万円くらいのものから。AZ-GTiなどの自動導入ができるもの3.5万円。計算機が5万円くらいから。
一番最初こそ口径20cm、F4の明るい鏡筒+FireCaptureで試しましたが、SharpCapの存在をRevolution Imagerの開発者のMikeに教えてもらってからは、ひとえにSharpCapに助けられて小口径化していきました。SharpCapを使うのはリアルタイムで画像処理を行っているようなもので、オートストレッチとLiveStackで星雲などあぶり出すために鏡筒を選びません。私は基本的に普段は口径60mmの小型のFS-60CBで電視観望をしています。

IMG_4972

PCが必要なのは、余分な機材が必要ということから欠点の一つもと言えます。逆に、PCの自由度の高さから任意のソフトが使え、特にSharpCapでカメラと鏡筒の能力の限界まで引き出せるのは利点ともいえるでしょう。値段も鏡筒を選ばないなど、いろいろ安価にする工夫がとれそうです。

また、広角のカメラレンズを使って、星座電視観望とか天の川電視観望なんかも楽しむことができます。


3. Revolution Imagerを使った方法

手持ちの望遠鏡などがあり、新たに簡単に試してみたいときはこれが一番でしょう。セットを買うだけで、必要な機材が全て入っています。PCもいらないのでとにかくお手軽です。

もともとアメリカのロサンゼルス近郊のOrange County TelescopeのMikeが機材を組み合わせて販売したのが始まりです。たまたま出張でこのショップに遊びに行った際、店長のMikeから日本に紹介してほしいと頼まれたものです。現在ではKYOEIから販売されています。
  • 発案者: Mike (Orange County Telescope)、日本への紹介者: Sam
  • カメラ: Sony製アナログカメラ(PAL出力)
  • 鏡筒など: とりあえず手持ちのものでOK。焦点距離を縮めるために0.5倍のレデューサが付属。
  • その他: モニターも付属。
  • 金額: Revolution Imagerが4万円程度。あとは手持ちの機材で。
PCを必要としない、最も手軽な電視観望セットです。画像処理に相当する機能がカメラに含まれています。日本語にも対応しています。

その代わり、自由度は少ないのでPC+SharpCapには機能的にかないません。ただし、付属のカメラは素子サイズがASI294MCよりも大きいので、感度は相当いいです。実はこれをビデオ入力ができるUSBキャプチャーアダプターなどを通してPCに入れて、SharpCapでLiveStackなどするという方法をあっかさんという方が試しました。これは素子サイズの大きさから侮れないくらいよく見えるようです。


4. ASIAIRを使った方法

2018年終わりころからでしょうか、当時から電視観望に力を入れていたKYOEIのMさんが、ZWO社のASIAIRを使った電視観望を提唱し始めました。当初はRED Cat51などの小口径の鏡筒を使っていましたが、最近は8インチのRASAと組み合わせて使っているようです。理由の一つが、ASIAIRの画像処理が、レベル補正の上と下しかいじれないことで、ガンマ補正に相当するものがなく、やはりある程度明るい鏡筒を必要とするからだと思われます。

  • 発案者: KYOEIのMさん
  • カメラ: ASI294MCなど
  • 鏡筒など: 明るいものがいいが、とりあえず小口径でも可能。
  • コントローラー: ASIAIR
  • 金額: ASIAIRが2.5万円、手持ちのスマホやタブレットがモニタになります。あとはカメラ、鏡筒、赤道儀など。小口径の場合は安価ですが、明るい方がいいのでRASAとかにすると、金額はそこそこ高くなります。
CMOSカメラを使っているので、2番の方法と変わらないと思えそうですが、PCのいらないASIAIRで、スマホなどがモニタがわりになるのは特筆すべきでしょう。さらに、ASIAIRに標準装備のplate solvingが物凄く優秀で、適当にセットしても、その時の画像を解析して位置を割り出し、赤道儀にフィードバックすることで、いとも簡単に精度よく目的の天体を導入してしまいます。

ASIAIRの画像処理が、やはりSharpCapに比べると機能的に劣るのは否めないのですが、もしこのまま開発が進んでSharpCapに匹敵する画像処理機能やLiveStackを持ったら、多分最強になります。


参考: Night Vision

電視観望ではないですが、Night Visionにも少し触れたいと思います。

といっても私は全然詳しいわけではなく、今年の原村で一度覗かせてもらったくらいです。色とかはつかないのですが、完全リアルタイムで淡い星雲を見ることができます。ドブソニアンとかの組み合わせで、さらに感度が出るので、DSO観測にかなり向いていると思われます。

ただし、値段がものすごく高いのと、明るいところで使わないなど、扱いが相当大変なようです。ナイトビジョン自身はものとしては昔からあるものですが、数が出るものでもないので値段がこなれるのがあまり期待できないのが難しいところでしょうか。観望会でお客さんにより気軽にみてもらうという観点からは、電視観望と相通づるものがあるのかと思います。


どんな機材で始める?

最近、電視観望を始めたいが、どんな機材から始めたらいいかわからないという話をちょくちょく聞きます。上で説明したように、いろんな方法があるのですが、
  • 手持ちの機材があるなら、CMOSカメラかRevolution Imagerを買えば比較的簡単に電視観望セットを構築することができると思います。
  • 手持ちの機材がないなら、最初は小口径の短焦点の安価な鏡筒でいいかと思います。
  • その時のカメラはASI224MCかASI385MCでしょうか。カメラ選びは以下のページを参考にしてください。
  • ASI294MCはセンサー面積が大きいのでやはりいいです。予算が許すならこれでしょう。何が違うかというと、広い範囲が一度に見えるので導入が圧倒的に楽です。
  • 自動導入はあった方がいいので、最初はAZ-GTiが安価で現状ではほぼ一択でしょう。もちろん普通の自動導入ができる赤道儀でも全然構いません。
  • あとは適当に余っているPCなどを流用して一度試すことだと思います。
  • ASIAIRは手軽さ、精度など兼ね備えています。画像処理がもう少し良くなればこれが決定打なるかもです。
  • 突き詰めていくと、究極的にはやはりRASAだと思います。RASAの明るさを生かすことで、ごまかしなしの本当にリアルタイムで星雲に色がつきます。α7Sとの組み合わせはある意味最強です。でも敷居もものすごく高いので、相当なマニア向けです。
とまあこんなところですが、参考になりますでしょうか?


今後の発展

今の電視観望の技術だけでも、自分で見て楽しんだり、観望会で実際にお客さんの反応を見たりすると、かなりのインパクトがあるのかと思います。

それでも電視観望はまだ非常に歴史が浅く、今現在もどんどん技術が進んでいます。例えば最近でもQBPを入れると格段に見やすくなるなど、まだまだ工夫の余地がありそうです。センサーの進化にも大きく依存するはずなので、今後も飛躍的に電視観望が発達して観望の中の重要な位置を占めてくるかもしれません。

まとめ

もしちょっと面白そうだなと思った方がいましたら、是非とも始めてみてください。わからないところがあれば、このブログのコメント欄にでも書いてもらえれば、できる限り答えたいと思います。

それでも機材を持っていないゼロからの状態だと、それなりの初期投資が必要となります。どこまで安く実用的に電視観望ができるのか、できたら今度挑戦してみようと思います。


あ、以前電視観望のトラブル解決集を作ったの思い出しました。よかったらどうぞ。(そろそろ一回更新しないと...。)




先日のVAISCでの月の撮影時の分解能について、天文リフレクションズのピックアップで少し取り上げてもらえました。



まず、
  • VISACのエアリーディスク径が12μmでASI294MC Proのピクセルピッチが4.65μmでもアンダーサンプリングで、最小星像径の1/2.5の大きさのピクセルでは光学系の性能はフル発揮できないことは衝撃的
との指摘で、その後の投稿で
  • 星が1ピクセルでは全く足りなくて、2x2ピクセルでもまだ不足。星像径12μでASI178MCのピクセルピッチ2.4uが充分効果的というのは納得 
という意見でした。実際の場合でも納得というのは心強い意見です。

さらにHIROPONさんから
  • 鏡筒の「遮断空間周波数」(Spatial cutoff frequency)とセンサーのナイキスト周波数から考えて、2.25μmがフルに鏡筒の性能を生かせる
 という説明がありました。2.25umは実際に試した2.4umに近いピッチだったので、それほど間違ったことをやっているわけでもないと思います。標本化定理を考えると、情報を落とさないという意味では理論的にはほぼこれで決定なのですが、今回はもう少し実感が湧くように実際の画像で考えてみたいと思います。


エアリーディスクの可視化

エアリーディスクについては、以前ラッキーイメージングのところで議論しましたが、



1次のベッセル関数を使って

2J1(x)/x

のように書くことができます。ただしこれは1次元の場合なので、平面で表すためにxをr=sqrt(x^2+y^2)と書いてやり、2次元で表します。それを例えばMathematicaなどで等高図(密度分布)で書いてやると

airydisk


のようにエアリーディスクの形になり、ディフラクションリングも(グラフではちょと薄く見えてしまいますが)実際のイメージに近く見えるようになります。さて、今回はこれを元にCMOSカメラで分解能がどれくらい出るかを検証します、


