久しぶりのブログ更新になります。皆様いかがお過ごしでしでしょうか?ゴールデンウィークは天気も良く、特に後半は新月期に入り絶好の星見日和だったのかと思います?

私はというと、あいにくGW中に体調を壊してしまい、前回の小ネタ記事を書いて以降ほぼ何もできない日が続きました。やっと体力も少し回復してきて、今もこの記事は病院の中で書いています。と言っても今回のM104の撮影はずっと前に終わらせていましたし、画像処理もブログ記事ある程度まで終えていたので、少し仕上げたくらいであまり無理はしないようにしています。

せっかくの長期休暇の新月期、暑くもなく寒くもなく、大きな太陽黒点と低緯度オーロラを横目にと、数々の絶好のチャンスを逃してしまい残念でなりません。その不満を払拭すべく、少しづつですが再開していきたいと思います。


三たびM104、でも本当は4度目

M104は分解能ベンチマークのような役割もあり、これまで何度か撮影しています。最初は2021年4月にVISACで。中心部を拡大すると、まだまだ無理やり解像度を出している感があります。


次は2022年8月、SCA260を手に入れてからより大きな口径で違いを見ました。


ただ、SCA260は焦点距離が1300mmとそこまで長くないので、M104は小ぢんまりと写ります。そのためこの時は
  1. バローなどなしでbin1の場合
  2. 2倍のPowerMATEを使ってbin2の場合
で比較しました。1素子あたりの明るさと画角は同じになるようにして比較したということです。違いはFOV(全体の視野角)と、bit depthになります。結果としては、恒星は2の2倍でbin2方が良かったですが、銀河本体は1の方がビミョーに良かったです。でも有意な差はほとんどなくて、結局1のほうがバローの挿入などの余分な操作がなく埃などが入る余地が少ないので、今後は1でいくという結論になりました。あと、この時はまだRGB合成のみで、L画像は撮っていませんでした。

その後、2023年5月にL画像だけ撮影していて、明らかに解像度が上がっていることまで確認したのですが、同時期にRGBを撮影する機会がなかったのでそのままお蔵入りにしてしまいました。2022年のRGB画像と合成しても良かったのですが、いまいち盛り上がらずに2024年を迎えてしまって、このままではさすがにダメだと思い、今回やっとLもRGBも一緒に撮影するに至りました。


NINAが重い

今回の撮影の少し前、3月18日にNINAの3.0が正式に公開されました。ただしちょっと重いみたいです。3.0にしてから撮影画像の保存にすごく時間がかかるようになりました。1枚撮影すると保存だけで毎回1分以上かかり、保存中は撮影は進まないので、かなりの時間ロスになります。

現在はStick PCで撮影し、micro SDに保存しているのです結構非力です。最初ディスクの書き込み速度を疑いました。でも撮影したファイル単体のコピペとかだと全然速く終わります。そこで、タスクマネージャーで撮影中の様子を見てみたら、NINAがものすごくCPUパワーを食っていて、かなりの時間100%になるようです。仕方ないので、以前の2.2に戻したら、ほぼタイムロス無しで連続で撮影できるようになりました。単にソフトが肥大したのか、それとも何か負荷が増えるようなバグっぽいものなのか、3.0がさらにアップデートされたらちょくちょくチェックしてみたいと思います。


今回の撮影

今回の撮影での大きな違いは、
  • 前回まではRGB撮影だけだが、今回はL画像を撮っているところ
  • 露光時間をこれまでの5分から1分にしたこと
です。L画像は実際の解像度向上に大きく貢献することになるかと思います。露光時間に関しては、SCA260+ASI294MM Proの場合gain120で露光時間5分だと、かなりの恒星がサチってしまうことに気づきました。特に、明るいL画像は深刻です。

下の画像は昨年5分で撮影したL画像を反転させています。bin1での撮影なのでそもそも12bit = 4096階調しかありません。ここでは階調の99%以上(4055/4096)になってしまっているところを黒くしています。

2023-05-11_20-58-14_M 104_LIGHT_L_-10.00C_300.00s_G120_0004
結構な数の星と、なんと画面真ん中の銀河中心までサチってしまっています。これはいけませんね。

下は今回露光時間を1分にしたもので、他の条件はほぼ同じです。だいぶマシになっていますが、それでもまだ飽和を避けることはできていません。少なくとも銀河中心は問題ないです。
2024-04-01_22-25-41_M 104_L_-10.00C_60.00s_0013

