ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ: その他観測機器

先週の「星もと」でSuper WideBino36を購入しました。販売開始はかなり前でずっと気になっていたのですが、でもなかなか購入に踏み切れなかった星座ビノです。今回は、Super WideBino36を含んだいくつかの星座ビノの見栄えを比較してみようと思います。

以前の比較記事などは




になります。ご参考に。


エントリー機種

今回の比較のエントリーです。

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購入順に
  1. Nikon TC-E2を利用した星座ビノ(2019/4/12 ヤフオクで上板2丁目さんから落札) 
  2. 笠井CS-BINO 3x50(2020/1/4 Amazonで購入
  3. SIGHTRON Stella Scan 3x48(2021/1/17 SCOPIOで購入
  4. Canon TC-DC10を利用した星座ビノ(2021/11/13 小海「星と自然のフェスタ」で上板2丁目さんから購入
  5. Super WideBino36(2022/9/18 「星をもとめて」でUCトレードから購入
となります。前回比較以降に手に入れた星座ビノは全て入れてあります。


比較の基準

比較は飛騨コスモス天文台の観望会の際に行いました。ただしここは、暗くなると星が見えすぎてしまい裸眼と星座ビノの差があまり出ない可能性があるので、今回は星座ビノの効果が最も現れる、少し明るめの薄明終了前くらいの空で行いました。

まず基準となる星座ビノを、今回のエントリーの中では一番古くからあるNikonのTC-E2にします。星座ビノの最高峰と言われるTC-E2を基準にするのは少々酷かもしれませんが、今回はそれくらいハイレベルの戦いになります。


Nikon TC-E2

まずはNikon TC-E2です。これは市販品ではなく、以前ビデオカメラ用に使われていた、像を拡大するためのテレコンビノというものを2つ利用した、基本自作品になります。上板2丁目さんという方が数多く制作されていて、星まつりやヤフオクなどで販売されています。現在は入手が困難になりつつありますが、突き詰めていくとこのTC-E2に行き着くという方も多く、テレコンビノの最高峰と呼ばれることもあります。

はい、というわけで、これを見ている限り不満はありません。収差、像の閉まり具合、コントラスト、どれも素晴らしいです。これで不満があるというなら、もう星座ビノというもの自身の不満になるかと思います。でもですねー、今回Super WideBino36を見てこの評価が変わったんですよ...。詳しくはSuper WideBino36の項で。


CS-BINO 3x50

次は笠井のCS-BINO 3x50です。笠井は星座ビノを2系統販売しています。一つは市販の星座ビノとしては最初期からあるWideBinoシリーズで、実視野で28度を誇るWideBino28と今回比較する実視野なんと36度のSuper WideBino36の2種類です。もう一つが安価なCSシリーズで、2倍のCS-BINO 2x40と3倍のCS-BINO 3x50です。CSシリーズには2倍の単眼バージョンもあります。

とにかくCS-BINO 3x50の特徴は3倍であるということ。これまでも何度か説明していますが、見える星の数は原理的には倍率のみで決まります。口径などは関係ありません。3倍の星座ビノはこれまでの2倍のものよりも圧倒的に見える星の数が増えます。

そういった意味ではNikonのTC-E2よりはるかに見えていいはずなのですが、実際の星の数はあまり違いがありません。厳密にいうと3倍のこのCS-BINO 3x50の方が暗い星まで見えますし、星の色の違いもCS-BINO 3x50のほうがよくわかります。でもNikonは十分それに迫っています。これはCS-BINO 3x50が悪いのではなく、Nikonの方が良すぎると言った方がいいでしょう。

それよりもNikonと決定的に違うのは、CS-BINO 3x50は倍率が3倍なので「大きく見えてしまい」、「見える範囲が小さくなる」ことです。なので、星座によっては全部一度に視野に入らなくなることも多々あり、星座の形をよく知っている人にはオススメですが、星座の形をあまり思い浮かべることができな初心者の方にはやはり2倍のものがオススメかと思います。

このCS-BINO 3x50の利点は圧倒的に安価なことです。CS-BINOの2倍と3倍両方買っても税込みで約2万3千円。見比べ等もできることから、2つ一度に買ってしまった方が遥かに楽しめると思います。


Stella Scan 3x48

こちらも3倍のもので、サイトロンから販売されています。笠井の3倍の後に出たもので、昼間に比べてみると明らかに周辺像が改善しているのがわかります。

ですが夜に星を見ながらだと、その違いは全く分かりませんでした。人工的な直線などで比較すると分かる違いですが、そういった比較物がない夜の星だけだと、少なくとも私の目では違いを見出すことができませんでした。なので見え味としては笠井のCS-BINO 3x50と感想はほとんど同じで、普通の2倍の星座ビノより見える星の数は圧倒的に増え、その一方で見える範囲は減ります。最高峰のNikonのTC-E2と比べてしまうと見える星の数はそこまでは変わらず、見える範囲はTC-E2より狭いというものです。

Stella Scanも2倍のものが出ているので、こちらも一度に2倍と3倍を両方買ってしまって、比較などして楽しむのも一つの手です。


Canon TC-DC10

こちらも高性能と評判のCanon製のテレコンビノを利用した星座ビノです。NikonのTC-E2よりはマイナーなので星座ビノとしてはそれほど作られていないと思われます。TC-E2と比較したくて、2021年の小海の星まつりで上板2丁目さんから譲っていただきました。

TC-DC10だけで見ている限り、とてもよく見えると言うのが最初の印象でした。それでもTC-E2と直で比べるとその差がわかってしまいます。TC-E2や3倍で見ると見える星が、TC-DC10だと見えないことがあります。例えば今回夕暮れの明るいうちにこと座を見比べて見たのですが、TC-E2と3倍で見えたこと座の平行四辺形の4つの星のうちの一番暗い三角よりの星が、TC-DC10だと見えませんでした。