レイリー限界

今回、カメラの分解能をわかりやすく見るために何が一番いい指標になるか、色々考えてみました。エアリーディスクそのままよりも、レイリー限界に相当する2つのエアリーディスクを2次元等高線で書いてから、それをカメラのピクセルピッチの粗い画素で見たときにどうなるかを表すのがわかりやすいのではと考えました。

まずはレイリー限界で離れている2つのエアリーディスクを等高図で出してみます。レイリー限界は、エアリーディスクの最初に一番暗くなった部分が、隣のエアリーディスクの最大のところにかかるというのが定義です。

VISACの場合、F9なので、標準の550nmの波長を考えた時に、エアリーディスク径は

Da = 2.44 F λ = 2.44 x 9 x 0.55 [um] = 12.1 [um]

となります。一方レイリー限界は一般的な式では口径のみで決まり、


DR=127.5D[mm][arcsec] = 0.6375 [arcsec] 

となりなります。単位が秒角なので、これをわかりやすいようにumに変換します。焦点距離1800mmの場合のarcsecからumへの変換係数

Cumarcsec=tan(12×60×60π180)×2× 1800×1000       = 8.73 [um/arcsec]

をかけてやると、レイリー限界は0.6375 [arcsec] x 0.73 [um/arcsec] = 5.56umということになります。このように、レイリー限界がエアリーディスク径の約半分になるということはラッキーイメージングの時に議論しました。

これをMathematicaでグラフで表してやると

DensityPlot[(2 BesselJ[1, Sqrt[(x - 3.831705970207512`/2)^2 + y^2]]/
      Sqrt[(x - 3.831705970207512`/2)^2 + y^2])^2 + (2 BesselJ[1, 
       Sqrt[(x + 3.831705970207512`/2)^2 + y^2]]/
      Sqrt[(x + 3.831705970207512`/2)^2 + y^2])^2, {x, -10, 
  10}, {y, -10, 10}, PlotPoints -> 100, PlotRange -> All, 
 PlotLegends -> Automatic, ColorFunction -> ColorData["GrayTones"]
 ]

rayleigh

エアリーディスクの暗くなった部分の中心が、隣のエアリーディスクの一番明るい部分を通っていることがわかると思います。式の中の、3.8317...とかいう数字は、一番最初のエアリーディスク径の式で強度が0になるxの値です。これがVISACの場合、5.56umに一致するというわけです。

ちなみに、ASI294MC Proのピクセルピッチが4.63umなので、だいたいレイリー限界くらい、もしくはエアリーディスクの半分か、3分の1くらいになります。


カメラセンサーで見た場合1: レイリー限界ピッチ

さて、面白いのはここからです。Mathematica上でセンサーアレイを再現するために、Table関数を使いました。あ、本当はカラーセンサーにしたいのですが、とりあえずモノクロで考えます。まずは、センサーのピクセルピッチがレイリー限界と同じ5.56umだった場合です。ASI294MC Proでもざっくりこれくらいと同じと考えていいでしょう。

array = Table[(2 BesselJ[1, Sqrt[(x - 3.831705970207512`/2)^2 + y^2]]/
        Sqrt[(x - 3.831705970207512`/2)^2 + y^2])^2 + (2 BesselJ[1, 
         Sqrt[(x + 3.831705970207512`/2)^2 + y^2]]/
        Sqrt[(x + 3.831705970207512`/2)^2 + 
          y^2])^2, {y, -3.831705970207512` 3, 3.831705970207512` 3, 
    3.831705970207512`/1}, {x, -3.831705970207512` 3, 
    3.831705970207512` 3, 3.831705970207512`/1}];

plot = ArrayPlot[array, Frame -> True, FrameTicks -> Automatic, 
  ImageSize -> 1.95/2 -> {50, 50}, PlotRangePadding -> 0.12, 
  PlotLegends -> Automatic,  ColorFunction -> ColorData["GrayTones"], 
  PlotRange -> All]

rayleigh_CMOS

まあ予想通りというか、全く分離できていません。横に広がっているだけに見えます。この場合はたまたまピクセルの中央がちょうど二つのエアリーディスクの中心と一致した場合です。ピクセルの境がエアリーディスクの中心と一致した場合はどうなるかというと、

rayleigh_CMOS_border
と、こちらも2ピクセルが同じような明るさになりますが、横長に見えるだけなのは変わりません。


カメラセンサーで見た場合2: レイリー限界の半分のピッチ

では次に、ピクセルピッチをレイリー限界の半分の2.78 [um] にしてみましょう。

rayleigh_CMOS_half
これは劇的な変化です。完全に二つのエアリーディスク光源が分離できます。

この時点で言えることは、レイリー限界よりピクセルピッチを小さくすることで、まだまだ鏡筒が持っている分解能のポテンシャルを引き出すことができる可能性があることを示しています。


さて、調子に乗ってもう少し試します。ピクセルピッチをレイリー限界の3分の1にした場合です。

rayleigh_CMOS_one_3rd
当然ですが、まだ分解能は上がります。さて、どこまで分解能が上がるかと言うと、理想的には一番上の図のようなところまで見えるのですが、実際にはそんなことはなく必ずいろんな制限があります。

まず、オーバーサンプリングの時に出てくるエイリアスの効果は入っていないので、実際にはゴーストのような像が出てくる可能性があります。また、シンチレーションが悪い、地面の揺れや風などで鏡筒が揺らされている場合は、このような改善は全く得られない可能性があることは言うまでもありません。特に長時間露光が必要なDSOなどの撮影では、揺れの効果が積分されるので、ピクセルピッチをあげても鏡筒の性能を引き出すことは難しい場合もあることを忘れないでおきたいです。

逆に、惑星や月のように明る天体を短時間露光で動画などで多数枚画像をスタックすると、シンチレーションの影響などを小さくすることができ、今回検証したようなピクセルピッチを小さくすることで分解能の改善が期待できるような理想的な状態に近づくのかと思います。


実際のカメラのピクセルサイズで

最後に、前回試したASI294MC ProとASI178MCのピクセルピッチで計算してみます。ただし、これらのカメラはカラーセンサーで、4ピクセルを使って3つのカラーの画素を出すので、分解能は上のモノクロのものよりも更に悪くなるはずです。本当はカラーセンサーをシミュレートしたかったのですが、ちょっと力尽きました。なので、以下の結果は参考程度で、実際にはこれの倍くらい分解能が悪くなると思ってください。


ASI294MC Proでピクセルピッチが4.63umの場合:

rayleigh_CMOS_294
ピクセルピッチがレイリー限界の時とほとんど変わらない結果ですね。

次にASI178MCの場合で、ピクセルピッチが2.4umのときです。

rayleigh_CMOS_178
これもピクセルピッチをレイリー限界の半分にした時の結果とほとんど変わらないです。。

繰り返しになりますが、これはモノクロセンサーと仮定し計算した時のものなので、カラーセンサーにした時には分解能が更に倍悪くなります。そのためピッチを小さくする効果はもっと大きくなるのかと思います。


まとめ

簡単な検証でしたが、ピクセルピッチを小さくするのは分解能を上げるのまだまだ有効で、特にシンチレーションの影響を避けることができる惑星や月の撮影では効果が高いと思われます。ただし、ピクセルサイズを小さくすると一般的に感度が悪くなるので、特にDSOなどの暗い天体をラッキーイメージングなどで撮影する場合には、実質損をしないかどうかきちんと検討する必要があります。

また、センサーのピクセルサイズを小さくする代わりに、バローレンズで像を拡大して相対的にピクセルピッチを改善する方法もありますが、これも拡大することで明るさを失っていきます。天体の明るさ、鏡筒の口径とF値、カメラのピクセルピッチ、カメラの感度、露光時間、シンチレーションなどが複雑に絡んで実際の分解能に結びつきます。今回検証したのはその中のごくごくほんの一部です。

いつも思うことは、何が問題になっているのか、何が性能を制限しているのかを考え、そこを叩くことが重要なのかと思います。


先日の撮影結果から、ファーストライトでVISACにASI294MC Proで撮影した際にはピンボケだったのではないかというお粗末な結論だったのですが、一応再度検証です。

この日は月齢13.5日、ほぼ満月に近いです。アペニン山脈を含んで撮影をし、これを以前の画像と比較します。


撮影条件

鏡筒: Vixen VC200L (口径200mm, 焦点距離1800mm)、通称VISAC
架台: Celestron CGEM II
センサー: ZWO ASI294MC Pro
フィルター: なし 
日時: 2019年8月14日、23時5分から
場所: 富山市下大久保
月齢: 13.5

露光時間4ms、ゲイン120、RAW16で1000フレーム撮影して、上位25%の250枚をAutostakkert!3でスタックします。Registaxで細部を出し、Photoshop CCでしあげます。


前回はピンボケだったのか?

まずは、今回撮影したものと、同条件で前回撮影してピンボケだったと思われるものの比較です。

comp_VISAC_focused
明らかに同条件での撮影で、今回の方が解像度が高いので、前回はピンボケだったと結論づけていいと思います。


ASI294MC Proのセンサーの分解能は足りているのか?

