2022年9月18日、実に3年ぶりになるリアル開催の、京都の「星をもとめて」、通称「星もと」に参加してきました。前回参加は2019年になります。

 


星もと

この「星もと」は関西では唯一と言っていい星まつり。関西の天文仲間が多く集まるので、関東などの星まつりではなかなか会うことのできない方達とお会いすることができます。

星もとといえば天気のことを書かないではいられません。思い起こしてみると、私が星を始めた当初の2016年にはこの星まつりのことは認識していなくて、やっと存在を知った2017年は台風で中止、初参加の2018年は晴れたものの、2019年には台風の中決行。私は初日の夜中に帰りましたが、次の日曜にはブース用の大型テントが 空中を舞っていたという噂を聞きました。2016年以前も会場が膝くらいまで水に浸かったとか、高速が通行止めになって帰れなかったとか、いまだにいろいろ伝説を聞くことができます。今年も多分にもれず、何故か超大型の台風と同じ日に。それでも台風の進行が予想より遅かったこともあり、無事に開催されました。ただし予定されていた2日目はキャンセルで、初日夜までの開催となりました。

ちなみに昨年2021年はコロナでオンライン開催でしたが、その際には電視観望について講演させていただき、個人的にも思い入れの深い星まつりです。
 


準備と出発

今回は台風が近いということもあり、そこまで大袈裟な機材は持っていかないでいこうと思っていました。直前の天気予報を見ると、初日の午前から午後初めくらいにかけて晴れの予報が出ていました。なので急遽太陽電視観望セットを持っていくことを決め、C8とPST、架台としてCGEM IIを載せ、午前4時に出発。9時くらいの到着を目指しました。夜の電視観望は、多分曇りが予想されるので50mmレンズでの広域電視観望とASI294MCと、予備にFMA135と最近お気に入りのUranus-C。架台は広域用には普通のカメラ三脚と自由雲台と、一応AZ-GTi。あとは予備でFS-60CB鏡筒です。

BE117370-420C-4E51-9FA1-D100D5814E98

結局車は荷物でいっぱい。一応寝られるように運転席の後ろは椅子が倒せるスペースだけ確保しました。出発直前にシャワーを浴び、午前4時過ぎに出発です。高速に乗る前にコンビニで運転中のおやつを買い込み、富山ICに向かいます。運転は焦らずのんびり何度か休憩しながらです。途中敦賀ジャンクションの手前の南条SAで休憩。ここはコンビニもあって便利で、しかも朝6時くらいなのに、すでにフードコートがオープンしていて食事を取ることもできそうです。お腹は空いていなかったので、コンビニでお菓子を少し追加したくらいで、そのまま敦賀JCTで舞鶴若狭道に入り、舞鶴を超え綾部JCTで京都縦貫道に乗り換えます。前回までは園部ICで降りていたのですが、今回はその一つ手前の京丹波みずほICで降りてみました。多分このIC前回はまだなかったと思っていたのですが、今調べたら2015年にはできていたそうです。下道の距離が少し長くなりますが、全体の距離は縮み、高速代を少し節約することができます。所要時間は3分ほど余分にかかるようですが、途中コンビニが4つあり、最後のは会場10kmになるので、途中IC周りしか何もない園部よりは便利そうです。


会場に到着

会場に到着したのは午前9時過ぎ。スタッフ以外はまだ数人でしょうか、ほとんど人がいません。

82142D8D-A3E2-49C3-B792-268CE708B8B9

こんなに朝早くでしたが、受付には学生スタッフがすでにいて名前を書いて受付を済ませプログラムをいただきました。その後、車を会場に近いところに止め会場に向かいます。
AAB41BD3-8AE9-4B90-8451-634B5966EFDD

到着してまもなく、国際光器さんが業者では一番乗り。挨拶したのですが、今回は家族づれでのご参加です。今回の星もとの特徴の一つが、業者さんも一般の方も、家族連れてきている方が結構いたことです。このるり渓がリゾートであることと、あとコロナで長い間なかなか旅行などいけなかったのが関係しているのかと思いますが、家族で参加できる星まつりというのはとてもいいと思います。

会場はいつもの奥の砂利のエリアから変わって、手前のアスファルトの所になりました。雨が降ったとしても泥跳ねとかせずに安心です。以前の場所はキャンプ場になっているようで、テントが張られています。その一部にバギーエリアが新設され、実際バギーが何台も走っていました。聞いたところによると今回の星もと会場も今はバギーコースの一部で、星もとのためにこの日はバギーコースを縮小してもらっているそうです。会場の至る所にタイヤが転がっていたわけがやっとわかりました。