かといって、TC-DC10が悪いのかというと全くそんなことはなく、普通の2倍の星座ビノと比べると見える星の数に見劣りはなく、シャープさではかなり優秀な部類です。2倍のものを3倍と比べることなどが本来無理があるというわけです。そう考えるとTC-E2の性能の良さを改めて実感でき、比較目的で手に入れたこのTC-DC10は私的にはそれだけで価値のあるものです。他の2倍の星座びの同様、観望会で活躍してもらいます。


Super WideBino36

最後は今回の目玉のSuper WideBino36です。改めて確認しておきますが、倍率は2倍です。それでも見える星の数はTC-E2や3倍のビノとに比べて全然遜色ありません。明らかに通常の2倍ビノとは差があり、最高峰と言われているTC-E2に迫っています。

しかもパンフォーカスでピントを合わせることができないTC-E2と違って、Super WideBino36は当たり前ですがピント調整が普通にできます。これは私個人のことなのですが、眼鏡の度数があまり合っていなくて普段あまり星をきちんと見ることができていません。とくに右目がだいぶ悪くなってしまっているために、右だけを比べると明らかにSuper WideBino36のほうがよく見えています。

私はTC-E2の唯一の欠点がピントを合わせることができないことだと思っていたので、Super WideBino36はこの欠点を完全に解決しています。かつ見え味はTC-E2に相当するので、個人的な評価としては目の悪い人でも最高クラスの星座ビノを味わうことができると言う意味で、Super WideBino36のほうが上という判断です。

Super WideBino36があまりに素晴らしいので、頑張って欠点を探してみました。唯一気づいたのが、木星クラスの明るい星を見た時で、ジャスピン位置が合わせきれないように見えたことでしょうか。ピントを内外にずらすと、点像が縦方向横方向にそれぞれ伸びるのですが、注意してピントを合わせても完全に縦横のずれが消えることがないことがわかります。ただしこれ、飛び抜けて明るい星以外では全くわからないです。なので欠点というには至らなく、シャープさ、コントラストなど、私としては満足の逸品です。

NikonのTC-E2の入手性がかなり悪くなってきている現在、それを置き換えることのできる、今のところ唯一の星座ビノがSuper WideBino36だと思います。TC-E2を持っていて目がいい人はあえて買わなくてもいいかと思いますが、TC-E2を持っていても目が悪い人、TC-E2を手に入れるのが難しい人は迷わずSuper WideBino36でいいかと思います。3倍の星の数と、2倍の視野の広さを兼ね備えていると言ってしまってよく、少し値段は高くなりますが、一台選ぶとしたらこれをお勧めします。

その一方、2倍と3倍を2台もつ楽しさ(比較や二人で見る場合など)もあるので、Super WideBino36を1台だけにするのと迷います。いや、いっそのこと3台買ってしまうのが一番幸せかもしれません。ちなみに私は手持ちで11台の星座ビノがあるので、3台くらいなら全然アリだと思います。


まとめ

今回はハイレベルな星座ビノの比較となりました。星座ビノに一般的な2倍という倍率でも、機種によっては性能差があることがわかり、一部は3倍相当の星の数が見えることがわかりました。市販されている星座ビノの種類もかなり増えてきていますが、今回満を辞して手に入れたSuper WideBino36は、現行モデルでその可能性を味わうことができます。まだまだ星座ビノも発展する余地があるのかもしれません。


太陽粒状斑撮影にフィルターワークで新兵器投入です。今回はサイトロンから新発売のPlayer One社のPhotosphere filter。540nm付近を10nmの幅で透過するようなフィルターです。



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元々Barrderで「Solar Continuum Filter」という名前で同様のフィルターが古くから販売されていたようなのですが、国際光器のページを除いても在庫なし、本国のページを覗いても今も2インチしか残っていないようです。

最近Player Oneから同等のフィルターが発売されたことを本国のページから知ったのですが、PayPalでは自宅住所の県の情報が入らないという、おそらくシステムのエラーのようで、うまく購入することができませんでした。その足で少し前にシュミットさんに問い合わせてみたら、いずれ日本でも発売するとのこと。期待して待っていると、早速6月24日に発売開始のアナウンスがあり、早々と使ってみたというわけです。

さて、このフィルターで何が見えるかというと、太陽の光球面のベナール対流起因の粒状斑と呼ばれるものです。下層から上がってくる斑の中心の明るい部分と、下層に下がっていく周りの暗い部分の境界の温度が6000K程度になっていて、波長で言うとちょうど540nm程度でその明るさの差が見やすくなるため、粒状班模様としてよく見えるようです。

明暗がはっきりと

前回の撮影ではこのフィルターの代わりにBaaderのYellowフィルターを使っていましたが、模様の明暗部分のあぶり出しにかなり苦労していました。

今回はその明暗のあぶり出しは相当楽になりました。結果はというと、

final

くらいで、分解能に関しては今回は前回の結果には達しませんでした。今回導入したフィルターと画像処理方法がある程度確立してきたため、この程度のものはコンスタントに出るようにはなってきました。ただし前回も今回も強画像処理の影響が大きく、もう少し画像処理をしなくても自然に粒状斑が出るよう、まだ撮影に改善の余地がありそうです。


何が効いているのか?