次に、今回ASI294MC Proで撮ったものと、前回ASI178MCで撮ったものとの比較です。1素子のサイズがそれぞれ4.65umと2.4umで、ASI178MCの方がより細かいです。比較してみます。

comp_VISAC_294_178
やはり明らかにASI178MCで撮った方が分解能が出ています。この時点で、左のASI294MCProで撮影した方は(ピンボケの可能性は捨て切れませんが、それでも相当気を使って合わせたので)、アンダーサンプリングのためカメラのセンサーの素子の細かさで制限されてしまっていて、鏡筒が持つ分解能を活かしきれていないと結論づけることができると思います。

その証拠の一つとして、上の画像の右のASI178MCで撮ったものをPhotoshopで解像度を約2分の1(正確には2.4um / 4.65um = 0.516倍)にして、もう一度もとの画素数に戻したものと比較します。

comp_VISAC_294_178low
これで見る限り、ASI178MCの解像度を半分にしたくらいで、かなり分解能は一致しているように見えるので、ASI294MC Proでの撮影結果も素子サイズ相当のものが得られていることがわかります。言い換えると、ASI294MC Proでの撮影はまだ工夫することによって分解能を上げることができそうだということです。


考察と結論

以上の結果から、VISACに素子サイズ4.65umのASI294MC Proで直焦点で撮影した場合、アンダーサンプリングで、センサーの素子の細かさが足りていないため、VISACの持つ光学的な分解能に達していなくて、その性能を引き出しきれていないことがわかりました。

今回は実際の画像でそのことを確認したのですが、定量的に理屈とどこまであっているかも時間があれば検証したいと思います。


今後の課題

さて、VISACの性能を生かすためには、素子のサイズが小さいセンサーを選ぶ必要がありますが、当然素子が小さくなれば感度は落ちます。例えばASI224MCとASI294MCは素子サイズがほぼ同じなので同様の感度がありますが、ASI178MCは素子サイズが小さいため、実際に試してみたところ感度は4分の1程度しかありません。





もしくは、ASI294MC Proのサイズの大きさと感度を生かすためには、バローレンズなどを入れて中心部を拡大して撮影するなどの工夫で、VISACの分解能を生かしきれると考えられます。でもバローレンズを入れることで問題が起きないかなど、実際にきちんと検証する必要がありそうです。



最後はお月様の全体像

さて、せっかく満月に近いの日の撮影だったので、2枚をモザイク合成して全体をが見えるようにしてみました。合成はMicrosoftのICEを使いました。

2019-08-14-1406_4-Capture__lapl3_ap14709_RS_stitch
解像度もそこそこあるのでかなりシャープな月になったと思います。

仕事前の最後の休日の夜でしたが、澄んだ空で、明るすぎるくらいの大きな月がものすごく綺麗でした。


お盆休みの月曜日、昼からずっと空全体にかかっている薄雲が恨めしく、夕方以降何度外に出ても月がボヤーッと朧(おぼろ)状態です。ペルセウス座流星群が最盛期だとしてもこの月の明るさと、さらに雲なので何もやる気が起きず、もう寝ようかと思って22時頃外に出ると、雲がだいぶ無くなっていて月もキリッとしています。ここは気を取り直してVISAC君ことVC200Lのテスト再開です。

アペニン山脈の分解能

最初に試したかったことは、前回のファーストライトの時に撮影したアペニン山脈が、なぜ過去に撮影したC8で撮影した時の分解能にはるか及ばないかを調べることです。

comp_C8_VISAC
左のC8で撮った方がはるかに解像度が良いです。

口径は同じ200mm、C8の焦点距離は2000mmでVISACが1800mmなので高々1割の違い。それで解像度が大きく違うとは全然思えません。ましてやスポットダイアグラムの優れているはずのVISACが大きく劣るとは、なかなか不思議な結果です。一番大きな違いはカメラで、C8はASI178MCで1素子のサイズが2.4um、VISACがASI294MC Proで1素子のサイズが4.6um。2倍近く178の方が細かく撮れるはずですが、それだけで上の比較写真くらいまでの違いが出るものなのでしょうか?他にもピントがどれくらいあっているか、シンチレーションが違うのかなどもあるかと思います。

このナゾを解くため、今回はVISACにASI178MCを取り付けて、同様な画角で写してみます。撮影条件は12.5msec露光で、ゲイン120。1000コマ撮影して25%、上位250コマをスタックしました。その結果が以下になります。

Capture_ 23_34_49_23_34_49_lapl3_ap2661_RS_cut
VISACにASI178MCを載せて撮り直し。きちんと分解能が出ています。

月齢11.5日で満月に近く、陰影はあまりないですが、解像度は相当上がったように見えていて、C8で撮影したものにほぼ差し迫っていると思います。ということは少なくともASI178MCで同条件で撮影したら、以前C8でとったかなりの解像度までは迫ることができるということがわかりました。ただし、(これは最後の解析までしてやっと気付いたのですが)まだ少なくとも同じくらいのものが撮れたというだけで、この時点では他の条件の違いの可能性もあるので、カメラの違いかどうかの確証はありません。

と、ここでふと思いました。VISACでM57をASI178MCで撮ったらもう少し分解能が上がるのではないかと。


M57の中心星を出す

やることは単純です。VISACでカメラをASI178MCにして撮影するだけ。ただしセンサーサイズが1/1.8インチと小さいので見ている範囲がせまく、導入に少し苦労します。露光時間は10秒にして、ゲインは470と高めです。これはASI178MCの感度がいつも使っているASI294MC Proなどに比べて約4分の1と低いため、ある程度の露光時間をかけて、かつゲインも上げてやらなければ、そもそも満足に写りもしないからです。

とりあえず、10秒一枚の撮って出しを見せます。オートストレッチをかけてあるだけです。

Capture 00_59_11_Stack_16bits_7frames_70s
中心星がこんなに点で出るのは初めてです、

一枚なのでノイジーなのは仕方ないとして、驚くべきことにM57の中心星と隣の星がほぼ完全に点になっています。これまでこんなに点になるとは、考えることさえできなかったレベルです。

この時点でも、おむすび型の星像はまだ残っています。でも前回のテストは1秒露光で鏡筒が持っている星像がかなりそのまま出ていたはずですが、今回は10秒露光なので機材の揺れやシンチレーションで積分され、オリジナルな星像は鈍って多少真円に近くなっています。

これをスタックして画像処理をしてみます。Live Stackで6枚の60秒分の画像をSharpCap上でスタックし1枚の画像としそれを45枚、すなわちトータル45分の露光時間となります。ダーク補正は撮影中にリアルタイムでしてありますが、フラット補正とバイアス補正は今回省略しています。その結果が以下になります。

integration_DBE_PS2
中心星はOK、でも星の形がやはりいびつ。

M57の中心星と隣の星に関してはかなり満足なレベル。M57の12時方向の2つの距離の近い星も、何の苦労もなくはっきり分かれています。

フラット補正をしていないので、背景はグチャグチャで適当にごまかしています。こうなってくると星像のアラがどうしても目立ちます。次はおにぎりさんの改善を目指すことにします。今情報を集めてますが、少なくとも改善の方法はありそうなことがわかってきました。こちらはもう少し実践してからまた記事にします。


考察

さて今回の疑問は、1素子のサイズが高々2分の1もいかないくらいになっただけで、こうもいろいろ変わるのかということです?

いろいろ考えたのですが、なかなかこの差を説明することができなかったので、頭を切り替えて、C8で撮った画像をどれくらい解像度を落とすとVISACで撮ったのと同程度になるのか試してみました。

1素子のサイズ比 = 46./2.4 = 1.93なので、まずはC8の画像の解像度を1.93分の1にしてやってみました。でも結果はまだ全然、あからさまにC8のほうがいいです。やはり高々2倍くらいの素子のサイズ違いでは全く説明できないです。

そこそこ合うなと思ったレベルはC8の画像の画素数を一辺で8分の1にしたとき、すなわち3128 bx 2014 pixelの画像を、Photoshopで一旦391 x 263 pixelにまで落として、それをバイキュービック法で再び3128 x 2014 pixelに戻したくらいの相当荒い画像でやっと一致するということです。以下がその画像になります。

comp_C8_VISAC_x8
最初の画像の左のC8の方の分解能を8分の一くらいに悪くして、
やっと前回とったVISACと同等です。

これくらいまで落として、やっとVISACの画像と同程度か、下手をしたらまだいいかもしれません。流石にこれだけの違いをカメラの解像度だけで説明するのは無理なので、今回はおそらくVISACで最初に撮った画像がピンボケだったと言うくらいしかないです。ただし、VISACの方は視野の端で撮ったからという影響も無いとは言い切れていません。

ピンボケだったとするとまあ間抜けな話なのですが、でもこれはある意味怪我の功名で、少なくともカメラを代えたりしたり手間をかけての検証でしたが、M57の解像度を上げることにはつながったことになります。

じゃあM57の画像もピンボケだったのかと言うと、どうやら多分そうだったみたいです。今回VISACとASI178MCで撮った画像の解像度を半分くらいに落としましたが、まだまだ中心星も全然点像で十分な解像度があります。こちらも解像度を6分の1くらいに落としてやっと前回撮影したM57と同レベルになりました。

comp_camera
こちらも前回のASI294に一致させるためには、
解像度を6分の1くらい悪くする必要があると言う結果です。

こちらもこれだけの違いを、カメラの1素子のサイズの違いだけで説明することはやはり困難かと思います。前回はファーストライトでまだ慣れてなくてピンボケで、今回は気を使ったと言うことになるかと思います。


