皆既月食の一連の結果です。前回の記事の続きです。


今回は広角で月食の全景を撮影したものです。


広角撮影セットアップ

全過程を広角で撮影したものです。機材は
  • 35mm、F1.4のNIKKORレンズをF8で使用
  • Canon EOS 6D、HKIR改造、フィルターなし、1/400s(2.5ms) ISO100
  • Manfrottoの固定三脚とVelbonの自由雲台PH-173
になります。

レンズは最初50mmを考えていたのですが、今回は4時間と長丁場で、Stellariumで画角を計算してみると全景は全然入りきらずに持っていた古い35mmレンズとしました。広角なので手持ちの唯一のフルサイズの6Dをここに投入します。

露光設定ですが、こちらもSharpCapのシーケンサーを使って、1分に2枚明るさを変えて撮影します。
  • 1枚は露光時間1/400s(2.5ms)、ISO100で、月の明るい部分に合わせた暗い設定
  • もう1枚を露光時間1/2s(500ms)、ISO800で、月食部分にあわせた明るい設定
とします。SharpCapのシーケンサーの詳細です。

seq

撮影後、撮って出しJPGを見たらかなり暗く写っていたので、最初失敗かと思いました。でも画像処理をして炙り出すことで、特に問題ない画像となりました。1分間に2枚撮影して、4時間強の撮影になったので、1セットあたり263枚、合計526枚の画像がありました。多量のファイルがあるのでどう画像処理を進めようかと思い、LightRoomや動画にしてからPremireで加工するなども試しましたが、結局PixInsightでContainerを使うのが一番小回りが効きやすかったです。


画像処理詳細

かなり暗めに撮影したため、炙り出すとBiasノイズのような縞ノイズが見えました。しかも縞は一定ではなく、ランダムで出るので厄介です。今回はCanonBandingReductionが有効なことがわかったので、これを全てのファイルに適用します。263枚を一度に処理する必要があり、さすがに一枚一枚処理するのは大変なので、
  • ImageContainer
  • ProcessContainer
を使うことにしました。心配だったのは、CanonBandingReductionはScritpsに所属するUtilityなのですが、これでも一括処理できるようです。やり方は、
  • ImageContainerに処理したいファイルを登録し、出力フォルダを設定したりします。
  • ImageContainerのインスタンスを作ります。
  • CanonBandingReductionを開き、適当に設定し(今回はデフォルトのまま)、そのインスタンスを作ります。
  • ProcessContainerを開き、CanonBandingReductionのインスタンスを投げ込みます。
  • ProcessContainerのインスタンスを、先ほど作ったImageContainerのインスタンスのインスタンスに投げ込みます。
すると順次各ファイルの処理が進みます。

ここで一つ注意です。CanonBandingReduction単体の処理なので、ProcessContainerが余分な気がしますが、試した限りUtilityはImageContainer単体には適用することができないようです。

さらに画像処理して、PixInsightで適度にストレッチします。今回は途中で明るさをいじったりしたくなかったので、MaskedStretchなどは使わずに、HistgramTransformationのみ使いました。全部のファイルに適用するのはImageContainerを使いました。ここではProcessContainerは必要なく、直接ImageContainerにインスタンスを投げ込むだけで適応できました。

さらに出来上がった.xisfファイルをjpegに変換します。変換はのちに動画にしたいこともあるので、Blinkを使います。ここでjpegを指定し、一旦仮の動画にしてしまいます。


結果の画像と動画

これらの過程を満月に合わせた暗い設定、月食に合わせた明るい設定の2つに適応し、できた多量のjpegファイルを合成します。合成は、皆既になる前後を境にして、暗い設定->明るい設定->暗い設定としてファイルをまとめるようにします。Blinkを通した時点でファイル名のタイムスタンプはなくなってしまっています。なので、Blinkを通す時点で1分で2回取れたファイルのみを変換しておくことに注意です。そうしないと2種の明るさのファイルの時間がずれてしまい、合成した時に境目でズレが起きます。(それでも境目で30秒のずれはどうしても発生していますが、これは今回は無視するとことにします。)

まずは5分おきに比較明合成したものです。これが一番メインの結果となるでしょうか。
StarStaX_Blink00001-Blink00261_lighten

ついでに、1分おきに比較明合成すると以下のようになります。
StarStaX_Blink00001-Blink00263_lighten_500ms

月食に合わせた、明るい設定だけを1分おきに比較名合成してみました。最初の頃と最後の頃に雲が多かったので、全部は使わずに部分月食が終わってからの画像はカットしました。
StarStaX_Blink00001-Blink00200_lighten

次にタイムラプスです。アニメ化する際には、必要なファイルを入れたフォルダに移動して、ターミナルで

ffmpeg -y -r 20 -i Blink%05d.jpg -vf scale=1920:-1 -b:v 20000k Blink.mp4

などと打ち込みます。横幅がHDMIの1920ピクセルになるようにしています。ただしこれだと横長の動画になってしまうので、次のコマンドで回転させます。

ffmpeg -i Blink.mp4 -vf "transpose=2" Blink_rot.mp4

こうしてできた動画になります。


動画にするとかなり月が小さく見えるので迫力があまりないです。できるだけ画面いっぱいに拡大してみた方が良さそうです。ついでに、明るい設定のものだけをタイムラプスにしたものをアップしました。こちらのほうが見やすいかもしれません。

最初と最後に雲がそこそこあったことがよくわかります。

次の記事は天王星食です。