うまく見えるかかどうかは
  • シーイング
  • シンチレーション
  • ピント
  • 波長
  • 焦点距離 
  • カメラの分解能
  • 口径
に依存します。上に行くほど運で、下に行くほど装備といったところでしょうか。何が足りていて、何が足りないのか、少しだけ検討します。
  • 口径はC8で20cmでそこそこ十分なはずです。まだ惑星撮影の典型的な分解能に達していないので、口径制限とはなっていないはずです。
  • ピントは合ったと思った前後を何ショットか撮っておけばいいでしょう。
  • シーイングは今日はそこまで良くなかったようですが、冬よりは遥かにマシになっているようです。これは日に依るので、地道に繰り返していい日を待つしかありませんが、基本的に休日しか撮影できないので、つらいところです。朝早く起きるか?多分無理です。
  • シンチレーション等意味では、外気温40度近い状態での撮影なので、多分鏡筒などの温度が物凄いことになっています。筒内気流がどうなっているか?まだ全然考えていないので、ここら辺がキーになるのかもしれません。
  • 波長に関しては、今回のPhotosphereフィルターを使うことができるようになったので、これ以降は解決のはずです。
  • 今回はPowerMATEの2倍を入れてC8の焦点距離2000mmを4000mm換算で撮影しました。ピクセルサイズから考えるとまだ全然アンダーサンプルです。なので焦点距離を伸ばす方向が正しい気がしています。手持ちのScience Exploereの5倍のバローを次回導入してみようと思います。もしかしたら以前使ったことのあるPowerMATEの4倍を購入するかもです。

今後

とにかく、もう少し焦点距離を伸ばして、十分なオーバーサンプル状態のカメラで、シーイングのいい日を狙って撮影ということになりそうです。筒内気流はどうするか?もう少し考えます。

Baaderの減光フィルム、Televueの2倍のPowerMATE、Player OneのPhotosohereフィルターときて、状況は徐々にですが、着実に改善されてきています。もう少しでしょうか。

最近すごく忙しくて、太陽なんかやっている暇ないはずなのに、せっかくの休日の晴れだとどうしても試したくなってしまいます。さらに一昨日からSV405CCの評価を再開しています。まもなく記事にできるかと思いますが、試してみたいこともまだまだあるのでいつ終わることやら。ゴールデンウィークの頃に撮影した溜まっている画像の処理が全然進んでいません。うーん、大丈夫か?


CMOSカメラの理解に

2022年4月にCQ出版から発行された、米本和也著の「CCD/CMOSイメージセンサの性能と測定評価」という本を最近購入しました。

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ここしばらくASI2400MC ProというフルサイズのCMOSカメラを使っていたのですが、その性能の良さにびっくりしています。フルサイズというと徐々にハイエンドに近いセンサーになりつつあり、最先端の技術も注ぎ込まれていると想像します。この本を読むと、天文カメラメーカーから出ている仕様説明はごく僅かで、他に多くの技術やパラメータが絡む仕様があることがわかります。


アマチュア天文という観点から中身を見てみると

著者は1980年代からソニーでCCDに関わっていて、2001年以降各社で経験を積み、2016年から再びソニーセミコンダクタソリューションズの研究部門に戻っているとのことで、完全にプロの開発者視点での解説書になります。

1章は概要や単位などの解説。

2章の原理説明はCCDが基本で、CMOSも追加で説明という感じで、両方の原理を理解する必要がありますが、ここら辺は基本なので理解しておいた方がいいでしょう。ただし、初読でここだけを読んで理解するのは大変かと思います。

その場合、同著者の2003年発行の前作、CQ出版の「CCD/CMOSイメージ・センサの基礎と応用」を読むといいでしょう。

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こちらの方はもっと原理から解説していますので、アマチュア天文という観点からは今回の新しく出た方が身近に感じるのかと思います。

今回は前作から20年近く経っているためでしょう、CMOSカメラの解説が多くなってきていて、タイトルにあるように「測定」にも言及するなど、CMOSカメラでの撮影が主流になったアマチュア天文民にも役に立つことも多いです。それでも今回も原理的な説明もかなり多いためか、参考文献を見ても1960年代や70年代のものがあります。随時2000年代、2010年代の参考文献が入ってくるので、新しい話も貪欲に取り込んでくれているのかと思われます。

3章以降が具体的な信号ノイズの例や、測定についてです。アマチュア天文ユースという観点で読み込んでいくうちの、いくつかポイントを書いておきます。

3章は感度についてです。基本的に暗い天体を撮影することが多いため、これまでノイズのことはこのブログでも色々言及してきましたが、その一方、明るい信号側に相当する感度のことはせいぜい量子効率くらいで、私自身あまり考えてこなかったことを痛感させられました。裏面照射の構造とマイクロレンズの関係、周辺減光と瞳補正など、これまで知らなかったことも多いです。

4章は飽和に関してです。ここもかなり原理的に説明してくれています。これまでほとんど知識がないところでした。ダイナミックレンジの話や、飽和電指数の測定の話は、私はまだ馴染み深かったです。

天体写真という観点で一番関連するとことは、やはり5章のノイズでしょうか。P93の図5−1はEMVA1288規格でもよく出てくる図で、理解しておいた方がいいかもしれません。

特に固定ノイズの説明が詳しいです。天体写真関連ではバイアスノイズ(バイアスフレームに出る縞々のノイズのこと)とかが関係するのかと思います。今までなんでこんなノイズが出るのかあまり知らなかったのですが、ここを読むとよく理解できます。ただし読んでいる限り、ユーザーでどうこうできるわけではないことがわかるので、これは今後のメーカーの開発に期待するしかないですね。

ランダムノイズに関しては、天体写真をやられる方は普段から身近につきあっていると思いますので、比較的読みやすいかと思います。

3章の信号測定の方はあまり考えたことがなくて読んでいてもなかなか想像がつきにくかったですが、5章のノイズの測定のほうはまだ馴染み深いです。それでもかなり原理的な測定の説明も多く、実際これだけ読んで自分で測定するというのはなかなか難しいかと思います。むしろ、天体写真の画像処理はノイズ測定に近い様なことをやっているようなものです。実際にこの本を元に測定するにはもう一段階、具体的な説明が欲しいとことです。