まとめ

でもまだ本当にピンボケだったのか、100%そうかと言われるとイマイチ自信がありません。今回のASI178MCの点像の出方が良すぎるからです。もしピント問題だったとすると、ピント位置は結構シビアな可能性が出てきます。今一度VISACにASI294MC Proをのせて、M57できちんとピントを合わせて見てみるなどすると、単にピント問題だったのかがより確定すると思います。

また、C8やMEADEでも例えばASI178MCを使えば同じように解像度よく出るのか、それともやはりVISACだけがすごいのか、まだもう少し検証してみたいです。

うーん、でもかなり楽しくなってきました。いままでC8とMEADEで全く無理だったこの点像。少なくともこの点像を出せるだけでもVISAC侮れないです。


原村星まつり直前、なぜこんな時に!?と生えてきたVixenのVISACことVC200L。梅雨の間ずっと我慢していたのですが、最後の最後でポチリヌス菌に感染してしまったようです。原村星まつりであまり買い物が進まなかった理由の一つがこれです。予算が厳しかったのです。




購入の理由

とにかくやりたいのがDSO(Deep Sky Object)、すなわち系外銀河などの長焦点での撮影です。長焦点でシャープな星像を撮影することができる鏡筒をずっと探していました。ラッキーイメージももう少し試したくて、短時間露光で揺れを排除して星像を絞る時に、シャープでないと意味がないという理由もあります。安価で、ハズレでなさそうなVC200Lが出るのをずっと待っていました。


手持ちのシュミカセはダメなの?

手持ちの機器のうち、長焦点に相当する鏡筒が口径20cmのCelestronのC8と、口径25cmのMEADEのLX200-25のF6.3仕様のもので、いずれもシュミカセ(シュミットカセグレン) です。シュミカセはシュミット補正板を入れた、カセグレン式の、鏡筒の長さを短くしたもので、重量も大したことなくコンパクトで扱いやすく、広く出回っている鏡筒です。

オリジナルのシュミットカメラは、球面収差とコマ収差と非点収差を解決しているいわゆるスチグマート条件を満たしていて性能的に有利である一方、鏡筒が巨大になる、撮像面を湾曲させなければならないなどの扱いにくさもあるおかげで、市販品としてはコンパクトなシュミットカセグレン式の方が圧倒的に数が出ています。一方、そのコンパクトさを実現するために、性能的に必ず妥協をしていて、スポットダイアグラムも星像が肥大していて、比較するとその違いはすぐにわかります。特に四隅に出てくるコマ収差は非常に目立つため、シュミカセの撮影は惑星などの中心像を生かすものが主となっています。

最近ずっと触ってきたLX-200-25ですが、スポットダイアグラムがあまり出回っていないのではっきりとはわからないのですが、F値が6.3と小さいこともあり、コマ収差が大きいです。コマ収差はF値の-2乗で効いてくるので、F10のC8に比べコマ収差は(10/6.8)^2 = 2.5倍にもなります。星像が単純に2.5倍伸びてしまいます。そのため撮影する場合にはコマコレクター が必須なのですが、質の良いものはコマコレクターだけでも高額なので、私はバーダーのMCPP MarkIIIを使っています。これはF値が6までしか対応していないのですが、F6.3のMEADEに入れてもある程度の改善があることがわかっています。

コマはある程度許容範囲に収まるのですが、もう一つの問題が片ボケ。光軸調整をしても、どうしてもいつも同じ側の片ボケが残ってしまいます。主鏡の向きがずれていると考えられるのですが、こちらはいつは直したいと思っていますが、全バラに近い形になるはずなので今は躊躇しています。

あとMEADEのシュミカセは少し重いこと。同サイズ(実際には少し違いますが)のセレストロンと比べると、無視できないくらいの重さの違いがあります。手持ちの赤道儀がCGEM IIなのですが、撮影をしようとすると鏡筒が大きく重いので慣性モーメントが大きくなってしまい、共振周波数が下がり揺れの振幅が大きくなるので、大きさとしてはギリギリか本当はもう少し頑丈な赤道儀が欲しいところなのです。

一方手持ちのC8は軽くて良いのですが、やはりスポットダイアグラムを見ると、シュミカセゆえどうしても星像はボテッとなってしまうのは避けられません。星像を改善するために、接眼側に補正レンズを入れたEdge HD800という同じ口径20cmのものが販売されていて、こちらも購入の候補の一つでした。


VISAC以外の候補

VC200L以外ではHD800が第一候補で、一時は新品で購入しようと思っていた時期もありました。

他の候補として、特に反射にこだわっているわけではなく、屈折でも構いません。スパイダーの光条線があまり好きでないので、屈折か、反射でも副鏡がスパイダーでなく補正板で固定されているものを探していました。でも屈折で大口径で長焦点でスポットダイアグラムが小さいのは、これまた値段的に全く手が出ないので、現実的な候補はなかなかありません。

他の反射では、ミューロンのCRC化されたものもかなり魅力なのですが、こちらも予算がグッとあがります。究極的にはCCA-250とかなんでしょうが、こちらは冗談でなく金額の桁があがり、今の財政では全く手が出ません。

安価に、自分の納得する範囲で満足できる鏡筒をずっと探していました。その一つの候補がVISACだったというわけです。


VISACにした理由

VISACを選んだ理由は、ひとえにものすごく鋭いスポットダイアグラムに期待したからです。Vixen独自の6次非球面の主鏡を採用したカタディオプトリック鏡筒で、バッフル内に3枚のフィールド補正レンズを内蔵、写野全域にわたってコマ収差・球面収差・像面湾曲を極限まで補正、写野周辺で星像15µmを達成しているそうです。このように宣伝文句だけ読んでいたらものすごく魅力的なのですが、悪い噂も多少聞きます。
  • 設計はものすごく良いのに、主鏡の精度が出ていなかったり、メカ的に弱かったり精度が出ていなかったりで、その設計思想を活かしきれていない。
  • 個体差で性能にばらつきがある。
などです。設計からも各種精度が必要そうなことは想像できるので、なかなか大変そうな機器なのかと思います。メーカーの方でもサポートは大変なのでしょう。

また、星像が悪かったとしても調整機構が隠されていて、ユーザーは基本的に調整することはしない方針のようです。その扱いにくさのせいか、中古で比較的安価で出回ることも多いです。今回のものは、ベルトバンドがついている古いものでしたが、専用アルミケースもついていたため収納や持ち運びにも便利で、適当な業者に回ったものではなく、天文が好きな人が昔の機材を手放したと判断。オークションで少し値が上がっても落とそうと狙っていました。

試したいのは、
  1. 設計の鋭いスポットダイアグラムは、シュミカセのボテっとした(と私は少なくとも思い込んでいる)星像と比較して本当にシャープな星像を結ぶのか?
  2. 調整機構がないが、もし星像がダメなら調整できるのか試してみたい。
といったところです。特に調整は全バラでも構わないと思っています。


いよいよファーストライト

さて、実際のフーストライトです。梅雨が明けてもなかなか晴れなかったのですが、昨晩22時過ぎは夕方に一面を覆っていた雲もすっかり消えました。上限過ぎの月も残っているので、撮影もあまりする気にならなく、むしろ絶好のテスト日和です。今回のファーストライトは自宅の庭で試します。架台はCGEM II。MEADEと比べてかなり軽いので、赤道儀としての強度は十分です。

IMG_7751

最初にアイピースで月を見てみました。アイピースはCelestronの8-24mmのズーム式で簡易なもの。雲間からの月ですが、像は非常にシャープという印象です。月と空のエッジを見ても色収差もほとんどありません。これはもしかしたら結構期待できるのかもしれません。

ピントの範囲もそれほどシビアではありません。減速機はあった方がいいですが、なくてもなんとかなりそうです。

テストがてらASI294MC Pro(冷却はしていない)で月の動画撮影をしてみました。テストなので極軸もきちんととっていないし、カメラの向きも適当です。1000枚をスタックしたものが以下になります。

Capture_ 22_42_33_22_42_33_lapl3_ap7557_RS2

画像を見ている限り、非常にシャープで特に問題になりそうなところはありません。以前撮ったFS-60CBの画像と比べても十分な解像度が出ています。

と思っていたのですが、以前C8で撮ったアペニン山脈付近を何気に見直してみましたら、こちらの方がはるかに高解像です。

comp_C8_VISAC

理由はいくつか考えられます。C8とVISACの焦点距離は2000mmと1800mmとそれほど変わらないはずですが、まずC8の時の撮影に使ったASI178MCの一素子のサイズが小さい(2.4um)ので、解像度は上がるはずです。しかもセンサーの大きさそのもが小さいため、C8の視野の中心部だけを撮っています。今回VISACで撮ったアペニン山脈はASI294MC Proが素子サイズの大きい(4.6um)センサーで、かなり視野の端を撮ったので、不利な点があるのは理解できます。でもそれだけでは説明できないくらい、C8の方が高解像度です。まあ、結論としては今回の撮影はピントが出ていなかったのではないかと。もしかしたらピントの範囲がもっと狭いのかもしれません。ここは一度カメラなども同条件にしてもう少し検証します。


気づいたこと

最初の操作でいくつか気づいたことがあります。
  • まず、とにかく軽い。MEADE 25cmよりははるかに軽いです。C8より軽く感じたくらいですが、実際にはC8が5.6kg、VC200Lが6.9kgとVISACの方が重いです。ベルトがついていたから持ちやすいのかもしれません。
  • 上にL字の小さな架台が付いていて、1/4インチのタップが切ってあるので、極望用のCMOSカメラなども載せることができます。
  • フォーカサーが結構ゆるいので、天頂付近に向けるとカメラの重みでずり落ちてきてピントがずれてしまいます。フォーカス固定ネジもあるのでいいのですが、もう少し固くてもいいかと思います。
全体的にちょっとヤワな気がします。値段から言ったら仕方ないでしょうか。その他は今の所不満などありません。


星像はどうか?