太陽望遠鏡の顛末

さて、朝の到着時点ではまだ太陽も青空も少し見えていたのですが、流石にお客さんがほぼゼロなので太陽セットを出すのを躊躇していると、見る間に雲が多くなってしまいました。その間に、メイン会場では太陽望遠鏡が4つほど並び始めました。

1354E350-EE84-4B5C-8539-F6862A8A0B72

スタッフの方と話をすると同じ場所に設置していいとのことなので、太陽は雲の中ですが機材を見てもらうだけでもいいかと思い、私も設置を開始します。
6187DFF5-AB63-4FF4-9DE3-8E99C7DAC634

設置したのはいいのですが、結局昼間の間はほとんど曇りで太陽望遠鏡はほとんど出番がなく、途中少し雲越しで太陽が見えた時に試しただけでした。コントラストがほとんど取れない中、導入とピント合わせまではなんとかでき、太陽の縁は見えました。一瞬プロミネンスと思われるものが見えた気がしましたが(今その日の太陽のHαをネットで見たら、南西の濃いプロミネンスが見えていたのかと思われます)、雲が厚くてあまりに再現性がなく、期待していたお客さんに見せるには至りませんでした。時間が経つごとに見えなくなってしまったのと、雨も心配になってきたので、夕方前くらいには片付けてしまいました。それでも何人かの方には機材を説明できたのと、シベットさんのブログ記事にもありますが、少し溜まり場みたいになっていたので、まあよかったかなと。


いよいよ開会

昼頃になると人も集まり始め、賑やかになってきます。今回は台風接近にも関わらず、かなりの人が集まりました。最後まで雨もほとんど降ることもなく、太陽が出ていた朝の方が暑かったくらいで、昼頃からは温度も上がらず過ごしやすかったです。

13時からは開会式です。
5E47B4DF-7604-45E1-A107-926299BEB101

ブースにはすでにたくさんの人が来ていて、私も特価品などないか回って、リアル開催の雰囲気を楽しみます。


迷人会

今回は天気は期待できなかったので、人と会うことが大きな目的の一つです。特に、以前大阪あすとろぐらふぃ〜迷人会の微動雲台の評価をさせて頂いた際にやりとりさせていただいた、製作者の井戸端さんにやっとお会いすることができました。実は前回の星もとで会っているのですが、赤いハーモニック雲台を作った技術担当の方ということで機材の方は覚えていたのですが、顔がどうしても思い出せませんでした。今回実際にお会いしてやっと挨拶できましたが、(これまでのやりとりで朧げながらわかってはいましたが)こたろうさんとのやりとりはまるで漫才で、コテコテの迷人会メンバーの名にはじない豪快な方だということがよくわかりました。技術のもうも相当豪快で、今年作った赤道儀だけで10台とのことです。金ピカの赤道儀はインパクト大です。微動雲台の最新版も見せてもらい、ずいぶん改良されているのもわかりました。ものすごい技術力です。

C73BBD88-4B0A-4029-8D7B-9418BF072797

先月金沢でお会いしたええじさんにも再開できました。迷人会名物のザリガニさんも再開でき、ザリガニの持ち主のご本人様にもお会いすることができました。
6D9CB33E-BCAA-44DC-85E6-109B4B03E27B

迷人会のブースにシベットさんが居候していて、3Dプリンタで作った自作ミニSUBARU望遠鏡を展示していました。
7F50FE25-4B30-44CE-80C2-92FC761F682F

実際に覗かせて頂きましたが、この大きさからは想像できないくらいよく見えます。3Dプリンタだと精度が足りなくてなかなか光軸が出ず、主鏡と副鏡の調整ネジが必須とのことです。補正レンズを入れると中央部がさらに良くなるとのことですが、周辺部が歪んでしまうために今回は補正レンズなしで、バローが入っていました。


ブース関連と戦利品

88B7B277-0962-42A4-A156-C039BF5B4489

最初にオープンした国際光器では欲しかったのBaaderのSIIフィルターを見つけたので早速購入してしまいました。手持ちのSIIフィルターだとゴーストが出てしまう時があり、HαとOIIIと同じBaaderにしたかったのですが、Baaderフィルターは最近どこも全然在庫が無かったので、これを手に入れられただけでも早くに会場に来た甲斐がありました。