6章で面白いのはフレアパターンでしょうか。これは天文愛好家の間ではサッポロポテト現象とよばれているものかと思います。その発生メカニズムが書かれているので、理解が進みます。これまであまりきちんと書かれているのを見たことがなかったので新鮮でした。ただし、これもユーザーでどうこうできるわけではないようです。また、あぷらなーとさんが理解している、Quad配列のASI294シリーズでなぜサッポロポテト現象が出なくなるかは、この本を読んだだけではまだ理解できません。もっと考えるとわかるのかもしれませんが、まだ私は理解できていないです。

ところで、最後まで読んでもコンバージョンファクターなどの話が全く出てきませんでした。センサーの仕様を理解するためには重要な情報かと思っていたのですが、開発者から見たら当たり前すぎることなのかもしれません。そういえば、以前コンバージョンファクターのことを聞いたとき「論文になっているような専門的なことではないし、かといって教科書に出る様な基礎的なことでもない」とか聞いたことがあります。


まとめ

アマチュア天文の範疇でこの本がどこまで役に立つかは、かなり専門的なところもあるので、なかなか判断が難しいです。多くのことは開発者目線での解説になっています。ユーザーの視点でどうこうできるかは、タイトルにもなっている「測定評価」という点においても、なかなか具体的な手法というと難しいかと思います。アマチュア天文ということを考えても、この本は具体的な方法を学ぶというよりは、原理を学ぶという観点で読んだ方がいいのかと思います。

特にCMOSカメラで疑問がある方には、かなりの原理的なところまで立ち返って、相当のレベルで答えてくれる書籍であることは間違い無いでしょう。¥3300円と専門書としては比較的安価な部類です。天体写真に真面目に取り組んでいるアマチュアならば、持っていても損はないかと思います。


少し前に網状星雲をDBP(Dual BP Filter)で撮影し、かなり青いところが出てきたことを記事にしました。



今回、星フェスの記事はちょっとお休みで、少し前に画像処理を済ませていたDBPで撮影したハートと胎児星雲のまとめです。DBPでの2例目になります。 


セットアップ

対象はハート星雲と胎児星雲。FS-60CBとフルサイズ一眼のEOS 6Dで二つぴったり入る画角になります。

機材のセットアップと言っても、実際には前回の網状星雲と全く同じです。それもそのはずで、網状星雲が西に沈んだその後、まだ高い位置にあるハートと胎児の両星雲をそのまま導入し直すだけです。なので今回の記事は書くことがあまりありません。

今回は7時間と長く撮影したので、ノイズも少なく画像処理がかなり楽でした。DBPがよく働いてくれて、Hαも一枚撮りで見てもかなり出ています。


画像処理と結果

画像処理は、まずはいつも通りPIでWBPPです。Cosmetic Corectionを外したのがいつもと違うところくらいでしょうか。でも大勢には影響がないはずです。フラット補正もうまく当たっているようで、背景もABEを1次でかけただけで、DBEもかけてません。PCCはさすがにちょっと変なけっかになりますが、恒星は擬似的に最もそうな結果にしてくれるのかと思います。その代わり星雲を含む背景はどこまであってるか分からないので、適当に補正します。基本赤が多いので、のっぺりならないように、特に青を、加えて緑も強調してやります。

結果ですが、以下のようになります。

「IC1805: ハート星雲とIC1848: 胎児星雲」
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  • 撮影日: 2021年10月30日1時15分-5時2分、10月31日0時57分-5時2分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi FS-60CB(f355mm) + マルチフラットナー(f370mm)
  • フィルター: サイトロン Dual BP Filter
  • 赤道儀: Celestron Advanced VX
  • カメラ: Canon EOS 6D (HKIR改造)
  • ガイド: f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: BackYard EOS、ISO1600、露光時間300秒x83枚 = 6時間55分、bias: ISO1600, 1/4000秒x100枚、dark: ISO1600, 300秒x76枚、flat: ISO1600, 1/100秒x128枚、flatdark: ISO1600, 1/100秒x128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

7時間の露光のせいなのか、かなり淡いところまで出たのかと思います。胎児のオナラとプンプンもよく出てます。ハートの背景の淡いところもそこそこ出ています。富山は町が北にあるために北の空はいつも不利ですが、ハートと胎児はかなり北の空に近くなります。それでも光害をあまり気にせず撮影できるDBPは相当強力だと言わざるを得ません。

おまけのAnotationです。
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星と自然のフェスタにて

実はこの画像、星と自然のフェスタの直前には仕上がっていて、Twitterではすでに公開していました。星フェスの準備とブログ書きなどで、結局記事にするのが今になってしまいました。

その小海の「星と自然のフェスタ」で何人かの人にDBPで撮ったと言って見せたのですが、かなり好評でした。と言っても、シュミットブースのところでDBPを買おうか迷っている人とかなのですが、後押ししてしまったのかもしれません。自己紹介用のネームプレートをつけていたので、何度か店員さんと間違われてしまったようで「これいくら?」とか聞かれてました。「いえいえい、私はただの客です」と答えるのですが、それくらい星フェスでのDBPの注目度は高かったです。


まとめ

今回はDBPで富山の北の空でも十分に結果が出ることを示すことができました。これまで北の空はほとんど諦めていたのですが、道が開けたような感じがします。今後もDBPに適した天体があればどんどん撮影していこうと思います。


自宅撮影でなんとか淡い青を出したくて、サイトロン社の「Dual BP Filter(デュアル バンドパス フィルター)」を使ってみました。


Dual BP Filter

「Dual BP Filter」はまだ9月に発売されたばかりの比較的新しいフィルターです。



48mmタイプとアメリカンサイズがあります。今回は一眼レフカメラでの撮影なので、48mmの方を使いました。

同様のフィルターにOptolong社の「L-eXtreme」がありますが、DBPの方が半値とはいかないまでも4割ほど安く、比較的手を出しやすくなっています。またDBPの特徴として、OIIIの波長495.6nmと500.7nmを両方とも透過するので、OIIIの写りがよくなるとのこと。ここら辺は後発が有利なところでしょうか。