では肝心な星像はどうでしょうか?試しに、M57周りを撮影してみました。こちらも極軸もカメラの向きも適当で、ガイドも何もしていないので、露光時間を少し伸ばすと流れてしまいます。とりあえずASI294MC Proで常温、露光1秒、ゲイン470でRAW16をtifファイルに落とし、PixInsightでオートストレッチしてjpegに落としてあります。

Capture_00002_23_10_13_23_09_11_RGB_VNG


四隅の画像も載せておきます。これまで4隅250ピクセルを切り出していましたが、スターベース のタカハシ鏡筒の実写画像に準拠し、300ピクセル切り出しにし、枠線を少し細くしました。

Capture_00002_23_10_13_23_09_11_RGB_VNG_8cut

露光時間わずか1秒なのでノイジーなのは仕方ないとして、これを見る限り、コマ収差はほとんど出ていないし、四隅の星像も悪くありません。真ん中はM57の中心星と、その隣の星も普通に写っています。これは結構すごい。シンチレーションの具合もあるとは思いますが、やはりVISACのスポットダイアグラムはダテではないかもしれません。

この画像スタックすればもっとはっきりするはずです。同じ1秒露光をser形式のRAW動画で1000枚撮影し、上位600枚の計10分をAutoStakkert!3でスタックしてみました。画像処理は簡易なものです。

Capture_00_19_48_00_19_48_lapl5_ap3050_DBE

中心星もそこそこシャープに写っていて、四隅の崩れもありません。まあまあかなと思っっていたのですが、星を拡大するとどうもきれいな円になっていないことに気づきました。

Capture_00_19_48_00_19_48_lapl5_ap3050_DBE_cut

どの星も三角形に近い形をしています。星像としてはダメですね。一枚取りに戻ってよく見ると、星はやはり同様の形をしていることに気づきました。

ただし、この画像は1秒露光をスタックしたものでかなり鏡筒本来が持っている星像をそのままの形で表しています。これが10秒とかもっと長い時間露光した場合には機材の揺れやシンチレーションによるブレのためにこの三角の形は目立ちにくくなります。ただし、ラッキーイメジングを想定もしているので、短時間露光で星像が丸になるに越したことはありません。

また、これまで撮影したMEADEのコマ収差や片ボケよりはすでにはるかにましです。このことも考慮して、どこまで突き詰めるかを検討する必要があります。


まとめ

というわけで、星像に関して残念ながらはラッキーイメージングを考えた場合は許容範囲外と言っていいと思います。四隅まで鋭くて、途中結構期待していたのですが、最終的にはちょっとショックでした。気を取り直して調整の方法を探ることにします。少しだけ調べてみると、VC200Lではこのおにぎり型の星像が出ることが結構あるようです。どうも原因はネジの締めすぎ。また、コメントからの情報でスパイダーの影響が結構合って、星像が四角くなることもあるそうです。

原因がわかっていればとりあえずなんと取り除くては考えることができそうなので、まずは一安心です。先人の方達の知恵がありそうなので、一度中を見てみて調整がうまくできるかどうか探りたいと思います。



梅雨の合間にも関わらず珍しく晴れたので、久しぶりの撮影です。といっても平日なので宅撮り。

今日の課題は白濁したレンズのFC-76で撮影を試してみて、実用で耐えうるかどうかです。比較しやすいようにFS-60Qでも同様の撮影をしてみます。白濁したレンズでも電視観望では問題なさそうという結果でした。果たして撮影レベルではどうなるのでしょうか?


機材、撮影条件など

鏡筒1: タカハシ FC-76 (口径76mm, 焦点距離600mm、対物レンズが白濁) + 新フラットナー(x1.04)
鏡筒:2 タカハシ FS-60Q (FS-60CB+エクステンダー相当、口径60mm, 焦点距離600mm) 
赤道儀: Celestron CGEMII
センサー: Canon EOS 6D HKIR改造
フィルター: サイトロン QBP(Quad Band Pass) filter
日時: 2019年6月25日、22時頃から
場所: 富山市下大久保
月齢: 22.1、ほぼ下弦の月
撮影対象: M8干潟星雲とM20三裂星雲、猫の手星雲を同画角内に 


IMG_7532
FC-76のセットアップ。

IMG_7535
FS-60Qに交換後。赤道儀は反転。


FS-60Qとの共通オプション

FC-76での撮影をしてみてまず気づいたのが、これまで集めたFS-60Q用のオプション器材がかなり共通で、そのまま使えることです。
  • 具体的にはまずはカメラの回転装置。これはSKY-90用となっているのですが、タカハシのシステムチャートによるとFC-76もFS-60Qも接眼部へのネジの径が共通なために、これが標準の回転装置となります。
  • 同様に、ワイドタイプのカメラマウントDX-60Wもシステムチャートによると共通で使えます。
  • さらに新フラットナーもアダプターさえFC-76用を買い足せば使い回しがききます。アダプターは数千円と安価なので気軽に買うことができます。
実際今回撮影用途で購入したのはこのアダプターだけで、あとは何も買い足す必要がなかったのはありがたかったです。

IMG_7555
このように、FS-60CB用の機材がほぼそのまま使えます。


実際の撮影

実際の撮影ですが、久しぶりのこともあり、少し手間取りました。

今回撮影用のコンピュータとしてStick PCを使ったのですが、StickPCの動作がなぜか重い。64bit版のSharpCapはポーラーアラインメントを開始するとすぐに止まってしまいます。仕方ないので32bit版にしたら、こちらはなんとか最後まで動きました。あと、PlateSolvingで使っているAstroTortillaがうまく位置を検出してくれません。仕方ないので、All Sky Plate Solverを使いましたが、こちらは位置検出まではしてくれるものの、赤道儀へのフィードバックがうまくいきません。時間もあまりないことなので諦めて、何度かテスト撮影をして位置を決めました。でもFS-60Qに交換した時にPlateSolvingがなかったことが原因で、位置ズレと、さらにピンボケを導入してしまいます。

あと、これもStickPC関連かもしれませんが、BackYardEOS(BYE)が安定しなくなる時がありました。なぜかBYEが立ち上がらなくなること、接続はうまくいっているのになぜか撮影ボタンが押せなくなることでした。前者はPCを再起動することで、後者はBYEを再度立ち上げることで解決しました。これまであまりなかったことなので、少し気になります。

さらに、鏡筒をFS-60Qに切り替える時に、対象が南天を超えていたので赤道儀反転したこともあり、今一度アラインメントからやり直しました。その際、CGEMIIのハンドコントローラーにStickPCからのケーブルが繋がっていて電力が多少供給されていたので、赤道儀本体の電源スイッチを落としても電源が完全に落ちません。それに気づかずに、再度スイッチを入れた時にコントローラの明かりが半分暗いような状態になってしまって、あ、故障かも!と少し焦りました。電源を落として、かつハンドコントローラーに繋がっているケーブルを抜くことでこれも回避です。

これに加えて、もう一つ関連した問題が発生しました。FS-60Qに交換したた時に、鏡筒が軽くなりすぎてしまって、赤経方向の重量バランスが取れなくなり、初期アラインメントの途中でトルク不足で止まってしまうのです。ウェイトを一番内側まで持っていってもまだバランス不足でだめでした。今回はCelestronのパワータンクでなく、40000mAhくらいの大容量のリチウムイオンバッテリーを使ったのですが、このせいかもしれません。結局、ハンドコントローラーにUSBケーブルをつないで電力を少し加えたらなんとうまく初期アラインメントができました。FS-60QにCGEMIIは大げさすぎるのかもしれません。いずれにせよもう少し軽いウェイトを用意しておいたほうがよさそうです。

撮影時間はFC-76の180秒露光が10枚で計30分、300秒露光が6枚で計30分、FS-60Qでは300秒露光が6枚で同じく計30分となります。その他、ISOは全て3200で固定。撮影時間の違いの影響をできるだけなくすために、撮影対象の位置をちょうど南天を挟んで前半がFC-76、後半がFQ-60Qというようにしてあります。なので赤道儀も前半と後半で反転しています。

惜しむらくは、次の日仕事ということもあり、時間があまりなかったので、FS-60Qでのピントが少し甘くなったことです。途中で気づいてやり直そうか迷ったのですが、もう月が昇ってくるのと、対象が木の陰に隠れそうだったので泣く泣く諦めました。後で見たらやはり少し星像が肥大していました。


撮って出し

撮って出しJPG画像です。それぞれ撮影の1枚目の画像になります。このブログにアップロードするのに画像サイズが大きすぎたので、縦横2分の1に縮めました。

M8_LIGHT_6D_180s_3200_+24cc_20190625-21h59m48s127ms_cut
FC-76、180秒露光。

M8_LIGHT_6D_300s_3200_+25cc_20190625-22h45m11s577ms_cut
FC-76、300秒露光。

M8_LIGHT_6D_300s_3200_+27cc_20190626-00h42m55s063ms_cut
FS-60Q、300秒露光。星がはっきりしているように見えますが、
単にピンボケで星像が肥大しているだけです。拡大するとダメなのがよくわかります。

