BlurXTerminator (BXT) が面白いです。前回までで、ゴースト星雲でのBXTの試用と、BXTをカラー画像に適用した場合などを記事にしてきました。





その後、BXTのバージョンが上がり1.1.1になりました。初期バージョンでは恒星の色ずれがPIのForumで指摘されていたようですが、新バージョンではそれも解決されているとのことです。

BXTの効果がかなりすごいので、過去画像にもいくつか適用してみました。今回の再処理は全て新バージョンで試しています。


三日月星雲

まずは、はくちょう座にあるNGC6888: 三日月星雲で比較です。下の画像は昨年5月にSCA260で撮影し処理したもので、AOO合成になります。当時はそこそこ分解能もでていると満足していました。
Image11_ABE1_PCC_ABE4_cropped2_mod
この時の反省点は、星雲本体はよく出たのですが、背景がかなり淡くて出にくかったのを覚えていて、結構無理をしてノイズ処理をしました。背景の細かい構造はほとんど飛んでしまっています。ここら辺がBXTとNXTが入ったらどうなるかも気にしたいと思います。


BXTとNXTの適用

元のファイルは前回WBPPまで終了して、AOO合成までしたものを使います。まずはSPCCをかけ、すぐにBTXです。この時点ですごい分解能となり、ちょっとびっくりしました。

ストレッチはHistgramTransformationです。ArcsinhStretchとMaskedStretchも試しましたが、星雲本体の赤の部分が差散り気味になってしまったのであきらめました。あとはCurveTransformationのSaturationで彩度を出します。その後NXTでノイズ処理をしています。

これまでマスク処理は、マスクをPIで作ってからPhotoshopにマスクを渡して処理をすることがほとんどでした。今回はマスク処理自身もPIでやってみることにします。今回のマスクはB画像から作り、星雲本体の青いところを強調しました。最後にPhotoshopに一応手渡してほんの少しだけ色を好みのものにしましたが、今回は自分的には98%くらいがPIでPhotoshopで触ったのは本当にごくわずかです。

結果です。一見しただけでBXTを適用したものは三日月本体の分解能が圧倒的に上がっています。

Image11_SPCC_BXT_HT_HT_CT_SCNR_NXT_maskB_CT_CT_CT_ok2

青いところもよりはっきりと出すことができました。背景もそこそこの階調で出ていて、ノイズ処理もより自然になっているように見えます。以前の処理と、今回の処理の違いを一言で言うと、以前のものは画像の中にある情報を引き出し切れていなかったと言うところでしょうか。BXTの底力を見せつけてくれる結果と言えます。

あと、微恒星の数が圧倒的に増えています。私は元々恒星の処理が下手くそなのですが、BXTとNXTのおかげかかなり楽になりました。作業がPIで閉じていて、恒星と背景を分離したり合成したりする必要がなくなってきたことが大きいです。分離は使うとしても軽い星マスク程度です。言い換えると、分離というある意味特異な処理をする必要がなくなりつつあり、より自然に手間をかけずに恒星を出すことができるようになってきています。


驚異的な分解能

こうして見るとBXTの威力がいかに凄いかわかるのですが、いささか分解能が出過ぎのような気もします。そこで、さらに高解像度の画像、例えばこのページにある三日月星雲と比べてみます。試しにPhotoshopで各レイヤーに自分の画像とリンク先の画像をはって、拡大縮小回転などして位置合わせをして、レイヤーの表示/非表示でかなり詳細に比較してみました。

少なくとも私がみた限りでは、BXTのAIによってあからさまに変な線が出ているようなことはないようです。勝手に上記の画像をこのブログに貼るわけにはいかないのですが、結論としては、おかしくないパラメータの範囲でBXTを使う限りは変な構造を加えるようなことはなく、画像の中に情報として残されている構造をかなりのレベルで引き出しているのかと思います。また、引き出す構造に限界もあり、これも詳細画像と比較するとわかりますが、撮影画像の中に無い構造はやはり出てこないこともわかるので、少なくともAIだからと言って、そこまで変なことをしているわけではないのかと思います。

BXT、今回もかなりの手応えなので、今後もう少し過去画像の再処理を続けたいと思います。


(追記) 第二弾は青い馬星雲です。