今回はこのフィルターを使って青い星雲がどこまで出るかを試したいと思います。


自宅での青の挑戦

これまでアンタレス付近や、青い馬星雲などいくつか自宅からの青を挑戦してきました。




でもやはりなかなか難しく、例えばスパゲティー星雲などは完全に敗北でした。


そもそもHαの赤自身が淡く、さらに淡いOIIIの青は全くといっていいほど出ませんでした。

何れにせよ青い星雲を光害地でうまく出すのは相当難しく、フィルターの力を借りるなど工夫が必要となります。


網状星雲に狙いを定める

今回のターゲットは網状星雲です。赤と青の対比が綺麗で、Dual系のフィルターを手にれると一度は撮ってみたくなるという格好のターゲットです。

これは以前もCBPを使って自宅から挑戦したことがあるのですが、真ん中の淡い青が広がっているところを出すことがどうしてもできませんでした。



今回はCBPの代わりに、HαとOIIIのみを通し、さらにその透過バンド幅が狭いDBPを使っての撮影となります。DBPは48mm径のもので、FS-60CBのマルチフラットナーのところに取り付けています。


条件の比較

前回の撮影との相違点です。
  1. 鏡筒は全く同じでTakahashi FS-60CB + マルチフラットナー。
  2. 赤道儀は以前がCGEM IIだったものを簡単にしてAdvanced VX。
  3. ガイドカメラも以前が120mm+ASI290MMだったものを、50mm+ASI290MMと焦点距離を短く。
  4. 撮影カメラはEOS 6Dで同じ。露光時間も感度も同じ300秒でISO1600。
  5. PHD2のガイドは同じで、撮影ソフトもBackYardEOSで同じ。
  6. 撮影時間は前回が5時間ぴったり、今回が5分で49枚なので245分=4時間5分。少し不利ですね。
  7. 前回は8月の撮影だったのでちょうど天頂を挟んだ撮影だったので条件は良かったですが、今回は1月末から11月初めと、西の空に沈んでいくような撮影時間だったので、周りが明るく不利になります。
季節的には不利で、撮影時間は1時間減ったのでさらに不利といったところでしょうか。あとはCBPとDBPの差になります。この条件でDBPがどこまで戦えるのかが見どころとなります。


実際の撮影

実はこの撮影、一連のSCA260のテストの最中にしています。最初に買った赤道儀AVXにFS-60CBをセットしてほっぽらかしてあるだけです。網状星雲のある白鳥座は夏の星座なので、撮影時間はせいぜい0時まで。その後は次のターゲット(胎児星雲とハート星雲)に移ります。こちらのほうも撮影は終わっているので、また画像処理したらブログ記事にします。

DBPを使って撮影している最中に思ったのですが、とにかく暗いです。白色に近い恒星だとかなりの波長が削り取られるので、6Dで露光300秒、ISO1600で撮影しても、ヒストグラムは左6分の1くらいのところでしょうか。露光時間を10分にしても良かったかもしれませんが、網状星雲は画角の中に明るい輝星が一つあるのでできるだけ抑えたいところで、今回は5分としました。

星が暗いことは画像処理にも影響します。恒星と星雲の輝度差が小さいので星が飽和するまでにまだ余裕があります。そのため、いつも使っているStarNetで恒星を分離してやってマスクを作っても、その効果が大きくないかもしれません。なのでマスクなどあまり気にせず処理してみるというのも、楽でいいのかもしれません。

あと、重要なことですが、DBPを入れたことによるゴーストなどは撮影中は全く気になりませんでした。後の画像処理でも見ている限り確認できませんでした。そのため安心して使うことができるかと思います。


画像処理

画像処理の途中でStarNetを用いて恒星を消してやると、既に真ん中の青い部分はしっかりと情報として存在していることが分かります。あとはこれをどう引き出してやるかだけです。

masterLight_ABE_ABE_clone

実際には上の画像は直接は使っていません。L化して星雲部のマスクとして使っています。恒星のみ抜き出した画像もマスクとしてPhotoshop上で使っています。


実際に画像処理まで済ませたのが下の画像になります。

NGC6960, 6979, 6992, 6995: 網状星雲」
masterLight_ABE_ABE_Rhalo_PCC_ASx2_HT3_cut
  • 撮影日: 2021年10月30日18時26分-19時10分、10月31日20時6分-21時20分、11月2日19時48分-23時37分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi FS-60CB(f355mm) + マルチフラットナー(f370mm)
  • フィルター: サイトロン Dual BP Filter
  • 赤道儀: Celestron Advanced VX
  • カメラ: Canon EOS 6D (HKIR改造)
  • ガイド: f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: BackYard EOS、ISO1600、露光時間300秒x49枚 = 4時間5分、bias: ISO1600, 1/4000秒x100枚、dark: ISO1600, 300秒x76枚、flat: ISO1600, 1/100秒x128枚、flatdark: ISO1600, 1/100秒x128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

鏡筒: Takahashi FS-60CB(f355mm) + マルチフラットナー(f370mm)
フィルター: サイトロン Dual BP Filter
赤道儀: Celestron Advanced VX
カメラ: Canon EOS 6D (HKIR改造)
ガイド: f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
撮影: BackYard EOS、ISO1600、露光時間300秒x83枚 = 6時間55分、bias: ISO1600, 1/4000秒x100枚、dark: ISO1600, 300秒x76枚、flat: ISO1600, 1/100秒x128枚、flatdark: ISO1600, 1/100秒x128枚
画像処理: PixInsight、Photoshop CC

