BlurXTerminator (BXT)を使った、過去画像の再処理の第二弾です。

第一弾は三日月星雲でした。


この時は主に背景の改善が特徴でしたが、今回は特に恒星の改善がすごいです。

BXTの収差補正能力

昨年ゴールデンウィークに、近くの牛岳においてFS-60CBにASI2400MC Proを取り付けて撮影した青い馬星雲。



当時出来上がった画像はASI2400MCの能力が思う存分発揮されたもので、背景の淡い部分が十分に表現され、遠目で見る限り素晴らしいものです。自分的にも十分満足していました。その一方、遠征先で撮影時に接眼側の延長筒の長さが手持ちで合わず、バックフォーカスがずれてしまい、四隅が思いっきり流れてしまいました。
mosaic1

これはさすがに救いようがないとずっと思っていたのですが、BXTはこのレベルでも大幅に改善してくれます。しかも今回使ったのは「Collect only」だけで、恒星を小さくしたりハロを押さえたりする機能は使っていません。
mosaic3

左上だけまだ少し流れていますが、他の8枚は完全に許容範囲です。これだけでもBXTの収差改善は圧倒的にすごいです。

しかもFS-60CBには、昔から指摘されている弱点の一つとして、撮影の際に赤と青とでピント位置がどうしてもずれてしまうという問題があります。現場において赤に合わせるか、青に合わせるか、もしくはその中間に合わせるかいつも大問題です。どうするかは場合によるのですが、今回は青い領域なので青にピントを合わせたために、全ての恒星周りに赤いハロが出てしまっています。ところが、これらの赤ハロも今回のBXTはものの見事に綺麗に除去してくれています。これはFS-60ユーザーにとっては大きな福音となるのではないでしょうか。


背景と仕上げ

この四隅で仕上げた画像です。今回はNXTも使いノイズをある程度除去しています。また、青い馬付近は意外に赤い領域もあり、前回はこの特徴をあまり出せなかったので、今回は少し強調してあります。

masterLight_180_00s_RGB_integration_ABE_SPCC_ABE3_cut

下はこれまでの画像ですが、今回のと比べると、やはり少し緑に寄っている気がしますし、赤が弱いと思います。
masterLight_180s_ABE_PCC_ASx4_SCNR_bg2_cut_s

これまでと、今回の再処理の2枚を比較して検討してみます。まず恒星ですが、明らかに分解能が増しています。特に首元にある青い明るい2つの星の下の方のものは、2つの星がかなり近接しています。前回のものでは明るすぎて分離できていませんでしたが、今回のでは余裕で分離しています。また、微恒星に関しても、拡大して比べるとよくわかりますが、より暗い星までかなりはっきりと写っています。恒星に関してはほとんどの処理がPixInsightで閉じるようになったのでずいぶん楽になったのと、その恩恵でしょうか仕上がりも大分良くなったと思います。BXTのおかげですね。

その一方、分子雲に関しては今回かなり苦労しました。前回のレベルまで全然持っていけないのです。前回の時点ですでにかなりのレベルで淡いところを引き出し切っていて、しかも最後のところをPhotoshopでやっていたので、肝心要の最淡の部分でどうやったか記録が全く残っていません。元々の素材が良かったので、画像処理はかなりシンプルだったはずです。色々試しても、ごくわずかのところでどうしても前回のレベルまで持っていけません。結局今回は第9バージョンまで処理し直して、やっとそこそこ満足しました。ポイントはマスクの使い方だったのですが、前回シンプルにやっていたのを、今回凝りすぎていたというのが原因でした。本当にシンプルに星マスクをうまく適用することで、背景の分子雲モクモクを再現することができました。

あと今回はNXTも使ったので、背景が全体的にノイジーだったのが改善されています。ある程度拡大して比較するとよくわかります。


まとめ

BXTを使い再処理すると、やはり有意に違いがわかるレベルで改善します。今回に関しては主に恒星です。その一方、今回実感できたことは、BXTは恒星や星雲部の分解能は向上させることはあっても、諧調に関してはほぼ何も貢献しないということです。前回の三日月星雲の再処理では背景の階調が改善しているように見えますが、あくまで副次的な効果で、基本的にはこれまで通り丁寧に階調のある部分をうまく拡大させることが必要となるということがよくわかりました。


BXTによる再処理シリーズの第三弾はトールの兜星雲です。