さらに露光時間を変えるにあたり、以下の2つのことを考えましたが、処理後の画像を見比べた限り違いはわからなかったです。
  1. 自宅撮影に限っていうとスカイノイズが圧倒的に支配的になります。露光時間を短くすると、読み出しノイズの効きが大きくなってくるのですが、露光時間を1分にしたくらいではまだまだ読み出しノイズは全然効かないくらいです。
  2. 淡い部分の階調がADCの暗い側にシフトするので、階調が出にくくなる心配もありましたが、まだ全然余裕があるようです。
LRGB画像は今後1分でいいと思います。ナローに関しては輝度が10分の1以下になるので、露光時間5分をキープするか、ダイナミックレンジがそこまで必要なければgainを上げてもいいかと思います。


画像処理 

WBPPでLRGBそれぞれインテグレートまでします。その後、すぐにRGBを合成して、カラーにしてからABEとDBEでフラット化をかけました。それぞれの色でフラット化してもいいのですが、カラーでやっても独立して働くので効果は同じはずで、1度で済むので手間を省いているだけです。

銀河で自宅撮影なので、背景のIFNなどは気する必要はなく、RGB画像もL画像も、気軽に簡単にフラット化してしまいます。だいこもんさんのブログ記事(元情報はUTOさんだそうです)によると、M104の周りにも相当淡い構造(更に大元がここ)があるようなので、試しに去年撮った5分露光画像も含めてL画像をかなり頑張って炙り出しましたが、私のところではその片鱗さえ全く見えませんでした。大顧問さんはチリで30時間露光して見えたとのことなので、自宅のような光害環境ではここまで淡いのは全然無理なのかと思います。なので、今回は背景は気にしないで、とにかく目的のM104本体の内部の細部構造がどこまで見えるかに全力を傾けます。

この内部構造、シンチレーションに強度に依存するようです。L画像は二日にわたって撮影していますが、二日目の画像は全然ダメで使うかどうか迷いました。1日目だけのもの133枚と、1日目133枚+2日目の中でもマシなもの56/103枚を使ったものを比較しましたが、見た目では違いがわからなかったので2日目のも入れたもので処理を進めました。

L画像はABEの2次、DBE、BXTをかけていますが、この時点でかなりの解像度が出ていて期待が持てそうです。
Light_BIN_1_8288x5644_60s_L_drizzle_1x_ABE4_DBE_BXTc_BXT_BXT03


LRGB合成

RGBとLをどう合成するかはいまだに迷います。過去に何度が議論しています。LRGB合成を初めて試したのは2022年10月のまゆ星雲です。この時わかったのは、L画像を合成したときに色がかなり出なくなるのですが、見えなくなっているだけで色情報としては十分残っているということでした。でもLとRGBをどのタイミングで合成すべきか、どういった比率で合成すべきかなどはまだまだ謎のままでした。


その後、この2つの過程でLRGB合成の経験的な方法はある程度確立したのかと思います。



そしてこのページである程度の理屈も含めて結論が出ています。


久しぶりのLRGB合成になるのでかなり忘れていることもあり、今回改めて読み直しましたが、今見てもかなり有用な議論です。当時のniwaさん、botchさん、だいこもんさんに感謝です。

今回まずは様子見で、PIのLRGBCombinationを使ってL画像を指定してRGB画像放り込んでみると、カラーノイズが結構目立ちました。RGBの撮影時間が短いので当然なのかもしれません。そこでLab分解してaとb画像にぼかしをかけてみました。以前うまくいった方法なのですが、今回はカラーノイズに対してほとんど効果が見られませんでした。カラーノイズ対策ができないのならa、b画像で何かする価値はほとんどなくなってしまいます。カラーノイズは後で対策できることと、奇をてらう方法はできるだけ避けたいこともあり、今回は素直にLRGBCombinationを使う方法を探ります。

未だ残っている一番の疑問は、LとRGBの混合比率です。これまでわかっていることは、
  • LRGBCombination処理はリニアでやらずにノンリニアでやること。ノンリニアとはフルストレッチしてからということ。
  • でもフルストレッチは厳しすぎる制限で、多少のストレッチでも大丈夫そうなこと。
  • リニアで処理すると、恒星内部に明るい飽和の飛びができ、後からどうしようもなくなること。
  • 飽和の飛びはL画像がRGB画像より暗い場合にできたが、L画像を明るくすると無くなること。

まず思っている疑問は、リニア段階での処理では本当にダメなのかということです。リニアはノンリニアの特別な場合と考えることができ、ノンリニアでいいのならリニアでも当然大丈夫だと思うからです。今のところ確認できている弊害は、
  • 恒星の飛び
だけです。