真ん中の淡い青もある程度出ています。昨年CBPでここは全く出なかったので、大きな進歩かと思います。他の青い部分も今回の方が遥かにはっきり出ています。

また、周りの淡い赤も少し出ていますし、右半分の分子雲も少しですが顔を出し始めています。ここもCBでは太刀打ちできなかったところです。うーん、やはりDBPすごいです。

恒星に関しては良く言うならうるさくなく、悪く言えば元気がないです。ここはDBPの特徴でしょう。

諧調深い色に関してはやはりCBPの方が出しやすかった気がします。DBPでは2色なので赤と青のバランスをうまくとる必要があります。


いつものアノテーションです。解説が入ったみたいでかっこいいですね。

masterLight_ABE_ABE_Rhalo_PCC_ASx2_HT3_cut_Annotated1

でも少し傾いてしまっています。3日にわたる撮影で、最初に合わせ忘れてしまってそれには後から気づいたのですが、それ以降の撮影ではいじりたくなかったというのが真相です。画像処理で回転冴えても良かったのですが、今回はそこまでこだわっていないので、まあよしとします。


比較

昨年CBPで撮ったものも載せておきます。

masterLight_ABE_PCC_STR_all3_DBE4_cut
以前はそこそこ出たと思っていましたが、今回のと比べるとまだまだ全然ですね。
  • OIIIに関してはやはりDBPが圧勝です。西の空に傾くのと、トータル露光時間が短いにもかかわらず、淡いところが格段に出ています。
  • Hαに関しても相当淡いところが見え始めています。10時間くらい露光したらどうなるか楽しみです。
  • 恒星に関してはやはりCBPの方が有利でしょうか。

Dual系フィルターが便利なわけ

(2021/11/7 追記)

なぜDual系のフィルターが良いのか、この記事を書き終えた後改めて考えてみました。そもそもQBPなども含めて「ワンショットナローバンド」と呼ぶらしいです。



「ワンショット」の名の通り、一枚一枚ナローバンドフィルターを揃えなくて良いところが楽なところです。

特に広角で撮影したい場合に例えばフルサイズで撮影しようとすると、2インチクラスのナローバンドフィルター一枚一枚の値段は馬鹿になりません。一番の問題はフルサイズのモノクロカメラでしょうか。CMOSカメラでフルサイズのモノクロになってくると4-50万円コースです。

その一方、ワンショットの場合は、今回のDual BP Filterが2万円、一眼レフカメラが改造済みの6Dなら10万円程度です。この値段の差はかなりのものです。

一方、ワンショットが不利な点は、まずはカラーセンサーなので解像度が出ない点です。それでも広角で撮る場合はそこまで問題にならないでしょう。分解能が効くくらいのところで勝負する場合は、長焦点になってくると思うので、小さなセンサーサイズの方がむしろ適している場合も多く、無理に2インチクラスのフィルターを使う必要性も薄れてきます。

もう一つは、淡いところをどこまで出せるかです。これはより波長幅の狭いフィルターが選べる単独のナローの方が有利でしょう。光害地や月が明るい時にはこの差が大きくなってくるかと思います。ここのところに価値を見出すかが決め所でしょうか。それでもDual BP Filterは相当の場合において、強力にかなりの結果を出すことができて、かつ「安価で簡単」と言うところがポイントなのかと思います。

今の私だと、そこまで無理をして広角単体ナローの道に行くことは、よほどことがない限り無いのかと思います。今回この画角で、淡い青いところを出せたのは大きな成果で、かなり満足してます。

もっと狭い範囲で、例えば手持ちのASI294MM Proを使って、Dual BP Filterと単独のAOを比較するのは興味があります。純粋にDual BP Filterがどこまで迫れるかというのを見てみたいという意味です。いつか機会があればやってみたいと思います。


まとめ

DBPは色が限られてしまうので多少のっぺりするとはいえ、HαとOIIIが支配的な天体はDBPは圧倒的に強いです。一眼レフカメラで一発で撮れてしまうのも楽なところです。天体を選びますが、HαとOIIIが支配的な星雲ならかなり淡いところまで出せそうです。

できるならこれでSh2-240を狙ってみたい気がします。青いところが出るか?やるとしたらまた10時間コースですね。



今回の記事は、普段私が何気に気を使ったりしていることや、小ネタなどをまとめてみることにしました。よかったら参考にしてください。細かいことなので、あまり記事とかにしてこなかったことも多いです。

あくまで個人のやり方なので、この方法が正しいなどという気はさらさらないですし、この方法を押し付けるようなこともしたくありません。むしろ、これを見てもっといいアイデアがあるぞとか、自分で工夫してもらってさらに発展させてもらえると嬉しいです。

それではいきます。


機材が揺れないように

倍率の高い状態で見たり撮影したりする望遠鏡。揺れは大敵です。

まず、L字型の構造は出来るだけ避けたほうがいいです。必要なら三角板をL字の真ん中に入れて補強するなどします。頭でっかちで、根元が細いのもだめです。赤道儀は基本的にL字や頭でっかちになりやすいですね。
  • 鏡筒と赤道儀の接合部
  • 赤緯体の根本
  • 赤経体の根本
  • ウェイトとウィエイトバー
  • 赤道儀と三脚の接合部
  • 三脚の足の接合部
などです。

基本的には、構造的に一番弱いところで一番大きく揺れます。極端に弱いところを途中に作らないことが重要です。

揺れに関しては重量というよりは慣性モーメントが効いてくるので、
  • 同じ重さなら、長い方がより揺れる。
  • 同じ重さなら、重量が端にあるものほどよく揺れ、重量が中心(支点に近いところ)にあるほど揺れにくい。
手で触って揺れが分かるようなものは構造的に不十分です。風が吹けば当然揺れてしまいます。