0F4C6029-4052-4389-9696-270375C2DA1E

金沢のユーシートレードさんがこんかい「星もと」に初参加です。最近金沢の実店舗の方に行けていないので、たまには顔を出したいと思います。ここでは念願だったSupere WideBino36を購入。ここに詳しいレビューがあるのですが、NikonのTC-E2と争う高性能ということで、実際に比較してみるのが楽しみです。
1A14A11D-B33E-4451-8693-9B237A02466F
もう一つ、ズームタイプのアイピースを買いました。Celestronのものを一つ持っているのですが、おそらく同一製品です。とても便利で意外によく見えるので稼働率が高く、もう一本持っていたも重宝しそうという判断です。

ビノテクノに置いてあった電子ファインダーのマウントはシンプルで微動可能な秀逸なものです。非売品とのことでしたが、仕組みは簡単なので自分で作ることができそうです。電子ファインダーでもいいですし、広角電視観望を併用したい場合でも使えそうです。
C41A7DB2-F058-465C-808D-EF57652E8B52

ここはアルミ材を格安を出していました。私も一つ購入しました。ビノか何かに使えるかもしれません。ガラス瓶は余り材らしく、無料で配っていたので一つ頂きました。
044FC632-F222-43EC-8D77-7A3DF2A64C49

KYOEIは星もと恒例のジャンク品の争奪戦が再開されました。5000円のコースはオークションに変わり、Celestronの Nexstarが出品されました。かなりお得な値段で落札されてました。
72B45482-A11A-4494-AFEB-F9D0A0918F15
3000円と2000円のコースは太陽エリアにいて逃してしまいましたが、1000円のコースだけ参加しました。Celestronの40mmのアイピースを手に入れることができました。低倍率でみたい時に重宝します。以前持っていたのですが、誰かにあげてしまったのでちょうどよかったです。
70F8F613-2B32-4D6E-9075-7A868649DDB8


写真を撮っていなかったのですが、外山電子ブースでは外山さんがZWOのAM5 を絶賛していました。全部分解して調べたらしいのですが、「非常によく考えて作られていて、もうこれ以上やることがなくて悲しくなる」くらいのレベルだそうです。

関西の「日本天文同好会」のブースがあったのですが、そこで海外の星図を展示している方がいました。私は眼視をあまりしないので星図については詳しくないのですが、いろんな種類のものがあり、見ているだけでも楽しそうでした。
B5A4E467-07F0-4264-9C9E-23D557810E18

同じブースで、この星もとのスタッフのYさんが、ラッキーイメージで写した写真のまとめ冊子を展示していました。ちょうどYさんがいて色々説明を聞かせてもらいましたが、驚いたのは10秒露光とかで「何十時間」も撮影して、時には10%とかの率で選び抜くとか。枚数とファイルサイズを想像するだけでビックリです。流石に使わないファイルは消去するらしいのですが、いい画像を選ぶのはなんと目で見て判断しているとのこと。何かいい仕分け方法はないかとのとこで、PixInsightのSubFrameSelectorをお勧めしておきました。Yさん自身はPIは使っているのですがSubFrameSelectorはご存知なかったとのことです。

天文ガイドのブースではマサさんが来ていたので、10月号の「マサが行く」の志賀高原の記事のお礼を言いました。記事の中に「リフトで火球を見た」というのがあるのですが、おそらくそれは私の妻のことです。でもマサさんはそれが誰だったかというのは知らなくて、サイトロンスタッフの方から聞いた話だったということです。


イベント

2日目に予定されていたオークションですが、時間の関係でじゃんけん大会となりました。勝者16人が選ばれて、提供された商品を選べるとのことでしたが、私は初戦敗退。あ、そういえば参加賞があったような。もらうのを忘れてしまったかもしれません。

697CBD8B-BB84-4F2F-B070-1B9D64E438D8

演奏会もあります。夜はハープの演奏会もあったそうです。
C7564888-C8D8-4943-8F4C-CCB69ED9F9E4

昼食は行きがけにコンビニで冷し中華を買っておいたのですが、忙しくて昼に食べ損なって17時過ぎにやっと昼食にありつけました。その後すぐにかんたろうさんから夕食に行こうと誘われてしまい、レストランに行ったのですが、宿泊客の食事もレストランで提供されるらしくかなり待つとのこと。リストを見るとズラーっと待っている人が並んでいるので、自分の名前だけ書いていったん会場に戻りました。

18時から電視観望についてのKYOEIのMさんの講演が始まっています。途中からですが参加しました。
A89B4C2D-E21F-4F20-9A34-63E68D3E0EA0
ここでCMOSカメラとCCDカメラの違いについて質問していた、阪大の学生さんと後で少し話しました。星もとスタッフさんの一人です。その際、ダイナミックレンジについて少し議論しました。物理でセンサーを扱う研究室にいるそうで、趣味と研究が一致すると互いにどんどん進むかもしれません。