それぞれFC-76、FS-60Qが、干潟星雲、三裂星雲、猫の手星雲ともに綺麗に出ています。透明度は悪くなかったのですが、自宅でもこんなに出るのはやはりQBPの威力かと思います。後半のFS-60Qでは午前1時半頃まで撮影していたので月が少し上っていたはずですが、その影響もQBPのおかげかほとんど無いようです。これをみる限り、露光時間の違いによる明るさの違いはきちんとFC-76の300秒>FS-60Qの300秒> FC-76の180秒と順番通りになっていることと、FS-60Qでのピンボケ以外に、撮って出し画像ではほとんど差はわかりません。FC-76の周辺減光が少し目立ちますでしょうか。

少なくとも撮って出しだけではFC-76の白濁の影響があまりよくわからないという、ポジティブな意味です。



ダークとフラット画像

その後、次の日に180秒と300秒のダーク画像を撮影、さらにその次の日もかけてFC-76とFS-60Qのフラット画像を撮影しました。フラット画像はiPadのColor Screenというソフトを使い、モノクロ色にして最大の明るさで撮影しまして。全てISO100、露光時間1/4秒です。不思議なのは撮影条件を同じにしてもFC-76とFS-60Qでヒストグラムで見てヒストグラムのピークの位置がほとんど変わらないことです。口径で76/60=1.26倍の違いがあるので、光量ではその2乗の1.6倍の違いがあるはずです。この口径差がピーク位置に出てこないのが不思議です。

ただし、ピーク位置は変わりませんが、その広がりは雲泥の差があります。FC-76のヒストグラムがかなりブロードなのに対し、FS-60Qが非常に鋭いピークなのです。


IMG_7564
FC-76ではフラット画像のヒストグラムが広がっている。

IMG_7558
FS-60Qのフラット画像のヒストグラム。もう、全然鋭いです。

最初これが白濁の影響かと思いました。でもどうやらそれも間違いで、周辺減光の違いが大きいということがわかりました。下の画像、出すのも恥ずかしいのですが、適当にストレッチするとセンサー面のゴミがFC-76ではまだはっきり見えていないのに、周辺減光がすでに顕著です。一方FS-60Qでは相当余裕を持ってストレッチできていて、センサー面のゴミがはっきり見えていますが、まだ四隅は暗くなっていません。

IMG_7561
FC-76のフラット画像。まだあぶり出しきっていないのに、
周辺減光が大きく、ゴミもはっきり見えきっていません。

IMG_7563
一方FS-60Q。かなりあぶり出していて、ゴミがくっきり見えていますが、
まだ周辺減光は顕著ではありません。

これはちょっと意外でした。単純にFC-76のほうが口径が大きいので、周辺減光も余裕があると思っていたのですが、カメラの絞りと同じで、より絞ってあるFS-60Qの方がより均一に撮影できるということでしょうか。


リニア処理後の画像

画像処理の準備が整ったので、PixInsightでそれぞれリニア処理です。同様の手順がFC-76の180秒と300秒、FS-60Qの300秒と3通りあるので、手間を省くためにScriptのBatchPreProcessingを使います。バイアス、ダーク、フラット補正をしています。

出てきた結果をPhotometricColorCalibrationを使い、色を合わせます。それらをScreenTrasferFunctionでオートストレッチし、JPEGで保存したものを示します。まだ彩度を出す前の過程なので派手やかさはないですが、比較するには十分かと思います。

light-BINNING_1_PCC
FC-76、180秒露光。

light-BINNING_1_PCC
FC-76、300秒露光。

light-BINNING_1_PCC
FS-60Q、300秒露光。

検討

3枚を見比べます。
  • まずFS-60Qはピントが甘かったので星像が肥大しています。
  • 同じ600mmの鏡筒ですが、フラットナーが1.04倍の倍率があるので、FC-76の方が画角が少し狭いです。
  • ノイズに関してはFS-60Qが一番ザラザラしているように見えます。これは口径の違いからくる明るさの違いで説明できそうです。
  • 一見FS-60Qがコントラスト良く見えます。これらはオートストレッチが影響しているのかと思います。オートストレッチはフラット補正がどれくらいうまく当たっているかなど、最大/最小輝度に大きく依存するので、まあ誤差の範囲かなと。FC-76でも180sの方が一見コントラストがよく見えているので、白濁の影響でコントラストが悪くなっているとはこれだけで言うことは難しいと思います。
それ以上のことは、私の目ではほとんど差を見い出すことができません。


とりあえずの結論

できるだけ同じ撮影条件にしようとしましたが、それでもまだなかなか結論めいたことを言うのは大変そうです。ただ一つ言えることが、たとえ多少白濁があっても、撮影レベルで使ってももそれほど遜色なく写ってしまうということでしょうか。これは結構意外というか、驚きの結果です。

白濁が一番効果に現れるのはコントラスト低下かと思います。眼視の場合にはなかなか避けることは難しいでしょうが、それでもこのFC-76では多分よほど目の肥えている人でないと気づかないのではというのが、以前の記事の結論でした。一方、画像処理の過程では、低下したコントラストを補正するのは難しくありません。もちろんノイズとの交換条件になりますが、撮影の方が白濁の不利さは少なくなるのではというのが今回考えたことです。少なくとも私の画像処理のレベルでは、コントラスト差が問題になる程、結果に影響が出てこないようです。

白濁も、レンズについたゴミなども、どれくらい汚いと本当にダメになるのか、一度きちんと検証したほうがいいのかもしれません。特にニュートン反射の主鏡とか、汚れやすいけれども分解しないと綺麗にできないような部分も結構気にせず使ってしまっているので、意外なほど許容範囲は広いのかもしれません。撮影への影響まで含めて、何か定量的に評価できないものなのでしょうか?反射系の副鏡のMTFへの影響なんかは、うまい評価方法なのかもしれません。

今回は一応これで一区切りです。せっかく撮影したので、次の記事でこれら3枚を合わせて、最後まで画像処理をした結果を見せます。


CANPの帰り道、太陽で活躍されているS氏と話すことができ、その縁で以前飛騨天文台で数多くの民生用の太陽用のHαフィルターを測定し、性能評価をしたまとめのプレゼンファイルを送っていただきました。そのファイルの簡易バージョンは出回っていて、ここで見ることができます。送っていただいたのは、この簡易版とともにもう一つ140ページもあるもっと細かい測定データまで載っているものです。

元々持っていた疑問は、ファブリーペローエタロン(Hαフィルターのこと、以下エタロンとか呼びます)の精度はどれくらいのものが出回っているかということ。ここのアホな記事のコメントの一番最後にも書いてある通り、ずっと疑問に思っています。私が持っているPSTのエタロンはお世辞にも精度がいいとは言えるようなものではないと思います。今使っている1000mmの鏡筒でASI290MMを使って直焦点で見ると、撮影画面全体を太陽光球面で埋めることができて、その中でHαに中心周波数があっていると思われるところは面積で言って30-40%もあるかというところでしょうか。もちろんPST標準の400mmの鏡筒を使えば全体像を見ることができ、エタロンの一部のみを使っていることになるので、中心周波数があっていると思われるところも見かけ上増えます。でもやはり太陽像全体を一度に見て、光球面すべてで中心周波数があっているようなエタロンが欲しくなります。でもそもそもそんなものが民生品で存在するのかどうか、PST以外の他のメーカーのエタロンの性能はどれくらいなのかというのを知りたいとずっと思っていました。

資料をいただいて、ここから導き出せた結論はというと、確かに全面をHαで見渡せるくらいの精度のエタロンは存在するが、相当選別しなければならないのではということです。CANPの帰り道のS氏との会話の中で、製品にとてもバラツキがあり、例えば実際に見て一番いいのを選んだという話がありました。上で挙げた簡易版の資料のP10をみても少しわかりますが、今回いただいた資料の中(おそらく太陽を相当マニアックにやっている方たちが持っているエタロンなので)の各測定結果をみても、性能にいい悪いがあることがわかります。見えると思っているもの中にもそれぞれ性能にバラツキがあるようです。まず中心周波数の半値全幅ですが、同じ型番のものでもバラツキがあります。また、画面内での一様性もなかなか一定にならないようです。例えば撮像のある部分ではHαの構造がものすごく綺麗に見え、ある部分ではあまり見えないとかです。これを一様に見えるように調整すると全体が均等に見えるが、全部が中心周波数からずれてしまって結局見え味が劣るとかです。

太陽に使われるエタロンはフィネス15程度のものが多いようで(ここの下の方に説明してあります)、光の折り返し回数としては10回程度です。言い換えると普通の望遠鏡などの光学素子より単純に10倍程度精度を必要とします。それを民生用に購入できる範囲の値段で作るわけですから、どうしても精度のバラツキは出てしまうのはある意味仕方ないと理解しています。もし実際の製品を見て選ぶことができるのなら、それに越したことはないでしょう。でもそれをできるようなユーザーは、よほどメーカーやショップの方と仲がいいとかいう状況でなければ、実際にはあまりいないと思います。太陽フィルターは当たるも八卦、当たらぬも八卦などと言われる理由はここらへんにあります。さらに、必要精度が10倍と言うことは、扱いもおそらく10倍くらい丁寧にするようにしないとだめで、鏡間の平行度が命のエタロンは壊れやすいため、中古などではそもそもうまく見えていないものも出回っていると思われます。オークションなどで手に入れる場合はそれを覚悟の上で落札しなくてはなりません。なので、太陽フィルターを購入する場合は信頼のあるお店でという話になるのかと思います。