構造がしっかりしているはずなのに、ガタガタする場合はたいていクランプやネジの緩みです。特に赤道儀は、車などで運んでいると長期の間に自然にネジが緩むことがよくあります。外に出ているネジだけでなく、内部のネジまで含めて緩みを各自で定期的にチェックするか、それができなければメンテナンスに出すなどが必要になります。

一例ですが、私はガイド鏡でさえこれくらいガチガチに固定しています。高さもたわみなどが少なくなるようにできるだけ低くしています。

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もう一例、重い鏡筒なのでできるだけ鏡筒位置が低くなるような鏡筒バンドを選び、かつ長いロスマンディー規格のアリガタを使い、バンド間の距離をできるだけとっています。

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これだけバンド間の幅を取っていると、プレートより上は揺れに関しては無視することができて、それより下の赤道儀自身(今使っているCGEM IIの場合)の方が弱い構造となるので、揺れの大きさはそちらで決まります。


アルカスイス互換クランプ/プレートの利用

鏡筒の上部や下部に長めのアルカスイスプレートをつけておくと便利です。取っ手がわりにもなります。
さらに、ガイド鏡、ファインダーなどの下部にアルカスイスクランプをつけておくと、コンパクトな機構で安定に鏡筒に取りつけることができ、かつ取り外しが楽になります。




アルカスイス互換クランプは構造的に精度の許容範囲が広いため、安価なものでもそこそこ安定していて、気軽に使えるので使い勝手がいいです。。
  • 面で固定なので安定。
  • プレートの長さが相当長いものまで選べる。
  • クランプの長さも結構選べる

また、Vixen規格のアリガタからアルカスイスへの変換アダプターを作っておくと便利なことが多いです。

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例えばAZ-GTiはVixen規格のアリミゾですが、上記アダプターでアリミゾからアルカスイス互換クランプに変換することで、L字フレームをつけたカメラや、上下にアルカスイス互換プレートをつけた軽い鏡筒なら、十分な強度で取り付けることができます。それだけでなく、このアダプターはかさ上げも兼ねていて、鏡筒が三脚に当たることをある程度防いでくれます。

さらに、この変換アダプターに使っているアルカスイス互換クランプのつまみのところには水準器が付いているので、AZ-GTiの経緯台モードの最初の設置の時に、鏡筒の水平出しに便利で、これがあるとないとで初期アラインメントの一発目の導入精度が全く違ってきます。


ハーフピラーの活用

AZ-GTiを使ったときに実感したのですが、上のかさ上げ用のアダプターでも不十分なときにはハーフピラーが便利です。AZ-GTi三脚セットに付属のものもそこそこの強度があfり悪くないです。特に天頂近くを見るときに、鏡筒が三脚に当たるのを防ぐことができます。


できるだけシンプルにすることを心がける

トラブルを避けるためには、あらゆるところをシンプルにした方がいいです。例えば、一つの箇所でトラブルが起きる確率が10%とすると、もしそれが10箇所あるとトラブルが起きる確率は1-0.9^10=0.65と、何と60%以上の確率で毎回何かトラブルが起きることになります。一つトラブルが起きると撮影としては大抵全て失敗してしまいます。意外なほどこの法則は当てはまったりするので、トラブルが起こる箇所の数を減らすことは、撮影の成功に直結します。
  1. 機材組み上げの構造はシンプルにする。
  2. ケーブルの本数は減らす。
  3. 複雑な操作を避ける。
  4. ソフトを多用しすぎない。
  5. Wi-Fiに便りきらない。何もつながらなくても動かせる手段を持っておく。
などです。

2. 特にケーブルはコネクタ部や内部で接触不良になったり、引っ掛けたり、可動部で挟んだり、何かとトラブルが多いです。持ってくるのを忘れることもよくありますね。

3.、4. 複雑なソフトの多用も考えものです。確かに全部連動してがうまく動くとカッコ良くて満足できたりするのですが、一つ動かないと全部動かなくなるとかの、互いのソフトの動作状況に依存するような組み合わせは最小限にすべきです。私は撮影時はPHD2と撮影ソフトのディザーのみの関係に抑えてます。各機器間を繋ぐASCOM関連の安定度は重要で、必ず事前にきちんと動くかチェックするようにしてます。

5. トラブったときに接続できなくて画面で何も見ることができない状況とかは、できれば避けたいです。PCをモニターがわりに使えるようなこんなアダプターを用意しておくと、別途モニターとかを用意する必要がなくなるのでいいかもしれません。


ケーブルの取り回し

ケーブルは回転の中心で固定したほうがいいです。例えば、鏡筒につけてあるカメラやガイド鏡に行くケーブルは、鏡筒と赤道儀の接合付近で一回ベルトでまとめてとめています。こうしておくと赤道儀が回転しても、ケーブルが変に引っ張られたりする危険が減ります。このことは、APTなどを使った子午線自動反転でのトラブルを少なくすることにつながります。


マジックテープは便利

三脚、ハーフピラーなど随所に裏がシールになっているマジックテープをつけてます。そこにもう一方のマジックテープを貼ったバッテリー、Stick PCなどをペタペタくっつけてます。こうすることでケーブルの長さを短くすることに貢献しています。

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ハーフピラーにマジックテープをつけてバッテリーとStick PCを親子亀方式でつけてます。
バッテリーとStick PCの間もマジックテープです。


ライトは暗いものがいい

庭撮りや遠征時に使うライトです。これの前のモデルを持っています。

 

電球分が取り外して懐中電灯のように使えるし、題において上から押すとスイッチが入ります。電球色で、暗いモードと明るいモードがあって、暗いほうのモードは天体観測には適度な明るさで、かつ1000時間以上持つので便利です。新しいモデルの高級バージョンは、6段回に明るさを調整できるみたいです。