結論だけ言うと、今回リニア段階でLRGBCombinationを試しましたが、いずれも恒星の飛びは確認できませんでした。ただしこの結果は、LとRGBの明るさの違い(混ぜる比率)に依存しそうなので、その比率を変えて幾つか試しました。試したのはLRGBCombinationのCannel Weightsを変えることです。これらは相対的な比だけで決まり、例え全部を0.1とかにしても、処理後の画像の全体の明るさは変わらないことは以前確認しています。試したのは以下の4種類です。
  1. L : R : G : B = 0.1 : 1 : 1 : 1
  2. L : R : G : B = 1 : 1 : 1 : 1
  3. L : R : G : B = 1 : 0.1 : 0.1 : 0.1
  4. L : R : G : B = 1 : 0.01 : 0.01 : 0.01
いずれの場合も上で書いたように飛びは出なかったので、とりあえず今回は少なくともリニア段階でLRGB合成したとしても確認できるような問題は起きなかったと言えます。

その一方、できた画像の解像度には明確な差が出ました。下の画像になりますが、左から順に上の1,2,3,4となります。
comp

注意すべきは2, 3, 4で、Lの比率が高いとLRGBCombination直後はほとんど色がなく、一見モノクロのように見えることです。でも色情報はきちんとのこっているので、ここで心配する必要はありません。CurveTranformationで右のSの彩度を選んで曲線をΓの字になるくらいにして彩度を上げてやると確認できます。上の画像はそのように彩度を上げたもので比較しています。

4つの画像を見る限り、カラーノイズ、彩度に関しては明確な有利不利は確認できませんでした。最も大きな違いは分解能で、Lが一定以上の明るさがないとRGBが持つ低い分解能のままで制限されてしまうということです。わかりにくい場合は上の画像をクリックして拡大して比べて見てください。明確に違いがわかります。LとRGBの比が0.1:1や1:1ならばL分解能が十分生きてこなくて、1:0.1ならば十分、1:0.01にしてももう変化がないことがわかります。以前M106で試した時は1:0.25とかにして分解能が出たので、今回も再現性があり、ある程度L画像の明るさを保たないとダメだという結果を改めて確認できたことになります。

というわけで、今後もLRGBCombinationでシンプルに、Cannel WeightsだけLをある程度大きくしてLRGB合成をすればいいということにします。


結果

結果です。とりあえずはクロップして本体をある程度の大きさにしたものを完成とします。

「M104: ソンブレロ銀河」
Image07_middle
  • 撮影日: 2024年4月1日22時3分-4月2日2時41分、4月10日20時27分-4月11日3時18分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: 無し
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120で露光時間1分でL: 189枚、R: 59枚、G: 51枚、B: 64枚、総露光時間363分 =6時間3分
  • Dark: Gain 120で露光時間1分が204枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120で露光時間 LRGB: 0.01秒でそれぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop

まず目的の銀河本体内部の構造ですが、結構出たといっていいかと思います。これはひとえにシンチレーションが良かったからと言うのが今回の結論です。BXTの効果も大きいかもしれませんが、シンチレーション自身が良かったのがまず第一だと思います。色は下に載せたハッブル画像に近くしました。

クロップ前の全体像になります。
Image07_low

恒例のAnnotationです。
Image07_low_Annotated

銀河っぽいシミがいくつかあると思ったのですが、候補に入らないものがいくつかあります。単に画像処理でなにか失敗してるのか、はたまたまだカタログ不足なのでしょうか?


ハッブルとの比較

恐れ多くもハッブルと比べてみます。

まず今回撮影し画像を5度時計回りに回転させ、次のハッブル画像と同じような画角に切り出したものです。
Image07_rot5_Hubble

次がハッブル望遠鏡が2003年に発表したM104です。
STScI-01EVT8YHAGM2WGQTV3DGKRFZ7Q

もちろん分解能には全然差はあって追いつけっこないですし、恒星に至っては大きさも微恒星の写りも全く違います。でもなんかちょっと比べてみようと思うくらいにはなったのかなと思って、自己満足しています。


まとめ

足掛け2年にわたって悶々としていたM104にやっと決着がつきました。2022年の結果がこれなので、大きな進歩だと思います。
final

ソフトは変わりましたが機材は同じです。今回L画像を撮影したのは大きな違いですが、やはりそのL画像のシンチレーションの影響が一番大きいと思います。撮影時のHFRを見るとシンチレーションの評価になりそうなので、いい日かどうかを定量的に評価しながらL画像を撮影すべきなのかカラー画像を撮影すべきなのかを決めることなどができそうです。そこらへんの補足記事を次に書こうと思っています。

今回健康を害すると何もできなくなってしまうことを実感しました。まだ今後も長年続けていきたい趣味なので、少し体に気をつけて、無理をせずに楽しみながらやっていけたらと思います。

画像処理も溜まっています。ダイオウイカは昨年10月くらいから残ってますし、ヘラクレス銀河団、さらに南天がいくつか残っています。これらも焦らずに進めていきたいと思います。