いつか性能のいいエタロンを欲しいとは思いますが、今のところは完璧なエタロンを求めることはしないだろうと思います。理由はいくつかあって、撮影の際にPC上の画面で見えて暗すぎたり白くサチっているように見えても、実は情報としては残っていて、画像処理をすると多少救い上げることもできること。また、中心周波数からずれていてもトリミングでいいところだけをとることもできることなどです。例えば下の写真、動画からスタックして詳細を出した後のものです。

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中心部分以外は暗くなったり、中心周波数から明らかにずれてしまっています。これにフラット補正をして画像処理を加えると、下のように見えていないと思った部分も多少見えてきます。ただし、Hαの中心周波数からずれているところはやはり救いようがないのもまた事実です。

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でも中心周波数がそこそこあっていると思われるところだけトリミングすると

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これくらいにはなります。個人的には今のところは十分満足です。

また、まだPSTしか試したことのない私が最高のものを求めても、手に入れることは予算的にも手段的にも現実的には難しいだろうということ。太陽はハマると相当高価なので、そこまで予算をかけることもできません。使うことのできる機材の性能を引き出して、頑張って高級機に迫る方向でいければと思います。そう言った過程自身を楽しむことが、苦になるどころが大好きです。NEAFとかではDaystarのダブルスタックが$695で販売されているとかいう情報を見ると、実際どれくらいの見え味なのか試してみたくなります。

でもいい見え味のものが安価に手に入るのなら、やっぱり節操なく飛びつくんだろうなあ(笑)。



このあいだの日曜にCANP帰りにスターベースに寄ったばかりなのですが、今週平日に関東に用事があり、時間があったので少しだけスターベース に寄っていきました。この日はいつも親身に相談に乗ってくれる店員のS君の姿もあり、CANPの話をして盛り上がりました。今回の記事はそんな店頭でのやり取りのお話です。

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前回も少し聞いたのですが、FC-76の白濁レンズの交換の話を改めて詳しく聞いてみました。(2019/6現在)レンズ交換サービスは正式なものとして存在していて、調整費用も含めて4-5諭吉さん程度。白濁を清掃、調整するだけのサービスが2-3諭吉さん程度なので、やはり倍近くのコストです。私の場合鏡筒本体を購入した値段が値段だったので、これだけのコストをかけるのにやはりまだ躊躇してしまいますが、手のでない値段でもないので、撮影をしてその像に不満が出るようなら他のものかなと思っています。このページによるとFC-76がシングルコートからマルチコートになったのが1986~1987年と言うので、シングルコートの手持ちのものはおそらく35年くらい前のものです。こんな昔のものもきちんと修理まで請け負ってくれるのは流石にタカハシです。S君も気が向いたらぜひとのことなので、焦らずに検証してから考えることにします。

S君と話している時にFSQ-130EDの製造中止の話になりました。前回訪れた時に店長さんとも同様の話をしたのですが、今回は販売店方でもあまり聞いていなかったようで、突然の発表のようになってしまって申し訳なかったとのことです。色々聞いてみると、やはり調整が難しいのと、レンズなどの部品の調達が難しいのが主な理由だそうです。店頭に置いてあるものは未調整品のガワだけのものなので販売はできないというのは前回店長さんに聞いたこと。そもそも値段が値段なので私には到底購入することはできませんが、素晴らしい鏡筒の選択肢がなくなるのは悲しいことです。

光学的に最高のものを設計するだけならちょっと勉強すればできてしまう。組み立て、調整のみならず、量産化、販売、メンテナンスまで考えて設計するのは大変なんだろうなと言うような話をしました。例えば、ある4枚玉の鏡筒はレンズの両側ある曲率の一方ができるだけ同じになるように設計するそうです。コストの面でもそうですし、品質のばらつきを抑えると言う点からも性能アップにつながるのでとてもいいアイデアだと感心しました。こういったことまで考えて、ユーザーに責任を持って引き渡すのができるメーカーには絶対に生き残ってほしいものです。タカハシ高いですけど、エクステンダー、フラットナー、レデューサーまでそろえてしまえば、何種類かの焦点距離の高性能の鏡筒を一度に手に入れるのと同じになるので、実はコストパフォーマンスが意外なほどよくなります。しかも鏡筒は同じなので、鏡筒バンドやその他の付属機器が変わらなくてセットアップの変更が少ないと言うのも大きなポイントです。

とまあ、前置きはこれくらいで、今回いくつかの買い物をしました。と言ってもお小遣いで買える安いものばかりです。

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まずは真ん中のタカハシ純正の鏡筒のアイピース側のキャップです。アルミ製でしっかり作られています。FC-76用に買いましたです。店頭に普通のアイテムとして並んでいて、単体で買うことができます。FC-76は1インチアイピース時代のものなので、今はVixenの安い31.7mmアイピース口への変換アダプターを使っていますが、本当はFS-60Qにも付いているような純正のものが欲しかったのです。でも取り付けたいFC-76の買い値の3分の1くらいという値段を聞いて断念。でも大事なことは、こんなパーツでも35年前に販売した鏡筒にしっかり対応していて、いまだに単体で購入できると言うことです。S君が言っていましたが、ホームページだけでは掲載しきれないパーツもあるので、ぜひ店頭で訪ねて欲しいとのことです。そういえばFS-60Qに付いてきたエクステンダーのキャップがなくて相談したら、同サイズのキャップを単体で販売してくれました。多分汎用品なので値段も安かったです。

他に購入したものが、左端の防振パッド。ネットでもすぐに見つかるやつです。MEADEのLX-200-25用に自作防振パッドを100円ショップの有り合わせで作ったのですが、それと少し比較してみたくなりました。自作のものと比べると10倍くらいと割高なのですが、それでもこれもお小遣い程度の値段。ゴムの部分を触ると100円ショップで売っている防振マットより随分硬いので、おそらくこちらの方が防振効果は薄いと思われます。たまたまその場にあったのと見つけたのと、比較対象としては防振ゴムの基準になりそうなので持っておくことにしました。

もう一つはアイピースの鏡筒側へのキャップです。値段は書きませんが、星まつりで買うのに毛が生えたような値段だったので格安かと思います。こんな一般的なアイテムも意外に手に入るのがスターベース の魅力なのですが、今回は珍しくEM11とかGPとか少し中古品の大物も出ていました。細かいものも少し中古品がありました。最近CMOSカメラの展示コーナーが大きくなったとか、少しづつですが訪れる度に変わっています。あまり高価なものを買えないので申し訳ないのですが、販売の邪魔にならない程度にまたちょくちょく訪れたいと思います。



そうそう、このブログのCANPの記事を見ていただいた方が多かったのか、livedoorの「写真・カメラ」カテゴリ7391ブログの中で4位でした。こんな順位は初めてです。天リフなどから来ていただいた方も多かったようです。いつもピックアップなど取り上げていただいてありがたい限りです。でも最近更新頻度が少ないせいか、ランクはすぐにまた10位以下に戻ってしまいました。

あまり順位などにこだわってはいないのですが、多くの方が読んでくれているのかと思うと、嬉しいなあと思う反面、あまり適当なことは書けないなあとか、色々考えるきっかけになります。普段このブログを見てくれている皆様、最近忙しさにかまけて更新頻度が落ちていて申し訳ありません。いつも本当にありがとうございます。

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FC-76のセカンドライトで電視観望を試してみました。

名古屋スターベースの閉店前に手に入れた
対物レンズが白濁しているFC-76。昼間にアイピースで景色を見て全く問題なさそうなので実戦投入を決意。夜に一度月でコントラストの低下を試してみたのですが、他の鏡筒と比べると少し落ちるものの、単体ではわからないくらいでした。

次の課題は星や星雲などを試すことです。どれくらい白濁が影響するのか?先ずは簡単に電視観望で見てみました。


機材、条件など

鏡筒: タカハシ FS-76 (口径76mm, 焦点距離600mm) + 旧フラットナー
架台: AZ-GTi(経緯台モード)
三脚: Gitzo GT3840Cをシステマティック化 + AZ-GTi用のハーフピラー 
センサー: ZWO ASI294MC Pro
フィルター: なし 
日時: 2019年6月1日、22時半頃から
場所: 富山市下大久保
月齢: 27.1
SQM: 19.05 

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FC-76本体より高くついたK-ASTECの鏡筒バンド、プレート、持ち手は快適そのもの。特に持ち手は、これくらいの大きさがあるとしっかりホールドして運ぶことができます。持ち手のところにつけたASI178MCでの電視ファインダーも、特に運搬に邪魔になるようなことはありません。水準器も上手い具合についたので、AZ-GTiの初期アランメントの水平出しも簡単で、今回も一発でベガが入りました。

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AZ-GTiだとカメラのケーブル一本だけの接続なのであいかわらず楽なもんです。FS-60CBより鏡筒は重くなっていますが、AZ-GTiで特に問題なく駆動することができました。