テーブルと椅子

特に電視観望の時など、ノートPCを使う場合には、折りたたみ式のアウトドア用の机を使います。椅子もあると楽です。

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椅子は写真に写っているような高さ調整のできるものがいいです。私はルネセイコウのプロワークチェアを使っています。



これだと眼視の時にも相当低い位置から(高い位置よりも低い位置で安定して見えるほうが重要、腰が痛くなるのを避けることができます)見ることができて便利です。特に観望会などで足腰の弱いお年寄りの方がいる時には威力を発揮します。


小型のStick PCの利用

撮影時にはStick PCを使っています。小さく軽いのでマジックテープで三脚などに固定できるのと、Windowsのリモートデスクトップ機能を使うと、離れたところからでも他のPCから様子がわかるので、遠征時には車の中から、庭撮りでは自宅の中から、特に冬はヌクヌク状態で撮影しています。夜中じゅう放っておいて寝てしまっても、ベッドのところにiPadとかのタブレットを置いておけば、目が覚めた時にチラッと確認してまた眠ることができます。

最近はASIAir Proとか流行っているので、同様のことができますね。私はWindowsのソフトを使いたいのでStick PCですが、ASIAir Proは手軽さという面では上かと思います。


極軸をどう取るか?

極軸を合わせるのは極軸望遠鏡でもいいですが、最近では精度的には何らかのPCを使ったツールを使った方がいいでしょう。特に長時間撮影では精度の違いが重要になってきます。極軸精度が不十分だと一方向にずっとずれ続ける(「ドリフト」とか「DC的な変動」とかいいます)のでガイドに負担がかかってしまいます。

具体的には、私はSharpCapのPolar Align機能を使っています。Plate solveでリアルタイムで極軸を合わせることができる、非常に優秀で簡単に使える極軸調整ツールです。残念ながら有料版でしか使えない機能ですが、年間10ポンド(千数百円)とお小遣い程度なので、この機能のためだけでも有料版にしてもいいくらいです。ガイド鏡のカメラがそのまま使えるので、経済的にも、機材を簡略化する観点からもメリットが大きいです。

ちなみに、極軸を合わせるためのカメラは回転中心に置く必要はありません。しょせん星という無限遠を見ていることになるので、当たり前といえば当たり前ですね。さらに、カメラは極軸の方向にピッタリ合わせることも不要です。画面内のどこかくらいに入っていれば十分です。これもカメラの映像のピッタリ中心で回転することが必ずしも必要ないことから、当然といえば当然ですね。というわけで、適当に置いたガイドカメラを使っても十分に極軸調整のためのカメラとして使うことができるということです。


初期アラインメントはワンスターで十分!

極軸がきちんと取れてれば、初期アラインメントはワンスターアラインメントで十分です。無闇にツースターアラインメントや、スリースターアラインメントに時間をかける必要はありません。極端に言えば、高度なオートアラインメント機能などを使わずに、手動で導入しても構いません。だって、極軸があっていれば、どの星を見てもあとは自動で十分な精度で追尾してくれてくれるからです。

逆に、極軸が取れていない場合は複数の星を使った初期アラインメントが必要になります。それでも特に長時間露光の撮影時には、原理的にきちんと極軸を取ったものに勝てません。なので、極軸の精度はかなり重要になります。どれくらいの精度で合わせればいいかは



を見てください。ざっくり言うと、極軸を1分角の精度で合わせておけば、もう十分な精度と言えるでしょう。極軸望遠鏡でこの精度を出すにはなかなか難しいと思いますが、SharpCapなどのツールを使えばかなり簡単にこのレベルの精度を出すことができます。


初期アラインメント時に一発で視野に入れるには?

極軸をきちんと合わせているのに、初期アラインメント時に視野に入らない場合は、赤道儀の水平出しに気を使ってみてください。その際、水準器があると簡単ですが、水準器がついていない場合はホームセンターなどで買ってきて、赤道儀の平な面を見つけてそこに水準器を置き、一度水平を出してから赤道儀に直接接着してしまうと、毎回合わせることができるようになります。


ピントをどうやって合わせるか?

バーティノフマスクもいいですが、他にも精度良くピントを合わせる方法はたくさんあります。例えば、恒星のFWHM(半値全幅)を自動で測定してくれる機能が撮像ソフトには付いていることが多いです。BackYardEOSやSharpCapでは私も FWHMを常用しています。このFWHMが最小になるようにピントを調節します。このピントを調節するのも、やり方一つでかなり精度が変わってきます。ここら辺も経験が効いてきますが、コツを知っているか知っていないかでかなり違います。例えば、
  1. ダイヤルを回していって、一旦最適位置を通り越して、そのときに見た最小値を覚えておく。その最小値になるように戻す。
  2. 戻すだけだとバックラッシュで像の位置が変わることもあるので、一旦大きく戻して、最初に最初うちを見たときと同じ方向で、再び同じ最小値になるように合わせる。
  3. 手で触っていると揺れるので、どれくらい動かすかの最小単位を決めておき、毎回その単位で動かして毎回必ず手を離す。

さらに、ネジの精度が良すぎて変化がわかりにくい時の方法です。
  1. 一方向にあるステップ(幅)で動かしながら、何ステップ動かしたかを常に数えておく。
  2. 最初になんらかの変化が見えた位置から、最適値を通り越して、次に変化が見えなくなるまでのステップ数まで数える。
  3. 数えたステップの半分だけ戻す。
もし、最適値までのステップ数と、最適値後のステップ数にあまりに違いがあると、何らかの非対称性があるということになります。その場合は大抵何かおかしいことが起きているので、注意深く探ってみます。


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とまあ、今回はこんな所ですが、また何かありましたら随時追加してきます。

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