学生さんといえば、星もとは学生ボランティアの貢献がものすごく大きい星まつりです。今回もたくさんの学生ボランティアのスタッフがすごく活発に動いてくれていました。学生さんが手伝ってくれないと全然回らないと言っていたスタッフの方もいます。ただ、コロナで活動が長期間停滞していたため、引き継ぎがあまりうまくいかなくて、今回は院生などのOBに相当するような学生さんも参加して、ひきつぎもふくめてうまく回してくれているようです。学生さんたちの貢献のおかげで星もとがうまく行っているといっても過言ではなく、もう感謝しかありません。

2018年と2019年の星もとで色々お話させてもらった、当時学生だったKさんという方がいます。同じ大学の後輩学生に、今回彼女が会場に来ていないか聞いてみたら、会場には来ていないがどうやら星関連の仕事についたとのこと。その場でわざわざKさん本人電話までかけてくれて、直接話すことができました。天文関連の部活やサークルから星関連の仕事に付くのは、そもそも空きがものすごく少なく、とても大変だと思います。彼女は高校の頃から天文部を立ち上げたり、星もとで光害や神話の研究発表をしたりなど、当時から非常に熱心でしたが、それでも大変だったのかと思います。心から「おめでとうございます」と伝えました。これからも頑張ってほしいです。

さて講演も終わって外に出てみると、すでにブースの大部分は片付けを始めていて、お客さんの数もかなりすくなっていました。かんたろうさんと再びレストランに行くと、ちょうど呼び出しのころ。すぐに入ることができ、私はカツ丼のご飯とカツが別になっているようなカツ煮を注文。夕方に食べた昼食もこなれていることで、ちょうどお腹いっぱいになりました。結局かんたろうさんと1時間以上喋っていました。前の向かいにはユーシートレードさんご夫妻、右隣はヒロノさん一家4人がいて、最後に挨拶だけして再び会場に。もう21時近かったでしょうか、ほとんどのブースはテントだけ残っていて、お客さんの数もゼロに近いくらいになっていました。


雲越しの電視観望

でも空を見上げると、雲越しですが星が少し見えています。学生スタッフの一人と話すとぜひ電視観望を見たいとのことなので、かんたろうさんと一緒に準備を始めることにしました。

星が見えるといっても、かなり雲があるので50mmのレンズでの広域電視観望にしました。広域なので架台も通常のカメラ三脚に自由雲台でお気軽です。準備もわずか5分程度。実際に見てみると、雲越しですが北アメリカ星雲とサドル付近、時折網状星雲も見えます。ここまで残っていてなんとか成果ゼロだけは避けることができました。

99865652-8426-40D8-A6C9-F9DAA7E4E75F

流石に晴れの時のようには見えませんが、残っていた何人かの方には実際に見てもらいました。この時間はまだプログラムの一つとしてハーブ演奏が行われていて、演奏終了後に出てきた方達にも見てもらうことができました。この日のプログラムでは22時終了予定だったのですが、21時半過ぎ頃でしょうか、もうお客さんもいないということで、放送で閉会の宣言がなされました。

本当は残って作業しているいる学生スタッフに見せてあげたかったです。彼らは0時過ぎまで後片付けをしていていて、その頃には雲が厚くなりすぎていて、何も見えなくなってしまいました。一部学生はお風呂に行くとかで、その途中で見てもらえたのはまだよかったかもしれません。お客さんが帰った後の遅くまで後片付け、本当にお疲れ様でした。私は見ていることしかできませんでしたが、イベントの裏で準備から後片付けまで、スタッフさんや学生ボランティアスタッフさんの努力と貢献があることを忘れないようにしたいと思います。こんな楽しいイベントを本当にありがとうございました。


撤収とまとめ

風も強くなってきて雲も厚くなってきました。0時頃に撤収で、結局現地を出たのは0時半頃。私は富山方面に、かんたろうさんは長野方面に向かうということです。帰りの高速は横風がすごくてすぐにハンドルを取られ、怖いのでゆっくり帰ってきました。最後の小矢部付近で眠気に勝てず30分ほどだけ仮眠を取り、結局自宅に着いたのは5時半頃でしょうか。朝の9時から夜中の0時半までの現地滞在でしたが、とても楽しかったです。

会場でお会いしたたくさんの方、天リフ編集長、いのさん、薜くん、Kaienさん、Tankoさん、ふじたけさん、M1623さん、今回あまりじっくりみることができなかった望遠鏡エリアの方々、企業ブースの方々、全員は書ききれませんが、みなさんとお会いできてとても楽しかったです。またいつかの星まつりなどでお会いできればと思います。