電視観望に適した焦点距離

これまで電視観望はFS-60CBを主に使ってきましたが、FC-76にした場合に一番大きく違うところは焦点距離です。FS-60CBは355mmでしたから、2倍を切るくらいの焦点距離になります。そのため小さいものはより大きく見えるのですが、大きいものが画面に入りきらなくなってきます。カメラはフォーサーズのASI294MC Proを使っているのですが、なかなかフルサイズで電視観望に適したものを探すのは大変ですし、むしろさらにセンサーサイズが小さくなる方が最初に試す場合などは現実的なのかと思います。

今回見た惑星状星雲のM57なんかはかなり小さいので焦点距離が長い方が有利なのです。一方、例えば今回も試したのですが、北アメリカ星雲は全体像が見えなくてよくわからなかったですし、M8ラグーン星雲でも結構いっぱいいっぱいでしょう。秋冬だとM31アンドロメダ銀河やM42すばるは全然入りきらず、M42オリオン大星雲は画面いっぱいに広がります。

こうやって考えると、電視観望で見せることのできるネタの結構な割合を落としかねないので、実は焦点距離600mmというのは、フォーサーズカメラでも電視観望にはすでに長すぎの感があります。必要ならレデューサーなどの併用を考えて、焦点距離を短くできるようにしておいた方がいいかもしれません。

また、焦点距離が長いということは鏡筒の長さも長いということを意味します。実際に動かしてみて気づいたのですが、M57が天頂近くに来た時に、鏡筒に取り付けたカメラが三脚に当たるということがありました。アラインメントを合わせなおしになってしまい、時間が勿体無いのでこれも注意が必要です。

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実際の観望の様子

この日は昼くらいからずっと曇っていて、22時頃から少し星が見えてきた程度です。夏の大三角はまあまあわかります。ここらへんの北東の一部の分を除いて、基本的に薄い雲がかかり透明度はかなり悪い方でした。例えば肉眼だと、南では木星は見えますが、アンタレスは時間によってなんとか分かるくらいで、さそり座の形はほとんど全くわからないというくらいです。西はほとんど星が見えなく、北も光害と雲でダメ、天頂近くにある北斗七星は形がわかるくらいでした。こんな状態なので、とりあえず見えそうなものだけを試してみることにします。

先ずはM57。2秒露光で、Live Stackしています。ほおっておくと3分経つと一からスタックするようにしていて、下の写真は2分20秒くらい経ったところで撮影しています。実際には最初の10秒、20秒くらいでノイズがどんどん落ちていくのがわかり、あとは見た目はほとんど変化ないです。

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透明度の割に思ったより綺麗に見えています。中心星も何とか見えているので、分解能もまずまずです。これまでの口径60mmから76mmに変わった効果が出ているようです。これだけ見えるなら、少なくとも電視観望レベルではレンズの白濁はあまり気にしなくていいのかと思います。

ちなみに、上の画面ではかなり拡大表示していて、実際の画角は下を見てもらえればわかります。M57はやはりかなり小さい印象です。ASI294MCの画素数が多いため、上の画面くらいまで拡大してもそこそこ見えるわけです。

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次はM27。結果だけ載せておきます。ちょっと淡いですね。

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ついでに三烈星雲です。かなり無理してかろうじて色が出た感じです。透明度が悪いのでまあこのくらいなのでしょう。
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まとめ

あまり空の様子は良くなかったのですが、M57を見ている限り今回の目的のレンズの白濁は電視観望くらいでは特に問題にならないレベルなのかと思います。ただ淡いのが出なかったので、空の透明度のせいでなく、もしかしたら白濁レンズのせいもあるかもというのがふと頭をよぎりました。もう少し空がいい状態の時に今一度試してみたいと思います。

今回は白濁の問題というよりも、FC-76の焦点距離の長さでいろいろ制限されてしまったような感じでした。FS-60CBの方が軽くて取り回しがいいし、より広角なので見える天体が増えて、電視観望に適しているのではないかということです。

むしろFC-76を撮影に使ってみたくなりました。新フラットナーのFC-76用のリングはもう買ってあるので、次は撮影を試してみようと思います。FS-60Q状態と焦点距離が同じなので、直接の比較ができそうです。これでもし白濁が問題になるようなら、白濁除去の方法を考えようと思います。


仕事で疲れて帰ってきて遅めの食事をとり、ふと外に出ると綺麗な星空。月が出るまでにあと少しだけ時間があります。こんな日は撮影などせずに、自宅の庭でのんびりと星座ビノで星空観察をすることにしました。星座はPCを横に持ってきてStellariumで確認しながら見ます。

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ベガを目印にこと座の三角形と平行四辺形を確認。光害で目で見えなくても星座ビノならはっきり見えます。白鳥座も屋根から登ってくるところです。南東から東の空にかけて蛇の頭から尾っぽまで辿り天頂方向へ、へびつかい座の大きな盾型を確認。

天頂付近にはかんむり座とヘラクレス座の四角が見えます。M13を見ようと頑張りましたが、流石に星座ビノだと厳しかったです。

西の方にはまだからす座がかろうじて残っています。コップ座は屋根に隠れて一部のみ見えます。しし座は西の住宅の間に頭から突っ込んでいきます。

南にはさそり座が見えます。星座ビノだとS字まではっきりわかります。S字の先をよーく見ると大きな球状星団のM7も星座ビノでかろうじてわかります。M8干潟星雲もうっすら見えました。M6はどうしても見えませんでした。サソリの右には天秤座の四角があります。南の空の透明度がいいのでしょうか、サソリの左隣の射手座も今日ははっきり見えます。

実は見始めてすぐに、かんたろうさんが車でやってきました。長野に行くついでに寄ってくれたみたいです。「なんかやってると思った」とのことです。二人で星座ビノの品評会です。かんたろうさんは星座ビノでM6も見えると言っていました。私よりもかなり夜目がいいみたいです。

今日出した星座ビノは、まずは笠井の「WideBino28」と、この間名古屋のSCOPIOに行った時に手に入れた同じく笠井の「CS-BINO」です。同じ笠井で見比べると面白いです。

倍率が2.3倍と高いWideBino28。より暗い星まで見えますが、視野が狭くなります。CS-BINOは安価で2倍(メーカー値)と倍率は少し低いですが、私は初心者にはむしろこちらの方がオススメです。まず税込で1万円以下と安価なこと、実際に見える星の数はWideBino28とそれほど差がありません。大きめの星座も視野に一度に入るので星座の形がわかりやすいです。

他にも出したのは、スコープテックの「星座望遠鏡」、NIKONのテレコンビノ、Cokinのテレコンビノです。最近目の度が進んで眼鏡があってきていないせいなのか、ピント調整がないテレコンバーターを利用したNIKONとCokinが見にくくなってしまっています。目が悪い人は絶対ピント調整がついている現行の市販品の方がいいと思います。ピント調整のあるなしで、思ったより見える星の数が変わることが実感できました。特に目が暗闇に慣れてきて、じっくり細かい星まで見だした時の星の数ははっきりと違いがあります。目のいい人や、子供はテレコンビノの方が調整なしでもよく見えるのでいいのかもしれません。

今日の見え方の順位をつけます。あくまで目が悪い私の今日の評価です。

CS-BINO = 星座望遠鏡 > WideBino28 > NIKON > Cokin

でした。何故か今日は広角で見える方が気に入りました。こと座とか、かんむり座とかの小さな星座はWideBino28の方がいいかもしれませんが、大きな星座はWideBino28だと一度に入りきらずにはみ出てしまうので、少し倍率が低いほうがいいと思います。ひずみはNIKONが一番少ないですが、実際に夜に星を見ていてもひずみは、少なくとも私はほとんど気になりません。それよりもピント合わせがあるかないかが評価を分けた形です。

一方目のいいかんたろうさんはかなり逆の評価で、あからさまな順位は聞かなかったですが、聞いた限りでは見たものの中では概ね

NIKON > WideBino28 > CS-BINO  >  Cokin

と言った印象ところでしょうか。かんたろうさんはひずみが気になるそうです。見る人の目の良さや、好みによって随分印象が変わるのかと思います。私もかんたろうさんも今日はCokinが最低。視野はものすごく広いのですが、見える星の数が(少なくとも目の悪い私には)少ないです。目がいいといかんたろうさんはどう見えたのでしょうか?でも星が少ないというのは同様の印象だったみたいです。観望会で大人気なのとは対照的な評価でした。かんたろうさんとはその後少しだけ望遠鏡を見て、23時過ぎでしょうか、これから長野の自宅に戻ると言って帰って行きました。

その後も月が昇ってくるまで星座観察をつづけました。その際、普通の双眼鏡も一緒に使うと楽しいことを発見しました。ビノで広角で星団を見て、あたりをつけて星図を見ながら頑張って星雲や星団を探すという楽しみ方です。42mmで倍率も大したことのない7倍です。それでも双眼鏡だとM6も星の集まりとしてよく見えました。星座早見盤とか星図アプリ、星座ビノ、双眼鏡をセットで準備すると楽しさ倍増です。誰にも邪魔されずに、一人で星座をトレースしていくのは至福の時間です。

たまには撮影とかを忘れてこんなふうに気楽に星座を見るのも楽しいものです。


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